反射屈折投影対物系
【課題】反射屈折投影対物系、投影露光装置、及び半導体構成要素及び他の微細構造化構成要素を製造する方法を提供する。
【解決手段】物体平面の物体視野を像平面の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系は、物体視野を第1の実中間像上に結像する第1の部分対物系、第1の中間像を第2の実中間像上に結像する第2の部分対物系、及び第2の中間像を像視野上に結像する第3の部分対物系を含む。第2の部分対物系は、厳密に1つの凹ミラー及び少なくとも1つのレンズを有する反射屈折対物系である。第1の折り返しミラー及び第2の折り返しミラーが設けられる。第2の部分対物系のレンズの少なくとも1つの面は、0.2%よりも低い反射率を有する。代替的又は追加的に、第2の部分対物系のレンズの全ての面は、周縁光線同心からのずれが20°よりも大きいか又はそれに等しいように構成される。
【解決手段】物体平面の物体視野を像平面の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系は、物体視野を第1の実中間像上に結像する第1の部分対物系、第1の中間像を第2の実中間像上に結像する第2の部分対物系、及び第2の中間像を像視野上に結像する第3の部分対物系を含む。第2の部分対物系は、厳密に1つの凹ミラー及び少なくとも1つのレンズを有する反射屈折対物系である。第1の折り返しミラー及び第2の折り返しミラーが設けられる。第2の部分対物系のレンズの少なくとも1つの面は、0.2%よりも低い反射率を有する。代替的又は追加的に、第2の部分対物系のレンズの全ての面は、周縁光線同心からのずれが20°よりも大きいか又はそれに等しいように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するために3つの部分対物系を含む反射屈折投影対物系、そのような投影対物系を含むマイクロリソグラフィのための投影露光装置、及び同じくそのような投影露光装置を用いて半導体構成要素及び他の微細に構造化された構成要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体視野は、反射屈折投影対物系の第1の部分対物系を用いて第1の実中間像上に結像され、第1の中間像は、第2の部分対物系を用いて第2の実中間像上に結像され、第2の中間像は、第3の部分対物系を用いて像平面内の像視野上に最終的に結像される。この場合、第2の部分対物系は、厳密に1つの凹ミラーを有する反射屈折対物系である。更に、反射屈折投影対物系は、2つの折り返しミラーを有し、第1の折り返しミラーは、物体平面から到着する投影光を第2の部分対物系の凹ミラーの方向に偏向し、第2の折り返しミラーは、第2の部分対物系の凹ミラーから到着する投影光を像平面の方向に偏向する。
【0003】
この種の反射屈折投影対物系は、例えば、US2009/0034061及びUS2009/0092925から公知である。
【0004】
反射屈折投影対物系のレンズのレンズ面では、空気又は気体充填物とレンズ材料との間の屈折率の差に起因して、特定の割合の光が反射される。この反射は、反射防止コーティングによって低減することができるが、完全には防止することができない。レンズ面において反射される投影光が像平面内へと通ることができる場合には、このいわゆる迷光は、実際の像のコントラストを低下させるバックグラウンド照明を引き起こす。
【0005】
レンズ面上に反射防止コーティングを有する反射屈折投影対物系は、US2008/0297884A1から公知である。
【0006】
反射防止コーティングは、US5,963,365Aから公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2009/0034061
【特許文献2】US2009/0092925
【特許文献3】US2009/0092925A1
【特許文献4】US2009/0086179A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、そのような投影対物系内の迷光を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これには、この部類の投影対物系内のどの光路上を光が像平面内へと通ることができるかという問いを調査する段階が関わっている。光路とは、光が、物体平面から像平面への途中に通過する一連の光学面を意味するように理解される。この場合、投影光が反射屈折投影対物系の光学設計に従ってレンズ又はミラーの光学面を通過する際に辿ることを意図した投影光路と、迷光が像平面内へと通る際に辿る1つ又はそれよりも多くの迷光路との間で区別がつけられる。迷光路の場合には、迷光は、少なくとも1つのレンズ面で透過される代わりに反射され、従って、投影光路を離れる。迷光路を判断するために、各レンズ面は、透過面と反射面の両方であると見なされ、この場合、レンズ面の反射率は、光ビームが透過されるか又は反射される際の確率を左右する。別の観点からは、光ビームは、透過光ビームと反射光ビームに分割することができ、反射率は、2つのビームの強度を決める。投影対物系内のレンズ面において迷光がどれ程の頻度で反射されるかによっては、単反射、二重反射、又は更には高次の反射の間で区別がつけられる。反射の強度は、反射率の積に依存するので、一度の反射しか持たない単反射は、比較的高い迷光強度を引き起こす。従って、各単反射は、それを許容できるか否か、又は単反射に起因する迷光強度を低減するための対応する対策が必要であるか否かに関して調査する必要がある。
【0010】
第2の部分対物系は、厳密に1つの凹ミラーを有し、投影光は、第1の折り返しミラーによってこの凹ミラーに向けて偏向され、凹ミラーにおける反射の後に、第2の折り返しミラーによって像平面に向けて偏向されることにより、折り返しミラーと凹ミラーの間の第2の部分対物系のレンズは、2度の通過を受ける。従って、投影光は、2度の通過を受けるそのようなレンズを1度目は凹ミラーへの途中で、2度目には凹ミラーにおける反射の後に通過する。2度の通過を受けるそのようなレンズのレンズ面は、投影光が、これらのレンズ面のうちの1つにおいて透過される代わりに反射されることによって単反射を引き起こす可能性がある。この場合、迷光路は、投影光が凹ミラーに向う途中及び再度その戻る途中に実際に通過することになる光学面が飛ばされることによって生じる可能性がある。ある一定の状況では、迷光路は、像平面にまで達する可能性がある。迷光は、次に、投影光も反射レンズ面から始まって凹ミラーにおける反射の後に通過すると考えられる全ての光学面を通過する。従って、2度の通過を受ける第2の部分対物系のレンズは、像平面内で単反射に起因する迷光を発生させる傾向が特に強い。
【0011】
従って、本発明の一実施形態では、第2の部分対物系のレンズの少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長、及び0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。反射防止コーティングは、光がレンズに入射する時の屈折率の急激な変化に起因する反射損失が低下するように設計されたコーティングを意味するように理解される。この場合、ここで設けられる反射防止コーティングは、第1に作動波長によって指定され、第2に入射角度範囲によって指定される。作動波長は、投影対物系がその後作動される投影光の波長を意味するように理解される。一般的に、この作動波長は、150nmと250nmの間のDUV又はVUV波長範囲の波長、すなわち、例えば、248nm、193nm、又は157nmの波長である。入射角は、光線がレンズ面上に入射する点における表面法線に対する光線の角度を意味するように理解される。一般的に、多くの光線が、異なる入射角でレンズ面のある一定の点上に入射し、従って、反射防止コーティングは、1つの入射角だけに対してではなく、入射角度範囲全体に対して最適化する必要がある。この場合、レンズ面における反射を完全に防止する反射防止コーティングを製造することはできず、この反射を低減することしかできない。この場合、反射防止コーティングの複雑度は、所定の入射角度範囲における残留反射の低減度と共に増大する。一般的に、2度通過を受けるレンズを持たない投影対物系では二重反射及び多重反射が優勢であるから、二重反射又は多重反射の得られる迷光効果を低減するための反射防止コーティングを設計することで十分である。上述の入射角度範囲で、例えば、0.2%よりも高い反射防止コーティングの反射率は、二重反射及び多重反射を満足できるように低減するのに十分である。反射率の更なる低下は、反射防止コーティングを不要に複雑にすることになる。それとは対照的に、像視野内で終端を成す単反射迷光路が既に発生している場合には、上述の入射角度範囲で0.2%よりも高い反射防止コーティングの反射率は、許容することができない迷光をもたらす可能性がある。しかし、正確には、2度の通過を受ける第2の部分対物系のレンズの場合に、この危険性が出現する。従って、これらのレンズ面は、これらのレンズに対して妥当な0°から30°の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。
【0012】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長、及び0°と30°の間の入射角に対して0.1%よりも低い反射率を有する。
【0013】
0°から20°の範囲の小さい入射角を有する光線、すなわち、光軸に近い光線では、レンズ面における反射の後に依然として像平面へと通過し、バックグラウンド照明に寄与する確率が特に高いので、本発明の更に別の実施形態では、2度の通過を受ける第2の部分対物系のレンズのレンズ面は、0°から20°の入射角度範囲、及び150nmと250nmの間の波長に対して0.1%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。
【0014】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長、及び0°と20°の間の入射角度範囲に対して0.05%よりも低い反射率を有する。
【0015】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長、及び0°と10°の間の入射角度範囲に対して0.02%よりも低い反射率を有する。
【0016】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長において、0°と30°の間の入射角度範囲に対しては0.2%よりも低い反射率を有し、同時に0°と20°の間の入射角度範囲に対しては0.1%よりも低い反射率を有する。
【0017】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長において、0°と30°の間の入射角度範囲に対しては0.2%よりも低い反射率を有し、0°と20°の間の入射角度範囲に対しては0.1%よりも低い反射率を有し、同時に0°と10°の間の入射角度範囲に対しては0.02%よりも低い反射率を有する。
【0018】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長において、0°と30°の間の入射角度範囲に対しては0.1%よりも低い反射率を有し、同時に0°と10°の間の入射角度範囲に対しては0.02%よりも低い反射率を有する。
【0019】
反射防止コーティングの複雑さは、特に、反射防止コーティングを構成するのに用いられる層の数に現れる。本発明の一実施形態では、反射防止コーティングは、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された6つの層を含む。この場合、材料が、作動波長に対して低屈折率を有する材料の屈折率よりも高い屈折率を有する時に、この材料は、高屈折率を有するとして表している。
【0020】
本発明の更に別の実施形態は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された7つの層を含む。
【0021】
高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された少なくとも6つの層の使用により、0°から30°の入射角度範囲にわたって0.2%よりも低い反射率を保証することができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、低屈折率を有する使用材料は、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、クリオライト、チオライト、及びこれらの組合せから成る群から選択された誘電体である。
【0023】
本発明の一実施形態では、高屈折率を有する使用材料は、フッ化ネオジム、フッ化ランタン、フッ化ガドリニウム、フッ化ジスプロシウム、酸化アルミニウム、フッ化鉛、フッ化イットリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択された誘電体である。
【0024】
第2の部分対物系の面における反射に起因する単反射の発生に対しては、特に、20°よりも小さい周縁光線同心(marginal ray concentricity)からのずれを有する面を考慮すべきである。周縁光線同心は、周縁光線が、レンズ面上でそれ自体に重なるように反射して戻される状態を意味するように理解される。すなわち、周縁光線は、このレンズ面において0°の入射角を有する。この場合、用いられる周縁光線は、物体平面内で光軸から出射し、投影対物系の開口絞りを際どく通過し、すなわち、像平面内で最大開口数に対応する入射角を有する仮想光線である。この光線は、この種類の投影対物系が軸外物体視野を有し、すなわち、投影対物系の光軸が物体平面と物体視野内で交差しないので、仮想周縁光線である。光線追跡法では、ミラー又はレンズの物理的境界、又は他の光学要素による口径食は重要ではなく、周縁光線は投影光路に沿って追跡されるので、この仮想周縁光線は、仮想光線であるにも関わらず、数学的に追跡することができる。この場合、レンズ面の周縁光線同心と単反射の発生の間の関係はどのようなものであるかを考える。理想的な結像の場合には、物体平面から出射する周縁光線は、以降の像平面内、すなわち、この種類の投影対物系の場合は第1の中間像平面内、第2の中間像平面内、及び像平面内で光軸と交差する。次に、第2の部分対物系内のレンズ面において周縁光線同心が存在する場合には、周縁光線は、それ自体に重なるように反射して戻され、従って、周縁光線が出射した位置と同じ位置で光軸と再度交差する。すなわち、第1の中間像平面と一致するいわゆる迷光中間像平面が発生する。第1の中間像は軸外中間像であるから、第1の中間像と迷光中間像とは、光軸の反対側に位置する。従って、迷光中間像は、凹ミラーから像平面への投影光路内に位置し、それによって迷光は、投影光路を辿るように像平面内へと通ることができる。更に、第2の投影対物系が1:1の対物系の場合には、第1の中間像平面と第2の中間像平面とは一致し、従って、同じく迷光中間像平面も一致する。その結果、迷光中間像は、第2の中間像の位置に発生し、最終的に第3の部分対物系によって第2の中間像と同様に像平面上に結像される。単反射に起因して、像平面に直接に入る連続迷光路が発生する。従って、周縁光線同心が存在するか又は周縁光線同心からのずれが20°よりも小さいレンズ面は、単反射の発生に対して特に重要であり、従って、改善された反射防止コーティングを設けなければならない。
【0025】
単反射を受け易い面の改善された反射防止コーティングに加えて、投影対物系の光学設計を案出する際に単反射の低減を事前に考慮することができる。従って、本発明の一実施形態では、第2の部分対物系のレンズの全ての面は、これらの面の周縁光線同心からのずれが20°よりも大きく又はそれに等しいように構成される。その結果、迷光中間像は、第2の中間像の位置で発生せず、従って、第2の中間像とは異なり、第3の部分対物系によって像平面に結像されない。迷光と投影光とは、特に、第2の折り返しミラーの領域内では異なるビーム範囲を有する。第2の折り返しミラーの範囲は、投影光ビームの範囲に適応されるので、迷光ビームは、第2の折り返しミラーの物理的境界によって口径食を受け、その結果、像平面に到達しないか、又は大幅に低減された強度しか伴わずに像平面に到達する。
