説明

半導体素子の冷却構造

【課題】複数の半導体素子をより均等な温度に冷却する半導体素子の冷却構造、を提供する。
【解決手段】半導体素子の冷却構造は、電流が流れる半導体素子23と、半導体素子23よりも大きい電流が流れる半導体素子21と、半導体素子23を搭載する絶縁基板38および伝熱板43と、半導体素子21を搭載する絶縁基板36および伝熱板41と、絶縁基板38および伝熱板43に対して、半導体素子23の反対側に設けられ、絶縁基板38および伝熱板43を通じて伝えられた半導体素子23の熱を放熱し、絶縁基板36および伝熱板41に対して、半導体素子21の反対側に設けられ、絶縁基板36および伝熱板41を通じて伝えられた半導体素子21の熱を放熱するヒートシンク51とを備える。絶縁基板36および伝熱板41は、それぞれ、絶縁基板38および伝熱板43よりも大きい体積を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、半導体素子の冷却構造に関し、より特定的には、車両に搭載されるパワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)に適用される半導体素子の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体素子の冷却構造に関して、たとえば、特開2009−253034号公報には、応力緩和構造を必要とせず、さらにスルーホールを用いてグランドをとることを可能とする半導体素子冷却装置が開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された半導体素子冷却装置は、内部に冷媒流路が形成された金属製の冷却器と、冷却器上に半田付けされた金属ベース基板と、金属ベース基板上に配置されるIGBTおよびダイオードとを備える。
【0003】
また、特開2009−158502号公報には、応力緩和効果の向上と、高熱伝導性の確保とを両立させることを目的とした半導体モジュールが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された半導体モジュールとしてのパワーモジュールは、半導体素子を実装するセラミック基板と、内部に冷媒流路を備えた冷却器と、セラミック基板と冷却器との間に介在し、両者の線膨張率差による応力歪を緩和する応力緩和層とを備える。パワーモジュールは、半導体素子からの熱をセラミック基板および応力緩和層を介して冷却器に放熱する。
【0004】
また、特開2008−228398号公報には、複数の電力変換器を有する電力変換装置において、各電力変換器を構成する半導体素子の温度上昇を抑制することを目的とした電力変換装置が開示されている(特許文献3)。また、特開2008−270485号公報には、過負荷等によって半導体素子から定常発熱状態より大きな熱が発生した場合に、半導体素子の急激な温度上昇を抑制し、さらに同等の性能を有するヒートマスをより少ない材料で作製することを目的とした半導体装置が開示されている(特許文献4)。
【0005】
また、特開2006−303306号公報には、定常損失が減少する温度が異なる複数の素子の冷却を素子ごとに適切に行ない、素子を最適温度で動作させることを目的としたパワーモジュールが開示されている(特許文献5)。また、特開2007−12722号公報には、パワー半導体素子の実装位置を最適に定めて冷却液の温度上昇を適切化し、冷却効率を高めることを目的としたパワー半導体モジュールが開示されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−253034号公報
【特許文献2】特開2009−158502号公報
【特許文献3】特開2008−228398号公報
【特許文献4】特開2008−270485号公報
【特許文献5】特開2006−303306号公報
【特許文献6】特開2007−12722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献に開示されるように、インバータ回路などに使用される半導体素子の作動には、非常に大きい発熱を伴うため、各種の冷却構造が採用されている。たとえば、特許文献1に開示された半導体素子冷却装置では、IGBTおよびダイオードで発生した熱が、金属ベース基板を通じて冷却器に伝わることによって放熱される。
【0008】
しかしながら、半導体素子に流れる電流量は、各半導体素子に電気的に接続されるバスバーの長さ等によって異なるため、半導体素子の発熱量にばらつきが生じる。この場合、半導体素子の駆動の制御時、半導体素子の負荷率を制限する開始温度を決定するのに際して、半導体素子間の発熱量のばらつきを加味する必要がある。これにより、半導体素子の駆動が本来よりも制限されるという懸念が生じる。
