半導体装置の製造方法、半導体製造装置及び記憶媒体
【課題】安価な装置において、基板のパターン内部において異方性高くエッチング処理や成膜処理を行うこと。
【解決手段】パターンが形成された基板が吸着保持された処理容器内に、微少な気泡であり、負電荷を持つナノバブルを窒素ガスやCF系のガスなどからなる処理ガスにより形成し、このナノバブルを純水やフッ化水素水溶液などの処理液中に分散させて、更にこの処理液に電界を加えて、ナノバブルと共に処理液をパターン内に引き込むことで、安価な装置で異方性を持つ処理を行うことができる。
【解決手段】パターンが形成された基板が吸着保持された処理容器内に、微少な気泡であり、負電荷を持つナノバブルを窒素ガスやCF系のガスなどからなる処理ガスにより形成し、このナノバブルを純水やフッ化水素水溶液などの処理液中に分散させて、更にこの処理液に電界を加えて、ナノバブルと共に処理液をパターン内に引き込むことで、安価な装置で異方性を持つ処理を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内の基板に対して少なくとも一方がエッチング処理または成膜処理に関与する成分を含む液体及び気体を供給して、前記基板に対して成膜処理またはエッチング処理を行う半導体装置の製造方法、半導体製造装置及びこの製造方法を記憶した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、基板に対して成膜処理やエッチング処理を行うためには、例えば処理ガスをプラズマ化し、このプラズマによって基板の処理を行うドライプロセスであるプラズマ処理が行われている。このプラズマ処理では、処理ガスをプラズマ化し、基板にこのプラズマを引き込むことで、高い異方性を得ることができ、更に開口部の狭いパターンの内部においても処理を行うことができる反面、処理速度が遅くプロセスに長時間必要であり、その改善が望まれている。また、異常放電や、プラズマにより基板が帯電するチャージングダメージなどによって、デバイスが破壊されることが深刻な問題となっている。
また、このようなプラズマ処理は、高真空の処理容器内において行なわれるので、ドライポンプやターボ分子ポンプなどの高価な周辺設備が必要である。更に、処理容器を耐圧構造とする必要があり、基板の面積の増加に伴って、処理容器が大型化することから、今後益々装置の製造コストが高騰する。
更に、基板の大面積化によって、複数の基板間及び基板の面内における処理の均一性を維持することが困難になっており、プラズマ処理方法などのドライプロセスとは異なる処理方法の検討が必要である。
【0003】
一方、例えば処理液中に基板を浸漬して処理を行うウェットプロセスでは、基板の面内において処理の高い均一性が得ることができると共に、帯電によるデバイスの破壊などの問題もない。また、このようなウェットプロセスは、常圧で行われるため、設備を安価なコストで製造できるといったメリットもある。しかし、処理液により反応が等方的に進むため、異方性が必要とされる処理例えばエッチングによって高いアスペクト比を持つパターンを形成することは困難である。また、狭い開口部内に処理液を通流させることは難しいので、このようなパターン内に材料を埋め込むような成膜処理に適用できなかった。
【0004】
一方、特許文献1には、マイクロメートルやナノメートルのサイズの気泡いわゆるマイクロバブル(ナノバブル)を用いて、工業機器などを洗浄する技術が記載されており、また特許文献2には、このナノバブルを安定的に製造する技術が記載されているが、いずれも上述の課題の具体的な解決手段については何ら示唆されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−121962((0031)〜(0037))
【特許文献2】特開2005−245817((0012)〜(0013))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行うにあたり、ドライプロセスの長所を生かしつつ、ウェットプロセスの長所を得ることができる半導体装置の製造方法、半導体製造装置及びこの製造方法を実施できるプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置の製造方法は、
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法において、
少なくとも一方がエッチング処理または成膜処理に関与する成分を含む液体及び気体を混合して、前記パターンにおける開口寸法よりも小径の帯電したナノバブルを発生させる工程と、
前記ナノバブルを前記基板の表面に引き込むために電界を形成する工程と、
前記電界を形成しながら前記ナノバブルを含む液体を前記基板に供給して処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記エッチング処理または成膜処理に関与する成分とは、エッチング処理時または成膜処理時に活性種として働く物質を生成する成分を意味している。また、前記ナノバブルを前記基板の表面に引き込むための電界は、前記基板側から見ると、基板側に前記ナノバブルを引き込むための電界であり、基板に対向する側から見ると、基板に対して前記ナノバブルを押し込むための電界である。
前記処理を行う工程の後に、前記基板に洗浄液を供給して前記基板を洗浄する工程を行うようにしても良い。
前記洗浄する工程の後に、前記基板に乾燥用の気体を供給して前記基板を乾燥させる工程を行うようにしても良い。
前記処理を行う工程は、前記液体に超音波を供給する工程を含むことが好ましい。
前記処理を行う工程は、前記基板の温度調整を行う工程を含むことが好ましい。
前記エッチング処理が行われるときの前記液体は、フッ化水素を含む溶液であることが好ましい。
前記エッチング処理が行われるときの前記気体は、炭素とフッ素とを含むガスであることが好ましい。
前記成膜処理が行われるときの前記液体は、金属塩、錯化剤及び還元剤を含む溶液であることが好ましい。
前記処理を行う工程は、前記基板の被処理面を下方に向けて行うようにしても良い。
【0009】
本発明の半導体製造装置は、
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行うための半導体製造装置において、
前記基板を載置する載置部が内部に設けられた処理容器と、
この処理容器に一端が接続された液体供給路と、
この液体供給路に介設され、当該液体供給路に供給される液体に気体を混合して帯電したナノバブルを発生させるナノバブル発生装置と、
前記液体供給路から処理容器内に供給された液体中のナノバブルを、前記載置部に載置された前記基板の表面に引き込むために電界を形成する電界形成手段と、
前記処理容器から前記液体を排出するための液体排出路と、を備え、
前記液体及び前記気体の少なくとも一方が、エッチング処理または成膜処理に関与する成分を含むことを特徴とする。
【0010】
この場合においても、エッチング処理または成膜処理に関与する成分とは、どちらかの処理時に活性種として働く物質を生成する成分を意味している。また、前記基板の表面に引き込むための電界とは、基板に前記ナノバブルを基板に向かって引き込むあるいは基板へ押し込む電界である。
【0011】
前記半導体製造装置は、
前記処理が行われた前記基板を洗浄するために、前記処理容器内に洗浄液を供給する洗浄液供給部を備えていても良いし、更に前記洗浄液により洗浄された前記基板を乾燥させるために、前記基板に乾燥用の気体を供給する気体供給部を備えていても良い。
前記処理容器には、前記処理容器内の前記液体に超音波を供給するための超音波供給手段が設けられていることが好ましい。
前記処理容器内には、前記基板の温度を調整するための温調手段が設けられていることが好ましい。
前記処理容器と前記ナノバブル発生装置との間には、前記ナノバブルの粒径を調整するためのフィルターが設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の記憶媒体は、
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上述の半導体装置の製造方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、帯電したナノバブルを分散させた液体を基板に供給して、エッチング処理または成膜処理を行い、この処理中に電界を生成してナノバブルを基板に引き寄せているので、ナノバブルと共に液体が基板表面のパターン内に引き寄せられて、異方性を持つ処理を実施できる。従って、ウェットプロセスでありながら、ドライプロセスの長所である異方性処理を可能とし、しかもウェットプロセスであることから、真空雰囲気を形成しなくて済む。このように、ドライプロセス及びウェットプロセスの双方の利点を生かせるので、装置及び周辺設備のコストを低廉化でき、チャージングダメージの問題がなくなるなど、極めて有益な手法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施の形態:処理液によるエッチング]
本発明の半導体装置の製造方法の第1の実施の形態を実施するための製造装置の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の半導体製造装置1の全体構成を表した図であり、混合槽11、脱泡装置72、加熱器73、加圧ポンプP、ナノバブル発生装置51、フィルターF1及び処理容器21が液体供給路である処理液供給路28によってこの順番で接続され、この処理液供給路28内を処理液などの液体が通流するように構成されている。また、処理容器21と混合槽11とは、フィルターF2を介して帰還路71によって接続され、処理容器21内から処理液などの液体が混合槽11に戻されるように構成されている。尚、図1中の処理容器21は、簡略化して示している。
【0015】
脱泡装置72は、例えば蒸留などによって、処理液中に溶解している空気や窒素ガスなどを取り除くための装置であり、後述のナノバブル発生装置51において処理液中に供給するナノバブルが処理液中に取り込まれやすくするためのものである。
加熱器73は、処理液の温度を調整して、処理液とウェハWとの反応性を制御するためのものである。
加圧ポンプPは、後述のナノバブル発生装置51に処理液を加圧して供給するためのものであり、この加圧ポンプPによって、ナノバブル発生装置51に供給される処理液の流量が調整されるように構成されている。
【0016】
次に、基板例えば半導体ウェハ(以下「ウェハW」という)の処理を行うための処理容器21について、図2を参照して説明する。この処理容器21は、概略円筒形状の筐体22と、この内部に設けられた載置部である載置台31と、を備えている。この筐体22の上方部位23は、下方部位24よりも内径が小さく形成された円筒形状をなしており、その下部に設けられたリング状の絶縁体25において、載置台31の上面の周縁部と密着して、処理領域26を形成するように構成されている。この上方部位23には、側面に処理液を供給するための処理液供給口27が複数箇所例えば処理容器21の径方向に相対向するように2カ所形成されており、処理液供給路28を介して後述のナノバブル発生装置51に接続されている。
【0017】
また、上方部位23の天壁には、洗浄液供給路43を介して洗浄液供給部44が接続されており、ウェハWの処理後、処理領域26内を例えば純水で置換して、ウェハWの処理を停止させると共に、ウェハを洗浄できるように構成されている。また、上方部位23の天壁の中央部には、ガス供給路29の一端側が接続されると共に、このガス供給路29の他端側には、例えば窒素ガスを供給するための気体供給部であるガス供給源41が接続されており、例えば洗浄後のウェハWに対して窒素ガスを供給して、排出されずにウェハWの表面に残った純水を吹き飛ばすように構成されている。この上方部位23の天壁には、複数箇所例えば載置台31に載置されるウェハWの中心部と、ウェハWの周縁部の円周方向に等間隔に4カ所と、に対して例えば周波数100kHzの超音波を供給するための超音波供給手段である超音波振動子42が埋設されており、電源42aに接続されて、ウェハWの表面近傍の処理液に均等に超音波振動を与えるように構成されている。
下方部位24の側壁には、後述の載置台31の搬送位置に対応するように、ウェハWの搬送を行うための搬送口22aが形成されている。
【0018】
上述の載置台31の内部には、表面に多数の開口部を有する吸引路32が形成されており、例えば蛇腹状の伸縮可能な吸引管33と筐体22の床面とを介して例えば真空ポンプなどの吸引手段61に接続されて、ウェハWを吸着保持できるように構成されている。載置台31には、載置台31上のウェハWの温度調整を行うために、温度検出手段(図示せず)とヒーターや冷却機構からなる温調手段34とが埋設されており、電源34aに接続されている。また、載置台31には、直流または交流の電源62に接続された電極35が埋設されており、載置台31上のウェハWと処理領域26とを介して、上方部位23の天壁との間に例えば10V程度の電位差を発生させるための電界形成手段を構成している。尚、この電源62と筐体22とは、接地されている。載置台31の上面の周縁部には、リング状の溝36aが形成されており、この内部にはめ込まれたリング状のシール体36bによって、上述の絶縁体25と密着して処理領域26を気密に区画するように構成されている。
【0019】
また、載置台31には、ウェハWの載置領域からはずれた領域に連通するように、液体排出路である排出路37が複数箇所例えばウェハWの周方向に亘って均等に4カ所形成されており、処理領域26内に供給された処理液などの液体を排出できるように構成されている。この排出路37は、伸縮可能な例えば蛇腹状の排出管37a及び筐体22の床面を介して後述の帰還路71に接続されている。この帰還路71には、処理領域26から排出される処理液の流量を調整するための流量制御部71aが設けられており、処理領域26内を処理液で満たしたり、あるいは処理終了後に処理液を全量排出したりするように構成されている。
【0020】
この上方部位23には、天壁部にベントバルブ39aを介してエア抜き管39が接続されており、処理領域26内に処理液が供給されるときに、処理領域26内のガス例えば窒素ガスなどを外部に放出するように構成されている。
【0021】
載置台31の下方には、昇降軸63aを介して昇降機構63bが接続されており、この載置台31が筐体22内において、ウェハWの処理を行うための処理位置(上方位置)と、処理容器21の外部との間でウェハWの受け渡しを行うための搬送位置(下方位置)と、の間において昇降できるように構成されている。尚、昇降機構63bと筐体22の床面との間には、絶縁体64が介設されている。
また、筐体22の下面には、ウェハWを下方から複数箇所例えば3カ所で支持するためのピン65が設置されており、昇降機構66によって、載置台31に穿たれた支持孔38を介してウェハWを昇降させるように構成されている。
【0022】
次いで、ナノバブル発生装置51について、図3を参照して説明する。このナノバブル発生装置51は、図3(a)に示すように、円筒状の筐体52を備え、この筐体52の側面(周面)と筐体52の一端側とには、既述の処理液供給路28が分断されて接続され、筐体52の他端側には窒素ガス供給路53が接続されている。このナノバブル発生装置51は、例えばナノプラネット研究所製のマイクロナノバブル発生装置などであり、後述するように、筐体52の周面に接続された処理液供給路28から供給される処理液などの液体と、窒素ガス供給路53から供給される処理ガスである窒素ガスなどの気体と、を混合して、液体中に負電荷を持つ気体の小泡(マイクロメートルレベルからナノメートルレベルの大きさの気泡、以下「ナノバブル」という)を生成し、このナノバブルで満たされた液体を筐体52の一端側の処理液供給路28から排出するように構成された装置である。
【0023】
図1に示すように、この窒素ガス供給路53には、ガス供給制御部54である流量制御部55とバルブ56とを介して例えば窒素ガスなどが貯留された窒素ガス源57に接続されている。尚、この例では窒素ガス源57の窒素ガスは、ウェハWに対して実際の処理を行うためのガスではなく、ナノバブルを発生させるために使用するガスであるが、後述するように、ナノバブルが圧壊を起こすことにより、処理液とウェハWとの反応(ウェハWの処理)が促進されるため、「処理ガス」として記載している。