【0026】
像視野湾曲の補正及び色収差補正の目的で、第2の部分対物系は、複数のレンズを有することができる。2度の通過を受けるこれらのレンズは、単反射を引き起こす面を有する可能性がある。本発明の一実施形態では、第2の部分対物系は、厳密に1つのレンズを有する。それによって単反射が発生する可能性がある面数が2面にまで減少する。
【0027】
しかし、投影対物系の結像品質が、第2の部分対物系内のレンズ数の減少に起因して劣化しないように、本発明の一実施形態では、このレンズは、両非球面レンズとして実施される。言い換えれば、このレンズは、前面と後面の両方の上に形成された非球面を有する。それによって必要な結像品質を保証するための更なる自由度が得られる。
【0028】
第2の部分対物系のレンズのレンズ面の単反射を回避することに向けたターゲット構成により、改善された反射防止コーティングによる単反射に対して重要なレンズ面の被覆により、又はこれらの2つの対策の組合せの適用によって達成することができるものは、迷光に起因する像平面内のバックグラウンド照明を全体的に大きく低減することである。第2の部分対物系のレンズ面の迷光に対する影響、及び提案する対策による迷光の低減を定量化するために、迷光は、例えば、均一に照明される物体視野に配置され、像平面に結像される非発光物体によって測定される。この場合、物体は、例えば、四角形であり、異なる辺の長さを有することができる。物体は、例えば、投影光を吸収する小箱である。迷光が存在しない場合には、物体は像平面に鮮明に結像されることになり、物体の像内の強度は、最大周囲照明値の0%である。しかし、迷光が存在する場合には、物体の像は真っ暗ではない。迷光強度分布は、物体の範囲を考慮して物体像の中心における強度から判断することができる。
【0029】
物体像の中心における迷光強度は、物体の照明及び迷光の発生源に依存して変化する。物体の照明は、特に、瞳フィルファクタσによって特徴付けることができる。瞳フィルファクタσ=0.2の場合には、投影対物系の入射瞳は、最大瞳半径の20%の半径までしか照明されない。その結果、物体は、光軸に対して比較的小さい角度を有する光線によってのみ照明される。それとは対照的に、瞳フィルファクタσ=1.0の場合には、投影対物系の入射瞳は完全に照明され、それによって物体は、物体平面内で可能な最大値を提供する光線によって照明される。光軸に対して大きい角度を有する光線では、レンズ面における反射の後に像平面へと直接に通過せずに、例えば、レンズマウントにおいて口径食を受ける高い確率が存在するので、物体が、小さい瞳フィルファクタを用いて照明される場合には、単反射に起因する迷光の寄与は、大きい瞳フィルファクタを用いた照明の場合よりも大きい。従って、迷光測定は、例えば、瞳フィルファクタσ=0.2に対して実施される。投影露光装置の照明系がこのフィルファクタを提供しない場合には、迷光測定においてσ=0.2とσ=0.3の間の瞳フィルファクタが用いられる。
【0030】
第2の部分対物系のレンズ面によって引き起こされる単反射に加えて、像平面における像視野内の迷光には、更に別の原因も存在する。レンズ面における二重反射に起因する二重反射は、単反射と比較すると無視することができる強度しか持たない。面散乱又は体積散乱に起因する迷光は、十分に大きく、例えば、1.0mmの物体の辺の長さを選択することによって単反射に起因する迷光から区別することができる。この場合、物体像の中心における面散乱又は体積散乱に起因する迷光の強度は、単反射に起因する迷光の強度と比較して少なくとも70%低い。辺の長さが更に延長された場合には、面散乱又は体積散乱に起因する迷光の、単反射に起因する迷光からの分離は良好になるが、この場合、単反射に起因する迷光に対する測定信号も弱まる。1.0mmの辺の長さを有する物体を利用することができない場合には、測定は、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さに対して実施することができる。提案する第2の部分対物系のレンズ面上の単反射を低減するための対策の適用時には、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の物体を用い、瞳フィルファクタがσ=0.2とσ=0.3の間にある場合の迷光測定において、物体像の中心における迷光強度は、1.1%よりも低い。
【0031】
一実施形態では、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の物体を用い、瞳フィルファクタがσ=0.2とσ=0.3の間にある場合の迷光測定において、物体像の中心における迷光強度は0.9%よりも低い。
【0032】
更に別の実施形態では、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の物体を用い、瞳フィルファクタがσ=0.2とσ=0.3との間である場合の迷光測定において、物体像の中心における迷光強度は0.5%よりも低い。
【0033】
第2の部分対物系のレンズ面の迷光への寄与は、単反射の形成が瞳フィルファクタに大幅に依存するので、像平面における像視野内の迷光を2つの異なる瞳フィルファクタに対して測定し、迷光の変化を判断することによって判断することができる。それとは対照的に、例えば、面散乱又は体積散乱のような像平面内の迷光の他の原因は、瞳フィルファクタへの低い依存性をもたらし、単反射と比較するとほぼ照明に依存しないバックグラウンド照明を引き起こす。従って、迷光測定は、最初に瞳フィルファクタσ=1.0に実施され、次に、瞳フィルファクタσ=0.2に実施される。投影露光装置の照明系がこれらのフィルファクタを提供しない場合には、迷光測定においてそれぞれσ=0.8とσ=1.0の間、及びσ=0.2とσ=0.3の間の瞳フィルファクタが用いられる。提案する単反射を低減するための対策が第2の部分対物系のレンズ面に適用された場合には、像視野内の像点におけるσ=0.2とσ=0.3の間の瞳フィルファクタに対する迷光強度と、σ=0.8とσ=1.0の間の瞳フィルファクタに対する迷光強度との間の最大差は、0.3%よりも小さい。
【0034】
本発明の一実施形態では、第2の部分対物系は、0.8と1.25の間の結像比の絶対値を有する。この場合、第2の部分対物系は、第1の中間像を実質的に1:1で第2の中間像上に結像する。
【0035】
本発明の一実施形態では、第2の部分対物系の凹ミラーは、瞳平面の領域に配置され、その位置は、近軸主光線と投影対物系の光軸との交差点からもたらされる。この場合、凹ミラーは、像視野から出射する全ての主光線の凹ミラーにおける最大高さが、凹ミラーの光学的使用領域の直径の20%よりも低い時に瞳平面領域に配置される。
【0036】
第2の部分対物系が、一方で0.8と1.25の間の結像比の絶対値を有し、他方で瞳平面領域内に凹ミラーを有する場合には、第2の部分対物系において、凹ミラーに関して実質的に対称な構成が生じる。更に、第2の部分対物系におけるレンズ面が、周縁光線同心からのいかなるずれも有さないか又は僅かなずれしか有さない場合には、このレンズ面において反射された迷光は、少なくとも近似的に第2の中間像と一致する迷光中間像を発生させ、従って、第3の部分対物系によって像平面に結像される。第2の部分対物系のこの構成は、像視野湾曲及び色収差の補正に対して確かに好ましいが、許容することができない単反射を引き起こす可能性がある。この場合、この単反射は、レンズ面における周縁光線同心からの目標とされるずれ、及び改善された反射防止コーティングを用いたレンズ面のコーティングによって低減することができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、第2の中間像は、第2の折り返しミラーの領域に配置される。この場合、第2の中間像は、第2の折り返しミラーと同じ光軸との交差点を有して光軸に対して垂直に配置された仮想平面において、光軸から、光軸から最大の距離を有する物体視野内の物体点から出射する主光線への半径方向距離の半分が周縁光線の半径方向距離よりも大きい時に、第2の折り返しミラーの領域に配置される。この場合、周縁光線同心を判断するのに既に定められた周縁光線が用いられる。この場合、迷光中間像が第2の中間像上に位置しなくなった途端に、迷光ビームは、第2の折り返しミラーの物理的境界によって口径食を受け、この単反射の迷光強度は低減する。
【0038】
本発明の一実施形態では、第2の部分対物系内の全てのレンズは、第1の中間像又は第2の中間像に対してよりも、凹ミラーに対してより近い位置に配置される。第2の部分対物系のレンズは光軸に沿って延びているので、レンズ距離を求めるために、2つのレンズ頂点の間の中点が求められ、距離は、この中点から測定される。この場合、2つの中間像の位置は、中間像の近軸位置からもたらされる。第2の部分対物系のレンズが、中間像に対してよりも凹ミラーに対して近い位置に配置されることにより、これらのレンズは、第2の折り返しミラーからも大きく分離する。一方、迷光中間像が第2の中間像と完全に一致しない場合には、第2の折り返しミラーに対するレンズ面の距離が大きくなる程、第2の折り返しミラーの物理的障壁に起因する第2の折り返しミラーの口径食効果も大きくなる。
【0039】
本発明の一実施形態では、反射屈折投影対物系は、投影対物系以外に物体平面内の物体視野を照明するための照明系を更に有するマイクロリソグラフィのための投影露光装置の一部である。
【0040】
投影露光装置を用いて半導体構成要素及び他の微細構造化構成要素を製造するために、所定のパターンを有するレチクルが反射屈折投影対物系の物体平面に、かつ感光層を有するウェーハが反射屈折投影対物系の像平面に設けられ、このレチクルが照明系を用いて照明され、最終的にレチクルの照明領域が、反射屈折投影対物系を用いてウェーハ上に結像される。
【0041】
本発明の詳細を図に示す例示的な実施形態に基づいて以下により完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影光路と共に示す図である。
【図2】図1による投影対物系のレンズ断面を迷光路と共に示す図である。
【図3】反射防止コーティングの概略図である。
【図4】反射防止コーティングの概略図である。
【図5】反射防止コーティングの概略図である。
【図6】図3から図5による反射防止コーティングの反射率値の入射角の関数としてのグラフである。
【図7】瞳フィルファクタσ=0.2に対する迷光強度分布を等強度線図として示す図である。
【図8】図1による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの0.2%の反射率を有する反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィール図である。
【図9】図1による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの図4による反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィール図である。
【図10】迷光測定技術を示すための概略図である。
【図11】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影ビーム光路と共に示す図である。
【図12】図11による投影対物系のレンズ断面を迷光路と共に示す図である。
【図13】図11による投影対物系のレンズ断面を迷光路と共に示す図である。
【図14】図11による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの0.2%の反射率を有する反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィールの図である。
【図15】図11による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの図4による反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィールの図である。
【図16】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影ビーム光路と共に示す図である。
【図17】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影ビーム光路と共に示す図である。
【図18】マイクロリソグラフィ投影露光装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、反射屈折投影対物系1のレンズ断面を示している。投影対物系1の光学設計は、2009年4月9日に公開されたOmuraという名義の特許出願US2009/0092925A1から引用したものであり、本出願内の図4に対応する。この設計の光学データは、US2009/0092925A1の表に要約されている。従って、投影対物系1の光学設計のより詳細説明に対しては、US2009/0092925A1を参照されたい。投影対物系1は、物体平面5内の物体視野3を像平面9内の像視野7上に結像する。投影対物系1は、物体視野3を第1の実中間像13上に結像する第1の部分対物系11、第1の中間像13を第2の実中間像17上に結像する第2の部分対物系15、及び第2の中間像17を像視野7上に結像する第3の部分対物系19を含む。第2の部分対物系15は、凹ミラー21、並びに2つのレンズL21及びL22を有する反射屈折対物系として実施される。第1の中間像13の領域内には、物体平面5から到着する投影光31を凹ミラー21の方向に偏向する折り返しミラー23が配置される。第2の中間像17の領域内には、凹ミラー21から到着する投影光を像平面9の方向に偏向する折り返しミラー25が配置される。
【0044】
迷光が、単反射、二重反射、又は多重反射として像平面9へと通過し、像平面9でバックグラウンド照明を引き起こす際に通る迷光路を求めるために、投影対物系1に対して迷光解析を実施した。図2は、投影対物系1において、投影光31が、以下でレンズL21の後面と呼ぶレンズL21の凹ミラー21に対面する面において反射されることによって発生するそのような迷光路33を示している。例示している迷光路33では、投影光路31からずれる迷光33は、レンズL22及び凹ミラー21を通過しないが、投影光31が、凹ミラー21における反射の後にレンズL22を通過し、その後、再度レンズL21内に入射した場合に同じく通過することになるそれ以降の全ての光学面を通過する。迷光路33では、迷光中間像35が折り返しミラー25の領域内で発生し、従って、同時に事実上第2の中間像17の位置においても発生する。その結果、事実上全ての迷光が、第2の折り返しミラー25により、折り返しミラー25の物理的境界によって口径食を受けることなく反射され、投影光31と同様に、像平面9に至るまで第3の部分対物系19を通過する。開口絞り29は、開口絞り平面の領域内にある空間的に境界が定められた絞りを用いて、投影光31が大きく口径食を受けることなしに迷光をフィルタリング除去することも可能ではないように、迷光によって事実上完全に照明される。
【0045】
上述の結果、レンズL21の後面は、非常に高い迷光強度を有する単反射を引き起こす。この場合、迷光強度は、投影光の強度にレンズL21の後面の反射率を乗じたものにほぼ対応する。この強い単反射は、レンズL21の後面が0.6°の周縁光線同心度を有することに起因して発生する。従って、事実上周縁光線同心がもたらされる。第2の部分対物系15が、1.03という結像比の絶対値を有することと共に、凹ミラー21が瞳平面の領域に配置されることにより、事実上第2の中間像17の位置で迷光中間像35が発生し、従って、迷光33が、第2の折り返しミラー25を通じてほぼ完全に伝達される。
【0046】
