説明

半導体素子のゲート電源供給装置

【課題】 ゲート電源自給回路で健全なゲート電源を得ることができなかったとしても半導体素子へのゲート電源を確保できる半導体素子のゲート電源供給装置を提供することである。
【解決手段】 ゲート電源自給回路12a、12b、12cは半導体素子のオフ時の電圧を分圧してコンデンサCa、Cb、Ccに電荷を蓄積し半導体素子のゲート駆動回路13a、13b、13cにゲート電圧を供給する。一方、バックアップ電源供給回路14は、半導体素子のオフ時の電圧が低下しゲート電源自給回路12a、12bのコンデンサCa、Cbにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったとき、他のゲート電源自給回路からコンデンサCa、Cbに電荷を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子へのゲート電圧を印加するためのゲート駆動回路にゲート電源を供給する半導体素子のゲート電源供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体素子は、ゲート駆動回路よりゲート電圧を印加し、これにより半導体素子をスイッチングするようにしている。このゲート駆動回路へのゲート電源は外部の電源装置から供給するようにして確保する場合や、自己の半導体素子のオフ時電圧を利用してゲート電源を自給する場合とがある。
【0003】
一般に、ゲート駆動回路に供給するゲート電源の電圧は十数Vであるので、外部からゲート電源を確保する外部電源供給方式では、変圧器等を用いて絶縁し降圧しなければならない。一方、ゲート電源を自給するゲート電源自給方式では、自己の半導体素子で抵抗やスナバ分圧等をするだけで電圧を確保できるので、回路が簡素化できる利点がある。
【0004】
図8は従来のゲート電源自給方式の一例を示す回路図である。図8では抵抗分圧によりゲート電圧を得る場合を示している。いま、2個の半導体素子(IGBT)11a、11bが並列接続して使用されているとする。また、半導体素子11a、11bが接続された主回路は0V−900Vの回路であり、健全時においてゲート電源自給回路12から15Vのゲート電源電圧がゲート駆動回路13に供給されるものとする。
【0005】
ゲート電源自給回路12は半導体素子11a、11bのオフ時の電圧(900V)を入力して抵抗R1、R2で分圧し、抵抗R2でゲート電源電圧(15V)を得てダイオードDaを介してコンデンサC1に印加する。コンデンサC1はその電圧が抵抗R2の分圧電圧15Vと等しくなるまで電荷を充電する。
【0006】
ゲート駆動回路13は並列接続された半導体素子11a、11bに対して共通に設けられている。これは、並列接続された半導体素子11a、11bのオンオフのタイミングがほぼ同時に行えるようにするためである。ゲート駆動回路13からのゲート電圧は、それぞれゲート入力抵抗Rg1、Rg2を介して半導体素子11a、11bに入力されオンオフ制御される。
【0007】
図9は従来のゲート電源自給方式の他の一例を示す回路図である。図9ではスナバ分圧によりゲート電圧を得る場合を示している。図8に示した一例に対して、分圧抵抗R2、R1に代えて、ゲート電源自給回路12は、スナバ回路のスナバコンデンサCs1、Cs2で主回路電圧900Vを分圧して、15Vのゲート電源電圧を得るようにしている。このように、図8および図9に示した従来のゲート電源自給方式では、自己の半導体素子で抵抗やスナバ分圧等をするだけで電圧を確保できるので回路が簡素化できる。
【0008】
ここで、ゲート電源自給方式を採用し、直流電源電圧が最高の場合に給電用分圧抵抗の値を小さくなるように抵抗値を変えることにより、電圧調整回路で消費すべき電力を低減して小型化を図り、ゲート駆動用電力を安定に自給できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−178321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のものは半導体電力変換装置を立ち上げる際に、早めにゲート電源が立ち上がるようにしたものであり、半導体電力変換装置が運転状態にある場合にゲート駆動用電力を安定に自給できるようにしたものではない。
【0010】
また、従来のゲート電源自給方式を用いてゲート電圧を確保する場合には、自己の半導体素子のオフ時の電圧を抵抗やスナバ分圧等により入力することになるが、これら抵抗やスナバ分圧等の電圧異常や半導体素子の短絡故障のときは、健全な電圧をゲート電源として得ることができない。従って、正常な半導体素子のスイッチングを行うことができない。
【0011】
ゲート駆動回路にゲート電源を供給できなくなると、半導体素子はオフ状態となり主回路の電流(主電流)を流せなくなる。複数個の半導体素子を多段に直列接続して使用している場合、ゲート電源異常になるとその半導体素子はオフ状態となり主電流が遮断されるのでシステム停止になる。