【0009】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、複数の半導体素子をより均等な温度に冷却する半導体素子の冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に従った半導体素子の冷却構造は、電流が流れる第1半導体素子と、第1半導体素子よりも大きい電流が流れる第2半導体素子と、第1半導体素子および第2半導体素子をそれぞれ搭載する第1伝熱部材および第2伝熱部材と、第1伝熱部材および第2伝熱部材に対して、第1半導体素子および第2半導体素子の反対側に設けられ、第1伝熱部材および第2伝熱部材を通じて伝えられた第1半導体素子および第2半導体素子の熱を放熱する放熱器とを備える。第2伝熱部材は、第1伝熱部材よりも大きい体積を有する。
【0011】
このように構成された半導体素子の冷却構造によれば、より大きい電流が流れる第2半導体素子の発熱量が、第1半導体素子の発熱量よりも大きくなる。これに対して、第2伝熱部材は、第1伝熱部材よりも大きい体積を有し、熱が伝わり易いため、第2半導体素子から第2伝熱部材を通じて放熱器に向かう伝熱が促進される。これにより、第1半導体素子および第2半導体素子をより均等な温度に冷却することができる。
【0012】
また好ましくは、第1半導体素子と放熱器とが並ぶ方向における第1伝熱部材の高さと、第2半導体素子と放熱器とが並ぶ方向における第2伝熱部材の高さとが、互いに等しい。第1半導体素子と放熱器とが並ぶ方向に直交する平面により切断した場合の第1伝熱部材の断面積よりも、第2半導体素子と放熱器とが並ぶ方向に直交する平面により切断した場合の第2伝熱部材の断面積の方が大きい。
【0013】
このように構成された半導体素子の冷却構造によれば、第1伝熱部材および第2伝熱部材の高さが揃っているため、第1伝熱部材および第2伝熱部材にそれぞれ第1半導体素子および第2半導体素子を搭載する際に、各半導体素子の位置決め精度を向上させることができる。
【0014】
また好ましくは、第1伝熱部材は、第1半導体素子を搭載する第1絶縁基板と、第1絶縁基板と放熱器との間に介挿される第1伝熱板とを含む。第2伝熱部材は、第2半導体素子を搭載する第2絶縁基板と、第2絶縁基板と放熱器との間に介挿される第2伝熱板とを含む。
【0015】
このように構成された半導体素子の冷却構造によれば、第1伝熱板を、第1絶縁基板と放熱器との間で生じる応力を吸収する応力緩和層として機能させ、第2伝熱板を、第2絶縁基板と放熱器との間で生じる応力を吸収する応力緩和層として機能させることができる。
【0016】
また好ましくは、第1絶縁基板および第2絶縁基板は、第1伝熱板および第2伝熱板よりも小さい熱伝導率を有する。第2絶縁基板は、第1絶縁基板よりも大きい体積を有する。
【0017】
このように構成された半導体素子の冷却構造によれば、第1伝熱部材および第2伝熱部材間の熱の伝わり易さに容易に差を設けることができる。これにより、第1半導体素子および第2半導体素子の発熱量が大きく異なる場合であっても、第1半導体素子および第2半導体素子を均熱化して冷却することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上に説明したように、この発明に従えば、複数の半導体素子をより均等な温度に冷却する半導体素子の冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。
【図2】図1中のパワー制御ユニットの一部を示す回路図である。
【図3】図1中のパワー制御ユニットに適用される半導体素子の冷却構造を示す平面図である。
【図4】図3中のIV−IV線上に沿った半導体素子の冷却構造を示す断面図である。
【図5】パワー制御ユニットの制御において、半導体素子の温度の判定基準を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0021】
図1は、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関する構成を示す回路図である。本実施の形態では、本発明における半導体素子の冷却構造が、ハイブリッド自動車に搭載されるパワー制御ユニット(PCU:Power Control Unit)に適用される。図1を参照して、まず、ハイブリッド自動車のモータジェネレータ制御に関して説明する。
【0022】
ハイブリッド自動車は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池(バッテリ)から電力供給されるモータとを動力源とする。
【0023】
ハイブリッド自動車は、バッテリユニット140と、車両用駆動装置120と、図示しないエンジンとを有する。車両用駆動装置120は、モータジェネレータMG1,MG2と、図示しないエンジンおよびモータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分配する動力分割機構126と、モータジェネレータMG1,MG2の制御を行なうパワー制御ユニット121とを有する。
【0024】
モータジェネレータMG1は、主にジェネレータとして機能し、エンジンの出力により発電を行なう。また、モータジェネレータMG1は、エンジン始動時にはスタータとして作動する。モータジェネレータMG2は、主にモータとして機能し、エンジンの出力を補
助し、駆動力を高める。また、モータジェネレータMG2は、回生制動時には発電を行ない、バッテリBを充電する。
【0025】
