説明

印刷回路基板

【課題】リフローはんだ付けを行うことなく、フローはんだ付けを行う面と反対側の面に突出したはんだを形成し、そのはんだを介して金属板に接地できる印刷回路基板を提供する。
【解決手段】印刷回路基板10のグランドパターン12を接地させるための金属板19は、電子部品がはんだ付けされていない印刷回路基板10の下面21に配置されている。印刷回路基板10の孔15及び金属板19の孔23に取付けネジ18を通して、図示しない被取付け体にねじ込む。取付けネジ18を締め付けていくと、上面20側のフローはんだ付けにより形成された下面21から外方に突出したはんだ16の突出部17が、印刷回路基板11と金属板19に挟まれて押しつぶされる。はんだ16と金属板19との接触面積が大きくなるため、はんだ16を介してグランドパターン12を金属板19に確実に接地できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は印刷回路基板に関し、特にはんだ付けを行わない面を利用して接地させる印刷回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷回路基板を板金フレーム等の金属板に導通させて接地させる場合、印刷回路基板を被取付け体に取り付けるための取付けネジ部分を利用している。印刷回路基板に形成されたグランドパターンと金属板との導通を良好にするために、グランドパターン上の取付けネジ周辺に、印刷回路基板の取付け面よりも外方に突出したはんだを形成している。取付けネジを締め付けるとこのはんだ部が押しつぶされて、そのはんだを介してグランドパターンと金属板とが確実に接地される。このはんだは、フローはんだ付け又はリフローはんだ付けにより電子部品を実装する際に一緒に形成される。取付けネジを介して接地させる印刷回路基板として、リフローはんだ付けを利用したものが特許文献1に、フローはんだ付けを利用したものが特許文献2に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−251029号公報
【特許文献2】特開2003−309333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の印刷回路基板では、一方の面にのみ電子部品のフローはんだ付けを行い、他方の面と金属板とをはんだを介して接触させて接地させる場合に、他方の面に上記はんだを形成するためにリフローはんだ付けを行う必要がある。しかし、他方の面には、はんだ付けする電子部品がないにもかかわらず、リフローはんだ付けを行うことは非経済的である。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、リフローはんだ付けを行うことなく、フローはんだ付けを行う面と反対側の面に突出したはんだを形成し、そのはんだを介して金属板に接地できる印刷回路基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、第1面にのみ電子部品のフローはんだ付けが行われ、第1面の側にグランドパターンが形成され、第1面と反対側の第2面の側を接地された金属板と接触させる印刷回路基板であって、グランドパターンと導通すると共に、電子部品を実装しないスルーホールが形成され、フローはんだ付けによりスルーホールを介して第2面から外方に突出するようにはんだが形成されている。
【0007】
このように構成すると、はんだ付けを行わない面のスルーホールが形成された部分を金属体と互いに平行に接触させる際に、先ず突出するように形成されたはんだが接触する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、金属板に固定させるための取付けネジを通すための孔が、スルーホールの近傍に更に形成されている。
【0009】
このように構成すると、印刷回路基板と金属板とに挟まれたはんだ近傍に取付けネジが通される。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、孔に取付けネジを通し、その取付けネジを締め付けることにより第2面と金属板とに挟まれたはんだが押しつぶされるようにして被取付け体に印刷回路基板が取り付けられている。
【0011】
このように構成すると、はんだと金属板との接触面積が拡大する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、はんだ付けを行わない面のスルーホールが形成された部分を金属体と互いに平行に接触させる際に、先ず突出するように形成されたはんだが接触するため、はんだ付けを行わない面において、はんだを介してグランドパターンを金属体に接地できる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、印刷回路基板と金属板とに挟まれたはんだ近傍に取付けネジが通されるため、取付けネジを締め付けることにより、はんだを介してグランドパターンを確実に金属体に接地できる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、はんだと金属板との接触面積が拡大するため、はんだを介してグランドパターンを金属体に更に確実に接地できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0016】
