説明

反射部材の製造方法、ならびに反射部材を用いた反射シート、およびランプリフレクター

【課題】金属または金属酸化物を含む薄膜層/高分子フィルム/接着剤/支持体の構成を有する反射部材において、柚子肌やシワ等の外観不良がなく、かつ曲げ加工部や打ち抜き端部でも浮きや剥がれを生じない反射部材を提供すること。
【解決手段】残留溶媒量が5×10−5g/m以上1.5×10−3g/m以下である接着剤または接着フィルムを介して支持体(C)と高分子フィルム(B)とを、式(1)の条件で貼り合わせる。式(1):0.1≦P≦0.6(P:貼り合わせ用ラミネータの線圧(MPa))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属または金属酸化物を含む薄膜層を設けることにより光反射機能を付与された高分子フィルムを接着剤で支持体に貼り合わせた反射部材に関する。本発明は、反射部材の中でも特に金属を含む薄膜層によって優れた反射性能を有する反射部材に関する。反射部材は、液晶表示装置のバックライトの反射シートやランプリフレクター、プリンター及びFAX等に用いられる反射鏡、蛍光灯等の照明用反射傘、ストロボの反射傘等に使用される。
【背景技術】
【0002】
一般に用いられる、光反射機能を有する高分子フィルムを接着剤で支持体に貼り合わせた反射部材は、シートまたはロール形状で製造され、これに打ち抜き・折り曲げ加工等の二次加工を施すことによって、様々なサイズおよび形状となり、多種多様な用途に用いられる。板状の支持体と高分子フィルムを積層した構成の反射部材は、支持体と高分子フィルムを接着剤・粘着剤で貼り合わせることで容易に製造できる上、様々な支持体と組み合わせることができるため、使用目的により使い分けが可能である。例えば優れた反射性能を有する高分子フィルムである反射フィルムと金属板とを積層した反射部材は、細長いコの字型に加工され液晶表示装置(LCD)のバックライト用ランプリフレクターに使用されたり、様々な形に加工され蛍光灯の反射傘等に用いられたりする。
【0003】
このような構造を有する反射部材は、反射フィルムと支持体の接着不良によって、反射フィルムが曲げ部分で浮いたり、打ち抜き端部で剥がれたりすることがある。LCD用バックライトユニットは部材の高密度化が進んでいるため、例えば、反射フィルムの少しの浮きでも輝度のバラツキが発生し使用上問題になることがある。また、バックライト用ランプリフレクターの端部で反射フィルムの剥離がある場合、冷陰極管や導光板の挿入時に反射フィルムが折れたり歪んだりすることで、輝度にバラツキが生じたり、輝線や暗線が入る等の問題が発生することがある。このため、接着剤・粘着剤には打ち抜き端部や曲げ加工部でも、反射フィルムおよび支持体の両方と良好な密着性を保つことが要求される。
【0004】
一方、反射部材の表面形状はその光学性能に大きな影響を与えることがあり、目的の表面形状を保持することは非常に重要である場合が多い。例えばバックライト用ランプリフレクターに用いる反射部材では、拡散反射をできるだけ抑制することが輝度を高める上で重要である。従って一般に柚子肌と呼ばれる表面の荒れや、反射フィルムのシワは抑制しなければならない。
【0005】
高分子フィルムを接着剤層を介して支持体に貼り合せる場合、密着性を向上させるためには、接着剤層中の残留溶媒量を少なくすることが好適であることは一般的に知られている。残留溶媒量を少なくするためには、乾燥温度を高くしたり、乾燥時間を長くして溶媒の蒸発を促すことが容易に考えられる。しかしながら乾燥温度を上げたり、乾燥時間を長くすると、高分子フィルムにシワやカール等の外観不良が発生することが多い。従って現実には、密着性が良好でありながら外観不良発生させない条件で高分子フィルムを支持体に貼り付けた反射部材を製造することは難しく、外観と密着性のどちらか一方を犠牲にせざるを得なかった。
【0006】
このような課題に対し、特開2002−357711号公報(特許文献1)に、金属薄膜層を有する反射フィルム、接着剤層、支持体からなる反射部材の、接着剤層の膜厚と接着剤層中の残留溶媒量を一定の範囲に制御する製造方法が開示されている。しかし、ここで反射フィルムの金属薄膜層は接着剤層側であり、金属薄膜層が接着剤層とは逆側の反射フィルムの場合、開示された残留溶媒量の範囲では柚子肌が発生するとともに密着性も不十分である。
