説明

原子層堆積法により製造された量子閉じ込め型太陽電池

本発明は、太陽電池内に量子閉じ込め(QC)を提供する方法であって、太陽電池におけるp−i−nダイオードの真性領域に組み込まれた少なくとも1つのQC構造体を提供すべく、原子層堆積法(ALD)を用いるステップを含み、前記量子閉じ込め構造体の光学的性質及び電気的性質を、前記閉じ込め構造体の少なくとも1つの次元に基づいて調節するようにしたことを特徴とする方法。前記QC構造体は、量子ドット、量子ウェル、量子ワイヤまたは量子チューブであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池に関する。より具体的には、本発明は、量子閉じ込め型式太陽電池及び、製造技術として原子層堆積法(ALD)を利用した該太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一pn接合型太陽電池の代わりとして、多接合型太陽電池、光電気化型学電池、有機・無機ハイブリッド型太陽電池及び様々なナノ構造体などの種々の太陽電池構造体が提案されてきた。提案されたナノ構造太陽電池の中で、量子力学的効果を利用した低次元デバイスに大きな関心が集まっている。量子ウェルや量子ドットに基づく太陽電池は、次世代太陽電池に有望な技術として検討されている。具体的には、このような量子閉じ込め構造体の使用は、太陽電池が、調節可能なバンドギャップ、多重励起子生成(MEG)及び中間バッドギャップから恩恵を受けることを可能にする。
【0003】
このような量子閉じ込め構造体を実現するために、様々な試みがなされてきた。サイズが厳格に管理された高秩序量子閉じ込め構造体の製造は、三次元公差を制御するための新規の技術を必要とするが、それは困難である。また、真性領域においてポテンシャルバリアとして使用される材料は、所望の電気的特性及び光学的特性を有すると共に、共形にかつピンホールフリーで堆積させる必要があった。電荷キャリアの効率的なトンネリングを促進するためには、フィーチャー分離をオングストローム単位で制御する必要がある。そして、太陽光発電市場への参入を可能にするためには、材料は豊富で安価なものにすべきである。
【0004】
低コスト材料を使用して薄くて均一な装置を製造するための、量子閉じ込め構造体を有する太陽電池の製造方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、本発明は、太陽電池において量子閉じ込め(QC)を提供する方法であって、太陽電池におけるp−i−nダイオードの真性領域に組み込まれた少なくとも1つのQC構造体を提供すべく、原子層堆積法(ALD)を用いるステップを含み、前記量子閉じ込め構造体の光学的性質及び電気的性質が、前記閉じ込め構造体の少なくとも1つの次元に基づいて調節されることを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様によれば、前記QC構造体は、量子ドット、量子ウェル、量子ワイヤまたは量子チューブであり得る。量子ドットは、核形成制限型成長法(nucleation limited growth)を用いた前記QC構造体の島形成、リソグラフィーレジスト材料からのナノパターニング法、または自己集合単分子層からのナノパターニング法を用いて製造される。量子ウェルは、前記ALD法によって半導体材料の薄膜を、該量子ウェル層よりも高いバンドギャップを有する第2の材料間に層状構造をなして堆積させることによって製造することができる。量子ワイヤは、ナノ多孔性材料への堆積を含むテンプレート式成長機構を使用して前記ALDによって製造することができる。
【0007】
本発明の別の態様では、前記p−i−nダイオードの前記真性領域への前記QC構造体の堆積は、前記QC構造体の少なくとも1つの構成材料を含む前駆体分子をALDチャンバへ提供することを含む。
【0008】
本発明の別の態様では、前記p−i−nダイオードの前記真性領域への前記QC構造体の堆積は、前駆体としてリモートプラズマ源を使用することを含む。
【0009】
本発明の別の態様では、前記p−i−nダイオードの前記真性領域への前記QC構造体の堆積は、ALD膜のポストアニーリング法または過飽和材料の相分離法を使用することを含む。
【0010】
本発明の一態様では、前記QC構造体の作製は、0.0〜1.5eVの範囲のバンドギャップを有する材料を使用することを含み、前記材料は前記QC構造体の状態となったとき、前記バンドギャップは前記太陽電池に有用なバンドギャップまで増加する。
【0011】
本発明のさらなる別の態様では、前記QC構造体の作製は、1nm〜100nmの範囲の励起子ボーア半径を有し、かつ、前記電荷キャリアの1つが0.01*m〜0.9*mの範囲の有効質量を有する材料の使用を含む。
【0012】
