説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】断線等の問題を抑制しつつ逆メサの段差に配線を設けることができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】エッチングにより半導体基板に逆メサ段差部を形成する。逆メサ段差部の下段における半導体基板の表面に、電極を設ける。逆メサ段差部内を埋めるように当該逆メサ段差部の高さよりも厚い絶縁膜を設ける。逆メサ段差部内に絶縁膜を残すように、絶縁膜積層工程で積層した絶縁膜に対してエッチバックを行う。電極に接続する配線を、逆メサ段差部に残された絶縁膜の上方に設ける。このとき、電極とのコンタクトをとる部分を対象にして、層間絶縁膜に対し開口を形成する。開口形成後、配線を、層間絶縁膜上であって逆メサ段差部の上方の領域に蒸着する。コンタクト開口を介して、配線が電極と接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開平9−129972号公報に開示されているように、逆メサ構造を有する半導体装置が知られている。この特開平9−129972号公報には、具体的には、逆メサ構造を有するRWG(ridge wavegide)レーザ・ダイオードが記載されている。当該公報にかかるRWGレーザ・ダイオードは、リッジ部を備えており、このリッジ部上に、コンタクト層、接触金属、および金めっき層が設けられている。当該公報では、逆メサRWGの逆メサ両側で接触金属が切断されることを防止するため、逆メサ構造の下部の隅部だけにポリイミドが残るようにしている。その結果、接触金属が逆メサで切断されるのを防止することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−129972号公報
【特許文献2】特開昭63−288082号公報
【特許文献3】特開平10−026710号公報
【特許文献4】特開2002−164622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

【0005】
断線が生じてしまうと、回路やトランジスタがオープン状態となり半導体装置の動作に支障をきたす。また、断線しなくとも、配線に亀裂が生じれば、部分的に配線の断面積が不足することになる。そうすると、必要な電流密度が確保されず、焼損やマイグレーションを起こしやすくなる。このような事態は、歩留まりという面でも、信頼性という面でも、好ましくない。このような事態を避けるべく、配線の引き出しを順メサ方向に限定したり、別配線(メッキなど)を使ってのエアーブリッジ構造を使ったりすることも考えられる。
【0006】
しかしながら、配線引出が順メサ方向へと制限されたり、エアーブリッジ構造を使わざるを得なくなったりすると、次のような点で好ましくない。まず順メサ方向引き出しの制約がある場合は、常に逆メサの段差を迂回して配線パターンを設けなければならなくなる。また、エアーブリッジ構造を用いる場合は、メッキなどの別メタル層を使うため、コンタクト部分形成のために工程数が増えたり、半導体基板上において配線構造形成用に確保すべき領域の面積が増えたりしてしまう。その結果、チップサイズの増大を招き、チップシュリンクが阻害されてしまう。
【0007】
また、従来、上記のような事情から逆メサ方向への配線引出を行わないので、逆メサの段差部分に対する配慮は特にされてこなかった。しかしながら、本願発明者の鋭意研究の結果、このような逆メサの段差部分はリーク電流が発生しやすい部分であり、逆メサの段差に起因して半導体素子の特性低下が生じうることも見出された。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、断線等の問題を抑制しつつ逆メサの段差に配線を設けることができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、逆メサの段差における断線等の問題が抑制された半導体装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、逆メサ段差部における半導体層表面の露出に起因する半導体素子の特性低下を、抑制することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、半導体装置の製造方法であって、
エッチングにより半導体基板に逆メサ段差部を形成する段差部形成工程と、
前記逆メサ段差部の下段における前記半導体基板の表面に、半導体素子の電極を設ける工程と、
前記逆メサ段差部内を埋めるように当該逆メサ段差部の高さよりも厚い絶縁膜を設ける絶縁膜積層工程と、
前記逆メサ段差部内に前記絶縁膜を残すように、前記絶縁膜積層工程で積層した前記絶縁膜に対してエッチバックを行うエッチバック工程と、
前記逆メサ段差部に残された前記絶縁膜の上方を延びて前記電極と接続する配線を設ける配線工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、上記の目的を達成するため、半導体装置の製造方法であって、
エッチングにより半導体基板に逆メサ段差部を形成する段差部形成工程と、
前記逆メサ段差部の下段における前記半導体基板の表面に、半導体素子の電極を設ける工程と、
前記逆メサ段差部の上端部が露出するように前記逆メサ段差部にレジストを設ける第1レジスト工程と、
前記逆メサ段差部における前記レジストから露出した前記上端部に対し、ウェットエッチングを行う第1エッチング工程と、
前記第1エッチング工程により前記逆メサ段差部に形成された凸部の先端を露出させるように、レジストを設ける第2レジスト工程と、
前記第2レジスト工程により前記レジストから露出した前記先端に対し、ウェットエッチングを行う第2エッチング工程と、