15.9°の値を有するレンズL21の前面も同様に小さい周縁光線同心度を有し、その結果、この面も像平面9内の迷光への寄与を生じる。凹ミラー21に対面するレンズL22の後面の周縁光線同心度は24.0°、レンズL22の前面の周縁光線同心度は22.9°であり、その結果、これらの2つの面も、同様に像平面9内の迷光に寄与するが、これらの寄与のマグニチュードは、レンズ21の後面のものよりも遥かに小さい。非常に一般的に、第2の部分対物系15のレンズL21及びL22は、2度の通過を受けるレンズであり、これらのレンズを通じて投影光31が、凹ミラー21に向う光路と凹ミラー21から離れる光路の両方を通過するので、これらの両方のレンズが迷光を受け易いと捉えるべきである。2度の通過を受ける上述のレンズL21及びL22のレンズ面において反射された迷光光線が第2の折り返しミラー25を通過すると直ぐに、そのような迷光光線は、像平面9に到達し、外来光に寄与する可能性がある。これは、この種類の投影対物系の基本的な問題である。
【0047】
単反射の場合には、像平面9内の迷光の強度は、迷光が反射されるレンズ面の反射率に線形に依存する。従って、投影対物系1内で2度の通過を受けるレンズL21及びL22のレンズ面は、193.3nmの投影光波長、及び0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。図3から図5は、そのような反射防止コーティングの様々な例示的な実施形態を示している。
【0048】
図3は、水晶(SiO2)で構成されたレンズ基板339から続く反射防止コーティング337の層シーケンスを概略図で示している。反射防止コーティング337は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された6つの層を含む。低屈折率を有する材料としては、フッ化マグネシウム(MgF2)が用いられる。高屈折率を有する材料としては、フッ化ランタン(LaF3)が用いられる。個々の層の幾何学的厚み、材料、及び屈折率、並びに図3に用いている参照符号も表1に示す。図3では、個々の層の厚みを互いに対して正しく示している。
【0049】
(表1)
【0050】
図4は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された6つの層を順に含む反射防止コーティング437の実施形態を示している。低屈折率を有する材料としては、MgF2が用いられ、高屈折率を有する材料としては、LaF3が用いられる。
個々の層の厚み、材料、及び屈折率、並びに図4に用いている参照符号も表2にまとめられている。
【0051】
(表2)
【0052】
図5は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された7つの層を含む反射防止コーティング537の例示的な実施形態を示している。低屈折率を有する材料としては、MgF2が用いられ、高屈折率を有する材料としては、LaF3が用いられる。個々の層の厚み、材料、及び屈折率、並びに図5に用いている参照符号も表3にまとめられている。
【0053】
(表3)
【0054】
図6は、図3から図5に例示している反射防止コーティング337、437、及び537に対して、反射率値を単位[°]の入射角の関数として単位[%]で示している。一点鎖線の反射率曲線655は、表1による層構成を有する反射防止コーティング337に関する結果であり、実線の反射率曲線657は、表2による層構成を有する反射防止コーティング437に関する結果であり、破線の反射率曲線659は、表3による層構成を有する反射防止コーティング537に関する結果である。全ての3つの反射防止コーティングの場合に、0°から30°の入射角度範囲に対する反射率曲線655、657、及び659は、0.2%の反射率値を下回り、反射率曲線657及び659は更に、0.1%の反射率値よりも小さい。20°の入射角までは、反射率曲線655、657、及び659は、0.1%の反射率値を下回り、更に、0.05%の反射率値よりも小さい。3つの反射防止コーティングのすべての場合に、0°から10°の入射角度範囲に対する反射率曲線655、657及び659は、0.02%の反射率値さえも下回る。
【0055】
投影対物系の所定の光学設計に適する光線追跡プログラムを用いることにより、反射防止コーティングを考慮しながら像平面内の迷光の強度分布を計算することができる。図7は、投影対物系1に対して、像平面9内の迷光の強度分布761を等強度線図で示している。等強度線は、0.1%の間隔で示したものである。この場合、迷光強度は、像視野内の均一な周囲輝度に関連する。シミュレーションでは、物体視野3を瞳フィルファクタσ=0.2を用いて均一に照明した。この場合、第2の部分対物系15内で2度の通過を受けるレンズL21及びL22のレンズ面における単反射のみを迷光として考慮した。この場合、全での入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングでレンズ面を被覆した。二重反射又は高次の反射を低減するのに用いられるもののような反射防止コーティングは、上述の反射率値を有する。二重反射は、2回の反射に起因して僅か0.2%・0.2%=0.0004%の強度しか持たないので、そのような反射を回避するには、0.2%の反射率で十分である。しかし、等強度線図によると、そのような反射防止コーティングが、憂慮される単反射の形成を実質的に抑制しないことが明らかになる。単反射は、破線を用いて示している像視野763を完全に照明しており、像視野にわたって少なくとも0.4%のバックグラウンド照明を引き起こし、広範囲にわたる領域内で0.8%さえも超えるバックグラウンド照明を引き起こしている。像視野7の範囲と同等である像平面9内の迷光の範囲は、図2でレンズL21の後面における単反射に対して明らかになったように、物体視野3の迷光像が、ほぼ像平面9内に位置することによって引き起こされる。
【0056】
図8は、像視野7の中心を通って像視野7の縦方向に延びる線765に沿って強度分布761を通る断面を強度分布867として示している。最大迷光強度は像中心において0.93%であり、x=±13mmにある像縁部において0.41%である。瞳フィルファクタσ=0.2の場合だけでなく、瞳フィルファクタσ=1.0の場合、すなわち、投影対物系の入射瞳の完全な照明の場合にも迷光シミュレーションを実施した。図8には、瞳フィルファクタσ=1.0に対する迷光強度分布を線765に沿って通る断面を強度分布869として破線で示している。投影対物系の入射瞳の完全な照明の場合には、最大迷光強度は、0.40%である。像視野7内では、迷光強度は事実上一定の値を有する。迷光強度が瞳フィルファクタに強く依存することは明らかである。従って、瞳フィルファクタσ=1.0に対する像視野7内の最大迷光強度は、瞳フィルファクタσ=0.2に対するものよりも0.523%だけ低い。これは、単反射によって引き起こされる迷光の特性である。面散乱又は体積散乱に起因する迷光も、同様に像視野全体におけるバックグラウンド照明を引き起こすが、その強度分布は、単反射と比較すると、像平面における瞳フィルファクタに事実上依存しない。測定された迷光が、この事例と同様に瞳フィルファクタに強い依存性を有する場合には、この依存性は、単反射の形成を示している。
【0057】
図9は、第2の部分対物系のレンズ面が、表2に示している層構成を有する反射防止コーティング437で覆われた場合に発生する瞳フィルファクタσ=0.2に対する強度分布971、及び瞳フィルファクタσ=1.0に対する強度分布973を迷光強度分布を通る断面として示している図である。改善された反射防止コーティングを用いると、像視野7内の最大迷光強度は、瞳フィルファクタσ=0.2では、0.93%から0.02%へと低下し、瞳フィルファクタσ=1.0では、0.40%から0.01%へと低下する。図9では、強度軸の目盛りを図8の目盛りと比較して10倍だけ細かくしていることを考慮する必要がある。改善された反射防止コーティングでは、2つの瞳フィルファクタの間の迷光の最大変化は、僅かに0.01%であり、従って、無視できる程に小さい。従って、改善された反射防止コーティング437を用いて単反射を実質的に抑制することができる。従って、瞳フィルファクタσ=0.2に対して一度、更に、瞳フィルファクタσ=1.0に対して一度、像視野7内の迷光強度を測定することにより、第2の部分対物系15内で2度の通過を受けるレンズの単反射の影響は、他の原因を有して選択された瞳フィルファクタに依存しない迷光への更に別の寄与とは独立して求めることができる。
【0058】
像平面内の迷光を測定するために、特に、US2009/0086179A1に説明されているいわゆるKirk試験が用いられる。Kirk試験では、所定の辺の長さ、例えば、1.0mmを有し、自体では発光しない四角形の物体が、物体視野3に配置される。用いられる物体は、例えば、照明光を完全に吸収する、従って、「黒色」と見なすことができる小箱である。それとは対照的に、小箱の周囲は、照明光によって均一に照明される。小箱は、投影対物系1によって像平面9内に結像される。理想的な結像の場合に迷光を無視すると、像平面9内に四角形の非照明領域が発生することになる。図10は、小箱の像の領域内の強度分布を通る断面を概略図に示す。理想的な結像の場合に迷光を無視すると、破線で示している強度曲線1075が発生し、この曲線1075は、小箱の像の領域内で100%から0%へと突然降下する。しかし、迷光は、小箱の像の中心1081において暗くなく、強度が検出される可能性がある効果を有する。実線で示している強度曲線1077は、第2の部分対物系15のレンズ面における単反射に対処した場合に発生する強度分布を示している。面散乱又は体積散乱に起因する迷光は、一点鎖線で示している強度分布1079を引き起こし、小箱の十分な辺の長さが与えられた場合には、小箱の像の中心に大きく低い迷光強度を引き起こす。小箱の辺の長さが1.0mmであることにより、迷光の測定中に第2の部分対物系15のレンズ面の寄与を他の迷光寄与から区別することができる。この場合、小箱の像の中心1081における強度値は、小箱の外側に配置された迷光源から生じる累積迷光強度に対応する。
【0059】
瞳フィルファクタσ=0.2に対して及び1.0mmの辺の長さを有する小箱に対して、部分対物系15の全てのレンズ面が、全ての入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングで覆われた場合には、小箱の像の中心では、1.1%の強度が発生する。それとは対照的に、レンズL21及びL22のレンズ面が、表2に示している反射防止コーティング437で覆われた場合には、小箱の像の中心における迷光強度は、0.3%へと低下する。この場合、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の小箱を用いたKirk試験による迷光の測定は、単反射に起因する迷光比率を直接判断することを可能にする。
【0060】
図11は、反射屈折投影対物系1101のレンズ断面を示している。図11において図1による要素に対応する要素は、図1におけるものと同じ参照符号を1100という数値だけ増大した参照符号を有し、これらの要素の説明では、図1に関する説明を参照する。
【0061】
投影対物系1101に関する光学データは、表4にまとめられている。非球面は、次のサジッタ公式によって記述することができる。
【0062】
【数1】
【0063】
この場合、pは、光軸に対して垂直なある平面から半径方向距離が[mm]においてhである場合の非球面頂点までの非球面の軸線方向距離を[mm]で表し、Rは、頂点半径を[mm]で表し、Kは、円錐定数を表し、Ckは、k次の個々の非球面定数を[1/mm2k+2]で表している。
【0064】
投影対物系1101は、像平面1109において開口数NA=1.2を有する。作動波長は、193.306nmである。像視野1107は、26.0mm×5.5mmであり、光軸1127からの1.98mmの最小距離を有する。投影対物系1101は、0.25という結像比の絶対値を有する。この場合、作動中に液浸液として水が最後のレンズ面と露光される物体との間に置かれる液浸投影対物系が含まれる。
【0065】
第1の部分対物系1111は、面1から20によって形成され、第2の部分対物系1115は、面22から26によって形成され、第3の部分対物系1119は、面28から52によって形成される。折り返しミラー1123及び1125は、平面ミラーとして結像に対していかなる影響も持たず、投影光1131を偏向させるだけであるから、面番号21及び27を有する折り返しミラー1123及び1125は、3つの部分対物系1111、1115、及び1119のいずれにも割り当てられない。第1の部分対物系1111は、1.05という結像比の絶対値を有し、第2の部分対物系1115は、1.01という結像比の絶対値を有し、第3の部分対物系1119は、0.23という結像比の絶対値を有する。
【0066】
物体視野1103から出射し、開口絞り1129の位置で光軸1127と交差する全ての主光線は、凹ミラー1121において、凹ミラー1121の光学的使用領域の直径の9.1%よりも低い高さを有する。従って、凹ミラー1121は、投影対物系1101の瞳平面の領域に配置される。
【0067】
物体点(x=52.00mm,y=29.93mm)から出射する主光線は、第2の折り返しミラー1125と同じ位置で光軸1127と交差して光軸1127に対して垂直な仮想平面内で光軸からの70mmの半径方向距離を有する。それとは対照的に、仮想周縁光線は、この平面内でほぼ1.5mmの半径方向距離を有する。この場合、物体点(x=52.00mm,y=29.93mm)は、物体視野1103内で光軸1127からの最大距離を有する。従って、第2の中間像1117は、第2の折り返しミラー1125の領域に配置される。
【0068】
表4の一連のレンズ面は、投影光路に対応する。投影光は、図示の順序で全ての面を通過する。第2の部分対物系1115のレンズL1111は、2度の通過を受け、従って、表4では、面番号22及び23、並びに26及び25で2度示している。この場合、レンズL1111は、第2の部分対物系1115内で唯一のレンズである。レンズL1111と凹ミラー1121の間の距離は、40.2mmである。第1の近軸中間像は、凹ミラー1121から321.12mmの距離を有し、第2の近軸中間像は、凹ミラー1121から316.25mmの距離を有する。従って、レンズL1111は、第1の中間像1113又は第2の中間像1117に対してよりも凹ミラー1121に対して近い位置に配置される。
【0069】
原理的には、レンズL1111は、第2の部分対物系内で2度の通過を受けるレンズとしてのその配列に起因して、像平面1109内での単反射の生成に関して重要になる。しかし、レンズL1111の凹ミラー1121に対面するレンズ面、すなわち、レンズL1111の後面は、30.0°の周縁光線同心度を有し、前面は、30.8°の周縁光線同心度を有する。すなわち、両方の面は、周縁光線同心から大きくずれる。同時に、第2の折り返しミラー1125の範囲は、投影光ビーム1131の範囲に適応される。この場合、第2の折り返しミラー1125上の投影光ビームの範囲は、141.1mm×65.4mmであるのに対して、第2の折り返しミラー1125は、145mm×70mmの範囲を有する。レンズL1111の2つのレンズ面の周縁光線同心からのずれ、及び投影光ビームの範囲に適応された第2の折り返しミラー1125に起因して、単反射の形成は大幅に抑制される。
【0070】
図12は、図11による例示的な実施形態において投影光1131がレンズL1111の後面において反射された場合に形成される迷光路1233を示している。迷光路1233から、迷光中間像1235は、第2の折り返しミラー1125上には形成されず、折り返しミラー1125から分離して、開口絞り1129を有する開口絞り平面の近くに形成されることが明らかになる。従って、第2の折り返しミラー1125における迷光ビームは、第2の折り返しミラー1125よりも非常に大きい範囲を有し、大幅に口径食を受ける。その結果、物体平面1105内の迷光ビームは、最大可能開口と比較して小さい開口しか持たない。更に、この迷光は、光軸の周囲の絞りによって遮蔽することができるように、開口絞り1129の領域内に強く集束される。
【0071】