本発明の一態様では、前記QC構造体は、0.0〜1.5eVの範囲のバンドギャップを有する低バンドギャップ材料を含む。
【0013】
本発明の別の態様では、前記太陽電池は、底部電極、p型バリア、前記真性領域、n型バリア及び頂部バリアを含み、少なくとも1つのQC構造体が前記真性領域に配置されている。ここで、前記p型バリアまたは前記n型バリアは、1.0〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有する高バンドギャップ材料を含み得る。
【0014】
本発明の別の態様では、前記太陽電池は、前記真性層に配置されたフェルミレベルが互いに異なる少なくとも2つのQC層を含む。前記フェルミレベルは、サイズ、形状、材質に応じて互いに異なる。
【0015】
本発明のさらなる別の態様では、前記真性領域は誘電材料である。
【0016】
本発明の別の態様では、前記太陽電池はバルクヘテロ接合構造を含み、前記ヘテロ接合はn型材料及びp型材料を含む。
【0017】
本発明の一態様では、前記p−i−nダイオードは、少なくとも1つの垂直方向要素を有する第1のダイオード材料を含む基板を含み、前記少なくとも1つのQC構造体が組み込まれた前記真性領域が、前記少なくとも1つの垂直方向要素の表面上に配置され、前記前記真性領域上に、第2のダイオード層が配置され、前記第2のダイオード材料から前記第1のダイオード材料までの拡散距離が、前記太陽電池の吸収長から切り離されている。この態様では、前記第1のダイオード材料がn型半導体材料またはp型半導体材料を含み、前記第2のダイオード材料がp型半導体材料またはn型半導体材料を含む。さらに、前記垂直方向要素は、1nm〜100μmの範囲の直径を有する錐体または柱体である。を含む。加えて、前記垂直方向要素は、ナノ粒子リソグラフィー法、反応性イオンエッチング法、スタンピング法、またはフォトリソグラフィー法を用いて形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】原子層堆積法によって作製され、太陽電池内にQC構造体が組み込まれた、本発明による例示的なQC太陽電池100の概略平面図である。
【図2】本発明のいくつかの例示的な、三次元QC構造型太陽電池構造体の概略平面図である。
【図3】本発明によるSiナノ柱状体の例を示す。
【図4】本発明による、ナノロッドテンプレートの孔内に堆積させたCuSCN膜のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
量子ドット、量子ウェル、量子ワイヤ、及び量子チューブなどの量子閉じ込め(Quantum confinement:QC)構造体は、太陽電池の性能にとって有益な様々な魅力的な特徴を有している。閉じ込められた電荷キャリアに対する量子力学的効果に起因して、QC構造体のバンドギャップは閉じ込め次元(confinement dimension)を制御することによって調節することができる。加えて、本発明によれば、単一の高エネルギー光子からの多重励起電荷キャリアを生成する能力がQCにおいて示される。この側面は、ショックレー・クワイサー限界を避けるために、太陽電池がQC構造体から恩恵を受けることを可能にする。さらに、QCの超格子により形成されたミニバンド構造体は、装置を通じての効率的な電荷輸送を可能にする。
【0020】
本発明は、QC構造体を製造するのに、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)を用いる。ALDは、修正された有機金属化学気相堆積(Metalorganic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)方法に基づく薄膜形成技術であり、前駆体化学物質を反応チャンバ内に連続的に導入して、1サイクルあたり最大で1原子層を形成する。前駆体分子が高温で分解され、成長が反応時間によって決定されるMOCVDとは異なり、ALDでは、各前駆体パルス後に膜成長が飽和状態となるので、成長率は前記成長に用いられたサイクル数によって完全に決定される。膜は、理想的には、サブnm精度の厚さで、ピンホールフリーで形成される。
【0021】
原子層堆積法によって製造されたQC太陽電池は、量子ドット、量子ウェル、量子ワイヤ及び量子チューブを含むQC構造体を太陽電池内に内蔵する。QC構造体は、電荷抽出を促進するために、p−i−nダイオードの真性領域に組み込まれる。一実施形態では、堆積用の前記基板は、金属裏面電極である。前記頂部電極は、透明導電性電極か、あるいは、パターン形成されたもしくはランダムな導電性材料の格子である。
【0022】
