説明

反応性難燃剤及びそれを用いた難燃性樹脂加工品

本発明は、樹脂への少量の添加でも難燃性に優れ、ブリードアウトを防止できる反応性難燃剤、及びそれを用いた難燃性樹脂加工品を提供する。
反応性難燃剤として、例えば、下記の一般式(I)で示され、R〜Rの末端に少なくとも1つの不飽和基を有する有機環状リン化合物を用いる。難燃性樹脂加工品は、この有機環状リン化合物を含有する樹脂組成物を固化した後、加熱又は放射線の照射によって反応させて得られる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば、樹脂成形品等に利用される難燃剤及びそれを用いた難燃性樹脂加工品に関し、更に詳しくは、ハロゲンを含有しない非ハロゲン系の難燃剤に関する。
【背景技術】
ポリエステルやポリアミド等の熱可塑性樹脂や、エポキシ等の熱硬化性樹脂は、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチックとして優れた成形加工性、機械的強度、電気特性を有していることから、電気、電子分野等を始めとして広く用いられている。そして、これらの樹脂成形品等の製品は、高温による火災防止を目的とした安全上の観点から難燃性が要求されており、例えば、難燃グレードとしてUL94のような規格が設けられている。
一般に、このような樹脂材料の難燃化としては、特にハロゲン物質の添加が有効であることが知られており、樹脂に添加させて使用されている。このハロゲン系難燃剤のメカニズムは、主に熱分解によりハロゲン化ラジカルが生成し、このハロゲン化ラジカルが燃焼源である有機ラジカルを捕捉することで、燃焼の連鎖反応を停止させ、高難燃性を発現させると言われている。
しかし、ハロゲン化合物を大量に含む難燃剤は、燃焼条件によってはダイオキシン類が発生する可能性があり、環境への負荷を低減する観点から、近年ハロゲン量を低減させる要求が高まっている。したがって、ハロゲン系化合物を含有しない非ハロゲン系難燃剤が各種検討されている。
このような非ハロゲン系難燃剤としては、金属水和物や赤リン等の無機難燃剤、リン酸エステル等の有機リン系難燃剤等が検討されているが、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムといった金属水和物の場合、難燃性付与効果があまり高くないので、樹脂に多量に配合する必要がある。したがって、樹脂の成形性が悪くなったり、得られる成形品等の機械的強度が低下しやすく、使用可能な成形品等の用途が限定されるという問題がある。また、赤りんは、難燃効果は高いが、分散不良により電気特性を阻害したり、危険ガスが発生したり、成形性を低下するとともにブリード現象を起こしやすい。
一方、リン酸エステル等のリン系難燃剤としては、例えば、特開2002−20394号公報には、ホスホリナン構造を有する酸性リン酸エステルのピペラジン塩もしくはC1〜6のアルキレンジアミン塩を難燃剤として使用することが開示されている。
また、特開2002−80633号公報には、リン酸モノフェニル、リン酸モノトリル等の芳香族リン酸エステルとピペラジン等の脂肪族アミンとからなる塩を主成分とする樹脂用難燃剤が開示されている。
更に、特開2002−138096号公報には、ハロゲンフリーの難燃処方として優れた難燃効果を発現させると共に、成形品の耐熱性、耐水性の物性に優れ、また電気積層板用途における密着性に優れる難燃エポキシ樹脂を得るための難燃剤としてリン含有フェノール化合物を用いることが開示されている。
更にまた、特開平5−331179号公報には、特に高分子化合物の安定剤、難燃剤として有用である、2官能ヒドロキシル基を有する有機環状リン化合物が開示されている。
しかしながら、上記の特開2002−20394号公報、特開2002−80633号公報、特開2002−138096号公報に用いられているようなリン酸エステル化合物においては、その難燃性が不充分であるため高濃度で配合する必要があった。
また、分子内に樹脂成分と反応するための反応基を有していないために、難燃剤成分が樹脂中を移行しやすく、成型時に揮発して金型を汚染したり、樹脂の表面に難燃剤がブリードアウトするという問題があった。このため、樹脂加工品の熱的、機械的、電気的特性等を低下する原因となっていた。
更に、特開平5−331179号公報の有機環状リン化合物においては、エポキシ樹脂のようなヒドロキシル基と結合できるような反応基を有する樹脂においては反応性難燃剤として機能する。しかし、例えば、通常のオレフィン樹脂のようにヒドロキシル基と結合できるような反応基を有しない樹脂においては架橋を形成できないので、やはり難燃剤成分が樹脂中を移行しやすく、成型時に揮発して金型を汚染したり、樹脂の表面に難燃剤がブリードアウトするという問題があった。
したがって、本発明の目的は、樹脂への少量の添加でも難燃性、耐熱性に優れるとともに難燃剤のブリードアウト等を防止でき、加えて、成形品の機械特性、電気特性、寸法安定性、成形性にも優れる、反応性難燃剤及びそれを用いた難燃性樹脂加工品を提供することにある。
【発明の開示】
すなわち、本発明の反応性難燃剤は、樹脂との反応性を有し、該反応により前記樹脂と結合することによって難燃性を付与する反応性難燃剤であって、下記の一般式(I)又は(II)で示される、末端に不飽和基を有する有機環状リン化合物を含有することを特徴とする。

(式(I)又は(II)中、R〜R、R〜Rは、それぞれ、−NHCHCH=CH、−N(CHCH=CH、−OCHCH=CH、−CHCH=CH、−CHCHOCH=CH、−(C)−CH=CH、−O(C)−CH=CH、−CH(C)−CH=CH、−NH(C)−CH=CH、−N(CHCH=CH)−(C)−CH=CH、−O−R−OOC−C(R’)=CH、−NH−R−NHCO−C(R’)=CH、炭素数12以下のアリール基より選ばれる。Rは炭素数2〜5のアルキレン基、R’は水素またはメチル基を表す。R〜Rの少なくとも1つ、R〜Rの少なくとも1つは−CH=CH基又は−C(CH)=CH基を含む。)
本発明の反応性難燃剤によれば、1分子内に少なくとも1つの末端不飽和結合を有している有機環状リン化合物を用いたので、この末端不飽和結合を、熱又は放射線によって樹脂と結合して反応させることができる。これにより、難燃剤成分が樹脂中に安定して存在するので、難燃剤のブリードアウトを防止して、少量の添加でも難燃性を長期間付与できる。
また、1分子内に3個のリン原子を含んでいるのでリンの含有量が高い。加えて、解離しやすいP−C結合を含んでいるので、難燃効果の高いPラジカルを発生しやすい。したがって難燃性を向上できる。
また、複数のベンゼン環を含んでいるので分子量が増大し、エネルギー的にも安定化する。これにより熱分解温度が向上するので、樹脂への混練、成形時における難燃剤の気化や、成形時の熱や剪断による難燃剤の分解を防止でき、成形性が向上する。また、炭素を多く含有することで、樹脂分解時にススが生成、堆積することによって難燃性が向上する、いわゆるチャー効果も得られる。
一方、本発明の難燃性樹脂加工品は、上記の反応性難燃剤と、樹脂とを含有する樹脂組成物を固化した後、加熱又は放射線の照射によって前記樹脂と前記反応性難燃剤とを反応させて得られる難燃性樹脂加工品であって、前記難燃性樹脂加工品全体に対して、前記反応性難燃剤を1〜20質量%含有することを特徴とする。
本発明の難燃性樹脂加工品によれば、上記の有機環状リン化合物の末端不飽和結合を、加熱又は放射線の照射によって樹脂と反応させたので、難燃剤成分が樹脂中に安定して存在する。これにより難燃剤のブリードアウトを防止して難燃性効果が向上するので、難燃性樹脂加工品全体に対する反応性難燃剤の添加量が1〜20質量%と少量であっても、難燃性を長期間付与できる。
また、難燃剤と樹脂との結合によって、樹脂が3次元網目構造に架橋化するので、得られる樹脂加工品の化学的安定性、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、及び成形性の全てに優れる樹脂成形品を得ることができ、特に耐熱性と機械強度を向上させることができる。更に薄肉成形加工も可能になる。
上記の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂組成物が、前記反応性難燃剤を2種類以上含有し、少なくとも1種類が多官能性の前記反応性難燃剤であることが好ましい。
この態様によれば、反応性の異なる難燃剤の併用によって架橋に要する反応速度を制御できるので、急激な架橋反応の進行による樹脂の収縮等を防止することができる。また、多官能性の難燃剤の含有によって、上記の有機環状リン化合物による均一な3次元網目構造が形成されるので、耐熱性、難燃性が向上するとともに、より安定した樹脂物性が得られる。
また、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂組成物が、前記反応性難燃剤以外の難燃剤を更に含有し、該難燃剤が、末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物であることが好ましい。
この態様によれば、末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物によっても、難燃剤と樹脂との結合によって樹脂が3次元網目構造に架橋できるので、併用によって難燃剤全体のコストダウンを図りつつ、得られる樹脂加工品の化学的安定性、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、及び成形性の全てに優れる樹脂成形品を得ることができる。また、窒素を含有するので、特に樹脂としてポリアミド系樹脂を用いた場合に樹脂との相溶性がより向上する。
また、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂組成物が、前記反応性難燃剤以外の難燃剤を更に含有し、該難燃剤が、反応性を有しない添加型の難燃剤であることが好ましい。上記の反応性難燃剤に、例えば、リン酸エステル系、メラミン系、水酸化金属、シリコン系等の反応性を有しない添加型の難燃剤を併用することによって、相乗効果により反応性難燃剤単独の場合に比べて難燃性を更に向上でき、また、難燃剤のコストダウンを図ることができる。
更に、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂組成物が、難燃性を有しないが前記樹脂との反応性を有する架橋剤を更に含有し、該架橋剤が、主骨格の末端に不飽和基を有する多官能性のモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。
この態様によっても、架橋剤と樹脂との結合によって、樹脂が3次元網目構造に架橋できるので、得られる樹脂加工品の化学的安定性、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、及び成形性の全てに優れる樹脂成形品を得ることができる。
また、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品全体に対して1〜35質量%の無機充填剤を含有することが好ましい。なかでも、前記無機充填剤としてシリケート層が積層してなる層状のクレーを含有し、前記層状のクレーを前記難燃性樹脂加工品全体に対して1〜10質量%含有することが好ましい。この態様によれば、架橋に伴う収縮や分解を抑え、寸法安定性に優れる樹脂加工品を得ることができる。また、無機充填剤としてシリケート層が積層してなる層状のクレーを含有した場合には、ナノオーダーで層状のクレーが樹脂中に分散することにより樹脂とのハイブリット構造を形成する。これによって、得られる難燃性樹脂加工品の耐熱性、機械強度等が向上する。
更に、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品全体に対して5〜40質量%の強化繊維を含有することが好ましい。この態様によれば、強化繊維の含有により、樹脂加工品の引張り、圧縮、曲げ、衝撃等の機械的強度を向上させることができ、更に水分や温度に対する物性低下を防止することができる。
