説明

半導体発光装置

【課題】実施形態によれば、光取り出し効率を高めた半導体発光装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、半導体発光装置は、半導体層と、p側電極と、n側電極と、無機膜とを備えている。半導体層は、第1の面と、その反対側に形成された第2の面と、発光層とを有し、窒化ガリウムを含む。p側電極は、第2の面における発光層を有する領域に設けられている。n側電極は、第2の面における発光層を含まない領域に設けられている。無機膜は、第1の面に接して設けられ、窒化ガリウムの屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有し、かつシリコンと窒素とを主成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系材料を用いた発光層は、サファイア基板上に形成されることが多い。光の取り出し面の反対側にp側電極及びn側電極が設けられたフリップチップ実装タイプのデバイスでは、光は、GaN層からサファイア基板を経て空気中に取り出される。GaN層、サファイア基板、空気の屈折率は、それぞれ、2.4、1.8、1.0であり、光が取り出される方向に媒質の屈折率が段階的に変化している。
【0003】
一方、デバイスの小型化や薄膜化のためにサファイア基板を除去した構造が提案されている。この場合、サファイア基板がないため、GaN層から空気に向かう方向で媒質の屈折率が大きく変化し、光の取り出し効率の低下が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0148198号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態によれば、光取り出し効率を高めた半導体発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、半導体発光装置は、半導体層と、p側電極と、n側電極と、無機膜と、を備えている。前記半導体層は、第1の面と、その反対側に形成された第2の面と、発光層とを有する。前記半導体層は、窒化ガリウムを含む。前記p側電極は、前記第2の面における前記発光層を有する領域に設けられている。前記n側電極は、前記第2の面における前記発光層を含まない領域に設けられている。前記無機膜は、前記第1の面に接して設けられ、前記窒化ガリウムの屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有し、かつシリコンと窒素とを主成分とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の半導体発光装置の模式断面図。
【図2】図1における要部の拡大断面図。
【図3】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図4】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図5】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図6】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図7】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図8】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図9】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図10】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図11】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図12】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図13】実施形態の半導体発光装置の製造方法を示す模式断面図。
【図14】他の実施形態の半導体発光装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。なお、製造工程を表す図面においては、複数の半導体層15(チップ)を含むウェーハの一部の領域を表している。
【0009】
図1(a)は、実施形態の半導体発光装置10の模式断面図であり、図1(b)は、図1(a)における要部の拡大図を表す。
【0010】
半導体発光装置10は半導体層15を有する。半導体層15は、第1の面15aと、その反対側に形成された第2の面を有する。第2の面側に電極及び配線層が設けられ、その反対側の第1の面15aから主として光が外部に放出される。
【0011】
