説明

単純な多目的通信装置および情報クライアント

発展途上国において共通にみられる、経済面およびインフラストラクチャ面の制約の枠内でのディストリビューションおよび操作に適しており、音声通信および/またはデータ通信に対応している1つ以上の無線ネットワークへの接続を確立して維持することが可能な、単純かつ低コストの多目的通信およびデータ情報アクセス装置のための装置およびシンクライアントシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理システムの分野に関し、より詳細には、単純な通信と情報へのアクセスに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムは、今日の現代社会の多くの領域にデータ処理能を提供するために広く用いられている。パーソナルコンピュータシステムは、一般に、システムプロセッサ(多くはマイクロプロセッサ)、関連する揮発性メモリおよび不揮発性メモリ、ディスプレイモニタ、キーボード、1つ以上のディスケットドライブ、固定ディスク記憶装置、ならびに任意選択のプリンタを有するシステムユニットであると定義することができる。このようなパーソナルコンピュータシステムは、主として、シングルユーザ(コンピュータサーバシステムとして機能するパーソナルコンピュータの場合はユーザのグループ)に、個別の演算能力をもたらすように設計され、個人または中小企業が購入できる手頃な価格に設定された情報処理システムである。
【0003】
知られているコンピュータシステムは、各種のハードウェアコンポーネントを備えており、ワードプロセッサ、電子メールプログラム、インターネットを介してコンテンツにリモートにアクセスするプログラム(クライアントと呼ばれることが多い)などの特定のソフトウェアアプリケーションがあらかじめロードされうる。インターネットの構成要素の1つにワールドワイドウェブ(“ウェブ”)があり、これは、世界規模で接続されたネットワークであり、多数のウェブページへのアクセスを可能にしている。ウェブページとは、情報の集合体であり、ユーザはブラウザアプリケーションソフトウェアを用いてこれを閲覧することができる。ブラウザソフトウェアは、ここでは時として「ブラウザ」と呼ぶが、通信リンクを介してウェブページを要求し、要求されたコンテンツをユーザに提示する特殊用途のソフトウェアアプリケーションプログラムである。
【0004】
ウェブページは、テキスト、グラフィック、音楽や発話を含む音声、アニメーション、およびビデオ画像などのさまざまなマルチメディアコンテンツを取り込むことができる。音声コンポーネントを含むウェブページは、ブラウザを使用して閲覧できるほか、聴取することもできる。ウェブページは、ウェブページから、別のウェブページに、あるいはグラフィック、バイナリファイル、マルチメディアファイルのほか、他の多くのインターネットリソースにユーザが移動できるようにするハイパーテキストを使用して、相互接続されている。
【0005】
ウェブは、クライアント/サーバモデル上で動作しており、サーバコンピュータシステムが、リモートのクライアントコンピュータシステムに、情報のウェブページを送信できるようにする。サーバコンピュータシステム(サーバシステム)は、ハードウェアサーバのほか、後述するようにウェブサイトを構成しているソフトウェアウェブページを有する。ハードウェア「サーバ」と「サイト」との2つの文言は、時として入れ替え可能に使用される。
【0006】
リモートクライアントシステムは、Netscape Navigator(登録商標)またはマイクロソフト社のIntrenet Explorer(登録商標)などのブラウザを用いることにより、ウェブページを提示することができる。ブラウザソフトウェアは、ウェブサーバにコンタクトし、情報またはリソースを要求するクライアントとして機能する。ウェブサーバは情報を見つけ出してこれをウェブブラウザに送信し、ウェブブラウザが、この結果をユーザのコンピュータに表現する。ウェブページは、ハイパーテキスト記述言語(HTML)と呼ばれる記述言語を使用して定義される。HTMLは、リモートクライアントコンピュータ上のブラウザによって、ウェブページのテキスト、グラフィック、およびマルチメディアファイルをどのように表現すべきかを定義している標準のタグの組を提供している。また、HTMLは、ウェブページを他のウェブページや他のインターネットリソースにリンクするためのコマンドも有する。
【0007】