図1(a)〜(c)は、原子層堆積法によって作製され、太陽電池内にQC構造体を内蔵する、本発明による例示的なQC太陽電池100の概略平面図である。図1(a)〜(c)に示す太陽電池100は、p−i−nダイオードを形成するための、頂部電極102、底部電極104、n型材料106、p型材料108、n型材料106とp型材料108との間に配置された真性領域バリア材料110、及びp型材料108を含み、真性領域バリア材料110内にはQC構造体112が組み込まれている。図1(a)は、真性領域バリア材料110に量子ウェル型のQC構造体112が組み込まれた太陽電池100の一実施形態を示す。図1(b)は、真性領域バリア材料110に量子ワイヤ型または量子チューブ型のQC構造体112が組み込まれた太陽電池100の別の実施形態を示す。図1(c)は、真性領域バリア材料110に量子ドット型のQC構造体112が組み込まれた太陽電池100のさらなる別の実施形態を示す。上述の実施形態では、全体的な文脈では、p−i−nダイオードはp型材料[A]とn型材料[A]との間に配置された真性領域バリア材料[A]を含むことができ、真性領域バリア材料[A]内にはQC構造体が組み込まれている。例えば、真性領域バリア材料は、p型ZnSとn型ZnSとの間に配置されたZnSであり得、真性領域バリア材料であるZnS内にはPbS・QC構造体(量子ドット、量子ワイヤ、量子チューブまたは量子ウェルを含み得る)が組み込まれている。
【0023】
ALDは、量子閉じ込め型太陽電池100を製造するための他の技術よりも優れた様々な利点を提供する。膜厚のサブナノメートル精度での精密な制御は、QC構造体112のバンドギャップ工学にとって重要なフィーチャー寸法(feature dimension)のより容易な制御を可能にする。ALDはまた、多種多様な化合物及び元素材料の堆積を可能にする。他の堆積技術と比べたときのALDのユニークかつ重要な側面は、高アスペクト比の構造体上に高度に共形な膜を堆積させることができる能力である。このことは、狭孔を有するテンプレートにQC構造体112を製造すること、及び、三次元QC構造体112を真性領域バリア材料110で均一にコーティングすることの両方にとって重要である。そして、ALDの低い真空及び温度条件は、より高い温度及び/または真空レベルを必要とする一般的なCVDまたはMBEリアクターに適合しない製造方法への統合を可能にする。
【0024】
量子ウェル型のQC構造体112は、ALD法を用いて、半導体材料の薄膜を一般的には20nm未満の厚さで堆積させることにより作製することができる。前記膜は、より高いバンドギャップを有する第2の材料間にサンドイッチ構造をなして堆積させられる。量子ウェル型のQC構造体112は、テンプレート式成長機構を用いてALD法により作製される(例えば、ナノ多孔質材料への堆積)。テンプレート材料の例には、陽極酸化アルミニウム酸化物(anodized aluminum oxide:AAO)、または軌跡エッチングされたポリカーボネート膜が含まれる。量子ドット型のQC構造体112は、島形成をもたらす核形成制限型成長法、ALD膜のポストアニーリング、過飽和材料の相分離、リソグラフィーレジスト材料のナノパターン形成、または自己集合単分子層(SAM)のナノパターン形成を含む様々な方法を用いて、ALD法によって作製される。QC構造体112は、ALD法によって作製したp−i−nダイオードの真性領域バリア材料110内に配置される。
【0025】
p−i−nダイオード材料のドーピングは、様々な方法を用いてALDにより実現される。1つの方法は、ドーパント原子を含む前駆体分子を選択することにより、前記膜にドーパント元素を直接的に組み込むことである。前記膜内のドーパント原子の濃度を制御するために、前記前駆体は、真性材料110の数回の通常ALDサイクルごとに、1回パルスされる。ドーパント原子をp−i−nダイオードに組み込む別の方法は、前駆体としてリモートプラズマ源を用いることである。さらに、ドーパント原子は、前記構造体の製造後に、イオン注入法または拡散ドーピング法などの方法によって組み込んでもよい。
【0026】
入射光を効率的に吸収し、光エネルギーを電気エネルギーに変換するために、QC構造体112を作製するために高吸収性半導体材料が選択される。量子閉じ込めがなされたときにバンドギャップが太陽電池100に適した値まで増加するように、0.0eV〜1.5eVの範囲のバンドギャップを有する低バンドギャップ半導体が使用される。加えて、1nm〜100nmの幅広いフィーチャーサイズに対する強力な閉じ込め効果を促進するために、1nm〜100nmの範囲の大きな励起子ボアー半径と、0.01*m〜0.9*mの範囲の電荷キャリア有効質量を有する材料が使用される。そして、量子ドット型の太陽電池100の場合は、多重励起子生成を示す材料が使用される。
【0027】
