説明

半導体装置

【課題】プロセス加工性と信頼性に優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】必要な回路が形成された半導体表面に、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及び平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路3を任意の箇所に形成してなる半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス加工性と信頼性に優れたエポキシ樹脂を絶縁材料として用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の発達に伴い電子部品の搭載密度が高くなり、チップスケールパッケージやチップサイズパッケージ(以下CSPとする)と呼ばれるような半導体チップサイズとほぼ同等なサイズを有する半導体パッケージや半導体のベアチップ実装など新しい形式の実装方法が採用され始めている。その中でも、半導体基板上で再配線と再配線のパッケージングを実施するウェハレベルCSP(以下WL−CSPとする)は、パッケージサイズの極小化が可能となるため、高密度実装が必要な電子機器の分野で注目されている。
【0003】
WL−CSPの製造プロセスでは、半導体基板上で再配線加工を行うため、その絶縁層には半導体で実績のあるポリイミドなどが用いられてきた(例えば、特許文献1、2参照)。また、エポキシ樹脂を用いた検討も進められている(例えば、特許文献3、4参照)。 さらに、特に絶縁層に用いる樹脂の種類や組成を特定せずに技術開示している場合も多い(例えば、特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−349610号公報
【特許文献2】特開2005−064451号公報
【特許文献3】特開2004−319656号公報
【特許文献4】特開平08−250549号公報
【特許文献5】特開平11−111896号公報
【特許文献6】特開2004−319965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術においても、WL−CSPに絶縁層を形成することは可能であった。
しかし、既述の文献にあるような手法を用いた場合、ポリイミドや従来のエポキシ樹脂を用いると、銅めっきによる回路形成では十分な密着性が得られないという問題点があった。
【0006】
さらに、熱サイクル試験やHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)試験における十分な信頼性を得られないという問題点があった。
また、半導体基板の片面に絶縁層を形成するために基板の反りの抑制も必要であった。
【0007】
本発明は、プロセス加工性と信頼性に優れた半導体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)エポキシ樹脂硬化剤及び(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0009】
また、本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)フェノール樹脂及び(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0010】
また、本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラー及び(4)リン含有反応性難燃剤の成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0011】
また、本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラー、(4)リン含有反応性難燃剤及び(5)無機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0012】
また、本発明は、樹脂組成に含まれる有機フィラーが、コアシェル構造架橋ゴム粒子である前記の半導体装置に関する。
【0013】
また、本発明は、樹脂組成に含まれる有機フィラーが、架橋ポリブタジエンをコア層とし、架橋アクリル樹脂をシェル層とした架橋ゴム粒子である前記の半導体装置に関する。
また、本発明は、樹脂組成に含まれる有機フィラーが、カルボン酸変性ゴム粒子である前記の半導体装置に関する。
【0014】
また、本発明は、樹脂組成に含まれる有機フィラーが、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子である前記の半導体装置に関する。
【0015】
また、本発明は、樹脂組成に含まれるリン含有反応性難燃剤が、フェノール性水酸基含有リン化合物である前記の半導体装置に関する。
【0016】
また、本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の架橋ポリブタジエンをコア層とし、架橋アクリル樹脂をシェル層とした架橋ゴム粒子及び(4)フェノール性水酸基含有リン化合物の成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0017】
また、本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下のカルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子及び(4)フェノール性水酸基含有リン化合物の成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0018】
また、本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の架橋ポリブタジエンをコア層とし、架橋アクリル樹脂をシェル層とした架橋ゴム粒子、(4)フェノール性水酸基含有リン化合物及び(5)無機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0019】