しかし、複数のソフトウェアプログラムを記憶して実行することが可能な汎用オペレーティングシステムと、印刷機能、インターネットとの完全な機能通信、およびパーソナルコンピュータに共通するほかの機能を備えたパーソナルコンピュータは、世界人口の一部の集団にとって手が届かないものであると考えられる。多くの場合、このような人口集団が、電力や、地上設置の電気通信を利用することすらできなかったり、このようなインフラストラクチャが存在していてもその信頼性が低かったりする。別のケースとして、このような人口集団が、代表的かつ一般的なコンピュータシステムを操作するためのスキルや知識をもたないこともある。このように、現代の汎用計算機システムを購入できないかこれに対応できない世界人口の大きな集団に、単純かつ信頼性の高い通信および情報アクセス能力を備えた装置を提供することが求められている。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、発展途上国において共通にみられる、経済面およびインフラストラクチャ面の制約の枠内でのディストリビューションおよび操作に適しており、音声、ビデオおよびデータによる通信に対応可能な1つ以上の無線ネットワークへの接続を確立して維持することができる、単純かつ低コストの多目的通信およびデータ情報アクセス装置(以下、「多目的通信装置」と呼ぶ)のための装置およびシステムを提供する。
【0009】
一実施形態では、本発明は、インターネットサービスプロバイダと複数の多目的シンクライアント通信装置との間でアカウントを管理するための環境に関する。前記多目的シンクライアント通信装置のそれぞれは、関連する一意のIDを有する。前記環境は、前記複数の多目的シンクライアント通信装置が前記インターネットサービスプロバイダと対話できるようにするサーバアクセスポイントと、多目的シンクライアント通信装置を前記インターネットにアクセスさせるべきかどうかを検証する検証モジュールと、複数の基準に基づいて、多目的シンクライアント通信装置が正当なシステムであるかどうかを判定する判定モジュールとを有する。前記インターネットサービスプロバイダは、多目的シンクライアント通信装置のユーザとの関係のビジネス部分を管理するために前記判定を使用する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、プロセッサ、前記プロセッサに接続された通信装置、および前記プロセッサに接続された不揮発性記憶装置を有し、複数の多目的通信装置がインターネットサービスプロバイダに接続できるようにする装置に関する。前記通信装置は、前記複数の多目的通信装置および前記インターネットサービスプロバイダと対話する。前記不揮発性記憶装置は、アカウント管理モジュールおよびブラウザモジュールを含む。前記アカウント管理モジュールは、前記インターネットサービスプロバイダが、前記複数の多目的通信装置のそれぞれのアカウントを管理できるようにする。前記ブラウザモジュールは、前記複数の多目的通信装置のそれぞれが、個々に前記インターネットサービスプロバイダに接続できるようにする。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、関連する一意のIDをそれぞれ有する複数の多目的シンクライアント通信装置と、サーバアクセスポイントとを有する、低コストの情報アクセスを提供するためのクライアントサーバアーキテクチャに関する。前記サーバアクセスポイントは、前記複数の多目的シンクライアント通信装置がインターネットサービスプロバイダと対話できるようにする。前記サーバアクセスポイントは、多目的シンクライアント通信装置を前記インターネットにアクセスさせるべきかどうかを検証する検証モジュールと、複数の基準に基づいて、多目的シンクライアント通信装置が正当なシステムであるかどうかを判定する判定モジュールと、を有する。
【0012】
したがって、本発明は、インターネットなどの広域情報ネットワークにわたって、音声通信と情報アクセスを無線で実行しつつ、一意のユーザ識別子にリンクさせて、情報アクセスおよび音声通信機能を所定のサブセットで提供するために使用することができる。
【0013】
本発明は、添付の図面を参照することによってより明確に理解することができ、その数多くの目的、特徴および利点が、当業者には明白となろう。同じ参照符号を複数の図面にまたがって使用している場合、同じ要素または似た要素を参照している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、複数のユーザに低コストの多目的通信装置を提供するための環境100のブロック図が示される。より詳細には、複数の多目的通信装置110は、GSM/GPRS、802.11xまたは802.16などのプロトコル(これらに限定されない)を使用して、ワイヤレス通信リンクを介してシンクライアントアクセスポイント(AP)120に接続されている。シンクライアントアクセスポイント120のほうは、ディストリビューションネットワーク130に接続されている。
【0015】
