説明

合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造

【課題】厚みのある合わせ複層ガラスを、既存のガラス板嵌め込み溝の溝幅の狭い薄型サッシ枠に嵌め込むための、合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を提供する。
【解決手段】一対の板ガラスG、G’を平行に隔置し中空層1を有し、少なくとも一対の板ガラスの片側に合わせガラス板を用いてなる合わせ複層ガラスをサッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造であって、合わせガラス板をなす中空層側のガラス板がサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、合わせガラス板をなす外側のガラス板G2は、サッシ枠の開口部よりも小さく、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス嵌め込み溝の狭い既存のサッシに、少なくとも1枚の合わせガラスを有する合わせ複層ガラスを嵌め込んで取り付けた際の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造に関する。特に、複層ガラスをなす一対の板ガラスに、ともに合わせガラスを用いた合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般住宅、特に集合住宅、道路の近く、鉄道沿線および空港の周辺の住宅等、ビル、オーディオルーム、ピアノ室、図書館、美術館等においては、好まれざる音、または音楽や会話の伝達を阻害する音である騒音に対する関心が高まり、建物の床、壁、天井等には吸音材が埋め込まれ、ドアにも防音または遮音ドアが使用されるようになってきている。加えて、音が通過しやすい窓においても、断熱性能とともに防音性能を有することが求められる。よって、窓は、空気等の媒体の粗密波として伝わる縦波である音を減衰させることが要求されるようになってきた。
【0003】
複層ガラスは、一対の板ガラスを平行に隔置した中空層を有する。一般的には、一対の板ガラスの周縁部にアルミニウム製のスペーサーをブチルゴム接着材で貼着して挟み込み、ブチルゴム接着材で一対の板ガラスとアルミニウム製スペーサーを接着一体化させ、板ガラスとアルミニウム製スペーサーからなるコの字型の凹部に、ポリサルファイド、またはシリコーンからなる封止材を充填し封止している。よって、複層ガラスには板ガラスとアルミニウム製スペーサーで囲まれ密閉された中空層が存在し、断熱性能に優れる。
【0004】
合わせガラスは、一対の板ガラスの間に、ポリビニルブチラール(以下、PVBと略する)、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略する)等の透明樹脂膜を挟みこんで加熱溶融させ接着一体化させたものである。合わせガラスには、板ガラスと樹脂中間層の界面による反射、板ガラスと直に接着した透明樹脂膜からなる樹脂中間層によるコインシデンス効果の抑制、粗密波である音の樹脂中間層の粘性抵抗による吸収減衰があり、同じ厚さのガラス単体からなる単板ガラスと比較して遮音性能に優れる。
【0005】
ガラスサッシの断熱性能および遮音性能をともに高めるには、複層ガラスをなす一対の板ガラスに合わせガラスを用いてなる、少なくとも1枚の合わせガラスを有する合わせ複層ガラスを採用することが好ましい。合わせ複層ガラスは、複層ガラスの片側または両側を合わせガラスにしたもので合わせガラスの持つ遮音性能、防犯性能と複層ガラスの持つ断熱性能を合わせ持つ。
【0006】
前述のコインシデンス効果とは、板状の材料において特有の周波数で透過損失が小さくなる、言い換えれば、遮音性能が低下する現象である。具体的には板面に音が斜めに入射すると、板面上の位置によって音圧に位相差ができるため、板面にそって固有の屈曲強制振動を生じ、ある周波数で音の透過が大きくなり、遮音性能が低下する現象である。板ガラスにおいては、ガラス面に対し、縦弾性波である音波が垂直でなく斜めに入射した場合、コインシデンス効果によりガラス面に横波の振動波が発生し、共鳴により遮音性能を低下させ、コインシデンス限界周波数以上の周波数域で遮音性能の低下が起こる。
【0007】
尚、コインシデンスの現象の起きる最も低い周波数をコインシデンス限界周波数と言い、コインシデンス限界周波数とガラス板の厚さの間には相関があり、ガラス板が厚くなり曲げ剛性が大きくなると、コインシデンス限界周波数は低くなることが知られている。サッシの遮音において、このコインシデンス効果の発生を抑制しなければならない。
【0008】
合わせ複層ガラスにおいて、複層ガラスをなす一対の板ガラスに、ガラスのみからなる単板ガラスと合わせガラスを用いれば、単板ガラスと合わせガラスをなす個々のガラス板の厚みを変えることで、各々のコインシデンス限界周波数を異ならせて、コインシデンス効果による遮音性能の低下を防止することが容易となる。
【0009】
しかしながら、合わせ複層ガラスは厚みがあるため、ガラス嵌め込み溝の溝幅が狭いサッシ枠に組み込めないという問題があった。
【0010】
特許文献1に、既存の窓枠に総厚がガラス嵌め込み溝を超える合わせガラスを施工するに際して、アタッチメントを使用することなく、また既存の窓枠を加工することなく、この窓枠に合わせガラスを施工することが可能な合わせガラスの施工方法および合わせガラスを施工した窓構造が開示される。
【0011】
特許文献1に記載の発明は、合わせガラスの少なくとも1枚のガラス板が前記窓枠の開口部よりも小さく形成され、このガラス板を除いた残りのガラス板の端部が前記窓枠のガラス板嵌め込み溝に嵌め込まれ、このガラス嵌め込み溝と前記合わせガラスとの隙間が密閉材により密閉された合わせガラスの窓構造である。
【0012】
特許文献1に記載の合わせガラスの窓構造において、ガラス嵌め込み溝と合わせガラスとの隙間を中間膜の外縁部を含めてシーラントにより接着して密閉することで、長期的な耐久性の向上、水密および気密性能の向上、素材の千切れ難さによる合わせガラスの脱落および落下防止、飛散防止や浸入防止等の安全性および防犯性の向上、防火および耐火性能の向上、中間膜の密閉化による膜の安定性および耐久性の向上、シーラントの接着による強度の向上という作用効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−324372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、厚みのある合わせ複層ガラスを、既存のガラス嵌め込み溝の溝幅の狭いサッシ枠に嵌め込むための、合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を提供することを目的とする。具体的には、遮音特性に優れる18mmより厚い合わせ複層ガラスを、既存の嵌め込み溝幅18mm以下のサッシ枠に取り付け、遮音等級T−3等級以上のガラスサッシを得るための合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を提供することを目的とする。
