説明

印刷装置及びその制御方法

【課題】ストレージデバイスを搭載した印刷装置において、ストレージデバイスの製品仕様や電力消費の特性を考慮した消費電力の低減を図る。
【解決手段】第1判定手段によりストレージデバイスへのアクセスが必要であると判定されたデータの受信に関する履歴情報を管理し、通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオンとなっている第1の動作状態へ移行した後、第2判定手段により予め定められた時間が経過したと判定された場合、前記履歴情報に基づいて前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であるデータを次に受信するまでの時間を予測時間として取得して、前記予測時間が駆動ユニットの消費電力量に基づいて定められた時間の閾値を越えていれば、印刷装置を前記第1の動作状態から、通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオフとなる第2の動作状態へ移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、印刷装置は、ホスト装置(例えば、PC(Personal Computer))と接続され、ホスト装置からの印刷データに従って、記録媒体上に画像を形成し印刷を行なう。印刷装置とホスト装置との間では、操作性の向上や、効率的に印刷装置を運用等するため、印刷データ以外にもデータの送受信が行なわれている。
【0003】
例えば、印刷装置を管理するための情報(例えば、ステータス情報、リモート設定情報)や、印刷運用コストを算出等するための印刷履歴情報(例えば、インクや用紙の使用量、印刷要求ホスト等を含む情報)等が両装置間で送受信される。通常、これらの情報は、印刷装置に備えられているRAM、不揮発性メモリ、HDD等に格納される。
【0004】
一般に、印刷装置は、通常の動作モードに加え、消費電力を低減するために低消費電力モードを備えている。このようなモードを備えた印刷装置では、ホスト装置から印刷データを一定時間受信しなければ、低消費電力モードに移行し、待機時の消費電力を低減する。
【0005】
低消費電力モードでは、印刷装置の各部(例えば、CRモータ、LFモータ、その他モータ、各種センサ、インクジェット記録ヘッド、HDD等)への電力供給の停止、制御用CPUの動作停止等により消費電力の低減を実現する。なお、ホスト装置との間でデータを送受信する印刷装置のインターフェース制御部(IF制御部)は、印刷装置が低消費電力モードへ遷移した後でも、ホスト装置から印刷データや印刷データ以外のデータを送受信できるように制御される。低消費電力モード中に印刷データを受信した場合、印刷装置は、IF制御部からの通知により通常の動作モードに復帰した後、印刷動作を行なう。印刷データ以外のデータを送受信する場合は、印刷装置は、IF制御部からの通知によりデータ送受信に必要な構成(例えば、CPU、RAM、不揮発性メモリ、HDD等)のみを一旦、動作状態に復帰させる。そして、ホスト装置との通信の終了後、印刷装置は、当該復帰させた構成を再度停止させる。
【0006】
ネットワーク接続可能な印刷装置の場合、ネットワークに接続された複数のホスト装置との間でデータ送受信を行なう必要がある。接続されているホスト装置の台数が多い場合、上述したデータ送受信が頻繁に発生するため、印刷装置の消費電力の低減効率はそれほど向上しない。つまり、接続されるホスト装置が多い場合、ホスト装置とのデータ送受信が頻繁に発生するため、低消費電力モードに移行しても、データ送受信に必要な印刷装置における構成が動作状態となっている時間が長くなってしまい、消費電力の低減効率が悪化してしまう。特に、HDDを備えた印刷装置は、動作状態と低消費電力モード間の遷移が頻繁に発生すると、HDD電源のオン/オフ回数の増加により、消費電力低減効率の悪化が顕著になる。これは、HDDの電源起動時のスピンアップ動作の電力消費量が多いためである。
【0007】
また、HDDの電源のオン/オフ回数は、ヘッドのロード/アンロードの耐久回数からHDDの製品寿命に深く関係しており、HDDの電源オン/オフ回数が増加すると、HDDの製品寿命にも影響を与えてしまう。
【0008】
ここで、特許文献1には、低消費電力モード期間中、継続的に消費電力を抑える技術が開示されている。この技術では、印刷装置が通常の動作モードから低消費電力モードに移行した場合、ホスト装置のステータスモニタが、印刷装置へのポーリング動作を停止させる。また、ホスト装置のステータスモニタは、印刷装置が低消費電力モードから通常の動作モードへ移行した場合、ポーリング動作を再開させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−215686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、印刷装置とホスト装置との間では、印刷データ以外にも、データの送受信が行なわれる。このようなデータの送受信は、印刷装置が通常の動作モードであるか、低消費電力モードのいずれであるかに拘わらず行なわれる。
【0011】
ここで、印刷装置は、低消費電力モードから復帰してデータの送受信を行なうためには、CPU、RAM及びHDD等のデータの送受信に必要な構成を動作可能な状態に移行させなければならない。そのため、特に、複数のホスト装置との間でデータの送受信が可能な印刷装置では、低消費電力モードに移行しても消費電力の低減効率が悪化してしまう。
【0012】
また更に、印刷装置がHDDを備えている場合、HDDへの電力の供給及び停止が頻繁に繰り返され、スピンアップ動作時のHDDの消費電力によって低消費電力モードでの消費電力低減効果が悪化してしまう。その他、HDDへの電力の供給及び停止が頻繁に繰り返された場合、HDDの製品寿命が短くなってしまう。
【0013】
