説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】 p型ウェル領域形成のための熱拡散時間の増大を抑え、短時間で容易に製造することのできる半導体装置を提供する。
【解決手段】 本発明の半導体装置は、半導体基板1と前記半導体基板1上に絶縁膜2を介して形成された第1導電型の半導体層とを有するSOI基板と、第1導電型の半導体層からなる活性層3内に、第2導電型の半導体層からなるウェル(ここではp型ウェル領域4)を形成するとともに、ウェル内および第1導電型の活性層3内に、第1導電型の半導体層からなるソースおよびドレイン領域を形成した横型MOSFETの製造方法であって、SOI基板の第1の半導体層の膜厚dを決定する工程が、チャネル長Lchのn倍以下となるようにする工程であり、熱拡散雰囲気下における第2導電型の半導体層を構成する不純物の、第1導電型の半導体層中における水平方向の拡散速度をVdifh、垂直方向の拡散速度をVdifvとしたとき、
このnは、
n=Vdifv/Vdifh
d/Lch<n
を満たすように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法および半導体装置にかかり、特に半導体リレー用MOSFET、特に高周波用途に用いられる、SOI(Silicon On Insulator)基板を利用した横型二重拡散MOS電界効果トランジスタ(LDMOSFET:Lateral double diffused MOSFET)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波用半導体リレーには出力端子間容量の低減化が求められる。出力端子間容量を低減するための方法の一例として特許文献1がある。これを利用したMOSFETを図7に示す。SOI基板を用いたLDMOSFETである。このLDMOSFETはn型半導体基板1上に酸化シリコン膜等の埋め込み絶縁膜2を介して第一導電型半導体層であるn型半導体層からなる活性層3が形成されている。そしてこの活性層3内に第二導電型のp型ウェル領域4が形成され、このp型ウェル領域4と離間して高濃度第一導電型である半導体層からなるn+型ドレイン領域6が形成されている。このときp型ウェル領域4は、n型半導体基板1上の埋め込み絶縁膜に達する深さまで形成されており、p型ウェル領域4内には、高濃度第二導電型であるn+型半導体層からなるn+型ソース領域5が形成されている。
【0003】
また、n+型ドレイン領域6およびn+型ソース領域5上にドレイン電極9およびソース電極8が形成されている。n+型ドレイン領域8とn+型ソース領域5に挟まれたp型ウェル領域4上にはゲート絶縁膜11を介して導電性の多結晶シリコン膜からなるゲート電極10が形成されている。
【0004】
このLDMOSFETのソース・ドレイン間およびソース・ゲート間に電圧が加わるとゲート電極下のp型ウェル領域表面に反転層を形成しチャネルとして働く。このチャネルの形成によりソース・ドレイン間に電流が流れる。
上記構成のSOI型のLDMOSFETの製造方法について図8(a)〜(c)で説明する。
【0005】
まず図8(a)に示すようにゲート絶縁膜11となる膜厚20nm程度の薄いシリコン酸化膜を形成する。そして多結晶シリコン膜を形成し、不要な部分をエッチングにより除去してゲート電極10を形成する。
次に図8(b)に示すようにゲート電極10とこの上層に形成されるレジストパターンR1をマスクにして、選択的にホウ素(B)を1013/cm2〜1014/cm2程度の注入量で注入する。その後、N2ガス雰囲気において1000℃〜1200℃、数時間熱処理を行い、熱拡散によりp型ウェル領域を形成する。
次に図8(c)に示すようにゲート電極10とレジストパターンR2をマスクにして、選択的に砒素(As)を1015/cm2 〜1016/cm2程度の注入量で注入する。その後、 N2ガス雰囲気において1000℃〜1200℃、数十分熱処理を行い、熱拡散によりn+型ドレイン領域およびn+型ソース領域を形成する。このとき、ドレイン側のp型ウェル領域端とドレイン側のn型ソース領域端との距離がチャネル長Lchになる。
次に、レジストパターン(図示せず)をマスクにして、エッチングにより不要な部分のゲート絶縁膜11を取り除き、アルミニウム(Al)を堆積させることにより、ドレイン電極9およびソース電極8を形成する。そしてこのレジストパターンを取り除くことで、図7に示した半導体装置の構造が完成する。
