説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】低誘電率の絶縁膜を備える一方で、当該絶縁膜上に選択的に設けられたキャップ層を備えておらず、信頼性に優れた半導体装置を効率よくかつ確実に製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の半導体装置の製造方法は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物を用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする、ナノインデンターを用いた測定から求められる弾性率が、4.0GPa以上である絶縁膜を形成する工程を有する一方で、絶縁膜上にキャップ層を形成する工程を有していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料分野においては、半導体デバイスの高集積化、高速化、高性能化が進むにしたがって、半導体集積回路の配線間抵抗の増大や電気容量の増大による遅延時間が大きな問題となってきている。この遅延時間を減少させ、半導体デバイスをより高速化させるためには、低誘電率の層間絶縁膜を回路に用いることが必要である。
【0003】
従来、絶縁膜の低誘電率化を図るために、熱分解性成分(空孔形成材)を含む組成物を用い、絶縁膜形成の際の加熱焼成工程において、前記熱分解性成分を分解させ、空孔を形成する方法が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような方法を用いた場合、形成される絶縁膜は、強度が低いものとなる。また、形成される絶縁膜に不本意な膜厚のばらつきを生じやすく、各部位での特性差が大きくなるという問題もあった。
【0004】
また、従来においては、特許文献1に示されているように、絶縁膜の上にCMPストッパ膜(キャップ層)を形成する工程と、CMPストッパ膜の上にレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンをマスクとしてCMPストッパ膜および絶縁膜にエッチングを施し、絶縁膜に溝を形成する工程と、レジストパターンを除去する工程と、CMPストッパ膜の上および溝の内面にバリアメタル膜を形成する工程と、溝を埋め込むようにしてバリアメタル膜の上に銅層を形成する工程と、銅層およびバリアメタル膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して銅配線を形成する工程とを有する方法を用いて、半導体装置が製造されていた。
【0005】
上記のような方法では、得られる半導体装置は、CMPストッパ膜を有するものとなるが、CMPストッパ膜の構成材料は、一般に、誘電率が高いものであるため、層間絶縁膜として低誘電率材料を用いても、半導体装置全体としての高性能化には限界があった。
【0006】
そこで、半導体装置のさらなる高性能化のために、半導体装置をCMPストッパ膜(キャップ層)を有さないものとして製造することも考えられるが、このような場合、バリアメタルを除去する際に銅膜よりも層間絶縁膜が優先して研磨されることにより、ウェーハの平坦性が低下し、多層配線における配線、ビアの接続信頼性が低下し、最終的に得られる半導体装置の信頼性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−243903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、低誘電率の絶縁膜を備える一方で、当該絶縁膜上に設けられた、キャップ層を備えておらず、信頼性に優れた半導体装置を提供すること、また、当該半導体装置を効率よくかつ確実に製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(13)に記載の本発明により達成される。
(1) 素子が形成された半導体基板の表面にケイ素含有膜を形成するケイ素含有膜形成工程と、
分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物を用いて、前記ケイ素含有膜の表面に、ナノインデンターを用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする測定から求められる弾性率が、4.0GPa以上である絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜の表面にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
フォトマスクを用いて前記レジスト膜に露光・現像処理を施し、前記レジスト膜をパターニングするレジスト膜パターニング工程と、
前記レジスト膜をマスクとして、前記絶縁膜をエッチングするエッチング工程と、
前記絶縁膜が設けれられた面側に、配線層の構成成分の拡散を防止するバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程と、
前記バリアメタル層で被覆された前記絶縁膜の溝部内に前記配線層を形成するとともに、前記バリアメタル層の表面を前記配線層の構成材料で被覆し、積層体を得る配線層形成工程と、
前記配線層の構成材料で構成され前記溝部の外部に設けられた部分をCMP法による研磨により除去する第1の研磨工程と、
前記バリアメタル層のうち、前記絶縁膜の表面よりも外側に設けられた部分をCMP法による研磨により除去する第2の研磨工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0010】
(2) 前記重合性化合物の前記重合性反応基は、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有するものであり、
前記重合性化合物において、前記芳香環由来の炭素の数は、当該重合性化合物全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下である上記(1)に記載の半導体装置の製造方法。
【0011】
(3) 前記芳香環は、前記かご型構造に直接結合したものである上記(2)に記載の半導体装置の製造方法。
【0012】
(4) 前記重合性反応基は、2つのエチニル基またはビニル基を有し、一方の前記エチニル基または前記ビニル基は、他方の前記エチニル基または前記ビニル基のメタ位に存在するものである上記(2)または(3)に記載の半導体装置の製造方法。
【0013】
(5) 2つの前記エチニル基または前記ビニル基は、いずれも、前記芳香環が前記かご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものである上記(4)に記載の半導体装置の製造方法。
【0014】
(6) 前記部分構造は、アダマンタン構造を有するものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0015】
(7) 前記アダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものである上記(6)に記載の半導体装置の製造方法。
【0016】
(8) 前記重合性化合物は、下記式(1)で示される構造または下記式(5)で示される構造を有するものである上記(7)に記載の半導体装置の製造方法。
【0017】
【化1】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【0018】
【化2】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【0019】
(9) 前記部分構造は、ジアマンタン構造を有するものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0020】
(10) 前記重合性化合物は、前記重合性反応基を2つ有し、前記部分構造を中心に、当該重合性反応基が対称的に結合した構造をなしているものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0021】
(11) 前記絶縁膜形成工程においては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム塩:0.005wt%、シュウ酸:0.06wt%、平均粒径20nmのコロイダルシリカ:1.25wt%、ベンゾトリアゾール:3wt%、過酸化水素:1wt%、水:残部からなる研磨用組成物を用い、ポリウレタン製研磨パッド(IC−1000/suba400、ロデール社製)を研磨機の定盤として用い、加重:300g/cm、定盤の回転数:80rpm、ウエハ回転数:80rpm、前記研磨用組成物の温度:25℃という条件で、研磨を行った際の研磨レートが、50nm/分以下である前記絶縁膜を形成する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0022】
(12) 前記バリアメタル層は、Ta、Ti、TaN、TiNおよびWNよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されたものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0023】
(13) 上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低誘電率の絶縁膜を備える一方で、当該絶縁膜上に設けられた、キャップ層を備えておらず、信頼性に優れた半導体装置を提供すること、また、当該半導体装置を効率よくかつ確実に製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図である。
【図2】半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図である。
【図3】半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図である。
【図4】ナノインデンターを用いた絶縁膜の弾性率の求め方を説明するための図である。
【図5】ナノインデンターを用いた絶縁膜の弾性率の求め方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
<半導体装置の製造方法>
まず、本発明の半導体装置の製造方法について説明する。図1〜図3は、半導体装置の製造方法の好適な実施形態を示す縦断面図、図4、図5は、ナノインデンターを用いた絶縁膜の弾性率の求め方を説明するための図であり、特に、図4は、圧子と試料の接触の様子を説明するための図、図5は、荷重−変位曲線である。なお、以下の説明では、図1〜図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0027】
図1〜図3に示すように、本実施形態の製造方法は、素子が形成された半導体基板1を用意する半導体基板用意工程(1a)と、半導体基板1の表面にケイ素含有膜2を形成するケイ素含有膜形成工程(1b)と、ケイ素含有膜2の表面に絶縁膜(層間絶縁膜)3を形成する絶縁膜形成工程(1c)と、絶縁膜3の表面にレジスト膜8を形成するレジスト膜形成工程(1d)と、フォトマスクを用いてレジスト膜8に露光・現像処理を施し、レジスト膜8のビア(導体ポスト)または配線溝を形成する位置に対応する位置に開口部(溝部)を形成するレジスト膜パターニング工程(1e)と、レジスト膜8をマスクとして、絶縁膜3をエッチングし、開口部(溝部)を形成するエッチング工程(1f)と、必要に応じて実施するレジスト膜8を除去するレジスト膜除去工程(1g)と、絶縁膜3が設けれられた面側に、後述する配線層7の構成成分の拡散を防止するバリアメタル層(バリアメタル)6を形成するバリアメタル層形成工程(1h)と、バリアメタル層6が設けられた面側に配線層7の構成材料を被覆し、バリアメタル層6で被覆された絶縁膜3の溝部内に配線層7を形成するとともに、バリアメタル層6の表面(半導体基板1の主面に平行な面)を配線層7の構成材料で被覆し、積層体10を得る配線層形成工程(1i)と、配線材料で構成され溝部の外部に設けられた部分をCMP法による研磨により除去する第1の研磨工程(1j)と、バリアメタル層6のうち、絶縁膜3の表面よりも外側に設けられた部分をCMP法による研磨により除去する第2の研磨工程(1k)とを有している。
【0028】
[ケイ素含有膜形成工程]
ケイ素含有膜形成工程は、気相成膜法を用いて好適に行うことができる。なお、本発明において、ケイ素含有膜2は、当業者にバリア膜、エッチストッパー膜として公知の材料を用いればよいが、SiCNやSiCが好適に用いられるものである。
【0029】
[絶縁膜形成工程]
絶縁膜形成工程は、ケイ素含有膜2の表面に、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等の方法により、膜形成用組成物を付与することにより、好適に行うことができる。
【0030】
そして、ケイ素含有膜2の表面に付与された膜形成用組成物に対し、加熱や活性エネルギー線の照射等の処理(焼成処理)を施すことにより、絶縁膜3を形成することができる。
【0031】
このような焼成処理を行うことにより、膜形成用組成物を構成する重合性化合物や重合性化合物が部分的に重合したプレポリマーが有する未反応の重合性反応基が重合反応し、重合体(硬化物)で構成された絶縁膜3が得られる。
【0032】
焼成処理に先立ち、例えば、ケイ素含有膜2上に付与された膜形成用組成物から溶媒を除去する処理(脱溶媒処理)を施してもよい。このような脱溶媒処理は、例えば、加熱処理、減圧処理などにより行うことができる。
【0033】
焼成処理は、例えば、処理温度:200〜450℃、処理時間:1〜60分間という条件で行うのが好ましく、処理温度:250〜400℃、処理時間:5〜30分間という条件で行うのがより好ましい。また、焼成工程では、異なる条件の加熱処理を組み合わせて行ってもよい。
【0034】
なお、絶縁膜3は、予め、別途ドライフィルムとして用意した樹脂膜(絶縁膜)を、ケイ素含有膜2の上に積層するように形成することもできる。より具体的には、予め、膜形成用組成物を用いて、部材上に樹脂膜(絶縁膜)を形成して乾燥し、ドライフィルムを得、このドライフィルムを前記部材から剥離し、これを、ケイ素含有膜2の上に、積層して、加熱および/または放射線を照射することにより、絶縁膜3を形成してもよい。
【0035】
本工程においてケイ素含有膜上に形成する絶縁膜3は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物(膜形成用組成物)を用いて形成されるものであり、かつ、ナノインデンターを用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする測定から求められる弾性率が4.0GPa以上である。本発明は、半導体装置の製造過程において、このような条件を満たす絶縁膜を形成することにより、低誘電率の絶縁膜を備える一方で、当該絶縁膜上に設けられたキャップ層を備えておらず、信頼性に優れた半導体装置をを効率よくかつ確実に製造することができる。
【0036】
以下、ナノインデンターを用いた弾性率(ヤング率)の求め方について説明する。
弾性率は、先端形状がダイアモンドチップから成る正三角錐(バーコビッチ型)の圧子を、サンプルとしての絶縁膜に押し込み、そのときの圧子にかかる荷重Pと圧子の下の射影面積Aから求まる。図4にバーコビッチ圧子と試料の接触の様子を示す。また、図5に弾性/塑性変形物質の典型的な荷重−変位曲線を示す。
【0037】
接触深さhcは図4に示すように、接触点の周辺表面の弾性へこみにより、全体の押し込み深さhtより浅くなるのが普通である。つまり、hc=ht−ε×(P/S)。ここで、εは圧子形状に関係する定数で、バーコビッチでは0.75、Sは圧子と試料間の接触剛性(図5の除荷曲線のスロープ)である。
【0038】
圧子と試料間の接触射影面積Aは押し込み深さhcと圧子の形状を考慮し、次式で与えられる、A=24.56hc+f(hc)。f(hc)は圧子の曲率により求められる補正項である。
【0039】
図5の荷重−変位曲線から決定される接触剛性Sは、圧子と試料の剛性弾性率Erと、S=(2/(π)1/2)×Er×(A)1/2の関係があり、求められるErの値から、試料の弾性率(ヤング率)Esは、Er=[((1−vs)/Es)+((1−vi)/Ei)]−1 の関係式から算出できる。ここでEiは圧子の弾性率、viは圧子のポアッソン比、vsは試料のポアッソン比である。
【0040】
