単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法及びその改良された単結晶炭化ケイ素基板、並びに、単結晶炭化ケイ素成長方法
【課題】マイクロパイプ欠陥や界面欠陥等の発生が少ないとともに、幅広なテラスを有し表面の平坦度の高い、高品質、高性能な単結晶SiCの提供すること。
【解決手段】単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良するため、真空下で、約1200℃以上2300℃以下の温度で単結晶炭化ケイ素基板を加熱する。また、前記特長を有する単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを重ね、密閉容器内に設置して、高温熱処理を行うことによって、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記多結晶炭化ケイ素基板との間に、熱処理中に極薄金属シリコン融液を介在させ、前記単結晶炭化ケイ素基板上に単結晶炭化ケイ素を液相エピタキシャル成長させる。好ましくは、前記加熱処理を、減圧下で約1600℃以上1800℃以下の範囲の所定の温度で行うことによって、成長する単結晶炭化ケイ素の表面の平坦度を制御する。
【解決手段】単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良するため、真空下で、約1200℃以上2300℃以下の温度で単結晶炭化ケイ素基板を加熱する。また、前記特長を有する単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを重ね、密閉容器内に設置して、高温熱処理を行うことによって、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記多結晶炭化ケイ素基板との間に、熱処理中に極薄金属シリコン融液を介在させ、前記単結晶炭化ケイ素基板上に単結晶炭化ケイ素を液相エピタキシャル成長させる。好ましくは、前記加熱処理を、減圧下で約1600℃以上1800℃以下の範囲の所定の温度で行うことによって、成長する単結晶炭化ケイ素の表面の平坦度を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロパイプ欠陥や界面欠陥等の発生が少ないとともに、幅広なテラスを有し表面の平坦度の高い、高品質、高性能な単結晶炭化ケイ素の提供を可能とする種結晶である単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法及びその改良された単結晶炭化ケイ素基板、並びに、単結晶炭化ケイ素成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(以下、SiCという)は、耐熱性及び機械的強度に優れている。更に、放射線にも強く、不純物の添加によって電子や正孔の価電子制御が容易である。加えて、広い禁制帯幅を持つ。因みに、6H型の単結晶SiCで約3.0eV、4H型の単結晶SiCで3.3eVである。そのため、シリコン(以下、Siという。)やガリウムヒ素(以下、GaAsという。)などの既存の半導体材料では実現することができない高温、高周波、耐電圧・耐環境性を実現することが可能である。それ故、次世代のパワーデバイス、高周波デバイス用半導体材料として注目され、かつ期待されている。また、六方晶SiCは、窒化ガリウム(以下、GaNという。)と格子定数が近く、GaNの基板として期待されている。
【0003】
この種の単結晶SiCを製造する方法として次のようなものがある。
例えば、昇華再結晶法(改良レーリー法)によると、ルツボ内の低温側に単結晶SiC基板を種結晶として固定配置する。高温側に原料となるSiを含む粉末を配置する。ルツボを不活性雰囲気中で1450以上2400℃の高温に加熱する。それによって、Siを含む粉末を昇華させて低温側の種結晶の表面上でSiCを再結晶させる。このようにして、単結晶SiCの育成を行なう。
【0004】
また、例えば、特許文献1によると、単結晶SiC基板とSi原子及びC原子により構成された板材とを微小隙間を隔てて互いに平行に対峙さる。その状態で大気圧以下の不活性ガス雰囲気、且つ、SiC飽和蒸気雰囲気下で単結晶SiC基板側が板材よりも低温となるように温度傾斜を持たせる。そして、熱処理することにより、微小隙間内でSi原子及びC原子を昇華再結晶させる。このようにして、単結晶SiC基板上に単結晶を析出させる。
更にまた、例えば、特許文献2によると、液相エピタキシャル成長法(以下、LPE法という。)によって単結晶SiC上に第1のエピタキシャル層を形成する。その後に、CVD法によって表面に第2のエピタキシャル層を形成して、マイクロパイプ欠陥を除去する。
【0005】
【特許文献1】特開平11−315000号公報
【特許文献2】特表平10−509943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら単結晶SiCの形成方法のうち、例えば、特許文献1等に記載の昇華再結晶法の場合は、成長速度が数100μm/hrと非常に早い反面、昇華の際にSiC粉末がいったんSi, SiC2、Si2Cに分解されて気化し、さらにルツボの一部と反応する。このために、温度変化によって種結晶の表面に到達するガスの種類が異なり、これらの分圧を化学量論的に正確に制御することが技術的に非常に困難である。また、不純物も混入しやすく、その混入した不純物や熱に起因する歪みの影響で結晶欠陥やマイクロパイプ欠陥等を発生しやすく、また、多くの核生成に起因する結晶粒界の発生など、性能的、品質的に安定した単結晶SiCが得られないという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のLPE法の場合は、昇華再結晶法で見られるようなマイクロパイプ欠陥や結晶欠陥などの発生が少なく、昇華再結晶法で製造されるものに比べて品質的に優れた単結晶SiCが得られる。その反面、成長過程が、Si融液中へのCの溶解度によって律速されるために、成長速度が10μm/hr以下と非常に遅くて単結晶SiCの生産性が低く、製造装置内の液相を精密に温度制御しなくてはならない。また、工程が複雑となり、単結晶SiCの製造コストが非常に高価なものになる。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、マイクロパイプ欠陥や界面欠陥等の発生が少ないとともに、幅広なテラスを有し表面の平坦度の高い、高品質、高性能な単結晶SiCの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
前記目的を達成するための第1の発明は、単結晶炭化ケイ素を成長させるための単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する方法である。そして、真空下で、約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で単結晶炭化ケイ素基板を加熱して、前記単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良することを特徴とする。前記真空は約10-2Pa以下であり、好ましくは約10-5Pa以下である。
上記単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によれば、単結晶炭化ケイ素基板の表面が規則的に並ぶ複数のステップで覆われる。
【0010】
従来の単結晶SiCを成長させるための基板は、その表面が鏡面に研磨加工されており、従来の単結晶SiC基板の表面は研磨痕等の不規則に並ぶ微少な凹凸で覆われていた。そのため、前記不規則に並ぶ微少な凹凸が影響して品質のよい単結晶SiCの製造を妨げていた。
本発明の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によれば、その基板表面が規則的に並ぶ複数のステップで覆われるので、単結晶炭化ケイ素を成長させる方法に用いられる種結晶である単結晶炭化ケイ素基板として適している。前記単結晶炭化ケイ素を成長させる方法として、液相成長法(LPE)や気相成長法(CVD)又は昇華法等が挙げられる。
【0011】
また、所定の減圧下の予備加熱室で、前記単結晶炭化ケイ素基板が約800℃以上に予備加熱されていることが好ましい。前記予備加熱後、予め、所定の減圧下で約1200℃以上2300℃以下の所定の温度に昇温調整された本加熱室に、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を移動させ、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で加熱し、単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する。
前記予備加熱室における所定の減圧と前記本加熱室における所定の減圧は約10-2Pa以下であり、好ましくは約10-5Pa以下である。
【0012】
このような熱処理装置によると、予備加熱室の予備加熱によって短時間で約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度に昇温することが可能である。そのため、表面改良を短時間で終了することができ、効率化が可能となる。
しかしながら、予備加熱室の無い熱処理装置によって、表面改良の加熱処理を行ってもよい。この場合でも、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5 Pa以下の減圧下で、加熱温度は、約1200℃以上2300℃以下以下の範囲の所定の温度である。好ましくは、約1350℃以上1800℃以下の範囲である。特に、約1400℃以上1650℃以下の範囲が好ましい。
【0013】
また、不純物が存在しない約10-5Pa以下の減圧下若しくは真空下で加熱して単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良すると、他の不純物が単結晶SiC基板中に侵入することがない。
その結果、このような方法で表面改良された単結晶SiC基板を用いて単結晶SiCを成長させると、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することが可能となる。
【0014】
また、本発明の単結晶SiC基板の表面改良方法は、従来より行われている他の単結晶SiC基板製造方法と連続して行ってもよい。例えば、従来の単結晶SiC基板製造方法において最終工程として行ってもよい。
更にまた、本発明の単結晶SiC基板の表面改良方法は、液相成長法(LPE)や気相成長法(CVD)又は昇華法等の単結晶SiC成長方法において、単結晶SiCを成長をさせるための種結晶である単結晶SiC基板の前処理工程として行ってもよい。
【0015】
前記単結晶炭化ケイ素基板は機械的研磨加工された表面を有する場合、その表面が真空高温加熱処理により約1nmレベルの微細表面均一品質に改良される。その結果、研磨痕等が薄くなり、そして無くなる。
前記加熱処理により、単結晶炭化ケイ素を成長させるための単結晶炭化ケイ素基板の表面を規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良する。
前記目的を達成するための第2の発明は、前記特長を有する単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によって得られた表面が改良された単結晶炭化ケイ素基板である。
【0016】
前記目的を達成するための第3の発明は、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを重ね、密閉容器内に設置して、高温熱処理を行うことによって、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記多結晶炭化ケイ素基板との間に、熱処理中に極薄金属シリコン融液を介在させ、前記単結晶炭化ケイ素基板上に単結晶炭化ケイ素を液相エピタキシャル成長させる単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法である。
