説明

半導体装置

【課題】金属配線の膜厚を均一化し、かつ隣接する複数の金属配線において発生する電流集中を抑制し、これにより配線抵抗の上昇を抑制可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】互いに隣接して複数の金属配線11,12が配置され、これらの金属配線11,12にそれぞれスリット13,14が形成され、複数の金属配線11,12のうち少なくとも1つ以上の金属配線11,12におけるスリット13,14を、金属配線11,12の上面から見て金属配線11,12の延在方向に対して左右非対称に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットを形成した金属配線構造を有する半導体装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化及び微細化に伴い、シリコン酸化膜や、シリコン酸化膜の一部を弗素や水素、あるいは炭素を有する化学基などに置換した誘電体に溝を形成し、化学気相成長やめっき法により金属を埋め込んだ後、余剰な金属を化学機械研磨などの方法により除去することで金属配線を形成する、いわゆるダマシン法により形成された配線構造が実用化されている。上記ダマシン法による金属配線形成法により、銅あるいは銅を主成分とした半導体集積回路の配線構造が形成可能になり、この技術により配線の低抵抗化やエレクトロマイグレーション耐性の向上などを図ることができるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記ダマシン法による配線形成方法は、その形成工程に平坦化工程を含んでいることにより、形成する配線幅が数マイクロメートル程度以上に広い場合には、必然的に、一般に「ディッシング」と称される現象が発生してしまう。このディッシングは、特に配線幅が広くなるに従って顕著になる。
【0004】
通常、ダマシン配線形成工程における金属配線の平坦化工程においては、研磨剤や研磨パッドの回転速度や圧力を最適化することで、絶縁膜よりも金属がより削れ易いように研磨時の選択比を調整している。すなわち、平坦化工程においては、配線となる金属以外の絶縁体は、平坦化に際してのストッパとして機能する。
【0005】
しかしながら、上述したように金属配線の幅が広い場合には、ストッパとして機能する絶縁膜が存在しない領域が広く存在し、該金属配線の全領域が平坦化されることにより、前記金属配線が所望の研磨量よりも多く研磨されてしまい、配線の高さが所望の膜厚よりも薄くなってしまい、結果として配線抵抗が所望の値よりも高くなってしまうという課題がある。
【0006】
また、一般に、互いに隣接する金属配線に高周波電流が流れると、それぞれの金属配線内部に不均一な電流密度分布が発生する。これは電磁気学により説明される現象で、一般には近接効果と称される。簡単な例として、隣接する2本の金属配線が存在したとして、両方の金属配線に同相の交流電流が流れていると仮定する。これらの金属配線に電流が流れると、その周囲には磁界が発生し、流れる電流が交流電流の場合は当然、交流磁界を発生する。この交流磁界による磁力線は、互いに隣接する配線を貫くため、両方の配線内部に、それぞれ磁束を妨げるような向きに誘導電流が発生する。そのため、金属配線内部に本来流れている電流が誘導電流と同方向の場合は電流が増幅され、金属配線内部に本来流れている電流が誘導電流と逆方向の場合は電流が減少させられる。
【0007】
したがって、互いに同相である電流が隣接配線に流れると、互いに外側に電流が集中するようになる。これが近接効果である。特に、ギガヘルツ帯以上の高い周波数帯においては、この近接効果による抵抗上昇の影響が大きくなり、金属配線の実効的な抵抗の上昇を引き起こすことになる。
【0008】
これらの問題を解決するために、例えば特許文献1に記載された発明がある。この発明には、幅広配線にスリットを形成することによりディッシングを抑制し、配線抵抗の上昇を抑制する技術が開示されている。上記特許文献1に記載の方法を用いることにより、金属配線の平坦化に際して、ディッシングによる配線膜厚の減少を抑制し、ひいては幅広配線の高抵抗化を抑制することが可能となる。
【0009】
また、特許文献2に記載された発明には、幅広配線により形成されるスパイラルインダクタ配線を複数配線の並列接続とすることにより、金属配線内部に励起される誘導電流のパスを遮断することにより損失を低減し、インダクタの性能を向上させる技術が開示されている。
【0010】
すなわち、特許文献2に記載された発明を部分的に示すと、図19及び図20のようになる。図19及び図20に示すように金属配線1,2には、その延在方向と平行にスリット3,4がそれぞれ形成されている。これらのスリット3,4は、金属配線1,2の上面から見て金属配線1,2の延在方向に対して左右対称に形成されることにより、それぞれの中心分割線5,6がスリット3,4の幅方向の中央に位置することとなる。そして、スリット3,4を形成したことにより、金属配線の一部1aと1b、金属配線の一部12aと12bとにそれぞれ分割される。
【0011】
さらに、特許文献3に記載された発明には、幅広配線により形成されるスパイラルインダクタ配線の上部を複数配線の並列接続とすることにより、金属配線の表面積を増大させ、インダクタのQ値を向上させる技術が開示されている。
【0012】
そして、特許文献4に記載された発明には、インダクタ配線の電流集中箇所を複数レベル配線の並列接続とすることにより、電流集中が起こる箇所の直列抵抗を下げることにより、損失を低減する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3481812号公報
【特許文献2】特開平11−261008号公報
【特許文献3】特開2003−209183公報
【特許文献4】特開2004−214377公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載された発明には、前記スリットを形成することにより、配線材料の平坦化を確保するという効果が得られるものの、形成した配線内部に不均一に電流が流れるような場合には、スリットが金属配線内に均一にレイアウトされていると、回路特性上、電流が集中する箇所にも上記スリットが存在することにより、近接効果による影響が大きくなる高周波帯における動作時に実効的な配線抵抗が上昇してしまうという問題があった。
【0014】
