説明

半導体装置

【課題】プロセスの振れ,温度や電圧等の変動による出力データのホールド時間の振れに対して、そのタイミング調整を容易に行い、安定した動作を確保し得る信号位相調整機能を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】外部入力信号の入力に対して入力信号と位相同期した出力信号を出力する入力−出力間での信号位相調整機能を備えた半導体装置において、外部からの入力信号である第1信号と入力信号を所定の遅延量で遅延させてなる第2信号との間で位相の同期をとる位相調整手段と、装置内部から外部への出力信号を遅延させる出力信号遅延手段であって、位相調整手段において両信号間で位相の同期がとられた時点で用いられる制御信号に基づき、出力信号に対して付与される遅延量を調整する出力信号遅延手段と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号位相調整機能を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置では、低電圧化,高速化,微細化が進むにつれ、微小信号を扱うことから、装置からの出力信号のタイミング調整が益々困難となってきている。例えば、半導体装置間のデータ転送は、通常、クロック信号に同期して行われるが、クロック信号が高速化されると、その転送データの有効期間幅が狭くなり、出力信号のタイミング調整が難しくなる。これに対処して、タイミング調整を適確に行い安定動作を確保すべく、通常、半導体装置においては、その交流(AC)特性について厳密な規定が設定されている。しかし、AC特性は、製造プロセスの振れや温度,電圧による変動からの影響を受け、ばらつきを生じることがあり、場合によっては、データ転送に支障をきたす惧れがある。
【0003】
同一のクロック信号に同期してデータを転送する場合に生じる誤動作の要因としては、例えば半導体装置間のホールドタイミングの不良が考えられる。こうした不良を回避するためには、半導体装置の内部クロックやデータラインの遅延を調整したり、システムボード上の半導体装置間のデータラインに遅延素子を挿入したりすることが必要となる。
【0004】
しかしながら、高速動作を行う半導体装置は、一般に、PLL(Phase Locked Loop)回路やDLL(Delay Locked Loop)回路等を用いて、内部クロックを発生する構成を採用しており、このため、内部での特定レジスタへのクロックの遅延調整は困難であり、また、データラインでの調整も含め、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動に対する動的な調整は困難である。他方、システムボード上の半導体装置間のデータラインに遅延素子を挿入する場合には、システムボードが損傷したり、遅延素子以外の遅延が高速動作の弊害となったりすることも予想できる。更に、データラインが多い場合には、その本数分の調整が必要となり、調整作業が煩雑となることも予想できる。
【0005】
図7及び8を参照して、従来知られる信号位相調整機能を備えた半導体装置について説明する。半導体装置80は、入力信号の位相と出力信号の位相とを位相比較し、その比較結果に基づき入力信号に対して所定の遅延量をもたらすことにより、出力信号の位相を変化させる信号位相調整機能の典型的な構成として、可変遅延線回路81,位相比較器82,可変遅延線制御回路83を有する。更に、半導体装置80は、可変遅延線回路81の出力側と位相比較器82の入力側との間に、外部入力信号が入力されてから可変遅延線回路81に入力されるまでの遅延時間(T1)と、可変遅延線回路81から外部へ出力されるまでの遅延時間(T2)との和(T1+T2)に相当する遅延をもたらす内部遅延等価回路84を有している。
【0006】
このような位相調整用の回路構成は、一般にDLL回路と呼ばれるもので、例えば半導体記憶装置のデータ転送速度の向上を目的として、1クロック周期でデータの入出力を2回行うDDR(Double Data Rate)の動作を実現するために、あるいは、システムボード上の各半導体装置へのクロック信号の供給時に、同一クロック信号を供給するために用いられる。
【0007】
図8は、半導体装置80内の各点(図7参照)における信号波形をあらわすタイミングチャートである。遅延時間T1は、点aと点bとの間に生じる遅延時間であり、遅延時間T2は、点cと点eとの間に生じる遅延時間である。内部遅延等価回路84による遅延時間はT1+T2と設定されている。ここでは、図8に示すように、T1,T2の遅延時間をそれぞれ1目盛り分,2目盛り分とする。また、回路に供給されるクロック信号に関して、1クロックを10目盛り分とする。