【0017】
前記密閉容器を、予め圧力10-5Pa以下の予備加熱室で800℃以上に加熱するとともに、前記密閉容器内を圧力10-5Pa以下に減圧し、予め約1400℃以上2300℃以下に加熱された圧力10-2Pa以下の加熱室に移動して設置することで、前記単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを短時間で約1400℃以上2300℃以下に、好ましくは、約1500℃以上1900℃以下の範囲である。特に、約1600℃以上18000℃以下の範囲が好ましい。
そして微結晶粒界の存在しない、表面のマイクロパイプ欠陥密度が1/cm2以下である単結晶炭化ケイ素を製造する。上記温度範囲の所定の温度で加熱処理を行なうと、ステップ間距離が広くなり、平坦な表面を作成することが可能となる。
【0018】
前記種結晶となる基板として上述の単結晶炭化ケイ素基板を用いることが好ましい。
本発明の単結晶炭化ケイ素の成長方法によれば、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面に形成されるテラスの幅を約100μmオーダーに制御することができる。ここで、前記テラスとは複数のステップの中で広い幅を有するステップを指す。
更に、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面に形成されるステップの高さを、結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする原子オーダーに制御することができる。
更にまた、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面のマイクロパイプ欠陥密度を1/cm2以下に制御することができる。
【0019】
本発明の単結晶炭化ケイ素の成長方法において、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面が(0001)Si面、又は、(000−1)C面であることが好ましい。前記単結晶炭化ケイ素基板が4H-SiC又は6H-SiCであることが好ましい。
また、前記密閉容器内の圧力が前記加熱室内の圧力よりも高くなるように制御し、前記密閉容器内に不純物が混入するのを抑制することが好ましい。その結果、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することができる。
また、単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長方法であって、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板の前処理工程として上述の第1発明である単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法を含むことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[単結晶SiC基板の表面改良方法]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態を実施するための熱処理装置の一例を説明する。
図1は、本実施形態の単結晶SiC基板の表面改良方法を実施するための熱処理装置の一例を示す断面概略図である。
図1において、熱処理装置1は、本加熱室2と、予備加熱室3と、予備加熱室3から本加熱室2に続く前室4とで構成されている。そして、単結晶SiC基板5が収納された密閉容器16が予備加熱室3から前室4、本加熱室2へと順次移動することで、単結晶SiC基板5を短時間で約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で加熱することができる。
【0021】
図1に示すように、熱処理装置1において、本加熱室2、予備加熱室3、前室4は連通部を有して仕切られていている。このため、各室を予め所定の圧力下に制御することが可能となる。また、各室毎にゲートバルブ7等を設けることによって、各室毎に圧力調整をすることも可能である。これによって単結晶SiC基板5を収納した密閉容器16の移動時においても、外気に触れることなく、所定圧力下の炉内を図示しない移動手段によって移動させることができるため、不純物の混入等を抑制することができる。
【0022】
予備加熱室3には、ランプ又はロッドヒータ等の加熱手段6が設けられている。本実施形態においては、ハロゲンランプ6が設けられている。約10-5Pa以下の減圧下で急速に約800℃以上1000℃以下の範囲にまで加熱が可能である。また、予備加熱室3と前室4との接続部分には、ゲートバルブ7が設けられており、予備加熱室3及び前室4の圧力制御を容易なものとしている。単結晶SiC基板5が収納された密閉容器16は、この予備加熱室3で、テーブル8に載置された状態で約800℃以上に予め加熱される。その後、予備加熱室3と前室4との圧力調整が済み次第、前室4に設けられている昇降式のサセプタ9に設置するように移動させられる。
【0023】
前室4に移動させられた密閉容器16は、一部図示している昇降式の移動手段10によって前室4から本加熱室2に移動させられる。本加熱室2は、図示しない真空ポンプによって予め約10-1Pa以下の減圧下に調整することができ、加熱ヒータ11によって約1200℃以上2300℃以下に加熱することが可能である。本実施形態では、予め、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Pa以下の減圧下で、約1200℃以上2300℃以下の温度範囲内の所定温度に設定されている。尚、前記本加熱室2内の圧力環境は、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Paにした後に若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であってもよい。
本加熱室2内の状態をこのように設定しておき、密閉容器16を前室4から本加熱室2内に移動すると、密閉容器16を約約1200℃以上2300℃以下の範囲に急速に短時間で加熱することができる。
【0024】
また、本加熱室2には、加熱ヒータ11の周囲に反射鏡12が配置されている。前記反射鏡12は、加熱ヒータ11の熱を反射して加熱ヒータ11の内部に位置する単結晶SiC基板5側に熱が集中するようにしている。
移動手段10と本加熱室2との嵌合部25は、移動手段10に設けられている凸状の段付き部21と、本加熱室2に形成されている凹状の段付き部22とで構成されている。そして、移動手段10の段付き部21の各段部に設けられている図示しないOリング等のシール部材によって、本加熱室2は密閉された状態となる。
【0025】
また、本加熱室2内の加熱ヒータ11の内側には、汚染物除去機構20が設けられている。汚染物除去機構20は、単結晶SiC基板5から熱処理中に排出される不純物を、加熱ヒータ11と接触しないように除去する。これによって、加熱ヒータ11が単結晶SiC基板5から排出される不純物と反応し劣化することを抑制できる。なお、この汚染物除去機構20は、単結晶SiC基板5から排出する不純物を吸着するものであれば、特に限定されるものではない。
【0026】
加熱ヒータ11は、タンタル等金属製の抵抗加熱ヒータであり、ベースヒータ11aと、上部ヒータ11bとで構成されている。前記ベースヒータ11aは、サセプタ9に設置されている。上部ヒータ11bは、筒状側面及びその上端を塞ぐ上面とで一体的に形成されている。このように、密閉容器16を覆うように加熱ヒータ11が配置されているため、密閉容器16を均等に加熱することが可能となる。なお、本加熱室2の加熱方式は、本実施形態に示す抵抗加熱ヒータに限定されるものではなく、例えば、高周波誘導加熱式であっても構わない。
【0027】
単結晶SiC基板5は、密閉容器16に収納されている。密閉容器16は、図2に示すような上容器16aと、下容器16bとで構成される。上容器16aと下容器16bとを嵌め合わせるとき、その遊びが約2mm以下であることが好ましい。これによって、密閉容器16内への不純物の混入を抑制することができる。また、遊びを約2mm以下とすることによって、熱処理時に密閉容器16内のSi分圧を約10Pa以下とならないように制御することもできる。
【0028】
このため、密閉容器16内のSiC分圧及びSi分圧を高め、密閉容器16に収納される単結晶SiC基板5、後述する多結晶Si基板14,17、Si融液18等の昇華の防止に寄与するようになる。なお、この上容器16aと下容器16bとの嵌め合い時の嵌合部の遊びが約2mmよりも大きい場合は、密閉容器16内のSi分圧を所定圧に制御することが困難になるばかりでなく、不純物がこの嵌合部を介して密閉容器16内に侵入することもあるため、好ましくない。この密閉容器16は、図2に示すように、形状が四角のものに限らず、円形のものであっても良い。
前記密閉容器16は、タンタル、炭化タンタルのいずれかで形成されていることが好ましい。
【0029】
図3に密閉容器16内の単結晶SiC基板5等の配置の例を示す。
図3において、符号5aは単結晶6H-SiC基板、5bは単結晶4H-SiC基板, 13は支持部材、14はSiC多結晶基板を示している。前記単結晶SiC基板5として、単結晶6H-SiC基板5a、単結晶4H-SiC基板5bが収納されている。
2つの前記単結晶SiC基板5a,5bと3つの前記SiC多結晶基板14が前記支持部材13によって、密閉容器16内に支持される。
前記単結晶6H-SiC基板5a、単結晶4H-SiC基板5bは3つの前記多結晶SiC基板14の間に、それぞれ配置されている。各単結晶SiC基板5a,5b及び各多結晶SiC基板14は所定の等間隔dだけ離されて配置されている。
【0030】
前記単結晶6H-SiC基板5aは、昇華法で作製された単結晶6H-SiC のウェハーより所望の大きさ(10×10mm以上20×20mm)に切り出されたものである。同様に、前記単結晶4H-SiC基板5bは、昇華法で作製された単結晶4H-SiC のウェハーより所望の大きさ(10×10mm以上20×20mm)に切り出されたものである。
前記支持部材13の形状としては、ピン形状、リング形状が挙げられる。その材料としては、例えば、SiCが挙げられる。
【0031】
前記SiC多結晶基板14は、CVD法で作製されたSi半導体製造工程でダミーウェハーとして使用されるSiCから所望の大きさに切り出されたものを使用することができる。
上記単結晶6H-SiC基板5a、前記単結晶4H-SiC基板5b、多結晶SiC基板14のそれぞれ表面は鏡面に研磨加工され、表面に付着した油類、酸化膜、金属等が洗浄等によって除去されている。
ここで、上下側に位置する多結晶SiC基板14は、単結晶SiC基板5a,5bを密閉容器16による侵食から防止するもので、表面改良の品質向上に寄与するものである。
同様に、中央に位置する多結晶SiC基板14は、両単結晶SiC基板5a,5bお互いの侵食から防止するもので、表面改良の品質向上に寄与するものである。
【0032】
また、この密閉容器16内には、熱処理時におけるSiCの昇華、Siの蒸発を制御するためのSi片と共に設置することもできる。Si片を同時に設置することによって、熱処理時に昇華して密閉容器16内のSiC分圧及びSi分圧を高め、単結晶SiC基板5a,5b及び多結SiC晶基板14の昇華の防止に寄与するようになる。また、密閉容器16内の圧力を予備加熱室3や本加熱室2内の圧力よりも高くなるように調整できる。これによって、上容器16aと下容器16b との嵌合部から常にSi蒸気を放出でき、不純物の密閉容器16内への侵入を防止できる。
【0033】
図1に示すように、このように構成された密閉容器16内は、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5Paに減圧されている。そして、密閉容器16は、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5Paに設定された予備加熱室3内に設置された後、予備加熱室3に設けられているランプ6によって約800℃以上に加熱される。この際、本加熱室2内も同様に、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Paに設定した後、約1200℃以上2300℃以下の範囲で所定の温度に予め加熱しておく。加熱温度は、約1350℃以上1800℃以下の範囲が好ましい。特に、約1400℃以上1650℃以下の範囲が好ましい。