ところで、半導体装置に用いられる金属配線レイアウトは、外部への漏洩磁束を低減するため、互いに隣接する複数配線に、互いに逆相の電流が流れるべくレイアウトを行うことが多い。この場合、互いに隣接する配線の、互いに内側に電流が集中する。したがって、互いに隣接する配線構造のうち、特にそれぞれの内側の部分にスリットが形成されていると、実質的な配線抵抗が増大してしまうという問題があった。
【0015】
よって、特許文献1に記載された方法により金属配線及びスリットを形成した場合には、互いに逆相の電流が流れるような隣接する金属配線の内側にも該スリットが形成されてしまうため、金属配線の実質的な抵抗が上昇してしまうという問題があった。
【0016】
一方、半導体装置に用いられる回路構成のうち、インダクタなどの素子を形成する場合には、互いに隣接する複数配線に互いに同相の電流が流れる。この場合、互いに隣接する配線の、互いに外側に電流が集中する。したがって、隣接する配線構造のうち、特にそれぞれの外側の部分にスリットが形成されていると、実質的な配線抵抗が増大してしまう。よって、特許文献1に記載された方法により金属配線及びスリットを形成した場合には、互いに同相の電流が流れるような隣接する金属配線の外側にも該スリットが形成されてしまうため、金属配線の実質的な抵抗が上昇してしまうという問題があった。
【0017】
また、特許文献2に記載された発明では、半導体基板上のスパイラルインダクタについて、該スパイラルインダクタを構成する金属配線1,2の延在方向にスリット3,4を設けることにより、該金属配線1,2内に励起される誘導電流のパスを遮断し、スパイラルインダクタの性能を向上させる技術が開示されている。
【0018】
しかしながら、特許文献2に記載された発明に開示されたスリット形状は、金属配線1,2内に発生する電流集中については、特に注意が払われておらず、電流集中による抵抗上昇に対しては、何らの対策もなされていない。したがって、特許文献2に記載された発明の方法では、電流集中による抵抗上昇を十分に抑制することができないため、スパイラルインダクタの大きな性能向上は望めないという問題がある。
【0019】
さらに、特許文献3に記載された発明では、半導体基板上のスパイラルインダクタについて、該スパイラルインダクタを構成する金属配線の上部にのみ、該金属配線の延在方向にスリットを設けることにより、表皮効果による実効的な抵抗上昇を抑制する技術が開示されている。
【0020】
しかしながら、特許文献3に記載された発明に開示されたスリット形状は、特許文献2に記載された発明と同様に、金属配線内に発生する電流集中については、特に注意が払われておらず、電流集中による抵抗上昇に対しては何らの対策もなされていない。したがって、特許文献3に記載された発明の方法では、電流集中による抵抗上昇を十分に抑制することができないため、スパイラルインダクタの大きな性能向上は望めないという問題がある。
【0021】
そして、特許文献4に記載された発明では、半導体基板上のスパイラルインダクタについて、電流集中の起こるスパイラルターンの最内周配線の内側と、最外周配線の外側に、それぞれ上記スパイラルインダクタを構成する金属配線を、複数の配線レベル層を用いた並列接続配線とすることにより、配線抵抗を低下させる技術が開示されている。
【0022】
しかしながら、特許文献4に記載された発明の方法により金属配線を形成した場合には、複数レベルの配線層を使用することにより、下層レベル配線と基板との間の寄生容量が大きくなってしまうという問題がある。実際、特許文献4に記載された発明に開示されている実験データを参照すると、該発明を用いることにより、単一の配線層を使用した場合のスパイラルインダクタのQ値よりも、該発明を適用したインダクタのQ値が向上していることが示されているが、該スパイラルインダクタの自己共振周波数は、単一配線層により形成された公知のスパイラルインダクタよりも、低い値を示している。これはつまり、該発明により形成されたスパイラルインダクタの寄生容量が、公知の単一層配線を用いて形成したスパイラルインダクタよりも大きくなっていることを示しており、この寄生容量の増加は、使用する集積回路の用途によっては、好ましくないものとなる。
【0023】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、製造工程におけるディッシングを抑制して金属配線の膜厚の好ましくない減少を抑制し、かつ通常好ましくない寄生容量の増加を招くことなく、特にギガヘルツ帯の高周波で顕著となる、近接効果による実効的な金属配線抵抗の上昇を抑制する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、上述した近接効果により電流集中が起こる箇所に、上記背景技術に記載されたようなスリットを形成してしまうと、配線抵抗が上昇してしまうという上記課題に対し、上記ディッシング抑制のために形成するスリットの配置を工夫することで、実効的な抵抗上昇を抑制可能であることを見出した。
【0025】
すなわち、本発明の請求項1では、互いに隣接して複数の金属配線が配置され、これらの金属配線にそれぞれスリットが形成され、前記複数の金属配線のうち少なくとも1つ以上の金属配線における前記スリットを、前記金属配線の上面から見て当該金属配線の延在方向に対して左右非対称に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、金属配線におけるスリットを、金属配線の上面から見て金属配線の延在方向に対して左右非対称に形成したことにより、ディッシングを抑制して配線膜厚の減少を防ぎ、かつ高周波動作時における金属配線の抵抗上昇を抑制することができる。これにより、半導体装置の低消費電力化、低ノイズ化を実現することができる。
【0027】
また、金属配線におけるスリットを、金属配線の上面から見て金属配線の延在方向に対して左右非対称に形成したことにより、金属配線の抵抗上昇を抑制することができるため、配線遅延を低減することができ、ひいては半導体装置の高速化を実現することができる。
【0028】
さらに、金属配線におけるスリットを、金属配線の上面から見て金属配線の延在方向に対して左右非対称に形成したことにより、金属配線中の電流集中を緩和することができるため、金属配線におけるエレクトロマイグレーション耐性を向上させ、ひいては高い信頼性を有する半導体装置を実現することができる。
【0029】
そして、金属配線におけるスリットを、金属配線の上面から見て金属配線の延在方向に対して左右非対称に形成したことにより、高周波動作時における金属配線の抵抗上昇を抑制し、これにより高性能の信号処理装置を構成する回路、例えば通信用半導体装置を構成する電圧制御発振器や低雑音増幅器などの回路を実現することができ、低損失、高性能の無線通信用半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の構造図は、全て本発明の各実施形態を模式的に示すものであり、構成要素の図面上の比率により、本発明による構造の寸法を規定するものではない。
