説明

半導体装置

【課題】誘電率が低く銅に対するバリア性に優れた絶縁層構造を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】本半導体装置は、銅配線層を有する半導体装置であって、銅配線、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜、酸化ケイ素系ポーラス絶縁材料層、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜および銅配線をこの順に有する積層構造を少なくとも一つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路、多層配線装置等の半導体装置の集積度の増加および素子密度の向上に伴い、配線間隔は狭くなり、配線間の容量増大による配線遅延が問題となってきている。
【0003】
配線遅延Tは、配線抵抗および配線間の容量により影響を受け、配線抵抗をR、配線間の容量をCとすると、
T∽CR
で表される性質を示す。
【0004】
この式において、配線間隔をD、電極面積(対向する配線面の面積)をS、配線間に設けられている絶縁材料の誘電率をεと表すと、配線間の容量Cは、
C=εS/D
として表される。
【0005】
したがって、配線遅延を小さくするには、絶縁膜の低誘電率化が有効な手段となる。
【0006】
従来、絶縁材料としては、二酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、燐珪酸ガラス(PSG)等の無機膜あるいはポリイミド等の有機系高分子が用いられてきた。
【0007】
しかしながら、半導体デバイスで最も用いられているCVD−SiO膜の比誘電率は約4程度である。また、低誘電率CVD膜として検討されているSiOF膜でも、その比誘電率は約3.3〜3.5程度である。
【0008】
このような中、有望な低誘電率層間絶縁材料としてナノメートルオーダー空孔が均一に分布したシリカであるナノクラスタリングシリカ(NCS:Nanoclustering Silica)が開発された。この材料の比誘電率は2.25と従来材料より大幅に低く、集積回路への応用検討が進められている。
【0009】
ところで、銅配線を用いた半導体装置の場合、層間絶縁膜として酸化ケイ素系の物質を用いると絶縁膜中に配線物質である銅が拡散し、絶縁層の電気特性を劣化させ、装置の動作に致命的な影響を与えることが知られている。このため、銅の拡散防止等を目的の一つとした膜(以下、単に拡散防止膜という)が、層間絶縁膜と配線の間に挿入されている。
【特許文献1】特開2004−146798号公報(段落番号0001〜0006)
【非特許文献1】ジェイ ロバートソン(J. Robertson),「固体薄膜(Thin Solid Films),2001年,第383巻,p.81
【非特許文献2】雑誌「FUJITSU」,第56巻,4月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、一般的にこの拡散防止膜を形成する材料の誘電率は層間絶縁膜を形成する材料より高いため、この膜を配置することで配線層間の誘電率は大きくなる。
【0011】
近年の半導体装置の小型化によって拡散防止膜の存在が配線層間の誘電率に与える影響が大きくなっており、層間絶縁膜に使用される絶縁材料の誘電率の低減効果を打ち消す問題が顕著となってきた。
【0012】
このため、配線遅延問題への対処には、層間絶縁材料だけでなく拡散防止膜をも含めた、配線層間に配置されている物質全体を考えた場合の誘電率(実効誘電率)を低下させるニーズが存在する。なお、上記のようなニーズは、層間絶縁膜や拡散防止膜に限られるわけではなく、銅配線間における絶縁膜一般について存在するものと把握することができる。
【0013】
本発明は、配線間に配置されている物質をトータルで考えた場合の「誘電率」を低減可能な半導体装置、すなわち、配線間の電気容量を低下させることの可能な半導体装置を提供することを目的とする。本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、銅配線層を有する半導体装置であって、銅配線、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜、酸化ケイ素系ポーラス絶縁材料層、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜および銅配線をこの順に有する積層構造を少なくとも一つ有する半導体装置が提供される。
【0015】
本発明態様により、誘電率が低く銅に対するバリア性に優れた絶縁層構造を有する半導体装置が与えられる。
【0016】