【0015】
合わせ複層ガラスを既存のサッシに組み込むためには、合わせ複層ガラスの厚みを18mm以下としなければならない。しかしながら、中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスにおいて、ガラスサッシとした際にJIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格するには、合わせ複層ガラスは、単板ガラス/中空層(空気封入)/単板ガラスの構成で、厚み22mm以上が必要であった。また、中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスにおいて、ガラスサッシとした際にJIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−4等級に合格するには、合わせ複層ガラスは、単板ガラス/中空層(ヘリウム封入)/単板ガラスの構成で、厚み22mm以上が必要であった。
【0016】
また、本発明は、地震等でガラスサッシが変形した際、ガラス板が破損することを防止するとともに、サッシ枠の美観性に優れたガラスサッシを与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
厚みのある合わせ複層ガラスを、既存のガラス嵌め込み溝の溝幅の狭いサッシ枠に嵌め込むためには、合わせ複層ガラスをなす合わせガラスの中空層側のガラス板のみをサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込み、合わせガラスの外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板は、サッシ枠の開口部よりも小さく、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まなければよい。
【0018】
即ち、本発明は、一対の板ガラスを平行に隔置し端部を封止して、一対の板ガラスの間に中空層を設けてなり、少なくとも一対の板ガラスの片側に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスをサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際の複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造であって、合わせガラスをなす中空層側のガラス板がサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、少なくとも1枚の合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板は、サッシ枠の開口部よりも小さく、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていないことを特徴とする合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造である。
【0019】
より、遮音性能を高めるには、一対の板ガラスの両方に合わせガラスを用いた合わせ複層ガラスを用いることが好ましい。
【0020】
即ち、本発明は、一対の板ガラスの両方に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスを使用したことを特徴とする上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造である。
【0021】
詳しくは、本発明は、一対の板ガラスを平行に隔置し端部を封止して、一対の板ガラスの間に中空層を設けてなり、一対の板ガラスの両方に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスをサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際の複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造であって、合わせガラスをなす中空層側のガラス板がサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、少なくとも1枚の合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板は、サッシ枠の開口部よりも小さく、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていないことを特徴とする合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造である。
【0022】
また、本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造において、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板端面とサッシ枠が隙間なく当接している状態であると地震等でガラスサッシに力が加わった際、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板が端面より破損する虞がある。よって、合わせガラス外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板端面とサッシ枠の間隔を3mm以上、25mm以下とする。3mm未満では、地震等でガラスサッシが変形した際、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板端面とサッシ枠が容易にぶつかってしまう。また、25mmより広くする必要はない。好ましくは、15mm以下である。
【0023】
この際、ガラス板端面とサッシ枠の間に弾性体を挟んでおくと、地震等でガラスサッシが変形した際の緩衝材として有効に作用する。
【0024】