ディストリビューションネットワーク130は、アクセスポイントチャネル122を集約しており、1つ以上の通信リンク132を使用して、インターネットサービスプロバイダ(ISP)140に接続されうる。この通信リンク132には、専用電話回線、ワイヤレス接続、ブロードバンド接続、あるいは、音声通信およびデータ通信に対応可能な任意の通信リンクなどが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、ディストリビューションネットワークは、802.11、GSM、ISDN、EDGEまたはGSM3.0、802.16の各インタフェース(これらに限定されない)などの1つ以上の無線インタフェース、あるいは、網目状ネットワークを形成するV.90モデル、ISDN、XDSLなど(これらに限定されない)の1つ以上の有線インタフェースを含んでいてもよい。
【0016】
インターネットサービスプロバイダ140は、1つ以上のブロードバンド通信リンク142を介して、インターネットまたは他の情報ネットワークに接続されている。この通信リンク142には、デジタル加入者線(DSL)、T1専用回線、総合サービスデジタルネットワーク(ISDN)またはケーブル接続等の有線接続直接リンク、セルラー802.16または衛星ネットワーク等のワイヤレス接続、ローカルエリアネットワークを介したイーサネットまたはトークンリングなどのローカルデータ転送システム、あるいは情報ネットワークとのデータ通信に対応可能な任意の通信リンクが含まれるが、これらに限定されない。インターネットまたは他の情報ネットワーク150は、複数のウェブサーバ160へのアクセスを提供する。
【0017】
環境100は、複数のユーザに、低コストで情報にアクセスできるようにするためのシステムを提供する。インターネットにある情報にアクセスしたいユーザは、多目的通信装置110を使用して、アクセスポイント120に接続する。通信装置110は、本質的には、“シンクライアント”ソフトウェアを実行しており、これは、アクセスポイントで実行されている“シンクライアント”アプリケーションとの通信プロトコルを実装している。“シンクライアントアプリケーション”の例に“シンクライアントウェブブラウザ”がある。
【0018】
多目的通信装置110は、多目的通信装置110がアクセスポイント120との通信リンクを確立できるようにする通信用のハードウェアとソフトウェアを備える。アクセスポイント120は、通信装置110がインターネットサービスプロバイダ140との通信リンクを確立できるようにするハードウェアとソフトウェアを備える。インターネットサービスプロバイダ140は、ブラウザから送信される要求を受け取り、これを読み取るためのソフトウェアを実行している。ユーザが、多目的通信装置110にコマンドを入力することによって、情報への要求を入力すると、多目的通信装置110は、このコマンドを、アクセスポイントで実行されている“シンクライアント”に伝達する。コマンドは、情報への要求などであり、特定の話題に関連する文書または特定のウェブページの検索などである。この場合、ウェブブラウザシンクライアントアプリケーションは、このコマンドを、特定のウェブページに対するコマンドに解釈して、これをインターネットサービスプロバイダに送る。インターネットサービスプロバイダ140は、複数のウェブサーバ160上の情報への要求を監視し、これにサービスするアプリケーションプログラムを実行している。このアプリケーションプログラムは、インターネット150を介して、要求を適切なウェブサーバ160に転送し、これを受けてウェブサーバ160は、要求された情報をインターネットサービスプロバイダ140(ISP)に送る。インターネットサービスプロバイダ140は、情報を適切なアクセスポイントに送信し、アクセスポイントが、情報をユーザの多目的通信装置110に送信する。
【0019】
インターネット上の各ウェブサーバ160は既知のアドレスを有しており、ユーザは、このアドレスをウェブブラウザに提供して、適切なウェブサーバ160に接続する。あるタイプの情報が求められている場合、ユーザは、求めるタイプの情報を含む多数のページのアドレスを返す“検索”プログラムを実行しているサーバにアクセスしうる。ウェブサーバ160に複数のウェブページが含まれることがあるため、ユーザは、アドレス中に、どのウェブページを閲覧するかも指定する。このアドレスは、ユニバーサルリソースロケータ(URL)とも呼ばれ、サーバと、そのサーバ上でのページの位置を示す一連の数字であり、郵便用の住所のようなものである。簡便のため、ユーザが、数字の代わりに簡単に覚えられる名前を使用して、サーバと文書を指定できるようにするドメイン名システムが開発された。URLでは、ドメイン名の末尾に追加情報を付加することによって、コンテンツプロバイダに属しているページのグループ中の特定のページを更に指定することができる。インターネットのURLリンクは、関心のある分野に的を絞るように、特定のアクセスポイント120で実行されているブラウザ内に定義および事前設定することができる。このような分野としては、ウェブベースのEメール、サーチエンジン、ニュース、気象サービス、および所定の情報源などが挙げられるが、これらに限られない。多目的通信装置110のディスプレイ装置に提示される情報は、多目的通信装置110の接続先のアクセスポイントで実行されているブラウザが提供しているものであり、このため、ウェブリンクを通信装置110上で閲覧することができる。
