説明

半導体装置

【課題】裏面に対する各種プロセスを必要としない簡素な構造の半導体装置を提供する。
【解決手段】活性層2に対して埋込絶縁膜4との境界部分にn+型埋込領域6が形成されているSOI基板5を用いて、素子領域8と配線引出部9との間にトレンチ分離部11を配置し、トレンチ分離部11をn-型ドリフト層7と同じもしくはそれより深く、かつ、埋込絶縁膜4から離間するように形成する。このような構成とすれば、SOI基板5に対して予め形成しておけるn+型埋込領域6を介して行うことができる。このため、高耐圧MOSFET1の素子領域8と配線引出部9との電気的な接続を裏面電極などを備える必要がなく、裏面に対する各種プロセスを必要としない簡素な構造の半導体装置により、層間絶縁膜18に大きな電位差が掛かることを抑制できる。また、電位分布が不均一になることを防止でき、高耐圧MOSFET1の耐圧低下を抑制することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐圧トランジスタ、特にレベルシフト用の高耐圧MOSFETを備えた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォトカプラレスのレベルシフト(電力変換)回路部を実現するものとして、高耐圧LDMOSを備えたHVIC(High Voltage Integrated Circuit)がある。HVICに備えられるレベルシフト用の高耐圧LDMOSでは、特異点を無くして偏り無く電流が流れるようにして耐圧を確保するために、ドレインを中心に配置し、その外周にドレインと同心円構造となるようにソースを配置した構造とされる。
【0003】
しかしながら、ドレインを中心に配置してその外周と同心円状にソースを配置した場合、ドレイン配線を素子の外に引き出すために、層間絶縁膜を介してソース配線の上部を横切るようにドレイン配線を配置しなければならない。つまり、高電圧のドレイン配線が低電圧のソース配線の上を横切る構造となり、その結果、層間絶縁膜に大きな電位差が掛かることとなり、その電位差に耐えられる厚い層間絶縁膜にしなければならなかった。また、ドレイン配線の下方において電位分布が不均一になるため、素子の耐圧が低下していた。
【0004】
このような問題を解決するものとして、特許文献1に、層間絶縁膜を厚くしなくてもソース配線の外にドレイン配線を引き出せる構造の半導体装置が提案されている。具体的には、高電位となるドレイン配線を素子の裏面から引き出すことにより、層間絶縁膜を挟んでドレイン配線がソース配線の上部を横切るような構造とならないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−135423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドレイン配線を素子の裏面から引き出す構造とするため、裏面に対する各種プロセス、すなわち基板裏面への不純物層の注入工程や不純物層に電気的に接続される裏面電極の形成工程、更には裏面電極などを覆う保護膜の形成工程等が必要になる。このため、半導体装置の構造が複雑で、製造工程の増大を招くという問題がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、裏面に対する各種プロセスを必要としない簡素な構造の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、SOI基板(5)における活性層(2)のうち埋込絶縁膜(4)との界面には第1導電型の埋込領域(6)が備えられ、高耐圧トランジスタ(1)は、活性層(2)に含まれた第1導電型層(7)を有し、該第1導電型層(7)に互いにトレンチ分離部(11)にて分離された素子領域(8)と配線引出部(9)とを備えた構成とされ、素子領域(8)は、第1導電型層(7)の表面側に第1配線(19)を備えていると共に、活性層(2)に備えられた埋込領域(6)との間において、第1導電型層(7)の表裏面を貫通するように電流を流す縦型のトランジスタにて構成され、配線引出部(9)は、第1導電型層(7)の表面側に形成された第2配線(22)を有し、トレンチ分離部(11)が第1導電型層(7)と同じもしくはそれより深くかつ埋込絶縁膜(4)から離間して形成されることで、埋込領域(6)を通じて素子領域(8)と電気的に接続されており、第2配線(22)と第1導電型層(7)および埋込領域(6)を素子領域(8)に流す電流の引出し配線としていることを特徴としている。
【0009】