また、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂と前記反応性難燃剤とが、線量10kGy以上の電子線又はγ線の照射によって反応して得られることが好ましい。この態様によれば、樹脂を成形等によって固化した後に、放射線によって架橋できるので、樹脂加工品を生産性よく製造できる。また、上記範囲の線量とすることにより、線量不足による3次元網目構造の不均一な形成や、未反応の架橋剤残留によるブリードアウトを防止できる。また、特に、照射線量を10〜45kGyとすれば、線量過剰によって生じる酸化分解生成物に起因する、樹脂加工品の内部歪みによる変形や収縮等も防止できる。
更に、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記樹脂と前記反応性難燃剤とが、前記樹脂組成物を成形する温度より5℃以上高い温度で反応して得られることも好ましい。この態様によれば、放射線照射装置等が不要であり、特に熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物において好適に用いることができる。
また、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品が、成形品、塗膜、封止剤より選択される1つであることが好ましい。本発明の難燃性樹脂加工品は、上記のように優れた難燃性を有し、しかもブリードアウトを防止できるので、通常の樹脂成形品のみならず、コーティング剤等として塗膜化したり、半導体や液晶材料等の封止剤としても好適に用いられる。
更に、上記の難燃性樹脂加工品においては、前記難燃性樹脂加工品が、電気部品又は電子部品として用いられるものであることが好ましい。本発明の難燃性樹脂加工品は、上記のように、耐熱性、機械特性、電気特性、寸法安定性、難燃性、及び成形性の全てに優れるので、特に上記の物性が厳密に要求される、電気部品、電子部品として特に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の反応性難燃剤について説明する。
本発明の反応性難燃剤は、樹脂との反応性を有し、該反応により前記樹脂と結合することによって難燃性を付与する反応性難燃剤であって、下記の一般式(I)又は(II)で示される有機環状リン化合物であることを特徴としている。

(式(I)又は(II)中、R〜R、R〜Rは、それぞれ、−NHCHCH=CH、−N(CHCH=CH、−OCHCH=CH、−CHCH=CH、−CHCHOCH=CH、−(C)−CH=CH、−O(C)−CH=CH、−CH(C)−CH=CH、−NH(C)−CH=CH、−N(CHCH=CH)−(C)−CH=CH、−O−R−OOC−C(R’)=CH、−NH−R−NHCO−C(R’)=CH、炭素数12以下のアリール基より選ばれる。Rは炭素数2〜5のアルキレン基、R’は水素またはメチル基を表す。R〜Rの少なくとも1つ、R〜Rの少なくとも1つは−CH=CH基又は−C(CH)=CH基を含む。)
すなわち、上記の有機環状リン化合物は、少なくとも1つの末端不飽和結合である、−CH=CH基又は−C(CH)=CH基を有している。ここで、−CH=CH基又は−C(CH)=CH基は、後述する加熱、又は放射線等の照射によって樹脂と結合するための官能基である。なお、−CH=CH基又は−C(CH)=CH基は1分子中に2つ以上有していることが好ましい。
炭素数12以下のアリール基としては、例えば、−C(フェニル基)、−COH(ヒドロキシフェニル基)、−C−COH(ヒドロキシビフェニル基)、−α−C10(α−ナフチル基)、−β−C10(β−ナフチル基)等が挙げられる。
また、一般式(I)又は(II)における1分子中のリンの含有量としては8〜19wt%であることが好ましい。
上記の一般式(I)の有機環状リン化合物としては、具体的には、例えば、下記の構造式(I−1)〜(I−18)で示される化合物が挙げられる。






また、上記の一般式(II)の有機環状リン化合物としては、具体的には、例えば、下記の構造式(II−1)〜(II−18)で示される化合物が挙げられる。






上記の化合物の合成は、例えば、(I−1)の化合物は、下記の化合物(III)(10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9−オキソ−10−ホスホ−9,10−ジヒドロフェナンスレン−10−オン)を出発原料とし、これをオキシ塩化リンと反応させた後、更にジアリルアミンと反応させて末端に不飽和基を導入することによって合成することができる。
また、例えば、(II−1)の化合物は、下記の化合物(III)(10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9−オキソ−10−ホスホ−9,10−ジヒドロフェナンスレン−10−オン)を出発原料とし、これを三塩化リンと反応させた後、更にジアリルアミンと反応させて末端に不飽和基を導入することによって合成することができる。
なお、ジアリルアミンの代わりに、例えば、アリルアミン、アリルアルコール、臭化アリル等を用いたり、オキシ塩化リン又は三塩化リンの代わりに、例えば、フェニルホスホン酸ジクロリド、α−ナフチルホスホン酸ジクロリド、p−ビフェニルホスホン酸ジクロリド等を用いることにより、上記の一般式(I)におけるR〜R、一般式(II)におけるR〜Rを変更できる。
なお、化合物(III)は公知であり、例えば、商品名(HCA−HQ)として三光化学株式会社より市販されているものを用いることができる。

上記の一般式(I)又は(II)で示される有機環状リン化合物のうち、本発明においては、反応性の異なる2種類以上の化合物、すなわち、1分子中の上記官能基の数が異なる2種類以上の化合物を併用することが好ましい。これによって、架橋に要する反応速度を制御できるので、急激な架橋反応の進行による樹脂組成物の収縮を防止することができる。
また、上記の一般式(I)又は(II)で示される有機環状リン化合物のうち、少なくとも多官能性の反応性難燃剤を含有することが好ましい。これによって、上記の有機環状リン化合物による均一な3次元網目構造が形成される。
次に、上記の反応性難燃剤を用いた難燃性樹脂加工品について説明する。
本発明の難燃性樹脂加工品は、樹脂と、上記の一般式(I)又は(II)で示される有機環状リン化合物とを含有する樹脂組成物を固化した後、加熱又は放射線の照射によって前記樹脂と前記反応性難燃剤とを反応させて得られ、樹脂組成物全体に対して、上記の反応性難燃剤を1〜20質量%含有することを特徴としている。
まず、本発明に用いる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用可能であり特に限定されない。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂等が挙げられる。なかでも、機械特性や耐熱性等の点から、ポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂を用いることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。なかでも、機械特性や耐熱性等の点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂を用いることが好ましい。
上記反応性難燃剤の含有量は、前記樹脂組成物全体に対して、前記反応性難燃剤を1〜20質量%含有することが好ましく、1〜15質量%含有することがより好ましい。反応性難燃剤の含有量が1質量%未満の場合、反応による架橋が不充分であり、得られる樹脂加工品の機械的物性、熱的物性、電気的物性が好ましくなく、また、20質量%を超えると、反応性難燃剤が過剰となり、反応性難燃剤の未反応のモノマーや分解ガスが発生したり、オリゴマー化したものがブリードアウトし、また、樹脂加工品の機械的特性が低下するので好ましくない。
また、本発明においては、更に上記反応性難燃剤以外の、反応性を有しない添加型の難燃剤を含有していてもよい。このような難燃剤としては、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等に代表される金属水和物や、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノリン酸エステル、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェートなどの縮合リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、赤リン、リン酸グアニジン等、シアヌル酸又はイソシアヌル酸の誘導体、メラミン誘導体、シリコン系難燃剤等が挙げられる。
これらの難燃剤は単独で用いてもよく、また2種類以上併用することも可能である。この反応性難燃剤以外の難燃剤の含有量は、ブリードや機械特性の低下を防止するために、前記樹脂組成物全体に対して、前記反応性難燃剤以外の難燃剤を1〜20質量%含有することが好ましく、3〜15質量%含有することがより好ましい。
また、反応性難燃剤1質量部に対して、前記反応性難燃剤以外の反応性を有する難燃剤として、末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物を0.5〜10質量部含有することがより好ましい。
上記の末端に不飽和基を有する基としては、具体的にはジアクリレート、ジメタクリレート、ジアリレート、トリアクリレート、トリメタクリレート、トリアリレート、テトラアクリレート、テトラメタクリレート、テトラアリレート等が挙げられるが、反応性の点からはジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート等のアクリレートであることがより好ましい。
また、環状の含窒素化合物としては、イソシアヌル環、シアヌル環等が挙げられる。
上記の末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物の具体例としては、上記のシアヌル酸又はイソシアヌル酸の誘導体が挙げられ、例えば、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、トリイソシアヌールトリアクリレート等が例示できる。
また、本発明においては、難燃性を有しないが前記樹脂との反応性を有する架橋剤を更に含有してもよい。このような架橋剤としては、主骨格の末端に不飽和基を有する多官能性のモノマー又はオリゴマーを用いることができる。
なお、本発明における難燃性を有しないが前記樹脂との反応性を有する架橋剤とは、架橋性(反応性)を有するが、それ自身は難燃性は有しないものを意味し、上記の末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物のように、架橋性と難燃性とを同時に有する反応性難燃剤を除くものである。
このような架橋剤としては、以下の一般式(a)〜(c)で表される2〜4官能性の化合物が挙げられる。ここで、Xは主骨格であり、R〜R12は末端に不飽和基を有する官能性基であって、(a)は2官能性化合物、(b)は3官能性化合物、(c)は4官能性化合物である。


具体的には、以下に示すような一般式の、主骨格Xが、グリセリン、ペンタエリストール誘導体等の脂肪族アルキルや、トリメリット、ピロメリット、テトラヒドロフラン、トリメチレントリオキサン等の芳香族環、ビスフェノール等である構造が挙げられる。


上記の架橋剤の具体例としては、2官能性のモノマー又はオリゴマーとしては、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等のジアクリレートや、それらのジメタクリレート、ジアリレートが挙げられる。
また、3官能性のモノマー又はオリゴマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート等のトリアクリレートや、それらのトリメタクリレート、トリアリレートが挙げられる。
また、4官能性のモノマー又はオリゴマーとしては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
