説明

反射フィルム

【課題】より少ない無機充填剤量で高い反射性能を示し、経時的な黄変や反射率低下、さらには経時的もしくは加熱環境下での寸法変化が少ない反射フィルムを提供せんとする。
【解決手段】脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を含有してなるA層と、ガラス転移温度が80℃以上の熱可塑性樹脂を含有してなるB層とが積層してなる構成を備えた反射フィルムを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射フィルムに関し、特に、液晶ディスプレイ、照明器具、照明看板等の反射板等に使用される反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の反射フィルム、中でも液晶ディスプレイの反射板に使用される反射フィルムとして、従来、特許文献1には、芳香族ポリエステル系樹脂からなるフィルムが開示されているが、要求される高い反射率を満たさないという課題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平4−239540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、より少ない無機充填剤量で高い反射性能を示し、経時的な黄変や反射率低下、さらには経時的もしくは加熱環境下での寸法変化が少ない反射フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を含有してなるA層と、ガラス転移温度が80℃以上の熱可塑性樹脂を含有してなるB層とが積層してなる構成を備えた反射フィルムを提案する。
【0006】
本発明の反射フィルムは、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱によって、優れた光反射性を得ることができる。しかも、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂は、紫外線を吸収する芳香環を有さないので、紫外線照射による反射率の低下がほとんど起こらないという特徴を有する。また、耐熱性に優れた熱可塑性樹脂を含有するB層にA層を積層することにより、反射フィルム全体の耐熱性が高まり、高温環境下での使用時にも優れた寸法安定性を発揮する。
よって、本発明の反射フィルムは、パソコンやテレビなどのディスプレイ、照明器具、照明看板等の反射板等に用いる反射フィルムとして好適であるばかりか、大型液晶テレビなどの特に優れた耐熱性が要求される用途の反射フィルムとしても好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0008】
本実施形態に係る反射フィルムは、脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を主成分とするA層と、ガラス転移温度が80℃以上の熱可塑性樹脂を主成分とするB層とが積層してなる構成を備えた反射フィルムである。
ここで、主成分と言うのは、当該成分の機能を妨げない限りにおいて、それ以外の成分を含むことを許容する意であり、主成分の含有割合は特に制限されないが、各層において主成分が50質量%以上、中でも70質量%以上、特に80質量%以上、殊更90質量%以上を占めるのが好ましい。
【0009】
(A層)
本実施形態に係る反射フィルムを構成するA層は、主に反射フィルムの光反射性を付与する層であって、例えば、フィルムを積層したり、薄膜状の層を製膜したりして形成することができる。
【0010】
(脂肪族ポリエステル系樹脂)
以下、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂について説明する。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、化学合成されたもの、微生物により発酵合成されたもの、及び、これらの混合物を用いることができる。
化学合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリε−カプロラクタム等、ラクトンを開環重合して得られる脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアゼレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリテトラメチレンサクシネート、シクロヘキサンジカルボン酸/シクロヘキサンジメタノール縮合体等、二塩基酸とジオールとを重合して得られる脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール等ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる脂肪族ポリエステル系樹脂、前記脂肪族ポリエステルのエステル結合の一部、例えば全エステル結合の50%以下がアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等に置き換えられた脂肪族ポリエステル等を挙げることができる。
また、微生物により発酵合成された脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレートとヒドロキシバリレートとの共重合体等を挙げることができる。
脂肪族ポリエステル系樹脂は、分子鎖中に芳香環を含まないので紫外線吸収を起こさない。従って、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によってフィルムが劣化、黄変することがなく、光反射性が経時的に低下することが少ない。
【0011】
脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率は、1.52未満であることが好ましい。本実施形態に係る反射フィルムの反射性能は、主に樹脂と微粉状充填剤との界面における屈折散乱によって発揮されるものである。すなわち、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率の差が大きいほうが、高い反射性能を得ることができる。従って、脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率が1.52未満であると、微粉状充填剤との屈折率の差が大きくなり好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率の差は、0.15以上であることが好ましく、0.20以上であれば更に好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率が1.52未満であれば、微粉状充填剤の屈折率との差が0.15以上の条件を確保することが容易であり、組み合わせられる微粉状充填剤の種類も豊富になる。