また、本発明は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下のカルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、(4)フェノール性水酸基含有リン化合物及び(5)無機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成してなる半導体装置に関する。
【0020】
また、本発明は、絶縁層を形成する樹脂組成硬化物の40℃における貯蔵弾性率が、1〜3GPaである前記の半導体装置に関する。
【0021】
また、本発明は、絶縁層を形成する樹脂組成硬化物の25℃からガラス転移温度までの線膨張係数が、50〜100ppm/Kである前記の半導体装置に関する。
【0022】
また、本発明は、絶縁層を形成する樹脂組成硬化物のイオン性不純物濃度が、1ppm以下である前記の半導体装置に関する。
【0023】
さらに、本発明は、回路が形成される絶縁層の算術平均表面粗さ(Ra)が、0.1〜0.4μmである前記の半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、プロセス加工性と信頼性に優れた半導体装置を得ることが可能となり、工業的に極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の半導体装置の一例を示す平面図である。
【図2】図2は、図1の断面図である。
【図3】図3は、本発明の半導体装置の製造プロセスの一例を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の半導体装置の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明のはんだボール付けた半導体装置の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の半導体装置を配線基板に実装した一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)エポキシ樹脂硬化剤及び(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。
【0027】
エポキシ樹脂は、電子材料用途に汎用的に用いられているために、経済的に優れる。該エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を呈するものであればよい。二官能以上で、好ましくは分子量が5000未満、より好ましくは3000未満のエポキシ樹脂が使用できる。
二官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型樹脂等が例示される。
【0028】
エポキシ樹脂としては、高Tg化を目的に多官能エポキシ樹脂を加えてもよく、多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。
【0029】
エポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられているものが使用でき、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミドアミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィッド、フェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物であるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。このうち、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等を用いるのが好ましい。
【0030】
また、硬化促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
【0031】
また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長される。
【0032】
エポキシ樹脂のエポキシ基とエポキシ樹脂硬化剤の官能基との当量比は、0.8〜1.2が好ましい。0.8未満又は1.2を超えると、絶縁性や耐薬品性が劣るという問題が生じる。
【0033】
平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーは、銅との接着性の向上や耐熱性の向上、さらには半導体基板の反り抑制に効果を発現する。
有機フィラーとしては、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブタジエンスチレン(PBS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン(ABS)樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエンスチレン(MBS)樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等が例示される。また柔らかい組成のコア部と硬い組成のシェル部を備えたコアシェル構造の有機フィラーを用いることもできる。
【0034】
有機フィラーの平均一次粒子径は、1μm以下が好ましい。平均粒子径が1μmを超えると、絶縁信頼性が低下する傾向がある。また粒子径が小さすぎると凝集しやすくなるため平均粒子径の下限は0.1μm程度が好ましい。
【0035】
有機フィラーの添加量は、樹脂組成総量100重量部に対して1〜100重量部が好ましい。1重量部未満であると、有機フィラーの効果が発揮されず、銅接着性や耐熱性の効果が見られなくなる傾向があり、100重量部を超えると、樹脂弾性率の著しい低下や絶縁性といった特性の低下が現れる傾向がある。
【0036】
また、本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)フェノール樹脂及び(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。
【0037】