【0008】
各波形に付されたアルファベット又は数字は、それぞれ、図7に示す半導体装置80内の各点に対応しており、aが付された波形は、点aにおける信号波形、bが付された波形は、点bにおける信号波形である。また、d1〜d4が付された波形は、共に、点dにおける波形であり、可変遅延線回路81の遅延時間が0である場合、点dにおける信号波形は、点bから内部遅延等価回路分(T1+T2)だけ遅れて、d1が付された波形となる。
【0009】
この半導体装置80では、点bと点dにおける信号波形が互いに一致するように、位相比較器82が、その比較結果を可変遅延線制御回路83に送り、可変遅延線制御回路83が、その比較結果に基づく制御信号を発生し、これを可変遅延線回路81へ送る。これにより、可変遅延線上での信号の遅延時間は変化していく。d2〜d4が付された波形は、それぞれ、時間経過に伴い変化する点dにおける波形をあらわす。図8に示すタイミングチャートでは、d4が付された波形が、bが付された波形と同位相を有しており、この時点での点eにおける信号波形(e4が付された波形)は、aが付された波形すなわち外部入力信号の波形と同位相を有することとなる。
【0010】
しかしながら、この半導体装置80では、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動により、点aと点bとの間の遅延T1と、点cと点eとの間の遅延T2との和が内部遅延等価回路84の遅延時間と一致しない場合、外部入力信号と出力信号との間で位相が一致しなくなる。前述したように、外部入力信号と出力信号との間に生じた位相のずれは、半導体装置間で行われるデータ転送の誤動作を引き起こす要因となる。これに関連して、従来では、内部遅延等価回路84において、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動に対し、その遅延時間をT1+T2に維持させるべく、幾つかの提案がなされているが、いずれも付加的要素を伴い、回路の複雑化,大規模化を招来するものである。
【0011】
また、出力信号のタイミング調整を可能とする技術としては、従来、以下のようなものが提案されている。例えば、特開平10‐269773号公報では、DLL回路における可変遅延回路の制御により、データ出力回路からの出力データの出力タイミングを、アクセスクロックの立上がりのタイミングから(m/n)×クロックサイクルタイムだけ遅延したタイミングとすることで、出力データの出力タイミングを制御する半導体集積回路が開示されている。また、特開2000‐183172号公報では、DLL回路における内部遅延再現回路に対して、トリミング処理を用いてその遅延量を最適化することで、プロセスばらつきに対しても内部遅延時間を調整することが可能となり、これにより、DLL回路の精度を向上させ得る半導体装置が開示されている。更に、特開2001‐60391号公報では、データ出力時にDLL回路における出力データ用クロック信号の位相調整動作を制御回路によって停止させ、発生するジッタを抑制し、データ転送の高速化を図る半導体装置が開示されている。
【特許文献1】特開平10‐269773号公報
【特許文献2】特開2000‐183172号公報
【特許文献3】特開2001‐60391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、これらの従来技術では、装置内のDLL回路で発生する内部クロック信号の位相を調整したり、クロック信号のタイミングを調整したりして、出力信号のタイミングを調整する構成が採用されることから、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動に対しては、規定しているタイミングとのずれが生じるという不都合を回避することができない。
【0013】