【0031】
また、以下の各実施形態では、半導体装置上において互いに隣接した金属配線が、銅あるいは銅を主成分とした合金で形成される場合、いわゆるダマシン法と呼ばれる形成法にて形成される。このダマシン法により形成される銅あるいは銅を主成分とする合金により配線を形成した場合は、多くの場合、配線材料の絶縁膜中への拡散を防止するため、金属配線の底部及び側壁部に、例えばチタンやタンタルなどの高融点金属、及びその窒化物、又はそれらの積層構造などにより形成される、一般にバリアメタルと称される層が形成されるものの、これらは本発明に大きな影響を及ぼすものではないため、特に図示しない。
【0032】
さらに、以下の各実施形態では、金属配線を構成する元素に特に制限はなく、代表的な金属配線材料は、上記の銅あるいは銅を主成分とする合金であるが、アルミニウムや金、あるいは銀などの元素や、それらを主成分とする合金を用いて形成してもよく、本発明によって得られる効果は、配線材料によって特に限定されることはない。
【0033】
すなわち、以下の各実施形態では、金属配線の周辺及び内部の電磁気学的現象を利用しているため、金属配線材料や金属配線における周辺の物質の有無、あるいは材料定数に特に制限されるものではなく、本発明により開示される配線構造により、その効果を得ることができるものである。また、以下の各実施形態は、半導体装置に関するものであるが、特に半導体基板は図示していない。
【0034】
(第1実施形態)
[構成]
図1は本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示す平面図、図2は本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示す断面図である。
【0035】
図1及び図2に示すように、半導体装置上においては、略同等の配線幅を有する複数の金属配線11,12が互いに隣接して配置されている。これらの金属配線11,12を隣接して配置したことにより、複数配線の並列接続配線となる。また、金属配線11,12には、その延在方向と平行にスリット13,14がそれぞれ形成されている。これらのスリット13,14は、金属配線11,12の上面から見て金属配線11,12の延在方向に対して左右非対称に形成されている。
【0036】
これは、背景技術において述べたように、金属配線を平坦化工程により形成する場合には、平坦化工程におけるディッシングを抑制するために形成される。これにより、ディッシングによる配線膜厚の減少を抑制し、配線の直列抵抗の増加を抑制する。特に、配線幅が数マイクロメートル以上の幅の広い配線の場合には、配線内部にスリットを形成することが一般的である。
【0037】
また、スリット13,14を形成したことにより、複数配線に分割された金属配線の一部11aと11b、金属配線の一部12aと12bとは、少なくともその終端あるいは該金属配線の上層又は下層に位置する別の金属配線を接続部として互いに接続される。これは、本実施形態が元来1本の配線として形成するべき金属配線に対して、ディッシングの抑制を目的として形成するスリットの位置及び形状を電流集中の度合いに応じて変化させるという目的からしても明らかである。
【0038】
図1においては、金属配線の一部11aと11b及び12aと12bが、その終端において接続されている状態を示している。以下の説明におけるスリットを有する金属配線は、特に断りなく、上記に説明した接続部を有することとする。
【0039】
なお、金属配線11,12は、例えばトランジスタを有する半導体基板上に実装されて電源供給線や接地線に使用される。
【0040】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0041】
本実施形態では、図1及び図2の符号15,16によって示すように、それぞれの金属配線11,12には、互いに逆相の電流が流れている。この逆相とは、一般に位相が完全に反転している状態、すなわち位相差が180度である場合を指すが、厳密に反転している必要はなく、略逆相であればよい。すなわち、本実施形態においては、90度から270度の位相差を有する場合に互いの電流方向が逆相であるものとする。
【0042】
図1及び図2に示すように、隣接する金属配線1,2の延在方向と平行に形成されたスリット13,14の密度は、それぞれの金属配線11,12の互いに外側の領域において内側部分よりも高く形成されている。さらに厳密には、金属配線11,12に中心分割線17,18を引いた場合、図1及び図2に示すようにそれぞれの金属配線11,12において、その中心分割線17,18の左右でスリット13,14の金属配線11,12に占める密度がそれぞれ異なっている。本実施形態のように、隣接した配線ペアに、逆相の電流が流れるような配線配置形態は、外部への漏洩磁束を低減することを目的として、半導体装置の設計に際して、広く用いられている。この場合、近接効果により、それぞれの金属配線11,12に流れる電流は、それぞれの金属配線11,12の内側に集中する。本実施形態によれば、スリット13,14は、互いに隣接する金属配線11,12のそれぞれ外側に配置されているため、それぞれの金属配線の内側に発生する電流集中による実効的な抵抗の上昇を抑制することができる。特に、ギガヘルツ帯以上の高周波帯において、近接効果による抵抗上昇を抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、スリット13,14により複数に分割された金属配線の中で、最も線幅の細い配線の配線幅は、該金属配線を使用する動作周波数及び配線材料により規定される表皮深さの略2倍以上であることが好ましい。ここで、配線幅が表皮深さの略2倍よりも小さくなると、伝導に寄与する金属配線の断面積が低下し、結果として金属配線の抵抗上昇を招いてしまうためである。
【0044】
以上のように本実施形態では、互いに隣接する複数の金属配線11,12において、隣接する金属配線11,12の位置関係及び回路の動作特性から電流集中の起こる箇所を予測し、それぞれの電流集中の箇所とその度合いに応じて電流集中の起こる箇所を回避してスリット13,14が形成されている。
【0045】