半導体層15は、第1の半導体層11と第2の半導体層12を有する。第1の半導体層11及び第2の半導体層12は、窒化ガリウムを含む。第1の半導体層11は、例えば下地バッファ層、n型層などを含み、n型層は電流の横方向経路として機能する。第2の半導体層12は、発光層(活性層)13を、n型層とp型層とで挟んだ積層構造を有する。
【0012】
半導体層15の第2の面側は凹凸形状に加工されている。その第2の面側に形成された凸部は発光層13を含む。その凸部の表面である第2の半導体層12の表面には、p側電極16が設けられている。p側電極16は、発光層13を有する領域に設けられている。
【0013】
半導体層15の第2の面側において凸部の横には、発光層13を含む第2の半導体層12がない領域が設けられ、その領域の第1の半導体層11の表面に、n側電極17が設けられている。n側電極17は、発光層13を含まない領域に設けられている。
【0014】
図4(b)に示すように、半導体層15の第2の面側において、発光層13を含む第2の半導体層12の面積は、発光層13を含まない第1の半導体層11の面積よりも広い。
【0015】
また、図5(b)に示すように、ひとつの半導体層15において、発光層13を含む領域に設けられたp側電極16の方が、発光層13を含まない領域に設けられたn側電極17よりも面積が広い。これにより、広い発光領域が得られる。なお、図5(b)に示すp側電極16及びn側電極17のレイアウトは一例であって、これに限らない。
【0016】
半導体層15の第2の面側には、第1の絶縁層(以下、単に絶縁層と言う)18が設けられている。絶縁層18は、半導体層15、p側電極16及びn側電極17を覆っている。また、絶縁層18と半導体層15との間に別の絶縁膜(例えばシリコン酸化膜)が設けられることもある。絶縁層18は、例えば、微細開口のパターニング性に優れたポリイミド等の樹脂である。あるいは、絶縁層18としてシリコン酸化物やシリコン窒化物等の無機物を用いてもよい。
【0017】
絶縁層18は、半導体層15に対する反対側に配線面18cを有する。その配線面18cには、p側配線層21とn側配線層22とが互いに離間して設けられている。
【0018】
p側配線層21は、p側電極16に達して絶縁層18に形成された第1のビア18a内にも設けられ、p側電極16と電気的に接続されている。なお、p側配線層21は必ずしも絶縁層18上に形成されなくてもよい。例えば、p側電極16上にだけp側配線層21が設けられた構造であってもよい。
【0019】
n側配線層22は、n側電極17に達して絶縁層18に形成された第2のビア18b内にも設けられ、n側電極17と電気的に接続されている。
【0020】
p側配線層21においてp側電極16に対する反対側の面には、p側金属ピラー23が設けられている。p側配線層21及びp側金属ピラー23は、本実施形態におけるp側配線部を構成する。
【0021】
n側配線層22においてn側電極17に対する反対側の面には、n側金属ピラー24が設けられている。n側配線層22及びn側金属ピラー24は、本実施形態におけるn側配線部を構成する。
【0022】
絶縁層18の配線面18cには、第2の絶縁層として樹脂層25が設けられている。樹脂層25は、p側配線層21及びn側配線層22を覆っている。また、樹脂層25は、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に充填され、p側金属ピラー23の側面とn側金属ピラー24の側面を覆っている。
【0023】
p側金属ピラー23におけるp側配線層21に対する反対側の面はp側外部端子23aとして機能する。n側金属ピラー24におけるn側配線層22に対する反対側の面はn側外部端子24aとして機能する。
【0024】
p側外部端子23a及びn側外部端子24aは、絶縁層18及び樹脂層25から露出され、実装基板に形成されたパッドに、はんだ、その他の金属、導電性材料等の接合材を介して接合される。
【0025】
同じ面に露出するp側外部端子23aとn側外部端子24aとの間の距離は、絶縁層18の配線面18c上でのp側配線層21とn側配線層22との間の距離よりも大きい。すなわち、p側外部端子23aとn側外部端子24aとは、実装基板への実装時にはんだ等によって相互に短絡しない距離を隔てて離れている。
【0026】
p側配線層21の平面サイズは、p側外部端子23aの平面サイズよりも大きい。p側配線層21は、例えば銅などの低抵抗金属を用いて形成することができる。このため、p側配線層21の面積が広いほど発光層13を含む第2の半導体層12に対して、より均一な分布で電流を供給することが可能となる。さらに、p側配線層21の熱伝導率も高くすることができ、第2の半導体層12で発生した熱を効率的に逃がすことも可能となる。
【0027】
p側電極16は、発光層13を含む領域に広がっている。したがって、複数の第1のビア18aを介してp側配線層21とp側電極16とを接続することで、発光層13への電流分布が向上し、且つ発光層13で発生した熱の放熱性も向上できる。
【0028】