【0012】
また、複数個の半導体素子を並列接続して使用している場合、1つの半導体素子が短絡故障すると、並列接続された健全な半導体素子がオフとなっても、半導体素子のオフ時電圧を確保することができない。従って、健全な半導体素子へのゲート電圧も確保できなくなる。このことから、健全な半導体素子はオフ状態となってしまう。健全な半導体素子はオフ状態となってしまうと、短絡故障の発生した半導体素子に主電流が集中して流れることになるため、半導体素子が短絡故障した場合にはシステム停止となる。
【0013】
このように、ゲート電源自給方式を採用した場合には、自己の半導体素子のオフ時の電圧異常や半導体素子の短絡故障のときは、健全な電圧をゲート電源として得ることができないので、半導体素子のオンオフ制御ができなくなってしまう。
【0014】
本発明の目的は、ゲート電源自給回路で健全なゲート電源を得ることができなったとしても半導体素子へのゲート電源を確保できる半導体素子のゲート電源供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、自己の半導体素子のオフ時の電圧を分圧してコンデンサに電荷を蓄積し自己の半導体素子のゲート駆動回路にゲート電圧を供給するゲート電源自給回路と、自己の半導体素子のオフ時の電圧が低下し前記ゲート電源自給回路のコンデンサにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったとき他の半導体素子のオフ時の電圧を分圧して前記コンデンサに電荷を蓄積し自己の半導体素子のゲート駆動回路にゲート電圧を供給するバックアップ電源供給回路とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、自己の半導体素子のオフ時の電圧を分圧してコンデンサに電荷を蓄積し自己の半導体素子のゲート駆動回路にゲート電圧を供給するゲート電源自給回路と、自己の半導体素子のオフ時の電圧が低下し前記ゲート電源自給回路のコンデンサにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったとき外部電源から前記コンデンサに電荷を供給するバックアップ電源供給回路とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、請求項1または2の発明において、前記ゲート電源自給回路は、自己の半導体素子のオフ時の電圧を抵抗分圧してコンデンサに電荷を蓄積することを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、請求項1または2の発明において、前記ゲート電源自給回路は、自己の半導体素子のオフ時の電圧をコンデンサ分圧してコンデンサに電荷を蓄積することを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、請求項1ないし4のいずれか一の発明において、前記バックアップ電源供給回路は、前記ゲート電源自給回路で分圧され前記ゲート駆動回路に入力される分圧電圧の正極側から他の半導体素子のゲート電源自給回路にバックアップ電源を供給することを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、請求項1ないし4のいずれか一の発明において、前記バックアップ電源供給回路は、前記ゲート電源自給回路で分圧され前記ゲート駆動回路に入力される分圧電圧の負極側から他の半導体素子のゲート電源自給回路にバックアップ電源を供給することを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、請求項1ないし請求項6のいずれか一の発明において、前記ゲート電源自給回路と前記バックアップ電源供給回路との切り替えは、スイッチで行うことを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、請求項1ないし請求項6のいずれか一の発明において、前記ゲート電源自給回路と前記バックアップ電源供給回路との切り替えは、双方の出力電圧の電位差で行うことを特徴とする。
【0023】