このとき図8(b)および(c)に示すように、活性層の厚さが厚い場合には、p型ウェル領域が十分に絶縁膜にまで到達せず、容量増大の原因となることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-12867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したSOI型のLDMOSFETにおいて、ソース・ドレイン間の容量を低減するためにはp型ウェル領域を支持基板上の埋め込み絶縁膜に達する深さまで形成する必要がある。そのため、p型ウェル領域形成に要する熱拡散の時間としてはチャネル長の形成に要する時間の他に支持基板であるn型半導体基板1上の埋め込み絶縁膜に達するのに要する時間が余分に必要となり、生産性が低下するという問題があった。また、このためにチャネル長Lchが設計値よりも大きくなってしまうことにもなる。
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、このp型ウェル領域形成のための熱拡散時間の増大を抑え、設計値通りのチャネル長Lchを有するLDMOSFETを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明の半導体装置は、半導体基板と前記半導体基板上に絶縁膜を介して形成された第1導電型の半導体層とを有するSOI基板と、第1導電型の半導体層からなる活性層内に、第2導電型の半導体層からなるウェルを形成するとともに、ウェル内および第1導電型の活性層内に、第1導電型の半導体層からなるソースおよびドレイン領域を形成した横型MOSFETの製造方法であって、SOI基板の第1の半導体層の膜厚dを決定する工程が、チャネル長Lchのn倍以下となるようにする工程であり、熱拡散雰囲気下における第2導電型の半導体層を構成する不純物の、第1導電型の半導体層中における水平方向の拡散速度をVdifh、垂直方向の拡散速度をVdifvとしたとき、
このnは、
n=Vdifv/Vdifh
d/Lch<n
を満たすように選択される。
また本発明は、この半導体装置の製造方法であって、第1導電型の半導体層は単結晶シリコン層であり、不純物がボロンであり、nが1.2であることを特徴とする。
また本発明は、この半導体装置の製造方法で製造された横型MOSFETであって、活性層の膜厚が、チャネル長の1.2倍を超えないように構成されたものを含む。
【発明の効果】
【0009】
以上説明してきたように、本発明によれば、熱拡散を行う際、横方向すなわち水平方向の拡散速度と、深さ方向の拡散速度を考慮し、p型ウェル領域が絶縁膜まで達する時間を余分にとる必要がなくなり、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す部分断面図
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の上面図
【図3】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す断面図
【図4】(a)乃至(c)は本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造工程図
【図5】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の説明図
【図6】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の説明図
【図7】通例の半導体装置の概略構成を示す断面図
【図8】(a)乃至(c)は同半導体装置の製造工程図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1および2は、本発明の実施の形態1に係るSOI構造型のLDMOSFETを示す要部概略断面図および上面説明図である。図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の概略構成を示す図である。
なお、以下に示す実施の形態においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型がp型、第2導電型がn型である場合にも適用可能である。
【0013】
ここで図1は図2のA−A断面図である。本実施の形態に係るLDMOSFETの製造方法は、SOI基板の前記第1の半導体層の膜厚dを決定する工程が、チャネル長Lchのn倍以下となるようにする工程であり、熱拡散雰囲気下における前記第2導電型の半導体層を構成する不純物の、前記第1導電型の半導体層中における水平方向の拡散速度をVdifh、垂直方向の拡散速度をVdifvとしたとき、
前記nは、
n=Vdifv/Vdifh
d/Lch<n