尚、前記予備加熱室3や本加熱室2内の圧力環境は、10-2Pa以下、好ましくは10-5Pa 以下の真空下であっても良いし、10-2Pa以下、好ましくは10-5Pa以下にした後に若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であってもよい。
【0034】
そして、予備加熱室3内で予備加熱が終わると、予備加熱室3のゲートバルブ7が開かれる。予備加熱された密閉容器16は、ゲートバルブ7を通って前室4のサセプタ9に移動する。昇降手段10によって、前記所定の温度に加熱されている本加熱室2内に移動する。これによって、密閉容器16は、30分以内の短時間で急速に約1200℃以上2300℃以下の範囲で所定の温度に昇温され、所定時間加熱される。加熱温度は、約1200℃以上2300℃以下の範囲で所定の温度であり、約1350℃以上1800℃以下の範囲が好ましい。特に、約1400℃以上1650℃以下の範囲が好ましい。
【0035】
また、約10-5Pa以下の減圧、又は、真空下であると、不純物が存在しない。そのため、加熱処理して単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する際に、他の不純物が単結晶SiC基板中に侵入することがない。
その結果、このような方法で表面改良された単結晶SiC基板を用いて単結晶SiCを成長させると、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することが可能となる。
【実験例1】
【0036】
次に、具体的な実験例について図面を参照しつつ説明する。
図3の各基板5a,5b,14の間隔dを約695μmとして、各単結晶SiC基板5a,5b及び各SiC多結晶基板14を密閉容器16に配置して収納する。
図4に示すように、予備加熱室3おいて、約133×10-6 Pa(=約1×10-6 Torr)の圧力下で約30分かけて前記密閉容器16内の単結晶SiC基板5a,5bを約800℃に加熱し、800℃で30分間加熱する。
前記加熱された単結晶SiC基板5a,5bを密閉容器16に収納したまま予備加熱室3から本加熱室2へ約90秒で移動させる。
本加熱室2において、前記予備加熱における減圧より更に減圧された約399×10-7 以上266×10-6以下Pa(約3×10-7 以上2×10-6 以下Torr)の圧力下で約 60秒かけて前記密閉容器16内の単結晶SiC基板5a,5bを所定の温度まで昇温し、約14分間加熱処理する。
【0037】
[単結晶SiC基板]
前記実験例の結果を図5乃至図10に示す。
図5乃び図6は各所定の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡(以下、AMFという)像を示している。図5は6H-SiCの(0001)面を、図6は4H-SiCの(0001)面を示している。
図5乃び図6において、黒、グレー、白色等の色は凹凸の高さを示している。黒色からグレーそして白色になるほど高くなる。単位はnmである。
【0038】
図5 において、800℃で研磨痕(黒い線)が見られる。加熱温度が高くなるにつれ、研磨痕が薄れ、複数のステップが規則的に並ぶようになる。1640℃及び1730℃においては、研磨痕が見られず、ステップが規則的に並び、Si抜けによる炭化も見られない(表面は炭化している)。
図6 において、加熱温度が高くなるにつれ、研磨痕が薄れ、複数のステップが規則的に並ぶようになる。1550℃乃至1650℃においては、研磨痕が薄れ、複数のステップが規則的に並び、Si抜けによる炭化も見られない。
【0039】
単結晶SiC基板の表面に複数のステップが規則的に並ぶ現象は、上記のような温度範囲で加熱した結果、Si分子とC分子との結合エネルギーが弱まり、フリーフローに近づいて結晶が安定した順位に移行して自己成長するためと考えられる。
参考に、加熱後の表面の平均自乗荒さ(RMS)を図7及び図8に示す。加熱によって1400℃前後でステップバンチングがおこり、一旦、表面粗さが増加するが、1600℃から1700℃の範囲になると、収束して減少していることがわかる。
【0040】
図9乃至図10は、圧力6.3×10-5以上3.3×10-5 Pa (平均4.4×10-5 Pa)、 温度約1600℃で、約2時間加熱した後の表面AMF像を示している。図9は6H-SiCの(0001)Si面を、図10は4H-SiCの(0001)Si面を示している。図9乃び図10において、黒、グレー、白色等の色は凹凸の高さを示している。黒色からグレーそして白色になるほど高くなる。単位はnmである。
【0041】
図9において、各ステップは、紙面の左下方から右上方へと、それぞれ同様な所定の方向に延びている。前記ステップの延び方向(延長方向)と交差する方向に複数のステップが規則的に並んでいる。
図10において、各ステップは紙面の左方から右方へと、それぞれ同様な所定の方向に延びている。前記ステップの延び方向(延長方向)と交差する方向に複数のステップが規則的に並んでいる。
【0042】
これは、前記所定の温度の加熱により、その表面で結晶の自己成長平滑化現象が起こったと思われる。その結果、研磨痕が消滅し、平均自乗荒さが約1nmレベルの微細表面均一品質に、そして、規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良される。
このように、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板を予め真空等の減圧下の加熱炉において約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で所定の時間加熱処理を行なうことによって、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板表面の研磨傷や不規則な凹凸表面が規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良される。
【0043】
このような単結晶炭化ケイ素基板は、液相成長法(LPE)や気相成長法(CVD)又は昇華法等の単結晶炭化ケイ素成長方法において、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板に適している。このような単結晶炭化ケイ素基板を用いると、よりマイクロパイプの欠陥の少ない平面度の良い単結晶炭化ケイ素を成長させることができる。
【0044】
[単結晶炭化ケイ素の製造方法]
次に、本発明の単結晶SiC成長方法の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態を実施するための熱処理装置として、図1に示した熱処理装置を使用する。
本実施形態において、密閉容器16内でSiCが成長する点が異なるだけで、前記単結晶SiC基板の表面改良方法と同様な工程によって熱処理される。
単結晶SiCを成長させるための基板5として、昇華法で作製された単結晶6H-SiCのウェハーより所望の大きさ(10×10以上20×20mm)に切り出されたものを使用してもよいが、より品質のよい単結晶SiCを得るには、上述した実施形態の方法によって表面改良が行われた単結晶6H若しくは4H- SiC基板5を使用することが好ましい。本実施形態において、上述の実施形態の方法によって表面改良された単結晶4H-SiC基板5を使用する。
【0045】
図11は、単結晶炭化ケイ素の製造方法における密閉容器16の内部を示している。前記密閉容器16の上容器16aと下容器16bが嵌合した状態である。
密閉容器16の内部では、支持部材13、支持台15、単結晶SiC基板5、多結晶SiC基板17の順に下から上へと積層されている。前記支持台15は前記多結晶SiC基板17と同様な多結晶SiC基板によって形成されている。単結晶SiC基板5は種結晶となる基板である。
単結晶SiC基板5と前記多結晶SiC基板17との間に、熱処理時、極薄金属Si融液18が形成される。この極薄金属Si融液18のSi源として、前記種結晶となる単結晶SiC基板5の表面に予めCVD等によって形成した約10μmから100μmの金属Si膜、若しくは、前記種結晶となる単結晶SiC基板5の表面に配置されたSi粉末等が挙げられる。
【0046】
また、多結晶SiC基板17及び支持台15は、CVD法で作製されたSi半導体製造工程でダミーウェハーとして使用されるSiCから所望の大きさに切り出されたものを使用することができる。多結晶SiC基板17及び支持台15は表面が鏡面に研磨加工され、表面に付着した油類、酸化膜、金属等が洗浄等によって除去されている。多結晶SiC基板17及び支持台15には、平均粒子径が5μm以上10μmで、粒子径が略均一なものが好ましい。このため、多結晶SiCの結晶構造には特に限定はなく、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiCのいずれをも使用することができる。
ここで、下部側に位置する支持台としての多結晶SiC基板15は単結晶SiC基板5の密閉容器16からの侵食を防止するもので、単結晶SiC基板5上に液相エピタキシャル成長する単結晶SiCの品質向上に寄与する。
【0047】
また、この密閉容器16内には、熱処理時におけるSiCの昇華、Siの蒸発を制御するためのSi片と共に設置することもできる。Si片を同時に設置することによって、熱処理時に昇華して密閉容器16内のSiC分圧及びSi分圧を高め、単結晶SiC基板5及び多結晶SiC基板17及び支持台15、極薄金属Si融液18の昇華の防止に寄与するようになる。また、密閉容器16内の圧力を予備加熱室3や本加熱室2内の圧力よりも高くなるように調整でき、これによって、上容器16aと下容器16bとの嵌合部から常にSi蒸気を放出でき、不純物の密閉容器16内への侵入を防止できる。このように、前記密閉容器内に不純物が混入するのを抑制すると、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することが可能となる。
【0048】
このように構成された密閉容器16内は、約10-2 Pa以下、好ましくは10-5 Pa以下に減圧されている。そして、密閉容器16は、約10-2 Pa以下、好ましくは10-5 Pa以下に設定された予備加熱室3内に設置された後、予備加熱室3に設けられているランプ6によって約800℃以上に加熱される。この際、本加熱室2内も同様に、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5 Pa以下に設定した後、約1400℃以上2300℃以下、好ましくは、約1600℃以上1800℃以下、特に好ましくは約1650℃以上1750℃以下の範囲で所定の温度に予め加熱しておく。
尚、前記予備加熱室3や前記本加熱室2内の圧力環境は、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Pa以下の真空下でもよいし、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Paにした後に若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であってもよい。
【0049】
そして、予備加熱室3内で予備加熱が終わると、予備加熱室3のゲートバルブ7が開かれる。予備加熱された密閉容器16は、ゲートバルブ7を通って前室4のサセプタ9に移動する。昇降手段10によって、前記所定の温度に加熱されている本加熱室2内に移動する。これによって、密閉容器16は、30分以内の短時間で急速に約1400℃以上2300℃以下、好ましくは、約1500℃以上1900℃以下、特に好ましくは約1600℃以上1800℃以下の範囲で所定の温度に昇温され、所定時間加熱される。
【0050】
このような熱処理装置によると、予備加熱室3の予備加熱によって短時間で約1400℃以上2300℃以下の範囲で加熱することが可能である。そのため、単結晶SiCの成長を短時間で終了することができ、効率化が可能となる。