n側配線層22の面積は、n側電極17の面積よりも広い。n側配線層22とn側金属ピラー24とが接触する面積は、n側配線層22とn側電極17とが接触する面積より大きい。また、n側配線層22の一部は、絶縁層18の配線面18c上を、発光層13の下に重なる位置まで延在している。
【0029】
これにより、広い領域にわたって形成された発光層13によって高い光出力を得つつ、発光層13を含まない狭い領域に設けられたn側電極17から、n側配線層22を介して、より広い引き出し電極を形成できる。
【0030】
p側配線層21とp側金属ピラー23とが接触する面積は、p側配線層21とp側電極16とが接触する面積より大きい場合もあるし、小さい場合もある。
【0031】
第1の半導体層11は、n側電極17及びn側配線層22を介して、n側外部端子24aを有するn側金属ピラー24と電気的に接続されている。発光層13を含む第2の半導体層12は、p側電極16及びp側配線層21を介して、p側外部端子23aを有するp側金属ピラー23と電気的に接続されている。
【0032】
p側金属ピラー23はp側配線層21よりも厚く、n側金属ピラー24はn側配線層22よりも厚い。p側金属ピラー23、n側金属ピラー24、樹脂層25のそれぞれの厚さは、半導体層15よりも厚い。なお、ここでの「厚さ」は、図1(a)及び(b)において上下方向の厚さを表す。
【0033】
p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの厚さは、半導体層15、p側電極16、n側電極17および絶縁層18を含む積層体の厚さよりも厚い。なお、各金属ピラー23、24のアスペクト比(平面サイズに対する厚みの比)は1以上であることに限らず、その比は1よりも小さくてもよい。すなわち、金属ピラー23、24は、その平面サイズよりも厚さが小さくてもよい。
【0034】
したがって、半導体層15を形成するために使用した後述する基板5がなくても、p側金属ピラー23、n側金属ピラー24および樹脂層25によって、半導体層15を安定して支持し、半導体発光装置10の機械的強度を高めることができる。
【0035】
p側配線層21、n側配線層22、p側金属ピラー23およびn側金属ピラー24の材料としては、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、銅を用いると、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性及び絶縁材料との優れた密着性が得られる。
【0036】
樹脂層25は、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24を補強する。樹脂層25は、実装基板と熱膨張率が同じもしくは近いものを用いるのが望ましい。そのような樹脂層25として、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを一例として挙げることができる。
【0037】
また、p側外部端子23a及びn側外部端子24aを介して、半導体発光装置10を実装基板に実装した状態において、はんだ等を介して半導体層15に加わる応力を、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24が吸収することで緩和することができる。
【0038】
第1の面15aには、微小な凹凸が形成されている。第1の面15aに対して、例えばアルカリ系溶液を使ったウェットエッチング(フロスト処理)を行い、凹凸が形成される。凹凸における凸部の高さもしくは凹部の深さは、1.0〜1.2(μm)ほどである。発光層13から放出された光の主たる取り出し面である第1の面15aに凹凸を設けることで、様々な角度で第1の面15aに入射する光を全反射させることなく第1の面15aの外側に取り出すことができる。
【0039】
また、第1の面15aには、シリコン(Si)と窒素(N)とを主成分とする無機膜30が形成されている。無機膜30として、例えばシリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン窒化膜(SiN膜)などを用いることができる。
【0040】
無機膜30は、半導体層15に使われている窒化ガリウムと、空気との間の屈折率を有する。無機膜30は、例えば屈折率が1.5〜2.4の膜である。また、無機膜30は、発光層13から放出される光に対して透明である(透過性を有する)。
【0041】
無機膜30は、第1の面15aの凹凸に沿って設けられ、第1の面15aの凹凸における凹部を埋めていない。すなわち、無機膜30の表面にも、第1の面15aの凹凸を反映させた凹凸が形成されている。
【0042】
半導体層15の周囲は絶縁層18で覆われている。絶縁層18は、半導体層15の第1の面15aと同じ方向(図1(a)及び(b)において上方)を向く第1の面を有する。その絶縁層18の第1の面にも無機膜30が設けられている。
【0043】