請求項9の発明に係わる半導体素子のゲート電源供給装置は、請求項1ないし6のいずれか一の発明において、前記バックアップ電源供給回路は、自己の半導体素子を駆動するに必要なゲート電圧より大きく自己の半導体素子の健全時のオフ時分圧電圧より小さい電圧を前記ゲート電源自給回路のコンデンサに供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ゲート電源自給回路のコンデンサにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったとき、他の半導体素子のオフ時の電圧を分圧して前記コンデンサに電荷を供給するバックアップ電源供給回路、または外部電源から前記コンデンサに電荷を供給するバックアップ電源供給回路を設けたので、複数個の半導体素子が並列接続された場合において1つの半導体素子が短絡故障した場合でもゲート電源を確保することができる。このため、健全な半導体素子のスイッチングができるので、短絡故障の半導体素子に集中して流れる電流を抑制できる。また、ゲート電源自給回路の故障が発生しても電源を確保できるため信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図である。この第1の実施の形態は、図8に示した従来例に対しバックアップ電源供給回路14を追加して設けたものである。図1では半導体素子の図示を省略しているが、複数個の半導体素子を並列接続した並列素子群を3段に直列接続して構成された電力変換装置の各々の半導体素子に適用した場合を示している。
【0026】
3段に半導体素子が直列接続された主回路は、第1段回路は0V−900V、第2段回路は900V−1800V、第3段回路は1800V−2700Vの回路であり、各段回路は、それぞれ900Vの電圧回路をオンオフすることになる。各段回路にはそれぞれゲート電源自給回路12a、12b、12cおよびゲート駆動回路13a、13b、13cが設けられている。健全時においてゲート電源自給回路12a、12b、12cから15Vのゲート電源電圧がゲート駆動回路13a、13b、13cにそれぞれ供給される。ゲート駆動回路13a、13b、13cは同一段に並列接続された複数個の半導体素子に対して共通に設けられ、オンオフ制御のタイミングがほぼ同じとなるようにしている。
【0027】
各々のゲート電源自給回路12a、12b、12cは、それぞれ主回路の自己の半導体素子のオフ時の電圧900V、1800V、2700Vを入力して、抵抗R11、R12、R21、R22、R31、R32で分圧し、抵抗R11、R21、R31でゲート電源電圧(15V)を得てダイオードDa1、Db1、Dc1を介してコンデンサCa、Cb、Ccに印加する。ダイオードDa1、Db1、Dc1はコンデンサCa、Cb、Ccから主回路側に電流が逆流するのを防止するための逆流防止用のダイオードである。
【0028】
コンデンサCa、Cb、Ccは、それぞれその電圧が抵抗R11、R21、R31の分圧電圧15Vと等しくなるまで電荷を充電する。このように、各々のゲート電源自給回路12a、12b、12cは、自己の半導体素子のオフ時の電圧を抵抗R11、R21、R31で分圧してコンデンサCa、Cb、Ccに電荷を蓄積し、コンデンサCa、Cb、Ccから自己の半導体素子のゲート駆動回路13a、13b、13cにゲート電圧を供給する。
【0029】
バックアップ電源供給回路14は、ゲート電源自給回路12cの電圧(1815V)を入力して抵抗R4、R3で分圧し、抵抗R4、R3との接続点PbからダイオードDb2を介してゲート電源自給回路12bのコンデンサCbに電荷を供給する。すなわち、ゲート電源自給回路12cで分圧され、ゲート駆動回路13cに入力される分圧電圧の正極側から下段の半導体素子のゲート電源自給回路12bに供給するバックアップ電源を取り出す。
【0030】
バックアップ電源供給回路14のダイオードDb2はコンデンサCbからバックアップ電源供給回路14側に電流が逆流するのを防止するための逆流防止用のダイオードである。抵抗R4、R3は、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbの両端電圧が15Vとなるように、ゲート電源自給回路12cの電圧(1815V)を分圧する。
【0031】
これにより、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbには、主回路の第2段回路900V−1800Vにおける半導体素子のオフ時の電圧を分圧した電圧と、バックアップ電源供給回路14からの電圧とが印加されることになる。つまり、バックアップ電源供給回路14の分圧電圧は、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbに対して、半導体素子のオフ時の分圧電圧と並列に入力する。従って、半導体素子のオフ時の電圧が低下し、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったときは、バックアップ電源供給回路14からコンデンサCbに電荷を供給することになる。
【0032】
同様に、バックアップ電源供給回路14はゲート電源自給回路12bの電圧(915V)を入力して抵抗R2、R1で分圧し、抵抗R2、R1との接続点PaからダイオードDa2を介してゲート電源自給回路12aのコンデンサCaに電荷を供給する。ダイオードDa2はコンデンサCaからバックアップ電源供給回路14側に電流が逆流するのを防止するための逆流防止用のダイオードである。抵抗R2、R1は、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaの両端電圧が15Vとなるように、バックアップ電源供給回路14のダイオードDb2を経由した電圧(915V)を分圧する。