バッテリユニット140には端子141,142が設けられている。PCU121にはDC端子143,144が設けられている。端子141とDC端子143との間および端子142とDC端子144との間は、それぞれ、ケーブル106およびケーブル108によって電気的に接続されている。
【0026】
バッテリユニット140は、バッテリBと、バッテリBの正極と端子141との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、バッテリBの負極と端子142との間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、バッテリBの正極と端子141との間に直列に接続される、システムメインリレーSMR1および制限抵抗Rとを有する。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、後述の制御装置130から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0027】
バッテリユニット140は、バッテリBの端子間の電圧VBを測定する電圧センサ110と、バッテリBに流れる電流IBを検知する電流センサ111とを有する。バッテリBとしては、ニッケル水素、リチウムイオン等の2次電池や、燃料電池などを用いることができる。バッテリBに代わる蓄電装置として、電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタを用いることもできる。
【0028】
パワー制御ユニット121は、モータジェネレータMG1,MG2にそれぞれ対応して設けられるインバータ122,114と、インバータ122,114に共通して設けられる昇圧コンバータ112と、制御装置130とを有する。
【0029】
昇圧コンバータ112は、DC端子143,144間の電圧を昇圧する。昇圧コンバータ112は、一方端が端子143に接続されるリアクトル132と、昇圧用IPM(Intelligent Power Module)113と、平滑用コンデンサ133とを有する。昇圧用IPM113は、昇圧後の電圧VHを出力する昇圧コンバータ112の出力端子間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを有する。平滑用コンデンサ133は、昇圧コンバータ112によって昇圧された電圧を平滑化する。
【0030】
リアクトル132の他方端は、IGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続されている。ダイオードD1のカソードは、IGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードは、IGBT素子Q1のエミッタと接続されている。ダイオードD2のカソードは、IGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードは、IGBT素子Q2のエミッタと接続されている。
【0031】
インバータ114は、車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ112の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ114は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ112に戻す。このとき、昇圧コンバータ112は、降圧回路として動作するように制御装置130によって制御される。
【0032】
インバータ114は、走行用IPM118を構成するU相アーム115、V相アーム116およびW相アーム117を有する。U相アーム115,V相アーム116およびW相アーム117は、昇圧コンバータ112の出力ライン間に並列に接続されている。
【0033】
U相アーム115は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを有する。ダイオードD3のカソードは、IGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードは、IGBT素子Q3のエミッタと接続されている。ダイオードD4のカソードは、IGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードは、IGBT素子Q4のエミッタと接続されている。
【0034】
V相アーム116は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを有する。ダイオードD5のカソードは、IGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードは、IGBT素子Q5のエミッタと接続されている。ダイオードD6のカソードは、IGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードは、IGBT素子Q6のエミッタと接続されている。
【0035】
