説明

半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 半導体チップとTABテープの隙間に樹脂を流し込む場合に、ボイドが形成されること無く樹脂の充填を行うことのできる半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体チップ1の突起電極2を有する一主面とTABテープ14の配線4を有する一主面を対向させ、前記突起電極2に対応する前記配線4とを機械的電気的に接続する第1のステップと、前記半導体チップ1と前記TABテープ14の間に樹脂7を充填する第2のステップと、樹脂7の加熱硬化によって前記半導体チップ1と前記TABテープ14を接着する第3のステップを有する半導体装置の製造方法において、前記第2のステップでの前記樹脂7の充填時に、前記半導体チップ1と前記TABテープ14が、前記樹脂7の粘度低下開始温度以上で第3のステップの加熱硬化温度以下に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法に関し、特に、COF(Chip On Film)構造の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化薄型化の要求から、ポリイミド等の絶縁フィルム上に配線を形成したいわゆるTABテープ(Tape Automated Bondingテープ)上に半導体チップをフリップチップ実装したCOF構造の半導体装置が多用されている。
【0003】
一般的なCOF構造の半導体装置は、図3に示すように、まず、半導体チップ1の突起電極2を有する一主面とTABテープ14の配線4を有する一主面を対向させ、前記突起電極2と前記突起電極2に対応する前記配線4とを機械的電気的に接続する。その後、本発明の半導体装置の製造装置の塗布ステージ8上で前記半導体チップ1と前記TABテープ14の間にノズル6から吐出する樹脂7を充填した後、前記製造装置の図示しない別ステージでの仮ベークと図示しない別装置での本ベークによって樹脂の加熱硬化を行い前記半導体チップ1と前記TABテープ14を接着して製造される。その後必要に応じ、樹脂封止やポッティング、捺印、外部電極搭載、切断等を行い、最終的に様々なパッケージ形態を得ている。
【0004】
上記樹脂はアンダーフィル樹脂と呼ばれ、主として熱硬化性のエポキシ樹脂が用いられており、その代表的な加熱条件は、樹脂塗布後の搬送において樹脂垂れ防止を目的として行われる前記仮ベークが110℃〜130℃で30分、樹脂硬化を目的として行われる前記本ベークが150℃で1.5時間である。
【0005】
ところで、前述の塗布ステージ8上での樹脂充填の際には、前記半導体チップ1と前記TABテープ14の間の通常20〜30μm程度の僅かな隙間に毛細管現象を利用して樹脂を流し込むため、前記半導体チップ1や前記TABテープ14の凹凸、樹脂粘度のばらつき等によってボイド10ができる場合があった。ボイド10の形成は、その後の耐湿性の悪化等信頼性上の問題を引き起こすため、ボイド10が形成されること無く樹脂の充填を行うことが望まれていた。
【0006】
また、半導体チップ1やTABテープ14の表面に付着した揮発物が樹脂の充填によって閉じ込められるため、その後の信頼性の悪化をまねくという問題もあった。
【0007】
これに対し、金型を用いた減圧封入の例であるが、図4に示すように、TABテープ14の半導体チップ1と対向する部分の絶縁フィルム3に貫通孔11を設け、封入時に発生するボイドを外部に放散する技術が開示されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平11−97586号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら図4を用いて説明した絶縁フィルムに貫通孔を設け、封入時に発生するボイドを外部に放散する方法は、前述の塗布ステージ上で半導体チップとTABテープの間の隙間に樹脂を流し込む場合には、前記貫通孔から樹脂が漏れ出し塗布ステージを汚すため、金型を用いた樹脂封入の場合に適用が限られていた。また、貫通孔を有する特別なTABテープを必要とするため、半導体装置のコスト高につながっていた。
【0009】
本発明の課題は、半導体チップとTABテープの隙間に樹脂を流し込む場合に、ボイドが形成されること無く樹脂の充填を行うことのできる半導体装置の製造装置および製造方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の課題は、半導体チップやTABテープの表面に付着した揮発物が樹脂の充填によって閉じ込められること無く樹脂の充填を行うことのできる半導体装置の製造装置および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1記載の半導体装置の製造装置は、半導体チップを搭載したTABテープを載置する塗布ステージを有し、前記半導体チップと前記TABテープの間に樹脂を供給する半導体装置の製造装置において、前記塗布ステージ上で前記半導体チップと前記TABテープを加熱する加熱手段を有する。加熱手段は塗布ステージに設けられたヒータ(たとえば抵抗加熱装置)や塗布ステージの上方または下方に離間して設けられた赤外線ランプや高周波加熱装置などを用いることができる。
【0012】