【0012】
本実施形態で用いる脂肪族ポリエステル系樹脂として、乳酸系重合体は特に好ましい脂肪族ポリエステル系樹脂である。乳酸系重合体は、植物由来の原料から製造され、かつ生分解性の性質を有する樹脂であるから環境への負荷が小さい点で優れているばかりか、屈折率が1.46程度と非常に低く、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率の差が大きくなり、0.15以上の条件を容易に達成することから高い反射性能を容易に得ることができる。
【0013】
ここで、本実施形態で用いる乳酸系重合体としては、D−乳酸又はL−乳酸の単独重合体又はそれらの共重合体であればよい。具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、またこれらの混合体も含まれる。
【0014】
乳酸系重合体は、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法で製造することができる。例えば、縮合重合法では、D−乳酸、L−乳酸、又は、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有する乳酸系重合体を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有する乳酸系重合体を得ることができる。
【0015】
乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=100:0〜85:15であるか又はD−乳酸:L−乳酸=0:100〜15:85であることが好ましく、さらに好ましくはD−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5又はD−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95である。D−乳酸とL−乳酸との構成比が100:0もしくは0:100である乳酸系重合体は非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性及び機械的物性に優れる傾向がある。すなわち、フィルムを延伸したり熱処理したりする際に、樹脂が結晶化して耐熱性及び機械的物性が向上する点で好ましい。一方、D−乳酸とL−乳酸とで構成された乳酸系重合体は、柔軟性が付与され、フィルムの成形安定性及び延伸安定性が向上する点で好ましい。得られる反射フィルムの耐熱性と、成形安定性及び延伸安定性とのバランスを勘案すると、本実施形態に用いる乳酸系重合体としては、D−乳酸とL−乳酸との構成比がD−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5又はD−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95であることがより好ましい。
【0016】
また、乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との共重合比が異なる乳酸系重合体をブレンドしてもよい。この場合、複数の乳酸系重合体のD−乳酸とL−乳酸との共重合比を平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。D−乳酸とL−乳酸のホモポリマーと、共重合体とをブレンドすることにより、耐熱性を調節することができる。
【0017】
乳酸系重合体の分子量は、重量平均分子量が5万以上であることが好ましく、6万以上40万以下であることがさらに好ましく、10万以上30万以下であることが特に好ましい。乳酸系重合体の重量平均分子量が5万以上であれば、機械物性や耐熱性等の実用物性を確保することができ、40万以下であれば、溶融粘度が高過ぎて成形加工性が劣るようなことを防ぐことができる。
【0018】
(微粉状充填剤)
次に、A層に含有される微粉状充填剤について説明する。
【0019】
本実施形態で用いる微粉状充填剤としては、有機質微粉体、無機質微粉体等を挙げることができる。
有機質微粉体としては、木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末や、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等から選ばれた少なくとも一種が好ましい。
無機質微粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等から選ばれた少なくとも一種が好ましい。得られる反射フィルムの光反射性を勘案すれば、脂肪族ポリエステル系樹脂との屈折率差が大きいものが好ましく、すなわち、無機質微粉体としては屈折率が大きいもの、基準としては1.6以上が好ましい。具体的には、屈折率が1.6以上である炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、又は酸化亜鉛を用いることがさらに好ましく、これらの中でも酸化チタンが特に好ましい。酸化チタンを用いることにより、より少ない充填量でフィルムに高い反射性能を付与することができ、また、薄肉でも高い反射性能のフィルムを得ることができる。
【0020】
本実施形態で用いる酸化チタンとしては、例えば、アナタース型酸化チタン及びルチル型酸化チタンのような結晶型の酸化チタンを挙げることができる。ベース樹脂との屈折率差を大きくするという観点からは、屈折率が2.7以上の酸化チタンであることが好ましく、例えば、ルチル型酸化チタンを用いることが好ましい。
【0021】
さらに、酸化チタンの中でも純度の高い高純度酸化チタンを用いるのが特に好ましい。
ここで、高純度酸化チタンとは、可視光に対する光吸収能が小さい酸化チタン、すなわち、バナジウム、鉄、ニオブ、銅、マンガン等の着色元素の含有量が少ないものの意である。本発明では、酸化チタンに含まれるバナジウムの含有量が5ppm以下である酸化チタンを高純度酸化チタンと称すことにする。
