説明

単一針または多針皮内(ID)送達装置に結合されたフィードバックまたはモデルベースコントローラを使用して患者の体内の物質の濃度の連続長期制御を開始し維持するためのシステムおよび方法

血中グルコース濃度などの使用者の体内の物質の濃度を制御するための閉ループ治療システム(200)。このシステムおよび方法は、体内のグルコース濃度を測定するセンサシステム(206)と、測定されたグルコース濃度を使用して出力を生成するコントローラ(202)とを使用し、この出力は、使用者の標的血中グルコース濃度の不変のプロファイルまたは時間変化するプロファイルをセットし、次いで血中グルコース濃度が標的値に到達しそれが維持されるように適当な量のインスリンを使用者の体内に注入するように、皮内インスリン注入システム(204)を自動または手動で制御するのに使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内の物質の濃度の連続長期制御を維持し、前記物質の一定のまたは時間変化する標的濃度プロファイル(profile)を決定するためのシステムおよび方法に関する。詳細には本発明は、糖尿病患者の血中グルコース濃度を標的プロファイル付近に制御する連続長期制御を、単一針または多針アレイを介して送達するインスリン(insulin)、好ましくは短時間作用性インスリン(single−acting insulin)類似体の皮内(intradermal:ID)送達(delivery)と結び付いた制御アルゴリズム、例えばフィードバックまたはモデルベースコントローラ(model−based controller)を使用して維持するためのシステムおよび方法に関する。本出願は、米国特許法119条(e)の下で、ともにその内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる2002年10月11日に出願された米国特許仮出願第60/417559号明細書、および2002年12月11日に出願された米国特許仮出願第60/432233号明細書の恩典を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
インスリンの皮内(ID)送達が、インスリンの皮下(subcutaneous:SC)送達よりも迅速な治療物の取込みおよびクリアランス(clearance)をもたらし、さらに生物学的利用能を増大させることが最近示された。この迅速な取込みは、注射(例えばコントローラによって指令された注入)と患者の反応との間の時間的な遅れを短くする。
【0003】
インスリンのID送達はさらに、静脈内(intravenous:IV)送達に関連した合併症を防ぎ、したがってフィードバック制御のインスリン送達システムにおいて効果的に使用することができる。フィードバック制御システムは、血中グルコース、組織グルコースなどのシステムのいくつかの測定値と設定値との比較に基づいて制御量(例えばインスリン送達速度または量)を調整する。このようなフィードバック制御システムは、測定された信号およびその信号の積分または微分を含む計算を使用することができ、したがってシステムの性能は、制御中のシステムに関連した時間遅れによって制限される。これらの時間遅れは例えば、送達する薬物およびその標的物質の薬物動態学(pharmacokinetics:PK)および薬力学(pharmacodynamics:PD)、測定装置に固有の遅延、ならびに計算時間に起因する。
【0004】
したがって、例えばインスリンのID送達によって得られる時間遅れの短縮によって、このようなフィードバックコントローラの性能ケイパビリティ(performance capability)を増大させることができることに留意されたい。さらに、例えばID送達による、または短時間作用性インスリン類似体の使用による治療効果の短縮は、このようなフィードバック制御システムの性能を向上させる。インスリン送達システムは、活性の自然のPK/PD減衰を待つ以外は、患者からインスリンを除去することができないため、より短い治療時間は、より柔軟かつより反応が早いコントローラを可能にする。
【0005】
さらに、あるタイプの患者モデル構造、すなわち生理に基づくあるモデルは、患者がインスリン反応検査を受けることを要求し、検査の長さは、サンプリングレート(sampling rate)およびインスリン反応の持続時間によって決まる。短時間作用性インスリンの使用は検査の所要時間を、レギュラーインスリン(regular insulin)で必要な時間よりも短くする。同様に、レギュラーインスリンのID送達の使用は、SC送達よりも検査の所要時間を短くする。しかし、反応プロファイルと可能なサンプリング間隔の両方を短くすることができるため、短時間作用性インスリンの皮内送達の使用は所要時間をよりいっそう短縮させるはずである。
【0006】
さらに、生理に基づくモデル以外のモデル、例えば3コンパートメントミニマルモデル(3−compartment minimal model)などのモデルであっても、患者に対していくつかのインスリン感受性パラメータを生成することが好ましいことがある。このような検査の所要時間は、短時間作用性インスリンのID送達によって提供される反応などの急速かつ短期の反応を提供するインスリン送達経路の使用によって短縮することができる。
【0007】
さらに、グルコース用のフィードバック制御システムは一般に、グルコース濃度を測定し送信するセンサを必要とする。このセンサは、動脈、静脈または間質液濃度を測定することができ、腕または脚に配置することができる。したがって、動脈のグルコース濃度と感知されるグルコース濃度の間には、最大30〜40分の潜在的な固有の遅延がある。より短いサンプリング間隔で動作する制御システムは、より多くのセンサ遅延を許容することができる。センサ遅延はさらに、通信の瞬間的な中断によって引き起こされる遅延、偶発的なセンサの接触または外れなど、一時的なものであることができる。したがってセンサのより頻繁な問合せは、問題のより迅速な識別、および問題が解決された後の制御への迅速な復帰を可能にする。
【0008】
インスリンの静脈内(IV)送達または短時間作用性インスリンのSC送達、および比較的に長いサンプリング間隔を使用して、糖尿病患者の血中グルコース濃度の制御を実現することが試みられた。ポンプまたは送達装置を患者に侵襲的に埋め込む必要があるため、IV送達には一般に問題がある。相対的に非侵襲性のSC送達および長いサンプリング間隔を使用するシステムでは制御性能が低下する。
【0009】
さらに、現在、血漿インスリンおよび遠隔区画中のインスリン濃度の関数として血漿グルコース濃度を記述する3状態モデルが存在することに留意されたい。しかし、このモデルは、細胞のグルコース取込みに対するグルコース濃度の効果を過大評価し、高インスリン濃度の寄与を過小評価する。観察された生理的ふるまいとこの3状態モデルとの間のこのミスマッチの結末はコントローラの性能低下であろう。
【0010】
さらに、コントローラの目標は一般に、システムパラメータ(例えば血中グルコース)を標的値(例えば80または100mg/dl)または標的値付近に保つことである。制御を受けていない糖尿病患者の血中グルコース濃度は一般に所望の標的濃度よりもずっと高いので、新たな患者にコントローラを最初に適用するときには、その時点のグルコース濃度と標的濃度の間には潜在的に大きな違いがある。モデル予測コントローラ(model predictive controller:MPC)などのコントローラが、患者の血中グルコースを可能な最短時間で高血糖値から一般的な標的値まで下げるように指示されている場合、その結果はインスリンの急速な投入であり、これにより低血糖が引き起こされる可能性がある。MPCコントローラが、その時点の高血糖状態に患者を保ち、標的グルコースを一般的な標的値まで徐々に下げるように指示されている場合、その結果はインスリンの緩やかな投入であり、低血糖症の可能性ははるかに小さくなる。
【0011】
コントローラを始動させる従来のモードは、制御が開始される前に患者のグルコース濃度を標的グルコース濃度に近い濃度にすることである。これは、手動のインスリン注射および/またはグルコース摂取の操作によって実施することができた。しかし、この方法は技術的には単純だが、患者にとって時間のかかる方法であり、信頼性にも欠ける。
【0012】
以上の努力分野に広く関連したシステムおよび装置の例が、それぞれの内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献1〜10および非特許文献1〜12に記載されている。