本発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたもので、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動による出力データのホールド時間の振れに対して、そのタイミング調整を容易に行い、安定した動作を確保し得る信号位相調整機能を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の請求項1に係る発明は、外部入力信号の入力に対して該入力信号と位相同期した出力信号を出力する入力―出力間での信号位相調整機能を備えた半導体装置において、外部からの入力信号である第1信号と該入力信号を所定の遅延量で遅延させてなる第2信号との間で位相の同期をとる位相調整手段と、装置内部から外部への出力信号を遅延させる出力信号遅延手段であって、上記位相調整手段において両信号間で位相の同期がとられた時点で用いられる制御信号に基づき、上記出力信号に対して付与される遅延量を調整する出力信号遅延手段と、を有しており、上記位相調整手段が、入力信号を上記制御信号に基づき決定される遅延量で遅延させる遅延手段と、上記第1信号と遅延手段を経由した第2信号とが入力され、両信号間の位相を比較する位相比較手段と、該位相比較手段による比較結果に基づき、上記遅延手段へ供給する制御信号を生成する制御信号生成手段とを有するとともに、上記出力信号遅延手段が、上記制御信号生成手段により生成された制御信号に基づき、装置内部から外部への上記出力信号に対して付与される遅延量を調整し、更に、上記遅延手段の出力側と上記位相比較手段の入力側との間に、入力される信号に対して所定の遅延量を付与する遅延素子が交換可能に取り付けられ、上記第2信号に対して付与される遅延量が可変であることを特徴としたものである。
【0015】
また、本願の請求項2に係る発明は、上記請求項2に係る発明において、上記出力信号遅延手段が、上記位相調整手段における遅延手段と同じ構成を備えた遅延手段を有しており、該遅延手段は、上記制御信号生成手段により生成された制御信号に基づき、外部への出力信号に対して付加する遅延量を調整することを特徴としたものである。
【0016】
更に、本願の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係る発明において、装置外部から内部への入力信号を遅延させる入力信号遅延手段であって、上記位相調整手段において両信号間で位相の同期がとられた時点で用いられる制御信号に基づき、上記入力信号に対して付与される遅延量を調整する入力信号遅延手段を有していることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本願の請求項1に係る発明によれば、外部からの入力信号である第1信号と該入力信号を所定の遅延量で遅延させてなる第2信号との間で位相の同期をとりつつ、両信号間で位相の同期がとられた時点で用いられる制御信号に基づき、装置内部から外部への出力信号に対して付与される遅延量を調整するため、プロセスの振れ,温度や電圧の変動等が生じた場合にも、その出力信号に対する遅延調整を容易に行い、安定した装置の動作を確保することができる。
また、入力信号を上記制御信号に基づき決定される遅延量で遅延させる遅延手段と、第1信号と遅延手段を経由した第2信号とが入力され、両信号間の位相を比較する位相比較手段と、該位相比較手段による比較結果に基づき、上記遅延手段へ供給する制御信号を生成する制御信号生成手段とが設けられ、上記制御信号生成手段により生成された制御信号に基づき、装置内部から外部への出力信号に対して付与される遅延量を調整するため、遅延手段で設定される遅延量をあらわす制御信号を用いて、出力信号に対する遅延調整を容易かつ正確に行うことができる。
更に、遅延手段の出力側と上記位相比較手段の入力側との間に、入力される信号に対して所定の遅延量を付与する遅延素子が交換可能に取り付けられ、第2信号に対して付与される遅延量が可変であるため、上記遅延手段にて設定される遅延量が、遅延設定素子により任意に設定可能となる。
【0018】
また、更に、本願の請求項2に係る発明によれば、出力信号に対する遅延調整に際して上記遅延手段と同じ構成の遅延手段が用いられ、その遅延手段が、上記制御信号生成手段により生成された制御信号に基づいて、外部への出力信号に対して付加する遅延量を調整するため、出力信号に対する遅延調整を容易に行うことができる。
【0019】
また、更に、本願の請求項3に係る発明によれば、装置外部から内部への入力信号を遅延させる入力信号遅延手段が設けられ、位相調整手段において両信号間で位相の同期がとられた時点で用いられる制御信号に基づき、入力信号に対して付与される遅延量を調整するため、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動が生じた場合にも、入力信号に対して遅延調整量を容易に行い、安定した装置の動作を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置内に組み込まれた位相調整用の回路構成及び装置外部に付加された遅延設定素子を示すブロック図である。この半導体装置10は、外部からの入力信号を受け、その信号に同期した出力信号を発生する信号位相調整機能の典型的な構成として、可変遅延線回路3,位相比較器4,可変遅延線制御回路5を備えている。これらの構成としては、従来技術として前述した半導体装置80(図8参照)内の位相調整用の構成を用いることができるが、本実施の形態の詳細な明示のため、図2及び3に、それぞれ、可変遅延線回路3及び可変遅延線制御回路5の具体構成を示す。
