説明

原子力発電所の原子炉圧力容器に接続された主冷却材配管の環状溶接継目の検査方法および装置

原子力発電所の原子炉圧力容器(2)に接続された主冷却材配管(4)の環状溶接継目(10)の検査方法および装置において、開放され水で満たされた原子炉圧力容器(2)に自走式の水中走行車(12)が入れられ、この走行車は主冷却材配管(4)の内周面にセット可能で円周方向に動かすことのできる検査装置(20)を有する。水中走行車(12)は同様に水で満たされた主冷却材配管(4)に入れられ、半径方向に出し入れできる開脚機構(16)により溶接継目(10)の範囲で固定される。続いて検査装置(20)は溶接継目(10)にセットされ溶接継目(10)に沿って円周方向に動かされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所の原子炉圧力容器に接続された主冷却材配管の環状溶接継目の検査方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の運転安全性を保証するためには、とりわけ、原子炉圧力容器に接続された主冷却材配管の環状溶接継目を非破壊材料検査方法により点検することが必要である。このような点検に際しては、主冷却材配管からこれを囲む絶縁材を除去し、溶接継目を適切な試験マニピュレータにより外部から検査することが行われる。主冷却材配管は、しかしながらその運転期間に関係して著しく放射線汚染を受けていることがある。それゆえ、材料検査およびこれに必要な検査装置の据え付けを実施する作業者の保護のために、鉛遮蔽物を施した付加的な保護領域を設ける必要がある。このような保護領域にも拘わらず、作業員の高い放射線負荷に導く直接的な放射線被曝は完全に避けることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえ本発明の課題は、作業員の放射線負荷を著しく減少した、原子力発電所の原子炉圧力容器に接続された主冷却材配管の環状溶接継目の検査方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
方法に関しては上記の課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。この方法では、開放され水で満たされた原子炉圧力容器内に自走式の水中走行車が挿入され、この走行車は少なくとも主冷却材配管の内周面にセット可能で円周方向に走行可能な検査装置を有する。水中走行車は、続いて原子炉圧力容器から、同様に水で満たされた主冷却材配管中を走行し、そこで半径方向に引き出し可能な開脚機構を溶接継目の範囲に固定する。続いて、検査装置は溶接継目にセットされ溶接継目に沿って円周方向に走行させられる。
【0005】
検査装置を担持し、主冷却材配管の内部に挿入可能な水中走行車の使用により、溶接継目の検査は内部から行うことができるので、従来技術で実施される放射線負荷の大きい外部検査はもはや不要になる。
【0006】
少なくとも1つの検査装置を一方の端面に配置した水中走行車が使用され、この水中走行車が主冷却材配管の湾曲部をその両端面で主冷却材配管の直線部に溶接する溶接継目を検査するために開脚機構で主冷却材配管の直線部に固定され、検査装置を備えたその端面を溶接継目に対向するようにすれば、溶接継目は管湾曲部で特に簡単に迅速に検査することができる。水中走行車は、すなわち主冷却材配管の直線部において固定され、その中心長手軸は直線部の中心軸に、従って環状溶接継目の中心軸にも少なくともほぼ同軸的に方向づけられる。これにより、検査を実施するための検査装置の動きは、中心長手軸が理想的には円環状の溶接継目の中心軸に正確に同軸でない場合、或いは環状溶接継目が正確に円環の形を示さない場合にも、検査装置を溶接継目にセットした後で、検査装置を水中走行車の中心長手軸を中心にわずかだけ回転させ、付加的に半径方向に動かすだけで良いので、簡単化される。
【0007】
特に有利な実施態様では、水中走行車の両端面に検査装置が配置されたものが使用される。このようにすれば、主冷却材配管の湾曲部を、その両端面でそれぞれ直線部に溶接する2つの環状溶接継目を、ただ1つの水中走行車で検査することが可能となる。換言すれば、走行方向の前方の端面に配置された検査装置で水中走行車の前方にある溶接継目を検査し、後方の端面に配置された検査装置により湾曲部を走行後に水中走行車の後方にある溶接継目を検査することが可能となり、この場合両方の検査において水中走行車は直線部で開脚支持される。これにより、全検査時間が付加的に短縮される。なぜなら、検査装置を一方の端面だけに配置した水中走行車は、主冷却材配管を走行後に完全に戻して向きを変え、改めて主冷却材配管に挿入しなければならないからである。
