説明

半導体装置

【課題】ダイシング時に半導体チップの側壁からのクラックが侵入するのを抑制することで信頼性向上を図る。
【解決手段】半導体チップ領域10の表面の端部上に、集積回路領域31を取り囲んでクラックストッパ用シールリング30が形成されている。クラックストッパ用シールリング30は、集積回路領域31の外の半導体基板11上に形成された積層構造体であり、第1ダミー金属層20、第2ダミー金属層21、第3ダミー金属層22が、それぞれ、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜14、第3層間絶縁膜16を間に挟んで積層されている。第1ダミー金属層20、第2ダミー金属層21、第3ダミー金属層22は、集積回路領域31の半導体素子や配線とは第1乃至第3の層間絶縁膜12,14,16によって電気的に絶縁されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線を有する半導体装置に関し、特に、半導体チップの端部に平坦化のためにダミー金属層が形成された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多層配線を有する半導体装置においては、半導体チップ表面の平坦性確保を目的として、LSI領域の配線層間のスペースにダミー金属層が設けられていた。ダミー金属層は、多層配線プロセスを利用した積層構造を有しており、上下に隣接する2つのダミー金属層の間には層間絶縁膜が形成されている。
【0003】
更に、前記LSI領域の外の半導体チップの端にも、同様のダミー金属層が設けられていた。これは、半導体ウエハを切削して複数のチップに分割するダイシングを高精度に行うために、半導体チップの有効領域であるLSI領域から、その外にあるダイシング領域に渡って平坦性を確保するためである。半導体チップ表面の平坦化については、非特許文献1に記載されている。
【非特許文献1】「LEDプリンタヘッドの最新動向」OKIテクニカルレビュー 2006年 208号 Vol.73 NO.4 28−31頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダイシング時に、ダイシングブレードが半導体チップの端のダミー金属層に接触することにより、ダミー金属層が層間絶縁膜から剥がれたり、ダイシングにより露出された半導体チップの側壁から前記層間絶縁膜にクラックが入り、平坦性の悪化や信頼性の低下等の問題を起こすおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップ上に形成された集積回路領域と、前記集積回路領域を取り囲んで形成されたクラックストッパ用シールリングと、を備え、前記集積回路領域は、層間絶縁膜を間に挟んで積層された複数の金属層を備え、前記クラックストッパ用シールリングは、層間絶縁膜を間に挟んで積層された複数のダミー金属層と、上下に隣接するダミー金属層を接続するために対応する層間絶縁膜に形成されたビアホールと、前記ビアホール内に埋められた金属部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の半導体装置によれば、クラックストッパ用シールリングを設けたことにより、半導体チップの平坦化に寄与するとともに、ダイシング時に半導体チップの側壁からのクラックが侵入するのを抑制することで、半導体装置の信頼性向上を図ることができる。特に、半導体チップの表面の平坦性が重要とされる半導体チップの実装工程において、歩留まり向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態による半導体装置について図面を参照して説明する。図1に示すように、半導体ウエハ100の表面には、複数の半導体チップ領域10が上下左右にライン状に延びたダイシング領域DLによって区画されている。複数の半導体チップ領域10は、前記ダイシング領域DLに沿って半導体ウエハ100をダイシングすることにより、複数の半導体チップに分割される領域である。
【0008】
そして、図2(図1の部分拡大図)に示すように、半導体チップ領域10の中に、集積回路領域31(半導体素子、配線等により集積回路)が形成されている。そして、半導体チップ領域10の表面の端部上に、前記集積回路領域31を取り囲んでクラックストッパ用シールリング30が形成されている。クラックストッパ用シールリング30はダイシング領域DLまで延びている。また、ダイシング領域DLを間に挟んだ2つのクラックストッパ用シールリング30は、ダイシング領域DLの中心線に対して、左右対称に形成されている。
【0009】
以下、クラックストッパ用シールリング30、集積回路領域31の構造について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は図2の破線で囲まれた領域Rの拡大図であり、図4は図3のX-X線に沿った断面図である。クラックストッパ用シールリング30は、集積回路領域31における多層配線構造を利用して形成しているので、まず、集積回路領域31について説明する。
【0010】