を満たすように選択されるようにしたことを特徴とする。ここで第1導電型の半導体層は単結晶シリコン層であり、不純物がボロン(B)である場合には、nを1.2とするのが望ましい。
【0014】
すなわち、半導体基板1としてのn型シリコン基板と、この半導体基板上に埋め込み絶縁膜としての酸化シリコン層を介して形成された第1導電型の半導体層としてのn型シリコン層とを有するSOI基板と、このn型シリコン層からなる活性層3内に、第2導電型の半導体層としてのp型ウェル4を形成するとともに、p型ウェル4内および第1導電型の活性層内に、第1導電型の半導体層からなるソースおよびドレイン領域を形成している。
ここでは、n型シリコン層からなる活性層3内に第2導電型ウェル領域であるp型ウェル領域4と、高濃度第1導電型のドレイン領域であるn+型ドレイン領域6とが離間して形成され、高濃度第1導電型のソース領域であるn+型ソース領域5がp型ウェル領域4内に形成されている。このとき、p型ウェル領域4は、埋め込み絶縁膜2に達する深さまで形成されており、p型ウェル領域4内には、高濃度第2導電型のボディコンタクト領域であるp+型ボディコンタクト7が形成されている。8はソース電極、9はドレイン電極、10はゲート電極である。ここでゲート電極10は蛇行するように形成したが、これはゲート幅を増大すべく形成したもので、直線でもよいことはいうまでもない。ここで8sはソースパッド、9pはドレインパッド、10pはゲートパッド、12は絶縁膜である。
【0015】
また、n+型ドレイン領域6と電気的に接続されるようにドレイン電極9が形成され、p型ウェル領域及びn+型ソース領域5と電気的に接続されるようにソース電極8が形成され、n型シリコン層からなる活性層3表面の、n+型ドレイン領域6とn+型ソース領域5との間に介在するp型ウェル領域4上には、ゲート酸化膜を介して導電性を有する多結晶シリコン膜より成るゲート電極10が形成されている。ここで、n型シリコン層からなる活性層3は、ドリフト領域を形成している。
【0016】
次に、本実施の形態に係るSOI構造型のLDMOSFETの製造工程について説明する。
図4(a)乃至(c)は、本実施の形態に係るSOI構造型のLDMOSFETの製造工程の一部を示す概略断面図である。本実施の形態に係るSOI構造型のLDMOSFETの製造工程は、通例のSOI構造型のLDMOSFETの製造工程と略同様であるが、SOI基板の第1の半導体層である活性層3の膜厚dが、チャネル長Lchのn倍以下となるようにする工程であり、熱拡散雰囲気下における前記第2導電型の半導体層(p型ウェル領域4)を構成する不純物の、第1導電型の半導体層からなる活性層中における水平方向の拡散速度をVdifh、垂直方向の拡散速度をVdifvとしたとき、
前記nは、
n=Vdifv/Vdifh
d/Lch<n
を満たすように選択されるようにしたことを特徴とする。ここで第1導電型の半導体層は所定の不純物濃度をもつn型の単結晶シリコン層であり、不純物がボロン(B)である場合には、nを1.2とするのが望ましい。
【0017】
本実施の形態では、まず図4(a)に示すように、上記拡散条件に合わせて活性層3の膜厚dおよび不純物濃度を決定してSOI基板を用意し、この活性層3となるn型シリコン層に対し絶縁性領域(図示せず)を形成し、素子分離を行う。
【0018】
そしてこの後、図4(b)に示すように、多結晶シリコン膜を用いてゲート電極10を形成し、このn型シリコン層からなる活性層3内に、マスクパターンR1を形成して、高エネルギーイオン注入法によりボロン(B)等のp型不純物を導入する。ここでは、選択的にボロン(B)を1013/cm2〜1014/cm2程度の注入量で注入する。その後、N2ガス雰囲気において1000℃〜1200℃、数時間熱処理を行い、熱拡散によりp型ウェル領域を形成する。
次に図4(c)に示すようにゲート電極10とレジストパターンR2をマスクにして、選択的に砒素(As)を1015/cm2 〜1016/cm2程度の注入量で注入する。その後、N2ガス雰囲気において1000℃〜1200℃、数十分熱処理を行い、熱拡散によりn+型ドレイン領域6およびn+型ソース領域5を形成する。このとき、ドレイン側のp型ウェル領域4端とドレイン側のn+型ソース領域端との距離がチャネル長Lchになる。
n+型ドレイン領域6及びn+型ソース領域5形成のためのn型不純物の導入を行う。
【0019】
そしてこの後、ソースおよびドレイン電極8,9を形成し、図1乃至3に示したSOI構造型のLDMOSFETを形成する。
【0020】