【0033】
これにより、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaには、主回路の第1段回路0V−900Vにおける半導体素子のオフ時の電圧を分圧した電圧と、バックアップ電源供給回路14からの電圧とが印加されることになる。つまり、バックアップ電源供給回路14の分圧電圧は、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaに対して、半導体素子のオフ時の分圧電圧と並列に入力する。従って、半導体素子のオフ時の電圧が低下し、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったときは、バックアップ電源供給回路14からコンデンサCaに電荷を供給することになる。
【0034】
このように、バックアップ電源供給回路14は、複数個の半導体素子を多段に直列接続して構成された上段の半導体素子のゲート電源自給回路から電源の供給を受け、下段の半導体素子のオフ時の電圧が低下しそのゲート電源自給回路のコンデンサにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったときは、上段の半導体素子のオフ時の電圧を分圧して下段のコンデンサに電荷を蓄積する。これにより、最上段の半導体素子のゲート電源自給回路の異常に対してはバックアップ電源供給回路14から最上段の半導体素子に電源を供給することはできないが、下段の半導体素子のゲート駆動回路にはゲート電圧を供給できる。
【0035】
図2は本発明の第1の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の他の一例を示す回路構成図である。この一例は、図1に示した半導体素子のゲート電源供給装置に対し、スイッチ16a、16bを追加して設けたものである。
【0036】
図2に示すように、ゲート電源自給回路12cの電圧(1815V)を抵抗R4に導くラインにスイッチ16bを設けるとともに、バックアップ電源供給回路14のダイオードDb2を経由して電圧(915V)を抵抗R2に導くラインにスイッチ16aが設けられている。スイッチ16a、16bは半導体素子のオフ時の電圧が正常であり、コンデンサCa、Cb、Ccにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できる状態であるときはオフしており、半導体素子のオフ時の電圧が低下しコンデンサCa、Cb、Ccにゲート電圧を維持するだけの電荷を供給できなくなったときにオンさせる。従って、半導体素子のオフ時の電圧が正常であるときは、第2段回路のゲート電源自給回路12bのコンデンサCbや、第1段回路のゲート電源自給回路12aのコンデンサCaに対して、他のゲート電源自給回路から無駄に電荷が供給されることがなく損失を低減できる。なお、図2に示すスイッチはサイリスタ素子を例示したが、電流遮断機能を有する機械スイッチやIGBT等でもよい。
【0037】
図3は本発明の第1の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置のさらに別の他の一例を示す回路構成図である。この一例は、図2に示した半導体素子のゲート電源供給装置に対し、ゲート駆動回路に入力される分圧電圧の正極側から下段の半導体素子のゲート電源自給回路にバックアップ電源を供給することに代えて、ゲート駆動回路に入力される分圧電圧の負極側から下段の半導体素子のゲート電源自給回路にバックアップ電源を供給するようにしたものである。
【0038】
すなわち、ゲート電源自給回路12cの電圧(1815V)を主回路の第2段回路に入力すること、およびバックアップ電源供給回路14のダイオードDb2を経由した電圧(915V)を主回路の第1段回路に入力することに代えて、第3段回路の低圧側の電圧(1800V)を第2段回路に入力し、同様に第2段回路の低圧側の電圧(900V)を第1段回路に入力するようにしたものである。
【0039】
この場合、第2段回路の抵抗R4、R3はゲート電源自給回路12bのコンデンサCbの両端電圧が15Vとなるように、第3段回路の低圧側の電圧(1800V)を分圧することになり、同様に、第1段回路の抵抗R2、R1はゲート電源自給回路12aのコンデンサCaの両端電圧が15Vとなるように、第3段回路の低圧側の電圧(900V)を分圧することになる。
【0040】
なお、図1ないし図3に示した一例では、バックアップ電源供給回路14からゲート電源自給回路12a、12bのコンデンサCa、Cbへの印加電圧を得るのに抵抗R1、R3で得るようにしたが、これら抵抗R1、R3に代えてコンデンサで分圧するようにしてもよい。
【0041】
