説明

単一光子カウンタのための高度な温度報償及び制御回路

PETスキャナ(10)は、イメージング範囲(18)を取り囲む検出器モジュール(16)のリングを有する。各検出器モジュールは、ガイガーモードでブレイクダウン領域においてバイアスをかけられる1又はそれ以上のセンサ・アバランシェ・フォトダイオード(APD)(34)を有する。センサAPD(34)は、入射光子に対応するシンチレーターからの光に応答してパルスを出力する。同じくガイガーモードでブレイクダウン領域においてバイアスをかけられている基準APD(36)は、任意に、光を遮られ、アナログ−デジタル・コンバータ(44)によって測定される電圧を出力する。測定に基づき、バイアス制御フィードバックループ(42)は、ブレイクダウンパルス(68)の電圧と予め選択された論理電圧レベル(70)との間の差が最小とされるように、可変電圧発生器(48)にAPD(34,36)へ印加されるバイアス電圧を調整するよう指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、画像診断技術に関する。それは、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)イメージャ、ポジトロン放出断層撮影(PET)イメージャ、平面x線イメージャ、等の、放射線透過又は放射性医薬品を用いる核医学画像のための放射線検出器に関連して特定の用途を見出し、具体的に該用途を参照して記載される。また、当然に、本発明は、他の放射線イメージング・モダリティへ、更に、天文学及び空港荷物検査等の放射線検出器を用いるシステム及び方法においても適用可能である。
【背景技術】
【0002】
SPECTにおいて、放射性医薬品が撮像対象に投与され、1又はそれ以上の放射線検出器(一般にガンマカメラと呼ばれる。)が、放射性崩壊イベントによって引き起こされる放射線放出を介して放射性医薬品を検出するために使用される。通常、各ガンマカメラは、放射線検出器アレイと、該放射線検出器アレイの前に配置されるハニカム・コリメータとを有する。ハニカム・コリメータは、検出される放射線が投影データを有するように、線形又は小角円錐状の視野方向を定義する。ガンマカメラが角度ビューの範囲にわたって、例えば、180度又は360度の角度範囲にわたって動かされる場合、得られる投影データは、フィルタ逆投影、期待値最大化、又は他のイメージング技術を用いて、撮像対象における放射性医薬品分布の画像へと再構成され得る。有利に、放射性医薬品は、選択される組織の選択的画像を提供するために、それらの選択される組織において凝縮するよう設計されてよい。
【0003】
PETにおいて、放射性医薬品が撮像対象に投与され、放射性医薬品の放射性崩壊イベントはポジトロンを発生する。各ポジトロンは、2つの逆方向性のガンマ線を放射する物質/反物質消滅イベントを引き起こすよう電子と相互作用する。コインシデンス検出回路を用いると、撮像対象を囲む放射線検出器のアレイは、ポジトロン−電子消滅に対応する同時の逆方向性ガンマ線イベントを検出する。2つの同時検出を結び付ける応答線(LOR(line of response))は、ポジトロン−電子消滅イベントの位置を含む。かかる応答線は、投影データと相似し、2又は3次元画像を生成するよう再構成されてよい。飛行時間PET(TOF−PET)において、2つの同時γ線イベントの検出間のわずかの時間差が、LORに沿って消滅イベントの場所を見つけ出すために使用される。
【0004】
平面x線イメージングにおいて、放射線源は対象に照射し、対象の反対側に配置される放射線検出器アレイは透過した放射線を検出する。撮像対象における組織による放射線の減衰に起因して、検出される放射線は、撮像対象内の骨又は他の硬い放射線吸収構造体の2次元平面表現を提供する。このような透過に基づくイメージングは、コンピュータ断層撮影(CT)イメージングにおいて改良されてきている。CTイメージングでは、放射線源は、拡大された角度範囲にわたって、例えば、180度又は360度の範囲の角度ビューにわたって透過ビュー又は投影データを提供するよう、撮像対象を中心に回転される。フィルタ逆投影又は他の画像再構成技術を用いると、この放射線投影データは2又は3次元画像表現へと再構成される。
【0005】
