説明

半導体装置、及び半導体装置の作製方法

【課題】用途に合わせて要求される電気的特性を備えた酸化物半導体層を用いたトランジスタ、及び該トランジスタを有する半導体装置を提供する。
【解決手段】少なくともゲート電極層、ゲート絶縁膜、及び半導体層が順に積層されたボトムゲート型のトランジスタにおいて、該半導体層としてエネルギーギャップの異なる少なくとも2層の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を用いる。酸化物半導体積層には、酸素又は/及びドーパントを導入してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、トランジスタの活性層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む非晶質酸化物を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−165528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トランジスタのオン特性(例えば、オン電流や電界効果移動度)が向上すると、半導体装置において入力信号に対する高速応答、高速駆動が可能になり、より高性能な半導体装置が実現できる。一方、半導体装置の低消費電力化には、トランジスタのオフ電流が十分低いことが求められる。このように、トランジスタに求められる電気特性は用途や目的に合わせて様々であり、該電気特性をより精度よく制御することは有益である。
【0007】
酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現するトランジスタ構造およびその作製方法を課題の一つとする。
【0008】
トランジスタは、ゲート電圧が0Vにできるだけ近い正のしきい値電圧でチャネルが形成されることが望ましい。トランジスタのしきい値電圧値がマイナスであると、ゲート電圧が0Vでもソース電極とドレイン電極の間に電流が流れる、所謂ノーマリーオンとなりやすい。LSIやCPUやメモリにおいては、回路を構成するトランジスタの電気特性が重要であり、この電気特性が半導体装置の消費電力を左右する。特に、トランジスタの電気特性のうち、しきい値電圧(Vth)が重要である。電界効果移動度が高くとも、しきい値電圧値がマイナスであると、回路として制御することが困難である。負の電圧状態でもチャネルが形成されてドレイン電流が流れるトランジスタは、半導体装置の集積回路に用いるトランジスタとしては不向きである。
【0009】
また、材料や作製条件によっては、作製されたトランジスタがノーマリーオフとならない場合であっても、ノーマリーオフの特性に近づけることが重要であり、しきい値電圧値がマイナスである、所謂ノーマリーオンであっても、トランジスタのしきい値をゼロに近づける構成およびその作製方法を提供することも課題の一つとする。
【0010】
また、より高性能な半導体装置を実現するため、トランジスタのオン特性(例えば、オン電流や電界効果移動度)を向上させて、半導体装置の高速応答、高速駆動を実現する構成およびその作製方法を提供することも課題の一つとする。
【0011】
上記のように、用途に合わせて要求される電気的特性を備えた酸化物半導体層を用いたトランジスタ、及び該トランジスタを有する半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0012】
上記課題のうち、少なくともいずれか一を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
少なくともゲート電極層、ゲート絶縁膜、及び半導体層が順に積層されたボトムゲート構造のトランジスタにおいて、該半導体層としてエネルギーギャップの異なる少なくとも2層の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を用いる。
【0014】
酸化物半導体積層を第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層の積層構造とする場合、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層は、それぞれの有するエネルギーギャップが異なればよく、その積層順は限定されず、ゲート絶縁膜と接する方をエネルギーギャップが大きい層としてもよいし、エネルギーギャップが小さい層としてもよい。
【0015】
具体的には、酸化物半導体積層において、一方の酸化物半導体層のエネルギーギャップを3eV以上とし、他方の酸化物半導体層のエネルギーギャップを3eV未満とする。なお、本明細書において、「エネルギーギャップ」という用語は、「バンドギャップ」や、「禁制帯幅」と同じ意味で用いている。
【0016】
酸化物半導体積層を3層以上の積層構造とする場合、すべての酸化物半導体層同士が異なるエネルギーギャップを有する構造であってもよいし、ほぼ同じエネルギーギャップを有する酸化物半導体層を複数酸化物半導体積層中に用いてもよい。
【0017】
例えば、酸化物半導体積層を第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層の積層構造において、第2の酸化物半導体層のエネルギーギャップを第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層のエネルギーギャップより小さくする。または、第2の酸化物半導体層の電子親和力を、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層の電子親和力よりも大きくする。この場合、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層のエネルギーギャップと電子親和力とは同等とすることができる。エネルギーギャップの小さい第2の酸化物半導体層を、エネルギーギャップの大きい第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層により挟む構造とすることによって、よりトランジスタのオフ電流(リーク電流)を低減する効果が得られる。ここで、電子親和力とは真空準位と酸化物半導体の伝導帯とのエネルギー差を表す。
【0018】
酸化物半導体層を用いたトランジスタにおいて、該酸化物半導体層のエネルギーギャップは、トランジスタの電気特性に影響を与える。例えば、酸化物半導体層を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体層のエネルギーギャップが小さいと、オン特性(例えば、オン電流や電界効果移動度)が向上し、一方、酸化物半導体層のエネルギーギャップが大きいと、オフ電流が低減できる。
【0019】
単層の酸化物半導体層では該酸化物半導体層のエネルギーギャップの大きさで、トランジスタの電気特性はほぼ決定してしまうため、所望の電気的特性をトランジスタに付与することは難しい。
【0020】
異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層を用いた酸化物半導体積層を用いることによって、トランジスタの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタに付与することが可能となる。
【0021】
従って、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【0022】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、ゲート電極層と重なるゲート絶縁膜上にエネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層と、酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層とを有する半導体装置である。
【0023】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、ゲート電極層と重なるゲート絶縁膜上に第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層を順に含む酸化物半導体積層と、酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層とを有し、第2の酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層のエネルギーギャップより小さいエネルギーギャップを有する半導体装置である。
【0024】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、ゲート絶縁膜、ソース電極層、及びドレイン電極層上にゲート電極層と重なって、エネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層とを有する半導体装置である。
【0025】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、ゲート電極層と重なるゲート絶縁膜、ソース電極層、及びドレイン電極層上に第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層を順に含む酸化物半導体積層とを有し、第2の酸化物半導体層は、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層のエネルギーギャップより小さいエネルギーギャップを有する半導体装置である。
【0026】
酸化物半導体積層において、上層の酸化物半導体層が下層の酸化物半導体層の上面及び側面を覆う構造としてもよい。例えば上記構成において、第2の酸化物半導体層により第1の酸化物半導体層の上面及び側面を覆う構造、又は第3の酸化物半導体層により第2の酸化物半導体層の上面、及び第2の酸化物半導体層(若しくは第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層)の側面を覆う構造とすることができる。
【0027】
また、酸化物半導体積層において、ソース電極層またはドレイン電極層と重畳しない領域は、ソース電極層またはドレイン電極層と重畳する領域よりも高い酸素濃度を有する構成としてもよい。
【0028】
また、酸化物半導体積層において、ゲート電極層と重畳しない領域は、ドーパントを含む構成とし、低抵抗領域を有してもよい。
【0029】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート電極層と重なるゲート絶縁膜上にエネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を形成し、酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0030】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート電極層と重なるゲート絶縁膜上に第1の酸化物半導体層を形成し、第1の酸化物半導体層上に第1の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが小さい第2の酸化物半導体層を形成し、第2の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが大きい第3の酸化物半導体層を成膜して酸化物半導体積層を形成し、酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0031】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、ゲート電極層と重なるゲート絶縁膜、ソース電極層、及びドレイン電極層上にエネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0032】
本明細書で開示する発明の構成の一形態は、ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、ゲート電極層と重なるゲート絶縁膜、ソース電極層、及びドレイン電極層上に第1の酸化物半導体層を形成し、第1の酸化物半導体層上に第1の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが小さい第2の酸化物半導体層を形成し、第2の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが大きい第3の酸化物半導体層を成膜して酸化物半導体積層を形成する半導体装置の作製方法である。
【0033】
また、酸化物半導体積層に選択的にドーパントを導入し、酸化物半導体積層においてチャネル形成領域を挟んでチャネル形成領域より抵抗が低く、ドーパントを含む低抵抗領域を形成してもよい。ドーパントは、酸化物半導体積層の導電率を変化させる不純物である。ドーパントの導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0034】
チャネル長方向にチャネル形成領域を挟んで低抵抗領域を含む酸化物半導体積層を有することにより、該トランジスタはオン特性(例えば、オン電流及び電界効果移動度)が高く、高速動作、高速応答が可能となる。
【0035】
また、酸化物半導体層に水素若しくは水を放出させる加熱処理(脱水化又は脱水素化処理)を行ってもよい。脱水化又は脱水素化処理は、混合領域を形成する加熱処理と兼ねることができる。また、酸化物半導体層として結晶性酸化物半導体層を用いる場合、混合領域を形成する加熱処理を、結晶化のための加熱処理と兼ねることができる。
【0036】
また、脱水化又は脱水素化処理によって、酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素が同時に脱離して減少してしまうおそれがある。酸化物半導体膜において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在し、該酸素欠損に起因してトランジスタの電気的特性変動を招くドナー準位が生じてしまう。
【0037】
よって、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層に、酸素を供給することが好ましい。酸化物半導体層へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0038】
例えば、酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含む酸化物絶縁膜を酸化物半導体層と接して設けることによって、該酸化物絶縁膜から酸化物半導体層へ酸素を供給することができる。上記構成において、脱水化又は脱水素化処理として加熱処理を行った酸化物半導体層及び酸化物絶縁膜を少なくとも一部が接した状態で加熱処理を行うことによって酸化物半導体層への酸素の供給を行ってもよい。
【0039】
また、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0040】
さらに、好ましくはトランジスタに設けられる酸化物半導体層は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている膜とするとよい。この場合、酸素の含有量は、酸化物半導体の化学量論的組成比における含有量を超える程度とする。あるいは、酸素の含有量は、単結晶の場合の酸素の量を超える程度とする。酸化物半導体の格子間に酸素が存在する場合もある。
【0041】
水素若しくは水を酸化物半導体から除去し、不純物が極力含まれないように高純度化し、酸素を供給して酸素欠損を補填することによりI型(真性)の酸化物半導体、又はI型(真性)に限りなく近い酸化物半導体とすることができる。そうすることにより、酸化物半導体のフェルミ準位(Ef)を真性フェルミ準位(Ei)と同じレベルにまですることができる。よって、該酸化物半導体層をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0042】
本発明の一形態は、トランジスタ若しくはトランジスタを含んで構成される回路を有する半導体装置に関する。例えば、酸化物半導体でチャネル形成領域が形成される、トランジスタ若しくはトランジスタを含んで構成される回路を有する半導体装置に関する。例えば、LSIや、CPUや、電源回路に搭載されるパワーデバイスや、メモリ、サイリスタ、コンバータ、イメージセンサなどを含む半導体集積回路、液晶表示パネルに代表される電気光学装置や発光素子を有する発光表示装置を部品として搭載した電子機器に関する。
【発明の効果】
【0043】
異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層を用いた酸化物半導体積層を用いることによって、トランジスタの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタに付与することが可能となる。
【0044】
従って、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】半導体装置の一形態を説明する図。
【図2】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図3】半導体装置の一形態を説明する図。
【図4】半導体装置の一形態を説明する図。
【図5】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図6】半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を説明する図。
【図7】半導体装置の一形態を説明する図。
【図8】半導体装置の一形態を説明する図。
【図9】半導体装置の一形態を説明する図。
【図10】半導体装置の一形態を説明する図。
【図11】半導体装置の一形態を説明する図。
【図12】半導体装置の一形態を説明する図。
【図13】半導体装置の一形態を説明する図。
【図14】半導体装置の一形態を説明する図。
【図15】半導体装置の一形態を説明する図。
【図16】電子機器を示す図。
【図17】実施例1における試料のTEM写真図およびその模式図。
【図18】実施例1における試料のTEM写真図およびその模式図。
【図19】イオン化ポテンシャルを示す図。
【図20】エネルギーバンド図を示す図。
【図21】イオン化ポテンシャルを示す図。
【図22】エネルギーバンド図を示す図。
【図23】トランジスタのオフ電流値を示す図。
【図24】トランジスタの電界効果移動度を示す図。
【図25】トランジスタのオフ電流値を示す図。
【図26】トランジスタの電界効果移動度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0047】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、図1及び図3を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
【0048】
トランジスタはチャネル形成領域が1つ形成されるシングルゲート構造でも、2つ形成されるダブルゲート構造もしくは3つ形成されるトリプルゲート構造であってもよい。また、チャネル形成領域の上下にゲート絶縁膜を介して配置された2つのゲート電極層を有する、デュアルゲート型でもよい。
【0049】
図1(A)(B)に示すトランジスタ440a、トランジスタ440bは、ボトムゲート構造を有する逆スタガ型のトランジスタの例である。
【0050】
図1(A)(B)に示すように、トランジスタ440a、トランジスタ440bは、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ440a、トランジスタ440b上には、絶縁膜407が形成されている。
【0051】
なお、図1において、第1の酸化物半導体層101と第2の酸化物半導体層102の界面を点線で図示しているが、これは酸化物半導体積層403を模式的に示したものである。材料や成膜条件や加熱処理によっては、第1の酸化物半導体層101と第2の酸化物半導体層102との界面が不明確になる場合もある。不明確になる場合、異なる複数の酸化物半導体層の混合領域又は混合層とよぶことのできる箇所が形成されることもある。これは本明細書の他の図面においても同様である。
【0052】
例えば、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の間に混合領域105を有するトランジスタ449を図3(C)に示す。
【0053】
トランジスタ449の酸化物半導体積層403において、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の界面は不明確であり、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の間に混合領域105を有する。なお、界面が不明確とは、例えば高分解能透過電子顕微鏡を用いた酸化物半導体積層403の断面観察(TEM像)において、積層する酸化物半導体層の間に明確で連続的な線状の界面が確認できない場合を指す。
【0054】