このように、素子領域(8)と配線引出部(9)との電気的な接続を裏面電極などを備えることなく、SOI基板(5)に対して予め形成しておける埋込領域(6)を介して行うことができる。このため、裏面に対する各種プロセスを必要としない簡素な構造の半導体装置により、層間絶縁膜(18)に大きな電位差が掛かることを抑制できる。また、電位分布が不均一になることを防止でき、高耐圧トランジスタ(1)の耐圧低下を抑制することも可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、トレンチ分離部(11)により配線引出部(9)が囲まれていることを特徴としている。
【0011】
このように、トレンチ分離部(11)にて高電圧となる配線引出部(9)側を囲んだ構造にすれば、高耐圧トランジスタ(1)の近辺への配線引出部(9)の高電圧の影響が少なくできる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、素子領域(8)における第1導電型層(7)のうち配線引出部(9)側において、トレンチ分離部(11)に沿って第1導電型層(7)の表面から形成された第2導電型電界緩和層(30)が備えられていることを特徴としている。
【0013】
このように、第2導電型電界緩和層(30)を設けておくことで、素子領域(8)の外縁部に電位分布が入り込み難くなり、この箇所での電界集中を緩和することが可能となる。例えば、シリコン部やトレンチ分離部(11)の耐圧設計を電界集中に耐えられる設計とするが、シリコン部で耐圧を見込むには素子領域(8)の拡大が必要になる場合がある。このような場合に第2導電型電界緩和層(30)を設ければ、シリコン部での電界集中を緩和できるため、素子領域(8)を拡大しなくても電界集中を緩和することが可能となり、より素子の耐量を向上させることが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、素子領域(8)における第1導電型層(7)のうち配線引出部(9)側において、当該第1導電型層(7)よりも高不純物濃度とされ、トレンチ分離部(11)に沿って第1導電型層(7)の表面から形成された第1導電型電界緩和層(40)が備えられていることを特徴としている。
【0015】
このように、第1導電型電界緩和層(40)を設けておくことで、素子領域(8)の外縁部に電位分布が入り込み易くなり、トレンチ分離部(11)の電界負担を緩和することが可能となる。例えば、シリコン部やトレンチ分離部(11)の耐圧設計を電界集中に耐えられる設計とするが、トレンチ分離部(11)の耐圧が不十分な場合には、シリコン部で耐圧を持たせ、トレンチ分離部(11)での電界集中を緩和させることがある。このような場合に第1導電型電界緩和層(40)を設ければ、トレンチ分離部(11)での電界集中を緩和できるため、例えばトレンチ分離部(11)をあまり厚くできないような場合でも、トレンチ分離部(11)の絶縁破壊を抑制することが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、トレンチ分離部(11)は、配線引出部(9)を中心として同心状に配置された多重トレンチ構造とされていることを特徴としている。
【0017】
このように、複数本のトレンチ分離部(11)によって素子領域(8)と配線引出部(9)との間を分離することにより、基板横方向における耐圧をより高めることが可能となる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、活性層(2)のうち多重トレンチ構造を構成するトレンチ分離部(11)の間に配置された部分には第2導電型領域(50)が備えられており、第1配線と第2導電型領域(50)との間および第2配線と第2導電型領域(50)との間が抵抗(52)を介して接続されていることを特徴としている。
【0019】
このような構造とすれば、第2配線(22)と第1配線(19)との間に発生する電位差を各第2導電型領域(50)に分配することができる。これにより、基板横方向での電界分布をより均等化することが可能となり、より耐圧を高めることが可能となる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置の上面レイアウトを示した模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。
【図6】図5に示す半導体装置の上面レイアウトを示した模式図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップのレベルシフト素子の断面図であり、図2は、図1に示す半導体装置の上面レイアウトを示した模式図である。図1は、図2のA−A’断面に相当している。以下、これらの図を参照して、本実施形態の半導体装置について説明する。