ここで、印刷装置とホスト装置との間では、ステータスモニタからのステータス情報のみならず、種々のデータが送受信される。例えば、ホスト装置のOSが制御しているプリンタMIBによるデータ送受信、デバイスエージェントによる印刷履歴情報の送受信等が挙げられる。そのため、上述した特許文献1に記載された技術のように、ホスト装置からのポーリングを単純に全て止めてしまうような手法では、種々の問題が生じてしまう可能性がある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ストレージデバイスを搭載した印刷装置において、ストレージデバイスの製品仕様や電力消費の特性を考慮した消費電力の低減を図れるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の一態様による印刷装置は、駆動ユニットを有するストレージデバイスと、1又は複数のホスト装置のいずれかから印刷データ以外のデータを受信した場合に、該データの受信により前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であるか否かを判定する第1判定手段と、前記第1判定手段により前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であると判定されたデータの受信に関する履歴情報を管理する履歴情報管理手段と、通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオンとなっている第1の動作状態へ移行した後、予め定められた時間経過したか否かを判定する第2判定手段と、前記第2判定手段により前記予め定められた時間が経過したと判定された場合、前記履歴情報に基づいて前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であるデータを次に受信するまでの時間を予測時間として取得する取得手段と、前記予測時間が前記駆動ユニットを駆動するときの消費電力量に基づいて定められた時間の閾値を越えていれば、前記印刷装置を前記第1の動作状態から、通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオフとなっている第2の動作状態へ移行させ、前記予測時間が前記時間の閾値を越えていなければ、前記印刷装置を前記第1の動作状態に維持させる制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ストレージデバイスを搭載した印刷装置において、ストレージデバイスの製品仕様や電力消費の特性を考慮した消費電力の低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる印刷装置の外観構成の一例を示す斜視図。
【図2】図1に示す印刷装置10における機能的な構成の一例を示す図。
【図3】図2に示すコントローラ部11のハードウェア構成の一例を示す図。
【図4】図2に示すエンジン部12のハードウェア構成の一例を示す図。
【図5】図1に示す印刷装置10のパワーマネージメント制御の一例を示す図。
【図6】図3に示すコントローラ部11における機能的な構成の一例を示す図。
【図7】図1に示す印刷装置10における処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図8】図1に示す印刷装置10における消費電力の推移の一例を示す図。
【図9】図1に示す印刷装置10における消費電力の推移の一例を示す図。
【図10】図1に示す印刷装置10における消費電力の推移の一例を示す図。
【図11】履歴情報の一例を示す図。
【図12】ストレージデバイス(HDD)の構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の説明においては、インクジェット方式を用いた印刷装置を例に挙げて説明する。印刷装置としては、例えば、印刷機能のみを有するシングルファンクションプリンタであってもよいし、また、例えば、印刷機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであってもよい。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の方式で製造するための製造装置であってもよい。
【0019】
なお、「記録媒体」とは、一般的な印刷装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等を含む。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係わる印刷装置の外観構成の一例を示す斜視図である。
【0021】
印刷装置10は、インクジェット記録ヘッド(不図示)を有し、ホスト装置(不図示)から受信した印刷データに基づいて記録ヘッドを制御する。具体的には、記録ヘッドに設けられた吐出口から記録媒体に対してインクを吐出する。これにより、画像(文字や記号等も含む)を記録媒体上に形成する。
【0022】
印刷装置10には、記録ヘッドのインク吐出性能を維持回復するための回復装置(不図示)が配されている。印刷装置10では、一定時間経過毎又は、吐出口の目詰まり等が生じたときに、記録ヘッドを回復装置と対向する位置へ移動させて回復処理を行なう。回復処理としては、例えば、吸引回復処理、ワイピング(クリーニング)、予備吐出などが行なわれる。
【0023】
画像を記録するための記録媒体としての用紙(以下、シートと呼ぶ場合もある)には、幅や長さが一定サイズ(例えば、A2、A1サイズなど)のカットシートと、幅が一定サイズで長さが、例えば、数十〜数百メートルのロール状に巻かれたロールシートとがある。また、シートとしては、紙、プラスチックシート、写真調印画紙、布、あるいは皮革など、画像を記録できるものであれば、種々の材質のものを使用することができる。
【0024】
図2は、図1に示す印刷装置10における機能的な構成の一例を示す図である。
【0025】
ここで、まず、ホスト装置20は、印刷データや印刷データ以外のデータ(例えば、各種制御信号)を印刷装置10に対して送信する。印刷装置10は、1又は複数のホスト装置20から各種データをネットワーク30を介して受信する。なお、ホスト装置20と印刷装置10との間は、必ずしもネットワークで接続される必要はなく、例えば、USB(Universal Serial Bus)やIEEE1394などであっても良いし、また、有線であっても無線であっても良い。
【0026】
ここで、印刷装置10の内部構成は、コントローラ部11と、エンジン部12とに大きく分けられる。また、印刷装置10には、電源部13も設けられる。そして、コントローラ部11及びエンジン部12には、DCコンバータ14及び15がそれぞれ設けられており、電源部13は、DCコンバータ14及び15へ電力の供給を行なう。