さらに、本発明は、合わせガラスをなす少なくとも1枚の外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板端面とサッシ枠の間隔が3mm以上、25mm以下であり、ガラス板端面とサッシ枠の間に弾性体が挟まれてなることを特徴とする上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造である。
【0025】
サッシ枠の美観性のためには、合わせガラスをなす少なくとも1枚の外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板周縁部全周に、ガラス板端面とサッシ枠の隙間および隙間に挟み込んだ弾性体の目隠し部を設けることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明は、合わせガラスをなす少なくとも1枚の外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板周縁部全周にガラス板端面とサッシ枠の隙間および隙間に挟み込んだ弾性体の目隠し部を設けたことを特徴とする上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造である。
【0027】
また、本発明は、一対の板ガラスを平行に隔置し端部を封止して、一対の板ガラスの間に中空層を設けてなり、少なくとも一対の板ガラスの片側に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスをサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法であって、合わせガラスをなす中空層側のガラス板をサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込み、合わせガラスをなす少なくとも1枚の外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板は、サッシ枠の開口部よりも小さくし、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まないことを特徴とする合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法である。
【0028】
さらに、本発明は、一対の板ガラスの両方に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスを使用したことを特徴とする上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法である。
【0029】
言い換えれば、本発明は、一対の板ガラスを平行に隔置し端部を封止して、一対の板ガラスの間に中空層を設けてなり、一対の板ガラスの両方に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスをサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法であって、合わせガラスをなす中空層側のガラス板をサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込み、合わせガラスをなす少なくとも一枚の外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板は、サッシ枠の開口部よりも小さくし、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まないことを特徴とする合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法である。
【0030】
サッシ枠の嵌め込み溝の幅が18mm以下の既存のサッシ枠に、合わせ複層ガラスを嵌め込み、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−3等級以上に合格するガラスサッシを得るには、上記の複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用いる。
【0031】
この際、サッシ枠の嵌め込み溝に嵌め込む板ガラスの厚みは、安全性のために、厚さ、4.7mm以上であることが好ましい。尚、本発明において、板ガラスの表記には合わせガラスを含み、ガラス板の表記には合わせガラスを含まない。
【0032】
中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスをサッシ枠に嵌め込んで、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−3等級に合格するようにガラスサッシを設計する際、合わせ複層ガラスの厚みが22mm以下となるように設計することは困難である。
【0033】
サッシ枠の嵌め込み溝の幅が18mm以下の既存のサッシに、中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスを嵌め込んで、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−3等級に合格するガラスサッシを得るには、上記の複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用いる。
【0034】
中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスを用いたガラスサッシをサッシ枠に嵌め込んで、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−4等級に合格するようにガラスサッシを設計する際、合わせ複層ガラスの厚みが22mm以下となるように設計することは困難である。尚、合わせ複層ガラスの中空層に空気を封入した場合と比較して、中空層にヘリウムを封入した場合、遮音性能は向上するが、断熱性能は低下する。
【0035】
サッシ枠の嵌め込み溝の幅が18mm以下の既存のサッシに、中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスを嵌め込み、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−4等級に合格するガラスサッシを得るには、上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用いる。
【0036】
さらに、本発明は、上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用い嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に合わせ複層ガラスを取り付けてなり、JIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級以上に合格することを特徴とするガラスサッシである。