フェノール樹脂としては、既述したようにフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が挙げられ、このうちフェノールノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等を用いるのが好ましい。
【0038】
また、本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラー及び(4)リン含有反応性難燃剤の成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。リン含有反応性難燃剤を用いることで、ハロゲン物質を用いずに難燃性を付与することが可能となり、環境負荷を抑制することができる。
【0039】
リン含有反応性難燃剤としては、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホス、2−エチルヘキシルジフェニルフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェートなどのリン酸エステル単量体、レゾルシノールビス(ジフェニル)フォスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)フォスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)フォスフェート、レゾルシノールAビス(ジ2,6−キシレニル)フォスフェート等のリン酸エステル縮合体や水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基等の反応性基を有するリン化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0040】
リン含有反応性難燃剤の配合量は、全重量に対して、リン原子換算で、1.5〜2.5重量%の範囲であり、より好ましくは1.8〜2.2重量%の範囲である。配合量がこの範囲にあると、難燃性が良好で(例えば、UL−94規格に基づく手法でV−0達成)、絶縁信頼性に優れ、かつ硬化物のTgが低すぎることもない。
【0041】
また、本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラー、(4)リン含有反応性難燃剤及び(5)無機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。
【0042】
無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素粉末、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。
【0043】
無機フィラー添加量は、無機フィラー以外の樹脂組成総量100体積部に対して1〜50体積部が好ましい。配合の効果の点から配合量の下限は1体積部程度が好ましく、配合量が多くなると、接着剤の貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下等の問題を起こす傾向があるので50体積部程度であることが好ましい。
【0044】
本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成に含まれる平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーが、コアシェル構造架橋ゴム粒子であるものである。コアシェル構造架橋ゴムは、耐熱性や接着性向上に非常に効果的である。コアシェル構造架橋ゴムは、2層又は3層構造であり、コア層がゴム弾性を示す架橋ゴムであり、コア層をゴム弾性を示さない架橋ポリマで被覆した構造であればどのようなものでもよい。コア層には、架橋ポリブタジエン、架橋ポリイソプレン等が有効であり、シェル層には、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン等が好ましい。
【0045】
また、本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成に含まれる平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーが、架橋ポリブタジエンをコア層とし、架橋アクリル樹脂をシェル層とした架橋ゴム粒子であるものである。架橋ポリブタジエンをコア層とし、架橋アクリル樹脂をシェル層とした架橋ゴム粒子は、経済性に優れる。
【0046】
また、本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成に含まれる平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーが、カルボン酸変性ゴム粒子であるものである。カルボン酸変性ゴム粒子はカルボキシル基を表面に有するため、接着性向上に非常に効果的であり、それに伴って耐熱性も向上する。
【0047】
また、本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成に含まれる平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーが、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子であるものである。カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子は、アクリロニトリル、ブタジエン及びカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸等)を共重合させ、かつ共重合する段階で、部分的に架橋させ、粒子状にしたものである。カルボン酸は、アクリル酸が好ましい。
また、粒子の大きさは、一次平均粒子径で、60〜80nmであることが好ましい。これらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0048】