W相アーム117は、直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを有する。ダイオードD7のカソードは、IGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードは、IGBT素子Q7のエミッタと接続されている。ダイオードD8のカソードは、IGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードは、IGBT素子Q8のエミッタと接続されている。
【0036】
各相アームの中間点は、モータジェネレータMG2の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータMG2は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中性点に共に接続されている。U相コイルの他方端は、IGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続されている。V相コイルの他方端は、IGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続されている。W相コイルの他方端は、IGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続されている。
【0037】
電流センサ125は、モータジェネレータMG1に流れる電流をモータ電流値MCRT1として検出し、モータ電流値MCRT1を制御装置130に出力する。電流センサ124は、モータジェネレータMG2に流れる電流をモータ電流値MCRT2として検出し、モータ電流値MCRT2を制御装置130に出力する。
【0038】
インバータ122は、昇圧コンバータ112に対してインバータ114と並列的に接続される。インバータ122は、モータジェネレータMG1に対して昇圧コンバータ112の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。インバータ122は、昇圧コンバータ112から昇圧された電圧を受けてたとえばエンジンを始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。
【0039】
また、インバータ122は、エンジンのクランクシャフトから伝達される回転トルクによってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ112に戻す。このとき、昇圧コンバータ112は降圧回路として動作するように制御装置130によって制御される。なお、インバータ122の内部の構成はインバータ114と同様であるため、詳細な説明は繰返さない。
【0040】
制御装置130は、トルク指令値TR1,TR2、モータ回転数MRN1,MRN2、電圧VB,VL,VH、電流IBの各値、モータ電流値MCRT1,MCRT2および起動信号IGONを受ける。
【0041】
ここで、トルク指令値TR1,モータ回転数MRN1およびモータ電流値MCRT1は、モータジェネレータMG1に関するものであり、トルク指令値TR2,モータ回転数M
RN2およびモータ電流値MCRT2は、モータジェネレータMG2に関するものである。電圧VBは、バッテリBの電圧であり、電流IBは、バッテリBに流れる電流である。電圧VLは、昇圧コンバータ112の昇圧前電圧であり、電圧VHは、昇圧コンバータ112の昇圧後電圧である。
【0042】
制御装置130は、昇圧コンバータ112に対して昇圧指示を行なう制御信号PWU,降圧指示を行なう制御信号PWDおよび動作禁止を指示する信号CSDNを出力する。
【0043】
制御装置130は、インバータ114に対して昇圧コンバータ112の出力である直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI2と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ112側に戻す回生指示PWMC2とを出力する。制御装置130は、インバータ122に対して直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示PWMI1と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ112側に戻す回生指示PWMC1とを出力する。
【0044】
図2は、図1中のパワー制御ユニットの一部を示す回路図である。図2中には、図1中のパワー制御ユニット121のうちの、インバータ114のU相アーム115が示されている。
【0045】
図2を参照して、本実施の形態では、U相アーム115を構成する半導体素子として、半導体素子21および半導体素子23が設けられている。
【0046】
半導体素子21は、図1中のIGBT素子Q3およびダイオードD3に対応する半導体素子21Aと、半導体素子21Aに電気的に直列接続され、図1中のIGBT素子Q4およびダイオードD4に対応する半導体素子21Bとから構成されている。半導体素子23は、図1中のIGBT素子Q3およびダイオードD3に対応する半導体素子23Aと、半導体素子23Aに電気的に直列接続され、図1中のIGBT素子Q4およびダイオードD4に対応する半導体素子23Bとから構成されている。半導体素子21と半導体素子23とは、電気的に並列接続されている。
