可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システム
【課題】データ値が飽和した画像データが撮影された場合に、飽和した画像データ部分の被写体の情報を擬似的に復元可能な可搬型放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】可搬型放射線画像撮影装置1は、放射線の線量に応じて電荷を発生させる放射線検出素子7が二次元状に配列された検出部Pと、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFaに変換する読み出し回路17と、画像データFaを解析して飽和画像データFAが存在するか否かを判定する判定手段22と、飽和画像データFAが存在すると判定された場合に、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行わずに、再度、読み出し回路17に読み出し処理を行わせ、再度読み出された画像データFbに基づいてそれぞれ特徴量Cを算出する特徴量算出手段22と、算出された各特徴量Cに基づいて、各飽和画像データFAをそれぞれ非飽和画像データFa*に修正する修正手段22とを備える。
【解決手段】可搬型放射線画像撮影装置1は、放射線の線量に応じて電荷を発生させる放射線検出素子7が二次元状に配列された検出部Pと、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFaに変換する読み出し回路17と、画像データFaを解析して飽和画像データFAが存在するか否かを判定する判定手段22と、飽和画像データFAが存在すると判定された場合に、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行わずに、再度、読み出し回路17に読み出し処理を行わせ、再度読み出された画像データFbに基づいてそれぞれ特徴量Cを算出する特徴量算出手段22と、算出された各特徴量Cに基づいて、各飽和画像データFAをそれぞれ非飽和画像データFa*に修正する修正手段22とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。こうした医療用の放射線画像は、従来からスクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、放射線画像のデジタル化を図るために輝尽性蛍光体シートを用いたCR(Computed Radiography)装置が開発され、最近では、照射された放射線を、二次元状に配置された放射線検出素子で検出して、デジタル画像データとして取得する放射線画像撮影装置が開発されている。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来はブッキー装置と一体的に形成されていた(例えば特許文献1参照)。また、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納して可搬とされた可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
しかし、今なお放射線画像撮影にCR装置が用いられている場合も少なくなく、そこに放射線画像撮影装置(FPD)を導入した場合には、撮影室内でいわゆるCR装置と放射線画像撮影装置との混在状態が生じる。そこで、このようなCR装置と放射線画像撮影装置とが混在する中で、放射線技師等の操作者にとって作業効率が良く、作業し易い環境を構築するための放射線画像撮影システムが提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
ところで、放射線画像撮影装置は、所定のレベルの画像データを得るために照射されるべき放射線の照射線量が、CR装置と比較して低線量で済むことが知られている。逆の言い方をすれば、所定のレベルの画像データを得るために、CR装置に照射されるべき照射線量の放射線を誤って放射線画像撮影装置(FPD)に照射すると、出力される画像データが飽和(saturate)する場合が生じる。撮影室内にCR装置と放射線画像撮影装置とが混在する環境では特にこの問題が生じる可能性が高くなる。
【0006】
そこで、例えば、特許文献4では、放射線画像撮影装置で撮影した画像データの濃度調整処理やコントラスト調整処理を行う際に、データ値が飽和していると判断される画像データが存在する場合に、飽和した画像データに定数を加算して濃度調整やコントラスト調整を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開平7−246199号公報
【特許文献3】特開2001−149358号公報
【特許文献4】特開2000−137099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、飽和した画像データに定数を加算すれば、飽和した画像データと飽和していない画像データとの濃度関係やコントラスト関係は改善されるが、飽和した画像データ同士のデータ値には差は生じず、放射線画像では飽和した画像データの部分は、結局、白く(或いは黒く)現れる。
【0009】
このように、特許文献4に記載された手法では、飽和した画像データの部分に撮影されているはずの被写体の情報を放射線画像上に現すことができないため、再撮影が必要となる。しかし、それでは患者の負担が増大するとともに、患者に対する被曝線量が増大し、好ましくない。
【0010】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、データ値が飽和した画像データが撮影された場合に、飽和した画像データ部分の被写体の情報を擬似的に復元可能な可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の問題を解決するために、本発明の可搬型放射線画像撮影装置は、
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせ、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出する特徴量算出手段と、
前記特徴量算出手段により算出された前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正する修正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置とのデータの送受信を行う通信手段と、
を備える可搬型放射線画像撮影装置と、
前記可搬型放射線画像撮影装置とのデータの送受信を行う通信手段を備え、前記可搬型放射線画像撮影装置から前記飽和画像データを含む前記画像データおよび前記再度読み出された前記画像データが送信されると、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出し、算出した前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正するコンソールと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムによれば、画像データが飽和するほどの放射線が照射された場合にラグ(lag)現象(米国特許6,621,887号明細書等に開示されているように、当回撮影時の放射線照射の影響が次回撮影時の放射線画像読み取りデータに重畳されて現れる現象)が生じることを利用して、再度の読み出し処理で読み出されるラグに起因するデータ値が大きいほど、強い放射線が照射されたものとして大きな特徴量を対応づけることで、飽和画像データ部分の被写体の情報を擬似的に的確に復元することが可能となる。
【0014】
そのため、例えば、放射線画像撮影装置(FPD)に対して誤ってCR装置に照射するような高い線量の放射線を照射してしまい、部分的に飽和画像データが撮影された場合でも、飽和画像データ部分の被写体の情報が擬似的に的確に復元された放射線画像を得ることが可能となるため、再撮影を行う必要がなくなり、再撮影を行うことにより患者の負担が増大したり患者に対する被曝線量が増大することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【図3】本実施形態に係る基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された撮像素子と薄膜トランジスタ等の構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるX−X線に沿う断面図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の等価回路図を表す図である。
【図8】再度の読み出し処理を行わない通常の場合のタイミングチャートである。
【図9】(A)放射線画像撮影装置の放射線入射面における検出部、被写体が占める領域、放射線が照射される領域等を説明する平面図であり、(B)読み出された画像データの例を示すグラフである。
【図10】飽和画像データが存在する画像データの例を示すグラフである。
【図11】再度の読み出し処理を行う場合のタイミングチャートである。
【図12】再度の読み出し処理で読み出された画像データの例を示すグラフである。
【図13】図12のグラフにおける読み残しデータ値を説明するグラフである。
【図14】放射線の線量と放射線検出素子からの読み出し効率との関係を示すグラフである。
【図15】ラグデータ値に対応づけられた特徴量の例を示すグラフである。
【図16】特徴量が加算された飽和画像データの例を示すグラフである。
【図17】図16の各データに所定の係数を乗算してデータ変換された各画像データの例を示すグラフである。
【図18】本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0017】
なお、以下、可搬型放射線画像撮影装置を単に放射線画像撮影装置と表す。また、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して放射線検出素子で電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0018】
[放射線画像撮影装置]
まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等が収納されたカセッテ型の可搬型放射線画像撮影装置として構成されている。
【0019】
ハウジング2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下、放射線入射面Rという。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、ハウジング2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわば弁当箱型である場合が示されているが、ハウジング2を一体的に形成する、例えば特開2002−311526号公報に記載されたX線画像撮影装置のような、いわばモノコック型とすることも可能である。
【0020】
ハウジング2の内部の基板4の下方側には、図2に示すように、基台31が配置されており、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、本実施形態では、基台31やPCB基板33の下面側には、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R側から入射し、シンチレータ3や基板4、基台31等を透過した放射線を検出する放射線センサ35が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのガラス基板36が配設されている。
【0021】
シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光線を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。
【0022】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、それぞれ本実施形態では光電変換素子である放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。このように、放射線検出素子7は、基板4上に二次元状に配列されており、複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0023】
本実施形態では、放射線検出素子7として、放射線入射面Rから入射した放射線がシンチレータ3で変換されて出力される電磁波の光量(シンチレータ3に入射した放射線の線量に応じて増加する。)に応じて電荷を発生させるフォトダイオードが用いられているが、この他にも、例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ素子であるTFT(薄膜トランジスタ)8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0024】
そして、TFT8は、オン状態とされることにより、すなわちゲート電極8gに信号読み出し用の電圧が印加されてTFT8のゲートが開かれることにより、放射線検出素子7に蓄積された電荷を信号線6に放出させるようになっている。ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるX−X線に沿う断面図である。
【0025】
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0026】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0027】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0028】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。
【0029】
p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、本実施形態では、上記のように、放射線検出素子7としてp層77、i層76、n層75が積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合を説明したが、放射線検出素子7は、このようなpin型の放射線検出素子に限定されない。
【0030】
また、放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0031】
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で1本の結線10に結束されている。バイアス線9や結線10は、電気抵抗が小さい金属線で形成されている。
【0032】
本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、IC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0033】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。
【0034】
一方、図1に示すように、ハウジング2の一方側の短辺側側面部には、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ37や各種の操作状況等を表示するインジケータ38等が設けられている。また、この側面部には、図示しない内蔵バッテリの交換用の蓋部材39が設けられており、蓋部材39には、放射線画像撮影装置1が外部装置とデータや信号等の送受信を無線方式で行うためのアンテナ装置40が埋め込まれて設けられている。
【0035】
なお、アンテナ装置40を設ける箇所は、本実施形態のようにハウジング2の1つの短辺側側面部に限定されず、他の位置に設けることも可能である。また、アンテナ装置40の個数は必ずしも1つに限定されず、必要な数だけ適宜設けられる。
【0036】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路図である。
【0037】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78がそれぞれバイアス線9および結線10に接続されており、結線10は逆バイアス電源14に接続されている。逆バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7に印加する逆バイアス電圧を供給するようになっている。また、逆バイアス電源14は制御手段22に接続されており、制御手段22は、逆バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加する逆バイアス電圧を制御するようになっている。
【0038】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7中ではGと表記されている。)は走査駆動回路15から延びる各走査線5にそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0039】