また、本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成に含まれるリン含有反応性難燃剤がフェノール性水酸基含有リン化合物であるものである。フェノール性水酸基を有することにより、エポキシ樹脂との架橋反応が起こり、耐熱性などの信頼性が向上する。フェノール性水酸基含有リン化合物は、以下の化学式(I)
【0049】
【化1】

(式中、nが、1の場合、R4は、水素原子、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、nが2の場合、それぞれのR4は独立して、水素原子、直鎖状若しくは分枝状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であるか、2つのR4は、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、非置換又はアルキル基若しくはシクロアルキル基で置換されているベンゼン環を形成し、xは、2以上の自然数である)で示されるような、フェノール性水酸基を含有するリン化合物である。これらは、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0050】
上記の化学式(I)において、R4が直鎖状若しくは分枝状のアルキル基の場合、C1〜C6アルキル基が好ましく、シクロアルキル基の場合は、C6〜C8シクロアルキル基が好ましい。アリール基の場合、フェニル基が好ましく、アラルキルの場合、C7〜C10アラルキル基が好ましい。xは、2が好ましい。
【0051】
また、下記の化学式おいて、nが2であり、2つのR4が、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、2つのR4は、それぞれが結合している炭素原子と一緒になって、非置換又はアルキル基若しくはシクロアルキル基で置換されているベンゼン環を形成する場合は、非置換又はC1〜C4アルキル基若しくはC6〜C8シクロアルキル基で置換されているベンゼン環が好ましい。具体的には、以下の化学式(II)及び(III)
【0052】
【化2】

【0053】
【化3】

(式中、R5は、水素原子、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基、シクロヘキシル基を表す)で示されるリン化合物が挙げられる。特に、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド及びそれらの誘導体が好ましい。
【0054】
また、本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の架橋ポリブタジエンをコア層とし、架橋アクリル樹脂をシェル層とした架橋ゴム粒子及び(4)フェノール性水酸基含有リン化合物の成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂は、分子中にビフェニル誘導体の芳香族環を含有したノボラック型のエポキシ樹脂であり、例えば、以下の化学式(IV)
【0055】
【化4】

(式中、pは、1〜5を示す)で例示される。
これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。信頼性を損ねることなく、樹脂の流動性を確保することが出来る。
また、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂は、クレゾールノボラック型フェノール樹脂の主鎖にトリアジン環を含むクレゾールノボラック型フェノール樹脂である。このような樹脂を用いることで、耐熱性や耐薬品性を損なうことなく、難燃性を向上させることが可能となる。
【0056】
窒素含有量は、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂中、12〜22重量%が好ましく、より好ましくは17〜19重量%であり、特に好ましくは18重量%である。分子中の窒素含有量がこの範囲であると、誘電損失が大きくなりすぎることもなく、絶縁樹脂組成物をワニスとする場合に、溶剤への溶解度が適切で、未溶解物の残存量が抑えられる。
【0057】
トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂は、数平均分子量が、500〜600であるものを用いることができる。これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂は、クレゾールとアルデヒドとトリアジン環含有化合物を、pH5〜9の条件下で反応させて得ることができる。クレゾールは、o−、m−、p−クレゾールのいずれも使用することができ、トリアジン環含有化合物としてはメラミン、グアナミン及びその誘導体、シアヌル酸及びその誘導体を使用することができる。
【0058】
また、本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下のカルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子及び(4)フェノール性水酸基含有リン化合物の成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。既に述べたようなそれぞれの成分の特長を活かすことにより、プロセス加工性と信頼性に優れた絶縁材料を得ることができ、それを用いた半導体装置を作製することが可能となる。
【0059】
また、本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下の架橋ポリブタジエンをコア層とし、架橋アクリル樹脂をシェル層とした架橋ゴム粒子、(4)フェノール性水酸基含有リン化合物及び(5)無機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。このものにおいても、既に述べたようなそれぞれの成分の特長を活かすことにより、プロセス加工性と信頼性に優れた絶縁材料を得ることができ、それを用いた半導体装置を作製することが可能となる。
【0060】