上記の架橋剤は、主骨格Xとなる、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、グリセリン、ペンタエリストール、2,4,6−トリス(クロロメチル)−1,3,5−トリオキサン等より選ばれる1種に、末端に不飽和基を有する官能性基となる、臭化アリル、アリルアルコール、アリルアミン、臭化メタリル、メタリルアルコール、メタリルアミン等より選ばれる1種を反応させて得られる。
上記の架橋剤は、前記反応性難燃剤1質量部に対して、0.5〜10質量部含有することが好ましい。
本発明に用いる樹脂組成物には、上記の樹脂と難燃剤の他、無機充填剤、強化繊維、各種添加剤等を含有していてもよい。
無機充填剤を含有することによって、樹脂加工品の機械的強度が向上するとともに、寸法安定性を向上させることができる。また、反応性難燃剤を吸着させる基体となって、反応性難燃剤の分散を均一化する。
無機充填剤としては、従来公知のものが使用可能であり、代表的なものとしては、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀等の金属粉末、ヒュームドシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、ガラスビーズ、カーボンブラック、石英粉末、雲母、タルク、マイカ、クレー、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ケイソウ土等が挙げられる。これらの充填剤は、単独でも、2種以上を併用して用いてもよく、また、公知の表面処理剤で処理されたものでもよい。
無機充填剤の含有量は、難燃性樹脂加工品全体に対して1〜35質量%含有することが好ましく、1〜20質量%がより好ましい。含有量が1質量%より少ないと、難燃性樹脂加工品の機械的強度が不足し、寸法安定性が不充分であり、更に反応性難燃剤の吸着が不充分となるので好ましくない。また、35質量%を超えると、難燃性樹脂加工品が脆くなるので好ましくない。
上記の無機充填剤のうち、シリケート層が積層してなる層状のクレーを用いることが特に好ましい。シリケート層が積層してなる層状のクレーとは、厚さが約1nm、一辺の長さが約100nmのシリケート層が積層された構造を有しているクレーである。したがって、この層状のクレーはナノオーダーで樹脂中に分散されて樹脂とのハイブリット構造を形成し、これによって、得られる難燃性樹脂加工品の耐熱性、機械強度等が向上する。層状のクレーの平均粒径は100nm以下であることが好ましい。
層状のクレーとしては、モンモリロナイト、カオリナイト、マイカ等が挙げられるが、分散性に優れる点からモンモリロナイトが好ましい。また、層状のクレーは、樹脂への分散性を向上させるために表面処理されていてもよい。このような層状のクレーは市販されているものを用いてもよく、例えば「ナノマー」(商品名、日商岩井ベントナイト株式会社製)や、「ソマシフ」(商品名、コーポケミカル社製)などが使用できる。
層状のクレーの含有量は、難燃性樹脂加工品全体に対して1〜10質量%が好ましい。なお、層状のクレーは単独で使用してもよく、他の無機充填剤と併用してもよい。
また、強化繊維を含有することによって、例えば成形品の場合には機械的強度が向上するとともに、寸法安定性を向上させることができる。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維が挙げられ、強度、及び樹脂や無機充填剤との密着性の点からガラス繊維を用いることが好ましい。これらの強化繊維は、単独でも、2種以上を併用して用いてもよく、また、シランカップリング剤等の公知の表面処理剤で処理されたものでもよい。
また、ガラス繊維は、表面処理されており、更に樹脂で被覆されていることが好ましい。これにより、熱可塑性ポリマーとの密着性を更に向上することができる。
表面処理剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができ、具体的には、メトキシ基及びエトキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシ基と、アミノ基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、イソシアネート基よりなる群から選択される少なくとも一種の反応性官能基を有するシランカップリング剤が例示できる。
また、被覆樹脂としても特に限定されず、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等が挙げられる。
強化繊維の配合量は、難燃性樹脂加工品全体に対して5〜40質量%含有することが好ましく、10〜35質量%がより好ましい。含有量が5質量%より少ないと、難燃性樹脂加工品の機械的強度が低下するとともに、寸法安定性が不充分であるので好ましくなく、また、40質量%を超えると、樹脂の加工が困難になるので好ましくない。
また、上記の無機充填剤及び強化繊維を含有し、難燃性樹脂加工品全体に対して、無機充填剤及び強化繊維を65質量%以下含有することが好ましく、55質量%以下含有することがより好ましい。無機充填剤及び強化繊維の含有量が65質量%を超えると、樹脂成分の割合が減少して成形性が低下したり、得られる樹脂加工品が脆くなったりして物性が低下するので好ましくない。
なお、本発明に用いる樹脂組成物には、本発明の目的である耐熱性、耐候性、耐衝撃性等の物性を著しく損わない範囲で、上記以外の常用の各種添加成分、例えば結晶核剤、着色剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤などの添加剤を添加することができる。また、後述するように、例えば紫外線によって樹脂と反応性難燃剤とを反応させる場合には、紫外線開始剤等を用いることができる。
着色剤としては特に限定されないが、後述する放射線照射によって褪色しないものが好ましく、例えば、無機顔料である、ベンガラ、鉄黒、カーボン、黄鉛等や、フタロシアニン等の金属錯体が好ましく用いられる。
本発明の難燃性樹脂加工品は、上記の樹脂組成物を固化した後、加熱又は放射線の照射によって前記樹脂と前記反応性難燃剤とを反応させて得られる。
樹脂組成物の固化は従来公知の方法が用いられ、例えば、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物の場合には、熱可塑性樹脂と反応性難燃剤とを溶融混練してペレット化した後、従来公知の射出成形、押出成形、真空成形、インフレーション成形等によって成形することができる。溶融混練は、単軸或いは二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの通常の溶融混練加工機を使用して行うことができる。混練温度は熱可塑性樹脂の種類によって適宜選択可能であり、例えばポリアミド系樹脂の場合には240〜280℃で行なうことが好ましい、また、成形条件も適宜設定可能であり特に限定されない。なお、この段階では全く架橋は進行していないので、成形時の余分のスプール部は、熱可塑性樹脂としてのリサイクルが可能である。
一方、熱硬化性樹脂の場合には、上記と同様に、熱硬化性樹脂と反応性難燃剤とを溶融混練してペレット化した後、例えば、従来公知の射出成形、圧縮成形、トランスファー成形等を用いて成形することができる。
また、塗膜化する場合には、樹脂組成物をそのまま塗布してもよく、適宜溶剤等で希釈して塗布可能な溶液又は懸濁液とした後、従来公知の方法によって乾燥、塗膜化してもよい。塗膜化の方法としては、ローラー塗り、吹き付け、浸漬、スピンコート等のコーティング方法等を用いることができ特に限定されない。
上記の樹脂組成物は、加熱又は放射線の照射によって、反応性難燃剤の末端の不飽和結合が、樹脂と反応して架橋反応し、樹脂中に安定に存在する。
反応性難燃剤と樹脂とを反応させる手段として加熱を用いる場合、反応させる温度は、樹脂の成形温度より5℃以上高い温度とすることが好ましく、10℃以上高い温度とすることがより好ましい。
また、架橋の手段として放射線を用いる場合には、電子線、α線、γ線、X線、紫外線等が利用できる。なお、本発明における放射線とは広義の放射線を意味し、具体的には、電子線やα線等の粒子線の他、X線や紫外線等の電磁波までを含む意味である。
上記のうち、電子線又はγ線の照射が好ましい。電子線照射は公知の電子加速器等が使用でき、加速エネルギーとしては、2.5MeV以上であることが好ましい。γ線照射は、公知のコバルト60線源等による照射装置を用いることができる。
γ線照射は、公知のコバルト60線源等による照射装置を用いることができる。γ線は電子線に比べて透過性が強いために照射が均一となり好ましいが、照射強度が強いため、過剰の照射を防止するために線量の制御が必要である。
放射線の照射線量は10kGy以上であることが好ましく、10〜45kGyがより好ましい。この範囲であれば、架橋によって上記の物性に優れる樹脂加工品が得られる。照射線量が10kGy未満では、架橋による3次元網目構造の形成が不均一となり、未反応の架橋剤がブリードアウトする可能性があるので好ましくない。また、45kGyを超えると、酸化分解生成物による樹脂加工品の内部歪みが残留し、これによって変形や収縮等が発生するので好ましくない。
このようにして得られた本発明の難燃性樹脂加工品は、まず、成形品として、耐熱性、難燃性に加えて、機械特性、電気特性、寸法安定性、及び成形性に優れる。したがって、高度な耐熱性、難燃性が要求される電気部品又は電子部品、更には自動車部品や光学部品、例えば、電磁開閉器やブレーカーなどの接点支持等のための部材、プリント基板等の基板、集積回路のパッケージ、電気部品のハウジング等として好適に用いることができる。
このような電気部品又は電子部品の具体例としては、受電盤、配電盤、電磁開閉器、遮断器、変圧器、電磁接触器、サーキットプロテクタ、リレー、トランス、各種センサ類、各種モーター類、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の半導体デバイス等が挙げられる。
また、冷却ファン、バンパー、ブレーキカバー、パネル等の内装品、摺動部品、センサ、モーター等の自動車部品としても好適に用いることができる。
更に、成形品のみならず、上記の成形品や繊維等への難燃性コーティング塗膜としても用いることもできる。
また、上記の半導体デバイス等の電子部品又は電気部品の封止、被覆、絶縁等として用いれば、優れた耐熱性、難燃性を付与させることができる。すなわち、例えば、上記の樹脂組成物を封止して樹脂を硬化させ、更に上記の加熱又は放射線照射による反応を行なうことにより、半導体チップやセラミックコンデンサ等の電子部品や電気素子を封止する難燃性封止剤として用いることができる。封止の方法としては、注入成形、ポッティング、トランスファー成形、射出成形、圧縮成形等による封止が可能である。また、封止対象となる電子部品、電気部品としては特に限定されないが、例えば、液晶、集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、コンデンサ等が挙げられる。
以上説明したように、本発明によれば、樹脂への少量の添加でも難燃性に優れ、更に、ブリードアウト等を防止できる、非ハロゲン系の反応性難燃剤及びそれを用いた難燃性樹脂加工品を提供することができる。したがって、この難燃性樹脂加工品は、電気部品や電子部品等の樹脂成形品や、半導体等の封止剤、コーティング塗膜等に好適に利用できる。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[一般式(I)の反応性難燃剤の合成]
合成例(I−1)(化合物(I−1)の合成)
乾燥管付き還流管、機械攪拌装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた1000ml四つ口フラスコに、オキシ塩化リン91.99g(0.600モル)と蒸留THF300mlとを入れて穏やかに窒素を流通しながらかき混ぜた。