したがって、本実施形態では、例えば互いに逆相の電流が流れるようにレイアウトを行った互いに隣接する金属配線11,12において、互いに隣接した金属配線11,12の外側にスリット13,14を形成することで、金属配線形成工程における平坦化工程でのディッシングによる配線膜厚の減少を防止し、かつ金属配線11,12内で電流集中の起こる箇所のスリット13,14による抵抗上昇を抑制するようにしている。
【0046】
このように本実施形態によれば、ディッシングを抑制して配線膜厚の減少を防ぎ、かつ従来技術と比較して高周波動作時における金属配線11,12の抵抗上昇を抑制することができる。これにより、半導体装置の低消費電力化、低ノイズ化を実現することができる。また、金属配線11,12の抵抗上昇を抑制することができるため、配線遅延を低減することができ、ひいては半導体装置の高速化を実現することができる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、金属配線11,12中の電流集中を緩和することができるため、金属配線11,12におけるエレクトロマイグレーション耐性を向上させ、ひいては高い信頼性を有する半導体装置を実現することができる。
【0048】
そして、本実施形態によれば、抵抗上昇抑制のためにスリット13,14を形成するだけなので、例えば特許文献3に記載された方法のように、複数レベルの配線層を使用しないため、半導体基板と金属配線11,12との間の寄生容量が大きくなることはない。電磁気学的には、スリット13,14を形成することにより複数の金属配線の並列接続となる金属配線11,12間に寄生容量が発生するものの、これは多層レベル配線を用いることにより増加する金属配線−半導体基板間の寄生容量と比較すると、無視できる程度の大きさであり、金属配線11,12の性能劣化を引き起こすものではない。
【0049】
そして、本実施形態によれば、高周波動作時における金属配線11,12の抵抗上昇を抑制することができるため、高性能の信号処理装置を構成する回路、例えば通信用半導体装置を構成する電圧制御発振器や低雑音増幅器などの回路を実現することができ、低損失で高性能の無線通信用半導体装置を実現することができる。
【0050】
次に、本実施形態の半導体装置の変形例について説明する。
【0051】
図3は本実施形態の半導体装置の第1変形例を示す平面図、図4は本実施形態の半導体装置の第1変形例を示す断面図である。なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して説明する。以下の各実施形態及び各変形例も同様とする。
【0052】
図3及び図4に示すように、本変形例では、それぞれの金属配線11,12に形成されるスリット13,14が金属配線11,12の延在方向に対して一定の長さを有して複数に分割されている。
【0053】
このように本変形例によれば、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
図5は本実施形態の半導体装置の第2変形例を示す平面図、図6は本実施形態の半導体装置の第2変形例を示す断面図である。
【0055】
図5及び6に示すように、本変形例では、それぞれの金属配線11,12に金属配線11,12の延在方向と平行に、複数本のスリット13a,13b、14a,14bが略並列に形成されている。したがって、複数本のスリット13a,13b、14a,14bを形成したことにより、前記第1実施形態に加えて金属配線の一部11c、金属配線の一部12cが形成されることになる。
【0056】
このように本変形例によれば、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
図7は本実施形態の半導体装置の第3変形例を示す平面図、図8は本実施形態の半導体装置の第3変形例を示す断面図である。
【0058】
図7及び図8に示すように、本変形例では、複数本に形成されたスリット13,14が金属配線11,12の延在方向に対して複数に分割されている。この場合、隣接する複数のスリット13,14は、互いに斜めに隣接するべく配置されていることが好ましい。
【0059】
このように本変形例によれば、スリット13,14を金属配線11,12の延在方向に対して複数に分割して形成したことにより、ディッシングの抑制をより効果的に抑制することができる。
【0060】
[製造方法]
次に、図9を参照して本実施形態の製造方法について説明する。
【0061】
なお、図9は、形成する金属配線の下層レベル配線20、この下層レベル配線20と金属配線を電気的に接続するためのビア21を形成した後に金属配線11,12を形成する、いわゆるシングルダマシン法についての製造方法を示す説明図である。しかし、本実施形態は、金属配線の下方に位置するビア21と、金属配線とを同時に形成する、いわゆるデュアルダマシン法により、金属配線及びビアを形成する場合においても同様に適用することができる。
【0062】
図9(a)に示すように、形成する金属配線の下層レベル配線20と、この下層レベル配線20と金属配線11,12を形成するべくビア21が形成されている。この上に、配線層間絶縁膜となるべく絶縁膜22を形成する。
【0063】
この絶縁膜22は、例えばシリコン,酸素,水素,弗素,炭素,窒素などの元素を含有する絶縁膜であるが、本実施形態においては、その絶縁膜の材料は、特に限定されない。また、絶縁膜22の堆積方法は、例えば化学気相成長法や塗布法といった公知の絶縁膜形成方法により形成する。また、絶縁膜22の加工方法によっては、絶縁膜22は互いに組成の異なる2種以上の絶縁膜の積層構造を用いることもあるが、ここでは図示を省略している。
【0064】
次いで、図9(b)に示すように、フォトリソグラフィー法に代表されるパターン形成法及び反応性エッチング法に代表される加工技術を用いて、配線溝23a,23b、24a,24bを形成する。ここで、本実施形態では、後に金属配線11となるべく形成した配線溝23aと配線溝24aとの間、及び後に金属配線12となるべく形成した配線溝23bと配線溝24bとの間に、それぞれスリット13,14を形成するために所定の配線パターンを形成する。
【0065】
さらに、本実施形態では、後に形成される金属配線11,12の位置関係により、上記のスリット13,14の位置を調整する。すなわち、本実施形態では、金属配線11,12には、互いに逆相の電流が流れるため、スリット13,14は、互いに金属配線11,12の外側に形成されている。
【0066】