【0047】
半導体素子21および半導体素子23は、ともにインバータ114のU相アーム115を構成しており、モータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ112の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力するという同一の動作を行なう。このような関係を有する半導体素子21および半導体素子23であっても、各半導体素子と、図1中の昇圧コンバータ112との間を電気的に接続するバスバーの長さが異なることに起因して、半導体素子21を流れる電流Iは、半導体素子23を流れる電流Iよりも大きくなる。
【0048】
続いて、本実施の形態における半導体素子の冷却構造について詳細に説明する。図3は、図1中のパワー制御ユニットに適用される半導体素子の冷却構造を示す平面図である。図4は、図3中のIV−IV線上に沿った半導体素子の冷却構造を示す断面図である。
【0049】
図2から図4を参照して、本実施の形態における半導体素子の冷却構造は、ヒートシンク51と、伝熱板41および伝熱板43と、絶縁基板36および絶縁基板38と、半導体素子21および半導体素子23とを有する。
【0050】
ヒートシンク51は、図2中に示す平面視において、矢印210に示す方向が短手方向となり、矢印210に示す方向に直交する矢印220に示す方向が長手方向となる矩形形状を有する。
【0051】
ヒートシンク51は、ケース体52、フィン53および蓋体54が組み合わさって構成されている。ケース体52は、一方向に開口する筐体形状を有する。蓋体54は、ケース体52の開口部を塞ぐように設けられている。ケース体52および蓋体54は、互いに一体となって冷媒が流通する内部空間を形成している。フィン53は、ケース体52および蓋体54によって形成された内部空間に収容されている。ヒートシンク51は、冷媒を供給するための冷媒供給口56と、冷媒を排出するための冷媒排出口57とを有する。
【0052】
ヒートシンク51は、高い熱伝導性を有する材料により形成されている。ヒートシンク51は、絶縁基板36,38とは異なる材料により形成されている。本実施の形態では、ヒートシンク51が、アルミニウムにより形成されている。ヒートシンク51は、伝熱板41,43と同じ材料により形成されている。
【0053】
ヒートシンク51上には、図1中のインバータ114,122の走行用IPM118を構成する半導体素子と、図1中の昇圧コンバータ112の昇圧用IPM113を構成する半導体素子とが設けられている。そのうちのU相アーム115を構成する半導体素子21および半導体素子23が、図3および図4中に示されている。
【0054】
半導体素子21Aと半導体素子21Bとが、矢印210に示す方向に並んで配列され、半導体素子23Aと半導体素子23Bとが、矢印210に示す方向に並んで配列されている。半導体素子21Aと半導体素子23Aとが、矢印220に示す方向に並んで配列され、半導体素子21Bと半導体素子23Bとが、矢印220に示す方向に並んで配列されている。
【0055】
半導体素子21は、絶縁基板36および伝熱板41を介してヒートシンク51上に設けられている。半導体素子23は、絶縁基板38および伝熱板43を介してヒートシンク51上に設けられている。すなわち、ヒートシンク51は、絶縁基板36および伝熱板41に対して半導体素子21の反対側に設けられ、絶縁基板38および伝熱板43に対して半導体素子23の反対側に設けられている。
【0056】
半導体素子21は、電極部31を介して絶縁基板36に接合されている。半導体素子23は、電極部33を介して絶縁基板38に接合されている。絶縁基板36は、半導体素子21が接合される接合面36aを有し、絶縁基板38は、半導体素子23が接合される接合面38aを有する。
【0057】
絶縁基板36,38は、高い電気絶縁性を有する材料により形成されている。絶縁基板36,38は、高い熱伝導性を有する材料により形成されている。絶縁基板36,38は、セラミックスにより形成されている。本実施の形態では、絶縁基板36,38が、窒化アルミニウム(AlN)により形成されている。絶縁基板36および絶縁基板38は、それぞれ、半導体素子21および半導体素子23を車両本体側から電気的に絶縁するために設けられている。電極部31,33は、導電性材料により形成されている。本実施の形態では、電極部31,33がアルミニウムにより形成されている。
【0058】
伝熱板41は、絶縁基板36およびヒートシンク51の間に介挿されている。伝熱板43は、絶縁基板38およびヒートシンク51の間に介挿されている。
【0059】