混合領域105は、積層する第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102に含まれる元素が混合する領域であり、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102とは少なくとも構成する元素の組成が異なる。例えば、酸化物半導体積層403をインジウム、スズ、及び亜鉛を含む第1の酸化物半導体層及びインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む第2の酸化物半導体層の積層構造とする場合、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層との間に、インジウム、スズ、ガリウム、及び亜鉛を含む混合領域105を形成することができる。また、第1の酸化物半導体層101と第2の酸化物半導体層102と含まれる元素は同じでも、その組成(組成比)が異なる混合領域105を形成することができる。よって、混合領域105の有するエネルギーギャップも、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102のエネルギーギャップとは異なり、混合領域105のエネルギーギャップは、第1の酸化物半導体層101のエネルギーギャップ及び第2の酸化物半導体層102のエネルギーギャップの間の値となる。
【0055】
従って、混合領域105を設けることで、酸化物半導体積層403はエネルギーバンド図において連続接合となり、積層する第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の界面における散乱を抑制することができる。界面散乱を抑制することができるため、混合領域105が設けられた酸化物半導体積層403を用いたトランジスタ449は、電界効果移動度を向上させることができる。
【0056】
混合領域105を設けることでエネルギーバンド図において、第1の酸化物半導体層101と第2の酸化物半導体層102との間に勾配を形成できる。該勾配は、複数段の階段状であってもよい。
【0057】
なお、第1の酸化物半導体層101、混合領域105、及び第2の酸化物半導体層102の界面を点線で図示しているが、これは酸化物半導体積層403において界面が不明確(不明瞭)であることを模式的に示したものである。
【0058】
混合領域105は、複数の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層403に加熱処理を行うことによって形成することができる。加熱処理は、積層する酸化物半導体層中の元素が熱により拡散できる温度とし、かつ積層する酸化物半導体層が酸化物半導体積層全領域において、組成(組成比)が均一な混合領域とならない条件で行う。
【0059】
酸化物半導体積層403において、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102は、それぞれの有するエネルギーギャップが異なればよく、その積層順は限定されない。
【0060】
具体的には、酸化物半導体積層403において、一方の酸化物半導体層のエネルギーギャップを3eV以上とし、他方の酸化物半導体層のエネルギーギャップを3eV未満とする。
【0061】
図1(A)に示すトランジスタ440aは、第1の酸化物半導体層101より第2の酸化物半導体層102の方が、該エネルギーギャップが大きい例である。本実施の形態では、トランジスタ440aにおける第1の酸化物半導体層101としてIn−Sn−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ2.6eV〜2.9eV、代表的には2.8eV)、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Ga−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ3.0eV〜3.4eV、代表的には3.2eV)を用いる。
【0062】
一方、図1(B)に示すトランジスタ440bは、第1の酸化物半導体層101より第2の酸化物半導体層102の方が、該エネルギーギャップが小さい例である。本実施の形態では、トランジスタ440bにおける第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ3.2eV)、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Sn−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ2.8eV)を用いる。
【0063】
このように、酸化物半導体積層403において、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102は、ゲート絶縁膜402と接する方をエネルギーギャップが大きい層としてもよいし、エネルギーギャップが小さい層としてもよい。
【0064】
図4(A)に酸化物半導体積層403として第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103の3層構造の積層を用いたトランジスタ480を示す。
【0065】
トランジスタ480は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ480上には、絶縁膜407が形成されている。
【0066】
トランジスタ480の酸化物半導体積層403において、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103のエネルギーギャップは全て同じではなく、少なくとも2種類の異なる値のエネルギーギャップを含む。
【0067】
酸化物半導体積層403を3層以上の積層構造とする場合、すべての酸化物半導体層同士が異なるエネルギーギャップを有する構造であってもよいし、ほぼ同じエネルギーギャップを有する酸化物半導体層を複数酸化物半導体積層403中に用いてもよい。
【0068】
また、半導体装置の他の一形態として図9(A)にトランジスタ410を示す。トランジスタ410は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型トランジスタともいう。
【0069】
図9(A)に示すように、トランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403、絶縁膜427、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ410上には、絶縁膜409が形成されている。
【0070】
絶縁膜427は、ゲート電極層401と重畳する酸化物半導体積層403上に設けられており、チャネル保護膜として機能する。
【0071】
絶縁膜427は絶縁膜407と同様な材料及び方法で形成すればよく、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜の単層又は積層を用いることができる。
【0072】
酸化物半導体積層403と接する絶縁膜427(絶縁膜427が積層構造であった場合、酸化物半導体積層403と接する膜)を、酸素を多く含む状態とすると、酸化物半導体積層403へ酸素を供給する供給源として好適に機能させることができる。
【0073】
なお、絶縁膜409は絶縁膜407と同様な材料及び方法を用いて形成することができる。
【0074】
また、半導体装置の他の一形態として図10(A)にボトムゲート構造のトランジスタ430を示す。
【0075】
図10(A)に示すように、トランジスタ430は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられたゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403を有する。トランジスタ430上には、絶縁膜407が形成されている。
【0076】
トランジスタ430は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上にエネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403が設けられる構造である。
【0077】
酸化物半導体積層403(第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、第3の酸化物半導体層103)に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を有することが好ましい。
【0078】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0079】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0080】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0081】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、InSnO(ZnO)(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0082】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0083】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0084】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより移動度を上げることができる。
【0085】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成のrだけ近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)+(b−B)+(c−C)≦rを満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0086】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0087】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0088】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0089】
なお、Raは、JIS B0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている算術平均粗さを曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」で表現でき、以下の式にて定義される。
【0090】
【数1】

【0091】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標((x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面に投影した長方形の面積をS、指定面の平均高さをZとする。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
【0092】
酸化物半導体積層403(第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、第3の酸化物半導体層103)として、結晶を含み、結晶性を有する酸化物半導体層(結晶性酸化物半導体層)を用いることができる。結晶性酸化物半導体層における結晶状態は、結晶軸の方向が無秩序な状態でも、一定の配向性を有する状態であってもよい。
【0093】
例えば、結晶性酸化物半導体層として、表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体層を用いることができる。
【0094】
表面に概略垂直なc軸を有している結晶を含む酸化物半導体層は、単結晶構造ではなく、非晶質構造でもない構造であり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor; CAAC−OSともいう)膜である。
【0095】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0096】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0097】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0098】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0099】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0100】
c軸配向を有した結晶性酸化物半導体層を得る方法としては、3つ挙げられる。1つ目は、成膜温度を200℃以上500℃以下として酸化物半導体層の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法である。2つ目は、膜厚を薄く成膜した後、200℃以上700℃以下の加熱処理を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法である。3つ目は、一層目の膜厚を薄く成膜した後、200℃以上700℃以下の加熱処理を行い、2層目の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法である。
【0101】
第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、第3の酸化物半導体層103の膜厚は、1nm以上10nm以下(好ましくは5nm以上30nm以下)とし、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。また、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、第3の酸化物半導体層103は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0102】
酸化物半導体層を用いたトランジスタにおいて、該酸化物半導体層のエネルギーギャップは、トランジスタの電気特性に影響を与える。例えば、酸化物半導体層を用いたトランジスタにおいて、酸化物半導体層のエネルギーギャップが小さいと、オン特性(例えば、オン電流や電界効果移動度)が向上し、一方、酸化物半導体層のエネルギーギャップが大きいと、オフ電流が低減できる。
【0103】
異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層を用いた酸化物半導体積層403を用いることによって、トランジスタ440a、トランジスタ440b、トランジスタ480の電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタ440a、トランジスタ440b、トランジスタ480に付与することが可能となる。
【0104】
例えば、図4(A)に示すトランジスタ480の酸化物半導体積層403において、第2の酸化物半導体層102のエネルギーギャップを第1の酸化物半導体層101及び第3の酸化物半導体層103のエネルギーギャップより小さくする。この場合、第1の酸化物半導体層101及び第3の酸化物半導体層103のエネルギーギャップはほぼ同じとすることができる。
【0105】
図4(C)に、図4(A)における膜厚方向(E1−E2間)のエネルギーバンド図を示す。トランジスタ480では、図4(C)に示すエネルギーバンド図となるように、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103の材料を選択することが好ましい。ただし、伝導帯に埋め込みチャネルが形成されれば十分な効果が得られるため、必ずしも図4(C)のように伝導帯と価電子帯の両方に凹部を有するエネルギーバンド図に限定しなくともよく、例えば伝導帯のみに凹部を有するエネルギーバンド図が得られる構成としてもよい。
【0106】
例えば、トランジスタ480における第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ3.2eV)、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Sn−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ2.8eV)、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ3.2eV)を用いる。
【0107】
また、トランジスタ480におけるような3層積層の酸化物半導体積層403としては、第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga−Zn系酸化物膜の積層、第1の酸化物半導体層101としてGa−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Sn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてGa−Zn系酸化物膜の積層、第1の酸化物半導体層101としてGa−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてGa−Zn系酸化物膜の積層、第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Ga−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga系酸化物膜の積層、又は第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としては酸化インジウム(In系酸化物)膜、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga−Zn系酸化物膜の積層などを用いることができる。
【0108】
エネルギーギャップの小さい第2の酸化物半導体層102を、エネルギーギャップの大きい第1の酸化物半導体層101及び第3の酸化物半導体層103により挟む構造とすることによって、よりトランジスタ480のオフ電流(リーク電流)を低減する効果が得られる。
【0109】
図2(A)乃至(E)にトランジスタ440aを用いて、作製方法の一例を示す。
【0110】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、第1のフォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0111】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0112】
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有する半導体装置を作製するには、可撓性基板上に酸化物半導体積層403を含むトランジスタ440aを直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体積層403を含むトランジスタ440aを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタ440aとの間に剥離層を設けるとよい。
【0113】
下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極層401との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。また、下地膜として、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。下地膜はプラズマCVD法又はスパッタリング法等により形成すればよい。
【0114】
また、ゲート電極層401の材料は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0115】
また、ゲート電極層401の材料は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。
【0116】
また、ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として、In−Sn系、In−Sn−Zn系、In−Al−Zn系、Sn−Ga−Zn系、Al−Ga−Zn系、Sn−Al−Zn系、In−Zn系、Sn−Zn系、Al−Zn系、In系、Sn系、Zn系の金属酸化物を用いてもよい。
【0117】
また、ゲート絶縁膜402と接するゲート電極層401の一層として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5eV(電子ボルト)、好ましくは5.5eV(電子ボルト)以上の仕事関数を有し、ゲート電極層として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。
【0118】
例えば、ゲート電極層401を積層構造とし、その一層として特に仕事関数の大きな材料であるインジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜を用いることが好ましい。インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜は、アルゴン及び窒素の混合ガス雰囲気下で成膜することにより得られる。
【0119】
例えば、ゲート電極層401として基板400側から銅膜と、タングステン膜と、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸窒化物膜との積層構造、タングステン膜と、窒化タングステン膜と、銅膜と、チタン膜との積層構造などを用いることができる。
【0120】