次に、図9(c)において、配線溝に、金属配線を形成する金属材料25を、例えばスパッタ法や化学気相成長法、あるいはめっき法などの方法により埋め込む。この金属材料25は、例えば、銅あるいは銅を主成分とした合金が用いられるが、その金属材料の種類により本発明は何ら限定されるものではない。また、多くの場合、金属配線材料25を堆積する前に、金属配線材料25の絶縁膜22への拡散を防止するため、一般にバリアメタルと称される薄い高融点金属及びその化合物の積層構造が堆積されることが多いが、ここでは図示を省略している。
【0067】
次に、図9(d)において、金属配線11,12を形成するべく、例えば化学機械研磨法などにより、金属配線材料25を平坦化し、金属配線11,12を得る。この平坦化に際して、絶縁膜22によるスリット13,14が形成されているため、平坦化に伴うディッシングにより金属配線材料25の過剰研磨が抑制される。その結果、金属配線11,12をそれぞれ構成する金属配線11a,11b及び12a,12bの膜厚は、所望の膜厚を有するこことなり、配線抵抗の上昇を抑制することができる。
【0068】
以上の製造方法により、互いに隣接し、かつ内部にスリット13,14が形成された金属配線11,12を得る。このようにして得られた金属配線11,12は、内部にスリット13,14が形成されているため、ディッシングによる配線膜厚の減少を防ぐことができる。したがって、抵抗の上昇を抑制することができ、また互いに逆相の電流が流れ、互いに隣接した金属配線11,12のそれぞれ外側に、スリット13,14を形成したため、高周波における近接効果による抵抗上昇を抑制することができる。
【0069】
[比較例]
次に、配線抵抗の上昇率の観点から、従来方法と本実施形態による配線構造及び製造方法について比較を行い、本実施形態の優位性について説明する。
【0070】
シリコン基板上にシリコン酸化膜を約4マイクロメートル堆積した後、ダマシン法によって配線長100マイクロメートル、配線幅5マイクロメートル、膜厚約1マイクロメートルの2本の金属配線11,12を互いに平行に2.5マイクロメートルの間隔で形成した。これらの2本の金属配線に、それぞれ従来技術及び本実施形態によるスリット13,14を形成し、互いに逆相の電流を流してそれぞれの抵抗値を調べた。
【0071】
従来技術によるスリット形成方法として、図19及び図20に示したように、それぞれの金属配線1,2の中心分割線5,6に相当する位置に、幅0.5マイクロメートルのスリット5,6を形成した。このようにして形成した金属配線1,2の20GHzにおける実効配線抵抗値は、3.16オームであった。
【0072】
次に、金属配線に本実施形態によるスリット13,14を形成した。すなわち、本実施形態では、隣接する2本の金属配線11,12に電流が互いに逆相に流れているので、それぞれの金属配線11,12の互いに外側の部分にスリット13,14を形成した。このようにして形成した金属配線11,12の20GHzにおける実効配線抵抗値は、2.99オームであった。
【0073】
以上のように従来の技術と比較して本実施形態によるスリット配置を用いることで、高周波帯における実効抵抗値を約5%低減することができ、これにより本実施形態の優位性が実証された。
【0074】
なお、本実施形態は、トランジスタ及び多層の金属配線を有し、その多層配線が銅あるいは銅を主成分とする合金で形成されているものについて適用可能である。また、本実施形態は、少なくとも2層以上の複数の金属配線層を有する多層配線構造のものについても適用可能であり、この場合は、少なくとも1層以上の金属配線における一部の金属配線がスリットを有している。
【0075】
(第2実施形態)
図10及び図11に基づいて本発明の第2実施形態を説明する。図10は本発明に係る半導体装置の第2実施形態を示す平面図、図11は本発明に係る半導体装置の第2実施形態を示す断面図である。なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を用いて説明する。以下の各実施形態及び各変形例も同様とする。
【0076】
本実施形態は、前記第1実施形態と異なり、互いに隣接する金属配線11,12に符号15,16に示すように、互いに同相の電流が流れる場合に適用され、その効果を得ることができる。ここで、上記同相とは、一般に位相が完全に一致している状態、つまり位相差が0度である場合を指すが、厳密に一致している必要はなく略同相であればよい。すなわち、本実施形態においては、−90度から90度の位相差を有する場合に互いの電流方向が同相であるとする。
【0077】
図10及び図11に示すように、金属配線11,12を隣接して配置したことにより、複数配線の並列接続配線となる。また、金属配線11,12には、その延在方向と平行にスリット13,14がそれぞれ形成されている。これらのスリット13,14を形成したことにより、複数配線に分割された金属配線の一部11aと11b、金属配線の一部12aと12bとは、少なくともその終端あるいは該金属配線の上層又は下層に位置する別の金属配線を接続部として互いに接続される。
【0078】
これは、背景技術において述べたように、金属配線を平坦化工程により形成する場合には、平坦化工程におけるディッシングを抑制するために形成される。これにより、ディッシングによる配線膜厚の減少を抑制し、配線の直列抵抗の増加を抑制する。特に、配線幅が数マイクロメートル以上の幅の広い配線の場合には、配線内部にスリットを形成することが一般的である。
【0079】
上記のように本実施形態では、図10及び図11に符号15,16で示すように、それぞれの金属配線11,12には、互いに同相の電流が流れている。図10及び図11においては、隣接する金属配線11,12の延在方向と平行に形成されたスリット13,14が、それぞれの金属配線11,12の中央分割線17,18よりも互いに内側に形成されている。この場合、近接効果により、それぞれの配線に流れる電流は、それぞれの金属配線11,12の外側に集中するが、本実施形態では、スリット13,14は、上記のようにそれぞれの金属配線11,12の中心分割線17,18よりもそれぞれ内側に配置されているため、それぞれの金属配線11,12の外側に発生する電流集中による実質的な抵抗の上昇を抑制することができる。特に、ギガヘルツ帯以上の高周波帯において、近接効果による抵抗上昇を抑制することができる。
【0080】
なお、本実施形態においては、スリット13,14により複数に分割された金属配線の中で、最も線幅の細い配線の配線幅は、該金属配線を使用する動作周波数及び配線材料により規定される表皮深さの略2倍以上であることが好ましい。ここで、配線幅が表皮深さの略2倍よりも小さくなると、伝導に寄与する金属配線の断面積が低下し、結果として金属配線の抵抗上昇を招いてしまうためである。
【0081】