走査線5を介して走査駆動回路15からTFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧が印加されるとTFT8のゲートがオン状態とされて、放射線検出素子7に蓄積された電荷がTFT8のソース電極8sを介してドレイン電極8dから信号線6に読み出されるようになっている。
【0040】
各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、読み出しIC16には所定個数の読み出し回路17が設けられており、読み出しIC16が複数設けられることにより、信号線6の本数分の読み出し回路17が設けられるようになっている。
【0041】
読み出し回路17は、増幅回路18と、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)回路19と、A/D変換器20とで構成されており、1本の信号線6ごとに1回路ずつ設けられているが、本実施形態では、A/D変換器20は、複数の回路で共通とされており、各相関二重サンプリング回路19から出力された各電気信号がアナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値(本実施形態では0〜4095)に変換されるようになっている。
【0042】
そして、読み出し回路17では、放射線検出素子7から信号線6を通じて電荷が読み出され、放射線検出素子7ごとに電荷が電荷電圧変換されて増幅される等して電気信号に変換されるようになっている。なお、相関二重サンプリング回路19は、図7中ではCDSと表記されている。
【0043】
制御手段22は、CPU(Central Processing Unit)等を備えたマイクロコンピュータや専用の制御回路で構成されており、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、制御手段22には、RAM(Random Access Memory)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0044】
前述したように、制御手段22は、逆バイアス電源14を制御して各放射線検出素子7に印加する逆バイアス電圧を制御したり、走査駆動回路15から信号読み出し用の電圧を印加する走査線5を切り替えたり、或いは、各読み出し回路17内の増幅回路18や相関二重サンプリング回路19等を制御して、各放射線検出素子7からの電気信号の読み出しを行うようになっている。
【0045】
また、制御手段22には、前述したアンテナ装置40が接続されており、さらに、各放射線検出素子7等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。このように、バッテリ41は、放射線画像撮影装置1のハウジング2内に内蔵されており、バッテリ41には、外部装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。また、制御手段22には、前述した放射線センサ35が接続されている。
【0046】
なお、本実施形態では、上記のように、放射線センサ35で検出した放射線の線量に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出するようになっているが、後述するように放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に電荷が流れ出すため、その電荷の流出すなわち電流を検出して放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出するように構成することも可能である。また、放射線発生装置等の外部装置からアンテナ装置40を介して放射線画像撮影装置1に放射線の照射の開始や終了を通知するように構成することも可能である。
【0047】
制御手段22は、本発明における判定手段、特徴量算出手段および修正手段として機能するようになっている。以下、この点について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0048】
本実施形態では、制御手段22は、操作者が電源スイッチ37(図1参照)等を手動で操作し、或いは、アンテナ装置40を介して例えば後述する放射線画像撮影システム50のコンソール58等の外部装置から送信された信号を受信すると、放射線検出素子7や読み出し回路17等のリセット処理を行う。
【0049】
リセット処理では、制御手段22は、図8のタイミングチャートに示すように、走査駆動回路15から走査線5の全てのラインL1〜Lnに対して信号読み出し用の電圧を供給させ、走査線5に接続された各TFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧を印加して(時刻T1)、各TFT8をオン状態とし、読み出し回路17にも所定の信号を送信して、放射線検出素子7やTFT8、読み出し回路17の増幅回路18等に蓄積された余分な電荷を下流側に放出させる。
【0050】
そして、制御手段22は、リセット処理が終了すると、走査駆動回路15からの全走査線5に対する信号読み出し用の電圧の供給を停止して(時刻T2)、各TFT8のゲート電極8gへの信号読み出し用の電圧の印加を停止して各TFT8をオフ状態として待機する。そして、放射線画像撮影が行われる。
【0051】
放射線画像撮影では、放射線画像撮影装置1に放射線入射面R側に被写体である患者の患部部分を載置し、或いは接近させて配置し、図示しない放射線発生装置から放射線画像撮影装置1に放射線が照射される。本実施形態では、その際、放射線センサ35から出力される放射線の線量の情報に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始が検出されるが、バイアス線9や結線10に流れる電流を検出して放射線の照射の開始を検出してもよく、或いは、放射線発生装置等の外部装置からアンテナ装置40を介して放射線の照射の開始を通知してもよいことは前述した通りである。
【0052】
被写体を透過し、被写体の情報を担持した放射線が、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rに照射されると、放射線画像撮影装置1では、放射線入射面Rを透過した放射線がシンチレータ3に入射し、シンチレータ3で電磁波に変換されて、電磁波がその下方の放射線検出素子7に入射する。
【0053】
そして、入射した電磁波が放射線検出素子7のi層76(図5参照)に到達すると、i層76内で入射した電磁波の光量(すなわち放射線の線量)に応じて電子正孔対が発生し、逆バイアス電圧の印加により放射線検出素子7内に形成された所定の電位勾配に従って、発生した電子と正孔のうちの一方の電荷(本実施形態では正孔)は第2電極78側に移動してバイアス線9に流出し、他方の電荷(本実施形態では電子)は第1電極74側に移動して第1電極74付近に蓄積される。
【0054】
制御手段22は、放射線の照射が終了すると、各放射線検出素子7からの電荷の読み出し処理を行う。読み出し処理では、制御手段22は、走査駆動回路15から走査線5の所定のラインL1に対して信号読み出し用の電圧を供給させて走査線5(L1)に接続された各TFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧を印加して(図8の時刻T31)、各TFT8をオン状態とし、TFT8を介して各放射線検出素子7から蓄積された電荷を信号線6に読み出させる。
【0055】
各放射線検出素子7から信号線6に放出された電荷は、読み出し回路17で電荷電圧変換されて増幅される等して画像データFaに変換され、アナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、デジタル値に変換されて記憶手段23に出力される。制御手段22は、出力された画像データFaを放射線検出素子7と対応付けながら順次記憶手段23に記憶させる。
【0056】
そして、制御手段22は、走査線5のラインL1について読み出し処理を終了すると、走査駆動回路15から信号読み出し用の電圧を供給させる走査線5をラインL2、L3、…、Lnと順次切り替えながら(すなわち走査させながら)上記の読み出し処理を繰り返させて(時刻T32〜T3n)、全ての放射線検出素子7から電荷を放出させてそれぞれ画像データFaに変換させていき、画像データFaを放射線検出素子7と対応付けながら順次記憶手段23に記憶させる。このようにして読み出し処理が行われる。
【0057】
続いて、制御手段22は、判定手段として、読み出した各画像データFaを解析して、各画像データFa中にデータ値が飽和していると見なされる画像データFA(以下、飽和画像データFAという。)が存在するか否かを判定する。
【0058】
本実施形態では、前述したように、画像エータFaはデジタルのデータ値として0〜4095をとり得るが、制御手段22は、データ値が上限値4095の場合だけでなく、データ値が所定の閾値(例えば4000)以上の値をとる場合に、その画像データFaを飽和画像データFAであると判定し、飽和画像データFAが存在すると判定するようになっている。
【0059】
しかし、通常、放射線画像撮影では、図9(A)に示すように、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rにおける検出部Pに対応する領域(すなわち撮影可能な領域)のうち、被写体Oが占める領域Roを含む領域Riに放射線が照射されるが、その際、放射線が被写体Oを透過せずに直接到達した(或いは放射線が直接到達したシンチレータ3により変換された電磁波が照射された)放射線検出素子7では、画像データFaのデータ値が大きくなる。
【0060】
すなわち、図9(A)において、検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7のうち、例えば図中1点鎖線で示される1つの行iの各列jの各放射線検出素子7に着目し、それらの放射線検出素子7の画像データFaについてデータプロファイルを作成すると、データプロファイルは、例えば図9(B)に示すように、放射線が被写体Oを透過せずに直接到達した放射線検出素子7の画像データFaのデータ値(プロファイル中のRiの部分のデータ値)は、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaのデータ値(プロファイル中のRoの部分のデータ値)よりも相対的に大きくなる。
【0061】
そして、領域Riの部分の画像データFaのデータ値が前述した4000等に設定される閾値以上の値をとる場合があるが、その領域Riの部分の画像データFaは、被写体Oを透過せずに放射線検出素子7に直接到達した放射線によるものであり、被写体Oについての情報はその領域Riの画像データFaには何ら含まれていないため、その領域Riの画像データFaが飽和していても問題はない。画像データFaの飽和が問題となるのは、被写体Oを透過した放射線が到達した領域Roに存在する放射線検出素子7の画像データFaについてである。
【0062】
従って、本実施形態では、判定手段である制御手段22は、検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行iごと(或いは各列jごと)の各放射線検出素子7の画像データFaについてそれぞれ図9(B)に示したようなデータプロファイルを作成する。そして、データプロファイルのうち、プロファイルの端部に存在するデータ値が大きい部分(出力上限値の4095に近い部分)を放射線が被写体Oを透過せずに直接到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Riと見做し、その内側の領域であって、画像データFaのデータ値が、領域Riの画像データFaのデータ値より小さい領域を、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roであると推定する。
【0063】
そして、推定したプロファイル中の領域Ro内の画像データFaを解析して、上記の基準に基づいて、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定するようになっている。
【0064】
検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子の所定の行iの各放射線検出素子7の画像データFaについて作成したプロファイルが図9(B)に示したようなプロファイルになる場合、領域Ro内には飽和画像データFAは存在しないと判定される。このような場合には、本実施形態では、制御手段22は、図8のタイミングチャートに示すように、続いて、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行う。
【0065】
なお、飽和画像データ部分が存在せず、全体的に高め、或いは、低めの画像データ値の場合、デジタル画像処理(諧調処理)の段階でLUT(Look Up Table)等を調整することにより、いずれの画像データであっても適正な濃度範囲及びコントラストの画像として表示することが可能であることは言うまでもない。
【0066】
読み出し処理後のリセット処理では、放射線画像撮影における放射線の照射で各放射線検出素子7内に発生した電荷のうち、読み出し処理で読み出されずに各放射線検出素子7内に残存している電荷を除去するために、必要に応じて1回または複数回のリセット処理が行われる(時刻T4〜T5)。そして、リセット処理では、前述した放射線画像撮影前のリセット処理と同様に、走査駆動回路15から走査線5の全てのラインL1〜Lnを介して各TFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧を印加して各TFT8をオン状態として余分な電荷を放出させ、リセット処理が終了すると、信号読み出し用の電圧の印加を停止して各TFT8がオフ状態とされる。これが1回または複数回行われる。
【0067】
ダーク読取処理は、放射線画像撮影のために各TFT8をオフ状態としていた間(すなわち時刻T2〜T3x(x=1〜n)の間)に、照射された放射線により発生した電荷とは別に熱励起等により発生した、いわゆる暗電荷による画像データFaのオフセット分を取得するために行われる処理であり、上記の読み出し処理で読み出された各画像データFaからこのオフセット分を差し引くことで真の画像データFaが得られる。
【0068】
ダーク読取処理では、時刻T5に各TFT8がオフ状態とされると、放射線画像撮影装置1に放射線を照射せずに、走査線5の各ラインL1〜Lnごとに時刻T5〜T6x(x=1〜n)の間、放射線画像撮影の場合と同じ各期間ΔT1〜ΔTnだけ放射線画像撮影装置1を放置して、各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させる。
【0069】
そして、各期間ΔT1〜ΔTnが経過した後、上記の読み出し処理と同じタイミングで、走査駆動手段15から信号読み出し用の電圧を供給する走査線5のラインL1〜Lnを順次切り替えながら、各放射線検出素子7に蓄積された暗電荷を読み出していき、上記の読み出し処理と同様に、読み出した暗電荷を読み出し回路17で電荷電圧変換して増幅する等して、それぞれダーク読取値として記憶手段23に保存する。
【0070】
このようにして得られたダーク読取値をそのまま上記のオフセット分とするように構成することも可能であり、また、例えば上記のダーク読取処理を複数回行って、各放射線検出素子7ごとに得られた複数回分のダーク読取値の平均値等を算出する等して、それをオフセット分とするように構成することも可能である。なお、ダーク読取処理を放射線画像撮影前に行うように構成することも可能である。
【0071】
以上が、図9(B)に示したような画像データFaのデータプロファイルのうち、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roであると推定した領域Ro内の画像データFaを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在しないと判定された場合の処理であるが、領域Ro内の各画像データFa中に飽和画像データFAが存在すると判定された場合の処理について、以下、説明する。
【0072】
画像データFaが飽和している場合(すなわち飽和画像データFAである場合)、例えば図9(A)中に1点鎖線で示される1つの行iの各列jの各放射線検出素子7の画像データFaについてデータプロファイルを作成すると、データプロファイルは、例えば図10に示すプロファイルのようになる。そして、画像データFAが飽和したために失われたデータ値Flostは、飽和画像データFA自体すなわち上限値4095近傍のデータ値自体を処理しても、通常、復元できない。
【0073】
そこで、本発明者らは、飽和画像データFAが存在する場合には、読み出し処理の直後に各放射線検出素子7に対するリセット処理を行わずに、再度、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFbに変換する読み出し処理を行わせ、再度の読み出し処理で読み出された画像データFbによって、飽和画像データFAを修正することを考えた。