【0024】
本実施形態の半導体装置は、図示しないが、0V基準回路を構成する低電圧(以下、LV(Low Voltage)という)回路島と、例えば600〜1200V基準回路を構成する高電圧(以下、HV(High Voltage)という)回路島とを有した構成とされ、IGBTの駆動等に用いられる。図1に示すレベルシフト素子は、半導体装置のLV回路島とHV回路島との間のレベルシフトを行う高耐圧MOSFET1であり、この高耐圧MOSFET1が例えば図2に示すようにLV回路島とHV回路島の境界位置に配置されている。LV回路島やHV回路島のうち高耐圧MOSFET1以外の領域には、図示しないが、IGBTの駆動を制御するためのパワーMOSFETやバイポーラトランジスタおよびCMOSなどが備えられた周知の駆動回路部が設けられている。
【0025】
図1に示すように、半導体装置が形成されたチップのうち紙面上方側の面を表面、紙面下方の面を裏面とすると、半導体装置は、表面側をシリコン層にて構成された活性層2、裏面側を支持基板3として、これら活性層2および支持基板3を埋込絶縁膜4にて接合したSOI(Silicon on insulator)基板5を用いて形成されている。活性層2は、埋込絶縁膜4との境界部に形成された高不純物濃度とされたn+型埋込領域6と、n+型埋込領域6よりも低不純物濃度とされた第1導電型層に相当するn-型ドリフト層7とを有した構成とされている。そして、n-型ドリフト層7に対して高耐圧MOSFET1を構成する各部が形成されている。
【0026】
活性層2には、高耐圧MOSFET1が形成された素子領域8に加えて配線引出部9を囲むようにトレンチ分離部10が形成されている。このトレンチ分離部10は、活性層2の表裏、つまりn-型ドリフト層7およびn+型埋込領域6を貫通するように備えられ、このトレンチ分離部10によってレベルシフト素子である高耐圧MOSFET1がLV回路島およびHV回路島から素子分離されている。
【0027】
また、活性層2には、トレンチ分離部10の内側において配線引出部9を囲むようにトレンチ分離部11が形成されている。このトレンチ分離部11は、上記したトレンチ分離部10よりも浅く形成されており、n-型ドリフト層7と同じもしくはそれより深く形成されている。具体的には、トレンチ分離部11は、n-型ドリフト層7とn+型埋込領域6の境界と同等ないしそれ以上の深さとされまで形成され、かつ、埋込絶縁膜4から所定距離離間した構造とされている。このため、トレンチ分離部11の下方において、トレンチ分離部11と埋込絶縁膜4との間には所定厚さ分のn+型埋込領域6が残され、この部分を通じて高耐圧MOSFET1が形成された素子領域8と配線引出部9とが電気的に接続された状態となっている。
【0028】
なお、各トレンチ分離部10、11は、例えば、活性層2に対してトレンチ内を熱酸化膜およびPoly−Siにて埋め込んだ周知の素子分離構造とされている。
【0029】
高耐圧MOSFET1が構成される素子領域8には、n-型ドリフト層7の表層部にp型チャネル領域12が形成されていると共に、このp型チャネル領域12内にn-型ドリフト層7よりもn型不純物濃度が高濃度とされた第1導電型の半導体領域に相当するn+型ソース領域13およびp型チャネル領域12よりもp型不純物濃度が高濃度とされたp+型コンタクト領域14が形成されている。
【0030】
-型ドリフト層7の表面には、p型チャネル領域12やn+型ソース領域13およびp+型コンタクト領域14を露出させる開口部が形成されたLOCOS酸化膜15が形成されることで素子分離が為されている。また、露出したp型チャネル領域12の表面、つまりp型チャネル領域12のうちn-型ドリフト層7とn+型ソース領域13との間に挟まれた領域の表面にゲート絶縁膜16を介してゲート電極17が形成されている。さらに、n-型ドリフト層7の表面側において、ゲート電極17やゲート絶縁膜16およびLOCOS酸化膜15を覆うように層間絶縁膜18が形成されている。そして、この層間絶縁膜18に形成されたコンタクトホールを通じてn+型ソース領域13およびp+型コンタクト領域14にオーミック接触するようにアルミニウム等により構成されたソース配線19が形成されている。このソース配線19は、層間絶縁膜18の表面上において配線引出部9と反対側であるLV回路島側、つまりHV回路島から離れる方向に向かって延設されている。
【0031】
