説明

反応性希釈剤

アリルオキシエステル:RnM(OR’)x(OR’’)y[式中、Mは、ケイ素、炭素、ホウ素またはチタンであり;Rは、水素またはヒドロカルビル基であり;R’は、アリル不飽和ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基であり;R’’は、R’の飽和アナログであり;xは、少なくとも1であり、yは、ゼロであってもよく;Mがホウ素である場合に、n+x+y=3であり、Mがケイ素、炭素またはチタンである場合に、n+x+y=4である。]は、ペイントまたは塗料配合物中で反応性希釈剤として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、ケイ素、炭素、ホウ素およびチタンのアリルオキシ誘導体;それらの製造方法;および、塗料およびペイント配合物中での反応性希釈剤としてのそれらの使用に関する。
【0002】
反応性希釈剤は、通常、ペイントおよび塗料の配合および処理の間に溶剤として作用する比較的低い粘度および比較的高い沸点(または低い飽和蒸気圧)を有する化合物または化合物の混合物である。反応性希釈剤の利点は、このような希釈剤がアルキッド樹脂の成分と共重合しうることである。したがって、反応性希釈剤は、このような配合物中で通常使用される従来の溶剤の一部または全てを代替するために使用し、それによって、塗料を乾燥する際の溶剤の大気中へのロスを低下させる。反応性希釈剤としてのアリルアルコールで一部エーテル化された二-および多価アルコールのエステルの使用は、EP-A-0 253 474に記載されている。しかし、これらエステルは、おおよそ0.5ポアーズ(50ミリパスカル秒)の比較的高い粘度を有し、したがって、限られた数のペイント配合物においてのみしか使用することができない。さらに、アリルアルコールエステルは、また、加水分解を受けやすく、したがって、望ましくないアリルアルコールをリリースしかねない。また、アリルアルコールで一部エーテル化されたエステルを含有するポリマー配合物がラジカル状態を利用して硬化に賦される時、分子の破砕の危険性が存在し、これにより、望ましくないアクロレイン蒸気をリリースしかねない。溶剤として使用する間、高級アリルアルコール、例えば、オクタジエノールの破砕生成物は、はるかに揮発性が低く、したがって、これらの物質に近づいてもヒトに危害が少ない。
【0003】
アルキッド樹脂は、装飾用のペイントの周知の成分であり(例えば、Martens,CR,Ed.,による“The Technology of Paints,Varnishes and Lacquers”Roberts Krieger Publishingにより発行(1974)参照)、多塩基性酸または酸無水物、多価アルコールおよび脂肪酸またはオイルから製造することができる。U.S.特許3,819,720は、参考とすることによって本明細書に組み込むが、このようなアルキッド配合物を製造する方法を記載している。アルキッド樹脂は、市販入手可能であり、通常、大量の溶剤(例えば、ミネラルスピリット,芳香族炭化水素)を含有する塗料組成物にて使用される。その他のタイプのペイントおよび塗料配合物は、脂肪酸改質されたアクリレート、不飽和ポリエステルおよび比較的高い固体含量(ハイソリッド)を有するものを基体としている。
【0004】
アリルオキシ誘導体は、U.S.特許6,130,275および6,103,801;および、Zabel et al.,によるProgress in Organic Chemistry 35 (1999)255-264にて、反応性希釈剤として使用されることが記載されている。
【0005】
さて、ホウ素、チタン、ケイ素および炭素のある種の特異的なアリルオキシ誘導体が商業的に実施可能な収率および純度で製造することができ、種々のペイントおよび塗料配合物にて反応性希釈剤として優れた性能を有することが見出された。
【0006】
発明の概要
アリルオキシエステル:RnM(OR’)x(OR’’)y[式中、Mは、ケイ素、炭素、ホウ素またはチタンであり;Rは、水素またはヒドロカルビル基であり;R’は、アリル不飽和ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基であり;R’’は、R’の飽和アナログであり;xは、少なくとも1であり、かつ、yは、ゼロであってもよく;Mがホウ素である場合に、n+x+y=3;および、Mがケイ素、炭素またはチタンである場合に、n+x+y=4である。]が、ペイントまたは塗料配合物中にて反応性希釈剤として使用される。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明の1つの態様にて、アリルオキシチタネートおよびアリルオキシボレートが製造され、これらは、ペイントまたは塗料配合物のための反応性希釈剤として使用することができる。
【0008】
本発明の反応性希釈剤としては、式:
RnM(OR’)x(OR’’)y (I)
[式中、Mは、ケイ素、炭素、ホウ素およびチタンから選択され;
Rは、水素から;および、10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルおよびアルコキシ基から選択され;
R’は、22個までの炭素原子を含有する不飽和ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基から選択されるが、ただし、Mがホウ素またはチタンである時、少なくとも1つのR’は、ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基であり;
R’’は、R’の飽和アナログから選択され;
炭素について、n=0または1であり、ホウ素およびチタンについて、n=0であり;
xおよびyは、
Mがホウ素である場合に、n+x+y=3;および、
Mがケイ素、炭素またはチタンである場合に、n+x+y=4;
となるように、xが少なくとも1であり、かつ、yがゼロであってもよい数値である。]
で表される1つ以上のアリルオキシ誘導体が挙げられる。
【0009】
本発明の個々の化合物について、xおよびyの値は、整数であり、それらの合計は、Mの原子価を表す:しかし、大量のこれら化合物は、xおよびyについて値の変動する個々の化合物の混合物を表す分数測定値を有することもできる。
【0010】
上記式(I)によって表される本発明の化合物にて、R’は、
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、R1は、HもしくはC1-C4アルキル基または10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシアルキル基であり;
R2は、HもしくはC1-C4アルキル基または10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシアルキル基であり;
R3は、HまたはC1-C4アルキル基であり;
R4は、H、8個までの炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、8個までの炭素原子を有するアルケニル基、12個までの炭素原子を有するアリール基またはアラルキル基、または、10個までの炭素原子を有するヒドロカルビルオキシアルキル基であるか;または、
R4は、R1と一緒に合わさった時、その中のアルキル置換基と環式アルキレン基を形成し、その場合、R2は、Hである。]
として表されるアリルアルコールから誘導するのが適当である。
【0013】
本発明にて有用な典型的なアリルアルコール誘導体にて、R1、R2およびR3は、水素、メチルおよびエチル基から個々に選択される。また、本発明にて有用な典型的なアリルアルコール誘導体にて、R4は、7個までの炭素原子を含有し、好ましくは、末端不飽和を含有するアルケニル基、例えば、ブテ-3-エニル、ペンテ-4-エニルおよびヘキセ-5-エニル基から選択される。その他の典型的なアリルアルコール誘導体にて、R4は、7個までの炭素原子を含有するアルコキシまたはアルコキシアルキレン、例えば、t-ブトキシ、t-ブトキシメチレン、イソプロポキシ、エトキシ、メトキシ等であってもよい。
【0014】
好ましいアリルアルコールは、炭素-炭素二重結合の周りの立体的な阻害が小さく、これにより、塗料樹脂との反応性を促進する。しかし、適した反応性希釈剤は、高い蒸気圧を有するので、好ましいアリルアルコール出発化合物は、置換されている。例えば、R1は、sec-ブテニルであってもよく、R2、R3およびR4は、水素である。アリルアルコールがアルコキシル化されていない場合、C8-10アルコールが好ましいものの、C4-6アルコキシル化された誘導体が有用である。
【0015】