伝熱板41,43は、高い熱伝導性を有する材料により形成されている。伝熱板41,43は、絶縁基板36,38とは異なる材料により形成されている。伝熱板41,43は、絶縁基板36,38と線膨張率の異なる材料により形成されている。絶縁基板36,38の線膨張率は、伝熱板41,43の線膨張率よりも小さい。絶縁基板36,38は、伝熱板41,43よりも小さい熱伝導率を有する。本実施の形態では、伝熱板41,43が、アルミニウムにより形成されている。伝熱板41,43は、半導体素子21,23で発生した熱をヒートシンク51に伝える伝熱機能と、線膨張率の差に起因して絶縁基板36,38とヒートシンク51との間で生じる応力を吸収する応力緩和機能とを有する。
【0060】
本実施の形態における半導体素子の冷却構造においては、伝熱板41が、伝熱板43よりも大きい体積を有し、絶縁基板36が、絶縁基板38よりも大きい体積を有する。
【0061】
より具体的には、半導体素子21とヒートシンク51とを結ぶ方向(矢印230に示す方向)における伝熱板41の高さH1と、半導体素子23とヒートシンク51とを結ぶ方向(矢印230に示す方向)における伝熱板43の高さH2とは、互いに等しい。その一方、矢印230に示す方向に直交する平面により切断した場合の伝熱板41の断面積S1が伝熱板43の断面積S2よりも大きい。また、矢印230に示す方向における絶縁基板36の高さH3と、矢印230に示す方向における絶縁基板38の高さH4とは、互いに等しい。その一方、矢印230に示す方向に直交する平面により切断した場合の絶縁基板36の断面積S3が絶縁基板38の断面積S4よりも大きい。矢印230に示す方向に直交する平面により切断した場合に、伝熱板41および絶縁基板36における最小断面積は、伝熱板43および絶縁基板38における最小断面積よりも大きい。
【0062】
このような構成により、本実施の形態では、ヒートシンク51上における絶縁基板36の接合面36aの高さと、絶縁基板38の接合面38aの高さとが、互いに等しくなる(H1+H3=H2+H4)。接合面36aおよび接合面38aの高さを揃えることによって、絶縁基板36,38に対する半導体素子21,23の接合時、半導体素子21,23を接合面36aおよび接合面38a上に精度よく位置決めすることができる。
【0063】
半導体素子21で発生した熱は、電極部31、絶縁基板36および伝熱板41を挙げた順に伝わってヒートシンク51に達する。半導体素子23で発生した熱は、電極部33、絶縁基板38および伝熱板43を挙げた順に伝わってヒートシンク51に達する。一方、冷媒供給口56を通じて供給された冷却油などの冷媒がヒートシンク51内を流通する。この間、冷媒とフィン53との間で熱交換が行なわれることによって、半導体素子21,23で発生した熱が放熱される。受熱により温度上昇した冷媒は、冷媒排出口57を通じてヒートシンク51から排出される。
【0064】
本実施の形態では、半導体素子21を流れる電流Iが、半導体素子23を流れる電流Iよりも大きくなるため、半導体素子21の発熱量が、半導体素子23の発熱量よりも大きくなる。これに対して、半導体素子21を搭載する絶縁基板36および伝熱板41は、それぞれ、半導体素子23を搭載する絶縁基板38および伝熱板43よりも大きい体積を有し、熱が伝わり易い特性を有する。このため、半導体素子21から絶縁基板36および伝熱板41を通じてヒートシンク51に向かう伝熱が促進され、半導体素子21および半導体素子23を均熱化して冷却することができる。
【0065】
図5は、パワー制御ユニットの制御において、半導体素子の温度の判定基準を示すグラフである。図5を参照して、グラフ中において、Aは、センサによって測定される、ヒートシンク51における冷媒温度に対応し、Bはヒートシンク51の熱抵抗に対応し、Cは経年劣化を考慮した余裕分に対応する。また、Dは半導体素子21,23の温度の素子間ばらつきに対応し、Eはセンサのばらつきに対応する。
【0066】
パワー制御ユニット121を制御する図1中の制御装置130においては、半導体素子の温度を随時検出し、温度がある値を超えた場合に半導体素子の負荷率を制限する制御がなされる。この負荷率の制限を開始する温度は、冷媒温度A、ヒートシンク51の熱抵抗Bおよび経年劣化を考慮した余裕分Cを加えた温度と、半導体素子の設計上の温度上限値TからセンサばらつきEおよび素子間ばらつきDを差し引いて温度との間に設定される。
【0067】
本実施の形態における半導体素子の冷却構造では、半導体素子21および半導体素子23を均熱化して冷却することにより、素子間ばらつきDを低減させることができる。これにより、半導体素子の負荷率の制限を開始する温度をより高く設定することが可能となる(T>T)。
【0068】
以上に説明した、この発明の実施の形態における半導体素子の冷却構造は、電流が流れる第1半導体素子としての半導体素子23と、半導体素子23よりも大きい電流が流れる第2半導体素子としての半導体素子21と、半導体素子23を搭載する第1伝熱部材としての絶縁基板38および伝熱板43と、半導体素子21を搭載する第2伝熱部材としての絶縁基板36および伝熱板41と、絶縁基板38および伝熱板43に対して、半導体素子23の反対側に設けられ、絶縁基板38および伝熱板43を通じて伝えられた半導体素子23の熱を放熱し、絶縁基板36および伝熱板41に対して、半導体素子21の反対側に設けられ、絶縁基板36および伝熱板41を通じて伝えられた半導体素子21の熱を放熱する放熱器としてのヒートシンク51とを備える。絶縁基板36および伝熱板41は、それぞれ、絶縁基板38および伝熱板43よりも大きい体積を有する。