【0020】
1つ以上の多目的通信装置110とインターネットサービスプロバイダ140との組み合わせにより、複数のユーザがvoice over IP(VOIP)を介した音声通信を行えるようにするシステムが提供される。音声通信を介した通信を行いたいユーザは、マイクロフォンと単純なスピーカを備えた多目的通信装置110を使用する。マイクロフォンはアナログ−デジタル変換器(ADC)に接続され、スピーカはデジタル−アナログ変換器(DAC)に接続されている。ユーザがマイクロフォンに向かって発話すると、その音声がマイクロフォンとADCによってデジタル情報に変換される。アクセスポイント(AP)でブラウザの代わりに、VOIPアプリケーションが実行されている場合、デジタル情報は、音声パケットとして解釈されて、電話番号伝達情報と共にISPに送信される。ISPは、これが通話であると認識して、パケットをインターネットプロトコル(IP)パケットに変換し、伝達情報を解釈し、インターネットを介してIPパケットを被呼側に送る。逆に、通信装置110を所有している特定のユーザ宛の音声パケットが特定のAPに送られた場合、これがISP140によって認識され、ISPは、このパケットを、宛先のユーザに接続されているVOIPシンクライアントアプリケーションに送る。このシンクライアントアプリケーションは、音声パケット中のデジタルデータをデータに変換し、これを、通信装置110のDACが聴取可能なアナログ信号に変換し、この信号が通信装置110のスピーカによって音声に変換される。
【0021】
図2を参照すると、多目的通信装置110のブロック図が示される。多目的通信装置110は、キーボード、タッチセンサパッド、タッチスクリーン、ジョイスティックタイプのデバイスなどのデジタル入力装置205に接続されたシンクライアントコントローラ202を備える。シンクライアントコントローラ202は、GSM/GPRSセルラー送受信器、あるいは802.11xまたは802.16のIP送受信器などのワイヤレス通信装置211にも接続されている。シンクライアントコントローラ202は、マルチラインディスプレイ、グラフィックディスプレイ(これらに限定されない)等のディスプレイ装置などのデジタル出力装置214にも接続されている。
【0022】
また、シンクライアントコントローラ202は、シンクライアントソフトウェア240が記憶されている不揮発性記憶装置も備える。シンクライアントソフトウェアには、入力コマンドを解釈するためのソフトウェアのほか、アクセスポイント120から受け取った出力情報を表現するソフトウェアが含まれる。また、シンクライアントソフトウェアは、一意のユーザ識別子(UUID)を有する。例えば、UUID250は、シンクライアントコントローラ内のリードオンリーメモリ装置(ROM)または固定配線の集積回路に記憶されうる。また、シンクライアントソフトウェアには、通信装置211、アナログインタフェース回路(ADCまたはDAC)、ならびにマイクロフォンおよびスピーカサブシステムに関連するアナログ信号処理回路を制御するためのソフトウェアも含まれる。また、クライアントコントローラ220は、実行プログラムと関連のデータを記憶するためのRAMも備える。また、シンクライアントコントローラとソフトウェアの組み合わせは、DACに出力されるデータ/ADCから入力されるデータを処理するために、必要なデジタル信号処理を実装している。
【0023】
コントローラ202の実装は、コストと機能のトレードオフ評価に基づいて決定される。一実施形態では、コントローラ202内のメモリは、エンドユーザがアクセスすることができず、製造段階で変更されてもよい。いずれの場合も、メモリインタフェースは、通常、コストと電力消費を抑えるために未終端である(unterminated)。一実施形態では、コントローラ202は、低コストおよび低電力の特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0024】
一実施形態では、多目的通信装置110のアナログI/Oデバイス207,216には、音声の再生、またはvoice over IP(VOIP)などのアプリケーションのために全二重音声に対応可能な外部ヘッドセット用のヘッドホン/マイクロフォン一体型ジャックが含まれる。別の実施形態では、マイクロフォン216とスピーカ207が、シンクライアント多目的通信装置110に内蔵されていてもよい。