【0008】
装置に関しては、本発明の課題は請求項5の特徴を備えた装置により解決される。
【0009】
方法もしくは装置の有利な実施態様は、それぞれ従属請求項に示されている。
【0010】
本発明をより詳細に説明するため、図に示した実施例を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、開放された原子炉圧力容器とこれに接続された主冷却材配管の概略原理図で、主冷却材配管の内部には本発明による水中走行車がある。
【図2】図2は、管湾曲部の範囲にある溶接継目の検査位置にある本発明の水中走行車を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1によれば、原子力発電所の原子炉圧力容器2に多数の主冷却材配管4が開口している。これらの主冷却材配管4は、原子炉圧力容器2の接続短管6にそれぞれ環状溶接継目8で溶接され、多数の直線部4aおよび湾曲部4bから構成されている。各湾曲部4bは、その両端面にある環状溶接継目10で直線部4aの端面に溶接されている。
【0013】
水で満たされた原子炉圧力容器2には自走式の水中走行車12が挿入され、この走行車は原子炉圧力容器2の内部から、同様に水で満たされた主冷却材配管4に入る。水中走行車12は、主冷却材配管4の内部で遠隔操作により前方に動かされ、水中で水中走行車12を遠隔操作するための図示しない駆動機構を備えた本体14とその両端面に同様に概略的に示した検査装置20を備えている。水中走行車12は、さらに図示していない電気導線を介して水中走行車12にエネルギを供給する電源ユニットに接続され、電源ユニットから水中走行車12へ、もしくは水中走行車12から電源ユニットへ制御信号並びに測定信号が伝達される。
【0014】
図2は、直線部4aを湾曲部4bに溶接する環状の溶接継目10の検査位置にある水中走行車12を示す。水中走行車12は、ここでは本体14がなお主冷却材配管4の直線部4aにある位置で走行している。この位置では、水中走行車12は半径方向に延び主冷却材配管4の内側表面にセット可能な多数の開脚機構16で固定され、このようにしてほぼ中心で、すなわち主冷却材配管4の直線部4aの中心軸と少なくともほぼ同軸的なその中心長手軸26で溶接継目10の範囲に位置決めされて固定され、検査装置20を備えた端面の一方が溶接継目10に対向するように溶接継目10の近くに位置決めされ、検査装置20が溶接継目10にセットできるようにされる。
【0015】
水中走行車12の両端面に配置された検査装置20は、たとえば超音波検査ヘッド、レーザプロフィロメータまたは渦電流検査ヘッドであり、これらにより溶接継目10の非破壊検査が実施できる。各検査装置20は、半径方向に、すなわち中心長手軸26に対して垂直方向に出し入れできるようにホルダ24内に支持されており、ホルダは、双頭矢印28の方向に水中走行車12の中心長手軸20を中心に回転できるように本体14に支持されている。ホルダ24は、さらに本体14に図2に双頭矢印30で示したように、中心長手軸26の方向に軸方向に移動可能に支持されている。このようにして検査装置20は、水中走行車12が直線部4aに固定されている場合、正確に溶接継目10に位置決めされ中心長手軸26を中心にホルダを回転させることにより、溶接継目10に沿ってその円周方向に動かすことができる。
【0016】
開脚機構16は、中心長手軸26の垂直方向にある、2つの互いに間隔を置いた(間隔a)開脚面32に配置される。この2つの面は、図では一点鎖線で示されそれぞれ端面範囲にある。これにより、検査実施中における水中走行車12の十分な傾動防止が保証される。さらにホルダ24には、中心長手軸26に垂直な回転軸36を中心に回転自在に支持された点検用カメラ38のための二股軸受34が設けられ、このカメラにより、検査工程を視覚的に観察できるようにされる。
【0017】