なお、ナノインデンターとしては、例えば、MTS社製の薄膜機械的特性測定装置ナノインデンターSA、Veeco社製の原子間力顕微鏡(AFM)D3100+NanoscopeV、エリオニクス社製の超微小押し込み硬さ試験機ENT−1100a等を用いることができる。
【0041】
上記のように、本発明では、ナノインデンターを用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする測定から求められる弾性率が4.0GPa以上である絶縁膜を形成する点に特徴を有するが、これに対し、形成する絶縁膜についての、ナノインデンターを用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする測定から求められる弾性率が4.0GPa未満であると、CMP法に供した際に、絶縁膜が不本意に研磨され、当該絶縁膜を用いて製造される半導体装置の信頼性が著しく低下する等の問題が発生する。
【0042】
上記のように、本発明においては、ナノインデンターを用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする測定から求められる弾性率が4.0GPa以上であればよいが、前記弾性率は、4.0〜11.0GPaであるのが好ましく、4.5〜9.5GPaであるのがより好ましい。これにより、絶縁膜を用いて製造される半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。
【0043】
また、本発明では、絶縁膜の膜厚は、0.03〜20μmであるのが好ましく、0.04〜10μmであるのがより好ましく、0.05〜0.7μmであるのがさらに好ましい。これにより、絶縁膜を用いて製造される半導体装置の信頼性を特に高いものとすることができる。また、絶縁膜の膜厚が前記範囲内の値であると、上述したような測定をより好適に行うことができる。これに対し、絶縁膜の膜厚が前記下限値未満であると、ピンホールの発生や膜厚の不本意なばらつきが生じやすくなる。また、絶縁膜の膜厚が前記上限値を超えると、半導体製造工程中の加熱処理によって絶縁膜にクラックが生じやすくなる。
【0044】
また、本工程で形成する絶縁膜3は、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム塩:0.005wt%、シュウ酸:0.06wt%、平均粒径20nmのコロイダルシリカ:1.25wt%、ベンゾトリアゾール:3wt%、過酸化水素:1wt%、水:残部からなる研磨用組成物を用い、ポリウレタン製研磨パッド(IC−1000/suba400、ロデール社製)を研磨機の定盤として用い、加重:300g/cm、定盤の回転数:80rpm、ウエハ回転数:80rpm、前記研磨用組成物の温度:25℃という条件で、研磨を行った際の研磨レートが、50nm/分以下であるのが好ましく、45nm/分以下であるのがより好ましい。このような条件を満足することにより、後述する第2の研磨工程において、CMP法による研磨を行う際の一般的な条件を採用した場合に、絶縁膜3が不本意に研磨されることをより効果的に防止することができ、当該絶縁膜3を用いて製造される半導体装置の信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0045】
本工程で形成される絶縁膜3の誘電率は、2.80以下であるのが好ましく、2.40以下であるのがより好ましく、2.30以下であるのがさらに好ましい。これにより、半導体デバイスのさらなる高速化を図ることができる。なお、絶縁膜3の誘電率は、例えば、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495等を用いて求めることができる。
なお、絶縁膜3の形成に用いる組成物(膜形成用組成物)については、後に詳述する。
【0046】
[レジスト膜形成工程]
レジスト膜形成工程は、例えば、各種塗布法を用いて行うことができるが、中でも、スピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等による方法を好適に適用することができる。
【0047】
[レジスト膜パターニング工程]
レジスト膜パターニング工程は、通常、一般的なフォトリソ法で行われている露光・現像処理を施すことにより行うことができる。
【0048】
[エッチング工程]
エッチング工程は、処理ガスとして窒素と水素の混合ガスまたはアンモニアガス等を用いたエッチング法(リアクティブイオンエッチング法)などエッチング対象の膜により適宜選択して行うことができる。
【0049】
なお、エッチング工程後に適宜アッシングによるレジスト膜除去工程を行うことができる。
【0050】
[バリアメタル層形成工程]
バリアメタル層形成工程は、PVD法等の気相成膜法により行うことができる。
【0051】
バリアメタル層6の構成材料としては、例えば、Ta、Ti、TaN、TiNおよびWNよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。このような材料を用いることにより、配線層7の構成成分の拡散を防止するバリアメタル層6の機能をより効果的に発揮させることができる。
【0052】
[配線層形成工程]
配線層形成工程は、PVD等の気相成膜法と電界めっき等の湿式めっき法と組み合わせて行うのが好ましい。これにより、配線層7のバリアメタル層6に対する密着性を十分に優れたものとしつつ、配線層7の形成効率を特に優れたものとすることができる。配線層7の構成材料は、特に限定されないが、銅(Cu)が好適に用いられる。
【0053】
[第1の研磨工程]
第1の研磨工程は、CMP法(化学機械研磨法)により行う。
【0054】
第1の研磨工程では、研磨用組成物(第1の研磨用組成物)として、ポリメチルメタクリレートとジビニルベンゼンの共縮合物で構成された粒子と、過酸化水素と、グリシンと、ベンゾトリアゾールと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩と、水とを含むものを用いるのが好ましい。これにより、バリアメタル層6の表面(半導体基板1の主面に平行な面)上に設けられた配線材料で構成された部位をより効率よく除去することができるとともに、第1の研磨工程後の表面の平滑性をより高いものとすることができ、その後の第2の研磨工程をより好適に行うことができるものとなるため、最終的に得られる半導体装置の信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0055】
第1の研磨用組成物中におけるポリメチルメタクリレートとジビニルベンゼンの共縮合物で構成された粒子の含有率は、1〜3wt%であるのが好ましく、1.2〜2.8wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0056】
第1の研磨用組成物中における過酸化水素の含有率は、1〜3wt%であるのが好ましく、1.2〜2.8wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0057】
第1の研磨用組成物中におけるグリシンの含有率は、1〜5wt%であるのが好ましく、2〜4wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0058】
第1の研磨用組成物中におけるベンゾトリアゾールの含有率は、0.001〜0.1wt%であるのが好ましく、0.003〜0.07wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0059】
第1の研磨用組成物中におけるポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の含有率は、0.01〜0.2wt%であるのが好ましく、0.02〜0.10wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0060】
第1の研磨用組成物中には、上記以外の成分(その他の成分)が含まれていてもよいが、第1の研磨用組成物中におけるその他の成分の含有率(複数種のその他の成分を含む場合がこれらの含有率の総和)は、5wt%以下であるのが好ましく、2wt%以下であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果をより確実に発揮させることができる。
【0061】
また、第1の研磨用組成物中に含まれるポリメチルメタクリレートとジビニルベンゼンの共縮合物で構成された粒子の平均粒径は、10〜200nmであるのが好ましく、20〜100nmであるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0062】
[第2の研磨工程]
第2の研磨工程は、CMP法(化学機械研磨法)により行う。第2の研磨工程は、通常、上述した第1の研磨工程と連続的に行われる。第2の研磨工程は、第1の研磨工程と同一の条件で行うものであってもよいが、第1の研磨工程と異なる条件(研磨用組成物の条件を含む)で行うのが好ましい。これにより、第1の研磨工程、第2の研磨工程において、目的とする部位を好適に除去することができ、半導体装置の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、製造される半導体装置の信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0063】
第2の研磨工程では、研磨用組成物(第2の研磨用組成物)として、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム塩と、シュウ酸と、コロイダルシリカと、ベンゾトリアゾールと、過酸化水素と、水とを含むものを用いるのが好ましい。これにより、絶縁膜3が研磨されてしまうのをより確実に防止しつつ、バリアメタル層6等を好適に研磨することができる。また、第2の研磨工程後の表面の平滑性をより高いものとすることができるため、半導体装置100の信頼性を特に優れたものとすることができる。
【0064】
第2の研磨用組成物中におけるポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム塩の含有率は、0.001〜0.02wt%であるのが好ましく、0.002〜0.01wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0065】
第2の研磨用組成物中におけるシュウ酸の含有率は、0.01〜0.3wt%であるのが好ましく、0.02〜0.2wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0066】
第2の研磨用組成物中におけるコロイダルシリカの含有率は、0.3〜2.3wt%であるのが好ましく、0.5〜2.0wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0067】
第2の研磨用組成物中におけるベンゾトリアゾールの含有率は、1〜5wt%であるのが好ましく、1.5〜4wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0068】
第2の研磨用組成物中における過酸化水素の含有率は、0.2〜3wt%であるのが好ましく、0.5〜2wt%であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
【0069】
第2の研磨用組成物中には、上記以外の成分(その他の成分)が含まれていてもよいが、第2の研磨用組成物中におけるその他の成分の含有率(複数種のその他の成分を含む場合がこれらの含有率の総和)は、5wt%以下であるのが好ましく、2wt%以下であるのがより好ましい。これにより、上記のような効果をより確実に発揮させることができる。
【0070】
また、第2の研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカの平均粒径は、3〜100nmであるのが好ましく、5〜60nmであるのがより好ましい。これにより、上記のような効果がより顕著に発揮される。
上記のような工程を経て、半導体装置100が得られる。
【0071】
以下、絶縁膜3の形成に用いられる膜形成用組成物について詳細に説明する。
絶縁膜3の形成に用いられる組成物(膜形成用組成物)は、分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造Aと、重合反応に寄与する重合性反応基Bとを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含むものであればよいが、以下に述べるような重合性化合物Xおよび/または当該重合性化合物Xが部分的に重合した重合体を含むものであるのが好ましい。
【0072】
[1]重合性化合物X
重合性化合物Xの重合性反応基Bが、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有するものであり、重合性化合物Xにおいて、前記芳香環由来の炭素の数は、重合性化合物X全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下であるのが好ましく、18%以上、27%以下であるのがより好ましい。これにより、絶縁膜3の誘電率をより低いものとすることができる。また、組成物が上記のような重合性化合物Xを含むものであると、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。また、組成物が上記のような重合性化合物Xを含むものであると、エッチング工程において絶縁膜3をパターニングした場合に、当該エッチング処理により、残存する絶縁膜3の特性が変化してしまうこと(例えば、絶縁膜3の高誘電率化等)をより効果的に防止、抑制することができる。
【0073】
なお、重合性反応基Bが有するエチニル基またはビニル基は、重合性化合物同士が重合する際の重合性基であり、同一の機能を発揮するものであることから、以下では、重合性反応基Bがエチニル基を有する場合について代表的に説明する。
【0074】
以下、部分構造Aおよび重合性反応基Bについて、それぞれ説明する。
[1.1]部分構造A
重合性化合物Xが有する部分構造Aは、アダマンタン型のかご型構造を含むものである。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜3を、低密度のものとすることができ、形成される絶縁膜3の誘電率を低いものとすることができる。また、後に詳述するような重合性反応基Bを備える重合性化合物Xの反応性を適切なものとすることができるため、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきを抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を優れたものとすることができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0075】
重合性化合物Xが有する部分構造Aとしては、例えば、アダマンタン、ポリアダマンタン(例えば、ビアダマンタン、トリアダマンタン、テトラアダマンタン、ペンタアダマンタン、ヘキサアダマンタン、ヘプタアダマンタン等)、ポリアマンタン(例えば、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ペンタマンタン、ヘキサマンタン、ヘプタマンタン等)、これらの化合物を構成する水素原子の少なくとも一部をアルキル基またはハロゲン原子で置換した化合物等の二価基(上記化合物を構成する2つの水素原子を除いた部分の構造)や、これらの二価基を2つ以上備えたもの(例えば、ビ(ジアマンタン)骨格、トリ(ジアマンタン)骨格、テトラ(ジアマンタン)骨格等の複数のジアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(ジアマンタン)骨格を有するもの);ビ(トリアマンタン)骨格、トリ(トリアマンタン)骨格、テトラ(トリアマンタン)骨格等の複数のトリアマンタン骨格が連なったもの(ポリ(トリアマンタン)骨格を有するもの);アダマンタン骨格(またはポリアダマンタン骨格)とポリアマンタン骨格とが連なったもの等)等が挙げられる。以下に、部分構造Aの例の一部を、化学構造式で示すが、部分構造Aはこれらに限定されるものではない。ただし、下記式(A−1)〜式(A−7)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン基を示し、l、m、nは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
【0076】
【化3】