【0024】
このナノバブル発生装置51と処理容器21との間に設けられたフィルターF1は、ナノバブル発生装置51において発生したナノバブルの粒径を調整するためのものであり、例えば1μm以上の大きさのナノバブルを除去して、それ以下の大きさのナノバブルを処理容器21内に供給するように構成されている。尚、通常の大きさの気泡であれば、表面張力によって気泡同士が凝集して、液体中で大きな気体の集合体を形成するため、フィルターF1によって粒径の調整を行うことは困難であるが、このナノバブルは凝集せず、さらに時間の経過と共に収縮して、その後消失するので、フィルターF1によってその粒径を調整できる。つまり、このフィルターF1において捕捉された大径のナノバブルは、その後収縮してフィルターF1を通過するか、あるいは更に収縮して消滅する。このフィルターF1としては、例えば繊維が多数編み込まれた繊維状体が用いられる。
【0025】
また、フィルターF1と処理容器21との間の処理液供給路28には、窒素ガスの濃度を測定するためのガス濃度測定器58が設けられており、処理液供給路28内を通流する処理液中の窒素ガスの濃度、つまりナノバブルの密度を測定できるように構成されている。窒素ガスの濃度が上限値を超えていたり下限値を下回っていたりする場合には、例えば後述の制御部2AによってウェハWの処理が停止されるように構成されている。
【0026】
図1中の混合槽11は、処理液を混合するためのものであり、混合槽11内の処理液を混合するための撹拌手段14例えば撹拌羽などを備えている。この混合槽11には、フッ化水素水溶液源15aと純水源15bとがそれぞれガス供給制御部16aであるバルブ17a及び流量制御部18aと、ガス供給制御部16bであるバルブ17b及びガス供給制御部18bと、を介して、フッ化水素供給路19aと純水供給路19bとによって接続されている。既述の処理液供給路28は、この混合槽11の下面に接続されており、十分に混合された処理液が下流に向けて供給される。
【0027】
また、この混合槽11には既述の帰還路71がフィルターF2を介して接続されており、処理容器21から戻された処理液は、フッ化水素水溶液源15aと純水源15bとから供給される新しい処理液と混合される。尚、この混合槽11には、処理容器21において処理液に溶解した成分の1種例えばシリコンの濃度を測定するためのシリコン濃度測定器12例えばICP−Mass(誘導結合プラズマ質量分析装置)などが設けられており、混合槽11内の処理液に溶解したシリコンの濃度を所定の間隔で測定するように構成されている。このシリコンの濃度が予め設定した濃度まで上昇した場合には、後述の制御部2Aにより、混合槽11の下方に接続された廃棄路13から、混合槽11に貯留された処理液の所定の割合例えば50%を廃棄するように、廃棄路13に介設されたバルブ13aの開閉が行われる。このような場合は、その後廃棄された処理液と同量の新しい処理液がフッ化水素水溶液源15aと純水源15bとから供給される。尚、シリコン濃度測定器12を設けずに、所定の処理時間が経過したときに、上記と同様に処理液の交換を行うようにしても良い。フィルターF2は、処理容器21内などにおいて生成した生成物などを除去するために設けている。尚、この混合槽11にも、既述の処理容器21と同様に、内部のガスを排出するためのエア抜き管やベントバルブが接続されているが、ここでは省略している。
【0028】
また、この半導体製造装置1には例えばコンピュータからなる制御部2Aが設けられており、この制御部2Aはプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えていて、前記プログラムには制御部2Aから半導体製造装置1の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることでウェハWの処理や搬送を行うように命令が組み込まれている。また、例えばメモリには処理圧力、処理温度、処理時間、ガス流量または電力値などの処理パラメータの値が書き込まれる領域を備えており、CPUがプログラムの各命令を実行する際これらの処理パラメータが読み出され、そのパラメータ値に応じた制御信号がこの半導体製造装置1の各部位に送られることになる。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、MO(光磁気ディスク)、ハードディスクなどの記憶部2Bに格納されて制御部2Aにインストールされる。
【0029】
次に、本発明の第1の実施の形態の作用について、図4を参照して説明する。ここで、ウェハWの構成について説明する。ウェハWは、図5(a)に示すように、下側からシリコン層81及び酸化シリコン層82が成膜されており、その表面に例えば開口寸法が0.5μmの円形の開口部84などのパターンを備えたレジストマスク83が形成されている。以下の各工程は、レジストマスク83を用いて、酸化シリコン層82をエッチングする場合についての説明である。
【0030】
(ステップS41:ウェハWの搬入)
まず、図6(a)に示すように、予め載置台31が昇降機構63bによって搬送位置に設定されており、図示しないシャッターが開くと、上述のパターンが形成されたウェハWが搬送口22aから搬送機構116によって搬入される。そして、ピン65の昇降によって搬送機構116からウェハWが載置台31に引き渡されると共に、図6(b)に示すように、吸引路32の吸引により吸着される。次いで、同図(c)に示すように、載置台31が上昇して、上方部位23のリング状の絶縁体25と載置台31の周縁部とが密着し、処理領域26が気密に構成される。
【0031】
(ステップS42:処理液を供給)
次に、予め混合槽11において、フッ化水素と純水との体積割合が所定の値例えば1:200となるように、フッ化水素水溶液源15aと純水源15bとからフッ化水素水溶液と純水とを供給して、混合しておく。そして、脱泡装置72において処理液中の気体を除去した後、加熱器73において所定の温度例えば25℃なるように処理液を加熱する。次いで、加圧ポンプPの圧力を所定の圧力例えば90kPa(675Torr)に設定して、ナノバブル発生装置51とフィルターF1とを介して、処理液を20リットル/minの流量で処理液供給路28から処理容器21内に供給して、処理領域26を処理液で満たすと共に、流量制御部71aを調整して、処理領域26からあふれ出た処理液を帰還路71を介して混合槽11に戻し、処理領域26内の処理液の流れが定常状態となるように保持する。また、ウェハWの温度が所定の温度例えば25℃となるように、温調手段34を調整する。
【0032】
この処理によりウェハWの表面が処理液に接触するので、処理液がレジストマスク83の開口部84を介して酸化シリコン層82に達して、この酸化シリコン層82が僅かにエッチングされる。しかし、この開口部84の開口寸法は、既述の通り、0.5μmと狭いため、処理液がこの開口部84内において循環しにくい状態となっている。従って、酸化シリコン層82の近傍の処理液のシリコン濃度が高くなり、エッチング速度が非常に遅くなるので、酸化シリコン層82は、この工程ではほとんどエッチングされない。
【0033】
(ステップS43:ナノバブル生成)
次いで、窒素ガス源57から窒素ガスを例えば5〜20リットル/minの流量でナノバブル発生装置51に供給する。ナノバブル発生装置51の内部では、処理液が一度筐体52の他端側(窒素ガス供給路53側)に向かって流れた後、筐体52の内面に沿って激しく旋回すると共に筐体52の一端側に向かって流れて、いわゆるアスピレーターのように、例えば0.06MPa(450Torr)の負圧を発生させて窒素ガス供給路53から供給される窒素ガスを吸引する。窒素ガスは、この処理液の旋回流の中心部において筐体52の一端側に向かって流れる。処理液の旋回流は、筐体52の一端側に向かうにつれて旋回半径が徐々に狭まるように構成されているため、筐体52の一端側のある点において、図3(b)に示すように、処理液と窒素ガスとが激しく混合されて、直径が数百ナノメートルから数十マイクロメートルのナノバブル85が生成する。このナノバブル85は、処理液の旋回流との摩擦によって例えば40〜100mVの負電荷を帯びている。(参照:都並結依,大成博文,マイクロバブルの収縮過程と収縮パターン,第1回マイクロ・ナノバブル技術シンポジウム)
【0034】
(ステップS44:処理容器21内にナノバブル85供給)
そして、既述のフィルターF1において、例えば1μm以上のナノバブル85を除去した後、処理容器21内にナノバブル85を供給する。尚、フィルターF1の下流側のガス濃度測定器58において、窒素ガスの濃度が所定の範囲以内ではない場合には、既述のように、例えば後述の制御部2AによってウェハWの処理が停止される。
【0035】
(ステップS45:ウェハWの処理)
次いで、電源62から載置台31内の電極35に正の直流電圧を所定の値例えば10Vに設定して印加する。また、超音波振動子42から例えば100kHzの周波数の超音波を発振させて、処理液を振動させる。既述の通り、ナノバブル85は負に帯電しているため、図7に示すように、正の電圧によってウェハW側に垂直に引き込まれる。また、ナノバブル85は、レジストマスク83の開口部84の開口寸法よりも小さいので、開口部84内にまで引き込まれる。このナノバブル85の流れによって、処理液にも微少な大きさの流れが生じるので、ナノバブル85と共に処理液が開口部84内に引き込まれる。ここで、この現象が起こる条件について検討した結果を以下に示す。
【0036】
図7に示すように、ナノバブル85の電荷の大きさをq[C]、半径をr[m]、載置台31の表面と、処理領域26を区画する上方部位23の下面と、の間の距離をL[m]、電源62から電極35に印加する直流の電圧をV[V]、処理領域26内に形成される電界の強さをE[V/m]とすると、ナノバブル85が電界によってウェハW側に引き込まれる力F[N]は、
・・・・・・(1)
となり、ここでEは、
・・・・・・(2)
である。
【0037】
また、ナノバブル85が処理液から受ける抗力FD[N]は、
・・・・・・(3)
となる。ここでCD、ρ、Uは、それぞれナノバブル85の抗力係数[−]、密度[kg/m3]、流速[m/s]である。そして、処理領域26内の電界によってナノバブル85をウェハW側に引き寄せるためには、
・・・・・・(4)
となる必要があるので、(1)〜(3)式から、電極35に供給する電圧は、
・・・・・・(5)
とする必要のあることが分かった。
【0038】
尚、CDは、処理領域26内の処理液の流れの状態によって異なり、その値は処理液のレイノルズ数[−](Repとして表す)によって、以下の条件毎に変化する。
(条件1)
・・・・・(6)
(条件2)
・・・・・(7)
(条件3)
・・・・・(8)
尚、この計算においては、ナノバブル85が受ける浮力や重力については、ごく小さいものとして無視している。また、図7では、超音波振動子42やウェハWの構成などを省略して示している。
【0039】
この時の開口部84の底部における反応を模式的に図8に示す。前述の通り、ナノバブル85がウェハWに垂直に引き込まれているので、処理液は、同図(a)に示すように、ナノバブル85と共に垂直にウェハW上の開口部に引き込まれる。ナノバブル85は、同図(b)に示すように、時間の経過と共に徐々に収縮するので、この収縮に伴い内部の圧力や温度が上昇する。そして、ナノバブル85がウェハWに到達すると、このナノバブル85と共にウェハWに達したフッ化水素によって、同図(c)に示すように、酸化シリコン層82が僅かにエッチングされる。尚、ナノバブル85は、ウェハWとの接触により負電荷を失う。この時、ナノバブル85は、ウェハWとの接触(衝突)がきっかけとなって、同図(d)に示すように、複数のより小径のナノバブル85に分裂(圧壊)する場合があり、その際、内部の高温高圧のエネルギーが一部分開放される。この局所的に生じた大きなエネルギーによって、例えばウェハW近傍のフッ化水素水溶液の反応性が高まり、フッ化水素による酸化シリコン層82のエッチングが大きく進む。処理液には、既述の通り、超音波振動を与えているため、ウェハWとの衝突時にナノバブル85の圧壊が起こる頻度が多くなっており、更にエッチングが速やかに進行する。
【0040】
そして、引き続き負電荷を持つナノバブル85がウェハWに引き込まれているので、ウェハWとの接触により負電荷を失ったナノバブル85は、同図(e)に示すように、ウェハWに引き寄せられるナノバブル85に押しのけられるように、酸化シリコン層82が溶解した処理液と共にウェハW上の開口部より押し出されて、その後同図(f)に示すように、消失(溶解)する。
【0041】
このように、負電荷を持つナノバブル85がウェハWに引き寄せられ、その後ウェハWとの衝突によりナノバブル85が負電荷を失うので、ウェハWに対して垂直方向のナノバブル85及び処理液の循環流が形成されて、狭い領域である開口部84の底面においても、新しい処理液が供給されると共に、処理液内に溶解した酸化シリコンなどがウェハWの上方の領域に排出されて、異方性高く酸化シリコン層82のエッチングが行われる。尚、このナノバブル85(処理液)の循環速度は、上述の(1)式及び(2)式から明らかなように、電極35に供給する電圧が大きい程速くなるので、この電圧によって、エッチング速度を制御できる。
【0042】
尚、ナノバブル85の圧壊は、ウェハWとの衝突時に起こった場合について説明したが、この圧壊はナノバブル85の生成後、時間の経過と共に起こっており、そのような場合には特にウェハWに対する処理に影響を及ぼさないので、説明を省略している。
この状態を所定の時間例えば240秒保つことにより、上述の反応が繰り返し行われて、開口部84の底部において、酸化シリコン層82が垂直に所定の寸法例えば300nmエッチングされる。
【0043】
(ステップS46:エッチング処理の停止)
所定のエッチング処理が終了した場合には、電源62への電圧の印加と超音波振動子42の超音波発振とを停止して、窒素ガス源57からの窒素ガスの供給を停止する。また、フッ化水素水溶液源15aからの処理液の供給を停止する。そして、洗浄液供給部44から処理領域26内に純水を供給して、処理領域26内のフッ化水素水溶液が十分純水によって置換されるまでこの状態を保つ。その後、純水の供給を停止して、流量制御部71aにより、処理領域26内の純水を全量排出する。この時、ウェハW上に純水が残っている場合には、ガス供給源41から窒素ガスをウェハWに吹き付けて、ウェハW上の純水を除去する。この窒素ガスは、既述のエア抜き管39から外部へ排出される。この後、処理容器21内にウェハWを搬入した順番とは逆の順番で、ウェハWを搬出する。
【0044】
既述のように、処理領域26から帰還路71を介して排出された処理液は、混合槽11において新しい処理液と混合されて、循環する。尚、混合槽11に戻された処理液中のナノバブル85は、時間の経過と共に圧壊して、内部の窒素ガスが処理液中に溶解するが、既述の脱泡装置72を通過するときに除去される。尚、ウェハWの洗浄中の純水については、帰還路71に別途図示しない廃棄管を設けて、混合槽11内に戻さないようにしても良い。
【0045】
上述の実施の形態によれば、処理液中にレジストマスク83の開口部84の開口寸法よりも小さく、負電荷を持つナノバブル85を分散させ、処理液に電界を形成して、このナノバブル85をウェハWに引き込むようにしているので、通常の湿式法であれば処理液が循環しにくく、エッチングが困難であるか、あるいはかなり長時間要する狭い領域(レジストマスク83の開口部84内)におけるエッチングであっても、速やかに行うことができ、更にこのような湿式法であるにも関わらず、乾式法(プラズマエッチングなど)と同様に異方性高くウェハWのエッチングを行うことができる。その際、ウェハWとの衝突(接触)によるナノバブル85が圧壊する際に生成されると考えられるエネルギーをエッチングに利用しているので、エッチング速度を速めることができ、更に処理液に超音波振動を与えて、ウェハWとナノバブル85との衝突時におけるナノバブル85が圧壊する頻度を増加させているので、更にエッチング速度を向上させることができる。
【0046】
このナノバブル85は、負電荷を持っているので、互いに凝集せず、処理液内に均等に分散しているため、上述のウェハWとの接触による圧壊が面内において均一に起こるので、エッチング処理が均等に進む。