なお、これら「可変遅延線回路」,「位相比較器」,「可変遅延線制御回路」は、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「遅延手段」,「位相比較手段」,「制御信号生成手段」に該当する。
【0021】
図2からわかるように、可変遅延線回路3は、基本的な構成として、入力信号に対してそれぞれ異なる遅延時間をもたらす複数の遅延線3aと、各遅延線3a毎に異なる数だけ直列式に設けられる遅延素子3bと、複数の遅延線3aの中から1本を選択する選択器3cとを有している。各遅延線3a毎に、それぞれ異なる数の遅延素子3bが直列式に設けられることにより、遅延線毎に、入力信号に対して異なる遅延時間がもたらされる。例えば、選択器3cの端子D2に対応する遅延線3aには、2つの遅延素子3bが設けられ、また、選択器3cの端子D4に対応する遅延線3aには、4つの遅延素子3bが設けられる。したがって、端子D4に対応する遅延線3aは、端子D2に対応する遅延線3aと比較して、2倍の長さの遅延時間を入力信号に対してもたらすことになる。なお、選択器3cの端子D0に対応する遅延線3aには、遅延素子3bが設けられておらず、この遅延線3bが選択された場合、入力信号は遅延させられずに可変遅延線回路3から出力される。
また、選択器3cは、可変遅延線制御回路5から送られてくる制御信号に基づき、遅延線のうちの1本を選択し、信号を遅延させずに若しくは所定時間だけ遅延させた上で出力する。
【0022】
他方、図3から分かるように、可変遅延線制御回路5は、アップ/ダウンカウンタ(図ではUP/DOWNカウンタと表記)で構成されており、それぞれ、位相比較器4による比較結果をあらわすアップ/ダウン信号を受け、このアップ/ダウン信号に基づいて、可変遅延線回路3へ送る制御信号を生成する。すなわち、ここで生成される制御信号によって、可変遅延線回路3側で選択される遅延線3aが決定される。
【0023】
また、図1に示すように、半導体装置10は、位置調整用の回路構成に関係する外部端子として、外部からのクロック信号の入力端子である外部端子a1と、外部へのデータの出力端子である外部端子k1と、可変遅延線回路3の出力側と電気的に接続する外部端子c1と、ラインe1を介して位相比較器4の入力側と電気的に接続する外部端子d1とを有している。この実施の形態では、半導体装置10に対して、外部端子c1とd1との間に接続され、端子c1からd1へ通過する信号に対して所定の遅延時間をもたらす遅延設定素子20が取り付けられている。
【0024】
以上の構成を備えた半導体装置10では、外部端子a1を通じて入力された信号(クロック信号)が、バッファ2を介してラインb1を通過した後、可変遅延線回路3及び位相比較器4に入力される。可変遅延線回路3へ入力された信号は、可変遅延線制御回路5からの制御信号に基づき、遅延させられずに若しくは所定時間だけ遅延させられた上で出力される。また、位相比較器4には、その入力側に、ラインb1及びe1が接続されており、動作時には、ラインb1を経由した信号(第1信号)とともに、可変遅延線回路3から出力された後、ラインe1を経由した信号(第2信号)が入力される。位相比較器4は、第1信号及び第2信号を比較し、その比較結果をあらわすアップ/ダウン信号を、ラインg1経由で可変遅延線制御回路5へ送る。
【0025】
以下、第1信号のクロックサイクル時間を「10」、バッファ2の遅延時間を「1」、可変遅延線制御回路5のカウント値(S2,S1,S0)を(0,0,0)、可変遅延線回路3内の1つの遅延素子3b(全ての遅延素子3bが同じ遅延時間をもたらすとする)による遅延時間を「1」、更に、外部の遅延設定素子20による遅延時間を「7」とする条件を仮定して、装置の動作の説明を行う。
【0026】