無機膜30上には、発光層13からの放出光に対して透明な透明体として蛍光体層27が設けられている。また、上記透明体として無機膜30上にレンズを設けてもよい。蛍光体層27は、無機膜30の表面の凹凸における凹部内にも埋め込まれる。
【0044】
蛍光体層27は、透明樹脂と、透明樹脂に分散された蛍光体とを含む。蛍光体層27は、発光層13からの放出光を吸収し波長変換光を放出可能である。このため、半導体発光装置10は、発光層13からの光と、蛍光体層27における波長変換光との混合光を放出可能である。
蛍光体層27中の透明樹脂は、無機膜30の屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有する。その透明樹脂は、例えば屈折率が1.4〜1.6の樹脂である。例えば屈折率が1.53の樹脂を上記透明樹脂として用いることができる。
【0045】
例えば、蛍光体が黄色光を発光する黄色蛍光体とすると、GaN系材料である発光層13からの青色光と、蛍光体層27における波長変換光である黄色光との混合色として、白色または電球色などを得ることができる。なお、蛍光体層27は、複数種の蛍光体(例えば、赤色光を発光する赤色蛍光体と、緑色光を発光する緑色蛍光体)を含む構成であってもよい。
【0046】
発光層13から放出された光は、主に、第1の半導体層11、第1の面15a、無機膜30および蛍光体層27を進んで、外部に放出される。
【0047】
後述するように、半導体層15を形成するときに使った基板5は第1の面15a上から除去される。このため、半導体発光装置10を低背化できる。
【0048】
そして、本実施形態では、窒化ガリウムを含む第1の面15aに、その窒化ガリウムと空気との間の屈折率を有する無機膜30を設けている。これにより、第1の面15aを通じた光の取り出し方向で、媒質の屈折率が大きく変化するのを防いで、光の取り出し効率を向上できる。
【0049】
屈折率が2.48のGaNの表面(第1の面15aに対応)に、凸部の高さもしくは凹部の深さが1.0〜1.2(μm)の凹凸を形成し、その凹凸に沿って、無機膜30として屈折率1.90のSiON膜を200(nm)の膜厚で形成し、さらにその無機膜30上に屈折率が1.41の樹脂を形成した構造について、光取り出し効率をシミュレーションしたところ、無機膜30を設けずに単に第1の面15aに凹凸を形成しただけの場合に比べて、2%程度光取り出し効率を向上できた。
【0050】
また、無機膜30は第1の面15aの凹凸に沿って形成され、無機膜30の表面にも凹凸が形成されている。このため、様々な角度で第1の面15aに入射する光を全反射させることなく第1の面15a及び無機膜30を透過させることができる。
【0051】
また、通常、半導体層15は数μm程度と薄いため、第1の面15aに凹凸を形成する際にクラックが生じたり、また半導体層15と絶縁層18との剥離が生じることがある。
【0052】
本実施形態では、第1の面15aは無機膜30でコーティングされる。したがって、第1の面15aに生じたクラックや、絶縁層18からの剥離により生じた隙間を無機膜30で覆うことができる。このため、第1の面15a上に蛍光体層27などを、ボイドを生じさせることなく、また密着性良く形成することができる。
【0053】
次に、図2(a)〜図13(b)を参照して、実施形態の半導体発光装置10の製造方法について説明する。工程を表す図面においては、ウェーハ状態における一部の領域を表す。
【0054】
図2(a)は、基板5の主面上に、第1の半導体層11及び第2の半導体層12を形成した積層体を示す。図2(b)は、図2(a)における下面図に対応する。
【0055】
基板5の主面上に第1の半導体層11が形成され、その上に発光層13を含む第2の半導体層12が形成される。窒化ガリウムを含む第1の半導体層11及び第2の半導体層12は、例えばサファイア基板上にMOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法で結晶成長させることができる。
【0056】
第1の半導体層11は、下地バッファ層、n型GaN層を含む。第2の半導体層12は、発光層(活性層)13、p型GaN層を含む。発光層13は、青、紫、青紫、紫外光などを発光するものを用いることができる。
【0057】
第1の半導体層11における基板5に接する面が、半導体層15の第1の面15aであり、第2の半導体層12の表面が半導体層15の第2の面15bである。
【0058】
次に、図示しないレジストを用いた例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で、図3(a)及びその下面図である図3(b)に示すように、ダイシング領域d1、d2に、半導体層15を貫通して基板5に達する溝を形成する。ダイシング領域d1、d2は、ウェーハ状態の基板5上で例えば格子状に形成される。ダイシング領域d1、d2に形成された溝も格子状に形成され、半導体層15を複数のチップに分離する。