また、このエッチング処理は、処理液によって行われるので、ウェハWの全体に亘って均一に処理を行うことができると共に、デバイスがダメージを受けるような温度までの過熱や、プラズマなどによるチャージングダメージを防止することができる。つまり、このエッチング方法は、湿式法の長所(速いエッチング処理速度、面内均一性、デバイスへの低負荷、安価な装置、低消費エネルギー)及び乾式法の長所(高い異方性、狭い領域での処理)の両方が得られる方法である。
【0047】
更に、フィルターF1によってナノバブル85の粒径を調整しているので、レジストマスク83の開口部84の開口寸法に合わせてナノバブル85の粒径を選択できる。例えば開口寸法が広い場合には、フィルターF1を設けずにナノバブル85をそのまま供給することでナノバブル85の量を増やすことができ、開口寸法が狭い場合には、ナノバブル85の粒径がより小さくなるようにフィルターF1を選択して、高精度のエッチングを行うことができる。
【0048】
このエッチング処理を行うための処理容器21は、処理液が漏洩しない程度に気密に構成すれば良く、通常のプラズマ処理に必要とされる高真空に耐えるまでの気密さが不必要なので、装置を安価に製造することができ、例えば真空ポンプなどの周辺設備も不要になる。
【0049】
この実施の形態では、処理ガスとして窒素ガスを用いたが、このようなガスの他に、アルゴンガス、酸素ガスまたは大気などを用いても良い。また、処理ガスとして、通常のプラズマエッチング処理に用いられる炭素とフッ素とを含むガスを用いても良い。この例について、以下に説明する。
【0050】
[第2の実施の形態:処理液及び処理ガスによるエッチング]
図9は、本発明の半導体装置の製造方法の第2の実施の形態を実施するための一例である半導体製造装置3を示している。この半導体製造装置3は、既述の第1の実施の形態における半導体製造装置1とほぼ同じ構成であるが、ナノバブル85を形成するためのガスとして、炭素とフッ素とを含むガス例えばCF4ガス、酸素ガス及び窒素ガスが用いられる構成となっている。
【0051】
具体的には、図9に示すように、既述の加圧ポンプPの下流側において、処理液供給路28は、3本に分岐して、それぞれバルブ92a、92b、92cと流量制御部93a、93b、93cとを介してナノバブル発生装置51a、51b、51cに接続されている。また、これらのナノバブル発生装置51a、51b、51cは、それぞれ流量制御部55a、55b、55cとバルブ56a、56b、56cとを介して、炭素とフッ素とを含むガス例えばCF4ガスが貯留されたCF系ガス源57a、酸素ガス源57b及び窒素ガス源57cに接続されている。そして、ナノバブル発生装置51a、51b、51cの下流側は、それぞれフィルターF1a、F1b、F1cとガス濃度測定器58a、58b、58cとを介して混合容器94に接続されている。この混合容器94には、処理液供給路28を介して既述の処理容器21が接続されている。この例において、窒素ガスは、CF4ガスと酸素ガスとを希釈するためのガスであり、他の不活性ガス例えばアルゴンガスなどであっても良い。
【0052】
尚、バルブ92a、92b、92cと流量制御部93a、93b、93cとは、処理液流量制御部91をなしており、流量制御部55a、55b、55cとバルブ56a、56b、56cとは、ガス供給制御部54をなしている。また、CF系ガス源57a、酸素ガス源57b及び窒素ガス源57cから供給されるガスは処理ガスをなし、これら各ガス源57a、57b、57cは処理ガス源95をなしている。
【0053】
次に、この第2の実施の形態の作用について説明する。尚、この実施の形態における各ステップは、既述の第1の実施の形態と同じ工程であるので、既に説明した図4のフローに従って説明する。尚、既述の説明と同じ工程及び記載については、省略する。
【0054】
(ステップS42:処理液を供給)
混合槽11に貯留した処理液を、所定の圧力例えば90kPa(675Torr)に設定した加圧ポンプP及び処理液流量制御部91を介して、ナノバブル発生装置51a、51b、51cに供給する。この時、各ナノバブル発生装置51a、51b、51cに供給する処理液の流量をそれぞれ20、20、5リットル/minとなるように、処理液流量制御部91を調整する。
そして、処理液を混合容器94において混合した後、処理容器21内に供給して、処理領域26内における処理液の流れが定常状態となるまで保持する。この場合においても、ウェハWは僅かにエッチングされる。
【0055】
(ステップS43:ナノバブル生成)
処理ガス源95からCF4ガス、酸素ガス及び窒素ガスの流量がそれぞれ1、1、5リットル/minとなるようにガス供給制御部54を調整して、各ナノバブル発生装置51a、51b、51cに供給する。これらのナノバブル発生装置51a、51b、51cにおいて、既述のように、処理液と各ガスが混合されてナノバブル85が生成する。
【0056】
(ステップS44:処理容器21内にナノバブル85供給)
そして、各フィルターF1a、F1b、F1cにおいて、同様に粗大なナノバブル85を除去して、各ガス濃度(ナノバブル85の量)をガス濃度測定器58a、58b、58cにおいて測定した後、処理容器21内に処理ガスからなるナノバブル85が分散した処理液を供給する。
【0057】
(ステップS45:ウェハWの処理)
そして、既述の第1の実施の形態と同様に、ウェハWに対してエッチング処理を行う。この実施の形態においても、ナノバブル85がウェハWに引き寄せられ、このナノバブル85と共に処理液がウェハWに対して垂直に循環して、処理液によりエッチングが行われる。また、ナノバブル85には、既述の通り、内部には処理ガスとしてエッチングガスであるCF4ガスが含まれており、この処理ガスによってもエッチングが進行する。この処理ガスによってウェハWがエッチングされる様子について、図10に模式的に示す。尚、処理液によるエッチングについては、既述の第1の実施の形態における図8と同じであり、図の記載が複雑になるため、省略する。
【0058】
図10(a)、(b)に示すように、ナノバブル85がウェハWに引き込まれて行くに従い収縮して、内部の温度や圧力が上昇する。そして、同図(c)のウェハWとの衝突により、負電荷を失うと共に、同図(d)に示すように、ナノバブル85が圧壊を起こし、複数のより小径のナノバブル85に分かれる。この時に放出されるエネルギーによってナノバブル85内の処理ガスが分解して、CFイオンや酸素イオンなどの活性種が生成する。この活性種により、酸化シリコン層82がエッチングされると共に、生成した副生成物などは処理液中に溶解あるいは拡散する。そして、電荷を失ったナノバブル85は、同図(e)に示すように、引き続きウェハWに引き込まれて来るナノバブル85に押しのけられて、エッチングにより生成した副生成物などと共にウェハWの上方に流れていき、その後同図(f)のように、消滅する。この実施の形態においても、超音波振動子42から処理液に超音波振動を与えているので、ウェハWとの衝突の際に圧壊するナノバブル85の量が増加して、更にエッチングが速やかに進行する。
この状態を所定の時間例えば300秒保つことにより、開口部84の底部において、酸化シリコン層82が所定の寸法例えば300nmエッチングされる。
【0059】
(ステップS46:エッチング処理の停止)
そして、上述の実施の形態と同様に、エッチングを停止する。尚、この工程においても、処理液中に溶解した処理ガスは、帰還路71を介して混合槽11に戻された後、既述の窒素ガスと同様に、脱泡装置72において除去される。
【0060】
上述の実施の形態によれば、第1の実施の形態で得られた効果に加えて、以下の効果が得られる。即ち、酸化シリコン層82をエッチング可能な活性種を生成する処理ガスによってナノバブル85を形成しているので、ナノバブル85が酸化シリコン層82に衝突した時に圧壊して生成したエネルギーにより、処理ガスの活性種が生成して、この活性種によっても酸化シリコン層82がエッチングされるので、第1の実施の形態における処理液によるエッチングよりも、更に速やかにエッチングが進行する。
【0061】
この実施の形態においては、上述したように、処理ガスと処理液とによって酸化シリコン層82のエッチングを行ったが、第1の実施の形態で説明したように、CFガスなどのエッチングガスを用いなくとも、フッ化水素水溶液によりエッチングを行うことが可能であり、更にフッ化水素水溶液などを用いなくても、処理ガスとしてCFガスを用いることによりエッチングを行うことが可能である。この例について、以下に説明する。
【0062】
[第3の実施の形態:処理ガスによるエッチング]
図11は、本発明の半導体装置の製造方法の第3の実施の形態を実施するための一例である半導体製造装置4を示している。この半導体製造装置4は、既述の第2の実施の形態における半導体製造装置3とほぼ同じ構成であるが、処理液としては、フッ化水素を供給しないで純水を供給するように、純水源15bが接続されている。
【0063】
この実施の形態においても、既述の第2の実施の形態と同様に各工程が行われて、図10の反応機構に従ってエッチングが行われる。尚、この例では、加熱器73及び温調手段34は、エッチングを速やかに進めるために、例えば130℃に設定される。また、ステップS46では、エッチングが300秒行われる。
この実施の形態においても、狭い領域であっても同様に異方性が高いエッチングが行われる。
【0064】
以上の実施の形態において説明したように、ナノバブル85が分散した処理液によってエッチング処理を行うにあたり、処理液及び処理ガスの少なくとも一方に、エッチングに関与する成分(エッチング時に活性種として働く物質を生成する成分)を含ませておくことにより、ウェットプロセス及びドライプロセスの長所を持つエッチングを行うことができる。
【0065】
[第4の実施の形態:処理液による成膜]
次に、本発明を成膜処理に適用した実施の形態について説明する。図5(b)には、この成膜処理に用いられる被処理体であるウェハWの一例を示している。このウェハWは、絶縁膜87にホールあるいは溝からなるパターンである開口部88が形成されている。開口部88の開口寸法例えばホールの孔径あるいは溝部の溝幅は、10nm〜5000nmに設定されている。尚、絶縁膜87の下層側には、下層部分86が形成されている。この開口部88に金属膜例えば銅膜を埋め込む方法について以下に説明する。
【0066】
図12は、本発明の半導体装置の製造方法の第4の実施の形態を実施するための一例である半導体製造装置5を示している。この半導体製造装置5は、既述の第1の実施の形態における半導体製造装置1とほぼ同じ構成であるが、処理液として、例えば硫酸銅(CuSO4)などの金属塩、クエン酸などの錯化剤、ホルムアルデヒドなどの還元剤及びシアン化合物などの安定剤からなる混合溶液が用いられる。
【0067】
具体的には、図12に示すように、既述の混合槽11には、硫酸銅源15c、クエン酸源15d、ホルムアルデヒド源15e及びシアン化合物源15fがそれぞれ流量制御部18c、18d、18e、18fとバルブ17c、17d、17e、17fとを介して、供給路19c、19d、19e、19fによって接続されている。硫酸銅源15c、クエン酸源15d、ホルムアルデヒド源15e及びシアン化合物源15fは、溶液の状態で供給されるように、予め純水などに溶解した状態で供給されるが、粉末の状態で供給して、混合槽11において溶解するようにしても良い。尚、この例では、金属塩、錯化剤、還元剤及び安定剤として、上記の化合物を用いたが、金属塩としては例えば硝酸銅や塩化銅などを用いても良く、錯化剤としては酒石酸やグルコン酸などを用いても良い。また、還元剤としては、ジメチルアミンボランや次亜燐酸ナトリウムなどを用いても良く、更に安定剤としては、ネオクプロインなどを用いても良い。つまり、通常の無電解メッキ法に用いられる液組成となるように、上記のように各化合物を選定したり、あるいは他の安定剤やpH調整剤を混合したりしても良い。硫酸銅源15c、クエン酸源15d、ホルムアルデヒド源15e及びシアン化合物源15fは、処理液源100をなしており、流量制御部18c、18d、18e、18fとバルブ17c、17d、17e、17fとは、処理液供給制御部16をなしている。
【0068】
また、混合槽11には、ヒーターなどの温調手段101、例えば銅イオンの濃度を検出するための濃度検出器102及び処理液のpHと温度とを検出可能な温度検出手段103が設けられていて、混合槽11内の処理液の温度がある所定の値例えば常温から60℃の範囲となるように調整されると共に、銅イオンの濃度やpHの測定結果から、これらの値をある所定の範囲内に調整するために、処理液源100から所定の原料を添加するように構成されている。つまり、後述の成膜処理によって銅イオンなどが消費されて、処理液中の銅イオン濃度が低下した時は、処理液源100から銅イオンなどが補充されるように構成されている。
【0069】
尚、濃度検出器102を設けずに、温度検出手段103によって検出されたpHから、処理液中の銅イオン濃度などを算出するように構成しても良い。既述の加熱器73は、処理液を所定の温度例えば室温から60℃の範囲内となるように調整されている。また、加熱器73と加圧ポンプPとの間には、フィルターF3が設けられており、例えば処理液中の化合物が析出した場合には、この析出物を取り除くように構成されている。
【0070】
次に、この実施の形態における作用について説明する。この実施の形態においても、上述の図4に示した各ステップと同じ工程であるため、図4を参照して説明を進めるが、既述の第1の実施の形態と重複する箇所については省略する。
【0071】
(ステップS42:処理液を供給)
混合槽11に処理液源100から硫酸銅、クエン酸、ホルムアルデヒド及びシアン化合物がそれぞれ所定の濃度となるように、処理液供給制御部16を調整する。そして、混合槽11内の撹拌手段14と温調手段101とにより、混合槽11内の処理液を十分撹拌して温度を所定の温度例えば室温〜60℃となるように調整する。そして、脱泡装置72、フィルターF3、所定の温度例えば室温〜60℃に設定された加熱器73、処理液の圧力が所定の圧力例えば90kPaとなるように設定された加圧ポンプP、ナノバブル発生装置51及びフィルターF1を介して、処理液を20リットル/minの流量で処理液供給路28から処理容器21内に供給する。また、ウェハWの温度が所定の温度例えば室温〜60℃となるように、温調手段34を調整する。
この処理によって、既述の第1の実施の形態と同様に、ウェハWの表面が処理液に接触するので、ウェハWの表面には銅膜が成膜されるが、開口部88の開口寸法が狭いので、開口部88内にはほとんど成膜されない。
【0072】
(ステップS43:ナノバブル生成)
同様に窒素ガスによってナノバブル85を生成する。
(ステップS45:ナノバブル85引き込み、超音波発振)
既述の実施の形態と同様に、電極35に電源62から正の電圧を印加すると共に、超音波振動子42によって処理液に超音波振動を与える。その結果、ナノバブル85はウェハW側に引き込まれて、開口部88内に入り込む。また、このナノバブル85と共に、処理液が開口部88内に引き込まれて、銅膜が成膜される。この反応について、図13を参照して説明する。尚、銅イオンは、錯体などとして安定的に処理液中に分散しているが、この図13においては、銅イオンとして簡略化して示した。図13(a)、(b)に示すように、ナノバブル85が銅イオンと共にウェハW側に引き込まれ、またナノバブル85の収縮によってナノバブル85内の温度と圧力とが上昇する。そして、同図(c)、(d)に示すように、ナノバブル85がウェハWに衝突すると、電荷が失われる。また、ウェハWに接触した銅イオンが金属銅として成膜される。ナノバブル85とウェハWとが衝突した時に、ナノバブル85が圧壊を起こし、そのエネルギー(熱)によって銅イオンが金属銅に急激に還元されて、更に銅膜が厚く形成される。その後、同図(e)、(f)のように、負電荷を失ったナノバブル85が銅イオンの減少した処理液や金属銅の析出と共に生成した水素ガスなどと共に上昇して、その後消滅する。
この状態を所定の時間保つことにより、開口部88に金属銅が埋め込まれる。
【0073】
(ステップS46:成膜処理の停止)
そして、上述の実施の形態と同様に、処理領域26内を純水で置換して、成膜処理を停止する。ウェハWが取り出された後、ウェハWの表面(絶縁膜87の表面)に成膜された不要な銅膜は、例えばCMP加工などによって除去される。