【0025】
多目的通信装置110は、携帯可能であり、このためバッテリ給電されうる。バッテリは、必要な全電圧をシステムに供給するのに充分な電力を供給可能なオンボードの調節装置と共に、外部のAC/DCアダプタを使用して再充電可能である。
【0026】
図3を参照すると、シンクライアントアクセスポイント120は、基本的には、このAPに接続されている多目的通信装置にサービスするための専用のシンクライアントサーバである。シンクライアントサーバAPの主要な構成要素は、そのプロセッサ302、ランダムアクセスメモリ(RAM)等のメモリ306、およびI/Oデバイスをシステムバス312にインタフェースするI/Oコントローラ304である。APはサーバとして、通常、専用のキーボードとディスプレイを備えていないが、I/Oデバイス305用のコネクタを備えうる。通常、シンクライアントAPは、IPアドレスの割り当てのため、通信インタフェース313を介してリモートにプログラムされる。通信インタフェースは、I/Oコントローラ304に接続されている。シンクライアント110とディストリビューションネットワーク130の通信チャネルが異なっている場合、通信装置311がシンクライアントと通信するため、および通信装置313がディストリビューションネットワークと通信するために、複数の通信送信機が存在する。1つのインタフェースがシンクライアントとディストリビューションシステムの両方に対応していてもよい。また、I/Oコントローラには、リードオンリーメモリ(ROM)307およびハードディスクドライブ(HDD)308等の非揮発性メモリデバイスも接続されている。
【0027】
不揮発性記憶装置307,308には複数のソフトウェアモジュールが記憶されている。より詳細には、BIOS320、オペレーティングシステム330、通信ソフトウェア340、一意のユーザ識別子(UUID)350、およびシンクライアントアプリケーション360が、不揮発性記憶装置に記憶されており、RAMにダウンロードされてプロセッサ302によって実行される。例えば、UUID350は、リードオンリーメモリ装置(ROM)または固定配線の集積回路に記憶されうる。
【0028】
RAM306の実装は、コストと機能のトレードオフ評価に基づいて決定される。
【0029】
一実施形態では、シンクライアントAPの不揮発性記憶装置307は、記憶を行ない、BIOS320からブートするためのROM装置を備える。ROM装置は、無線通信リンクを介して実行されるソフトウェア操作により、パッチRAMを使用して現場で更新することができる。BIOS320を更新するソフトウェアメカニズムは、システムソフトウェア更新処理の一部であり、ユーザが意識することはない。
【0030】
一実施形態では、多目的通信装置110を、HDDイメージ復旧モードにするためのメカニズムが複数存在する。その方法の1つに、ボタンの押下がある。このボタンは、通常はユーザがその存在を知らず、偶発的に押すことはできない隠しボタンである。この例としては、ボタンを作動させるのに、筐体に設けた穴に紙用クリップまたは小さな物体を押し込む必要があるボタンがある。イメージ復旧は、無線通信リンクを介して事項されるソフトウェア操作によって行うことができ、ユーザから隠されていてもよい。
【0031】
図4を参照すると、多目的通信装置シンクライアントソフトウェア240は、入力コマンドモジュール410、出力コマンドモジュール412、無線通信モジュール414、およびUUIDモジュール416を備える。シンクライアントソフトウェアには、ブラウザソフトウェア等のアプリケーションソフトウェアが含まれていない。多目的通信装置110に提供されるブラウザ機能は、アクセスポイント120を介して提供される。
【0032】
入力コマンドモジュール410は、キーボード、タッチスクリーンまたはマイクロフォン等のI/O入力装置によって提供されるコマンドを解釈およびカプセル化(encapsulate)して、このコマンドをシンクライアントAP120に中継する単純なプロトコルを有する。また、出力コマンドモジュールも、シンクライアントAP120から受け取ったコマンドを解釈したり、シンクライアントAP120から受け取ったデータを、ディスプレイ214、スピーカ207などの出力装置に提示する単純なプロトコルを有する。無線通信モジュール414は、アクセスポイント120との間で情報を送受信するために必要なメディアアクセス制御(MAC)ソフトウェアと、シンクライアントとAP間で交換されるパケットを暗号化および復号化するために必要なソフトウェアとを有する。このようなソフトウェアの例には、IEEE802.11のセキュリティソフトウェアがある。
【0033】