【0037】
さらに、本発明は、上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用い、嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に、中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスを取り付けてなり、JIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格することを特徴とするガラスサッシである。
【0038】
さらに、本発明は、上記の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用い、嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に、中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスを取り付けてなり、JIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−4等級に合格することを特徴とするガラスサッシである。
【0039】
また、本発明においてのガラスサッシにおいて、透明性樹脂中間膜によりガラス板を接着一体化させた合わせガラスの透明性樹脂中間層は、PVBまたはEVAのみでも良いが、さらに遮音性能を高めるために、化学組成を変えて粘性等の物性を異ならせた透明樹脂として、モノマー組成比および/または分子量を変えたPVBを積層させたこと、あるいは、PVBとは化学構造の異なるポリビニルアセタール樹脂を積層させたこと等で、粘性等の物性の異なるPVBを積層させた遮音性中間膜を用いる、またはポリスチレンとビニル−ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体からなる透明性遮音中間膜とEVAを積層させてなる遮音性中間膜を用いることが好ましい。
【0040】
さらに、本発明は、上記のガラスサッシであって、合わせ複層ガラスに用いる、透明性樹脂中間膜によりガラス板を接着一体化させた合わせガラスの透明性樹脂中間層に、PVB、EVAまたは遮音性中間膜を用いたことを特徴とするガラスサッシである。
【発明の効果】
【0041】
本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠の取り付け構造によって、厚みのある合わせ複層ガラスを、既存のガラス嵌め込み溝の溝幅の狭いサッシ枠に嵌め込むための、合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造が提供された。
【0042】
具体的には、遮音特性に優れる18mmより厚い合わせ複層ガラスを、既存の嵌め込み溝幅18mm以下のサッシ枠に取り付け、遮音等級T−3等級以上のガラスサッシを得るための合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造が提供された。
【0043】
また、地震等でガラスサッシが変形した際、ガラス板が破損することを抑制するとともに、サッシ枠の美観性に優れたサッシ枠が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造の一例の主要部の拡大断面図である。合わせ複層ガラスをなす一対の板ガラスG、G´の片側G´に合わせガラスを用いた例である。
【0045】
図1に示すように、一対の板ガラスG、G´を平行に隔置して、一対の板ガラスG、G´の間に中空層1を設けてなる合わせ複層ガラスを、サッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際、合わせ複層ガラスをなす一対の板ガラスG、G´の片側の板ガラスG´に合わせガラスを用いており、合わせガラスをなす中空層1側のガラス板G1がサッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板G2は、サッシ枠2の開口部よりも小さく、サッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていない。
【0046】
図2は、本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造の一例の主要部の拡大断面図である。合わせ複層ガラスをなす一対の板ガラスG、G´の両方に合わせガラスを用いた例である。
【0047】
図2に示すように、一対の板ガラスG、G´を平行に隔置して、一対の板ガラスG、G´の間に中空層1を設けてなる合わせ複層ガラスをサッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際、合わせ複層ガラスをなす一対の板ガラスG、G´の両方に合わせガラスを用いており、合わせガラスをなす中空層側のガラス板G1、G3がサッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板G2、G4は、サッシ枠2の開口部よりも小さく、サッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていない。
【0048】
図3は、本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造の一例の主要部の拡大断面図である。合わせ複層ガラスをなす一対の板ガラスG、G´の両方に合わせガラスを用いた際の、図2とは別の本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造の一例である。
【0049】
図3に示すように、一対の板ガラスG、G´を平行に隔置し中空層1を有し、合わせ複層ガラスをサッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際、合わせ複層ガラスをなす一対の板ガラスG、G´の両方に合わせガラスを用いており、合わせガラスをなす一方の中空層側のガラス板G1が、サッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板G2は、サッシ枠2の開口部よりも小さく、サッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていない。
【0050】