次いで、ゲート電極層401上にゲート絶縁膜402を形成する(図2(A)参照)。ゲート絶縁膜402は、作製するトランジスタのサイズやゲート絶縁膜402の段差被覆性を考慮して形成することが好ましい。
【0121】
ゲート絶縁膜402の膜厚は、1nm以上20nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いることができる。また、ゲート絶縁膜402は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0122】
ゲート絶縁膜402の材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。
【0123】
また、ゲート絶縁膜402の材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSix>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiO(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。
【0124】
ゲート絶縁膜402は単層でも積層でもよいが、酸化物半導体積層403に接する膜としては、酸化物絶縁膜が好ましい。本実施の形態では、ゲート絶縁膜402として酸化シリコン膜を用いる。
【0125】
また、ゲート絶縁膜402を積層とする場合、例えば、ゲート電極層401上に酸化シリコン膜、In−Hf−Zn系酸化物膜、酸化物半導体積層403を順に積層してもよいし、ゲート電極層401上に酸化シリコン膜、In:Zr:Zn=1:1:1の原子比のIn−Zr−Zn系酸化物膜、酸化物半導体積層403を順に積層してもよいし、ゲート電極層401上に酸化シリコン膜、In:Gd:Zn=1:1:1の原子比のIn−Gd−Zn系酸化物膜、酸化物半導体積層403を順に積層してもよい。
【0126】
次に、ゲート絶縁膜402上に第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192からなる酸化物半導体膜の積層493を形成する(図2(B)参照)。
【0127】
ゲート絶縁膜402は、酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)と接するため、膜中(バルク中)に少なくとも化学量論比を超える量の酸素が存在することが好ましい。例えば、ゲート絶縁膜402として、酸化シリコン膜を用いる場合には、SiO2+α(ただし、α>0)とする。このようなゲート絶縁膜402を用いることで、酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)に酸素を供給することができ、特性を良好にすることができる。酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。
【0128】
例えば、酸素の供給源となる酸素を多く(過剰に)含むゲート絶縁膜402を酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)と接して設けることによって、該ゲート絶縁膜402から酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)へ酸素を供給することができる。酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)及びゲート絶縁膜402を少なくとも一部が接した状態で加熱処理を行うことによって酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)への酸素の供給を行ってもよい。
【0129】
酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)の形成工程において、酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)に水素、又は水がなるべく含まれないようにするために、酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)の成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート絶縁膜402が形成された基板を予備加熱し、基板及びゲート絶縁膜402に吸着した水素、水などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。
【0130】
ゲート絶縁膜402において酸化物半導体膜の積層493(酸化物半導体積層403)が接して形成される領域に、平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0131】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。逆スパッタリングを行うと、ゲート絶縁膜402の表面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0132】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、ゲート絶縁膜402表面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0133】
なお、第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192は、成膜時に酸素が多く含まれるような条件(例えば、酸素100%の雰囲気下でスパッタリング法により成膜を行うなど)で成膜して、酸素を多く含む(好ましくは酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が含まれている)膜とすることが好ましい。
【0134】
なお、本実施の形態において、第1の酸化物半導体膜191を、スパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Sn:Znが原子数比で、1:2:2、2:1:3、1:1:1、または20:45:35などとなる酸化物ターゲットを用いて、In−Sn−Zn−O膜を成膜する。
【0135】
なお、本実施の形態において、第2の酸化物半導体膜192を、スパッタリング法で作製するためのターゲットとしては、例えば、組成比として、In:Ga:ZnO=1:1:2[mol比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn系酸化物膜を成膜する。また、このターゲットの材料及び組成に限定されず、例えば、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol比]の金属酸化物ターゲットを用いてもよい。
【0136】
また、金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜とすることができる。
【0137】
第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0138】
減圧状態に保持された成膜室内に基板を保持する。そして、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて基板400上に酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)を成膜する。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0139】
また、ゲート絶縁膜402と酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)とを大気に解放せずに連続的に形成することが好ましい。ゲート絶縁膜402と酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)とを大気に曝露せずに連続して形成すると、ゲート絶縁膜402表面に水素や水などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0140】
CAAC−OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面から劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC−OS膜を成膜することができる。
【0141】
また、CAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0142】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0143】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0144】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
【0145】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn−O化合物ターゲットについて以下に示す。
【0146】
InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn−O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InO粉末、GaO粉末およびZnO粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0147】
酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)をフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導体積層403(第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102)に加工する(図2(C)参照)。
【0148】
また、島状の酸化物半導体積層403を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0149】
なお、酸化物半導体膜のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。例えば、酸化物半導体膜のウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液などを用いることができる。また、ITO07N(関東化学社製)を用いてもよい。
【0150】
本実施の形態では、第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192を同じマスクによりエッチング加工して形成するため、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102は側面の端部が一致した同形状の酸化物半導体層となる。酸化物半導体積層403において、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の側面(端部)は露出している。
【0151】
なお、開示する発明の一形態において、酸化物半導体積層は、本実施の形態で示すように島状に加工してもよいし、形状を加工せず、膜状のまままでもよい。
【0152】
また、ゲート絶縁膜402にコンタクトホールを形成する場合、その工程は第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192の加工時に同時に行うことができる。
【0153】
なお、図3(C)のトランジスタ449のように、酸化物半導体積層403に加熱処理を行い、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の間に混合領域105を形成してもよい。加熱処理は、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102中の元素が熱により拡散できる温度とし、かつ第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102が酸化物半導体積層403全領域において、組成が均一な混合領域とならない条件で行えばよい。
【0154】
加熱処理は減圧下、窒素雰囲気下、酸素雰囲気下、又は大気(超乾燥エア)下、希ガス雰囲気下などで行うことができる。また、加熱処理は条件(温度、雰囲気、時間など)を変えて複数回行ってもよい。例えば、該加熱処理として、温度を650℃とし、窒素雰囲気下で1時間加熱した後、酸素雰囲気下で1時間加熱すればよい。
【0155】
混合領域105を形成するための加熱処理を行う工程は、第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192を形成した後であれば特に限定されず、膜状の第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192に行ってもよいし、本実施の形態のように島状の第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102に行ってもよい。また、加熱処理はトランジスタの作製工程中で行う他の加熱処理(例えば、脱水化または脱水素化するための加熱処理、又は結晶化のための加熱処理など)と兼ねてもよい。
【0156】
また、酸化物半導体積層403(酸化物半導体膜の積層493)に、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去(脱水化または脱水素化)するための加熱処理を行ってもよい。加熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。加熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで行うことができる。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、酸化物半導体積層403(酸化物半導体膜の積層493)に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の加熱処理を行う。
【0157】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0158】
例えば、加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を入れ、数分間加熱した後、基板を不活性ガス中から出すGRTAを行ってもよい。
【0159】
なお、加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0160】
また、加熱処理で酸化物半導体積層403(酸化物半導体膜の積層493)を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、熱処理装置に導入する酸素ガスまたは一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガスまたは一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体積層403(酸化物半導体膜の積層493)を高純度化及びI型(真性)化することができる。
【0161】
なお、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)の形成後、絶縁膜407の形成前であれば、トランジスタ440aの作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。例えば、酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)の形成後、又は島状の酸化物半導体積層403(第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102)形成後に行うことができる。
【0162】
また、脱水化又は脱水素化のための加熱処理は、複数回行ってもよく、他の加熱処理と兼ねてもよい。例えば、第1の酸化物半導体膜191形成後と、第2の酸化物半導体膜192形成後に2回加熱処理を行ってもよい。
【0163】
脱水化又は脱水素化のための加熱処理を、酸化物半導体積層403(第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102)として島状に加工される前、酸化物半導体膜の積層493(第1の酸化物半導体膜191及び第2の酸化物半導体膜192)がゲート絶縁膜402を覆った状態で行うと、ゲート絶縁膜402に含まれる酸素が加熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0164】
次いでゲート絶縁膜402、酸化物半導体積層403上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。該導電膜は後の加熱処理に耐えられる材料を用いる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In―SnO)、酸化インジウム酸化亜鉛(In―ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0165】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する。
【0166】
酸化物半導体積層403において、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の側面(端部)は露出しているため、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bは、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の側面の一部に接するように形成される。
【0167】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0168】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体積層403がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体積層403を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体積層403は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体積層403となることもある。
【0169】
本実施の形態では、導電膜としてTi膜を用い、酸化物半導体積層403にはIn−Ga−Zn系酸化物半導体を用いたので、エッチング液としてアンモニア過水(アンモニア、水、過酸化水素水の混合液)を用いる。
【0170】
以上の工程で、本実施の形態のトランジスタ440aが作製される(図2(D)参照)。異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層(第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102)を用いた酸化物半導体積層403を用いることによって、トランジスタ440a、440bの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタ440a、440bに付与することが可能となる。
【0171】
次いで、酸化物半導体積層403の一部に接する絶縁膜407を形成する(図2(E)参照)。
【0172】
絶縁膜407は、プラズマCVD法、スパッタリング法、又は蒸着法等により成膜することができる。絶縁膜407は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、又は酸化ガリウム膜などの無機絶縁膜などを用いることができる。
【0173】
また、絶縁膜407として、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ランタン膜、酸化バリウム膜)、又は金属窒化物膜(例えば、窒化アルミニウム膜)も用いることができる。
【0174】
絶縁膜407は、単層でも積層でもよく、例えば酸化シリコン膜及び酸化アルミニウム膜の積層を用いることができる。
【0175】
酸化物半導体積層403上に設けられる絶縁膜407として用いることのできる酸化アルミニウム膜は、水素、水などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0176】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水などの不純物の酸化物半導体積層403への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体積層403からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0177】
絶縁膜407は、スパッタリング法など、絶縁膜407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することが好ましい。また、絶縁膜407において、酸化物半導体積層403に接する絶縁膜は、酸素を過剰に含む膜とすると、酸化物半導体積層403への酸素の供給源となるために好ましい。
【0178】