また、図1ないし図3に示した一例では、バックアップ電源供給回路14からコンデンサCa、Cbに印加する印加電圧は、主回路の半導体素子の健全時におけるオフ時分圧電圧(15V)と同じとしたが、半導体素子の健全時のオフ時分圧電圧(15V)より小さい電圧VL(<15V)とすることも可能である。この場合、電圧VLは半導体素子を駆動するに必要なゲート電圧より大きくすることはもちろんである。これにより、半導体素子のオフ時の電圧が正常である限りは、ゲート電源自給回路12a、12bのコンデンサCa、Cbに対して、主回路側から電源が供給されることになり、他のゲート電源自給回路から無駄に電荷が供給されることがなくなるので損失を低減できる。
【0042】
第1の実施の形態によれば、自己の半導体素子が最上段でない場合には、自己の半導体素子のオフ時の電圧が低下しゲート電源自給回路のコンデンサにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったときは、上段の半導体素子のオフ時の電圧を分圧してコンデンサに電荷を蓄積できるので、外部電源を設けなくても自己の半導体素子のゲート駆動回路にバックアップ電源供給回路14からゲート電圧を供給できる。また、ダイオードDa2、Db2による逆流防止機能やスイッチ16a、16bを設けることによりゲート電源の損失を低減できる。
【0043】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、バックアップ電源供給回路14に外部電源15を設け、最上段のゲート電源供給回路12cに抵抗R5、R6およびダイオードDc2を介して接続したものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0044】
バックアップ電源供給回路14は、まず、主回路の第3段回路に対して、外部電源15の電圧を入力し抵抗R6、R5で分圧し、抵抗R6、R5との接続点PcからダイオードDc2を介してゲート電源自給回路12cのコンデンサCcに電荷を供給する。ダイオードDc2はコンデンサCcからバックアップ電源供給回路14の外部電源15側に電流が逆流するのを防止するための逆流防止用のダイオードである。抵抗R6、R5は、ゲート電源自給回路12cのコンデンサCcの両端電圧が15Vとなるように外部電源15の電圧を分圧する。
【0045】
これにより、ゲート電源自給回路12cのコンデンサCcには、主回路の第3段回路1800V−2700Vにおける半導体素子のオフ時の電圧を分圧した電圧と、バックアップ電源供給回路14からの電圧とが印加されることになる。つまり、バックアップ電源供給回路14の外部電源15の分圧電圧は、ゲート電源自給回路12cのコンデンサCcに対して、半導体素子のオフ時の分圧電圧と並列に入力する。従って、半導体素子のオフ時の電圧が低下し、ゲート電源自給回路12cのコンデンサCcにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったときは、バックアップ電源供給回路14の外部電源15からR6、Dc2を経由してコンデンサCcに電荷を供給することになる。
【0046】
次に、主回路の第2段回路に対して、バックアップ電源供給回路14のダイオードDc2を経由した電圧(1815V)を入力して抵抗R4、R3で分圧し、抵抗R4、R3との接続点PbからダイオードDb2を介してゲート電源自給回路12bのコンデンサCbに電荷を供給する。ダイオードDb2はコンデンサCbからバックアップ電源供給回路14の外部電源15側に電流が逆流するのを防止するための逆流防止用のダイオードである。抵抗R4、R3は、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbの両端電圧が15Vとなるように、バックアップ電源供給回路14のダイオードDc2を経由した電圧(1815V)を分圧する。
【0047】
これにより、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbには、主回路の第2段回路900V−1800Vにおける半導体素子のオフ時の電圧を分圧した電圧と、バックアップ電源供給回路14からの電圧とが印加されることになる。つまり、バックアップ電源供給回路14の外部電源15の分圧電圧は、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbに対して、半導体素子のオフ時の分圧電圧と並列に入力する。従って、半導体素子のオフ時の電圧が低下し、ゲート電源自給回路12bのコンデンサCbにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったときは、バックアップ電源供給回路14の外部電源15からR6、Dc2、R4、Db2を経由してコンデンサCbに電荷を供給することになる。
【0048】