走行方向40に見て水中走行車12の前方にあり、直線部4aを湾曲部に接続する溶接継目10を同様に走行方向40に見て前方の端面に配置された検査装置20により検査を行った後に、開脚機構16は引っ込められる。続いて、水中走行車12は湾曲部4bを通って次の直線部4aに入り、後方の端面に配置された検査装置20で、湾曲部4bを走行方向40に見てその後方にある直線部4aに溶接する溶接継目10を検査できる位置に走行する。このようにして、ただ1回の水中走行で主冷却材配管4のすべての溶接継目10を検査することができる。
【符号の説明】
【0018】
2 原子炉圧力容器
4 主冷却材配管
6 接続短管
8 環状溶接継目
10 環状溶接継目
12 水中走行車
14 本体
16 開脚機構
20 検査装置
24 ホルダ
38 点検用カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の原子炉圧力容器(2)に接続された主冷却材配管(4)の環状溶接継目(10)の検査方法において、
開放され水で満たされた原子炉圧力容器(2)に自走式の水中走行車(12)が入れられ、
水中走行車は、主冷却材配管(4)の内周面にセット可能で、その円周方向に走行可能な少なくとも1つの検査装置(20)を備え、
水中走行車(12)は、同様に水で満たされた主冷却材配管(4)内に入り、半径方向に延びている開脚機構(16)で溶接継目(10)の範囲に固定され、
続いて検査装置(20)が、溶接継目(10)にセットされ、溶接継目(10)に沿って円周方向に動かされるようにした検査方法。
【請求項2】
水中走行車(12)が使用され、検査装置(20)が水中走行車(12)の一方の端面に配置され、水中走行車(12)が主冷却材配管(4)の湾曲部(4b)をその両端面で主冷却材配管(4)の直線部(4a)に溶接する溶接継目(10)を検査するために開脚機構(16)により主冷却材配管(4)の直線部(4a)に固定され、検査装置(20)を備えた端面が溶接継目(10)に対向するようにした請求項1記載の方法。
【請求項3】
両端面に検査装置(20)が、配置された水中走行車(12)が使用される請求項2記載の方法。
【請求項4】
1つの検査装置(20)もしくは複数の検査装置(20)が水中走行車(12)の端面に対し垂直方向に延びる中心長手軸(26)を中心に回転自在に、かつこの軸に対し半径方向に移動自在に支持されるようにした請求項1,2または3記載の方法。
【請求項5】
原子力発電所の原子炉圧力容器(2)に接続された主冷却材配管(4)の環状溶接継目(10)の検査装置において、
自走式の水中走行車(12)の本体(14)に主冷却材配管(4)の内周面にセット可能な検査装置(20)、及び主冷却材配管(4)に水中走行車(12)を固定するため半径方向に動かすことのできる開脚機構(16)が配置された装置。
【請求項6】
少なくとも1つの検査装置(20)が、水中走行車(12)の一方の端面に配置された請求項5記載の装置。
【請求項7】
両端面に、それぞれ1つの検査装置(20)が配置された請求項6記載の装置。
【請求項8】
1つの検査装置(20)もしくは複数の検査装置(20)が水中走行車(12)の端面に対して垂直な中心長手軸(26)を中心に回転自在に、かつこの軸に垂直な半径方向に移動自在に配置された請求項5,6または7記載の装置。
【請求項9】
開脚機構(16)が、中心長手軸(26)に垂直方向に対して、互いに間隔を置いた2つの開脚面(32)に配置された請求項5から8の1つに記載の装置。
【請求項10】
各開脚面(32)に3つの開脚機構(16)が設けられた請求項9記載の装置。
【請求項11】
両端面の少なくとも一方に、中心長手軸(26)に垂直な回転軸(36)を中心に回転自在に支持された点検用カメラ(38)が配置された請求項5から10の1つに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−526999(P2012−526999A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511238(P2012−511238)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056549
【国際公開番号】WO2010/133493
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(501315289)アレヴァ エンペー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (61)
【Fターム(参考)】