説明

半導体集積回路装置

【課題】DLL回路のリセット時に、より安定して動作させる。
【解決手段】電圧比較回路21は、電源電圧VAAが参照電圧REF以下であれば第1のレベルとなり、電源電圧VAAが参照電圧REFを超えれば第2のレベルとなる比較結果信号を保持回路22に出力する。保持回路22は、比較結果信号が第1のレベルを示す場合には、入力されたリセット信号RSTをそのままDLL回路23に出力し、比較結果信号が第2のレベルを示す場合には、比較結果信号が第1のレベルを示すまでリセット信号RSTを保持してDLL回路23に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置に係り、特に、DLL(Delay Locked Loop)回路あるいはPLL(Phase Locked Loop)回路を備える半導体集積回路装置に係る。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの動作が高速化するに伴い、データの入出力タイミングをシステムクロック信号に同期させる手段としてDLL回路あるいはPLL回路をデバイス内に搭載することが一般化してきた。DDR2−DRAM(Double Data Rate 2−Dynamic Random Access Memory)を例にとると、DLL回路は電源投入時にDLLリセット信号で内部を初期化し、200サイクル以内にシステムクロック信号と内部クロック信号とのエッジを一致させ、出力タイミングをシステムクロック信号に一致させている。
【0003】
図6は、従来のDLL回路の例を示すブロック図である。図6において、DLL回路100は、システムクロック信号CK、CKBの立ち上りエッジ/立ち下りエッジに対してそれぞれ独立に内部のクロック信号の立ち上りエッジ/立ち下りエッジを一致させる一般的な構成である。DLL回路100は、システムクロック信号CK、CKBの立ち上りエッジ/立ち下りエッジにそれぞれ独立にロックアップするように、立ち上りエッジ用/立ち下りエッジ用にそれぞれカウンタ12A、12Bを有している。カウンタ12A、12Bは、それぞれDLL回路内のディレイライン3A、3Bの遅延を決定するために用いられる。カウンタ12A、12Bは、それぞれカウンタ値の下位数ビットをDA変換器13A、13Bへ出力し、それ以外の上位ビットをそれぞれシフトレジスタ15A、15Bへ出力する。DA変換器13A、13Bは、DLL回路100の内部遅延の微調整用に使用され、シフトレジスタ15A、15Bは、DLL回路100の内部遅延の粗調整用に使用される。システムクロック信号CK、CKBのデューティ比が50%であれば、立ち上りエッジ用のシフトレジスタ15Aのカウンタ値と立ち下りエッジ用のシフトレジスタ15Bのカウンタ値とは、ほぼ同じ値を示す。
【0004】
DLL回路100は、リセット信号RSTが入力されると、カウンタ12A、12Bが初期化され、ロックアップシーケンスを開始する。立ち上りエッジ側について説明すると、システムクロック信号CK、CKBは、初段回路2Aに入力され、ディレイライン3Aに信号S1Aを出力する。ディレイライン3Aは、粗調整用のディレイ回路であり、立ち上りエッジ用のシフトレジスタ15Aのカウンタ値で決定される遅延を持った信号S2A、S3Aを後段の位相合成回路4Aに出力する。信号S2A、S3Aは、その遅延長に僅かな差が付けられており、位相合成回路4Aは、この2つの信号S2A、S3AをDA変換器13Aで指定される割合で合成して信号S4Aを出力する。すなわち、位相合成回路4Aは、位相の微調整用として用いられる。
【0005】
立ち下りエッジ側についても同様に、システムクロック信号CK、CKBは、初段回路2Bに入力され、ディレイライン3Bに信号S1Bを出力する。ディレイライン3Bは、立ち下りエッジ用のシフトレジスタ15Bのカウンタ値で決定される遅延を持った信号S2B、S3Bを後段の位相合成回路4Bに出力する。位相合成回路4Bは、この2つの信号S2B、S3BをDA変換器13Bで指定される割合で合成して信号S4Bを出力する。
【0006】
クロック合成回路5は、信号S4Aと信号S4Bとを合成する。バッファ6は、クロック合成回路5で合成された信号S5をバッファリングし、信号S6、S8としてDQ7とダミーDQ8とにそれぞれ出力する。DQ7は、信号D0を外部に出力し、ダミーDQ8は、信号D0と同等の信号S9Aと、その反転した信号S9Bをそれぞれ位相比較回路9A、9Bに出力する。
【0007】
システムクロック信号CKの立ち上り側において、位相比較回路9Aは、システムクロック信号CKとダミーDQ8の出力である信号S9Aとの位相を一致させるためにシステムクロック信号CKと信号S9Aとを位相比較し、システムクロック信号CKの立ち上りエッジを検出するまで、カウンタ12Aのカウンタ値をアップするように制御回路11Aを動作させる。これによって、信号S9Aがシステムクロック信号CKと一致するまで遅らされる。