前記密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜がフィルタードカソーディックアーク法によって製膜された炭素膜であること、前記積層構造が、前記半導体装置の積層方向と当該積層方向に直交する方向との少なくともいずれかに存在すること、前記炭素膜の一層と前記絶縁材料層の一層との膜厚比(すなわち、前記炭素膜の一層の膜厚/前記絶縁材料層の一層の膜厚)が0.13以下であること、前記炭素膜の一層の厚さが1〜13nmの範囲にあること、および、前記絶縁材料層を形成する酸化ケイ素系ポーラス絶縁材料の比誘電率が2.4以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、誘電率が低く銅に対するバリア性に優れた絶縁層構造を有する半導体装置が与えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を図、式、表、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、式、表、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0019】
本発明に係る半導体装置は、銅配線層を有する半導体装置であって、銅配線、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜(以下、「特定炭素膜」とも呼称する)、酸化ケイ素系ポーラス絶縁材料層(以下、「特定絶縁材料層」とも呼称する)、特定炭素膜および銅配線をこの順に有する積層構造を少なくとも一つ有する。この構成により、誘電率が低く銅に対するバリア性に優れた絶縁層構造を有する半導体装置が与えられる。特定炭素膜としては、フィルタードカソーディックアーク法(FCA:Filtered Cathodic Arc Method)によって製膜された炭素膜が好ましい。
【0020】
このことを図1を用いて例示的に説明すると次のようになる。図1は、本発明に基づく絶縁層構造の模式図を示している。このような構造の場合、配線層間の実効容量Callは、特定絶縁材料層、特定炭素膜のそれぞれの実効容量Cncs、Cbarを用いると次のように表すことができる。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、図1に示すように、特定絶縁材料層の誘電率、特定炭素膜の誘電率、特定絶縁材料層の膜厚、特定炭素膜の膜厚、配線層間の距離および電極面積をそれぞれ、εncs、εbar、b(nm)、d(nm)、D(nm)、S(nm)とおくと、
【0023】
【数2】

【0024】
となる。ここで、
【0025】
【数3】

【0026】
(kは定数)とおくと、
【0027】
【数4】

【0028】
と表せる。
【0029】
よって、層間の実効容量Callは、
【0030】
【数5】

【0031】
と表せる。
【0032】
これより、配線層間の距離(D)が一定であれば、特定炭素膜の厚さ(d)を薄くし、その分だけ特定絶縁材料層の厚さを厚くすることによって、特定炭素膜の誘電率が特定絶縁材料層の誘電率より高くとも、配線層間の実効容量を低下させることが可能であることが理解される。すなわち、配線間の絶縁層全体の実効誘電率を低下させることができ、結果的に配線遅延を少なくすることができる。
【0033】
上記積層構造において、単に「銅配線」と定義されているのは、特定炭素膜、特定絶縁材料層、特定炭素膜の組合せが、二つの銅配線層の間にある場合に限られず、同一銅配線層内の二つの銅配線の間にある場合も含まれることを意味するためである。すなわち、本積層構造は、半導体装置の積層方向に存在するものであっても、この積層方向に直交する方向に存在するものであってもよい。ここで、半導体装置の積層方向とは、たとえば、多層配線装置の場合には、その多層の積層されている方向を意味する。
【0034】
この積層構造は、全ての銅配線間に存在していても、その一部に存在していてもよい。この場合の「一部に存在」とは、銅配線層の組み合わせが二以上ある場合に、そのいくつかの銅配線層の組み合わせに上記積層構造が存在する場合、一つの銅配線層の組み合わせの層間の一部に上記積層構造が存在する場合、銅配線層間には上記積層構造が存在するが、同一の銅配線層内の銅配線間には上記積層構造が存在しない場合、同一の銅配線層内の銅配線間には上記積層構造が存在するが、銅配線層間には上記積層構造が存在しない場合等、種々のケースが考えられる。
【0035】
本発明に係る銅配線の作製方法については特に制限はなく、公知の方法で作製することができる。厚さや幅についても特に制限はない。
【0036】
本発明に係る特定炭素膜は、銅配線と特定絶縁材料層との間に存在する。硬い膜構造を有するので硬質炭素膜と呼ばれる場合もある。本発明に係る特定炭素膜は、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜であればどのようなものでもよいが、フィルタードカソーディックアーク法によって製膜されるものが好ましい。その厚さについては、銅配線からの銅のマイグレーションを所望の程度に防止できることを配慮する必要があり、一般的には、1nm以上が好ましい。1nm未満では銅のバリア性が不十分となる場合が多い。上限については13nm以下が好ましい。13nmを超えると、銅配線間の実効容量が大きくなり、本発明に係る特定炭素膜を用いるメリットが少なくなる。