SPECT、PET及び他の放射線に基づく医学画像は、小型且つ頑強な放射線検出器モジュールの共通の必要性を共有している。従来、SPECT及びPET放射線検出器モジュールは、一般的に、任意にシンチレーター水晶と結合された光電子増倍管のアレイで構成されている。シンチレーター水晶は、放射粒子を吸収し、それを、光電子増倍管によって測定される光バーストに変換する。光電子増倍管は、高い検出及び利得(〜10)特性を提供するが、それらは大きく且つ脆弱であり、高い電圧を必要とし、磁界に極めて敏感である。幾つかの放射線検出システムでは、光電子増倍管は、光バーストの強さに比例するアナログ信号を生成するフォトダイオードによって置換されている。フォトダイオードは、高い光の状況においては、費用効率が高く且つ低電圧の、光電子増倍管に代わるものを提供するが、それらは、低い光(低いガンマ線束)の検知用途においては適切な利得を提供せず、信号対雑音比を悪化させる。
【0006】
このような課題に対処すべく、シリコン光電子増倍管(SiPM)検出器が開発されており、フォトダイオードの費用効率が高く且つ低電圧であるという性質とともに、光電子増倍管の高い利得及び安定性を組み込む。SiPM検出器は、任意に対応するシンチレーター水晶へ夫々結合されている小さなアバランシェ・フォトダイオード(APD)のアレイを用いる。APDは、ブレイクダウン領域においてバイアスをかけられる。この領域では、APDは、入射光子によって引き起こされる単一キャリアに反応的になる。そのようなキャリア、電子及び/又は空孔は、また、熱的に生成されて、雑音を引き起こすダークカウントを引き起こしうる。電子及び空孔は両方とも、ダイオードのブレイクダウンを開始して、強い出力信号を作ることができる。アナログSiPMにおいて、出力信号は、多数の受動的にクエンチされるダイオードの累積的な電荷から成る。対照的に、デジタルSiPMは、論理ゲートによってデジタル化されて、APDの近くに配置されるデジタルカウンタによってカウントされる電圧パルスに基づいて、個別にブレイクダウンイベントを検出する。
【0007】
デジタル・ガイガーモードにおいて、APDは、対応するシンチレーター水晶における放射イベントからの光の光子に応答してブレイクダウンし、出力パルスを生成する。バイナリ1として機能する出力パルスは、対応するシンチレーターで起こる放射イベントによって生成される光子の数を決定するようカウントされる。この光子カウントは、検出される放射イベントのエネルギに対応する。
【0008】
個別の光子イベントに反応する一方、各APDのブレイクダウン電圧は、磁界及び温度等の様々な周囲要因によって影響を及ぼされる。ブレイクダウン電圧のドリフトは、過電圧の対応する電荷を生じさせる。光子検出は、(1)過電圧がデバイス内部の磁界強さを決定して、光子検出の確率のドリフトをもたらし、且つ、(2)ブレイクダウンの間に生成される電荷パルスがダイオードキャパシタンス及び過電圧の積に比例するので、過電圧の変化によって影響を及ぼされる。測定される電荷信号として検出される光子をカウントするアナログSiPMは、両方の要因によって影響を及ぼされ、周囲条件に極めて反応的になる。暗電流比(DCR)は、およそ8℃ごとに倍になる。センサのDCRを低減し且つAPDのばらつきによる誤差を回避するよう、冷却が役に立つが、冷却を用いてさえ、温度の変動は起こりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、上記の問題及び他を解消する、新しく且つ改善された放射性画像検出器装置及び方法について検討する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様に従って、放射線検出器モジュールが提供される。複数の検出器ピクセルは、夫々、ガイガーモードにおいて動作する少なくとも1つのセンサフォトダイオードへ任意に結合されるシンチレーターを有する。少なくとも1つの基準フォトダイオードは、光を遮られ、前記少なくとも1つのセンサフォトダイオードと同じ条件下でガイガーモードにおいて動作する。当該モジュールは制御回路を有し、該制御回路は、前記基準フォトダイオードの両端のブレイクダウン電圧を測定し、前記少なくとも1つの基準フォトダイオード及び前記少なくとも1つのセンサフォトダイオードにかかるバイアス電圧を調整する。これは、前記少なくとも1つの基準フォトダイオードによって生成される暗電流パルスを、特性論理電圧レベルと略等しくする。
