説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】パッドと当該パッドの下地との密着性の向上および信頼性の向上を図ることが可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板1の一表面側に熱酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層構造を有する半導体装置であって、熱酸化膜1b上にパッド80を形成してある。半導体装置の製造方法では、半導体基板1の上記一表面側に熱酸化膜1bと熱酸化膜1bの表面の一部を覆うシリコン窒化膜32とを有する基本構造を形成してから、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する。基本構造の形成にあたっては、シリコン窒化膜32のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域に形成した部分を除去する。層間絶縁膜の形成後であってパッド80の形成前に層間絶縁膜50のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されている部分を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図28に示すように、シリコン基板311上にSiO膜312が形成され、SiO膜312上にBPSG膜313が形成されてなり、BPSG膜313上にパッド(ボンディングパッド)315が形成された半導体装置が知られている(特許文献1)。この半導体装置では、パッド315を含む金属配線パターンが、バリアメタル膜314とアルミニウム合金膜315aとの積層膜により形成されている。また、半導体装置は、BPSG膜313、金属配線パターンを覆うPSG膜16が形成され、PSG膜316上にSiN膜318が形成されており、PSG膜316とSiN膜318とからなる保護膜に、パッド315より面積が小さい開孔部319が形成されている。また、この半導体装置は、図29および図30に示すように、パッド315の外周部において当該パッド315の三辺にスリット350が形成されている(なお、図29は、図30のA−A’断面図である)。そして、半導体装置は、上述の図28に示したように、スリット350内にボイド317が形成されている。
【0003】
特許文献1には、上述のボイド317が形成された半導体装置によれば、保護膜によるパッド315の拘束力を弱めることができるから、ワイヤボンディング時に印加される超音波エネルギによりパッド315と下地のBPSG膜313との界面に加わる超音波衝撃のエネルギを減衰させることができ、パッド315とBPSG膜313との密着性を保つことができる旨の記載がされている。
【0004】
また、半導体装置としては、図31に示すように、シリコン基板201の一表面側に、熱型赤外線検出部203と熱型赤外線検出部203の出力を読み出すためのMOSトランジスタ204とを有する複数の画素部202が形成された赤外線センサも知られている(特許文献2)。ここにおいて、MOSトランジスタ204は、熱型赤外線検出部203に並設されている。また、この赤外線センサは、シリコン基板201における各熱型赤外線検出部203それぞれに対応する部位ごとに、熱絶縁用の空洞部211が形成されている。
【0005】
熱型赤外線検出部203は、シリコン基板201の上記一表面側における熱型赤外線検出部203の形成予定領域A1に形成されている。この熱型赤外線検出部203は、シリコン基板201の上記一表面側に形成された矩形枠状の支持部233aと、支持部233aの内側に配置される矩形状の赤外線吸収部233bと、支持部233aと赤外線吸収部233bとを連結する2つの梁部233cとを有している。
【0006】
熱型赤外線検出部203は、シリコン基板201の上記一表面側に形成され圧縮応力を有する熱絶縁用シリコン酸化膜231と当該熱絶縁用シリコン酸化膜231上に形成され引張応力を有する熱絶縁用シリコン窒化膜232との積層膜からなる熱絶縁層233と、熱絶縁層233上に形成された熱電対型の感温部236と、熱絶縁層233の表面側で感温部236を覆うように形成されたBPSG膜からなる層間絶縁膜249と、層間絶縁膜249上に形成されたパッシベーション膜260との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。なお、感温部236は、熱絶縁層233上に形成されたn形ポリシリコン層234とp形ポリシリコン層235とを有しており、n形ポリシリコン層234およびp形ポリシリコン層235それぞれの大部分が、層間絶縁膜249により覆われている。
【0007】
また、MOSトランジスタ204は、シリコン基板201の上記一表面側で、各画素部202それぞれにおけるMOSトランジスタ204の形成予定領域A2に形成されている。ここで、MOSトランジスタ204は、シリコン基板201の上記一表面側にp形(p)のウェル領域241が形成され、ウェル領域241内に、n形(n)のドレイン領域243とn形(n)のソース領域244とが離間して形成されている。また、ウェル領域241においてドレイン領域243とソース領域244との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜245を介してポリシリコン層からなるゲート電極246が形成されている。また、ドレイン領域243上にはドレイン電極247が形成され、ソース領域244上にはソース電極248が形成されている。
【0008】
また、上述の赤外線センサは、層間絶縁膜249上に形成された複数のパッド280(図31(a)参照)を備えており、パッシベーション膜260に、パッド280を露出させる開口部(図示せず)が形成されている。
【0009】
また、特許文献2には、上述の赤外線センサの製造方法が提案されている。この赤外線センサの製造方法によれば、シリコン基板201の上記一表面側における熱型赤外線検出部203の形成予定領域A1に圧縮応力を有する熱絶縁用シリコン酸化膜231と引張応力を有する熱絶縁用シリコン窒化膜232との積層膜からなる熱絶縁層233を形成し、その後、シリコン基板201の上記一表面側におけるMOSトランジスタ204の形成予定領域A2にウェル領域241を形成する。その後、シリコン基板201の上記一表面側を熱酸化することによりゲート絶縁膜245を形成する。その後、熱絶縁層233上に感温部236の構成要素を形成してから、ウェル領域241内にドレイン領域243およびソース領域244を形成する。その後、シリコン基板201の上記一表面側に層間絶縁膜249を形成した後、各パッド280などの基礎となる所定膜厚(例えば、1μm)の金属膜を成膜してから当該金属膜をパターニングすることで各パッド280などを形成する。続いて、層間絶縁膜249の表面側にパッシベーション膜260を形成してから、パッシベーション膜206に上記開口部を形成することで各パッド280を露出させ、その後、シリコン基板201に空洞部211を形成する。なお、上述の製造方法では、空洞部211を形成する空洞部形成工程が終了するまでの全工程をウェハレベル(ウェハの状態)で行い、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサに分離する分離工程を行うようにしいている。
【0010】
上述の製造方法において、熱絶縁層233を形成する熱絶縁層形成工程では、まず、シリコン基板201の上記一表面側の全面に熱絶縁用シリコン酸化膜231と熱絶縁用シリコン窒化膜232とからなる熱絶縁層233を形成し、その後、当該熱絶縁層233のうち熱型赤外線検出部203の形成予定領域A1に対応する部分のみを残してMOSトランジスタ204の形成予定領域A2に対応する部分をエッチング除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−226405号公報
【特許文献2】特開2010−48803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、図28に示した半導体装置では、パッド315の外周部近傍にボイド317が形成されているので、長期信頼性が低くなってしまう。また、この半導体装置では、製造歩留まりが低くなってしまう。
【0013】