【0074】
この場合、図11のタイミングチャートに示すように、走査駆動回路15から信号読み出し用の電圧を供給させる走査線5をラインL1、L2、…、Lnと順次切り替えながら最初の読み出し処理(時刻T31〜T3n)を繰り返した後、検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行iの各放射線検出素子7の画像データFaについてプロファイルを作成する。
【0075】
そして、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roを推定し、領域Ro内の画像データFaを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定する。そして、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在すると判定すると、図8に示したタイミングチャートの場合とは異なり、各放射線検出素子7のリセット処理を行わずに、再度、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFbに変換する読み出し処理(時刻T71〜T7n)を行う。
【0076】
このようにして、例えば最初の読み出し処理で図10に示した画像データFaのプロファイルが得られた検出部Pの行iの各列jの各放射線検出素子7について再度の読み出し処理を行うと、この再度の読み出し処理では例えば図12に示すような画像データFbのプロファイルのように、失われたデータと略相似形のプロファイルが得られることが分かった。
【0077】
この再度の読み出し処理で得られた画像データFbのプロファイルを分析すると、図12と同じプロファイルである図13に斜線を付して示すように、まず、各放射線検出素子7の画像データFbのデータ値は0にはならず、何らかの正の値が出力されていることが分かる。
【0078】
これは、最初の読み出し処理(図11の時刻T31〜T3n)から再度の読み出し処理(時刻T71〜T7n)までの間に各放射線検出素子7に蓄積された暗電荷に起因するデータ値や、各放射線検出素子7からの1回の読み出し処理で読み出される電荷の読み出し効率が100%ではないことにより最初の読み出し処理で読み出されなかった読み残し分が再度の読み出し処理で読み出されたことに起因するデータ値等であると考えられる。以下、暗電荷分を含めて、このデータ値を読み残しデータ値Drという。
【0079】
放射線検出素子7からの読み出し効率は、例えば図14に示すように、放射線検出素子7に照射された放射線の線量に依存して変動するが、通常、1回の読み出し処理で放射線検出素子7からの読み出し効率が100%となることはない。例えば、放射線の線量が10[mR]の場合、1回の読み出し処理での読み出し効率は約90%にしかならず、残りの約10%の読み残し分は再度の読み出し処理で読み出される。
【0080】
しかし、図13に示すように、放射線が被写体Oを透過せずに直接到達し、強い線量の放射線が照射された放射線検出素子7の画像データFb、すなわちプロファイル中のRiの部分の画像データFbは、このような読み残しデータ値Drとは有意に異なる大きなデータ値になる。これは、上記のような暗電荷や読み残し分とは異なる、いわゆるラグに起因するデータ値であると考えられる。以下、このデータ値をラグデータ値Dlという。
【0081】
ラグ(lag)とは、放射線検出素子7に強い放射線が照射された場合、その後、読み出し処理を繰り返すたびに当該放射線検出素子7から読み出し処理ごとに繰り返し残像が読み出される現象である(前述した米国特許6,621,887号明細書等)。そして、発明者らは、図13に示すように、再度の読み出し処理で、このラグに起因すると考えられるラグデータ値Dlが、プロファイル中のRiの部分だけでなく、プロファイル中のRoの部分の、最初の読み出し処理で飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sの部分(図10、図13参照)にも出現することを見出した。
【0082】
そこで、本発明では、この最初の読み出し処理で飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sから再度の読み出し処理で読み出されるラグデータ値Dlに着目し、それらを用いて、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAが復元される。
【0083】
具体的には、最初の読み出し処理で読み出された各放射線検出素子7の画像データFaのプロファイルが図10に示したようなプロファイルであった場合、前述したように、判定手段としての制御手段22は、プロファイルのうち、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roであると推定した領域Ro内の画像データFaを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定する。
【0084】
そして、飽和画像データFAが存在すると判定すると、再度の読み出し処理を行う。そして、図13に示したような画像データFbのプロファイルが得られると、制御手段22は、飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sについて、再度の読み出し処理で当該放射線検出素子7sから実際に読み出された画像データFbの中から読み残しデータ値Drを差し引いて、再度読み出された画像データとしてのラグデータ値Dlを算出する。
【0085】
その際、飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sから再度の読み出し処理で実際に読み出された画像データFb中に、どれだけの読み残しデータ値Drが含まれるかを、画像データFb自体から直接算出することは必ずしも容易でない。そのため、本実施形態では、飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sの近傍の放射線検出素子7から読み出された読み残しデータ値Drに基づいて放射線検出素子7sについての読み残しデータ値Drを算出するようになっている。
【0086】
本実施形態では、その際、近傍の放射線検出素子7から読み出された読み残しデータ値Drをそのまま放射線検出素子7sについての読み残しデータ値Drとして用いるように構成されているが、近傍の放射線検出素子7から読み出された読み残しデータ値Drに所定の演算処理を施して放射線検出素子7sについての読み残しデータ値Drとして算出するように構成することも可能である。
【0087】
このようにして、再度の読み出し処理で放射線検出素子7sから実際に読み出された画像データFbから、算出された読み残しデータ値Drを差し引いて、再度読み出された画像データとしてのラグデータ値Dlが算出されるが、例えば、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAにこのラグデータ値Dlを単純に加算すれば画像データFAが復元されるとは必ずしも言えない。
【0088】
しかし、ラグデータ値Dlは、飽和画像データFAを復元すべき何らかの情報を有していると考えられ、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAに加算すべき値は、ラグデータ値Dlの値が大きいほど大きくなる特徴を有していると考えられる。
【0089】
そこで、本実施形態では、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAに加算すべき値として、ラグデータ値Dlに対応づけられた特徴量Cが予め設定されている。本実施形態では、特徴量Cは、例えば図15に示すように、ラグデータ値Dlの大きさに応じた3種類の値として設定されているが、特徴量Cを大小2種類に分類して設定したり、さらに多種類に分類して設定することも可能であり、また、ラグデータ値Dlの関数として定義することも可能である。
【0090】
そして、特徴量算出手段としての制御手段22は、算出したラグデータ値Dlに基づいて、図15に示した対応づけから特徴量Cを割り出す。そして、最初の読み出し処理で飽和画像データFAが読み出された全ての放射線検出素子7s(図10、図13参照)について、それぞれ特徴量Cを割り出す。
【0091】
続いて、制御手段22は、修正手段として、図16に示すように、割り出した各特徴量Cを、それぞれ対応する飽和画像データFAに加算する。そして、以上の処理を、検出部Pに二次元状に配列された放射線検出素子7の全ての行i(図9(A)参照)または設定された範囲の各行iについて行い、割り出した各特徴量Cをそれぞれ対応する飽和画像データFAに加算する。
【0092】
そして、制御手段22は、特徴量Cを加算した各飽和画像データFAを、一旦、記憶手段23に保存する。そして、制御手段22は、上記に示したように(図8のタイミングチャート等参照)、続いて、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行い、各放射線検出素子7ごとにダーク読取値を取得して、ダーク読取値に基づいて画像データのオフセット分を算出する。
【0093】
そして、図16に示した特徴量Cが加算された飽和画像データFAを含む全ての画像データFa、または、特徴量Cが加算された飽和画像データFAを含む例えば領域Roのみの画像データFa等の所定の画像データFaからそれぞれダーク読取値を差し引いた値をデータ変換して、それぞれ非飽和画像データに修正するようになっている。
【0094】
その際のデータ変換の手法としては、例えば図17に示すように、画像データFaに所定の係数を乗算して、データ変換された全ての画像データFa*が上限値4095未満となるように修正してもよく、或いは、例えば予めLUTを作成しておき、このLUTに基づいて画像データFaをデータ変換して、データ変換された全ての画像データFa*が上限値4095未満に修正されるように構成することも可能である。
【0095】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、最初の読み出し処理で読み出された画像データFa中に飽和画像データFAが存在する場合に、リセット処理を行わずに、再度、読み出し処理を行い、飽和画像データFAに対応する再度読み出された画像データ、すなわちラグデータ値Dlに基づいてそれぞれ特徴量Cを算出し、特徴量Cを飽和画像データFAに加算する等して非飽和画像データに修正する。
【0096】
そのため、画像データFAが飽和するほど強い放射線が照射された場合にラグ(lag)現象が生じることを利用して、再度の読み出し処理でラグに起因するデータ値(ラグデータ値Dl)が大きいほど強い放射線が照射されたものとして大きな特徴量Cを対応づける等することで、飽和画像データFA部分の被写体Oの情報を擬似的に的確に復元することが可能となる。
【0097】
そして、例えば、放射線画像撮影装置(FPD)1に対して誤ってCR装置に照射するような高い線量の放射線を照射してしまい、部分的に飽和画像データFAが撮影された場合でも、飽和画像データFA部分の被写体Oの情報が擬似的に的確に復元された放射線画像を得ることが可能となる。そのため、再撮影を行う必要がなくなり、再撮影を行うことにより患者の負担が増大したり患者に対する被曝線量が増大することを防止することが可能となる。
【0098】
[放射線画像撮影システム]
上記の実施形態では、放射線画像撮影装置1(可搬型放射線画像撮影装置1)の制御手段22が、判定手段、特徴量算出手段および修正手段として機能し、放射線画像撮影装置1の内部で全ての演算処理を行うように構成した場合について説明した。
【0099】
しかし、放射線画像撮影装置1が上記の実施形態のようにバッテリ41(図7参照)を内蔵するものである場合、放射線画像撮影装置1で画像データFa、Fbの読み出し処理やダーク読取処理を行い、特徴量算出処理や修正処理等の演算処理は外部装置で行うように構成すれば、その分、放射線画像撮影装置1のバッテリ41の電力消費が抑制され、バッテリ41の1回の充電あたりの放射線画像撮影装置1の放射線画像撮影への使用回数を増やすことが可能となり、放射線画像撮影装置1を効率的に使用することが可能となる。以下、そのように構成された放射線画像撮影システムの実施形態について説明する。
【0100】
図18は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。本実施形態の放射線画像撮影システム50は、例えば、病院や医院内で行われる放射線画像撮影を想定したシステムであり、放射線画像として医療用の診断画像を撮影するシステムとして採用することができる。
【0101】
放射線画像撮影システム50は、図18に示すように、例えば、放射線を照射して図示しない患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、放射線技師や医師等の操作者が被写体に照射する放射線の制御や取得した放射線画像の画像処理等の種々の操作を行う前室R2とに配置されるものである。撮影室R1は、放射線が外部に漏れないように鉛などでシールドされていることも多い。
【0102】
本実施形態では、撮影室R1には、前述した放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51や、被写体に照射する放射線を発生させる図示しないX線管球を備える放射線発生装置52、放射線画像撮影装置1とコンソール58とが無線通信する際にこれらの通信を中継する無線アンテナ53を備えた無線アクセスポイント(基地局)54等が設けられている。
【0103】
なお、本実施形態では、この無線アンテナ53や無線アクセスポイント54が、放射線画像撮影装置1との画像データ等の送受信を行うコンソール58側の通信手段になっている。
【0104】
前室R2には、放射線発生装置52からの放射線の照射開始を指示するためのスイッチ手段55等を備えた放射線の照射を制御する操作卓56や、放射線画像撮影装置1に内蔵された後述するタグを検出するタグリーダ57、放射線画像撮影システム50全体の制御を行うコンソール58が設けられている。また、コンソール58には、ハードディスク等で構成された記憶手段59が接続されている。
【0105】
放射線画像撮影装置1の構成については前述したとおりであるが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、さらに下記の構成を有していることが好ましい。
【0106】
具体的には、放射線画像撮影装置1内には、図示しないタグが内蔵されている。本実施形態では、タグとして、いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)タグと呼ばれるタグが用いられており、タグには、タグの各部を制御する制御回路や放射線画像撮影装置1の固有情報を記憶する記憶部がコンパクトに内蔵されている。なお、固有情報には、例えば当該放射線画像撮影装置1に割り当てられた識別情報としてのカセッテIDやシンチレータの種類情報、サイズ情報、解像度等が含まれている。
【0107】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS Z 4905(対応する国際規格はIEC 60406)に準拠する寸法で構成されている。すなわち、放射線入射方向の厚さは15mm+1mm〜15mm−2mmの範囲内に形成され、8インチ×10インチ、10インチ×12インチ、11インチ×14インチ、14インチ×14インチ、14インチ×17インチ(半切サイズ)等のものが用意されている。
【0108】
このように、本実施形態では、放射線画像撮影装置1はスクリーン/フィルム用のカセッテに関するJIS規格に準拠して形成されているため、同様にJIS規格に準拠して形成されるCRカセッテを装填可能なCRカセッテ用のブッキー装置51に放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。
【0109】
なお、本発明は、放射線画像撮影装置1が上記のようにJIS規格に準拠して形成される場合や、また、ブッキー装置51としてCRカセッテ用のブッキー装置51を用いる場合に限定されない。しかし、ブッキー装置51としてCRカセッテ用のブッキー装置51を用いれば、FPDとしての放射線画像撮影装置1と従来のCRカセッテとのいずれをもブッキー装置51に装填して放射線画像撮影を行うことも可能となる。
【0110】
一方、放射線画像撮影装置1は、ブッキー装置51に装填されない、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。すなわち、放射線画像撮影装置1を単独の状態で例えば撮影室R1内に設けられた支持台や臥位撮影用のブッキー装置51B等に配置してその放射線入射面R(図1参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることもできるようになっている。この場合、例えばポータブルの放射線発生装置52B(図18参照)等から、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射して放射線画像撮影が行われる。
