説明

可変容量タービンのノズルベーンの加工方法

【課題】翼部の加工コストを大幅に低減することができる可変容量タービンのノズルベーンの加工方法を提供する。
【解決手段】矩形板状の翼部61と当該翼部61の一辺端面61aに翼部61板面の延長方向へ突設された軸部62とを備える可変容量タービンのノズルベーン6の加工方法であって、プレス機の下型1側に設置した受け台2上に上記翼部6の一辺端面61aを載置して、当該翼部61を起立姿勢で受け台2上に位置させ、所定の追込み量でプレス機の上型4側に設置したパンチ5を、上方へ向く翼部61の他辺端面61bに圧接させることにより当該他辺端面61を平面加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量タービンのノズルベーンの加工方法に関し、特にノズルベーンの翼部端面の平面加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4には車両ターボチャージャの可変容量タービンに使用されるノズルベーンの側面図を示す。ノズルベーン6は図4(1)に示すように、矩形板状の翼部61と当該翼部61の一辺端面61aに翼部61板面の延長方向へ突設された円柱軸部62とを備えている。このようなノズルベーン6は精密鋳造で製造され、鋳型砂の除去や外観検査等を行った後、図4(2)の矢印で示すように、軸部62の外周62aと、翼部61の一辺端面61aを切削ないし研削加工し、その後、図4(3)の矢印で示すように、軸部62側とは反対側の翼部61の他辺端面61bを切削ないし研削加工して、当該他辺端面61bの平行度と平面度を所定範囲内に収めている。なお、特許文献1には上記構造のノズルベーンを使用した可変容量タービンが示されている。
【特許文献1】特開2002−256876
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の切削や研削による翼部の加工は、ノズルベーン全体の製造コストの大きな部分を占めていることから、加工コストの削減が求められていた。
【0004】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、翼部の加工コストを大幅に低減することができる可変容量タービンのノズルベーンの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、矩形板状の翼部(61)と当該翼部(61)の一辺端面(61a)に翼部(61)板面の延長方向へ突設された軸部(62)とを備える可変容量タービンのノズルベーン(6)の加工方法であって、プレス機の下型(1)側に設置した受け台(2)上に上記翼部(6)の一辺端面(61a)を載置して、当該翼部(61)を起立姿勢で受け台(2)上に位置させ、所定の追込み量でプレス機の上型(4)側に設置したパンチ(5)を、上方へ向く翼部(61)の他辺端面(61b)に圧接させることにより当該他辺端面(61b)を平面加工するものである。
【0006】
本発明において、追込み量を適当に設定してプレス機のパンチを翼部の他辺端面に圧接させると、他辺端面の平行度及び平面度が大幅に改善され、平面加工される。このような加工方法によれば、従来の切削等に比して加工工数が少なくて済み、加工コストが大幅に低減される。また、加工された他辺端面はスプリングバックによって原寸法近くまで回復するから、切削加工等の場合のように、加工前製品に切削代等を確保しておく必要がなく、材料の無駄が低減されるから、これによっても全体コストが削減される。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のノズルベーンの加工方法によれば、翼部の加工コストを大幅に低減することができるから、ノズルベーン全体の製造コストを大きく下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の加工方法を実施するプレス機の一例を示す断面図である。図1において、プレス機の下型1上には超硬合金の受け台2が設けられている。受け台2は厚肉の板体で、その中心には上下方向へ貫通する円形孔が形成されて挿入孔21となっている。そして耐熱鋼製の、既に従来技術で説明したものと同形状のノズルベーン6がその軸部62を上記挿入孔21内に挿入されるとともに、前工程にて切削ないし研削で平面加工された、軸部62に近い側の翼部61の一辺端面61aが受け台2上に載置されている。また、受け台2上には翼部61の長手方向両端に近接させて工具鋼製の座屈防止ガイド3が設けられている。
【0010】