前記第2エッチング工程後に前記第2レジスト工程で設けた前記レジストを除去する工程と、
前記第2エッチング工程のエッチングがされた部位の上方を延びて前記電極と接続する配線を設ける配線工程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、上記の目的を達成するため、半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた、逆メサの段差である逆メサ段差部と、
前記半導体基板における前記逆メサ段差部の下段の面に設けられた電極を有する半導体素子と、
前記逆メサ段差部に埋め込まれた埋め込み絶縁膜と、
前記電極と接続し、前記埋め込み絶縁膜上を延びて前記逆メサ段差部の上段の面に至る配線と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
第4の発明は、上記の目的を達成するため、半導体装置であって、
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた、逆メサの段差である逆メサ段差部と、
前記半導体基板における前記逆メサ段差部の上段の面に設けられた第1電極と前記逆メサ段差部の下段の面に設けられた第2電極とを有する半導体素子と、
前記逆メサ段差部に埋め込まれ、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する埋め込み絶縁膜と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1乃至第3の発明によれば、逆メサの段差による断線の弊害を抑制しつつ、逆メサ方向へ配線を設けることができる。
【0014】
第4の発明によれば、逆メサ段差部における半導体層表面の露出に起因する半導体素子の特性低下を、抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の他の実施例の断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図14】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図15】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図17】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図18】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図19】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図20】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の断面図である。
【図21】本発明にかかる実施の形態2の効果の説明のために低い段差でのカバレッジの良好さを説明するための図である。
【図22】逆メサ形状による断線等の問題を説明するための図である。
【図23】逆メサ形状による断線等の問題を説明するための図である。
【図24】逆メサ形状による断線等の問題を説明するための図である。
【図25】逆メサ形状による断線等の問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】

【0017】
化合物半導体における代表的なトランジスタとして、HBT(Heterojunction Bipolar Transistor、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)がある。図23は、HBTの構造を示す平面図である。エミッタ電極10の脇に、ベース電極12が設けられ、更にその外側にコレクタ電極14が設けられている。HBTの場合、エミッタ電極10、ベース電極12、コレクタ電極14それぞれにオーミック特性を要するため、エッチングで掘り込みながら各エピタキシャル層に各電極が形成される。具体的には、μm単位の深さでエピタキシャル層を掘り込んで溝を形成し、この溝内にコレクタ電極14が設けられる。この掘り込みは、ウェットエッチングで行う。その結果、コレクタ電極14が配置される溝部分が、オリエンテーションフラットの平行方向に順メサ形状の段差を有し、オリエンテーションフラットの垂直方向には逆メサ形状の段差を有するものとなる。
【0018】
上述のように各電極を形成した後は、回路を形成すべく、各電極から配線を引き出す。つまり、電極や配線間の絶縁を得るために層間絶縁膜を形成し、繋ぎたい電極の上部にコンタクトホールを形成したのち、蒸着等により配線を形成することになる。
【0019】
以下、配線16の断面A−Aおよび配線18の断面B−Bについて、図を用いて、断面拡大部分の説明を行う。図24は、図23におけるA−A線位置の、配線16の断面拡大部分20である。配線16は、順メサ方向に引き出した配線である。図25は、図23におけるB−B線位置の、配線18の断面拡大部分21である。配線18は、逆メサ方向に引き出した配線である。図24の断面拡大部分20では、順メサ方向に掘り込まれた半導体基板26上の層間絶縁膜24に、配線22が蒸着により設けられている。このような場合は、順メサ段差28部分に、層間絶縁膜24も配線22も共に問題なく形成される。しかしながら、図25において断面拡大部分20(B−B)に示すように、仮に逆メサ方向に配線22を引き出してしまうと、空隙32の形成が懸念されたり、亀裂又は断線34の発生が懸念されたりする。空隙32は、逆メサ段差部30において、層間絶縁膜24と配線22との間に形成された空隙である。亀裂又は断線34は、蒸着膜のカバーリング不足によって配線22に発生したものである。
【0020】
実施の形態1.