同様に、主回路の第1段回路に対して、バックアップ電源供給回路14のダイオードDb2を経由した電圧(915V)を入力して抵抗R2、R1で分圧し、抵抗R2、R1との接続点PaからダイオードDa2を介してゲート電源自給回路12aのコンデンサCaに電荷を供給する。ダイオードDa2はコンデンサCaからバックアップ電源供給回路14の外部電源15側に電流が逆流するのを防止するための逆流防止用のダイオードである。抵抗R2、R1は、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaの両端電圧が15Vとなるように、バックアップ電源供給回路14のダイオードDb2を経由した電圧(915V)を分圧する。
【0049】
これにより、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaには、主回路の第3段回路0V−900Vにおける半導体素子のオフ時の電圧を分圧した電圧と、バックアップ電源供給回路14からの電圧とが印加されることになる。つまり、バックアップ電源供給回路14の外部電源15の分圧電圧は、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaに対して、半導体素子のオフ時の分圧電圧と並列に入力する。従って、半導体素子のオフ時の電圧が低下し、ゲート電源自給回路12aのコンデンサCaにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったときは、バックアップ電源供給回路14の外部電源15からR6、Dc2、R4、Db2、R2、Da2を経由してコンデンサCaに電荷を供給することになる。
【0050】
このように、バックアップ電源供給回路14は、複数個の半導体素子を多段に直列接続して構成された各段の半導体素子に対し、それぞれ外部電源15の電圧を分圧してゲート電源自給回路12a、12b、12cのコンデンサCa、Cb、Ccにゲート電圧を維持するだけの電荷を供給する。
【0051】
なお、図4に示した一例では、バックアップ電源供給回路14からゲート電源自給回路12a、12b、12cのコンデンサCa、Cb、Ccへの印加電圧を得るのに抵抗R1、R3、R5で得るようにしたが、これら抵抗R1、R3、R5に代えてコンデンサで分圧するようにしてもよい。 また、図4に示した一例では、バックアップ電源供給回路14からコンデンサCa、Cb、Ccに印加する印加電圧は、主回路の半導体素子の健全時におけるオフ時分圧電圧(15V)と同じとしたが、半導体素子の健全時のオフ時分圧電圧(15V)より小さい電圧VL(<15V)とすることも可能である。この場合、電圧VLは半導体素子を駆動するに必要なゲート電圧より大きくすることはもちろんである。これにより、半導体素子のオフ時の電圧が正常である限りは、ゲート電源自給回路12a、12b、12cのコンデンサCa、Cb、Ccに対して、主回路側から電源が供給されることになり、外部電源15から無駄に電荷が供給されることがなくなる。
【0052】
第2の実施の形態によれば、主回路から供給されるゲート電圧が下がるとバックアップ電源供給回路14からの電圧によりゲート電源自給回路12a、12b、12cの電圧を維持するので、半導体素子のゲート電源を確保することができる。(第3の実施の形態)
図5は本発明の第3の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態の抵抗分圧に代えて、スナバ分圧としたものである。すなわち、第1の実施の形態のゲート電源自給回路12a、12b、12cの抵抗R11、R12、R21、R22、R31、R32に代えて、スナバ回路のコンデンサC11、C12、C21、C22、C31、C32により分圧して、ゲート電源自給回路12a、12b、12cは、半導体素子がオフ時の主回路電圧からゲート電圧を得るようにしたものである。
【0053】
また、図6は本発明の第3の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の他の一例を示す回路構成図である。この一例は、図5に示した第3の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置に対し、コンデンサCcの電荷を主回路の第2段回路に入力すること、およびバックアップ電源供給回路14のダイオードDb2を経由した電圧(915V)を主回路の第1段回路に入力することに代えて、第3段回路の低圧側の電圧(1800V)を第2段回路に入力し、同様に第2段回路の低圧側の電圧(900V)を第1段回路に入力するようにしたものである。つまり、図3に示した第2の実施の形態の抵抗分圧に代えて、スナバ分圧としたものである。
【0054】