本実施の形態では、絶縁膜407として膜厚100nmの酸化シリコン膜を、スパッタリング法を用いて成膜する。酸化シリコン膜のスパッタリング法による成膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガスと酸素の混合雰囲気下において行うことができる。
【0179】
また、絶縁膜407を積層とする場合、例えば、酸化物半導体積層403上にIn−Hf−Zn系酸化物膜、酸化シリコン膜を順に積層してもよいし、酸化物半導体積層403上にIn:Zr:Zn=1:1:1の原子比のIn−Zr−Zn系酸化物膜、酸化シリコン膜を順に積層してもよいし、酸化物半導体積層403上にIn:Gd:Zn=1:1:1の原子比のIn−Gd−Zn系酸化物膜、酸化シリコン膜を順に積層してもよい。
【0180】
酸化物半導体膜の成膜時と同様に、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ(クライオポンプなど)を用いることが好ましい。クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した絶縁膜407に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、絶縁膜407の成膜室内の残留水分を除去するための排気手段としては、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。
【0181】
絶縁膜407を、成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0182】
また、図3(A)(B)に示すように、トランジスタ440c、440d上に層間絶縁膜として、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するために平坦化絶縁膜416を形成してもよい。平坦化絶縁膜416としては、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜416を形成してもよい。
【0183】
また、絶縁膜407、及び平坦化絶縁膜416にソース電極層405a、ドレイン電極層405bに達する開口を形成し、開口にソース電極層405a、ドレイン電極層405bと電気的に接続する配線層を形成してもよい。配線層を用いて他のトランジスタと接続させ、様々な回路を構成することができる。
【0184】
ソース電極層405a、ドレイン電極層405bはソース電極層405a、ドレイン電極層405bに達する開口を形成する際のエッチング工程により、一部オーバーエッチングされ、除去されることがある。ソース電極層及びドレイン電極層を積層構造とし、開口形成時のエッチングストッパーとしても機能する導電膜をソース電極層及びドレイン電極層として設けることができる。
【0185】
図3(A)で示すように、トランジスタ440cはソース電極層及びドレイン電極層を積層構造とする例であり、ソース電極層としてソース電極層404a及びソース電極層405a、ドレイン電極層としてドレイン電極層404b及びドレイン電極層405bが積層されている。トランジスタ440cのように、平坦化絶縁膜416、絶縁膜407、及びソース電極層405a、ドレイン電極層405bにソース電極層404a、ドレイン電極層404bに達する開口を形成し、開口にソース電極層404a、ドレイン電極層404bと電気的に接続する配線層465a、配線層465bを形成してもよい。
【0186】
トランジスタ440cにおいて、ソース電極層404a、ドレイン電極層404bは開口形成時においてエッチングストッパーとしても機能する。ソース電極層404a、ドレイン電極層404bとしてはタングステン膜や窒化タンタル膜など、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bとしては銅膜やアルミニウム膜などをそれぞれ用いることができる。
【0187】
また、図3(B)のトランジスタ440dで示すように、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを酸化物半導体積層403上のみに設け、酸化物半導体積層403の側面に接しない構成としてもよい。トランジスタ440dで示す構成は、多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行うことでも作製することができる。このような構成とすることで、トランジスタ440dのソース電極層405aおよびドレイン電極層405bのリーク電流(寄生チャネル)をさらに低減することができる。
【0188】
配線層465a、配線層465bはゲート電極層401、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bと同様の材料及び方法を用いて形成することができる。例えば、配線層465a、配線層465bとして窒化タンタル膜と銅膜との積層、又は窒化タンタル膜とタングステン膜との積層などを用いることができる。
【0189】
高純度化され、酸素欠損が補填された酸化物半導体積層403は、水素、水などの不純物が十分に除去されており、酸化物半導体積層403中の水素濃度は5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下である。なお、酸化物半導体積層403中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定されるものである。
【0190】
本実施の形態を用いて作製した、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む酸化物半導体積層403を用いたトランジスタ440aは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を、チャネル幅1μm当たり室温にて100zA/μm(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下、さらに好ましくは100yA/μm以下レベルにまで低くすることができる。
【0191】
以上のように、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【0192】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図7、図8及び図11を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0193】
本実施の形態では酸化物半導体積層において、上層の酸化物半導体層が下層の酸化物半導体層の側面を覆う構造とする例を示す。
【0194】
図7(A)乃至(C)に示すトランジスタ340は、ボトムゲート構造を有する逆スタガ型のトランジスタの一例である。図7(A)は平面図であり、図7(A)中の一点鎖線X−Yで切断した断面が図7(B)に相当し、図7(A)中の一点鎖線V−Wで切断した断面が図7(C)に相当する。
【0195】
チャネル長方向の断面図である図7(B)に示すように、トランジスタ340は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。なお、トランジスタ340上には、絶縁膜407が形成されている。
【0196】
第1の酸化物半導体層101は、ゲート絶縁膜402上に接して形成され、第2の酸化物半導体層102は、第1の酸化物半導体層101の上面及び側面を覆って形成され、第2の酸化物半導体層102の周縁部は、ゲート絶縁膜402と接する構造としている。第1の酸化物半導体層101がソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと接していない構造とすることで、トランジスタ340のソース電極層405aおよびドレイン電極層405bのリーク電流(寄生チャネル)の発生を低減している。
【0197】
図7(C)は、チャネル幅方向の断面図であり、図7(B)と同様に第1の酸化物半導体層101の端部(側面)が第2の酸化物半導体層102の端部で覆われ、第1の酸化物半導体層101が絶縁膜407と接していない構造としている。
【0198】
第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102はエネルギーギャップが異なる。本実施の形態では、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102は組成が異なり、第2の酸化物半導体層102のエネルギーギャップが第1の酸化物半導体層101よりエネルギーギャップが大きい例である。
【0199】
図8(A)乃至(C)に酸化物半導体積層403として第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103の3層構造の積層を用いたトランジスタ380aを示す。
【0200】
図8(A)乃至(C)に示すトランジスタ380aは、ボトムゲート構造を有する逆スタガ型のトランジスタの一例である。図8(A)は平面図であり、図8(A)中の一点鎖線X−Yで切断した断面が図8(B)に相当し、図8(A)中の一点鎖線V−Wで切断した断面が図8(C)に相当する。
【0201】
チャネル長方向の断面図である図8(B)に示すように、トランジスタ380aは、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ380a上には、絶縁膜407が形成されている。
【0202】
第1の酸化物半導体層101は、ゲート絶縁膜402上に接して形成され、第1の酸化物半導体層101上に第2の酸化物半導体層102が積層される。第3の酸化物半導体層103は、第1の酸化物半導体層101の側面並びに第2の酸化物半導体層102の上面及び側面を覆って形成され、第3の酸化物半導体層103の周縁部は、ゲート絶縁膜402と接する構造としている。第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102をソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと接していない構造とすることで、トランジスタ380aのソース電極層405aおよびドレイン電極層405bのリーク電流(寄生チャネル)の発生を低減している。
【0203】
図8(C)は、チャネル幅方向の断面図であり、図8(B)と同様に第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の端部(側面)が第3の酸化物半導体層103の端部で覆われ、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102が絶縁膜407と接していない構造としている。
【0204】
第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102はエネルギーギャップが異なる。本実施の形態では第2の酸化物半導体層102のエネルギーギャップが第1の酸化物半導体層101よりエネルギーギャップが小さい例である。
【0205】
また、第2の酸化物半導体層102及び第3の酸化物半導体層103はエネルギーギャップが異なる。本実施の形態では第3の酸化物半導体層103のエネルギーギャップが第2の酸化物半導体層102よりエネルギーギャップが大きい例である。
【0206】
なお、本実施の形態においては、第3の酸化物半導体層103のエネルギーギャップは、第1の酸化物半導体層101のエネルギーギャップとほぼ同じである。
【0207】
例えば、トランジスタ380aにおける第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ3.2eV)、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Sn−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ2.8eV)、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga−Zn系酸化物膜(エネルギーギャップ3.2eV)を用いる。
【0208】
また、トランジスタ380aのような3層積層の酸化物半導体積層403としては、第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga−Zn系酸化物膜の積層、第1の酸化物半導体層101としてGa−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Sn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてGa−Zn系酸化物膜の積層、第1の酸化物半導体層101としてGa−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてGa−Zn系酸化物膜の積層、第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としてはIn−Ga−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga系酸化物膜の積層、又は第1の酸化物半導体層101としてIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層102としては酸化インジウム(In系酸化物)膜、第3の酸化物半導体層103としてIn−Ga−Zn系酸化物膜の積層などを用いることができる。
【0209】
また、第2の酸化物半導体層102の周囲を第1の酸化物半導体層101と第3の酸化物半導体層103で覆うことで、第2の酸化物半導体層102の酸素欠損の増加を抑え、トランジスタ380aのしきい値電圧をゼロに近づける構成とすることができる。さらには、第2の酸化物半導体層102が埋め込みチャネルとなることでチャネル形成領域を絶縁膜界面から遠ざけることができ、これによりキャリアの界面散乱が低減され、高い電界効果移動度を実現することができる。
【0210】
図11(A)に示すトランジスタ380bは、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を島状に加工する際に、同じマスクを用いて(或いは、加工によって作製した島状の第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102をマスクとして)ゲート絶縁膜402の一部をエッチングして薄くした構成である。トランジスタ380bにおいてゲート絶縁膜402は、島状の第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102と重畳する領域は、その他の領域(重畳しない領域)と比較して厚い膜厚を有している。第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102の島状への加工の際に、ゲート絶縁膜402の一部までエッチングすることによって第1の酸化物半導体層101の残渣などのエッチング残りを除去し、リーク電流の発生を低減することができる。
【0211】
また、図11(B)に示すトランジスタ380cは、3回のフォトリソグラフィ工程により、酸化物半導体積層403を形成した構成である。トランジスタ380cに含まれる酸化物半導体積層403は、第1の酸化物半導体膜を成膜後、第1のマスクを用いて島状の第1の酸化物半導体層101を形成し、島状の第1の酸化物半導体層101上に第2の酸化物半導体膜を成膜後、第2のマスクを用いて島状の第2の酸化物半導体層102を形成し、島状の第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102上に第3の酸化物半導体膜を成膜後、第3のマスクを用いて島状の第3の酸化物半導体層103に加工することで、形成される。
【0212】
なお、トランジスタ380cは、第1の酸化物半導体層101の端面が、第2の酸化物半導体層102の側面から突出した構造であり、第3の酸化物半導体層103が第1の酸化物半導体層101の上面の一部と接する構成とした例である。
【0213】
また、半導体装置の他の一形態として図9(B)にボトムゲート構造を有するチャネル保護型のトランジスタ418を示す。
【0214】
チャネル長方向の断面図である図9(B)に示すように、トランジスタ418は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403、チャネル保護膜として機能する絶縁膜427、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ418上には、絶縁膜409が形成されている。
【0215】
第1の酸化物半導体層101は、ゲート絶縁膜402上に接して形成され、第1の酸化物半導体層101上に第2の酸化物半導体層102が積層される。第3の酸化物半導体層103は、第1の酸化物半導体層101の側面並びに第2の酸化物半導体層102の上面及び側面を覆って形成され、第3の酸化物半導体層103の周縁部は、ゲート絶縁膜402と接する構造としている。第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102をソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと接していない構造とすることで、トランジスタ418のソース電極層405aおよびドレイン電極層405bのリーク電流(寄生チャネル)の発生を低減している。
【0216】
また、半導体装置の他の一形態として図10(B)にボトムゲート構造のトランジスタ438を示す。
【0217】
図10(B)に示すように、トランジスタ438は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられたゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403を有する。トランジスタ438上には、絶縁膜407が形成されている。
【0218】
トランジスタ438は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403が設けられる構造である。第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103のうち少なくとも一は該エネルギーギャップが異なる。
【0219】
トランジスタ438において、第1の酸化物半導体層101は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に接して形成され、第1の酸化物半導体層101上に第2の酸化物半導体層102が積層される。第3の酸化物半導体層103は、第1の酸化物半導体層101の側面並びに第2の酸化物半導体層102の上面及び側面を覆って形成され、第3の酸化物半導体層103の周縁部は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bと接する構造としている。
【0220】
このように、積層する酸化物半導体層の形状は、酸化物半導体層ごとに異なる形状としてもよく、酸化物半導体積層は種々の形状及び構造を選択することができる。
【0221】
以上のように、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【0222】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0223】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図5を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0224】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体積層に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して膜中に酸素を供給する例を示す。
【0225】
脱水化又は脱水素化処理によって、酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素が同時に脱離して減少してしまうおそれがある。酸化物半導体積層において、酸素が脱離した箇所では酸素欠損が存在し、該酸素欠損に起因してトランジスタの電気特性変動を招くドナー準位が生じてしまう。
【0226】
よって、脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体積層に、酸素を供給することが好ましい。酸化物半導体積層へ酸素を供給することにより、膜中の酸素欠損を補填することができる。該酸化物半導体積層をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。また、しきい値電圧をプラスシフトさせ、トランジスタをノーマリーオフ化することもできる。
【0227】
図5(A)は、図2(C)と対応しており、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403が形成されている。
【0228】
次に、酸化物半導体積層403に酸素431(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれかを含む)を導入して、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403に、酸素過剰領域111、112を形成し、酸素の供給を行う(図5(B)参照)。
【0229】