さらに、本発明の半導体装置は、必要な回路が形成された半導体表面に、(1)ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、(2)トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂、(3)平均一次粒子径1μm以下のカルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、(4)フェノール性水酸基含有リン化合物及び(5)無機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成されたものである。このものにおいても既に述べたようなそれぞれの成分の特長を活かすことにより、プロセス加工性と信頼性に優れた絶縁材料を得ることができ、それを用いた半導体装置を作製することが可能となる。
【0061】
本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成硬化物の40℃における貯蔵弾性率は、1〜3GPaであることが好ましい。ここで、貯蔵弾性率とは、動的粘弾性測定装置で測定した値を示す。例えば、接着剤硬化物に引張り荷重をかけて、周波数10Hz、昇温速度5〜10℃/分で20〜250℃まで測定する温度依存性測定モードで測定した値で表すことができる。貯蔵弾性率が1GPa未満であると、材料の取扱い性が低下しやすい傾向があり、3GPaを超えると絶縁層を形成した半導体基板の反りが大きくなるなどの不具合が生じやすい傾向がある。
【0062】
また、本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成硬化物の25℃からガラス転移温度までの線膨張係数は、50〜100ppm/Kであることが好ましい。ここで、線膨張係数とは、引張りモードのTMA(Thermo−Mechanical Analyzer)で測定した値を示す。例えば、接着剤硬化物に引張り荷重をかけて、昇温速度5〜10℃/分で20℃から250℃まで測定した値で表すことができる。線膨張係数が50ppm/K未満であると、結果的に無機フィラーの添加量が多く取扱い性が低下しやすい傾向がある。また線膨張係数が100ppm/Kを超えると、半導体基板や銅回路との線膨張係数の差が大きくなり信頼性が低下しやすい傾向がある。
【0063】
また、本発明において、絶縁層を形成する樹脂組成硬化物のイオン性不純物濃度は、1ppm以下であることが好ましい。ここで、イオン性不純物濃度とは、純水で抽出したイオン性不純物を高速液体クロマトグラフィーで測定した値を示す。抽出、121℃、2気圧、24時間の条件で行う。
また、イオン性不純物としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオン、ブロムイオン、燐酸イオン等の評価が適切である。これらのイオン性不純物濃度が1ppmを超えると、長期絶縁信頼性が低下しやすい傾向がある。
【0064】
さらに、本発明において、回路が形成される絶縁層の算術平均表面粗さ(Ra)は、0.1〜0.4μmであることが好ましい。算術平均表面粗さ(Ra)とは、表面高さに関して平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値を示す。接触式表面粗さ計、レーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡等で測定可能である。Raが0.1μm未満であると接着力が低下しやすい傾向があり、0.4μmを超えると微細配線回路加工に支障をきたしやすい傾向がある。なお、Raは0.2〜0.3μmであることがより好ましい。
【0065】
絶縁層の厚みは、10〜50μmが好ましいが、これに制限するものではない。絶縁層は回路の絶縁を確保する他に、WL−CSPを基板実装した際の半導体チップと基板の線膨張係数差から生じるひずみを吸収する役割を果たす。したがって、絶縁層の厚みが10μm未満であると、ひずみを吸収する樹脂が少なくなり、結果的に信頼性が低下しやすい傾向がある。上限は、経済性を考慮すると50μm程度が好ましい。
【0066】
絶縁層の形成は、樹脂組成の成分を溶剤で溶解したものを配合してワニス化したものを用いることができる。
ワニス化の溶剤は、比較的低沸点の、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−エトキシエタノール、トルエン、ブチルセルソルブ、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノールなどを用いるのが好ましい。また、塗膜性を向上するなどの目的で、高沸点溶剤を加えても良い。
【0067】
高沸点溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
フィラーの分散には、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル等により、またこれらを組み合わせて行なうことができる。
フィラーと低分子量物をあらかじめ混合した後、高分子量物を配合することにより、混合に要する時間を短縮することも可能となる。
【0068】
また、ワニスとした後、真空脱気によりワニス中の気泡を除去することが好ましい。ワニスから絶縁層を形成する方法としては、ワニスをディップコータ、スピンコータ等の装置を用いて半導体基板上に塗布・加熱する方法がある。ワニスの固形分や粘度、引出し速度や回転速度などで膜厚を制御することが可能である。
【0069】
また、ワニスをキャリアフィルム上に塗布・加熱して溶剤を除去してBステージ(半硬化状態)の接着フィルムとして、この接着フィルムを半導体基板上にラミネートしても良い。その場合、接着フィルムの保護を目的にキャリアフィルムと接する接着フィルム面と反対側に、カバーフィルムを使用してもよい。
【0070】
これらのキャリアフィルムや保護フィルムは、絶縁層形成の途中で剥離されるものである。
キャリアフィルム及びカバーフィルムに用いるフィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッソ系フィルム、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムが使用できる。
【0071】