【0111】
ブッキー装置51には、放射線画像撮影装置1を所定の位置に保持するためのカセッテ保持部51aが設けられており、カセッテ保持部51aに放射線画像撮影装置1が装填できるようになっている。また、本実施形態では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bとがそれぞれ設けられている。
【0112】
なお、立位撮影用のブッキー装置51Aや臥位撮影用のブッキー装置51Bにおいて、例えばそれら自体の位置調整やブッキー装置本体に対するカセッテ保持部51aの高さ調整等を適宜行うこと等が可能とされていることは、公知のブッキー装置と同様である。
【0113】
撮影室R1には、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射するX線管球を備える放射線発生装置52が少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、立位撮影用および臥位撮影用のブッキー装置51A、51Bに対して1つの放射線発生装置52Aが共用されるようになっている。なお、各ブッキー装置51A、51Bに、別々の放射線発生装置を対応付けて設けるように構成することも可能である。
【0114】
放射線発生装置52Aは、例えば撮影室R1の天井からつり下げられて配設されるようになっており、撮影時には後述する操作卓56からの指示に基づいてセットアップされ、図示しない移動手段により所定の位置にまで移動され、放射線の照射方向が所定の方向を向くようにその向きが調整されるようになっている。
【0115】
また、本実施形態では、立位撮影用のブッキー装置51Aや臥位撮影用のブッキー装置51Bには対応付けられていないポータブルの放射線発生装置52Bも設けられており、ポータブルの放射線発生装置52Bは、撮影室R1内の任意の場所にも持ち運びでき、任意の方向に放射線を照射できるようになっている。
【0116】
なお、本実施形態では、ポータブルの放射線発生装置52Bも、操作卓56からの指示に基づいてセットアップされるようになっているが、この他にも、例えば、操作者が手動でセットアップしたり、放射線画像撮影装置1からポータブルの放射線発生装置52Bに無線信号を送信してセットアップするように構成することも可能である。
【0117】
撮影室R1内の一角には、放射線画像撮影装置1と、コンソール58やスイッチ手段55等とが無線通信する際に、これらの通信を中継する、コンソール58側の通信手段である無線アンテナ53を備えた無線アクセスポイント54が設置されている。
【0118】
なお、図18では、無線アクセスポイント54が撮影室R1の入口付近に設けられている場合が示されているが、これに限定されず、放射線画像撮影装置1のアンテナ装置40等と無線通信が可能な適宜の位置に設置される。また、本実施形態では、無線アクセスポイント54は各ブッキー装置51A、51Bとケーブル等で接続されており、ブッキー装置51A、51Bやそれに装填された放射線画像撮影装置1とコンソール58等との通信を有線方式でも行うことができるようになっている。
【0119】
一方、前室R2には、放射線発生装置52からの放射線の照射開始を指示するためのスイッチ手段55を備えた操作卓56が設けられている。操作卓56は、汎用のCPU(Central Processing Unit)を備えるコンピュータや専用のプロセッサ(processor)を備えるコンピュータ等で構成されている。本実施形態では、操作卓56は、スイッチ手段55や放射線発生装置52と接続されるとともに、コンソール58にも接続されている。
【0120】
本実施形態では、スイッチ手段55には、スイッチ手段55の図示しないボタン部が放射線技師等の操作者により押下されたことを検出するストローク検出手段60が取り付けられており、スイッチ手段55のボタン部が押下されて操作卓56から放射線発生装置52に放射線の照射開始を指示する信号が送信されると、それと同時にストローク検出手段60がスイッチ手段55のボタン部が押下されたことおよび押下が解除されたことを検出して、無線アクセスポイント54を介して放射線画像撮影装置1に放射線の照射の開始信号および終了信号が送信されるようになっている。
【0121】
そのため、本実施形態の放射線画像撮影システム50で用いられる放射線画像撮影装置1については、上記のように、放射線センサ35を設ける等して、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射の開始や終了を検出する必要はない。
【0122】
前室R2の入口の近傍には、前述したRFIDの技術を用いて放射線画像撮影装置1と情報をやりとりするタグリーダ57が設置されている。タグリーダ57は、内蔵する図示しないアンテナを介して電波等に所定の指示情報を乗せて発信し、前室R2や撮影室R1に入室し或いは退室する放射線画像撮影装置1を検出するようになっている。そして、タグリーダ57は、検出した放射線画像撮影装置1のRFIDタグに記憶された固有情報を読み取り、読み取った固有情報をコンソール58に送信するようになっている。
【0123】
コンソール58は、図示しないCPUやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータで構成されており、ROMに格納される所定のプログラムを読み出してRAMの作業領域に展開してプログラムに従って各種処理を実行して、前述したように放射線画像撮影システム50全体の制御を行うようになっている。
【0124】
なお、図18では、コンソール58が撮影室R1や前室R2の外に設置されている場合が記載されているが、例えば、コンソール58を前室R2等に設置するように構成することも可能である。
【0125】
コンソール58には、前述した操作卓56やタグリーダ57等が接続されており、操作卓56等を介して無線アクセスポイント54に接続されている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等からなる記憶手段59が接続されている。さらに、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示画面58aが設けられており、その他、キーボードやマウス等の図示しない入力手段が接続されている。
【0126】
コンソール58は、前述したようにタグリーダ57が検出した放射線画像撮影装置1のカセッテIDを含む固有情報が送信されてくると、記憶手段59に登録されている、撮影室R1内等に存在する放射線画像撮影装置1のリストを参照するようになっている。そして、コンソール58は、送信されてきた固有情報が記憶手段59に登録されていなければ、当該放射線画像撮影装置1が新たに撮影室R1や前室R2内に持ち込まれたものとしてその放射線画像撮影装置1のカセッテID等を上記のリストに追加して記憶手段59に登録する。
【0127】
また、送信されてきた固有情報が既に記憶手段59に登録されているものであれば、当該放射線画像撮影装置1が撮影室R1や前室R2内から持ち出されたものとしてその放射線画像撮影装置1のカセッテID等を上記のリストから抹消する。このようにして、コンソール58は、撮影室R1内等に持ち込まれ或いは持ち出される放射線画像撮影装置1を把握して記憶手段59上で管理するようになっている。
【0128】
本実施形態に係る放射線画像撮影システム50においても、図8のタイミングチャートに示したように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、操作者が電源スイッチ37(図1参照)等を手動で操作し、或いは、アンテナ装置40を介してコンソール58から送信された信号を受信すると、放射線検出素子7や読み出し回路17等のリセット処理を行う。
【0129】
そして、制御手段22は、放射線センサ35からの信号やストローク検出手段60から送信されてくる信号によって放射線の照射の開始および終了を検出し、放射線画像撮影が行われた判断すると、上記のように、検出部Pの各放射線検出素子7からの画像データFaの読み出し処理を行い、各画像データFaを記憶手段23に保存する。
【0130】
続いて、制御手段22は、判定手段として、読み出した各画像データFaのプロファイルを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定する。そして、前述した領域Ro内に飽和画像データFAが存在しないと判定すると、図8のタイミングチャートに示したように、続いて、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行い、各ダーク読取値を記憶手段23に保存する。
【0131】
一方、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在すると判定すると、制御手段22は、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行わずに、再度、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFbに変換する読み出し処理を行い、各画像データFbを記憶手段23に保存する。そして、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行い、各ダーク読取値を記憶手段23に保存する。
【0132】
そして、上記の一連の処理が終了すると、制御手段22は、記憶手段23から、画像データFaやダーク読取値、さらに画像データFbが保存されていれば画像データFbをアンテナ装置40から送信する。
【0133】
コンソール58は、放射線画像撮影装置1のアンテナ装置40から送信された画像データFa等を無線アクセスポイント54を介して受信すると、それらのデータを記憶手段59に保存する。
【0134】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から送信されてきたデータが、画像データFaすなわち最初の読み出し処理により読み出された画像データFaとダーク読取値のみの場合には、前述したようにダーク読取値から各画像データFaのオフセット分を算出し、各画像データFaから各オフセット分を差し引いて真の各画像データFaを算出する等して放射線画像を得るための画像処理を行う。
【0135】
一方、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から送信されてきたデータが、画像データFaと再度の読み出し処理により読み出された画像データFbとダーク読取値である場合には、上記の実施形態のように、飽和画像データFAに対応する画像データFbに基づいてそれぞれ特徴量Cを算出し、算出した各特徴量Cを加算した各飽和画像データFAから、ダーク読取値から算出したオフセット分を差し引いた後、所定の係数を乗算する等して、それぞれ非飽和画像データに修正する。このようにして、放射線画像を得る。
【0136】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50によれば、画像データFAが飽和するほど強い放射線が照射された場合にラグ(lag)現象が生じることを利用して、飽和画像データFA部分の被写体Oの情報を擬似的に的確に復元することが可能となるといった上記の実施形態に係る放射線画像撮影装置1の効果を的確に発揮させることが可能となる。
【0137】
また、それとともに、放射線画像撮影装置1で特徴量算出処理や修正処理等の演算処理を行わないため、その分、放射線画像撮影装置1のバッテリ41の電力消費を抑制することが可能となる。そのため、バッテリ41の1回の充電あたりの放射線画像撮影装置1の放射線画像撮影への使用回数を増やすことが可能となり、放射線画像撮影装置1を効率的に使用することが可能となる。
【0138】
なお、本発明が上記の実施形態や変形例に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0139】
1 放射線画像撮影装置(可搬型放射線画像撮影装置)
7 放射線検出素子
17 読み出し回路
22 制御手段(判定手段、特徴量算出手段、修正手段)
40 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
54 無線アクセスポイント(通信手段)
58 コンソール
C 特徴量
Dr 読み残しデータ値(最初に読み出された画像データの読み残し分)
Fa 画像データ
Fa* 非飽和画像データ
FA 飽和画像データ
Fb 再度読み出された画像データ
i 行
O 被写体
P 検出部
Ro 領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。こうした医療用の放射線画像は、従来からスクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、放射線画像のデジタル化を図るために輝尽性蛍光体シートを用いたCR(Computed Radiography)装置が開発され、最近では、照射された放射線を、二次元状に配置された放射線検出素子で検出して、デジタル画像データとして取得する放射線画像撮影装置が開発されている。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来はブッキー装置と一体的に形成されていた(例えば特許文献1参照)。また、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納して可搬とされた可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
しかし、今なお放射線画像撮影にCR装置が用いられている場合も少なくなく、そこに放射線画像撮影装置(FPD)を導入した場合には、撮影室内でいわゆるCR装置と放射線画像撮影装置との混在状態が生じる。そこで、このようなCR装置と放射線画像撮影装置とが混在する中で、放射線技師等の操作者にとって作業効率が良く、作業し易い環境を構築するための放射線画像撮影システムが提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
ところで、放射線画像撮影装置は、所定のレベルの画像データを得るために照射されるべき放射線の照射線量が、CR装置と比較して低線量で済むことが知られている。逆の言い方をすれば、所定のレベルの画像データを得るために、CR装置に照射されるべき照射線量の放射線を誤って放射線画像撮影装置(FPD)に照射すると、出力される画像データが飽和(saturate)する場合が生じる。撮影室内にCR装置と放射線画像撮影装置とが混在する環境では特にこの問題が生じる可能性が高くなる。
【0006】
そこで、例えば、特許文献4では、放射線画像撮影装置で撮影した画像データの濃度調整処理やコントラスト調整処理を行う際に、データ値が飽和していると判断される画像データが存在する場合に、飽和した画像データに定数を加算して濃度調整やコントラスト調整を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開平7−246199号公報
【特許文献3】特開2001−149358号公報
【特許文献4】特開2000−137099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、飽和した画像データに定数を加算すれば、飽和した画像データと飽和していない画像データとの濃度関係やコントラスト関係は改善されるが、飽和した画像データ同士のデータ値には差は生じず、放射線画像では飽和した画像データの部分は、結局、白く(或いは黒く)現れる。
【0009】
このように、特許文献4に記載された手法では、飽和した画像データの部分に撮影されているはずの被写体の情報を放射線画像上に現すことができないため、再撮影が必要となる。しかし、それでは患者の負担が増大するとともに、患者に対する被曝線量が増大し、好ましくない。
【0010】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、データ値が飽和した画像データが撮影された場合に、飽和した画像データ部分の被写体の情報を擬似的に復元可能な可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の問題を解決するために、本発明の可搬型放射線画像撮影装置は、
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせ、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出する特徴量算出手段と、
前記特徴量算出手段により算出された前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正する修正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置とのデータの送受信を行う通信手段と、
を備える可搬型放射線画像撮影装置と、