【0027】
コントローラ部11は、印刷装置10における処理を統括制御する。
具体的には、
・ホスト装置20との通信に用いられるネットワーク30との間のインターフェースの制御
・ホスト装置20から送信される印刷制御コマンドの解釈やイメージデータの生成
・イメージデータの圧縮・伸張処理
・イメージデータ生成時における各種画像処理
・ユーザからの操作に基づくエンジン部12へのコマンド送信
等の処理を行なう。
【0028】
エンジン部12は、実際に、記録媒体上に印刷を行なう。エンジン部12においては、コントローラ部11により生成されたイメージデータに基づいて印刷を行なう。
具体的には、
・記録ヘッドの吐出タイミングを規定するデータの生成
・印刷処理
・記録ヘッドへのインクの供給や回復処理
・記録媒体の搬送、記録ヘッドを動作させるモータの制御
等の処理を行なう。
【0029】
ここで、図3を用いて、図2に示すコントローラ部11のハードウェア構成の一例について説明する。
【0030】
コントローラ部11には、CPU41と、メモリコントローラ42と、RAM43と、ROM44と、EEPROM45と、バスブリッジ46、48及び49と、ネットワークIF47と、RTC50と、画像処理部51とを具備して構成される。この他、コントローラ部11には、操作パネル53、操作パネルIF52、HDD IF54、HDD55、拡張IF56も設けられる。
【0031】
ROM(Read Only Memory)44は、制御プログラムを格納する。EEPROM45(Electrically Erasable Programmable ROM)は、更新可能な制御プログラムや処理プログラム、各種定数データなどを格納する。RAM(Random Access Memory)43は、ホスト装置20から受信したコマンド信号や画像情報を格納する。CPU(Central Processing Unit)41は、メモリコントローラ42を介してこれらメモリに格納された情報に基づいて印刷動作を制御する。
【0032】
操作パネル53は、各種ボタンや画面から構成され、ユーザインターフェースとしての役割を果たす。操作パネル53を介したユーザからの各種指示は、指示情報として、操作パネルIF(Interface)52を介して印刷装置10内に入力される。この指示情報は、CPU41及びDCコンバータ14に伝達される。また、CPU41からの命令により操作パネル53のLEDの点灯やLCDの表示が制御される。
【0033】
バスブリッジ46は、エンジン部12に向けてイメージデータを送信する。また、コントローラ部11とエンジン部12との間における各種コマンドやステータス情報の送受信等を行なう。
【0034】
拡張IF56には、種々の拡張カードが接続される。HDD IF54は、HDD(ハードディスクドライブ:Hard Disk Drive)55に接続される。HDD55には、例えば、印刷履歴情報、印刷データ、外字、フォーム画像、言語系(PDL:Page Description Language)の異なる印刷制御言語を解釈するエミュレーションプログラム等が格納される。ここで、ストレージデバイス(この場合、HDD55)は、図12に示すように、記憶媒体駆動ユニット55aと読取駆動ユニット55bとを備える。記憶媒体駆動ユニット55aは、データの読み書き対象である記憶媒体を駆動する機構を備える。読取駆動ユニット55bは。データを読み出す読取部を駆動する機構を備える。
【0035】
RTC(リアルタイムクロック)50は、計時機能を有し、印刷装置本体の電源とは別系統である電池(不図示)によってその時刻を保持する。CPU41は、バスブリッジ49を介してRTC50に接続されており、当該RTC50により計時された時刻を取得する。
【0036】
ネットワークIF47は、1又は複数のホスト装置20との間でデータを送受信する。画像処理部51は、各種画像処理を行なう。例えば、ホスト装置20で生成されたラスターデータをイメージデータ(各インク色の2値化データ)に変換する。このイメージデータは、バスブリッジ46を介してエンジン部12へ出力される。
【0037】
次に、図4を用いて、図2に示すエンジン部12のハードウェア構成の一例について説明する。
【0038】
エンジン部12は、CPU61と、RAM62と、ROM63と、EEPROM64と、バンドメモリ制御部65と、メモリ66と、出力ポート67と、搬送モータ制御回路68と、搬送モータ69と、搬送機構70とを具備して構成される。この他、エンジン部12には、キャリッジモータ制御回路71、キャリッジモータ72、ヘッド制御部74及び記録ヘッド75を有するキャリッジ73も設けられる。
【0039】
エンジン部12は、バンドメモリ制御部65を介してコントローラ部11と接続される。ROM63は、制御プログラムを格納する。EEPROM64は、更新可能な制御プログラムや処理プログラム、各種定数データなどを格納する。RAM62は、コントローラ部11から受信したコマンド信号や画像情報を格納する。CPU61は、これらメモリに格納された情報に基づいて印刷動作を制御する。
【0040】
CPU61は、例えば、出力ポート67及びキャリッジモータ制御回路71を介してキャリッジモータ72を動作させることによりキャリッジ73を移動させる。また、CPU61は、例えば、出力ポート67及び搬送モータ制御回路68を介して搬送モータ69を動作させることにより搬送ローラなどの搬送機構70を動作させる。更に、CPU61は、RAM62に格納された各種情報に基づきバンドメモリ制御部65やヘッド制御部74を制御し、記録ヘッド75を駆動させる。この制御により、記録媒体上に画像が形成される。
【0041】
次に、図5を用いて、図1に示す印刷装置10におけるパワーマネージメント制御について説明する。
【0042】
ここで、本実施形態に係わる印刷装置10は、5つの状態を有する。すなわち、スタンバイ状態81と、印刷状態82と、スリープ状態83と、エンジンオフ(HDDオフ)状態84と、エンジンオフ(HDDオン)状態85とを有する。スタンバイ状態81は、通常の待機状態を示し、印刷状態82は、印刷処理の実行状態を示す。スリープ状態83は、いわゆる低消費電力モードを示す。エンジンオフ(HDDオフ)状態84は、DCコンバータ15によるエンジン部12への電力供給が停止されるとともに、DCコンバータ14によるHDD55への電力供給が停止される状態を示す。エンジンオフ(HDDオン)状態85は、DCコンバータ15によるエンジン部12への電力供給は停止されるが、DCコンバータ14によるHDD55へは電力供給が行なわれる状態を示す。なお、印刷装置10における消費電力は、その消費量が多い順に、印刷状態82、スタンバイ状態81、エンジンオフ(HDDオン)状態85、エンジンオフ(HDDオフ)状態84、スリープ状態83となる。