量子閉じ込め型太陽電池100における真性領域バリア材料の目的は、幾重もの折り畳み(multi-fold)である。まず、真性領域バリア材料は、吸収性材料内に電子を閉じ込めるのに用いられる。そのため、真性領域バリア材料は、QC構造体よりも著しく大きいバンドギャップを必要とする。また、真性領域バリア材料は、装置内の電流を抽出するために必要とされる、量子力学的トンネリングに対するバリアとしての役割を果たす。トンネリング電流は、バリア高さの増加に伴い減少するが、非常に幅広いバンドギャップを有する材料が選択された場合、トンネリングの可能性は望ましくないほど低下する。
【0028】
真性領域バリア材料110の別の重要な特徴は誘電率である。p−i−nダイオードにより提供される内部電界によって太陽電池内の電荷分離が促進されるので、前記内部電界の遮断を避けるために低誘電率を有する材料が使用される。真性領域バリア材料110は、ミスフィット転位の形成及び層間の相互拡散を最小限に抑えるために、前記吸収性材料と同様の化学的性質及び結晶学的性質を有する。
【0029】
本発明の一態様によれば、前記QC構造体は、0.0eV〜1.5eVの範囲のバンドギャップを有する低バンドギャップ材料を含む。
【0030】
本発明の他の実施形態では、太陽電池は、底部電極、p型バリア、真性領域、n型バリア及び頂部電極を含み、真性領域内に少なくとも1つのQC構造体が配置される。本発明によれば、p型バリアは、1.0eV〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有する高バンドギャップ材料を含むことができる。また、本発明によれば、n型バリアは、1.0eV〜4.0eV範囲のバンドギャップを有する高バンドギャップ材料を含むことができる。真性領域材料は、p型バリアやn型バリアの材料と同じである必要はないが、1.0eV〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有し得る。
【0031】
QC構造体112に有用な材料のリストには、PbS、PbSe、PbTe、InAs、CdS、CdSe、CuInS、CuInSe、InP、SnO、MnO、またはHgTeなどの低バンドギャップ材料が含まれる。真性領域バリア材料110に有用な材料のリストには、ZnS、ZnO、SnO、GaN、CdS、CdSe、In、Fe、Bi、SiO、HfO、またはZrOが含まれる。これらの材料は、ALD法により堆積させることができ、上記した選択基準に適合する。加えて、n型材料106またはp型材料108は、ZnS、ZnO、SnO、GaN、CdS、CdSe、In、Fe、Bi、SiO、TiO、Si、GaAs、Ge、ZrO、CuSCN、CuAlO、CuI、または半導体ポリマーを含むことができる。
【0032】
本発明の別の態様では、前記太陽電池は、真性層内に配置されたフェルミレベルが互いに異なる少なくとも2つのQC層を有する。前記フェルミレベルは、サイズの違い、形状の違い、材質の違い、またはそれらの組み合わせに従って異なる。
【0033】
一態様によれば、本発明は、CIGS及びTiOに基づくバルクヘテロ接合構造を含む、様々な薄膜太陽電池に用いられるような、互いに異なるn型材料及びp型材料を含むヘテロ接合を使用する。バリア層の数を増加させると電荷キャリアが再結合前に電極へ拡散する可能性が低下するので、キャリアに必要な拡散距離を最小限にするために超薄型構造を開発することが望ましい。本発明は、高効率太陽電池の必要条件を維持しながら、ALDの利点を高共形堆積技術として利用した、三次元ナノ構造を有する構造体を製造する方法を含む。
【0034】
図2(a)〜(c)は、いくつかの例示的な、三次元QC構造型太陽電池構造体2200の概略平面図を示す。図2(a)は、例えばZnOまたはTiOなどのn型材料106から作製したナノロッド/ナノワイヤまたはナノチューブ202の柱状ナノ構造体に基づく三次元構造体を示す。このような柱状ナノ構造体202は、真性材料110に組み込まれたQC構造体112、例えばPbS−ZnS超格子構造体に基づくQC構造体112の吸収性層で被覆されている。例えばCuAlOなどのp型材料108が孔内に充填すべく提供され、ダイオードの製造が完了する。導電性及び反射性を有する外層としてのコーティングを提供するために、底部導電性層104がp型材料層108上に堆積される。n型材料106上に例えばAZOなどの頂部導電層102が配置され、頂部導電層102上に三次元QC構造型太陽電池200の外層としてのガラス層204が配置される。三次元QC構造型太陽電池に対して上方から照射される光線206が示されている。p型材料は、三次元QC構造型太陽電池の頂部または底部に配置され得る。
【0035】
図2(b)〜(c)の実施形態は、能動装置の吸収長さ208を拡散距離210から切り離した三次元QC構造型太陽電池を示しており、ガラスまたは水晶などの円錐形基板212が示されている。基板212は、ALD法を用いてp−i−nダイオード上を堆積させるための基板材料を提供するためのナノサイズの円錐体を有している。なお、説明目的のために、導電性層及びガラス層は省略されている。これらの例では、ナノコーン212はn型材料106で被覆されており、その上に、真性材料110に組み込まれたQC構造体112の吸収性層が堆積されている。p型材料層108が、QC構造体112が組み込まれた真性層110上に堆積されている。図2aと図2aの比較は、ナノコーン構造体212が、ナノコーン構造体210の頂部側または底部側のいずれからでも、光線206を集めるのに使用できることを示す。