【0074】
上述の実施の形態によれば、第1の実施の形態におけるエッチング処理を成膜処理に変更したので、ウェハWに生じる現象については、ウェハWをエッチングするか、金属膜を成膜するかの違いはあっても、同様の効果が得られる。
そして、ナノバブル85を用いずに、同様の液組成の処理液中で成膜処理を行った場合には、開口部88内にはほとんど成膜されず、ウェハWの表面に金属銅が成膜されて、開口部88内には空隙が残り、デバイスの通電不良の原因となるおそれがあるが、処理液をナノバブル85と共に開口部88内に引き寄せているので、異方性高く成膜が行われて、つまり開口部88の底面から徐々に金属銅が析出して、開口部88の側壁からの銅膜の成長が抑えられているため、開口部88内にもウェハWの表面と同様に銅膜が緻密に成膜されて、欠陥の少ない銅配線を得ることができる。
【0075】
また、局所的(開口部88の底面)に処理液の温度を上昇させているので、原料の無駄な浪費や処理液の分解を抑えると共に、成膜速度を向上できるという効果も得られる。つまり、処理液の温度を全体的に上昇させると、処理液の成膜速度が全体的に速くなるので、ウェハWの表面だけでなく、処理液が接触する部分(処理容器21の内壁など)や処理液中においても金属銅が析出して、原料の無駄やパーティクルの発生するおそれが生じると共に、処理容器21内を清掃する頻度を増やす必要があるが、処理液の温度を室温〜60℃程度に抑えて、成膜したい部分(開口部88の底面)において、処理液の温度をナノバブル85の圧壊により局所的に上昇させているので、原料の無駄や処理容器21内の清掃の手間が抑えられて、更に開口部88の底面において速い成膜速度で銅膜が得られる。また、処理液の温度を上昇させると、処理液中に溶解している既述の化合物が分解して、処理液の組成が不安定になり、成膜速度や膜の性質(面粗度、密度、純度、可塑性など)に悪影響を及ぼすが、このように局所的に処理液の温度を上昇させているので、そのようなおそれが小さい。
【0076】
尚、この実施の形態においても、既述の第2の実施の形態と同様に、処理液と共に処理ガスとして例えば銅を含む有機ガスを用いて成膜する構成にしても良いし、あるいは処理液として純水を用いて、銅を含む処理ガスによって成膜するようにしても良い。また、この例では、固体表面上に化学反応(還元反応)によって金属が析出する無電解メッキ法を用いて銅膜の成膜を行ったが、例えば予めウェハWの表面(絶縁膜87の表面及び開口部84の内部の全面)に導電性を持つ例えば厚さ20nmの金属膜例えばタングステン(W)膜を例えばスパッタ法などによって成膜しておき、このタングステン膜に電極を接続して、電気メッキ(電解メッキ)法により銅膜を成膜するようにしても良い。
【0077】
以上の成膜方法に関する実施の形態において説明したように、ナノバブル85が分散した処理液によって成膜処理を行うにあたり、処理液及び処理ガスの少なくとも一方に、成膜に関与する成分(成膜処理時に活性種として働く物質を生成する成分)を含ませておくことにより、ウェットプロセス及びドライプロセスの長所を持つ成膜処理を行うことができる。
【0078】
上述した各実施の形態においては、処理容器21に超音波振動子42を設けたが、既述のように、ナノバブル85は自然に圧壊を起こすので、超音波振動子42を設けなくとも良い。また、電源62から電極35に直流電圧を印加したが、交流電圧にしても良い。この場合には、ナノバブル85はウェハWに対して鉛直方向に振動するように移動するので、開口部84、88内における処理液の置換が速やかに行われる。更に、処理領域26に供給する液体として、純水や純水に溶質を溶解させた処理液を用いたが、溶質が析出しないのであれば、極性を持つアルコールや、有機溶媒などを用いても良い。
【0079】
ウェハWに対してエッチング処理や成膜処理を行うために、図2に示す処理容器21を用いたが、他の構成の処理容器を用いても良い。つまり、既述の通り、ナノバブル85は小さく、浮力や重力の影響を受けにくいと考えられるが、例えばフッ化水素や金属塩などが溶解した処理液の比重が大きく、浮力を受ける場合などには、以下に説明する処理容器111を用いても良い。
図14に示す処理容器111は、既述の図2に示した処理容器21を上下に対照的に構成した例を示している。尚、処理容器21と同じ構成部品については、同じ符号を付けて示す。
【0080】
この処理容器111について、概略的に説明すると、ウェハWは上方部位23の天壁に埋設された吸引部112によって、表面側(レジストマスク83や絶縁膜87などのパターンが形成された面)が下側になるように、つまりウェハWの裏面が吸着されて、処理領域26内に図2の処理容器21とは上下逆向きとなるように保持されており、この吸引部112と共に、昇降する構成となっている。
【0081】
具体的には、吸引部112は、ウェハWよりも小径の円筒形状の接触部112aと、この接触部112aの上方に接続され、接触部112aよりも更に小径の駆動軸112bと、からなっている。この駆動軸112bは、筐体22の外側(上側)に設けられた駆動機構113の中心部を貫通するように、駆動機構113に保持されており、この駆動機構113によって昇降可能に構成されている。また、この吸引部112の内部には、ウェハWの概略中央付近を吸引するための吸引路32が形成されており、駆動機構113を介して例えば真空ポンプなどの吸引手段61に接続されている。接触部112aの上側には、リング状の溝114aが形成されており、その内部にはめ込まれたリング状のシール材114bによって、この吸引部112と筐体22とが密接して、処理液が駆動機構113側に流入しないように構成されている。また、吸引部112により吸着されるウェハWに近接するように、上方部位23には下側から電極35と温調手段34とが埋設されており、それぞれ電源62と電源34aとに接続されている。電極35及び電源62は、電界形成手段を構成している。尚、これらの電極35と温調手段34とは、吸引部112の内側と外側とにおいて分割されており、それぞれに対して電源62と電源34aとが接続されているが、ここでは省略して示している。
【0082】
また、ウェハWに対向するように、既述の図2における処理容器21内の載置台31に対応する位置には、昇降板115が設けられている。この昇降板115には、超音波供給手段として超音波振動子42が複数箇所設けられており、ウェハWの近傍の処理液に均等に超音波振動を与えるように構成されている。この昇降板115の下面には、昇降軸63aを介して昇降機構63bが接続されており、この昇降機構63bにより昇降板115が昇降して、昇降板115の周縁部の溝36a内のシール体36bと上方部位23の下面に設けられたリング状の絶縁体25とが密着して処理領域26を気密に構成したり、あるいはウェハWの搬送用の搬送口22aと処理領域26とを連通させたりするように構成されている。尚、昇降機構63bと筐体22の下面との間には、絶縁体64が介設されている。
【0083】
昇降軸63a、昇降機構63b及び絶縁体64内には、ガス供給路29が形成されており、処理後のウェハWに付着した純水を吹き飛ばすための清浄ガス例えば窒素ガスが貯留された気体供給部であるガス供給源41に接続されている。また、ウェハWを洗浄するための洗浄液例えば純水が貯留された洗浄液供給部44が上方部位23の天壁に洗浄液供給路43を介して接続されている。昇降板115内には、複数箇所例えば4カ所の液体排出路として排出路37が形成されていて、伸縮可能な排出管37aと筐体22の下面とを介して帰還路71に接続されている。
上方部位23の側面には、処理領域26内に処理液を供給するための処理液供給口27が形成されており、この処理液供給口27は、液体供給路の処理液供給路28に接続されている。
尚、電源62と昇降機構63bとは、接地されている。
【0084】
次に、この処理容器111内にウェハWを搬入する場合について、図15を参照して簡単に説明する。先ず、同図(a)に示すように、昇降板115と吸引部112とが下降する。次いで、外部の例えば馬蹄形状のアーム116aを備えた搬送機構116によって裏面が吸引保持され、表面が下向きにされた状態のウェハWが搬送口22aを介して筐体22内に搬送される。この時、ウェハWは周縁部だけが保持されており、中心部における吸引部112と接触する部位は、搬送機構116と干渉しない。そして、同図(b)に示すように、ウェハWが処理領域26の中心部まで搬送されると、吸引部112が僅かに下降して、吸引部112とウェハWとが接触する。そして、吸引手段61によりウェハWを吸引部112に吸着保持すると共に、搬送機構116によるウェハWの吸着を解除して、同図(c)に示すように、搬送機構116が退去する。その後、吸引部112と昇降板115とが上昇して、処理領域26を気密に構成する。
【0085】
その後のウェハWの処理については、既述の処理容器21と同様であるので、ここでは省略する。そして、処理が終了すると、ウェハWが搬入された順序と逆の順序でウェハWが搬出されて、既述の搬送機構116が上下反転して、ウェハWの向きが元に戻される。
【0086】
このような処理容器111では、上述したように、処理液中においてナノバブル85に加わる浮力が強い場合には、ウェハWに対してナノバブル85を引き込むにあたり、電極35に印加する電圧に加えて、この浮力を用いることができるので、処理速度を速くすることができる。また、電極35に電圧を印加せずに、ナノバブル85の浮力だけでウェハWの処理を行うようにしても良い。
【0087】
尚、この処理容器111において、ウェハWの表面(パターンが形成された面)には、搬送機構116が接触しないように、つまりウェハWの表面にパーティクルなどが付着しないように、ウェハWを搬送したが、特に問題ない場合には、ウェハWの表面を保持して、ウェハWの搬送を行うようにしても良い。
【0088】
また、上述の各例では、ウェハW側に正の電圧を印加して、負に帯電したナノバブル85を引き込むようにしたが、ウェハWに対向する面(上方部位23あるいは昇降板115)に負の電圧を印加して、ナノバブル85をウェハW側に押し出すようにしても良い。更に、ナノバブル85を正に帯電させて、負の電圧によってウェハW側に引き込むかあるいは押し出すようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】上記の製造装置における処理容器の一例を示す縦断面図である。
【図3】上記の製造装置におけるナノバブル発生装置の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法の実施するため工程の一例を示すフロー図である。
【図5】上記の製造方法が適用される基板の一例を示す基板の縦断面図である。
【図6】上記の処理容器に基板が搬入されるときの様子を示す前記処理容器の縦断面図である。
【図7】上記の処理容器内におけるナノバブルを模式的に示した前記処理容器の縦断面図である。
【図8】上記の製造方法において、基板が処理液によってエッチングされていくときの様子の一例を表した模式図である。
【図9】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図10】上記の製造方法において、基板がナノバブル内の処理ガスによってエッチングされていくときの様子の一例を表した模式図である。
【図11】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図12】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図13】上記の製造方法において、処理液によって基板上に銅膜が成膜されていくときの様子の一例を表した模式図である。
【図14】上記の製造装置における処理容器の一例を示す縦断面図である。
【図15】上記の処理容器に基板が搬入されるときの様子を示す前記処理容器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 半導体製造装置
11 混合槽
15a フッ化水素水溶液源
15b 純水源
21 処理容器
26 処理領域
31 載置台
35 電極
42 超音波振動子
51 ナノバブル発生装置
57 窒素ガス源
85 ナノバブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内の基板に対して少なくとも一方がエッチング処理または成膜処理に関与する成分を含む液体及び気体を供給して、前記基板に対して成膜処理またはエッチング処理を行う半導体装置の製造方法、半導体製造装置及びこの製造方法を記憶した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、基板に対して成膜処理やエッチング処理を行うためには、例えば処理ガスをプラズマ化し、このプラズマによって基板の処理を行うドライプロセスであるプラズマ処理が行われている。このプラズマ処理では、処理ガスをプラズマ化し、基板にこのプラズマを引き込むことで、高い異方性を得ることができ、更に開口部の狭いパターンの内部においても処理を行うことができる反面、処理速度が遅くプロセスに長時間必要であり、その改善が望まれている。また、異常放電や、プラズマにより基板が帯電するチャージングダメージなどによって、デバイスが破壊されることが深刻な問題となっている。
また、このようなプラズマ処理は、高真空の処理容器内において行なわれるので、ドライポンプやターボ分子ポンプなどの高価な周辺設備が必要である。更に、処理容器を耐圧構造とする必要があり、基板の面積の増加に伴って、処理容器が大型化することから、今後益々装置の製造コストが高騰する。
更に、基板の大面積化によって、複数の基板間及び基板の面内における処理の均一性を維持することが困難になっており、プラズマ処理方法などのドライプロセスとは異なる処理方法の検討が必要である。
【0003】
一方、例えば処理液中に基板を浸漬して処理を行うウェットプロセスでは、基板の面内において処理の高い均一性が得ることができると共に、帯電によるデバイスの破壊などの問題もない。また、このようなウェットプロセスは、常圧で行われるため、設備を安価なコストで製造できるといったメリットもある。しかし、処理液により反応が等方的に進むため、異方性が必要とされる処理例えばエッチングによって高いアスペクト比を持つパターンを形成することは困難である。また、狭い開口部内に処理液を通流させることは難しいので、このようなパターン内に材料を埋め込むような成膜処理に適用できなかった。
【0004】
一方、特許文献1には、マイクロメートルやナノメートルのサイズの気泡いわゆるマイクロバブル(ナノバブル)を用いて、工業機器などを洗浄する技術が記載されており、また特許文献2には、このナノバブルを安定的に製造する技術が記載されているが、いずれも上述の課題の具体的な解決手段については何ら示唆されていない。
【0005】
【特許文献1】特開2004−121962((0031)〜(0037))
【特許文献2】特開2005−245817((0012)〜(0013))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行うにあたり、ドライプロセスの長所を生かしつつ、ウェットプロセスの長所を得ることができる半導体装置の製造方法、半導体製造装置及びこの製造方法を実施できるプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置の製造方法は、
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法において、
少なくとも一方がエッチング処理または成膜処理に関与する成分を含む液体及び気体を混合して、前記パターンにおける開口寸法よりも小径の帯電したナノバブルを発生させる工程と、
前記ナノバブルを前記基板の表面に引き込むために電界を形成する工程と、
前記電界を形成しながら前記ナノバブルを含む液体を前記基板に供給して処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記エッチング処理または成膜処理に関与する成分とは、エッチング処理時または成膜処理時に活性種として働く物質を生成する成分を意味している。また、前記ナノバブルを前記基板の表面に引き込むための電界は、前記基板側から見ると、基板側に前記ナノバブルを引き込むための電界であり、基板に対向する側から見ると、基板に対して前記ナノバブルを押し込むための電界である。