【0059】
なお、半導体層15を複数に分離する工程は、後述する第2の半導体層12の選択的除去後、あるいは電極の形成後に行ってもよい。
【0060】
次に、図示しないレジストを用いた例えばRIE法で、図4(a)及びその下面図である図4(b)に示すように、第2の半導体層12の一部を除去して、第1の半導体層11の一部を露出させる。第1の半導体層11が露出された領域は、発光層13を含まない。
【0061】
次に、図5(a)及びその下面図である図5(b)に示すように、第2の面にp側電極16とn側電極17を形成する。p側電極16は、第2の半導体層12の表面に形成される。n側電極17は、第1の半導体層11の露出面に形成される。
【0062】
p側電極16及びn側電極17は、例えば、スパッタ法、蒸着法等で形成される。p側電極16とn側電極17は、どちらを先に形成してもよいし、同じ材料で同時に形成してもよい。
【0063】
p側電極16は、発光層13からの放出光に対して反射性を有する、例えば、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を含む。また、p側電極16の硫化、酸化防止のため、金属保護膜を含む構成であってもよい。
【0064】
また、p側電極16とn側電極17との間や、発光層13の端面(側面)にパッシベーション膜として、例えばシリコン窒化膜やシリコン酸化膜をCVD(chemical vapor deposition)法で形成してもよい。また、各電極と半導体層とのオーミックコンタクトをとるための活性化アニールなどは必要に応じて実施される。
【0065】
次に、図6(a)に示すように、基板5の主面上の露出している部分すべてを絶縁層18で覆った後、例えばウェットエッチングにより絶縁層18をパターニングし、絶縁層18に選択的に第1のビア18aと第2のビア18bを形成する。第1のビア18aは複数形成される。各々の第1のビア18aはp側電極16に達する。第2のビア18bはn側電極17に達する。
【0066】
絶縁層18としては、例えば、感光性ポリイミド、ベンゾシクロブテン(Benzocyclobutene)などの有機材料を用いることができる。この場合、レジストを使わずに、絶縁層18に対して直接露光及び現像が可能である。あるいは、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜などの無機膜を絶縁層18として使用してもよい。無機膜の場合、レジストをパターニングした後のエッチングによって第1のビア18a及び第2のビア18bが形成される。
【0067】
次に、絶縁層18における半導体層15に対する反対側の面である配線面18cに、図6(b)に示すように、後述するメッキのシードメタルとして使われる金属膜19を形成する。金属膜19は、第1のビア18aの内壁及び底部と、第2のビア18bの内壁及び底部にも形成される。
【0068】
金属膜19は、例えばスパッタ法で形成される。金属膜19は、例えば、絶縁層18側から順に積層されたチタン(Ti)と銅(Cu)との積層膜を含む。
【0069】
次に、図6(c)に示すように、金属膜19上に選択的にレジスト41を形成し、金属膜19を電流経路としたCu電解メッキを行う。
【0070】
これにより、図7(a)及びその下面図である図7(b)に示すように、絶縁層18の配線面18c上に、選択的にp側配線層21とn側配線層22が形成される。p側配線層21及びn側配線層22はメッキ法により同時に形成される例えば銅材料からなる。
【0071】
p側配線層21は、第1のビア18a内にも形成され、金属膜19を介してp側電極16と電気的に接続される。n側配線層22は、第2のビア18b内にも形成され、金属膜19を介してn側電極17と電気的に接続される。
【0072】
p側配線層21は、プロセス上の限界まで、n側再配線層22に近づけることができ、p側配線層21の面積を広くできる。この結果、p側配線層21とp側電極16とを複数の第1のビア18aを通じて接続させることができ、電流分布及び放熱性を向上できる。
【0073】
p側配線層21及びn側配線層22のメッキに使ったレジスト41は、溶剤もしくは酸素プラズマを使って、除去される。
【0074】
次に、図8(a)及びその下面図である図8(b)に示すように、金属ピラー形成用のレジスト42を形成する。レジスト42は、前述のレジスト41よりも厚い。なお、前の工程でレジスト41は除去せずに残し、そのレジスト41にレジスト42を重ねて形成してもよい。レジスト42には、第1の開口42aと第2の開口42bが形成されている。
【0075】
そして、レジスト42をマスクに用いて、金属膜19を電流経路としたCu電解メッキを行う。これにより、図9(a)及びその下面図である図9(b)に示すように、p側金属ピラー23とn側金属ピラー24が形成される。
【0076】