このように本実施形態によれば、金属配線により形成した半導体基板上のインダクタのように常に同相電流が流れるような隣接配線に対しても、容易に適用することができる。例えば、ギガヘルツ帯の信号を扱う回路に必要となる電子回路素子としてインダクタが挙げられるものの、半導体基板上に金属配線により形成される公知のスパイラルインダクタにおいては、その構成のうちで最も電流集中が起こる箇所は、スパイラルの最内周配線の内側と、最外周配線の外側であり、この現象は、例えば電磁界シミュレーションなどの方法を用いて予測することができる。本実施形態では、これらのいずれかを回避してスリット13,14を形成する。但し、本実施形態では、上記スパイラルインダクタに適用した場合、延在する金属配線11,12の中心分割線17,18に対して左右どちらか一方に偏らせるようにスリット13,14を配置するため、結果として最内周配線あるいは最外周配線のいずれか一方において、本実施形態の効果が損なわれてしまうものの、この場合は、それぞれの場合を例えば電磁界シミュレーションなどの方法により予測して比較し、抵抗上昇抑制の効果がより得られるようなスリット位置を決定すればよい。
【0082】
次に、本実施形態の半導体装置の変形例について説明する。
【0083】
図12は本実施形態の半導体装置の第1変形例を示す平面図、図13は本実施形態の半導体装置の第1変形例を示す断面図である。
【0084】
図12及び図13に示すように、本変形例では、それぞれの金属配線11,12に形成されるスリット13,14が金属配線11,12の延在方向に対して一定の長さを有して複数に分割されている。
【0085】
また、本実施形態においては、図示しないが、第1実施形態の第2変形例と同様に、それぞれの金属配線11,12に金属配線11,12の延在方向と平行に、複数本のスリット13a,13b、14a,14bを形成してもよい。さらに、図示しないが、第1実施形態の第3変形例と同様に、この複数本形成されたスリット13a,13b、14a,14bがさらに金属配線11,12の延在方向に対して、複数に分割されていてもよい。この場合、隣接する複数のスリット13,14が、互いに斜めに隣接するべく配置されていることが好ましい。このようにスリット13,14を配置したことにより、ディッシングの抑制をより効果的に抑制することができる。
【0086】
[製造方法]
本実施形態の製造方法は、前記第1実施形態の製造方法と比較して金属配線11,12中に形成するスリット13,14の位置のみが異なる。したがって、本実施形態の製造方法としては、前記第1実施形態の製造方法と同一の製造方法を用い、スリット13,14を形成する位置のみを変更すればよい。よって、本実施形態の製造方法については、特に詳細な説明を省略する。
【0087】
(第3実施形態)
図14に基づいて本発明の第3実施形態を説明する。
【0088】
図14は本発明に係る半導体装置の第3実施形態を示す平面図である。この第3実施形態は、本発明を半導体基板上に形成された渦巻状の配線パターン、すなわち公知のスパイラルターン状に金属配線をレイアウトすることにより形成したスパイラルインダクタについて適用したものである。
【0089】
図14に示すように、本実施形態は、スパイラルインダクタを形成するために半導体基板上に渦巻状に形成された金属配線30と、引き出し線31と、これらを接続するビア(図示せず)とから構成される。本実施形態では、上記スパイラルインダクタを形成する金属配線30にスリット32が形成されている。
【0090】
このように本実施形態によれば、スリット32により前記第2実施形態と同様に互いに隣接する金属配線に同相の電流が流れる場合において、高周波における近接効果による抵抗上昇を抑制し、高性能なスパイラルインダクタを得ることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、引き出し線31となる金属配線に同様にスリットを形成してよい。また、上記スパイラルインダクタに複数レベル配線層を用いた構造、例えば複数レベル配線にそれぞれ形成したスパイラルインダクタを互いに直列接続した構造や、複数レベル配線層にそれぞれ形成したスパイラルインダクタを互いに並列接続した構造について、本実施形態によるスリット32を形成しても同様の効果が得られる。
【0092】
さらに、本実施形態においては、スリット32により複数に分割された金属配線の中で、最も線幅の細い配線の配線幅は、該金属配線を使用する動作周波数及び配線材料により規定される表皮深さの略2倍以上であることが好ましい。ここで、配線幅が表皮深さの略2倍よりも小さくなると、伝導に寄与する金属配線の断面積が低下し、結果として金属配線の抵抗上昇を招いてしまうためである。
【0093】
[比較例]
次に、金属配線により形成されたインダクタの性能向上の観点から、従来方法と本実施形態による配線構造及び製造方法について比較を行い、本実施形態の優位性について図15〜図17に基づいて説明する。
【0094】
図15では、それぞれ配線形状の異なる金属配線により形成されたインダクタのインダクタンス値の周波数依存性を示している。配線構造としては、(1):スリット無し構造、(2):特許文献2に記載の従来技術の方法で、図19および図20に示すように配線中央にスリットを形成した構造、(3):図14に示すように金属配線30の内側にのみスリット32を形成した本実施形態による構造の3種類である。各構造のインダクタンス値は、測定したSパラメータから算出している。
【0095】
各構造のインダクタンス値を比較すると、特許文献2の構造では、誘導電流パスを遮断することにより、誘導電流損を減少し、結果的にインダクタンス値を増加させているが、これにより共振周波数の低下を招いている。また、インダクタンス値の増加の原因としては、インダクタの構成を複数配線の並列接続としたため、相互インダクタンスによりインダクタンス値が向上したためということも考えられる。
【0096】
これに対して、(3)の本実施形態の構造のインダクタンス値は、(2)の特許文献2と同様に(1)のスリット無し構造よりも増加しているものの、共振周波数は低下しない。これは、従来技術よりもインダクタンスの増加が少ないことと、(2)の特許文献2に記載の構造よりも等価的な抵抗が小さいため、寄生容量の影響が見えにくくなっていることに起因していると解釈できる。
【0097】
一方、図16に示した各構造の抵抗値を示す図では、(2)の特許文献2に記載の構造における等価的な抵抗が最も高く、これはスリット3,4を配線中央に形成したため、電流集中の影響を受けて抵抗が高くなってしまっているためである。これに対し、(3)の本実施形態の構造の抵抗値は、従来技術よりも低い値を示しており、本実施形態の優位性を示している。