図4には、前述した条件下で位置調整を行った場合の、半導体装置10の各ライン又は点(図1参照)における信号波形をあらわす。外部から入力されたクロック信号は、バッファ2で遅延時間「1」だけ遅延させられ、ラインb1における信号波形は、b1が付された波形となる。また、一方、バッファ2を通過した後に可変遅延線回路3へ入力される信号に関しては、まず、可変遅延線制御回路5のカウント値(S2,S1,S0)が(0,0,0)であることから、可変遅延線回路3の選択器3cは、端子D0に対応する遅延時間「0」の遅延線3aを選択する。更に、可変遅延線回路3からの出力後、遅延設定素子20を通過することにより、信号は遅延時間「7」だけ遅延させられる。この場合、b1が付された信号波形であらわされる信号に相対した総遅延時間は「7」であるので、ラインe1における信号波形としては、e1−0が付された波形が得られる。
【0027】
位相比較器4は、各ラインから入力されてきた信号の位相が一致していないことを検出し、可変遅延線制御回路5へカウントアップ信号を送る。可変遅延線制御回路5は、カウントアップを行い、カウント値を(0,0,1)と設定し直す。これに応じて、可変遅延線回路3の選択器3cは、端子D1に対応する遅延時間「1」の遅延線3aを選択する。更に、可変遅延線回路3からの出力後、信号は、遅延設定素子20で遅延時間「7」だけ遅延させられる。この場合、b1が付された信号波形であらわされる信号に相対した総遅延時間は「8」であるので、ラインe1における信号波形としては、e1−1が付された波形が得られる。
【0028】
引き続き、位相比較器4は、各ラインから入力されてきた信号の位相が一致していないことを検出し、可変遅延線制御回路5に対してカウントアップ信号を送る。可変遅延線制御回路5は、カウントアップを行い、カウント値を(0,1,0)と設定し直す。これに応じて、可変遅延線回路3の選択器3cは、端子D2に対応する遅延時間「2」の遅延線3aを選択する。更に、可変遅延線回路3からの出力後、信号は、遅延設定素子20で遅延時間「7」だけ遅延させられる。この場合、b1が付された信号波形であらわされる信号に相対した総遅延時間は「9」であるので、ラインe1における信号波形としては、e1−2が付された波形が得られる。
【0029】
また、引き続き、位相比較器4は、各ラインから入力されてきた信号の位相が一致していないことを検出し、可変遅延線制御回路5に対してカウントアップ信号を送る。可変遅延線制御回路5は、カウントアップを行い、カウント値を(0,1,1)と設定し直す。これに応じて、可変遅延線回路3の選択器3cは、端子D3に対応する遅延時間「3」の遅延線3aを選択する。更に、可変遅延線回路3からの出力後、信号は、遅延設定素子20で遅延時間「7」だけ遅延させられる。この場合、b1が付された信号波形であらわされる信号に相対した総遅延時間は「10」であるので、ラインe1における信号波形としては、e1−3が付された波形が得られる。このe1−3が付された波形は、b1が付された波形と同じ位相を有することとなる。これに応じて、位相比較器4は、位相が一致したことを検出し、アップ/ダウン信号を停止する。
【0030】
次に、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動があり、可変遅延線回路3内の1つの遅延素子3bによる遅延時間が「1.5」となった場合について考える。図5は、この場合の半導体装置10の各ライン又は点における信号波形をあらわすタイミングチャートである。外部から入力されたクロック信号は、バッファ2で遅延時間「1」だけ遅延させられ、図4に示す場合と同様に、ラインb1における信号波形は、b1が付された波形となる。また、一方、バッファ2を通過した後に可変遅延線回路3へ入力される信号に関しては、まず、可変遅延線制御回路5のカウント値(S2,S1,S0)が(0,0,0)であることから、可変遅延線回路3の選択器3cは、端子D0に対応する遅延時間「0」の遅延線3aを選択する。更に、可変遅延線回路3からの出力後、遅延設定素子20を通過することにより、信号は遅延時間「7」だけ遅延させられる。この場合、ラインe1における信号波形としては、e1−0が付された波形が得られる。
【0031】
位相比較器4は位相が一致していないことを検出し、可変遅延線制御回路5に対してカウントアップ信号を送る。可変遅延線制御回路5は、カウントアップを行い、カウント値を(0,0,1)と設定し直す。これに応じて、可変遅延線回路3の選択器3cは、端子D1に対応する遅延線3aを選択する。この遅延線3aでは、1つの遅延素子3bにより遅延時間「1.5」がもたらされる。このとき、ラインe1における信号波形としては、e1−1が付された波形が得られる。
【0032】