前記処理を行う工程の後に、前記基板に洗浄液を供給して前記基板を洗浄する工程を行うようにしても良い。
前記洗浄する工程の後に、前記基板に乾燥用の気体を供給して前記基板を乾燥させる工程を行うようにしても良い。
前記処理を行う工程は、前記液体に超音波を供給する工程を含むことが好ましい。
前記処理を行う工程は、前記基板の温度調整を行う工程を含むことが好ましい。
前記エッチング処理が行われるときの前記液体は、フッ化水素を含む溶液であることが好ましい。
前記エッチング処理が行われるときの前記気体は、炭素とフッ素とを含むガスであることが好ましい。
前記成膜処理が行われるときの前記液体は、金属塩、錯化剤及び還元剤を含む溶液であることが好ましい。
前記処理を行う工程は、前記基板の被処理面を下方に向けて行うようにしても良い。
【0009】
本発明の半導体製造装置は、
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行うための半導体製造装置において、
前記基板を載置する載置部が内部に設けられた処理容器と、
この処理容器に一端が接続された液体供給路と、
この液体供給路に介設され、当該液体供給路に供給される液体に気体を混合して帯電したナノバブルを発生させるナノバブル発生装置と、
前記液体供給路から処理容器内に供給された液体中のナノバブルを、前記載置部に載置された前記基板の表面に引き込むために電界を形成する電界形成手段と、
前記処理容器から前記液体を排出するための液体排出路と、を備え、
前記液体及び前記気体の少なくとも一方が、エッチング処理または成膜処理に関与する成分を含むことを特徴とする。
【0010】
この場合においても、エッチング処理または成膜処理に関与する成分とは、どちらかの処理時に活性種として働く物質を生成する成分を意味している。また、前記基板の表面に引き込むための電界とは、基板に前記ナノバブルを基板に向かって引き込むあるいは基板へ押し込む電界である。
【0011】
前記半導体製造装置は、
前記処理が行われた前記基板を洗浄するために、前記処理容器内に洗浄液を供給する洗浄液供給部を備えていても良いし、更に前記洗浄液により洗浄された前記基板を乾燥させるために、前記基板に乾燥用の気体を供給する気体供給部を備えていても良い。
前記処理容器には、前記処理容器内の前記液体に超音波を供給するための超音波供給手段が設けられていることが好ましい。
前記処理容器内には、前記基板の温度を調整するための温調手段が設けられていることが好ましい。
前記処理容器と前記ナノバブル発生装置との間には、前記ナノバブルの粒径を調整するためのフィルターが設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の記憶媒体は、
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上述の半導体装置の製造方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、帯電したナノバブルを分散させた液体を基板に供給して、エッチング処理または成膜処理を行い、この処理中に電界を生成してナノバブルを基板に引き寄せているので、ナノバブルと共に液体が基板表面のパターン内に引き寄せられて、異方性を持つ処理を実施できる。従って、ウェットプロセスでありながら、ドライプロセスの長所である異方性処理を可能とし、しかもウェットプロセスであることから、真空雰囲気を形成しなくて済む。このように、ドライプロセス及びウェットプロセスの双方の利点を生かせるので、装置及び周辺設備のコストを低廉化でき、チャージングダメージの問題がなくなるなど、極めて有益な手法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施の形態:処理液によるエッチング]
本発明の半導体装置の製造方法の第1の実施の形態を実施するための製造装置の一例について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の半導体製造装置1の全体構成を表した図であり、混合槽11、脱泡装置72、加熱器73、加圧ポンプP、ナノバブル発生装置51、フィルターF1及び処理容器21が液体供給路である処理液供給路28によってこの順番で接続され、この処理液供給路28内を処理液などの液体が通流するように構成されている。また、処理容器21と混合槽11とは、フィルターF2を介して帰還路71によって接続され、処理容器21内から処理液などの液体が混合槽11に戻されるように構成されている。尚、図1中の処理容器21は、簡略化して示している。
【0015】
脱泡装置72は、例えば蒸留などによって、処理液中に溶解している空気や窒素ガスなどを取り除くための装置であり、後述のナノバブル発生装置51において処理液中に供給するナノバブルが処理液中に取り込まれやすくするためのものである。
加熱器73は、処理液の温度を調整して、処理液とウェハWとの反応性を制御するためのものである。
加圧ポンプPは、後述のナノバブル発生装置51に処理液を加圧して供給するためのものであり、この加圧ポンプPによって、ナノバブル発生装置51に供給される処理液の流量が調整されるように構成されている。
【0016】
次に、基板例えば半導体ウェハ(以下「ウェハW」という)の処理を行うための処理容器21について、図2を参照して説明する。この処理容器21は、概略円筒形状の筐体22と、この内部に設けられた載置部である載置台31と、を備えている。この筐体22の上方部位23は、下方部位24よりも内径が小さく形成された円筒形状をなしており、その下部に設けられたリング状の絶縁体25において、載置台31の上面の周縁部と密着して、処理領域26を形成するように構成されている。この上方部位23には、側面に処理液を供給するための処理液供給口27が複数箇所例えば処理容器21の径方向に相対向するように2カ所形成されており、処理液供給路28を介して後述のナノバブル発生装置51に接続されている。
【0017】
また、上方部位23の天壁には、洗浄液供給路43を介して洗浄液供給部44が接続されており、ウェハWの処理後、処理領域26内を例えば純水で置換して、ウェハWの処理を停止させると共に、ウェハを洗浄できるように構成されている。また、上方部位23の天壁の中央部には、ガス供給路29の一端側が接続されると共に、このガス供給路29の他端側には、例えば窒素ガスを供給するための気体供給部であるガス供給源41が接続されており、例えば洗浄後のウェハWに対して窒素ガスを供給して、排出されずにウェハWの表面に残った純水を吹き飛ばすように構成されている。この上方部位23の天壁には、複数箇所例えば載置台31に載置されるウェハWの中心部と、ウェハWの周縁部の円周方向に等間隔に4カ所と、に対して例えば周波数100kHzの超音波を供給するための超音波供給手段である超音波振動子42が埋設されており、電源42aに接続されて、ウェハWの表面近傍の処理液に均等に超音波振動を与えるように構成されている。
下方部位24の側壁には、後述の載置台31の搬送位置に対応するように、ウェハWの搬送を行うための搬送口22aが形成されている。
【0018】
上述の載置台31の内部には、表面に多数の開口部を有する吸引路32が形成されており、例えば蛇腹状の伸縮可能な吸引管33と筐体22の床面とを介して例えば真空ポンプなどの吸引手段61に接続されて、ウェハWを吸着保持できるように構成されている。載置台31には、載置台31上のウェハWの温度調整を行うために、温度検出手段(図示せず)とヒーターや冷却機構からなる温調手段34とが埋設されており、電源34aに接続されている。また、載置台31には、直流または交流の電源62に接続された電極35が埋設されており、載置台31上のウェハWと処理領域26とを介して、上方部位23の天壁との間に例えば10V程度の電位差を発生させるための電界形成手段を構成している。尚、この電源62と筐体22とは、接地されている。載置台31の上面の周縁部には、リング状の溝36aが形成されており、この内部にはめ込まれたリング状のシール体36bによって、上述の絶縁体25と密着して処理領域26を気密に区画するように構成されている。
【0019】
また、載置台31には、ウェハWの載置領域からはずれた領域に連通するように、液体排出路である排出路37が複数箇所例えばウェハWの周方向に亘って均等に4カ所形成されており、処理領域26内に供給された処理液などの液体を排出できるように構成されている。この排出路37は、伸縮可能な例えば蛇腹状の排出管37a及び筐体22の床面を介して後述の帰還路71に接続されている。この帰還路71には、処理領域26から排出される処理液の流量を調整するための流量制御部71aが設けられており、処理領域26内を処理液で満たしたり、あるいは処理終了後に処理液を全量排出したりするように構成されている。
【0020】
この上方部位23には、天壁部にベントバルブ39aを介してエア抜き管39が接続されており、処理領域26内に処理液が供給されるときに、処理領域26内のガス例えば窒素ガスなどを外部に放出するように構成されている。
【0021】
載置台31の下方には、昇降軸63aを介して昇降機構63bが接続されており、この載置台31が筐体22内において、ウェハWの処理を行うための処理位置(上方位置)と、処理容器21の外部との間でウェハWの受け渡しを行うための搬送位置(下方位置)と、の間において昇降できるように構成されている。尚、昇降機構63bと筐体22の床面との間には、絶縁体64が介設されている。
また、筐体22の下面には、ウェハWを下方から複数箇所例えば3カ所で支持するためのピン65が設置されており、昇降機構66によって、載置台31に穿たれた支持孔38を介してウェハWを昇降させるように構成されている。
【0022】
次いで、ナノバブル発生装置51について、図3を参照して説明する。このナノバブル発生装置51は、図3(a)に示すように、円筒状の筐体52を備え、この筐体52の側面(周面)と筐体52の一端側とには、既述の処理液供給路28が分断されて接続され、筐体52の他端側には窒素ガス供給路53が接続されている。このナノバブル発生装置51は、例えばナノプラネット研究所製のマイクロナノバブル発生装置などであり、後述するように、筐体52の周面に接続された処理液供給路28から供給される処理液などの液体と、窒素ガス供給路53から供給される処理ガスである窒素ガスなどの気体と、を混合して、液体中に負電荷を持つ気体の小泡(マイクロメートルレベルからナノメートルレベルの大きさの気泡、以下「ナノバブル」という)を生成し、このナノバブルで満たされた液体を筐体52の一端側の処理液供給路28から排出するように構成された装置である。
【0023】
図1に示すように、この窒素ガス供給路53には、ガス供給制御部54である流量制御部55とバルブ56とを介して例えば窒素ガスなどが貯留された窒素ガス源57に接続されている。尚、この例では窒素ガス源57の窒素ガスは、ウェハWに対して実際の処理を行うためのガスではなく、ナノバブルを発生させるために使用するガスであるが、後述するように、ナノバブルが圧壊を起こすことにより、処理液とウェハWとの反応(ウェハWの処理)が促進されるため、「処理ガス」として記載している。
【0024】
このナノバブル発生装置51と処理容器21との間に設けられたフィルターF1は、ナノバブル発生装置51において発生したナノバブルの粒径を調整するためのものであり、例えば1μm以上の大きさのナノバブルを除去して、それ以下の大きさのナノバブルを処理容器21内に供給するように構成されている。尚、通常の大きさの気泡であれば、表面張力によって気泡同士が凝集して、液体中で大きな気体の集合体を形成するため、フィルターF1によって粒径の調整を行うことは困難であるが、このナノバブルは凝集せず、さらに時間の経過と共に収縮して、その後消失するので、フィルターF1によってその粒径を調整できる。つまり、このフィルターF1において捕捉された大径のナノバブルは、その後収縮してフィルターF1を通過するか、あるいは更に収縮して消滅する。このフィルターF1としては、例えば繊維が多数編み込まれた繊維状体が用いられる。
【0025】
また、フィルターF1と処理容器21との間の処理液供給路28には、窒素ガスの濃度を測定するためのガス濃度測定器58が設けられており、処理液供給路28内を通流する処理液中の窒素ガスの濃度、つまりナノバブルの密度を測定できるように構成されている。窒素ガスの濃度が上限値を超えていたり下限値を下回っていたりする場合には、例えば後述の制御部2AによってウェハWの処理が停止されるように構成されている。
【0026】
図1中の混合槽11は、処理液を混合するためのものであり、混合槽11内の処理液を混合するための撹拌手段14例えば撹拌羽などを備えている。この混合槽11には、フッ化水素水溶液源15aと純水源15bとがそれぞれガス供給制御部16aであるバルブ17a及び流量制御部18aと、ガス供給制御部16bであるバルブ17b及びガス供給制御部18bと、を介して、フッ化水素供給路19aと純水供給路19bとによって接続されている。既述の処理液供給路28は、この混合槽11の下面に接続されており、十分に混合された処理液が下流に向けて供給される。
【0027】
また、この混合槽11には既述の帰還路71がフィルターF2を介して接続されており、処理容器21から戻された処理液は、フッ化水素水溶液源15aと純水源15bとから供給される新しい処理液と混合される。尚、この混合槽11には、処理容器21において処理液に溶解した成分の1種例えばシリコンの濃度を測定するためのシリコン濃度測定器12例えばICP−Mass(誘導結合プラズマ質量分析装置)などが設けられており、混合槽11内の処理液に溶解したシリコンの濃度を所定の間隔で測定するように構成されている。このシリコンの濃度が予め設定した濃度まで上昇した場合には、後述の制御部2Aにより、混合槽11の下方に接続された廃棄路13から、混合槽11に貯留された処理液の所定の割合例えば50%を廃棄するように、廃棄路13に介設されたバルブ13aの開閉が行われる。このような場合は、その後廃棄された処理液と同量の新しい処理液がフッ化水素水溶液源15aと純水源15bとから供給される。尚、シリコン濃度測定器12を設けずに、所定の処理時間が経過したときに、上記と同様に処理液の交換を行うようにしても良い。フィルターF2は、処理容器21内などにおいて生成した生成物などを除去するために設けている。尚、この混合槽11にも、既述の処理容器21と同様に、内部のガスを排出するためのエア抜き管やベントバルブが接続されているが、ここでは省略している。
【0028】
また、この半導体製造装置1には例えばコンピュータからなる制御部2Aが設けられており、この制御部2Aはプログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部などを備えていて、前記プログラムには制御部2Aから半導体製造装置1の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることでウェハWの処理や搬送を行うように命令が組み込まれている。また、例えばメモリには処理圧力、処理温度、処理時間、ガス流量または電力値などの処理パラメータの値が書き込まれる領域を備えており、CPUがプログラムの各命令を実行する際これらの処理パラメータが読み出され、そのパラメータ値に応じた制御信号がこの半導体製造装置1の各部位に送られることになる。このプログラム(処理パラメータの入力操作や表示に関するプログラムも含む)は、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、MO(光磁気ディスク)、ハードディスクなどの記憶部2Bに格納されて制御部2Aにインストールされる。
【0029】
次に、本発明の第1の実施の形態の作用について、図4を参照して説明する。ここで、ウェハWの構成について説明する。ウェハWは、図5(a)に示すように、下側からシリコン層81及び酸化シリコン層82が成膜されており、その表面に例えば開口寸法が0.5μmの円形の開口部84などのパターンを備えたレジストマスク83が形成されている。以下の各工程は、レジストマスク83を用いて、酸化シリコン層82をエッチングする場合についての説明である。