半導体基板11の表面を覆って第1層間絶縁膜12が形成され、この第1層間絶縁膜12上に第1金属層13が形成されている。また、第1金属層13を覆って第2層間絶縁膜14が形成され、この第2層間絶縁膜14上に第2金属層15が形成されている。更に、第2金属層15を覆って第3層間絶縁膜16が形成され、この第3層間絶縁膜16上に第3金属層17が形成されている。最上層の第3金属層17上には、パッシベーション用の保護膜18が形成されている。尚、保護膜18表面の平坦化のために最上層の第3金属層17の上に、第4層間絶縁膜(不図示)を形成し、その第4層間絶縁膜上に保護膜18を形成してもよい。
【0011】
ここで、第1層間絶縁膜12はBPSG膜であり、第2層間絶縁膜14、第3層間絶縁膜16、第4層間絶縁膜は平坦化のために、プラズマTEOS膜/SOG膜/プラズマTEOS膜の3層膜構造とすることが好ましく、保護膜18は、パッシベーションのためにシリコン窒化膜やシリコン窒化膜とシリコン酸化膜の積層膜であることが好ましい。
【0012】
また、第1金属層13は、第1層間絶縁膜12に形成されたビアホールC1(これはコンタクトホールと言っても良い)を通して半導体基板11の表面に形成された半導体素子19に接続されている。半導体素子19には、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗素子などが含まれる。
【0013】
ビアホールC1には、金属部材が埋められている。また、第1金属層13と第2金属層15を接続する場合には、第2層間絶縁膜14に形成されたビアホールSC1を通して両者は接続される。ビアホールSC1には、金属部材が埋められている。同様に、第2金属層15と第3金属層17を接続する場合には、第3層間絶縁膜16に形成されたビアホールTC1を通して両者は接続される。ビアホールTC1には、金属部材が埋められている。尚、上記集積回路領域31に関して、図3の平面図における図示を省略してある。
【0014】
次に、クラックストッパ用シールリング30の構造について説明する。クラックストッパ用シールリング30は、前記集積回路領域31の外側の半導体基板11上に形成された積層構造体であり、第1ダミー金属層20、第2ダミー金属層21、第3ダミー金属層22が、それぞれ、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜14、第3層間絶縁膜16を間に挟んで積層されている。第1ダミー金属層20、第2ダミー金属層21、第3ダミー金属層22は、前記集積回路領域31の半導体素子や配線とは第1乃至第3層間絶縁膜12,14,16によって電気的に絶縁されている。
【0015】
そして、第1ダミー金属層20と半導体基板11の間の第1層間絶縁膜12には、ビアホールC2が形成され、このビアホールC2に金属部材が埋められている。同様に、第1ダミー金属層20と上層の第2ダミー金属層21の間の第2層間絶縁膜14には、ビアホールSC2が形成され、このビアホールSC2に金属部材が埋められている。同様に、第2ダミー金属層21と上層の第3ダミー金属層22の間の第3層間絶縁膜16には、ビアホールTC2が形成され、このビアホールTC2に金属部材が埋められている。
【0016】
尚、前記第1乃至第3金属層13,15,17、第1乃至第3ダミー金属層20,21,22は、同じ工程(金属層のスパッタやデポジションによる形成工程と、その後のパターニング工程)で同時形成され、例えばAl−Si−Cu、又はAl−Cuからなることが好ましい。また、前記金属部材はW(タングステン)からなることが好ましい。前記金属部材は、金属層、ダミー金属層の形成工程とは別工程により形成されることが多いが、対応するビアホールに金属層やダミー金属層を埋めて形成して工程の削減を図っても良い。
【0017】
クラックストッパ用シールリング30は、上述のように金属部材を介してダミー金属層が積層されてなる機械的に強固な構造体であり、ダイシング時の衝撃により、第1乃至第3ダミー金属層20,21,22の剥がれを防止すると共に、半導体チップの側壁から第1乃至第3層間絶縁膜12,14,16にクラックが侵入するのを止めることができる。
【0018】
また、クラックストッパ用シールリング30を機械的に強固にするためには、金属部材はビアホールC2、SC2、TC2に完全に充填されることが好ましい。
【0019】
ここで、図3に示すように、金属部材が埋められたビアホールC2,SC2,TC2は、クラックストッパ用シールリング30と同様にストライプ状に延びており、途中で切れ目がないことが望ましい。仮に、ビアホールC2,SC2,TC2に切れ目があると、そこからクラックが侵入してしまうからである。
【0020】
このように、クラックストッパ用シールリング30は、クラック侵入のストッパとして働くが、集積回路領域31からダイシング領域DLに至るまでの半導体チップ領域10の表面を平坦化するという効果もある。更に、ダイシング後は、クラックストッパ用シールリング30により、半導体チップの側壁から水分や不純物等が侵入するのを防止することが期待できる。
【0021】
クラックストッパ用シールリング30より更に外の半導体基板11上には、平坦化用ダミー金属積層体40を設けることが好ましい。これは、クラックストッパ用シールリング30からダイシング領域DLに至る領域の表面を平坦化してダイシング工程を高精度に行うためである。平坦化用ダミー金属積層体40は、図4に示すように、第4ダミー金属層23、第5ダミー金属層24、第6ダミー金属層25が、それぞれ、第1層間絶縁膜12、第2層間絶縁膜14、第3層間絶縁膜16を間に挟んで積層されている。第4ダミー金属層23、第5ダミー金属層24、第6ダミー金属層25は、前記集積回路領域31の半導体素子や配線とは第1乃至第3層間絶縁膜12,14,15によって電気的に絶縁されている。