【0098】
最後に、図17では、金属配線により形成したインダクタンスのQ値の周波数依存性が示されている。図17に示すように、(2)の特許文献2に記載の方法により形成したインダクタのQ値は、(1)のスリット無し構造と比較して向上していることが分かるが、(3)の本実施形態の構造が最も高いQ値を示していることが判る。(2)の特許文献2に記載の方法では、共振周波数が低下しているが、これは前述した図15及び図16の各構造の等価的な抵抗値及びインダクタンス値の周波数依存性から理解される。
【0099】
このように第3実施形態によるスパイラルインダクタによれば、好ましくない寄生容量を増加させることなく、スパイラルインダクタのQ値を向上させることができ、これにより本実施形態の優位性が実証された。
【0100】
[製造方法]
本実施形態の製造方法は、前記第1実施形態の製造方法と比較して金属配線30中に形成する配線パターン及びスリット32の位置のみが異なる。したがって、本実施形態の製造方法としては、前記第1実施形態の製造方法と同一の製造方法を用い、配線溝の形成パターン及びスリット32を形成する位置のみを変更すればよい。よって、本実施形態の製造方法については、特に詳細な説明を省略する。
【0101】
また、本実施形態においては、前記スパイラルインダクタの配線レイアウトに応じ、予め電流集中の起こる箇所を予測し、該電流集中箇所を回避すべく、スリットパターンを形成することがより好ましい。
【0102】
(第4実施形態)
図18に基づいて本発明の第4実施形態を説明する。
【0103】
図18は本発明に係る半導体装置の第4実施形態を示す平面図である。この第4実施形態は、本発明を互いに隣接する金属配線の一部が屈曲した構造に対して適用したものである。
【0104】
図18に示すように、本実施形態では、略同等の配線幅を有する金属配線41,42に屈曲部が形成されているため、隣接する金属配線との電流方向の同相、あるいは逆相といった関係が同一の金属配線内で異なるレイアウトとなる。このような構造を適用するためには、上記金属配線及び上記屈曲部を有する金属配線に対して同一配線の中でのスリットの位置を、前記金属配線の延在方向に対して左右で逆転させる必要が生ずる。
【0105】
したがって、本実施形態では、公知の方法により金属配線40,41の一部に、等間隔に配置されたスリット53及び54を有する領域43,44と、上記スリットを有しない領域(図示せず)とを形成し、公知の等間隔に配置されたスリット53及び54を有する領域43,44あるいは上記スリットを有しない領域を境として、金属配線40,41の延在方向に対して、その左右でスリットの位置を逆転させるべく、スリット49,50,51,52が形成されている。
【0106】
また、金属配線41は、スリット51,52及び屈曲部が形成され、この屈曲部以外にスリット51,52を有し、その屈曲部を境にして金属配線41におけるスリットの位置が、金属配線41の延在方向に対して左右逆転している。そして、金属配線41は、スリット51,52及び屈曲部が形成され、この屈曲部に等間隔に配置されたスリット53を有し、その屈曲部を境にして金属配線41内部におけるスリットの位置が、金属配線41の延在方向に対して左右逆転している。
【0107】
さらに、金属配線42については、金属配線42に流れる電流方向47と、金属配線42に隣接する金属配線40,41に流れる電流45,46との関係が、常に同相であるため、前記第2実施形態によるスリット48を形成すればよい。
【0108】
このように本実施形態によれば、隣接する金属配線40,41との電流方向の同相、あるいは逆相といった関係が、同一金属配線内で異なるような金属配線における高周波帯での近接効果による抵抗上昇を抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態において、スリットにより複数に分割された金属配線の中で、最も線幅の細い配線の配線幅は、該金属配線を使用する動作周波数及び配線材料により規定される表皮深さの略2倍以上であることが好ましい。ここで、配線幅が表皮深さの略2倍よりも小さくなると、伝導に寄与する金属配線の断面積が低下し、結果として金属配線の抵抗上昇を招いてしまうためである。
【0110】
[製造方法]
本実施形態の製造方法は、前記第1、第2実施形態の製造方法と比較して金属配線中に形成するスリットの位置のみが異なる。したがって、本実施形態の製造方法としては、前記第1実施形態の製造方法と同一の製造方法を用い、スリットを形成する位置のみを変更すればよい。よって、本実施形態の製造方法については、特に詳細な説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の適用例として、トランジスタと多層配線を有する半導体装置の多層配線への適用が挙げられる。半導体素子の性能向上に伴い、今後その動作周波数は高くなることが予想される。また、無線通信に用いられる高周波帯における用途は、より拡大していくと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の第1変形例を示す平面図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の第1変形例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の第2変形例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の第2変形例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の第3変形例を示す平面図である。
【図8】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の第3変形例を示す断面図である。
【図9】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明に係る半導体装置の第2実施形態を示す平面図である。
【図11】本発明に係る半導体装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明に係る半導体装置の第2実施形態の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明に係る半導体装置の第2実施形態の変形例を示す断面図である。
【図14】本発明に係る半導体装置の第3実施形態を示す平面図である。
【図15】本発明に係る半導体装置の第3実施形態によるインダクタの特性を示す説明図である。