【0022】
高純度酸化チタンとしては、例えば塩素法プロセスにより製造されるものを挙げることができる。塩素法プロセスでは、酸化チタンを主成分とするルチル鉱を1,000℃程度の高温炉で塩素ガスと反応させて、まず、四塩化チタンを生成させる。次いで、この四塩化チタンを酸素で燃焼することにより、高純度酸化チタンを得ることができる。なお、酸化チタンの工業的な製造方法としては硫酸法プロセスもあるが、この方法によって得られる酸化チタンには、バナジウム、鉄、銅、マンガン、ニオブ等の着色元素が多く含まれるので、可視光に対する光吸収能が大きくなる。従って、硫酸法プロセスでは高純度酸化チタンは得られ難い。
【0023】
また、本実施形態で用いる酸化チタン(高純度酸化チタン)は、表面をシリカ、アルミナ、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも一種類の不活性無機酸化物で被覆処理されていると、フィルムの耐光性が高まり、酸化チタンの光触媒活性が抑制され、酸化チタンの高い光反射性を損なうことがないので好ましい。さらに二種類或いは三種類の不活性無機酸化物を併用して被覆処理されたものがより好ましく、中でもシリカを必須とする複数の不活性無機酸化物の組み合わせが特に好ましい。
【0024】
なお、微粉状充填剤として、前記の如く例示した無機質微粉体と有機質微粉体とを組み合わせて使用してもよい。また、異なる微粉状充填剤同士を併用することができ、例えば、酸化チタンと他の微粉状充填剤、高純度酸化チタンと他の微粉状充填剤とを併用してもよい。
【0025】
また、微粉状充填剤の樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用するのもよい。
表面処理剤としては、例えば、酸化チタンの表面をシロキサン化合物、シランカップリング剤等から選ばれた少なくとも一種類の無機化合物を用いることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。さらに、シロキサン化合物、シランカップリング剤、ポリオール及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれた少なくとも一種の有機化合物等を用いることができる。また、これらの無機化合物と有機化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
微粉状充填剤は、粒径が0.05μm以上、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは粒径が0.1μm以上、10μm以下である。微粉状充填剤の粒径が0.05μm以上であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂への分散性が低下することがないので、均質なフィルムが得られる。また粒径が15μm以下であれば、形成される空隙が粗くなることはなく、高い反射率のフィルムが得られる。
【0027】
さらに、微粉状充填剤として酸化チタンを用いる場合、粒径が0.1μm以上、1μm以下であることが好ましく、0.2μm以上、0.5μm以下であることがさらに好ましい。酸化チタンの粒径が0.1μm以上であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂への分散性が良好であり、均質なフィルムを得ることができる。また、酸化チタンの粒径が1μm以下であれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンとの界面が緻密に形成されるので、反射フィルムに高い光反射性を付与することができる。
【0028】
A層に含まれる微粉状充填剤の含有量は、フィルムの光反射性、機械的物性、生産性等を考慮すると、A層全体の質量に対して、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上、55質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上、50質量%以下であることが特に好ましい。微粉状充填剤の含有量が10質量%以上であれば、樹脂と微粉状充填剤との界面の面積を充分に確保することができて、フィルムに高い光反射性を付与することができる。また、微粉状充填剤の含有量が60質量%以下であれば、フィルムに必要な機械的性質を確保することができる。
【0029】
(空隙)
A層は、内部に空隙を有していてもよい。空隙を有していれば、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱のほか、脂肪族ポリエステル系樹脂と空隙(空気)、微粉状充填剤と空隙(空気)との屈折率差による屈折散乱からも反射性能を得ることができる。
【0030】
例えば、微粉状充填剤を含有するフィルムを延伸するすることにより、フィルム中に空隙を形成することができる。これは、延伸時に樹脂と微粉状充填剤との延伸挙動が異なるからであり、樹脂に適した延伸温度で延伸を行えば、マトリックスとなる樹脂は延伸されるが、微粉状充填剤はそのままの状態でとどまろうとするため、樹脂と微粉状充填剤との界面が剥離して、空隙が形成される。従って、微粉状充填剤を効果的に分散状態で含ませることによって、反射フィルム内に空隙を形成し、さらに優れた反射性能をフィルムに付与することができる。
【0031】
また、A層に発泡剤を添加して、発泡によってA層中に空隙を形成することもできる。発泡によってA層に空隙を形成する方法として、脂肪族ポリエステル系樹脂に有機、無機の熱分解性発泡剤又は揮発性発泡剤を添加して発泡させる方法を挙げることができる。また、脂肪族ポリエステル系樹脂に超臨界状態のCO2やN2を導入して発泡させる方法も挙げることができる。
【0032】
A層に占める空隙の割合、すなわち空隙率(A層中に占める空隙の体積部分の割合であり、延伸によって空隙を形成する場合は、「空隙率(%)=[(未延伸のA層の密度−延伸後のA層の密度)/未延伸のA層の密度]×100」で求めることができる)は、50%以下であるのが好ましく、5%以上50%以下の範囲内であることがより好ましい。また、空隙率は20%以上であることがさらに好ましく、特に好ましくは30%以上である。空隙率が50%以下であれば、フィルムの機械的強度が確保され、フィルム製造中にフィルムが破断したり、使用時に耐熱性等の耐久性が不足したりすることがない。