【0043】
ここで、スリープ(電源オフ)状態83において、ユーザにより操作パネル53上の電源キーが押下されると、印刷装置10は、初期化処理を行なった後、スタンバイ状態81に遷移する。スタンバイ状態81においては、印刷装置10における全ての機能構成が動作状態となる。
【0044】
印刷装置10は、ホスト装置20から印刷データを受信すると、印刷状態82に遷移し、印刷処理を実行する。印刷処理が終了すると、印刷装置10は、再度、スタンバイ状態81に戻る。
【0045】
また、スタンバイ状態81時には、印刷装置10は、ホスト装置20からの要求に応答してステータスの送信や、ホスト装置20との間で印刷データ以外のデータの送受信を即時に実行可能である。
【0046】
また更に、スタンバイ状態81時には、印刷装置10は、印刷データを受信せず、スタンバイ状態を維持する時間を計測するためにタイマー(スリープタイマー)を動作させる。印刷装置10は、スリープタイマーに基づいて、印刷データを受信しなかった時間(印刷処理を行なわなかった時間)が予め設定された時間を経過したと判定した場合、消費電力低減のためスリープ状態83に遷移する。
【0047】
スリープ状態83時には、印刷装置10は、消費電力を低減するため、エンジン部12への電力供給を停止する。このとき、CPU41はHALT状態に設定され、RAM43はセルフリフレッシュ状態に設定され、HDD55への電力供給も停止される。その他の構成部に対しても電力供給の停止や、動作クロック速度の低減等がなされる。
【0048】
ここで、ネットワークIF47は、CPU41がHALT状態であっても、ホスト装置20からのデータを受信したことを検出できるように設定される。例えば、ネットワークIF47とバスブリッジ48との間がPCIバスで接続されていれば、ネットワークIF47をD3hotに設定しておく。このようにすれば、ホスト装置20からのデータを受信したことを検出した場合に、ネットワークIF47は、PME信号をCPU41に出力する。そして、CPU41は、PME信号に基づいて、HALT状態から通常の動作状態に移行する。なお、ネットワークIF47は、ホスト装置20から受信したデータの内容を判定可能に構成される。
【0049】
ここで、印刷装置10は、スリープ状態83時に、ホスト装置20から印刷データを受信した場合、印刷装置10における全ての機能構成を動作状態にする。すなわち、印刷装置10は、印刷状態82に遷移し、印刷処理を実行する。
【0050】
また、印刷装置10は、スリープ状態83時に、ユーザにより操作パネル53が操作された場合にも、印刷装置10における全ての機能構成を動作状態にする。すなわち、印刷装置10は、スタンバイ状態81に遷移し、ユーザによるパネル操作を受け付ける。
【0051】
印刷装置10は、スリープ状態83時に、ホスト装置20から印刷データ以外のデータ(ステータス応答要求等)を受信した場合、エンジンオフ(HDDオフ)状態84に移行する。エンジンオフ(HDDオフ)状態時には、エンジン部12への電力供給は、停止されたままであるが、印刷装置10は、ホスト装置20との間でデータを送受信するため、CPU41、RAM43等を通常の動作状態に設定する。このとき、HDD55への電力供給は停止されている。
【0052】
CPU41がHALT状態から通常の動作状態に移行した後、印刷装置10は、CPU41において、メモリコントローラ42を制御する。これにより、RAM43は、メモリコントローラ42により通常の動作状態に設定される。その後、印刷装置10は、CPU41において、ホスト装置20との間のデータ送受信に伴ってHDD55へのアクセスが必要であるか否かを判定する。HDD55へのアクセスが必要でないと判定した場合、印刷装置10は、そのまま、ホスト装置20からの要求に対して応答する。一方、HDD55へのアクセスが必要であると判定した場合、印刷装置10は、エンジンオフ(HDDオン)状態85に遷移し、HDD55へ電力を供給し、必要な情報をHDD55から取得した後、ホスト装置20からの要求に応答する。
【0053】
ここで、エンジンオフ(HDDオフ)状態84、エンジンオフ(HDDオン)状態85では、ホスト装置20とのデータの送受信が完了した後の経過時間を計測するため、タイマー(第1のタイマー、第2のタイマー)が動作する。
【0054】
第1のタイマーは、エンジンオフ(HDDオフ)状態84時の経過時間を計測するのに用いられ、第2のタイマーは、エンジンオフ(HDDオン)状態85時の経過時間を計測するのに用いられる。第1のタイマー及び第2のタイマーによって、計時された時間が予め設定された時間を経過すれば、印刷装置10は、スリープ状態83に遷移する。
【0055】
印刷装置10は、エンジンオフ(HDDオフ)状態84及びエンジンオフ(HDDオン)状態85のいずれであっても、ホスト装置20から印刷データを受信した場合は、印刷状態82に遷移し、印刷処理を実行する。
【0056】
次に、図6を用いて、図3に示すコントローラ部11における機能的な構成の一例について説明する。なお、図6に示す構成は、例えば、CPU41がROM44等に格納された制御プログラムを実行することにより実現される。図6に示す構成の一部又は全ては、専用のハードウェア回路により実現されても勿論構わない。
【0057】
コントローラ部11には、その機能的な構成として、受信データ判定部91と、履歴情報管理部92と、計時部93と、予測部94と、移行制御部95とが具備される。
【0058】
受信データ判定部91は、1又は複数のホスト装置20から受信したデータを判定する。より具体的には、受信したデータが印刷データであるか否かを判定し、印刷データ以外のデータであれば更に、当該受信したデータによりHDD55へのアクセスが必要であるか否かの判定を行なう。
【0059】
履歴情報管理部92は、HDD55へのアクセスが必要であると判定されたデータの受信に関する履歴情報を管理する。履歴情報の管理は、例えば、RAM43やEEPROM45を用いて行なわれる。この履歴情報の構成の詳細については後述する(後述する図11参照)。