【0030】
(ステップS41:ウェハWの搬入)
まず、図6(a)に示すように、予め載置台31が昇降機構63bによって搬送位置に設定されており、図示しないシャッターが開くと、上述のパターンが形成されたウェハWが搬送口22aから搬送機構116によって搬入される。そして、ピン65の昇降によって搬送機構116からウェハWが載置台31に引き渡されると共に、図6(b)に示すように、吸引路32の吸引により吸着される。次いで、同図(c)に示すように、載置台31が上昇して、上方部位23のリング状の絶縁体25と載置台31の周縁部とが密着し、処理領域26が気密に構成される。
【0031】
(ステップS42:処理液を供給)
次に、予め混合槽11において、フッ化水素と純水との体積割合が所定の値例えば1:200となるように、フッ化水素水溶液源15aと純水源15bとからフッ化水素水溶液と純水とを供給して、混合しておく。そして、脱泡装置72において処理液中の気体を除去した後、加熱器73において所定の温度例えば25℃なるように処理液を加熱する。次いで、加圧ポンプPの圧力を所定の圧力例えば90kPa(675Torr)に設定して、ナノバブル発生装置51とフィルターF1とを介して、処理液を20リットル/minの流量で処理液供給路28から処理容器21内に供給して、処理領域26を処理液で満たすと共に、流量制御部71aを調整して、処理領域26からあふれ出た処理液を帰還路71を介して混合槽11に戻し、処理領域26内の処理液の流れが定常状態となるように保持する。また、ウェハWの温度が所定の温度例えば25℃となるように、温調手段34を調整する。
【0032】
この処理によりウェハWの表面が処理液に接触するので、処理液がレジストマスク83の開口部84を介して酸化シリコン層82に達して、この酸化シリコン層82が僅かにエッチングされる。しかし、この開口部84の開口寸法は、既述の通り、0.5μmと狭いため、処理液がこの開口部84内において循環しにくい状態となっている。従って、酸化シリコン層82の近傍の処理液のシリコン濃度が高くなり、エッチング速度が非常に遅くなるので、酸化シリコン層82は、この工程ではほとんどエッチングされない。
【0033】
(ステップS43:ナノバブル生成)
次いで、窒素ガス源57から窒素ガスを例えば5〜20リットル/minの流量でナノバブル発生装置51に供給する。ナノバブル発生装置51の内部では、処理液が一度筐体52の他端側(窒素ガス供給路53側)に向かって流れた後、筐体52の内面に沿って激しく旋回すると共に筐体52の一端側に向かって流れて、いわゆるアスピレーターのように、例えば0.06MPa(450Torr)の負圧を発生させて窒素ガス供給路53から供給される窒素ガスを吸引する。窒素ガスは、この処理液の旋回流の中心部において筐体52の一端側に向かって流れる。処理液の旋回流は、筐体52の一端側に向かうにつれて旋回半径が徐々に狭まるように構成されているため、筐体52の一端側のある点において、図3(b)に示すように、処理液と窒素ガスとが激しく混合されて、直径が数百ナノメートルから数十マイクロメートルのナノバブル85が生成する。このナノバブル85は、処理液の旋回流との摩擦によって例えば40〜100mVの負電荷を帯びている。(参照:都並結依,大成博文,マイクロバブルの収縮過程と収縮パターン,第1回マイクロ・ナノバブル技術シンポジウム)
【0034】
(ステップS44:処理容器21内にナノバブル85供給)
そして、既述のフィルターF1において、例えば1μm以上のナノバブル85を除去した後、処理容器21内にナノバブル85を供給する。尚、フィルターF1の下流側のガス濃度測定器58において、窒素ガスの濃度が所定の範囲以内ではない場合には、既述のように、例えば後述の制御部2AによってウェハWの処理が停止される。
【0035】
(ステップS45:ウェハWの処理)
次いで、電源62から載置台31内の電極35に正の直流電圧を所定の値例えば10Vに設定して印加する。また、超音波振動子42から例えば100kHzの周波数の超音波を発振させて、処理液を振動させる。既述の通り、ナノバブル85は負に帯電しているため、図7に示すように、正の電圧によってウェハW側に垂直に引き込まれる。また、ナノバブル85は、レジストマスク83の開口部84の開口寸法よりも小さいので、開口部84内にまで引き込まれる。このナノバブル85の流れによって、処理液にも微少な大きさの流れが生じるので、ナノバブル85と共に処理液が開口部84内に引き込まれる。ここで、この現象が起こる条件について検討した結果を以下に示す。
【0036】
図7に示すように、ナノバブル85の電荷の大きさをq[C]、半径をr[m]、載置台31の表面と、処理領域26を区画する上方部位23の下面と、の間の距離をL[m]、電源62から電極35に印加する直流の電圧をV[V]、処理領域26内に形成される電界の強さをE[V/m]とすると、ナノバブル85が電界によってウェハW側に引き込まれる力F[N]は、
・・・・・・(1)
となり、ここでEは、
・・・・・・(2)
である。
【0037】
また、ナノバブル85が処理液から受ける抗力FD[N]は、
・・・・・・(3)
となる。ここでCD、ρ、Uは、それぞれナノバブル85の抗力係数[−]、密度[kg/m3]、流速[m/s]である。そして、処理領域26内の電界によってナノバブル85をウェハW側に引き寄せるためには、
・・・・・・(4)
となる必要があるので、(1)〜(3)式から、電極35に供給する電圧は、
・・・・・・(5)
とする必要のあることが分かった。
【0038】
尚、CDは、処理領域26内の処理液の流れの状態によって異なり、その値は処理液のレイノルズ数[−](Repとして表す)によって、以下の条件毎に変化する。
(条件1)
・・・・・(6)
(条件2)
・・・・・(7)
(条件3)
・・・・・(8)
尚、この計算においては、ナノバブル85が受ける浮力や重力については、ごく小さいものとして無視している。また、図7では、超音波振動子42やウェハWの構成などを省略して示している。
【0039】
この時の開口部84の底部における反応を模式的に図8に示す。前述の通り、ナノバブル85がウェハWに垂直に引き込まれているので、処理液は、同図(a)に示すように、ナノバブル85と共に垂直にウェハW上の開口部に引き込まれる。ナノバブル85は、同図(b)に示すように、時間の経過と共に徐々に収縮するので、この収縮に伴い内部の圧力や温度が上昇する。そして、ナノバブル85がウェハWに到達すると、このナノバブル85と共にウェハWに達したフッ化水素によって、同図(c)に示すように、酸化シリコン層82が僅かにエッチングされる。尚、ナノバブル85は、ウェハWとの接触により負電荷を失う。この時、ナノバブル85は、ウェハWとの接触(衝突)がきっかけとなって、同図(d)に示すように、複数のより小径のナノバブル85に分裂(圧壊)する場合があり、その際、内部の高温高圧のエネルギーが一部分開放される。この局所的に生じた大きなエネルギーによって、例えばウェハW近傍のフッ化水素水溶液の反応性が高まり、フッ化水素による酸化シリコン層82のエッチングが大きく進む。処理液には、既述の通り、超音波振動を与えているため、ウェハWとの衝突時にナノバブル85の圧壊が起こる頻度が多くなっており、更にエッチングが速やかに進行する。
【0040】
そして、引き続き負電荷を持つナノバブル85がウェハWに引き込まれているので、ウェハWとの接触により負電荷を失ったナノバブル85は、同図(e)に示すように、ウェハWに引き寄せられるナノバブル85に押しのけられるように、酸化シリコン層82が溶解した処理液と共にウェハW上の開口部より押し出されて、その後同図(f)に示すように、消失(溶解)する。
【0041】
このように、負電荷を持つナノバブル85がウェハWに引き寄せられ、その後ウェハWとの衝突によりナノバブル85が負電荷を失うので、ウェハWに対して垂直方向のナノバブル85及び処理液の循環流が形成されて、狭い領域である開口部84の底面においても、新しい処理液が供給されると共に、処理液内に溶解した酸化シリコンなどがウェハWの上方の領域に排出されて、異方性高く酸化シリコン層82のエッチングが行われる。尚、このナノバブル85(処理液)の循環速度は、上述の(1)式及び(2)式から明らかなように、電極35に供給する電圧が大きい程速くなるので、この電圧によって、エッチング速度を制御できる。
【0042】
尚、ナノバブル85の圧壊は、ウェハWとの衝突時に起こった場合について説明したが、この圧壊はナノバブル85の生成後、時間の経過と共に起こっており、そのような場合には特にウェハWに対する処理に影響を及ぼさないので、説明を省略している。
この状態を所定の時間例えば240秒保つことにより、上述の反応が繰り返し行われて、開口部84の底部において、酸化シリコン層82が垂直に所定の寸法例えば300nmエッチングされる。
【0043】
(ステップS46:エッチング処理の停止)
所定のエッチング処理が終了した場合には、電源62への電圧の印加と超音波振動子42の超音波発振とを停止して、窒素ガス源57からの窒素ガスの供給を停止する。また、フッ化水素水溶液源15aからの処理液の供給を停止する。そして、洗浄液供給部44から処理領域26内に純水を供給して、処理領域26内のフッ化水素水溶液が十分純水によって置換されるまでこの状態を保つ。その後、純水の供給を停止して、流量制御部71aにより、処理領域26内の純水を全量排出する。この時、ウェハW上に純水が残っている場合には、ガス供給源41から窒素ガスをウェハWに吹き付けて、ウェハW上の純水を除去する。この窒素ガスは、既述のエア抜き管39から外部へ排出される。この後、処理容器21内にウェハWを搬入した順番とは逆の順番で、ウェハWを搬出する。
【0044】
既述のように、処理領域26から帰還路71を介して排出された処理液は、混合槽11において新しい処理液と混合されて、循環する。尚、混合槽11に戻された処理液中のナノバブル85は、時間の経過と共に圧壊して、内部の窒素ガスが処理液中に溶解するが、既述の脱泡装置72を通過するときに除去される。尚、ウェハWの洗浄中の純水については、帰還路71に別途図示しない廃棄管を設けて、混合槽11内に戻さないようにしても良い。
【0045】
上述の実施の形態によれば、処理液中にレジストマスク83の開口部84の開口寸法よりも小さく、負電荷を持つナノバブル85を分散させ、処理液に電界を形成して、このナノバブル85をウェハWに引き込むようにしているので、通常の湿式法であれば処理液が循環しにくく、エッチングが困難であるか、あるいはかなり長時間要する狭い領域(レジストマスク83の開口部84内)におけるエッチングであっても、速やかに行うことができ、更にこのような湿式法であるにも関わらず、乾式法(プラズマエッチングなど)と同様に異方性高くウェハWのエッチングを行うことができる。その際、ウェハWとの衝突(接触)によるナノバブル85が圧壊する際に生成されると考えられるエネルギーをエッチングに利用しているので、エッチング速度を速めることができ、更に処理液に超音波振動を与えて、ウェハWとナノバブル85との衝突時におけるナノバブル85が圧壊する頻度を増加させているので、更にエッチング速度を向上させることができる。
【0046】
このナノバブル85は、負電荷を持っているので、互いに凝集せず、処理液内に均等に分散しているため、上述のウェハWとの接触による圧壊が面内において均一に起こるので、エッチング処理が均等に進む。
また、このエッチング処理は、処理液によって行われるので、ウェハWの全体に亘って均一に処理を行うことができると共に、デバイスがダメージを受けるような温度までの過熱や、プラズマなどによるチャージングダメージを防止することができる。つまり、このエッチング方法は、湿式法の長所(速いエッチング処理速度、面内均一性、デバイスへの低負荷、安価な装置、低消費エネルギー)及び乾式法の長所(高い異方性、狭い領域での処理)の両方が得られる方法である。
【0047】
更に、フィルターF1によってナノバブル85の粒径を調整しているので、レジストマスク83の開口部84の開口寸法に合わせてナノバブル85の粒径を選択できる。例えば開口寸法が広い場合には、フィルターF1を設けずにナノバブル85をそのまま供給することでナノバブル85の量を増やすことができ、開口寸法が狭い場合には、ナノバブル85の粒径がより小さくなるようにフィルターF1を選択して、高精度のエッチングを行うことができる。
【0048】
このエッチング処理を行うための処理容器21は、処理液が漏洩しない程度に気密に構成すれば良く、通常のプラズマ処理に必要とされる高真空に耐えるまでの気密さが不必要なので、装置を安価に製造することができ、例えば真空ポンプなどの周辺設備も不要になる。
【0049】
この実施の形態では、処理ガスとして窒素ガスを用いたが、このようなガスの他に、アルゴンガス、酸素ガスまたは大気などを用いても良い。また、処理ガスとして、通常のプラズマエッチング処理に用いられる炭素とフッ素とを含むガスを用いても良い。この例について、以下に説明する。
【0050】
[第2の実施の形態:処理液及び処理ガスによるエッチング]
図9は、本発明の半導体装置の製造方法の第2の実施の形態を実施するための一例である半導体製造装置3を示している。この半導体製造装置3は、既述の第1の実施の形態における半導体製造装置1とほぼ同じ構成であるが、ナノバブル85を形成するためのガスとして、炭素とフッ素とを含むガス例えばCF4ガス、酸素ガス及び窒素ガスが用いられる構成となっている。
【0051】
具体的には、図9に示すように、既述の加圧ポンプPの下流側において、処理液供給路28は、3本に分岐して、それぞれバルブ92a、92b、92cと流量制御部93a、93b、93cとを介してナノバブル発生装置51a、51b、51cに接続されている。また、これらのナノバブル発生装置51a、51b、51cは、それぞれ流量制御部55a、55b、55cとバルブ56a、56b、56cとを介して、炭素とフッ素とを含むガス例えばCF4ガスが貯留されたCF系ガス源57a、酸素ガス源57b及び窒素ガス源57cに接続されている。そして、ナノバブル発生装置51a、51b、51cの下流側は、それぞれフィルターF1a、F1b、F1cとガス濃度測定器58a、58b、58cとを介して混合容器94に接続されている。この混合容器94には、処理液供給路28を介して既述の処理容器21が接続されている。この例において、窒素ガスは、CF4ガスと酸素ガスとを希釈するためのガスであり、他の不活性ガス例えばアルゴンガスなどであっても良い。
【0052】
尚、バルブ92a、92b、92cと流量制御部93a、93b、93cとは、処理液流量制御部91をなしており、流量制御部55a、55b、55cとバルブ56a、56b、56cとは、ガス供給制御部54をなしている。また、CF系ガス源57a、酸素ガス源57b及び窒素ガス源57cから供給されるガスは処理ガスをなし、これら各ガス源57a、57b、57cは処理ガス源95をなしている。
【0053】
次に、この第2の実施の形態の作用について説明する。尚、この実施の形態における各ステップは、既述の第1の実施の形態と同じ工程であるので、既に説明した図4のフローに従って説明する。尚、既述の説明と同じ工程及び記載については、省略する。
【0054】
(ステップS42:処理液を供給)
混合槽11に貯留した処理液を、所定の圧力例えば90kPa(675Torr)に設定した加圧ポンプP及び処理液流量制御部91を介して、ナノバブル発生装置51a、51b、51cに供給する。この時、各ナノバブル発生装置51a、51b、51cに供給する処理液の流量をそれぞれ20、20、5リットル/minとなるように、処理液流量制御部91を調整する。
そして、処理液を混合容器94において混合した後、処理容器21内に供給して、処理領域26内における処理液の流れが定常状態となるまで保持する。この場合においても、ウェハWは僅かにエッチングされる。
【0055】
(ステップS43:ナノバブル生成)
処理ガス源95からCF4ガス、酸素ガス及び窒素ガスの流量がそれぞれ1、1、5リットル/minとなるようにガス供給制御部54を調整して、各ナノバブル発生装置51a、51b、51cに供給する。これらのナノバブル発生装置51a、51b、51cにおいて、既述のように、処理液と各ガスが混合されてナノバブル85が生成する。
【0056】