図5及び図6に示した一例ではスイッチ16a、16bを設けたものを示しているが、バックアップ電源供給回路14からコンデンサCa、Cbに印加する印加電圧が半導体素子の健全時のオフ時分圧電圧(15V)より小さい電圧VL(<15V)とした場合にはスイッチ16a、16bを設けなくてもよい。これは、半導体素子のオフ時の電圧が正常である限りは、ゲート電源自給回路12a、12bのコンデンサCa、Cbに対して、主回路側から電源が供給されることになり、他のゲート電源自給回路から無駄に電荷が供給されることを防ぐ必要がないからである。
【0055】
また、図5及び図6に示した一例では、バックアップ電源供給回路14からゲート電源自給回路12a、12bのコンデンサCa、Cbへの印加電圧を得るのに抵抗R1、R3で得るようにしたが、これら抵抗R1、R3に代えてコンデンサで分圧するようにしてもよい。さらに、図4に示す回路構成図例と同様に、バックアップ電源供給回路14に外部電源を設け、外部電源の電圧を分圧してゲート電源自給回路12a、12b、12cのコンデンサCa、Cb、Ccにゲート電圧を維持するだけの電荷を供給するようにしてもよい。
【0056】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。この場合、スナバ回路のコンデンサを使用しているので分圧用の抵抗R11、R12、R21、R22、R31、R32を設ける必要がないので簡素化できる。
【0057】
(第4の実施の形態)
図7は本発明の第4の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図である。この第4の実施の形態は、P−N間の直流電圧を分圧した分圧電圧をダイオードDc2、Db2、Da2を介してゲート電源部17c、17b、17aにそれぞれ入力し、主回路の各段回路のゲート電源自給回路12c、12b、12aから入力される分圧電圧と突き合わせを行うようにしたものである。
【0058】
図7において、ゲート電源部17cにはP−N間の直流電圧を分圧した分圧電圧(1814V)が入力されるとともに、第3段回路の電圧(2700V)を分圧した分圧電圧(1815V)が入力される。ゲート電源部17cでは、P−N間の直流電圧の分圧電圧(1814V)と第3段回路の分圧電圧(1815V)とが付き合わされ、電圧値が高い方の第3段回路の分圧電圧(1815V)と第3段回路の低圧側の電圧(1800V)との差電圧(15V)がゲート電圧としてゲート駆動回路13cに入力される。
【0059】
ゲート電源部17bの場合も同様に、P−N間の直流電圧の分圧電圧(914V)と第2段回路の分圧電圧(915V)とが付き合わされ、電圧値が高い方の第2段回路の分圧電圧(915V)と第2段回路の低圧側の電圧(900V)との差電圧(15V)がゲート電圧としてゲート駆動回路13bに入力される。また、ゲート電源部17aの場合も同様に、P−N間の直流電圧15の分圧電圧(14V)と第1段回路の分圧電圧(15V)とが付き合わされ、電圧値が高い方の第1段回路の分圧電圧(15V)と第2段回路の低圧側の電圧(0V)との差電圧(15V)がゲート電圧としてゲート駆動回路13bに入力される。
【0060】
この状態で、半導体素子のオフ時の電圧が低下した場合には、主回路の各段回路のゲート電源自給回路12c、12b、12aから入力される分圧電圧が小さくなり、ゲート電圧(15V)を維持できなくなると、P−N間の直流電圧の分圧電圧の方が高くなり、P−N間の直流電圧からゲート電源部17c、17b、17aに電荷が供給される。これにより、自動的にP−N間の直流電圧からゲート電源部17c、17b、17aにゲート電源が供給されるようになる。
【0061】
ここで、P−N間の直流電圧と抵抗R6との間にスイッチ16(図示せず)を設け、半導体素子のオフ時の電圧が正常でありゲート電源部17c、17b、17aにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できる状態であるときはオフし、半導体素子のオフ時の電圧が低下しゲート電源部17c、17b、17aにゲート電圧を維持するだけの電荷を供給できなくなったときにオンするようにしてもよい。なお、スイッチ16は、直流電源のP−N間であれば任意の位置でよい。
【0062】
また、図7に示した一例では、バックアップ電源供給回路14からゲート電源部17c、17b、17aへの印加電圧を抵抗R6、R5、R4、R3、R2、R1で得るようにしたが、これら抵抗R6、R5、R4、R3、R2、R1に代えてコンデンサで分圧するようにしてもよい。さらに、ゲート電源自給回路12a、12b、12cの抵抗R11、R12、R21、R22、R31、R32に代えて、スナバ回路のコンデンサにより分圧するようにしてもよい。
【0063】
