説明

半導体装置

【課題】トランジスタ200の外形の厚さを薄くし、かつエジェクタピン跡22が存在しても、電流破壊耐量を向上させたり、オン電圧を低減させる態様でボンディングワイヤ4による結線を可能とする。
【解決手段】トランジスタ200は樹脂パッケージ20内に半導体チップ1を備える。樹脂パッケージ20の第1の側面23には外部ドレイン電極として機能する外部リード41〜44が配列される。リードフレーム5は外部リード41〜44と面状部51とを有する。面状部51は半導体チップ1のドレイン電極が設けられる第1面1aに接続される。樹脂パッケージ20の第2の側面24には外部ソース電極として機能する外部リード45〜48が配列される。外部リード45〜48はワイヤ4によって、半導体チップ1のソース電極が設けられる第2面1bに接続される。樹脂パッケージ20の上面21上に残されるエジェクタピン跡22は、第1の側面23側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体装置に関し、特に電力用トランジスタの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は従来の半導体装置であるトランジスタ100の外観を例示する平面図である。ここではトランジスタ100はTSSOP(thin shrink small outline package)型の外形を有している。TSSOP型の外形においては、表面実装型で高さが約1.1mmに抑えられている。この故に、TSSOP型の外形を有する電力用トランジスタは、携帯電話などの携帯機器に使用される半導体素子として好適である。
【0003】
トランジスタ100はその外観上、樹脂パッケージ20と、外部リード群30,39とを備えている。樹脂パッケージ20は第1及び第2の側面23,24を有しており、外部リード群30,39はそれぞれ第1及び第2の側面23,24から突出している。
【0004】
図8はトランジスタ100の内部を例示する平面図であり、樹脂パッケージ20の内部を示すべく、樹脂パッケージ20はその輪郭のみを破線で示している。また、図9は図8の切断個所AAに沿った、トランジスタ100の断面図である。
【0005】
トランジスタ100は樹脂パッケージ20の内部に半導体チップ1と、リードフレーム5と、ボンディングワイヤ4とを備えている。リードフレーム5は外部リード群39をその端部に有し、樹脂パッケージ20の底面25側から半導体チップ1を載置する面状部51も有している。ボンディングワイヤ4の一端は樹脂パッケージ20の上面21側から半導体チップ1にボンディングし、他端は外部リード群30と接続されている。
【0006】
外部リード群30は外部ソース電極Sとして機能する外部リード31,32,33と、外部ゲート電極Gとして機能する外部リード34とを含んでいる。また外部リード群39は外部ドレイン電極Dとして機能する外部リード35,36,37,38を含んでいる。
【0007】
トランジスタ100は周知の技術により、半導体チップ1をリードフレーム5にボンディングし、ボンディングワイヤ4による結線を行い、更に樹脂を用いた封止処理を行って樹脂パッケージ20が形成される。
【0008】
なお、本願に関連する先行技術文献を下記に記す。
【0009】
【特許文献1】特開平10−050912号公報
【特許文献2】特開平06−140450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
樹脂パッケージ20は封止処理において成型されるので、一般的なプラスチックス成型の場合と同様に、成型用の金型からエジェクタピンで押し出されることにより金型から引き離される。このときの圧痕がエジェクタピン跡22であり、樹脂パッケージ20の上面21に凹部を呈して残る。
【0011】
トランジスタ100が電力用トランジスタである場合には、電流破壊耐量を向上させたり、オン電圧を低減させるため、ボンディングワイヤ4が半導体チップ1の複数の個所から分散して外部リード31,32,33へと接続することが望ましい。このような複数の結線を行うためには、ボンディングワイヤ4が半導体チップ1上で懸架される高さは大きいことが望ましい。
【0012】