また、図31に示した赤外線センサでは、パッド280にAuワイヤからなるボンディングワイヤを超音波ワイヤボンディングにより接合した後に、ボンディングワイヤの引張試験を行ったところ、パッド280の膜厚が1μmの場合、パッド280と当該パッド280の下地である層間絶縁膜249との積層膜の一部が剥れてしまうという知見を得た。また、本願発明者らは、パッド280の膜厚を2μmに設定しておくことにより、ボンディングワイヤの引張試験において上記積層膜の一部が剥れるのを防止することが可能となる知見を得た。しかしながら、パッド280の基礎となるパターニング前の金属膜は、パッド280以外の構成要素の基礎ともなるので、膜厚が厚くなると、パッド280の外周部およびパッド280以外の構成要素を覆うパッシベーション膜260のカバレッジが低下して信頼性が低下してしまうなどの懸念がある。
【0014】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、パッドと当該パッドの下地との密着性の向上および信頼性の向上を図ることが可能な半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の半導体装置は、半導体基板の一表面側に熱酸化膜とシリコン窒化膜と層間絶縁膜とパッシベーション膜との積層構造を有する半導体装置であって、前記熱酸化膜上にパッドを形成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体基板の一表面側に熱酸化膜と前記熱酸化膜の表面の一部を覆うシリコン窒化膜とを有する基本構造を形成してから、前記半導体基板の前記一表面側に層間絶縁膜を形成し、その後、パッドを形成し、更にその後、パッシベーション膜を形成してから、前記パッシベーション膜に前記パッドを露出させる開口部を形成するようにし、前記基本構造の形成にあたっては、前記シリコン窒化膜のうち前記熱酸化膜における前記パッドの形成予定領域に形成した部分を除去するようにし、前記層間絶縁膜の形成後であって前記パッドの形成前に前記層間絶縁膜のうち前記熱酸化膜における前記パッドの形成予定領域上に形成されている部分を除去するようにし、前記パッドの形成にあたっては、前記熱酸化膜における前記形成予定領域上に前記パッドを形成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、半導体基板の一表面側に熱酸化膜と前記熱酸化膜の表面を覆うシリコン窒化膜とを有する基本構造を形成してから、前記シリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成し、その後、前記シリコン窒化膜と前記層間絶縁膜との積層膜のうち前記熱酸化膜におけるパッドの形成予定領域上に形成されている部分を除去し、その後、前記熱酸化膜における前記形成予定領域上に前記パッドを形成し、更にその後、パッシベーション膜を形成してから、前記パッシベーション膜に前記パッドを露出させる開口部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体装置においては、パッドと当該パッドの下地との密着性の向上および信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法においては、パッドと当該パッドの下地との密着性の向上および信頼性の向上を図ることが可能な半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態の半導体装置の要部概略断面図である。
【図2】同上の半導体装置である赤外線センサの平面レイアウト図である。
【図3】同上の半導体装置である赤外線センサの等価回路図である。
【図4】同上の半導体装置である赤外線センサの要部等価回路図である。
【図5】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。
【図6】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の概略平面レイアウト図である。
【図7】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図8】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図9】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図10】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。
【図11】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。
【図12】同上の半導体装置である赤外線センサの冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図13】同上の半導体装置である赤外線センサの温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。
【図14】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図15】同上の半導体装置である赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。
【図16】同上の半導体装置である赤外線センサの要部説明図である。
【図17】同上の半導体装置である赤外線センサに関し、(a)は要部の平面レイアウト図、(b)は、(a)のツェナダイオードの拡大図、(c)はツェナダイオードの概略断面図である。
【図18】同上の半導体装置である赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図19】同上の半導体装置である赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図20】同上の半導体装置である赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図21】同上の半導体装置である赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図22】同上の半導体装置の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図23】同上の半導体装置である赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図24】同上の半導体装置である赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図25】同上の半導体装置である赤外線センサの他の構成例の要部概略断面図である。
【図26】同上の半導体装置の他の構成例の要部概略断面図である。
【図27】同上の半導体装置の製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図28】従来例の半導体装置の要部断面図である。
【図29】同上の半導体装置の主要工程断面図である。
【図30】同上の半導体装置の要部概略平面図である。
【図31】他の従来例の半導体装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は要部概略平面図、(c)は(b)のA−A’概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態の半導体装置は、図1に示すように、半導体基板1の一表面側に熱酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層構造を有する半導体装置であって、熱酸化膜1b上にパッド80を形成してある。
【0022】
以下、半導体装置の一例として赤外線センサについて図2〜図17に基づいて説明する。
【0023】
赤外線センサ100は、図2に示すように、a×b個(図示例では、8×8個)の画素部2が、半導体基板1の一表面側においてa行b列(図示例では、8行8列)の2次元アレイ状に配置されている。なお、図示例では、a=8、b=8としてあるが、a≧2、b≧2であればよい。
【0024】
画素部2は、図3〜図8に示すように、赤外線による熱エネルギを電気エネルギに変換する熱電変換部である感温部30および感温部30の出力電圧を取り出すためのMOSトランジスタ4を具備している。
【0025】