[実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法]
図1は、本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。まず、段差部形成工程を行う。段差部形成工程は、図1に示すように、基板(ウエハ/エピタキシャル結晶)26に対して、エッチング段差36を形成するものである。エッチング段差36は、半導体素子の電極(図示しないが、例えばHBTのコレクタ電極14)の形成等のための掘り込み(溝)の縁に生ずる段差である。図1に示すように、このエッチング段差36により、半導体基板26に逆メサ段差部30が形成される。半導体基板26は、化合物半導体材層を有する半導体ウェハである。半導体基板26の表面には、半導体ウエハ上に化合物半導体材料GaAsをエピタキシャル成長させた半導体結晶層が形成されている。エッチング段差36は、ウェットエッチングにより半導体エピタキシャル結晶層に逆メサ段差部を形成したものである。
【0021】
次に、絶縁膜積層工程を行う。この工程では、逆メサ段差部内を埋めるように当該逆メサ段差部の高さよりも厚い絶縁膜を設ける。図2に示すように、絶縁膜38を、厚さDとなるように形成する。この絶縁膜38の製膜は、CVD(化学気相成長 (Chemical Vapor Deposition)で行う。絶縁膜38の厚さDは、エッチング段差36よりも十分に厚く形成するものとする。これにより、逆メサ段差部30の内部が絶縁膜38で埋まる。この絶縁膜積層工程は、半導体基板26に形成すべき半導体素子の電極の形成前に行ってもよく、あるいは当該電極形成の後に行っても良い。
【0022】
次に、エッチバック工程を行う。エッチバック工程は、逆メサ段差部30内に絶縁膜38を残すように異方性のエッチングによるエッチバックを行う工程である。図3に示すように、異方性の高いエッチングにてエッチバック(図3の矢印42)を実施する。図4に示すようにエッチバック42を継続していき、最終的には、半導体基板26が表出するまでエッチバック42を行う。そうすると、逆メサ段差部30の内部のみに絶縁膜38が残る。このように逆メサ段差部30内部に残った絶縁膜38が、「段差埋め込み絶縁膜」である。
【0023】
図5は、エッチバック工程後に、層間絶縁膜24を設ける工程と、配線22を設ける配線工程と、を行った後の状態を示す図である。図5は、段差埋め込み絶縁膜(図5における絶縁膜38)にさらに層間絶縁膜24および配線22を積層し、配線を形成した状態を示す断面図である。エッチバック工程で半導体基板26が表出するまでエッチバック42を行った後、段差埋め込み絶縁膜38を残したまま、層間絶縁膜24を逆メサ段差部30を覆うように設ける。電極とのコンタクトをとる部分を対象にして、層間絶縁膜24に対し開口を形成する。開口形成後、配線22を、層間絶縁膜24上であって逆メサ段差部30の上方の領域に蒸着する。コンタクト開口を介して、配線22が電極と接続する。
【0024】
図6は、実施の形態1の変形例を示す図である。半導体基板26が表出しなくとも、絶縁膜38を半導体基板26表面全体に残したままで(つまり、半導体基板26表面における、逆メサ段差部30以外の位置に、絶縁膜38を残したままで)、層間絶縁膜24を設ける工程と配線22を設ける工程とを行ってもよい。この場合、層間絶縁膜24形成後に、絶縁膜38およびこれに積層された層間絶縁膜24に対して、同時にコンタクト部分の開口を行う。その後、さらに配線22を積層(蒸着)する。
【0025】
以上説明した実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法によれば、逆メサ段差部30に絶縁膜38を埋め込むことで、当初は逆メサが形成された部分に、順テーパーのなだらかな面を形成することができる。これにより、半導体基板26へのエッチングで逆メサの溝(段差)をまたぐ方向(逆メサ方向)へと配線22を引き出したとしても、順メサ方向への引き出しと同様のレベルに、配線22の亀裂または断線を抑制することができる。
【0026】
[実施の形態1にかかる半導体装置]