【0033】
なお、微粉状充填剤として酸化チタン(高純度酸化チタン)を用いた場合は、フィルム内部の空隙の存在如何にかかわらず、高い光反射性を得ることができる。
例えば、A層が空隙を有さない場合(すなわち、空隙率=0%)であっても、微粉状充填剤として酸化チタンを用いれば、高い光反射性を得ることができる。これは、脂肪族ポリエステル系樹脂と酸化チタンとの屈折率差による屈折散乱が大きいことと共に、酸化チタンの隠蔽力が高いことに起因すると推察される。
【0034】
(B層)
本実施形態に係る反射フィルムを構成するB層は、主に、反射フィルムに耐熱性、寸法安定性を付与する層である。
以下、ガラス転移温度が80℃以上の熱可塑性樹脂について説明する。
【0035】
(熱可塑性樹脂)
本実施形態に用いる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)は、80℃以上であることが重要であり、90℃以上であるとより好ましい。
本実施形態に係る反射フィルムは、このような耐熱性の高い熱可塑性樹脂を積層することによって、反射フィルムの耐熱性を向上させることができる。例えば、乳酸系重合体のガラス転移温度は60℃付近であり、延伸結晶化させることで耐熱性を向上させることは可能であるが、耐熱性の高い熱可塑性樹脂を積層することによって、耐熱性、寸法安定性をさらに向上させることができ、大型液晶テレビ等の用途において要求される80℃程度の高温環境下における反射フィルムの寸法安定性を得ることができる。
【0036】
なお、本発明においては、Tgは、粘弾性測定における損失弾性率(E”)のピーク温度によって定義される温度である。粘弾性測定における損失弾性率(E”)のピーク温度は、例えば、粘弾性スペクトロメーターを用い、所定の条件下で測定される損失弾性率の温度依存曲線の傾きを求め、この傾きが零(一次微分が零)となる温度である。
【0037】
本実施形態で用いる熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂であると好ましい。
ここで、ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸成分とジオール成分から誘導される樹脂であり、ジカルボン酸成分の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等を挙げることができ、ジオール成分の例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。中でも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、また、ジオール成分としてエチレングリコールが好ましい。
【0038】
また、本実施形態で用いるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分の少なくとも一方が、少なくとも二種の成分からなる共重合ポリエステル系樹脂であると好ましい。共重合ポリエステル系樹脂であれば、A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂と積層したフィルムを共押出や共延伸することが可能となり好ましい。
【0039】
以下の説明では、ジカルボン酸成分、ジオール成分の夫々において、含有割合(モル%)の多い方から、第一成分、第二成分、・・・第n成分というが、第一成分より少量の成分をまとめて第二成分以下という。
【0040】
共重合ポリエステル系樹脂の好ましいジカルボン酸成分混合物としては、第一成分としてテレフタル酸が、第二成分としてイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、及びアジピン酸からなる群より選ばれる少なくとも一種を使用し、中でも、イソフタル酸が好ましい。
【0041】
共重合ポリエステル系樹脂の好ましいジオール成分混合物としては、第一成分として前記エチレングリコールが、第二成分として、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種が使用され、中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
また、第一成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを用い、第二成分がエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することもできる。
【0042】
第二成分以下の成分の総量は、ジカルボン酸成分の総量(100モル%)とジオール成分の総量(100モル%)との合計(200モル%)に対して、10モル%〜40モル%であると好ましく、20モル%〜35モル%であるとより好ましい。第二成分以下の成分の総量が、10モル%〜40モル%の範囲であれば、第一成分の長所を保ち、かつ得られる熱可塑性樹脂の結晶化度を抑えることができる。例えば、エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノールの量は、エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールとの合計200モル%に対して10〜40モル%、好ましくは25〜35モル%の範囲である。逆にエチレングリコールの量を10〜40モル%としても構わない。
【0043】
上記のような熱可塑性樹脂としては、「PETG6763」(イーストマンケミカル社製)、及び、「SKYREEN PETG」(SKケミカル社製)等のエチレングリコールを第一成分とした熱可塑性樹脂、また、「PCTG5445」(イーストマンケミカル社製)等の1,4−シクロヘキサンジメタノールを第一成分とした熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0044】
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記共重合ポリエステル系樹脂にポリカーボネート系樹脂を混合してもよい。
共重合ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂は、相溶性であり混合物とすることができるため、Tgが高いポリカーボネートを混合することによって、さらに耐熱性を付与することができる。