図13は、図11による例示的な実施形態において投影光1131がレンズL1111の前面において反射された場合に形成される迷光路1333を示している。この場合、レンズL1111の直後に、従って、同じく折り返しミラー1125から分離して迷光中間像1335が形成され、従って、第2の折り返しミラー1125における迷光ビームは、第2の折り返しミラー1125よりも非常に大きい範囲を有し、大幅に口径食を受ける。
【0072】
レンズL1111の前面及び後面が、周縁光線同心から20°よりも大きくずれることにより、像平面1109内での単反射の形成を大幅に抑制することができる。
【0073】
第2の部分対物系1115のレンズ面の特定の構成による単反射の低減を示すために、投影対物系1101に対して迷光シミュレーションを実施し、像平面1109内の迷光強度分布を求めた。シミュレーションでは、最初に瞳フィルファクタσ=0.2を用いて、次に、瞳フィルファクタσ=1.0を用いて物体視野1103を均一に照明した。この場合、第2の部分対物系1115内で2度の通過を受けるレンズL1111のレンズ面における単反射のみを迷光として考慮している。この場合、レンズ面は、全ての入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。図14は、像視野1107の中心を通って像視野1107の縦方向に延びる線に沿った瞳フィルファクタσ=0.2に対する迷光強度分布を通る断面を強度分布1483を用いて示している。最大迷光強度は、像中心において0.18%であり、x=±13mmにある像縁部において0.13%である。図14では、瞳フィルファクタσ=1.0に対する迷光強度分布を通る断面を強度分布1485として例示している。最大迷光強度は、投影対物系の入射瞳の完全照明の場合に、僅か0.01%である。瞳フィルファクタへの迷光の依存性が依然として明らかであるが、瞳フィルファクタσ=1.0と瞳フィルファクタσ=0.2の間の変化は0.17%しかない。
【0074】
図15は、第2の部分対物系のレンズ面が表2に示している層構成を有する反射防止コーティング437で覆われた場合に発生する迷光強度分布を通る断面として、瞳フィルファクタσ=0.2に対する強度分布1487、及び瞳フィルファクタσ=1.0に対する強度分布1489を示している。改善された反射防止コーティングを用いると、像視野1107内の最大迷光強度は、瞳フィルファクタσ=0.2では、0.18%から0.004%へと低下し、瞳フィルファクタσ=1.0では、0.01%から0.002%へと低下する。ここでもまた、図15では、強度軸の目盛りを図14の目盛りと比較して10倍だけ細かくしていることを考慮する必要がある。上述の結果、実際的に単反射はもはや検出することはできない。
【0075】
部分対物系1115の全てのレンズ面が、全ての入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングで覆われた場合に、1.0mmの辺の長さを有する四角形の小箱を用いたKirk試験を用いると、瞳フィルファクタσ=0.2に対して、小箱の像中心で0.4%の強度が生じる。それとは対照的に、レンズL1111のレンズ面が、表2に示している反射防止コーティング437で覆われた場合には、小箱の像中心における迷光強度は、0.3%に低下する。
【0076】
図16は、反射屈折投影対物系1601のレンズ断面を示している。図16において、図1による要素に対応する要素は、図1におけるものと同じ参照符号を1600という数値だけ増大した参照符号を有し、これらの要素の説明では、図1に関する説明を参照する。
【0077】
投影対物系1601に関する光学データは、表5にまとめられている。投影対物系1601は、像平面1609において開口数NA=1.2を有する。作動波長は、193.306nmである。像視野1607は、26.0mm×5.5mmであり、光軸1627からの1.98mmの最小距離を有する。投影対物系1601は、0.25という結像比の絶対値を有する。この場合、作動中に液浸液として水が最後のレンズ面と露光される物体との間に置かれる液浸投影対物系が含まれる。
【0078】
第1の部分対物系1611は、面1から20によって形成され、第2の部分対物系1615は、面22から26によって形成され、第3の部分対物系1619は、面28から52によって形成される。第1の部分対物系1611は、1.03という結像比の絶対値を有し、第2の部分対物系1615は、1.01という結像比の絶対値を有し、第3の部分対物系1619は、0.24という結像比の絶対値を有する。
【0079】
物体視野1603から出射し、開口絞り1629の位置で光軸1627と交差する全ての主光線は、凹ミラー1621において、凹ミラー1621の光学的使用領域の直径の8.6%よりも低い高さを有する。従って、凹ミラー1621は、投影対物系1601の瞳平面の領域に配置される。
【0080】
物体点(x=52mm,y=29.93mm)から出射する主光線は、第2の折り返しミラー1625と同じ位置で光軸1627と交差して光軸1627に対して垂直な仮想平面内で68.29mmの半径方向距離を有する。それとは対照的に、仮想周縁光線は、上述の平面内で0.82mmの半径方向距離しか持たない。この場合、物体点(x=52mm,y=29.93mm)は、物体視野1603内で光軸1627からの最大距離を有する。従って、第2の中間像1617は、第2の折り返しミラー1625の領域に配置される。
【0081】
レンズL1611は、第2の部分対物系1615内で唯一のレンズである。レンズ1611の前面と後面の両方が非球面として構成される。レンズL1611と凹ミラー1621の間の距離は、40.2mmである。第1の近軸中間像は、凹ミラー1621から300.48mmの距離を有し、第2の近軸中間像は、凹ミラー1621から316.25mmの距離を有する。従って、レンズL1611は、第1の中間像1613又は第2の中間像1617に対してよりも凹ミラー1621に対して近い位置に配置される。
【0082】
レンズL1611の凹ミラー1621に対面するレンズ面、すなわち、レンズL1611の後面は、30.9°の周縁光線同心度を有し、前面は、30.2°の周縁光線同心度を有する。すなわち、両方の面は、周縁光線同心から大きくずれる。
【0083】
図17は、反射屈折投影対物系1701のレンズ断面を示している。図17において図1による要素に対応する要素は、図1におけるものと同じ参照符号を1700という数値だけ増大した参照符号を有し、これらの要素の説明では、図1に関する説明を参照する。
【0084】
投影対物系1701に関する光学データは、表6にまとめられている。投影対物系1701は、像平面1709において開口数NA=1.2を有する。作動波長は、193.307nmである。像視野1707は、26.0mm×5.5mmであり、光軸1727からの1.98mmの最小距離を有する。投影対物系1701は、0.25という結像比の絶対値を有する。この場合、作動中に液浸液として水が最後のレンズ面と露光される物体との間に置かれる液浸投影対物系が含まれる。
【0085】
第1の部分対物系1711は、面1から22によって形成され、第2の部分対物系1715は、面24から28によって形成され、第3の部分対物系1719は、面30から58によって形成される。第1の部分対物系1711は、0.96という結像比の絶対値を有し、第2の部分対物系1715は、1.00という結像比の絶対値を有し、第3の部分対物系1719は、0.26という結像比の絶対値を有する。
【0086】
物体視野1703から出射し、開口絞り1729の位置で光軸1727と交差する全ての主光線は、凹ミラー1721において、凹ミラー1721の光学的使用領域の直径の7.5%よりも低い高さを有する。従って、凹ミラー1721は、投影対物系1701の瞳平面の領域に配置される。
【0087】
物体点(x=52mm,y=29.93mm)から出射する主光線は、第2の折り返しミラー1725と同じ位置で光軸1727と交差して光軸1727に対して垂直な仮想平面内で67.77mmの半径方向距離を有する。それとは対照的に、仮想周縁光線は、上述の平面内で1.27mmの半径方向距離しか持たない。この場合、物体点(x=52mm,y=29.93mm)は、物体視野1703内で光軸1727からの最大距離を有する。従って、第2の中間像1717は、第2の折り返しミラー1725の領域に配置される。
【0088】
レンズL1712は、第2の部分対物系1715内で唯一のレンズである。レンズ1712の前面と後面の両方が非球面として構成される。レンズL1712と凹ミラー1721の間の距離は33.4mmである。第1の近軸中間像は、凹ミラー1721から188.92mmの距離を有し、第2の近軸中間像は、凹ミラー1721から189.59mmの距離を有する。従って、レンズL1712は、第1の中間像1713又は第2の中間像1717に対してよりも凹ミラー1721に対して近い位置に配置される。
【0089】
レンズL1712の凹ミラー1721に対面するレンズ面、すなわち、レンズL1712の後面は、38.6°の周縁光線同心度を有し、前面は、20.0°の周縁光線同心度を有する。すなわち、両方の面は、周縁光線同心からずれる。投影対物系1101におけるレンズL1111、及び投影対物系1601におけるレンズL1611と比較すると、レンズL1712のレンズ屈曲は、レンズL1111又はL1611のものと反対である。レンズL1111又はL1611の前面の場合には、仮想周縁光線の交差点における表面法線は、周縁光線と光軸1127及び1627それぞれの間に延びるが、レンズL1712の前面の場合には、仮想周縁光線は、周縁光線の交差点における表面法線と光軸1727の間に延びている。その結果、レンズL1712の前面は、第1の中間像1713から入射する周縁光線に対して凸に湾曲する。
【0090】
図18は、半導体構成要素又は他の微細構造化構成要素を製造するように機能するマイクロリソグラフィのための投影露光装置1801を略示している。投影露光装置1801は、光源として193nmの作動波長を有するエキシマレーザ1803を有するが、例えば、157nm又は248nmの作動波長を有する他のエキシマレーザも可能である。下流に配置された照明系1805は、はっきりと境界が定められ、均一に照明され、同時に、角度分布に関して下流に配置された投影対物系1813の要件に適応された照明視野を発生させる。照明系1805は、照明モードを選択するためのデバイスを有し、それによって例えば照明系1805の射出瞳内、又は下流に配置された投影対物系1813の入射瞳内に可変瞳フィルファクタσを有する従来照明、環状照明、双極照明、又は四重極照明を発生させることができる。
【0091】
光方向に照明系1805の下流には、レチクル1807を保持して操作するためのデバイス1809が配置される。マスクとも呼ぶレチクル1807は、結像される構造を有する。デバイス1809を用いると、走査目的でレチクル1807を物体平面1811内で走査方向に移動させることができる。
【0092】
投影対物系1813は、図1、図11、図16,及び図17を用いて説明した反射屈折投影対物系である。反射屈折投影対物系1813は、レチクル1807の照明系1805によって照明される部分をウェーハ1815上に縮小方式で結像する。ウェーハ1815は、投影光による照射を受けて露光される感光層を有する。
【0093】
ウェーハ1815は、レチクルの走査移動と同期化されたウェーハ1815の平行移動を可能にするデバイス1819によって保持される。また、デバイス1819は、投影対物系1813の像平面1817内にウェーハ1815を最適に位置決めするマニピュレータを有する。デバイス1819は、投影対物系の液浸使用に向けて設計される。デバイス1819は、ウェーハ1815を保持するための浅い窪み又は凹部を有する保持ユニット1821を有する。保持ユニット1821は、液浸媒体1825が流れ出すのを防止する周縁1823を有する。
【0094】
投影露光装置は、中央コンピュータユニット1827によって制御される。
【0095】
従って、投影露光装置1801を用いて半導体構成要素又は他の微細構造化構成要素を製造するために、所定のパターンを有するレチクル1807が反射屈折投影対物系1813の物体平面1811内に設けられ、感光層を有するウェーハ1815が、反射屈折投影対物系1813の像平面に設けられ、照明系1805を用いてレチクル1807が照明され、最終的に、反射屈折投影対物系1813を用いてレチクル1807の照明領域が、ウェーハ1815上に結像される。
【0096】
(表4)
【0097】
(表5)
【0098】
(表6)
【符号の説明】
【0099】
1 反射屈折投影対物系
3 物体視野
5 物体平面
7 像視野
9 像平面
11 第1の部分対物系
13 第1の実中間像
15 第2の部分対物系
17 第2の実中間像
19 第3の部分対物系
23 第1の折り返しミラー
25 第2の折り返しミラー
L21、L22 レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するために3つの部分対物系を含む反射屈折投影対物系、そのような投影対物系を含むマイクロリソグラフィのための投影露光装置、及び同じくそのような投影露光装置を用いて半導体構成要素及び他の微細に構造化された構成要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体視野は、反射屈折投影対物系の第1の部分対物系を用いて第1の実中間像上に結像され、第1の中間像は、第2の部分対物系を用いて第2の実中間像上に結像され、第2の中間像は、第3の部分対物系を用いて像平面内の像視野上に最終的に結像される。この場合、第2の部分対物系は、厳密に1つの凹ミラーを有する反射屈折対物系である。更に、反射屈折投影対物系は、2つの折り返しミラーを有し、第1の折り返しミラーは、物体平面から到着する投影光を第2の部分対物系の凹ミラーの方向に偏向し、第2の折り返しミラーは、第2の部分対物系の凹ミラーから到着する投影光を像平面の方向に偏向する。
【0003】
この種の反射屈折投影対物系は、例えば、US2009/0034061及びUS2009/0092925から公知である。
【0004】
反射屈折投影対物系のレンズのレンズ面では、空気又は気体充填物とレンズ材料との間の屈折率の差に起因して、特定の割合の光が反射される。この反射は、反射防止コーティングによって低減することができるが、完全には防止することができない。レンズ面において反射される投影光が像平面内へと通ることができる場合には、このいわゆる迷光は、実際の像のコントラストを低下させるバックグラウンド照明を引き起こす。
【0005】
レンズ面上に反射防止コーティングを有する反射屈折投影対物系は、US2008/0297884A1から公知である。
【0006】
反射防止コーティングは、US5,963,365Aから公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2009/0034061
【特許文献2】US2009/0092925
【特許文献3】US2009/0092925A1
【特許文献4】US2009/0086179A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、そのような投影対物系内の迷光を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これには、この部類の投影対物系内のどの光路上を光が像平面内へと通ることができるかという問いを調査する段階が関わっている。光路とは、光が、物体平面から像平面への途中に通過する一連の光学面を意味するように理解される。この場合、投影光が反射屈折投影対物系の光学設計に従ってレンズ又はミラーの光学面を通過する際に辿ることを意図した投影光路と、迷光が像平面内へと通る際に辿る1つ又はそれよりも多くの迷光路との間で区別がつけられる。迷光路の場合には、迷光は、少なくとも1つのレンズ面で透過される代わりに反射され、従って、投影光路を離れる。迷光路を判断するために、各レンズ面は、透過面と反射面の両方であると見なされ、この場合、レンズ面の反射率は、光ビームが透過されるか又は反射される際の確率を左右する。別の観点からは、光ビームは、透過光ビームと反射光ビームに分割することができ、反射率は、2つのビームの強度を決める。投影対物系内のレンズ面において迷光がどれ程の頻度で反射されるかによっては、単反射、二重反射、又は更には高次の反射の間で区別がつけられる。反射の強度は、反射率の積に依存するので、一度の反射しか持たない単反射は、比較的高い迷光強度を引き起こす。従って、各単反射は、それを許容できるか否か、又は単反射に起因する迷光強度を低減するための対応する対策が必要であるか否かに関して調査する必要がある。