【0060】
計時部93は、RTC50を用いて、各種タイマーの計時を行なう。計時部93においては、例えば、エンジンオフ(HDDオフ)状態84へ印刷装置10が移行した後、第1のタイマーの計時を開始する。また、例えば、エンジンオフ(HDDオン)状態85へ印刷装置10が移行した後、第2のタイマーの計時を開始する。その他、計時部93においては、スリープタイマーの計時も行なう。
【0061】
予測部94は、エンジンオフ(HDDオン)状態85時に第2のタイマーがタイムアウトした場合に、HDD55へのアクセスが必要であるデータを次に受信するまでの時間(予測時間)を算出する。この算出は、履歴情報管理部92に管理された履歴情報に基づいて行なわれる。
【0062】
移行制御部95は、印刷装置10の動作状態の移行を制御する。例えば、印刷装置10の動作状態をエンジンオフ(HDDオン)状態85からスリープ状態83に移行させる。 次に、図7を用いて、図1に示す印刷装置10における処理の流れの一例について説明する。ここでは、エンジンオフ(HDDオフ)状態からスリープ状態に遷移する際の動作について説明する。
【0063】
ここで、印刷装置10は、ネットワークIF47等を介してホスト装置20からステータス応答要求を受信する。そして、受信データ判定部91において、当該要求に応答するためにHDD55へのアクセスが必要であるか否かを判定する(第1判定)。ここで、HDD55へのアクセスが必要であると判定したとする。この場合、印刷装置10は、HDD55への電力供給を開始する(S101)。
【0064】
HDD55へのアクセスが可能になると、印刷装置10は、CPU41において、HDD55から必要な情報を読み出し、ステータス応答要求に対する応答データを、ホスト装置20にネットワークIF47を介して送信する(S102)。
【0065】
ここで、印刷装置10は、計時部93において、第2のタイマーに予め決められた初期値を設定し(S103)、当該第2のタイマーの計時を開始する(S104)。この初期値の詳細については後述するが、当該初期値は、印刷装置10及びHDD55における製品仕様(耐久(保証)時間、保証時間等)に基づいて決められる。
【0066】
その後、印刷装置10は、第2のタイマーのタイムアウトを判定する(第2判定)。第2のタイマーがタイムアウトすると(S105でYES)、印刷装置10は、予測部94において、次にHDD55へのアクセスが必要となるステータス応答要求がホスト装置20から送られてくるまでの時間を予測する(S106)。この予測では、送信元のホスト装置や応答ステータスの種別も予測される。
【0067】
その後、印刷装置10は、移行制御部95において、予測した時間(予測時間)と所定の閾値とを比較する。この所定の閾値の詳細については後述するが、当該閾値は、HDD55の記憶媒体駆動ユニット55aのスピンアップ時(始動時)に要する消費電力量に基づいて決められる。なお、この閾値は、記憶媒体駆動ユニット55aと読取駆動ユニット55bの両方の消費電力量に基づいて決めても良い。
【0068】
比較の結果、予測時間が閾値を越えていれば(S107でYES)、印刷装置10は、スリープ状態83に移行する。一方、予測時間が閾値以下であれば(S107でNO)、印刷装置10は、計時部93において、第2のタイマーに予測時間を設定し(S108)、当該タイマーの計時を開始する(S109)。第2のタイマーがタイムアウトすると(S110でYES)、印刷装置10は、受信データ判定部91において、S106の処理で予測したときと同一(送信元ホスト装置、ステータス種別)のステータス応答要求を受信又は応答済みであるか否かを判定する。
【0069】
予測したステータス応答要求を受信するか、又は応答済みであれば(S111でYES)、印刷装置10は、予測部94において、上記同様に、予測時間を算出する(S112)。その後、印刷装置10は、移行制御部95において、当該予測時間と所定の閾値とを比較する。予測時間が閾値を越えていれば(S113でYES)、スリープ状態83に移行する(S114)。予測時間が閾値以下であれば(S113でNO)、S108の処理に戻る。
【0070】
ここで、図8を用いて、図1に示す印刷装置10における消費電力の推移の一例について説明する。
【0071】
印刷装置10は、スリープタイマーがタイムアウトするまでスタンバイ状態81を維持する。スタンバイ状態81時には、印刷装置10における全ての機能構成が動作可能状態となっている。そのため、スタンバイ状態81は、印刷状態82の次に消費電力の高い状態となる。
【0072】
時刻T1において、スリープタイマーがタイムアウトし、印刷装置10は、スリープ状態83に移行する。スリープ状態83時には、印刷装置10の消費電力は最も小さくなる。
【0073】
ここで、ホスト装置20からHDD55へのアクセスが必要なステータス応答要求を受信すると、印刷装置10は、エンジンオフ(HDDオフ)状態84に移行する。そして、移行制御部95において、HDD55へのアクセスが必要であるか否かの判定を行なう。なお、エンジンオフ(HDDオフ)状態84での判定は、非常に短く、無視できるほどの時間であるが、ここでは、説明を分かり易くするため、長めの時間で示している。
【0074】
ここで、HDD55へのアクセスが必要であると判定されたとする。この場合、印刷装置10は、時刻T2において、エンジンオフ(HDDオン)状態85に移行し、HDD55への電力供給を開始する。HDD55は、電力供給が開始されると初期化を始め、ディスクを回転させる。ディスクの回転が安定するまでのスピンアップ期間(T2からT3までの時間)は、必要な消費電力が多く一時的に消費電力が増える。そのため、所定期間の間、印刷装置10における単位時間当たりの消費電力はWspinとなる。なお、時刻T3の経過後、ディスクの回転が安定し、消費電力が減り、印刷装置10における単位時間当たりの消費電力はWe2となる。
【0075】
ここで、第2のタイマーが設定された初期値に達し、タイムアウトとなると、上述した通り、印刷装置10は、移行制御部95において、予測時間と閾値との比較を行なう。ここでは、予測時間が閾値を越えていると判定されたとする。そのため、印刷装置10は、時刻T4において、再度、スリープ状態83に移行する。これにより、印刷装置10の消費電力は、Wsとなる。以後、同様にして印刷装置10においては適宜動作状態が変更され、消費電力の低減が図られる。