トランジスタ100はTSSOP型の外形を呈しているので、樹脂パッケージ20の厚さは薄い。しかもボンディングワイヤ4の一端は樹脂パッケージ20の上面21側で半導体チップ1と外部リード群30と結線する。従ってボンディングワイヤ4が半導体チップ1上で懸架される高さを大きくすると、エジェクタピン跡22によって、ボンディングワイヤ4が上面21から樹脂パッケージ20の外部へと露出する可能性がある。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、電力用トランジスタの外形の厚さを薄くし、かつエジェクタピン跡が存在しても、電流破壊耐量を向上させたり、オン電圧を低減させる態様でボンディングワイヤによる結線が可能な、半導体装置の構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明のうち請求項1にかかるものは、第1の電流電極及び第2の電流電極を含む半導体素子を有し、前記第1の電流電極が配置される第1面と、前記第1面と対向して前記第2の電流電極が配置される第2面とを更に有する半導体チップと、前記半導体チップの前記第1面において前記第1の電流電極に接続される面状部と、複数の第1の外部リードを有する端部とを含むリードフレームと、接続体と、前記接続体を介して、前記第2の電流電極と共通して接続される複数の第2の外部リードと、前記複数の第1の外部リードが配列される第1の側面と、前記複数の第2の外部リードが配列され前記第1の側面と対向する第2の側面と、前記半導体チップの前記第2面に対向する表面とを有するパッケージとを備える半導体装置である。前記接続体における前記半導体チップの前記第2面と接続する部分は、前記半導体チップの前記第2面と前記パッケージの前記表面との間に位置し、前記パッケージの前記表面上であって、前記複数の第一の外部リード及び前記複数の第二の外部リードのうち、前記第一の側面に配列した前記複数の第一の外部リードのうちの最端に位置する2つの第一の外部リードの一方に最も近い位置に唯一のエジェクタピン跡を残す。
【0015】
この発明のうち請求項2にかかるものは、請求項1記載の半導体装置であって、前記半導体チップの前記第2の面に垂直な方向に沿った前記エジェクタピン跡の投影が前記半導体チップの端と交差する。
【0016】
この発明のうち請求項3にかかるものは、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置であって、前記接続体は、前記第2の電流電極のそれぞれ異なる箇所に接続する複数本の金属ワイヤである。
【0017】
この発明のうち請求項4にかかるものは、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置であって、前記接続体は金属板である。
【0018】
この発明のうち請求項5にかかるものは、請求項4記載の半導体装置であって、前記金属板は、前記第2の電流電極に接続する第1の箇所と、前記複数の第2の外部リードに接続する第2の箇所と、前記第1の箇所及び第2の箇所より凸状をなす第3の箇所とを有する。
【0019】
この発明のうち請求項6にかかるものは、請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の半導体装置であって、前記半導体素子はゲート電極をさらに含み、前記パッケージの前記第2の側面には、前記ゲート電極に印加する電圧を制御する第3の端子が配置される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体装置の外形の厚さを薄くし、かつエジェクタピン跡が存在しても、電流破壊耐量を向上させたり、オン電圧を低減させる態様で、接続体を介して第2の電流電極と複数の第2の外部リードとを結線することができる。また第一及び第二の外部リードを見分けやすくする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1にかかる半導体装置であるトランジスタ200の外観を例示する平面図である。図2はトランジスタ200の内部を例示する平面図である。図3は図1の切断個所BBに沿った、トランジスタ200の断面図である。
【0022】
トランジスタ200はその外観上、樹脂パッケージ20と、外部リード41〜48を備えている。但し図2においては樹脂パッケージ20の内部を示すべく、樹脂パッケージ20はその輪郭のみを破線で示している。樹脂パッケージ20は相互に対向する第1及び第2の側面23,24と、相互に対向する上面21及び底面25を有している。外部リード41〜44は第1の側面23に突出して配置されており、外部リード群40を構成している。外部リード45〜48は第2の側面24に突出して配置されており、外部リード群49を構成している。