【特許文献1】特開2002−357711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の課題は、柚子肌やシワ等の外観不良がなく、かつ曲げ加工部や打ち抜き端部でも浮きや剥がれを生じない反射部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者等は、金属または金属酸化物を含む薄膜層が支持体との接着面とは逆側にある反射部材について鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)、高分子フィルム(B)、及び支持体(C)をこの順に含んでなる積層構造を有する反射部材の製造方法に於いて、残留溶媒量が5×10−5g/m以上1.5×10−3g/m以下である接着剤または接着フィルムを介して支持体(C)と高分子フィルム(B)とを、下記式(1)の条件で貼り合わせることを特徴とする反射部材の製造方法に関する。
式(1):0.1≦P≦0.6
P:貼り合わせ用ラミネータの線圧(MPa)
高分子フィルム(B)と支持体(C)を、下記式(2)の条件で乾燥させると好ましい。
式(2):Tb+10≦Tmax≦Tb+60
Tb:使用溶媒中でもっとも沸点が高い溶媒の沸点(℃)
Tmax:接着剤乾燥用の乾燥炉内の最高温度(℃)
また、金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)が銀またはアルミニウムを主体とする層を有することが好ましい。さらに本発明は、上述の製造方法で得られた反射シート、および上述の製造方法で得られた反射部材を、金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)側を内側に折り曲げ加工したランプリフレクターに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によって、柚子肌やシワ等の外観不良がなく、かつ曲げ加工部や打ち抜き端部でも反射フィルムの浮きや剥がれを生じない反射部材、及び、その反射部材を用いた反射シート、およびランプリフレクターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明者らは反射部材の表面平滑性と、反射フィルムと支持体との密着性を両立するためには、接着剤または接着フィルム中の残留溶媒量が重要であることを見出した。ここで、反射フィルムとは、金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)を高分子フィルム(B)に設けたものを指す。さらに、反射フィルムを支持体に貼り合せる際に、ある範囲の線圧で貼り合わせること、ある範囲の温度で接着剤を乾燥することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明のポイントは接着剤または接着フィルム中の残留溶媒量と貼り合わせ時のラミネーターの線圧である。接着剤または接着フィルム中の残留溶媒は支持体と貼り合せる際、貼り合わせ時にかける熱により揮発する。金属または金属酸化物を含む薄膜層を有しない高分子フィルムでは、揮発した溶媒は高分子フィルムを通過して大気中に放出されるため、残留溶媒によって外観不良を発生させることは少ない。しかしながら、高分子フィルム上に金属または金属酸化物を含む薄膜層を設けた場合、金属または金属酸化物を含む薄膜層のガス透過率が低いために揮発した溶媒は大気中に放出されず、高分子フィルムと支持体の間、または金属または金属酸化物を含む薄膜層と高分子フィルムの間で気泡となりやすい。この気泡によって反射部材表面には微小凹凸が形成され、いわゆる柚子肌となり、外観不良および光学性能の低下を引き起こす。また、この気泡が高分子フィルムと支持体の間に形成された場合、高分子フィルムと支持体の接触面積は小さくなるため、高分子フィルムと支持体の密着性は低下する。さらに残留溶媒は接着剤の凝集力を低下させるため、より一層密着性を低下させる。密着性が不足した場合、例えば曲げ加工を行う際に高分子フィルムの浮きが発生するなどの問題が生ずる。従って柚子肌等の表面形状不良と密着性の両方から、残留溶媒量は少ない方が良い。残留溶媒量を少なくする方策としては、例えば乾燥温度を上げること、乾燥時間を長くして蒸発を促すことが挙げられる。しかしながら乾燥条件を厳しくすると高分子フィルムにシワやカール等の外観不良が発生することが多い。
【0012】
本願発明者らは接着剤または接着フィルム中の残留溶媒量を5×10−5g/m以上1.5×10−3g/m以下となるように乾燥させることが好適であることを見出した。この範囲よりも多い場合には柚子肌の原因となりやすく、一方、この範囲よりも少なくするために乾燥条件を厳しくすると反射フィルムに深いシワが入ったり、反射フィルムが大きくカールしたり、反射フィルムが膨張・収縮することによる歪みが発生しやすい。残留溶媒量がこの範囲内になるように乾燥するためには、乾燥炉内の最高温度を、使用している溶媒の中でもっとも沸点が高い溶媒の沸点よりも10℃以上60℃以下の範囲で高く設定することが好ましい。この範囲よりも低い温度で乾燥した場合、残留溶媒量を2×10−3g/m以下にすることは非常に難しく、従って柚子肌の原因となりやすい。一方、この範囲よりも高い温度で乾燥した場合、溶媒が一気に揮発し接着剤中に気泡が形成されやすい。接着剤または接着フィルム中の気泡は残留溶媒と同様に柚子肌の原因となりやすい。