【0077】
また、部分構造Aは、アダマンタン構造を有するものであるのが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜3の誘電率を特に低いものとすることができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。また、絶縁膜3を所定形状にパターニングするためのエッチング工程において、残存する絶縁膜3の特性が変化してしまうこと(例えば、絶縁膜3の高誘電率化等)をより効果的に防止、抑制することができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を特に優れたものとすることができる。
【0078】
また、アダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものであるのが好ましい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜3の誘電率を特に低いものとすることができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を特に優れたものとすることができる。さらに、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜3を、所定形状にパターニングするためのエッチング工程におけるエッチングレートを比較的低くすることができる。
【0079】
以上のことから、部分構造Aとしては、特に、下記式(2)で示される構造を有するものが特に好適である。なお、下記式(2)中、nは1以上の整数を表す。
【0080】
【化4】

【0081】
かかる構造を有するものを部分構造Aとして選択することにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜3は、前述した効果をより顕著に発揮するものとなる。
【0082】
なお、かかる構成の部分構造Aは、それ自体が対称性を有する構造のものであるのが好ましい。すなわち、上記式(2)中において、nは偶数であるのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性をより適切なものとすることができ、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を特に優れたものとすることができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0083】
また、部分構造Aは、ジアマンタン構造を有するものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜3の誘電率を低いものとすることができる。また、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を特に優れたものとすることができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0084】
[1.2]重合性反応基B
重合性化合物Xは、上記のような部分構造Aに加え、重合反応に寄与する重合性反応基Bを有している。
【0085】
重合性反応基Bは、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基とを有するものである。重合性化合物Xは、この重合性反応基Bを、1つ有するものであってもよいが、2つ有し、これらが部分構造Aを中心に対称的に結合した構造をなしているのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性を適切なものとすることができ、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきを抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を優れたものとすることができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0086】
このように、重合性化合物Xが、部分構造Aとともに、2つの重合性反応基Bを有し、さらに、これらが、特定の配置を有することにより、特に優れた効果が発揮される。
【0087】
重合性反応基Bを構成する芳香環としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ナフタセン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ペリレン環、コロネン環、ビフェニル環、テルフェニル環、アズレン環等の炭化水素環式芳香環や、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、インドール環、プリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、カルバゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、キノリン環、テルチエニル環等の複素環式芳香環等が挙げられる。中でも、芳香環としては、ベンゼン環が好ましい。これにより、ケイ素含有膜2上への膜形成用組成物の付与をより容易に行うことができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。また、形成される絶縁膜3の耐熱性、ケイ素含有膜2への密着性等を特に優れたものとすることができる。
【0088】
重合性反応基Bを構成する芳香環は、少なくとも1つの他の原子を介して部分構造Aを構成するかご型構造に結合したものであってもよいが、部分構造Aを構成するかご型構造に直接結合したものであるのが好ましい。これにより、重合性化合物Xの反応性をより好適なものとすることができ、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を特に優れたものとすることができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0089】
重合性反応基Bは、1つのエチニル基を有するものであっても良いが、2つのエチニル基を有し、上記のような芳香環に、2つのエチニル基が、直接、結合したものであるのが好ましい。これにより、組成物が上記のような重合性化合物Xを含むものであると、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。また、重合性反応基Bが反応部位としてのエチニル基を2つ有することにより、重合性化合物Xについての初期の反応が起こりやすくなる。その一方で、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基が反応(重合反応)すると、芳香環についての電子状態が変化し、他方のエチニル基の反応性は、急激に低下する。このため、比較的穏やかな条件で、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基のみを選択的に反応させることができる。そして、重合性化合物Xは、好ましくは分子内に2つの重合性反応基Bを有しているため、重合性化合物Xの分子内に存在する2つの重合性反応基Bについて、それぞれ、一方のエチニル基のみを選択的に反応させることができ、この場合、例えば、下記式(3)に示すような反応により、複数の重合性化合物Xが一次元的に重合した重合体(鎖状のプレポリマー)が得られる。
【0090】
【化5】