図5を参照すると、アクセスポイントソフトウェアは、ハイパーバイザ514(仮想マシンモニタまたはVMMとも呼ばれる)を介してアクセスポイントハードウェア512と仮想的に対話する複数のサイロ510a,510b,…を備える。アクセスポイントハードウェアは、Pacifica技術を使用したAMDプロセッサなどの、ハードウェアによって仮想化に対応しているプロセッサをベースとしたものなどである。サイロ510のそれぞれは、オペレーティングシステム330のインスタンシエーション、1つ以上のアプリケーション360(ウェブブラウザ520など)、アカウント管理モジュール518、およびセキュリティモジュール522を有する。各多目的通信装置110に提供されるブラウザ機能は、各サイロ内のウェブブラウザを介して提供される。更に、サイロの1つ(510aなど)は、システム管理サイロとして機能し、ソフトウェア更新モジュール530とイメージ復旧モジュール532を更に備える。
【0034】
オペレーティングシステム330は、WindowsベースのオペレーティングシステムまたはLinuxベースのオペレーティングシステムなどであるが、これらに限定されない。WindowsオペレーティングシステムまたはLinuxオペレーティングシステムは、システムの性能に影響しうる複数の設定可能な動作パラメータを独自に有する。実装されるオペレーティングシステムを問わず、アクセスポイント120に実装されるプロセッサ302を使用して、全てのオペレーティングシステムの個々の特性が、その値と、システムの性能に与える影響の間の関係について評価されうる。これらの構成設定は、インストール済みのイメージに予め設定されていてもよい。
【0035】
一実施形態では、アクセスポイント120と、アクセスポイント120と通信する多目的通信装置110とが、シンクライアント/サーバペアとして機能するために必要な全てのソフトウェアアプリケーション360を含む状態で、アクセスポイント120が出荷される。アクセスポイント120は、ユーザがアプリケーションソフトウェアをインストールできるように設計されてはいない。アプリケーションは、通常、通信リンクを介してシステム管理者により実行されるソフトウェア操作によって、更新モジュール530を介して追加または更新することができ、ユーザからは隠されていてもよい。
【0036】
アクセスポイント120は、オペレーティングシステムのセキュリティパッチ、アプリケーションパッチ、BIOS更新、新しいドライバおよび/またはアプリケーションなど、さまざまな場合を想定して、ソフトウェアイメージのメンテナンスを可能にする。パッチ管理のためのメカニズムは、ソフトウェアに内蔵されうる。インターネットサービスプロバイダ140がパッチ機能を有するための最低必要条件が設けられている。あるいは、オペレーティングシステムのメンテナンスが、オペレーティングシステムベンダのインフラストラクチャによって直接管理されてもよい。例えば、Windowsを、標準のWindows Updateサービスを使用してメンテナンスすることができるが、システムをメンテナンスするためのメカニズムは、インターネットサービスプロバイダが提供する。
【0037】
アクセスポイント120はインターネットをブラウズする機能、ブックマークやその他のデータをシステムに保存する機能を備え、これらの機能は、利用可能な揮発性メモリとユーザ特権によって制約される。また、アクセスポイントは、複数の通信装置110が、インターネットを閲覧したり、ブックマークや他のデータをアクセスポイントに保存できるようにする機能も備える。ユーザ構成設定は、アクセスポイント120に記憶される。全ユーザデータは、ユーザが、ファイルシステムをあちこち辿る方法を知らなくても、直接アクセスできる場所に記憶される。このユーザデータは、他のサイロまたは他の手段のウイルスまたはプログラムによるデータの破壊を防ぐために、オペレーティングシステムの残りの部分から隔離されている。ユーザデータは、システムイメージを完全に復旧させる場合であっても残り、壊滅的なディスクのハードウェア不良が起こらない限り上書きされることはない。
【0038】
各多目的通信装置110で使用可能なブラウザ機能は、アクセスポイント120のブラウザモジュール520を介して提供される。各多目的通信装置110は、AP120内の自身のサイロ570b,c,…に、別個のブラウザモジュールのインスタンシエーションとユーザデータを有する。このため、各多目的通信装置110は、アクセスポイント120内に記憶された一意のユーザデータを有しうる。
【0039】
各サイロ510a,b,c,…内のセキュリティモジュール522は、すべての通信装置110に対して、アクセスポイント120とシンクライアント通信装置間、およびAP120とインターネットサービスプロバイダ140間のセキュリティ機能を提供する。一実施形態では、オペレーティングシステムは、ユーザプログラムおよびデータを確実に隔離するために、安全な仮想化に対応している。このようなオペレーティングシステムの1つである、Microsoft(登録商標)社のWindows Vista(登録商標)とその後継であるUnity(登録商標)は、トラステッドプラットフォームモジュール(TPM)を利用して、記憶されているデータの暗号化、ユーザの認証、安全なパケットの送信に使用されるキーを安全に記憶できるようにしている。