しかしながら、予備加熱室3の無い熱処理装置によって、単結晶SiCの成長の加熱処理を行ってもよい。この場合も、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5 Pa以下の減圧下で、約1400℃以上2300℃以下、好ましくは、約1500℃以上1900℃以下の範囲の所定の温度で加熱する。特に好ましくは、約1600℃以上1800℃以下の範囲の所定の温度で加熱する。
【0051】
また、熱処理時間は、生成される単結晶SiCが所望の厚みとなるように適宜選択することが可能である。任意の厚みの単結晶SiC形成することができるため、単結晶SiCバルク体及び表面エピタキシャル成長層への適用が可能となる。
【0052】
このような本実施形態に係る単結晶SiC成長方法によって得た単結晶SiCは、次のような特徴を有する。表面に微結晶粒界のない、ステップの高さが、SiC分子(SiCの1分子層の高さは0.25nm)の単位格子の半分の高さを基本とした整数倍の高さであり、非常に平坦な表面となっている。表面のマイクロパイプ欠陥の密度が1/cm2以下であり、100μmオーダーの幅広のテラスを有する。そのため、単結晶SiC形成後に、機械加工等の表面処理が不要となる。
尚、前記テラスとは複数のステップの中で広い幅を有するステップを指している。
【0053】
また、結晶欠陥等が少ないために、発光ダイオードや、各種半導体ダイオード、電子デバイスとして使用することが可能となる。加えて、結晶の成長が温度に依存せず、種結晶及びCの供給源の結晶の表面エネルギーに依存することから、処理炉内の厳密な温度制御の必要性がなくなることから、製造コストの大幅な低減化が可能となる。さらに、種結晶となる単結晶SiC及びCの供給源である多結晶SiCとの間隔が非常に小さことから、熱処理時の熱対流を抑制することができる。また種結晶となる単結晶SiC及びCの供給源である多結晶SiCとの間に温度差が形成されにくいことから、熱平衡状態で熱処理することができる。
【0054】
また、単結晶SiCの結晶成長は、結晶表面の面方向に沿って成長していくことから、前記成長方向に温度勾配を設けることで、結晶の成長方向を温度の高い方から低い方へと方向性を持たせることができるようになる。言い換えると、単結晶SiC基板と多結晶SiC基板の積層方向には、温度勾配を設けず、前記積層方向と垂直な方向に温度勾配を設ける、即ち、密閉容器の面方向に温度勾配を設けることで、結晶の成長方向を温度の高い方から低い方へと方向性を持たせることができるようになる。温度勾配を設ける方法としては、本加熱室2に設けられているヒータ11の密閉容器16の側壁側に位置するサイドヒータ11b間の温度差を設ける等の方法がある。このときの、温度勾配の大きさを制御することによって、結晶の成長速度を制御することができ、結晶表面の微結晶粒界の生成を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態例では、種結晶として、4H-SiCを用いたが、6H-SiCを使用することも可能である。更に、本実施形態では、種結晶として、(0001)Si面を用いたが、(0001)C面、(11-20)などのその他の面方位のものを使用することも可能である。
また、本発明に係る単結晶SiCは、種結晶となる単結晶SiC及びCの供給源となる多結晶SiC基板の大きさを適宜選択することによって形成される単結晶SiCの大きさを制御することができる。また、形成される単結晶SiCと種結晶との間に歪みが形成されることもないため、非常に平滑な表面の単結晶SiCとできる。そのため、表面の改質膜として適用することも可能である。
【0056】
また、本実施形態に係る単結晶SiC成長方法では、多結晶SiC基板及び金属Si中にあらかじめAlまたはB等のIII族金属の不純物を添加することにより、成長結晶のp型、n型の伝導型を任意に制御することが可能である。
さらには、成長中の雰囲気中に窒素、AlまたはB等のSiCの伝導型を制御する元素を含むガスを送り込むことにより、成長結晶のp型、n型の伝導型を任意に制御することが可能である。
【実験例2】
【0057】
図12及び図13は、前述の方法によって成長した単結晶4H-SiCの(0001)Si表面モホロジーを示す走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)写真である。
図12及び図13から本実施形態のLPE法による結晶の成長表面において、非常に平坦なテラスとステップ構造を観察できる。特に、約1700℃前後においてステップ間距離が広くなり、平坦な表面を作成することが可能である。また、表面にマイクロパイプ欠陥が観察されない。
【0058】
これらのことから、本実施形態のLPE法による単結晶SiCは、表面に形成されるマイクロパイプ欠陥の密度が1/cm2以下と非常に少なくなり、表面に形成されるテラスの幅も100μmオーダーと広く、平坦で欠陥の少ないものであることがわかる。
図13において、写真中で示した矢印のテラス幅はそれぞれ、1500℃:15μmm、1700℃:100μm、1900℃:40μmである。このように、本実施形態によると、ステツプバンチのテラス巾を100μmオーダーに制御することが出来る。
【0059】
尚、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態例が他になされることができることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態を実施するための熱処理装置の一例を示す断面概略図
【図2】図1の熱処理装置における密閉容器の構成を示す図
【図3】単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法における密閉容器内の単結晶SiC基板の配置の例を示す図
【図4】時間に対する温度制御を示す図
【図5】各所定の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図6】各所定の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図7】加熱後の表面粗さを示す図
【図8】加熱後の表面粗さを示す図
【図9】約1600℃の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図10】約1600℃の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図11】単結晶炭化ケイ素の製造方法における密閉容器の内部を示図
【図12】液相成長した単結晶SiCの表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図
【図13】液相成長した単結晶SiCの表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図
【符号の説明】
【0061】
1 熱処理装置
2 本加熱室
3 予備加熱室
4 前室
5 単結晶SiC基板
6 ハロゲンランプ
7 ゲートバルブ
8 テーブル
9 サセプタ
10 移動手段
11 加熱ヒータ
12 反射鏡
16 密閉容器
17 多結晶SiC基板
18 Si融液
20 汚染物除去機構
25 嵌合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロパイプ欠陥や界面欠陥等の発生が少ないとともに、幅広なテラスを有し表面の平坦度の高い、高品質、高性能な単結晶炭化ケイ素の提供を可能とする種結晶である単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法及びその改良された単結晶炭化ケイ素基板、並びに、単結晶炭化ケイ素成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化ケイ素(以下、SiCという)は、耐熱性及び機械的強度に優れている。更に、放射線にも強く、不純物の添加によって電子や正孔の価電子制御が容易である。加えて、広い禁制帯幅を持つ。因みに、6H型の単結晶SiCで約3.0eV、4H型の単結晶SiCで3.3eVである。そのため、シリコン(以下、Siという。)やガリウムヒ素(以下、GaAsという。)などの既存の半導体材料では実現することができない高温、高周波、耐電圧・耐環境性を実現することが可能である。それ故、次世代のパワーデバイス、高周波デバイス用半導体材料として注目され、かつ期待されている。また、六方晶SiCは、窒化ガリウム(以下、GaNという。)と格子定数が近く、GaNの基板として期待されている。
【0003】
この種の単結晶SiCを製造する方法として次のようなものがある。
例えば、昇華再結晶法(改良レーリー法)によると、ルツボ内の低温側に単結晶SiC基板を種結晶として固定配置する。高温側に原料となるSiを含む粉末を配置する。ルツボを不活性雰囲気中で1450以上2400℃の高温に加熱する。それによって、Siを含む粉末を昇華させて低温側の種結晶の表面上でSiCを再結晶させる。このようにして、単結晶SiCの育成を行なう。
【0004】
また、例えば、特許文献1によると、単結晶SiC基板とSi原子及びC原子により構成された板材とを微小隙間を隔てて互いに平行に対峙さる。その状態で大気圧以下の不活性ガス雰囲気、且つ、SiC飽和蒸気雰囲気下で単結晶SiC基板側が板材よりも低温となるように温度傾斜を持たせる。そして、熱処理することにより、微小隙間内でSi原子及びC原子を昇華再結晶させる。このようにして、単結晶SiC基板上に単結晶を析出させる。
更にまた、例えば、特許文献2によると、液相エピタキシャル成長法(以下、LPE法という。)によって単結晶SiC上に第1のエピタキシャル層を形成する。その後に、CVD法によって表面に第2のエピタキシャル層を形成して、マイクロパイプ欠陥を除去する。
【0005】
【特許文献1】特開平11−315000号公報
【特許文献2】特表平10−509943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら単結晶SiCの形成方法のうち、例えば、特許文献1等に記載の昇華再結晶法の場合は、成長速度が数100μm/hrと非常に早い反面、昇華の際にSiC粉末がいったんSi, SiC2、Si2Cに分解されて気化し、さらにルツボの一部と反応する。このために、温度変化によって種結晶の表面に到達するガスの種類が異なり、これらの分圧を化学量論的に正確に制御することが技術的に非常に困難である。また、不純物も混入しやすく、その混入した不純物や熱に起因する歪みの影響で結晶欠陥やマイクロパイプ欠陥等を発生しやすく、また、多くの核生成に起因する結晶粒界の発生など、性能的、品質的に安定した単結晶SiCが得られないという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のLPE法の場合は、昇華再結晶法で見られるようなマイクロパイプ欠陥や結晶欠陥などの発生が少なく、昇華再結晶法で製造されるものに比べて品質的に優れた単結晶SiCが得られる。その反面、成長過程が、Si融液中へのCの溶解度によって律速されるために、成長速度が10μm/hr以下と非常に遅くて単結晶SiCの生産性が低く、製造装置内の液相を精密に温度制御しなくてはならない。また、工程が複雑となり、単結晶SiCの製造コストが非常に高価なものになる。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、マイクロパイプ欠陥や界面欠陥等の発生が少ないとともに、幅広なテラスを有し表面の平坦度の高い、高品質、高性能な単結晶SiCの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
前記目的を達成するための第1の発明は、単結晶炭化ケイ素を成長させるための単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する方法である。そして、真空下で、約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で単結晶炭化ケイ素基板を加熱して、前記単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良することを特徴とする。前記真空は約10-2Pa以下であり、好ましくは約10-5Pa以下である。