【0008】
また、立ち下り側でも同様に、位相比較回路9Bは、システムクロック信号CKBとダミーDQ8の出力である信号S9Bとの位相を一致させるためにシステムクロック信号CKBと信号S9Bとを位相比較し、システムクロック信号CKBの立ち上りエッジを検出するまでカウンタ12Bのカウンタ値をアップするように制御回路11Bを動作させる。これによって、信号S9Bがシステムクロック信号CKBと一致するまで遅らされる。以下、立ち上り側について主に述べる。
【0009】
図7は、図6に示した従来のDLL回路の正常動作時のシステムクロック信号CKと信号S9Aの位相関係を示すタイミングチャートである。図7の波形Aは、DLLリセットでカウンタ12Aが初期化された時点でのシステムクロック信号CKからDLL回路固有の遅延によって遅れた信号S9Aの波形を示す。DLL回路100は、システムクロック信号CKのエッジPに信号S9Aの立ち上りエッジが一致するようにカウンタ12Aをアップする。図5の波形Bは、波形Aに対してカウンタ回路12Aのカウンタ値をアップさせた時の信号S9Aの波形である。波形Bでは、未だシステムクロック信号CKの立ち上りエッジPに到達していないのでさらにカウンタ値をアップし、波形Cの状態になる。波形Cの状態では、システムクロック信号CKの立ち上りエッジPを検出したので、カウンタ値をダウンし、再度システムクロック信号CKの立ち上りエッジPを検出するように動作する。そして、最終的に波形Dに示すように、システムクロック信号CKの立ち上りエッジPに信号S9Aの立ち上りエッジが一致する。
【0010】
DLL回路100は、DLLリセット時に以上のように動作して、システムクロック信号CKと内部クロック信号である信号S9Aのエッジを一致させ、信号S9Aの出力タイミングをシステムクロック信号CKに一致させている。また、システムクロック信号CKBと内部クロック信号である信号S9Bのエッジを一致させ、信号S9Bの出力タイミングをシステムクロック信号CKBに一致させている。
【0011】
なお、関連する技術として、特許文献1に起動時の誤動作を防止するCPUリセット回路が記載されている。このCPUリセット回路は、CPUが正常に動作しているかを判別するCPU履歴信号を発生して、CPU履歴信号によってCPUが異常動作した場合にCPUをリセットする。
【0012】
【特許文献1】特開平8−263177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、従来の半導体集積回路装置にはいくつかの問題がある。第1の問題点は、DLLリセットは電源投入直後のパワーオンシーケンス中に実施されるが、DLL用電源のレベルが十分に上昇しきっていない場合にDLLリセットが実行されると、ロックアップシーケンスに不具合が起こる可能性があるということである。
【0014】
また、第2の問題点は、DLLリセット時にDLL回路100の電源が正常なレベルに到達していても、DLL回路100のロックアップシーケンス中に外部回路の動作が原因でDLL回路100に大きなノイズがのると、誤作動が起こる可能性があるということである。この問題が発生する原因は、ノイズ発生時にDLL回路100の電源がノイズの影響で電圧降下している状態でエッジ検出を判定してしまうと、ノイズがなくなったときにDLL回路100がシステムクロック信号CKの本来ロックすべきエッジを見失うことにある。ノイズによるDLL回路100の誤動作は、動作周波数が比較的遅い場合には起こる可能性はほとんど無い。しかし、動作周波数が速くなるにつれてシステムクロック信号のエッジ間の間隔が狭くなるために、ノイズによるDLL回路100の誤動作の可能性は大きくなる。
【0015】
したがって、本発明の目的は、DLL回路のリセット時において、電源変動やノイズなどに対し、より安定して動作するDLL回路を備える半導体集積回路装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記問題点を明らかにするため、本発明者は、半導体集積回路装置におけるタイミングチャートを解析した。図8は、図6に示した従来のDLL回路が、DLLリセットが実行された時点で、DLL用電源が充分に上昇し切れていないことが原因で誤動作するときのタイミングチャートである。DLLリセットが実行された時点において、DLL回路100の電源が充分に上昇していない場合、同じカウンタ値であっても信号S9Aの位置は遅れる。図9の波形Aは、DLLリセット実行後のシステムクロック信号CKと信号S9Aの位置関係を示したものである。