合わせガラスには、ガラス板と樹脂中間層の界面による反射、ガラス板と直に接着した透明樹脂膜からなる樹脂中間層によるコインシデンス効果の抑制、粗密波である音の樹脂中間層の粘性抵抗による吸収減衰があり、ガラス板単体からなる同じ厚さの単板ガラスと比較して遮音性能に優れる。本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠の取り付け構造によるガラスサッシにおいて、優れた遮音性能を高めるためには、図2および図3に示すように、一対の板ガラスG、G´の両方に合わせガラスを用いた合わせ複層ガラスを採用することが好ましい。
【0051】
図4は、本発明に使用する合わせ複層ガラスの正面図である。
【0052】
図4に示すように、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板G2は、合わせガラスをなす中空層側のガラス板G1より小さい。このようにして、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板G2を、図示しないサッシ枠2の開口部よりも小さくし、合わせガラスをなす中空層側のガラス板G1をサッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込む。このときのガラス板G1の端面とガラス板G2の端面の間隔をかかり代と呼ぶ。
【0053】
図1〜3に示すように、本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠2への取り付け構造において、合わせガラスをなすサッシ枠2の開口部より小さい外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板の端面とサッシ枠2の間隔が3mm以上、25mm以下とし、ガラス板端面とサッシ枠の間に弾性体3を挟むことが好ましい。こうすることで、地震等でガラスサッシが変形した際、ガラス板の破損が防止され、弾性体3は緩衝材として有効に作用する。弾性体3としては、シリコンゴム、ウレタンゴム、クロロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、EPDMと略する)等が挙げられる。
【0054】
本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠2への取り付け構造において、サッシ枠2の美観性のためには、合わせガラスをなすサッシ枠2の開口部より小さい外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板周縁部全周に、ガラス板端面とサッシ枠2の隙間および隙間に挟み込んだ弾性体3の目隠し部4を設けることが好ましい。目隠し部4は、サッシ枠2自体に設けても良いし、合わせガラスをなす開口部より小さい外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板の周縁部全周に長尺上の樹脂板またアルミニウム版等を、両面テープを用いて貼り付けても良い。取り付けが簡単なことおよび美観性に優れることより、好ましくはサッシ枠2と同色の樹脂板を用いる。
【0055】
また、図1〜3に示すように、サッシ枠2に合わせ複層ガラスを嵌め込む際は、サッシ枠2の内部に柔らかく衝撃を吸収する弾性体、例えば、クロロピレンゴムまたはEPDM製のセッティングブロック5を配置し、これに合わせ複層ガラスを載置した状態とすることが好ましい。ガラスサッシを開け閉めする際、より衝撃を吸収するために、セッティングブロック5の配置は、合わせ複層ガラス各辺の角部から各々の辺の1/4の距離となる位置に設置することが好ましい。
【0056】
板ガラスG、G´とサッシ枠2の間にはバックアップ材6を挟むことが好ましい。バックアップ材6には、クロロピレンゴム、発泡ポリエチレンを使うことが推奨される。
【0057】
尚、図1〜3に示すように、一般的に、合わせ複層ガラスの端部は、一対の板ガラスG、G´の周縁部に、ゼオライトまたはシリカゲル等の乾燥剤7を充填したアルミニウム製のスペーサー8をブチルゴム接着材9で貼着して挟み込み、ブチルゴム接着材9で一対の板ガラスG、G´とアルミニウム製スペーサー8を接着一体化させ、一対の板ガラスG、G´とアルミニウム製スペーサー8からなるコの字型の凹部10に、ポリサルファイド、またはシリコーンからなる封止材を充填し封止している。
【0058】
本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠2への取り付け構造を用いることによって、嵌め込み溝の幅が18mm以下の既存のサッシ枠2に、中空層1に空気を封入した合わせ複層ガラスを取り付けて、JIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格するガラスサッシを得ることが可能となった。また、嵌め込み溝の幅が18mm以下の既存のサッシ枠2に、中空層1にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスを取り付けて、JIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−4等級に合格するガラスサッシを得ることが可能となった。
【0059】
尚、ガラスサッシとは複層ガラス、合わせガラスまたは合わせ複層ガラス等を含む板ガラスに予め枠が制作・調整されていて、固定窓、可動窓等の窓、開閉ドア等のドアへの取り付けに際して1個の構成材として扱うことができるものを言う。
【0060】
また、サッシの遮音性能の規格は、JIS A4706:2000「サッシ」に記載されている。即ち、JIS A4706:2000「サッシ」において、サッシの遮音性は、遮音等級T−1等級、T−2等級、T−3等級、T−4等級に分けられる。サッシの片側から音を出し、反対側でサッシによる音の反射、吸収減衰による音圧レベルの減少を測ることで、サッシの音響透過損失を前記JIS規格に定める各周波数で測定し、遮音等級T−1等級線、T−2等級線、T−3等級線、T−4等級線に準拠し、前記JISに記載された条件に適合、即ち、合格したサッシを、各々遮音等級T−1等級、T−2等級、T−3等級、T−4等級とする。
【0061】
図5にJIS A4706:2000「サッシ」に記載される遮音等級線のグラフを示す。
【0062】
尚、JIS A4706:2000「サッシ」において、次のa)またはb)のいずれかに適合する場合、図5に示す等級線で表される等級としている。
a)125Hz〜4000Hzの16点における音響透過損失が、全て該当する遮音等級線を上回ることとする。尚、各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下の場合は、その遮音等級とする。