図7は、本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の断面図である。実施の形態1にかかる半導体装置は、半導体素子としてHBT(Heterojunction Bipolar Transistor、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)を備えている。なお、実施の形態1にかかる半導体装置の平面図上のレイアウトは、図23に示した平面図で表したレイアウトと同様であるため、図示を省略する。
実施の形態1では、HBTが、エミッタ電極10、ベース電極12、およびコレクタ電極14を備えている。半導体基板26はエミッタ/ゲート/コレクタを形成するための複数のエピタキシャル層(図では纏めて半導体基板26としている)を備えており、この各層に設けられたオーミック電極がエミッタ電極10、ベース電極12、およびコレクタ電極14である。実施の形態1にかかる半導体装置は、半導体基板26を備えている。半導体基板26の表面には、逆メサの段差である逆メサ段差部30が設けられている。逆メサ段差部30の上段の面には、HBTのベース電極12が設けられている。逆メサ段差部30の下段の面には、HBTのコレクタ電極14が設けられている。逆メサ段差部30には絶縁膜38が埋め込まれており、この埋め込み絶縁膜は、ベース電極12とコレクタ電極14との間に位置している。図7には、HBTのコレクタ電極14から配線22を引き出す部分が示されている。図7に示す半導体装置では、絶縁膜38がコレクタ電極14の両脇の逆メサ段差部30に埋め込まれている。また、絶縁膜38は、埋め込み部(逆メサ段差部30)以外は、全てエッチング除去されている。
【0027】
上記のように、HBTでは、複数のエピタキシャル層(図では纏めて半導体基板26としている)にそれぞれオーミック電極が設けられる。この電極は、半導体基板26を掘り込みながら、各層に形成する。電極の厚さが500nm以下であるのに対し、エピタキシャル層の掘り込み量(深さ)は1μm程度あるいはそれ以上の量である。その掘り込みの段差部分を一度に埋めることができれば製造工程上も便利であり、順メサ方向、逆メサ方向問わずに任意の方向に配線を引き出すことができるのでレイアウトの自由度も格段に大きくなる。
【0028】
図7に示すように、実施の形態1にかかる半導体装置では、絶縁膜38が、コレクタ電極14の側面と半導体基板26の側面との間に介在する。そして、コレクタ電極14とベース電極12との間の逆メサ段差部30に、絶縁膜38が埋め込まれている。コレクタ電極14とベース電極12との間の逆メサ段差部30は、リーク電流が発生しやすい部分である。実施の形態1にかかる半導体装置によれば、そのような部位にあたる逆メサ段差部30に絶縁膜38を埋め込むことで、カバレッジ不足等に起因する歩留まり低下を抑制できる。実施の形態1にかかるHBTでは、半導体基板26におけるベース層とコレクタ層の界面が、逆メサ段差部30に表出している。仮に逆メサ段差部30の側面を被覆するように薄い膜を形成しても、この側面部分の膜の密度が不十分となる可能性もある。逆メサ段差部30のエピタキシャル層界面が以降の工程で曝されたりすると、リーク電流を発生させる原因になるおそれがある。この点、実施の形態1によれば、逆メサ段差部30に表出したベース層とコレクタ層の界面を、逆メサ段差部30に絶縁膜38を埋め込むことによりカバーすることができる。その結果、デバイスの安定性確保等(デバイス特性や信頼性など)の面でメリットが得られる。
【0029】
図8は、本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の他の実施例の断面図である。図8に示す半導体装置もHBT(Heterojunction Bipolar Transistor、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)であり、絶縁膜38が逆メサ段差部30の内部以外にも残っている(図6参照)。従って、絶縁膜38がコレクタ電極14の側面に接するのみならず、絶縁膜38がコレクタ電極14の両脇の上面部分も覆っている。
【0030】
実施の形態2.