【0040】
図6を参照すると、複数のユーザに低コストの多目的通信装置を提供するための、アカウント管理モジュール518とネットサービスプロバイダ140間の対話のフローチャートが示される。より詳細には、ステップ610において、ユーザは、多目的通信装置110を用いてインターネットにアクセスすることによって、多目的通信装置110によるインターネットセッションを開始する。インターネットサービスプロバイダ140との接続が、通信装置110とアクセスポイント120を介して確立される。次に、ステップ620において、ユーザは、インターネットサービスプロバイダにユーザ名とパスワードを提供する。次に、ステップ622において、インターネットサービスプロバイダ140は、ユーザが認証された/正当なユーザであるかどうかを判定する。ユーザが承認されたユーザでない場合、ステップ624において、インターネットサービスプロバイダはインターネットへのアクセスを拒否する。ユーザが承認されたユーザである場合、ステップ626において、インターネットサービスプロバイダはセッションを承認し、ユーザがインターネットサービスプロバイダ140を介してインターネットに接続される。
【0041】
更に、ステップ630において、ユーザがユーザ名を提供している間に、多目的通信装置110は、ユーザが気付かないうちに、あるいはユーザが操作をしなくても、インターネットサービスプロバイダ140にUUIDをバックグラウンドで提供する。次に、ステップ632において、インターネットサービスプロバイダは、多目的通信装置が真正な/正当な装置であるかどうかを判定する。インターネットサービスプロバイダ140は、複数の基準に基づいて、多目的通信装置110が正当なシステムであるかどうかを判定する。このような基準には、多目的通信装置の最近の支払がなされているか、多目的通信装置110の盗難が報告されているか、同じ装置の複製があるか(つまり、装置の不正な複製が作成されている)、装置が接続を確立している場所が想定された場所と一致しているか、などがあるが、これらに限定されない。基本的には、インターネットサービスプロバイダ140は、ユーザとの関係のビジネス部分を管理するために、この判定を利用しうる。例えば、多目的通信装置110があるユーザに割り当てられている場合、この判定により、割り当ての期間が継続中であるかどうかが判定されうる。システムが正当なシステムである場合、ステップ626において、インターネットサービスプロバイダを介してユーザがインターネットに接続される。
【0042】
次に、ステップ640において、インターネットサービスプロバイダ140は、接続の持続時間などの特定の基準に基づいて、インターネットセッションを監視しうる。ステップ642において、インターネットサービスプロバイダ140は、この監視に基づいて、接続されている多目的通信装置110が真正な/正当なシステムであるかどうかを定期的に判定しうる。接続中の多目的通信装置110が真正な/正当なシステムである場合、ステップ626において、インターネットサービスプロバイダ140はセッションの許可を続ける。接続中の多目的通信装置110が正当なシステムでない場合、ステップ644において、インターネットサービスプロバイダ140はインターネットへのアクセスを終了する。
【0043】
本発明は、上記に記載した利点のほかに、それ自体に内在する利点を得るように好適に適合される。本発明を図示および記載し、本発明の特定の実施形態に言及して定義したが、このような言及は本発明を限定することを意味するものではなく、このような限定が推測されてはならない。本発明は、通常の知識を有する当業者が想到するような、形状および機能の面での相当の変更例、変形例、および均等物が可能である。図示し記載した実施形態は例に過ぎず、本発明の範囲をすべて網羅するものではない。
【0044】