(式(3)中、Aは部分構造Aを示し、Arは重合性反応基Bを構成する芳香環を示す。また、nは、2以上の整数を表す。)
【0091】
なお、重合性反応基Bがエチニル基に代えてビニル基を有する場合には、下記式(3’)に示すような反応により、複数の重合性化合物Xが一次元的に重合した重合体(鎖状のプレポリマー)が得られる。
【0092】
【化6】

((3’)中、Aは部分構造Aを示し、Arは重合性反応基Bを構成する芳香環を示す。また、nは、2以上の整数を表す。)
【0093】
上記のような反応が起こることにより、膜形成用組成物の保存時等において、重合性化合物Xが、過度に反応し、膜形成用組成物が極端に高粘度化すること(例えば、ゲル化すること)を確実に防止することができ、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに際し、当該膜形成用組成物の粘度を確実に好適なものとすることができる。その結果、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきの発生を確実に抑制することができる。
【0094】
その一方で、上記のような反応により得られる重合体(部分的な重合反応により得られたプレポリマー)は、未反応のエチニル基を有しているため、上述したような焼成条件(ケイ素含有膜2上での加熱条件)において、残存するエチニル基を確実に反応させることができ、最終的に形成される絶縁膜3中においては、三次元的に架橋反応した構造を有するものとなる。その結果、形成される絶縁膜3は、特に耐熱性等に優れたものとなる。
【0095】
上記のように、重合性化合物Xを構成する各重合性反応基Bは、2つのエチニル基を有するものである場合、重合性反応基Bにおいて、一方のエチニル基は、他方のエチニル基のメタ位に存在するものであるのが好ましい。これにより、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のエチニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位が適度な立体的な障害となり、他方のエチニル基(未反応のエチニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基についての反応性(第1段目の反応についての反応性と第2段目の反応についての反応性)の選択性をより高いものとすることができるとともに、上述したような焼成工程を、より好適な条件(半導体基板1等へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で絶縁膜3を形成することができる条件)で行うことができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0096】
また、重合性反応基Bが2つのエチニル基を有する場合、2つのエチニル基は、いずれも、芳香環がかご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものであるのが好ましい。これにより、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基が反応(重合反応)した状態において、芳香環等の電子的な効果がより顕著に発揮され、他方のエチニル基の反応性をより効果的に低下させることができるとともに、当該反応した部位、および、前述した部分構造Aが適度な立体的な障害となり、他方のエチニル基(未反応のエチニル基)の反応性をより好適に制御することができる。その結果、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基についての反応性(第1段目の反応についての反応性と第2段目の反応についての反応性)の選択性をより高いものとすることができるとともに、上述したような焼成工程を、より好適な条件(半導体基板1等へのダメージを防止しつつ、優れた生産性で絶縁膜3を形成することができる条件)で行うことができる。また、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0097】
上記のような条件を満足する重合性化合物X、すなわち、部分構造Aおよび重合性反応基Bとして好ましいものが選択され、重合性化合物Xにおける芳香環由来の炭素が適正な数に設定されている重合性化合物X、としては、例えば、下記式(1)で示される構造を有するものや、下記式(5)で示される構造が挙げられる。なお、下記式(1)中、下記式(5)中、nは1〜5の整数を表す。
【0098】
【化7】

【0099】
【化8】

【0100】
かかる構造を有するものを重合性化合物Xとして選択することにより、膜形成用組成物を用いて形成される絶縁膜3は、前述した効果をより顕著に発揮するものとなる。
【0101】
なお、上記式(1)で示される構造を有する重合性化合物Xでは、2つの重合性反応基Bを2つ有するものを例示したが、その他、1つの重合性反応基Bを有する重合性化合物Xとしては、例えば、下記式(1’)で示される構造を有するものが挙げられる。なお、下記式(1’)中、nは1または2の整数を表す。
【0102】
【化9】