【0013】
支持体(C)に貼り合せる際のラミネータの線圧を0.1以上0.6MPa以下とすることで、さらに表面平滑性の良い反射部材が得られる。接着剤または接着フィルム中の溶媒残留量が前記した好適な範囲であり、かつ本願で示した範囲の適度な圧力をかけながら貼り合わせると、接着剤乾燥時に生じた細かなシワが消去され、外観および性能の良い反射部材を得ることができる。この範囲より弱い線圧ではシワを消去しきれない上にフィルムと支持体に存在する空気を除去しきれず、空気由来の柚子肌が発生することがある。一方、この範囲より強い線圧ではシワは消去できるものの、圧力が強すぎるため、フィルムや支持体が歪んで外観不良となることがある。
【0014】
本発明に用いる接着剤としては、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコン系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられるが、これらの種類に限定されるわけではなく、実用上の接着強度があれば良い。具体例を挙げると、ポリエステル系接着剤は綜研化学(株)製SKダイン5273、ダイアボンド工業(株)製SP7029×7、ポリウレタン系はコニシ(株)ボンドKU10、エポキシ系は三井化学(株)製EPOX AH−602等が挙げられる。接着剤に用いる溶媒としては酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、種々のアルコール等が挙げられる。
【0015】
接着剤の塗布方法としては、バーコート法、メイヤーバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法等があげられるが、これらは使用する接着剤の種類、粘度、塗布量、塗布速度、得られる面状態等を考慮して選定される。
【0016】
接着剤の乾燥方法は、接着剤の種類、高分子フィルムの耐熱性、塗布量、装置の乾燥炉の設計等を考慮して、直接加熱、熱風加熱、赤外線ヒータ等の加熱源および、乾燥温度、乾燥時間等を選定する。
【0017】
接着剤または接着フィルムの厚さとしては、4μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上10μm以下である。あまりに厚すぎると材料費の点からコスト増となり好ましくなく、あまりに薄すぎると曲げ加工を行った場合に十分な密着性が得られない場合がある。ラミネートは接着剤塗布、乾燥後に続けて行ってもよいし、乾燥後のフィルムを一旦巻取り、接着剤とフィルムをなじませるためにエージングをした後に改めて熱ロール等で加熱溶融させながら行ってもよい。
【0018】
支持体(C)と貼り合せるときのラミネータの線圧は前記したとおりであるが、同時に加熱して接着剤を溶融させ密着しやすくしてもよい。またラミネート後にさらに加熱することで密着性を上げることもできる。
【0019】
密着強度としては90°剥離で測定した際の剥離強度が0.5kN/m以上であり、好ましくは0.7kN/m以上である。0.5kN/mに達しない場合には、折り曲げ加工した時に、反射フィルムが支持体から浮き上がる等の事態を引き起こすため好ましくない。
【0020】
金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)の形成法は、湿式法および乾式法がある。湿式法とはメッキ法の総称であり、溶液から銀等の金属を析出させ膜を形成する方法である。具体例を挙げるとすれば、銀鏡反応等がある。一方、乾式法とは、真空成膜法の総称であり、具体的に例示するとすれば、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト真空蒸着法、スパッタ法等がある。とりわけ、本発明には連続的に成膜するロールツロール方式が可能な真空成膜法が好ましく用いられる。
【0021】
真空蒸着法では金属の原材料を電子ビーム、抵抗加熱、誘導加熱等で溶融させ、蒸気圧を上昇させ、好ましくは0.1mTorr(約0.01Pa)以下で高分子フィルム表面に蒸着させる。この際に、アルゴン等のガスを0.1mTorr(約0.01Pa)以上導入させ、高周波もしくは直流のグロー放電を起こしてもよい。