上記単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によれば、単結晶炭化ケイ素基板の表面が規則的に並ぶ複数のステップで覆われる。
【0010】
従来の単結晶SiCを成長させるための基板は、その表面が鏡面に研磨加工されており、従来の単結晶SiC基板の表面は研磨痕等の不規則に並ぶ微少な凹凸で覆われていた。そのため、前記不規則に並ぶ微少な凹凸が影響して品質のよい単結晶SiCの製造を妨げていた。
本発明の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によれば、その基板表面が規則的に並ぶ複数のステップで覆われるので、単結晶炭化ケイ素を成長させる方法に用いられる種結晶である単結晶炭化ケイ素基板として適している。前記単結晶炭化ケイ素を成長させる方法として、液相成長法(LPE)や気相成長法(CVD)又は昇華法等が挙げられる。
【0011】
また、所定の減圧下の予備加熱室で、前記単結晶炭化ケイ素基板が約800℃以上に予備加熱されていることが好ましい。前記予備加熱後、予め、所定の減圧下で約1200℃以上2300℃以下の所定の温度に昇温調整された本加熱室に、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を移動させ、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で加熱し、単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する。
前記予備加熱室における所定の減圧と前記本加熱室における所定の減圧は約10-2Pa以下であり、好ましくは約10-5Pa以下である。
【0012】
このような熱処理装置によると、予備加熱室の予備加熱によって短時間で約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度に昇温することが可能である。そのため、表面改良を短時間で終了することができ、効率化が可能となる。
しかしながら、予備加熱室の無い熱処理装置によって、表面改良の加熱処理を行ってもよい。この場合でも、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5 Pa以下の減圧下で、加熱温度は、約1200℃以上2300℃以下以下の範囲の所定の温度である。好ましくは、約1350℃以上1800℃以下の範囲である。特に、約1400℃以上1650℃以下の範囲が好ましい。
【0013】
また、不純物が存在しない約10-5Pa以下の減圧下若しくは真空下で加熱して単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良すると、他の不純物が単結晶SiC基板中に侵入することがない。
その結果、このような方法で表面改良された単結晶SiC基板を用いて単結晶SiCを成長させると、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することが可能となる。
【0014】
また、本発明の単結晶SiC基板の表面改良方法は、従来より行われている他の単結晶SiC基板製造方法と連続して行ってもよい。例えば、従来の単結晶SiC基板製造方法において最終工程として行ってもよい。
更にまた、本発明の単結晶SiC基板の表面改良方法は、液相成長法(LPE)や気相成長法(CVD)又は昇華法等の単結晶SiC成長方法において、単結晶SiCを成長をさせるための種結晶である単結晶SiC基板の前処理工程として行ってもよい。
【0015】
前記単結晶炭化ケイ素基板は機械的研磨加工された表面を有する場合、その表面が真空高温加熱処理により約1nmレベルの微細表面均一品質に改良される。その結果、研磨痕等が薄くなり、そして無くなる。
前記加熱処理により、単結晶炭化ケイ素を成長させるための単結晶炭化ケイ素基板の表面を規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良する。
前記目的を達成するための第2の発明は、前記特長を有する単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によって得られた表面が改良された単結晶炭化ケイ素基板である。
【0016】
前記目的を達成するための第3の発明は、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを重ね、密閉容器内に設置して、高温熱処理を行うことによって、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記多結晶炭化ケイ素基板との間に、熱処理中に極薄金属シリコン融液を介在させ、前記単結晶炭化ケイ素基板上に単結晶炭化ケイ素を液相エピタキシャル成長させる単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法である。
【0017】
前記密閉容器を、予め圧力10-5Pa以下の予備加熱室で800℃以上に加熱するとともに、前記密閉容器内を圧力10-5Pa以下に減圧し、予め約1400℃以上2300℃以下に加熱された圧力10-2Pa以下の加熱室に移動して設置することで、前記単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを短時間で約1400℃以上2300℃以下に、好ましくは、約1500℃以上1900℃以下の範囲である。特に、約1600℃以上18000℃以下の範囲が好ましい。
そして微結晶粒界の存在しない、表面のマイクロパイプ欠陥密度が1/cm2以下である単結晶炭化ケイ素を製造する。上記温度範囲の所定の温度で加熱処理を行なうと、ステップ間距離が広くなり、平坦な表面を作成することが可能となる。
【0018】
前記種結晶となる基板として上述の単結晶炭化ケイ素基板を用いることが好ましい。
本発明の単結晶炭化ケイ素の成長方法によれば、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面に形成されるテラスの幅を約100μmオーダーに制御することができる。ここで、前記テラスとは複数のステップの中で広い幅を有するステップを指す。
更に、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面に形成されるステップの高さを、結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする原子オーダーに制御することができる。
更にまた、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面のマイクロパイプ欠陥密度を1/cm2以下に制御することができる。
【0019】
本発明の単結晶炭化ケイ素の成長方法において、前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面が(0001)Si面、又は、(000−1)C面であることが好ましい。前記単結晶炭化ケイ素基板が4H-SiC又は6H-SiCであることが好ましい。
また、前記密閉容器内の圧力が前記加熱室内の圧力よりも高くなるように制御し、前記密閉容器内に不純物が混入するのを抑制することが好ましい。その結果、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することができる。
また、単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長方法であって、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板の前処理工程として上述の第1発明である単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法を含むことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[単結晶SiC基板の表面改良方法]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、本実施形態を実施するための熱処理装置の一例を説明する。
図1は、本実施形態の単結晶SiC基板の表面改良方法を実施するための熱処理装置の一例を示す断面概略図である。
図1において、熱処理装置1は、本加熱室2と、予備加熱室3と、予備加熱室3から本加熱室2に続く前室4とで構成されている。そして、単結晶SiC基板5が収納された密閉容器16が予備加熱室3から前室4、本加熱室2へと順次移動することで、単結晶SiC基板5を短時間で約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で加熱することができる。
【0021】
図1に示すように、熱処理装置1において、本加熱室2、予備加熱室3、前室4は連通部を有して仕切られていている。このため、各室を予め所定の圧力下に制御することが可能となる。また、各室毎にゲートバルブ7等を設けることによって、各室毎に圧力調整をすることも可能である。これによって単結晶SiC基板5を収納した密閉容器16の移動時においても、外気に触れることなく、所定圧力下の炉内を図示しない移動手段によって移動させることができるため、不純物の混入等を抑制することができる。
【0022】
予備加熱室3には、ランプ又はロッドヒータ等の加熱手段6が設けられている。本実施形態においては、ハロゲンランプ6が設けられている。約10-5Pa以下の減圧下で急速に約800℃以上1000℃以下の範囲にまで加熱が可能である。また、予備加熱室3と前室4との接続部分には、ゲートバルブ7が設けられており、予備加熱室3及び前室4の圧力制御を容易なものとしている。単結晶SiC基板5が収納された密閉容器16は、この予備加熱室3で、テーブル8に載置された状態で約800℃以上に予め加熱される。その後、予備加熱室3と前室4との圧力調整が済み次第、前室4に設けられている昇降式のサセプタ9に設置するように移動させられる。
【0023】
前室4に移動させられた密閉容器16は、一部図示している昇降式の移動手段10によって前室4から本加熱室2に移動させられる。本加熱室2は、図示しない真空ポンプによって予め約10-1Pa以下の減圧下に調整することができ、加熱ヒータ11によって約1200℃以上2300℃以下に加熱することが可能である。本実施形態では、予め、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Pa以下の減圧下で、約1200℃以上2300℃以下の温度範囲内の所定温度に設定されている。尚、前記本加熱室2内の圧力環境は、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Paにした後に若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であってもよい。
本加熱室2内の状態をこのように設定しておき、密閉容器16を前室4から本加熱室2内に移動すると、密閉容器16を約約1200℃以上2300℃以下の範囲に急速に短時間で加熱することができる。
【0024】
また、本加熱室2には、加熱ヒータ11の周囲に反射鏡12が配置されている。前記反射鏡12は、加熱ヒータ11の熱を反射して加熱ヒータ11の内部に位置する単結晶SiC基板5側に熱が集中するようにしている。
移動手段10と本加熱室2との嵌合部25は、移動手段10に設けられている凸状の段付き部21と、本加熱室2に形成されている凹状の段付き部22とで構成されている。そして、移動手段10の段付き部21の各段部に設けられている図示しないOリング等のシール部材によって、本加熱室2は密閉された状態となる。
【0025】
また、本加熱室2内の加熱ヒータ11の内側には、汚染物除去機構20が設けられている。汚染物除去機構20は、単結晶SiC基板5から熱処理中に排出される不純物を、加熱ヒータ11と接触しないように除去する。これによって、加熱ヒータ11が単結晶SiC基板5から排出される不純物と反応し劣化することを抑制できる。なお、この汚染物除去機構20は、単結晶SiC基板5から排出する不純物を吸着するものであれば、特に限定されるものではない。