0〜5℃にて、上記の構造式(III)の化合物である10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9−オキソ−10−ホスホ−9,10−ジヒドロフェナンスレン−10−オン32.43g(0.100モル)とトリエチルアミン22.26g(0.220モル)とをTHF300mlに溶解した溶液を、滴下ロートより3時間かけて加えた。
その後、同温度で6時間、室温で12時間反応させ、溶媒と過剰のオキシ塩化リンならびにトリエチルアミンを減圧留去した。更に、残渣に300mlの乾燥酢酸エチルを加えてかき混ぜ、溶け残るトリエチルアミン塩酸塩をろ去し、溶液を減圧留去した。
残渣全量と蒸留THF300mlを上記と同様の反応装置に仕込み、0〜5℃にて、ジアリルアミン58.30g(0.600モル)とトリエチルアミン44.52g(0.440モル)とをTHF200mlに溶解した溶液を滴下ロートより3時間かけて加えた。
その後、同温度で6時間、室温で12時間反応させ、溶媒と過剰のアミン類を減圧留去した。残渣を300mlの酢酸エチルに溶解して水と振り混ぜ、酢酸エチル相を分離して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ去し、溶液を減圧留去して目的の化合物を75.28g(収率94%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−1)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):802,803(分子量計算値=800.803)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=5.0〜5.1(16H)、=CH−6.0〜6.1(8H)、−CH−3.2(16H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(I−2)(化合物(I−2)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアミン34.26g(0.600モル)を用いた以外は合成例(I−1)と同様にして、目的の化合物を61.49g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−2)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3260、νring 1603,1495、νC=C 1635、δNH 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):642,643(分子量計算値=640.5445)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=5.1〜5.2(8H)、=CH−6.1〜6.2(4H)、−CH−3.3(8H)、H−N<3.4〜3.5(4H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(I−3)(化合物(I−3)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアルコール34.85g(0.600モル)を用いた以外は合成例(I−1)と同様にして、目的の化合物を61.87g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−3)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):646,647(分子量計算値=644.4969)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.9〜5.0(8H)、=CH−5.8〜5.9(4H)、−CH−3.1(8H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(I−4)(化合物(I−4)の合成)
オキシ塩化リンの代わりにフェニルホスホン酸ジクロリド116.99g(0.600モル)を用い、ジアリルアミンとトリエチルアミンとをそれぞれ29.15g(0.300モル)、22.26g(0.220モル)を用いた以外は合成例(I−1)と同様にして、目的の化合物を72.46g(収率95%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は現下の通りであり、上記の化合物(I−4)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):764,765(分子量計算値=762.7213)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=5.0〜5.1(8H)、=CH−6.0〜6.1(4H)、−CH−3.2(8H)、芳香族C−H6.8〜7.4(21H)
合成例(I−5)(化合物(I−5)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアミン17.13g(0.300モル)を用いた以外は合成例(I−4)と同様にして目的の化合物を62.80g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−5)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3260、νring 1603,1495、νC=C 1635、δNH 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):684,685(分子量計算値=682.5921)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=5.1〜5.2(4H)、=CH−6.1〜6.2(2H)、−CH−3.3(4H)、H−N<3.4〜3.5(2H)、芳香族C−H6.8〜7.5(21H)
合成例(I−6)(化合物(I−6)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアルコール17.43g(0.300モル)を用いた以外は合成例(I−4)と同様にして目的の化合物を65.72g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−6)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):686,687(分子量計算値=684.5623)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.9〜5.0(4H)、=CH−5.7〜5.8(2H)、−CH−3.0(4H)、芳香族C−H6.7〜7.4(21H)
合成例(I−7)(化合物(I−7)の合成)
フェニルホスホン酸ジクロリドの代わりにα−ナフチルホスホン酸ジクロリド147.02g(0.600モル)を用いた以外は合成例(I−4)と同様にして、目的の化合物を81.97g(収率95%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−7)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):864,865(分子量計算値=862.8409)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.9〜5.0(8H)、=CH−5.9〜6.1(4H)、−CH−3.0(8H)、芳香族C−H6.7〜7.4(25H)
合成例(I−8)(化合物(I−8)の合成)
フェニルホスホン酸ジクロリドの代わりにp−ビフェニルホスホン酸ジクロリド162.65g(0.600モル)を用いた以外は合成例(I−5)と同様にして、目的の化合物を78.47g(収率94%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−8)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3260、νring 1603,1495、νC=C 1635、δNH 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):836,837(分子量計算値=834.7873)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=5.0〜5.1(4H)、=CH−6.0〜6.1(2H)、−CH−3.2(4H)、H−N<3.4〜3.5(2H)、芳香族C−H6.8〜7.5(29H)
合成例(I−9)(化合物(I−9)の合成)
蒸留ジエチルエーテル300mlに金属マグネシウム粉末10.94g(0.450モル)を懸濁し、不活性ガス雰囲気下に穏やかな沸点還流状態を保ちながら臭化アリル54.44g(0.450モル)を滴下し、約12時間、すべてのマグネシウムが溶解するまで反応して溶液を得た。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させた以外は合成例(I−1)と同様にして、目的の化合物を53.41g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−9)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1498、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):582,583(分子量計算値=580.4963)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.6〜4.7(8H)、=CH−5.5〜5.6(4H)、−CH−2.9(8H)、芳香族C−H6.8〜7.5(11H)
合成例(I−10)(化合物(I−10)の合成)
合成例(I−9)の半量のスケールで臭化アリルマグネシウム溶液を作成した。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させた以外は合成例(I−4)と同様にして、目的の化合物を61.99g(収率95%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−10)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1498、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):654,655(分子量計算値=652.5623)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.5〜4.6(4H)、=CH−5.4〜5.5(2H)、−CH−2.9(4H)、芳香族C−H6.8〜7.5(21H)
合成例(I−11)(化合物(I−11)の合成)
臭化アリルの代わりにp−ブロモスチレン82.37g(0.450モル)を用いた他は合成例(I−9)と同様にして相当するグリニヤ試薬を調整した。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させたほかは合成例(I−1)と同様にして、目的の化合物を77.08g(収率93%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−11)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1498、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):830,831(分子量計算値=828.7795)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.2〜4.3(8H)、=CH−5.2〜5.3(4H)、芳香族C−H6.8〜7.5(27H)
合成例(I−12)(化合物(I−12)の合成)