引き続き、位相比較器4は、位相が一致していないことを検出し、可変遅延線制御回路5へカウントアップ信号を送る。可変遅延線制御回路5は、カウントアップを行い、カウント値を(0,1,0)と設定し直す。これに応じて、可変遅延線回路3の選択器3cは、端子D2に対応する遅延線3aを選択する。この遅延線3aでは、2つの遅延素子3bにより遅延時間「3」がもたらされる。このとき、ラインe1における信号波形としては、e1−2が付された波形が得られる。このe1−2が付された波形は、b1が付された波形と同じ位相を有することとなる。これに応じて、位相比較器4は、位相が一致したことを検出し、アップ/ダウン信号を停止する。また、この場合には、可変遅延線制御回路5のカウント値も(0,1,0)で保持されることとなる。
【0033】
以上のことから分かるように、入力信号と出力信号との間で位相が同じになる場合の、可変遅延線回路3での遅延時間は、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動に対して影響を受けることなく、「クロックサイクル時間−外部の遅延設定素子20による遅延時間(10−7=3)」に基づき決まるものである。これに対して、その遅延時間を実現する可変遅延線制御回路5のカウント値(S2,S1,S0)は、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動に対して変化する。すなわち、所定の条件下で、可変遅延線回路3の遅延素子3bによる遅延時間をXに設定しようとする場合、外部の遅延設定素子20による遅延時間を「クロックサイクル時間−X」と設定すればよく、このことは、その条件下での可変遅延線回路3のカウント値が、遅延時間Xを表していることと同じである。
【0034】
更に詳しく説明する。外部入力信号が外部端子a1を通じて半導体装置10に入力されてから可変遅延線回路3に入力されるまでの遅延時間をT1,また、外部の遅延設定素子20による遅延時間をT1とする。更に、入力信号のクロックサイクル時間をRとする。この場合、ラインb1における信号波形とラインe1における信号波形の位相が同じになった時点での可変遅延線回路3による遅延時間は、R−T1となる。そして、このときの可変遅延線制御回路5から可変遅延線回路3へ送信される制御信号の状態を、S[R‐T1]とする。
【0035】
次に、外部の遅延設定素子20による遅延時間をT2に変更すると、外部入力信号と出力信号との間で位相が一致した時点での可変遅延線回路3による遅延時間は、R−T2となり、また、このときの可変遅延線制御回路5から可変遅延線回路3へ送信される制御信号の状態は、S[R‐T2]となる。
同様にして、外部遅延設定素子20による遅延時間をT3に変更すると、外部入力信号と出力信号との間で位相が一致した時点での可変遅延線回路3による遅延時間は、R−T3となり、また、このときの可変遅延線制御回路5から可変遅延線回路3へ送信される制御信号の状態は、S[R‐T3]となる。
【0036】
このように、外部の遅延設定素子20による遅延時間を変更することで、外部入力信号と出力信号との間で位相が一致した時点での可変遅延線回路3による遅延時間が変更されることとなる。例えば、クロックサイクル時間が10[ns]であり、可変遅延線回路3において1[ns]の遅延時間を設定しようとする場合には、外部の遅延設定素子20による遅延時間を1[ns]に設定する。これにより、プロセスの振れ,温度や電圧の変動が生じた場合にも、可変遅延線回路3において確実に1[ns]の遅延時間が実現されることとなる。換言すれば、いかなる条件下においても、可変遅延線制御回路5は、可変遅延線回路3が所望の遅延時間をもたらし得るような制御信号を生成することができる。つまり、この制御信号は、可変遅延線回路3による遅延時間の絶対値量と同意となる。
【0037】
図1に示すように、半導体装置10には、前述した構成に加え、内部回路11及び出力データ用可変遅延線回路12が含まれている。内部回路6は、半導体装置10内の出力部として作用し、図1に示す「h1」は、内部回路6に接続された1本の出力信号ラインをあらわしている。従来知られる構成としては、その出力信号ラインが外部へ導かれ、それを通過してきた出力信号がそのまま出力データとなることが一般的であるが、この半導体装置10では、内部回路11からの出力信号が、更に、出力データ用可変遅延線回路12に入力される。出力データ用可変遅延線回路12としては、図2に示す可変遅延線回路3と同様のものを用いることができる。
なお、この「出力データ用可変遅延線回路」は、特許請求の範囲に記載の「出力信号遅延手段」に該当する。
【0038】