p側金属ピラー23は、レジスト42に形成された第1の開口42a内であって、p側配線層21の表面に形成される。n側金属ピラー24は、レジスト42に形成された第2の開口42b内であって、n側配線層22の表面に形成される。p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24は、メッキ法により同時に形成される例えば銅材料からなる。
【0077】
次に、レジスト42は、例えば溶剤もしくは酸素プラズマを用いて除去される(図10(a))。この後、p側金属ピラー23、n側金属ピラー24、およびp側金属ピラー23からはみ出しているp側配線層21の一部をマスクにして、金属膜19の露出している部分をウェットエッチングにより除去する。これにより、図10(b)に示すように、p側配線層21とn側配線層22との金属膜19を介した電気的接続が分断される。
【0078】
次に、図11(a)に示すように、絶縁層18に対して樹脂層25を積層させる。樹脂層25は、p側配線層21、n側配線層22、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24を覆う。
【0079】
樹脂層25は、絶縁性を有する。また、樹脂層25に、例えばカーボンブラックを含有させて、発光層からの放出光に対して遮光性を付与させてもよい。また、樹脂層25に、発光層からの放出光に対する反射性を有する粉末を含有させてもよい。
【0080】
次に、図11(b)に示すように、基板5を除去する。基板5は、例えばレーザーリフトオフ法によって除去される。具体的には、基板5の裏面側から第1の半導体層11に向けてレーザ光が照射される。レーザ光は、基板5に対して透過性を有し、第1の半導体層11に対しては吸収領域となる波長を有する。
【0081】
レーザ光が基板5と第1の半導体層11との界面に到達すると、その界面付近の第1の半導体層11はレーザ光のエネルギーを吸収して分解する。第1の半導体層11はガリウム(Ga)と窒素ガスに分解する。この分解反応により、基板5と第1の半導体層11との間に微小な隙間が形成され、基板5と第1の半導体層11とが分離する。
【0082】
レーザ光の照射を、設定された領域ごとに複数回に分けてウェーハ全体にわたって行い、基板5を除去する。第1の面15a上から基板5が除去されることで、光取り出し効率の向上を図れる。
【0083】
基板5の主面上に形成された前述した積層体は、厚い樹脂層25によって補強されているため、基板5がなくなっても、ウェーハ状態を保つことが可能である。また、樹脂層25も、配線層及び金属ピラーを構成する金属も、半導体層15に比べて柔軟な材料である。そのため、基板5上に半導体層15を形成するエピタキシャル工程で発生した大きな内部応力が、基板5の剥離時に一気に開放されても、デバイスが破壊されることを回避できる。
【0084】
基板5が除去された半導体層15の第1の面15aは洗浄される。例えば、希フッ酸等で、第1の面15aに付着したガリウム(Ga)を除去する。
【0085】
その後、例えば、KOH(水酸化カリウム)水溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等で、第1の面15aをウェットエッチングする。これにより、結晶面方位に依存したエッチング速度の違いによって、第1の面15aに凹凸が形成される(図12(a))。
【0086】
あるいは、レジストでパターニングした後にエッチングを行って、第1の面15aに凹凸を形成してもよい。第1の面15aに凹凸が形成されることで、光取り出し効率を向上できる。
【0087】
次に、図12(b)に示すように、凹凸が形成された第1の面15aに無機膜30を形成する。無機膜30は、隣り合う半導体層15間で露出している絶縁層18の表面にも形成される。
【0088】
無機膜30は、前述したように第1の面15aの凹凸に沿って形成され、その凹凸の凹部を埋め込まない。このように無機膜30を形成する方法として、例えばCVD法を用いることができる。また、樹脂部分の耐熱性を考慮して、例えば250℃以下のプラズマCVD法で無機膜30を形成することが好ましい。
【0089】
次に、図13(a)に示すように、無機膜30上、および隣り合う半導体層15間で露出している絶縁層18上に、蛍光体層27を形成する。また、必要に応じてレンズが形成される。
【0090】
例えば、蛍光体粒子が分散された液状の透明樹脂を、印刷、ポッティング、モールド、圧縮成形などの方法によって供給した後、熱硬化させて、蛍光体層27を形成することができる。透明樹脂は、発光層からの放出光及び蛍光体が発する光に対する透過性を有し、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フェニル樹脂、液状ガラスなどの材料を用いることができる。
【0091】
次に、樹脂層25の表面を研削し、図13(a)及びその下面図である図13(b)に示すように、p側外部端子23a及びn側外部端子24aを露出させる。
【0092】