【0022】
スパッタ法では、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ECRスパッタ法、コンベンショナルrfスパッタ法、コンベンショナルDCスパッタ法等を使用し得る。スパッタ法においては、原材料は銀やアルミニウム等、金属の板状のターゲットを用いればよく、スパッタガスには、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等を使用し得るが、好ましくはアルゴンが用いられる。ガスの純度は、99%以上が好ましいが、より好ましくは99.5%以上である。
【0023】
金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)は、金属を含んでいればよく、合金でも金属の化合物でも使用できる。特に、金属酸化物や、金属以外の元素含有量が少ない金属が好ましく使用される。金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)には、使用する用途に適した金属または金属酸化物等が使用されるが、例えば、銀、アルミニウム、これらの合金等反射率の高い金属が好適に使用され、特に、高反射率を有する銀が好適に使用される。銀が、反射性能に害を及ぼさない程度の量の、金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、タンタル、クロム、インジウム、マンガン、チタン等の金属を含んでもよい。
【0024】
金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)の厚さは、使用する用途によって様々であるが、5nm以上500nm以下である。例えば、金属を含む薄膜層としては、銀またはアルミニウムを使用し、厚さは70nm〜300nmが好ましく、より好ましくは100nm〜200nmである。この値よりあまり薄いと、膜厚が十分でないために、透過する光が存在し、反射率が低下する。一方、この値を越えてあまり厚くしても反射率は上昇せず、飽和傾向を示す上に、金属を含む薄膜層と高分子フィルム(B)の密着性が低下するので好ましくない。膜厚の測定は、触針粗さ計、繰り返し反射干渉計、マイクロバランス、水晶振動子法等があるが、水晶振動子法では成膜中に膜厚が測定可能なので所望の膜厚を得るのに適している。また、前もって成膜の条件を定めておき、試料基材上に成膜を行い、成膜時間と膜厚の関係を調べた上で、成膜時間により膜を制御する方法もある。
【0025】
金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)は、単層でも多層でもよい。例えば、銀やアルミニウムを使用した反射層の他、さらに反射層保護や反射率を高める(増反射)目的で他の金属、合金、またはそれらの酸化物等を積層した、多層構造でも差し支えない。
【0026】
高分子フィルム(B)には、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、三酢酸セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂等が使用できるが、必ずしもこれらに限定されるわけではなく、ある程度ガラス転移温度が高いものならば使用できる。
【0027】
また、必要に応じて紫外線吸収剤、接着促進剤、ぬれ性改良剤などの添加物を混入したものであっても差し支えない。さらに、高分子フィルム(B)の表面に、コロナ放電処理、グロー放電処理、表面化学処理、粗面化処理等の物理的化学的表面改質処理を行っても差し支えない。高分子フィルム(B)の厚さには限定的な値はないが、25以上100μm以下程度が好ましく用いられる。この値よりも薄いと、ハンドリング性が悪く、この値よりも厚いと、折り曲げ加工した際に、反射フィルムの浮きや剥がれが発生しやすくなる。
【0028】
支持体(C)としては特に限定されないが、形状保持性を考慮すると、特に金属板が好適に利用される。金属板としては、アルミニウム板、アルミニウム合金板、真鍮板、ステンレス板、鋼鈑等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるわけではなく、反射部材の用途により選択される。例えば、アルミニウムは軽量かつ加工性に優れ、また熱伝導率が高くそれにかかる熱を効果的に大気中に逃がすことができるため、ノートパソコンなどのLCDのバックライトに用いられる反射部材に好適に利用できる。アルミニウム合金は軽量かつ機械的強度が強いことから、構造部材を兼ねる反射部材に好適に利用できる。ステンレスは機械的強度が大きく、また耐食性に優れているので、屋外で使用される反射部材をはじめ、材料の薄板化が必要な用途に好適に用いられる。真鍮(黄銅)、すなわち銅亜鉛合金は機械強度の大きいことに加え、はんだ付けが容易なためアースを必要とする反射部材に好適に用いられる。鋼板は安価であることから、コストを優先する用途である蛍光灯用反射傘に好適に用いられる。