【0013】
したがって、これらの問題を解決することができるシステムおよび方法、具体的には、低血糖の発生を最小限に抑えつつインスリンを患者に送達することができ、所望の患者血中グルコース濃度を維持することができ、さらに高いサンプリングレートで動作することができ、そのため制御性能が低下しない、侵襲性ができる限り低いID送達装置が求められている。
【0014】
【特許文献1】米国特許第6558351号明細書
【特許文献2】米国特許第6441747明細書
【特許文献3】米国特許第5569186明細書
【特許文献4】米国特許第5558640明細書
【特許文献5】米国特許第4494950明細書
【特許文献6】米国特許第4475901明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2002/0095134号明細書(Becton Dickinson and Company所有)
【特許文献8】欧州特許出願公開第1048264号明細書
【特許文献9】国際公開第00/74753A1号パンフレット
【特許文献10】国際公開第02/02179号パンフレット
【特許文献11】米国特許第5879326号明細書(Godshall他)
【特許文献12】米国特許第5250023号明細書(Lee他)
【特許文献13】国際公開第97/48440号パンフレット
【非特許文献1】Robert Parker and Francis Doyle, Advances in Drug Delivery Reviews, 48, pp. 211-228 (2001)
【非特許文献2】Parker, R. S., Doyle, F. J., Peppas, N. A. The Intravenous Route to Blood Glucose Control IEEE Engineering in Medicine and Biology, pp. 65-73 (2001)
【非特許文献3】Parker, R. S., Doyle, F. J., Peppas, N. A. A Model-Based Algorithm for Blood Glucose Control in Type I Diabetic Patients IEEE Transactions on Biomedical Engineering, 46(2), pp. 148-157 (1999)
【非特許文献4】"Investigational device mimics a pancreas, brings an artificial pancreas one step closer to reality" ADA Annual Meeting --SAN FRANCISCO - June 17, 2002(www.medtronics.comから入手)
【非特許文献5】The ADICOL (ADvanced Insulin COntrol using a closed Loop) Consortium (www.adicot.org)
【非特許文献6】Biostator algorithm (Clemens, A. H., Feedback Control Dynamics for Glucose Controlled Infusion System Med Prog Technol, 6, pp. 91-98 (1979)
【非特許文献7】Parker, R.S., et al., Robust H-infinity Glucose Control in Diabetes Using a Physiological Model, AIChE J. 46 (12), pp. 2537-2549 (2000)
【非特許文献8】Shimoda, S. et al., Closed-loop subcutaneous insulin infusion algorithm with a short-acting insulin analog for long-term clinical application of a wearable artificial endocrine pancreas, Frontiers Med. Biol. Engng 8 (3): 197-211 (1997)
【非特許文献9】Sorensen, J.T., A Physiologic Model of Glucose Metabolism in Man and its Use to Design and Assess Improved Insulin Therapies for Diabetes, PhD Thesis, M.I.T. (1985)
【非特許文献10】Chassin, L.J. et al., Simulating closed-loop glucose control: Effect of delay in glucose measurement. Diabetes 51: 1606 Suppl. 2. (2002)
【非特許文献11】Chassin, L.J. and Hovorka, R., Closed-loop glucose control with IV glucose sampling and SC insulin infusion: Evaluation by simulation studies, Diabetologia 44: 792 Suppl. 1 (2001)
【非特許文献12】R.S. Parker, F.J. Doyle III, J.E. Harting, and N.A. Peppas, Model Predictive Control for Infusion Pump Insulin Delivery, Proceedings of the IEEE Engineering in Medicine and Biology 18th Annual International Conference, paper no. 265, Amsterdam, The Netherlands, 1996
【非特許文献13】Lehman and Deutsch (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、患者の体内の物質の濃度の長期連続制御を維持し、前記物質の一定のまたは時間変化する所望の濃度の時間依存プロファイルを決定するためのシステムおよび方法に関する。
【0016】
本発明の他の目的は、制御アルゴリズムを使用して糖尿病患者の血中グルコース濃度の長期連続制御を維持し、一定のまたは時間変化する所望のグルコース濃度の時間依存プロファイルを決定するためのシステムおよび方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、高いサンプリングレートとともに使用することができ、そのため制御性能が低下しない、侵襲性ができる限り低いID送達装置を使用するシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的および他の目的は実質的に、患者の体内の物質の濃度を制御するための制御システムおよび方法を提供することによって達成される。この制御システムおよび方法は、患者の皮内に材料を送達し、その結果、材料のより迅速な取込みおよび材料のより迅速なクリアランスが達成されるように適合された送達装置と、患者に送達された材料に応答して生じた患者の体内の物質の濃度を決定するように適合され、かつ患者に送達する材料の量を物質の濃度に基づいて制御するように送達装置を制御するために使用されるように適合可能な出力を供給するように適合されたコントローラとを使用する。例えば、この出力を送達装置に供給して送達装置を自動制御することができる。あるいはこの出力を、例えば患者または装置の使用者が読んで、適当な量の材料を患者に注入するために送達装置を手動で調整することができるディスプレイの形態の物質濃度に関する情報とすることができる。一応用では、この材料が短時間作用性インスリンを含み、物質がグルコースを含み、それによってコントローラは、インスリン送達に応答した患者の組織内のグルコース濃度に基づいて、短時間作用性インスリンの患者への皮内送達を制御する。送達装置は、短時間作用性インスリンなどの材料を患者の皮内に送達するように適合された単一針または多針アレイを含むことができる。このシステムはさらに、グルコース濃度などの患者の体内の物質の濃度を検出し、この濃度を表す信号をコントローラに供給するように適合されたセンサを含み、コントローラは、この信号を分析して、先に論じたようにグルコース濃度を決定する。