反応体アリルアルコールR’OHは、本発明のアリルオキシ誘導体を製造するために使用され、当業者公知の数種の方法で製造することができる。例えば、オクタジエノールは、ブタジエンと水とのテロマー化によって製造することができ、これは、異性体(主として、2,7-オクタジエン-1-オールと少量の1,7-オクタジエン-3-オール)の混合物を生成する。あるいは、反応体アリルアルコールと飽和されたアナログR’’OHとは、対応するα,β-不飽和アルデヒドの還元によって(例えば、水素化によって)製造することができ、これにより、アリルアルコールとその飽和されたアナログとの混合物を生ずる。幾つかのその他のアリルアルコールは、周知の付加反応により共役ジエンから製造することができる。さらに、その他のアリルアルコールは、オレフィンとカルボン酸から不飽和エステルを最初に形成させ、続いて、そのエステルの加水分解により製造することができる。この後者の反応は、上記したその他の反応の幾つかのように、とりわけ、所望されるアリルアルコール、その異性体およびその飽和されたアナログを含む生成物の混合物を生ずる。アリルアルコールとその飽和されたアナログおよび/またはその異性体との混合物は、ついで、そのまままたは所望されるアリルアルコールを単離するためにさらに精製した後、使用して、上記式(I)によって表されるホウ素およびチタンのアリルオキシ誘導体を製造することができる。
【0016】
アリルアルコールの置換を変えることを通して、最適化した特性を有する反応性希釈剤を製造することができる。アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを使用し、このようなアルキレンオキシドの量比を変化させてアルコキシル化された誘導体を形成すると、種々の溶媒和特性を有する反応性希釈剤が製造される。かくして、反応性希釈剤は、個々の塗料樹脂に適合させることができる。溶媒和特性は、当業者公知のように、希釈剤の酸素含量に関係づけることができる。本発明に従い製造される反応性希釈剤は、水混和性に影響を及ぼすであろう種々の量のグリコールエーテル官能基を含むのがよい。
【0017】
アルコキシル化またはアリールオキシル化されたアリルアルコールを反応体として使用した上記方法の改良によって製造される化合物は、中心ホウ素またはチタン原子(M)に結合されたアリルエーテルアルコールから誘導される少なくとも1つのリガンド基を含み、かつ、一般式:
[RO(CR6R7-CR8R9)pO]-M (III)
[式中、Rは、22個までの炭素原子を含有する飽和または不飽和ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基であるが、ただし、少なくとも1つのリガンド基にて、Rが、少なくとも1つのアリル不飽和を含有し;
Mは、ホウ素(III)もしくはチタン(IV)またはケイ素もしくは炭素であり;
R6、R7、R8およびR9は、水素;および、10個までの炭素原子を含有するアルキル、アルキレンおよびアリール基から個々に選択され;
nは、Mの原子価であり;
pは、0〜5であるが、ただし、pは、少なくとも1つのリガンド基について1である
。]
を有する。
【0018】
炭素およびケイ素誘導体については、水素またはC1-C10ヒドロカルビル基が、1つのアリルオキシ基の代わりをしてもよい。
アリルアルコールは、適当な触媒の存在で、オレフィンオキシドまたはアリーレンオキシドと反応させることによって対応するアリルエーテルアルコールに変換させることができる。この反応は、出発アリルアルコールの酸素原子に結合したヒドロキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、ヒドロキシアリーレン基またはポリオキシアリーレン基を有する生成物を生ずるであろう。
【0019】
アリルアルコールのエーテルは、アリルアルコールのアルコキシル化によるか、オクタジエノールのエーテルの場合には、テロマー化によるかのいずれかによって誘導することができる。式I中の基R6、R7、R8およびR9は、典型的には、適当な触媒の存在で、アリルアルコールと適度に反応するエポキシドから誘導されて、ヒドロキシエーテルを形成する。
【0020】
ヒドロキシエーテルを形成するためのエポキシ化反応は、とりわけ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブタジエンンモノ-オキシド、シクロヘキセンオキシドおよびスチレンオキシドが挙げられるエポキシドの1つ以上を使用し、行うことができる。この工程に使用されるエポキシドの量は、ヒドロキシエーテルにて所望されるアルコキシ基の数に依存するであろう。使用するエポキシドの量は、アリルアルコール反応体に基づき、0.1〜20molの範囲が適当であり、好ましくは、1〜5molの範囲がよい。
【0021】
エポキシ化工程は、塩基触媒の存在で行うのが適当である。使用することのできる塩基触媒の例としては、アルカリ金属水酸化物およびアルコキシド、例えば、水酸化ナトリウムまたはカリウムおよびアルコキシド;ならびに、その他の金属塩、例えば、酢酸カリウムが挙げられる。典型的な塩基触媒は、カリウムt-ブチルブトキシドである。
【0022】
エポキシ化反応は、50〜180℃の範囲の温度、好ましくは、60〜140℃の範囲の温度で行うのが適当であり、典型的には、適当な非反応性希釈剤、例えば、液体アルカンまたはシクロアルカン中で行われる。この工程の反応圧は、自己発生的であるのが適当であり、好ましくは、100〜700kPaである。
【0023】
この工程で形成されるヒドロキシエーテルは、典型的には、適当な中和剤、例えば、ケイ酸マグネシウムの使用により反応混合物から分離し、ついで、濾過して、中和剤とかくして形成された中和塩とを除き、所望されるヒドロキシエーテルを含む濾液を後に残す。
【0024】
第1の工程にてかくして生成させたヒドロキシエーテルは、精製することなくそのまま、または、場合によっては、エステル化工程について(例えば、蒸留により)精製後のいずれかにて使用することができる。
【0025】
本発明のもう1つの記載にて、式(II)で表される反応性希釈剤を形成するために使用されるアリルエーテルアルコールは、
R’OH
[式中、R’は、R(OCR6R7-CR8R9)pであり、p=0〜5であり、式(I)にて表されるのと同様の用途を有する。]
として示すことができる。
【0026】
上記したように、本発明の化合物は、その各々がそれらの原子価に適合した3つまたは4つのリガンド、例えば、それらに結合したアルコキシまたはハロ基を有するホウ素またはチタン化合物とアリルアルコール(R’OH)とを反応させることによって製造することができ、適当な中心原子Mの置換された誘導体を生成する。
【0027】
アリルアルコール、例えば、アリルエーテルアルコールと、M-Xn誘導体、例えば、ハライドまたはアルコキシドとの間の反応は、不活性ガスによる、例えば、窒素パージによるそのシステムから酸素、その他の酸化性ガスまたは水分をパージすることによって、不活性かつ乾燥雰囲気中にて行うのが適している。ガス抜きしたら、M-Xn誘導体を添加する。
【0028】
本発明のホウ素酸塩またはチタン酸塩誘導体を形成するための典型的な方法にて、アリルアルコールは、3価のホウ素またはチタン4価の塩(M-Xn)、例えば、ハライドまたはアルコキシド(好ましくは、C1-C5アルコキシド)と反応させて、アリルホウ酸塩またはチタン酸塩を形成する。M-Xnという記載にて、Mは、ホウ素またはチタンであり、Xは、ハライドおよびアルコキシドから選択される適当なリガンドであり、nは、Mの原子価である。本発明にて有用なホウ素塩およびチタン塩の典型的な例としては、ボロントリクロライド、ボロントリブロマイド、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、トリエチルボレートおよびトリメチルボレートが挙げられる。それぞれのホウ素塩またはチタン塩のリガンドは、本発明のアリルホウ素酸塩またはチタン酸塩から適当な反応条件下でアリルアルコールと交換されうる必要性がある。好ましくは、初期リガンドは、遊離アルコールまたは不溶性の塩として反応システムから除去され、これにより、交換反応の完了を推進する。
【0029】
中心原子Mは、原子価3のホウ素、すなわち、B(III)と、原子価4のチタン、すなわち、Ti(IV)とから選択される。かくして、本発明のホウ素含有誘導体は、アルケニルボレートまたはアリルオキシボランと称することができ、チタン含有誘導体は、アルケニルチタネートと称され、さらに詳しくは:
Ti(OR’)4 -テトラアリルチタネート
B(OR’)3 -トリアリルオキシボラン(またはトリ-アリルボレート)
として表される。
【0030】
式(II)で表されるアリルアルコールの具体的な例としては、とりわけ、2,7-オクタジエノール(ここで、R1、R2およびR3は、Hであり、R4は、ペンテ-4-エニル基である);2-エチル-ヘキセ-2-エン-1-オール(ここで、R1およびR3は、Hであり、R2は、エチル基であり、R4は、n-プロピル基であり、この化合物は、以降、便宜上“2-エチルヘキセノール”と称す); 2-エチルアリルアルコール;ヘプテ-3-エン-2-オール;1,4-ブテ-2-エンジオールモノ-t-ブチルエーテル(ここで、R4は、t-ブトキシメチレン基である);1,4-ブテ-2-エンジオールモノα-メチルベンジルオキシエーテル(ここで、R4は、α-メチルベンジルオキシ基である);1,4-ブテ-2-エン-ジオールモノα-ジメチルベンジルオキシエーテル(ここで、R4は、α-ジメチルベンジルオキシ基である);1,2-ブテ-3-エン-ジオールモノヒドロカルビルオキシアルキレンエーテル(すなわち、R1=ヒドロカルビルオキシアルキレン基であり、R2、R3およびR4=Hである);2-ヒドロキシカルビルオキシアルキレンアリルアルコール(すなわち、R1、R3およびR4=Hであり、R2=ヒドロカルビルオキシアルキレン基である);シンナミルアルコール;および、イソホロール(ここで、R2は、Hであり、R3は、メチル基であり、R1とR4とは、R4が-CH2C(CH3)2CH2-を表し、R1と環式構造を形成するようである)が挙げられる。