【0029】
支持体(C)としての金属板の厚さは、コスト低減及び曲げやすさの観点からは薄いほうが好ましく、反射フィルムなどとのラミネートする際の容易さや形状保持性の観点からは厚い方が良い。金属板の好ましい厚みは0.05mm以上5mm以下であり、さらに好ましくは0.1mm以上1.0mm以下である。
【実施例】
【0030】
以下実施例を用いて本発明について説明する。なお、実施例及び比較例中の、接着剤中の残留溶媒量測定、反射フィルムと支持体との密着強度測定、および外観は以下の方法で測定・評価した。
(1)残留溶媒量:容量500mlの密閉容器に、試料0.2mを入れてふたをし、120℃で30分加熱してガスを追い出す。ここからガス1ccを測定に用いた。GC−8A((株)島津製作所製)で、カラムにPEG1500(3m×3mmφ)を用い、温度条件をカラム温度80℃、注入口温度200℃にて測定した。
(2)密着強度測定:平板の状態で行うため、打ち抜き加工・折り曲げ加工前の反射部材で行った。サンプルを幅1cmに切断して、支持体から反射フィルムをクロスヘッドスピード50mm/min.で90°剥離した。測定には(株)島津製作所製 AGS−5kNGを使用した。
(3)外観:柚子肌やシワなど外観不良がないか目視観察を行った。ここで、シワには接着剤塗工後の乾燥時に発生し、ラミネート工程で消去できなかった“フィルムシワ”と、ラミネート工程で支持体が歪むことで発生する“支持体シワ”の両方がある。
【0031】
〔実施例1〕厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET。帝人デュポン(株)製タイプG2)上に、DCマグネトロンスパッタ法で、2%のAlがドープされた酸化亜鉛(純度99.9%)をターゲットとし、純度99.5%のアルゴンをスパッタガスとして、酸化アルミニウムが2%ドープされた酸化亜鉛を膜厚5nmになるように形成した。続いて、このシートをスパッタ装置から取り出すことなく、同様にDCマグネトロンスパッタ法で、純度99.9%の銀をターゲットとし、純度99.5%のアルゴンをスパッタガスとして銀を膜厚200nmになるように形成した。続いて、このシートをスパッタ装置から取り出すことなく、2%のAlがドープされた酸化亜鉛(純度99.9%)をターゲットとし、純度99.5%のアルゴンをスパッタガスとして、酸化アルミニウムが2%ドープされた酸化亜鉛を膜厚10nmになるように形成した。このようにして、金属または金属酸化物を含む薄膜層3層をPETフィルム上に形成することで反射フィルムを得た。この反射フィルムの薄膜層形成面とは逆側に、メチルエチルケトン・トルエン混合溶剤(Tb=111℃:トルエンの沸点)のホットメルトタイプポリエステル系接着剤(ダイアボンド工業(株)製SP7029×7)を、乾燥後の接着剤厚みが7μmになるようリバースコート法で塗布し、4台の5m乾燥炉(計20m)の乾燥温度を前から95・105・125・135℃、滞留時間各15秒(計1分)で乾燥させた。次に、支持体に厚さ0.1mmのSUS板を使用し、加熱したラミネートロールに線圧0.5MPaで通した後、加熱機中でSUS板温度が155℃になるまで加熱した後室温まで冷却し、反射部材を得た。
【0032】
〔実施例2〕乾燥温度を前から110・120・140・150℃とした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0033】
〔実施例3〕乾燥温度を前から125・135・155・165℃とした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0034】
〔実施例4〕ラミネータの線圧を0.15MPaとした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0035】
〔比較例1〕ラミネータの線圧を0.05MPaとした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0036】
〔比較例2〕ラミネータの線圧を0.7MPaとした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0037】