なお、重合性化合物Xは、部分構造A、および、重合性反応基B以外の部分構造を有するものであってもよい。
【0103】
上記のような重合性化合物Xは、2つの重合性反応基Bを有し、この重合性反応基Bが2つのエチニル基を有するものである場合、例えば、以下のようにして合成することができる。
【0104】
すなわち、部分構造Aに対応する化合物A’(二価基としてのAに水素原子が2つ接合した化合物)を臭素と反応させ、A’のジブロモ体(部分構造Aに2つのブロモ基が結合した化合物)を得る工程と、A’のジブロモ体をジブロモベンゼンと反応させ、A’のビス(ジブロモフェニル)体(部分構造Aに2つのジブロモフェニル基が結合した化合物)を得る工程と、A’のジブロモフェニル体をトリメチルシリルアセチレンと反応させ、A’のビス(ジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル)体(部分構造Aに2つのジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル基が結合した化合物)を得る工程と、A’のビス(ジ(トリメチルシリルエチニル)フェニル)体を加水分解(脱トリメチルシリル化)する工程とを有する方法により、目的とする重合性化合物Xを得ることができる。
【0105】
なお、重合性反応基Bが2つのエチニル基に代えて2つのビニル基を有する場合には、重合性化合物Xは、例えば、以下のようにして合成することができる。
【0106】
すなわち、上述した2つのエチニル基を有する重合性化合物Xを合成した後、特に限定されないが、水素ガスを用いたLindlar還元、ナトリウムと液体アンモニアを用いたBrich還元、ジイミドを用いたジイミド還元等を行うことで、目的とする重合性化合物Xを得ることができる。
【0107】
膜形成用組成物は、上述したような重合性化合物Xを単独で含むものであってもよいし、例えば、重合性化合物Xが2つの重合性反応基Bを有し、および/または、重合性反応基Bが2つのエチニル基を有する場合、重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(2つの重合性反応基Bのうち一方の重合性反応基Bのみが重合反応したプレポリマーや、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基のみが重合反応したプレポリマー)をさらに含むものであってもよい。膜形成用組成物が重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものであると、膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を特に優れたものとすることができる。また、形成すべき絶縁膜3が比較的厚いものであっても好適に形成することができる。また、膜形成用組成物が重合性化合物Xのプレポリマーを含むものであると、半導体基板1に設けられたケイ素含有膜2上に絶縁膜3を形成する際に、ケイ素含有膜2上において加える熱量を少なくすることができるため、半導体基板1等への加熱によるダメージをより確実に防止することができる。このような重合性化合物Xのプレポリマーを含む膜形成用組成物は、絶縁膜用ワニスとして好適に用いることができる。
【0108】
本工程は、例えば、触媒を用いないで加熱して反応させる熱重合による方法、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用いたラジカル重合による方法、光照射等を用いた光ラジカル重合による方法、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム触媒を用いた重合による方法、酢酸銅(II)などの遷移金属触媒を用いた重合による方法、塩化モリブデン(V)、塩化タングステン(VI)及び塩化タンタル(V)などの遷移金属塩化物を用いた重合による方法などを挙げることができる。これらの中でも、反応を制御しやすく所望の重合体が得られ、また、金属触媒等の残存による不純物除去が不要なことから、熱重合やラジカル開始剤を用いたラジカル重合による方法が望ましい。
【0109】
前記熱重合の方法で調製する場合、熱処理の条件としては、加熱温度:120〜190℃、加熱時間:3〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:140〜180℃、加熱時間:3〜9時間であるのがより好ましい。ラジカル開始剤を使用する場合は、熱処理の条件としては、加熱温度:40〜190℃、加熱時間:0.5〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:60〜180℃、加熱時間:0.5〜9時間がより好ましい。また、前記工程で得られた組成物(重合性化合物を含む組成物)に対する加熱処理は、異なる条件を組み合わせて行ってもよい。例えば、熱重合においては、前記工程で得られた組成物(重合性化合物を含む組成物)に対しては、加熱温度:150〜190℃、加熱時間:1〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:120〜160℃、加熱時間:2〜9時間という条件で行う第2の熱処理、あるいは、さらに多段階の熱処理を施すことも適宜選択できる。ラジカル開始剤を使用する場合においても、例えば、加熱温度:60〜190℃、加熱時間:0.5〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:40〜160℃、加熱時間:0.5〜9時間という条件で行う第2の熱処理、あるいは、さらに多段階の熱処理を施すことも適宜選択できる。なお、上記のような加熱処理は、前記工程で得られた組成物(重合性化合物を含む組成物)を溶媒に溶解した状態で行うのが好ましい。また、上記のような加熱処理によるプレポリマーの合成は、調製すべき膜形成用組成物の構成成分としての溶媒中で行うものであってもよいし、膜形成用組成物の構成成分とは異なる組成の溶媒中で行うものであってもよい。すなわち、所定の溶媒を用いて重合性化合物を重合させプレポリマーを得た後、当該溶媒を、目的とする膜形成用組成物の構成成分としての溶媒に置換してもよい。重合性化合物が部分的に重合した重合体(プレポリマー)の合成に用いることのできる溶媒(反応溶媒)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、n−オクタン等の芳香族および脂肪族炭化水素系溶剤;クロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化物系溶剤;N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
なお、膜形成用組成物が重合性化合物Xのプレポリマーを含むものである場合、未反応の重合性化合物Xは精製により除去されている(未反応の重合性化合物Xが可能な限り含まれていない)のが好ましい。これにより、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜3の耐性を特に優れたものとすることができ、半導体装置100の製造時において、絶縁膜3が不本意に除去されてしまうのをより効果的に防止することができる。
【0111】
膜形成用組成物中における重合性化合物Xの含有率と重合性化合物Xが部分的に重合した重合体(例えば、2つの重合性反応基Bのうち一方の重合性反応基Bのみが重合反応したプレポリマーや、重合性反応基Bが有する2つのエチニル基のうち一方のエチニル基のみが重合反応したプレポリマー)の含有率との和は、1.0〜30wt%であるのが好ましい。
【0112】
上記の説明では、重合性化合物として、芳香環と当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有する重合性反応基を備えるもの(重合性化合物X)を用いる場合について代表的に説明したが、本発明において、重合性化合物は、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有するものであればよく、上記のような重合性化合物X以外のものであってもよい。例えば、本発明において、重合性化合物は、芳香環を備えていないものであってもよい。また、本発明において、重合性化合物は、重合性反応基として、エチニル基、ビニル基以外の官能基(例えば、エチニル基の水素原子が他の原子または原子団で置換されたものや、ビニル基を構成する水素原子のうち少なくとも1つが他の原子または原子団で置換されたもの等)を備えるものであってもよい。
【0113】
またエチニル基に置換基を有するものである場合、前記トリメチルシリルアセチレンをプロピン、ブチン、ペンチンなどのようなアルキル基置換アセチレンや、フェニルアセチレントリルアセチレン、ナフチルアセチレン、フルオレニルアセチレンなどのようなアリール基置換アセチレン、さらにはシクロヘキシルアセチレン、アダマンチルアセチレンなどのようなシクロアルキル基置換アセチレンに変え、脱トリメチルシリル化以外の前記工程を行うことで対応する置換エチニル基を有する重合性化合物を得ることができる。
【0114】
また、重合性化合物が置換ビニル基を有するものである場合、対応する置換ビニル基の合成方法は置換エチニル基に対して同様の前記還元反応を行えばよい。
【0115】
[2]溶媒
膜形成用組成物は、上述したような重合性化合物および/または重合性化合物が部分的に重合した重合体を含むものであればよいが、通常、これらを溶解する溶媒を含むものである。
【0116】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、アニソール、メシチレン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、溶媒としては、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンが好ましい。膜形成用組成物を構成する溶媒としては、例えば、重合性化合物の合成や上述した重合体(重合性化合物が部分的に重合したプレポリマー)の合成に用いた溶媒(反応溶媒)等を含むものであってもよい。
【0117】
膜形成用組成物における溶媒の含有率は、特に限定されないが、70〜99wt%であるのが好ましい。
【0118】
[3]その他の成分
膜形成用組成物は、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、界面活性剤;シランカップリンク剤等のカップリング剤;ラジカル開始剤、ジスルフィド類等の触媒等が挙げられる。
【0119】
また、膜形成用組成物は、感光剤としてのナフトキノンジアジド化合物等を含むものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を、感光性を有する表面保護膜の形成に好適に用いることができる。
【0120】
なお、本発明では、膜形成用組成物は、熱分解性により発泡し、形成される絶縁膜中に空孔を形成する空孔形成材を含まないものであるのが好ましい。従来、絶縁膜の誘電率を低下させる目的で空孔形成材が用いられることがあったが、このような空孔形成材を用いた場合、上述したような半導体装置の製造方法(キャップ層を用いないで半導体装置を製造する方法)でのCMP法による研磨に対する絶縁膜の耐性が特に低いものとなるため、当該方法を用いて製造される半導体装置の信頼性は非常に低いものとなる。これに対し、本発明では、空孔形成材を用いなくても、形成される絶縁膜の誘電率を十分に低いものとすることができる。そして、空孔形成材を含まないことにより、上記のような問題の発生をより確実に防止することができる。
【0121】
上記のような膜形成用組成物は、そのまま、絶縁膜3の形成に用いるものであってもよいが、重合性化合物が2つの重合性反応基を有し、および/または、重合性反応基が2つのエチニル基を有する場合、ケイ素含有膜2上に付与するのに先立ち、加熱処理に供されるものであってもよい。これにより、膜形成用組成物を、重合性化合物が部分的に重合した重合体(プレポリマー)を含むものとすることができ、膜形成用組成物の粘度をより確実に好適なものとし、形成される絶縁膜3の各部位での厚さや特性の不本意なばらつきをより効果的に抑制することができるとともに、最終的に形成される絶縁膜3の強度を特に優れたものとすることができる。また、ケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに先立って膜形成用組成物に加熱処理を施すことにより、形成すべき絶縁膜3が比較的厚いものであっても好適に形成することができる。また、半導体基板1に設けられたケイ素含有膜2上に膜形成用組成物を付与するのに先立って膜形成用組成物に加熱処理を施すことにより、ケイ素含有膜2上において加える熱量を少なくすることができるため、半導体基板1等への加熱によるダメージをより確実に防止することができる。このような熱処理を施す場合、熱処理の条件としては、加熱温度:120〜190℃、加熱時間:3〜11時間であるのが好ましく、加熱温度:140〜180℃、加熱時間:3〜9時間であるのがより好ましい。また、上記のような加熱処理は、異なる条件を組み合わせて行ってもよい。例えば、加熱温度:150〜190℃、加熱時間:1〜6時間という条件で行う第1の熱処理と、加熱温度:120〜160℃、加熱時間:2〜9時間という条件で行う第2の熱処理とを施してもよい。
【0122】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、上記のような本発明の製造方法を用いて製造されたものであるため、信頼性に優れている。また、本発明の半導体装置は、上記のような層間絶縁膜(絶縁膜)を備える一方で、キャップ層(絶縁膜上に選択的に設けられた誘電率の高い材料で構成されたキャップ層)を有していないため、半導体装置の信号損失、配線遅延を効果的に防止・抑制することができる等、半導体装置のさらなる高性能化に有利である。
【0123】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0125】
[1]重合性化合物の合成
(合成例1)
まず、1,3−ジメチルアダマンタンを用意し、温度計、撹拌機および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、四塩化炭素:700mL、臭素:35g(0.22mol)を入れ、撹拌しながら、用意した1,3−ジメチルアダマンタン:32.9g(0.2mol)を、少量ずつ添加した。添加中、内温は20〜30℃に保った。
【0126】
添加終了後、温度が上昇しなくなってから、さらに1時間反応させた。
その後、冷水:約2000mLに注いで、粗生成物を濾別し、純水で洗い、乾燥した。
【0127】
さらに粗生成物を、熱エタノールにより再結晶した。得られた再結晶物を、減圧乾燥することにより、生成物:37.4gを得た。IR分析によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が322である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタンであることが示された。
【0128】
次に、フラスコ内で、上記で得た3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタン:33.2g(103.2mmol)および1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)を攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。5%塩酸水溶液:700mlに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mlに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mlで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:57gを得た。質量分析による分子量が632である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0129】
次に、上記で得られた3,5,−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:39.8g(62.9mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:3.53g(5.0mmol)、トリフェニルホスフィン:6.60g(25.2mmol)、ヨウ化銅(II):4.79g(25.2mmol)、トリエチルアミン:750mlをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:37.1g(377.7mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mlを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mlを加えて分液した。有機層を水:1000mlで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mlに溶解させた。不溶物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mlを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:36.1gを得た。質量分析による分子量が701である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0130】
さらに、上記で得られた3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:32.3g(46.1mmol)と炭酸カリウム:1.46g(10.6mmol)とを、テトラヒドロフラン:600mlとメタノール:300mlとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mlに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mlで洗浄、さらにアセトン:1000mlで洗浄したのち乾燥させることにより、重合性化合物Xとしての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:15.0gを得た。
【0131】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
【0132】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):413(M+)
元素分析:理論値(/%)C;93.16、H;6.84、実測値(/%)C;93.11、H;6.82
【0133】
(合成例2〜5)
ジメチルアダマンタンに代えて、テトラメチルビアダマンタン、ヘキサメチルトリアダマンタン、オクタメチルテトラアダマンタン、デカメチルペンタアダマンタンを用意したこと以外は、前記合成例1と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0134】
なお、合成例1〜5で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(1)に示す。下記式(1)中、nは1〜5の整数を表し、nの数は各合成例の番号に対応する。
【0135】
【化10】