本発明の請求項2記載の半導体装置の製造方法は、半導体チップの突起電極を有する一主面とTABテープの配線を有する一主面を対向させ、前記突起電極に対応する前記配線とを機械的電気的に接続する第1のステップと、前記半導体チップと前記TABテープの間に樹脂を充填する第2のステップと、樹脂の加熱硬化によって前記半導体チップと前記TABテープを接着する第3のステップを有する半導体装置の製造方法において、前記第2のステップでの前記樹脂の充填時に、前記半導体チップと前記TABテープが、前記樹脂の粘度低下開始温度以上で第3のステップの加熱硬化温度以下に保持される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1及び2に記載の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法によれば、半導体チップとTABテープの隙間に樹脂を流し込む場合に、前記半導体チップと前記TABテープが前記樹脂の粘度低下開始温度以上に保持されているため、流し込まれた樹脂の流動性が上がり、ボイドが形成されること無く樹脂の充填を行うことができるという優れた産業上の効果が得られる。図3で説明した従来の方法でも仮ベークの工程はあるが、樹脂を充填した後であるためボイドの発生を防ぐことができなかった。また本願の製造装置は塗布ステージ上で半導体チップとTABテープを加熱する加熱手段を有するので、本願の半導体装置の製造方法の実現を可能にした。
【0014】
また、本発明の請求項1及び2に記載の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法によれば、前記半導体チップと前記TABテープが前記樹脂の粘度低下開始温度以上に保持されているため、半導体チップやTABテープの表面に付着した揮発物が樹脂の充填前に揮発し、前記揮発物が樹脂の充填によって閉じ込められること無く樹脂の充填を行うことができるという優れた産業上の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照し、従来例と同一物には同一の符号を用いて説明する。
【0016】
本発明の第1の実施形態である半導体装置の製造装置は、図1に示すように、半導体チップ1を搭載したTABテープ14を載置する塗布ステージ8を有し、前記半導体チップ1と前記TABテープ14の間に樹脂7を供給する半導体装置の製造装置において、前記塗布ステージ8上で前記半導体チップ1と前記TABテープ14を加熱するヒータ9aを有する。前記塗布ステージ8上で前記半導体チップ1と前記TABテープ14を加熱するヒータ9aを有する点が、本発明の第1の実施形態である半導体装置の製造装置の特徴である。
【0017】
本発明の第1の実施形態である半導体装置の製造方法は、図1に示すように、半導体チップ1の突起電極2を有する一主面とTABテープ14の配線4を有する一主面を対向させ、前記突起電極2に対応する前記配線4とを機械的電気的に接続する第1のステップと、前記半導体チップ1と前記TABテープ14の間に樹脂7を充填する第2のステップと、樹脂7の加熱硬化(本ベーク)によって前記半導体チップ1と前記TABテープ14を接着する第3のステップを有する半導体装置の製造方法において、前記第2のステップでの前記樹脂7の充填時に、前記半導体チップ1と前記TABテープ14が、前記樹脂7の粘度低下開始温度以上で第3のステップの加熱硬化温度以下に保持される。前記第2のステップでの前記樹脂7の充填時に、前記半導体チップ1と前記TABテープ14が、前記樹脂7の粘度低下開始温度以上で第3のステップの加熱硬化温度以下に保持される点が、本発明の第1の実施形態である半導体装置の製造方法の特徴である。図中、3は絶縁フィルムを、5はソルダーレジストを、6はノズルをそれぞれ示している。
【0018】
背景技術で説明したように、樹脂の仮ベークは110℃〜130℃で30分、本ベークによる加熱硬化は150℃で1.5時間程度の加熱によって行われる。しかし、通常樹脂中には硬化剤や硬化促進剤が添加されているため、室温においても硬化反応がおだやかに進行して数日間で硬化し、樹脂の保管に用いられる冷蔵又は冷凍温度であっても数ヶ月後には使用に適さないまでに硬化反応が進行する。このため、明確な硬化開始温度は定義することが困難であるが、実用上は冷蔵温度〜室温が硬化開始温度として扱われる。
【0019】
一方、樹脂の粘度は室温においては低下しないが、50℃以上では一旦低下した後硬化反応の進行に伴って徐々に上昇してくるまでの粘度低下期間が存在する。このとき、低い温度ほど樹脂の粘度低下は小さいが粘度低下期間は長く、高い温度ほど樹脂の粘度低下は大きいが粘度低下期間は短い、という熱硬化性樹脂特有の特性を示す。
【0020】
本実施形態の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法は、上記粘度低下期間に着目して成されたもので、上記粘度低下期間中に、半導体チップとTABテープの隙間に流し込まれた樹脂の粘度が低下し流動性の上がった状態で充填されることで、ボイドが形成されること無く樹脂の充填を完了し、その後、樹脂の仮ベークと加熱硬化(本ベーク)を行うものである。従って、従来の樹脂の充填が完了した後に加熱する方法では得られない本発明特有の効果が得られる。樹脂の充填は前述の硬化開始温度以上で行われるが、前記塗布ステージでの保持時間は3秒程度と非常に短いため、樹脂の硬化反応は全く無視することができる。
【0021】
また、本実施形態の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法は、樹脂の充填が開始する前に前記半導体チップと前記TABテープが前記樹脂の粘度低下開始温度以上に保持されているため、半導体チップやTABテープの表面に付着した揮発物が樹脂の充填前に揮発し、前記揮発物が樹脂の充填によって閉じ込められること無く樹脂の充填を行うことができる。
【0022】
使用される樹脂は、樹脂からの揮発物による信頼性への影響の点で無溶剤タイプの熱硬化性樹脂が好ましい。
【0023】