【0019】
このシステムおよび方法はさらに、システムに電力を供給するように適合された自給式電源と、患者に送達する材料としてインスリンを貯蔵するように適合されたインスリン貯蔵装置とを含む。このシステムはさらに、患者による携帯および着装が可能なシステムとすることができ、コントローラ、センサおよび送達装置間の通信の少なくとも一部は無線通信を含む。このコントローラはさらに、患者または健康管理提供者あるいはその両方とコントローラの間で情報を中継する、システムの外部の装置と通信するように適合されている。
【0020】
コントローラはさらに、生理に基づくモデルを含む制御モデルを使用する。このコントローラはさらに、インスリンの送達の前に存在するグルコースの送達前濃度を、標的または予測グルコース濃度と比較し、インスリンの送達の後に存在するグルコースの送達後濃度を、標的または予測グルコース濃度と比較するアルゴリズムを使用することができる。このアルゴリズムはさらに、この送達前および送達後比較に基づいて適当なインスリン投与量を決定する。コントローラはさらに、送達後グルコース濃度と標的または予測グルコース濃度との比較に基づいてモデルを調整することができる。このコントローラはさらに、明確には測定されない体の領域の物質、例えばグルコースの濃度の推定、例えば間質液グルコース測定に基づく動脈グルコースの推定を可能にすることができる(このような実施は当技術分野では「状態推定」として知られている)。さらにこのコントローラは、標的または予測濃度との比較において、物質の濃度の測定値または物質の濃度の推定値を利用することができる。
【0021】
このシステムおよび方法をさらに、血中グルコースなどの患者の体内の物質の濃度を調整するように適合させることができる。このシステムおよび方法は、患者の体内の物質の濃度の標的プロファイルを使用するように適合されたコントローラと、コントローラの制御の下で患者の皮内にインスリンなどの材料を送達して、標的プロファイルに従って物質の濃度を実質的に標的濃度に調整するように適合された送達装置とを使用する。
【0022】
本発明のこれらの目的、利点および新規の特徴、ならびに他の目的、利点および新規の特徴は、以下の詳細な説明を添付図面とともに読んだときにより容易に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施形態に基づくシステムを図1〜5に示す。図1に示すようにシステム100は一般に、コントローラ102、薬物送達システム104および分析物センサシステム106を含む薬物送達システムとして構成することができる。図示のとおりコントローラ102は、適当な量の薬物を患者108に送達するように薬物送達システム104を制御するための制御信号を供給する。分析物センサシステム106は、患者108の体内の関心の分析物の濃度を感知し、センサ信号をコントローラ102に供給する。コントローラにはさらに、分析物の標的濃度を指示する参照信号または設定値信号が入力される。コントローラ102はそれに応じて、薬物送達システム104が患者108に送達する薬物の量を、センサ信号および参照信号に基づいて調整するように、制御信号を調整することができる。
【0024】
図2に示すように、人工膵臓と一般に呼ばれている携帯、着装が可能な閉ループインスリン送達システム200の中にシステム100を構成することができる。システム100と同様に、システム200は、コントローラ202、インスリン送達システム204およびグルコースセンサシステム206を含む。後に詳細に論じるが、コントローラ202は、適当な量のインスリンを患者208に送達するようにインスリン送達システム204を制御する制御信号を供給する。インスリン送達システム204は図3〜5に示すような針アレイ210を含むことができる。具体的には針アレイ210は複数の針212を含み、これらの針はそれぞれ、インスリンを患者208の皮内に送達する(ID送達)のに十分な直径および長さを有する。それぞれの針の長さは例えば0.3mmまたは約0.3mmから3.0mmまたは約3.0mm、直径は例えば30ゲージまたは約30ゲージから50ゲージまたは約50ゲージである。
【0025】
当業者には理解されることだが、マイクロニードル(microneedle)は、直径が約30ゲージ以下の構造を含み、このような構造が事実上円筒形であるときは一般に直径約30〜50ゲージの構造を含む。したがって用語マイクロニードルが包含する非円筒形の構造はこれに匹敵する直径の構造であり、角錐形、長方形、八角形、くさび形および他の適当な幾何学的な形状を含むことができる。これらの装置の例が、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる特許文献11〜13に開示されている。ID区画は、表皮の直下に始まり真皮網状層の基部まで延びる真皮層からなる組織空間を指す。この組織の深さは平均して、皮膚の最も外側の表面から約0.05mm〜0.15mmから約1.7〜2.5mmである。真皮区画の絶対的な厚さおよび深さには、年齢、人種、体の部位、疾病状態および他の因子に関連した個人の生物学的変異性に基づくある変動があることを当業者は理解されたい。本明細書に記載した例では、この組織空間および同様の組織空間にアクセスするために使用される装置の範囲を、全体の深さで0.3mmまたは約0.3mmから3mmまたは約3mm、より好ましくは<2.5mmとすることができ、ID送達のための最も好ましい深さは<1.7mmである。
【0026】
また、送達システム204はこのタイプの単一の針を含むこともでき、いくつかの応用ではこれのほうが好ましい。いずれの構成においても、短時間作用性インスリン類似体のID送達は、迅速な取込みおよびより高い生物学的利用能をもたらす。すなわち、本明細書に記載の本発明の実施形態に従って実行されたID送達によって、注入中の薬物、例えばインスリンはより迅速に取り込まれる。さらに、皮内インスリン送達は、従来の皮下送達よりも相当に早く治療効果を与える。
【0027】
さらに、針212のうちの1本または数本の針を感知針電極として構成することができる。すなわち、針アレイ210の周囲の表面214を、参照電極または制御電極として構成し、1本または数本の針212を感知針電極として構成して、患者208の体内のグルコース濃度を表す信号をグルコースセンサシステム206に供給することができる。この配置では、送達針の位置および方向に対するそれぞれの感知針の位置および方向が、薬物の送達、例えばインスリンの送達が、患者208の体内の分析物、例えば血中グルコースの濃度を正確に感知する感知針の能力を妨げないように決められていなければならない。グルコースセンサシステム206は、患者208の体内の関心の分析物の濃度を感知し、センサ信号を出力する。この例では、センサ信号をコントローラ202に直接に供給することができ、あるいはコンバイナ(combiner)216でセンサ信号を参照信号と結合し、またはセンサ信号を参照信号と比較し(例えば参照信号からセンサ信号を差し引き)、次いでコントローラに202に供給することができる。次いでコントローラ202はそれに応じて、インスリン送達システム204が患者208に送達するインスリンの量を、このセンサ信号に基づいて調整するように制御信号を調整することができる。さらに、針212のうちの1本または数本の針をセンサのハウジングとして構成することができ、言い換えると、関心の分析物を感知することができるセンサを1本または数本の針212に接続し、または埋め込み、または一体化することができる。感知機能と送達機能とを単一の装置に効果的に統合するには、インスリン投与が局所的なグルコース濃度に影響を及ぼし、それによってその測定値が全身のグルコース濃度の推定に適さないものになることがないよう十分な空間的分離が必要となる。
【0028】
このようなシステム200は、使用者の通常の活動を妨げない比較的に単純な使い易い装置の中に制御アルゴリズムを包含することができる。最初に、患者に(最長)一晩のインスリン反応検査を受けさせることによって、この制御システム200のパラメータを設定することができる。インスリン送達システム204は、少なくとも1日の間、十分なインスリンを貯蔵し送達することができる皮内送達システムを含むことができる。あるいは、上で論じたグルコースセンサシステム200を長期連続使用のために体内に埋め込み、または多くの可能な着装可能短期センサの1つとして構成することができる。必要電力は小さく、そのためバッテリの取換えはできるだけまれであろうと考えられる。さらに、コントローラ202、センサシステム210および送達システム204間の無線通信が可能なようにシステム200を構成することができ、コントローラ202(例えばシステム200のディスプレイなどの表示器)によって、あるいはオフラインのベースステーションまたはパーソナルコンピュータ(PC)によって、患者208への通信を実施することができる。システム200はさらに、例えば電話(モデムまたは無線)あるいはインターネットを介して、健康管理提供者(health care provider)および/または遠隔システム管理者と通信するように構成することができる。