【0010】
第2の部分対物系は、厳密に1つの凹ミラーを有し、投影光は、第1の折り返しミラーによってこの凹ミラーに向けて偏向され、凹ミラーにおける反射の後に、第2の折り返しミラーによって像平面に向けて偏向されることにより、折り返しミラーと凹ミラーの間の第2の部分対物系のレンズは、2度の通過を受ける。従って、投影光は、2度の通過を受けるそのようなレンズを1度目は凹ミラーへの途中で、2度目には凹ミラーにおける反射の後に通過する。2度の通過を受けるそのようなレンズのレンズ面は、投影光が、これらのレンズ面のうちの1つにおいて透過される代わりに反射されることによって単反射を引き起こす可能性がある。この場合、迷光路は、投影光が凹ミラーに向う途中及び再度その戻る途中に実際に通過することになる光学面が飛ばされることによって生じる可能性がある。ある一定の状況では、迷光路は、像平面にまで達する可能性がある。迷光は、次に、投影光も反射レンズ面から始まって凹ミラーにおける反射の後に通過すると考えられる全ての光学面を通過する。従って、2度の通過を受ける第2の部分対物系のレンズは、像平面内で単反射に起因する迷光を発生させる傾向が特に強い。
【0011】
従って、本発明の一実施形態では、第2の部分対物系のレンズの少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長、及び0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。反射防止コーティングは、光がレンズに入射する時の屈折率の急激な変化に起因する反射損失が低下するように設計されたコーティングを意味するように理解される。この場合、ここで設けられる反射防止コーティングは、第1に作動波長によって指定され、第2に入射角度範囲によって指定される。作動波長は、投影対物系がその後作動される投影光の波長を意味するように理解される。一般的に、この作動波長は、150nmと250nmの間のDUV又はVUV波長範囲の波長、すなわち、例えば、248nm、193nm、又は157nmの波長である。入射角は、光線がレンズ面上に入射する点における表面法線に対する光線の角度を意味するように理解される。一般的に、多くの光線が、異なる入射角でレンズ面のある一定の点上に入射し、従って、反射防止コーティングは、1つの入射角だけに対してではなく、入射角度範囲全体に対して最適化する必要がある。この場合、レンズ面における反射を完全に防止する反射防止コーティングを製造することはできず、この反射を低減することしかできない。この場合、反射防止コーティングの複雑度は、所定の入射角度範囲における残留反射の低減度と共に増大する。一般的に、2度通過を受けるレンズを持たない投影対物系では二重反射及び多重反射が優勢であるから、二重反射又は多重反射の得られる迷光効果を低減するための反射防止コーティングを設計することで十分である。上述の入射角度範囲で、例えば、0.2%よりも高い反射防止コーティングの反射率は、二重反射及び多重反射を満足できるように低減するのに十分である。反射率の更なる低下は、反射防止コーティングを不要に複雑にすることになる。それとは対照的に、像視野内で終端を成す単反射迷光路が既に発生している場合には、上述の入射角度範囲で0.2%よりも高い反射防止コーティングの反射率は、許容することができない迷光をもたらす可能性がある。しかし、正確には、2度の通過を受ける第2の部分対物系のレンズの場合に、この危険性が出現する。従って、これらのレンズ面は、これらのレンズに対して妥当な0°から30°の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。
【0012】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長、及び0°と30°の間の入射角に対して0.1%よりも低い反射率を有する。
【0013】
0°から20°の範囲の小さい入射角を有する光線、すなわち、光軸に近い光線では、レンズ面における反射の後に依然として像平面へと通過し、バックグラウンド照明に寄与する確率が特に高いので、本発明の更に別の実施形態では、2度の通過を受ける第2の部分対物系のレンズのレンズ面は、0°から20°の入射角度範囲、及び150nmと250nmの間の波長に対して0.1%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。
【0014】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長、及び0°と20°の間の入射角度範囲に対して0.05%よりも低い反射率を有する。
【0015】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長、及び0°と10°の間の入射角度範囲に対して0.02%よりも低い反射率を有する。
【0016】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長において、0°と30°の間の入射角度範囲に対しては0.2%よりも低い反射率を有し、同時に0°と20°の間の入射角度範囲に対しては0.1%よりも低い反射率を有する。
【0017】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長において、0°と30°の間の入射角度範囲に対しては0.2%よりも低い反射率を有し、0°と20°の間の入射角度範囲に対しては0.1%よりも低い反射率を有し、同時に0°と10°の間の入射角度範囲に対しては0.02%よりも低い反射率を有する。
【0018】
本発明の更に別の実施形態では、反射防止コーティングは、150nmと250nmの間の波長において、0°と30°の間の入射角度範囲に対しては0.1%よりも低い反射率を有し、同時に0°と10°の間の入射角度範囲に対しては0.02%よりも低い反射率を有する。
【0019】
反射防止コーティングの複雑さは、特に、反射防止コーティングを構成するのに用いられる層の数に現れる。本発明の一実施形態では、反射防止コーティングは、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された6つの層を含む。この場合、材料が、作動波長に対して低屈折率を有する材料の屈折率よりも高い屈折率を有する時に、この材料は、高屈折率を有するとして表している。
【0020】
本発明の更に別の実施形態は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された7つの層を含む。
【0021】
高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された少なくとも6つの層の使用により、0°から30°の入射角度範囲にわたって0.2%よりも低い反射率を保証することができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、低屈折率を有する使用材料は、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、クリオライト、チオライト、及びこれらの組合せから成る群から選択された誘電体である。
【0023】
本発明の一実施形態では、高屈折率を有する使用材料は、フッ化ネオジム、フッ化ランタン、フッ化ガドリニウム、フッ化ジスプロシウム、酸化アルミニウム、フッ化鉛、フッ化イットリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択された誘電体である。
【0024】
第2の部分対物系の面における反射に起因する単反射の発生に対しては、特に、20°よりも小さい周縁光線同心(marginal ray concentricity)からのずれを有する面を考慮すべきである。周縁光線同心は、周縁光線が、レンズ面上でそれ自体に重なるように反射して戻される状態を意味するように理解される。すなわち、周縁光線は、このレンズ面において0°の入射角を有する。この場合、用いられる周縁光線は、物体平面内で光軸から出射し、投影対物系の開口絞りを際どく通過し、すなわち、像平面内で最大開口数に対応する入射角を有する仮想光線である。この光線は、この種類の投影対物系が軸外物体視野を有し、すなわち、投影対物系の光軸が物体平面と物体視野内で交差しないので、仮想周縁光線である。光線追跡法では、ミラー又はレンズの物理的境界、又は他の光学要素による口径食は重要ではなく、周縁光線は投影光路に沿って追跡されるので、この仮想周縁光線は、仮想光線であるにも関わらず、数学的に追跡することができる。この場合、レンズ面の周縁光線同心と単反射の発生の間の関係はどのようなものであるかを考える。理想的な結像の場合には、物体平面から出射する周縁光線は、以降の像平面内、すなわち、この種類の投影対物系の場合は第1の中間像平面内、第2の中間像平面内、及び像平面内で光軸と交差する。次に、第2の部分対物系内のレンズ面において周縁光線同心が存在する場合には、周縁光線は、それ自体に重なるように反射して戻され、従って、周縁光線が出射した位置と同じ位置で光軸と再度交差する。すなわち、第1の中間像平面と一致するいわゆる迷光中間像平面が発生する。第1の中間像は軸外中間像であるから、第1の中間像と迷光中間像とは、光軸の反対側に位置する。従って、迷光中間像は、凹ミラーから像平面への投影光路内に位置し、それによって迷光は、投影光路を辿るように像平面内へと通ることができる。更に、第2の投影対物系が1:1の対物系の場合には、第1の中間像平面と第2の中間像平面とは一致し、従って、同じく迷光中間像平面も一致する。その結果、迷光中間像は、第2の中間像の位置に発生し、最終的に第3の部分対物系によって第2の中間像と同様に像平面上に結像される。単反射に起因して、像平面に直接に入る連続迷光路が発生する。従って、周縁光線同心が存在するか又は周縁光線同心からのずれが20°よりも小さいレンズ面は、単反射の発生に対して特に重要であり、従って、改善された反射防止コーティングを設けなければならない。
【0025】
単反射を受け易い面の改善された反射防止コーティングに加えて、投影対物系の光学設計を案出する際に単反射の低減を事前に考慮することができる。従って、本発明の一実施形態では、第2の部分対物系のレンズの全ての面は、これらの面の周縁光線同心からのずれが20°よりも大きく又はそれに等しいように構成される。その結果、迷光中間像は、第2の中間像の位置で発生せず、従って、第2の中間像とは異なり、第3の部分対物系によって像平面に結像されない。迷光と投影光とは、特に、第2の折り返しミラーの領域内では異なるビーム範囲を有する。第2の折り返しミラーの範囲は、投影光ビームの範囲に適応されるので、迷光ビームは、第2の折り返しミラーの物理的境界によって口径食を受け、その結果、像平面に到達しないか、又は大幅に低減された強度しか伴わずに像平面に到達する。
【0026】
像視野湾曲の補正及び色収差補正の目的で、第2の部分対物系は、複数のレンズを有することができる。2度の通過を受けるこれらのレンズは、単反射を引き起こす面を有する可能性がある。本発明の一実施形態では、第2の部分対物系は、厳密に1つのレンズを有する。それによって単反射が発生する可能性がある面数が2面にまで減少する。
【0027】
しかし、投影対物系の結像品質が、第2の部分対物系内のレンズ数の減少に起因して劣化しないように、本発明の一実施形態では、このレンズは、両非球面レンズとして実施される。言い換えれば、このレンズは、前面と後面の両方の上に形成された非球面を有する。それによって必要な結像品質を保証するための更なる自由度が得られる。
【0028】
第2の部分対物系のレンズのレンズ面の単反射を回避することに向けたターゲット構成により、改善された反射防止コーティングによる単反射に対して重要なレンズ面の被覆により、又はこれらの2つの対策の組合せの適用によって達成することができるものは、迷光に起因する像平面内のバックグラウンド照明を全体的に大きく低減することである。第2の部分対物系のレンズ面の迷光に対する影響、及び提案する対策による迷光の低減を定量化するために、迷光は、例えば、均一に照明される物体視野に配置され、像平面に結像される非発光物体によって測定される。この場合、物体は、例えば、四角形であり、異なる辺の長さを有することができる。物体は、例えば、投影光を吸収する小箱である。迷光が存在しない場合には、物体は像平面に鮮明に結像されることになり、物体の像内の強度は、最大周囲照明値の0%である。しかし、迷光が存在する場合には、物体の像は真っ暗ではない。迷光強度分布は、物体の範囲を考慮して物体像の中心における強度から判断することができる。
【0029】
物体像の中心における迷光強度は、物体の照明及び迷光の発生源に依存して変化する。物体の照明は、特に、瞳フィルファクタσによって特徴付けることができる。瞳フィルファクタσ=0.2の場合には、投影対物系の入射瞳は、最大瞳半径の20%の半径までしか照明されない。その結果、物体は、光軸に対して比較的小さい角度を有する光線によってのみ照明される。それとは対照的に、瞳フィルファクタσ=1.0の場合には、投影対物系の入射瞳は完全に照明され、それによって物体は、物体平面内で可能な最大値を提供する光線によって照明される。光軸に対して大きい角度を有する光線では、レンズ面における反射の後に像平面へと直接に通過せずに、例えば、レンズマウントにおいて口径食を受ける高い確率が存在するので、物体が、小さい瞳フィルファクタを用いて照明される場合には、単反射に起因する迷光の寄与は、大きい瞳フィルファクタを用いた照明の場合よりも大きい。従って、迷光測定は、例えば、瞳フィルファクタσ=0.2に対して実施される。投影露光装置の照明系がこのフィルファクタを提供しない場合には、迷光測定においてσ=0.2とσ=0.3の間の瞳フィルファクタが用いられる。
【0030】
第2の部分対物系のレンズ面によって引き起こされる単反射に加えて、像平面における像視野内の迷光には、更に別の原因も存在する。レンズ面における二重反射に起因する二重反射は、単反射と比較すると無視することができる強度しか持たない。面散乱又は体積散乱に起因する迷光は、十分に大きく、例えば、1.0mmの物体の辺の長さを選択することによって単反射に起因する迷光から区別することができる。この場合、物体像の中心における面散乱又は体積散乱に起因する迷光の強度は、単反射に起因する迷光の強度と比較して少なくとも70%低い。辺の長さが更に延長された場合には、面散乱又は体積散乱に起因する迷光の、単反射に起因する迷光からの分離は良好になるが、この場合、単反射に起因する迷光に対する測定信号も弱まる。1.0mmの辺の長さを有する物体を利用することができない場合には、測定は、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さに対して実施することができる。提案する第2の部分対物系のレンズ面上の単反射を低減するための対策の適用時には、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の物体を用い、瞳フィルファクタがσ=0.2とσ=0.3の間にある場合の迷光測定において、物体像の中心における迷光強度は、1.1%よりも低い。
【0031】
一実施形態では、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の物体を用い、瞳フィルファクタがσ=0.2とσ=0.3の間にある場合の迷光測定において、物体像の中心における迷光強度は0.9%よりも低い。
【0032】