【0045】
ポリカーボネート系樹脂の混合割合は、共重合ポリエステル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とが質量比(質量%)で95:5〜50:50の割合となるように混合することが好ましい。ポリカーボネート系樹脂の比率が5質量%以上であれば、ガラス転移温度の向上による反射フィルムの耐熱性向上効果が発揮し、また、50質量%以下であれば、延伸性も確保することができる。
ポリカーボネート系樹脂としては、NOVAREXシリーズ(三菱エンジニアリングプラスチック(株)社製)等のポリカーボネート系樹脂を挙げることができる。
【0046】
B層は、微粉状充填剤を含有していてもよい。B層を構成する熱可塑性樹脂と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱を得ることができる。
微粉状充填剤は、前記の如く示した微粉状充填剤を例示することができ、中でも酸化チタン、特に高純度酸化チタン、さらには不活性無機酸化物で被覆処理した酸化チタン、表面処理をした酸化チタンを含有させると好ましい。
【0047】
B層に微粉状充填剤を含有させる場合の含有量は、フィルムの光反射性、機械的物性、生産性等を鑑みて、B層全体の質量に対して10質量%以上60質量%以下であると好ましい。
【0048】
また、B層は、空隙を含有していてもよい。B層が空隙を含有することによって、A層が発揮する反射性能の他に、B層を構成する熱可塑性樹脂と空隙(空気)との屈折率差による屈折散乱を得ることができる。
【0049】
B層に占める空隙の割合、すなわち空隙率は50%以下であるのが好ましく、5%以上50%以下の範囲内であることが好ましい。また、空隙率は20%以上であることがさらに好ましく、特に好ましくは30%以上である。空隙率が50%以下であれば、フィルムの機械的強度が確保され、フィルム製造中にフィルムが破断したり、使用時に耐熱性等の耐久性が不足したりすることがない。
【0050】
なお、微粉状充填剤として酸化チタン(高純度酸化チタン)を用いた場合、フィルム内部の空隙の存在如何にかかわらず、高い光反射性を得ることができる。
例えば、空隙を有さない場合であっても、高純度酸化チタンを用いれば、高い光反射性を得ることができる。これは、熱可塑性樹脂と高純度酸化チタンとの屈折率差による屈折散乱が大きいことと共に、酸化チタンの隠蔽力が高いことに起因すると推察される。
【0051】
また、B層に発泡剤を添加して、発泡によってB層中に空隙を形成することもできる。発泡によってB層に空隙を形成する方法として、ポリエステル系樹脂に有機、無機の熱分解性発泡剤又は揮発性発泡剤を添加して発泡させる方法を挙げることができる。また、ポリエステル系樹脂に超臨界状態のCO2やN2を導入して発泡させる方法も挙げることができる。
【0052】
(他の成分)
本実施形態に係る反射フィルムを構成するA層及びB層は、本発明の効果を損なわない範囲内で上記以外の樹脂を含有していてもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲内で、加水分解防止剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、分散剤、紫外線吸収剤、白色顔料、蛍光増白剤、及びその他の添加剤を含有していてもよい。
【0053】
例えば、本実施形態に係る反射フィルムを自動車用カーナビゲーションシステムや車載用小型テレビ等の液晶ディスプレイ用途で使用する場合、より高温度で高湿度な環境に対する耐久性を付与する目的で、加水分解防止剤であるカルボジイミド化合物等を添加することができる。カルボジイミド化合物としては、例えば、下記一般式の基本構造を有するものが好ましいものとして挙げることができる。

―(N=C=N−R−)n

式中、nは1以上の整数を示し、Rは有機系結合単位を示す。例えば、Rは脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかであることができる。また、nは、通常、1〜50の間で適当な整数が選択される。
具体的には、例えば、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、及び、これらの単量体が、カルボジイミド化合物として挙げることができる。これらのカルボジイミド化合物は、単独で使用しても、あるいは、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂100質量部に対してカルボジイミド化合物を0.1質量部〜3.0質量部添加することが好ましい。カルボジイミド化合物の添加量が0.1質量部以上であれば、得られるフィルムに耐加水分解性の改良効果が十分に発現される。また、カルボジイミド化合物の添加量が3.0質量部以下であれば、得られる反射フィルムの着色が少なく、高い光反射性が得られる。
【0055】
(積層)
本実施形態に係る反射フィルムは、高い反射性能を有するA層と高い耐熱性を有するB層とを積層することで、両者の特徴を併せ持つこととなり、例えば、大型液晶テレビ等の用途における80℃以上の耐熱性、すなわち80℃の加熱環境下での寸法安定性を確保することができる。
【0056】
本実施形態に係る反射フィルムの積層構成や積層比は特に制限されないが、積層構成を例示すると、A層/B層/A層あるいはB層/A層/B層の二種三層構成やA層とB層が交互になった積層した多層の構成を挙げることができ、中でもA層を表裏層に配設された三層以上の多層の構成が好ましい。
また、本実施形態に係る反射フィルムは、これらの層の間に、さらに他の層を介在させてもよい。具体的には、A層とB層とを積層するために接着剤層や、反射フィルムの機械的強度を向上させる他の樹脂層を介在させてもよい。この場合、反射フィルムの積層構成は、A層/他の層/B層/他の層/A層の三種五層を例示することができ、中でもA層を表裏層とした積層構成とするのが好ましい。
【0057】
(厚さ)
本実施形態に係る反射フィルムにおいてA層が占める割合は、反射フィルム全体の厚さに対する比率で、30%〜90%であると好ましく、中でも30%〜80%、特に40%〜70%の範囲であると好適に用いることができる。30%以上であれば、光反射性を十分に付与することができ、90%以下であれば、耐熱性を十分に得ることができる。
【0058】