第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。すなわち、主回路から供給されるゲート電圧が下がるとバックアップ電源供給回路14からの電圧によりゲート電源部17c、17b、17aの電圧を維持するので、半導体素子のゲート電源を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の他の一例を示す回路構成図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置のさらに別の他の一例を示す回路構成図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の他の一例を示す回路構成図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係わる半導体素子のゲート電源供給装置の一例を示す回路構成図。
【図8】従来のゲート電源自給方式の一例を示す回路図。
【図9】従来のゲート電源自給方式の他の一例を示す回路図。
【符号の説明】
【0065】
11…半導体素子、12…ゲート電源自給回路、13…ゲート駆動回路、14…バックアップ電源供給回路、15…外部電源、16…スイッチ、17…ゲート電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己の半導体素子のオフ時の電圧を分圧してコンデンサに電荷を蓄積し自己の半導体素子のゲート駆動回路にゲート電圧を供給するゲート電源自給回路と、自己の半導体素子のオフ時の電圧が低下し前記ゲート電源自給回路のコンデンサにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったとき他の半導体素子のオフ時の電圧を分圧して前記コンデンサに電荷を蓄積し自己の半導体素子のゲート駆動回路にゲート電圧を供給するバックアップ電源供給回路とを備えたことを特徴とする半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項2】
自己の半導体素子のオフ時の電圧を分圧してコンデンサに電荷を蓄積し自己の半導体素子のゲート駆動回路にゲート電圧を供給するゲート電源自給回路と、自己の半導体素子のオフ時の電圧が低下し前記ゲート電源自給回路のコンデンサにゲート電圧を維持するだけの電荷が蓄積できなくなったとき外部電源から前記コンデンサに電荷を供給するバックアップ電源供給回路とを備えたことを特徴とする半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項3】
前記ゲート電源自給回路は、自己の半導体素子のオフ時の電圧を抵抗分圧してコンデンサに電荷を蓄積することを特徴とする請求項1または2記載の半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項4】
前記ゲート電源自給回路は、自己の半導体素子のオフ時の電圧をコンデンサ分圧してコンデンサに電荷を蓄積することを特徴とする請求項1または2記載の半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項5】
前記バックアップ電源供給回路は、前記ゲート電源自給回路で分圧され前記ゲート駆動回路に入力される分圧電圧の正極側から他の半導体素子のゲート電源自給回路にバックアップ電源を供給することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項6】
前記バックアップ電源供給回路は、前記ゲート電源自給回路で分圧され前記ゲート駆動回路に入力される分圧電圧の負極側から他の半導体素子のゲート電源自給回路にバックアップ電源を供給することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項7】
前記ゲート電源自給回路と前記バックアップ電源供給回路との切り替えは、スイッチで行うことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一記載の半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項8】
前記ゲート電源自給回路と前記バックアップ電源供給回路との切り替えは、双方の出力電圧の電位差で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一記載の半導体素子のゲート電源供給装置。
【請求項9】
前記バックアップ電源供給回路は、自己の半導体素子を駆動するに必要なゲート電圧より大きく自己の半導体素子の健全時のオフ時分圧電圧以下の電圧を前記ゲート電源自給回路のコンデンサに供給することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載の半導体素子のゲート電源供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−236134(P2007−236134A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56247(P2006−56247)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】