DLL回路100の電源が充分なレベルであれば、信号S9Aの立ち上りエッジは、DLL回路に固有の遅延の位置にくる。しかし、DLL回路100の電源レベルが充分ではないために、信号S9Aは固有の遅延の位置より遅れる。DLL回路100は、システムクロック信号CKのエッジPに信号S9Aの立ち上りエッジを一致させようと図6に示すカウンタ回路12Aをアップする。図8の波形Bは、波形Aに対してカウンタ回路12Aのカウンタ値をアップさせた時の信号S9Aの波形である。波形Bの状態ではシステムクロック信号CKの立ち上りエッジPを検出したので、カウンタ値をダウンさせ、再度システムクロック信号CKの立ち上りエッジPを検出するように動作する。波形CにおいてDLL回路100の電源が充分なレベルに到達したとすると、カウンタ値は波形Bの時と同じであっても、DLL回路の電源レベルが上昇した分、信号S9Aの位置は早くなる。DLL回路100は、未だ波形Bの状態であると誤判定し、システムクロック信号のPのエッジを目指しているつもりで、P0のエッジを目指し、カウンタ値をダウンさせ続ける。カウンタ値が最小値まで行った時点で、DLL回路100は、これ以上信号S9Aの位相を早くすることができずに、波形Dに示す所でストップしてしまう。
【0017】
以上のようにDLLリセットはパワーオンシーケンス中に行われるために、DLL回路用の電源が所望の電位まで到達できていないような場合にDLL回路がロックアップシーケンスを開始してしまうと、DLL回路が誤動作してしまい、ロックアップできないという現象が生じてしまう。
【0018】
また、図9は、ノイズが原因で図6に示した従来のDLL回路が誤動作するときのタイミングチャートである。図9の波形Aは、DLLリセット直後の、システムクロック信号CKと信号S9Aの位相関係を示す。DLLリセット実行時にDLL回路100の電源が正常なレベルに到達しているので、信号S9Aの立ち上りエッジは、DLL回路100の固有の遅延に一致する。DLL回路100は、システムクロック信号CKのエッジPに信号S9Aの立ち上りエッジを一致するように図6のカウンタ12Aをアップさせる。図9の波形Bは、波形Aに対してカウンタ12Aのカウンタ値をアップした時の信号S9の波形である。波形Bの状態になったところでDLL回路にノイズがのると、カウンタ値が同じであってもノイズによる電圧降下によって信号S9Aの位相は遅れてしまう。このときの波形を図9のCに示す。波形CではノイズによってDLL回路の電源が低下することで波形Bの時と同じカウンタ値であっても、信号S9Aの位相は波形Bより遅くなる。このとき、波形Cのように信号S9Aの立ち上りエッジがPを検出してしまうと、DLL回路100はカウンタ値をダウンし、システムクロック信号CKの立ち上りエッジPを検出するように動作する。この後、ノイズが無くなり、DLL回路100の電源が正常なレベルに戻ると、信号S9Aの位相は速くなる(図9の波形D)。波形Dのように信号S9Aの位置がシステムクロック信号CKのH期間にあたってしまうと、DLL回路100はエッジP0をエッジPと勘違いしてエッジP0に向かって信号S9Aの立ち上りエッジを移動させてしまう。このように、システムクロック信号CKの立ち上りエッジにロックする方の回路だけが誤動作した場合、信号S6の波形は、図9に示すように、デューティがずれた波形になってしまう。
【0019】
本発明の1つのアスペクトに係る半導体集積回路装置は、DLL回路と、DLL回路の電源電圧と参照電圧とを比較する電圧比較回路と、DLL回路のリセット信号が入力された際にDLL回路の電源電圧が参照電圧以下であれば、DLL回路の電源電圧が参照電圧を超えるまでリセット信号を保持してDLL回路に与える保持回路と、を備える。
【0020】
本発明の第1の展開形態において、電圧比較回路は、電源電圧が参照電圧以下であれば第1のレベルとなり、電源電圧が参照電圧を超えれば第2のレベルとなる比較結果信号を保持回路に出力し、保持回路は、比較結果信号が第2のレベルを示す場合には、リセット信号をそのままDLL回路に出力し、比較結果信号が第1のレベルを示す場合には、比較結果信号が第2のレベルを示すまでリセット信号を保持してDLL回路に出力するようにしてもよい。
【0021】
本発明の第2の展開形態において、保持回路は、リセット信号を入力する入力端子と、DLL回路に接続される出力端子と、入力端子と出力端子間を接続する第1のスイッチ回路と、リセット信号を保持するラッチ回路と、ラッチ回路の出力端と出力端子間を接続し、第1のスイッチ回路と逆の開閉動作を行う第2のスイッチ回路と、を備え、比較結果信号が、第2のレベルを示す場合には、第1のスイッチ回路を閉じ、第1のレベルを示す場合には、第2のスイッチ回路を閉じるようにしてもよい。
【0022】