その後、格子状に形成されたダイシング領域d1、d2の位置で、蛍光体層27、絶縁層18及び樹脂層25を切断し、複数の半導体発光装置10に個片化する。例えば、ダイシングブレードを用いて切断する。あるいは、レーザ照射によって、切断してもよい。例えば、蛍光体層27を下側にしてダイシングテープに貼り付けた状態で、樹脂層25側から切断していく。
【0093】
ダイシング時、基板5はすでに除去されている。さらに、ダイシング領域d1、d2には、半導体層15は存在しないため、ダイシング時に半導体層15が受けるダメージを回避することができる。また、個片化後に、半導体層15の端部(側面)が樹脂で覆われて保護された構造が得られる。
【0094】
なお、個片化された半導体発光装置10は、ひとつの半導体層15を含むシングルチップ構造でも、複数の半導体層15を含むマルチチップ構造であってもよい。
【0095】
ダイシングされる前までの前述した各工程は、ウェーハ状態で一括して行われるため、個片化された個々のデバイスごとに、配線及びパッケージングを行う必要がなく、大幅な生産コストの低減が可能になる。すなわち、個片化された状態で、すでに配線及びパッケージングが済んでいる。このため、生産性を高めることができ、その結果として価格低減が容易となる。
【0096】
なお、図14に示すように、第1の面15aに凹凸を形成することなく、第1の面15aに無機膜30を形成してもよい。この場合でも、第1の面15aを通じた光の取り出し方向で、媒質の屈折率が大きく変化するのを防いで、光の取り出し効率を向上できる。
【0097】
また、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24を設けずに、p側配線層21及びn側配線層22を実装基板のパッドに対して接合させてもよい。あるいは、p側配線層21及びn側配線層22を設けずに、p側電極16及びn側電極17を実装基板のパッドに対して接合させてもよい。また、p側配線層21及びn側配線層22を設けずに、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24をそれぞれp側電極16及びn側電極17に接続させてもよい。
【0098】
前述した蛍光体層としては、以下に例示する赤色蛍光体層、黄色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層を用いることができる。
【0099】
赤色蛍光体層は、例えば、窒化物系蛍光体CaAlSiN:Euやサイアロン系蛍光体を含有することができる。
【0100】
サイアロン系蛍光体を用いる場合、特に、
(M1−x,Ra1AlSib1c1d1・・・組成式(1)
(MはSi及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、特に、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、特に、Euが望ましい。x、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。0<x≦1、0.6<a1<0.95、2<b1<3.9、0.25<c1<0.45、4<d1<5.7)を用いることができる。
【0101】
組成式(1)で表されるサイアロン系蛍光体を用いることで、波長変換効率の温度特性が向上し、大電流密度領域での効率をさらに向上させることができる。
【0102】
黄色蛍光体層は、例えば、シリケート系蛍光体(Sr,Ca,Ba)SiO:Euを含有することができる。
【0103】
緑色蛍光体層は、例えば、ハロ燐酸系蛍光体(Ba,Ca,Mg)10(PO・Cl:Euやサイアロン系蛍光体を含有することができる。
【0104】
サイアロン系蛍光体を用いる場合、特に、
(M1−x,Ra2AlSib2c2d2・・・組成式(2)
(MはSi及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、特に、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、特に、Euが望ましい。x、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす。0<x≦1、0.93<a2<1.3、4.0<b2<5.8、0.6<c2<1、6<d2<11)を用いることができる。
【0105】
組成式(2)で表されるサイアロン系蛍光体を用いることで、波長変換効率の温度特性が向上し、大電流密度領域での効率をさらに向上させることができる。
【0106】
青色蛍光体層は、例えば、酸化物系蛍光体BaMgAl1017:Euを含有することができる。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