【0029】
さらに、これまで1つのタイプのセンサについて論じたが、制御システム200で使用されるセンサのタイプは、十分な確度、精度および適当に短い応答時間を有するものである限り、使用可能な任意のセンサとすることができる。ID送達された前記材料の迅速なPK/PDによって、制御サイクル内の感知動作により長い時間が提供されるため、より長い応答遅れを有するセンサも許容されることがある。コントローラ200は、患者208の高血糖の発症を制限するようにグルコース送達システム202を適当に制御することもできなければならないため、高グルコース値での確度が低いセンサも許容可能とされることがある。
【0030】
これまでに論じた本発明の実施形態は、皮内インスリン送達、PK/PD(薬物動態学および薬力学)および最新の制御理論の概念および原理に基づく。システム200では、迅速な取込みが起こるID送達の原理が使用される。作用している基本的な制御原理は、コントローラ202のサンプリングレートおよび治療の取込み/減衰速度が、システム全体(患者およびセンサ)のダイナミックスに比べて高速であるということである。関連する2つめのモデル予測制御(MPC)原理は、コントローラ202に埋め込まれたモデルが、制御入力(例えば治療)に対する患者の反応について十分な情報を含んでいなければならず、したがって活性の発現が迅速な治療によって、より完全な情報をこのモデルに含めることが可能になるということである。
【0031】
図6に、コントローラ202に出力を供給することができるコントローラ202のモデル予測コントローラ(MPC)構成要素218をさらに含む、図2に示したシステム200の一例を示す。さらに、図1に関して先に論じた制御コマンドの計算を可能にするために、センサシステム206から出力されたセンサ信号および参照信号がコントローラに供給される。
【0032】
当業者には理解されるとおり、モデルに基づくコントローラまたはモデル予測コントローラ(MPC)は、制御されたシステム(患者、関連送達装置および感知装置)の数学的表現を含む。コントローラ202は、患者208のその時点の状態および患者208の予想される今後のふるまい(すなわちモデル反応)に基づいて、制御コマンド(すなわちインスリンの送達速度または量)を生成する。制御ステップごとに患者の反応がモデル反応と比較され、それに応じて制御コマンドが調整される。MPCの好ましい要件は、埋め込まれたモデルが、制御入力に対するシステムの反応を正確に反映することである。糖尿病患者へのインスリン送達の場合、このモデルは、インスリン送達に反応した患者のグルコースプロファイルを反映する。
【0033】
使用するモデルのタイプに応じて、患者の個人的な検査によって、あるいは集団から得られたパラメータ(すなわちインスリン感受性)の適用によって、モデル反応を生成することができる。システム200では、例えば一晩のインスリン反応検査による個人の検査によってモデルを構築することができる。モデルのタイプの包括的なリストには、生理に基づくモデル、経験的モデル(コンパートメンタル平均(compartmental average)または移動平均、あるいは自己回帰と移動平均の組合せ)、データに基づくモデル、ニューラルネットワーク、またはこれらの特性の組合せが含まれる。ただしこれらに限定されるわけではない。
【0034】
後に詳細に論じるが、生理に基づくMPC応用において制御システム200は、インスリン、具体的には短時間作用性インスリン類似体のID送達を使用する。後に例証するが、シミュレーションによれば、ID経路によって送達したときに短時間作用性インスリンは、レギュラーまたは短時間作用性インスリンの皮下(SC)適用またはレギュラーインスリンのID適用よりもはるかに良好に糖尿病患者を制御できることが示唆されている。短時間作用性インスリン類似体を使用したモデルに基づく制御はさらに、コントローラ202のより頻繁な更新を可能にし、したがってインスリンのより頻繁な適用、より正確なモデル構築(コントローラのメモリサイズおよび計算要件に比べてインスリン活性の時間スパンが短いため)、ならびに所与のモデルおよびサンプル時間に対するコントローラ202のより積極的な調整(コントローラ202が、グルコース濃度をより短い期間でベースライン値まで戻そうとする)を可能にする。これによって、正常なベースラインへの復帰が早まり、それによって患者の健康が改善し、また、瞬時に送達されるインスリンの量が少なくてすみ、それによって送達インスリンの生物学的利用能を向上させることができる。さらに、送達装置の信頼性および耐用寿命を向上させるより小さいインスリン速度コマンドおよびより小さい速度コマンド変動も実現され、それとともに、最小グルコース濃度としきい値を下回っている時間の両面で低血糖の発生が低減し、それによって患者にとって不利な条件の危険が最小限に抑えられる。
【0035】
モデル218はさらに、ヒトおよびブタへのIDインスリン送達から得られるインスリン反応曲線に一致したインスリン反応曲線を生成することができる数学的モデルを使用することができる。モデル化の手順は薬力学および薬物動態学に基づく。このモデル化の一例は、既存の生理モデルを使用して、前掲の非特許文献9に記載されている動脈インスリン反応曲線を生成する。このモデルはさらに、特定の非動脈インスリン(すなわちSCまたはID)送達から得られる動脈入力プロファイルの視覚化を可能にする。次いでこの情報を使用して、動脈インスリン入力を受け取るのに最も適したモデルへのSCまたはID入力をシミュレートすることができる。サンプル反応曲線を図7に示す。図示のとおり、このモデルは、ブタのインスリン反応プロファイルを再現することができる。2つの異なる送達方法SCおよびIDに対して2つの異なるモデルを構築することが好ましく、それぞれのモデルに含まれる時定数(τ)は異なる。なおこの例では、露出高さが0mmまたは約0mmから1mmまたは約1mmの出口を有する1本の小さな中空針が使用される。この出口を、皮膚の0.3mmまたは約0.3mmから2mmまたは約2mmの深さに挿入し、0.3mmまたは約0.3mmから2mmまたは約2mmの深さでインスリンの送達が起こるようにする。
【0036】
図7に示すように、IDインスリン送達は「改良された薬物動態学」を提供する。このことは、例えば最大血漿中濃度までの時間(Tmax)、最大血漿中濃度時の大きさ(Cmax)、検出可能な最小限度の血中または血漿中濃度を引き出すまでの時間(Tlag)などの標準薬物動態学的パラメータによって測定される、薬物動態学的プロファイルの改良が達成されることを意味する。吸収プロファイルの改良は、このような薬物動態学的パラメータによって測定される吸収が向上し、またはより大きくなることを意味する。薬物動態学的パラメータの測定および最小有効濃度の決定は当技術分野では日常的に実施されている。得られた値は、皮下投与、筋内投与などの標準投与経路との比較によって改良されたとみなされる。必ずというわけではないが、このような比較では、皮内層への投与および皮下投与などの参照部位への投与が、同じ投与量レベル、すなわち同じ量および濃度の薬物および賦形剤を含み、かつ単位時間あたりの量および体積に関して同じ投与速度を含むことが好ましい。例えば、100μg/mlなどの濃度、100μl/分の速度の5分間の所与の薬物の真皮への投与は、同じ100μg/mlの濃度、100μl/分の速度で5分間の同じ薬物の皮下空間への投与と比較されることが好ましい。さらに、前記物質のTmaxが皮内送達で20分、皮下送達で60分の場合、皮内送達の薬物動態学的プロファイルは皮下送達に対して改良されている。当業者にはCmaxおよびTlagに対する同様の比較が明白である。別の例として、図7に、皮下および皮内法によってブタに送達された速効性インスリン(Eli Lilly Lispro)の薬物動態学的プロファイルを示す。皮内インスリン送達は、皮下送達よりも迅速なインスリン取込みを引き起こし、これが、TmaxおよびTlagの低減、ならびにCmaxの増大によって表されている。したがって皮内送達はインスリン薬物動態学を改良する。皮内送達は一般に固有の生物学的クリアランス速度または機構に影響を及ぼさないが、相対的な全身クリアランスは皮下送達よりも短縮する。したがって、フィードバック制御システムにとっては迅速な取込み(低Tmax、高Cmax)が有益である。この効果の別の説明が前掲の特許文献10に記載されている。