【0031】
式(I)で表される化合物の製造は、反応体として使用される化合物の中心ホウ素またはチタン原子に結合したリガンド/基(例えば、テトラアルキルチタネートまたはトリアルキルボレート中のアルコキシ;または、チタンまたはボロンクロライド中のクロロ基)の所望されるアリルアルコール基による置換を含む。したがって、当業者であれば、最終生成物が、中心原子に結合した本来のリガンド/基が未反応である幾つかの分子を含有していてもよいことが理解できるであろう。
【0032】
これら化合物は、典型的には、アリルアルコール(R’OH)をアルコキシボラン/アルキルチタネートまたは適当なクロロ化合物と反応させて、対応する金属アリルオキシ誘導体を生成させることによって製造される。
【0033】
アリルアルコールまたはアリルエーテルアルコールとM-アルコキシ化合物との間の反応は、不活性ガスによる、例えば、窒素パージによるそのシステムから酸素、その他の酸化性ガスおよび水分をパージすることによって、不活性かつ乾燥雰囲気中にて行うのが適している。ガス抜きしたら、適当な反応条件下でM-アルコキシを添加して、本発明の生成物を形成する。例えば、第1級アルコールを使用する典型的な方法は、反応混合物を排気して、大気圧より低い圧力、例えば、約2KPa(20mbar)とし、分解温度より低い温度、例えば、80℃に約2時間、適度に加熱調節する。この反応の間、置換されるいずれのアルコールも蒸留塔の頂部から収集することができる。反応温度を、ついで、適度に、約120℃まで上昇させ、さらに約4時間保持して、反応を完結させる。印加する減圧は、約0.1KPa(1mbar)まで上昇させ、少量のアルコールのカルボキシレートエステル副生物と一緒に未反応のアルコールを完全に留去する。反応に減圧を使用すると、副反応の量を低下させるのに有益であることが見出された。しかし、反応の開始時に約0.1KPa(1mbar)の比較的低い減圧を使用すると、反応体M-アルコキシ化合物の昇華を生ずるので、注意を払う必要がある。
【0034】
典型的には、アリルアルコール、例えば、エトキシル化されたアリルアルコールが不揮発性であると、いずれの過剰のアリルアルコールの蒸留による除去を妨げるので、反応体M-アルコキシ誘導体中のアルコキシ基当り1当量のみのアリルアルコールまたはアリルエーテルアルコールが必要とされるだけである。80℃まで加熱する前に、混合物を0.1KPa(1mbar)で2時間、室温で“予備平衡”とさせ、続く全ての工程は、0.1KPa(1mbar)で行うのがよい。低い温度での予備平衡は、試薬M-アルコキシ誘導体の昇華を防止する役割を果たす。当業者であれば、これら典型的な温度、圧力、反応時間および反応媒体を変化させて、許容可能な結果を達成しうることが理解されよう。
【0035】
本方法により、以下の化合物を製造した(主要な異性体のみこれら化合物にて称す):
トリ-(2-エチルアリル)ボレート;
トリ-(メシチル)ボレート(メシチルアルコールを使用する);
トリ-(2,7-オクタジエニル)ボレート;
トリ-(2-エチルヘキセ-2-エニル)ボレート;
トリ-(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)ボレート;
トリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エチル)ボレート;
トリ-(2-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)エチル)ボレート;
テトラ-(2,7-オクタジエニル)チタネート;
テトラ-(2-エチルヘキセ-2-エニル)チタネート;
テトラ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エチル)チタネート。
【0036】
本発明のホウ素およびチタンのアリルオキシ誘導体は、ホワイトスピリットのそれらと同程度に低くてもよい低い揮発性および低い粘度を有する。例えば、これら誘導体の粘度は、典型的には、1500mPa.s(ミリパスカル秒)より下であり、さらに典型的には、150mP.sより下、とりわけ、110mP.s.より下、さらにとりわけ、35mPa.sより下であり、それによって、それらを硬化されるペイントおよびポリマー配合物に適した反応性希釈剤、特に、アルキッド樹脂を含む配合物に適した反応性希釈剤とする。したがって、それらは、高分子ペイントおよび塗料用の配合物にての反応性希釈剤として使用するのに特に適している。かくして、例えば、トリ-エチルボレートのオクタジエノールとの反応によって誘導されるトリ-オクタジエノキシボランは、粘度11.2mPa.sを有するのに対し、他方、トリ-(2-エチルヘキセノキシ)ボランは、粘度7.2mPa.sを有する。
【0037】
本発明の式(I)で表されるケイ素および炭素のアリルオキシ誘導体は、さらに詳しくは、以下の化合物によって表すことができる:
Si(OR’)4 -オルト-シリケート;
R-Si(OR’)3 -アリルオキシシラン;
C(OR’)4 -オルト-カーボネート;
R-C(OR’)3 -オルト-ホルメート(R=Hである時)またはオルト-エステル(R=H以外の基である時)。
【0038】
上記したように、これら化合物は、例えば、アルコキシシラン中のアルコキシ、ハロまたはカルボキシ基;クロロシランまたはカルボキシシランを、すなわち、例えば、アセトキシシランを使用して、アリルアルコール(R’OH)で置換することによって製造することができ、置換されたケイ素誘導体を生成し、アルキルホルメートまたはアルキルカーボネートで置換することによって、対応する炭素誘導体を生成する。Rは、好ましくは、水素またはC1-C4アルキル基である。
【0039】
反応がアリルアルコールとカルボキシシランとの間である場合、反応は、不活性ガスによる、例えば、窒素パージによるそのシステムから酸素、その他の酸化性ガスおよび水分をパージすることによって、不活性かつ乾燥雰囲気中にて行うのが適している。ガス抜きしたら、カルボキシシランを添加する。反応の間、カルボキシシランからの副生物カルボン酸とアリルアルコールとの間のエステル化反応が回避されるか、または、反応の間に形成されるいずれのカルボン酸をも連続的に除去することによって少なくとも最小化されるように、条件が適度に選択される。例えば、第1級アルコールの場合に、反応混合物が適度に排気されて、大気圧より下の圧力、例えば、約2KPa(20mbar)とされて、温度、例えば、80℃で、例えば、2時間の間、適度に加熱調節される。この反応の間、いずれの置換された酢酸も、塔の頂部から収集される。反応温度は、ついで、例えば、120℃まで適度に上昇され、さらなる時間、例えば、4時間適度に保持されて、反応を完了させる。印加される減圧は、ついで、例えば、約0.1KPa(1mbar)まで適度に上昇させ、少量のアルコールのカルボキシレートエステル副生物と一緒に未反応のアルコールを留去させる。反応のために減圧を使用すると、それがエステル化の量を低下させるので、有益であることが見出されている。反応の開始時に比較的低い減圧約0.1KPa(1mbar)を印加すると、シラン反応体の昇華を生ずることもまた見出されているので、注意を払う必要がある。
【0040】
幾つかの場合に、例えば、アリルエーテルアルコールが比較的高い沸点を有する時、アリルエーテルアルコール、例えば、エトキシル化されたアリルアルコールが不揮発性であると、いずれの過剰のアルコールの蒸留による除去をも妨げるので、カルボキシ基当り1当量のみのアリルエーテルアルコールを使用することが好ましい。反応温度、例えば、80℃まで加熱する前に、混合物を0.1KPa(1mbar)で、例えば、2時間、室温で“予備平衡”とさせ、続く全ての工程は、0.1KPa(1mbar)で行うのがよい。低い温度での予備平衡は、反応体カルボキシシランのロスを防止する役割を果たす。
【0041】
反応および蒸留の進行は、ガスクロマトグラフィーによりモニターすることができる。釜生成物中の2%未満の遊離アルコール標的を設定するのが適当である。この設定が達成されたら、反応混合物は、室温まで冷却し、セライトフィルター助剤の短い床を通して濾過され、いずれの痕跡のシリカ/水和された酸化ケイ素をも除去することができる。かくして形成されるシリコンアセテートは、若干の不純度のシリカとしてを含有されていてもよい。エステル化およびその結果としての水の生成(加水分解)が最小に保たれない場合、反応過程の間にさらなるシリカが形成されるかもしれない。生成物の同定は、各場合に、1H、13Cおよび29SiNMRスペクトル分光分析法によって確認された。