【0011】
他の態様に従って、放射線検出器アレイの一部の検出感度におけるドリフトを補償する方法が提供される。バイアス電圧は、複数のセンサフォトダイオード及び並列接続された基準フォトダイオードへ印加される。前記基準フォトダイオードは、不透明な覆いによりカバーされ、関連するシンチレーターからの光を受けないようにされる。前記バイアス電圧は、単一光子に反応するようそれらのフォトダイオードをガイガーモードへとバイアスする。前記基準フォトダイオードのブレイクダウンの後に、該基準フォトダイオードのブレイクダウン電圧が測定される。前記基準フォトダイオードからのデジタル化されたパルスの値と論理電圧レベルとの間の差が決定される。前記バイアス電圧は、前記差を最小化するよう調整される。
【発明の効果】
【0012】
1つの利点は、ガイガーモードにおいて動作するアバランシェ・フォトダイオードのための改善されたブレイクダウン電圧制御にある。
【0013】
他の利点は、フォトダイオードの検出感度に影響を及ぼす複数の周囲要因を補償することにある。
【0014】
他の利点は、アナログ又はデジタルシステムのいずれかにおいて使用される柔軟性にある。
【0015】
他の利点は、システム性能に妥協することなく、温度安定性に対する要件を緩和するシステム製造者の自由にある。
【0016】
更なる他の利点は、以下の詳細な記載を読んで理解することで当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願に従う放射性画像スキャナの概略図である。
【図2】本願に従う検出器モジュールの断面図を表す。
【図3】バイアス制御及び温度制御フィードバックループを表すフロー図である。
【図4】図3のフィードバックループを実現するために用いられる特定の回路構成要素を示す。
【図5】正確なバイアス電圧を有する図3及び図4の回路の1サイクルを表す波形を示す。
【図6】過度に高いバイアス電圧を有する図3及び図4の回路の1サイクルを表す波形を示す。
【図7】過度に低いバイアス電圧を有する図3及び図4の回路の1サイクルを表す波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願は、様々な構成要素及びそれらの配置において、並びに、様々なステップ及びそれらの配置において、具体化してよい。図面は、好ましい実施形態を例示するためだけのものであり、本発明を限定するよう解されるべきではない。
【0019】
図1を参照して、画像診断装置10は、筐体12及び対象支持体14を有する。筐体12内には、検出器アレイが囲まれている。検出器アレイは、複数の個別の検出器モジュール16を有する。アレイは、数百又は数千の放射線検出器モジュール16を有してよい。1つの具体的な実施形態はポジトロン放出断層撮影(PET)スキャナを参照して記載されるが、当然に、本願は、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)等の他の医療用途、並びにx線天体物理学、ガンマ線望遠鏡、x線写真、セキュリティ、及び産業用途においても有用である。概して、本願は、高エネルギ及び空間分解能を備えたx線、ガンマ線、又は帯電粒子のイメージングにおける使用を見出す。アレイは、検出器素子16がイメージング範囲18に隣接して、イメージング範囲18から放射線を受けるよう方向付けられて配列されるように配置される。これは、検出器アレイが、支持体上で対象を再配置する必要なしに、多面的に対象に反応することを可能にする。検出器アレイは、検出器16のリング、複数のリング、1又はそれ以上の分離した平らな若しくは弧状のパネル等であってよい。
【0020】
PETにおいて、ガンマ線の対は、イメージング範囲におけるポジトロン崩壊イベント及び略反対の方向における移動によって生成される。かかるイベントは、82Rbの原子核崩壊から生じうる。それらのガンマ線は、1つのガンマ線が他よりも検出器に到達するために更に移動する場合に、検出間でわずかの時間差(ナノ秒又はその端数のオーダー)を有する対として検出される。従って、PETスキャナにおいては、検出器アレイは、通常、イメージング範囲を取り囲む。
【0021】