【0037】
なお、フィルタードカソーディックアーク法の詳細については、非特許文献1等に記載されている。簡単に説明すれば次のようにして作製することができる:固体グラファイトなどをカソードとし、対向させたアノードとの間において真空中でアーク放電を発生させる。このとき、カソードであるグラファイトからは、炭素イオンや電子などがプラズマ流として真空中に放出される。このプラズマ流に含まれる中性粒子を除去するため、磁場フィルターなどを用いてプラズマ流を曲げ、その先に設置した基板に照射することで基板に炭素膜を堆積させる。
【0038】
本発明に係る特定炭素膜の誘電率は製膜の条件によって変化するが、十分な銅のバリア性を示す膜の場合、現状の技術水準では、特定絶縁材料膜の誘電率を下回ることはない。しかしながら、そうであっても適当な膜厚を選べば、上記の理由により配線層間の実効容量を低下させることは可能であることが見出された。本発明に係る特定炭素膜の比誘電率の範囲については特に制限はない。一般的には、2.7以上の範囲のものが入手可能である。
【0039】
なお、上記二つの特定炭素膜の、膜厚、密度、比誘電率等の物性や、作製条件は、同一でもよいが、互いに異なっていてもよい。
【0040】
本発明に係る特定絶縁材料層は、ケイ素と酸素とを主成分とし、内部に多孔を有する絶縁材料からなる層を意味し、この定義に当てはまる方法であればどのような方法で作製してもよいが、ナノメートルオーダーの空孔が均一に分布したシリカ粒子であるナノクラスタリングシリカ(NCS:Nanoclustering Silica)を使用することが特に好ましい。ナノクラスタリングシリカは、触媒化成工業株式会社から、たとえば型番:セラメートNCSとして入手することが可能である。このようなナノクラスタリングシリカは、溶液状態で入手できるので、たとえば、スピンコート法で塗布し、熱処理を実施することによりフィルム状にすることができる。ナノクラスタリングシリカの詳細については、非特許文献2に記載されている。
【0041】
本発明に係る特定絶縁材料層の厚さについては特に制限はなく、絶縁性の必要な程度に応じて定めればよい。比誘電率については、低ければ低い方が好ましいが、物理的強度とのかねあいで制限が生じる場合もある。一般的には2.4以下であることが好ましい。
【0042】
本発明に係る特定炭素膜と特定絶縁材料層との相互関係については、特定炭素膜の一層と特定絶縁材料層の一層との膜厚比(すなわち、特定炭素膜の一層の膜厚/特定絶縁材料層の一層の膜厚)が0.13以下であることが好ましいことが判明した。0.13より大きいと、全体としての誘電率の低下が不十分になる場合が多い。
【0043】
本発明は、任意の半導体装置に適用することができるが、集積度の高い多層配線構造を有する半導体装置は、低誘電率化のニーズが大きいので、そのような用途に使用することが特に有用である。本発明に係る特定炭素膜と特定絶縁材料層とは、その他のどのような名称で呼ばれる場合も、上記に説明した条件を満たす限り、本発明の範疇に属する。最も一般的な名称で呼ばれる場合、拡散防止膜、拡散防止層、キャップ層、エッチストップ層等が特定炭素膜に該当し得、層間絶縁膜、層間絶縁層、ILD層、配線絶縁層等が特定絶縁材料層に該当し得る。
【実施例】
【0044】
次に本発明の実施例を詳述する。採用した分析方法は次の通りである。
【0045】
(比誘電率および層間実効比誘電率)
アジレントテクノロジー社のLCRメーター(HP−4284A)および探針式プローバを用い、周波数1MHzの交流信号によって測定した。
【0046】
(密度)
Siウエハ上に炭素膜を製膜し、高分解能RBS装置(ラザフォード後方散乱分光装置、神戸製鋼社製HRBS−500)によって測定した。
【0047】
(膜厚)
分光エリプソメーター(sorpra社製)を用いて測定した。また、必要に応じて 断面をTEMで観察して測定した。
【0048】
[実施例1]
Siウエハ上にスパッタリング法によって銅膜を40nm製膜し、その上にフィルタードカソーディックアーク法を用いて、厚さ1nmの炭素膜を製膜し、図2に示す構造の炭素膜/銅膜の積層体を作製した。それぞれの製膜条件を表1に示す。炭素膜の成膜にはNTI社製の設備を使用し、スパッタ源にはグラファイトを用いた。炭素膜の製膜の際、放電電流の条件を変えて製膜速度を適当に調整することで密度の異なる膜を製膜した。
【0049】
【表1】

【0050】