【0036】
図2(a)〜2(c)に示した実施形態の構造体は、ALD法によって作製された量子閉じ込め型太陽電池についての様々な問題点を解決する。まず、総堆積厚さを大幅に薄くすることができるので、必要とされるALDサイクル数を大幅に減少させることができ、それにより、必要とされる製造時間を短縮することができる。さらに、装置の厚さを薄くすることにより、キャリアがいくつものバリアをトンネル通過しなければならない装置よりも、電荷抽出をより効率的に行うことが可能となる。さらに、三次元構造体のおかげで、吸収層によって塞がれる空間の体積を大幅に増大させることができ、それにより十分な光吸収が可能となる。
【0037】
ナノロッド側壁の垂直方向プロファイルを変更することにより、光吸収性をさらに向上させることができる。より円錐状の形状を用いることにより、光を効率的に散乱させ(図2(b)及び図2(c)を参照)、薄膜装置に吸収させることができ、それにより、フィーチャーサイズが光波長オーダーの場合に、反射による損失を大幅に減少させることができる。本発明の一態様によれば、太陽電池の堆積のための垂直構造テンプレートは、1nm〜100μmの範囲の直径を有し得る。
【0038】
他の態様では、n型材料は、1.0eV〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有する半導体材料を含み、p型材料は、1.0eV〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有する半導体材料を含む。加えて、前記垂直構造体は、ナノ粒子リソグラフィー法、反応性イオンエッチング法、スタンピンフ法またはフォトリソグラフィー法を用いて作製することができる。
【0039】
ナノ構造テンプレートを実現するために、ナノ粒子リソグラフィー法と反応性イオンエッチング法との組み合わせを用いて、例えばモールドとして、Siまたは透明材料(ガラスなど)などの基板にナノ柱状体をエッチングすることができる。スピンキャスト・ラテックスマイクロ粒子を用いて作製したSiナノ柱状体300の例が図3(a)〜(b)に示されている。前記シリコンナノロッドは、直径120nm(図3(a))または直径5μm(図3(b))のラテックスナノ粒子マスクの反応性イオンエッチングによって作製された。側壁のプロファイルを制御することによって、円筒形状または円錐形状の柱状体を提供することができる。また、ナノ構造テンプレートは、スタンピング法またはフォトリソグラフィー法によって作製してもよい。
【0040】
一態様によれば、本発明は、図3(b)に示す構造体のように、ガラスや水晶ウエハなどの透明基板にナノロッドをエッチングするステップを含む。ラテックスマイクロ粒子は、SiO粒子のラングミュアー・ブロジェット(Langmuir-Blodgett)膜または初期マスキング材料として使用することができる。ナノ構造水晶テンプレートは、その後の太陽電池製造のための基板としての役割を果たす。
【0041】
一態様では、本発明は、透明性及びCMOS製造との適合性を有する水晶基板を使用する。本発明の方法は、反応性イオンエッチング(RIE)法と組み合わせたナノ粒子リソグラフィー(NSL)法を用いて、水晶基板の表面にナノコーンを形成することを含む。前記水晶は、SiO用の標準的なエッチング手法を用いてエッチングされる。一例では、光の可視波長の範囲の概ね中央に該当する500nmのナノ粒子が使用される。そのため、可視光線は、この間隔を有する周期的配列によって効果的に散乱される。前記粒子は、0.1〜10%のポリスチレンと90〜99.9%の水とを含む懸濁液で得られる。ナノ粒子は、ナノ粒子の最密モノマーの形成を最適化するために、シリコン基板または水晶基板上にスピンキャストされる。スピンキャスティング中の前記基板の回転速度は最密モノマーの形成におけるキーパラメーターであり、空孔や二重層などのいくつかの欠陥を有する表面上に粒子の最密モノマーを形成するためには、例えば2000rpmの回転速度が有用である。
【0042】
スピンキャスティング処理が完了したら、前記ラテックスナノ粒子は、水晶基板のRIE用のマスクとして使用される。第1のエッチングステップは酸素ベースプラズマであり、水晶のエッチング前に粒子の直径を小型化するのに用いられる。このことにより、粒子間に、水晶のエッチング後にナノロッド/ナノコーンの間の間隔を画定するギャップが形成される。この小型化エッチングの時間を制御することにより、ナノロッド間のギャップのサイズを正確に制御することができる。この例では、2分間のエッチング時間が用いられる。水晶エッチングのために、NF、CHF及びOプラズマの組み合わせを含む、フッ素ベースのエッチング法が用いられる。