PETスキャンが始まる前に、対象は放射性医薬品を投与される。1つの一般的な例では、放射性医薬品は、例えば、タグ分子と結合される82Rb等の放射性元素を含む。タグ分子は、画像化されるべき範囲と関連付けられ、身体プロセスを通ってそこに集まる傾向がある。例えば、急速に増殖するガン細胞は、自身を複製するのに異常に高いエネルギ量を消費する傾向がある。放射性医薬品は、細胞が通常はエネルギを作り出すよう新陳代謝するグルコース等の分子と結び付けられてよく、そのような領域において集まって画像における「ホットスポット(hot spot)」として出現する。かかるタグは、また、心臓が比較的多くのエネルギを消費するので、心臓かん流イメージングにおいても有用である。他の技術は、循環系を流れるタグ付き分子をモニタする。そのような技術では、身体の組織によって直ぐに吸収されない分子にタグを付けることが有用である。
【0022】
ガンマ線が検出器アレイに突き当たる場合、時間信号が生成される。トリガプロセッサ20は、エネルギスパイク、例えば、放射性医薬品によって生成されるガンマ線のエネルギのパルス特性の下の積分される面積に関し、各検出器16をモニタする。トリガプロセッサ20は、クロック22を確認し、夫々の検出されたガンマ線に、立ち上がり受取スタンプの時間により印を付ける。時間スタンプ、エネルギ推定及び位置推定は、最初に、イベント確認プロセッサ24によって使用され、イベントデータが有効であるかどうか、例えば、イベントの対が同時であるかどうか、適切なエネルギを有しているかどうか等が決定される。認められた対は応答線(LOR(line of response))を定義する。ガンマ線は光速で移動するので、検出されるガンマ線が数ナノ秒よりも離れて到着する場合、それらは、同じ崩壊イベントによって生成されておらず、通常は捨てられる。タイミングは、略同時のコインシデンス・イベントにおけるわずかの差が、更にLORに沿って崩壊イベントの位置を見つけ出すために使用されるので、特に、飛行時間PET(TOF−PET)において重要である。イベントの時間分解能がより正確になると、イベントがそのLORに沿って位置付けられる精度も高くなる。
【0023】
LORは、イベント記憶バッファ26に記憶されている。一実施形態で、LORはリストモード形式において記憶される。すなわち、イベントは、周期的に挿入される時間インジケータを有して時間的順序で記憶される。代替的に、イベントは個別的に時間スタンプを付されてよい。再構成プロセッサ28は、LORの全て又は一部を、フィルタ逆投影又は他の適切な再構成アルゴリズムを用いて、対象の画像表現へと再構成する。次いで、再構成は、表示装置30でユーザに対して表示され、印刷され、あるいは、後の使用のためにセーブされてよい。
【0024】
各検出器モジュール16は、一実施形態において、複数のフォトダイオードを有する。ガイガーモードにおいてフォトダイオードを動作させる間、逆バイアス電圧が印加され、フォトダイオードは、任意にフォトダイオードへ結合される関連するシンチレーター水晶によって生成される光の単光子に反応することを可能にされる。シンチレーターは、シンチレーター・バーストの急速な時間減衰を有する放射線に高い停止力を提供するよう、選択される。幾つかの適切なシンチレーター材料には、LSO、LYSO、MLS、LGSO、LaBr、CsI(Ti)及びそれらの混合がある。バイアス電圧が印加され、それにより、フォトダイオードは、シンチレーションされた光子が突き当たった場合にアバランシェ電流を生成し、アバランシェ・フォトダイオードとも呼ばれる。最適なバイアス電圧は、温度、圧力、周囲光、等の複数の要因に反応する。バイアス電圧制御回路32は、検出器モジュール16をモニタし、印加されるバイアス電圧を、条件が指示するように調整する。
【0025】
図2を参照して、ピクセル化された検出器モジュール16は、少なくとも1つのセンサAPD34、より具体的に、任意にシンチレーター水晶35へ結合されるAPD34のアレイを夫々有する1又はそれ以上のSiPMを有する。更に、各モジュール16は、基準APD等の少なくとも1つの基準検出器36を有する。基準APD36は、基準APD36に光(周囲光又はシンチレーション・バースト)が到達することを防ぐよう、金属キャップ等の不透明な囲いにより覆われている。基準APD36は、受光はさておき、同じ環境において動作するセンサAPD34及び基準APD36を有することが望まれる場合に、センサAPD34の間に配置される。表される実施形態では、センサAPD34及び基準APD36は共通の基板38に形成されている。