【0037】
図6に示したシステムなどの連続制御ループシステムでは、広範囲にわたる速度で材料を連続的に送達することが必要であることにも留意されたい。例えば、シミュレーションによれば、制御された連続インスリン送達によるI型糖尿病患者の制御には、0から40〜60ミリユニット(mU)/分(0から2.4〜3.6U/時)の送達速度が必要であることが示唆されている。動物実験によれば、2U/時が、不要な低血糖跳ね返り現象を防ぎ、かつ制御を依然として維持するための、送達の合理的な上限であることが示唆されている(例えば図14および15を参照されたい)。現行のインスリン製剤(流体1mlあたり100U)では、これらの送達速度は、0から約0.34マイクロリットル/分、または約20.4マイクロリットル/時(約2U/時)に等しい。純粋なII型の糖尿病患者は一般にインスリン抵抗性を示し、すなわちインスリンを利用することができない。したがってこれらの患者はより高い送達速度を必要とする。実際には大部分の糖尿病患者が、インスリン必要量を増大させるある程度のインスリン抵抗性を示す。インスリン抵抗性の糖尿患者の追加のインスリン必要量を満たすためには、1500μl/分(10uL/Uで150U/分)までのインスリン溶液を送達することができる。
【0038】
針、例えば小ゲージの皮内(ID)針を通した真皮組織への流体の送達は、送達システムが十分な初圧を提供することを要求する。この圧力が必要なのは、組織内の抵抗力に打ち勝つためである。送達する流体の内部にこの圧力が発生しさえすれば、流体は組織空間に侵入する。十分な圧力が存在する場合、この流体は流れ続ける。インスリンのボーラス(bolus)送達などの高流量状況においてこの背圧に打ち勝つことは、多くの市販の送達システムによって容易に達成される。しかし、低流量および可変流量状況においてこの圧力に打ち勝つことは、まだ取り組まれていない。
【0039】
より薄い製剤を使用することによってある利点を得ることができる。例えば、糖尿病のブタの制御試験において20IU/ml(「20U」)に薄めたインスリンを使用した。この希釈率は、所与の投与速度に対して流体の体積が5倍になることに相当する。この体積の増大は、低い投与速度で組織内の抵抗力に打ち勝つのに必要なより高い圧力を生み出す。
【0040】
針先から適当な距離のところにあけられた穴またはサイドポート(side−port)を有する針の使用によって、他の利点を得ることができる。例えば、皮膚に1.5mm(ID)侵入すると、深さ1.0mmのところにサイドポートがくるサイズの34Gの針を使用して、ID空間にインスリンを送達する。このサイドポートにかかる圧力は一般に針先にかかる圧力よりも小さい。これは1つには、針の挿入によって針先のところの組織が圧縮されるためである。したがって組織空間への流体の移動を促進するのに必要な圧力が小さくてすむ。
【0041】
所与の時間的間隔で流体体積を正確に送達するなど、適当な持続時間および間隔の高流量の短いバーストを供給することによっても、連続する流量を同じように生み出すことができる。高流量の使用は、先に論じた組織の背圧に打ち勝つ、送達システム内のより高い圧力の生成を可能にする。実験によれば、U20インスリンを使用した送達間隔10分の約4マイクロリットル/分の流量は、十分な制御を提供し、ID組織への流れを維持する。10分間の全送達体積が1マイクロリットルを超えなかったときでも流れは維持された。これらの速度を達成するのに使用することができる市販ポンプの一例は、約20psiの0.4ulパルスを、流量0.01から15ml/時、または10から15000ul/時、または0.2から250uL/分で送達するように設計されたInstech Solomon社から入手できるPegasus(商標)ポンプである。
【0042】
しかし、持続時間の短い高流量パルスの生成は、いくつかのケースでは必要に迫られて、全体の流体体積を小さくする(例えば1マイクロリットル)。弾性またはコンプライアンス(compliance)のため送達システムが小さな送達体積を吸収できる場合、パルスの持続中に生成される高圧力波は組織に衝撃を与えず、送達は起こらない。システム内の気泡がコンプライアンスの原因であり、そのため、エアポケット(air pocket)の形成を排除するシステムは、小さな流体体積を送達する際に有利である。このようなシステムを得る単純な手段は、針と送達管とを直接に接続する、すなわち針のまわりに管の端を直接に接着するものである。一定の直径の流体経路を維持し、エアポケットが捕らえられる「デッドスペース(dead space)」を排除する機械接続を構築することもできる。この点に関して性能をさらに向上させる低コンプライアンス管も当技術分野では知られている。
【0043】
高い背圧を維持しようとする薬物送達システムでは、多針アレイよりむしろ単一針を使用したほうが有利なことがある。多針アレイは、皮膚のより大きな面積にわたって流体体積を分配するため、大きな流体体積を送達するのに有利である。単一針は、システムの全圧力が単一の開口に導かれるため、低体積/低速度/可変速度送達に対して有利である。
【0044】
制御ループ環境では、中程度の流量(数十マイクロリットル/時)が要求されるケースも起こり得る。これらの速度をパルスプロファイルに変換すると、組織空間に瞬間的に過負荷がかかる可能性があり、この過負荷は、パルス構造に対して選択された高い速度によって決まる。パルスプロファイルを生成するために選択されるアルゴリズムは、組織の流体吸収速度を考慮するものでなければならず、安全なマージンを維持するようにパルスを(流量および持続時間に関して)整形しなければならない。
【0045】
閉ループ制御システムは、例えば0から数十マイクロリットル/時の範囲で変化する連続流量が長期にわたって供給されなければならない状況の一例にすぎないことに留意されたい。治療分野の熟練者は、連続低速送達を利用できる他の薬物療法を予想することができる。
【0046】
図8は、食事中および食後の糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフを含む。患者モデルは58分に50gの食事をとる。コントローラ202(図2参照)は、患者208へのLisproの皮下(SC)または皮内(ID)送達を命じる。センサは内部遅れ1分、1次時定数1分を有する。この例では、コントローラのサンプリング間隔が5分であり、エラーウェイティング(error weighting)が3、出力移動ウェイティング(output move weighting)が1、モデル係数の数が40、移動ホライズン(move horizon)が2、予測ホライズン(prediction horizon)が2である。食事は、非特許文献13の標準食事に基づく。
【0047】
図9は、3回の食事に対する糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフを含む。患者モデルは50、75および50gの食事をとる。コントローラ202は、患者208へのLisproの皮下(SC)または皮内(ID)送達を命じる。センサは内部遅れ1分、1次時定数1分を有する。この例では、コントローラ202のサンプリング間隔が10分であり、エラーウェイティングが3、出力移動ウェイティングが1、モデル係数の数が40、移動ホライズンが2、予測ホライズンが2である。食事は、非特許文献13の標準食事に基づく。
【0048】
図10は、食事中および食後の糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフを含む。患者モデルは58分に50gの食事をとる。コントローラ202は、患者208へのLisproの皮下(SC)または皮内(ID)送達を命じる。どちらのケースでも、皮下グルコース測定をシミュレートするため、センサ出力に30分の遅延を追加する。センサは内部1次時定数1分を有する。この例では、コントローラのサンプリング間隔が5分であり、エラーウェイティングが3、出力移動ウェイティングが1、モデル係数の数が40、移動ホライズンが2、予測ホライズンが2である。食事は、非特許文献13の標準食事に基づく。
【0049】