上述のMOSトランジスタ4は、図7、図8、図15に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形のウェル領域41内で、第2導電形のソース領域44と第2導電形のドレイン領域43とが離間して形成されている。本実施形態では、ウェル領域41がチャネル形成用領域を構成している。なお、図3には、第1導電形をp形、第2導電形をn形としてMOSトランジスタ4をnチャネルMOSトランジスタとした場合の赤外線センサ100の等価回路図を示してある。また、図3の等価回路図では、感温部30を抵抗の図記号で表してある。
【0026】
また、図3、図5、図7から分かるように、赤外線センサ100は、各列のb個(8個)の画素部2の感温部30の一端がMOSトランジスタ4のソース領域44−ドレイン領域43を介して各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第1の配線101を備えている。
【0027】
また、赤外線センサ100は、各行の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続されたa個(8個)の第2の配線102と、各行のMOSトランジスタ4のウェル領域41が各列ごとに共通接続されたb個(8個)の第3の配線103と、各列のa個(8個)の感温部30の他端が各列ごとに共通接続されたb個(図3に図示した例では、8個)の第4の配線104とを備えている。
【0028】
上述の赤外線センサ100は、第1の配線101が各別に接続された出力用のb個の第1のパッドVout1〜Vout8と、第2の配線102が各別に接続された画素部選択用のa個の第2のパッドVsel1〜Vsel8と、各第3の配線103が共通接続された第3のパッドVchと、第4の配線104が共通接続された基準バイアス用の第4のパッドVrefinとを備えている。しかして、赤外線センサ100は、全ての感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。例えば、赤外線センサ100を制御する制御手段であるIC素子によって、MOSトランジスタ4が順次、オン状態になるように各画素部2を選択するための第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位を制御することで、IC素子が、各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。なお、各パッドVout1〜Vout8、Vsel1〜Vsel8、Vch、Vrefin、それぞれが、図1におけるパッド80を構成しているので、説明の便宜上、区別する必要がない場合には、各パッドVout1〜Vout8、Vsel1〜Vsel8、Vch、Vrefinのいずれも、パッド80として説明する。
【0029】
ここで、第1のパッドVout1〜Vout8の電位をVout、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位をVs、第3のパッドVchの電位をVwell、第4のパッドVrefinの電位をVref、感温部30の出力電圧をVo、チャネル形成用領域であるウェル領域41とソース領域44とで構成される第1の寄生ダイオードおよびウェル領域41とドレイン領域43とで構成される第2の寄生ダイオードのしきい値電圧をVthとする。上述のIC素子は、MOSトランジスタ4がnMOSトランジスタである場合、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVon、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタをオフ状態とする際の第2のパッド102の電位VsをVoffとし、第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsをVonとしたときに、
−Vth<{Vwell−(Vref+Vo)}<Vth
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御することが好ましい。
【0030】
また、IC素子は、MOSトランジスタ4がpMOSトランジスタである場合、
−Vth<{(Vref+Vo)−Vwell}<Vth
の関係を満たすように設定されたVref、Vwellの条件で赤外線センサ100を制御することが好ましい。
【0031】
本実施形態では、半導体基板1として第2導電形のシリコン基板を用いており、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードの逆方向のブレークダウン電圧が−10V程度になる一方で、Vthが0.6V〜0.7V程度となる。そこで、IC素子が、例えば、第4のパッドVrefの電位Vrefを1.2V、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2V、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオン状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVonを5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧(Vref+Vo)を読み出すことが可能となる。また、第2の配線102に接続されたa個(8個)のMOSトランジスタ4をオフ状態とする際の第2のパッドVsel1〜Vsel8の電位VsであるVoffを0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、第1のパッドVout1〜Vout8から画素部2の出力電圧は読み出されない。
【0032】
また、赤外線センサ100は、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために、各第2の配線102それぞれにカソードが接続された複数のツェナダイオードZD(図3、図4、図17参照)を備えている。ここで、ツェナダイオードZDは、図17に示すように、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものである。そして、赤外線センサ100は、各ツェナダイオードZDの第1拡散領域81が共通接続された第5のパッドVzdを備えており、第5のパッドVzdの電位をVhogoとするとき、IC素子は、VhogoとVwellとを異ならせることが好ましい。ここで、IC素子は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第5のパッドVzdの電位Vhogoを0Vとすることが好ましい。
【0033】
また、赤外線センサ100は、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備えており、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、IC素子が、Vwell=Vsubとすることが好ましい。すなわち、IC素子は、例えば、上述のように、第3のパッドVchの電位Vwellを1.2Vとする場合、第6のパッドVsuの電位Vsubを1.2Vとすることが好ましい。なお、図4の等価回路図には、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3、第1拡散領域81と半導体基板1とで構成される第4の寄生ダイオードD4も記載してある。また、第5のパッドVzdおよび第6のパッドVsuも、それぞれ、図1におけるパッド80を構成しているので、説明の便宜上、区別する必要がない場合には、いずれも、パッド80として説明する。
【0034】
赤外線センサ100は、感温部30が埋設された熱型赤外線検出部3とMOSトランジスタ4とを有する複数(a×b個)の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、半導体基板1の上記一表面は、Si(100)面としてある。感温部30は、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図5参照)を直列接続することにより構成されている。
【0035】
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図7、図8参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図7、図8参照)に形成されている。
【0036】
赤外線センサ100は、図5〜図8に示すように、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3c(図5参照)とを有している。なお、図5における熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