更に別の実施形態では、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の物体を用い、瞳フィルファクタがσ=0.2とσ=0.3との間である場合の迷光測定において、物体像の中心における迷光強度は0.5%よりも低い。
【0033】
第2の部分対物系のレンズ面の迷光への寄与は、単反射の形成が瞳フィルファクタに大幅に依存するので、像平面における像視野内の迷光を2つの異なる瞳フィルファクタに対して測定し、迷光の変化を判断することによって判断することができる。それとは対照的に、例えば、面散乱又は体積散乱のような像平面内の迷光の他の原因は、瞳フィルファクタへの低い依存性をもたらし、単反射と比較するとほぼ照明に依存しないバックグラウンド照明を引き起こす。従って、迷光測定は、最初に瞳フィルファクタσ=1.0に実施され、次に、瞳フィルファクタσ=0.2に実施される。投影露光装置の照明系がこれらのフィルファクタを提供しない場合には、迷光測定においてそれぞれσ=0.8とσ=1.0の間、及びσ=0.2とσ=0.3の間の瞳フィルファクタが用いられる。提案する単反射を低減するための対策が第2の部分対物系のレンズ面に適用された場合には、像視野内の像点におけるσ=0.2とσ=0.3の間の瞳フィルファクタに対する迷光強度と、σ=0.8とσ=1.0の間の瞳フィルファクタに対する迷光強度との間の最大差は、0.3%よりも小さい。
【0034】
本発明の一実施形態では、第2の部分対物系は、0.8と1.25の間の結像比の絶対値を有する。この場合、第2の部分対物系は、第1の中間像を実質的に1:1で第2の中間像上に結像する。
【0035】
本発明の一実施形態では、第2の部分対物系の凹ミラーは、瞳平面の領域に配置され、その位置は、近軸主光線と投影対物系の光軸との交差点からもたらされる。この場合、凹ミラーは、像視野から出射する全ての主光線の凹ミラーにおける最大高さが、凹ミラーの光学的使用領域の直径の20%よりも低い時に瞳平面領域に配置される。
【0036】
第2の部分対物系が、一方で0.8と1.25の間の結像比の絶対値を有し、他方で瞳平面領域内に凹ミラーを有する場合には、第2の部分対物系において、凹ミラーに関して実質的に対称な構成が生じる。更に、第2の部分対物系におけるレンズ面が、周縁光線同心からのいかなるずれも有さないか又は僅かなずれしか有さない場合には、このレンズ面において反射された迷光は、少なくとも近似的に第2の中間像と一致する迷光中間像を発生させ、従って、第3の部分対物系によって像平面に結像される。第2の部分対物系のこの構成は、像視野湾曲及び色収差の補正に対して確かに好ましいが、許容することができない単反射を引き起こす可能性がある。この場合、この単反射は、レンズ面における周縁光線同心からの目標とされるずれ、及び改善された反射防止コーティングを用いたレンズ面のコーティングによって低減することができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、第2の中間像は、第2の折り返しミラーの領域に配置される。この場合、第2の中間像は、第2の折り返しミラーと同じ光軸との交差点を有して光軸に対して垂直に配置された仮想平面において、光軸から、光軸から最大の距離を有する物体視野内の物体点から出射する主光線への半径方向距離の半分が周縁光線の半径方向距離よりも大きい時に、第2の折り返しミラーの領域に配置される。この場合、周縁光線同心を判断するのに既に定められた周縁光線が用いられる。この場合、迷光中間像が第2の中間像上に位置しなくなった途端に、迷光ビームは、第2の折り返しミラーの物理的境界によって口径食を受け、この単反射の迷光強度は低減する。
【0038】
本発明の一実施形態では、第2の部分対物系内の全てのレンズは、第1の中間像又は第2の中間像に対してよりも、凹ミラーに対してより近い位置に配置される。第2の部分対物系のレンズは光軸に沿って延びているので、レンズ距離を求めるために、2つのレンズ頂点の間の中点が求められ、距離は、この中点から測定される。この場合、2つの中間像の位置は、中間像の近軸位置からもたらされる。第2の部分対物系のレンズが、中間像に対してよりも凹ミラーに対して近い位置に配置されることにより、これらのレンズは、第2の折り返しミラーからも大きく分離する。一方、迷光中間像が第2の中間像と完全に一致しない場合には、第2の折り返しミラーに対するレンズ面の距離が大きくなる程、第2の折り返しミラーの物理的障壁に起因する第2の折り返しミラーの口径食効果も大きくなる。
【0039】
本発明の一実施形態では、反射屈折投影対物系は、投影対物系以外に物体平面内の物体視野を照明するための照明系を更に有するマイクロリソグラフィのための投影露光装置の一部である。
【0040】
投影露光装置を用いて半導体構成要素及び他の微細構造化構成要素を製造するために、所定のパターンを有するレチクルが反射屈折投影対物系の物体平面に、かつ感光層を有するウェーハが反射屈折投影対物系の像平面に設けられ、このレチクルが照明系を用いて照明され、最終的にレチクルの照明領域が、反射屈折投影対物系を用いてウェーハ上に結像される。
【0041】
本発明の詳細を図に示す例示的な実施形態に基づいて以下により完全に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影光路と共に示す図である。
【図2】図1による投影対物系のレンズ断面を迷光路と共に示す図である。
【図3】反射防止コーティングの概略図である。
【図4】反射防止コーティングの概略図である。
【図5】反射防止コーティングの概略図である。
【図6】図3から図5による反射防止コーティングの反射率値の入射角の関数としてのグラフである。
【図7】瞳フィルファクタσ=0.2に対する迷光強度分布を等強度線図として示す図である。
【図8】図1による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの0.2%の反射率を有する反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィール図である。
【図9】図1による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの図4による反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィール図である。
【図10】迷光測定技術を示すための概略図である。
【図11】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影ビーム光路と共に示す図である。
【図12】図11による投影対物系のレンズ断面を迷光路と共に示す図である。
【図13】図11による投影対物系のレンズ断面を迷光路と共に示す図である。
【図14】図11による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの0.2%の反射率を有する反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィールの図である。
【図15】図11による投影対物系内で2度の通過を受けるレンズの図4による反射防止コーティングの場合の迷光強度プロフィールの図である。
【図16】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影ビーム光路と共に示す図である。
【図17】反射屈折投影対物系のレンズ断面を投影ビーム光路と共に示す図である。
【図18】マイクロリソグラフィ投影露光装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、反射屈折投影対物系1のレンズ断面を示している。投影対物系1の光学設計は、2009年4月9日に公開されたOmuraという名義の特許出願US2009/0092925A1から引用したものであり、本出願内の図4に対応する。この設計の光学データは、US2009/0092925A1の表に要約されている。従って、投影対物系1の光学設計のより詳細説明に対しては、US2009/0092925A1を参照されたい。投影対物系1は、物体平面5内の物体視野3を像平面9内の像視野7上に結像する。投影対物系1は、物体視野3を第1の実中間像13上に結像する第1の部分対物系11、第1の中間像13を第2の実中間像17上に結像する第2の部分対物系15、及び第2の中間像17を像視野7上に結像する第3の部分対物系19を含む。第2の部分対物系15は、凹ミラー21、並びに2つのレンズL21及びL22を有する反射屈折対物系として実施される。第1の中間像13の領域内には、物体平面5から到着する投影光31を凹ミラー21の方向に偏向する折り返しミラー23が配置される。第2の中間像17の領域内には、凹ミラー21から到着する投影光を像平面9の方向に偏向する折り返しミラー25が配置される。
【0044】
迷光が、単反射、二重反射、又は多重反射として像平面9へと通過し、像平面9でバックグラウンド照明を引き起こす際に通る迷光路を求めるために、投影対物系1に対して迷光解析を実施した。図2は、投影対物系1において、投影光31が、以下でレンズL21の後面と呼ぶレンズL21の凹ミラー21に対面する面において反射されることによって発生するそのような迷光路33を示している。例示している迷光路33では、投影光路31からずれる迷光33は、レンズL22及び凹ミラー21を通過しないが、投影光31が、凹ミラー21における反射の後にレンズL22を通過し、その後、再度レンズL21内に入射した場合に同じく通過することになるそれ以降の全ての光学面を通過する。迷光路33では、迷光中間像35が折り返しミラー25の領域内で発生し、従って、同時に事実上第2の中間像17の位置においても発生する。その結果、事実上全ての迷光が、第2の折り返しミラー25により、折り返しミラー25の物理的境界によって口径食を受けることなく反射され、投影光31と同様に、像平面9に至るまで第3の部分対物系19を通過する。開口絞り29は、開口絞り平面の領域内にある空間的に境界が定められた絞りを用いて、投影光31が大きく口径食を受けることなしに迷光をフィルタリング除去することも可能ではないように、迷光によって事実上完全に照明される。
【0045】
上述の結果、レンズL21の後面は、非常に高い迷光強度を有する単反射を引き起こす。この場合、迷光強度は、投影光の強度にレンズL21の後面の反射率を乗じたものにほぼ対応する。この強い単反射は、レンズL21の後面が0.6°の周縁光線同心度を有することに起因して発生する。従って、事実上周縁光線同心がもたらされる。第2の部分対物系15が、1.03という結像比の絶対値を有することと共に、凹ミラー21が瞳平面の領域に配置されることにより、事実上第2の中間像17の位置で迷光中間像35が発生し、従って、迷光33が、第2の折り返しミラー25を通じてほぼ完全に伝達される。
【0046】
15.9°の値を有するレンズL21の前面も同様に小さい周縁光線同心度を有し、その結果、この面も像平面9内の迷光への寄与を生じる。凹ミラー21に対面するレンズL22の後面の周縁光線同心度は24.0°、レンズL22の前面の周縁光線同心度は22.9°であり、その結果、これらの2つの面も、同様に像平面9内の迷光に寄与するが、これらの寄与のマグニチュードは、レンズ21の後面のものよりも遥かに小さい。非常に一般的に、第2の部分対物系15のレンズL21及びL22は、2度の通過を受けるレンズであり、これらのレンズを通じて投影光31が、凹ミラー21に向う光路と凹ミラー21から離れる光路の両方を通過するので、これらの両方のレンズが迷光を受け易いと捉えるべきである。2度の通過を受ける上述のレンズL21及びL22のレンズ面において反射された迷光光線が第2の折り返しミラー25を通過すると直ぐに、そのような迷光光線は、像平面9に到達し、外来光に寄与する可能性がある。これは、この種類の投影対物系の基本的な問題である。
【0047】
単反射の場合には、像平面9内の迷光の強度は、迷光が反射されるレンズ面の反射率に線形に依存する。従って、投影対物系1内で2度の通過を受けるレンズL21及びL22のレンズ面は、193.3nmの投影光波長、及び0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。図3から図5は、そのような反射防止コーティングの様々な例示的な実施形態を示している。
【0048】
図3は、水晶(SiO2)で構成されたレンズ基板339から続く反射防止コーティング337の層シーケンスを概略図で示している。反射防止コーティング337は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された6つの層を含む。低屈折率を有する材料としては、フッ化マグネシウム(MgF2)が用いられる。高屈折率を有する材料としては、フッ化ランタン(LaF3)が用いられる。個々の層の幾何学的厚み、材料、及び屈折率、並びに図3に用いている参照符号も表1に示す。図3では、個々の層の厚みを互いに対して正しく示している。
【0049】
(表1)
【0050】
図4は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された6つの層を順に含む反射防止コーティング437の実施形態を示している。低屈折率を有する材料としては、MgF2が用いられ、高屈折率を有する材料としては、LaF3が用いられる。
個々の層の厚み、材料、及び屈折率、並びに図4に用いている参照符号も表2にまとめられている。
【0051】
(表2)
【0052】
図5は、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された7つの層を含む反射防止コーティング537の例示的な実施形態を示している。低屈折率を有する材料としては、MgF2が用いられ、高屈折率を有する材料としては、LaF3が用いられる。個々の層の厚み、材料、及び屈折率、並びに図5に用いている参照符号も表3にまとめられている。
【0053】
(表3)
【0054】
図6は、図3から図5に例示している反射防止コーティング337、437、及び537に対して、反射率値を単位[°]の入射角の関数として単位[%]で示している。一点鎖線の反射率曲線655は、表1による層構成を有する反射防止コーティング337に関する結果であり、実線の反射率曲線657は、表2による層構成を有する反射防止コーティング437に関する結果であり、破線の反射率曲線659は、表3による層構成を有する反射防止コーティング537に関する結果である。全ての3つの反射防止コーティングの場合に、0°から30°の入射角度範囲に対する反射率曲線655、657、及び659は、0.2%の反射率値を下回り、反射率曲線657及び659は更に、0.1%の反射率値よりも小さい。20°の入射角までは、反射率曲線655、657、及び659は、0.1%の反射率値を下回り、更に、0.05%の反射率値よりも小さい。3つの反射防止コーティングのすべての場合に、0°から10°の入射角度範囲に対する反射率曲線655、657及び659は、0.02%の反射率値さえも下回る。
【0055】
投影対物系の所定の光学設計に適する光線追跡プログラムを用いることにより、反射防止コーティングを考慮しながら像平面内の迷光の強度分布を計算することができる。図7は、投影対物系1に対して、像平面9内の迷光の強度分布761を等強度線図で示している。等強度線は、0.1%の間隔で示したものである。この場合、迷光強度は、像視野内の均一な周囲輝度に関連する。シミュレーションでは、物体視野3を瞳フィルファクタσ=0.2を用いて均一に照明した。この場合、第2の部分対物系15内で2度の通過を受けるレンズL21及びL22のレンズ面における単反射のみを迷光として考慮した。この場合、全での入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングでレンズ面を被覆した。二重反射又は高次の反射を低減するのに用いられるもののような反射防止コーティングは、上述の反射率値を有する。二重反射は、2回の反射に起因して僅か0.2%・0.2%=0.0004%の強度しか持たないので、そのような反射を回避するには、0.2%の反射率で十分である。しかし、等強度線図によると、そのような反射防止コーティングが、憂慮される単反射の形成を実質的に抑制しないことが明らかになる。単反射は、破線を用いて示している像視野763を完全に照明しており、像視野にわたって少なくとも0.4%のバックグラウンド照明を引き起こし、広範囲にわたる領域内で0.8%さえも超えるバックグラウンド照明を引き起こしている。像視野7の範囲と同等である像平面9内の迷光の範囲は、図2でレンズL21の後面における単反射に対して明らかになったように、物体視野3の迷光像が、ほぼ像平面9内に位置することによって引き起こされる。