【0069】
このように構成された、この発明の実施の形態における半導体素子の冷却構造によれば、電流アンバランスに起因して発熱量が異なる半導体素子21および半導体素子23を、より均等な温度に冷却することができる。これにより、半導体素子の負荷率の制限を開始する温度を高く設定することが可能となり、ハイブリッド自動車の動力性能を向上させることができる。
【0070】
本実施の形態では、絶縁基板36および伝熱板41を、それぞれ、絶縁基板38および伝熱板43よりも大きい体積としたが、伝熱板41および伝熱板43を互いに等しい体積とし、絶縁基板36を絶縁基板38よりも大きい体積とする構成としてもよいし、絶縁基板36および絶縁基板38を互いに等しい体積とし、伝熱板41を伝熱板43よりも大きい体積とする構成としてもよい。この際、絶縁基板36,38は、伝熱板41,43よりも小さい熱伝導率を有するため、絶縁基板36を絶縁基板38よりも大きい体積とすることにより、比較的、熱の伝わり易さに差を設けることが容易である。
【0071】
なお、本発明を、燃料電池と2次電池とを動力源とする燃料電池ハイブリッド車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に搭載されるパワー制御ユニットに適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、2次電池の使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。また、本発明は、パワー制御ユニットに限られず、半導体素子の冷却が必要となる各種装置に適用される。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明は、主に、半導体素子を搭載する各種装置の冷却構造に適用される。
【符号の説明】
【0074】
21,21A,21B,23,23A,23B 半導体素子、31,33 電極部、36,38 絶縁基板、36a,38a 接合面、41,43 伝熱板、51 ヒートシンク、52 ケース体、53 フィン、54 蓋体、56 冷媒供給口、57 冷媒排出口、106,108 ケーブル、110 電圧センサ、111 電流センサ、112 昇圧コンバータ、113 昇圧用IPM、114,122 インバータ、115 U相アーム、116 V相アーム、117 W相アーム、118 走行用IPM、120 車両用駆動装置、121 パワー制御ユニット、124,125 電流センサ、126 動力分割機構、130 制御装置、132 リアクトル、133 平滑用コンデンサ、140 バッテリユニット、141,142 端子、143,144 DC端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる第1半導体素子と、
前記第1半導体素子よりも大きい電流が流れる第2半導体素子と、
前記第1半導体素子および前記第2半導体素子をそれぞれ搭載する第1伝熱部材および第2伝熱部材と、
前記第1伝熱部材および前記第2伝熱部材に対して、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の反対側に設けられ、前記第1伝熱部材および前記第2伝熱部材を通じて伝えられた前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の熱を放熱する放熱器とを備え、
前記第2伝熱部材は、前記第1伝熱部材よりも大きい体積を有する、半導体素子の冷却構造。
【請求項2】
前記第1半導体素子と前記放熱器とが並ぶ方向における前記第1伝熱部材の高さと、前記第2半導体素子と前記放熱器とが並ぶ方向における前記第2伝熱部材の高さとが、互いに等しく、
前記第1半導体素子と前記放熱器とが並ぶ方向に直交する平面により切断した場合の前記第1伝熱部材の断面積よりも、前記第2半導体素子と前記放熱器とが並ぶ方向に直交する平面により切断した場合の前記第2伝熱部材の断面積の方が大きい、請求項1に記載の半導体素子の冷却構造。
【請求項3】
前記第1伝熱部材は、前記第1半導体素子を搭載する第1絶縁基板と、前記第1絶縁基板と前記放熱器との間に介挿される第1伝熱板とを含み、
前記第2伝熱部材は、前記第2半導体素子を搭載する第2絶縁基板と、前記第2絶縁基板と前記放熱器との間に介挿される第2伝熱板とを含む、請求項1または2に記載の半導体素子の冷却構造。
【請求項4】
前記第1絶縁基板および前記第2絶縁基板は、前記第1伝熱板および前記第2伝熱板よりも小さい熱伝導率を有し、
前記第2絶縁基板は、前記第1絶縁基板よりも大きい体積を有する、請求項3に記載の半導体素子の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−16634(P2013−16634A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148279(P2011−148279)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】