【0026】
デジタル回路層40は、センサフォトダイオード34及び基準フォトダイオード36へ電子的に接続されている。デジタル回路層40は、放射線検出器モジュール識別、ピクセル識別、時間スタンプ、及び光子カウント等の光子検出特有の情報を収集し出力する回路を有する。また、デジタル回路は、デジタルバイアス回路、デジタルトリガ回路、及びリードアウト回路を有してもよい。バイアス制御回路32は、デジタル回路層40に配置されてよい。代替的に、バイアス制御回路32は、別個のチップ又はダイに配置されてよい。
【0027】
ここで、図3を参照して、バイアス制御回路32は、第1のバイアス制御フィードバックループ42を有する。光により生成される電子−空孔対を検出する代わりに、基準APD36は、熱的に生成される電子−空孔対又は暗電流を検出する。熱的に生成される電子−空孔対は、半導体内の発生〜再結合工程によって生成され、シンチレーションされた光子がないときにアバランシェ電流をトリガして、システム内で雑音を生じさせうる。APD34、36の両端のバイアス電圧は、周囲環境に応じてAPD34、36の感度を変更するよう調整され得る。
【0028】
基準APD36がブレイクダウンするとき、アナログ−デジタル・コンバータ(ADC)44は、得られたアノード電圧を、ブレイクダウン電圧に相当するデジタル値に変換する。ADコンバータ44は、アバランシェ電流がダイオードを通って減衰した後に、アノード電圧を変換する(ブレイクダウンの間、ダイオードの外を流れる電流はない。)。ダイオード内の電流がダイオードキャパシタンスを放電して、アノードでの電圧降下を生じさせる(カソードは固定電圧レベルに固定され、一方、アノードはリセットトランジスタをオープンしたままとすることによって浮いたままである。)。内部電流は、ダイオードにかかる電圧がブレイクダウン電圧に達して、その電圧を下回ると流れるのを止め、増倍は起こらず、従って、ほとんどの電流が停止し、わずかな漏れ電流のみがダイオードを放電し続ける。信号はデジタル−アナログ・コンバータ(DAC)46によって処理されてアナログ信号に逆変換され、センサAPD34及び基準APD36に逆バイアスをかける可変電圧源48を調整するために使用される。光子ごとに10のオーダーの電子であるアバランシェ電流は、ダイオードにかかる電圧がブレイクダウン電圧に達するまで流れ続ける。これが起こる時間は、通常、過電圧、ダイオードキャパシタンス及び内部抵抗に依存して200〜300psである。その後に、電流は流れず、アノード電圧はブレイク電圧を反映する。この定常状態アノード電圧はADコンバータ44によって測定され、バイアス電圧は、アノード電圧が論理レベルに等しくなるように調整される。再充電トランジスタ50は、次の測定サイクルのためにダイオードを再びブレイクダウン電圧を上回って充電するために使用される。その再充電パルスは約10〜15nsの長さであり、一方、次の放電までの時間はミリ秒範囲にあってよい。バイアス制御ループ42については、図4を参照して、以下でより詳細に論じられる。
【0029】
引き続き図3を参照して、第2の温度制御ループ52が表されている。ADC44からのデジタルパルスは、所定の時間期間内に暗パルスカウンタ54によってカウントされる。代替的に、暗パルスカウンタ54は、再充電回路50の動作を検出しカウントしてよい。暗パルスカウンタ54は、暗カウントレートを表すデジタル値を出力する。温度は暗カウントレートに比例するので、ドライバ56は、APD34、36の動作温度を速やかに微調整するようペルチェ(Peltier)冷却要素等の1次温度制御要素58を駆動するために暗カウントレートを用いる。2次冷却要素60は、水、空気、又は他の冷却剤を用いてよく、システムから熱を取り除くために使用されてよい。温度変化を制限することは、光子ごとに同じカウント数を常に得るために温度の変化を制限するために望ましい。
【0030】