【0136】
なお、上記式(1)中のn=2の重合性化合物X(合成例2)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0137】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):574(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.93、H;8.07、実測値(/%)C;91.87、H;8.00
【0138】
また、上記式(1)n=3の重合性化合物X(合成例3)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0139】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):737(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.25、H;8.75、実測値(/%)C;91.21、H;8.77
【0140】
上記式(1)n=4の重合性化合物X(合成例4)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0141】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):899(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.81、H;9.19、実測値(/%)C;90.75、H;9.16
【0142】
上記式(1)n=5の重合性化合物X(合成例5)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0143】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1062(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.51、H;9.49、実測値(/%)C;90.49、H;9.47
【0144】
(合成例6)
まず、Journal of Organic Chemistry.,39,2987-3003(1974)に記載の合成法に従って、4,9−ジブロモジアマンタンを合成した。IR分析によりブロモ基の吸収が690〜515cm−1に見られること、質量分析による分子量が346である結果より、生成物が4,9−ジブロモジアマンタンであることが示された。
【0145】
次に、合成例1での合成中間体としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンの合成において、3,5−ジメチル−1,7−ジブロモアダマンタンに代えて4,9−ジブロモジアマンタン:35.7g(103.1mmol)を用いた以外は、前記合成例1と同様な方法で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:56gを得た。質量分析による分子量が656である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0146】
次に、合成例1での合成中間体としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンの合成において、3,5,−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:41.2g(62.8mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:35.5gを得た。質量分析による分子量が725である結果より、生成物が4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0147】
さらに合成例1での最終生成物としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンの合成において、3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンに代えて、上記で得られた4,9−ビス(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン38.8g(53.5mmol)を用いた以外は合成例1と同様な反応で反応させることにより、重合性化合物Xとしての4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:14.3gを得た。
【0148】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が4,9−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンであることを示している。
【0149】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):436(M+)
元素分析:理論値(/%)C;93.54、H;6.46、実測値(/%)C;93.46、H;6.38
【0150】
(合成例7〜9)
ジブロモジアマンタンに代えて、ジブロモジ(ジアマンタン)、ジブロモトリ(ジアマンタン)、ジブロモテトラ(ジアマンタン)を用意したこと以外は前記合成例6と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0151】
なお、合成例6〜9で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(4)に示す。下記式(4)中、nは1〜4の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−5)に対応する。
【0152】
【化11】

【0153】
なお、上記式(4)n=2の重合性化合物X(合成例7)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0154】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):622(M+)
元素分析:理論値(/%)C;92.56、H;7.44、実測値(/%)C;92.53、H;7.41
【0155】
また、上記式(4)n=3の重合性化合物X(合成例8)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0156】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):809(M+)
元素分析:理論値(/%)C;92.03、H;7.97、実測値(/%)C;92.01、H;7.94
【0157】
上記式(4)n=4の重合性化合物X(合成例9)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0158】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):995(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.70、H;8.30、実測値(/%)C;91.67、H;8.28
【0159】
(合成例10)
まず、温度計、攪拌器および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、3,5−ジメチル−1−ブロモアダマンタン:45.5g(187.1mmol)と1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)とを入れて攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。
【0160】
次に、5%塩酸水溶液:700mLに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mLに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mLで3回洗浄することにより、3,5,−ジメチル−1−(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:51.4gを得た。質量分析による分子量が398である結果より、生成物が3,5,−ジメチル−1−(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0161】
次に、上記で得られた3,5,−ジメチル−1−(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタン:47.1g(118.4mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:6.66g(9.5mmol)、トリフェニルホスフィン:179.5g(47.3mmol)、ヨウ化銅(II):248.7g(47.3mmol)、トリエチルアミン:750mLをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:34.9g(355.2mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mLを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mLを加えて分液した。有機層を水:1000mLで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mLに溶解させた。不純物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mLを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、3,5−ジメチル−1−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:37gを得た。質量分析による分子量が432である結果より、生成物が3,5−ジメチル−1−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタンであることが示された。
【0162】
さらに上記で得られた3,5−ジメチル−1−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)アダマンタン:36g(83.1mmol)および炭酸カリウム:2.7g(19.3mmol)を、テトラヒドロフラン:600mLとメタノール:300mLとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mLに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mLで洗浄、さらにアセトン:1000mLで洗浄したのち乾燥させることにより、重合性化合物としての3,5−ジメチル−1−(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:19gを得た。
【0163】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1−(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):288(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.61、H;8.39、実測値(/%)C;91.59、H;8.37
【0164】
(合成例11)
ジメチルブロモアダマンタンに代えて、テトラメチルブロモビアダマンタンを用意したこと以外は、前記合成例10と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0165】
なお、合成例10、11で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(1’)に示す。下記式(1’)中、nは1〜2の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−9)に対応する。
【0166】
【化12】

【0167】
なお、上記式(1’)n=2の重合性化合物X(合成例11)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0168】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):450(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.61、H;9.39、実測値(/%)C;90.59、H;9.36
【0169】
(合成例12)
まず、温度計、攪拌器および還流管を備えた4つ口の2000mLフラスコに、4−ブロモジアマンタン:50g(187.1mmol)と1,3−ジブロモベンゼン:1217g(5161.6mmol)とを入れて攪拌し、乾燥窒素下25℃において、臭化アルミニウム(III):24.8g(93.0mmol)を少量ずつ添加した。これを60℃に昇温して8時間攪拌した後、室温に戻し、反応液を得た。
【0170】
次に、5%塩酸水溶液:700mLに、反応液を投入し、攪拌した。水層を除去し、有機層をアセトン:2000mLに投入した。析出物をろ過し、アセトン:1000mLで3回洗浄することにより、4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:56gを得た。質量分析による分子量が422である結果より、生成物が4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0171】
次に、上記で得られた4−(3,5−ジブロモフェニル)ジアマンタン:50g(118.4mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム:6.66g(9.5mmol)、トリフェニルホスフィン:179.5g(47.3mmol)、ヨウ化銅(II):248.7g(47.3mmol)、トリエチルアミン:750mLをフラスコに添加し、攪拌した。これを75℃に昇温した後、トリメチルシリルアセチレン:34.9g(355.2mmol)をゆっくり添加した。これを75℃において7時間攪拌した後、120℃に昇温してトリエチルアミンを留去した。その後、室温に戻し、ジクロロメタン:1000mLを反応液に添加し、20分攪拌した。析出物をろ過により除去し、ろ液に5%塩酸水溶液:1000mLを加えて分液した。有機層を水:1000mLで3回洗浄した後、有機層の溶媒を減圧除去した。得られた化合物をヘキサン:1500mLに溶解させた。不純物をろ過により除去し、ろ液部のヘキサンを減圧除去した。これにアセトン:1000mLを投入し、析出物をアセトンで3回洗浄することにより、4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:41gを得た。質量分析による分子量が456である結果より、生成物が4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタンであることが示された。
【0172】
さらに上記で得られた4−(3,5−ジトリメチルシリルエチニルフェニル)ジアマンタン:40g(87.6mmol)および炭酸カリウム:2.7g(19.3mmol)を、テトラヒドロフラン:600mLとメタノール:300mLとの混合溶媒中において、窒素雰囲気下、室温で4時間攪拌させた。これを10%塩酸水溶液:1000mLに投入して、析出物をろ過し、得られた析出物を水:1000mLで洗浄、さらにアセトン:1000mLで洗浄したのち乾燥させることにより、重合性化合物としての4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタン:23gを得た。
【0173】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が4−(3,5−ジエチニルフェニル)ジアマンタンであることを示している。
【0174】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):312(M+)
元素分析:理論値(/%)C;92.26、H;7.74、実測値(/%)C;92.12、H;7.70
【0175】
(合成例13)
ブロモジアマンタンに代えて、ブロモビ(ジアマンタン)を用意したこと以外は前記合成例12と同様にして、重合性化合物Xを得た。
【0176】
なお、合成例12、13で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(4’)に示す。下記式(4’)中、nは1〜2の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−11)に対応する。
【0177】
【化13】

【0178】
なお、上記式(4’)n=2の重合性化合物X(合成例13)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0179】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):498(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.51、H;8.94、実測値(/%)C;91.49、H;8.46
【0180】
(合成例14)
5Lナスフラスコに、前記合成例1で得られた3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン14.4g(34.9mmol)、キノリン67.4g(522mmol)、5%パラジウム−炭酸カルシウム0.37g(0.174mmol)、テトラヒドロフラン(1000mL)及び攪拌子を投入し、水素気流下、室温で攪拌を開始した。水素3.35L(139mmol)が消費された時点で、窒素を導入して反応を停止させた。反応液を濾過後、濾液を減圧留去し、得られた個体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、重合性化合物Xとしての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジビニルフェニル)アダマンタン18.1gを得た。
【0181】
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物が3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジビニルフェニル)アダマンタンであることを示している。
【0182】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):420(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.37、H;8.63、実測値(/%)C;91.35、H;8.60
【0183】
(合成例15〜22)
3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタンに代えて、前記合成例2〜9で得られた重合性化合物を用意した以外は、前記合成例14と同様にして重合性化合物Xを得た。
【0184】
なお、合成例14〜18で得られた重合性化合物Xの構造式を上記式(5)に、合成例19〜22で得られた重合性化合物Xの構造式を下記式(6)に示す。また、式(5)中、nは1〜5の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−13)に対応し、式(6)中、nは1〜4の整数を表し、nの数は(各合成例の番号−18)に対応する。
【0185】
【化14】