図1はこの発明の第1の実施の形態による印刷回路基板の概略構成を示した平面図であり、図2は図1で示したA部分の拡大図であり、図3は図2で示したIII−IIIラインの概略断面図である。
【0017】
これらの図を参照して、印刷回路基板10は、上面20が第1面を構成し、下面21が第2面を構成する。又、第1面には電子部品は実装されず、第2面にはリード付き電子部品が実装される。尚、第2面にリード付き電子部品が必ず実装されなければならないものではない。印刷回路基板10は平面視矩形形状を有し、上面20の四隅に所定の大きさのほぼ正方形からなるグランドパターン12が形成されている。そのグランドパターン12の各々には、取付けネジを通すための円形形状の孔15が形成されている。孔15は、印刷回路基板10を接地された金属板等に固定させるための取付けネジを通すためのものである。グランドパターン12上であって孔15の周辺には、複数のスルーホール22・22・・・が印刷回路基板10を貫通して形成されている。即ち、孔15はスルーホール22・22・・・の近傍に形成されている。スルーホール22・22・・・の内壁面とスルーホール22・22・・・を取り囲む上面20及び下面21の端縁とには、銅箔等からなるランド13・13・・・が一体的に形成されている。ランド13・13・・・とグランドパターン12とが接続されている。なお、孔15の周辺に形成されたスルーホール22・22・・・には、電子部品は実装されず、後述するフローはんだ付けによりはんだ16が形成される。このはんだ16が図2の2点鎖線で示される印刷回路基板10の下方に配置された板金フレーム等の接地された金属板19と接触してグランドパターン12が接地される。図2の2点鎖線で囲まれた部分が、印刷回路基板10の下面21への金属体19の投影部分である。
【0018】
図3を中心に参照して、印刷回路基板10は、絶縁性のある樹脂を含浸させた基材11と、基材11の上面に形成された銅箔等の導電体からなるグランドパターン12と、グランドパターン12の上面に形成されたソルダレジスト14とを備えている。ソルダレジスト14は、はんだ付けの際にランド13・13・・・以外の場所にはんだ16が流れないように銅箔の表面を覆う合成樹脂膜であり、ランド13・13・・・を避けるようにして形成されている。一方、ランド13・13・・・は、はんだが供給されるべき部分である。尚、印刷回路基板10には、上面20側に図示しない他のパターンが構成され、下面21には表面実装の電子部品は実装されない。したがって、上面20側に電子部品のフローはんだ付けを行い、下面21側は、フローはんだ付けもリフローはんだ付けも行わない。
【0019】
次に、印刷回路基板10の上面20側のフローはんだ付けが行われた状態について説明する。
【0020】
図4は図3に対応した図であって、印刷回路基板にフローはんだ付けが行われた状態を示した概略断面図である。
【0021】
図4を参照して、実際フローはんだ付けは下方から行われフローはんだ付けされる面は下面であるが、他の図面との関係で上下を統一しているため、上面20側をフローはんだ付けされる面として説明する。
【0022】
フローはんだ付けは、はんだ噴流を用いて電子部品を基板に接合させる印刷回路基板のはんだ付けの工業的方法のひとつである。先ず、フラックスが、図示しない電子部品が所定の位置に適切に配置された印刷回路基板10の上面20全体に塗布される。このフラックス塗布は、自然酸化膜を除去してランド13・13・・・表面でのはんだ16の濡れ広がりを良好にするために行われる。次に、印刷回路基板10は、遠赤外線ヒーター等により加熱される。これは、塗布されたフラックスの不要な溶剤成分を気化させ、又、溶融したはんだ16が印刷回路基板10と接触する際に起こる熱衝撃を緩和するために行われる。次に、印刷回路基板10の上面20に溶融したはんだ16が供給される。はんだ16の供給は、1次噴流と2次噴流とからなる。1次噴流は、スルーホール22・22・・・の壁面を覆うように形成されたランド13の表面をはんだ16で十分に濡らし、2次噴流は、ソルダレジスト14部分に付着したはんだ16を除去したり、はんだ16の形状を整えたりする。このとき、上面20側から供給された溶融したはんだ16が、毛細管現象によりスルーホール22・22・・・を上面20側から下面21に向かって濡れ上がる。そして、下面21から外方に突出した突出部17・17・・・を有する山状のはんだ16が形成される。尚、フローはんだ付けをした際に、はんだがスルーホールにおいて下面21から外方に突出して形成される現象は、印刷回路基板10の四隅に形成されたスルーホール22・22・・・に限定される現象ではない。例えば、電子部品が取り付けられる他の部分に形成されたスルーホールであっても同様に発生する現象である。このようにして、フローはんだ付けは行われる。