本発明の他のアスペクトに係る半導体集積回路装置は、システムクロック信号の立ち上りエッジと立ち下りエッジとに内部クロック信号の立ち上りエッジと立ち下りエッジとをそれぞれ一致させるように動作するDLL回路を備える半導体集積回路装置であって、DLL回路のリセット時からのシステムクロック信号のパルス数をカウントするクロック計数回路と、クロック計数回路が所定のパルス数をカウントした時点で、立ち上りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値と立ち下りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値との差が予め設定した値以上であるか否かを判定する判定回路と、カウンタ値の差が予め設定した値以上である場合に、DLL回路のリセットを再発行するDLL再リセット回路と、を備える。
【0023】
本発明の第3の展開形態において、判定回路は、立ち上りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値と立ち下りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値とにおける所定のビット位置同士の値の一致不一致を判定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、DLLリセット信号を保持又は再発行することにより、DLL回路のロックアップを確実に行い、電源変動やノイズなどに対して、リセット時の動作をより安定させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成を示すブロック図である。図1において、半導体集積回路装置は、電位比較回路21、保持回路22、DLL回路23を備える。電位比較回路21は、DLL用の電源電位VAAと比較用のリファレンス電位REFとを入力し、VAAのレベルがREFより高い場合に信号CPOをHレベルとして保持回路22に出力する。保持回路22は、電位比較回路21の判定結果である信号CPOとリセット信号RSTとを入力し、セット信号RSTが入力された時点で、信号CPOがLであれば、信号CPOがHになるまでリセット信号RSTの幅を広げ、DLL回路23に対して拡張されたリセット信号(拡張DLLリセット信号)RST1を出力する。
【0026】
図2は、保持回路22の例を示す回路図である。電圧比較回路21の判定結果である信号CPOがHである場合、すなわち、電源電位VAAが通常の電位である場合、信号CPOで駆動されるトランスファゲートTG1が短絡され、信号CPOをインバータ回路INV1で反転した信号で駆動されるトランスファゲートTG2、TG3が開放される。したがって、リセット信号RSTは、そのままリセット信号RST1として出力される。一方、電源電位VAAが基準値に達しておらず、信号CPOがLである場合にはトランスファゲートTG1が開放され、トランスファゲートTG2、TG3が短絡される。したがって、リセット信号RSTによってセットされた、NOR回路NOR1、NOR2、NOR3で構成されるR−Sフリップフロップの出力がリセット信号RST1として出力される。
【0027】
図3は、拡張されたリセット信号が出力される場合のタイミングチャートである。リセット信号RSTが入力された時点t0で、信号CPOがL、すなわち電源電位VAAがリファレンス電位REFより低い場合に、リセット信号RST1を発生させ、電源電位VAAがリファレンス電位REF以上となる時点t1までリセット信号RST1をHレベルに保つ。
【0028】
以上のような構成の半導体集積回路装置は、DLL用の電源電位VAAが基準値まで上昇していない状態でリセット信号RSTを受け取った場合、リセット信号RSTの幅をDLL回路23の電源電位が基準値に達するまでリセット信号RST1として保持する。これにより電源投入時に実行されるDLLリセットを適切な回路状態で行い、DLL回路23の内部状態が安定した状態でDLL回路23が初期化されるので、ロックアップシーケスをより確実に行って電源変動やノイズなどに対して、リセット時の動作をより安定させることが可能となる。