【0186】
なお、上記式(5)n=2の重合性化合物X(合成例15)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0187】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):582(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.66、H;9.34、実測値(/%)C;90.63、H;9.31
【0188】
また、上記式(5)n=3の重合性化合物X(合成例16)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0189】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):745(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.26、H;9.74、実測値(/%)C;90.24、H;9.70
【0190】
上記式(5)n=4の重合性化合物X(合成例17)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0191】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):907(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.00、H;10.00、実測値(/%)C;89.96、H;9.97
【0192】
上記式(5)n=5の重合性化合物X(合成例18)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0193】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1069(M+)
元素分析:理論値(/%)C;89.82、H;10.18、実測値(/%)C;89.80、H;10.14
【0194】
上記式(6)n=1の重合性化合物X(合成例19)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0195】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):444(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.84、H;8.16、実測値(/%)C;91.81、H;8.13
【0196】
上記式(6)n=2の重合性化合物X(合成例20)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0197】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):630(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.37、H;8.63、実測値(/%)C;91.32、H;8.61
【0198】
上記式(6)n=3の重合性化合物X(合成例21)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0199】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):817(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.12、H;8.88、実測値(/%)C;91.10、H;8.84
【0200】
上記式(6)n=4の重合性化合物X(合成例22)の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0201】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1003(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.96、H;9.04、実測値(/%)C;90.93、H;9.01
【0202】
(合成例23)
まず、ジメチルアダマンタンに代えて、ドデカメチルヘキサアダマンタンを用意したこと以外は、前記合成例1と同様に反応を行い、生成物を得た。
得られた生成物の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。
【0203】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1223(M+)
元素分析:理論値(/%)C;90.28、H;9.72、実測値(/%)C;90.26、H;9.70
【0204】
これらのデータは、得られた生成物が式(1)のn=6で表される化合物であることを示している。
【0205】
次に、前記合成例14と同様の反応を行うことにより、重合性化合物Xを得た。
以下に、生成物の外観、質量分析および元素分析の結果を示す。これらのデータは、上記で得られた化合物(重合性化合物X)が式(5)のn=6で表される化合物であることを示している。
【0206】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):1231(M+)
元素分析:理論値(/%)C;89.69、H;10.31、実測値(/%)C;89.66、H;10.29
【0207】
(合成例24)
マクロモルキュールズ( Macromolecules),5266(1991)に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。
【0208】
得られた生成物の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた生成物が4,9−ジエチニルジアマンタンであることを示している。
【0209】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):236(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.47、H;8.53、実測値(/%)C;91.45、H;8.57
【0210】
(合成例25)
ブロモジアマンタンに代えて、ブロモトリ(ジアマンタン)を用意したこと以外は、前記合成例12と同様に反応を行い、生成物を得た。
【0211】
得られた生成物の外観、質量分析、及び元素分析の結果を示す。これらのデータは、得られた生成物が式(4’)のn=3で表される化合物であることを示している。
【0212】
外観:白色固体
MS(FD)(m/z):684(M+)
元素分析:理論値(/%)C;91.17、H;8.83、実測値(/%)C;91.14、H;8.86
【0213】
[2]膜形成用組成物の調製
(調製例1)
上記合成例1で合成された重合性化合物としての3,5−ジメチル−1,7−ビス(3,5−ジエチニルフェニル)アダマンタン:5gを1,3−ジメトキシベンゼン:45gに溶解させ、乾燥窒素下170℃で3時間反応させ、反応液を一旦室温まで冷却した。GPCにより分子量測定を行ったところ、数平均分子量が46,000であった。再び反応液を加熱し、150℃で6時間反応させ、反応液を、10倍の体積のメタノール/テトラヒドロフラン=3/1の混合溶媒に滴下して沈殿物を集めて乾燥し、2.8gのプレポリマーを得た(収率:56%)。得られたプレポリマー:2gを、シクロペンタノン:18gに溶解させ、フィルターでろ過することにより、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物とした。
【0214】
(調製例2〜25)
重合性化合物として、合成例2〜25で合成したものをそれぞれ用いた以外は、前記調製例1と同様にして重合反応を行い、プレポリマーを得、さらに、当該プレポリマー:2gを用いて、前記調製例1で述べたのと同様の処理を施すことにより有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0215】
(調製例26)
上記調製例23で調製された組成物に、さらに、空孔形成材としてのポリプロピレングリコールジオールタイプ(和光純薬工業(株)社製、Polypropylene Glycol, Diol Type, 400):0.7gを添加することにより有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を得た。
【0216】
[3]半導体装置の製造
以下のようにして、各実施例および比較例について、それぞれ、複数個の半導体装置を製造した。
【0217】
(実施例1〜24)
それぞれ、前記各調製例1〜24で得られた有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を用い、以下のようにして絶縁膜を形成した。
【0218】
まず、素子が形成されたシリコンウエハを用意し(図1の(1a)参照)、一方の面に、CVD法により、SiCNで構成されたケイ素含有膜(膜厚:150nm)を形成した(図1の(1b)参照)。
【0219】
次に、ケイ素含有膜上に、有機絶縁膜用ワニスとしての膜形成用組成物を、スピンコーターにより塗布した。この際、熱処理後の絶縁膜の厚さが、100nmとなるように、スピンコーターの回転数と時間を設定した。
【0220】
次に、上記のようにして塗膜が設けられたシリコンウエハを、200℃のホットプレート上に1分間置き、塗膜中に含まれる溶媒(シクロペンタノン)を除去した。
【0221】
その後、乾燥した塗膜が設けられたシリコンウエハについて、400℃のオーブン中で窒素雰囲気下30分間の熱処理(焼成処理)を施すことにより、塗膜を構成するプレポリマーを硬化させ、絶縁膜を形成し、絶縁膜付き基板を得た(図1の(1c)参照)。なお、各実施例及び各比較例について、それぞれ、上記のようにして得られた複数枚の絶縁膜付き基板のうちの一部は、後述するナノインデンターを用いた弾性率の評価、CMP法による研磨レート(研磨速度)評価、誘電率の評価、破壊電圧、リーク電流の評価、耐熱性の評価、誘電率および破壊電圧についての変化率の評価に用いるために、取り分けておいた。
【0222】
次に、上記のようにして得られた複数枚の絶縁膜付き基板の絶縁膜の表面に、スピンコーターを用いて、レジスト膜を形成した(図1の(1d)参照)。
【0223】
次に、ハーフピッチ65nmとなるようフォトマスクを用いてレジスト膜に露光処理を行い、さらに、現像処理を施し、レジスト膜のビア(導体ポスト)または配線溝を形成する位置に対応する位置に開口部(溝部)を形成した(図2の(1e)参照)。
【0224】
次に、パターニングされたレジスト膜をマスクとして、絶縁膜をエッチングし、開口部(溝部)を形成した(図2の(1f)参照)。なお、本工程は、窒素と水素との混合ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法により行った。なお、このリアクティブイオンエッチングは、アネルバ株式会社製、L−201D−Lを用いて、周波数13.56MHz、圧力12.5Pa、出力100W、流量(窒素:7.5sccm、水素:2.5sccm)、処理時間1分で実施した。
【0225】
その後、絶縁膜上に残存しているレジスト膜を、アッシングにより、除去した(図2の(1g)参照)。
【0226】
次に、絶縁膜が設けられた面側に、PVD法により、Taで構成されたバリアメタル層(膜厚:15nm)を形成した(図3の(1h)参照)。
【0227】
次に、バリアメタル層が設けられた面側に、PVD法と電解めっき法により、Cuの被膜を形成した。これにより、絶縁膜の溝部内に配線層が形成されるとともに、バリアメタル層の表面(シリコンウエハの主面に平行な面)全体もCuで被覆された積層体が得られた(図3の(1i)参照)。
【0228】
次に、積層体に対するCMP法による第1の研磨工程(図3の(1j)参照)および第2の研磨工程(図3の(1k)参照)を施し、半導体装置を得た。
【0229】
なお、積層体に対するCMP法による研磨処理(第1の研磨工程および第2の研磨工程)は、以下のようにして行った。
【0230】
すなわち、まず、ポリメチルメタクリレートとジビニルベンゼンとの共縮合物で構成された粒子(平均粒径:40nm):2wt%、過酸化水素:1wt%、グリシン:3wt%、ベンゾトリアゾール:0.01wt%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩:0.05wt%、水:残部からなる第1の研磨用組成物を用いた第1の研磨工程を行い、引き続き、研磨用組成物を、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム塩:0.005wt%、シュウ酸:0.06wt%、平均粒径20nmのコロイダルシリカ:1.25wt%、ベンゾトリアゾール:3wt%、過酸化水素:1wt%、水:残部からなる第2の研磨用組成物を変更して、第2の研磨工程を行った。第1の研磨工程は、バリアメタル層の表面に設けられたCu層が完全に除去されるまで行い(図3の(1j)参照)、第2の研磨工程は、絶縁膜の表面に設けられたバリアメタル層が完全に除去されるまで行った(図3の(1k)参照)。上記の研磨工程(第1の研磨工程および第2の研磨工程)は、ポリウレタン製研磨パッド(IC−1000/suba400、ロデール社製)を研磨機の定盤として用い、加重:300g/cm、定盤の回転数:80rpm、ウエハ回転数:80rpm、前記研磨用組成物の温度:25℃という条件で行った。
【0231】
(比較例1)
膜形成用組成物として、前記調製例25で得られたものを用いた以外は、前記実施例と同様にして半導体装置を製造した。
【0232】
(比較例2)
膜形成用組成物として、前記調製例26で得られたものを用いた以外は、前記実施例と同様にして半導体装置を製造した。
【0233】
[4]CMP法による研磨後の表面の平坦性評価
上記のようにして製造された前記各実施例および各比較例の半導体装置の絶縁膜が設けられた側の表面について、表面粗さ計(株式会社小坂研究所製、Surfcorder SE3500)を用いて最大の段差を求めることにより、表面の平坦性を評価した。平坦性が高いほど(最大段差が小さいほど)、多層配線における配線、ビアの接続信頼性が高くなり、半導体装置の信頼性が高いといえる。
【0234】
[5]半導体装置の製造過程における絶縁膜(絶縁膜付き基板)についての評価
[5.1]ナノインデンターを用いた弾性率評価
前記各実施例および各比較例について、上述した半導体装置の製造過程で得られた絶縁膜付き基板(弾性率評価用)の絶縁膜について、ナノインデンター(MTS社製薄膜機械的特性測定装置ナノインデンターSA2)を用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする測定から弾性率を求めた。
【0235】
[5.2]CMP法による研磨レート(研磨速度)評価
前記各実施例および各比較例について、上述した半導体装置の製造過程で得られた絶縁膜付き基板(研磨レート評価用)の絶縁膜について、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム塩:0.005wt%、シュウ酸:0.06wt%、平均粒径20nmのコロイダルシリカ:1.25wt%、ベンゾトリアゾール:3wt%、過酸化水素:1wt%、水:残部からなる研磨用組成物を用い、ポリウレタン製研磨パッド(IC−1000/suba400、ロデール社製)を研磨機の定盤として用い、加重:300g/cm、定盤の回転数:80rpm、ウエハ回転数:80rpm、前記研磨用組成物の温度:25℃という条件で、研磨を行った際の研磨レート(研磨速度)を求めた。研磨レートが小さいほど、上記組成物を用いたCMP法による研磨に対する耐性に優れているといえる。
【0236】
[5.3]誘電率
前記各実施例および各比較例について、上述した半導体装置の製造過程で得られた絶縁膜付き基板(誘電率測定用)を用いて、絶縁膜の誘電率の評価を行った。誘電率は、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて評価した。
【0237】
[5.4]破壊電圧、リーク電流
前記各実施例および各比較例について、上述した半導体装置の製造過程で得られた絶縁膜付き基板(破壊電圧測定用、リーク電流測定用)を用いて、破壊電圧およびリーク電流の評価を行った。破壊電圧、リーク電流は、誘電率と同様に、日本エス・エス・エム(株)製、自動水銀プローブCV測定装置SSM495を用いて評価した。
【0238】
破壊電圧は、1×10−2Aの電流が流れた時に印加した電圧を破壊電圧とし、電界強度(1×10−2Aの電流が流れた時に印加した電圧(MV)を膜厚(cm)で除した値。単位:MV/cm)で示した。
【0239】
リーク電流は、1MV/cmの電界強度の時に流れる電流値をリーク電流とし、電流密度(1MV/cmの電界強度の時に流れる電流値(A)を、自動水銀プローブCV測定装置の水銀電極面積(cm)で除した値。単位:A/cm)で示した。
【0240】
[5.5]耐熱性
前記各実施例および各比較例について、上述した半導体装置の製造過程で得られた絶縁膜付き基板(耐熱性評価用)を用いて、絶縁膜の耐熱性の評価を行った。耐熱性は、熱分解温度で評価した。得られた絶縁膜をTG/DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、TG/DTA220)を用いて、窒素ガス200mL/min.フロー下、昇温速度10℃/min.の条件により測定し、重量の減少が5%に到達した温度を、熱分解温度とした。
【0241】
[5.6]誘電率および破壊電圧についての変化率
前記各実施例および各比較例について、上述した半導体装置の製造過程で得られた絶縁膜付き基板(誘電率についての変化率評価用、破壊電圧についての変化率評価用)の絶縁膜について、それぞれ、窒素と水素との混合ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によりエッチング処理を施した。なお、このリアクティブイオンエッチングは、アネルバ株式会社製、L−201D−Lを用いて、周波数13.56MHz、圧力12.5Pa、出力100W、流量(窒素:7.5sccm、水素:2.5sccm)、処理時間1分で実施した。
【0242】
上記のような窒素と水素との混合ガスを用いたリアクティブイオンエッチングを施した後の絶縁膜について、上記[5.3]および[5.4]で述べたのと同様の条件で、誘電率および破壊電圧を求めた。これらの結果から、誘電率および破壊電圧について、エッチングの前後での変化率(〔(エッチング後の値)−(エッチング前の値)/(エッチング前の値)〕×100の計算式で求められる値)を求めた。
【0243】
これらの結果を、表1、表2、表3に示した。なお、表1には、前記各実施例および各比較例で、絶縁膜の形成に用いた膜形成用組成物の種類、および、当該膜形成用組成物に係る重合性化合物の化学構造的な特徴(芳香環由来の炭素数、重合性反応基由来の炭素数、部分構造由来の炭素数、芳香環由来の炭素の割合)もあわせて示した。
【0244】
【表1】