なお、酸素過剰領域111、112は、酸化物半導体が結晶状態における化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域が、少なくとも一部含まれている領域とする。酸素過剰領域111、112に供給された酸素431によって、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403中に存在する酸素欠損を補填することができる。
【0230】
ゲート絶縁膜402、酸素過剰領域111、112を有する酸化物半導体積層403上にソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成し、トランジスタ443aを作製する(図5(C)参照)。
【0231】
なお、酸素431の導入工程は、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bの形成後に行うこともできる。図5(D)にソース電極層405a、ドレイン電極層405bの形成後、酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403に酸素を導入して作製する例としてトランジスタ443bを示す。
【0232】
図5(D)に示すように、酸素431はソース電極層405a、ドレイン電極層405bがマスクとなり、酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403のチャネル形成領域に選択的に導入される。トランジスタ443bの酸化物半導体積層403において、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと重畳しない領域は、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと重畳する領域よりも高い酸素濃度を有する構成となる。
【0233】
また、半導体装置の他の一形態として図4(B)に酸化物半導体積層403に酸素を導入したボトムゲート構造を有するトランジスタ483を示す。図4(A)に酸化物半導体積層403として第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103の3層構造の積層を用いたトランジスタ480を示す。
【0234】
トランジスタ483は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、酸素過剰領域111を有する第1の酸化物半導体層101、酸素過剰領域112を含む第2の酸化物半導体層102、及び酸素過剰領域113を含む第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ483上には、絶縁膜407が形成されている。
【0235】
トランジスタ483の酸化物半導体積層403において、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103のエネルギーギャップは全て同じではなく、少なくとも2種類の異なる値のエネルギーギャップを含む。
【0236】
トランジスタ483は、酸化物半導体積層403全体に酸素が導入された例であり、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、第3の酸化物半導体層103において、それぞれ該全体に酸素過剰領域111、酸素過剰領域112、又は酸素過剰領域113が設けられている。
【0237】
また、半導体装置の他の一形態として図9(C)に酸化物半導体積層403に酸素を導入したボトムゲート構造を有するチャネル保護型のトランジスタ413を示す。
【0238】
トランジスタ413は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、酸素過剰領域111を含む第1の酸化物半導体層101、酸素過剰領域112を含む第2の酸化物半導体層102、及び酸素過剰領域113を含む第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403、チャネル保護膜として機能する絶縁膜427、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ413上には、絶縁膜409が形成されている。
【0239】
第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103のうち少なくとも一は、他の酸化物半導体層とエネルギーギャップが異なる。トランジスタ413においては、第2の酸化物半導体層102のエネルギーギャップが第1の酸化物半導体層101及び第3の酸化物半導体層103より小さい例である。
【0240】
トランジスタ413は、酸化物半導体積層403全体に酸素が導入された例であり、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、第3の酸化物半導体層103において、それぞれ該全体に酸素過剰領域111、酸素過剰領域112、又は酸素過剰領域113が設けられている。
【0241】
また、トランジスタ413において、第1の酸化物半導体層101は、ゲート絶縁膜402上に接して形成され、第1の酸化物半導体層101上に第2の酸化物半導体層102が積層される。第3の酸化物半導体層103は、第1の酸化物半導体層101の側面並びに第2の酸化物半導体層102の上面及び側面を覆って形成され、第3の酸化物半導体層103の周縁部は、ゲート絶縁膜402と接する構造としている。第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102をソース電極層405aまたはドレイン電極層405bと接していない構造とすることで、トランジスタ413のソース電極層405aおよびドレイン電極層405bのリーク電流(寄生チャネル)の発生を低減している。
【0242】
また、半導体装置の他の一形態として図10(C)に酸化物半導体積層403に酸素を導入したボトムゲート構造のトランジスタ433を示す。
【0243】
図10(C)に示すように、トランジスタ433は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられたゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、酸素過剰領域111を含む第1の酸化物半導体層101、酸素過剰領域112を含む第2の酸化物半導体層102、及び酸素過剰領域113を含む第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403を有する。トランジスタ433上には、絶縁膜407が形成されている。
【0244】
トランジスタ433は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層403が設けられる構造である。第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103のうち少なくとも一はエネルギーギャップが他の酸化物半導体層と異なり、トランジスタ433は第2の酸化物半導体層102のエネルギーギャップが第1の酸化物半導体層101及び第3の酸化物半導体層103より小さい例である。
【0245】
トランジスタ433は、酸化物半導体積層403全体に酸素が導入された例であり、第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、第3の酸化物半導体層103において、それぞれ該全体に酸素過剰領域111、酸素過剰領域112、又は酸素過剰領域113が設けられている。
【0246】
トランジスタ433において、酸素の導入は、露出された酸化物半導体積層403に直接行ってもよいし、絶縁膜407を通過させて行ってもよい。
【0247】
なお、実施の形態2で示した上層の酸化物半導体層が下層の酸化物半導体層の側面を覆う構造とするトランジスタ340とトランジスタ380aにおいて、酸化物半導体積層403に酸素を導入して酸素過剰領域を設ける例を図7(D)、図8(D)に示す。
【0248】
図7(D)におけるトランジスタ343は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ343上には、絶縁膜407が形成されている。トランジスタ343において、酸化物半導体積層403は、酸素過剰領域111を含む第1の酸化物半導体層101、及び酸素過剰領域112を含む第2の酸化物半導体層102を有する。
【0249】
図8(D)におけるトランジスタ383は、絶縁表面を有する基板400上に順に設けられた、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101、第2の酸化物半導体層102、及び第3の酸化物半導体層103を含む酸化物半導体積層403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。トランジスタ383上には、絶縁膜407が形成されている。トランジスタ383において、酸化物半導体積層403は、酸素過剰領域111を含む第1の酸化物半導体層101、酸素過剰領域112を含む第2の酸化物半導体層102、及び酸素過剰領域113を含む第3の酸化物半導体層103を有する。
【0250】
なお、トランジスタ343及びトランジスタ383に示すような、下層の酸化物半導体層よりエネルギーギャップの大きい酸化物半導体層を上層に積層する酸化物半導体積層において、上層の酸化物半導体層が下層の酸化物半導体層の側面を覆う構造とすることで、トランジスタのソース電極層およびドレイン電極層のリーク電流(寄生チャネル)の発生を低減することができる。
【0251】
脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体積層403に、酸素を導入して膜中に酸素を供給することによって、酸化物半導体積層403を高純度化、及びI型(真性)化することができる。高純度化し、I型(真性)化した酸化物半導体積層403を有するトランジスタ443a、トランジスタ443b、トランジスタ413、トランジスタ433、トランジスタ343、トランジスタ383は、電気特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0252】
酸素の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理などを用いることができる。
【0253】
酸素の導入工程は、酸化物半導体積層403に酸素導入する場合、酸化物半導体積層403に直接導入してもよいし、絶縁膜407などの他の膜を通過して酸化物半導体積層403へ導入してもよい。酸素を他の膜を通過して導入する場合は、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いればよいが、酸素を露出された酸化物半導体積層403へ直接導入する場合は、プラズマ処理なども用いることができる。
【0254】
酸化物半導体積層403への酸素の導入は、脱水化又は脱水素化処理を行った後であればよく、特に限定されない。また、上記脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体積層403への酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0255】
例えば、実施の形態1において、酸化物半導体積層403への酸素の導入は、露出した酸化物半導体膜の積層493、又は酸化物半導体積層403に対して、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b形成後、ゲート絶縁膜402形成後、ゲート電極層401形成後、絶縁膜407形成後に行うことができる。
【0256】
また、酸化物半導体積層403中の酸素過剰領域111、112において、酸素の導入工程によって導入された酸素濃度を1×1018atoms/cm以上5×1021atoms/cm以下とするのが好ましい。
【0257】
なお、酸化物半導体において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物半導体積層403中の酸素濃度を、SIMSなどの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物半導体積層403に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0258】
ところで、酸素には17Oや18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体積層403中にこれらの同位体を意図的に添加した場合、これら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができ、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体積層403中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体積層403に意図的に酸素が添加されたか否かを判別しても良い。
【0259】
また、酸化物半導体膜へ酸素を導入した後、加熱処理を行うことが好ましい。
【0260】
本実施の形態のトランジスタ443a、トランジスタ443bのように、酸素を直接酸化物半導体積層403へ導入する場合は、酸化物半導体積層403と接するゲート絶縁膜402、絶縁膜407を、必ずしも酸素を多くに含む膜とする必要はない。導入した酸素が再度酸化物半導体積層403から脱離しないように、また、水素、水など不純物が酸化物半導体積層403へ再度混入しないように、酸素、水素、水などの不純物に対して遮断効果(ブロック効果)が高い膜を絶縁膜407として設けることが好ましい。例えば、水素、水などの不純物、及び酸素の両方に対して遮断効果(ブロック効果)が高い酸化アルミニウム膜などを用いるとよい。
【0261】
もちろん、酸化物半導体膜と接するゲート絶縁膜402、絶縁膜407を、酸素を多く含む膜とし、さらに酸素を直接酸化物半導体積層403に導入し、複数の酸素供給方法を行ってもよい。
【0262】
また、本実施の形態では酸化物半導体積層403への酸素導入を例として説明するが、酸素の導入は酸化物半導体積層403と接するゲート絶縁膜402、絶縁膜407などに行ってもよい。酸化物半導体積層403と接するゲート絶縁膜402、絶縁膜407に酸素を導入し、酸素過剰とすることによって、酸化物半導体積層403への酸素の供給を行うことができる。
【0263】
以上のように、安定した電気特性を有する酸化物半導体積層を用いた半導体装置を提供することができる。よって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0264】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0265】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、図6を用いて説明する。上記実施の形態と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、上記実施の形態と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0266】
本実施の形態では、開示する発明に係る半導体装置の作製方法において、酸化物半導体積層に低抵抗領域を形成する例である。低抵抗領域は、酸化物半導体積層へ導電率を変化させる不純物(ドーパントともいう)を導入して形成することができる。
【0267】
本実施の形態では、ボトムゲート構造を有するチャネル保護型のトランジスタ420の例を示す。図6(A)乃至(C)にトランジスタ420の作製方法の一例を示す。
【0268】
まず、絶縁表面を有する基板400上にゲート電極層401を形成し、ゲート電極層401上にゲート絶縁膜402を形成する。
【0269】
そしてゲート絶縁膜402上にエネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102を含む酸化物半導体積層403を形成する。
【0270】
なお、酸化物半導体積層403には実施の形態2で示したように酸素を導入し、酸素過剰領域を含む酸化物半導体積層403としてもよい。また、酸化物半導体積層403が3層構造でもよく、上層の酸化物半導体層が下層の酸化物半導体層の側面を覆う構造であってもよい。
【0271】
ゲート電極層401と重畳する酸化物半導体積層403上にチャネル保護膜として機能する絶縁膜427を形成する(図6(A)参照)。
【0272】
次に、絶縁膜427をマスクとして、酸化物半導体積層403に、ドーパント421を選択的に導入し、低抵抗領域121a、121b、122a、122bを形成する(図6(B)参照)。
【0273】
本実施の形態では、チャネル保護膜として機能する絶縁膜427をドーパント421導入工程におけるマスクとして用いるが、別途レジストマスクを形成して、ドーパント421を選択的に導入してもよい。また、チャネル保護膜を設けないトランジスタ440a、トランジスタ430などの場合は、別途レジストマスクを形成してドーパントを選択的に導入すればよい。
【0274】
ドーパント421の導入条件によっては、第1の酸化物半導体層101のみ、第2の酸化物半導体層102のみにドーパント421が導入され、低抵抗領域が形成される場合、第1の酸化物半導体層101及び第2の酸化物半導体層102においてドーパントの濃度分布が存在する場合がある。
【0275】
ドーパント421は、酸化物半導体積層403の導電率を変化させる不純物である。ドーパント421としては、15族元素(代表的にはリン(P)、砒素(As)、およびアンチモン(Sb))、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、インジウム(In)、フッ素(F)、塩素(Cl)、チタン(Ti)、及び亜鉛(Zn)のいずれかから選択される一以上を用いることができる。
【0276】
ドーパント421は、注入法により、酸化物半導体積層403に導入する。ドーパント421の導入方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。その際には、ドーパント421の単体のイオンあるいはフッ化物、塩化物のイオンを用いると好ましい。
【0277】
ドーパント421の導入工程は、加速電圧、ドーズ量などの注入条件、またマスクとなる絶縁膜427の膜厚を適宜設定して制御すればよい。本実施の形態では、ドーパント421としてホウ素を用いて、イオン注入法でホウ素イオンの注入を行う。なお、ドーパント421のドーズ量は1×1013ions/cm以上5×1016ions/cm以下とすればよい。
【0278】
低抵抗領域におけるドーパント421の濃度は、5×1018atoms/cm以上1×1022atoms/cm以下であることが好ましい。
【0279】
ドーパント421を導入する際に、基板400を加熱しながら行ってもよい。
【0280】
なお、酸化物半導体積層403にドーパント421を導入する処理は、複数回行ってもよく、ドーパントの種類も複数種用いてもよい。
【0281】
また、ドーパント421の導入処理後、加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては、温度300℃以上700℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下で1時間、酸素雰囲気下で行うことが好ましい。また、窒素雰囲気下、減圧下、大気(超乾燥エア)下で加熱処理を行ってもよい。
【0282】
酸化物半導体積層403を結晶性酸化物半導体膜とした場合、ドーパント421の導入により、一部非晶質化する場合がある。この場合、ドーパント421の導入後に加熱処理を行うことによって、酸化物半導体積層403の結晶性を回復することができる。
【0283】
よって酸化物半導体積層403において、チャネル形成領域121cを挟んで低抵抗領域121a、121bが設けられた第1の酸化物半導体層101と、チャネル形成領域122cを挟んで低抵抗領域122a、122bが設けられた第2の酸化物半導体層102とが形成される。
【0284】
次に、低抵抗領域121a、121b、122a、122bと接してソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0285】
以上の工程で、本実施の形態のトランジスタ420が作製される(図6(C)参照)。
【0286】
チャネル長方向にチャネル形成領域121cを挟んで低抵抗領域121a、121bが設けられた第1の酸化物半導体層101と、チャネル形成領域122cを挟んで低抵抗領域122a、122bが設けられた第2の酸化物半導体層102とを含む酸化物半導体積層403を有することにより、トランジスタ420はオン特性(例えば、オン電流及び電界効果移動度)が高く、高速動作、高速応答が可能となる。
【0287】
トランジスタ420において、低抵抗領域121a、121b、122a、122bはソース領域、又はドレイン領域として機能させることができる。低抵抗領域121a、121b、122a、122bを設けることによって、低抵抗領域121a、121b、122a、122bの間に形成されるチャネル形成領域121c、122cに加わる電界を緩和させることができる。また、低抵抗領域121a、121b、122a、122bにおいて酸化物半導体積層403とソース電極層405a及びドレイン電極層405bとを電気的に接続させることによって、酸化物半導体積層403とソース電極層405a及びドレイン電極層405bとの接触抵抗を低減することができる。従って、トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0288】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0289】