b)全周波数帯域において、数1の式によって、音響透過損失を換算し、その換算値(6点)が該当する遮音等級線を上回ることとする。
【0063】
【数1】

【0064】
但し、125Hzは160Hzと、4000Hzは3150Hzと、各々二つの音響透過損失によって換算する。尚、換算値は整数で丸めることとし、換算値の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下の場合は、その遮音等級とする。
【0065】
図5に示すように、音響透過損失による遮音等級線において、500Hz以上の遮音性能が、遮音等級T−3等級は35dB以上であり、遮音等級T−4等級は40dB以上である。遮音等級T−3等級、T−4等級に合格するには。音響透過損失が前述の等級線を実質的に上回る必要がある。尚、デシベル(dB)は音圧レベルの単位であり、音圧レベルは音による大気圧から圧力変動を対数で表した無次元量としデシベル(dB)を単位として表される。圧力変動は音圧レベル10dBで3.2倍変動する。音圧レベルはある音の音圧P(単位:Pa)と人間の最小可聴音である基準音圧P0(2×10−5Pa)との比の常用対数を20倍したものとして定義され、dBで表される。
【0066】
また、本発明の本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠2への取り付け構造において使用される合わせ複層ガラスの透明性樹脂中間層11は、PVBまたはEVAのみでも良いが、さらに遮音性能を高めるために、化学組成を変えて粘性等の物性を異ならせた透明性樹脂として、モノマー組成比および/または分子量を変えたPVBを積層させたこと、あるいは、PVBとは化学構造の異なるポリビニルアセタール樹脂を積層させたこと等で、粘性等の物性の異なるPVBを積層させた遮音性中間膜を用いる、またはポリスチレンとビニル−ポリイソプレンが結合したトリブロック共重合体からなる透明性遮音中間膜とEVAを積層させてなる遮音性中間膜を用いることが好ましい。また、その中間膜に熱線反射のために銀微粒子等の機能性微粒子を分散させることも挙げられる。
【0067】
1枚のPVBに替えて、前述の遮音性中間膜に用いると、PVBのみを用いた合わせガラスに比較して1000Hz以上、4000Hz以下の周波数域の音響透過損失が5dB程度大きくなり、さらに遮音性能が向上する。
【0068】
このことは、粘性があり柔軟な透明性樹脂中間層11により、合わせガラスを成す一対のガラス板が個々不規則に振動することに加え、粘性の異なる透明性樹脂を積層させた遮音性中間膜により透明性樹脂中間層11自体が音の振動エネルギーを吸収することによる。
【0069】
本発明において使用する板ガラスおよびガラス板には、表面に熱線反射金属薄膜をスパッタリング等の手段で形成したLow−Eガラス、その他、金属線入りガラス、網入りガラス、着色ガラス、強化ガラス等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
(ガラスサッシの作製)
本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用い、中空層に空気を封入したガラスサッシ、または中空層にヘリウムを封入した2種類のガラスサッシ作製し、その遮音性能を測定した。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0071】
具体的には、図3に示す合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造のガラスサッシを作製した。
【0072】
最初に、FL3(呼び厚さ3mm、厚みの実測値2.7mm)のガラス板G4、G3、およびFL6(呼び厚さ6mm、厚みの実測値5.7mm)のガラス板G1を用意した。ガラス板G4、G3、G1の大きさは、1480mm×1230mmである。
【0073】
次いで、FL4(呼び厚さ4mm、厚みの実測値3.7mm)のガラス板G2を用意した。ガラス板G2の大きさは、1440mm×1190mmであり、合わせ複層ガラスとしサッシ枠に嵌め込む際に、図4に示すように、合せ複層ガラスの端部を取り囲んだサッシ枠の開口部より小さくなるようにした。
【0074】
FL3、大きさの1480mm×1230のガラス板G4、G3の間に、厚さ30mil(0.76mm)の遮音性中間膜を挟み込み、加熱溶着して、図3に示す合わせガラスである板ガラスG´とした。遮音性中間膜による樹脂中間層11端部はシリコーンシーラントを薄く塗り、遮音性中間膜が吸湿または変質しないように封止した。
【0075】
尚、遮音性中間膜には、積水化学工業製の遮音性中間膜(商品名、エスレック・アコースティック・フィルム)を使用した。当該遮音性中間膜は、透明樹脂を積層させてなる遮音性中間膜1であり、コア層に遮音性透明樹脂層を用い、その外層にPVBを用い、遮音性透明樹脂層をPVBで挟んだサンドイッチ構造であり、3層押出成形により作製されている。当該遮音性中間膜を合わせガラスの樹脂中間層11とした場合、樹脂中間層11に通常のPVBのみを用いた合わせガラスGと比較して、1000Hz以上、4000Hz以下の周波数域の音響透過損失が5dB程度大きくなり、さらに遮音性能が向上するとされる。
【0076】
次いで、FL6(厚みの実測値5.7mm)、大きさ、1480mm×1230mmのガラス板G1と、FL4(厚みの実測値3.7mm)、大きさ1440mm×1190mmのガラス板G2の間に、厚さ30mil(0.76mm)のEVAを挟み、加熱ローラーを用いて加熱加圧しつつ溶着し、合わせガラスである板ガラスG´とした。この際、図4に示すように、ガラス板G1の端面とガラス板G2の端面の間隔、即ち、かかり代が全周均等に20mmになるように調製した。遮音性中間膜の吸湿または変質を防止するために、EVAからなる樹脂中間層11端部はシリコーンシーラントを薄く塗った。
【0077】
図3に示すように、合わせ複層ガラスの端部は、一対の板ガラスG、G´の周縁部に、ゼオライトを乾燥剤7として充填し、アルミニウム製のスペーサー8をブチルゴム接着材9で貼着して挟み込み、ブチルゴム接着材9で一対の板ガラスG、G´とアルミニウム製スペーサー8を接着一体化させ、一対の板ガラスG、G´とアルミニウム製スペーサー8からなるコの字型の凹部10にシリコーンからなる封止材を充填し封止した。このようにして、サッシ枠2に合わせ複層ガラスを取り付けガラスサッシを作製した。
【0078】