【0042】
以下の化合物がこの方法によって製造された:
メチルトリ-(2,7-オクタジエノキシ)シラン;
テトラ-(2,7-オクタジエノキシ)シラン;
メチルトリ-(2-エチル-ヘキセ-2-エノキシ)シラン;
テトラ-(2-エチル-ヘキセ-2-エノキシ)シラン;
メチルトリ-(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オキシ)シラン;
テトラ-(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オキシ)シラン;
テトラ(4-t-ブトキシ-ブテ-2-エン-1-オキシ)シラン;
メチルトリ-(2-エチルアリル-1-オキシ)シラン;
テトラ(2-エチルアリル-1-オキシ)シラン;
2-エチルヘキセニルオルトホルメート;
オクタジエニルオルト-ホルメート。
【0043】
上記式(III)に入る化合物の例は、
メチルトリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)シラン;
テトラ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)シラン;
メチルトリ-(2-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)エトキシ)シラン;
テトラ-(2-(2-(2,7-オクタジエノキシ) エトキシ)エトキシ)シラン;
テトラ-(1-(2,7-オクタジエノキシ)プロパン-2-オキシ)シラン;
テトラ-(1-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-2-オキシ)シラン;
テトラ-(1-(1-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-2-オキシ)プロパン-2-オキシ)シラン;
2-(2,7-オクタジエノキシエチル)オルトホルメート;
ビス(2,7-オクタジエノキシ) ビス[2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ]シラン;
である:
式(I)で表されるこれら化合物の製造は、反応体として使用される化合物の中心ケイ素または炭素原子に結合したリガンド/基(例えば、テトラアルキルオルトシリケート中のアルコキシまたはテトラ-カルボキシシラン中のカルボキシ基)の所望されるアリルアルコール基により置換される工程を含むことに留意する必要がある。したがって、当業者であれば、最終生成物が中心原子に結合した本来のリガンド/基が未反応である幾つかの分子を含むことが理解されるであろう。
【0044】
本発明のケイ素および炭素の置換された誘導体は、ホワイトスピリットの揮発性と粘度と同程度の低い揮発性および相対的に低い粘度を有する。例えば、これら誘導体の粘度は、1500mPaより下が適当であり、典型的には、150mPa.sより下、とりわけ、110mPasより下、さらにとりわけ、35mPa.sより下であり、それによって、それらを硬化されるペイントおよびポリマー配合物のための、特にアルキッド樹脂を含む配合物のための適した反応性希釈剤とする。したがって、それらは、高分子ペイントおよび塗料のための配合物にて反応性希釈剤として使用するのに特に適している。かくして、例えば、カルボキシシランのオクタジエノールとの反応によって誘導されるメチルトリ-オクタジエノキシシランは、粘度5.5mPa.sを有するのに対し、他方、メチルトリ-(2-エチルヘキセノキシ)シランは、粘度5.9mPa.sを有する。2-エチルヘキセニルオルトホルメートは、粘度4.69mPa.sを有する。
【0045】
本発明の典型的な反応性希釈剤は、沸点250℃より上、さらに典型的には、300℃より上を有する。沸点が高いかまたは蒸気圧が高いほど、典型的には、臭いの少ない物質を示唆する。かくして、より多くの炭素原子を含有するアリル高分子量誘導体ほど、臭いが少なく、環境に悪影響を及ぼしかねない揮発性有機物質が少ない。しかし、分子量の高い物質ほど、反応部位を希釈し、典型的には、粘度を増大させるであろう。かくして、性質の均衡が、典型的には、好ましい。
【0046】
分子量を増大させる以外に、エポキシドでキャップされるかまたはアルコキシル化されたアリルアルコールから形成される反応性希釈剤は、典型的には、グリコールエーテルの炭素-炭素二重結合への電気陰性度効果により反応性を改良するであろう。アルコキシル化されたアルコール誘導体のもう1つの利点は、望ましくないアクロレイン(2-プロペナール)種の生成を低下させる傾向を有する点である。また、このような誘導体は、典型的には、乾燥剤の要求量を低下させる。アルコキシル化された誘導体を形成する利点は、分子量の少ない出発アリルアルコールが使用できる点であり、これにより、さらに広範に使用可能であり、コスト的に低い点である。
【0047】
本発明の組成物は、反応性希釈剤として、特に塗料樹脂との組み合わせにて使用するのに非常に適している。
反応性希釈剤として使用される本発明の化合物対配合物中のアルキッド樹脂の相対的な量比は、公開されているEP-A-0 305 006より抜粋される範囲から誘導することができ、この公開公報は、参考とすることによって本明細書に組み込む。本発明の反応性希釈剤が従来の溶剤全てを代替する例にて、反応性希釈剤対アルキッド樹脂の量比は、少なくとも5:95重量部であるのが適当であり、50:50重量部まで拡張することができる。反応性希釈剤対アルキッド樹脂の好ましい量比は、25:75重量部までであり、さらに好ましくは、15:85重量部までである。
【0048】
本発明にて記載する配合物以外に、特定されるある種の化合物は、塗料配合物にて添加剤として使用することができ、希釈剤による塗料樹脂の硬化を促進する。例えば、本発明にて記載するアリル含有チタネートエステルは、硬化促進剤として塗料配合物にて低濃度使用することができる。このような使用にて、0.1重量%〜5重量%、典型的には、0.2〜2.5重量%、さらに典型的には、0.3〜0.8重量%のこのようなチタネートエステルを硬化促進剤として塗料配合物に配合することができる。このような促進剤は、塗料配合物に低レベルで配合することができるか、または、使用前に、より高い濃度で別個に添加することもできる。
【0049】
空気または酸化硬化以外に、本発明のアリルエステルを含有する塗料配合物は、紫外線(uv)を使用することによって一部または完全に硬化させることができる。さらに、塗被される基板が空気乾燥(酸化)によって一部硬化され、uv硬化によって一部硬化される二元的な硬化も適用することができる。典型的な使用にて、本発明の反応性希釈剤と一緒にアルキッドまたはその他の適当な樹脂を含有する塗料配合物で覆われた基板を紫外線に賦して硬化プロセスを加速することもできる。紫外線硬化は、工業的な用途にて特に有用であるかもしれない。
【0050】
本発明のある種の反応性希釈剤の利点は、硬化プロセスの間にポリマーネットワーク、例えば、シロキサン結合を形成することができるか、または、微細な酸化物粒子、例えば、二酸化チタンを形成することができる。
【0051】
配合物は、さらなる成分、例えば、触媒、乾燥剤、皮張り防止剤、顔料およびその他の添加剤を含有してもよい。配合物は、また、使用する反応性希釈剤が加水分解を受ける場合、水捕捉剤、例えば、モレキュラーシーブまたはゼオライトを含む必要があるかもしれない。さらに、このような水捕捉剤が使用される場合、それらを顔料安定剤と組み合わせて使用する必要があるかもしれない。乾燥剤を使用する場合、これは、さらに、配合物の溶剤含量に影響を及ぼすかもしれない。
【0052】
本発明の希釈剤は、慣用的なハイソリッドおよび溶剤を含まない装飾用のペイントにて使用されるアルキッドを含め、樹脂結合剤システムの範囲内にて使用することができ、かくして、シンナー、例えば、ホワイトスピリットの存在にて必要とされる。これらの希釈剤は、また、その他の樹脂システム、特に酸化乾燥および二重結合がその結合剤システムを特徴付ける場合に使用することができる。後者のタイプの例は、不飽和ポリエステル、脂肪酸改質アクリル等である。このようなシステムは、当分野公知である。本発明の反応性希釈剤での有効な使用のためには、ペイントまたは塗料システムは、反応性希釈剤と反応して、典型的には、乾燥(硬化)したら、化学結合を形成するであろう樹脂または結合システム(例えば、アルキッド)を含有するのが適している。このような反応は、反応部位、例えば、炭素-炭素二重結合によるか、または、酸化プロセスを介するのがよい。結合システムの反応性希釈剤との反応は、塗料乾燥または硬化相の間の揮発性物質のリリースを抑制する。
【0053】
幾つかの用途について、希釈剤の遊離アルコール含量は、配合物の乾燥を促進するために最小化するのが好ましい。
以下の実施例により、本発明をさらに例示するが、これは、何等、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
実施例
概括的な製造方法:
トリアルケニルボレートの製造:
全ての操作は、窒素雰囲気下で行った。全てのアリルアルコールおよびアリルエーテル誘導体は、ボレートの製造に使用する前に蒸留した。2,7-オクタジエノールは、Fluka Chemicalsから入手した。2-エチルヘキセナールのナトリウムボロヒドリド還元によって2-エチルヘキセノール(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オール)を製造した。イソホロール(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オール)は、Aldrichから入手した。トリエチルボレートは、Aldrich Chemical Co.によって供給されているものを使用した。
【0055】
2-(2,7-オクタジエノキシ)エタノールおよびオクタジエノキシジグリコールエーテルは、それぞれ、エチレングリコールおよびジエチレングリコールのブタジエンとのパラジウム触媒テロマー化によって製造した。テロマー化によって製造したオクタジエノキシエタノールは、2つの主要異性体形の混合物であり、直鎖異性体が主要な形である:
【0056】
【化2】

【0057】
混合異性体化合物1-(2,7-オクタジエノキシ)プロパン-2-オールおよび2-(2,7-オクタジエノキシ)プロパン-1-オールは、2,7-オクタジエノールのプロペンオキシドとの反応によって製造され、蒸留によって精製した。第2級アルコールが主要な成分である2つの異性体を分離することは試みなかった:
【0058】
【化3】

【0059】
同様に、1-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-2-オールおよび2-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-1-オールは、2-エチルヘキセ-2-エン-1-オールのプロペンオキシドとの反応によって製造した。これ以外に、2-エチルヘキセノールのジプロポキシル化された誘導体は、プロペンオキシドとのさらなる反応によって製造した。
【0060】
本発明のアリル誘導体の製造にて、3径パイレックス(登録商標)QuickfitR(上付きRは、登録商標を称す)丸底フラスコに、2つのサイドアーム、磁気フォロアーおよび加熱器攪拌器マントルを装着した。3径フラスコの各頂部を、それぞれ、充填カラム、液体ヘッド引取(take-off)アセンブリおよび減圧または窒素トップカバーの制御可能な源に連結した。フラスコ内容物の温度をフラスコサイドアームの一方に挿入した熱電対により制御した。残りのサイドアームは、栓をしない時、使用前に窒素で装置をパージするために、かつ、反応体を装填するために使用した。装置を窒素でパージして、空気および水分を置換し、ついで、アリルアルコールをフラスコに加えた。アリルアルコールは、窒素パージにより酸素を全てパージした。
【0061】
ガス抜きしたら、トリエチルボレートを加えた。ボレートの1mol当り3当量より幾分少ないアリルエーテルアルコールまたはアリルアルコール(すなわち、2.9〜3当量)を使用した。この方法は、残留遊離アルコールを防止するのに適合するが、生成物は、低レベルのエトキシ基を含有するであろう。
【0062】
典型的には、混合物を100℃まで2時間加熱したが、その間、エタノールを留去させた。ついで、装置を20mbarまで排気し、130℃まで加熱して、反応を完了させた。反応および蒸留の進行は、ガスクロマトグラフィーによりモニターした。標的は、釜生成物中2%未満の遊離アルコールに設定した。これが達成されたら、反応混合物を室温まで冷却し、セライトフィルター助剤の短い床を通して濾過し、いずれの粒状体をも除去した。生成物の同定は、ガスクロマトグラフィー(GC)と、1H、13Cおよび11B 核磁気共鳴(NMR)分析とにより確認した。
【0063】
以下の化合物がこの方法により製造された(これら化合物中、主要な異性体のみを挙げる):
トリ-(2-エチルアリル)ボレート;
トリ-(メシチル)ボレート(メシチルアルコールを使用する);
トリ-(2,7-オクタジエニル)ボレート;
トリ-(2-エチルヘキセ-2-エニル)ボレート;
トリ-(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)ボレート;
トリ-(2-(2,7-オクタジエノキシエチル)ボレート;
トリ-(2-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)エチル)ボレート。
【0064】
テトラアルケニルチタネートの製造
装置、反応体および方法は、トリアルケニルボレートの製造について上記したそれらと同様なものを使用した。テトラエチルチタネートは、Aldrich Chemical Co.により供給されているものを使用した。2-(2,7-オクタジエノキシ)エタノールおよびオクタジエノキシジグリコールエーテルは、それぞれ、エチレングリコールおよびジエチレングリコールのブタジエンとのパラジウム触媒テロマー化によって製造した。
【0065】
先に記載したような装置は、窒素でパージして、いずれの空気および水分をも置換し、ついで、アリルアルコールをフラスコに加えた。アリルアルコールは、窒素パージによりいずれの酸素をもパージした。ガス抜きしたら、テトラエチルチタネートを加えた。チタネート1mol当り幾分4当量未満(3.9〜4当量)のアリルエーテルアルコールまたはアリルアルコールを使用した。ボレート製造でのように、この方法は、残留遊離アルコールを防止するのに適合するが、生成物は、その結果、低レベルのエトキシ基をなお含有した。
【0066】
典型的には、混合物を100℃まで2時間加熱したが、その間、エタノールを留去させた。ついで、装置を20mbarまで排気し、130℃まで加熱して、反応を完了させた。反応および蒸留の進行は、ガスクロマトグラフィーによりモニターした。標的は、釜生成物中2%未満の遊離アルコールに設定した。これが達成されたら、反応混合物を室温まで冷却し、セライトフィルター助剤の短い床を通して濾過し、いずれの粒状体をも除去した。生成物の同定は、GCと、1Hおよび13CNMR分析とにより確認した。
【0067】
以下の化合物がこの方法により製造された(これら化合物中、主要な異性体のみを挙げる):
テトラ-(2,7-オクタジエニル)チタネート;
テトラ-(2-エチルヘキセ-2-エニル)チタネート;
テトラ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エチル)チタネート。
【0068】
メチルトリアリルオキシシランおよびテトラアリルオキシシラン
装置、反応体および方法は、トリアルケニルボレートの製造について上記したそれらと同様なものを使用した。エチルオルトシリケート、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシランおよびシリコン(iv)アセテートは、Aldrich Chemical Co.により供給されているものを使用した。
【0069】
2-(2,7-オクタジエノキシ)エタノール(オクタジエノキシグリコールエーテルとも称す)および対応するオクタジエノキシジグリコールエーテルならびに混合された異性体化合物1-(2,7-オクタジエノキシ)プロパン-2-オールおよび2-(2,7-オクタジエノキシ)プロパン-1-オールは、先に記載したようにして製造した。
【0070】
同様に、1-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-2-オールおよび2-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-1-オールは、2-エチルヘキセ-2-エン-1-オールのプロペンオキシドとの反応によって製造した。また、2-エチルヘキセノールのジプロポキシル化された誘導体は、プロペンオキシドとのさらなる反応によって製造した。
【0071】
先に記載したような装置は、窒素でパージして、いずれの空気をも置換し、ついで、アリルアルコールをフラスコに加えた。アリルアルコールは、窒素パージによりいずれの酸素をもパージした。ガス抜きしたら、アセトキシシランを加えた。シラン中のアセトキシ官能基当り、過剰(1.05当量)のアリルアルコールを使用した。
【0072】
混合物を約20mbarまで排気し、80℃まで2時間加熱した。この間、置換された酢酸は、塔の頂部から収集した。反応温度を、ついで、120℃まで上昇させ、4時間保持して、反応を完了させた。印加する減圧を、ついで、1mbarまで上昇させて、少量副生物のアルコールの酢酸エステルと一緒にいずれの未反応のアルコールをも留去した。反応のために減圧を使用すると、それが酢酸副生物を迅速に外すことによりエステル化の量を低下させるので、有益であることが見出された。反応の開始時に1mbarの減圧を印加すると、シラン反応体の昇華を生ずることも、また、見出された。
【0073】