一方、高耐圧MOSFET1の配線引出部9には、n-型ドリフト層7の表層部に形成されたnウェル領域20およびnウェル領域20の表層部に形成されたn+型コンタクト領域21が形成されている。また、配線引出部9にも層間絶縁膜18が成膜されており、この層間絶縁膜18に形成されたコンタクトホールを通じてn+型コンタクト領域21とオーミック接触するようにアルミニウム等により構成されたドレイン配線22が形成されている。このドレイン配線22は、層間絶縁膜18の表面上においてソース配線19と反対方向となるHV回路島側、つまりLV回路島から離れる方向に向かって延設されている。
【0032】
そして、図示しないが、高耐圧MOSFET1を含めたLV回路島およびHV回路島などチップ全域を覆うように、必要に応じて層間絶縁膜や他の配線層(図示せず)等が成膜され、さらにこの上面保護膜などで覆われることにより、本実施形態にかかる半導体装置が構成されている。
【0033】
このように構成された本実施形態の半導体装置では、ゲート電極17に所望の電位が掛けられると、ゲート絶縁膜16の直下のp型チャネル領域12の表層部にチャネルが形成される。そして、n+型ソース領域13、p型チャネル領域12のチャネル、素子領域8のn-型ドリフト層7、n+型埋込領域6、配線引出部9のn-型ドリフト層7、nウェル領域20およびn+型コンタクト領域21を通じて、ソース配線19とドレイン配線22との間に電流が流される。このとき、IGBTの駆動状態に応じて各部の電位が変化し、例えばソース配線19が0V、ドレイン配線22が600〜1200Vとされ、ソース配線19とドレイン配線22との間に大きな電位差が発生することになる。
【0034】
しかしながら、本実施形態の高耐圧MOSFET1では、素子領域8に形成された高耐圧MOSFET1に対して電流が縦方向(基板厚み方向)に流され、さらにその電流が素子領域8と配線引出部9との間を電気的に接続するn+型埋込領域6を通じて配線引出部9に流される。すなわち、n+型埋込領域6を通じて電流が流れるようにすることにより、ドレイン配線22を素子領域8の外に引き出した構造とし、配線引出部9およびドレイン配線22にて引き出し配線を構成している。
【0035】
このため、ドレイン配線22がソース配線19の上部を横切るような配置にならない。したがって、ドレイン配線22とソース配線19の間に層間絶縁膜18が挟まれることはなく、ドレイン配線22とソース配線19との電位差によって層間絶縁膜18が絶縁破壊されることもない。
【0036】
さらに、このようにソース配線19とn+型埋込領域6との間に縦方向に電流が流れる構成とされていることから、電界集中によるLOCOS酸化膜15や層間絶縁膜18の絶縁破壊を防ぐことが可能となり、より高耐圧な半導体装置とすることが可能となる。すなわち、素子領域8内での電位分布は、n-型ドリフト層7の表面とほぼ平行になり、偏りない分布になる。このため、電界集中が生じず、半導体装置をより高耐圧にすることが可能となる。
【0037】
仮に、トレンチ分離部11の深さがn-型ドリフト層7よりも浅く、n+型埋込領域6に達していないと、素子領域8内のn-型ドリフト層7内において表面とほぼ平行な電位分布にならず、トレンチ分離部11の下方に残ったn-型ドリフト層7を通じて配線引出部9側にも電位分布が形成される可能性がある。このような状態になると、高耐圧MOSFET1の耐圧が縦方向の電位分布で決まらなくなってしまう。このため、本実施形態のように、トレンチ分離部11の深さがn-型ドリフト層7と同じもしくはそれより深く、n+型埋込領域6に達した構造となるようにすると好ましい。
【0038】
以上のように構成された本実施形態の半導体装置では、高耐圧MOSFET1の素子領域8と配線引出部9との電気的な接続を裏面電極などを備えることなく、SOI基板5に対して予め形成しておけるn+型埋込領域6を介して行うことができる。このため、裏面に対する各種プロセスを必要としない簡素な構造の半導体装置により、層間絶縁膜18に大きな電位差が掛かることを抑制できる。また、電位分布が不均一になることを防止でき、高耐圧MOSFET1の耐圧低下を抑制することも可能となる。
【0039】
なお、このような構造の半導体装置は、SOI基板5を用いること、および、SOI基板5を形成する際に予め活性層2のうち埋込絶縁膜4との境界部分となる表面にn+型埋込領域6を形成しておくこと、および、トレンチ分離部11を形成すること以外については、基本的には特許文献1に示した構造の半導体装置のうちの裏面に対する各種プロセスを除いた工程を用いて製造することができる。トレンチ分離部11の形成工程については、トレンチ分離部10と別工程としてトレンチ分離部11を形成するためのトレンチを形成するようにしても良いし、トレンチ分離部10を形成するためのトレンチよりもトレンチ分離部11を形成するためのトレンチの幅を狭くすることで、これらを同時に形成しつつエッチングレートに差を生じさせてトレンチ深さを異ならせるようにしても良い。