図4を参照して、基準APD36は、可変電圧源48により逆バイアスをかけられる。アノードはトランジスタ62へ接続されており、トランジスタ62は、基準APD36を基準APD36のブレイクダウン電圧を上回る選択された電圧に再充電するために使用される。これは、サンプリング及び再充電回路64によりトランジスタ62のゲートへ短パルスを印加して、トランジスタ62が導通することを可能にすることによって行われる。一実施形態において、トランジスタ62はNMOSトランジスタである。この再充電の後、基準APD36は、キャリアに反応的であるままであるとされ、結果としてブレイクダウンする。図5を参照し、更に、引き続き図4を参照して、ブレイクダウンの間、ノード66での電圧は、零からモジュール16の電流動作条件によって決定づけられる電圧へと急速に増大し、電圧パルス68を形成する。この電圧は、可能な限り論理電圧レベル70に近いことが望ましい。電圧パルス68はインバータ72によって検知され、インバータ72は、信号をデジタル化してサンプリング及び再充電回路64並びに暗レートカウンタ54へ送る。サンプリング及び再充電回路64は、ブレイクダウンした基準APD36にかかるパルス68の後の実際の電圧を測定するようADC44を起動する。測定が完了すると、測定はフィルタ73でフィルタ処理され、バイアス電圧制御フィードバックループ42へ送られる。より具体的には、バイアス電圧コントローラ75は、以下でより詳細に記載されるように、可変電圧源48の電圧出力を制御する。更に、サンプリング及び再充電回路64は、基準APD36を再充電してリセットするパルス74を印加し、それにより、基準APD36はもう一度キャリアに反応的となる。基準ダイオード36がブレイクダウンしている間、ノード76での電圧は、波形78によって示されるように、零に下がる。
【0031】
電圧パルス68が論理電圧レベル70に等しい場合、バイアス電圧80は狙い通りである。従って、バイアス制御フードバックループ42によって生成されるバイアス電圧制御信号82は正確であり、すなわち、論理電圧レベル70の半分である。バイアス電圧80が狙い通りである場合、補正は必要とされない。
【0032】
図6は、バイアス電圧80が高すぎて補正される状況を表す。そのような状況は、例えば、より低い周囲温度によって生じるAPD34、36のブレイクダウン電圧84におけるシフトによって引き起こされうる。この場合に、ADC44によって測定される電圧(すなわち、パルス68の電圧)は、差86だけ論理電圧レベル70を超える。この状況において、バイアス制御フィードバックループ42は、可変電圧源48にバイアス電圧80を下げるよう指示し、電圧パルス68と論理電圧レベル70との間の差86を最小化する。図5の前の例において見られるように、サンプリング及び再充電回路64は、基準APD36をリセットするパルス74を印加する。
【0033】
同様に、図7は、バイアス電圧80が低すぎる状況を表す。このような状況は、より高い周囲温度によって引き起こされうる。この場合に、ADC44によって測定される電圧(すなわち、パルス68の電圧)は、差86だけ論理電圧レベル70よりも低い。差86は、この場合に、負の値である。この状況において、バイアス制御フィードバックループ42は、可変電圧源48にバイアス電圧80を高めるよう指示し、先と同じく、電圧パルス68と論理電圧レベル70との間の差86を最小化する。先と同じく、サンプリング及び再充電回路64は、基準APD36をリセットするパルス74を印加する。表されている実施形態では、バイアス電圧補正は、基準APD36がそのブレイクダウン状態にある間、行われる。これは、ADC44が実時間において差86をモニタすることを可能にする。
【0034】
一実施形態において、図3及び図4に表される回路は、バイアス電圧がチップ上の電荷ポンプによって生成され、且つ、十分なチップ面積が利用可能である場合に、APD34、36の隣に同じダイ上で集積されてよい。回路の部品は別個のチップ上に配置されてよく、アナログシリコン光電子増倍管に関連して適用を可能にする。
【0035】
代替の実施形態において、バイアス制御ループ42は、ADC44及びDAC46を削除して、純粋にアナログ的に実施されてよい。この実施形態では、基準フォトダイオード36は、適切に定義される電流(約1μA)を与え、且つ、結果として得られる電圧を可変電圧源48のための制御信号として用いることによって、ブレイクダウン電圧において動作する。この実施形態は、回路全体がより小型化することができるという利点を有する。デジタル実施形態では、ADC44は、また、他の電圧をモニタするために再利用されてよい。これは、ウェハーレベルにおける、センサモジュールの電源オン・シーケンスの間の機能及びパラメータ試験にとって有用である。