本実施形態に係る反射フィルム全体の厚さは、特に限定されないが、通常は30μm〜500μmであり、実用面における取り扱い性を考慮すると50μm〜500μm程度の範囲内であることが好ましい。特に、小型、薄型の反射板用途の反射フィルムとしては、厚さが30μm〜100μmであることが好ましい。かかる厚さの反射フィルムを用いれば、例えばノート型パソコンや携帯電話等の小型、薄型の液晶ディスプレイ等にも使用することができる。
【0059】
なお、本実施形態においてシートとは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。ところで、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JIS K 6900)。従って、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かでなく、明確には区別しにくいので、本願においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0060】
(フィルムの特性)
本実施形態に係る反射フィルムは、反射使用面側から測定した波長550nmの光に対する反射率が95%以上であることが好ましく、97%以上であることがさらに好ましい。反射率が95%以上であれば、良好な反射特性を示し、液晶ディスプレイ等の画面に充分な明るさを与えることができる。
【0061】
本実施形態に係る反射フィルムの熱的特性としては、80℃で180分間加熱した後の熱収縮率が、縦方向(MD)及び横方向(TD)ともに−0.1%より大きく且つ0.7%未満であり、0%より大きく、0.5%未満であるのが好ましい。
例えば、大型液晶テレビ等の反射板として組み込まれる場合には、光源に晒された状態で長時間使用されるので、その期間において波打やシワの発生を抑える必要がある。すなわち、耐熱性、加熱環境下での寸法安定性が要求される。従って、前記の如く、80℃で180分間加熱した後の熱収縮率が縦方向(MD)及び横方向(TD)ともに−0.1%より大きく且つ0.7%未満であれば、反射フィルムの平面性を維持し得る寸法安定性を有する。
【0062】
(用途)
本実施形態に係る反射フィルムは、以上のように高度な反射性能と高い耐熱性を兼ね備えていることから、パソコンやテレビなどのディスプレイ、照明器具、照明看板等の反射板等に用いる反射フィルムとして好適であるばかりか、大型液晶テレビ等の特に優れた耐熱性が要求される反射板に用いる反射フィルムとしても好適に用いることができる。
【0063】
ここで、該反射板は、反射フィルムを金属板若しくは樹脂板に被覆して得ることができる。反射フィルムを金属板もしくは樹脂板に被覆する方法としては、接着剤を使用する方法、接着剤を使用せずに熱融着する方法、接着性シートを介して接着する方法、押出しコーティングする方法等があり、特に限定されるものではない。
例えば、金属板もしくは樹脂板の反射フィルムを貼り合わせる側の面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、反射フィルムを貼り合わせることができる。この方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、反射フィルムを貼り合わせる金属板等の表面に乾燥後の接着剤膜厚が2〜4μm程度となるように接着剤を塗布する。次いで、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、板の表面を所定の温度に保持しつつ、直にロールラミネーターを用いて、反射フィルムを被覆、冷却することにより、反射板を得ることできる。この場合、金属板等の表面を210℃以下に保持すると、反射板の光反射性を高く維持できて好ましい。
【0064】
(製造方法)
本実施形態に係る反射フィルムは、例えば、(1)A層を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂組成物(以下、樹脂組成物Aという)とB層を構成する熱可塑性樹脂組成物(以下、樹脂組成物Bという)とを共押出して製造することも、また、(2)予め、樹脂組成物A又は樹脂組成物Bをフィルム状に形成し、該フィルムに他方の樹脂組成物を製膜するようにして製造することも、また、(3)予め、樹脂組成物Aからなるフィルム(フィルムA)及び樹脂組成物Bからなるフィルム(フィルムB)を作製し、フィルムA及びフィルムBを積層するようにして製造することもできる。
以下、本実施形態に係る反射フィルムの製造方法の一例として、(1)の製造方法によりA層及びB層からなる二層構成の反射フィルムの製造方法について説明するが、下記製造法に何等限定されるものではない。
【0065】
先ず、脂肪族ポリエステル系樹脂又は熱可塑性樹脂に、夫々必要に応じて微粉状充填剤、加水分解防止剤等その他の添加剤を配合した樹脂組成物A、樹脂組成物Bを夫々作製する。具体的には、脂肪族ポリエステル系樹脂又は熱可塑性樹脂に、夫々微粉状充填剤、加水分解防止剤等を加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、一軸又は二軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えば、乳酸系重合体の場合には170℃〜230℃)で混練することにより樹脂組成物A、樹脂組成物Bを夫々得る。
なお、脂肪族ポリエステル系樹脂又は熱可塑性樹脂と、微粉状充填剤、加水分解防止剤等とを別々のフィーダー等により所定量を添加することによって樹脂組成物A、樹脂組成物Bを得ることもできる。また、予め、脂肪族ポリエステル系樹脂又は熱可塑性樹脂に、夫々必要に応じて微粉状充填剤、加水分解防止剤等を高濃度に配合した、いわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチと脂肪族ポリエステル系樹脂又は熱可塑性樹脂を混合して所望の濃度の樹脂組成物A、樹脂組成物Bとすることもできる。
【0066】
次に、このようにして得られた樹脂組成物A、樹脂組成物Bとを別々の押出機によって溶融し、積層用口金にてフィルム状に形成する。
押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要である。
その後、溶融した樹脂組成物Aと樹脂組成物BとをTダイのスリット状の吐出口から二層に共押出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシート(未延伸状態)を形成し、A層及びB層からなる二層構成の反射フィルムを得ることができる。