【0026】
加熱ヒータ11は、タンタル等金属製の抵抗加熱ヒータであり、ベースヒータ11aと、上部ヒータ11bとで構成されている。前記ベースヒータ11aは、サセプタ9に設置されている。上部ヒータ11bは、筒状側面及びその上端を塞ぐ上面とで一体的に形成されている。このように、密閉容器16を覆うように加熱ヒータ11が配置されているため、密閉容器16を均等に加熱することが可能となる。なお、本加熱室2の加熱方式は、本実施形態に示す抵抗加熱ヒータに限定されるものではなく、例えば、高周波誘導加熱式であっても構わない。
【0027】
単結晶SiC基板5は、密閉容器16に収納されている。密閉容器16は、図2に示すような上容器16aと、下容器16bとで構成される。上容器16aと下容器16bとを嵌め合わせるとき、その遊びが約2mm以下であることが好ましい。これによって、密閉容器16内への不純物の混入を抑制することができる。また、遊びを約2mm以下とすることによって、熱処理時に密閉容器16内のSi分圧を約10Pa以下とならないように制御することもできる。
【0028】
このため、密閉容器16内のSiC分圧及びSi分圧を高め、密閉容器16に収納される単結晶SiC基板5、後述する多結晶Si基板14,17、Si融液18等の昇華の防止に寄与するようになる。なお、この上容器16aと下容器16bとの嵌め合い時の嵌合部の遊びが約2mmよりも大きい場合は、密閉容器16内のSi分圧を所定圧に制御することが困難になるばかりでなく、不純物がこの嵌合部を介して密閉容器16内に侵入することもあるため、好ましくない。この密閉容器16は、図2に示すように、形状が四角のものに限らず、円形のものであっても良い。
前記密閉容器16は、タンタル、炭化タンタルのいずれかで形成されていることが好ましい。
【0029】
図3に密閉容器16内の単結晶SiC基板5等の配置の例を示す。
図3において、符号5aは単結晶6H-SiC基板、5bは単結晶4H-SiC基板, 13は支持部材、14はSiC多結晶基板を示している。前記単結晶SiC基板5として、単結晶6H-SiC基板5a、単結晶4H-SiC基板5bが収納されている。
2つの前記単結晶SiC基板5a,5bと3つの前記SiC多結晶基板14が前記支持部材13によって、密閉容器16内に支持される。
前記単結晶6H-SiC基板5a、単結晶4H-SiC基板5bは3つの前記多結晶SiC基板14の間に、それぞれ配置されている。各単結晶SiC基板5a,5b及び各多結晶SiC基板14は所定の等間隔dだけ離されて配置されている。
【0030】
前記単結晶6H-SiC基板5aは、昇華法で作製された単結晶6H-SiC のウェハーより所望の大きさ(10×10mm以上20×20mm)に切り出されたものである。同様に、前記単結晶4H-SiC基板5bは、昇華法で作製された単結晶4H-SiC のウェハーより所望の大きさ(10×10mm以上20×20mm)に切り出されたものである。
前記支持部材13の形状としては、ピン形状、リング形状が挙げられる。その材料としては、例えば、SiCが挙げられる。
【0031】
前記SiC多結晶基板14は、CVD法で作製されたSi半導体製造工程でダミーウェハーとして使用されるSiCから所望の大きさに切り出されたものを使用することができる。
上記単結晶6H-SiC基板5a、前記単結晶4H-SiC基板5b、多結晶SiC基板14のそれぞれ表面は鏡面に研磨加工され、表面に付着した油類、酸化膜、金属等が洗浄等によって除去されている。
ここで、上下側に位置する多結晶SiC基板14は、単結晶SiC基板5a,5bを密閉容器16による侵食から防止するもので、表面改良の品質向上に寄与するものである。
同様に、中央に位置する多結晶SiC基板14は、両単結晶SiC基板5a,5bお互いの侵食から防止するもので、表面改良の品質向上に寄与するものである。
【0032】
また、この密閉容器16内には、熱処理時におけるSiCの昇華、Siの蒸発を制御するためのSi片と共に設置することもできる。Si片を同時に設置することによって、熱処理時に昇華して密閉容器16内のSiC分圧及びSi分圧を高め、単結晶SiC基板5a,5b及び多結SiC晶基板14の昇華の防止に寄与するようになる。また、密閉容器16内の圧力を予備加熱室3や本加熱室2内の圧力よりも高くなるように調整できる。これによって、上容器16aと下容器16b との嵌合部から常にSi蒸気を放出でき、不純物の密閉容器16内への侵入を防止できる。
【0033】
図1に示すように、このように構成された密閉容器16内は、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5Paに減圧されている。そして、密閉容器16は、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5Paに設定された予備加熱室3内に設置された後、予備加熱室3に設けられているランプ6によって約800℃以上に加熱される。この際、本加熱室2内も同様に、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Paに設定した後、約1200℃以上2300℃以下の範囲で所定の温度に予め加熱しておく。加熱温度は、約1350℃以上1800℃以下の範囲が好ましい。特に、約1400℃以上1650℃以下の範囲が好ましい。
尚、前記予備加熱室3や本加熱室2内の圧力環境は、10-2Pa以下、好ましくは10-5Pa 以下の真空下であっても良いし、10-2Pa以下、好ましくは10-5Pa以下にした後に若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であってもよい。
【0034】
そして、予備加熱室3内で予備加熱が終わると、予備加熱室3のゲートバルブ7が開かれる。予備加熱された密閉容器16は、ゲートバルブ7を通って前室4のサセプタ9に移動する。昇降手段10によって、前記所定の温度に加熱されている本加熱室2内に移動する。これによって、密閉容器16は、30分以内の短時間で急速に約1200℃以上2300℃以下の範囲で所定の温度に昇温され、所定時間加熱される。加熱温度は、約1200℃以上2300℃以下の範囲で所定の温度であり、約1350℃以上1800℃以下の範囲が好ましい。特に、約1400℃以上1650℃以下の範囲が好ましい。
【0035】
また、約10-5Pa以下の減圧、又は、真空下であると、不純物が存在しない。そのため、加熱処理して単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する際に、他の不純物が単結晶SiC基板中に侵入することがない。
その結果、このような方法で表面改良された単結晶SiC基板を用いて単結晶SiCを成長させると、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することが可能となる。
【実験例1】
【0036】
次に、具体的な実験例について図面を参照しつつ説明する。
図3の各基板5a,5b,14の間隔dを約695μmとして、各単結晶SiC基板5a,5b及び各SiC多結晶基板14を密閉容器16に配置して収納する。
図4に示すように、予備加熱室3おいて、約133×10-6 Pa(=約1×10-6 Torr)の圧力下で約30分かけて前記密閉容器16内の単結晶SiC基板5a,5bを約800℃に加熱し、800℃で30分間加熱する。
前記加熱された単結晶SiC基板5a,5bを密閉容器16に収納したまま予備加熱室3から本加熱室2へ約90秒で移動させる。
本加熱室2において、前記予備加熱における減圧より更に減圧された約399×10-7 以上266×10-6以下Pa(約3×10-7 以上2×10-6 以下Torr)の圧力下で約 60秒かけて前記密閉容器16内の単結晶SiC基板5a,5bを所定の温度まで昇温し、約14分間加熱処理する。
【0037】
[単結晶SiC基板]
前記実験例の結果を図5乃至図10に示す。
図5乃び図6は各所定の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡(以下、AMFという)像を示している。図5は6H-SiCの(0001)面を、図6は4H-SiCの(0001)面を示している。
図5乃び図6において、黒、グレー、白色等の色は凹凸の高さを示している。黒色からグレーそして白色になるほど高くなる。単位はnmである。
【0038】
図5 において、800℃で研磨痕(黒い線)が見られる。加熱温度が高くなるにつれ、研磨痕が薄れ、複数のステップが規則的に並ぶようになる。1640℃及び1730℃においては、研磨痕が見られず、ステップが規則的に並び、Si抜けによる炭化も見られない(表面は炭化している)。
図6 において、加熱温度が高くなるにつれ、研磨痕が薄れ、複数のステップが規則的に並ぶようになる。1550℃乃至1650℃においては、研磨痕が薄れ、複数のステップが規則的に並び、Si抜けによる炭化も見られない。
【0039】
単結晶SiC基板の表面に複数のステップが規則的に並ぶ現象は、上記のような温度範囲で加熱した結果、Si分子とC分子との結合エネルギーが弱まり、フリーフローに近づいて結晶が安定した順位に移行して自己成長するためと考えられる。
参考に、加熱後の表面の平均自乗荒さ(RMS)を図7及び図8に示す。加熱によって1400℃前後でステップバンチングがおこり、一旦、表面粗さが増加するが、1600℃から1700℃の範囲になると、収束して減少していることがわかる。
【0040】
図9乃至図10は、圧力6.3×10-5以上3.3×10-5 Pa (平均4.4×10-5 Pa)、 温度約1600℃で、約2時間加熱した後の表面AMF像を示している。図9は6H-SiCの(0001)Si面を、図10は4H-SiCの(0001)Si面を示している。図9乃び図10において、黒、グレー、白色等の色は凹凸の高さを示している。黒色からグレーそして白色になるほど高くなる。単位はnmである。
【0041】
図9において、各ステップは、紙面の左下方から右上方へと、それぞれ同様な所定の方向に延びている。前記ステップの延び方向(延長方向)と交差する方向に複数のステップが規則的に並んでいる。
図10において、各ステップは紙面の左方から右方へと、それぞれ同様な所定の方向に延びている。前記ステップの延び方向(延長方向)と交差する方向に複数のステップが規則的に並んでいる。
【0042】
これは、前記所定の温度の加熱により、その表面で結晶の自己成長平滑化現象が起こったと思われる。その結果、研磨痕が消滅し、平均自乗荒さが約1nmレベルの微細表面均一品質に、そして、規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良される。
このように、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板を予め真空等の減圧下の加熱炉において約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で所定の時間加熱処理を行なうことによって、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板表面の研磨傷や不規則な凹凸表面が規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良される。
【0043】
このような単結晶炭化ケイ素基板は、液相成長法(LPE)や気相成長法(CVD)又は昇華法等の単結晶炭化ケイ素成長方法において、種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板に適している。このような単結晶炭化ケイ素基板を用いると、よりマイクロパイプの欠陥の少ない平面度の良い単結晶炭化ケイ素を成長させることができる。
【0044】
[単結晶炭化ケイ素の製造方法]
次に、本発明の単結晶SiC成長方法の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態を実施するための熱処理装置として、図1に示した熱処理装置を使用する。