反応および蒸留の進行は、ガスクロマトグラフィーによりモニターした。標的は、釜生成物中2%未満の遊離アルコールに設定した。これが達成されたら、反応混合物を室温まで冷却し、セライトフィルター助剤の短い床を通して濾過し、いずれの痕跡のシリカ/加水分解された酸化ケイ素をも除去した。シリコンアセテートは、若干の不純度のシリカとして含有されることが見出された。エステル化およびその結果としての水の生成(加水分解)が最小に保たれない場合、反応過程の間にさらなるシリカが形成されるかもしれない。生成物の同定は、GCと、1H、13Cおよび29Si NMR分析とにより確認した。
【0074】
以下の化合物がこの方法により製造された:
メチルトリ-(2-エチルアリル-1-オキシ)シラン;
テトラ(2-エチルアリル-1-オキシ)シラン;
メチルトリ-(2,7-オクタジエノキシ)シラン;
テトラ-(2,7-オクタジエノキシ)シラン;
メチルトリ-(2-エチルヘキセ-2-エノキシ)シラン;
テトラ-(2-エチルヘキセ-2-エノキシ)シラン;
メチルトリ-(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オキシ)シラン;
テトラ-(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オキシ)シラン。
【0075】
アリルエーテルアルコール化合物は、また、エトキシル化されるかプロポキシル化されたアリルアルコールの低揮発性により過剰の未反応アルコールまたは副生物エステルの蒸留をも便利なことに妨げるので、上記方法の改良によっても製造した。これらの場合、アセトキシ当り1当量のみのアルコールを使用し、80℃まで加熱する前に、混合物を室温で2〜24時間、1mbarで“予備平衡”とさせ、続く全ての工程は、1mbarで行った。低温予備平衡は、アセトキシシラン試薬の昇華を防止し、いずれの望ましくないエステル化反応をも最小とすることが見出された。このルートによって製造される典型的な化合物を以下に列挙するが、主要な異性体の名称のみを示す。
【0076】
メチルトリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)シラン;
テトラ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)シラン;
メチルトリ-(2-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)エトキシ)シラン;
テトラ-(2-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)エトキシ)シラン;
テトラ-(1-(2,7-オクタジエノキシ)プロパン-2-オキシ)シラン;
テトラ-(1-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-2-オキシ)シラン;
テトラ-(1-(1-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)プロパン-2-オキシ)プロパンン-2-オキシ)シラン。
【0077】
アリルエーテルアルコールまたはアリルアルコールのアルコキシシランとの反応
先に記載したような装置は、窒素でパージして、いずれの空気および水分をも置換し、ついで、アリルアルコールをフラスコに加えた。アリルアルコールは、窒素パージによりいずれの酸素をもパージした。ガス抜きしたら、アルコキシシラン(例えば、オルトシリケートまたはフェニルトリエトキシシラン)を加えた。シラン中のアルコキシ官能基当りほぼ1等モル量(0.95〜1.05当量)のアリルアルコールを使用した。エステル交換/エステル化触媒(例えば、ジブチル錫オキシド)をフラスコ内の反応体の重量に基づき、典型的には、0.1〜1%w/w加えた。
【0078】
フラスコの内容物を窒素雰囲気下160℃まで加熱し、その間、置換されるいずれの低沸点アルコールをもヘッド引取装置に収集した。この蒸留は、ヘッド物質が収集し終わるまで継続した。ついで、反応圧を50mm Hgまで低下させ、6時間保持して反応を完了させた。印加する減圧を、ついで、1ミリバールまで高め、全ての未反応アルコールを留去した。
【0079】
反応および蒸留の進行は、ガスクロマトグラフィーによりモニターした。標的は、釜生成物中2%未満の遊離アルコールに設定した。これが達成されたら、反応混合物を室温まで冷却し、クロマトグラフィー等級のシリカの短い床を通して濾過し、ジブチル錫オキシド触媒を除去した。生成物の同定は、GCと、1H、13Cおよび29Si NMR分析とにより確認した。
【0080】
この方法により、以下の化合物を製造した:
フェニルトリ-(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)シラン;
テトラ(2,7-オクタジエノキシ)シラン;
テトラ(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オキシ)シラン。
【0081】
トリアリルオキシオルトホルメートの製造
全ての操作を窒素雰囲気下で行った。アリルアルコールおよびアリルエーテルアルコール誘導体は、全て、オルトエステルの製造にて使用する前に蒸留した。オクタジエノールは、Fluka Chemicalsから入手した。2-エチルヘキセノール(2-エチルヘキセ-2-エン-1-オール)は、2-エチルヘキセナールのナトリウムボロヒドリド還元によって製造した。トリエチルオルトホルメートおよびアセテートは、Aldrich Chemical Co.によって供給されているものを使用した。2-(2,7-オクタジエノキシ)エタノールおよびオクタジエノキシジグリコールエーテルは、それぞれ、エチレングリコールおよびジエチレングリコールのブタジエンとのパラジウム触媒テロマー化によって製造した。
【0082】
先に記載したような装置は、窒素でパージして、いずれの空気および水分をも置換し、ついで、アリルアルコールをフラスコに加えた。アリルアルコールは、窒素パージによりいずれの酸素をもパージした。ガス抜きしたら、オルトホルメートを加え、オルトエステルの1mol当り2.9〜3当量のアリルアルコールを使用した。
【0083】
混合物を100℃まで6時間加熱し、ついで、120℃までさらに6時間加熱し、その間、エタノールを留去させた。ついで、装置を20mbarまで排気し、130℃まで加熱して、反応を完了させた。反応および蒸留の進行は、ガスクロマトグラフィーによりモニターした。標的は、釜生成物中2%未満の遊離アルコールに設定した。これが達成されたら、反応混合物を室温まで冷却し、セライトフィルター助剤の短い床を通して濾過し、いずれの粒状体をも除去した。生成物の同定は、GCと、1Hおよび13CNMR分析とにより確認した。
【0084】
以下の化合物がこの方法により製造された(これら化合物中、主要な異性体のみを挙げる):
トリ-(2,7-オクタジエニル)オルトホルメート;
トリ-(2-エチルヘキセ-2-エニル)オルトホルメート;
トリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エチル)オルトホルメート。
【0085】
3当量より幾分少ないアリルエーテルアルコールまたはアリルアルコールの使用は、いずれの遊離アルコールをも防止するが、生成物は、その結果、低レベルのエトキシ基をなお含有することに注意。
【0086】
反応性希釈剤/ペイント配合物試験
良好な反応性希釈剤は、例えば、低い臭気および毒性、低い粘度および塗被される表面上への塗布を促進するためのペイントの粘度を“カットする”能力を含め、判定基準の範囲に合致する必要がある。さらに、希釈剤は、ペイント塗膜の特性、例えば、乾燥速度、硬度、しわの度合い、耐久性および黄変傾向(tendency to yellowing)に著しく悪影響を有してはならない。上記した反応性希釈剤は、したがって、透明ペイントを使用するペイント用途で試験した。希釈剤は、ホワイトスピリット、慣用的なシンナーを使用して配合されたペイントと比較した。
【0087】
無着色の“透明塗料”配合物:
無着色(“透明塗料”)ペイント配合物は、ハイソリッドのアルキッド樹脂SETALR EPL 91/1/14(ex AKZO NOBEL,“Polymers Paint and Colour Journal, 1992,182,pp.372に記載されている)を使用して調製した。希釈剤以外に、SiccatolR drier(ex AKZO NOBEL)およびメチルエチルケトン-オキシム(以降、“MEK-オキシム”と称す)皮張り防止剤を使用した。使用する場合、ホワイトスピリットは、Exxon type 100であった。
【0088】
ペイント配合物中の上記材料の表示量比は、
【0089】
【表1】

【0090】
であった:
ホワイトスピリット配合物のみについては、乾燥剤および皮張り防止剤の量比は、樹脂のみに基づいて計算したことに注意。かくして、ペイント中のこれら成分の濃度は、その他の希釈剤についてよりも低かった。
【0091】