【0040】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して素子領域8内のシリコン部(具体的にはn-型ドリフト層7)での電界負担を緩和させる構造を採用したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図3は、本実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。この図に示すように、素子領域8におけるn-型ドリフト層7のうち配線引出部9側の部位、具体的にはn-型ドリフト層7の表面からトレンチ分離部11に沿ってp+型電界緩和層30が形成されている。すなわち、素子領域8と配線引出部9とを分離しているトレンチ分離部11の素子領域8側の側面に、p+型電界緩和層30が形成されている。p+型電界緩和層30の深さについては任意に設定できるが、本実施形態ではトレンチ分離部11の途中、つまりn+型埋込領域6に達しない程度の深さとされている。
【0042】
上述したように、素子領域8におけるn-型ドリフト層7内では、当該n-型ドリフト層7の表面とほぼ平行になり、偏りない分布になるが、素子領域8の外縁部で電位分布が終端し、その部分で電界集中が発生し易くなる。このため、本実施形態のようにp+型電界緩和層30を設けておくことで、素子領域8の外縁部に電位分布が入り込み難くなり、この箇所での電界集中を緩和することが可能となる。
【0043】
例えば、シリコン部やトレンチ分離部11の耐圧設計を電界集中に耐えられる設計とするが、シリコン部で耐圧を見込むには素子領域8の拡大が必要になる場合がある。このような場合に本実施形態のようにp+型電界緩和層30を設ければ、シリコン部での電界集中を緩和できるため、素子領域8を拡大しなくても電界集中を緩和することが可能となり、より素子の耐量を向上させることが可能となる。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して素子領域8と配線引出部9との間の絶縁構造(具体的にはトレンチ分離部11)での電界負担を緩和させる構造を採用したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0045】
図4は、本実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。この図に示すように、素子領域8におけるn-型ドリフト層7のうち配線引出部9側の部位、具体的にはn-型ドリフト層7の表面からトレンチ分離部11に沿ってn+型電界緩和層40が形成されている。すなわち、素子領域8と配線引出部9とを分離しているトレンチ分離部11の素子領域8側の側面に、n+型電界緩和層40が形成されている。n+型電界緩和層40の深さについては任意に設定できるが、本実施形態ではトレンチ分離部11の途中、つまりn+型埋込領域6に達しない程度の深さとされている。
【0046】
上述したように、素子領域8におけるn-型ドリフト層7内では、当該n-型ドリフト層7の表面とほぼ平行になり、偏りない分布になるが、素子領域8の外縁部で電位分布が終端し、その部分で電界集中が発生し易くなる。このため、本実施形態のように、n+型電界緩和層40を設けておくことで、素子領域8の外縁部に電位分布が入り込み易くなり、トレンチ分離部11の電界負担を緩和することが可能となる。
【0047】
例えば、シリコン部やトレンチ分離部11の耐圧設計を電界集中に耐えられる設計とするが、トレンチ分離部11の耐圧が不十分な場合には、シリコン部で耐圧を持たせ、トレンチ分離部11での電界集中を緩和させることがある。このような場合に本実施形態のようにn+型電界緩和層40を設ければ、トレンチ分離部11での電界集中を緩和できるため、例えばトレンチ分離部11をあまり厚くできないような場合でも、トレンチ分離部11の絶縁破壊を抑制することが可能となる。
【0048】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してトレンチ分離部11を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