本実施形態において、密閉容器16内でSiCが成長する点が異なるだけで、前記単結晶SiC基板の表面改良方法と同様な工程によって熱処理される。
単結晶SiCを成長させるための基板5として、昇華法で作製された単結晶6H-SiCのウェハーより所望の大きさ(10×10以上20×20mm)に切り出されたものを使用してもよいが、より品質のよい単結晶SiCを得るには、上述した実施形態の方法によって表面改良が行われた単結晶6H若しくは4H- SiC基板5を使用することが好ましい。本実施形態において、上述の実施形態の方法によって表面改良された単結晶4H-SiC基板5を使用する。
【0045】
図11は、単結晶炭化ケイ素の製造方法における密閉容器16の内部を示している。前記密閉容器16の上容器16aと下容器16bが嵌合した状態である。
密閉容器16の内部では、支持部材13、支持台15、単結晶SiC基板5、多結晶SiC基板17の順に下から上へと積層されている。前記支持台15は前記多結晶SiC基板17と同様な多結晶SiC基板によって形成されている。単結晶SiC基板5は種結晶となる基板である。
単結晶SiC基板5と前記多結晶SiC基板17との間に、熱処理時、極薄金属Si融液18が形成される。この極薄金属Si融液18のSi源として、前記種結晶となる単結晶SiC基板5の表面に予めCVD等によって形成した約10μmから100μmの金属Si膜、若しくは、前記種結晶となる単結晶SiC基板5の表面に配置されたSi粉末等が挙げられる。
【0046】
また、多結晶SiC基板17及び支持台15は、CVD法で作製されたSi半導体製造工程でダミーウェハーとして使用されるSiCから所望の大きさに切り出されたものを使用することができる。多結晶SiC基板17及び支持台15は表面が鏡面に研磨加工され、表面に付着した油類、酸化膜、金属等が洗浄等によって除去されている。多結晶SiC基板17及び支持台15には、平均粒子径が5μm以上10μmで、粒子径が略均一なものが好ましい。このため、多結晶SiCの結晶構造には特に限定はなく、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiCのいずれをも使用することができる。
ここで、下部側に位置する支持台としての多結晶SiC基板15は単結晶SiC基板5の密閉容器16からの侵食を防止するもので、単結晶SiC基板5上に液相エピタキシャル成長する単結晶SiCの品質向上に寄与する。
【0047】
また、この密閉容器16内には、熱処理時におけるSiCの昇華、Siの蒸発を制御するためのSi片と共に設置することもできる。Si片を同時に設置することによって、熱処理時に昇華して密閉容器16内のSiC分圧及びSi分圧を高め、単結晶SiC基板5及び多結晶SiC基板17及び支持台15、極薄金属Si融液18の昇華の防止に寄与するようになる。また、密閉容器16内の圧力を予備加熱室3や本加熱室2内の圧力よりも高くなるように調整でき、これによって、上容器16aと下容器16bとの嵌合部から常にSi蒸気を放出でき、不純物の密閉容器16内への侵入を防止できる。このように、前記密閉容器内に不純物が混入するのを抑制すると、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成することが可能となる。
【0048】
このように構成された密閉容器16内は、約10-2 Pa以下、好ましくは10-5 Pa以下に減圧されている。そして、密閉容器16は、約10-2 Pa以下、好ましくは10-5 Pa以下に設定された予備加熱室3内に設置された後、予備加熱室3に設けられているランプ6によって約800℃以上に加熱される。この際、本加熱室2内も同様に、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5 Pa以下に設定した後、約1400℃以上2300℃以下、好ましくは、約1600℃以上1800℃以下、特に好ましくは約1650℃以上1750℃以下の範囲で所定の温度に予め加熱しておく。
尚、前記予備加熱室3や前記本加熱室2内の圧力環境は、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Pa以下の真空下でもよいし、約10-2Pa以下、好ましくは、約10-5Paにした後に若干の不活性ガスが導入された希薄ガス雰囲気下であってもよい。
【0049】
そして、予備加熱室3内で予備加熱が終わると、予備加熱室3のゲートバルブ7が開かれる。予備加熱された密閉容器16は、ゲートバルブ7を通って前室4のサセプタ9に移動する。昇降手段10によって、前記所定の温度に加熱されている本加熱室2内に移動する。これによって、密閉容器16は、30分以内の短時間で急速に約1400℃以上2300℃以下、好ましくは、約1500℃以上1900℃以下、特に好ましくは約1600℃以上1800℃以下の範囲で所定の温度に昇温され、所定時間加熱される。
【0050】
このような熱処理装置によると、予備加熱室3の予備加熱によって短時間で約1400℃以上2300℃以下の範囲で加熱することが可能である。そのため、単結晶SiCの成長を短時間で終了することができ、効率化が可能となる。
しかしながら、予備加熱室3の無い熱処理装置によって、単結晶SiCの成長の加熱処理を行ってもよい。この場合も、約10-2Pa以下、好ましくは約10-5 Pa以下の減圧下で、約1400℃以上2300℃以下、好ましくは、約1500℃以上1900℃以下の範囲の所定の温度で加熱する。特に好ましくは、約1600℃以上1800℃以下の範囲の所定の温度で加熱する。
【0051】
また、熱処理時間は、生成される単結晶SiCが所望の厚みとなるように適宜選択することが可能である。任意の厚みの単結晶SiC形成することができるため、単結晶SiCバルク体及び表面エピタキシャル成長層への適用が可能となる。
【0052】
このような本実施形態に係る単結晶SiC成長方法によって得た単結晶SiCは、次のような特徴を有する。表面に微結晶粒界のない、ステップの高さが、SiC分子(SiCの1分子層の高さは0.25nm)の単位格子の半分の高さを基本とした整数倍の高さであり、非常に平坦な表面となっている。表面のマイクロパイプ欠陥の密度が1/cm2以下であり、100μmオーダーの幅広のテラスを有する。そのため、単結晶SiC形成後に、機械加工等の表面処理が不要となる。
尚、前記テラスとは複数のステップの中で広い幅を有するステップを指している。
【0053】
また、結晶欠陥等が少ないために、発光ダイオードや、各種半導体ダイオード、電子デバイスとして使用することが可能となる。加えて、結晶の成長が温度に依存せず、種結晶及びCの供給源の結晶の表面エネルギーに依存することから、処理炉内の厳密な温度制御の必要性がなくなることから、製造コストの大幅な低減化が可能となる。さらに、種結晶となる単結晶SiC及びCの供給源である多結晶SiCとの間隔が非常に小さことから、熱処理時の熱対流を抑制することができる。また種結晶となる単結晶SiC及びCの供給源である多結晶SiCとの間に温度差が形成されにくいことから、熱平衡状態で熱処理することができる。
【0054】
また、単結晶SiCの結晶成長は、結晶表面の面方向に沿って成長していくことから、前記成長方向に温度勾配を設けることで、結晶の成長方向を温度の高い方から低い方へと方向性を持たせることができるようになる。言い換えると、単結晶SiC基板と多結晶SiC基板の積層方向には、温度勾配を設けず、前記積層方向と垂直な方向に温度勾配を設ける、即ち、密閉容器の面方向に温度勾配を設けることで、結晶の成長方向を温度の高い方から低い方へと方向性を持たせることができるようになる。温度勾配を設ける方法としては、本加熱室2に設けられているヒータ11の密閉容器16の側壁側に位置するサイドヒータ11b間の温度差を設ける等の方法がある。このときの、温度勾配の大きさを制御することによって、結晶の成長速度を制御することができ、結晶表面の微結晶粒界の生成を抑制することが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態例では、種結晶として、4H-SiCを用いたが、6H-SiCを使用することも可能である。更に、本実施形態では、種結晶として、(0001)Si面を用いたが、(0001)C面、(11-20)などのその他の面方位のものを使用することも可能である。
また、本発明に係る単結晶SiCは、種結晶となる単結晶SiC及びCの供給源となる多結晶SiC基板の大きさを適宜選択することによって形成される単結晶SiCの大きさを制御することができる。また、形成される単結晶SiCと種結晶との間に歪みが形成されることもないため、非常に平滑な表面の単結晶SiCとできる。そのため、表面の改質膜として適用することも可能である。
【0056】
また、本実施形態に係る単結晶SiC成長方法では、多結晶SiC基板及び金属Si中にあらかじめAlまたはB等のIII族金属の不純物を添加することにより、成長結晶のp型、n型の伝導型を任意に制御することが可能である。
さらには、成長中の雰囲気中に窒素、AlまたはB等のSiCの伝導型を制御する元素を含むガスを送り込むことにより、成長結晶のp型、n型の伝導型を任意に制御することが可能である。
【実験例2】
【0057】
図12及び図13は、前述の方法によって成長した単結晶4H-SiCの(0001)Si表面モホロジーを示す走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)写真である。
図12及び図13から本実施形態のLPE法による結晶の成長表面において、非常に平坦なテラスとステップ構造を観察できる。特に、約1700℃前後においてステップ間距離が広くなり、平坦な表面を作成することが可能である。また、表面にマイクロパイプ欠陥が観察されない。
【0058】
これらのことから、本実施形態のLPE法による単結晶SiCは、表面に形成されるマイクロパイプ欠陥の密度が1/cm2以下と非常に少なくなり、表面に形成されるテラスの幅も100μmオーダーと広く、平坦で欠陥の少ないものであることがわかる。
図13において、写真中で示した矢印のテラス幅はそれぞれ、1500℃:15μmm、1700℃:100μm、1900℃:40μmである。このように、本実施形態によると、ステツプバンチのテラス巾を100μmオーダーに制御することが出来る。
【0059】
尚、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態例が他になされることができることは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態を実施するための熱処理装置の一例を示す断面概略図
【図2】図1の熱処理装置における密閉容器の構成を示す図
【図3】単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法における密閉容器内の単結晶SiC基板の配置の例を示す図
【図4】時間に対する温度制御を示す図
【図5】各所定の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図6】各所定の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図7】加熱後の表面粗さを示す図
【図8】加熱後の表面粗さを示す図
【図9】約1600℃の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図10】約1600℃の温度による加熱後の表面の原子間力顕微鏡像を示す図
【図11】単結晶炭化ケイ素の製造方法における密閉容器の内部を示図
【図12】液相成長した単結晶SiCの表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図
【図13】液相成長した単結晶SiCの表面状態を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図
【符号の説明】
【0061】
1 熱処理装置
2 本加熱室
3 予備加熱室
4 前室
5 単結晶SiC基板
6 ハロゲンランプ
7 ゲートバルブ
8 テーブル
9 サセプタ
10 移動手段
11 加熱ヒータ
12 反射鏡
16 密閉容器
17 多結晶SiC基板