座屈防止ガイド3は板体で、その肉厚は翼部61の高さよりも所定量低くなっており、この高さの差Dがプレス時の追込み量となっている。一方、上記下型1に対向するプレス機の上型4には下面に、超硬合金よりなる板状パンチ5が設けられて、その下面は受け台1の上面に平行になっている。この状態で、上型4を下降させるとパンチ5の下面が、上方へ向いた翼部61の他辺端面61bに衝突してこれを圧接し、上記追込み量Dだけ上記他辺端面61bを圧縮変形させる。追込み量Dを最適に設定しておくと、切削や研削をしなくても他辺端面61bの平行度および平面度が大幅に改善されて、平面加工がなされる。
【0011】
(実施例)
表1は、追込み量Dを変化させつつ、複数(例えば7個)のノズルベーンについて、プレス加工前と加工後の他辺端面61bの平均平行度、および平均平面度を比較したものである。ここで他辺端面61bの平行度は、図2に示すように、翼部61の長手方向の一端部と他端部での、一辺端面61aとの間の距離d1、d2を測定して、これらの差(d1−d2)により判定する。また、平面度は、図3に示すように、他辺端面61b上を長手方向の一端から他端へ真円度測定器7(例えば(株)東京精密製 製品名RONDCOM55A)を移動させて、測定された最大値と最小値の差により判定する。
【0012】
表1によれば、追込み量を0.20mmに設定すると、プレス加工前の他辺端面61bの平均平行度0.052mmに対してプレス加工後は0.016mmと大幅に改善される。この時には、平均平面度もプレス加工前の0.028mmに対してプレス加工後は0.012mmと大幅に改善される。また、追込み量を0.25mmに設定すると、平均平行度がプレス加工前の0.052mmに対してプレス加工後は0.015mmと大幅に改善され、平均平面度もプレス加工前の0.027mmに対してプレス加工後は0.010mmと大幅に改善される。
【0013】
これに対して追込み量を0.15mmに設定した場合には、平均平面度はプレス加工前の0.027mmに対してプレス加工後は0.014mmとある程度の改善が見られるが、平均平行度はプレス加工前の0.051mmに対してプレス加工後は0.034mmとそれほど大きな改善は見られない。一方、追込み量を0.30mmに設定した場合も、平均平面度はプレス加工前の0.025mmに対してプレス加工後は0.010mmとかなりの改善が見られるが、平均平行度はプレス加工前の0.051mmに対してプレス加工後は0.032mmとそれほど大きな改善は見られない。したがって、追込み量を0.20mm〜0.25mmの範囲に設定してプレス加工するのが好ましい。
【0014】
このような加工方法において、上記追込み量で圧縮変形させられた他辺端面61bはスプリングバックによって原寸法近くまで、正確には0.03mm〜0.06mm程度原寸法から小さい程度にまで回復する。したがって、従来の切削や研削による加工の場合のように、加工前製品に切削代や研削代を確保しておく必要がないから、材料の無駄を低減することができる。
【0015】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の方法を実施するプレス機の要部断面図である。
【図2】端面の平行度を測定する原理を示す概略側面図である。
【図3】端面の平面度を測定する原理を示す概略側面図である。
【図4】ノズルベーンの側面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…下型、2…受け台、3…座屈防止ガイド、4…上型、5…パンチ、6…ノズルベーン、61…翼部、61a…一辺端面、61b…他辺端面、62…軸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形板状の翼部と当該翼部の一辺端面に翼部板面の延長方向へ突設された軸部とを備える可変容量タービンのノズルベーンの加工方法であって、プレス機の下型側に設置した受け台上に上記翼部の一辺端面を載置して、当該翼部を起立姿勢で前記受け台上に位置させ、所定の追込み量でプレス機の上型側に設置したパンチを、上方へ向く前記翼部の他辺端面に圧接させることにより当該他辺端面を平面加工することを特徴とする可変容量タービンのノズルベーンの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−31924(P2008−31924A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206661(P2006−206661)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(502230882)株式会社大同キャスティングス (32)
【Fターム(参考)】