[実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法]
図9乃至図19は、本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法を説明するための図である。図9は、2つの逆メサ段差部30の断面を示している。まず、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法と同様に、段差部形成工程を行う。段差部形成工程は、ウェットエッチングにより図9に示すように半導体基板26にエッチング段差36を形成し、このエッチング段差36の両脇に逆メサ段差部30を形成するものである。
【0031】
次に、第1レジスト工程を行う。この工程は、逆メサ段差部30の上端部(便宜上、「逆メサトップ部」とも称す)が露出するように逆メサ段差部にレジストを設けるものである。まず、図10に示すように、段差部形成工程で形成された溝(窪み)を覆い隠すように第1レジスト44を塗布する。図10に示すように、エッチング段差36の中央部分で凹むように第1レジスト44が塗布形成される。さらに、図11に示すように、第1レジスト44に対して、異方性をもつアッシングによるエッチバック(便宜上、図11に矢印46で示す)が行われる。このエッチバック(アッシング)46を実施することで、半導体基板26の逆メサトップ部48のみが表出する。
【0032】
次に、第1エッチング工程を行う。この工程は、逆メサ段差部におけるレジストから露出した上端部に対し、ウェットエッチングを行うものである。図12は、図11において楕円を付した位置の拡大図である。表出した逆メサトップ部48をウェットエッチング50でエッチングすることで、図13に示すように、当初(図9の時点)の逆メサよりも小さな逆メサ段差部52が、二つ形成される。
【0033】
次に、第2レジスト工程を行う。この工程は、第1エッチング工程により逆メサ段差部に形成された凸部の先端を露出させるように、レジストを設けるものである。次にウェットエッチング時にマスクになっていた第1レジスト44を除去する。更に、図14に示すように、再度、第2レジスト54で半導体基板26表面を覆う。続いて、今度は更に精度をあげて、再度、異方性をもつ高精度なアッシングによるエッチバック(高精度アッシング)56を行う。これにより、図15に示すように二つの逆メサトップ部58を表出させる。
【0034】
次に、第2エッチング工程を行う。この工程は、第2レジスト工程によりレジストから露出した逆メサトップ部58に対し、ウェットエッチングを行うものである。図16に示すように、再度、ウェットエッチング50を精度よく施す。
【0035】
続いて、第2エッチング工程後に、第2レジスト工程で設けた第2レジスト54を除去する。その結果、図17に示すように、当初は大きな逆メサであった部分(図9の逆メサ段差部30)に、当初の逆メサよりもサイズの小さい逆テーパ段差60が二段形成される。
上記のレジスト塗布、エッチング、レジスト塗布、エッチングという一連の工程を、精度よく繰り返すことにより、逆メサ部分を可能な限り順メサに近づけていくことができる。逆テーパ段差60が十分小さいのであれば、通常厚さの層間絶縁膜24を施しても、層間絶縁膜24に空隙が形成されるのを抑制できる。なお、層間絶縁膜24の成膜レートは、空隙の抑制が十分に可能となる程度のレートに設定すべき点に留意する。空隙の抑制は、正確には成膜レートにも依存するからである。図18にあるように、微小な逆テーパー部分について、問題なく層間絶縁膜24が埋め込まれる。
【0036】
次に、配線工程を行う。この工程は、第2エッチング工程のエッチングがされた部位の上方に、配線を設けるものである。もともと逆メサであった部分が順メサと同様の傾斜を持つ段差となるため、図19に示すように、層間絶縁膜24および配線22を順テーパ状に積層させることができる。よって、亀裂あるいは断線を抑制しつつ、配線22を形成することができる。なお、図19には示していないが、各レイヤを繋ぐコンタクト開口を形成し、その上に蒸着により配線22を形成する。
【0037】