【0022】
また、第4乃至第6ダミー金属層23,24,25は、第1乃至第3ダミー金属層20,21,22と同じ材料で同時に形成される。
【0023】
このような平坦化用ダミー金属積層体40は、ダイシング領域DLとクラックストッパ用シールリング30が延びた方向に、所定間隔でタイル状に複数配列されることが好ましい。また、平坦化用ダミー金属積層体40は、ダイシングブレード50の端が平坦化用ダミー金属積層体40に接触する位置に配置されることが好ましい。
【0024】
また、ダイシング領域DL上については、前記保護膜18が除去されて前記平坦化用ダミー金属積層体40の最上層の第6ダミー金属層25の表面が露出されていることが好ましい。これは、ダイシング時の衝撃により、保護膜18が剥がれたり、クラックが入るのを防止するためである。保護膜18の剥がれ等を更に有効に防止するには、平坦化用ダミー金属積層体40の最上層の第6ダミー金属層25を露出するとともに、クラックストッパ用シールリング30の最上層の第3ダミー金属層22の一部を露出するように、前記保護膜18の除去領域を広げることが好ましい。
【0025】
そして、上述のように構成された半導体ウエハ100をダイシングブレード50でダイシング領域DLに沿ってダイシングすることにより、半導体ウエハ100は複数の半導体チップに分割される。すなわち、上述の複数の半導体チップ領域10が互いに切り離されて、複数の半導体チップとなる。図5にダイシング後の1つの半導体チップを示してある。この場合は、平坦化用ダミー金属積層体40がダイシング領域DLの端を跨いで形成されているので、ダイシングブレード50により、平坦化用ダミー金属積層体40の第4ダミー金属層23、第5ダミー金属層24、第6ダミー金属層25が切断されることになる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更が可能なことは言うまでもない。例えば上記実施形態では、3層配線構造の半導体装置を例として説明したが、本発明は一般の多層配線構造を有する半導体装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】半導体ウエハを示す平面図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態による半導体装置(ダイシング前)を示す平面図である。
【図4】図3のX−X線における断面図である。
【図5】本発明の実施形態による半導体装置(ダイシング後)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 半導体チップ領域 11 半導体基板 12 第1層間絶縁膜
13 第1金属層 14 第2層間絶縁膜 15 第2金属層
16 第3層間絶縁膜 17 第3金属層 18 保護膜
19 半導体素子 20 第1ダミー金属層 21 第2ダミー金属層
22 第3ダミー金属層 23 第4ダミー金属層 24 第5ダミー金属層
25 第6ダミー金属層 30 クラックストッパ用シールリング
40 平坦化用ダミー金属積層体 50 ダイシングブレード
100 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップ上に形成された集積回路領域と、
前記集積回路領域を取り囲んで形成されたクラックストッパ用シールリングと、を備え、
前記集積回路領域は、層間絶縁膜を間に挟んで積層された複数の金属層を備え、
前記クラックストッパ用シールリングは、層間絶縁膜を間に挟んで積層された複数のダミー金属層と、上下に隣接するダミー金属層を接続するために対応する層間絶縁膜に形成されたビアホールと、前記ビアホール内に埋められた金属部材とを備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
層間絶縁膜を間に挟んで積層された複数のダミー金属層を備えた平坦化用ダミー金属積層体を備え、
前記平坦化用ダミー金属積層体は、前記クラックストッパ用シールリングが延びた方向に、所定の間隔で複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記平坦化用ダミー金属積層体は、前記半導体基板のダイシング領域の端部に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記クラックストッパ用シールリングは、前記集積回路領域と前記平坦化用ダミー金属積層体との間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記クラックストッパ用シールリングの複数のダミー金属層の中で、最上層のダミー金属層と前記集積回路領域の上に形成された保護膜を備え、
前記ダイシング領域上については前記保護膜が除去されて前記平坦化用ダミー金属積層体の最上層のダミー金属層が露出されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−218504(P2009−218504A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63092(P2008−63092)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】