Research Equipment(London)Limitedによって市販されている粘度計を使用するICIコーンおよびプレート法により測定される粘度6.8±0.3ポアーズ(680±30mPa.s)を達成するために必要とされる量比でアルキッド樹脂と希釈剤とをガラスジャーで(例えば、Luckham multi-mix roller bedを使用して)2時間混合した。典型的には、これにより、約85%w/w樹脂である混合物を生じた。粘度を6.8±0.3ポアーズ(680±30mPa.s)に調節するために希釈剤または樹脂のさらなる添加を必要とする場合、さらなる混合時間が許容された。乾燥剤の必要とされる量を添加し、混合(1時間)後、皮張り防止剤の必要とされる量を添加した。少なくとも30分間最終混合後、粘度が6.1〜6.9ポアーズ(610〜690mPa.s)であることを確認するために、混合物の粘度を測定した。
【0092】
混合物(“配合物”)を2つのジャーに分け、密封されたジャー内に約10〜15%v/vの頭上空間を残した。ジャーのうち1つは、ペイント塗布試験を行う前に7日間暗室内23℃で貯蔵した。第2のジャーは、塗布試験を行う前に14日間日光中35℃で貯蔵した(“熟成”)した。
【0093】
透明塗料配合物試験法
ペイントフィルムの塗布
Sheenキューブまたはドローバー塗布を使用して表示75μmギャップ幅で透明なガラス試験板に薄いフィルムを塗布した。
【0094】
粘度:
各配合物の粘度は、ICIコーンおよびプレート粘度計(Research Equipment(London)Limitedによって市販されている)で、23℃および剪断速度10,000/秒でBS 3900 Part A7に従い測定した。
【0095】
各希釈剤の粘度切断力(“低下”または“希釈”効果)は、上記機器で、かつ、組成物のある範囲を有するアルキッドおよび希釈剤の混合物を使用して測定した。“低下”曲線は、%固体(樹脂)対粘度(ポアーズ)としてプロットした。各希釈剤の粘度は、懸濁レベル粘度計を使用して23℃で測定した。希釈剤の濃度は、水で検量した表示10cm3容量を有する濃度ボトルを使用して、23℃でなされた3つの読取値の平均を採用した。
【0096】
乾燥性能:
乾燥性能は、30cm×2.5cmガラス片に塗布されたフィルムとBK乾燥記録計とを使用して測定した。BK記録計は、乾燥実験が10℃と70%相対湿度とで行うことができるように、Fisons制御温度計および湿度キャビネットに密閉した。試料の性能は、乾燥の秒段階に基づき評価した(ダスト乾燥時間,T2)。
【0097】
ペンシル硬度:
20cm×10cmガラス板に塗布したフィルムは、23℃および55%相対湿度で実験室作業台で7日間乾燥させた。各試料のペンシル硬度は、ASTM No.D3363-74に記載されている方法を使用して測定した。各プレートは、ついで、50℃(4日間)に加熱し、ペンシル硬度測定を繰り返した。
【0098】
ペイントフィルムへの希釈剤の配合:
以下に記載する反応性希釈剤の幾つかについて、反応性希釈剤のペイントフィルムへの配合度のさらなる証拠が得られた。良好な“反応性”希釈剤は、蒸発よりもむしろ、樹脂と化学結合を形成して、乾燥ペイントフィルムのポリマーネットワークに結合されるべきである。乾燥の間に蒸発される希釈剤の量および硬化させたペイントフィルムから抽出することができ、したがって、ポリマーネットワークに結合されていない希釈剤の量が測定された。
【0099】
当業者であれば、条件の日々の変動は、実験データに若干の可変性を導入することができることは周知であろう。これらの誤差を最小とするために、以下に示す試験を以下のように行った:5〜8のペイント配合物を同時に調製し、1つの参照(ホワイトスピリット)と4〜7の希釈剤基体ペイントによって構成した。これらの試料を同一条件下で同時に試験した。配合物のこれらの群のうちからの性能データの比較は、最小化されたランダム源による誤差を許容した。したがって、以下の実施例にて、一読すれば、幾つかの希釈剤による性能データの明らかな変動が同一希釈剤から異なる日に調製された異なるペイント配合物の使用により生ずることが理解されるであろう。
【0100】
透明塗料配合物中の反応性希釈剤の試験結果
以下の実施例は、上記した化合物がペイント配合物中の反応性希釈剤としての使用に適していることを立証する。実施例は、また、本明細書に記載した本発明に従いアリルエーテルを使用することによって反応性希釈剤の改質によるペイントフィルムの特性に及ぼすことのできる対照である。
【0101】
表1および1Aは、本明細書に記載した希釈剤が比較的低い粘度を有することを示す。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表2A、2Bおよび2Cは、本発明のホウ素およびチタンのアリルオキシ誘導体からの許容可能な乾燥時間および硬度測定値をまとめて示す:
【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【0108】
アルコキシル化されたアリルアルコール:
本発明にて記載するアリルアルコールは、また、ホウ素/チタン化合物との反応に対してそれらのアルコキシル化された形にて使用することもできる。このアルコキシル化は、アリルアルコールと、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応により達成することができる。
【0109】
エチレングリコールまたはプロピレングリコールユニットのアリルアルコールへの付加は、希釈剤の性能に影響を及ぼすために使用することができる。例えば、アルコキシル化されたアリルアルコールは、臭いが低い。アリルアルコールに付加されるグリコールユニットが多すぎると、柔軟なフィルムを生じかねない。表2aおよび2bは、アルコキシル化されたアリルアルコールで製造された希釈剤を含有するフィルムから許容可能な乾燥および硬度データを示す。
【0110】
希釈剤のペイントフィルム中への配合
表3(wt%)にての結果は、上記した希釈剤が分子結合を介してペイントフィルム中に配合されることを示し、かつ、希釈剤の蒸発/抽出による低レベルのロスを示す。
【0111】
【表7】

【0112】
アリル基の数の効果
アリル基の数を制御すると、ペイント配合物に迅速な乾燥時間および望ましいフィルム硬度を達成可能とする。表4Aおよび4B中の乾燥時間およびペンシル硬度のデータは、それぞれ、3つまたは4つのオクタジエノキシ基を有する希釈剤が1つのオクタジエノキシ基のみを有する希釈剤よりも、乾燥をより迅速とし、より硬いフィルムを形成することを示す。表1に示したように、希釈剤中のアリル基の数を選択する時に、粘度も、また、考慮する必要がある。
【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
中心金属原子の効果
中心原子としてケイ素および炭素を含む希釈剤は、ホワイトスピリット基体配合物の乾燥時間約2時間以内を有するフィルムを与え、これらは、同等の硬度を有した(表5Aおよび5B)。これは、工業的に許容可能であると見なされる。
【0116】
【表10】

【0117】
【表11】

【0118】
抽出可能な溶剤と比較した時の本明細書にて記載する希釈剤(wt%)の優れた均質配合性は、表6にて示す。これらの実験にて、揮発性溶剤は何等観測されなかった。
【0119】
【表12】

【0120】
アルコキシル化されたアリルアルコールの効果
アリルアルコールは、ケイ素/炭素化合物との反応に対してそのアルコキシル化された形にて使用することもできる。このアルコキシル化は、アリルアルコールと、例えば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの反応により達成することができる。あるいは、2-オクタジエノキシエタノールおよび2-(2-オクタジエノキシエトキシ)エタノールのような化合物は、ブタジエンのテロマー化によって製造することができる。
【0121】
エチレングリコールまたはプロピレングリコールユニットのアリルアルコールへの付加は、希釈剤の性能に影響を及ぼすために使用することができる。例えば、アルコキシル化されたアリルアルコールは、臭いが低い。アリルアルコールに付加されるグリコールユニットが多すぎると、これは、柔軟なフィルムを生じかねない。表7Aおよび7Bは、アルコキシル化されたアリルアルコールで製造される希釈剤を含有するフィルムよりの許容可能な乾燥および硬度データを示す。配合データは、表6に含める。
【0122】
【表13】

【0123】
【表14】

【0124】
希釈剤を製造するために使用されるシラン:
表8は、種々のシラン出発物質から製造される希釈剤の乾燥時間を比較する。
【0125】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
RnM(OR’)x(OR’’)y
[式中、Mは、ケイ素、炭素、ホウ素およびチタンから選択され;
Rは、水素から;および、10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルおよびアルコキシ基から選択され;
R’は、22個までの炭素原子を含有する不飽和ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基から選択されるが、ただし、Mがホウ素またはチタンである時、少なくとも1つのR’は、ヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基であり;