【0245】
【表2】

【0246】
【表3】

【0247】
表から明らかなように、本発明では、優れた結果が得られたのに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。
【0248】
また、絶縁膜の厚さを、30nm〜20μmの範囲で変更した以外は、上記と同様の評価を行った結果、上記と同様の結果が得られた。
【符号の説明】
【0249】
1 半導体基板
2 ケイ素含有膜
3 層間絶縁膜(絶縁膜)
6 バリアメタル層(バリアメタル)
7 配線層
8 レジスト膜
10 積層体
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子が形成された半導体基板の表面にケイ素含有膜を形成するケイ素含有膜形成工程と、
分子内に、アダマンタン型のかご型構造を含む部分構造と、重合反応に寄与する重合性反応基とを有する重合性化合物および/または当該重合性化合物が部分的に重合した重合体を含む組成物を用いて、前記ケイ素含有膜の表面に、ナノインデンターを用いて、膜厚の2分の1以上の最大押し込み深さにおいて、弾性率測定変位を膜厚の10分の1とする測定から求められる弾性率が、4.0GPa以上である絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜の表面にレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
フォトマスクを用いて前記レジスト膜に露光・現像処理を施し、前記レジスト膜をパターニングするレジスト膜パターニング工程と、
前記レジスト膜をマスクとして、前記絶縁膜をエッチングするエッチング工程と、
前記絶縁膜が設けれられた面側に、配線層の構成成分の拡散を防止するバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程と、
前記バリアメタル層で被覆された前記絶縁膜の溝部内に前記配線層を形成するとともに、前記バリアメタル層の表面を前記配線層の構成材料で被覆し、積層体を得る配線層形成工程と、
前記配線層の構成材料で構成され前記溝部の外部に設けられた部分をCMP法による研磨により除去する第1の研磨工程と、
前記バリアメタル層のうち、前記絶縁膜の表面よりも外側に設けられた部分をCMP法による研磨により除去する第2の研磨工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記重合性化合物の前記重合性反応基は、芳香環と、当該芳香環に直接結合するエチニル基またはビニル基とを有するものであり、
前記重合性化合物において、前記芳香環由来の炭素の数は、当該重合性化合物全体の炭素の数に対して、15%以上、38%以下である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記芳香環は、前記かご型構造に直接結合したものである請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記重合性反応基は、2つのエチニル基またはビニル基を有し、一方の前記エチニル基または前記ビニル基は、他方の前記エチニル基または前記ビニル基のメタ位に存在するものである請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
2つの前記エチニル基または前記ビニル基は、いずれも、前記芳香環が前記かご型構造に結合する部位のメタ位に存在するものである請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記部分構造は、アダマンタン構造を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記アダマンタン構造は、置換基としてメチル基を有するものである請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記重合性化合物は、下記式(1)で示される構造または下記式(5)で示される構造を有するものである請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【化1】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【化2】

[式中、nは1〜5の整数を表す。]
【請求項9】
前記部分構造は、ジアマンタン構造を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記重合性化合物は、前記重合性反応基を2つ有し、前記部分構造を中心に、当該重合性反応基が対称的に結合した構造をなしているものである請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁膜形成工程においては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウム塩:0.005wt%、シュウ酸:0.06wt%、平均粒径20nmのコロイダルシリカ:1.25wt%、ベンゾトリアゾール:3wt%、過酸化水素:1wt%、水:残部からなる研磨用組成物を用い、ポリウレタン製研磨パッド(IC−1000/suba400、ロデール社製)を研磨機の定盤として用い、加重:300g/cm、定盤の回転数:80rpm、ウエハ回転数:80rpm、前記研磨用組成物の温度:25℃という条件で、研磨を行った際の研磨レートが、50nm/分以下である前記絶縁膜を形成する請求項1ないし10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記バリアメタル層は、Ta、Ti、TaN、TiNおよびWNよりなる群から選択される少なくとも1種の材料で構成されたものである請求項1ないし9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−199175(P2011−199175A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66676(P2010−66676)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】