(実施の形態5)
実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0290】
図12(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、第2の基板4006によって封止されている。図12(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0291】
図12(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図12(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図12(B)(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004または画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0292】
また図12(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0293】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。図12(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図12(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、図12(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0294】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0295】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0296】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタを適用することができる。
【0297】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0298】
半導体装置の一形態について、図12及び図13を用いて説明する。図13は、図12(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0299】
図13で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0300】
接続端子電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0301】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図13では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。図13(A)では、トランジスタ4010、4011上には絶縁膜4020が設けられ、図13(B)ではさらに、絶縁膜4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0302】
トランジスタ4010、トランジスタ4011としては、実施の形態1乃至4のいずれかで示したトランジスタを適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ440aと同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0303】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、エネルギーギャップの異なる少なくとも2層の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を有するトランジスタである。異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層を用いた酸化物半導体積層を用いることによって、トランジスタの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタ4010及びトランジスタ4011に付与することが可能となる。
【0304】
よって、図12及び図13で示す本実施の形態の半導体装置として、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【0305】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0306】
図13(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。図13(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0307】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0308】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0309】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相を発現する液晶組成物を用いることはより効果的である。
【0310】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0311】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。本明細書に開示する酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0312】
本明細書に開示する酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低く制御することができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0313】
また、本明細書に開示する酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電界効果移動度を高く制御することができるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。よって、半導体装置として高信頼化も達成できる。
【0314】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0315】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0316】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0317】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0318】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0319】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0320】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0321】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0322】
図13(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0323】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0324】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0325】
発光素子4513に酸素、水素、水、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0326】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0327】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0328】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)も呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0329】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0330】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0331】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0332】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0333】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0334】
なお、図12及び図13において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、透光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム)を用いてもよい。例えば、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0335】
本実施の形態では、絶縁膜4020として酸化アルミニウム膜を用いる。
【0336】
酸化物半導体膜上に絶縁膜4020として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0337】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0338】
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜4021は、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜を形成してもよい。
【0339】
絶縁膜4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0340】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0341】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0342】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0343】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0344】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0345】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0346】
以上のように実施の形態1乃至4のいずれかで示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0347】
(実施の形態6)
実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0348】
図14(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図14(A)はフォトセンサの等価回路であり、図14(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0349】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0350】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。図14(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1乃至4に示したトランジスタが適用でき、酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ440aと同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。
【0351】
図14(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0352】
トランジスタ640上には絶縁膜631、絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁膜633上に設けられ、層間絶縁膜633上に形成した電極層641と、層間絶縁膜634上に設けられた電極層642との間に、層間絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0353】
電極層641は、層間絶縁膜634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層641を介して導電層645と電気的に接続している。導電層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0354】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(I型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0355】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0356】
第2半導体膜606bは、I型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0357】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0358】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0359】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0360】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどの珪素を含む化合物を水素で希釈して形成することができる。また、珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの珪素を含む化合物(例えば水素化珪素)に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH、C等の炭化物気体、GeH、GeF等のゲルマニウム化気体、F等を混入させてもよい。
【0361】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0362】
絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いて形成することができる。
【0363】
本実施の形態では、絶縁膜631として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜631はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0364】
酸化物半導体膜上に絶縁膜631として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0365】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0366】
絶縁膜632としては、無機絶縁材料としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
【0367】
層間絶縁膜633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜が好ましい。層間絶縁膜633、634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0368】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0369】
以上のように、半導体層として異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を用いることによって、トランジスタの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタに付与することが可能となる。よって、該トランジスタを用いることで、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【0370】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0371】
(実施の形態7)
実施の形態1乃至4のいずれかで一例を示したトランジスタは、複数のトランジスタを積層する集積回路を有する半導体装置に好適に用いることができる。本実施の形態では、半導体装置の一例として、記憶媒体(メモリ素子)の例を示す。
【0372】
実施の形態では、単結晶半導体基板に作製された第1のトランジスタであるトランジスタ140と絶縁膜を介してトランジスタ140の上方に半導体膜を用いて作製された第2のトランジスタであるトランジスタ162を含む半導体装置を作製する。実施の形態1乃至3のいずれかで一例を示したトランジスタは、トランジスタ162に好適に用いることができる。本実施の形態では、トランジスタ162として実施の形態1で示したトランジスタ440aと同様な構造を有するトランジスタを用いる例を示す。
【0373】
積層するトランジスタ140、トランジスタ162の半導体材料、及び構造は、同一でもよいし異なっていてもよい。本実施の形態は、記憶媒体(メモリ素子)の回路に好適な材料及び構造のトランジスタをそれぞれ用いる例である。
【0374】
図15は、半導体装置の構成の一例である。図15(A)には、半導体装置の断面を、図15(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、図15(A)は、図15(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。また、図15(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図15(A)および図15(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ140を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有する。本実施の形態では、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とする。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等の化合物半導体材料などを用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0375】
図15における半導体装置を図15(A)乃至(C)を用いて説明する。
【0376】
トランジスタ140は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板185に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上に設けられたゲート電極110とを有する。
【0377】
半導体材料を含む基板185は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁膜を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0378】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体膜を形成する方法等を用いることができる。
【0379】
例えば、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、又は素子基板上のどちらか一方に絶縁膜を形成する。単結晶半導体基板と素子基板を、絶縁膜を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体膜として単結晶半導体膜を素子基板上に形成する。上記方法を用いて作製されたSOI基板も好適に用いることができる。
【0380】
基板185上にはトランジスタ140を囲むように素子分離絶縁層106が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、図15に示すようにトランジスタ140がサイドウォールとなる側壁絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ140の特性を重視する場合には、ゲート電極110の側面にサイドウォールとなる側壁絶縁層を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120を設けてもよい。