(ステップS44:処理容器21内にナノバブル85供給)
そして、各フィルターF1a、F1b、F1cにおいて、同様に粗大なナノバブル85を除去して、各ガス濃度(ナノバブル85の量)をガス濃度測定器58a、58b、58cにおいて測定した後、処理容器21内に処理ガスからなるナノバブル85が分散した処理液を供給する。
【0057】
(ステップS45:ウェハWの処理)
そして、既述の第1の実施の形態と同様に、ウェハWに対してエッチング処理を行う。この実施の形態においても、ナノバブル85がウェハWに引き寄せられ、このナノバブル85と共に処理液がウェハWに対して垂直に循環して、処理液によりエッチングが行われる。また、ナノバブル85には、既述の通り、内部には処理ガスとしてエッチングガスであるCF4ガスが含まれており、この処理ガスによってもエッチングが進行する。この処理ガスによってウェハWがエッチングされる様子について、図10に模式的に示す。尚、処理液によるエッチングについては、既述の第1の実施の形態における図8と同じであり、図の記載が複雑になるため、省略する。
【0058】
図10(a)、(b)に示すように、ナノバブル85がウェハWに引き込まれて行くに従い収縮して、内部の温度や圧力が上昇する。そして、同図(c)のウェハWとの衝突により、負電荷を失うと共に、同図(d)に示すように、ナノバブル85が圧壊を起こし、複数のより小径のナノバブル85に分かれる。この時に放出されるエネルギーによってナノバブル85内の処理ガスが分解して、CFイオンや酸素イオンなどの活性種が生成する。この活性種により、酸化シリコン層82がエッチングされると共に、生成した副生成物などは処理液中に溶解あるいは拡散する。そして、電荷を失ったナノバブル85は、同図(e)に示すように、引き続きウェハWに引き込まれて来るナノバブル85に押しのけられて、エッチングにより生成した副生成物などと共にウェハWの上方に流れていき、その後同図(f)のように、消滅する。この実施の形態においても、超音波振動子42から処理液に超音波振動を与えているので、ウェハWとの衝突の際に圧壊するナノバブル85の量が増加して、更にエッチングが速やかに進行する。
この状態を所定の時間例えば300秒保つことにより、開口部84の底部において、酸化シリコン層82が所定の寸法例えば300nmエッチングされる。
【0059】
(ステップS46:エッチング処理の停止)
そして、上述の実施の形態と同様に、エッチングを停止する。尚、この工程においても、処理液中に溶解した処理ガスは、帰還路71を介して混合槽11に戻された後、既述の窒素ガスと同様に、脱泡装置72において除去される。
【0060】
上述の実施の形態によれば、第1の実施の形態で得られた効果に加えて、以下の効果が得られる。即ち、酸化シリコン層82をエッチング可能な活性種を生成する処理ガスによってナノバブル85を形成しているので、ナノバブル85が酸化シリコン層82に衝突した時に圧壊して生成したエネルギーにより、処理ガスの活性種が生成して、この活性種によっても酸化シリコン層82がエッチングされるので、第1の実施の形態における処理液によるエッチングよりも、更に速やかにエッチングが進行する。
【0061】
この実施の形態においては、上述したように、処理ガスと処理液とによって酸化シリコン層82のエッチングを行ったが、第1の実施の形態で説明したように、CFガスなどのエッチングガスを用いなくとも、フッ化水素水溶液によりエッチングを行うことが可能であり、更にフッ化水素水溶液などを用いなくても、処理ガスとしてCFガスを用いることによりエッチングを行うことが可能である。この例について、以下に説明する。
【0062】
[第3の実施の形態:処理ガスによるエッチング]
図11は、本発明の半導体装置の製造方法の第3の実施の形態を実施するための一例である半導体製造装置4を示している。この半導体製造装置4は、既述の第2の実施の形態における半導体製造装置3とほぼ同じ構成であるが、処理液としては、フッ化水素を供給しないで純水を供給するように、純水源15bが接続されている。
【0063】
この実施の形態においても、既述の第2の実施の形態と同様に各工程が行われて、図10の反応機構に従ってエッチングが行われる。尚、この例では、加熱器73及び温調手段34は、エッチングを速やかに進めるために、例えば130℃に設定される。また、ステップS46では、エッチングが300秒行われる。
この実施の形態においても、狭い領域であっても同様に異方性が高いエッチングが行われる。
【0064】
以上の実施の形態において説明したように、ナノバブル85が分散した処理液によってエッチング処理を行うにあたり、処理液及び処理ガスの少なくとも一方に、エッチングに関与する成分(エッチング時に活性種として働く物質を生成する成分)を含ませておくことにより、ウェットプロセス及びドライプロセスの長所を持つエッチングを行うことができる。
【0065】
[第4の実施の形態:処理液による成膜]
次に、本発明を成膜処理に適用した実施の形態について説明する。図5(b)には、この成膜処理に用いられる被処理体であるウェハWの一例を示している。このウェハWは、絶縁膜87にホールあるいは溝からなるパターンである開口部88が形成されている。開口部88の開口寸法例えばホールの孔径あるいは溝部の溝幅は、10nm〜5000nmに設定されている。尚、絶縁膜87の下層側には、下層部分86が形成されている。この開口部88に金属膜例えば銅膜を埋め込む方法について以下に説明する。
【0066】
図12は、本発明の半導体装置の製造方法の第4の実施の形態を実施するための一例である半導体製造装置5を示している。この半導体製造装置5は、既述の第1の実施の形態における半導体製造装置1とほぼ同じ構成であるが、処理液として、例えば硫酸銅(CuSO4)などの金属塩、クエン酸などの錯化剤、ホルムアルデヒドなどの還元剤及びシアン化合物などの安定剤からなる混合溶液が用いられる。
【0067】
具体的には、図12に示すように、既述の混合槽11には、硫酸銅源15c、クエン酸源15d、ホルムアルデヒド源15e及びシアン化合物源15fがそれぞれ流量制御部18c、18d、18e、18fとバルブ17c、17d、17e、17fとを介して、供給路19c、19d、19e、19fによって接続されている。硫酸銅源15c、クエン酸源15d、ホルムアルデヒド源15e及びシアン化合物源15fは、溶液の状態で供給されるように、予め純水などに溶解した状態で供給されるが、粉末の状態で供給して、混合槽11において溶解するようにしても良い。尚、この例では、金属塩、錯化剤、還元剤及び安定剤として、上記の化合物を用いたが、金属塩としては例えば硝酸銅や塩化銅などを用いても良く、錯化剤としては酒石酸やグルコン酸などを用いても良い。また、還元剤としては、ジメチルアミンボランや次亜燐酸ナトリウムなどを用いても良く、更に安定剤としては、ネオクプロインなどを用いても良い。つまり、通常の無電解メッキ法に用いられる液組成となるように、上記のように各化合物を選定したり、あるいは他の安定剤やpH調整剤を混合したりしても良い。硫酸銅源15c、クエン酸源15d、ホルムアルデヒド源15e及びシアン化合物源15fは、処理液源100をなしており、流量制御部18c、18d、18e、18fとバルブ17c、17d、17e、17fとは、処理液供給制御部16をなしている。
【0068】
また、混合槽11には、ヒーターなどの温調手段101、例えば銅イオンの濃度を検出するための濃度検出器102及び処理液のpHと温度とを検出可能な温度検出手段103が設けられていて、混合槽11内の処理液の温度がある所定の値例えば常温から60℃の範囲となるように調整されると共に、銅イオンの濃度やpHの測定結果から、これらの値をある所定の範囲内に調整するために、処理液源100から所定の原料を添加するように構成されている。つまり、後述の成膜処理によって銅イオンなどが消費されて、処理液中の銅イオン濃度が低下した時は、処理液源100から銅イオンなどが補充されるように構成されている。
【0069】
尚、濃度検出器102を設けずに、温度検出手段103によって検出されたpHから、処理液中の銅イオン濃度などを算出するように構成しても良い。既述の加熱器73は、処理液を所定の温度例えば室温から60℃の範囲内となるように調整されている。また、加熱器73と加圧ポンプPとの間には、フィルターF3が設けられており、例えば処理液中の化合物が析出した場合には、この析出物を取り除くように構成されている。
【0070】
次に、この実施の形態における作用について説明する。この実施の形態においても、上述の図4に示した各ステップと同じ工程であるため、図4を参照して説明を進めるが、既述の第1の実施の形態と重複する箇所については省略する。
【0071】
(ステップS42:処理液を供給)
混合槽11に処理液源100から硫酸銅、クエン酸、ホルムアルデヒド及びシアン化合物がそれぞれ所定の濃度となるように、処理液供給制御部16を調整する。そして、混合槽11内の撹拌手段14と温調手段101とにより、混合槽11内の処理液を十分撹拌して温度を所定の温度例えば室温〜60℃となるように調整する。そして、脱泡装置72、フィルターF3、所定の温度例えば室温〜60℃に設定された加熱器73、処理液の圧力が所定の圧力例えば90kPaとなるように設定された加圧ポンプP、ナノバブル発生装置51及びフィルターF1を介して、処理液を20リットル/minの流量で処理液供給路28から処理容器21内に供給する。また、ウェハWの温度が所定の温度例えば室温〜60℃となるように、温調手段34を調整する。
この処理によって、既述の第1の実施の形態と同様に、ウェハWの表面が処理液に接触するので、ウェハWの表面には銅膜が成膜されるが、開口部88の開口寸法が狭いので、開口部88内にはほとんど成膜されない。
【0072】
(ステップS43:ナノバブル生成)
同様に窒素ガスによってナノバブル85を生成する。
(ステップS45:ナノバブル85引き込み、超音波発振)
既述の実施の形態と同様に、電極35に電源62から正の電圧を印加すると共に、超音波振動子42によって処理液に超音波振動を与える。その結果、ナノバブル85はウェハW側に引き込まれて、開口部88内に入り込む。また、このナノバブル85と共に、処理液が開口部88内に引き込まれて、銅膜が成膜される。この反応について、図13を参照して説明する。尚、銅イオンは、錯体などとして安定的に処理液中に分散しているが、この図13においては、銅イオンとして簡略化して示した。図13(a)、(b)に示すように、ナノバブル85が銅イオンと共にウェハW側に引き込まれ、またナノバブル85の収縮によってナノバブル85内の温度と圧力とが上昇する。そして、同図(c)、(d)に示すように、ナノバブル85がウェハWに衝突すると、電荷が失われる。また、ウェハWに接触した銅イオンが金属銅として成膜される。ナノバブル85とウェハWとが衝突した時に、ナノバブル85が圧壊を起こし、そのエネルギー(熱)によって銅イオンが金属銅に急激に還元されて、更に銅膜が厚く形成される。その後、同図(e)、(f)のように、負電荷を失ったナノバブル85が銅イオンの減少した処理液や金属銅の析出と共に生成した水素ガスなどと共に上昇して、その後消滅する。
この状態を所定の時間保つことにより、開口部88に金属銅が埋め込まれる。
【0073】
(ステップS46:成膜処理の停止)
そして、上述の実施の形態と同様に、処理領域26内を純水で置換して、成膜処理を停止する。ウェハWが取り出された後、ウェハWの表面(絶縁膜87の表面)に成膜された不要な銅膜は、例えばCMP加工などによって除去される。
【0074】
上述の実施の形態によれば、第1の実施の形態におけるエッチング処理を成膜処理に変更したので、ウェハWに生じる現象については、ウェハWをエッチングするか、金属膜を成膜するかの違いはあっても、同様の効果が得られる。
そして、ナノバブル85を用いずに、同様の液組成の処理液中で成膜処理を行った場合には、開口部88内にはほとんど成膜されず、ウェハWの表面に金属銅が成膜されて、開口部88内には空隙が残り、デバイスの通電不良の原因となるおそれがあるが、処理液をナノバブル85と共に開口部88内に引き寄せているので、異方性高く成膜が行われて、つまり開口部88の底面から徐々に金属銅が析出して、開口部88の側壁からの銅膜の成長が抑えられているため、開口部88内にもウェハWの表面と同様に銅膜が緻密に成膜されて、欠陥の少ない銅配線を得ることができる。
【0075】
また、局所的(開口部88の底面)に処理液の温度を上昇させているので、原料の無駄な浪費や処理液の分解を抑えると共に、成膜速度を向上できるという効果も得られる。つまり、処理液の温度を全体的に上昇させると、処理液の成膜速度が全体的に速くなるので、ウェハWの表面だけでなく、処理液が接触する部分(処理容器21の内壁など)や処理液中においても金属銅が析出して、原料の無駄やパーティクルの発生するおそれが生じると共に、処理容器21内を清掃する頻度を増やす必要があるが、処理液の温度を室温〜60℃程度に抑えて、成膜したい部分(開口部88の底面)において、処理液の温度をナノバブル85の圧壊により局所的に上昇させているので、原料の無駄や処理容器21内の清掃の手間が抑えられて、更に開口部88の底面において速い成膜速度で銅膜が得られる。また、処理液の温度を上昇させると、処理液中に溶解している既述の化合物が分解して、処理液の組成が不安定になり、成膜速度や膜の性質(面粗度、密度、純度、可塑性など)に悪影響を及ぼすが、このように局所的に処理液の温度を上昇させているので、そのようなおそれが小さい。
【0076】
尚、この実施の形態においても、既述の第2の実施の形態と同様に、処理液と共に処理ガスとして例えば銅を含む有機ガスを用いて成膜する構成にしても良いし、あるいは処理液として純水を用いて、銅を含む処理ガスによって成膜するようにしても良い。また、この例では、固体表面上に化学反応(還元反応)によって金属が析出する無電解メッキ法を用いて銅膜の成膜を行ったが、例えば予めウェハWの表面(絶縁膜87の表面及び開口部84の内部の全面)に導電性を持つ例えば厚さ20nmの金属膜例えばタングステン(W)膜を例えばスパッタ法などによって成膜しておき、このタングステン膜に電極を接続して、電気メッキ(電解メッキ)法により銅膜を成膜するようにしても良い。
【0077】
以上の成膜方法に関する実施の形態において説明したように、ナノバブル85が分散した処理液によって成膜処理を行うにあたり、処理液及び処理ガスの少なくとも一方に、成膜に関与する成分(成膜処理時に活性種として働く物質を生成する成分)を含ませておくことにより、ウェットプロセス及びドライプロセスの長所を持つ成膜処理を行うことができる。
【0078】
上述した各実施の形態においては、処理容器21に超音波振動子42を設けたが、既述のように、ナノバブル85は自然に圧壊を起こすので、超音波振動子42を設けなくとも良い。また、電源62から電極35に直流電圧を印加したが、交流電圧にしても良い。この場合には、ナノバブル85はウェハWに対して鉛直方向に振動するように移動するので、開口部84、88内における処理液の置換が速やかに行われる。更に、処理領域26に供給する液体として、純水や純水に溶質を溶解させた処理液を用いたが、溶質が析出しないのであれば、極性を持つアルコールや、有機溶媒などを用いても良い。
【0079】
ウェハWに対してエッチング処理や成膜処理を行うために、図2に示す処理容器21を用いたが、他の構成の処理容器を用いても良い。つまり、既述の通り、ナノバブル85は小さく、浮力や重力の影響を受けにくいと考えられるが、例えばフッ化水素や金属塩などが溶解した処理液の比重が大きく、浮力を受ける場合などには、以下に説明する処理容器111を用いても良い。
図14に示す処理容器111は、既述の図2に示した処理容器21を上下に対照的に構成した例を示している。尚、処理容器21と同じ構成部品については、同じ符号を付けて示す。
【0080】
この処理容器111について、概略的に説明すると、ウェハWは上方部位23の天壁に埋設された吸引部112によって、表面側(レジストマスク83や絶縁膜87などのパターンが形成された面)が下側になるように、つまりウェハWの裏面が吸着されて、処理領域26内に図2の処理容器21とは上下逆向きとなるように保持されており、この吸引部112と共に、昇降する構成となっている。
【0081】