配線導体は、銅が好ましい。電気的な伝導性が高いことから金、銀、銅、アルミニウム等の金属を用いることが好ましいとされるが、希少価値や加工薬品・加工装置を考慮すると銅が経済的な観点から最も好ましい。配線導体として銅からなる回路の形成は、スパッタ法やめっき法を用いることができる。
【0072】
配線導体をめっき法で形成する場合の例として、(1)絶縁層を酸性粗化液で処理(酸性粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、テトラフルオロホウ酸粗化液などが使用可能)、(2)塩化第一スズの塩酸水溶液に浸漬して、中和処理、(3)塩化パラジウム系の液に浸漬してパラジウムを付着させる種付処理、(4)無電解めっき液に浸漬することにより、絶縁層上に無電解めっき層を析出(必要により更に電気めっきを実施)及び(5)不要な部分をエッチング除去して回路パターンを形成することが挙げられる。
【0073】
無電解めっき液及び電気めっきの方法は、公知のものを用いることができ、特に制限はない。更には、絶縁層を粗化し、種付した後、めっきレジストでマスクを形成し、必要な部分にのみ無電解めっき層を析出させ、次いでめっきレジストを除去して、回路パターンを形成することもできる。異なる導体層の回路を接続するために、上記めっき法の前に、絶縁層にホールを形成することが必要である。このホールの形成手法は特に限定されず、レーザー法やサンドブラスト法等の公知の方法を用いることができる。
【0074】
このように作製した半導体装置の平面図を図1に、その断面図を図2に示す。また製造プロセスを表す図を図3に示す。さらに、配線層を2層とした場合の断面図を図4に、配線基板に実装するためにはんだボールを付けた半導体装置の断面図を図5に、配線基板に実装したときの断面図を図6に示す。
【0075】
図1の半導体装置の平面図において、1は半田ボール用パッド、2は半導体電極パッド、3は回路配線を示している。また、図2の半導体装置の断面図において、1は半田ボール用パッド、2は半導体電極パッド、3は回路配線、4は半導体基板、51及び52は絶縁層用接着フィルムを示している。第3図の製造プロセスについては後述する。また、図4の配線層を2層とした場合の断面図において、53は絶縁層用接着フィルムを示している。 また、図5の半導体装置の断面図において、半田ボール用パッド1にはんだボール8が付けられている。また、図6の配線基板に実装したときの断面図において、半導体装置に付けられたはんだボール8が配線基板9に接続されている。
【0076】
[実施例]
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに制限するものではない。
(絶縁層用接着フィルム1の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート〔四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、コアシェル構造架橋ゴム粒子(コア層:架橋ポリブタジエン/シェル層:架橋ポリメタクリル酸メチル〔呉羽化学工業(株)製、商品名ラロイドEXL2655〕14重量部及びリン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0077】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0078】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で2.2GPaであった。
【0079】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science社製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、76ppm/Kであった。なお、Tgは170℃であった。
【0080】
(絶縁層用接着フィルム2の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829を使用〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート〔四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、コアシェル構造架橋ゴム粒子(コア層:架橋ポリブタジエン/シェル層:架橋ポリメタクリル酸メチル〔呉羽化学工業(株)製、商品名パラロイドEXL2655〕31重量部、リン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0081】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0082】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で1.6GPaであった。
【0083】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、81ppm/Kであった。なお、Tgは170℃であった。
【0084】
(絶縁層用接着フィルム3の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート(四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、コアシェル構造架橋ゴム粒子(コア層:架橋ポリブタジエン/シェル層:架橋ポリメタクリル酸メチル〔呉羽化学工業(株)製、商品名パラロイドEXL2655〕53重量部、リン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0085】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0086】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で1.3GPaであった。
【0087】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、100ppm/Kであった。なお、Tgは170℃であった。
【0088】