前記可搬型放射線画像撮影装置とのデータの送受信を行う通信手段を備え、前記可搬型放射線画像撮影装置から前記飽和画像データを含む前記画像データおよび前記再度読み出された前記画像データが送信されると、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出し、算出した前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正するコンソールと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムによれば、画像データが飽和するほどの放射線が照射された場合にラグ(lag)現象(米国特許6,621,887号明細書等に開示されているように、当回撮影時の放射線照射の影響が次回撮影時の放射線画像読み取りデータに重畳されて現れる現象)が生じることを利用して、再度の読み出し処理で読み出されるラグに起因するデータ値が大きいほど、強い放射線が照射されたものとして大きな特徴量を対応づけることで、飽和画像データ部分の被写体の情報を擬似的に的確に復元することが可能となる。
【0014】
そのため、例えば、放射線画像撮影装置(FPD)に対して誤ってCR装置に照射するような高い線量の放射線を照射してしまい、部分的に飽和画像データが撮影された場合でも、飽和画像データ部分の被写体の情報が擬似的に的確に復元された放射線画像を得ることが可能となるため、再撮影を行う必要がなくなり、再撮影を行うことにより患者の負担が増大したり患者に対する被曝線量が増大することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【図3】本実施形態に係る基板の構成を示す平面図である。
【図4】図3の基板上の小領域に形成された撮像素子と薄膜トランジスタ等の構成を示す拡大図である。
【図5】図4におけるX−X線に沿う断面図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の等価回路図を表す図である。
【図8】再度の読み出し処理を行わない通常の場合のタイミングチャートである。
【図9】(A)放射線画像撮影装置の放射線入射面における検出部、被写体が占める領域、放射線が照射される領域等を説明する平面図であり、(B)読み出された画像データの例を示すグラフである。
【図10】飽和画像データが存在する画像データの例を示すグラフである。
【図11】再度の読み出し処理を行う場合のタイミングチャートである。
【図12】再度の読み出し処理で読み出された画像データの例を示すグラフである。
【図13】図12のグラフにおける読み残しデータ値を説明するグラフである。
【図14】放射線の線量と放射線検出素子からの読み出し効率との関係を示すグラフである。
【図15】ラグデータ値に対応づけられた特徴量の例を示すグラフである。
【図16】特徴量が加算された飽和画像データの例を示すグラフである。
【図17】図16の各データに所定の係数を乗算してデータ変換された各画像データの例を示すグラフである。
【図18】本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の図示例のものに限定されるものではない。
【0017】
なお、以下、可搬型放射線画像撮影装置を単に放射線画像撮影装置と表す。また、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して放射線検出素子で電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0018】
[放射線画像撮影装置]
まず、本実施形態に係る放射線画像撮影装置について説明する。図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。本実施形態に係る放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等が収納されたカセッテ型の可搬型放射線画像撮影装置として構成されている。
【0019】
ハウジング2は、少なくとも放射線の照射を受ける側の面R(以下、放射線入射面Rという。)が放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されている。なお、図1や図2では、ハウジング2がフレーム板2Aとバック板2Bとで形成された、いわば弁当箱型である場合が示されているが、ハウジング2を一体的に形成する、例えば特開2002−311526号公報に記載されたX線画像撮影装置のような、いわばモノコック型とすることも可能である。
【0020】
ハウジング2の内部の基板4の下方側には、図2に示すように、基台31が配置されており、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、本実施形態では、基台31やPCB基板33の下面側には、放射線画像撮影装置1の放射線入射面R側から入射し、シンチレータ3や基板4、基台31等を透過した放射線を検出する放射線センサ35が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面R側には、それらを保護するためのガラス基板36が配設されている。
【0021】
シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光線を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに貼り合わされるようになっている。
【0022】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図3に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、それぞれ本実施形態では光電変換素子である放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。このように、放射線検出素子7は、基板4上に二次元状に配列されており、複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図3に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0023】
本実施形態では、放射線検出素子7として、放射線入射面Rから入射した放射線がシンチレータ3で変換されて出力される電磁波の光量(シンチレータ3に入射した放射線の線量に応じて増加する。)に応じて電荷を発生させるフォトダイオードが用いられているが、この他にも、例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図3や図4の拡大図に示すように、スイッチ素子であるTFT(薄膜トランジスタ)8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0024】
そして、TFT8は、オン状態とされることにより、すなわちゲート電極8gに信号読み出し用の電圧が印加されてTFT8のゲートが開かれることにより、放射線検出素子7に蓄積された電荷を信号線6に放出させるようになっている。ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図5に示す断面図を用いて簡単に説明する。図5は、図4におけるX−X線に沿う断面図である。
【0025】
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
【0026】
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
【0027】
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
【0028】
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。
【0029】
p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、本実施形態では、上記のように、放射線検出素子7としてp層77、i層76、n層75が積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合を説明したが、放射線検出素子7は、このようなpin型の放射線検出素子に限定されない。
【0030】
また、放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
【0031】
図3や図4に示すように、本実施形態では、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で1本の結線10に結束されている。バイアス線9や結線10は、電気抵抗が小さい金属線で形成されている。
【0032】
本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、IC12a等のチップが組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0033】
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1の基板4部分が形成されている。
【0034】
一方、図1に示すように、ハウジング2の一方側の短辺側側面部には、放射線画像撮影装置1の電源スイッチ37や各種の操作状況等を表示するインジケータ38等が設けられている。また、この側面部には、図示しない内蔵バッテリの交換用の蓋部材39が設けられており、蓋部材39には、放射線画像撮影装置1が外部装置とデータや信号等の送受信を無線方式で行うためのアンテナ装置40が埋め込まれて設けられている。
【0035】
なお、アンテナ装置40を設ける箇所は、本実施形態のようにハウジング2の1つの短辺側側面部に限定されず、他の位置に設けることも可能である。また、アンテナ装置40の個数は必ずしも1つに限定されず、必要な数だけ適宜設けられる。
【0036】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路図である。
【0037】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78がそれぞれバイアス線9および結線10に接続されており、結線10は逆バイアス電源14に接続されている。逆バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7に印加する逆バイアス電圧を供給するようになっている。また、逆バイアス電源14は制御手段22に接続されており、制御手段22は、逆バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加する逆バイアス電圧を制御するようになっている。
【0038】
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図7中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図7中ではGと表記されている。)は走査駆動回路15から延びる各走査線5にそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図7中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
【0039】
走査線5を介して走査駆動回路15からTFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧が印加されるとTFT8のゲートがオン状態とされて、放射線検出素子7に蓄積された電荷がTFT8のソース電極8sを介してドレイン電極8dから信号線6に読み出されるようになっている。
【0040】
各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、読み出しIC16には所定個数の読み出し回路17が設けられており、読み出しIC16が複数設けられることにより、信号線6の本数分の読み出し回路17が設けられるようになっている。
【0041】
読み出し回路17は、増幅回路18と、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)回路19と、A/D変換器20とで構成されており、1本の信号線6ごとに1回路ずつ設けられているが、本実施形態では、A/D変換器20は、複数の回路で共通とされており、各相関二重サンプリング回路19から出力された各電気信号がアナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値(本実施形態では0〜4095)に変換されるようになっている。
【0042】
そして、読み出し回路17では、放射線検出素子7から信号線6を通じて電荷が読み出され、放射線検出素子7ごとに電荷が電荷電圧変換されて増幅される等して電気信号に変換されるようになっている。なお、相関二重サンプリング回路19は、図7中ではCDSと表記されている。
【0043】
制御手段22は、CPU(Central Processing Unit)等を備えたマイクロコンピュータや専用の制御回路で構成されており、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、制御手段22には、RAM(Random Access Memory)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0044】
前述したように、制御手段22は、逆バイアス電源14を制御して各放射線検出素子7に印加する逆バイアス電圧を制御したり、走査駆動回路15から信号読み出し用の電圧を印加する走査線5を切り替えたり、或いは、各読み出し回路17内の増幅回路18や相関二重サンプリング回路19等を制御して、各放射線検出素子7からの電気信号の読み出しを行うようになっている。
【0045】
また、制御手段22には、前述したアンテナ装置40が接続されており、さらに、各放射線検出素子7等の各部材に電力を供給するためのバッテリ41が接続されている。このように、バッテリ41は、放射線画像撮影装置1のハウジング2内に内蔵されており、バッテリ41には、外部装置からバッテリ41に電力を供給してバッテリ41を充電する際の接続端子42が取り付けられている。また、制御手段22には、前述した放射線センサ35が接続されている。
【0046】
なお、本実施形態では、上記のように、放射線センサ35で検出した放射線の線量に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出するようになっているが、後述するように放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると各放射線検出素子7からバイアス線9や結線10に電荷が流れ出すため、その電荷の流出すなわち電流を検出して放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始や終了を検出するように構成することも可能である。また、放射線発生装置等の外部装置からアンテナ装置40を介して放射線画像撮影装置1に放射線の照射の開始や終了を通知するように構成することも可能である。
【0047】
制御手段22は、本発明における判定手段、特徴量算出手段および修正手段として機能するようになっている。以下、この点について説明するとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用について説明する。
【0048】
本実施形態では、制御手段22は、操作者が電源スイッチ37(図1参照)等を手動で操作し、或いは、アンテナ装置40を介して例えば後述する放射線画像撮影システム50のコンソール58等の外部装置から送信された信号を受信すると、放射線検出素子7や読み出し回路17等のリセット処理を行う。
【0049】
リセット処理では、制御手段22は、図8のタイミングチャートに示すように、走査駆動回路15から走査線5の全てのラインL1〜Lnに対して信号読み出し用の電圧を供給させ、走査線5に接続された各TFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧を印加して(時刻T1)、各TFT8をオン状態とし、読み出し回路17にも所定の信号を送信して、放射線検出素子7やTFT8、読み出し回路17の増幅回路18等に蓄積された余分な電荷を下流側に放出させる。
【0050】
そして、制御手段22は、リセット処理が終了すると、走査駆動回路15からの全走査線5に対する信号読み出し用の電圧の供給を停止して(時刻T2)、各TFT8のゲート電極8gへの信号読み出し用の電圧の印加を停止して各TFT8をオフ状態として待機する。そして、放射線画像撮影が行われる。
【0051】
放射線画像撮影では、放射線画像撮影装置1に放射線入射面R側に被写体である患者の患部部分を載置し、或いは接近させて配置し、図示しない放射線発生装置から放射線画像撮影装置1に放射線が照射される。本実施形態では、その際、放射線センサ35から出力される放射線の線量の情報に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始が検出されるが、バイアス線9や結線10に流れる電流を検出して放射線の照射の開始を検出してもよく、或いは、放射線発生装置等の外部装置からアンテナ装置40を介して放射線の照射の開始を通知してもよいことは前述した通りである。