合わせ複層ガラスは、ガラス板G4/樹脂中間層11/ガラス板G3/中空層1/ガラス板G1/樹脂中間層11/ガラス板G2の構造であり、FL3(厚みの実測値2.7mm)/遮音性中間膜(厚み0.76mm)/FL3(厚みの実測値2.7mm)/中空層1(厚み6mm)/FL6(厚みの実測値5.7mm)/EVA(厚み0.76mm)/FL4(厚みの実測値3.7mm)、総厚22.32mmの構成である。当該構成の合わせ複層ガラスにおいて、中空層1に空気を封入した合わせ複層ガラス、中空層1にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスによる2種類のガラスサッシを作製した。
【0079】
次いで、複層ガラスの各辺の端部から1/4の位置になるように、サッシ枠2にEPDM製のセッティングブロック5を貼着し、前記合わせ複層ガラスをサッシ枠2に取り付けた際、ガラス板G1側と当たるサッシ枠2の全周に、ガラス板G1とサッシ枠2の隙間に発泡ポリエチレン製のバックアップ材6が挟まるように配置した。次いで、ガラス板G2を除く合わせ複層ガラスの端部をサッシ枠2に嵌め込みつつ、45度にカットされたサッシ枠2のコーナー部に図示しないL字型金具を差し込みサッシ枠2にネジ止めし、ガラスサッシとした。その後、サッシ枠2とガラス板G4の間に発泡ポリエチレン製のバックアップ材6を挟み込んだ。次いで、ガラス板G2端面とサッシ枠2の隙間にウレタンゴム製の弾性材3を挿入し、弾性材3が隠れるように、サッシ枠2と同色の硬質塩化ビニールの矩形の棒材を目隠し部4としてガラス板G2の外縁部全周に両面接着テープにて貼着した。
【0080】
図3に示すように、一対の板ガラスG、G´を平行に隔置し中空層1を有し、合わせ複層ガラスをサッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際、合わせ複層ガラスをなす一対の板ガラスG、G´の両方に合わせガラスを用いており、合わせガラスをなす一方の中空層側のガラス板G1が、サッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、合わせガラスをなす外側、言い換えれば、中空層と反対側のガラス板G2は、サッシ枠2の開口部よりも小さく、サッシ枠2のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていない。
【0081】
合わせ複層ガラスのサッシ枠2に嵌め込む部位は、ガラス板G4/樹脂中間層11/ガラス板G3/中空層1/ガラス板G1であり、FL3(厚みの実測値2.7mm)/遮音性中間膜(厚み0.76mm)/FL3(厚みの実測値2.7mm)/中空層1(厚み6mm)/FL6(厚みの実測値5.7mm)の構成で、総厚17.86mmである。尚、サッシ枠の嵌め込み溝に嵌め込む板ガラスG、G´の厚みは、安全性のために、厚みの実測値が4.7mm以上の板ガラスG、G´を用いることが好ましい。尚、当該板ガラスG、G´には合わせガラスを含む。
【0082】
また、合わせ複層ガラスのかかり代20mmに対し、嵌め込み代は15mmであり、サッシ枠2とガラス板G2の端面の間隔は5mmである。
【0083】
尚、略号FLはガラス板原料をスズ浴上に熔融展開して連続製造したフロートガラス板の意であり、略号後の数値は呼び厚さであり、単位はmmである。呼び厚さはJIS R
3202:1996「フロート板ガラス及び磨板ガラス」により、表1に示す許容差となる。
【0084】
【表1】

【0085】
(遮音性能試験)
前記合わせ複層ガラスの遮音性能の評価をするために、JIS A4706:2000「サッシ」に準拠し、音響透過損失の測定を行った。
【0086】
詳しくは、JIS A4706:2000「サッシ」に準拠し、JIS A 1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」による遮音性試験を行い、JIS A 1416:2000に記載の方法で音響透過損失の測定を行った。音響透過損失の測定値が、前述のJIS A4706:2000「サッシ」に記載の判断基準、「a)125Hz〜4000Hzの16点における音響透過損失が、全て該当する遮音等級線を上回ることとする。尚、各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下の場合は、その遮音等級とする。」「b)全周波数帯域において、数1の式によって、音響透過損失を換算し、その換算値(6点)が該当する遮音等級線を上回ることとする。」に対し、遮音等級T-3等級について、a)、b)いずれかに基準を満たした場合、遮音等級T-3等級に合格する。
【0087】
表2が中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスサッシの各周波数における音響透過損失の実測値である。
【0088】
【表2】

【0089】
図6は、中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【0090】
表2の音響透過損失の実測値および図6の遮音性能曲線のグラフに示すように、前記の合わせ複層ガラスは、遮音等級T−3等級について、前記基準a)、b)をともに満たし、ガラスサッシとした際にJIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−3等級に合格した。
【0091】
このようにして、本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造および取り付け方法を用いることで、中空層に空気を封入し、ガラスサッシとした際に遮音等級T−3等級に合格する合わせ複層ガラスが、嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に合わせ複層ガラスを取り付け可能であることを確かめた。
【0092】
表3が中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスサッシの各周波数における音響透過損失の実測値である。
【0093】
【表3】

【0094】
図7は、中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【0095】
表3の音響透過損失の実測値および図7の遮音性能曲線のグラフに示すように、中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスは、遮音等級T−3等級について、前記基準a)、b)をともに満たし、ガラスサッシとした際にJIS A4706:2000「サッシ」に準拠する遮音等級T−4等級に合格した。
【0096】