【0067】
(延伸)
得られた未延伸状態の反射フィルムは、一軸方向若しくは二軸方向に延伸してもよい。延伸することにより、樹脂組成物と無機充填剤間にて空隙をつくることにより反射率を向上させることができ、また耐衝撃性を向上させることができる。
【0068】
例えば、二軸延伸の場合、延伸順序は特に制限されることはなく、同時二軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってMDに延伸した後、テンター延伸によってTDに延伸しても良いし、チューブラー延伸等によって二軸延伸を行ってもよい。
【0069】
延伸温度は、樹脂組成物の混合比によって調整すればよく、概ね60℃〜130℃、好ましくは70℃〜120℃の範囲である。また、延伸倍率は、フィルムの構成組成、延伸手段、延伸温度、目的の製品形態に応じて適宜決定されるが、面積倍率で2倍以上であることが好ましい。面積倍率が2倍以上であれば、延伸による耐衝撃性もしくは反射率の向上効果を期待することができる。
【0070】
なお、本実施形態に係る反射フィルムは、B層として耐熱性の高い(ガラス転移温度(Tg)が高い)共重合ポリエステル系樹脂を用い、これを中間層とし、脂肪族ポリエステル系樹脂からなるA層を表裏層とすることによって、使用する共重合ポリエステル系樹脂が本来延伸できるとされる温度よりも低い温度で延伸することができる。
従って、反射フィルムの延伸温度は、表裏層の脂肪族ポリエステル系樹脂に適した温度領域にて延伸することにより、空隙率を十分に確保しつつ、中間層の耐熱性の高い共重合ポリエステル系樹脂も延伸することができる。
【0071】
(熱処理)
また、本実施形態に係る反射フィルムは、耐熱性、寸法安定性をさらに付与するため、延伸後に熱処理を行っても構わない。
熱処理の処理温度は、90℃〜160℃であることが好ましく、110℃〜140℃であるとより好ましい。熱処理に要する処理時間は、好ましくは1秒〜5分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を示し、本実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値及び評価は以下に示すようにして行った。ここで、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0073】
(測定及び評価方法)
(1)屈折率
使用した樹脂及び作製した反射フィルムの屈折率は、JIS K−7142のA法に基づいて測定した。
【0074】
(2)ガラス転移温度:損失弾性率のピーク温度(粘弾性測定)
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、振動周波数10Hz、昇温速度3℃/分、測定温度−120℃から200℃の範囲で測定した損失弾性率の温度依存曲線の傾きが零(一次微分が零)となる温度(損失弾性率のピーク温度)を求め、この温度をガラス転移温度とした。
なお、測定フィルムは構成する樹脂を0.2〜1.0mm程度の厚さ範囲で作成し、ほぼ無配向の方向を測定した。
【0075】
(3)平均粒径
(株)島津製作所製の型式「SS−100」の粉体比表面測定器(透過法)を用い、断面積2cm2、高さ1cmの試料筒に試料3gを充填して、500mm水柱で20ccの空気透過の時間より算出した。
【0076】
(4)酸化チタン中のバナジウム濃度(ppm)
酸化チタン0.6gに硝酸10mLを加えて、マイクロウェーブ式灰化装置内で80分間分解させて、得られた溶液について、ICP発光分光分析装置を用いて測定を行った。
【0077】
(5)反射率(%)
分光光度計(「U―4000」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、波長400nm、550及び700nmの光に対する反射率を測定した。その際、本反射フィルムの反射使用面側から光を照射した。なお、測定前に、アルミナ白板の反射率が100%になるように光度計を設定した。
【0078】
(6)熱収縮率
フィルムのMD及びTDのそれぞれに200mm幅の標線を入れ、サンプルとして切り出した。この切り出したサンプルフィルムを、温度80℃の熱風循環オーブンの中に入れて3時間保持した後、フィルムが収縮した収縮量を測定した。オーブンに入れる前のサンプルフィルムの原寸(200mm)に対する収縮量の比率を%値で表示し、これを熱収縮率(%)とした。
【0079】
(7)黄変防止性
サンシャインウェザーメーター試験器(水の間欠噴霧無し)内でフィルムに紫外線を1,000時間照射したフィルムを、上記(5)の測定方法に従って反射率(%)を求め、黄変の評価を行った。
【0080】
(実施例1)
重量平均分子量20万の乳酸系重合体(NW4032D:カーギルダウポリマー社製、L体:D体=98.5:1.5、屈折率n=1.46)70質量部に、平均粒径0.25μmの酸化チタン(タイペークPF740:石原産業社製、バナジウム含有量1ppm、アルミナ、シリカ、ジルコニアによる表面処理済)30質量部の割合で混合し、樹脂組成物Aを得た。
他方、ジカルボン酸成分がテレフタル酸100モル%、グリコール成分がエチレングリコール38モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール62モル%よりなる共重合ポリエステル(商品名PCTG5445:イーストマンケミカル社製、Tg=86℃)72質量部に、ポリカーボネート系樹脂(NOVAREX 7020A:三菱エンジニアリングプラスチック社製、Tg=160℃)8質量部と、前記酸化チタン20質量部の割合で混合し、樹脂組成物Bを得た。
次いで、樹脂組成物Bからなる層を中間層、樹脂組成物Aからなる層を最外層(表裏層)とし、押出量の質量比を中間層:最外層=1:1の割合になるように、中間層側は210℃〜240℃の範囲で、最外層側は190℃〜220℃の範囲で設定された押出機で溶融し、220℃設定の口金にて合流させ二種三層(A層/B層/A層、押出量の質量比=1:2:1)にて押出し、キャストロールで冷却し、キャストフィルム(未延伸状態)を得た。