例えば、上で説明した実施形態は、特定のタスクを実行するモジュールを備える。ここに記載したモジュールは、ハードウェアモジュールを備えても、ソフトウェアモジュールを備えてもよい。ハードウェアモジュールは、特定用途向け回路内に、またはある形のプログラマブルロジックデバイスによって実装することができる。ソフトウェアモジュールには、スクリプトバッチまたは他の実行可能ファイルなどがある。モジュールは、フラッシュメモリカード等の機械可読媒体またはコンピュータ可読記憶媒体に記憶することができる。本発明の実施形態に係るソフトウェアモジュールを記憶するために用いられる記憶装置としては、マイクロプロセッサ/メモリシステムに、恒久的に、着脱自在に、あるいはリモートで接続することができる半導体ベースのメモリなどがある。このため、モジュールがコンピュータシステムのメモリ内に記憶され、コンピュータシステムが、モジュールの機能を実行するために構成されうる。ここに記載したモジュールを記憶するために、他の新しいタイプや各種タイプのコンピュータ可読記憶媒体を使用することができる。更に、当業者は、複数のモジュールに機能を分けることが、例示であることを認めるであろう。別の実施形態では、複数のモジュールの機能を1つのモジュールに統合したり、またはモジュールの機能を別の方法で分離してもよい。例えば、ソフトウェアモジュールが複数のサブモジュールを呼び出すようにして、各サブモジュールがその機能を実行し、他のサブモジュールに制御を直接渡してもよい。
【0045】
また、例えば、多目的通信装置に関して説明したすべてのソフトウェアが、例えば、搬送波に埋め込まれた信号として動作してもよいことが理解されよう。
【0046】
また、例えば、ほかの多目的通信装置のアーキテクチャやアクセスポイントのアーキテクチャも本発明の範囲に含まれることも理解されよう。
【0047】
また、例えば、ここに記載した実施形態では無線チャネルを想定しているが、通信チャネルは、一般に有線であっても無線であってもよい。
【0048】
このため、本発明は添付の請求の範囲の趣旨および範囲のみによって限定されるものであり、あらゆる点で均等物を完全に包含する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】複数のユーザに低コストの多目的通信装置を提供するためのシステムのブロック図。
【図2】多目的通信装置のシステムブロック図。
【図3】アクセスポイントのブロック図。
【図4】多目的通信装置のソフトウェアのブロック図。
【図5】アクセスポイントのソフトウェアのブロック図。
【図6】複数のユーザに低コストの多目的通信装置を提供するためのシステムのアカウント管理処理のフローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットサービスプロバイダと、関連する一意のIDをそれぞれ有する複数の多目的シンクライアント通信装置との間でアカウントを管理するための環境であって、
前記複数の多目的シンクライアント通信装置が前記インターネットサービスプロバイダと対話できるようにするサーバアクセスポイントと、
多目的シンクライアント通信装置を前記インターネットにアクセスさせるべきかどうかを検証する検証モジュールと、
複数の基準に基づいて、多目的シンクライアント通信装置が正当なシステムであるかどうかを判定する判定モジュールとを備え、
前記インターネットサービスプロバイダは、多目的シンクライアント通信装置のユーザとの関係のビジネス部分を管理するために前記判定を使用する環境。
【請求項2】
前記複数の基準には、前記多目的シンクライアント通信装置の最近の支払がなされているかどうかが含まれる請求項1に記載の環境。
【請求項3】
複数の基準には、前記多目的シンクライアント通信装置の盗難が報告されているかどうかが含まれる請求項1に記載の環境。
【請求項4】
前記複数の基準には、前記多目的シンクライアント通信装置の複製が存在するかどうかが含まれる請求項1に記載の環境。
【請求項5】
前記複数の基準には、前記多目的シンクライアント通信装置が前記接続を確立している場所が想定された場所に一致しているかどうかが含まれる請求項1に記載の環境。
【請求項6】
前記アクセスポイントはブラウザモジュールを有し、前記ブラウザモジュールは、前記複数の多目的シンクライアント通信装置のそれぞれがインターネットをブラウズできるようにする請求項1に記載の環境。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−517781(P2009−517781A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543401(P2008−543401)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/045612
【国際公開番号】WO2007/064666
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.WINDOWS
3.Linux
【出願人】(591016172)アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド (439)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED MICRO DEVICES INCORPORATED
【Fターム(参考)】