【0076】
次に、図7のS103に示す第2のタイマー(エンジンオフ(HDDオン)状態時の経過時間を計測するのに用いられるタイマー)に設定される初期値について説明する。
【0077】
HDD55は、一般に、保証される回数(保証回数)が決まっており、ディスク媒体上にヘッドをロードする回数や、ディスク媒体外へヘッドを退避させる(アンロード)の回数が決まっている。また、印刷装置10も、動作保証される保証時間が決まっている。
【0078】
ここで、第2のタイマーに設定される初期値を小さくしてしまうと、HDD55の電源オン/オフ回数が多くなってしまい、印刷装置10の保証時間内にヘッドのロード/アンロードの回数が保証回数を越えてしまう可能性がある。
【0079】
そこで、第2のタイマーには、印刷装置10の保証時間をHDD55におけるロード/アンロードの保証回数で除算することにより得られる値以上の値を設定する。具体的には、HDD55のヘッドのロード/アンロードの保証回数をNとし、印刷装置の保証時間をHとし、第2のタイマーの値をH/Nにより得られる値以上に設定する。
【0080】
このような値を第2のタイマーとして設定すれば、印刷装置10の保証時間内にHDDのヘッドのロード/アンロードの保証回数を越えてしまう可能性を減らせる。つまり、印刷装置10では、消費電力を低減させるため、スリープ状態83等への遷移とともに、HDD55への電源オン/オフを繰り返すことになるが、その1回あたりの通電時間の最小値である初期値をH/N以上にする。これにより、印刷装置10の保証時間内にヘッドのロード/アンロードの回数が保証回数を越えてしまうことを抑制できる。
【0081】
ここで、例えば、HDD55のヘッドのロード/アンロードの保証回数を60万回とし、印刷装置10の保証時間を10年(1日当たり8時間、1か月当たり20日の稼働時間を想定)とする。
この場合、
H/N=(8[h]×20[日]×12[月]×10[年])/600000[回]
=14400/600000
=0.024[h/回]
≒116[sec/回]
となる。
【0082】
そのため、ここで仮定した条件においては、例えば、120秒を初期値として設定すれば、印刷装置10の保証時間内にHDD55のヘッドのロード/アンロードの保証回数を越えないように制御できる。
【0083】
次に、図7のS107等に示す第2のタイマーで使用される所定の閾値について説明をする。ここで、図9及び図10は、図1に示す印刷装置10における消費電力の推移の一例を示す図である。図9は、時刻T4において、予測時間(時刻T4から時刻T5までの時間)が所定の閾値を越えていると判定された場合を示している。図10は、時刻T4において、予測時間(時刻T4から時刻T5までの時間)が所定の閾値以下であると判定された場合を示している。なお、予測時間は、上述した通り、HDD55のアクセスが必要なステータス応答要求を次に受信するまでの時間を示す。
【0084】
図10の場合、時刻T4において、予測時間(時刻T4から時刻T5までの時間)が閾値以下であると判定されたため、時刻T5までエンジンオフ(HDDオン)状態が維持されている。
【0085】
図9の場合、時刻T4から時刻T5の間、印刷装置10は、スリープ状態に遷移しているため、図10に比べて、印刷装置10の消費電力を、図10の斜線Bで示される電力量分、低減できる。
【0086】
一方、図10の場合、時刻T4から時刻T5の間、HDD55の電源がオンにされたままとなるので、図9に比べて、図9の斜線Aで示されるスピンアップ時の消費電力量を低減できる。
【0087】
従って、斜線Aで示される電力量が、斜線Bで示される電力量よりも小さければ、時刻T4から時刻T5までの時間は、スリープ状態に遷移した方が印刷装置10の消費電力量を低減できる。これに対して、斜線Aで示される電力量が、斜線Bで示される電力量より大きい場合、時刻T4から時刻T5までの時間は、エンジンオフ(HDDオン)状態を維持した方が印刷装置10の消費電力量を低減できる。
【0088】
そこで、斜線Aで示される電力量と斜線Bで示される電力量とが等しくなるような値を所定の閾値に設定する。ここで、スピンアップに要する時間(時刻T2から時刻T3までの時間、及び時刻T5から時刻T6までの時間)をTs(始動時間)とする。
この場合、斜線Aで示される電力量は、
(Wspin−We2)×Ts
で示すことができる。
【0089】
また、予測時間(時刻T4から時刻T5までの時間)をTとすると、斜線Bで示される電力量は、
(We2−Ws)×T
で示すことができる。
【0090】
上述した通り、エンジンオフ(HDDオフ)状態時に、HDD55へのアクセスが必要であるか否かの判定は、非常に短く無視できる時間内に行なわれる。そのため、ステータス応答要求を受信してからHDD55に電力供給が行なわれる期間(図中”ホスト装置から問い合わせ”から”T5”までの期間)を0とする。
【0091】
従って、閾値となるTは、
T=(Wspin−We2)×Ts/(We2−Ws)
となる。
【0092】
ここで、スピンアップに要する時間Tsが4秒のHDDを用いた印刷装置10について考えてみる。また、印刷装置10の消費電力は、スピンアップ時(Wspin)に15.6Wであり、エンジンオフ(HDDオン)状態時(We2)に5.6Wであり、スリープ状態時(Ws)に3.8Wであるとする。
【0093】
この場合、閾値となるTは、約23秒となる。予測時間が23秒を越えていれば、印刷装置10は、時刻T4において、スリープ状態に移行し、一方、予測時間が23秒以下であれば、印刷装置10は、エンジンオフ(HDDオン)状態を維持すれば、効率の良い電力制御を行なうことができる。
【0094】
次に、図7に示すS106及びS112における予測時間等の予測方法について説明する。上述した通り、この処理では、予測時間の他、送信元のホスト装置や応答ステータス種別の予測も行なわれる。
【0095】
従来技術でも説明したように、印刷装置とホスト装置との間では、操作性の向上や、印刷装置を効率的に運用等するため、印刷データ以外にもデータの送受信が行なわれている。
【0096】
ここで、このようなデータとしては、例えば、
・ステータスモニタにより印刷装置を管理するために使用されるステータス情報やリモート設定情報