臭化アリルの代わりにp−クロロメチルスチレン68.68g(0.450モル)を用いた他は合成例(I−9)と同様にして相当するグリニヤ試薬を調整した。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させたほかは合成例(I−1)と同様にして、目的の化合物を84.44g(収率95%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−12)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1498、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):886,887(分子量計算値=884.8867)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.2〜4.3(8H)、=CH−5.2〜5.3(4H)、−CH−2.9(8H)、芳香族C−H6.8〜7.5(27H)
合成例(I−13)(化合物(I−13)の合成)
アリルアミンの代わりにp−アミノスチレン71.50g(0.600モル)を用いた他は合成例(I−2)と同様にして、目的の化合物を81.77g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−13)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3255、νring 1605,1500、νC=C 1635、δNH 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):890,891(分子量計算値=888.8391)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.3〜4.4(8H)、=CH−5.1〜5.2(4H)、H−N<3.5〜3.6(4H)、芳香族C−H6.8〜7.4(27H)
合成例(I−14)(化合物(I−14)の合成)
p−アミノスチレンの代わりにN−アリル−p−アミノスチレン95.54g(0.600モル)を用いた他は合成例(I−13)と同様にして、目的の化合物を99.66g(収率95%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−14)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1500、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):1051,1052(分子量計算値=1049.0975)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.3〜4.4および4.8〜5.0(16H)、=CH−5.1〜5.2および5.7〜5.8(8H)、−CH−3.0〜3.1(8h)、芳香族C−H6.8〜7.4(27H)
合成例(I−15)(化合物(I−15)の合成)
アリルアルコールの代わりに2−ヒドロキシエチルアクリレート69.67g(0.600モル)を用いた他は合成例(I−3)と同様にして、目的の化合物を84.16g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−15)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νC=O 1720、νring 1605,1495、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):878,879(分子量計算値=876.6475)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.9〜5.0(8H)、=CH−5.8〜5.9(4H)、−COOCH−3.4(8H)、−CHO−3.1(8H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(I−16)(化合物(I−16)の合成)
アリルアミンの代わりに、エチレンジアミンモノアクリルアミド76.90g(0.600モル)を用いた他は合成例(I−2)と同様にして、目的の化合物を80.67g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−16)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3260、アミド−II 1655、νring 1605,1495、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):878,879(分子量計算値=876.8299)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(8H)、−COOCH−3.4(8H)、−CHO−3.1(8H)、−CH1.8(12H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(I−17)(化合物(I−17)の合成)
アリルアルコールの代わりに、p−ヒドロキシスチレン72.09g(0.600モル)を用いた他は合成例(I−3)と同様にして、目的の化合物を83.03g(収率93%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−17)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1495、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):894,895(分子量計算値=892.7795)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(8H)、=CH−5.7〜5.9(4H)、芳香族C−H6.8〜7.4(27H)
合成例(I−18)(化合物(I−18)の合成)
蒸留エーテル250mlに金属リチウム片6.94g(1.00モル)を懸濁し、激しくかき混ぜながら2−クロロエチルビニルエーテル69.26g(0.650モル)の蒸留エーテル300ml溶液を滴下し、穏やかな沸騰状態を保った。滴下後1時間沸点還流し、冷却後、デカンテーションにより過剰の金属リチウムを取り除いた。
ジアリルアミンとトリエチルアミン混合溶液の代わりに、この有機リチウム化合物溶液全量を用いた他は合成例(I−1)と同様にして、目的の化合物を64.45g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(I−18)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):702,703(分子量計算値=700.6035)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(8H)、=CH−5.7〜5.9(4H)、−O−CH−4.3〜4.4(8H)、−CH−P−3.8〜3.9(8H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
[一般式(II)の反応性難燃剤の合成]
合成例(II−1)(化合物(II−1)の合成)
乾燥管付き還流管、機械攪拌装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた1000ml四つ口フラスコに、三塩化リン82.39g(0.600モル)と蒸留THF300mlとを入れて穏やかに窒素を流通しながらかき混ぜた。
0〜5℃にて、上記の構造式(III)の化合物である10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9−オキソ−10−ホスホ−9,10−ジヒドロフェナンスレン−10−オン32,43g(0.100モル)とトリエチルアミン22.26g(0.220モル)とをTHF300mlに溶解した溶液を、滴下ロートより3時間かけて加えた。
その後、同温度で6時間、室温で12時間反応させ、溶媒と過剰のオキシ塩化リンならびにトリエチルアミンを減圧留去した。更に、残渣に300mlの乾燥酢酸エチルを加えてかき混ぜ、溶け残るトリエチルアミン塩酸塩をろ去し、溶液を減圧留去した。
残渣全量と蒸留THF300mlを上記と同様の反応装置に仕込み、0〜5℃にて、ジアリルアミン58.30g(0.600モル)とトリエチルアミン44.52g(0.440モル)とをTHF200mlに溶解した溶液を滴下ロートより3時間かけて加えた。
その後、同温度で6時間、室温で12時間反応させ、溶媒と過剰のアミン類を減圧留去した。残渣を300mlの酢酸エチルに溶解して水と振り混ぜ、酢酸エチル相を分離して無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤をろ去し、溶液を減圧留去して目的の化合物を72.27g(収率94%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−1)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):770,771(分子量計算値=768.8143)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(16H)、=CH−5.7〜5.9(8H)、−CH−3.0(16H)、芳香族C−H6.7〜7.3(11H)
合成例(II−2)(化合物(II−2)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアミン34.26g(0.600モル)を用いた以外は合成例(II−1)と同様にして、目的の化合物を55.99g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−2)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3060、νring 1603,1495、νC=C 1635、δNH 1610、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):610,611(分子量計算値=608.5559)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.7〜4.9(8H)、=CH−5.6〜5.7(4H)、−CH−3.0(8H)、H−N<3.2〜3.3(4H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(II−3)(化合物(II−3)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアルコール34.85g(0.600モル)を用いた以外は合成例(II−1)と同様にして、目的の化合物を55.73g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−3)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1500、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):582,583(分子量計算値=580.4963)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.7〜4.9(8H),=CH−5.5〜5.7(4H),−CH−2.9(8H),芳香族C−H6.8〜7.5(11H)
合成例(II−4)(化合物(II−4)の合成)
三塩化リンの代わりにジクロロフェニルホスフィン107.39g(0.600モル)を用い、ジアリルアミンとトリエチルアミンとをそれぞれ29.15g(0.300モル)、22.26g(0.220モル)を用いた以外は合成例(II−1)と同様にして、目的の化合物を69.42g(収率95%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−4)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):732,733(分子量計算値=730.7213)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(8H),=CH−5.6〜5.7(4H),−CH−3.0(8H),芳香族C−H6.8〜7.4(21H)