【0036】
本願は、好ましい実施形態を参照して記載された。変形及び代替は、上記の詳細な記載を読んで理解することで当業者に想到可能である。本願は、それらが添付の特許請求の範囲及びその均等の適用範囲内にある限りにおいて、そのような変形及び代替の全てを包含するよう意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージングにおける使用のための放射線検出器モジュールであって:
複数の検出器ピクセルと;
少なくとも1つの基準フォトダイオードと;
制御回路と
を有し、
各検出器ピクセルは、ガイガーモードにおいて動作する少なくとも1つのセンサフォトダイオードへ任意に結合されるシンチレーターを有し、
前記少なくとも1つの基準フォトダイオードは、光を遮られ、前記少なくとも1つのセンサフォトダイオードと同じ条件下でガイガーモードにおいて動作し、
前記制御回路は:
前記基準フォトダイオードがブレイクダウンする場合に、該基準フォトダイオードによって生成される暗電流パルスの該基準フォトダイオードの両端のブレイクダウン電圧を測定し;
前記少なくとも1つの基準フォトダイオードによって生成される前記暗電流パルスを、予め選択された特性論理電圧レベルと略等しくするよう、前記少なくとも1つの基準フォトダイオード及び前記少なくとも1つのセンサフォトダイオードにかかるバイアス電圧を調整する、
放射線検出器モジュール。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサフォトダイオード及び前記少なくとも1つの基準フォトダイオードから熱を取り除くために、前記少なくとも1つのセンサフォトダイオード及び前記少なくとも1つの基準フォトダイオードへ熱的に結合される1次冷却要素
を更に有する請求項1に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項3】
前記1次冷却要素は、ペルチェ冷却要素を有する、
請求項2に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項4】
熱を前記1次冷却要素から周辺環境へ移動させる2次冷却要素
を更に有する請求項2又は3に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項5】
前記少なくとも1つの基準フォトダイオードによって生成される暗電流パルスをカウントする暗パルスカウンタ
を更に有する請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項6】
前記暗パルスカウンタによって報告される前記少なくとも1つの基準フォトダイオードからの検出された暗電流パルスの周波数に基づいて、前記1次冷却要素を制御する温度コントローラ
を更に有する請求項5に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項7】
前記暗パルスカウンタは、受け取られたパルスが暗電流パルスとして識別されてカウントされる特性論理電圧レベルを有する、
請求項5又は6に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項8】
前記制御回路は、前記少なくとも1つの基準フォトダイオードのブレイクダウン電圧を測定するアナログ−デジタル・コンバータを有する、
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項9】
前記制御回路はインバータを有し、該インバータは:
前記少なくとも1つの基準フォトダイオードによって生成される暗電流パルスを検知し;
前記暗電流パルスをデジタル化し;
前記デジタル化された暗電流パルスを、前記暗電流パルスの電圧を測定するよう前記アナログ−デジタル・コンバータへ指示するサンプリング及び再充電コントローラへ伝える、
請求項8に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項10】
前記制御回路は、前記サンプリング及び再充電コントローラから信号を受け取ると導通状態となり、前記基準フォトダイオードを非ブレイクダウン状態に戻す再充電トランジスタを有する、