図5は、本実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。また、図6は、図5に示す半導体装置の上面レイアウトを示した模式図である。図5は、図6のB−B’断面に相当している。
【0050】
この図に示すように、トレンチ分離部11が配線引出部9を中心として同心状に多重に配置された多重トレンチ構造であっても構わない。このように、複数本のトレンチ分離部11によって素子領域8と配線引出部9との間を分離することにより、基板横方向における耐圧をより高めることが可能となる。
【0051】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、第4実施形態のようにトレンチ分離部11を多重トレンチ構造としつつ、電界分布の均等化を図ったものであり、その他に関しては第4実施形態と同様であるため、第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図7は、本実施形態にかかる高耐圧MOSFETを有する半導体装置が形成されたチップの断面図である。
【0053】
この図に示すように、トレンチ分離部11を多重トレンチ構造としつつ、各トレンチ分離部11の間に配置されたn-型ドリフト層7にp型領域50を備えた構造としている。また、SOI基板5の表面に形成されたLOCOS酸化膜15をp型領域50の表面に位置する部分において開口させ、この開口させられた部分に配線部51が配置されることでp型領域50に対して電気的に接続させられている。そして、ソース配線19と配線部51との間や各配線部51の間および配線部51とドレイン配線22との間が抵抗52を介して電気的に接続されている。
【0054】
具体的には、p型領域50のうち最も素子領域8側に位置するp型領域50aに対して接続された配線部51aとソース配線19との間は、第1抵抗52aを介して接続されている。また、配線部51aとp型領域50のうち最も配線引出部9側に位置するp型領域50bに対して接続された配線部51bとの間は、第2抵抗52bを介して接続されている。そして、配線部51bとドレイン配線22との間は、第3抵抗52cを介して接続されている。各抵抗52a〜52cは、例えばソース配線19からドレイン配線22までの距離に応じた抵抗値とされた高抵抗とされており、ドレイン配線22とソース配線19との間に発生する電位差がこれらの間の距離に応じて偏り無く減少していくように設定されている。
【0055】
このような構造とすれば、ドレイン配線22とソース配線19との間に発生する電位差を各p型領域50に分配することができる。これにより、基板横方向での電界分布をより均等化することが可能となり、より耐圧を高めることが可能となる。
【0056】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、配線引出部9の周囲をトレンチ分離部11が囲むような構造としたが、素子領域8と配線引出部9とを囲むトレンチ分離部10内において、素子領域8と配線引出部9との間にトレンチ分離部11が配置される構造であれば良い。例えば、素子領域8がトレンチ分離部11にて囲まれるような構造であっても構わない。ただし、高耐圧MOSFET1の近辺への配線引出部9の高電圧の影響が少なくできるように、トレンチ分離部11にて高電圧となる配線引出部9側を囲んだ構造にするのが好ましい。
【0057】
また、上記第5実施形態では、多重トレンチ構造を構成するトレンチ分離部11を3本形成した場合を例に挙げ、p型領域50が2つ備えられている場合について説明したが、トレンチ分離部11を2本としても良いし、4本以上としても良い。トレンチ分離部11を2本にする場合には、p型領域50は1つとなり、p型領域50とソース配線19との間やp型領域50とドレイン配線22との間が抵抗52を介して接続される構造とすれば、上記第5実施形態に示した効果を得ることができる。
【0058】
また、上記各実施形態では第1導電型をn型、第2導電型をp型とするnチャネルタイプの高耐圧MOSFET1を例に挙げて説明しているが、第1導電型をp型、第2導電型をn型とするpチャネルタイプの高耐圧MOSFETとしても構わない。
【0059】
また、上記各実施形態では、レベルシフト用のトランジスタとして高耐圧MOSFET1を例に挙げたが、電流が縦方向に、つまりn-型ドリフト層7の表裏面を貫通するように流れる縦型MOSFETであれば何でも良く、プレーナ型MOSFET(例えば、特開平11−238742号公報参照)、トレンチゲート構造のMOSFET(例えば、特開2004−266140号公報参照)、コンケーブ構造のMOSFET(例えば、特開平09−293861号公報参照)であっても構わない。勿論、これらの場合にも、nチャネルタイプとpチャネルタイプいずれであっても構わない。