合成例(II−5)(化合物(II−5)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアミン17.13g(0.300モル)を用いた以外は合成例(II−4)と同様にして目的の化合物を61.16g(収率94%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−5)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3080、νring 1605,1495、νC=C 1630、δNH 1620、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):652,653(分子量計算値=650.5921)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.7〜4.9(4H)、=CH−5.6〜5.8(2H)、−CH−3.0(4H)、H−N<3.2〜3.3(2H)、芳香族C−H6.8〜7.5(21H)
合成例(II−6)(化合物(II−6)の合成)
ジアリルアミンの代わりにアリルアルコール17.43g(0.300モル)を用いた以外は合成例(II−4)と同様にして目的の化合物を62.65g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−6)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):654,655(分子量計算値=652.5623)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.5〜4.7(4H),=CH−5.4〜5.6(2H),−CH−3.2(4H),芳香族C−H6.7〜7.4(21H)
合成例(II−7)(化合物(II−7)の合成)
ジクロルフェニルホスフィンの代わりにジクロル α−ナフチルホスフィン137.42g(0.600モル)を用いた以外は合成例(II−4)と同様にして、目的の化合物を76.44g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−7)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):832,833(分子量計算値=830.8409)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.5〜4.7(8H)、=CH−5.4〜5.6(4H)、−CH−3.0(8H)、芳香族C−H6.7〜7.4(25H)
合成例(II−8)(化合物(II−8)の合成)
ジクロロフェニルホスフィンの代わりにジクロロp−ビフェニルホスフィン150.63g(0.600モル)を用いた以外は合成例(II−5)と同様にして、目的の化合物を75.46g(収率94%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−8)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3060、νring 1605,1495、νC=C 1635、δNH 1620、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):804,805(分子量計算値=802.7873)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.6〜4.7(4H)、=CH−5.5〜5.6(2H)、−CH−3.1(4H)、H−N<3.4〜3.5(2H)、芳香族C−H6.8〜7.5(29H)
合成例(II−9)(化合物(II−9)の合成)
蒸留ジエチルエーテル300mlに金属マグネシウム粉末10.94g(0.450モル)を懸濁し、不活性ガス雰囲気下に穏やかな沸点還流状態を保ちながら臭化アリル54.44g(0.450モル)を滴下し、約12時間、すべてのマグネシウムが溶解するまで反応して溶液を得た。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させた以外は合成例(II−1)と同様にして、目的の化合物を53.41g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−9)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1498、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):550.551(分子量計算値=548.4963)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.6〜4.7(8H)、=CH−5.3〜5.5(4H)、−CH−2.7(8H)、芳香族C−H6.8〜7.5(11H)
合成例(II−10)(化合物(II−10)の合成)
合成例(II−9)の半量のスケールで臭化アリルマグネシウム溶液を作成した。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させた以外は合成例(II−4)と同様にして、目的の化合物を58.95g(収率95%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−10)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1500、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):622,623(分子量計算値=620.5623)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.5〜4.6(4H)、=CH−5.2〜5.3(2H)、−CH−2.9(4H)、芳香族C−H6.8〜7.5(21H)
合成例(II−11)(化合物(II−11)の合成)
臭化アリルの代わりにp−ブロモスチレン82.37g(0.450モル)を用いた他は合成例(II−9)と同様にして相当するグリニヤ試薬を調整した。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させた他は合成例(II−1)と同様にして、目的の化合物を74.10g(収率93%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−11)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1603,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):798,799(分子量計算値=796.7795)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.2〜4.3(8H)、=CH−5.0〜5.2(4H)、芳香族C−H6.8〜7.5(27H)
合成例(II−12)(化合物(II−12)の合成)
臭化アリルの代わりにp−クロロメチルスチレン68.68g(0.450モル)を用いた他は合成例(II−9)と同様にして相当するグリニヤ試薬を調整した。
冷却後、ジアリルアミンとトリエチルアミンの混合溶液の代わりに上記の溶液を用いて反応させたほかは合成例(II−1)と同様にして、目的の化合物を78.47g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−12)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1498、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):854,855(分子量計算値=852.8867)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.2〜4.3(8H)、=CH−5.0〜5.2(4H)、−CH−2.8(8H)、芳香族C−H6.8〜7.5(27H)
合成例(II−13)(化合物(II−13)の合成)
アリルアミンの代わりにp−アミノスチレン71.50g(0.600モル)を用いた他は合成例2と同様にして、目的の化合物を78.83g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−13)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3255、νring 1605,1500、νC=C 1635、δNH 1630、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):858,859(分子量計算値=856.8391)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.3〜4.4(8H),=CH−5.1〜5.2(4H),H−N<3.3〜3.5(4H),芳香族C−H6.8〜7.4(27H)
合成例(II−14)(化合物(II−14)の合成)
p−アミノスチレンの代わりにN−アリル−p−アミノスチレン95.54g(0.600モル)を用いた他は合成例(II−13)と同様にして、目的の化合物を97.64g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−14)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1500、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250
TOF−Massスペクトル(M/Z):1019,1020(分子量計算値=1017.0975)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.3〜4.4および4.8〜5.0(16H)、=CH−5.1〜5.2および5.7〜5.8(8H)、−CH−3.0〜3.1(8h)、芳香族C−H6.8〜7.4(27H)
合成例(II−15)(化合物(II−15)の合成)
アリルアルコールの代わりに2−ヒドロキシエチルアクリレート69.67g(0.600モル)を用いた他は合成例(II−3)と同様にして、目的の化合物を84.16g(収率96%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−15)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νC=O 1720、νring 1605,1495、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):846,847(分子量計算値=844.6475)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.9〜5.0(8H)、=CH−5.8〜5.9(4H)、−COOCH−3.4(8H)、−CHO−3.0(8H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(II−16)(化合物(II−16)の合成)