【0381】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ140は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。トランジスタ140を覆うように絶縁膜を2層形成する。トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、該絶縁膜2層にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜128、絶縁膜130を形成し、同時にゲート電極110の上面を露出させる。
【0382】
絶縁膜128、絶縁膜130は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜128、絶縁膜130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0383】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁膜128、絶縁膜130を形成してもよい。
【0384】
なお、絶縁膜130において、半導体膜と接する膜は酸化シリコン膜を用いる。
【0385】
本実施の形態では、絶縁膜128としてスパッタリング法により膜厚50nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜130としてスパッタリング法により膜厚550nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0386】
CMP処理により十分に平坦化した絶縁膜130上にゲート電極層148を形成する。ゲート電極層148は、導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。
【0387】
ゲート電極層148上にゲート絶縁膜146を形成する。
【0388】
ゲート絶縁膜146として、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜を形成することができる。
【0389】
ゲート絶縁膜146上にエネルギーギャップの異なる酸化物半導体膜を積層する。本実施の形態では、酸化物半導体膜の積層としてスパッタリング法により、ゲート絶縁膜146上にIn−Sn−Zn系酸化物及びIn−Ga−Zn系酸化物層を順に積層する。
【0390】
次に酸化物半導体膜の積層を選択的にエッチングして島状の酸化物半導体積層144を形成する。
【0391】
酸化物半導体積層144上にソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bを形成する。
【0392】
ゲート電極層148、ソース電極またはドレイン電極142a、ソース電極またはドレイン電極142bに用いることのできる導電層は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0393】
導電層は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極またはドレイン電極142a、およびソース電極またはドレイン電極142bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0394】
次に、ゲート電極層148、ゲート絶縁膜146、酸化物半導体積層144上に、絶縁膜150を形成する。本実施の形態では、絶縁膜150として酸化アルミニウム膜を形成する。
【0395】
酸化物半導体積層144上に絶縁膜150として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0396】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水などの不純物の酸化物半導体積層144への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体積層144からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0397】
また、絶縁膜150上に積層して別途絶縁膜を形成してもよい。
【0398】
絶縁膜としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜を用いることができる。
【0399】
絶縁膜150上において、ソース電極またはドレイン電極142aと重畳する領域に電極層153を形成する。
【0400】
次にトランジスタ162、及び電極層153上に、絶縁膜152を形成する。絶縁膜152は、スパッタリング法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。また、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができ、上記有機材料には塗布法、印刷法、インクジェット法などの湿式法を用いることができる。
【0401】
次に、ゲート絶縁膜146、絶縁膜150、及び絶縁膜152に、ソース電極またはドレイン電極142bにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0402】
その後、上記開口にソース電極またはドレイン電極142bに接する配線156を形成する。なお、図15にはソース電極またはドレイン電極142bと配線156との接続箇所は図示していない。
【0403】
配線156は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をエッチング加工することによって形成される。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極またはドレイン電極142aなどと同様である。
【0404】
以上の工程でトランジスタ162及び容量素子164が形成される。本実施の形態では、トランジスタ162は、エネルギーギャップの異なる少なくとも2層の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層144を有するトランジスタである。半導体層として異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層を用いた酸化物半導体積層144を用いることによって、トランジスタ162の電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタ162に付与することが可能となる。また、本実施の形態においては、酸化物半導体積層144を高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む酸化物半導体積層とする。よって、トランジスタ162は、オフ電流を低減され、電気特性変動が抑制されており、電気的に安定である。容量素子164は、ソース電極またはドレイン電極142a、絶縁膜150および電極層153、で構成される。
【0405】
容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0406】
図15(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。図15(C)において、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ140のソース電極とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ140のドレイン電極とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線とも呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ162のゲート電極とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子164の電極の他方は電気的に接続されている。
【0407】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有しているため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ162のソース電極またはドレイン電極の一方と、容量素子164の電極の一方と、トランジスタ140のゲート電極とが電気的に接続されたノード(以下、ノードFG)の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、ノードFGに与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0408】
半導体装置に情報を記憶させる場合(書き込み)は、まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、ロー(Low)レベル電荷、ハイ(High)レベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGが浮遊状態となるため、ノードFGには所定の電荷が保持されたままの状態となる。以上のように、ノードFGに所定量の電荷を蓄積及び保持させることで、メモリセルに情報を記憶させることができる。
【0409】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さく制御されているため、ノードFGに供給された電荷は長時間にわたって保持される。したがって、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となり、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0410】
記憶された情報を読み出す場合(読み出し)は、第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、トランジスタ140は異なる状態をとる。一般に、トランジスタ140をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ140を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をVth_HとVth_Lの間の電位Vとすることにより、ノードFGに保持された電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ140は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ140は「オフ状態」のままである。このため、第5の配線の電位を制御して、トランジスタ140のオン状態またはオフ状態を読み出す(第2の配線の電位を読み出す)ことで、記憶された情報を読み出すことができる。
【0411】
また、記憶させた情報を書き換える場合においては、上記の書き込みによって所定量の電荷を保持したノードFGに、新たな電位を供給することで、ノードFGに新たな情報に係る電荷を保持させる。具体的には、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。その後、第4の配線の電位をトランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGには、新たな情報に係る電荷が保持された状態となる。すなわち、ノードFGに第1の書き込みによって所定量の電荷が保持された状態で、第1の書き込みと同様の動作(第2の書き込み)を行うことで、記憶させた情報を上書きすることが可能である。
【0412】
本実施の形態で示すトランジスタ162は、エネルギーギャップの異なる少なくとも2層の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を有し、オフ電流が十分に低くなるよう制御されたトランジスタである。このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0413】
以上のように、異なるエネルギーギャップを有する複数の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を用いることによって、トランジスタの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタに付与することが可能となる。よって、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた半導体装置を提供することができる。
【0414】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0415】
(実施の形態8)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備することによって、高機能、高信頼性、又は低消費電力など、種々の目的に応じた品質を付与された電子機器を提供することができる。
【0416】
図16(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は、筐体9001に表示部9003が組み込まれている。本発明の一態様を用いて作製される半導体装置は、表示部9003に用いることが可能であり、表示部9003により映像を表示することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0417】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003に表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力することができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、画面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、実施の形態6に示したイメージセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ入力機能を持たせることができる。
【0418】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して垂直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、大きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブルに表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0419】
図16(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、筐体9101に表示部9103が組み込まれている。本発明の一態様を用いて作製される半導体装置は、表示部9103に用いることが可能であり、表示部9103により映像を表示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構成を示している。
【0420】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0421】
図16(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0422】
実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部9103に適用することにより、より高性能及び高信頼性なテレビジョン装置とすることができる。
【0423】
図16(C)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。コンピュータは、本発明の一態様を用いて作製される半導体装置をその表示部9203に用いることにより作製される。
【0424】
実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部9203に適用することにより、より高性能及び高信頼性なコンピュータとすることができる。
【0425】
図16(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機9500は、筐体9501に組み込まれた表示部9502の他、操作ボタン9503、外部接続ポート9504、スピーカ9505、マイク9506、操作ボタン9507などを備えている。実施の形態1乃至7のいずれかで示した半導体装置を表示部9502に適用することにより、より高性能及び高信頼性な携帯電話機とすることができる。
【0426】
図16(D)に示す携帯電話機9500は、表示部9502を指などで触れることで、情報を入力する、電話を掛ける、またはメールを作成するなどの操作を行うことができる。
【0427】
表示部9502の画面は、主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合したものである。
【0428】
例えば、電話を掛ける、またはメールを作成する場合は、表示部9502を文字の入力を主とする入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部9502の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0429】
また、携帯電話機9500内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機9500の向き(縦向きか横向きか)を判断して、表示部9502の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0430】
また、画面モードの切り替えは、表示部9502を触れる、または筐体9501の操作ボタン9503の操作により行われる。また、表示部9502に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0431】
また、入力モードにおいて、表示部9502の光センサで検出される信号を検知し、表示部9502のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0432】
また、表示部9502は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部9502に掌や指を触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0433】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0434】
本実施例では、第1の酸化物半導体層上に、第1の酸化物半導体層のエネルギーギャップよりも小さい第2の酸化物半導体層を形成し、さらに第2の酸化物半導体層上に第3の酸化物半導体層を形成したサンプル(試料1A、試料1B、試料2A、及び試料2B)を作製し、試料1A、試料1B、試料2A、及び試料2Bの断面構造を観察した。また、試料1A及び試料2Aのイオン化ポテンシャの測定を行い、その結果に基づきエネルギーバンド図を計算した。本明細書において、イオン化ポテンシャルの値は、バンドギャップと電子親和力を加算した値であり、バンドギャップの値は、材料の単膜のエリプソで測定して得られる値を用いる。
【0435】
試料1Aとして、基板1000である石英基板上に第1の酸化物半導体層1001として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層1002として膜厚5nmのIn−Sn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層1003として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜を積層成膜した。それぞれの成膜条件は、スパッタリング法を用いて基板温度300℃、酸素雰囲気(酸素100%)下で成膜を行った。ターゲットは、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn系酸化物膜を成膜する。また、In−Sn−Zn系酸化物膜は、In:Sn:Zn=2:1:3[原子数比]の酸化物ターゲットを用いる。
【0436】
試料1Bは、試料1Aと同様に成膜した酸化物半導体積層に加熱処理を行い、混合領域を有する酸化物半導体積層を作製し、試料1Bとした。加熱処理は、温度650℃、窒素雰囲気下で1時間行った後、温度650℃、酸素雰囲気下で1時間行った。
【0437】
試料2Aとして、基板1000である石英基板上に第1の酸化物半導体層1001として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層1002として膜厚5nmのIn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層1003として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜を積層成膜した。それぞれの成膜条件は、スパッタリング法を用いて基板温度300℃、酸素雰囲気(酸素100%)下で成膜を行った。ターゲットは、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]の酸化物ターゲットを用い、In−Ga−Zn系酸化物膜を成膜する。また、In−Zn系酸化物膜は、In:Zn=2:1[原子数比]の酸化物ターゲットを用いる。
【0438】