【0029】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成を示すブロック図である。図4において、図6と同一の符号は同一物を示し、その説明を省略する。図4に示す半導体集積回路装置は、図6のDLL回路100に対し、クロック計数回路30、判定回路31、DLL再リセット回路32をさらに備える。クロック計数回路30は、システムクロック信号CKとリセット信号RSTを入力し、リセット信号RSTの入力後におけるシステムクロック信号CKのクロック数をカウントし、所定数、例えば200サイクルをカウントしたならば、信号S20を出力する。判定回路31は、信号S20とDLL回路内の2つのシフトレジスタ15A、15Bのそれぞれのカウンタ値とを入力して判定結果となる信号S21をDLL再リセット回路32に出力する。すなわち、シフトレジスタ15A、15Bのカウンタ値同士が所定以上の差を有する場合に、DLL再リセット回路32に対して再リセットを行わせる。DLL再リセット回路32は、信号S21が入力されると、DLL回路を再リセットするための信号RST2を出力する。信号RST2は、再リセット動作を行うためのリセット信号RSTとしてカウンタ12A、12Bに入力される。
【0030】
このような構成において、DLL回路の誤動作によって立ち上り側もしくは立ち下り側のみ本来ロックすべきシステムクロック信号のエッジを間違えた場合、シフトレジスタ15Aとシフトレジスタ15Bとにそれぞれ保持するデータに差が出てくる。DDR2−DRAMを例にするならば、DLL回路は、200サイクル以内にロックアップを完了する必要がある。従って、判定回路31は、DLL回路のリセット後、200サイクル経ってからシフトレジスタ15Aとシフトレジスタ15Bのカウンタ値同士を比較し、その差が基準値以上離れていれば、DLL回路の再リセットを要求する信号S21をDLL再リセット回路32に出力するようにする。このように、DLL回路がシステムクロック信号の所望のエッジではないエッジに誤ってロックした場合には、もう一度ロックアップシーケンスをやり直すことが可能となる。
【0031】
図5は、判定回路31の具体的な例を示す回路図である。判定回路31は、シフトレジスタ15A、15Bのカウンタ値の比較において、全てのビットを比較するのではなく、図5に示すように基準となるビットを排他的論理和(Exclusive OR)演算によって一致/不一致を判定する。図5に示す例では、立ち上り用/立ち下り用それぞれのシフトレジスタにおいて4ビット以上差がある場合に誤ロックしていると判定し、Hレベルを次段のDLL再リセット回路32へ出力する。すなわち、シフトレジスタ回路15A、15Bのビット12同士およびビット16同士をそれぞれ否定付排他的論理和回路EXNOR1、EXNOR2で比較し、NOR回路NOR4でどちらかのビットが一致すれば正しくロックアップしていると判定する。NOR回路NOR4でどちらも不一致のときのみ、再リセットを要求するために、信号S20でオンとなったトランスファゲートTG4を介してDLL再リセット回路32に信号S21を出力する。
【0032】
以上のような構成の回路によれば、電源投入直後の内部が比較的不安定な時に実行されるDLLリセットをDLL回路の電源が確実に安定した時点までDLLリセットを拡張するので、ロックアップシーケンスが開始されてからは内部クロック信号の遅延が安定し、システムクロック信号との位相比較が正確に行えるために位相判定時に誤動作を起こすことが無くなる。
【0033】
なお、上記のような処理を行うと、DLL再リセットを実行しなければならない場合に200サイクル以内でロックアップはできなくなるが、もともと不良のサンプルが正常に動作できるようになるメリットがある。また、実使用ではパワーオンシーケンスからどんなに早くても1ms(533MHz動作時に26万サイクル相当)程度はREADコマンドが投入されないということを考慮すると、本発明のメリットは大きい。
【0034】
なお、以上の第1および第2の実施形態ではDLL回路について説明したが、DLL回路をPLL回路に置き換えても同様に適用可能である。
【0035】
以上本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の各請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、高速動作時に入出力タイミングをシステムクロック信号に同期させるDLL回路を搭載したDRAMメモリ等の半導体デバイスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成を示すブロック図である。
【図2】保持回路の例を示す回路図である。
【図3】拡張されたリセット信号が出力される場合のタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路装置の構成を示すブロック図である。
【図5】判定回路の具体的な例を示す回路図である。
【図6】従来のDLL回路の例を示すブロック図である。
【図7】従来のDLL回路の正常動作時のシステムクロック信号CKと信号S9Aの位相関係を示すタイミングチャートである。
【図8】従来のDLL回路が、DLLリセットが実行された時点で、DLL用電源が充分に上昇し切れていないことが原因で誤動作するときのタイミングチャートである。