【0037】
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。
【0038】
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図5における感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、赤外線センサ100は、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続した感温部30とすれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。しかも、このような赤外線センサ100は、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合の感温部30に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
【0039】
熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。これにより、赤外線センサ100は、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
【0040】
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成された熱酸化膜1bと、当該熱酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成してある。パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してあるが、これに限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
【0041】
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、熱酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
【0042】
また、赤外線センサ100は、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されている。そして、赤外線センサ100は、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図7(b)、図8(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4nに設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。
【0043】
また、各画素部2は、空洞部11の内周形状が矩形状である。各画素部2における連結片3cは、図5および図11(a)に示すように、平面視X字状に形成されており、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
【0044】
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36により電気的に接続した複数個(図5に示した例では、9個)の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。要するに、サーモパイル30aは、各温接点T1が、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、各冷接点T2が、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。なお、赤外線センサ100では、サーモパイル30aの各n形ポリシリコン層34および各p形ポリシリコン層35それぞれにおいて、上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位および半導体基板1の上記一表面側のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
【0045】
また、赤外線センサ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。ここで、図5の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5および図9に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してある。これに対し、図5の上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図5および図10に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。また、図5の上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、本実施形態の赤外線センサ100では、図5の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図7(b)、図8(b)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
【0046】
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図11参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、図11に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、半導体基板1としてシリコン基板を用いており、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
【0047】
また、赤外線センサ100は、図11および図16(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサ100では、図16(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、赤外線センサ100は、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図11に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
【0048】
また、赤外線センサ100は、図5、図9、図10に示すように、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用配線(故障診断用のヒータ)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、赤外線センサ100のa×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することができる。
【0049】
要するに、赤外線センサ100は、製造途中での検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することができる。また、赤外線センサ100では、上述の検査時や使用時において、a×b個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、赤外線センサ100では、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、この赤外線センサ100では、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。上述の故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
【0050】
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態の赤外線センサ100では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
【0051】
ところで、本実施形態の赤外線センサ100では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4nに設定するようにしている。しかして、本実施形態の赤外線センサ100では、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