このようにして、本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造および取り付け方法を用いることで、中空層にヘリウムを封入し、ガラスサッシとした際に遮音等級T−4等級に合格する合わせ複層ガラスが、嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に合わせ複層ガラスを取り付け可能であることを確かめた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造の一例の主要部の拡大断面図である。
【図2】本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造の一例の主要部の拡大断面図である。
【図3】本発明の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造の一例の主要部の拡大断面図である。
【図4】本発明に使用する合わせ複層ガラスの正面図である。
【図5】JIS A4706:2000「サッシ」に記載される遮音等級線のグラフである。
【図6】中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【図7】中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスの遮音性能曲線のグラフである。
【符号の説明】
【0098】
G、G´ 板ガラス
G1、G2、G3、G4 ガラス板
1 中空層
2 サッシ枠
3 弾性体
4 目隠し部
5 セッティングブロック
6 バックアップ材
7 乾燥剤
8 アルミニウム製スペーサー
9 ブチルゴム接着剤
10 凹部
11 透明性樹脂中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の板ガラスを平行に隔置し端部を封止して、一対の板ガラスの間に中空層を設けてなり、少なくとも一対の板ガラスの片側に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスをサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造であって、
合わせガラスをなす中空層側のガラス板がサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれ、
合わせガラスをなす少なくとも1枚の外側のガラス板は、サッシ枠の開口部よりも小さく、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まれていないことを特徴とする合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造。
【請求項2】
一対の板ガラスの両方に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスを使用したことを特徴とする請求項1に記載の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造。
【請求項3】
合わせガラスをなす少なくとも1枚の外側のガラス板端面とサッシ枠の間隔が3mm以上、25mm以下であり、ガラス板端面とサッシ枠の間に弾性体が挟まれてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造。
【請求項4】
合わせガラスをなす少なくとも1枚の外側のガラス板周縁部全周にガラス板端面とサッシ枠の隙間および隙間に挟み込んだ弾性体の目隠し部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造。
【請求項5】
一対の板ガラスを平行に隔置し端部を封止して、一対の板ガラスの間に中空層を設けてなり、少なくとも一対の板ガラスの片側に合わせガラス板を用いてなる合わせ複層ガラス板をサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込む際の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法であって、
合わせガラスをなす中空層側のガラス板をサッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込み、
合わせガラスをなす少なくとも一枚の外側のガラス板は、サッシ枠の開口部よりも小さくし、サッシ枠のガラス嵌め込み溝に嵌め込まないことを特徴とする合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法。
【請求項6】
一対の板ガラスの両方に合わせガラスを用いてなる合わせ複層ガラスを使用したことを特徴とする請求項5に記載の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用い嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に合わせ複層ガラスを取り付けてなり、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−3等級以上に合格することを特徴とするガラスサッシ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用い、嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に、中空層に空気を封入した合わせ複層ガラスを取り付けてなり、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−3等級に合格することを特徴とするガラスサッシ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の合わせ複層ガラスのサッシ枠への取り付け構造を用い、嵌め込み溝の幅が18mm以下であるサッシ枠に、中空層にヘリウムを封入した合わせ複層ガラスを取り付けてなり、JIS A4706:2000に準拠する遮音等級T−4等級に合格することを特徴とするガラスサッシ。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか1項に記載のガラスサッシであって、合わせ複層ガラスに用いる、透明性樹脂中間膜によりガラス板を接着一体化させた合わせガラスの透明性樹脂中間膜に、遮音性中間膜を用いたことを特徴とするガラスサッシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−32851(P2011−32851A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193801(P2009−193801)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】