【0060】
さらに、ここでは高耐圧トランジスタの一例として、レベルシフト用の高耐圧MOSFETを例に挙げて説明したが、他の高耐圧トランジスタ、例えばIGBTやバイポーラトランジスタに関しても上記と同様の構造を採用することができる。また、レベルシフト用に限らず、高耐圧トランジスタに関しても、上記と同様の構造を採用することができる。なお、上記各実施形態では、第1配線がソース配線、第2配線がドレイン配線となるような場合について説明したが、IGBTやバイポーラトランジスタの場合には、第1配線がエミッタ配線、第2配線がコレクタ配線となる。
【符号の説明】
【0061】
1 高耐圧トランジスタ
2 活性層
4 埋込絶縁膜
5 SOI基板
6 n+型埋込領域
7 n-型ドリフト層
8 素子領域
9 配線引出部
11 トレンチ分離部
18 層間絶縁膜
19 ソース配線
22 ドレイン配線
30 p+型電界緩和層
40 n+型電界緩和層
50 p型領域
51 配線部
52 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンからなる活性層(2)と支持基板(3)とが埋込絶縁膜(4)を介して接合されたSOI基板(5)を用いて形成され、前記活性層(2)に対して高耐圧トランジスタ(1)が形成された半導体装置であって、
前記SOI基板(5)における前記活性層(2)のうち前記埋込絶縁膜(4)との界面には第1導電型の埋込領域(6)が備えられ、
前記高耐圧トランジスタ(1)は、前記活性層(2)に含まれた第1導電型層(7)を有し、該第1導電型層(7)に互いにトレンチ分離部(11)にて分離された素子領域(8)と配線引出部(9)とを備えた構成とされ、
前記素子領域(8)は、前記第1導電型層(7)の表面側に第1配線(19)を備えていると共に、前記活性層(2)に備えられた前記埋込領域(6)との間において、前記第1導電型層(7)の表裏面を貫通するように電流を流す縦型のトランジスタにて構成され、
前記配線引出部(9)は、前記第1導電型層(7)の表面側に形成された第2配線(22)を有し、前記トレンチ分離部(11)が前記第1導電型層(7)と同じもしくはそれより深くかつ前記埋込絶縁膜(4)から離間して形成されることで、前記埋込領域(6)を通じて前記素子領域(8)と電気的に接続されており、前記第2配線(22)と前記第1導電型層(7)および前記埋込領域(6)を前記素子領域(8)に流す電流の引出し配線としていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記トレンチ分離部(11)により前記配線引出部(9)が囲まれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記素子領域(8)における前記第1導電型層(7)のうち前記配線引出部(9)側において、前記トレンチ分離部(11)に沿って前記第1導電型層(7)の表面から形成された第2導電型電界緩和層(30)が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記素子領域(8)における前記第1導電型層(7)のうち前記配線引出部(9)側において、当該第1導電型層(7)よりも高不純物濃度とされ、前記トレンチ分離部(11)に沿って前記第1導電型層(7)の表面から形成された第1導電型電界緩和層(40)が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記トレンチ分離部(11)は、前記配線引出部(9)を中心として同心状に配置された多重トレンチ構造とされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記活性層(2)のうち前記多重トレンチ構造を構成する前記トレンチ分離部(11)の間に配置された部分には第2導電型領域(50)が備えられており、
前記第1配線と前記第2導電型領域(50)との間および前記第2配線と前記第2導電型領域(50)との間が抵抗(52)を介して接続されていることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−54346(P2012−54346A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194627(P2010−194627)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】