【0023】
次に、印刷回路基板10のグランドパターン12が接地された状態について説明する。
【0024】
図5は図3に対応した図であって、印刷回路基板が金属板に取り付けられた状態を示した概略断面図である。
【0025】
図5を参照して、印刷回路基板10のグランドパターン12を接地させるための金属板19は、電子部品がはんだ付けされていない印刷回路基板10の下面21に配置されている。金属板19は大地と同電位に保持されている。取付けネジ18を印刷回路基板10の孔15及び金属板19の孔23に通して、例えばナット等の図示しない被取付け体にねじ込む。取付けネジ18を締め付けていくと、上述したはんだ付けで形成されたはんだ16の突出部17が、先ず金属板19と接触し、印刷回路基板11の下面21と金属板19の上面とに挟まれて押しつぶされる。このようにして、印刷回路基板10は金属板19に固定される。ここで、グランドパターン12、ランド13・13・・・、はんだ16及び金属板19は互いに導通している。又、上記のようにはんだ16が押しつぶされているため、はんだ16と金属板19との接触面積が大きくなっている。したがって、はんだ16を介してグランドパターン12を金属板19に確実に接地できる。
【0026】
上記のような印刷回路基板10にあっては、上面20のフローはんだ付けにより下面21から外方に突出したはんだ16が形成されるため、そのはんだ16を介して、グランドパターン12を金属体19に良好に接地できる。実装する電子部品がないにも関わらず、下面21にはんだ付けの工程を設ける必要がなく経済的である。
【0027】
尚、上記の実施の形態では、印刷回路基板は矩形形状を有しているが、金属板と接触させることができれば、他の形状であってもよい。
【0028】
又、上記の実施の形態では、グランドパターンはほぼ正方形を有し印刷回路基板の四隅に各々形成されているが、接触させる金属板の位置に応じて、他の形状や数であってもよい。
【0029】
更に、上記の実施の形態では、1つの取付けネジ部分に複数のスルーホールが形成されているが、グランドパターンと金属板をはんだを介して導通できれば、1つでもよい。
【0030】
更に、上記の実施の形態では、取付けネジを通すための孔が印刷回路基板の四隅に各々形成されているが、印刷回路基板を被取付け体に取り付けることができれば、他の位置や数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の第1の実施の形態による印刷回路基板の概略構成を示した平面図である。
【図2】図1で示したA部分の拡大図である。
【図3】図2で示したIII−IIIラインの概略断面図である。
【図4】図3に対応した図であって、印刷回路基板にフローはんだ付けが行われた状態を示した概略断面図ある。
【図5】図3に対応した図であって、印刷回路基板が金属板に取り付けられた状態を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 印刷回路基板
12 グランドパターン
15 孔
16 はんだ
18 取付けネジ
19 金属板
22 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面の側にのみ電子部品のフローはんだ付けが行われ、前記第1面の側にグランドパターンが形成され、前記第1面と反対側の第2面の側を接地された金属板と接触させる印刷回路基板であって、
前記グランドパターンと導通すると共に、前記電子部品を実装しないスルーホールが形成され、
前記フローはんだ付けにより前記スルーホールを介して前記第2面から外方に突出するようにはんだが形成された、印刷回路基板。
【請求項2】
前記金属板に固定させるための取付けネジを通すための孔が、前記スルーホールの近傍に更に形成された、請求項1記載の印刷回路基板。
【請求項3】
前記孔に取付けネジを通し、その取付けネジを締め付けることにより前記第2面と前記金属板とに挟まれた前記はんだが押しつぶされるようにして被取付け体に取り付けられた、請求項2記載の印刷回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−282916(P2008−282916A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124541(P2007−124541)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】