【0052】
被写体を透過し、被写体の情報を担持した放射線が、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rに照射されると、放射線画像撮影装置1では、放射線入射面Rを透過した放射線がシンチレータ3に入射し、シンチレータ3で電磁波に変換されて、電磁波がその下方の放射線検出素子7に入射する。
【0053】
そして、入射した電磁波が放射線検出素子7のi層76(図5参照)に到達すると、i層76内で入射した電磁波の光量(すなわち放射線の線量)に応じて電子正孔対が発生し、逆バイアス電圧の印加により放射線検出素子7内に形成された所定の電位勾配に従って、発生した電子と正孔のうちの一方の電荷(本実施形態では正孔)は第2電極78側に移動してバイアス線9に流出し、他方の電荷(本実施形態では電子)は第1電極74側に移動して第1電極74付近に蓄積される。
【0054】
制御手段22は、放射線の照射が終了すると、各放射線検出素子7からの電荷の読み出し処理を行う。読み出し処理では、制御手段22は、走査駆動回路15から走査線5の所定のラインL1に対して信号読み出し用の電圧を供給させて走査線5(L1)に接続された各TFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧を印加して(図8の時刻T31)、各TFT8をオン状態とし、TFT8を介して各放射線検出素子7から蓄積された電荷を信号線6に読み出させる。
【0055】
各放射線検出素子7から信号線6に放出された電荷は、読み出し回路17で電荷電圧変換されて増幅される等して画像データFaに変換され、アナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、デジタル値に変換されて記憶手段23に出力される。制御手段22は、出力された画像データFaを放射線検出素子7と対応付けながら順次記憶手段23に記憶させる。
【0056】
そして、制御手段22は、走査線5のラインL1について読み出し処理を終了すると、走査駆動回路15から信号読み出し用の電圧を供給させる走査線5をラインL2、L3、…、Lnと順次切り替えながら(すなわち走査させながら)上記の読み出し処理を繰り返させて(時刻T32〜T3n)、全ての放射線検出素子7から電荷を放出させてそれぞれ画像データFaに変換させていき、画像データFaを放射線検出素子7と対応付けながら順次記憶手段23に記憶させる。このようにして読み出し処理が行われる。
【0057】
続いて、制御手段22は、判定手段として、読み出した各画像データFaを解析して、各画像データFa中にデータ値が飽和していると見なされる画像データFA(以下、飽和画像データFAという。)が存在するか否かを判定する。
【0058】
本実施形態では、前述したように、画像エータFaはデジタルのデータ値として0〜4095をとり得るが、制御手段22は、データ値が上限値4095の場合だけでなく、データ値が所定の閾値(例えば4000)以上の値をとる場合に、その画像データFaを飽和画像データFAであると判定し、飽和画像データFAが存在すると判定するようになっている。
【0059】
しかし、通常、放射線画像撮影では、図9(A)に示すように、放射線画像撮影装置1の放射線入射面Rにおける検出部Pに対応する領域(すなわち撮影可能な領域)のうち、被写体Oが占める領域Roを含む領域Riに放射線が照射されるが、その際、放射線が被写体Oを透過せずに直接到達した(或いは放射線が直接到達したシンチレータ3により変換された電磁波が照射された)放射線検出素子7では、画像データFaのデータ値が大きくなる。
【0060】
すなわち、図9(A)において、検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7のうち、例えば図中1点鎖線で示される1つの行iの各列jの各放射線検出素子7に着目し、それらの放射線検出素子7の画像データFaについてデータプロファイルを作成すると、データプロファイルは、例えば図9(B)に示すように、放射線が被写体Oを透過せずに直接到達した放射線検出素子7の画像データFaのデータ値(プロファイル中のRiの部分のデータ値)は、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaのデータ値(プロファイル中のRoの部分のデータ値)よりも相対的に大きくなる。
【0061】
そして、領域Riの部分の画像データFaのデータ値が前述した4000等に設定される閾値以上の値をとる場合があるが、その領域Riの部分の画像データFaは、被写体Oを透過せずに放射線検出素子7に直接到達した放射線によるものであり、被写体Oについての情報はその領域Riの画像データFaには何ら含まれていないため、その領域Riの画像データFaが飽和していても問題はない。画像データFaの飽和が問題となるのは、被写体Oを透過した放射線が到達した領域Roに存在する放射線検出素子7の画像データFaについてである。
【0062】
従って、本実施形態では、判定手段である制御手段22は、検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行iごと(或いは各列jごと)の各放射線検出素子7の画像データFaについてそれぞれ図9(B)に示したようなデータプロファイルを作成する。そして、データプロファイルのうち、プロファイルの端部に存在するデータ値が大きい部分(出力上限値の4095に近い部分)を放射線が被写体Oを透過せずに直接到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Riと見做し、その内側の領域であって、画像データFaのデータ値が、領域Riの画像データFaのデータ値より小さい領域を、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roであると推定する。
【0063】
そして、推定したプロファイル中の領域Ro内の画像データFaを解析して、上記の基準に基づいて、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定するようになっている。
【0064】
検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子の所定の行iの各放射線検出素子7の画像データFaについて作成したプロファイルが図9(B)に示したようなプロファイルになる場合、領域Ro内には飽和画像データFAは存在しないと判定される。このような場合には、本実施形態では、制御手段22は、図8のタイミングチャートに示すように、続いて、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行う。
【0065】
なお、飽和画像データ部分が存在せず、全体的に高め、或いは、低めの画像データ値の場合、デジタル画像処理(諧調処理)の段階でLUT(Look Up Table)等を調整することにより、いずれの画像データであっても適正な濃度範囲及びコントラストの画像として表示することが可能であることは言うまでもない。
【0066】
読み出し処理後のリセット処理では、放射線画像撮影における放射線の照射で各放射線検出素子7内に発生した電荷のうち、読み出し処理で読み出されずに各放射線検出素子7内に残存している電荷を除去するために、必要に応じて1回または複数回のリセット処理が行われる(時刻T4〜T5)。そして、リセット処理では、前述した放射線画像撮影前のリセット処理と同様に、走査駆動回路15から走査線5の全てのラインL1〜Lnを介して各TFT8のゲート電極8gに信号読み出し用の電圧を印加して各TFT8をオン状態として余分な電荷を放出させ、リセット処理が終了すると、信号読み出し用の電圧の印加を停止して各TFT8がオフ状態とされる。これが1回または複数回行われる。
【0067】
ダーク読取処理は、放射線画像撮影のために各TFT8をオフ状態としていた間(すなわち時刻T2〜T3x(x=1〜n)の間)に、照射された放射線により発生した電荷とは別に熱励起等により発生した、いわゆる暗電荷による画像データFaのオフセット分を取得するために行われる処理であり、上記の読み出し処理で読み出された各画像データFaからこのオフセット分を差し引くことで真の画像データFaが得られる。
【0068】
ダーク読取処理では、時刻T5に各TFT8がオフ状態とされると、放射線画像撮影装置1に放射線を照射せずに、走査線5の各ラインL1〜Lnごとに時刻T5〜T6x(x=1〜n)の間、放射線画像撮影の場合と同じ各期間ΔT1〜ΔTnだけ放射線画像撮影装置1を放置して、各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させる。
【0069】
そして、各期間ΔT1〜ΔTnが経過した後、上記の読み出し処理と同じタイミングで、走査駆動手段15から信号読み出し用の電圧を供給する走査線5のラインL1〜Lnを順次切り替えながら、各放射線検出素子7に蓄積された暗電荷を読み出していき、上記の読み出し処理と同様に、読み出した暗電荷を読み出し回路17で電荷電圧変換して増幅する等して、それぞれダーク読取値として記憶手段23に保存する。
【0070】
このようにして得られたダーク読取値をそのまま上記のオフセット分とするように構成することも可能であり、また、例えば上記のダーク読取処理を複数回行って、各放射線検出素子7ごとに得られた複数回分のダーク読取値の平均値等を算出する等して、それをオフセット分とするように構成することも可能である。なお、ダーク読取処理を放射線画像撮影前に行うように構成することも可能である。
【0071】
以上が、図9(B)に示したような画像データFaのデータプロファイルのうち、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roであると推定した領域Ro内の画像データFaを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在しないと判定された場合の処理であるが、領域Ro内の各画像データFa中に飽和画像データFAが存在すると判定された場合の処理について、以下、説明する。
【0072】
画像データFaが飽和している場合(すなわち飽和画像データFAである場合)、例えば図9(A)中に1点鎖線で示される1つの行iの各列jの各放射線検出素子7の画像データFaについてデータプロファイルを作成すると、データプロファイルは、例えば図10に示すプロファイルのようになる。そして、画像データFAが飽和したために失われたデータ値Flostは、飽和画像データFA自体すなわち上限値4095近傍のデータ値自体を処理しても、通常、復元できない。
【0073】
そこで、本発明者らは、飽和画像データFAが存在する場合には、読み出し処理の直後に各放射線検出素子7に対するリセット処理を行わずに、再度、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFbに変換する読み出し処理を行わせ、再度の読み出し処理で読み出された画像データFbによって、飽和画像データFAを修正することを考えた。
【0074】
この場合、図11のタイミングチャートに示すように、走査駆動回路15から信号読み出し用の電圧を供給させる走査線5をラインL1、L2、…、Lnと順次切り替えながら最初の読み出し処理(時刻T31〜T3n)を繰り返した後、検出部Pに二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行iの各放射線検出素子7の画像データFaについてプロファイルを作成する。
【0075】
そして、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roを推定し、領域Ro内の画像データFaを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定する。そして、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在すると判定すると、図8に示したタイミングチャートの場合とは異なり、各放射線検出素子7のリセット処理を行わずに、再度、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFbに変換する読み出し処理(時刻T71〜T7n)を行う。
【0076】
このようにして、例えば最初の読み出し処理で図10に示した画像データFaのプロファイルが得られた検出部Pの行iの各列jの各放射線検出素子7について再度の読み出し処理を行うと、この再度の読み出し処理では例えば図12に示すような画像データFbのプロファイルのように、失われたデータと略相似形のプロファイルが得られることが分かった。
【0077】
この再度の読み出し処理で得られた画像データFbのプロファイルを分析すると、図12と同じプロファイルである図13に斜線を付して示すように、まず、各放射線検出素子7の画像データFbのデータ値は0にはならず、何らかの正の値が出力されていることが分かる。
【0078】
これは、最初の読み出し処理(図11の時刻T31〜T3n)から再度の読み出し処理(時刻T71〜T7n)までの間に各放射線検出素子7に蓄積された暗電荷に起因するデータ値や、各放射線検出素子7からの1回の読み出し処理で読み出される電荷の読み出し効率が100%ではないことにより最初の読み出し処理で読み出されなかった読み残し分が再度の読み出し処理で読み出されたことに起因するデータ値等であると考えられる。以下、暗電荷分を含めて、このデータ値を読み残しデータ値Drという。
【0079】
放射線検出素子7からの読み出し効率は、例えば図14に示すように、放射線検出素子7に照射された放射線の線量に依存して変動するが、通常、1回の読み出し処理で放射線検出素子7からの読み出し効率が100%となることはない。例えば、放射線の線量が10[mR]の場合、1回の読み出し処理での読み出し効率は約90%にしかならず、残りの約10%の読み残し分は再度の読み出し処理で読み出される。
【0080】
しかし、図13に示すように、放射線が被写体Oを透過せずに直接到達し、強い線量の放射線が照射された放射線検出素子7の画像データFb、すなわちプロファイル中のRiの部分の画像データFbは、このような読み残しデータ値Drとは有意に異なる大きなデータ値になる。これは、上記のような暗電荷や読み残し分とは異なる、いわゆるラグに起因するデータ値であると考えられる。以下、このデータ値をラグデータ値Dlという。
【0081】
ラグ(lag)とは、放射線検出素子7に強い放射線が照射された場合、その後、読み出し処理を繰り返すたびに当該放射線検出素子7から読み出し処理ごとに繰り返し残像が読み出される現象である(前述した米国特許6,621,887号明細書等)。そして、発明者らは、図13に示すように、再度の読み出し処理で、このラグに起因すると考えられるラグデータ値Dlが、プロファイル中のRiの部分だけでなく、プロファイル中のRoの部分の、最初の読み出し処理で飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sの部分(図10、図13参照)にも出現することを見出した。
【0082】
そこで、本発明では、この最初の読み出し処理で飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sから再度の読み出し処理で読み出されるラグデータ値Dlに着目し、それらを用いて、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAが復元される。
【0083】
具体的には、最初の読み出し処理で読み出された各放射線検出素子7の画像データFaのプロファイルが図10に示したようなプロファイルであった場合、前述したように、判定手段としての制御手段22は、プロファイルのうち、被写体Oを透過した放射線が到達した放射線検出素子7の画像データFaの領域Roであると推定した領域Ro内の画像データFaを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定する。
【0084】
そして、飽和画像データFAが存在すると判定すると、再度の読み出し処理を行う。そして、図13に示したような画像データFbのプロファイルが得られると、制御手段22は、飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sについて、再度の読み出し処理で当該放射線検出素子7sから実際に読み出された画像データFbの中から読み残しデータ値Drを差し引いて、再度読み出された画像データとしてのラグデータ値Dlを算出する。
【0085】
その際、飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sから再度の読み出し処理で実際に読み出された画像データFb中に、どれだけの読み残しデータ値Drが含まれるかを、画像データFb自体から直接算出することは必ずしも容易でない。そのため、本実施形態では、飽和画像データFAが読み出された放射線検出素子7sの近傍の放射線検出素子7から読み出された読み残しデータ値Drに基づいて放射線検出素子7sについての読み残しデータ値Drを算出するようになっている。
【0086】