・プリンタMIBを用いて印刷装置を管理するために使用されるステータス情報やリモート設定情報
・デバイスエージェントを用いて印刷運用コストを算出等するための、印刷データ毎のインク使用量、記録媒体の使用量、印刷要求ホスト等を含んだ印刷履歴情報
等が挙げられる。
【0097】
一般に、ステータス情報やリモート設定情報等の各種情報は、RAM、EEPROM、HDDのいずれかに格納されるが、印刷履歴情報は、多くの情報を格納できるようにHDDに格納される。
【0098】
また、印刷データ以外のデータの送受信では、アクセス内容によって印刷装置内のアクセス先が異なるため、アクセス内容によって通信プロトコル、ポート番号がそれぞれ決まる。そのため、ホスト装置20からアクセスがあった場合には、当該アクセスの通信プロトコル及びポート番号により、アクセス内容(応答ステータス種別)を判定できる。
【0099】
また更に、印刷データ以外のデータの送受信では主に、ホスト装置20上のプログラムにより定期的にデータの送受信が行なわれる。更には、プログラム毎にデータの送受信の周期が異なっている。
【0100】
以上から、HDD55へのアクセスが必要なステータス応答要求を次回受信するまでの時間を予測するには、HDD55へアクセスのあったホスト装置20、アクセス時の通信プロトコル、ポート番号毎に、少なくとも2つの受信時刻を保持しておけば良い。
【0101】
ステータス応答要求の受信に関する履歴情報は、ステータス応答要求を受信する度に更新するようにすれば良い。若しくは、ホスト装置20の電源オン時やデータ送受信を行なうアプリケーションの起動時に、印刷装置10へ通信プロトコル、アクセス周期を通知するようにしても良い。
【0102】
また、次回受信すると予測される時間が経過しても、ステータス応答要求が受信されない場合には、ホスト装置20の電源がオフ、又はデータの送受信を行なうホスト装置上のアプリケーションが終了されていると考えられる。そのため、予測時間を経過してもステータス応答要求を受信しない場合、印刷装置10は、履歴情報管理部92において、当該予測時間に対応する該当の情報を履歴情報から破棄するようにしても良い。若しくは、ホスト装置の電源オフ時やデータの送受信を行なうアプリケーションの終了時に、当該ホスト装置やアプリケーション側から印刷装置10に向けて、情報の破棄を指示する情報を通知するようにしても良い。この場合、印刷装置10は、履歴情報管理部92において、当該通知に対応する該当の情報を履歴情報から破棄する。
【0103】
図11は、履歴情報の一例を示す図である。履歴情報としては、印刷データ以外のデータを印刷装置10に送信したホスト装置20に関する情報が管理される。具体的には、IPアドレスと、プロトコルと、ポート番号とに対応付けて、そのアクセス時刻が管理される。
【0104】
ここで、IPアドレスは、ホスト装置20を識別するための識別情報として用いられる。そのため、IPアドレスではなく、例えば、コンピュータ名(ホスト名)等であっても良い。また、プロトコル及びポート番号は、印刷装置10へのアクセスの内容を示す情報として用いられる。アクセス時刻1には、ホスト装置20からデータを受信した最新の時刻が保持される。また、アクセス時刻2には、ホスト装置20からデータを受信した次に新しい時刻が保持される。なお、アクセス時刻1及びアクセス時刻2は、必ずしもデータを受信した最新の時刻とその次に新しい時刻とである必要はない。例えば、新しい方から3番目と4番目と5番目のデータの受信時刻であっても良い。このような情報により、印刷装置10は、当該対応付けて管理された情報毎に予測時間を算出する。
【0105】
図11に示す例の場合、IPアドレスが「192.168.0.10」のホスト装置による、通信プロトコル:ポート番号が「TCP:10000」へのアクセスでは、アクセス時刻に「13時31分」と「13時36分」とが保持されている。そのため、次回のアクセス時刻は、「13時41分」と予測できる。
【0106】
同様に、IPアドレスが「192.168.0.10」のホスト装置による通信プロトコル:ポート番号が「TCP:10001」へのアクセスの場合、次回のアクセスは、「13時40分」と予測できる。また、IPアドレスが「192.168.0.11」のホスト装置による、通信プロトコル:ポート番号が「TCP:10000」へのアクセスの場合、次回のアクセスは「13時43分」と予測できる。
【0107】
以上説明したように本実施形態によれば、エンジンオフ(HDDオン)状態への移行とともに、第2のタイマー(移行判断時間)の初期値としてH/Nを設定し、当該第2のタイマーの計時を開始する。そして、当該第2のタイマーがタイムアウトした場合に、印刷装置をスリープ状態(低消費電力モード)へ移行させるか否かの判定を行なう。このようなタイミングで印刷装置の動作状態の移行制御を行なうため、印刷装置の保証時間(製品寿命)よりも先にHDDの保証時間が尽きてしまうことを抑制できる。
【0108】
また、HDDへのアクセスが必要なステータス応答要求を次に受信するまでの予測時間と、所定の閾値(Wspin−W1)×Ts/(W1−W2)とを比較して、印刷装置をスリープ状態(低消費電力モード)へ移行させるか否かの判定を行なう。これにより、HDDの消費電力の特性を考慮した省電力制御を行なえる。すなわち、HDDの起動(HDDのスピンアップ)による消費電力の増加を低減できる。なお、W1は、上述したWe2に相当し、エンジンオフ(HDDオン)状態時における印刷装置の単位時間当たりの消費電力を示す。また、W2は、上述したWsに相当し、スリープ状態時における印刷装置の単位時間当たりの消費電力を示す。
【0109】
また、ホスト装置からHDDへのアクセスが必要なステータス応答要求があった場合、ホスト装置、通信プロトコル、ポート番号毎にそのアクセス時刻を少なくとも2つ保持する。そのため、HDDへのアクセスが必要なステータス応答要求を次に受信するまでの時間を予測できる。
【0110】
以上が本発明の代表的な実施形態の例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0111】
例えば、上述した実施形態においては、エンジンオフ(HDDオン)状態からスリープ状態(低消費電力モード)への移行に際して、上述した移行制御を行なう場合について説明したが、これに限られない。上述した移行制御は、通常の動作時よりも消費電力が低減される状態において、HDDがオン状態(第1の動作状態)からオフ状態(第2の動作状態)に遷移する際に行なわれれば良い。例えば、エンジンオフ(HDDオン)状態からエンジンオフ(HDDオフ)状態へ移行する場合に、上述した移行制御を行なうようにしても良い。