動作時において、出力データ用可変遅延線回路12には、内部回路11からの出力信号とともに、可変遅延線制御回路5からラインf1を経由して送られてくる制御信号(すなわちカウント値(S2,S1,S0))が入力される。これにより、可変遅延線回路3にてもたらされる遅延時間を選択することが可能となる。その結果、ラインh1を通じて出力データ用可変遅延線回路12に入力されてきた信号は、可変遅延線回路3による遅延時間と同じ時間だけ遅延させられた上で出力される。
【0039】
このような構成によれば、例えば、外部への出力信号を遅延時間「3」だけ遅延させる場合に、外部の遅延設定素子20による遅延時間を「7」と設定することで、いかなる条件下においても、外部への出力信号を遅延時間「3」だけ遅延させられたものとすることができる。
【0040】
更に、出力データ用可変遅延線回路12に含まれる複数の遅延素子(不図示)について、各遅延素子による遅延時間を全て「0.1」と設定すると、その遅延時間は、プロセスの振れ,温度又は電圧等の変動に対しても、可変遅延線回路3による遅延時間の1/10となる(すなわち比例的に遅延値が変わる)。すなわち、外部への出力信号を遅延時間「3」だけ遅延させる場合には、出力データ用可変遅延線回路12による遅延時間は「0.3」となり、一層細かい遅延調整を行うことが可能である。これにより、出力データ用可変遅延線回路12に対して、可変遅延線回路3で実現される遅延時間よりも精密な調整を行えることとなる。
なお、図1では、出力データ用可変遅延線回路12の出力側で、外部端子k1に接続する出力信号ラインが1本のみ示されているが、これに限定されることなく、必要に応じて、複数の出力信号ラインを備えた出力データ用可変遅延線回路を用いてもよい。
【0041】
以上のように、この半導体装置10では、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動に伴い条件が変化した場合にも、その内部に備えられた位相調整用の構成から得られる結果に基づき、出力データの遅延時間を調整することができる。より詳しく説明する。例えば、プロセス,温度や電圧等が異なる2つの条件A及びBの下で、第1信号と第2信号とが同期した時点での可変遅延線回路3による遅延時間が共にTであったとすると、当然ながら、可変遅延線回路3内で通過する遅延素子3bの数は違ってくる。一例として、可変遅延線回路3内の各遅延素子3bが、条件Aのもとで、T/10の遅延時間をもたらすものであっても、条件Bのもとでは、T/9の遅延時間をもたらすものとなり、この場合、遅延時間Tを実現するには、条件Aのもとで10段の遅延素子3bが必要となる一方、条件Bのもとでは9段の遅延素子3bが必要となる。このことは、可変遅延線制御回路5から生成された制御信号が、条件Aと条件Bの違いを、所定の遅延時間をもたらす遅延素子3bの通過段数という形で検出することをあらわしている。つまり、この制御信号を、出力データ用可変遅延線回路12において、外部への出力データの遅延時間を制御する信号とすることで、所定の条件下における遅延量について設定した絶対値量による制御が可能となる。その結果、半導体装置10は、プロセスの振れ,温度や電圧等の変動が生じた場合にも、出力信号に対する遅延調整を容易に行え、安定した動作を確保することができる。
【0042】
次に、図6は、本発明の他の実施の形態に係る信号位相調整機能を備えた半導体装置を示すブロック図である。なお、以下では、前述した実施の形態における場合と同じものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明を省略する。前述した実施の形態では、可変遅延線制御回路5からの制御信号が、ラインf1経由で出力データ用可変遅延線回路12に入力されていた(図1参照)が、この実施の形態では、半導体装置30が、図6に示すように、外部端子a2から入力されてきた外部入力データとともに、可変遅延線制御回路5からの制御信号とを受ける入力データ用可変遅延線回路32を有している。この入力データ用可変遅延線回路32は、出力データ用可変遅延線回路12と同様の構成を有するものである。
なお、この「入力データ用可変遅延線回路」は、特許請求の範囲に記載の「入力信号遅延手段」に該当する。
【0043】
この半導体装置30では、外部入力データに対して、入力データ用可変遅延線回路32による遅延調整が行われることにより、内部回路11へラインi1経由で入力する信号に対して、前述した実施の形態において出力信号に対して行われた場合と同様に遅延時間を制御して、位相調整を行うことが可能となる。これにより、入力信号のセットアップ/ホールド時間を調整することが可能となる。