本実施形態では、その際、近傍の放射線検出素子7から読み出された読み残しデータ値Drをそのまま放射線検出素子7sについての読み残しデータ値Drとして用いるように構成されているが、近傍の放射線検出素子7から読み出された読み残しデータ値Drに所定の演算処理を施して放射線検出素子7sについての読み残しデータ値Drとして算出するように構成することも可能である。
【0087】
このようにして、再度の読み出し処理で放射線検出素子7sから実際に読み出された画像データFbから、算出された読み残しデータ値Drを差し引いて、再度読み出された画像データとしてのラグデータ値Dlが算出されるが、例えば、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAにこのラグデータ値Dlを単純に加算すれば画像データFAが復元されるとは必ずしも言えない。
【0088】
しかし、ラグデータ値Dlは、飽和画像データFAを復元すべき何らかの情報を有していると考えられ、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAに加算すべき値は、ラグデータ値Dlの値が大きいほど大きくなる特徴を有していると考えられる。
【0089】
そこで、本実施形態では、最初の読み出し処理で読み出された飽和画像データFAに加算すべき値として、ラグデータ値Dlに対応づけられた特徴量Cが予め設定されている。本実施形態では、特徴量Cは、例えば図15に示すように、ラグデータ値Dlの大きさに応じた3種類の値として設定されているが、特徴量Cを大小2種類に分類して設定したり、さらに多種類に分類して設定することも可能であり、また、ラグデータ値Dlの関数として定義することも可能である。
【0090】
そして、特徴量算出手段としての制御手段22は、算出したラグデータ値Dlに基づいて、図15に示した対応づけから特徴量Cを割り出す。そして、最初の読み出し処理で飽和画像データFAが読み出された全ての放射線検出素子7s(図10、図13参照)について、それぞれ特徴量Cを割り出す。
【0091】
続いて、制御手段22は、修正手段として、図16に示すように、割り出した各特徴量Cを、それぞれ対応する飽和画像データFAに加算する。そして、以上の処理を、検出部Pに二次元状に配列された放射線検出素子7の全ての行i(図9(A)参照)または設定された範囲の各行iについて行い、割り出した各特徴量Cをそれぞれ対応する飽和画像データFAに加算する。
【0092】
そして、制御手段22は、特徴量Cを加算した各飽和画像データFAを、一旦、記憶手段23に保存する。そして、制御手段22は、上記に示したように(図8のタイミングチャート等参照)、続いて、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行い、各放射線検出素子7ごとにダーク読取値を取得して、ダーク読取値に基づいて画像データのオフセット分を算出する。
【0093】
そして、図16に示した特徴量Cが加算された飽和画像データFAを含む全ての画像データFa、または、特徴量Cが加算された飽和画像データFAを含む例えば領域Roのみの画像データFa等の所定の画像データFaからそれぞれダーク読取値を差し引いた値をデータ変換して、それぞれ非飽和画像データに修正するようになっている。
【0094】
その際のデータ変換の手法としては、例えば図17に示すように、画像データFaに所定の係数を乗算して、データ変換された全ての画像データFa*が上限値4095未満となるように修正してもよく、或いは、例えば予めLUTを作成しておき、このLUTに基づいて画像データFaをデータ変換して、データ変換された全ての画像データFa*が上限値4095未満に修正されるように構成することも可能である。
【0095】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、最初の読み出し処理で読み出された画像データFa中に飽和画像データFAが存在する場合に、リセット処理を行わずに、再度、読み出し処理を行い、飽和画像データFAに対応する再度読み出された画像データ、すなわちラグデータ値Dlに基づいてそれぞれ特徴量Cを算出し、特徴量Cを飽和画像データFAに加算する等して非飽和画像データに修正する。
【0096】
そのため、画像データFAが飽和するほど強い放射線が照射された場合にラグ(lag)現象が生じることを利用して、再度の読み出し処理でラグに起因するデータ値(ラグデータ値Dl)が大きいほど強い放射線が照射されたものとして大きな特徴量Cを対応づける等することで、飽和画像データFA部分の被写体Oの情報を擬似的に的確に復元することが可能となる。
【0097】
そして、例えば、放射線画像撮影装置(FPD)1に対して誤ってCR装置に照射するような高い線量の放射線を照射してしまい、部分的に飽和画像データFAが撮影された場合でも、飽和画像データFA部分の被写体Oの情報が擬似的に的確に復元された放射線画像を得ることが可能となる。そのため、再撮影を行う必要がなくなり、再撮影を行うことにより患者の負担が増大したり患者に対する被曝線量が増大することを防止することが可能となる。
【0098】
[放射線画像撮影システム]
上記の実施形態では、放射線画像撮影装置1(可搬型放射線画像撮影装置1)の制御手段22が、判定手段、特徴量算出手段および修正手段として機能し、放射線画像撮影装置1の内部で全ての演算処理を行うように構成した場合について説明した。
【0099】
しかし、放射線画像撮影装置1が上記の実施形態のようにバッテリ41(図7参照)を内蔵するものである場合、放射線画像撮影装置1で画像データFa、Fbの読み出し処理やダーク読取処理を行い、特徴量算出処理や修正処理等の演算処理は外部装置で行うように構成すれば、その分、放射線画像撮影装置1のバッテリ41の電力消費が抑制され、バッテリ41の1回の充電あたりの放射線画像撮影装置1の放射線画像撮影への使用回数を増やすことが可能となり、放射線画像撮影装置1を効率的に使用することが可能となる。以下、そのように構成された放射線画像撮影システムの実施形態について説明する。
【0100】
図18は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。本実施形態の放射線画像撮影システム50は、例えば、病院や医院内で行われる放射線画像撮影を想定したシステムであり、放射線画像として医療用の診断画像を撮影するシステムとして採用することができる。
【0101】
放射線画像撮影システム50は、図18に示すように、例えば、放射線を照射して図示しない患者の一部である被写体(患者の撮影対象部位)の撮影を行う撮影室R1と、放射線技師や医師等の操作者が被写体に照射する放射線の制御や取得した放射線画像の画像処理等の種々の操作を行う前室R2とに配置されるものである。撮影室R1は、放射線が外部に漏れないように鉛などでシールドされていることも多い。
【0102】
本実施形態では、撮影室R1には、前述した放射線画像撮影装置1を装填可能なブッキー装置51や、被写体に照射する放射線を発生させる図示しないX線管球を備える放射線発生装置52、放射線画像撮影装置1とコンソール58とが無線通信する際にこれらの通信を中継する無線アンテナ53を備えた無線アクセスポイント(基地局)54等が設けられている。
【0103】
なお、本実施形態では、この無線アンテナ53や無線アクセスポイント54が、放射線画像撮影装置1との画像データ等の送受信を行うコンソール58側の通信手段になっている。
【0104】
前室R2には、放射線発生装置52からの放射線の照射開始を指示するためのスイッチ手段55等を備えた放射線の照射を制御する操作卓56や、放射線画像撮影装置1に内蔵された後述するタグを検出するタグリーダ57、放射線画像撮影システム50全体の制御を行うコンソール58が設けられている。また、コンソール58には、ハードディスク等で構成された記憶手段59が接続されている。
【0105】
放射線画像撮影装置1の構成については前述したとおりであるが、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、さらに下記の構成を有していることが好ましい。
【0106】
具体的には、放射線画像撮影装置1内には、図示しないタグが内蔵されている。本実施形態では、タグとして、いわゆるRFID(Radio Frequency IDentification)タグと呼ばれるタグが用いられており、タグには、タグの各部を制御する制御回路や放射線画像撮影装置1の固有情報を記憶する記憶部がコンパクトに内蔵されている。なお、固有情報には、例えば当該放射線画像撮影装置1に割り当てられた識別情報としてのカセッテIDやシンチレータの種類情報、サイズ情報、解像度等が含まれている。
【0107】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS Z 4905(対応する国際規格はIEC 60406)に準拠する寸法で構成されている。すなわち、放射線入射方向の厚さは15mm+1mm〜15mm−2mmの範囲内に形成され、8インチ×10インチ、10インチ×12インチ、11インチ×14インチ、14インチ×14インチ、14インチ×17インチ(半切サイズ)等のものが用意されている。
【0108】
このように、本実施形態では、放射線画像撮影装置1はスクリーン/フィルム用のカセッテに関するJIS規格に準拠して形成されているため、同様にJIS規格に準拠して形成されるCRカセッテを装填可能なCRカセッテ用のブッキー装置51に放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。
【0109】
なお、本発明は、放射線画像撮影装置1が上記のようにJIS規格に準拠して形成される場合や、また、ブッキー装置51としてCRカセッテ用のブッキー装置51を用いる場合に限定されない。しかし、ブッキー装置51としてCRカセッテ用のブッキー装置51を用いれば、FPDとしての放射線画像撮影装置1と従来のCRカセッテとのいずれをもブッキー装置51に装填して放射線画像撮影を行うことも可能となる。
【0110】
一方、放射線画像撮影装置1は、ブッキー装置51に装填されない、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。すなわち、放射線画像撮影装置1を単独の状態で例えば撮影室R1内に設けられた支持台や臥位撮影用のブッキー装置51B等に配置してその放射線入射面R(図1参照)上に被写体である患者の手等を載置したり、或いは、例えばベッドの上に横臥した患者の腰や足等とベッドとの間に差し込んだりして用いることもできるようになっている。この場合、例えばポータブルの放射線発生装置52B(図18参照)等から、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射して放射線画像撮影が行われる。
【0111】
ブッキー装置51には、放射線画像撮影装置1を所定の位置に保持するためのカセッテ保持部51aが設けられており、カセッテ保持部51aに放射線画像撮影装置1が装填できるようになっている。また、本実施形態では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bとがそれぞれ設けられている。
【0112】
なお、立位撮影用のブッキー装置51Aや臥位撮影用のブッキー装置51Bにおいて、例えばそれら自体の位置調整やブッキー装置本体に対するカセッテ保持部51aの高さ調整等を適宜行うこと等が可能とされていることは、公知のブッキー装置と同様である。
【0113】
撮影室R1には、被写体を介して放射線画像撮影装置1に放射線を照射するX線管球を備える放射線発生装置52が少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、立位撮影用および臥位撮影用のブッキー装置51A、51Bに対して1つの放射線発生装置52Aが共用されるようになっている。なお、各ブッキー装置51A、51Bに、別々の放射線発生装置を対応付けて設けるように構成することも可能である。
【0114】
放射線発生装置52Aは、例えば撮影室R1の天井からつり下げられて配設されるようになっており、撮影時には後述する操作卓56からの指示に基づいてセットアップされ、図示しない移動手段により所定の位置にまで移動され、放射線の照射方向が所定の方向を向くようにその向きが調整されるようになっている。
【0115】
また、本実施形態では、立位撮影用のブッキー装置51Aや臥位撮影用のブッキー装置51Bには対応付けられていないポータブルの放射線発生装置52Bも設けられており、ポータブルの放射線発生装置52Bは、撮影室R1内の任意の場所にも持ち運びでき、任意の方向に放射線を照射できるようになっている。
【0116】
なお、本実施形態では、ポータブルの放射線発生装置52Bも、操作卓56からの指示に基づいてセットアップされるようになっているが、この他にも、例えば、操作者が手動でセットアップしたり、放射線画像撮影装置1からポータブルの放射線発生装置52Bに無線信号を送信してセットアップするように構成することも可能である。
【0117】
撮影室R1内の一角には、放射線画像撮影装置1と、コンソール58やスイッチ手段55等とが無線通信する際に、これらの通信を中継する、コンソール58側の通信手段である無線アンテナ53を備えた無線アクセスポイント54が設置されている。
【0118】
なお、図18では、無線アクセスポイント54が撮影室R1の入口付近に設けられている場合が示されているが、これに限定されず、放射線画像撮影装置1のアンテナ装置40等と無線通信が可能な適宜の位置に設置される。また、本実施形態では、無線アクセスポイント54は各ブッキー装置51A、51Bとケーブル等で接続されており、ブッキー装置51A、51Bやそれに装填された放射線画像撮影装置1とコンソール58等との通信を有線方式でも行うことができるようになっている。
【0119】
一方、前室R2には、放射線発生装置52からの放射線の照射開始を指示するためのスイッチ手段55を備えた操作卓56が設けられている。操作卓56は、汎用のCPU(Central Processing Unit)を備えるコンピュータや専用のプロセッサ(processor)を備えるコンピュータ等で構成されている。本実施形態では、操作卓56は、スイッチ手段55や放射線発生装置52と接続されるとともに、コンソール58にも接続されている。
【0120】
本実施形態では、スイッチ手段55には、スイッチ手段55の図示しないボタン部が放射線技師等の操作者により押下されたことを検出するストローク検出手段60が取り付けられており、スイッチ手段55のボタン部が押下されて操作卓56から放射線発生装置52に放射線の照射開始を指示する信号が送信されると、それと同時にストローク検出手段60がスイッチ手段55のボタン部が押下されたことおよび押下が解除されたことを検出して、無線アクセスポイント54を介して放射線画像撮影装置1に放射線の照射の開始信号および終了信号が送信されるようになっている。
【0121】
そのため、本実施形態の放射線画像撮影システム50で用いられる放射線画像撮影装置1については、上記のように、放射線センサ35を設ける等して、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射の開始や終了を検出する必要はない。
【0122】
前室R2の入口の近傍には、前述したRFIDの技術を用いて放射線画像撮影装置1と情報をやりとりするタグリーダ57が設置されている。タグリーダ57は、内蔵する図示しないアンテナを介して電波等に所定の指示情報を乗せて発信し、前室R2や撮影室R1に入室し或いは退室する放射線画像撮影装置1を検出するようになっている。そして、タグリーダ57は、検出した放射線画像撮影装置1のRFIDタグに記憶された固有情報を読み取り、読み取った固有情報をコンソール58に送信するようになっている。
【0123】
コンソール58は、図示しないCPUやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータで構成されており、ROMに格納される所定のプログラムを読み出してRAMの作業領域に展開してプログラムに従って各種処理を実行して、前述したように放射線画像撮影システム50全体の制御を行うようになっている。
【0124】
なお、図18では、コンソール58が撮影室R1や前室R2の外に設置されている場合が記載されているが、例えば、コンソール58を前室R2等に設置するように構成することも可能である。
【0125】
コンソール58には、前述した操作卓56やタグリーダ57等が接続されており、操作卓56等を介して無線アクセスポイント54に接続されている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等からなる記憶手段59が接続されている。さらに、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等からなる表示画面58aが設けられており、その他、キーボードやマウス等の図示しない入力手段が接続されている。
【0126】