以上説明した実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法によれば、逆メサ段差部30を複数の小さな逆メサに分割していくことで、当初は逆メサが形成された部分を順テーパに近づけることができる。これにより、半導体基板26へのエッチングで逆メサの溝(段差)をまたぐ方向(逆メサ方向)へと配線22を引き出したとしても、配線22の亀裂または断線を抑制することができる。
【0038】
図21は、本発明にかかる実施の形態2の効果の説明のために低い段差でのカバレッジの良好さを説明するための図である。図21は、実際は上記実施の形態2にかかる製造方法で作成したものではないが、実施の形態2によれば、低段差でのカバレッジの良好さという観点では類似的に図21のような効果が得られる。図21は、逆メサ部分へ絶縁膜を積層したときのカバレッジ状態を撮影したSEM写真に基づいて作成した図である。図21(a)のSEM像は、半導体基板126に施された約1μm深さほどの逆メサのエッチング段差136に対し、300nm程度の層間絶縁膜124を積層した部分の断面を示している。エッチング段差136の高さが層間絶縁膜124の厚さよりも大きいため、空隙132ができてしまう。図21(b)のSEM像は、半導体基板126に施された約50nmほどの逆テーパ段差160に対し、300nmほどの層間絶縁膜124が形成されている部分の断面を示している。逆テーパ段差160が層間絶縁膜124より十分小さいため空隙などがまったく見られず、良好にカバレッジされている。
このように、逆メサの段差がある程度小さければ、良好なカバレッジが確保されることがわかり、実施の形態2のように複数の小さな逆メサに対して層間絶縁膜24を積層しても十分に実用的なカバレッジが得られることがわかる。
【0039】
[実施の形態2にかかる半導体装置]
図20は、本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置も、実施の形態1にかかる半導体装置と同様に、半導体素子としてHBTを備えている。各エピタキシャル層にオーミック電極が形成される点や、平面図上のレイアウトが図23に示す平面図と同様である点も、実施の形態1と同様である。その他、実施の形態1と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。図20は、図19に示した順メサ形状に近づけたエッチング段差36に対して配線22を形成した半導体装置の断面図である。HBTのコレクタ電極14から配線22を引き出している。
【0040】
なお、ドライエッチであっても、結晶面が出るようなケミカルライクのエッチングであれば逆メサ形状になる場合も想定される。このような結果生じた逆メサの段差に対しても、本発明を適用することができる。
【0041】
尚、実施の形態1、2では半導体基板26をGaAsとしたが、本発明はこれに限られない。Siや化合物半導体その他の各種半導体材料からなる半導体基板に適用することができる。更に、本発明は、HBTのみならず他の半導体トランジスタ素子、ダイオード素子を含めた各種の半導体素子に対して適用することができる。また、絶縁膜38も、CVD膜に限らず、塗布膜などでもよい。
【符号の説明】
【0042】
2 ウエハ基板
4 オリエンテーションフラット
6 順メサ方向
8 逆メサ方向
10 エミッタ電極
12 ベース電極
14 コレクタ電極
16 配線
18 配線
20 断面拡大部分
21 断面拡大部分
22 配線
24 層間絶縁膜
26 半導体基板
28 順メサ段差
30 逆メサ段差部
32 空隙
34 断線
36 エッチング段差
38 絶縁膜
42 エッチバック
44 第1レジスト
46 エッチバック
48 逆メサトップ部
50 ウェットエッチング
52 逆メサ段差部
54 第2レジスト
58 逆メサトップ部
60 逆テーパ段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングにより半導体基板に逆メサ段差部を形成する段差部形成工程と、
前記逆メサ段差部の下段における前記半導体基板の表面に、半導体素子の電極を設ける工程と、
前記逆メサ段差部内を埋めるように当該逆メサ段差部の高さよりも厚い絶縁膜を設ける絶縁膜積層工程と、
前記逆メサ段差部内に前記絶縁膜を残すように、前記絶縁膜積層工程で積層した前記絶縁膜に対してエッチバックを行うエッチバック工程と、