【0052】
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができる。また、本実施形態の赤外線センサ100では、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
【0053】
また、赤外線センサ100は、図8、図12、図13に示すように、感温部30の接続部36と接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
【0054】
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
【0055】
MOSトランジスタ4は、図7、図8、図15に示すように、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p)のウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、第2導電形であるn形(n)のドレイン領域43と第2導電形であるn形(n)のソース領域44とが離間して形成されている。さらに、ウェル領域41内には、ドレイン領域43とソース領域44とを囲む第1導電形であるp形(p++)のチャネルストッパ領域42が形成されている。
【0056】
ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
【0057】
また、ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
【0058】
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してソース領域44と電気的に接続されている。
【0059】
赤外線センサ100の各画素部2では、図3、図5に示すように、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が第4の配線104に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、第1の配線101と電気的に接続され、ゲート電極46が、n形ポリシリコン配線からなる第2の配線102と電気的に接続されている。また、各画素部2では、図7、図8に示すように、MOSトランジスタ4のチャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる電極49が形成されている。しかして、ウェル領域41は、チャネルストッパ領域42および電極49を介して、第3の配線103と電気的に接続されている。なお、電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してチャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
【0060】
また、上述のツェナダイオードZDは、図17に示すように、第1拡散領域81上にアノード電極83が形成され、第2拡散領域82上に2つのカソード電極84a,84bが形成されている。このツェナダイオードZDは、アノード電極83が、第5のパッドVzdと電気的に接続され、一方のカソード電極84aが、1つの第2の配線102を介して当該第2の配線102に接続されたMOSトランジスタ4のゲート電極46と電気的に接続され、他方のカソード電極84bが、当該第2の配線102に接続された第2のパッドVsel1〜Vsel8の1つと電気的に接続されている。
【0061】
上述の赤外線センサ100によれば、通電されることにより発生するジュール熱によって温接点T1を温める故障診断用配線139を備えているので、故障診断用配線139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れる。しかも、赤外線センサ100は、故障診断用配線139が、熱型赤外線検出部3において半導体基板1の空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、故障診断用配線139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
【0062】
ここで、赤外線センサ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、故障診断用配線139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、赤外線センサ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。また、赤外線センサ100の使用時の自己診断は、例えば、上述のIC素子に設けられた自己診断回路により定期的に行うようにすればよいが、必ずしも定期的に行う必要はない。
【0063】
また、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離されている。そして、赤外線センサ100は、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れる。しかも、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aにおける全ての第2の薄膜構造部3aaに跨って故障診断用配線139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、赤外線センサ100では、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
【0064】
また、赤外線センサ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減できる。
【0065】
また、赤外線センサ100は、故障診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、故障診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
【0066】
また、赤外線センサ100は、赤外線吸収部33および故障診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側で2次元アレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの故障診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
【0067】
ところで、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域(パッド形成領域)は、半導体基板1の上記一表面側において、シリコン窒化膜32を有する熱型赤外線検出部3の形成用領域A1を避けて設定してある。
【0068】
以下、赤外線センサ100の基本的な製造方法の一例について図18〜図22を参照して説明する。
【0069】
まず、第2導電形のシリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図18(a)に示す構造を得る。ここにおいて、第1のシリコン酸化膜31は、半導体基板1を所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成してあり、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
【0070】