図11は、3回の食事に対する糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフを含む。患者モデルは50、75および50gの食事をとる。コントローラ202は、患者208へのLisproの皮下(SC)または皮内(ID)送達を命じる。どちらのケースでも、皮下グルコース測定をシミュレートするため、センサ出力に30分の遅延を追加する。センサは内部1次時定数1分を有する。この例では、コントローラ202のサンプリング間隔が10分であり、エラーウェイティングが3、出力移動ウェイティングが1、モデル係数の数が40、移動ホライズンが2、予測ホライズンが2である。食事は、非特許文献13の標準食事に基づく。
【0050】
図12は、モデルが、インスリンに対するヒトの反応プロファイルを再現することができることを示すグラフを含む。ID送達をモデル化するためには3つの平行送達経路が好ましい。
【0051】
図13は、特に図6に示したシステムによって実行することができる閉ループ治療の例を示す表である。さらに、以上に記載したシステムは全て、明確には測定されない体の領域の物質、例えばグルコースの濃度の推定、例えば間質液グルコース測定に基づく動脈グルコースの推定を可能にすることができる(このような実施は当技術分野では「状態推定」として知られている)。
【0052】
以上のことから理解できるとおり、制御サイクルは、効果的な生理的制御を提供するために十分に高速でなければならない。したがって、生理的測定の速度および頻度、ならびに治療が生理に影響を及ぼす速さは制御にとって重要である。例えば、モデル化された制御システムでの皮下測定と送達の組合せは、中程度のサンプリング頻度において性能低下を示す。しかし、以上に記載した実施形態はこのようなシステムの欠陥を克服することができ、ID送達の使用によって安定した制御を可能にする。たとえ皮下測定の限界がモデルシステムに含まれていないとしても、以上に記載した実施形態はより安定した制御およびより高い性能を可能にする。
【0053】
以上のことからに理解できるように、本発明の実施形態は、閉ループシステム、具体的にはモデルベース制御(Model Based Control:MBC)アルゴリズム、より具体的にはモデル予測制御(MPC)アルゴリズムを使用する閉ループシステムを使用して、糖尿病患者の連続インスリン治療を開始し、提供することができる。MPCアルゴリズムは,現在および過去のグルコース濃度ならびに最近のインスリン送達履歴を特定の時間間隔で評価して、患者のグルコース濃度を標的グルコース濃度まで変化させるインスリン投与量を計算する。この投与量の計算では、インスリンに対する患者の薬力学的(PD)反応のモデルおよび今後の所望のグルコース標的が考慮される。本発明の実施形態はMPCアルゴリズムを使用して、患者の血中グルコースが標的からかけ離れているときにコントローラ(例えば図6に示したコントローラ202)を始動させることができ、同時に低血糖の発生を最小限に抑えることができる方法で、今後のグルコース標的をセットする。より具体的にはMPCアルゴリズムは、その時点のグルコース値から所望の標的値まで標的が変化する期間が含まれるように標的プロファイルをセットする。その時点のグルコース値から所望のグルコース値への移行時の標的値の変化率は一定(すなわちプロファイルは傾斜を含む)だが、この変化率を時間とともに変化させることができる。標的値が時間変化する標的プロファイルを使用して制御を開始し、動作中断期間から回復し、または極端なグルコース濃度変化の後に回復することができる。標的値の変化率は患者のPK特性に左右される。
【0054】
標的傾斜に関するデータは、傾斜全体がコントローラのフォーミュレーション(formulation)に含まれるようコントローラのフォーミュレーションに最適に書き込むことができる。したがって、コントローラは、その時点の標的濃度の値についての情報を有するだけでなく、それが予測する今後の時間間隔全体(当技術分野ではこの時間が「予測ホライズン」として知られている)の標的濃度の値についての情報も有する。コントローラはそれによって、予測濃度と標的濃度の差を最小化する治療投与量を、予測ホライズンの全時間的間隔において計算することができる。傾斜の持続時間の設定は、それに関してコントローラを構築するモデルを決定するのに使用する患者PDデータと同じデータを使用して最適化することができる。
【0055】
本発明の実施形態に基づく傾斜標的を使用することによって達成される利点は、この傾斜標的技法を他の技法と比較することによって理解することができる。これに代わる動作モードとしては、計算間隔ごとにフラットな標的値を新たにセットする方法が考えられる。これは、例えば今後の標的値を考慮するように設計されていない比例積分微分(proportional integral derivative:PID)コントローラが使用されている場合の唯一のオプションである。MPCでは、予測される患者反応および今後の起こり得るインスリン投与を考慮して、その時点のインスリン投与量を計算する。今後の標的値が任意の計算間隔に「フラット」である場合、計算されるその時点の投与量および今後の投与量は、今後の標的値が傾斜変化する場合に計算されるものとは異なる。この差によって、傾斜標的で達成されるよりもゆっくりと標的に接近する。
【0056】
他の代替法として、制御が開始されたときの許されるインスリン送達速度を徐々に変化させる方法が考えられる。その時点の血中グルコース値と標的の間の大きな差によって一般に、コントローラ(例えばMPCまたは古典的コントローラ)は、標的にすぐに到達しようとして高速度インスリン送達コマンドを生成する。傾斜標的ではより小さな初期送達速度コマンドが生成される。インスリン送達を任意の最大値に限定するようにコントローラ206に指示し、またはコントローラ206をプログラムすることができる。コントローラの始動時に、最大送達速度が、グルコース標的を維持すると予想されるベース速度(またはそれよりも低い速度)にセットされている場合、やはり低い初期速度が生成される。次いでこの限界を時間とともに最終的な値に徐々に変化させることができる。送達限界の適切な選択は、傾斜標的技法の場合と同じかまたは同様の標的値への接近を提供することができるが、コントローラの最適化能力を明示的には利用しない。
【0057】
傾斜標的技法の利点は、図14および15に記載のグラフからも理解することができる。具体的には、図14は、固定グルコース標的を有する制御の開始を示す。データは、糖尿病のブタに対する制御実験から得たものである。1.0mmの34G針を通してLispro U100を送達した。この例では標的値を160mg/dlとしてコントローラ(例えばコントローラ206)を始動させる。初期グルコース値は246mg/dlであった。コントローラ206は、許される最も高い送達速度を生成し、これによってこのケースでは低血糖エピソードが生起される。
【0058】
図15は、傾斜グルコース標的を有する制御の開始を示す。データは、糖尿病のブタに対する制御実験から得たものである。1.5mm、34Gの3本針注入セットを通してLispro U100を送達した。標的値を初期グルコース値209mg/dlと同じにして、コントローラ(例えばコントローラ206)を始動させる。標的は2時間かけて160mg/dlまで徐々に低下させる。コントローラは穏やかな送達速度を生成し、その結果、最終的な標的に向かってなめらかに接近する。
【0059】
以上に論じた本発明の実施形態の代替の使用法は、食後の低血糖の可能性を限定することである。食後にグルコース濃度が急上昇すると、コントローラ(例えばコントローラ206)はこれに応答してインスリン送達を増大させる。「単純な」コントローラは結局、平均グルコース濃度を標的値に保ち、そのため、高血糖の後には低血糖期が続く。インスリン送達の最大速度を先に論じたように限定することによってこの効果を大幅に低減させることができる。高血糖エピソードの間に到達するグルコース濃度またはその近くに標的値を再設定することによって、低血糖の低減も達成することができる。これによってコントローラ206は、インスリン送達速度をかなり低減させ、それによって低血糖の発生を防ぐ。標的の再設定は、例えば最近のグルコース濃度データの分析によって決定することができる。新たな標的、および最終的な標的(「正常血糖」)に戻すまでの時間は、インスリンに対する患者のPD反応の分析によって決定することができる。このPD情報は、コントローラ206のオリジナルの内部モデルの生成に使用したものと同じものである。
【0060】