前記逆メサ段差部に残された前記絶縁膜の上方を延びて前記電極に接続する配線を設ける配線工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板は、第1半導体層と第2半導体層とを含み、
前記段差部形成工程は、前記第1半導体層と前記第2半導体層の界面が露出する深さの溝を形成して前記逆メサ段差部を形成し、
前記エッチバック工程により前記逆メサ段差部に前記絶縁膜が残された状態で、当該絶縁膜を被覆するように層間絶縁膜を積層する工程と、
前記層間絶縁膜に、前記逆メサ段差部の下段における前記半導体基板の前記表面に形成した前記電極の少なくとも一部を露出させるコンタクトホールを形成する工程と、
を更に備え、
前記配線工程は、前記コンタクトホールに配線材料を埋め込みつつ前記配線を設けることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体基板は、複数の化合物半導体エピタキシャル層を有し、
前記半導体素子は、前記複数の化合物半導体エピタキシャル層のうち第1の層に設けたオーミック電極であるエミッタ電極と、前記複数の化合物半導体エピタキシャル層のうち第2の層に設けたオーミック電極であるベース電極と、前記複数の化合物半導体エピタキシャル層のうち第3の層に設けたオーミック電極であるコレクタ電極と、を有するヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、
前記複数の化合物半導体エピタキシャル層をウェットエッチングで掘り込み、当該掘り込みで露出した前記第1、2、3の層の表面に、前記エミッタ電極、前記ベース電極および前記コレクタ電極が形成され、
前記逆メサ段差部は、前記第2の層と前記第3の層との間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
エッチングにより半導体基板に逆メサ段差部を形成する段差部形成工程と、
前記逆メサ段差部の下段における前記半導体基板の表面に、半導体素子の電極を設ける工程と、
前記逆メサ段差部の上端部が露出するように前記逆メサ段差部にレジストを設ける第1レジスト工程と、
前記逆メサ段差部における前記レジストから露出した前記上端部に対し、ウェットエッチングを行う第1エッチング工程と、
前記第1エッチング工程により前記逆メサ段差部に形成された凸部の先端を露出させるように、レジストを設ける第2レジスト工程と、
前記第2レジスト工程により前記レジストから露出した前記先端に対し、ウェットエッチングを行う第2エッチング工程と、
前記第2エッチング工程後に前記第2レジスト工程で設けた前記レジストを除去する工程と、
前記第2エッチング工程のエッチングがされた部位の上方を延びて前記電極に接続する配線を設ける配線工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた、逆メサの段差である逆メサ段差部と、
前記半導体基板における前記逆メサ段差部の下段の面に設けられた電極を有する半導体素子と、
前記逆メサ段差部に埋め込まれた埋め込み絶縁膜と、
前記電極と接続し、前記埋め込み絶縁膜上を延びて前記逆メサ段差部の上段の面に至る配線と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた、逆メサの段差である逆メサ段差部と、
前記半導体基板における前記逆メサ段差部の上段の面に設けられた第1電極と前記逆メサ段差部の下段の面に設けられた第2電極とを有する半導体素子と、
前記逆メサ段差部に埋め込まれ、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する埋め込み絶縁膜と、
を備えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−105993(P2013−105993A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250792(P2011−250792)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】