5…基板、10…半導体発光装置、11…第1の半導体層、12…第2の半導体層、13…発光層、15…半導体層、15a…第1の面、16…p側電極、17…n側電極、18…絶縁層、18a…第1のビア、18b…第2のビア、21…p側配線層、22…n側配線層、23…p側金属ピラー、23a…p側外部端子、24…n側金属ピラー、24a…n側外部端子、25…樹脂層、27…蛍光体層、30…無機膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、その反対側に形成された第2の面と、発光層とを有し、窒化ガリウムを含む半導体層と、
前記第2の面における前記発光層を有する領域に設けられたp側電極と、
前記第2の面における前記発光層を含まない領域に設けられたn側電極と、
前記第1の面に接して設けられ、前記窒化ガリウムの屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有し、かつシリコンと窒素とを主成分とする無機膜と、
を備えたことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記第1の面に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記無機膜は前記凹凸に沿って設けられ、前記無機膜の表面にも凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記半導体層の周囲に設けられ、前記半導体層の前記第1の面と同じ方向を向く第1の面を有する絶縁層をさらに備え、
前記絶縁層の前記第1の面にも前記無機膜が設けられていることを特徴とする請求項2記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記無機膜を介して前記半導体層の前記第1の面上に設けられ、前記発光層からの放出光に対して透明な透明体をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記透明体は、前記無機膜の屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有する請求項5記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記透明体は、透明樹脂と、前記透明樹脂に分散された蛍光体とを含むことを特徴とする請求項5または6に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記第2の面側に設けられ、前記第p側電極に通じる第1のビアと、前記n側電極に通じる第2のビアと、前記半導体層に対する反対側に形成された配線面とを有する第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の前記配線面上に設けられ、前記第1のビアを通じて前記p側電極と電気的に接続されたp側配線部と、
前記p側配線部に対して離間して、前記配線面上に設けられ、前記第2のビアを通じて前記n側電極と電気的に接続されたn側配線部と、
前記p側配線部と前記n側配線部との間に設けられた第2の絶縁層と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記p側配線部は、複数の前記第1のビアを介して、前記p側電極と接続されていることを特徴とする請求項8記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記p側配線部は、
前記第1のビア内及び前記配線面上に設けられたp側配線層と、
前記p側配線層上に設けられ、前記p側配線層よりも厚いp側金属ピラーと、
を有し、
前記n側配線部は、
前記第2のビア内及び前記配線面上に設けられたn側配線層と、
前記n側配線層上に設けられ、前記n側配線層よりも厚いn側金属ピラーと、
を有することを特徴とする請求項8または9に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記n側配線層の面積は、前記n側電極の面積よりも広いことを特徴とする請求項10記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記p側金属ピラーは、前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層から露出されたp側外部端子を有し、
前記n側金属ピラーは、前記p側外部端子と同じ面で前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層から露出されたn側外部端子を有することを特徴とする請求項10または11に記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−195345(P2012−195345A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56438(P2011−56438)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】