【0043】
酸素のフロンに対する比率を高くすることにより、より円錐様の形状にすることができると共に、ナノコーン同士の間隔を大きくすることができる。これは、水晶のエッチング中に酸素プラズマがラテックスナノ粒子をエッチングし、エッチング中に経時的に粒子が効率的に小型化されるからである。このことにより、粒子間により多くの領域が露出され、エッチング時間を関数とするマスクサイズの減少に起因して、ナノロッド間のバンドギャップを大きくすると共に円錐形を形成する。ガス流量などのエッチングパラメータを制御することにより、ナノ構造テンプレートの形状を正確に制御することができる。
【0044】
本発明の別の態様では、互いに異なるp型材料及びn型材料に基づくヘテロ接合が用いられる。このことは、太陽電池に対して様々な利点をもたらす。第1に、ドーピングを用いることなくダイオードを天然に形成することができる材料を用いることにより、太陽電池の純度要求を大幅に単純化することができる。第2に、透明な導電性酸化物としてのAZOの使用に良好に適合する、n型層としてのZnOに基づく様々なヘテロ接合が実在する。また、そのドーパント特性から独立している、量子閉じ込め領域用のバリア材料の選択を可能にする。
【0045】
まあまあ良い細孔充填特性がCuSCNの溶液ベース堆積で観察されるが、本発明ではALD法を用いて、高アスペクト比構造体内に無機膜を共形堆積させる。ALD法を用いてp型材料を堆積させることにより、ZnOを有するII型ヘテロ接合を形成するp型材料の堆積が提供される単一のALDチャンバ内で、活性太陽電池装置全体を作製することができる。CuAlOは、太陽電池用の効果的なp型材料であった。この材料は比較的単純な化学組成を有し、Cu並びにAl用の前駆体と共に利用可能である。
【0046】
本発明の別の態様では、ヘテロ接合ダイオードを形成するのに、CuSCN及びCuAlOを含む別のp型材料が使用される。本発明によれば、CuSCNを堆積させる方法は、プロピルスルフィドに溶解させたCuSCNを溶液を、注射器ポンプ及び針を使用して基板上に均等に堆積させるという、液体注入技術に基づいている。前記基板は、約100℃の温度に保たれる。このことにより、プロピルスルフィドの蒸発と、CuSCN膜の固化とが引き起こされる。この技術は、極薄吸収体(extremely thin absorber:ETA)太陽電池用のいくつかの材料システムにおいて、ダイオード挙動を提供する。本発明は、CuSCNの液体注入用の堆積システムを使用する。
【0047】
本発明の一態様によれば、CuSCN膜を堆積するために、プロピルスルフィド(PS)内で粉末CuSCNを12時間攪拌することによって溶液が調製される。0.06Mの溶液を作製するために、10mLのPS内に0.07gのCuSCNを混合させる。この濃度は、CuSCN透明膜の良好な堆積を可能にする。この例では、前記溶液は使用前に2日間静置させた。
【0048】
例示的な実施形態では、CuSCNの堆積は、注射器ポンプ、加熱板、中空針及び電動式ステージの使用を含む。これらの構成要素は、膜堆積の体系的な方法を可能にする。注射器ポンプはCuSCN溶液の流量の制御に関与しており、CuSCN溶液は前記針によって前記基板の幅に沿って均等に分配される。針の側壁に直径0.3mm以下の孔が穿孔されており、前記孔が全長1.5cmに渡って設けられた、カスタマイズされた針が提供される。前記針の終端部は閉じており、前記基板の表面上に均等に拡散させる、液体のシャワーヘッド型の流れを生じさせる。堆積中、前記加熱板は、堆積した溶液中のPSを急速に蒸発させる。前記加熱板は100℃に保たれる。電動式ステージを一定の速度及び移動距離で移動するようにプログラムすることにより、前記溶液が前記基板の長さ方向に沿って均等に分配される。
【0049】
溶液の準備ができたら、注射器ポンプに前記混合体を1mL充填する。前記溶液は前記システムに100μL/分の初期流量で充填される。堆積中、流量は10μL/分に減らされる。前記中空針は、余熱された基板の0.5〜1mm上方に配置される。プログラムスクリプトはコード化され、毎回の実行前に試験される。前記コードは、前記針の拡散速度(1.5mm/秒)と移動距離(15cm)を規定する。適用回数は、前記針の移動のルーピングにより規定される。1回のループは2回の適用を含む。
【0050】