〔比較例3〕乾燥温度を前から80・90・100・110℃とした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0038】
〔比較例4〕乾燥温度を前から85・95・110・120℃とした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0039】
〔比較例5〕乾燥温度を前から140・145・170・175℃とした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0040】
〔比較例6〕ラミネータの線圧を0.8MPaとした以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
【0041】
〔実施例5〕比較例3で得られた反射フィルムを、支持体とラミネートする前に改めて乾燥温度145・145・150・150℃、滞留時間各15秒(計1分)の乾燥炉で追乾燥した以外は実施例1と同様にして反射部材を得た。
実施例及び比較例で得られたサンプルについて、接着剤塗工、乾燥後の接着剤中の残留溶媒量測定、反射フィルムと支持体との密着強度測定、および外観評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1〜5は残留溶媒量もラミネート線圧も適正な場合であり、十分な密着強度を持ち、かつ外観不良もない良好な反射部材が得られている。比較例1は残留溶媒量は適正だがラミネート線圧が不足の場合であり、圧不足による空気の噛み込みによって、わずかに柚子肌が発生している。比較例2は逆にラミネート線圧が過剰の場合であり、支持体がわずかに歪んでわずかながら支持体シワが発生している。一方、比較例3および4は残留溶媒量が過剰なため、密着強度が不足し、かつ柚子肌が発生し外観も不良である。比較例5は乾燥条件を上げ過ぎたためにフィルムシワが発生し、外観不良である。比較例6は比較例5のラミネータの線圧を上げた場合であり、過剰な圧力がかかることによってフィルムシワは軽減されたものの、支持体が歪んで酷い支持体シワが発生している。これより、残留溶媒量がある一定の範囲にある反射フィルムを、ある一定のラミネート線圧で支持体に貼り合わせた場合に、良好な外観と良好な密着強度を有することが分かる。
【0044】
金属または金属酸化物を含む薄膜層/高分子フィルム/接着剤/支持体の構成を有する反射部材において、接着剤中の残留溶媒量が一定の範囲内であり、かつ一定のラミネート線圧で支持体に貼り合わせることによって、柚子肌やシワ等の外観不良がなく、かつ曲げ加工部や打ち抜き端部でも浮きや剥がれを生じない反射部材、特に優れた反射率を有する反射部材、及び、その反射部材を用いた反射シート、およびランプリフレクターを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)、高分子フィルム(B)、及び支持体(C)をこの順に含んでなる積層構造を有する反射部材の製造方法に於いて、残留溶媒量が5×10−5g/m以上1.5×10−3g/m以下である接着剤または接着フィルムを介して支持体(C)と高分子フィルム(B)とを、下記式(1)の条件で貼り合わせることを特徴とする反射部材の製造方法。
式(1):0.1≦P≦0.6
P:貼り合わせ用ラミネータの線圧(MPa)
【請求項2】
高分子フィルム(B)と支持体(C)を、下記式(2)の条件で乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の反射部材の製造方法。
式(2):Tb+10≦Tmax≦Tb+60
Tb:使用溶媒中でもっとも沸点が高い溶媒の沸点(℃)
Tmax:接着剤乾燥用の乾燥炉内の最高温度(℃)
【請求項3】
金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)が銀またはアルミニウムを主体とする層を少なくとも1層有することを特徴とする、請求項1または2に記載の反射部材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の製造方法で得られた反射シート。
【請求項5】
請求項1乃至3に記載の製造方法で得られた反射部材を金属または金属酸化物を含む薄膜層(A)側を内側に折り曲げ加工したランプリフレクター。

【公開番号】特開2008−119973(P2008−119973A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307278(P2006−307278)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】