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側に第1導電形であるp形(p)のウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側におけるウェル領域41内に第1導電形であるp形(p++)のチャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行う。その後、MOSトランジスタ4のしきい値電圧Vthを制御するためのイオン注入工程を行うことによって、図18(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜51を選択的に形成する。その後、ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、第1導電形の不純物(ここでは、p形の不純物であり、例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程およびイオン注入工程それぞれにおいてイオン注入後に、ドライブインを行うことで半導体基板1の上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜52を選択的に形成する。赤外線センサ100では、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、半導体基板1の上記一表面側の熱酸化膜1bを構成している。したがって、上述のイオン注入工程が終了した時点では、図22(a)に示すように半導体基板1の上記一表面側に熱酸化膜1bと熱酸化膜1bの表面の一部を覆うシリコン窒化膜32とを有する基本構造が形成されている。なお、図22(a)において、熱酸化膜1bのうちシリコン窒化膜32で覆われている部分の膜厚は0.3μm、シリコン窒化膜32で覆われていない部分の膜厚は0.8μm程度である。
【0071】
上述のイオン注入工程の後、第2導電形であるn形(n)のドレイン領域43および第2導電形であるn形(n)のソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行う。このソース・ドレイン形成工程では、ウェル領域41におけるドレイン領域43およびソース領域44それぞれの形成予定領域に第2導電形の不純物(ここでは、n形の不純物であり、例えば、リンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことによって、ドレイン領域43およびソース領域44を形成する。
【0072】
ソース・ドレイン形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に例えば熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46、第2の配線102(図5参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、第2の配線102、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形の不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および第2の配線102に対応する部分にn形の不純物例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および第2の配線102を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図19(a)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
【0073】
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に各コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50f(図11、図12、図14参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図19(b)に示す構造を得る。層間絶縁膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。この層間絶縁膜形成工程が終了した時点では、熱酸化膜1bにおけるパッド80(図1参照)の形成予定領域付近については、図22(b)に示すような構造が得られる。また、コンタクトホール形成工程において、層間絶縁膜50のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されている部分を除去するようにしている。したがって、コンタクトホール形成工程が終了した時点では、熱酸化膜1bにおけるパッド80(図1参照)の形成予定領域付近については、図22(c)に示すような構造が得られる。ここにおいて、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域は、当該形成予定領域の周部よりも膜厚が薄く0.4μm程度となっている。これは、コンタクトホール形成工程でのオーバーエッチング時間(層間絶縁膜50のジャストエッチング時間からの追加のオーバーエッチング時間)に起因するものであるが、オーバーエッチングにより、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に層間絶縁膜50が残存するのを防止することが可能となる。なお、図22(c)に示した例では、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域を含む平面へのシリコン窒化膜32の投影領域と熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域との距離H1を2μmに設定してあるが、この数値は一例であり特に限定するものではない。
【0074】
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側の全面に接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッド80など(図3、図1参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、1μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、第4の配線104、第1の配線101、第3の配線103、各パッド80などを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図20(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2が形成される。
【0075】
上述の金属膜パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図20(b)に示す構造を得る。
【0076】
上述のパッシベーション膜形成工程の後、シリコン酸化膜31、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60などを備え、感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aaおよび連結片3cを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図21(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、各スリット13,14を形成している。
【0077】
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパッシベーション膜60に各パッド80を各別に露出させる各開口部61を形成する開口部形成工程を行うことによって、図22(d)に示す構造を得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。なお、開口部61の投影領域とパッド80の予定領域との距離H2を5μmに設定してあるが、この数値は一例であり特に限定するものではない。
【0078】
次に、各スリット13,14をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図21(b)に示す構造の赤外線センサ100を得る。ここで、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサ100に分離する分離工程を行えばよい。また、上述の製造方法では、ツェナダイオードZDの製造工程について説明を省略したが、周知の一般的なツェナダイオードの製造方法を適宜採用すればよい。
【0079】
上述の赤外線センサ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面が(110)面の単結晶のシリコン基板を用いてもよい。
【0080】
ところで、上述のIC素子は、赤外線センサ100を制御する制御回路、赤外線センサ100の各パッドVout1〜Vout8,Vsel1〜Vsel8,Vrefin,Vsu,Vzdそれぞれと電気的に接続される複数のパッドと、第1のパッドVout1〜Vout8それぞれに電気的に接続されたパッドの出力電圧を増幅する増幅回路、第1のパッドVout1〜Vout8それぞれに電気的に接続されたパッドの出力電圧を択一的に上記増幅回路に入力するマルチプレクサなどを備えた回路構成としてあるが、回路構成は特に限定するものではない。また、IC素子は、上述の自己診断回路も備えている。