【0112】
また、上述した実施形態においては、インクジェット方式の印刷装置を例に挙げて説明したが、これに限られず、HDDを有する印刷装置であれば良く、どのような記録方式を採用した印刷装置であっても良い。例えば、電子写真式の印刷装置であっても良い。
【0113】
また、上述した実施形態においては、ストレージデバイスがHDD55である場合について説明したが、これに限られない。具体的には、記憶媒体を駆動するユニットや読取部を駆動するユニットを備えるストレージであれば良い。例えば、記憶媒体の記憶原理や読み取り方法の違いに関わらず、他のストレージ等にも適用できる。一例としては、例えば、DVD方式、CD方式のストレージ等にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
駆動ユニットを有するストレージデバイスと、
1又は複数のホスト装置のいずれかから印刷データ以外のデータを受信した場合に、該データの受信により前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記第1判定手段により前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であると判定されたデータの受信に関する履歴情報を管理する履歴情報管理手段と、
通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオンとなっている第1の動作状態へ移行した後、予め定められた時間経過したか否かを判定する第2判定手段と、
前記第2判定手段により前記予め定められた時間が経過したと判定された場合、前記履歴情報に基づいて前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であるデータを次に受信するまでの時間を予測時間として取得する取得手段と、
前記予測時間が前記駆動ユニットを駆動するときの消費電力量に基づいて定められた時間の閾値を越えていれば、前記印刷装置を前記第1の動作状態から、通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオフとなっている第2の動作状態へ移行させ、前記予測時間が前記時間の閾値を越えていなければ、前記印刷装置を前記第1の動作状態に維持させる制御手段と
を具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ストレージデバイスは、ハードディスクを含む
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記時間の閾値は、
(Wspin−W1)×Ts/(W1−W2)
(Wspin:前記駆動ユニットの始動時における前記印刷装置の単位時間当たりの消費電力、
W1:前記第1の動作状態における前記印刷装置の単位時間当たりの消費電力、
W2:前記第2の動作状態における前記印刷装置の単位時間当たりの消費電力、
Ts:前記駆動ユニットの始動時間)
に示す式により求められることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記履歴情報管理手段は、
前記ホスト装置を識別するための識別情報と前記印刷装置へのアクセスの内容を示す情報とに対応付けて、少なくとも2つの受信時刻を示す情報を管理し、
前記取得手段は、
前記履歴情報管理手段により前記対応付けて管理された情報毎に前記予測時間の取得を行なう
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記履歴情報管理手段は、
前記予測時間を経過しても当該予測時間に対応するデータを受信しなかった場合、該当の前記対応付けられた情報を前記履歴情報から破棄する
ことを特徴とする請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記履歴情報管理手段は、
前記ホスト装置から前記履歴情報に管理された情報の破棄を通知するデータを受信した場合、該当の前記対応付けられた情報を前記履歴情報から破棄する
ことを特徴とする請求項4記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷装置の制御方法であって、
第1判定手段が、1又は複数のホスト装置のいずれかから印刷データ以外のデータを受信した場合に、該データの受信により駆動ユニットを有するストレージデバイスへのアクセスが必要であるか否かを判定する工程と、
履歴情報管理手段が、前記第1判定手段により前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であると判定されたデータの受信に関する履歴情報を管理する工程と、
第2判定手段が、通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオンとなっている第1の動作状態へ移行した後、予め定められた時間経過したか否かを判定する工程と、
取得手段が、前記第2判定手段により前記予め定められた時間が経過したと判定された場合、前記履歴情報に基づいて前記ストレージデバイスへのアクセスが必要であるデータを次に受信するまでの時間を予測時間として取得する工程と、
制御手段が、前記予測時間が前記駆動ユニットを駆動するときの消費電力量に基づいて定められた時間の閾値を越えていれば、前記印刷装置を前記第1の動作状態から、通常の動作時よりも消費電力が低減されるとともに前記ストレージデバイスの電源がオフとなっている第2の動作状態へ移行させ、前記予測時間が前記時間の閾値を越えていなければ、前記印刷装置を前記第1の動作状態に維持させる工程と
を含むことを特徴とする制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−144041(P2012−144041A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261008(P2011−261008)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】