試料2Bは、試料2Aと同様に成膜した酸化物半導体積層に加熱処理を行い、混合領域を有する酸化物半導体積層を作製し、試料2Bとした。加熱処理は、温度650℃、窒素雰囲気下で1時間行った後、温度650℃、酸素雰囲気下で1時間行った。
【0439】
試料1A、試料1B、試料2A、及び試料2Bにおいて、端面を切り出し、高分解能透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー製「H9000−NAR」:TEM)で加速電圧を300kVとし、試料1A、試料1B、試料2A、及び試料2Bの断面観察を行った。図17(B)に試料1A、図17(C)に試料1B、図18(B)に試料2A、図18(C)に試料2BのTEM像を示す。なお、試料1A及び試料2Aの模式図を図17(A)及び図18(A)に示す。図17(A)及び図18(A)において、積層する酸化物半導体層の界面を点線で図示しているが、模式的に示したものである。
【0440】
図17(B)(C)に示す試料1A及び試料1BのTEM像は、基板1000上に第1の酸化物半導体層1001である膜厚5nmの第1のIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層1002である膜厚5nmのIn−Sn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層1003である膜厚5nmの第2のIn−Ga−Zn系酸化物膜を積層成膜した酸化物半導体積層である。図17(B)の試料1AのTEM像は、積層する酸化物半導体層間に界面が確認できる。一方、酸化物半導体積層を形成後、加熱処理を行った試料1BのTEM像は、図17(C)に示すように積層する酸化物半導体層の間は明確な界面は確認できず、混合領域となっている。
【0441】
図18(B)(C)に示す試料2A及び試料2BのTEM像は、基板1000上に第1の酸化物半導体層1001である膜厚5nmの第1のIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層1002である膜厚5nmのIn−Zn系酸化物膜、第3の酸化物半導体層1003である膜厚5nmの第2のIn−Ga−Zn系酸化物膜を積層成膜した酸化物半導体積層である。図18(B)の試料2AのTEM像は、積層する酸化物半導体層間に界面が確認できる。一方、酸化物半導体積層を形成後、加熱処理を行った試料2BのTEM像は、図18(C)に示すように積層する酸化物半導体層の間は明確な界面は確認できず、混合領域となっている。
【0442】
なお、図17(B)(C)及び図18(B)(C)に示すように、試料1A、試料1B、試料2A、及び試料2Bは、第1の酸化物半導体層1001である第1のIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層1002であるIn−Sn−Zn系酸化物膜及びIn−Zn系酸化物膜、並びに第3の酸化物半導体層1003である第2のIn−Ga−Zn系酸化物膜は、結晶を含んでおり、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(CAAC−OS)膜であることが確認できる。また、第1の酸化物半導体層1001である第1のIn−Ga−Zn系酸化物膜は非晶質構造も含んでいる。
【0443】
なお、酸化物半導体積層において、それぞれの酸化物半導体層の結晶状態は特に限定されず、すべて結晶構造を有している酸化物半導体層でもよいし、すべて非晶質構造であってもよいし、結晶構造を有する酸化物半導体層と非晶質構造である酸化物半導体層とが混在してもよい。
【0444】
また、基板を単結晶シリコン基板として、同じ成膜条件で積層成膜して得られた試料1A及び試料2Aの表面からスパッタリングしながら紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spctroscopy)によるイオン化ポテンシャルを測定した結果を図19及び図21に示す。
【0445】
図19及び図21において、横軸はサンプル表面からのスパッタリング時間を表し、縦軸はイオン化ポテンシャルを表している。なお、In−Ga−Zn系酸化物膜とIn−Sn−Zn系酸化物膜のスパッタレート、In−Ga−Zn系酸化物膜とIn−Zn系酸化物膜のスパッタレートは等しいと仮定して試料の境界を表示している。
【0446】
図19から、In−Ga−Zn系酸化物膜に挟まれたIn−Sn−Zn系酸化物膜でイオン化ポテンシャルが低下することがわかる。なお、イオン化ポテンシャルは真空準位から価電子帯までのエネルギー差を表す。
【0447】
イオン化ポテンシャルの値からエリプソで測定したバンドギャップを引くことで伝導帯のエネルギーを算出し、この積層膜のバンド構造を作成した。ただし、In−Ga−Zn系酸化物膜とIn−Sn−Zn系酸化物膜のバンドギャップはそれぞれ3.2eV、2.8eVとした。その結果が図20になる。図20には、図4(C)に示したエネルギーバンド図のように埋め込みチャネルが形成されていることがわかる。
【0448】
図21から、In−Ga−Zn系酸化物膜に挟まれたIn−Zn系酸化物膜でイオン化ポテンシャルが低下することがわかる。なお、イオン化ポテンシャルは真空準位から価電子帯までのエネルギー差を表す。
【0449】
イオン化ポテンシャルの値からエリプソで測定したバンドギャップを引くことで伝導帯のエネルギーを算出し、この積層膜のバンド構造を作成した。ただし、In−Ga−Zn系酸化物膜とIn−Zn系酸化物膜のバンドギャップはそれぞれ3.2eV、2.6eVとした。その結果が図22になる。図22には、図4(C)に示したエネルギーバンド図のように埋め込みチャネルが形成されていることがわかる。
【0450】
本実施例において、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層としてIn−Ga−Zn系酸化物膜を用い、第1の酸化物半導体層及び第3の酸化物半導体層よりも小さいイオン化ポテンシャルを有し、且つ、小さいエネルギーギャップを有する第2の酸化物半導体層としてIn−Sn−Zn系酸化物膜、又はIn−Zn系酸化物膜を用いた積層は、図20、図22、又は図4(C)に示すエネルギーバンド図で表すことができることを確認した。第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層の材料の組み合わせは、特に限定されず、図20、図22、又は図4(C)に示すエネルギーバンド図となるように、実施者が用いる材料のエネルギーギャップを考慮して適宜材料を選択し、組み合わせればよい。
【実施例2】
【0451】
本実施例では、実施の形態1においてトランジスタ440a、440b、430として示した、第1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層の積層よりなる酸化物半導体積層を有するトランジスタ(実施例トランジスタ1乃至4、及び比較例トランジスタ1乃至4)の特性について計算を行った。
【0452】
本実施例の計算には、シノプシス社製シミュレーションソフトTCAD(Technology Computer−Aided Design)を用いた。
【0453】
実施例トランジスタ1、実施例トランジスタ2、比較例トランジスタ1、及び比較例トランジスタ2として、実施の形態1においてトランジスタ440a、440bで示したような、ゲート電極層上に設けられた膜厚100nmのゲート絶縁膜上に、第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層が順に積層された酸化物半導体積層と、酸化物半導体積層上に設けられたソース電極層及びドレイン電極層とを有するボトムゲート構造(チャネルエッチ型)のトランジスタを用いた。
【0454】
実施例トランジスタ3、実施例トランジスタ4、比較例トランジスタ3、及び比較例トランジスタ4として、実施の形態1においてトランジスタ430で示したような、ゲート電極層上に設けられた膜厚100nmのゲート絶縁膜上に、ソース電極層及びドレイン電極層と、該ソース電極層及びドレイン電極層上に第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層が順に積層された酸化物半導体積層と、を有するボトムゲート構造のトランジスタを用いた。
【0455】
実施例トランジスタ1乃至4、及び比較例トランジスタ1乃至4において、また、チャネル長(L)及びチャネル幅(W)を共に10μmとして、ドレイン電圧(Vd)を1Vとして計算した。
【0456】
また、実施例トランジスタ1乃至4に含まれる酸化物半導体積層の構成は、エネルギーギャップの異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を有し、第1の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Sn−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜を有する実施例トランジスタ1及び実施例トランジスタ3と、第1の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Sn−Zn系酸化物膜を有する実施例トランジスタ2及び実施例トランジスタ4とした。
【0457】
一方、比較例となる比較例トランジスタ1乃至4に含まれる酸化物半導体積層の構成は、エネルギーギャップの同じ第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を有し、第1の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜を有する(すなわち、酸化物半導体積層がIn−Ga−Zn系酸化物膜の単層でなる)比較例トランジスタ1及び比較例トランジスタ3と、第1の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Sn−Zn系酸化物膜、第2の酸化物半導体層として膜厚5nmのIn−Sn−Zn系酸化物膜を有する(すなわち、酸化物半導体層がITGO膜の単層でなる)比較例トランジスタ2及び比較例トランジスタ4とした。
【0458】
実施例トランジスタ1乃至4、及び比較例トランジスタ1乃至4に含まれるIn−Ga−Zn系酸化物膜は、バンドギャップを3.15eV、キャリアライフタイムを1nsec、バルク移動度を10cm/Vs、電子親和力を4.6eVとして計算し、In−Sn−Zn系酸化物膜は、バンドギャップを2.8eV、キャリアライフタイムを1nsec、バルク移動度を35cm/Vs、電子親和力を4.6eVとして計算した。
【0459】
計算によって得られた実施例トランジスタ1、実施例トランジスタ2、比較例トランジスタ1、及び比較例トランジスタ2のオフ電流値を図23(A)(B)に、実施例トランジスタ3、実施例トランジスタ4、比較例トランジスタ3、及び比較例トランジスタ4のオフ電流値を図25(A)(B)にそれぞれ示す。なお、図23(B)及び図25(B)は、図23(A)又は図25(A)においてドレイン電流が1.0×10−35A乃至1.0×10−25Aの範囲を拡大して示したグラフである。図23(A)(B)及び図25(A)(B)において、縦軸はドレイン電流(A)、横軸は、ゲート電圧(V)を示す。
【0460】
また、計算によって得られた実施例トランジスタ1、実施例トランジスタ2、比較例トランジスタ1、及び比較例トランジスタ2の電界効果移動度を図24に、実施例トランジスタ3、実施例トランジスタ4、比較例トランジスタ3、及び比較例トランジスタ4の電界効果移動度を図26にそれぞれ示す。図24及び図26において、縦軸は電界効果移動度(cm/Vs)、横軸はゲート電圧(V)を示す。
【0461】
同じ構造のトランジスタである実施例トランジスタ1、実施例トランジスタ2、比較例トランジスタ1、及び比較例トランジスタ2において、図23(A)(B)に示すようにオフ電流値が異なり、図24に示すように電界効果移動度も異なる値を示した。
【0462】
同様に、同じ構造のトランジスタである実施例トランジスタ3、実施例トランジスタ4、比較例トランジスタ3、及び比較例トランジスタ4において、図25(A)(B)に示すようにオフ電流値が異なり、図26に示すように電界効果移動度も異なる値を示した。
【0463】
特に本実施例では、図24及び図26で示す電界効果移動度において、酸化物半導体積層に用いる酸化物半導体材料及び該積層順によって、該値の違いは顕著であった。
【0464】
以上の結果より、同じ構造のトランジスタでありながら、バンドギャップが異なる酸化物半導体層を積層させることによって、トランジスタの電気特性を(本実施例においては電界効果移動度及びオフ電流特性)を様々に変更できることが示された。
【0465】
したがって酸化物半導体積層を用いることによって、トランジスタの電気特性をより精度よく制御することができ、所望の電気特性をトランジスタに付与することが可能となる。
【符号の説明】
【0466】
101 酸化物半導体層
102 酸化物半導体層
103 酸化物半導体層
105 混合領域
106 素子分離絶縁層
108 ゲート絶縁膜
110 ゲート電極
111 酸素過剰領域
112 酸素過剰領域
113 酸素過剰領域
116 チャネル形成領域
120 不純物領域
121a 低抵抗領域
121b 低抵抗領域
121c チャネル形成領域
122a 低抵抗領域
122b 低抵抗領域
122c チャネル形成領域
124 金属化合物領域
128 絶縁膜
130 絶縁膜
140 トランジスタ
142a ドレイン電極
142b ドレイン電極
144 酸化物半導体積層
146 ゲート絶縁膜
148 ゲート電極層
150 絶縁膜
152 絶縁膜
153 電極層
156 配線
162 トランジスタ
164 容量素子
185 基板
191 酸化物半導体膜
192 酸化物半導体膜
340 トランジスタ
343 トランジスタ
380a トランジスタ
380b トランジスタ
380c トランジスタ
383 トランジスタ
400 基板
401 ゲート電極層
402 ゲート絶縁膜
403 酸化物半導体積層
404a ソース電極層
404b ドレイン電極層
405a ソース電極層
405b ドレイン電極層
407 絶縁膜
409 絶縁膜
410 トランジスタ
413 トランジスタ
416 平坦化絶縁膜
418 トランジスタ
420 トランジスタ
421 ドーパント
427 絶縁膜
430 トランジスタ
431 酸素
433 トランジスタ
438 トランジスタ
440a トランジスタ
440b トランジスタ
440c トランジスタ
440d トランジスタ
443a トランジスタ
443b トランジスタ
449 トランジスタ
465a 配線層
465b 配線層
480 トランジスタ
483 トランジスタ
493 積層
601 基板
602 フォトダイオード
606a 半導体膜
606b 半導体膜
606c 半導体膜
608 接着層
613 基板
631 絶縁膜
632 絶縁膜
633 層間絶縁膜
634 層間絶縁膜
640 トランジスタ
641 電極層
642 電極層
643 導電層
645 導電層
656 トランジスタ
658 フォトダイオードリセット信号線
659 ゲート信号線
671 フォトセンサ出力信号線
672 フォトセンサ基準信号線
1000 基板
1001 酸化物半導体層
1002 酸化物半導体層
1003 酸化物半導体層
4001 基板
4002 画素部
4003 信号線駆動回路
4004 走査線駆動回路
4005 シール材
4006 基板
4008 液晶層
4010 トランジスタ
4011 トランジスタ
4013 液晶素子
4015 接続端子電極
4016 端子電極
4018 FPC
4019 異方性導電膜
4020 絶縁膜
4021 絶縁膜
4023 絶縁膜
4030 電極層
4031 電極層
4032 絶縁膜
4033 絶縁膜
4510 隔壁
4511 電界発光層
4513 発光素子
4514 充填材
9000 テーブル
9001 筐体
9002 脚部
9003 表示部
9004 表示ボタン
9005 電源コード
9100 テレビジョン装置
9101 筐体
9103 表示部
9105 スタンド
9107 表示部
9109 操作キー
9110 リモコン操作機
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングデバイス
9500 携帯電話機
9501 筐体
9502 表示部
9503 操作ボタン
9504 外部接続ポート
9505 スピーカ
9506 マイク
9507 操作ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜上にエネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層と、
前記酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜上に第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層を順に含む酸化物半導体積層と、
前記酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層とを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、前記第1の酸化物半導体層及び前記第3の酸化物半導体層のエネルギーギャップより小さいエネルギーギャップを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜、前記ソース電極層、及びドレイン電極層上にエネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層と、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜、前記ソース電極層、及びドレイン電極層上に第1の酸化物半導体層、第2の酸化物半導体層、及び第3の酸化物半導体層を順に含む酸化物半導体積層とを有し、
前記第2の酸化物半導体層は、前記第1の酸化物半導体層及び前記第3の酸化物半導体層のエネルギーギャップより小さいエネルギーギャップを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項3において、前記第2の酸化物半導体層は、前記第1の酸化物半導体層上に前記第1の酸化物半導体層上面及び側面を覆って形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項2又は請求項4において、前記第3の酸化物半導体層は前記第1の酸化物半導体層の側面並びに前記第2の酸化物半導体層上面及び側面を覆って形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記酸化物半導体積層にドーパントを含む低抵抗領域を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜上にエネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を形成し、
前記酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項9】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜上に第1の酸化物半導体層を形成し、
前記第1の酸化物半導体層上に前記第1の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが小さい第2の酸化物半導体層を形成し、
前記第2の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが大きい第3の酸化物半導体層を成膜して酸化物半導体積層を形成し、
前記酸化物半導体積層上にソース電極層及びドレイン電極層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層上にエネルギーギャップが異なる第1の酸化物半導体層及び第2の酸化物半導体層を含む酸化物半導体積層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
ゲート電極層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上にソース電極層及びドレイン電極層を形成し、
前記ゲート電極層と重なる前記ゲート絶縁膜、前記ソース電極層、及び前記ドレイン電極層上に第1の酸化物半導体層を形成し、
前記第1の酸化物半導体層上に前記第1の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが小さい第2の酸化物半導体層を形成し、
前記第2の酸化物半導体層よりエネルギーギャップが大きい第3の酸化物半導体層を成膜して酸化物半導体積層を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか一項において、前記酸化物半導体積層中に含まれる水素若しくは水を放出させる加熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか一項において、前記酸化物半導体積層に選択的にドーパントを導入することを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−38399(P2013−38399A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151178(P2012−151178)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】