(絶縁層用接着フィルム4の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔(大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート(四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、コアシェル構造架橋ゴム粒子(コア層:架橋ポリブタジエン/シェル層:架橋ポリメタクリル酸メチル〔呉羽化学工業(株)製、商品名パラロイドEXL2655〕31重量部、リン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部、球状シリカ粒子〔(株)アドマテックス製のアドマファイン球状シリカ粒子)60重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0089】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0090】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で2.6GPaであった。
【0091】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、72ppm/Kであった。なお、Tgは170℃であった。
【0092】
(絶縁層用接着フィルム5の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート〔四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子〔JSR(株)製、商品名XER−91SE−15〕5重量部、リン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0093】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0094】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で2.5GPaであった。
【0095】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、61ppm/Kであった。なお、Tgは170℃であった。
【0096】
(絶縁層用接着フィルム6の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート〔四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子〔JSR(株)製、商品名XER−91SE−15〕5重量部、リン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部、球状シリカ粒子〔(株)アドマテックス製のアドマファイン球状シリカ粒子〕40重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0097】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0098】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で2.6GPaであった。
【0099】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、49ppm/Kであった。尚、Tgは170℃であった。
【0100】
(絶縁層用接着フィルム7の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート〔四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、リン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0101】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0102】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で2.4GPaであった。
【0103】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、60ppm/Kであった。なお、Tgは170℃であった。
【0104】
(絶縁層用接着フィルム8の作製)
ビフェニル系エポキシ樹脂〔日本化薬(株)製、商品名NC3000H〕80重量部、トリアジン環含有クレゾールノボラック型フェノール樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名フェノライトEXB−9829〕12重量部、イミダゾール誘導体化合物:1−シアノエチル−2フェニルイミダゾリウムトリメリテート〔四国化成工業(株)製、商品名2PZ−CNS〕0.24重量部、リン含有化合物〔三光(株)製、商品名HCA−HQ〕26重量部、球状シリカ粒子〔(株)アドマテックス製のアドマファイン球状シリカ粒子)78重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、さらにビーズミルを用いて混練し、真空脱気した。
【0105】
この絶縁層用ワニスを、厚さ75μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、100℃で5分間加熱乾燥して、膜厚が40μmのBステージ状態の塗膜を形成し、キャリアフィルムを備えた接着フィルムを作製した。
【0106】
この接着フィルムを2枚張り合わせ、絶縁層硬化物を作製して、その貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置〔(株)レオロジ製、商品名DVE−V4〕を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、40℃で3.7GPaであった。
【0107】
また、線膨張係数をTMA(Mac Science製、4000型)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度10℃/分、引張りモード)した結果、40ppm/Kであった。なお、Tgは170℃であった。