コンソール58は、前述したようにタグリーダ57が検出した放射線画像撮影装置1のカセッテIDを含む固有情報が送信されてくると、記憶手段59に登録されている、撮影室R1内等に存在する放射線画像撮影装置1のリストを参照するようになっている。そして、コンソール58は、送信されてきた固有情報が記憶手段59に登録されていなければ、当該放射線画像撮影装置1が新たに撮影室R1や前室R2内に持ち込まれたものとしてその放射線画像撮影装置1のカセッテID等を上記のリストに追加して記憶手段59に登録する。
【0127】
また、送信されてきた固有情報が既に記憶手段59に登録されているものであれば、当該放射線画像撮影装置1が撮影室R1や前室R2内から持ち出されたものとしてその放射線画像撮影装置1のカセッテID等を上記のリストから抹消する。このようにして、コンソール58は、撮影室R1内等に持ち込まれ或いは持ち出される放射線画像撮影装置1を把握して記憶手段59上で管理するようになっている。
【0128】
本実施形態に係る放射線画像撮影システム50においても、図8のタイミングチャートに示したように、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、操作者が電源スイッチ37(図1参照)等を手動で操作し、或いは、アンテナ装置40を介してコンソール58から送信された信号を受信すると、放射線検出素子7や読み出し回路17等のリセット処理を行う。
【0129】
そして、制御手段22は、放射線センサ35からの信号やストローク検出手段60から送信されてくる信号によって放射線の照射の開始および終了を検出し、放射線画像撮影が行われた判断すると、上記のように、検出部Pの各放射線検出素子7からの画像データFaの読み出し処理を行い、各画像データFaを記憶手段23に保存する。
【0130】
続いて、制御手段22は、判定手段として、読み出した各画像データFaのプロファイルを解析して、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在するか否かを判定する。そして、前述した領域Ro内に飽和画像データFAが存在しないと判定すると、図8のタイミングチャートに示したように、続いて、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行い、各ダーク読取値を記憶手段23に保存する。
【0131】
一方、各画像データFa中に飽和画像データFAが存在すると判定すると、制御手段22は、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行わずに、再度、各放射線検出素子7から電荷を読み出して画像データFbに変換する読み出し処理を行い、各画像データFbを記憶手段23に保存する。そして、各放射線検出素子7に対するリセット処理を行った後、ダーク読取処理を行い、各ダーク読取値を記憶手段23に保存する。
【0132】
そして、上記の一連の処理が終了すると、制御手段22は、記憶手段23から、画像データFaやダーク読取値、さらに画像データFbが保存されていれば画像データFbをアンテナ装置40から送信する。
【0133】
コンソール58は、放射線画像撮影装置1のアンテナ装置40から送信された画像データFa等を無線アクセスポイント54を介して受信すると、それらのデータを記憶手段59に保存する。
【0134】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から送信されてきたデータが、画像データFaすなわち最初の読み出し処理により読み出された画像データFaとダーク読取値のみの場合には、前述したようにダーク読取値から各画像データFaのオフセット分を算出し、各画像データFaから各オフセット分を差し引いて真の各画像データFaを算出する等して放射線画像を得るための画像処理を行う。
【0135】
一方、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から送信されてきたデータが、画像データFaと再度の読み出し処理により読み出された画像データFbとダーク読取値である場合には、上記の実施形態のように、飽和画像データFAに対応する画像データFbに基づいてそれぞれ特徴量Cを算出し、算出した各特徴量Cを加算した各飽和画像データFAから、ダーク読取値から算出したオフセット分を差し引いた後、所定の係数を乗算する等して、それぞれ非飽和画像データに修正する。このようにして、放射線画像を得る。
【0136】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50によれば、画像データFAが飽和するほど強い放射線が照射された場合にラグ(lag)現象が生じることを利用して、飽和画像データFA部分の被写体Oの情報を擬似的に的確に復元することが可能となるといった上記の実施形態に係る放射線画像撮影装置1の効果を的確に発揮させることが可能となる。
【0137】
また、それとともに、放射線画像撮影装置1で特徴量算出処理や修正処理等の演算処理を行わないため、その分、放射線画像撮影装置1のバッテリ41の電力消費を抑制することが可能となる。そのため、バッテリ41の1回の充電あたりの放射線画像撮影装置1の放射線画像撮影への使用回数を増やすことが可能となり、放射線画像撮影装置1を効率的に使用することが可能となる。
【0138】
なお、本発明が上記の実施形態や変形例に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0139】
1 放射線画像撮影装置(可搬型放射線画像撮影装置)
7 放射線検出素子
17 読み出し回路
22 制御手段(判定手段、特徴量算出手段、修正手段)
40 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
54 無線アクセスポイント(通信手段)
58 コンソール
C 特徴量
Dr 読み残しデータ値(最初に読み出された画像データの読み残し分)
Fa 画像データ
Fa* 非飽和画像データ
FA 飽和画像データ
Fb 再度読み出された画像データ
i 行
O 被写体
P 検出部
Ro 領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせ、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出する特徴量算出手段と、
前記特徴量算出手段により算出された前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正する修正手段と、
を備えることを特徴とする可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行ごとまたは各列ごとの各放射線検出素子の前記画像データについてそれぞれデータプロファイルを作成し、前記データプロファイルのうち、被写体を透過した放射線が到達した前記放射線検出素子の画像データであると推定される領域内の前記画像データを解析して、前記飽和画像データが存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記再度読み出された画像データのデータ値には、それに応じて前記特徴量が予め設定されており、
前記特徴量算出手段は、前記画像データの再度の読み出し処理を行わせると、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに対してそれぞれ前記特徴量を割り当て、
前記修正手段は、前記特徴量算出手段により割り当てられた前記各特徴量を、前記各飽和画像データに加算し、前記特徴量が加算された前記飽和画像データを含む全てのまたは所定の画像データに所定の係数を乗算してそれぞれ非飽和画像データに修正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記特徴量算出手段は、前記再度の読み出し処理で実際に読み出された画像データから、最初に読み出された画像データの読み残し分を差し引いた値を前記再度読み出された画像データとして算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記最初に読み出された画像データの読み残し分は、前記飽和画像データが読み出された前記放射線検出素子の近傍の放射線検出素子から読み出された画像データの読み残し分から算出されることを特徴とする請求項4に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項6】
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置とのデータの送受信を行う通信手段と、
を備える可搬型放射線画像撮影装置と、
前記可搬型放射線画像撮影装置とのデータの送受信を行う通信手段を備え、前記可搬型放射線画像撮影装置から前記飽和画像データを含む前記画像データおよび前記再度読み出された前記画像データが送信されると、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出し、算出した前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正するコンソールと、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記可搬型放射線画像撮影装置の前記判定手段は、前記二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行ごとまたは各列ごとの各放射線検出素子の前記画像データについてそれぞれデータプロファイルを作成し、前記データプロファイルのうち、被写体を透過した放射線が到達した前記放射線検出素子の画像データであると推定される領域内の前記画像データを解析して、前記飽和画像データが存在するか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記再度読み出された画像データのデータ値には、それに応じて前記特徴量が予め設定されており、
前記コンソールは、前記可搬型放射線画像撮影装置から送信されてきた前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに対してそれぞれ前記特徴量を割り当て、割り当てた前記各特徴量を、前記各飽和画像データに加算し、前記特徴量を加算した前記飽和画像データを含む全てのまたは所定の画像データに所定の係数を乗算してそれぞれ非飽和画像データに修正することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記コンソールは、前記可搬型放射線画像撮影装置における前記再度の読み出し処理で実際に読み出された画像データから、最初に読み出された画像データの読み残し分を差し引いた値を前記再度読み出された画像データとして算出することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
前記最初に読み出された画像データの読み残し分は、前記飽和画像データが読み出された前記放射線検出素子の近傍の放射線検出素子から読み出された画像データの読み残し分から算出されることを特徴とする請求項9に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項1】
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせ、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出する特徴量算出手段と、
前記特徴量算出手段により算出された前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正する修正手段と、
を備えることを特徴とする可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行ごとまたは各列ごとの各放射線検出素子の前記画像データについてそれぞれデータプロファイルを作成し、前記データプロファイルのうち、被写体を透過した放射線が到達した前記放射線検出素子の画像データであると推定される領域内の前記画像データを解析して、前記飽和画像データが存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記再度読み出された画像データのデータ値には、それに応じて前記特徴量が予め設定されており、
前記特徴量算出手段は、前記画像データの再度の読み出し処理を行わせると、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに対してそれぞれ前記特徴量を割り当て、
前記修正手段は、前記特徴量算出手段により割り当てられた前記各特徴量を、前記各飽和画像データに加算し、前記特徴量が加算された前記飽和画像データを含む全てのまたは所定の画像データに所定の係数を乗算してそれぞれ非飽和画像データに修正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記特徴量算出手段は、前記再度の読み出し処理で実際に読み出された画像データから、最初に読み出された画像データの読み残し分を差し引いた値を前記再度読み出された画像データとして算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記最初に読み出された画像データの読み残し分は、前記飽和画像データが読み出された前記放射線検出素子の近傍の放射線検出素子から読み出された画像データの読み残し分から算出されることを特徴とする請求項4に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項6】
被写体の情報を担持する放射線の線量に応じて電荷を発生させる複数の放射線検出素子が二次元状に配列された検出部と、
前記各放射線検出素子から前記電荷を読み出して前記放射線検出素子ごとに前記電荷を画像データに変換する読み出し処理を行う読み出し回路と、
前記画像データを解析して、データ値が飽和した飽和画像データが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記飽和画像データが存在すると判定された場合に、前記各放射線検出素子に対するリセット処理を行わずに、再度、前記読み出し回路に前記読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置とのデータの送受信を行う通信手段と、
を備える可搬型放射線画像撮影装置と、
前記可搬型放射線画像撮影装置とのデータの送受信を行う通信手段を備え、前記可搬型放射線画像撮影装置から前記飽和画像データを含む前記画像データおよび前記再度読み出された前記画像データが送信されると、前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに基づいてそれぞれ特徴量を算出し、算出した前記各特徴量に基づいて、前記各飽和画像データをそれぞれ非飽和画像データに修正するコンソールと、
を備えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記可搬型放射線画像撮影装置の前記判定手段は、前記二次元状に配列された複数の放射線検出素子の各行ごとまたは各列ごとの各放射線検出素子の前記画像データについてそれぞれデータプロファイルを作成し、前記データプロファイルのうち、被写体を透過した放射線が到達した前記放射線検出素子の画像データであると推定される領域内の前記画像データを解析して、前記飽和画像データが存在するか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記再度読み出された画像データのデータ値には、それに応じて前記特徴量が予め設定されており、
前記コンソールは、前記可搬型放射線画像撮影装置から送信されてきた前記飽和画像データに対応する前記再度読み出された画像データに対してそれぞれ前記特徴量を割り当て、割り当てた前記各特徴量を、前記各飽和画像データに加算し、前記特徴量を加算した前記飽和画像データを含む全てのまたは所定の画像データに所定の係数を乗算してそれぞれ非飽和画像データに修正することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記コンソールは、前記可搬型放射線画像撮影装置における前記再度の読み出し処理で実際に読み出された画像データから、最初に読み出された画像データの読み残し分を差し引いた値を前記再度読み出された画像データとして算出することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
前記最初に読み出された画像データの読み残し分は、前記飽和画像データが読み出された前記放射線検出素子の近傍の放射線検出素子から読み出された画像データの読み残し分から算出されることを特徴とする請求項9に記載の放射線画像撮影システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−158379(P2010−158379A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2336(P2009−2336)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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