【0081】
赤外線センサ100のパッド80とIC素子のパッドとは、ボンディングワイヤ90(図1参照)を介して接続すればよい。この場合のボンディングワイヤ90としては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
【0082】
ここで、赤外線センサ100では、例えばIC素子によって上述のVref、Vwellの条件で制御することによって、MOSトランジスタ4がオンのときに、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。すなわち、赤外線センサ100は、MOSトランジスタ4がオンのときに、チャネル形成用領域であるウェル領域41を通るリーク電流が流れるのを抑制することができ、S/N比の向上を図れる。
【0083】
また、赤外線センサ100は、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止するために各第2の配線102それぞれにカソード(カソード電極84a)が接続された複数のツェナダイオードZDを備えているので、各MOSトランジスタ4のゲート電極46・ソース電極48間に過電圧が印加されるのを防止することができ、ゲート絶縁膜45の絶縁破壊を防止することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態の赤外線センサ100は、上述のツェナダイオードZDが、半導体基板1の上記一表面側に形成された第1導電形の第1拡散領域81内に第2導電形の第2拡散領域82が形成されたものであり、各ツェナダイオードZDの第1拡散領域81が共通接続された第5のパッドVzdを備えているので、例えば上述のIC素子によってVhogoとVwellとを異ならせることによって、MOSトランジスタ4のゲート絶縁膜45を保護しつつ、S/N比の向上を図れる。
【0085】
また、赤外線センサ100は、例えば上述のIC素子によって、Vref=Vwellとするようにすれば、感温部30の出力電圧Voが小さい場合でも、第1の寄生ダイオードおよび第2の寄生ダイオードにリーク電流が流れるのを抑制することができる。ここで、赤外線センサ100において、第4のパッドVrefinと第3のパッドVchとを1個に共通化すれば、パッド数の低減を図れる。赤外線センサ100では、IC素子によって、VrefとVwellとを略同じとすることが好ましく、Vref=Vwellとすることがより好ましい。
【0086】
また、赤外線センサ100では、半導体基板1の導電形が第2導電形であり、半導体基板1が接続された基板バイアス用の第6のパッドVsuを備え、第6のパッドVsuの電位をVsubとするとき、IC素子122が、第3のパッドVchの電位Vwellと第6のパッドVsuの電位Vsubとを等しくする、すなわち、赤外線センサ100は、Vwell=Vsubとすることによって、チャネル形成用領域であるウェル領域41と半導体基板1との電位差をなくすことが可能となり、ウェル領域41と半導体基板1とで構成される第3の寄生ダイオードD3(図4参照)にリーク電流が流れるのを抑制することが可能となる。この場合、赤外線センサ100において、第4のパッドVrefinと第3のパッドVchと第6のパッドVsuとを1個に共通化すれば、パッド数の低減を図れる。
【0087】
また、赤外線センサ100は、半導体基板1の導電形が第2導電形であって、第1導電形がp形、第2導電形がn形であり、例えば上述のIC素子によって、Vhogo≦Voff、且つ、Vhogo≦Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。
【0088】
また、赤外線センサ100について、ここまでは、第1導電形がp形、第2導電形がn形である一例(この一例では、MOSトランジスタ4が、nMOSトランジスタである)について説明したが、第1導電形がn形、第2導電形がp形でもよい。この他の例(この他の例では、MOSトランジスタ4が、pMOSトランジスタである)では、例えば上述のIC素子が、Vhogo≧Voff、且つ、Vhogo≧Vsubとすることにより、ツェナダイオードZDのリーク電流を抑制することができる。
【0089】
ここで、半導体基板1の導電形は、n形に限らず、例えば、図23〜図25に示すようにp形でもよい。図23は、p形の半導体基板1がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n)とする例である。また、図24は、p形の半導体基板1に形成したp形(p)のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をn形(n)とする例である。また、図25は、p形の半導体基板1に形成したn形のウェル領域41がチャネル形成用領域を構成し、ドレイン領域43およびソース領域44の導電形をp形(p)とする例である。
【0090】
なお、上述の赤外線センサ100において、半導体基板1の空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。また、赤外線センサ100は、熱電変換部である感温部30を具備する複数の画素部2が半導体基板1の一表面側においてアレイ状に配置されたものであればよく、構造は特に限定するものではなく、感温部30を構成するサーモパイル30aの数も複数に限らず、1つでもよい。また、感温部30は、1ないし複数のサーモパイル30aにより構成されるものに限らず、例えば、熱電対でもよいし、抵抗ボロメータでもよいし、焦電素子でもよく、感温部30の構成に応じて、IC素子の回路構成を適宜変更すればよい。
【0091】
以上説明した赤外線センサ100からなる半導体装置は、半導体基板1の上記一表面側に熱酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層構造を有する半導体装置であって、熱酸化膜1b上にパッド80を形成してある。ここにおいて、半導体装置のパッド80を膜厚が1μmの金属膜(Al−Si膜)として、パッド80にAuワイヤからなるボンディングワイヤ90を超音波ワイヤボンディングにより接合してから、ボンディングワイヤ90の引張試験を行ったところ、ボンディングワイヤ90が剪断するだけで、パッド80と当該パッド80の下地である層間絶縁膜50との積層膜の一部が剥れたり、パッド80が剥れることはなかった。また、ボンディングワイヤ90のシェア試験を行っても、パッド80と当該パッド80の下地である層間絶縁膜50との積層膜の一部が剥れたり、パッド80が剥れることはなかった。したがって、本実施形態の半導体装置では、パッド80と当該パッド80の下地との密着性の向上および信頼性の向上を図ることが可能となる。これは、本実施形態の半導体装置では、パッド80の下地を、層間絶縁膜50に比べて、破壊強度が高く、且つ、パッド80を構成する金属膜との密着性の高い熱酸化膜1bにより構成しているためであると考えられる。ここで、本実施形態の半導体装置では、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域の膜厚を当該形成予定領域の周部の膜厚よりも薄く設定しておくことにより、製造時の層間絶縁膜50の膜厚の面内ばらつきや層間絶縁膜50のエッチング速度の面内ばらつきなどに起因して熱酸化膜1bとパッド80との間に層間絶縁膜50の一部が残存するのを防止することが可能となる。
【0092】