【0023】
トランジスタ200は樹脂パッケージ20の内部に半導体チップ1と、リードフレーム5と、ボンディングワイヤ4とを備えている。リードフレーム5は外部リード群40をその端部に有し、底面25側から半導体チップ1を載置する面状部51も有している。つまり底面25はリードフレーム5よりも半導体チップ1から遠い。ボンディングワイヤ4の一端は上面21側から半導体チップ1にボンディングし、他端は外部リード群49と接続されている。つまり上面21はワイヤ4よりも半導体チップ1から遠い。
【0024】
図4は、半導体チップ1と面状部51との境界近傍を拡大して示す断面図である。半導体チップ1が電力用のMOSトランジスタである場合、通常はその第1面1a側にはドレイン電極が配置され、第1面1aと対向する第2面1bにソース電極及びゲート電極が配置される。本発明においては第1面1aには面状部51が接続され、外部リード41〜44は外部ドレイン電極Dとして機能する。一方、ワイヤ4は複数設けられ、そのうちの1本は半導体チップ1のゲート電極1gと外部リード45とを結線する。これにより外部リード45は外部ゲート電極Gとして機能する。残りのワイヤ4は外部リード46〜48と第2面1bのソース電極とを結線する。
【0025】
図3及び図4を参照して、半導体チップ1の第2面1bに垂直な方向に沿ったエジェクタピン跡22の投影が半導体チップ1の端と交差している。また樹脂パッケージ20の上面21は半導体チップ1の第2面1bと対向する。ボンディングワイヤ4において半導体チップ1の第2面1bと接続する部分は、半導体チップ1の上面21と樹脂パッケージ20の上面21との間に位置する。外部ゲート電極Gを用いてゲート電極に印加する電圧が制御される。
【0026】
トランジスタ200が電力用半導体、例えば半導体チップ1がMOSトランジスタである場合、当該MOSトランジスタ内での電流経路の両端となる一対の電流電極、すなわちソース、ドレインについてオン電圧を低減することが望ましい。これはトランジスタ200がTSSOP型の形状を採って、携帯機器に適用される場合に特に望まれる。かかる携帯機器では電力消費を低減する目的で、その動作電圧も低く設定されるからである。
【0027】
上記のオン電圧を低減するためには半導体チップ1の表面のシート抵抗を低減することが望ましい。そしてシート抵抗を低減すべく、外部リード46〜48と結線される複数のワイヤ4は、第2面1bのソース電極上に分散してボンディングされる。より具体的には、複数のワイヤ4は、ソース電極のそれぞれ異なる箇所に接続する金属ワイヤである。このような複数のボンディングは、ワイヤ4での電流集中の回避にも寄与する。なお、外部リード46〜48は図2に示される様に、一体に形成することができる。
【0028】
本実施の形態においても周知の技術により、半導体チップ1をリードフレーム5にボンディングし、ボンディングワイヤ4による結線を行い、更に樹脂を用いた封止処理を行って樹脂パッケージ20が形成される。樹脂パッケージ20には、その上面21においてエジェクタピン跡22が穿たれる。但しエジェクタピン跡22は第1の側面23側に位置する。外部リード46〜48は第2の側面24に配列されるので、ワイヤ4はエジェクタピン跡22と半導体チップ1との間の領域を除いても、第2面1bに広く分散してボンディングさせることができる。そしてボンディングワイヤ4が半導体チップ1上で懸架される高さを大きくしても、エジェクタピン跡22によって、ボンディングワイヤ4が上面21から樹脂パッケージ20の外部へと露出する可能性は非常に低くなる。
【0029】
以上のようにして本実施の形態にかかる半導体装置の構造によれば、トランジスタ、特に電力用のトランジスタの外形の厚さを薄くし、かつエジェクタピン跡が存在しても、電流破壊耐量を向上させたり、オン電圧を低減させる態様でボンディングワイヤによる結線が可能となる。
【0030】
なお、エジェクタピン跡22を用いて外部リード41〜48を見分けやすくなるという利点もある。例えば唯一のエジェクタピン跡22を、外部リード41〜48のうち、第1の側面23に配列した外部リード41〜44のうちの最端に位置する2つの外部リード41,44の一方である外部リード41の近傍に残すことにより、外部リード41〜48が見分けやすくなる。
【0031】
実施の形態2.