アリルアミンの代わりに、エチレンジアミンモノアクリルアミド76.90g(0.600モル)を用いた他は合成例(II−2)と同様にして、目的の化合物を77.72g(収率92%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−16)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νNH 3260、アミド−II 1655、νring 1605,1495、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):846,847(分子量計算値=844.8299)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(8H)、−COOCH−3.4(8H)、−CHO−3.1(8H)、−CH1.8(12H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
合成例(II−17)(化合物(II−17)の合成)
アリルアルコールの代わりに、p−ヒドロキシスチレン72.09g(0.600モル)を用いた他は合成例(II−3)と同様にして、目的の化合物を80.05g(収率93%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−17)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1495、νC=C 1630、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):862,863(分子量計算値=860.7795)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(8H)、=CH−5.6〜5.9(4H)、芳香族C−H6.8〜7.4(27H)
合成例(II−18)(化合物(II−18)の合成)
蒸留エーテル250mlに金属リチウム片6.94g(1.00モル)を懸濁し、激しくかき混ぜながら2−クロロエチルビニルエーテル69.26g(0.650モル)の蒸留エーテル300ml溶液を滴下し、穏やかな沸騰状態を保った。滴下後1時間沸点還流し、冷却後、デカンテーションにより過剰の金属リチウムを取り除いた。
ジアリルアミンとトリエチルアミン混合溶液の代わりに、この有機リチウム化合物溶液全量を用いた他は合成例(II−1)と同様にして、目的の化合物を62.85g(収率94%)得た。
この化合物の赤外吸収スペクトル、TOF−Massスペクトル、NMRの測定結果は以下の通りであり、上記の化合物(II−18)の構造が確認できた。
赤外吸収スペクトル(cm−1):νring 1605,1495、νC=C 1635、νP=O 1160〜1250、νP−O−C 1220,1260
TOF−Massスペクトル(M/Z):670,671(分子量計算値=668.6035)
H−NMRスペクトル(δ、ppm):CH=4.8〜5.0(8H)、=CH−5.5〜5.7(4H)、−O−CH−4.3〜4.4(8H)、−CH−P−3.8〜3.9(8H)、芳香族C−H6.8〜7.4(11H)
[一般式(I)の反応性難燃剤を用いた難燃性樹脂加工品の製造]
【実施例1】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2123B)57.3質量部、強化繊維としてシランカップリング剤で表面処理した繊維長約3mmのガラス繊維(旭ファイバーグラス社製:03.JAFT2Ak25)25質量部、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノイルガノックス1010)0.2質量部、無機充填剤として粒径2μmのタルク5質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(I−1)12質量部を配合し、サイドフロー型2軸押出機(日本製鋼社製)で280℃で混練して樹脂ペレットを得て105℃、4時間乾燥した後、上記ペレットを射出成形機(FUNUC社製:α50C)を用いて樹脂温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した。
その後、上記成形品に、コバルト60を線源としたγ線を25kGy照射して実施例1の樹脂加工品を得た。
【実施例2】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2020B)58.2質量部、無機充填剤として上記タルク4質量部及びナノ粒径のクレー(日商岩井ベントナイト(株)社製ナノマー1.30T)3質量部、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(I−4)8質量部及び化合物(I−5)6質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノックス1010)0.3質量部を加えて混合した。
280℃に設定したサイドフロー型2軸押出し機を用いて上記の混合物を溶融し、更に、強化繊維としてシランカップリング剤で表面処理した繊維長約3mmのガラス繊維(旭ファイバーグラス社製:03.JAFT2Ak25)20質量部を、押出し混練を用いてサイドから溶融した上記の混合物に混ぜ込みコンパウンドペレットを得た後、上記ペレットを105℃で4時間乾燥させた。
射出成形機(FUNUC社製:α50C)を用いてシリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧力78.4MPa、射出速度120mm/s、冷却時間15秒の一般的な条件で、電気・電子部品並びに自動車用の成形品を成形した。
その後、上記成形品に、コバルト60を線源としたγ線を25kGy照射して実施例2の樹脂加工品を得た。
【実施例3】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2020B)52.2質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(I−3)12質量部及び非反応型の有機りん系難燃剤(三光化学社製:HCA−HQ)8質量部を用いた以外は実施例2と同様の条件で、実施例3の樹脂加工品を得た。
【実施例4】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2020B)54.7質量部、無機充填剤として実施例2で使用のナノ粒径のクレー4質量部、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(I−4)8質量部、多官能環状化合物(日本化成社製:TAIC)2、5質量部、有機リン系難燃剤(三光化学社製、HCA−HQ)10質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノックス1010)0.3質量部を加えて混合した。
280℃に設定したサイドフロー型2軸押出し機を用いて上記の混合物を溶融し、更に、強化繊維としてシランカップリング剤で表面処理した繊維長約3mmのガラス繊維(旭ファイバーグラス社製:03.JAFT2Ak25)20質量部を、押出し混練を用いてサイドから溶融した上記の混合物に混ぜ込みコンパウンドペレットを得た後、上記ペレットを105℃で4時間乾燥させた。
射出成形機(FUNUC社製:α50C)を用いてシリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧力78.4MPa、射出速度120mm/s、冷却時間15秒の一般的な条件で、電気・電子部品並びに自動車用の成形品を成形した。
その後、上記成形品に、コバルト60を線源としたγ線を25kGy照射して実施例4の樹脂加工品を得た。
【実施例5】
熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ株式会社製:トレコン1401X06)59.3質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(I−2)12質量部、非反応型の有機りん系難燃剤(三光化学社製:HCA−HQ)5質量部、多官能環状化合物(東亜合成社製:M−315)3質量部、無機添加剤として実施例2のナノ粒径のクレー5質量部、補強剤として実施例1のガラス繊維20質量部、さらに、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノイルガノックス1010)0.2質量部を用い、混練温度を245℃で混練りして樹脂コンパウンドペレットを得た後、130℃で3時間乾燥させ、成形時のシリンダー温度を250℃の条件に変更した以外は実施例2と同様の条件で成形品を成形した。
その後、上記成形品に、住友重機社製の加速器を用い、加速電圧4.8MeVで、照射線量40kGyの電子線を照射して実施例5の樹脂加工品を得た。
【実施例6】
実施例2の系に熱触媒(日本油脂社製:ノフマーBC)を2質量部、更に添加した以外は実施例2と同様の条件で成形品を成形した。
その後、上記成形品を、245℃、8時間加熱によって反応して実施例6の樹脂加工品を得た。
【実施例7】
実施例4の系に、紫外線開始剤(チバガイギー社製イルガノックス651とイルガノックス369とを2:1で併用)7質量部添加した以外は実施例4と同様の条件で成形品を成形した。
その後、上記成形品を、超高圧水銀灯で365nmの波長で150mW/cmの照度で2分間照射して実施例7の樹脂加工品を得た。
【実施例8】
熱硬化性エポキシ系モールド樹脂(長瀬ケミカル社製、主剤XNR4012:100、硬化剤XNH4012:50、硬化促進剤FD400:1)47質量部にシリカ45質量部を分散した系に、反応性難燃剤として上記の化合物(I−1)8質量部を添加してモールド成形品を得た後、100℃、1時間反応させて実施例8の樹脂加工品(封止剤)を得た。
【実施例9】
半導体封止用エポキシ樹脂(信越化学社製:セミコート115)92質量部に、反応性難燃剤として上記の化合物(I−2)8質量部を添加してモールド成形品を得た後、150℃、4時間反応させて実施例9の樹脂加工品(封止剤)を得た。
比較例1〜9
実施例1〜9において、本発明の反応性難燃剤を配合しなかった以外は、実施例1〜9と同様な方法で、それぞれ比較例1〜9の樹脂加工品を得た。
比較例10
実施例4に対して、難燃剤として、非反応性の有機りん系難燃剤(三光化学社製:EPOCLEAN)20質量部のみ添加した以外は、実施例4と同様の条件で比較例10の樹脂加工品を得た。
[一般式(II)の反応性難燃剤を用いた難燃性樹脂加工品の製造]
【実施例10】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2123B)57.2質量部、強化繊維としてシランカップリング剤で表面処理した繊維長約3mmのガラス繊維(旭ファイバーグラス社製:03.JAFT2Ak25)25質量部、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノイルガノックス1010)0.3質量部、無機充填剤として粒径2μmのタルク5質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(II−1)12質量部を配合し、サイドフロー型2軸押出機(日本製鋼社製)で280℃で混練して樹脂ペレットを得て105℃、4時間乾燥した後、上記ペレットを射出成形機(FUNUC社製:α50C)を用いて樹脂温度280℃、金型温度80℃の条件で成形した。
その後、上記成形品に、コバルト60を線源としたγ線を25kGy照射して実施例10の樹脂加工品を得た。
【実施例11】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2020B)57.2質量部、無機充填剤として上記タルク4質量部及びナノ粒径のクレー(日商岩井ベントナイト(株)社製ナノマー1.30T)3質量部、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(II−9)10質量部及び化合物(II−5)5質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノックス1010)0.3質量部を加えて混合した。
280℃に設定したサイドフロー型2軸押出し機を用いて上記の混合物を溶融し、更に、強化繊維としてシランカップリング剤で表面処理した繊維長約3mmのガラス繊維(旭ファイバーグラス社製:03.JAFT2Ak25)20質量部を、押出し混練を用いてサイドから溶融した上記の混合物に混ぜ込みコンパウンドペレットを得た後、上記ペレットを105℃で4時間乾燥させた。