なお、図6では、入力データ用可変遅延線回路32の入力側で、外部端子a2に接続する入力データラインが1本のみ示されているが、これに限定されることなく、必要に応じて、複数の入力データラインを備えた入力データ用可変遅延線回路を用いてもよい。
【0044】
なお、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係る信号位相調整機能を備えた半導体装置をあらわすブロック図である。
【図2】可変遅延線回路の具体構成を示す図である。
【図3】可変遅延線制御回路の具体構成を示す図である。
【図4】可変遅延線回路内の1つの遅延素子による遅延時間が「1」である場合の、半導体装置内の各ライン又は点における信号波形をあらわすタイミングチャートである。
【図5】可変遅延線回路内の1つの遅延素子による遅延時間が「1.5」である場合の、半導体装置内の各ライン又は点における信号波形をあらわすタイミングチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る信号位相調整機能を備えた半導体装置をあらわすブロック図である。
【図7】従来知られる信号位相調整機能を備えた半導体装置をあらわすブロック図である。
【図8】従来の半導体装置内の各点における信号波形をあらわすタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0046】
3…可変遅延線回路
3a…遅延線
3b…遅延素子
3c…選択器
4…位相比較器
5…可変遅延線制御回路
10,30…半導体装置
11…内部回路
12…出力データ用可変遅延線回路
20…遅延設定素子
32…入力データ用可変遅延線回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部入力信号の入力に対して該入力信号と位相同期した出力信号を出力する入力―出力間での信号位相調整機能を備えた半導体装置において、
外部からの入力信号である第1信号と該入力信号を所定の遅延量で遅延させてなる第2信号との間で位相の同期をとる位相調整手段と、
装置内部から外部への出力信号を遅延させる出力信号遅延手段であって、上記位相調整手段において両信号間で位相の同期がとられた時点で用いられる制御信号に基づき、上記出力信号に対して付与される遅延量を調整する出力信号遅延手段と、を有しており、
上記位相調整手段が、入力信号を上記制御信号に基づき決定される遅延量で遅延させる遅延手段と、上記第1信号と遅延手段を経由した第2信号とが入力され、両信号間の位相を比較する位相比較手段と、該位相比較手段による比較結果に基づき、上記遅延手段へ供給する制御信号を生成する制御信号生成手段とを有するとともに、
上記出力信号遅延手段が、上記制御信号生成手段により生成された制御信号に基づき、装置内部から外部への上記出力信号に対して付与される遅延量を調整し、
更に、上記遅延手段の出力側と上記位相比較手段の入力側との間に、入力される信号に対して所定の遅延量を付与する遅延素子が交換可能に取り付けられ、上記第2信号に対して付与される遅延量が可変であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
上記出力信号遅延手段が、上記位相調整手段における遅延手段と同じ構成を備えた遅延手段を有しており、該遅延手段は、上記制御信号生成手段により生成された制御信号に基づき、外部への出力信号に対して付加する遅延量を調整することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
更に、装置外部から内部への入力信号を遅延させる入力信号遅延手段であって、上記位相調整手段において両信号間で位相の同期がとられた時点で用いられる制御信号に基づき、上記入力信号に対して付与される遅延量を調整する入力信号遅延手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−110762(P2007−110762A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5932(P2007−5932)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【分割の表示】特願2002−70027(P2002−70027)の分割
【原出願日】平成14年3月14日(2002.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】