これらの積層体に対して、図3に示すような方法で通電し、炭素膜の銅バリア性を評価した。すなわち、銅膜と炭素膜を挟んで対向させたアルミニウム電極との間に20Vの電圧を印加し、250℃で200時間保持し、その後、高分解能RBS装置(ラザフォード後方散乱分析装置;神戸製鋼製HRBS−500)によって構造体表面近傍(すなわち、図4の炭素膜上表面近傍)の銅分布を測定した。
【0051】
図4に炭素膜の密度と銅のバリア性の関係を示す。図4で、最も左側が炭素膜上面の位置を意味する。1nmの位置で銅膜に到達するため、銅の検出が顕著になっている。この結果より、炭素膜の密度が2.4g/cm以上のときには、炭素膜内への銅の拡散が大幅に抑制されていることが理解される。
【0052】
次に、銅層に挟まれた層の比誘電率を評価するため、図5に示す構造体を作製した。銅層の厚さはそれぞれ200nmとした。これは、図2のような構造体の作製後、特定絶縁材料層、特定炭素膜、銅膜を順次積層したものである。二つ目の特定炭素膜および銅膜の製膜条件は、図2の構造体作製時と同様であった。
【0053】
特定絶縁材料層は、触媒化成工業株式会社製ナノクラスタリングシリカ(型番:セラメートNCS)を用い、スピンコート法(塗布条件:回転数3000回転/分、30秒)によって塗布し、その後Nガス雰囲気中、300℃で熱処理を実施することにより、膜厚100nmで作製した。この層の比誘電率は2.4であった。
【0054】
特定炭素層は、二つとも同じ厚さで同じ密度(3.32g/cm)とし、その厚さを種々変更したものを作製した。
【0055】
図6に特定炭素膜(密度:3.32g/cm)の厚さとこの構造体の層間実効比誘電率との関係を示す。なお、このときの特定炭素膜の比誘電率は3.8であった。
【0056】
図6より、特定炭素膜の厚さが厚くなるに従い、層間実効比誘電率(すなわち、二つの銅膜に挟まれた領域の実効比誘電率)が高くなり、13nm付近で実効比誘電率が2.6を超える。ITRS(国際半導体ロードマップ)によると、来るべきhp45nm世代には2.6程度の実効比誘電率が必要とされているので、このような場合には、特定炭素膜の厚さは13nm以下とすることが適当であることが理解される。なお、特定炭素膜の厚さが13nmの場合、特定炭素膜の一層と特定絶縁材料層の一層との膜厚比(すなわち、特定炭素膜の一層の膜厚/特定絶縁材料層の一層の膜厚)は、0.13となる。
【0057】
[実施例2]
配線層間に配置する絶縁層の構成を図5に示す。また、「特定炭素膜/特定絶縁材料層/特定炭素膜」の積層構造を有する半導体集積回路の断面を概略的に図7に示す。
【0058】
図7において、シリコン基板subの表面には、n型ウエルWn、p型ウエルWpが形成されている。また、活性領域を囲むように、シャロートレンチアイソレーションによる素子分離領域STIが形成されている。n型ウエルWnの上に、p型ゲート電極Gpが形成され、その両側にp型のソース/ドレイン領域S/DpがLDD構造で形成されている。同様に、pウエルWpの上方に、n型ゲート電極Gnが形成され、その両側にn型ソース/ドレイン領域S/Dnが形成されている。このシリコン基板の表面上に、第1下層絶縁層I0が形成され、コンタクト孔が形成されている。
【0059】
コンタクト孔内にW等のプラグ電極PLが充填されている。第1下層絶縁層I0の上に、第2下層絶縁層I1が形成され、下層配線W0が埋め込まれている。なお、下層絶縁層I0、I1は例えば酸化ケイ素で形成され、下層配線W0は銅で形成される。
【0060】
下層配線W0、第2下層絶縁層I1を覆って、エッチングストッパ層S1、低誘電率絶縁層SC1、エッチングストッパ層S2、低誘電率絶縁層SC2、エッチングストッパ層S3、低誘電率絶縁層SC3、エッチングストッパ層S4、低誘電率絶縁層SC4、が積層されている。これら4層の層間絶縁層内には、下層から上層に向ってそれぞれ銅で形成されたデュアルダマシン配線DD1、DD2、DD3、DD4が形成されている。最上層の上には、カバー層CVが形成されている。
【0061】
低誘電率絶縁層SC1〜SC4のそれぞれは、本発明に係る「特定炭素膜/特定絶縁材料層/特定炭素膜」で形成される。このとき、特定炭素膜の一層の厚さは10nmとし、特定絶縁材料層の一層の厚さは170nmとしている。
【0062】
エッチングストッパS1〜S4は、例えばSiN膜、SiO膜等で形成される。カバー層CVは例えばSiN膜で形成される。
【0063】
このように、「特定炭素膜/特定絶縁材料層/特定炭素膜」構造を採用することによって、銅の拡散を防止しつつ、著しく低い比誘電率を有する絶縁層で配線層を絶縁することが可能となる。なお、「特定炭素膜/特定絶縁材料層/特定炭素膜」の積層構造は、装置の一部について採用してもよいことは言うまでもない。その他の部分の構成、例えば配線層の構成はどのようなものでもよく、公知の技術によって作製することができる。
【0064】
上記の半導体集積回路において、特定炭素膜と特定絶縁材料層の作製は実施例1と同様(比誘電率はそれぞれ3.8と2.4)にしたものを作製し、この比較として、SC1〜SC4を一般的な「Si:C:O:H(SiOC膜とも呼ばれるLow−k膜)/特定絶縁材料層/Si:C:O:H」とした以外は同様の構造を有する半導体集積回路を作製した。このとき、Si:C:O:Hの膜厚は45nmとし、特定絶縁材料層の厚さは100nmとした。