具体的には、吸引部112は、ウェハWよりも小径の円筒形状の接触部112aと、この接触部112aの上方に接続され、接触部112aよりも更に小径の駆動軸112bと、からなっている。この駆動軸112bは、筐体22の外側(上側)に設けられた駆動機構113の中心部を貫通するように、駆動機構113に保持されており、この駆動機構113によって昇降可能に構成されている。また、この吸引部112の内部には、ウェハWの概略中央付近を吸引するための吸引路32が形成されており、駆動機構113を介して例えば真空ポンプなどの吸引手段61に接続されている。接触部112aの上側には、リング状の溝114aが形成されており、その内部にはめ込まれたリング状のシール材114bによって、この吸引部112と筐体22とが密接して、処理液が駆動機構113側に流入しないように構成されている。また、吸引部112により吸着されるウェハWに近接するように、上方部位23には下側から電極35と温調手段34とが埋設されており、それぞれ電源62と電源34aとに接続されている。電極35及び電源62は、電界形成手段を構成している。尚、これらの電極35と温調手段34とは、吸引部112の内側と外側とにおいて分割されており、それぞれに対して電源62と電源34aとが接続されているが、ここでは省略して示している。
【0082】
また、ウェハWに対向するように、既述の図2における処理容器21内の載置台31に対応する位置には、昇降板115が設けられている。この昇降板115には、超音波供給手段として超音波振動子42が複数箇所設けられており、ウェハWの近傍の処理液に均等に超音波振動を与えるように構成されている。この昇降板115の下面には、昇降軸63aを介して昇降機構63bが接続されており、この昇降機構63bにより昇降板115が昇降して、昇降板115の周縁部の溝36a内のシール体36bと上方部位23の下面に設けられたリング状の絶縁体25とが密着して処理領域26を気密に構成したり、あるいはウェハWの搬送用の搬送口22aと処理領域26とを連通させたりするように構成されている。尚、昇降機構63bと筐体22の下面との間には、絶縁体64が介設されている。
【0083】
昇降軸63a、昇降機構63b及び絶縁体64内には、ガス供給路29が形成されており、処理後のウェハWに付着した純水を吹き飛ばすための清浄ガス例えば窒素ガスが貯留された気体供給部であるガス供給源41に接続されている。また、ウェハWを洗浄するための洗浄液例えば純水が貯留された洗浄液供給部44が上方部位23の天壁に洗浄液供給路43を介して接続されている。昇降板115内には、複数箇所例えば4カ所の液体排出路として排出路37が形成されていて、伸縮可能な排出管37aと筐体22の下面とを介して帰還路71に接続されている。
上方部位23の側面には、処理領域26内に処理液を供給するための処理液供給口27が形成されており、この処理液供給口27は、液体供給路の処理液供給路28に接続されている。
尚、電源62と昇降機構63bとは、接地されている。
【0084】
次に、この処理容器111内にウェハWを搬入する場合について、図15を参照して簡単に説明する。先ず、同図(a)に示すように、昇降板115と吸引部112とが下降する。次いで、外部の例えば馬蹄形状のアーム116aを備えた搬送機構116によって裏面が吸引保持され、表面が下向きにされた状態のウェハWが搬送口22aを介して筐体22内に搬送される。この時、ウェハWは周縁部だけが保持されており、中心部における吸引部112と接触する部位は、搬送機構116と干渉しない。そして、同図(b)に示すように、ウェハWが処理領域26の中心部まで搬送されると、吸引部112が僅かに下降して、吸引部112とウェハWとが接触する。そして、吸引手段61によりウェハWを吸引部112に吸着保持すると共に、搬送機構116によるウェハWの吸着を解除して、同図(c)に示すように、搬送機構116が退去する。その後、吸引部112と昇降板115とが上昇して、処理領域26を気密に構成する。
【0085】
その後のウェハWの処理については、既述の処理容器21と同様であるので、ここでは省略する。そして、処理が終了すると、ウェハWが搬入された順序と逆の順序でウェハWが搬出されて、既述の搬送機構116が上下反転して、ウェハWの向きが元に戻される。
【0086】
このような処理容器111では、上述したように、処理液中においてナノバブル85に加わる浮力が強い場合には、ウェハWに対してナノバブル85を引き込むにあたり、電極35に印加する電圧に加えて、この浮力を用いることができるので、処理速度を速くすることができる。また、電極35に電圧を印加せずに、ナノバブル85の浮力だけでウェハWの処理を行うようにしても良い。
【0087】
尚、この処理容器111において、ウェハWの表面(パターンが形成された面)には、搬送機構116が接触しないように、つまりウェハWの表面にパーティクルなどが付着しないように、ウェハWを搬送したが、特に問題ない場合には、ウェハWの表面を保持して、ウェハWの搬送を行うようにしても良い。
【0088】
また、上述の各例では、ウェハW側に正の電圧を印加して、負に帯電したナノバブル85を引き込むようにしたが、ウェハWに対向する面(上方部位23あるいは昇降板115)に負の電圧を印加して、ナノバブル85をウェハW側に押し出すようにしても良い。更に、ナノバブル85を正に帯電させて、負の電圧によってウェハW側に引き込むかあるいは押し出すようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】上記の製造装置における処理容器の一例を示す縦断面図である。
【図3】上記の製造装置におけるナノバブル発生装置の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法の実施するため工程の一例を示すフロー図である。
【図5】上記の製造方法が適用される基板の一例を示す基板の縦断面図である。
【図6】上記の処理容器に基板が搬入されるときの様子を示す前記処理容器の縦断面図である。
【図7】上記の処理容器内におけるナノバブルを模式的に示した前記処理容器の縦断面図である。
【図8】上記の製造方法において、基板が処理液によってエッチングされていくときの様子の一例を表した模式図である。
【図9】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図10】上記の製造方法において、基板がナノバブル内の処理ガスによってエッチングされていくときの様子の一例を表した模式図である。
【図11】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図12】本発明の半導体製造装置の一例を示す構成図である。
【図13】上記の製造方法において、処理液によって基板上に銅膜が成膜されていくときの様子の一例を表した模式図である。
【図14】上記の製造装置における処理容器の一例を示す縦断面図である。
【図15】上記の処理容器に基板が搬入されるときの様子を示す前記処理容器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 半導体製造装置
11 混合槽
15a フッ化水素水溶液源
15b 純水源
21 処理容器
26 処理領域
31 載置台
35 電極
42 超音波振動子
51 ナノバブル発生装置
57 窒素ガス源
85 ナノバブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法において、
少なくとも一方がエッチング処理または成膜処理に関与する成分を含む液体及び気体を混合して、前記パターンにおける開口寸法よりも小径の帯電したナノバブルを発生させる工程と、
前記ナノバブルを前記基板の表面に引き込むために電界を形成する工程と、
前記電界を形成しながら前記ナノバブルを含む液体を前記基板に供給して処理を行う工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記処理を行う工程の後に、前記基板に洗浄液を供給して前記基板を洗浄する工程を行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄する工程の後に、前記基板に乾燥用の気体を供給して前記基板を乾燥させる工程を行うことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記処理を行う工程は、前記液体に超音波を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記処理を行う工程は、前記基板の温度調整を行う工程を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング処理が行われるときの前記液体は、フッ化水素を含む溶液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記エッチング処理が行われるときの前記気体は、炭素とフッ素とを含むガスであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記成膜処理が行われるときの前記液体は、金属塩、錯化剤及び還元剤を含む溶液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記処理を行う工程は、前記基板の被処理面を下方に向けて行われることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行うための半導体製造装置において、
前記基板を載置する載置部が内部に設けられた処理容器と、
この処理容器に一端が接続された液体供給路と、
この液体供給路に介設され、当該液体供給路に供給される液体に気体を混合して帯電したナノバブルを発生させるナノバブル発生装置と、
前記液体供給路から処理容器内に供給された液体中のナノバブルを、前記載置部に載置された前記基板の表面に引き込むために電界を形成する電界形成手段と、
前記処理容器から前記液体を排出するための液体排出路と、を備え、
前記液体及び前記気体の少なくとも一方が、エッチング処理または成膜処理に関与する成分を含むことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項11】
前記処理が行われた前記基板を洗浄するために、前記処理容器内に洗浄液を供給する洗浄液供給部を備えたことを特徴とする請求項10に記載の半導体製造装置。
【請求項12】
前記洗浄液により洗浄された前記基板を乾燥させるために、前記基板に乾燥用の気体を供給する気体供給部を備えたことを特徴する請求項11に記載の半導体製造装置。
【請求項13】
前記処理容器には、前記処理容器内の前記液体に超音波を供給するための超音波供給手段が設けられていることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項14】
前記処理容器内には、前記基板の温度を調整するための温調手段が設けられていることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項15】
前記処理容器と前記ナノバブル発生装置との間には、前記ナノバブルの粒径を調整するためのフィルターが設けられていることを特徴とする請求項10ないし14のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項16】
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし9のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法において、
少なくとも一方がエッチング処理または成膜処理に関与する成分を含む液体及び気体を混合して、前記パターンにおける開口寸法よりも小径の帯電したナノバブルを発生させる工程と、
前記ナノバブルを前記基板の表面に引き込むために電界を形成する工程と、
前記電界を形成しながら前記ナノバブルを含む液体を前記基板に供給して処理を行う工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記処理を行う工程の後に、前記基板に洗浄液を供給して前記基板を洗浄する工程を行うことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄する工程の後に、前記基板に乾燥用の気体を供給して前記基板を乾燥させる工程を行うことを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記処理を行う工程は、前記液体に超音波を供給する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記処理を行う工程は、前記基板の温度調整を行う工程を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング処理が行われるときの前記液体は、フッ化水素を含む溶液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記エッチング処理が行われるときの前記気体は、炭素とフッ素とを含むガスであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記成膜処理が行われるときの前記液体は、金属塩、錯化剤及び還元剤を含む溶液であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記処理を行う工程は、前記基板の被処理面を下方に向けて行われることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行うための半導体製造装置において、
前記基板を載置する載置部が内部に設けられた処理容器と、
この処理容器に一端が接続された液体供給路と、
この液体供給路に介設され、当該液体供給路に供給される液体に気体を混合して帯電したナノバブルを発生させるナノバブル発生装置と、
前記液体供給路から処理容器内に供給された液体中のナノバブルを、前記載置部に載置された前記基板の表面に引き込むために電界を形成する電界形成手段と、
前記処理容器から前記液体を排出するための液体排出路と、を備え、
前記液体及び前記気体の少なくとも一方が、エッチング処理または成膜処理に関与する成分を含むことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項11】
前記処理が行われた前記基板を洗浄するために、前記処理容器内に洗浄液を供給する洗浄液供給部を備えたことを特徴とする請求項10に記載の半導体製造装置。
【請求項12】
前記洗浄液により洗浄された前記基板を乾燥させるために、前記基板に乾燥用の気体を供給する気体供給部を備えたことを特徴する請求項11に記載の半導体製造装置。
【請求項13】
前記処理容器には、前記処理容器内の前記液体に超音波を供給するための超音波供給手段が設けられていることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項14】
前記処理容器内には、前記基板の温度を調整するための温調手段が設けられていることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項15】
前記処理容器と前記ナノバブル発生装置との間には、前記ナノバブルの粒径を調整するためのフィルターが設けられていることを特徴とする請求項10ないし14のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項16】
パターンが形成された半導体装置製造用の基板に対してエッチング処理または成膜処理を行う方法に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項1ないし9のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−171956(P2008−171956A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2733(P2007−2733)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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