この構成によれば、熱拡散を行うと横方向にも深さ方向にも不純物は拡散する。このときの拡散の様子を図5に示す。この横方向への拡散がチャネル長を形成する。横方向への拡散長をaとすると深さ方向への拡散長bはaの約1.2倍となる。
したがって活性層の膜厚を前記MOSFETのチャネル長の1.2倍未満とすることで、p型ウェル領域を絶縁膜まで達する時間を余分にとる必要がなくなり、製造コストを抑えることができる。
これを用いて上記構成を考察すると、図6に示すように、ドレイン側のp型ウェル領域端とドレイン側のn+型ソース領域端との距離がチャネル長Lchになり、このチャネル長Lchは活性層の膜厚dと以下のような関係がある。
d/Lch<n
【0021】
この構成によれば、活性層の膜厚が、チャネル長の1.2倍を超えないように構成するだけで、効率よく、短時間で横型MOSFETを形成することができる。
【0022】
なお、熱拡散雰囲気下における不純物の拡散特性は、温度や、拡散される半導体層の不純物濃度やそのプロファイル、不純物の種類などに依存して異なるが、一般的には、第1導電型の半導体層からなる活性層中における第2導電型の不純物の水平方向の拡散速度をVdifh、垂直方向の拡散速度をVdifvとしたとき、
前記nは、
n=Vdifv/Vdifh
d/Lch<n
となり、nがほぼ1.2である。
そこで通常の場合はこの値を考慮して、活性層の膜厚dがn・Lchとなるように、デバイス設計を行うようにすればよい。
【0023】
SOI基板を用いる際、活性層の膜厚を制御しようとする場合には、エピタキシャル成長層を用いるのが望ましい。また、半導体層があらかじめ所望の膜厚となるように形成した貼り合わせウェーハを用いるようにしてもよい。
なお、活性層となるエピタキシャル成長層の不純物濃度が変化すれば拡散速度も変化するが、拡散速度が変わったとしても拡散の縦横比1.2は変化しないことがわかっている。従って、エピタキシャル成長層の不純物濃度にかかわらず、下地の濃度に対する拡散速度の変化を調整することなく、活性層の膜厚を決定すればよい。
【0024】
前記実施の形態では、不純物としてホウ素を用いてp型ウェル領域を形成する例について説明したが、アルミニウムなど他のp型不純物を用いた場合にも同様となる。
【0025】
またリン、ヒ素などのn型不純物を用いた場合にも同様であり、水平方向と垂直方向の拡散速度の比に応じて活性層の膜厚を決定することで、容易に生産性よく、高速動作可能な半導体装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 半導体基板
2 埋め込み絶縁膜
4 p型ウェル領域
5 n+型ソース領域
6 n+型ドレイン領域
7 p+型ボディコンタクト領域
8 ソース電極
8s ソースパッド
9 ドレイン電極
9p ドレインパッド
10 ゲート電極
10p ゲートパッド
11 ゲート酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と前記半導体基板上に絶縁膜を介して形成された第1導電型の半導体層とを有するSOI基板と、
前記第1導電型の半導体層からなる活性層内に、第2導電型の半導体層からなるウェルを形成するとともに、前記ウェル内および前記第1導電型の前記活性層内に、第1導電型の半導体層からなるソースおよびドレイン領域を形成した横型MOSFETの製造方法であって、
前記SOI基板の前記第1の半導体層の膜厚dを決定する工程が、チャネル長Lchのn倍以下となるようにする工程であり、
熱拡散雰囲気下における前記第2導電型の半導体層を構成する不純物の、前記第1導電型の半導体層中における水平方向の拡散速度をVdifh、垂直方向の拡散速度をVdifvとしたとき、
前記nは、
n=Vdifv/Vdifh
d/Lch<n
を満たすように選択される半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記第1導電型の半導体層は単結晶シリコン層であり、
前記不純物がボロンであり、
前記nが1.2である半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の半導体装置の製造方法で製造された横型MOSFETであって、
前記活性層の膜厚が、チャネル長の1.2倍を超えないように構成された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−9673(P2012−9673A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145061(P2010−145061)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】