図5及び図6は本発明の実施の形態2にかかる半導体装置であるトランジスタ201の内部を例示する平面図と断面図であり、それぞれ図2及び図3に対応する。
【0032】
本実施の形態においては、トランジスタ201はトランジスタ200とは、外部リード46〜48と第2面1bのソース電極とのボンディングを金属板6を採用している点でのみ異なっている。金属板6は第2面1bのソース電極上に広い領域で接続されるので、実施の形態1で示されたような複数のワイヤ4と同様に、半導体チップ1の表面のシート抵抗を低減する。またドレイン電極における電流の集中も小さい。
【0033】
図6を参照して金属板6は、ソース電極に接続する箇所と、外部リード46〜48(図6では符号49で纏めて示す)に接続する箇所と、これら二つの箇所から凸状をなす箇所とを有している。
【0034】
上述の2つの実施の形態ではトランジスタ200,201としてMOSトランジスタを例示して説明したが、IGBT(絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ)に本発明を適用することができる。特にストロボ発光用のIGBTにおいて高電流及びオン状態のロスとなる飽和電圧を低減する場合に、金属板6及びこれに相当する複数のワイヤ4による結線は望ましい。本発明をIGBTに適用する場合、上記説明においてドレイン電極はコレクタ電極、ソース電極はエミッタ電極に、それぞれ読み替えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の外形を例示する平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる半導体装置の内部を例示する平面図である。
【図3】図1の切断個所BBに沿った断面図である。
【図4】図3を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の内部を例示する平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる半導体装置の断面図である。
【図7】従来の半導体装置の外形を例示する平面図である。
【図8】従来の半導体装置の内部を例示する平面図である。
【図9】図7の切断個所AAに沿った断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体チップ、1a 第1面、1b 第2面、1g ゲート電極、4 ワイヤ、5 リードフレーム、6 金属板、20 樹脂パッケージ、21 上面、22 エジェクタピン跡、23 第1の側面、24 第2の側面、25 底面、41〜48 外部リード、51 面状部、D 外部ドレイン電極、G 外部ゲート電極、S 外部ソース電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電流電極及び第2の電流電極を含む半導体素子を有し、前記第1の電流電極が配置される第1面と、前記第1面と対向して前記第2の電流電極が配置される第2面とを更に有する半導体チップと、
前記半導体チップの前記第1面において前記第1の電流電極に接続される面状部と、複数の第1の外部リードを有する端部とを含むリードフレームと、
接続体と、
前記接続体を介して、前記第2の電流電極に接続される複数の第2の外部リードと、
前記複数の第1の外部リードが配列される第1の側面と、前記複数の第2の外部リードが配列され前記第1の側面と対向する第2の側面と、前記半導体チップの前記第2面に対向する表面とを有するパッケージと
を備え、
前記接続体における前記半導体チップの前記第2面と接続する部分は、前記半導体チップの前記第2面と前記パッケージの前記表面との間に位置し、
前記パッケージの前記表面上であって、前記複数の第一の外部リード及び前記複数の第二の外部リードのうち、前記第一の側面に配列した前記複数の第一の外部リードのうちの最端に位置する2つの第一の外部リードの一方に最も近い位置に唯一のエジェクタピン跡を残す半導体装置。
【請求項2】
前記半導体チップの前記第2の面に垂直な方向に沿った前記エジェクタピン跡の投影が前記半導体チップの端と交差する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記接続体は、前記第2の電流電極のそれぞれ異なる箇所に接続する複数本の金属ワイヤである請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記接続体は金属板である、請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属板は、前記第2の電流電極に接続する第1の箇所と、前記複数の第2の外部リードに接続する第2の箇所と、前記第1の箇所及び第2の箇所より凸状をなす第3の箇所とを有する、請求項4記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子は、ゲート電極をさらに含み、
前記パッケージの前記第2の側面には、前記ゲート電極に印加する電圧を制御する第3の端子が配置される、請求項1ないし請求項5のいずれか一つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−311829(P2007−311829A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218226(P2007−218226)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【分割の表示】特願2001−306311(P2001−306311)の分割
【原出願日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】