【0056】
図8は、像視野7の中心を通って像視野7の縦方向に延びる線765に沿って強度分布761を通る断面を強度分布867として示している。最大迷光強度は像中心において0.93%であり、x=±13mmにある像縁部において0.41%である。瞳フィルファクタσ=0.2の場合だけでなく、瞳フィルファクタσ=1.0の場合、すなわち、投影対物系の入射瞳の完全な照明の場合にも迷光シミュレーションを実施した。図8には、瞳フィルファクタσ=1.0に対する迷光強度分布を線765に沿って通る断面を強度分布869として破線で示している。投影対物系の入射瞳の完全な照明の場合には、最大迷光強度は、0.40%である。像視野7内では、迷光強度は事実上一定の値を有する。迷光強度が瞳フィルファクタに強く依存することは明らかである。従って、瞳フィルファクタσ=1.0に対する像視野7内の最大迷光強度は、瞳フィルファクタσ=0.2に対するものよりも0.523%だけ低い。これは、単反射によって引き起こされる迷光の特性である。面散乱又は体積散乱に起因する迷光も、同様に像視野全体におけるバックグラウンド照明を引き起こすが、その強度分布は、単反射と比較すると、像平面における瞳フィルファクタに事実上依存しない。測定された迷光が、この事例と同様に瞳フィルファクタに強い依存性を有する場合には、この依存性は、単反射の形成を示している。
【0057】
図9は、第2の部分対物系のレンズ面が、表2に示している層構成を有する反射防止コーティング437で覆われた場合に発生する瞳フィルファクタσ=0.2に対する強度分布971、及び瞳フィルファクタσ=1.0に対する強度分布973を迷光強度分布を通る断面として示している図である。改善された反射防止コーティングを用いると、像視野7内の最大迷光強度は、瞳フィルファクタσ=0.2では、0.93%から0.02%へと低下し、瞳フィルファクタσ=1.0では、0.40%から0.01%へと低下する。図9では、強度軸の目盛りを図8の目盛りと比較して10倍だけ細かくしていることを考慮する必要がある。改善された反射防止コーティングでは、2つの瞳フィルファクタの間の迷光の最大変化は、僅かに0.01%であり、従って、無視できる程に小さい。従って、改善された反射防止コーティング437を用いて単反射を実質的に抑制することができる。従って、瞳フィルファクタσ=0.2に対して一度、更に、瞳フィルファクタσ=1.0に対して一度、像視野7内の迷光強度を測定することにより、第2の部分対物系15内で2度の通過を受けるレンズの単反射の影響は、他の原因を有して選択された瞳フィルファクタに依存しない迷光への更に別の寄与とは独立して求めることができる。
【0058】
像平面内の迷光を測定するために、特に、US2009/0086179A1に説明されているいわゆるKirk試験が用いられる。Kirk試験では、所定の辺の長さ、例えば、1.0mmを有し、自体では発光しない四角形の物体が、物体視野3に配置される。用いられる物体は、例えば、照明光を完全に吸収する、従って、「黒色」と見なすことができる小箱である。それとは対照的に、小箱の周囲は、照明光によって均一に照明される。小箱は、投影対物系1によって像平面9内に結像される。理想的な結像の場合に迷光を無視すると、像平面9内に四角形の非照明領域が発生することになる。図10は、小箱の像の領域内の強度分布を通る断面を概略図に示す。理想的な結像の場合に迷光を無視すると、破線で示している強度曲線1075が発生し、この曲線1075は、小箱の像の領域内で100%から0%へと突然降下する。しかし、迷光は、小箱の像の中心1081において暗くなく、強度が検出される可能性がある効果を有する。実線で示している強度曲線1077は、第2の部分対物系15のレンズ面における単反射に対処した場合に発生する強度分布を示している。面散乱又は体積散乱に起因する迷光は、一点鎖線で示している強度分布1079を引き起こし、小箱の十分な辺の長さが与えられた場合には、小箱の像の中心に大きく低い迷光強度を引き起こす。小箱の辺の長さが1.0mmであることにより、迷光の測定中に第2の部分対物系15のレンズ面の寄与を他の迷光寄与から区別することができる。この場合、小箱の像の中心1081における強度値は、小箱の外側に配置された迷光源から生じる累積迷光強度に対応する。
【0059】
瞳フィルファクタσ=0.2に対して及び1.0mmの辺の長さを有する小箱に対して、部分対物系15の全てのレンズ面が、全ての入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングで覆われた場合には、小箱の像の中心では、1.1%の強度が発生する。それとは対照的に、レンズL21及びL22のレンズ面が、表2に示している反射防止コーティング437で覆われた場合には、小箱の像の中心における迷光強度は、0.3%へと低下する。この場合、0.8mmと1.2mmの間の辺の長さを有する四角形の小箱を用いたKirk試験による迷光の測定は、単反射に起因する迷光比率を直接判断することを可能にする。
【0060】
図11は、反射屈折投影対物系1101のレンズ断面を示している。図11において図1による要素に対応する要素は、図1におけるものと同じ参照符号を1100という数値だけ増大した参照符号を有し、これらの要素の説明では、図1に関する説明を参照する。
【0061】
投影対物系1101に関する光学データは、表4にまとめられている。非球面は、次のサジッタ公式によって記述することができる。
【0062】
【数1】
【0063】
この場合、pは、光軸に対して垂直なある平面から半径方向距離が[mm]においてhである場合の非球面頂点までの非球面の軸線方向距離を[mm]で表し、Rは、頂点半径を[mm]で表し、Kは、円錐定数を表し、Ckは、k次の個々の非球面定数を[1/mm2k+2]で表している。
【0064】
投影対物系1101は、像平面1109において開口数NA=1.2を有する。作動波長は、193.306nmである。像視野1107は、26.0mm×5.5mmであり、光軸1127からの1.98mmの最小距離を有する。投影対物系1101は、0.25という結像比の絶対値を有する。この場合、作動中に液浸液として水が最後のレンズ面と露光される物体との間に置かれる液浸投影対物系が含まれる。
【0065】
第1の部分対物系1111は、面1から20によって形成され、第2の部分対物系1115は、面22から26によって形成され、第3の部分対物系1119は、面28から52によって形成される。折り返しミラー1123及び1125は、平面ミラーとして結像に対していかなる影響も持たず、投影光1131を偏向させるだけであるから、面番号21及び27を有する折り返しミラー1123及び1125は、3つの部分対物系1111、1115、及び1119のいずれにも割り当てられない。第1の部分対物系1111は、1.05という結像比の絶対値を有し、第2の部分対物系1115は、1.01という結像比の絶対値を有し、第3の部分対物系1119は、0.23という結像比の絶対値を有する。
【0066】
物体視野1103から出射し、開口絞り1129の位置で光軸1127と交差する全ての主光線は、凹ミラー1121において、凹ミラー1121の光学的使用領域の直径の9.1%よりも低い高さを有する。従って、凹ミラー1121は、投影対物系1101の瞳平面の領域に配置される。
【0067】
物体点(x=52.00mm,y=29.93mm)から出射する主光線は、第2の折り返しミラー1125と同じ位置で光軸1127と交差して光軸1127に対して垂直な仮想平面内で光軸からの70mmの半径方向距離を有する。それとは対照的に、仮想周縁光線は、この平面内でほぼ1.5mmの半径方向距離を有する。この場合、物体点(x=52.00mm,y=29.93mm)は、物体視野1103内で光軸1127からの最大距離を有する。従って、第2の中間像1117は、第2の折り返しミラー1125の領域に配置される。
【0068】
表4の一連のレンズ面は、投影光路に対応する。投影光は、図示の順序で全ての面を通過する。第2の部分対物系1115のレンズL1111は、2度の通過を受け、従って、表4では、面番号22及び23、並びに26及び25で2度示している。この場合、レンズL1111は、第2の部分対物系1115内で唯一のレンズである。レンズL1111と凹ミラー1121の間の距離は、40.2mmである。第1の近軸中間像は、凹ミラー1121から321.12mmの距離を有し、第2の近軸中間像は、凹ミラー1121から316.25mmの距離を有する。従って、レンズL1111は、第1の中間像1113又は第2の中間像1117に対してよりも凹ミラー1121に対して近い位置に配置される。
【0069】
原理的には、レンズL1111は、第2の部分対物系内で2度の通過を受けるレンズとしてのその配列に起因して、像平面1109内での単反射の生成に関して重要になる。しかし、レンズL1111の凹ミラー1121に対面するレンズ面、すなわち、レンズL1111の後面は、30.0°の周縁光線同心度を有し、前面は、30.8°の周縁光線同心度を有する。すなわち、両方の面は、周縁光線同心から大きくずれる。同時に、第2の折り返しミラー1125の範囲は、投影光ビーム1131の範囲に適応される。この場合、第2の折り返しミラー1125上の投影光ビームの範囲は、141.1mm×65.4mmであるのに対して、第2の折り返しミラー1125は、145mm×70mmの範囲を有する。レンズL1111の2つのレンズ面の周縁光線同心からのずれ、及び投影光ビームの範囲に適応された第2の折り返しミラー1125に起因して、単反射の形成は大幅に抑制される。
【0070】
図12は、図11による例示的な実施形態において投影光1131がレンズL1111の後面において反射された場合に形成される迷光路1233を示している。迷光路1233から、迷光中間像1235は、第2の折り返しミラー1125上には形成されず、折り返しミラー1125から分離して、開口絞り1129を有する開口絞り平面の近くに形成されることが明らかになる。従って、第2の折り返しミラー1125における迷光ビームは、第2の折り返しミラー1125よりも非常に大きい範囲を有し、大幅に口径食を受ける。その結果、物体平面1105内の迷光ビームは、最大可能開口と比較して小さい開口しか持たない。更に、この迷光は、光軸の周囲の絞りによって遮蔽することができるように、開口絞り1129の領域内に強く集束される。
【0071】
図13は、図11による例示的な実施形態において投影光1131がレンズL1111の前面において反射された場合に形成される迷光路1333を示している。この場合、レンズL1111の直後に、従って、同じく折り返しミラー1125から分離して迷光中間像1335が形成され、従って、第2の折り返しミラー1125における迷光ビームは、第2の折り返しミラー1125よりも非常に大きい範囲を有し、大幅に口径食を受ける。
【0072】
レンズL1111の前面及び後面が、周縁光線同心から20°よりも大きくずれることにより、像平面1109内での単反射の形成を大幅に抑制することができる。
【0073】
第2の部分対物系1115のレンズ面の特定の構成による単反射の低減を示すために、投影対物系1101に対して迷光シミュレーションを実施し、像平面1109内の迷光強度分布を求めた。シミュレーションでは、最初に瞳フィルファクタσ=0.2を用いて、次に、瞳フィルファクタσ=1.0を用いて物体視野1103を均一に照明した。この場合、第2の部分対物系1115内で2度の通過を受けるレンズL1111のレンズ面における単反射のみを迷光として考慮している。この場合、レンズ面は、全ての入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングで覆われる。図14は、像視野1107の中心を通って像視野1107の縦方向に延びる線に沿った瞳フィルファクタσ=0.2に対する迷光強度分布を通る断面を強度分布1483を用いて示している。最大迷光強度は、像中心において0.18%であり、x=±13mmにある像縁部において0.13%である。図14では、瞳フィルファクタσ=1.0に対する迷光強度分布を通る断面を強度分布1485として例示している。最大迷光強度は、投影対物系の入射瞳の完全照明の場合に、僅か0.01%である。瞳フィルファクタへの迷光の依存性が依然として明らかであるが、瞳フィルファクタσ=1.0と瞳フィルファクタσ=0.2の間の変化は0.17%しかない。
【0074】
図15は、第2の部分対物系のレンズ面が表2に示している層構成を有する反射防止コーティング437で覆われた場合に発生する迷光強度分布を通る断面として、瞳フィルファクタσ=0.2に対する強度分布1487、及び瞳フィルファクタσ=1.0に対する強度分布1489を示している。改善された反射防止コーティングを用いると、像視野1107内の最大迷光強度は、瞳フィルファクタσ=0.2では、0.18%から0.004%へと低下し、瞳フィルファクタσ=1.0では、0.01%から0.002%へと低下する。ここでもまた、図15では、強度軸の目盛りを図14の目盛りと比較して10倍だけ細かくしていることを考慮する必要がある。上述の結果、実際的に単反射はもはや検出することはできない。
【0075】
部分対物系1115の全てのレンズ面が、全ての入射角に対して0.2%の反射率を有する反射防止コーティングで覆われた場合に、1.0mmの辺の長さを有する四角形の小箱を用いたKirk試験を用いると、瞳フィルファクタσ=0.2に対して、小箱の像中心で0.4%の強度が生じる。それとは対照的に、レンズL1111のレンズ面が、表2に示している反射防止コーティング437で覆われた場合には、小箱の像中心における迷光強度は、0.3%に低下する。
【0076】
図16は、反射屈折投影対物系1601のレンズ断面を示している。図16において、図1による要素に対応する要素は、図1におけるものと同じ参照符号を1600という数値だけ増大した参照符号を有し、これらの要素の説明では、図1に関する説明を参照する。
【0077】
投影対物系1601に関する光学データは、表5にまとめられている。投影対物系1601は、像平面1609において開口数NA=1.2を有する。作動波長は、193.306nmである。像視野1607は、26.0mm×5.5mmであり、光軸1627からの1.98mmの最小距離を有する。投影対物系1601は、0.25という結像比の絶対値を有する。この場合、作動中に液浸液として水が最後のレンズ面と露光される物体との間に置かれる液浸投影対物系が含まれる。
【0078】
第1の部分対物系1611は、面1から20によって形成され、第2の部分対物系1615は、面22から26によって形成され、第3の部分対物系1619は、面28から52によって形成される。第1の部分対物系1611は、1.03という結像比の絶対値を有し、第2の部分対物系1615は、1.01という結像比の絶対値を有し、第3の部分対物系1619は、0.24という結像比の絶対値を有する。
【0079】
物体視野1603から出射し、開口絞り1629の位置で光軸1627と交差する全ての主光線は、凹ミラー1621において、凹ミラー1621の光学的使用領域の直径の8.6%よりも低い高さを有する。従って、凹ミラー1621は、投影対物系1601の瞳平面の領域に配置される。
【0080】
物体点(x=52mm,y=29.93mm)から出射する主光線は、第2の折り返しミラー1625と同じ位置で光軸1627と交差して光軸1627に対して垂直な仮想平面内で68.29mmの半径方向距離を有する。それとは対照的に、仮想周縁光線は、上述の平面内で0.82mmの半径方向距離しか持たない。この場合、物体点(x=52mm,y=29.93mm)は、物体視野1603内で光軸1627からの最大距離を有する。従って、第2の中間像1617は、第2の折り返しミラー1625の領域に配置される。