【0065】
以上の2種類の集積回路において配線遅延時間を比較したところ、「特定炭素膜/特定絶縁材料層/特定炭素膜」の構成とした集積回路の方が、11%遅延時間が短かった。
【0066】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0067】
(付記1)
銅配線層を有する半導体装置であって、銅配線、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜、酸化ケイ素系ポーラス絶縁材料層、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜および銅配線をこの順に有する積層構造を少なくとも一つ有する半導体装置。
【0068】
(付記2)
前記密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜がフィルタードカソーディックアーク法によって製膜された炭素膜である、付記1に記載の半導体装置。
【0069】
(付記3)
前記積層構造が、前記半導体装置の積層方向と当該積層方向に直交する方向との少なくともいずれかに存在する、付記1または2に記載の半導体装置。
【0070】
(付記4)
前記炭素膜の一層と前記絶縁材料層の一層との膜厚比(すなわち、前記炭素膜の一層の膜厚/前記絶縁材料層の一層の膜厚)が0.13以下である、付記1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【0071】
(付記5)
前記炭素膜の一層の厚さが1〜13nmの範囲にある、付記1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【0072】
(付記6)
前記絶縁材料層を形成する酸化ケイ素系ポーラス絶縁材料の比誘電率が2.4以下である、付記1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に基づく絶縁層構造の模式図である。
【図2】実施例1で使用した構造を示す模式図である。
【図3】実施例1で使用した特定炭素膜の銅バリア性の評価方法を説明するための模式図である
【図4】銅の核酸に対する特定炭素膜の密度の影響を示すグラフである。
【図5】本発明に係る構造体の実効比誘電率を評価する方法を説明するための模式図である。
【図6】特定炭素膜の膜厚と本発明に係る構造体の実効比誘電率との関係を示すグラフである。
【図7】実施例2の半導体集積回路の断面構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0074】
sub シリコン基板
I0 第1下層絶縁層
PL プラグ電極
I1 第2下層絶縁層
W0 下層配線
SC1〜SC4
低誘電率絶縁層
S1〜S4
エッチングストッパ
DD1、DD2、DD3、DD4
デュアルダマシン配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅配線層を有する半導体装置であって、銅配線、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜、酸化ケイ素系ポーラス絶縁材料層、密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜および銅配線をこの順に有する積層構造を少なくとも一つ有する半導体装置。
【請求項2】
前記密度2.4g/cm以上のアモルファス炭素膜がフィルタードカソーディックアーク法によって製膜された炭素膜である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記積層構造が、前記半導体装置の積層方向と当該積層方向に直交する方向との少なくともいずれかに存在する、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記炭素膜の一層と前記絶縁材料層の一層との膜厚比(すなわち、前記炭素膜の一層の膜厚/前記絶縁材料層の一層の膜厚)が0.13以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記炭素膜の一層の厚さが1〜13nmの範囲にある、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−47817(P2008−47817A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224237(P2006−224237)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】