CuSCN膜は、様々な表面上に堆積させられてきた。膜の厚さ及び均一性は、基板の表面形状に大きく左右される。基板の表面粗さは、膜の接着性を左右するので重要である。テクスチャ加工された表面は、凹部を提供する。そのような凹部には、核形成部位としての役割を果たすCuSCNが充填される。核形成部位を均等に分布させることにより、CuSCNの均一層を形成することができる。ナノ柱状体は、溶液堆積のために、核形成部位の優れた分布を提供する。ナノ柱状体同士の間の隙間が大きい場合、より厚い均一層を形成するためには、より多くのパスが必要である。一例では、前記パスは、前記ナノ柱状体を覆う0.5μm以下の厚さのCuSCN膜を形成する。図4は、ALD法を用いて90nm以下のAZOで被覆したナノロッドテンプレート404の孔に堆積させたCuSCN膜402のSEM画像400を示す。ここで、ピンホールが(たとえあったとしても)ほとんど存在しないことがわかる。
【0051】
さらなる態様では、本発明は、ALD法による銅アルミニウム二酸化物の作製を含む。CuAlOは、ZnOと組み合わせる場合、pn接合に有効なp型材料である。ALD法を用いたCuAlOの堆積は、ナノコーンまたはナノ柱状体の反射防止太陽電池構造体の頂部への前記材料の共形層堆積を可能にするので重要である。CuAlOのさらなる利点は、その相対透過度であり、量産する場合は約50〜60%で最適であるが、適切な堆積方法による薄膜の場合はより高い。したがって、積層した多接合型太陽電池の製造に使用することができる。
【0052】
Cuテトラメチルヘプタンジオナート、Cuヘキサフルオロアセチルアセトネート及びビス(N,N´−ジ−sec−ブチルアセトアミジナト)ジ銅などの様々な前駆体を使用した本発明によるCuO及びCuO良好な堆積は、Al及びCuO/CuOのALDサイクルを交互に行うことにより、CuAlOの正確な化学量論的一致を可能にする。銅アルミニウム二酸化物は、化学量論的な成長を実現することができるようにデラホサイト(delafossite)構造体を有するので、適切な前駆体化学種を使用したとき、Cu−O−Al−Oの繰り返し層が達成される。あるいは、CuAlOは、スパッタリング法、化学気相堆積法またはパルスレーザ堆積法を含む、他の標準的な薄膜製造技術によって堆積することもできる。
【0053】
いくつかの例示的な実施形態に従って本発明を説明したが、これらはあらゆる面において説明を意図するものであり、限定するものではない。したがって、本発明は、当業者が本明細書の記載から導き得る様々な変更が可能である。そのような変更は全て、特許請求の範囲によって規定された本発明の範囲及び趣旨並びにその法上の均等物の範囲内であると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、太陽電池において量子閉じ込め(QC)を提供する方法であって、
太陽電池におけるp−i−nダイオードの真性領域に組み込まれた少なくとも1つのQC構造体を提供すべく、原子層堆積法(ALD)を用いるステップを含み、
前記量子閉じ込め構造体の光学的性質及び電気的性質が、前記閉じ込め構造体の少なくとも1つの次元に基づいて調節されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記QC構造体が、量子ドット、量子ウェル、量子ワイヤ及び量子チューブを含む群より選択されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記量子ドットが、核形成制限型成長法(nucleation limited growth)を用いた前記QC構造体の島形成、リソグラフィーレジスト材料からのナノパターニング法、または自己集合単分子層からのナノパターニング法を用いて製造されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記量子ウェルが、半導体材料の薄膜を前記ALD法によって堆積させることによって製造され、
前記薄膜を、前記量子ウェル層よりも高いバンドギャップを有する第2の材料間に層状構造をなして堆積させたことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記量子ワイヤが、テンプレート式成長機構を使用して前記ALDにより製造され、ナノ多孔性材料への堆積を含むることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記p−i−nダイオードの前記真性領域内への前記QC構造体の堆積は、前記QC構造を有する少なくとも1つの材料を含む前駆体分子をALDチャンバへ提供することを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記p−i−nダイオードの前記真性領域内への前記QC構造体の堆積は、前駆体としてリモートプラズマ源を使用することを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記p−i−nダイオードの前記真性領域内への前記QC構造体の堆積は、ALD膜のポストアニーリング法または過飽和材料の相分離法を用いることを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記QC構造体の製造は、0.0〜1.5eVの範囲のバンドギャップを有する材料を使用することを含み、