先に述べたように、前記半導体チップと前記TABテープが保持される前記粘度低下開始温度は、50℃以上あれば粘度低下の効果が得られるが、充填時のボイドを無くすまで流動性を上げるには60℃以上が好ましい。また、前記半導体チップと前記TABテープが保持される温度(前記第3のステップの加熱硬化温度)は、150℃以下であれば良いが、輻射熱によってノズル内の樹脂の硬化が進みポットライフが短くなる等の弊害を防ぐには120℃以下が好ましい。
【0024】
本実施形態の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法によれば、半導体チップとTABテープの隙間に樹脂を流し込む場合に、前記半導体チップと前記TABテープが前記樹脂の粘度低下開始温度以上に保持されているため、流し込まれた樹脂の流動性が上がり、ボイドが形成されること無く樹脂の充填を行うことができる。また、前記半導体チップと前記TABテープが前記樹脂の粘度低下開始温度以上に保持されているため、半導体チップやTABテープの表面に付着した揮発物が樹脂の充填前に揮発し、前記揮発物が樹脂の充填によって閉じ込められること無く樹脂の充填を行うことができるという優れた産業上の効果が得られる。
【0025】
本発明の第2の実施形態である半導体装置の製造装置は、図2に示すように、半導体チップ1を搭載したTABテープ14を載置する塗布ステージ8を有し、前記半導体チップ1と前記TABテープ14の間に樹脂7を供給する半導体装置の製造装置において、前記塗布ステージ8上で前記半導体チップ1と前記TABテープ14を加熱する赤外線ランプ9bを有する。前記塗布ステージ8上で前記半導体チップ1と前記TABテープ14を加熱する赤外線ランプ9bを有する点が、本発明の第2の実施形態である半導体装置の製造装置の特徴である。
【0026】
本発明の第2の実施形態である半導体装置の製造装置は、第1の実施形態である半導体装置の製造装置で説明したヒータ9aに替えて赤外線ランプ9bを用いたもので、より局部的な加熱が可能となる点以外は、第1の実施形態である半導体装置の製造装置と同様の作用効果を有するので、以下説明を省略する。
【0027】
以上のように、本発明の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法によれば、半導体チップとTABテープの隙間に樹脂を流し込む場合に、前記半導体チップと前記TABテープが前記樹脂の粘度低下開始温度以上に保持されているため、流し込まれた樹脂の流動性が上がり、ボイドが形成されること無く樹脂の充填を行うことができる。また、前記半導体チップと前記TABテープが前記樹脂の粘度低下開始温度以上に保持されているため、半導体チップやTABテープの表面に付着した揮発物が樹脂の充填前に揮発し、前記揮発物が樹脂の充填によって閉じ込められること無く樹脂の充填を行うことができるという優れた産業上の効果が得られる。
【0028】
尚、本発明の半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法は、上記の実施例に限定されるものではなく、例えば、ヒートガンによる加熱や高周波加熱等、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態の半導体装置の製造装置および製造方法を示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態の半導体装置の製造装置を示す断面図。
【図3】従来の半導体装置の製造装置および製造方法を説明する断面図。
【図4】従来の別の半導体装置およびその製造方法を説明する断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 半導体チップ
2 突起電極
3 絶縁フィルム
4 配線
5 ソルダーレジスト
6 ノズル
7 樹脂
8 塗布ステージ
9 加熱手段
9a ヒータ
9b 赤外線ランプ
10 ボイド
11 貫通孔
12 半田ボール
13 スルーホール
14 TABテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを搭載したTABテープを載置する塗布ステージを有し、前記半導体チップと前記TABテープの間に樹脂を供給する半導体装置の製造装置において、前記塗布ステージ上で前記半導体チップと前記TABテープを加熱する加熱手段を有することを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項2】
半導体チップの突起電極を有する一主面とTABテープの配線を有する一主面を対向させ、前記突起電極に対応する前記配線とを機械的電気的に接続する第1のステップと、前記半導体チップと前記TABテープの間に樹脂を充填する第2のステップと、樹脂の加熱硬化によって前記半導体チップと前記TABテープを接着する第3のステップを有する半導体装置の製造方法において、前記第2のステップでの前記樹脂の充填時に、前記半導体チップと前記TABテープが、前記樹脂の粘度低下開始温度以上で前記第3のステップの加熱硬化温度以下に保持されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体チップと前記TABテープが、60℃以上、120℃以下に保持されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の半導体装置の製造方法において、前記樹脂が無溶剤タイプの熱硬化性樹脂であることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−227558(P2007−227558A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45682(P2006−45682)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】