R’’は、R’の飽和アナログから選択され;
炭素について、n=0または1であり、ホウ素およびチタンについて、n=0であり;
xおよびyは、
Mがホウ素である場合、n+x+y=3;および、
Mがケイ素、炭素またはチタンである場合、n+x+y=4;
となるように、xが少なくとも1であり、かつ、yがゼロであってもよい数値である。]
で表される1つ以上のアリルオキシ誘導体を含む反応性希釈剤。
【請求項2】
R’が、構造:
【化1】

[式中、R1は、HもしくはC1-C4アルキル基または10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシアルキル基であり;
R2は、HもしくはC1-C4アルキル基または10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシアルキル基であり;
R3は、HまたはC1-C4アルキル基であり;
R4は、H、8個までの炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、8個までの炭素原子を有するアルケニル基、12個までの炭素原子を有するアリール基またはアラルキル基、または、10個までの炭素原子を有するヒドロカルビルオキシアルキル基であるか;または、
R4は、R1と一緒に合わさった時、その中のアルキル置換基と環式アルキレン基を形成し、その場合、R2は、Hである。]
を有する、請求項1に記載の反応性希釈剤。
【請求項3】
R’が、
【化2】

[式中、R1は、HもしくはC1-C4アルキル基または10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシアルキル基であり;
R2は、HもしくはC1-C4アルキル基または10個までの炭素原子を含有するヒドロカルビルオキシアルキル基であり;
R3は、HまたはC1-C4アルキル基であり;
R4は、H、8個までの炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、8個までの炭素原子を有するアルケニル基、12個までの炭素原子を有するアリール基またはアラルキル基、または、10個までの炭素原子を有するヒドロカルビルオキシアルキル基であるか;または、
R4は、R1と一緒に合わさった時、その中のアルキル置換基と環式アルキレン基を形成し、その場合、R2は、Hである。]
で表されるアリルアルコールから誘導される、請求項1に記載の反応性希釈剤。
【請求項4】
ホウ素およびチタンのアリルオキシ誘導体が、テトラ-アリルチタネートまたはトリ-アリルボレートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の反応性希釈剤。
【請求項5】
2,7-オクタジエノール;2-エチル-ヘキセ-2-エン-1-オール;2-エチルアリルアルコール;ヘプテ-3-エン-2-オール;1,4-ブテ-2-エンジオールモノ-t-ブチルエーテル;1,4-ブテ-2-エン-ジオールモノα-メチルベンジルオキシエーテル;1,4-ブテ-2-エン-ジオールモノα-ジ-メチルベンジルオキシエーテル;1,2-ブテ-3-エン-ジオールモノヒドロカルビルオキシアルキレンエーテル;2-ヒドロカルビルオキシアルキレンアリルアルコール;および、イソホロールから選択されるアリルアルコールから誘導される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の反応性希釈剤。
【請求項6】
トリ-(2-エチルアリル)ボレート、トリ-(メシチル)ボレート、トリ-(2,7-オクテジエニル)ボレート、トリ-(2-エチルヘキセ-2-エニル)ボレート、トリ-(3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)ボレート、トリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エチル)ボレート、トリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)エチル)ボレート、テトラ-(2,7-オクタジエニル)チタネートおよびテトラ-(2-エチルヘキセ-2-エニル)チタネートからなる群より選択される反応性希釈剤。
【請求項7】
Mがチタンである請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物と、Mがホウ素、ケイ素または炭素である請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物との組み合わせを含む反応性希釈剤。
【請求項8】
ホウ素酸塩またはチタン酸塩を含み、中心M原子に結合したアリルエーテルアルコールから誘導されるその少なくとも1つのリガンド基が、式:
[RO(CR6R7-CR8R9O)p]-M
[式中、Rは、22個までの炭素原子を含有する飽和または不飽和ヒドロカルビルまたはヒドロカルビルオキシヒドロカルビル基であるが、ただし、少なくとも1つのリガンド基にて、Rが、少なくとも1つのアリル不飽和を含有し;
Mが、ホウ素(III)もしくはチタン(IV)またはケイ素もしくは炭素であり;
R6、R7、R8およびR9は、水素;および、10個までの炭素原子を含有するアルキル、アルキレンおよびアリール基から個々に選択され;
nは、Mの原子価であり;
pは、0〜5であるが、ただし、pは、少なくとも1つのリガンド基について1である
。]
を有する反応性希釈剤。
【請求項9】
前記希釈剤が、トリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エチルボレート、トリ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エトキシ)エチル)ボレートおよびテトラ-(2-(2,7-オクタジエノキシ)エチル)チタネートからなる群より選択される、請求項8に記載の反応性希釈剤。
【請求項10】
前記希釈剤が、沸点250℃より上を有する、請求項1〜6、8および9のいずれか1項に記載の反応性希釈剤。
【請求項11】
前記希釈剤が、粘度1500mPa.s.より下を有する、請求項1〜6、8、9および10のいずれか1項に記載の反応性希釈剤。
【請求項12】
前記希釈剤が、粘度150mPa.s.より下を有する、請求項11に記載の反応性希釈剤。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の反応性希釈剤と、硬化の際に前記反応性希釈剤と反応しうる結合剤システムとの組み合わせを含む塗料としての用途に適した配合物。
【請求項14】
結合剤システムが、アルキッド樹脂システムである、請求項13に記載の配合物。
【請求項15】
1つ以上のアルキッド樹脂、不飽和ポリエステルおよび脂肪酸改質アクリルを含む、請求項14に記載の配合物。
【請求項16】
反応性希釈剤対アルキッド樹脂の相対的な量比が、5:95〜50:50重量部の範囲である、請求項15に記載の配合物。
【請求項17】
前記配合物が、また、触媒、乾燥剤、皮張り防止剤、顔料、水捕捉剤および顔料安定剤からなる群より選択される1つ以上のさらなる成分を含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項18】
紫外線を使用して、硬化しうる、請求項13〜17のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項19】
酸化およびuv硬化しうる、請求項13〜17のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項20】
硬化促進剤として使用される5重量%未満のチタン酸塩を含む、請求項13〜19のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項21】
Mがケイ素である反応性希釈剤を含む、請求項13〜20のいずれか1項に記載の配合物。
【請求項22】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の反応希釈剤の塗料配合物成分としての使用。
【請求項23】
前記塗料配合物が、請求項13〜21のいずれか1項にて定義される、請求項22に記載の使用。

【公表番号】特表2006−526046(P2006−526046A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506232(P2006−506232)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001986
【国際公開番号】WO2004/099221
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503180155)ザ ユニバーシティ オブ サザン ミシシッピ リサーチ ファンデーション (3)
【Fターム(参考)】