射出成形機(FUNUC社製:α50C)を用いてシリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧力78.4MPa、射出速度120mm/s、冷却時間15秒の一般的な条件で、電気・電子部品並びに自動車用の成形品を成形した。
その後、上記成形品に、コバルト60を線源としたγ線を25kGy照射して実施例11の樹脂加工品を得た。
【実施例12】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2020B)52.2質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(II−15)12質量部及び非反応型の有機りん系難燃剤(三光化学社製:HCA−HQ)8質量部を用いた以外は実施例11と同様の条件で、実施例12の樹脂加工品を得た。
【実施例13】
熱可塑性樹脂として66ナイロン(宇部興産社製:2020B)53.2質量部、無機充填剤として実施例2で使用のナノ粒径のクレー4質量部、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(II−18)10質量部、多官能環状化合物(日本化成社製:TAIC)2質量部、有機リン系難燃剤(三光化学社製、HCA−HQ)10質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノックス1010)0.3質量部を加えて混合した。
280℃に設定したサイドフロー型2軸押出し機を用いて上記の混合物を溶融し、更に、強化繊維としてシランカップリング剤で表面処理した繊維長約3mmのガラス繊維(旭ファイバーグラス社製:03.JAFT2Ak25)20質量部を、押出し混練を用いてサイドから溶融した上記の混合物に混ぜ込みコンパウンドペレットを得た後、上記ペレットを105℃で4時間乾燥させた。
射出成形機(FUNUC社製:α50C)を用いてシリンダー温度280℃、金型温度80℃、射出圧力78.4MPa、射出速度120mm/s、冷却時間15秒の一般的な条件で、電気・電子部品並びに自動車用の成形品を成形した。
その後、上記成形品に、コバルト60を線源としたγ線を25kGy照射して実施例13の樹脂加工品を得た。
【実施例14】
熱可塑性樹脂としてポリブチレンテレフタレート樹脂(東レ株式会社製:トレコン1401X06)53.3質量部、反応性難燃剤として上記の化合物(II−4)12質量部、非反応型の有機りん系難燃剤(三光化学社製:HCA−HQ)7質量部、多官能環状化合物(東亜合成社製:M−315)3質量部、無機添加剤として実施例2のナノ粒径のクレー4質量部、補強剤として実施例10のガラス繊維20質量部、さらに、着色剤としてカーボンブラック0.5質量部、酸化防止剤(チバガイギー社製:イルガノイルガノックス1010)0.2質量部を用い、混練温度を245℃で混練りして樹脂コンパウンドペレットを得た後、130℃で3時間乾燥させ、成形時のシリンダー温度を250℃の条件に変更した以外は実施例11と同様の条件で成形品を成形した。
その後、上記成形品に、住友重機社製の加速器を用い、加速電圧4.8MeVで、照射線量40kGyの電子線を照射して実施例14の樹脂加工品を得た。
【実施例15】
実施例11の系に熱触媒(日本油脂社製:ノフマーBC)を4質量部、更に添加した以外は実施例11と同様の条件で成形品を成形した。
その後、上記成形品を、245℃、8時間加熱によって反応して実施例15の樹脂加工品を得た。
【実施例16】
実施例13の系に、紫外線開始剤(チバガイギー社製イルガノックス651とイルガノックス369とを2:1で併用)7質量部添加した以外は実施例13と同様の条件で成形品を成形した。
その後、上記成形品を、超高圧水銀灯で365nmの波長で150mW/cmの照度で2分間照射して実施例16の樹脂加工品を得た。
【実施例17】
熱硬化性エポキシ系モールド樹脂(長瀬ケミカル社製、主剤XNR4012:100、硬化剤XNH4012:50、硬化促進剤FD400:1)47質量部にシリカ45質量部を分散した系に、反応性難燃剤として上記の化合物(II−1)8質量部を添加してモールド成形品を得た後、100℃、1時間反応させて実施例17の樹脂加工品(封止剤)を得た。
【実施例18】
半導体封止用エポキシ樹脂(信越化学社製:セミコート115)92質量部に、反応性難燃剤として上記の化合物(II−2)8質量部を添加してモールド成形品を得た後、150℃、4時間反応させて実施例18の樹脂加工品(封止剤)を得た。
比較例11〜19
実施例10〜18において、本発明の反応性難燃剤を配合しなかった以外は、実施例10〜18と同様な方法で、それぞれ比較例11〜19の樹脂加工品を得た。
比較例20
実施例13に対して、難燃剤として、非反応性の有機りん系難燃剤(三光化学社製:EPOCLEAN)20質量部のみ添加した以外は、実施例13と同様の条件で比較例20の樹脂加工品を得た。
試験例
実施例1〜18、比較例1〜20の樹脂加工品について、難燃性試験であるUL−94に準拠した試験片(長さ5インチ、幅1/2インチ、厚さ3.2mm)と、IEC60695−2法(GWFI)に準拠したグローワイヤー試験片(60mm角、厚さ1.6mm)を作製し、UL94試験、グローワイヤ試験(IEC準拠)、はんだ耐熱試験を行なった。また、すべての樹脂加工品について300℃×3時間のブリードアウト試験を行った。
なお、UL94試験は、試験片を垂直に取りつけ,ブンゼンバーナーで10秒間接炎後の燃焼時間を記録した。更に、消火後2回目の10秒間接炎し再び接炎後の燃焼時間を記録し、燃焼時間の合計と2回目消火後の赤熱燃焼(グローイング)時間と綿を発火させる滴下物の有無で判定した。
また、グローワイヤ試験は、グローワイヤとして先端が割けないように曲げた直径4mmのニクロム線(成分:ニッケル80%、クロム20%)、温度測定用熱電対として直径0.5mmのタイプK(クロメル−アルメル)を用い、熱電対圧着荷重1.0±0.2N、温度850℃で行った。なお、30秒接触後の燃焼時間が30秒以内のこと、サンプルの下のティッシュペーパーが発火しないことをもって燃焼性(GWFI)の判定基準とした。
また、はんだ耐熱試験は、350℃のはんだ浴に10秒浸漬後の寸法変形率を示した。
その結果をまとめて表1、表2に示す。


表1、表2の結果より、実施例の樹脂加工品においては、難燃性はいずれもV−0と優れ、グローワイヤ試験においてもすべて合格しており、更に、はんだ耐熱試験後の寸法変形率も25%以下であることがわかる。また、300℃×3時間後においても難燃剤のブリードアウトは認められなかった。
一方、本発明の反応性難燃剤を含有しない比較例1〜9、比較例11〜19においては、難燃性はHBと不充分であり、グローワイヤ試験においてもすべて不合格、更に、はんだ耐熱試験後の寸法変形率も実施例に比べて劣ることがわかる。
また、難燃剤として非反応型の有機りん系難燃剤を用いた比較例10、20においては、難燃性はV−2で不充分であり、300℃×3時間後において難燃剤のブリードアウトが認められた。
【産業上の利用可能性】
本発明は、ハロゲンを含有しない、非ハロゲン系の難燃剤及び難燃性樹脂加工品として、電気部品や電子部品等の樹脂成形品や、半導体等の封止剤、コーティング塗膜等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂との反応性を有し、該反応により前記樹脂と結合することによって難燃性を付与する反応性難燃剤であって、下記の一般式(I)又は(II)で示される、末端に不飽和基を有する有機環状リン化合物を含有することを特徴とする反応性難燃剤。

(式(I)又は(II)中、R〜R、R〜Rは、それぞれ、−NHCHCH=CH、−N(CHCH=CH、−OCHCH=CH、−CHCH=CH、−CHCHOCH=CH、−(C)−CH=CH、−O(C)−CH=CH、−CH(C)−CH=CH、−NH(C)−CH=CH、−N(CHCH=CH)−(C)−CH=CH、−O−R−OOC−C(R’)=CH、−NH−R−NHCO−C(R’)=CH、炭素数12以下のアリール基より選ばれる。Rは炭素数2〜5のアルキレン基、R’は水素またはメチル基を表す。R〜Rの少なくとも1つ、R〜Rの少なくとも1つは−CH=CH基又は−C(CH)=CH基を含む。)
【請求項2】
請求項1記載の反応性難燃剤と、樹脂とを含有する樹脂組成物を固化した後、加熱又は放射線の照射によって前記樹脂と前記反応性難燃剤とを反応させて得られる難燃性樹脂加工品であって、前記難燃性樹脂加工品全体に対して、前記反応性難燃剤を1〜20質量%含有することを特徴とする難燃性樹脂加工品。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記反応性難燃剤を2種類以上含有し、少なくとも1種類が多官能性の前記反応性難燃剤である請求項2に記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、前記反応性難燃剤以外の難燃剤を更に含有し、該難燃剤が、末端に少なくとも1つの不飽和基を有する環状の含窒素化合物である請求項2又は3に記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項5】
前記樹脂組成物が、前記反応性難燃剤以外の難燃剤を更に含有し、該難燃剤が、反応性を有しない添加型の難燃剤である請求項2〜4のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、難燃性を有しないが前記樹脂との反応性を有する架橋剤を更に含有し、該架橋剤が、主骨格の末端に不飽和基を有する多官能性のモノマー又はオリゴマーである請求項2〜5のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項7】
前記難燃性樹脂加工品全体に対して1〜35質量%の無機充填剤を含有する請求項2〜6のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項8】
前記無機充填剤としてシリケート層が積層してなる層状のクレーを含有し、前記層状のクレーを前記難燃性樹脂加工品全体に対して1〜10質量%含有する請求項7に記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項9】
前記難燃性樹脂加工品全体に対して5〜40質量%の強化繊維を含有する請求項2〜8のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項10】
前記樹脂と前記反応性難燃剤とが、線量10kGy以上の電子線又はγ線の照射によって反応して得られる請求項2〜9のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項11】
前記樹脂と前記反応性難燃剤とが、前記樹脂組成物を成形する温度より5℃以上高い温度で反応して得られる請求項2〜9のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項12】
前記難燃性樹脂加工品が、成形品、塗膜、封止剤より選択される1つである請求項2〜11のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。
【請求項13】
前記難燃性樹脂加工品が、電気部品又は電子部品として用いられるものである請求項2〜12のいずれか1つに記載の難燃性樹脂加工品。

【国際公開番号】WO2005/026251
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513806(P2005−513806)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003191
【国際出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【出願人】(595067763)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】