次いで、キャストフィルムを67℃でMD2.8倍に延伸し、その後、70℃でTD3.2倍に延伸し、次いで、140℃で熱処理し、厚さ90μmの反射フィルムを得た。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同じ共重合ポリエステル90質量部に、実施例1と同じポリカーボネート系樹脂10質量部の割合で混合し、樹脂組成物Bを得た。
次いで、実施例1と同じ樹脂組成物Aからなる層を中間層及び最外層(表裏層)、樹脂組成物Bからなるを第二外層とし、押出量を中間層:第二外層:最外層=16:1:1の割合にて、中間層及び最外層は190℃〜220℃の範囲で、第二外層は210℃〜240℃の範囲で設定された押出機で溶融し、220℃設定の口金にて合流させ二種五層(A層/B層/A層/B層/A層、押出量比=1:1:8:1:1)にて押出し、キャストロールで冷却しキャストフィルム(未延伸状態)を得た。
次いで、キャストフィルムを62℃でMD2.8倍に延伸して、その後、70℃でTD3.2倍延伸し、次いで、140℃で熱処理し、厚さ90μmの反射フィルムを得た。
【0082】
(比較例1)
実施例1と同じ乳酸系重合体80質量部に、実施例1と同じ酸化チタン20質量部の割合で混合した混合物を、二軸押出機にて210℃で混練し、210℃でTダイより押し出し、単層のフィルムを得た。
得られたフィルムを、65℃でMD2.5倍、70℃でTD3.2倍に二軸延伸し、140℃で熱処理し、厚さ90μmの反射フィルムを得た。
【0083】
(比較例2)
実施例1と同じ共重合ポリエステル62質量部に、実施例1と同じポリカーボネート系樹脂8質量部と前記酸化チタン30質量部を混合した混合物を、210℃〜240℃の範囲で設定された押出機でフィルムを得た。このフィルムを90℃でMD2.5倍延伸し、93℃でTD3.2倍延伸し、140℃で熱処理し、厚さ90μmの単層のフィルムを製作した。
【0084】
【表1】

【0085】
表1に示すように、実施例1及び2の反射フィルムは、80℃/3時間での熱収縮が0.7%以下であり、寸法安定性が優れていることが分かった。また、黄変も無かった。
一方、比較例1の反射フィルムは、MD及びTDで0.7%を超えてしまい、熱収縮を起こすことが分かった。また、比較例2の反射フィルムは、反射率が95%未満であり、黄変もあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル系樹脂及び微粉状充填剤を含有してなるA層と、ガラス転移温度が80℃以上の熱可塑性樹脂を含有してなるB層とが積層してなる構成を備えた反射フィルム。
【請求項2】
A層中の脂肪族ポリエステル系樹脂の屈折率が、1.52未満であることを特徴とする請求項1記載の反射フィルム。
【請求項3】
A層中の脂肪族ポリエステル系樹脂が、乳酸系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射フィルム。
【請求項4】
微粉状充填剤は、A層全体の質量に対して10質量%〜60質量%の割合で含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項5】
微粉状充填剤は、酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項6】
微粉状充填剤は、バナジウム含量5ppm以下の酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項7】
微粉状充填剤は、酸化チタンの表面がアルミナ、シリカ、ジルコニアからなる群から選ばれた少なくとも一種の不活性無機酸化物で被覆されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の反射フィルム。
【請求項8】
B層は、微粉状充填剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項9】
B層中の熱可塑性樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる共重合ポリエステル系樹脂であって、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、該1,4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%以上含む共重合ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項10】
B層中の熱可塑性樹脂は、共重合ポリエステル系樹脂とポリカーボネート系樹脂とを質量比95:5〜50:50で含有してなり、該共重合ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなる共重合ポリエステル系樹脂であって、ジカルボン酸成分がテレフタル酸であり、ジオール成分がエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、該1,4−シクロヘキサンジメタノールを40モル%以上含む共重合ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項11】
A層及びB層を含む三層以上の積層構成からなり、表裏面にA層が配設されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項12】
面積倍率2倍以上に一軸方向或いは二軸方向に延伸されてなることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項13】
80℃で180分間加熱した後の熱収縮率が、縦方向(MD)及び横方向(TD)ともに−0.1%より大きく且つ0.7%未満であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項14】
550nmの波長域における反射率が95%以上であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の反射フィルム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の反射フィルムを備えた反射板。

【公開番号】特開2006−145914(P2006−145914A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336767(P2004−336767)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】