また、上述の半導体装置の製造方法では、図22に示すように、半導体基板1の上記一表面側に熱酸化膜1bと熱酸化膜1bの表面の一部を覆うシリコン窒化膜32とを有する基本構造を形成してから、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成し、その後、パッド80を形成し、更にその後、パッシベーション膜60を形成してから、パッシベーション膜60にパッド80を露出させる開口部61を形成するようにしている。ここにおいて、この半導体装置の製造方法では、基本構造の形成にあたっては、シリコン窒化膜32のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域に形成した部分を除去するようにし、層間絶縁膜50の形成後であってパッド80の形成前に層間絶縁膜50のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されている部分を除去するようにし、パッド80の形成にあたっては、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上にパッド80を形成する。しかして、この半導体装置の製造方法によれば、パッド80と当該パッド80の下地との密着性の向上および信頼性の向上を図ることが可能な半導体装置を提供することが可能となり、また、図28の従来例のようなボイド317を形成する必要もないから、製造歩留まりも向上する。この製造方法においては、層間絶縁膜50のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されている部分を除去する際に、熱酸化膜1bの一部をオーバーエッチングすることにより、製造時の層間絶縁膜50の膜厚の面内ばらつきや層間絶縁膜50のエッチング速度の面内ばらつきなどに起因して熱酸化膜1bとパッド80との間に層間絶縁膜50の一部が残存するのを防止することが可能となる。
【0093】
ところで、上述の半導体装置の構造に限らず、例えば、図26に示すように、シリコン窒化膜32と層間絶縁膜50との積層膜に開口部61を形成し且つ開口部61においてシリコン窒化膜32での開口面積よりも層間絶縁膜50での開口面積を大きくしてある構造を採用してもよい。この図26の半導体装置では、図1の半導体装置に比べて、パッド80の基礎となる金属膜のカバレッジを向上させることが可能となり、信頼性を、より向上させることが可能となる。このような半導体装置を上述の赤外線センサ100で実現するには、熱酸化膜1bにおいてパッド80の形成予定領域となる部分が、第1のシリコン酸化膜31のみにより構成されるように、上述の絶縁層パターニング工程で用いるフォトマスクを設計変更すればよい。すなわち、絶縁層パターニング工程が終了した時点で第1のシリコン酸化膜31上にシリコン窒化膜32が残るように、上述のフォトマスクを設計変更すればよい。
【0094】
この図26に示した構造を有する半導体装置の製造方法について図27に基づいて説明する。
【0095】
半導体基板1の上記一表面側に熱酸化膜1bと熱酸化膜1bの表面を覆うシリコン窒化膜32とを有する基本構造を形成することによって、図27(a)に示す構造を得る。
【0096】
その後、シリコン窒化膜32上に層間絶縁膜50を形成することによって、図27(b)に示す構造を得る。
【0097】
その後、シリコン窒化膜32と層間絶縁膜50との積層膜のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されている部分を除去することによって、図27(d)に示す構造を得る。ここでは、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されているシリコン窒化膜32をエッチングストッパ層として層間絶縁膜50のエッチングを行い(上述の赤外線センサ100の製造方法では、コンタクトホール形成工程において、このエッチングを行う)、その後、フォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とを利用して熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されているシリコン窒化膜32を除去する。ここにおいて、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域は、当該形成予定領域の周部よりも膜厚が薄く0.25μm程度となっている。これは、シリコン窒化膜32のエッチング時のオーバーエッチング時間(シリコン窒化膜32のジャストエッチング時間からの追加のオーバーエッチング時間)に起因するものであるが、オーバーエッチングにより、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上にシリコン窒化膜32が残存するのを防止することが可能となる。なお、図27(d)に示した例では、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域を含む平面への層間絶縁膜50の投影領域と熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域との距離H11を2μmに設定してあるが、この数値は一例であり特に限定するものではない。
【0098】
図27(d)の構造を得た後、熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上にパッド80を形成し、更にその後、パッシベーション膜60を形成してから、パッシベーション膜60にパッド80を露出させる開口部61を形成することによって、図27(e)に示す構造を得る。
【0099】
このような半導体装置の製造方法によれば、熱酸化膜1bにおけるパッド80直下の部位の膜厚のばらつきを小さくすることが可能となる。また、図27(e)に示すように、開口部61の投影領域とパッド80の予定領域との距離H12を図22(d)における距離H2と同じ(例えば、5μm)に設定した場合に、パッド80の基礎となる金属膜のカバレッジを向上させることが可能となり、信頼性を、より向上させることが可能となる。また、この製造方法においては、シリコン窒化膜32のうち熱酸化膜1bにおけるパッド80の形成予定領域上に形成されている部分を除去する際に、熱酸化膜1bの一部をオーバーエッチングすることにより、製造時のシリコン窒化膜32の膜厚の面内ばらつきやシリコン窒化膜32のエッチング速度の面内ばらつきなどに起因して熱酸化膜1bとパッド80との間にシリコン窒化膜32の一部が残存するのを防止することが可能となる。
【0100】
ところで、半導体装置は、赤外線センサ100に限らず、例えば、加速度センサ、圧力センサ、上述のIC素子やその他のIC素子などでもよい。半導体基板1は、シリコン基板に限らず、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板でもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 半導体基板
1b 熱酸化膜
32 シリコン窒化膜
50 層間絶縁膜
60 パッシベーション膜
61 開口部
80 パッド
100 赤外線センサ(半導体装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の一表面側に熱酸化膜とシリコン窒化膜と層間絶縁膜とパッシベーション膜との積層構造を有する半導体装置であって、前記熱酸化膜上にパッドを形成してあることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、半導体基板の一表面側に熱酸化膜と前記熱酸化膜の表面の一部を覆うシリコン窒化膜とを有する基本構造を形成してから、前記半導体基板の前記一表面側に層間絶縁膜を形成し、その後、パッドを形成し、更にその後、パッシベーション膜を形成してから、前記パッシベーション膜に前記パッドを露出させる開口部を形成するようにし、前記基本構造の形成にあたっては、前記シリコン窒化膜のうち前記熱酸化膜における前記パッドの形成予定領域に形成した部分を除去するようにし、前記層間絶縁膜の形成後であって前記パッドの形成前に前記層間絶縁膜のうち前記熱酸化膜における前記パッドの形成予定領域上に形成されている部分を除去するようにし、前記パッドの形成にあたっては、前記熱酸化膜における前記形成予定領域上に前記パッドを形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、半導体基板の一表面側に熱酸化膜と前記熱酸化膜の表面を覆うシリコン窒化膜とを有する基本構造を形成してから、前記シリコン窒化膜上に層間絶縁膜を形成し、その後、前記シリコン窒化膜と前記層間絶縁膜との積層膜のうち前記熱酸化膜におけるパッドの形成予定領域上に形成されている部分を除去し、その後、前記熱酸化膜における前記形成予定領域上に前記パッドを形成し、更にその後、パッシベーション膜を形成してから、前記パッシベーション膜に前記パッドを露出させる開口部を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−151420(P2012−151420A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10941(P2011−10941)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】