以上に本発明の例示的ないくつかの実施形態を詳細に説明したが、本発明の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなくこれらの例示的な実施形態に多くの変更を加えることができることを当業者は理解しよう。したがって、このような変更は全て、請求項に定義された本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】フィードバック制御を使用した本発明の一実施形態に基づく薬物送達システムの一例のブロック図である。
【図2】フィードバック制御を使用した本発明の一実施形態に基づくインスリン送達システムの一例のブロック図である。
【図3】図2に示したシステムで使用されるインスリン送達装置および感知装置の一例を示す図である。
【図4】図3に示した装置の針アレイの詳細平面図である。
【図5】図3に示した装置の針アレイの詳細透視図である。
【図6】モデルに基づく制御、例えばモデル予測コントローラ(MPC)を使用した、本発明の一実施形態に基づくインスリン送達システムの一例のブロック図である。
【図7】皮下(SC)および皮内(ID)インスリン送達法を使用したブタのインスリン反応プロファイルを再現することができるモデルによって得られたサンプル応答曲線を表すグラフである。
【図8】図6に示した制御システムによって実行される食事中および食後の糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフである。
【図9】図6に示した制御システムによって実行される3日間の糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフである。
【図10】図6に示した制御システムによって実行される3日間の糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフである。
【図11】3回の食事の糖尿病患者モデルの制御の一例を示すグラフである。
【図12】インスリンに対するヒトの反応プロファイルをモデルが再現できることを示すグラフである。
【図13】図6に示したシステムによって実行することができる閉ループ治療の例を示す表である。
【図14】平坦な標的がセットされた図6に示したインスリン送達システムによって送達したときのグルコース濃度およびインスリン注入速度の一例を時間に対して示したグラフである。
【図15】傾斜標的がセットされた図6に示したインスリン送達システムによって送達したときのグルコース濃度およびインスリン注入速度の一例を時間に対して示した別のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内の物質の濃度を制御するためのシステムであって、
前記患者の皮内に材料を送達し、その結果、前記材料の迅速な取込みと前記材料の迅速なクリアランスのうちの少なくとも一方が達成されるように適合された送達装置と、
前記患者に送達された前記材料に応答して生じた前記患者の体内の前記物質の前記濃度を決定するように適合され、かつ前記患者に送達する前記材料の量を前記物質の前記濃度に基づいて制御するように前記送達装置を制御するために使用されるように適合可能な出力を供給するように適合されたコントローラと
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記出力を前記送達装置に供給して前記送達装置を自動制御するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは前記出力を、適当な量の材料を前記患者に注入するための前記送達装置の手動調整で使用するために読むことができる、前記物質の前記濃度に関する情報として供給することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記材料はインスリンを含み、前記物質はグルコースを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記インスリンは短時間作用性インスリンを含むことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記材料と前記物質は同じであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記送達装置は、前記患者の皮内に前記材料を送達するように適合された単一針アレイまたは多針アレイを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記患者の体内の前記物質の前記濃度を検出し、それを指示する信号を前記コントローラに供給するように適合されたセンサをさらに含み、前記コントローラは、前記信号を分析して前記患者の体内の前記物質の前記濃度を決定するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記センサは、前記患者の体内のある位置における前記物質の前記濃度を検出するように適合されており、前記コントローラは、前記信号を分析して、前記センサが前記濃度を検出した前記位置とは異なる前記患者の体内の別の位置における前記物質の前記濃度を推定するように適合されていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムに電力を供給するように適合された自給式電源をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記患者に送達する前記材料としてインスリンを貯蔵するように適合されたインスリン貯蔵装置をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムは、前記患者による携帯および着装が可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラと前記送達装置の間の通信の少なくとも一部は無線通信を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラ、前記センサおよび前記送達装置間の通信の少なくとも一部は無線通信を含むことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記患者と健康管理提供者のうちの少なくとも一方と前記コントローラの間で情報を中継する、前記システムの外部の装置と通信するように適合されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記コントローラは、生理に基づくモデルを含む制御モデルを使用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、データに基づく経験的モデルを含む制御モデルを使用することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記材料はインスリンを含み、前記物質はグルコースを含み、
前記コントローラは、前記インスリンの前記送達の前に存在する前記グルコースの送達前濃度を、標的または予測グルコース濃度と比較し、前記インスリンの前記送達の後に存在する前記グルコースの送達後濃度を、標的または予測グルコース濃度と比較し、これらの比較に基づいて適当なインスリン投与量を決定する、アルゴリズムを使用する
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記コントローラは、生理に基づくモデルを含む制御モデルを使用し、前記コントローラは、前記送達後グルコース濃度と前記標的または予測グルコース濃度との前記比較に基づいて前記モデルを調整することを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラは、データに基づく(経験的)モデルを含む制御モデルを使用し、前記コントローラは、前記送達後グルコース濃度と前記標的または予測グルコース濃度との前記比較に基づいて前記モデルを調整することを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記迅速な取込みは、前記材料に対するPK/PD(薬物動態学および薬力学的)効果の影響を受けることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
患者の体内の物質の濃度を制御するための方法であって、
前記患者の皮内に材料を送達し、その結果、前記材料の迅速な取込みと前記材料の迅速なクリアランスのうちの少なくとも一方が達成されるようにするステップと、
前記患者に送達された前記材料に応答して生じた前記患者の体内の前記物質の前記濃度を決定するステップと、