請求項9に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項11】
前記少なくとも1つの基準フォトダイオードを前記ガイガーモードへとリセットするよう生成されるリセットパルスをカウントする暗パルスカウンタ
を更に有する請求項10に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項12】
前記制御回路は、前記アナログ−デジタル・コンバータの測定に基づいて前記バイアス電圧を調整するよう可変電圧源に指示するバイアス電圧コントローラを有する、
請求項8乃至11のうちいずれか一項に記載の放射線検出器モジュール。
【請求項13】
イメージング範囲を定義するガントリーと;
前記イメージング範囲の内外に選択的に移動する対象をサポートする対象支持体と;
請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の放射線検出器モジュールを複数有する検出器アレイと;
検出される放射線が有効なイベントから起こったかどうかを決定するよう前記検出される放射線を解析するイベント確認プロセッサと;
前記イベント確認プロセッサによって認証されるイベントを記憶するイベント記憶バッファと;
有効なイベントを画像表現へと再構成する再構成プロセッサと
を有するイメージング装置。
【請求項14】
放射線検出器アレイの一部の検出感度におけるドリフトを補償する方法であって:
複数のセンサフォトダイオード及び並列接続された基準フォトダイオードへ、単一光子に反応するようそれらのフォトダイオードをガイガーモードへとバイアスするバイアス電圧を印加するステップと;
前記基準フォトダイオードのブレイクダウンの後に、該基準フォトダイオードのブレイクダウン電圧を測定するステップと;
前記基準フォトダイオードからのデジタル化されたパルスの値と論理電圧レベルとの間の差を決定するステップと;
前記差を最小化するよう前記バイアス電圧を調整するステップと
を有する方法。
【請求項15】
前記基準フォトダイオードが光を受けることを防ぐステップ
を更に有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記測定するステップ、前記決定するステップ及び前記調整するステップは、少なくとも1つの前記基準フォトダイオードがブレイクダウン状態にある時間期間の間起こり、
当該方法は:
前記少なくとも1つの基準フォトダイオードをリセットするステップ
を更に有する、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記差を最小化するよう、前記基準フォトダイオードの温度を調整して、該基準フォトダイオードのブレイクダウン電圧を変更するステップ
を更に有する請求項14乃至16のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項14乃至17のうちいずれか一項に記載の方法を実行するためのコンピュータ実行可能な命令を記憶するコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
イメージング検出器において信号対雑音比を略一定に保つ方法であって:
前記検出器における1又はそれ以上のフォトダイオードのブレイクダウン電圧を測定するステップと;
前記ブレイクダウン電圧を、予め選択された電圧レベルと比較するステップと;
前記予め選択された電圧レベルと前記測定されたブレイクダウン電圧との間の差を決定するステップと;
前記差に基づいて前記検出器における温度を調整するステップと
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−519843(P2012−519843A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552540(P2011−552540)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050539
【国際公開番号】WO2010/100574
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】