【図9】ノイズが原因で従来のDLL回路が誤動作するときのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0038】
2A、2B 初段回路
3A、3B ディレイライン
4A、4B 位相合成回路
5 クロック合成回路
6 バッファ
7 DQ
8 ダミーDQ
9A、9B 位相比較回路
11A、11B 制御回路
12A、12B カウンタ
13A、13B DA変換器
15A、15B シフトレジスタ
21 電位比較回路
22 保持回路
23 DLL回路
30 クロック計数回路
31 判定回路
32 DLL再リセット回路
EXNOR1、EXNOR2 否定付排他的論理和回路
INV1、INV2、INV3、INV4 インバータ回路
NOR1、NOR2、NOR3、NOR4 NOR回路
TG1、TG2、TG3、TG4 トランスファゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DLL回路と、
前記DLL回路の電源電圧と参照電圧とを比較する電圧比較回路と、
前記DLL回路のリセット信号が入力された際に前記DLL回路の電源電圧が前記参照電圧以下であれば、前記DLL回路の電源電圧が前記参照電圧を超えるまで前記リセット信号を保持して前記DLL回路に与える保持回路と、
を備えることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記電圧比較回路は、前記電源電圧が前記参照電圧以下であれば第1のレベルとなり、前記電源電圧が前記参照電圧を超えれば第2のレベルとなる比較結果信号を前記保持回路に出力し、
前記保持回路は、前記比較結果信号が前記第2のレベルを示す場合には、前記リセット信号をそのまま前記DLL回路に出力し、前記比較結果信号が前記第1のレベルを示す場合には、前記比較結果信号が前記第2のレベルを示すまで前記リセット信号を保持して前記DLL回路に出力することを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
前記保持回路は、
前記リセット信号を入力する入力端子と、
前記DLL回路に接続される出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子間を接続する第1のスイッチ回路と、
前記リセット信号を保持するラッチ回路と、
前記ラッチ回路の出力端と前記出力端子間を接続し、前記第1のスイッチ回路と逆の開閉動作を行う第2のスイッチ回路と、
を備え、
前記比較結果信号が、前記第2のレベルを示す場合には、前記第1のスイッチ回路を閉じ、前記第1のレベルを示す場合には、前記第2のスイッチ回路を閉じることを特徴とする請求項2記載の半導体集積回路装置。
【請求項4】
システムクロック信号の立ち上りエッジと立ち下りエッジとに内部クロック信号の立ち上りエッジと立ち下りエッジとをそれぞれ一致させるように動作するDLL回路を備える半導体集積回路装置であって、
DLL回路のリセット時からのシステムクロック信号のパルス数をカウントするクロック計数回路と、
前記クロック計数回路が所定のパルス数をカウントした時点で、立ち上りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値と立ち下りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値との差が予め設定した値以上であるか否かを判定する判定回路と、
前記カウンタ値の差が予め設定した値以上である場合に、前記DLL回路のリセットを再発行するDLL再リセット回路と、
を備えることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
前記判定回路は、前記立ち上りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値と前記立ち下りエッジ用シフトレジスタ回路のカウンタ値とにおける所定のビット位置同士の値の一致不一致を判定することを特徴とする請求項4記載の半導体集積回路装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一に記載の半導体集積回路装置において、前記DLL回路の代わりに、PLL回路とすることを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−324703(P2007−324703A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149904(P2006−149904)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】