前記患者に送達する前記材料の量を前記物質の前記濃度に基づいて制御するために使用されるように適合可能な出力を供給するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記供給するステップは、前記患者に送達する前記材料の前記量を制御するために、前記出力を送達装置に供給して前記送達装置を自動的に制御することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記供給するステップは前記出力を、適当な量の前記材料を前記患者に注入するための送達装置の手動調整で使用するために読むことができる、前記物質の前記濃度に関する情報として供給することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記材料はインスリンを含み、前記物質はグルコースを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記インスリンは短時間作用性インスリンを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記材料と前記物質は同じであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記送達するステップは、前記患者の皮内に前記材料を送達する単一針または多針アレイを含む送達装置を動作させることを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記患者の体内の前記物質の前記濃度を感知し、それを指示する信号を供給するステップをさらに含み、前記信号は、前記信号を分析して前記患者の体内の前記物質の前記濃度を決定する前記決定するステップで使用されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記感知するステップは、前記患者の体内のある位置における前記物質の前記濃度を感知し、前記決定するステップは、前記信号を分析して、前記感知が前記濃度を検出した前記位置とは異なる前記患者の体内の別の位置における前記物質の前記濃度を推定することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記送達、決定および供給する各ステップを実行するように適合されたシステムに、自給式電源を使用して電力を供給するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記患者に送達する前記材料としてインスリンを貯蔵するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記送達、決定および供給する各ステップは、前記患者による携帯および着装が可能なシステムによって実行されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項34】
前記送達するステップを実行する送達装置と前記決定および供給する各ステップを実行するコントローラとの間で無線通信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項35】
前記送達するステップを実行する送達装置、前記決定および供給する各ステップを実行するコントローラ、ならびに前記感知するステップを実行するセンサの間で無線通信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項36】
前記患者と健康管理提供者のうちの少なくとも一方と前記システムとの間で情報を中継する、前記送達、決定および供給するステップを実行する前記システムの外部の装置と通信するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項37】
前記決定するステップは、生理に基づくモデルを含む制御モデルを使用することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項38】
前記材料はインスリンを含み、前記物質はグルコースを含み、
前記決定するステップは、前記インスリンの前記送達の前に存在する前記グルコースの送達前濃度を、標的または予測グルコース濃度と比較し、前記インスリンの前記送達の後に存在する前記グルコースの送達後濃度を、標的または予測グルコース濃度と比較し、これらの比較に基づいて適当なインスリン投与量を決定する、アルゴリズムを使用する
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項39】
前記決定するステップは、生理に基づくモデルを含む制御モデルを使用し、前記コントローラは、前記送達後グルコース濃度と前記標的または予測グルコース濃度との前記比較に基づいて前記モデルを調整することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記決定するステップは、データに基づく(経験的)モデルを含む制御モデルを使用し、前記コントローラは、前記送達後グルコース濃度と前記標的または予測グルコース濃度との前記比較に基づいて前記モデルを調整することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記迅速な取込みは、前記材料に対するPK/PD(薬物動態学および薬力学的)効果の影響を受けることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項42】
患者の体内の物質の濃度を調整するためのシステムであって、
標的濃度のプロファイルを表す情報を供給するように適合されたコントローラと、
前記コントローラの制御の下で前記患者の皮内に材料を送達して、前記プロファイルに従って前記物質の前記濃度を実質的に前記標的濃度に調整するように適合された送達装置と
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項43】
前記物質は血中グルコースであり、前記材料はインスリンを含むことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記プロファイルは、時間とともに変化する複数の標的濃度を含むことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項45】
前記プロファイルは、0以外の傾きを有する線として表すことができることを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項46】
前記送達装置は単一針または多針アレイを含むことを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項47】
患者の体内の物質の濃度を調整するための方法であって、
標的濃度のプロファイルを表す情報を供給するステップと、
前記コントローラの制御の下で前記患者の皮内に材料を送達して、前記プロファイルに従って前記物質の前記濃度を実質的に前記標的濃度に調整するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項48】
前記物質は血中グルコースであり、前記材料はインスリンを含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記プロファイルは、時間とともに変化する複数の標的濃度を含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記プロファイルは、0以外の傾きを有する線として表すことができることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記送達するステップは、前記材料を送達するための単一針または多針アレイを有する送達装置を使用するステップを含むことを含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−510467(P2006−510467A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512373(P2005−512373)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/032506
【国際公開番号】WO2005/061041
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】