18 Si融液
20 汚染物除去機構
25 嵌合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶炭化ケイ素を成長させるための種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する方法であって、真空下で、約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で単結晶炭化ケイ素基板を真空加熱して、前記単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する表面改良方法。
【請求項2】
所定の減圧下で、約800℃以上に単結晶炭化ケイ素基板を予備加熱室で予備加熱した後、予め、所定の減圧下で約1200℃以上2300℃以下の所定の温度に昇温調整された本加熱室に、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を移動させ、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を約約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で加熱し、単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する方法。
【請求項3】
前記減圧が約10-5Pa以下で、他の不純物が単結晶SiC基板中に侵入することがない請求項2に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法。
【請求項4】
前記単結晶炭化ケイ素基板は機械的研磨加工された表面を有し、その表面が真空高温加熱処理により約1nmレベルの微細表面均一品質に改良される請求項1乃至3のいずれかに記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法。
【請求項5】
単結晶炭化ケイ素を成長させるための単結晶炭化ケイ素基板の表面を規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良する請求項1又は3に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によって表面が改良された種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板。
【請求項7】
種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを重ね、密閉容器内に設置して、高温熱処理を行なうことによって、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記多結晶炭化ケイ素基板との間に、熱処理中に極薄金属シリコン融液を介在させ、前記単結晶炭化ケイ素基板上に単結晶炭化ケイ素を液相エピタキシャル成長させる単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法であって、前記密閉容器を、予め圧力10-5Pa以下の予備加熱室で800℃以上に加熱するとともに、前記密閉容器内を圧力10-5Pa以下に減圧し、予め約1400℃以上2300℃に加熱された圧力10-2Pa以下の加熱室に移動して設置することで、前記単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを短時間で約1400℃以上2300℃に加熱して、単結晶炭化ケイ素の表面に微結晶粒界の存在しない、形成されるテラスの幅を約100μmオーダーに制御して、形成されるステップの高さを、結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする原子オーダーに制御して、表面のマイクロパイプ欠陥密度が1/cm2以下である単結晶炭化ケイ素を製造する単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法。
【請求項8】
前記基板として請求項6に記載の単結晶炭化ケイ素基板を用いて請求項7に記載の単結晶炭化ケイ素を成長する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の単結晶炭化ケイ素の成長方法で成長させた単結晶炭化ケイ素であって、表面に微結晶粒界の存在しない、形成されるテラスの幅を約100μmオーダーに制御して、形成されるステップの高さを、結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする原子オーダーに制御して、表面のマイクロパイプ欠陥密度が1/cm2以下である液相エピタキシャル成長単結晶炭化ケイ素。
【請求項10】
前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面が(0001)Si面、又は、(000−1)C面である請求項8に記載の単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法。
【請求項11】
前記単結晶炭化ケイ素基板が4H−SiC又は6H−SiCである請求項7に記載の単結晶炭化ケイ素の成長方法。
【請求項12】
前記密閉容器内の圧力が前記加熱室内の圧力よりも高くなるように制御し、前記密閉容器内に不純物が混入するのを抑制して、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成する請求項8に記載の単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長方法。
【請求項13】
種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板の前処理工程として、請求項2に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法を含む請求項7に記載の単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長方法。
【請求項1】
単結晶炭化ケイ素を成長させるための種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する方法であって、真空下で、約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で単結晶炭化ケイ素基板を真空加熱して、前記単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する表面改良方法。
【請求項2】
所定の減圧下で、約800℃以上に単結晶炭化ケイ素基板を予備加熱室で予備加熱した後、予め、所定の減圧下で約1200℃以上2300℃以下の所定の温度に昇温調整された本加熱室に、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を移動させ、前記予備加熱した単結晶炭化ケイ素基板を約約1200℃以上2300℃以下の範囲の所定の温度で加熱し、単結晶炭化ケイ素基板の表面を改良する方法。
【請求項3】
前記減圧が約10-5Pa以下で、他の不純物が単結晶SiC基板中に侵入することがない請求項2に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法。
【請求項4】
前記単結晶炭化ケイ素基板は機械的研磨加工された表面を有し、その表面が真空高温加熱処理により約1nmレベルの微細表面均一品質に改良される請求項1乃至3のいずれかに記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法。
【請求項5】
単結晶炭化ケイ素を成長させるための単結晶炭化ケイ素基板の表面を規則的で緻密な約1nm以下の超微細モホロジー表面に改良する請求項1又は3に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法によって表面が改良された種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板。
【請求項7】
種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを重ね、密閉容器内に設置して、高温熱処理を行なうことによって、前記単結晶炭化ケイ素基板と前記多結晶炭化ケイ素基板との間に、熱処理中に極薄金属シリコン融液を介在させ、前記単結晶炭化ケイ素基板上に単結晶炭化ケイ素を液相エピタキシャル成長させる単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法であって、前記密閉容器を、予め圧力10-5Pa以下の予備加熱室で800℃以上に加熱するとともに、前記密閉容器内を圧力10-5Pa以下に減圧し、予め約1400℃以上2300℃に加熱された圧力10-2Pa以下の加熱室に移動して設置することで、前記単結晶炭化ケイ素基板と多結晶炭化ケイ素基板とを短時間で約1400℃以上2300℃に加熱して、単結晶炭化ケイ素の表面に微結晶粒界の存在しない、形成されるテラスの幅を約100μmオーダーに制御して、形成されるステップの高さを、結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする原子オーダーに制御して、表面のマイクロパイプ欠陥密度が1/cm2以下である単結晶炭化ケイ素を製造する単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法。
【請求項8】
前記基板として請求項6に記載の単結晶炭化ケイ素基板を用いて請求項7に記載の単結晶炭化ケイ素を成長する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の単結晶炭化ケイ素の成長方法で成長させた単結晶炭化ケイ素であって、表面に微結晶粒界の存在しない、形成されるテラスの幅を約100μmオーダーに制御して、形成されるステップの高さを、結晶単位格子の半分の高さを最小単位とする原子オーダーに制御して、表面のマイクロパイプ欠陥密度が1/cm2以下である液相エピタキシャル成長単結晶炭化ケイ素。
【請求項10】
前記成長する単結晶炭化ケイ素の表面が(0001)Si面、又は、(000−1)C面である請求項8に記載の単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法。
【請求項11】
前記単結晶炭化ケイ素基板が4H−SiC又は6H−SiCである請求項7に記載の単結晶炭化ケイ素の成長方法。
【請求項12】
前記密閉容器内の圧力が前記加熱室内の圧力よりも高くなるように制御し、前記密閉容器内に不純物が混入するのを抑制して、バッググランド5×1015/cm3の高純度の単結晶SiCを生成する請求項8に記載の単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長方法。
【請求項13】
種結晶となる単結晶炭化ケイ素基板の前処理工程として、請求項2に記載の単結晶炭化ケイ素基板の表面改良方法を含む請求項7に記載の単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図2】
【図4】
【図7】
【図8】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2005−97040(P2005−97040A)
【公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−333164(P2003−333164)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(800000057)財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(800000057)財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】
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