【実施例1】
【0108】
ウェハ状態のシリコーン半導体基板(サイズ:8インチφ、厚み:0.5μm)の回路形成面(図3(a))に、銅系金属からなる接続パッドが形成された半導体基板を準備した。この半導体基板の回路面に前記で得た絶縁層用接着フィルム1の接着剤面が接するように配置し、110℃、0.5MPa及び60秒の条件で真空ラミネートした(図3(b)。
その後、キャリアフィルムを剥がし、170℃,1時間の条件で接着フィルムを硬化させた。
【0109】
次に、炭酸ガスレーザを用いてこの絶縁層に30μmの穴を形成して、アルカリ過マンガン酸粗化液でデスミア処理し、塩化第一スズの塩酸水溶液で中和した(図3(c))。
その後、塩化パラジウム系の種付処理を行った後に、無電解めっき液に浸漬して1μmの薄付け銅めっきを行い、さらに電気めっきにより10μmの銅めっきを行った(図3(d))。
【0110】
続いて、この基板表面にエッチングレジストを形成、過硫安水溶液で銅をエッチング、レジストを剥離することによって必要な回路配線パターンを得た(最小ライン幅:30μm)(図3(e))。
その後、180℃で1時間の後加熱を行い、絶縁層を完全に硬化させ、さらに硫酸処理により回路表面の酸化銅を取り除いた。
【0111】
次いで、絶縁層用接着フィルム1の接着剤面を接するように配置し、110℃、0.5MPa及び60秒の条件で真空ラミネートした(図3(f))。
その後、キャリアフィルムを剥がし、170℃、1時間の条件で接着フィルムを硬化させた。さらに炭酸ガスレーザを用いてこの絶縁層に50μmの穴を形成して、アルカリ過マンガン酸粗化液でデスミア処理し、塩化第一スズの塩酸水溶液で中和し、再配線加工を施した半導体装置を得た(図3(g))。
【実施例2】
【0112】
絶縁層用接着フィルム1に換えて、絶縁層用接着フィルム2を用いた以外は、実施例1と同様な条件で加工を行い、再配線加工を施した半導体装置を得た。
【実施例3】
【0113】
絶縁層用接着フィルム1に換えて、絶縁層用接着フィルム3を用いた以外は、実施例1と同様な条件で加工を行い、再配線加工を施した半導体装置を得た。
【実施例4】
【0114】
絶縁層用接着フィルム1に換えて、絶縁層用接着フィルム4を用いた以外は、実施例1と同様な条件で加工を行い、再配線加工を施した半導体装置を得た。
【実施例5】
【0115】
絶縁層用接着フィルム1に換えて、絶縁層用接着フィルム5を用いた以外は、実施例1と同様な条件で加工を行い、再配線加工を施した半導体装置を得た。
【実施例6】
【0116】
絶縁層用接着フィルム1に換えて、絶縁層用接着フィルム6を用いた以外は、実施例1と同様な条件で加工を行い、再配線加工を施した半導体装置を得た。
【0117】
(比較例1)
絶縁層用接着フィルム1に換えて、絶縁層用接着フィルム7を用いた以外は、実施例1と同様な条件で加工を行い、再配線加工を施した半導体装置を得た。
【0118】
(比較例2)
絶縁層用接着フィルム1に換えて、絶縁層用接着フィルム8を用いた以外は、実施例1と同様な条件で加工を行い、再配線加工を施した半導体装置を得た。
【0119】
(評価結果)
実施例1〜6及び比較例1、2で得られた配線加工後の半導体装置について、半導体基板の反り量と配線パターン形成性について調べた。半導体基板の反り量は、平坦な定板の上に半導体基板を載せ、端部の浮き量を測定した。反り量が、80μm以下の場合を非常に良好(◎)、80〜120μmの場合を良好(○)、120μmを超える場合を不良(×)とした。
また、配線パターン形成性は、配線パターンの浮きや剥がれがない場合を良好(○)、浮きや剥がれがある場合を不良(×)とした。
これらの結果を絶縁層用接着フィルムの硬化物の物性と合わせて表1に示す。
【0120】
【表1】

表1に示されるように、実施例1〜6は、何れも、貯蔵弾性率が1.3〜2.6GPaと低く、線膨張係数も100ppm/K以下であったことから基板の反りが小さかった。
特に、実施例2及び3は、貯蔵弾性率が1.3〜1.6GPaと更に低かったため、基板の反りが非常に良好であった。
また、実施例1〜6は、有機フィラーを添加しているため、絶縁層とめっき銅との密着力が高く、配線パターン形成性にも優れていた。
【0121】
これに対し、比較例1は、貯蔵弾性率が2.4GPaと低く、線膨張係数も60ppm/Kと100ppm/K以下であったことから基板の反りが小さかった。しかし、有機フィラーが添加されていないため、絶縁層とめっき銅との密着力が低く、配線パターンの浮きが発生していた。
また、比較例2は、無機フィラーが添加されているため、絶縁層の粗化処理が十分に行われて絶縁層とめっき銅との密着力が高く、配線パターン形成性は優れていた。しかし、貯蔵弾性率が3.7GPaと高かったため、基板の反りが大きかった。
【符号の説明】
【0122】
1 半田ボール用パッド
2 半導体電極パッド
3 回路配線
4 半導体基板
5 絶縁層
6 絶縁層ホール
7 銅
8 はんだボール
9 配線基板
51 絶縁層用接着フィルム
52 絶縁層用接着フィルム
53 絶縁層用接着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要な回路が形成された半導体表面に、(1)エポキシ樹脂、(2)エポキシ樹脂硬化剤及び(3)平均一次粒子径1μm以下の有機フィラーの成分を含む樹脂組成からなる絶縁層を1層又は複数層備え、かつ同一層内及び層間接続の配線導体として銅を用いた回路を任意の箇所に形成し、前記絶縁層を形成する樹脂組成硬化物の40℃における貯蔵弾性率が、1〜3GPaである半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−178586(P2012−178586A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−99504(P2012−99504)
【出願日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【分割の表示】特願2007−43801(P2007−43801)の分割
【原出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】