【図16】本発明に係る半導体装置の第3実施形態によるインダクタの特性を示す説明図である。
【図17】本発明に係る半導体装置の第3実施形態によるインダクタの特性を示す説明図である。
【図18】本発明に係る半導体装置の第4実施形態を示す平面図である。
【図19】従来の半導体装置(特許文献2)を示す平面図である。
【図20】従来の半導体装置(特許文献2)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0113】
11 金属配線
12 金属配線
13 スリット
14 スリット
15 電流方向
16 電流方向
17 中心分割線
18 中心分割線
20 下層レベル配線
21 ビア
22 絶縁膜
23a,23b 配線溝
24a,24b 配線溝
25 配線材料
30 金属配線
31 引き出し線
32 スリット
40 金属配線
41 屈曲部を有する金属配線
42 屈曲部を有する金属配線
43 等間隔のスリットが形成された領域
44 等間隔のスリットが形成された領域
45 電流方向
46 電流方向
47 電流方向
48 スリット
49 スリット
50 スリット
51 スリット
52 スリット
53 等間隔に配置されたスリット
54 等間隔に配置されたスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して複数の金属配線が配置され、これらの金属配線にそれぞれスリットが形成され、前記複数の金属配線のうち少なくとも1つ以上の金属配線における前記スリットを、前記金属配線の上面から見て当該金属配線の延在方向に対して左右非対称に形成したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記スリットは、前記金属配線の延在方向に対して複数に分割して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記スリットは、前記金属配線の延在方向と平行に、かつ略並列に複数本形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記スリットは、前記金属配線の延在方向に対して複数に分割して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記分割された複数のスリットは、互いに斜めに隣接するべく配置されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属配線は、トランジスタを有する半導体基板上に実装されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
互いに略逆相の電流が流れる隣接した金属配線がそれぞれスリットを有し、前記隣接した金属配線のそれぞれの外側に形成されたスリットの密度が、前記隣接した金属配線のそれぞれの内側に形成されたスリットの密度よりも高いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
互いに略同相の電流が流れる隣接した金属配線がそれぞれスリットを有し、前記隣接した金属配線のそれぞれの内側に形成されたスリットの密度が、前記隣接した金属配線のそれぞれの外側に形成されたスリットの密度よりも高いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記スリットを有する金属配線により誘導素子が形成されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記スリットを有する金属配線は、電源供給線に使用されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記スリットを有する金属配線は、接地線に使用されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記スリットにより複数に分割された金属配線のうち、最も配線幅の狭い配線の配線幅は、動作周波数及び金属配線材料により規定される表皮深さの略2倍よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
トランジスタ及び多層の金属配線を有し、該多層の金属配線が銅あるいは銅を主成分とする合金で形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
少なくとも2層以上の複数の金属配線層を有する多層配線構造において、少なくとも1層以上の金属配線における一部の金属配線が、前記スリットを有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記金属配線は、スリット及び屈曲部が形成され、該屈曲部以外にスリットを有し、前記屈曲部を境にして前記金属配線におけるスリットの位置が、前記金属配線の延在方向に対して左右逆転していることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記金属配線は、スリット及び屈曲部が形成され、該屈曲部に等間隔に配置されたスリットを有し、前記屈曲部を境にして前記金属配線内部におけるスリットの位置が、前記金属配線の延在方向に対して左右逆転していることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記スリットを有する金属配線は、一部にスリットを有さず、該スリット有さない部分を境にして前記金属配線におけるスリットの位置が、前記金属配線の延在方向に対して左右逆転していることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記スリットを有する金属配線は、一部に等間隔に配置されたスリットを有し、該等間隔のスリットを有する部分を境にして前記金属配線におけるスリットの位置が、前記金属配線の延在方向に対して左右逆転していることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記複数の金属配線は、略同等の配線幅を有することを特徴とする請求項1乃至18のいずれか一項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−180110(P2007−180110A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374131(P2005−374131)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】