前記材料が前記QC構造体の状態となったとき、前記バンドギャップは前記太陽電池に有用なバンドギャップまで増加することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記QC構造体の製造は、1〜100nmの範囲の励起子ボーア半径、及び、0.01*m〜0.9*mの範囲の有効質量を有する材料を使用することを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記QC構造体が、0.0〜1.5eVの範囲のバンドギャップを有する低バンドギャップ材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記太陽電池が、底部電極、p型バリア、前記真性領域、n型バリア及び上部バリアを含み、少なくとも1つの前記QC構造体が前記真性領域内に配置されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記p型バリアまたは前記n型バリアが、1.0〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有する高バンドギャップ材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記太陽電池が、前記真性層に配置されたフェルミレベルが互いに異なる少なくとも2つのQC層を含み、
前記互いに異なるフェルミレベルは、(i)サイズの違い、(ii)形状の違い、(iii)材質の違い、(i)と(ii)との組み合わせ、(i)と(iii)との組み合わせ、(ii)と(iii)との組み合わせ、または、(i)と(ii)と(iii)との組み合わせに基づいて生じることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記真性領域が誘電材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、
前記太陽電池がバルクヘテロ接合構造体を含み、
前記ヘテロ接合がn型材料及びp型材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記p−i−nダイオードが、少なくとも1つの垂直方向要素を有する第1のダイオード材料を含む基板を含み、
前記少なくとも1つのQC構造体が組み込まれた前記真性領域が、前記少なくとも1つの垂直方向要素の表面上に配置され、
前記前記真性領域上に、第2のダイオード層が配置され、
前記第2のダイオード材料から前記第1のダイオード材料までの拡散距離が、前記太陽電池の吸収長から切り離されていることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記第1のダイオード材料が、n型半導体材料またはp型半導体材料を含み、
前記第2のダイオード材料が、p型半導体材料またはn型半導体材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
前記垂直方向要素が、1nm〜100μmの範囲の直径を有する円錐体または柱状体であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、
前記n型半導体材料が、1.0〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有する半導体材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法であって、
前記p型半導体材料が、1.0〜4.0eVの範囲のバンドギャップを有する半導体材料を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法であって、
前記垂直方向要素が、ナノ粒子リソグラフィー法、反応性イオンエッチング法、スタンピング法またはフォトリソグラフィー法を用いて形成されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−521660(P2012−521660A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502007(P2012−502007)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/000881
【国際公開番号】WO2010/110888
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】