【0081】
レンズL1611は、第2の部分対物系1615内で唯一のレンズである。レンズ1611の前面と後面の両方が非球面として構成される。レンズL1611と凹ミラー1621の間の距離は、40.2mmである。第1の近軸中間像は、凹ミラー1621から300.48mmの距離を有し、第2の近軸中間像は、凹ミラー1621から316.25mmの距離を有する。従って、レンズL1611は、第1の中間像1613又は第2の中間像1617に対してよりも凹ミラー1621に対して近い位置に配置される。
【0082】
レンズL1611の凹ミラー1621に対面するレンズ面、すなわち、レンズL1611の後面は、30.9°の周縁光線同心度を有し、前面は、30.2°の周縁光線同心度を有する。すなわち、両方の面は、周縁光線同心から大きくずれる。
【0083】
図17は、反射屈折投影対物系1701のレンズ断面を示している。図17において図1による要素に対応する要素は、図1におけるものと同じ参照符号を1700という数値だけ増大した参照符号を有し、これらの要素の説明では、図1に関する説明を参照する。
【0084】
投影対物系1701に関する光学データは、表6にまとめられている。投影対物系1701は、像平面1709において開口数NA=1.2を有する。作動波長は、193.307nmである。像視野1707は、26.0mm×5.5mmであり、光軸1727からの1.98mmの最小距離を有する。投影対物系1701は、0.25という結像比の絶対値を有する。この場合、作動中に液浸液として水が最後のレンズ面と露光される物体との間に置かれる液浸投影対物系が含まれる。
【0085】
第1の部分対物系1711は、面1から22によって形成され、第2の部分対物系1715は、面24から28によって形成され、第3の部分対物系1719は、面30から58によって形成される。第1の部分対物系1711は、0.96という結像比の絶対値を有し、第2の部分対物系1715は、1.00という結像比の絶対値を有し、第3の部分対物系1719は、0.26という結像比の絶対値を有する。
【0086】
物体視野1703から出射し、開口絞り1729の位置で光軸1727と交差する全ての主光線は、凹ミラー1721において、凹ミラー1721の光学的使用領域の直径の7.5%よりも低い高さを有する。従って、凹ミラー1721は、投影対物系1701の瞳平面の領域に配置される。
【0087】
物体点(x=52mm,y=29.93mm)から出射する主光線は、第2の折り返しミラー1725と同じ位置で光軸1727と交差して光軸1727に対して垂直な仮想平面内で67.77mmの半径方向距離を有する。それとは対照的に、仮想周縁光線は、上述の平面内で1.27mmの半径方向距離しか持たない。この場合、物体点(x=52mm,y=29.93mm)は、物体視野1703内で光軸1727からの最大距離を有する。従って、第2の中間像1717は、第2の折り返しミラー1725の領域に配置される。
【0088】
レンズL1712は、第2の部分対物系1715内で唯一のレンズである。レンズ1712の前面と後面の両方が非球面として構成される。レンズL1712と凹ミラー1721の間の距離は33.4mmである。第1の近軸中間像は、凹ミラー1721から188.92mmの距離を有し、第2の近軸中間像は、凹ミラー1721から189.59mmの距離を有する。従って、レンズL1712は、第1の中間像1713又は第2の中間像1717に対してよりも凹ミラー1721に対して近い位置に配置される。
【0089】
レンズL1712の凹ミラー1721に対面するレンズ面、すなわち、レンズL1712の後面は、38.6°の周縁光線同心度を有し、前面は、20.0°の周縁光線同心度を有する。すなわち、両方の面は、周縁光線同心からずれる。投影対物系1101におけるレンズL1111、及び投影対物系1601におけるレンズL1611と比較すると、レンズL1712のレンズ屈曲は、レンズL1111又はL1611のものと反対である。レンズL1111又はL1611の前面の場合には、仮想周縁光線の交差点における表面法線は、周縁光線と光軸1127及び1627それぞれの間に延びるが、レンズL1712の前面の場合には、仮想周縁光線は、周縁光線の交差点における表面法線と光軸1727の間に延びている。その結果、レンズL1712の前面は、第1の中間像1713から入射する周縁光線に対して凸に湾曲する。
【0090】
図18は、半導体構成要素又は他の微細構造化構成要素を製造するように機能するマイクロリソグラフィのための投影露光装置1801を略示している。投影露光装置1801は、光源として193nmの作動波長を有するエキシマレーザ1803を有するが、例えば、157nm又は248nmの作動波長を有する他のエキシマレーザも可能である。下流に配置された照明系1805は、はっきりと境界が定められ、均一に照明され、同時に、角度分布に関して下流に配置された投影対物系1813の要件に適応された照明視野を発生させる。照明系1805は、照明モードを選択するためのデバイスを有し、それによって例えば照明系1805の射出瞳内、又は下流に配置された投影対物系1813の入射瞳内に可変瞳フィルファクタσを有する従来照明、環状照明、双極照明、又は四重極照明を発生させることができる。
【0091】
光方向に照明系1805の下流には、レチクル1807を保持して操作するためのデバイス1809が配置される。マスクとも呼ぶレチクル1807は、結像される構造を有する。デバイス1809を用いると、走査目的でレチクル1807を物体平面1811内で走査方向に移動させることができる。
【0092】
投影対物系1813は、図1、図11、図16,及び図17を用いて説明した反射屈折投影対物系である。反射屈折投影対物系1813は、レチクル1807の照明系1805によって照明される部分をウェーハ1815上に縮小方式で結像する。ウェーハ1815は、投影光による照射を受けて露光される感光層を有する。
【0093】
ウェーハ1815は、レチクルの走査移動と同期化されたウェーハ1815の平行移動を可能にするデバイス1819によって保持される。また、デバイス1819は、投影対物系1813の像平面1817内にウェーハ1815を最適に位置決めするマニピュレータを有する。デバイス1819は、投影対物系の液浸使用に向けて設計される。デバイス1819は、ウェーハ1815を保持するための浅い窪み又は凹部を有する保持ユニット1821を有する。保持ユニット1821は、液浸媒体1825が流れ出すのを防止する周縁1823を有する。
【0094】
投影露光装置は、中央コンピュータユニット1827によって制御される。
【0095】
従って、投影露光装置1801を用いて半導体構成要素又は他の微細構造化構成要素を製造するために、所定のパターンを有するレチクル1807が反射屈折投影対物系1813の物体平面1811内に設けられ、感光層を有するウェーハ1815が、反射屈折投影対物系1813の像平面に設けられ、照明系1805を用いてレチクル1807が照明され、最終的に、反射屈折投影対物系1813を用いてレチクル1807の照明領域が、ウェーハ1815上に結像される。
【0096】
(表4)
【0097】
(表5)
【0098】
(表6)
【符号の説明】
【0099】
1 反射屈折投影対物系
3 物体視野
5 物体平面
7 像視野
9 像平面
11 第1の部分対物系
13 第1の実中間像
15 第2の部分対物系
17 第2の実中間像
19 第3の部分対物系
23 第1の折り返しミラー
25 第2の折り返しミラー
L21、L22 レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体視野を第1の実中間像上に結像するための第1の部分対物系と、
前記第1の中間像を第2の実中間像上に結像するための第2の部分対物系と、
前記第2の中間像を像視野上に結像するための第3の部分対物系と、
を含み、
前記第2の部分対物系が、厳密に1つの凹ミラーを有し、かつ少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズを有する反射屈折対物系であり、かつ
物体平面から到着する放射線を前記凹ミラーの方向に偏向するための第1の折り返しミラー、及び該凹ミラーから到着する該放射線を像平面の方向に偏向するための第2の折り返しミラーが設けられた、
物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系であって、
前記第2の部分対物系の前記レンズの少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長に対して、かつ0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングを有する、
ことを特徴とする反射屈折投影対物系。
【請求項2】
投影光が1度だけ通過するレンズの少なくとも1つの面は、0.2%以上の反射率を有することを特徴とする請求項1に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項3】
前記反射防止コーティングは、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された少なくとも6つの層を含むことを特徴とする請求項2に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項4】
前記低屈折率を有する材料は、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、クリオライト、チオライト、及びこれらの組合せから成る群から選択される誘電体であることを特徴とする請求項3に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項5】
前記高屈折率を有する材料は、フッ化ネオジム、フッ化ランタン、フッ化ガドリニウム、フッ化ジスプロシウム、酸化アルミニウム、フッ化鉛、フッ化イットリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択された誘電体であることを特徴とする請求項3又は請求項
【請求項6】
前記第2の部分対物系は、0.8と1.25の間の結像比の絶対値を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項7】
前記凹ミラーは、瞳平面の領域に配置され、
前記凹ミラーで前記物体視野から出射する全ての主光線の最大高さが、該凹ミラーの光学的に利用されている領域の直径の20%よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項8】
前記第2の中間像は、前記第2の折り返しミラーの領域に配置され、
前記光軸に垂直に配置され、かつ前記第2の折り返しミラーと同じ該光軸との交差点を有する平面において、該光軸から、該光軸からの最大距離を有する前記物体視野内の物体点から出射するその主光線への半径方向距離の半分が、該光軸から前記物体平面において出射し、かつ前記像平面において前記最大開口数に対応する入射角を有する前記周辺光線の半径方向距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項9】
マイクロリソグラフィのための投影露光装置であって、
照明系と、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系と、
を含むことを特徴とする投影露光装置。
【請求項1】
物体視野を第1の実中間像上に結像するための第1の部分対物系と、
前記第1の中間像を第2の実中間像上に結像するための第2の部分対物系と、
前記第2の中間像を像視野上に結像するための第3の部分対物系と、
を含み、
前記第2の部分対物系が、厳密に1つの凹ミラーを有し、かつ少なくとも1つの投影光が2度通過するレンズを有する反射屈折対物系であり、かつ
物体平面から到着する放射線を前記凹ミラーの方向に偏向するための第1の折り返しミラー、及び該凹ミラーから到着する該放射線を像平面の方向に偏向するための第2の折り返しミラーが設けられた、
物体平面内の物体視野を像平面内の像視野上に結像するためのマイクロリソグラフィのための反射屈折投影対物系であって、
前記第2の部分対物系の前記レンズの少なくとも1つの面が、150nmと250nmの間の作動波長に対して、かつ0°と30°の間の入射角度範囲に対して0.2%よりも低い反射率を有する反射防止コーティングを有する、
ことを特徴とする反射屈折投影対物系。
【請求項2】
投影光が1度だけ通過するレンズの少なくとも1つの面は、0.2%以上の反射率を有することを特徴とする請求項1に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項3】
前記反射防止コーティングは、高屈折率を有する材料と低屈折率を有する材料とで交互に構成された少なくとも6つの層を含むことを特徴とする請求項2に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項4】
前記低屈折率を有する材料は、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、クリオライト、チオライト、及びこれらの組合せから成る群から選択される誘電体であることを特徴とする請求項3に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項5】
前記高屈折率を有する材料は、フッ化ネオジム、フッ化ランタン、フッ化ガドリニウム、フッ化ジスプロシウム、酸化アルミニウム、フッ化鉛、フッ化イットリウム、及びこれらの組合せから成る群から選択された誘電体であることを特徴とする請求項3又は請求項
【請求項6】
前記第2の部分対物系は、0.8と1.25の間の結像比の絶対値を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項7】
前記凹ミラーは、瞳平面の領域に配置され、
前記凹ミラーで前記物体視野から出射する全ての主光線の最大高さが、該凹ミラーの光学的に利用されている領域の直径の20%よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項8】
前記第2の中間像は、前記第2の折り返しミラーの領域に配置され、
前記光軸に垂直に配置され、かつ前記第2の折り返しミラーと同じ該光軸との交差点を有する平面において、該光軸から、該光軸からの最大距離を有する前記物体視野内の物体点から出射するその主光線への半径方向距離の半分が、該光軸から前記物体平面において出射し、かつ前記像平面において前記最大開口数に対応する入射角を有する前記周辺光線の半径方向距離よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系。
【請求項9】
マイクロリソグラフィのための投影露光装置であって、
照明系と、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の反射屈折投影対物系と、
を含むことを特徴とする投影露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−42155(P2013−42155A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219282(P2012−219282)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2010−194864(P2010−194864)の分割
【原出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2010−194864(P2010−194864)の分割
【原出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー (435)
【Fターム(参考)】
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