合成樹脂製多孔板の製造方法
【課題】合成樹脂製の厚肉の板材に多数の通孔を隣接配置した合成樹脂製厚肉多孔板を効率よく製造することができる合成樹脂製多孔板の製造方法を提供する。
【解決手段】固定型、可動型及びストリッパプレートを備え、可動型にはストリッパプレートを貫通するコアが設けられ、固定型にはゲートに連通して凹部が設けられた金型を使用し、型締め時にコアを製品多孔板の板厚寸法より大きくキャビティ内に突出させた状態で溶融樹脂をキャビティ内に流入させ、凹部内からコア同士の間の隙間に溶融樹脂を流入させて冷却硬化した後、型開きしてコアをストリッパプレート内に引き込むことによってコアで形成した有底孔を有する射出成形品を成形し、射出成形品の固定型側を切削して有底孔の底部を開口させて通孔を形成する。
【解決手段】固定型、可動型及びストリッパプレートを備え、可動型にはストリッパプレートを貫通するコアが設けられ、固定型にはゲートに連通して凹部が設けられた金型を使用し、型締め時にコアを製品多孔板の板厚寸法より大きくキャビティ内に突出させた状態で溶融樹脂をキャビティ内に流入させ、凹部内からコア同士の間の隙間に溶融樹脂を流入させて冷却硬化した後、型開きしてコアをストリッパプレート内に引き込むことによってコアで形成した有底孔を有する射出成形品を成形し、射出成形品の固定型側を切削して有底孔の底部を開口させて通孔を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製多孔板の製造方法に関し、特に、水路に設置される除塵機のフィルターパネルのような厚肉の合成樹脂製多孔板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水路内の夾雑物を除去するために各種構造の除塵機が設置されており、その一つとして、水流に対して横断方向に方向付けられた複数のフィルターパネルを無端状に連結して循環させる構造の除塵機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この除塵機のフィルターパネルには、金属製の多孔板(パンチングメタル)や金網を用いることができるが、厚肉のメッシュパネルを使用することによって水路内の微細夾雑物を効率よく、確実に除去することが可能となり、髪の毛や繊維質が絡みにくくなるという利点がある。
【0003】
前記フィルターパネルは、除塵機を設置する水路の条件によって異なるが、一般的には、直径が600mm程度の略三日月型であって、略全面に多数の通水孔、例えば千個以上の通水孔が設けられている。通水孔は、フィルターパネルにおける通水部分の断面積を最大限確保するため、例えば直径10mmの通水孔の場合、一辺の長さが11mmの正三角形の各頂点を中心として隣接するように配置されており、この場合、隣接する通水孔同士間の仕切部の厚さは最小部で1mmとなっている。また、フィルターパネルの板厚は、夾雑物の除去効率向上や耐水圧性、耐久性を考慮して15mm程度となっている。
【特許文献1】特表2003−505241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のフィルターパネルのような厚肉の多孔板を製造する方法としては、例えば板厚が15mmの金属板や合成樹脂板に直径10mmの通孔を所定位置にドリルなどで穿孔する方法が考えられるが、穿孔時の発熱も考慮しなければならないため、千個以上もの通孔を穿孔するためには極めて長時間を要するという問題がある。また、金属の鋳造や合成樹脂の射出成形で製造することも考えられるが、直径が数十mm程度で板厚が5mm程度ならば可能であるものの、前述のように直径が600mm程度の大きさになると、通常の鋳造や射出成形では通孔同士間の仕切部に溶湯や溶融樹脂を十分に流入させることが極めて困難であり、不可能であるといえる。
【0005】
さらに、厚肉のフィルターパネルをステンレス鋼などの金属で製造した場合は、重量が嵩んで取り扱いが困難になり、除塵機各部の強度も高めなければならなくなり、全体的な価格上昇を招くという問題があることから、軽量で安価な合成樹脂製のフィルターパネルが求められている。
【0006】
そこで本発明は、合成樹脂製の厚肉の板材に多数の通孔を隣接配置した合成樹脂製厚肉多孔板を効率よく製造することができる合成樹脂製多孔板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の合成樹脂製多孔板の製造方法は、多数の通孔が隣接して配置され、板厚が前記通孔の直径よりも大きく、隣接する通孔同士間の仕切部の厚さが前記通孔の直径よりも小さく設定された合成樹脂製多孔板を製造する方法であって、多孔板成形用のキャビティを形成する固定型、可動型及びストリッパプレートを備え、前記可動型には前記ストリッパプレートを貫通してキャビティ内に出没可能な通孔成形用の多数のコアが設けられ、前記固定型には製品多孔板の板厚より深い寸法を有する凹部がゲートに連通して設けられた射出成形型を使用し、型締め時に前記コアを製品多孔板の板厚寸法より大きくキャビティ内に突出させた状態とし、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を前記凹部を含むキャビティ内に流入させて充満させる第1工程と、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を更に前記凹部内に流入させて凹部内から前記コア同士の間の隙間に溶融樹脂を流入させて充満させる第2工程と、溶融樹脂を冷却硬化させた後に型開きするとともに、前記コアを前記ストリッパプレート内に引き込む第3工程とによって通孔形成部の板厚が製品多孔板の板厚より厚く、製品多孔板の通孔部分に前記コアによって形成された有底孔を有する射出成形品を成形した後、該射出成形品の固定型側を切削することにより、板厚を製品多孔板に設定された厚さとし、同時に前記有底孔の底部を開口させて通孔を形成することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の合成樹脂製多孔板の製造方法は、前記凹部が、前記仕切部を形成する位置に沿って設けられた凹溝であって、該凹溝の開口幅が前記仕切部の厚さより幅広に形成されていること、さらに、前記合成樹脂製多孔板が水路を流れる夾雑物を除去するための除塵機に用いられるフィルターパネルであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成樹脂製多孔板の製造方法によれば、除塵機に用いられるフィルターパネルのような厚肉の合成樹脂製多孔板を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の製造方法で製造した合成樹脂製多孔板の一例を示す斜視図である。この合成樹脂製多孔板11は、基板12の内側部分に多数の通孔13を隣接配置したものであって、基板12の板厚Aは通孔13の直径Bよりも大きく、隣接する通孔13同士間の仕切部14の厚さCは前記直径Bよりも小さく設定されている。例えば、直径Bに対して、板厚Aは1.2〜2倍程度、厚さCは0.1〜0.3倍程度に設定されている。
【0011】
以下、図2乃至図11を参照して前記合成樹脂製多孔板11を製造する手順を説明する。まず、合成樹脂製多孔板11は、図2乃至図8の断面図に示す手順で熱可塑性合成樹脂を射出成形して図9乃至図11に示す射出成形体21を製造する。使用する射出成形機は、一般の射出成形機を用いることができ、射出ユニットに接続される固定型31と、該固定型31に対して離接可能に設けられた可動型32と、固定型31と可動型32との間に配置されるストリッパプレート33とを備えており、可動型32には、ストリッパプレート33に設けられた貫通孔34を貫通して固定型31の方向に突出可能な円柱状のコア35が設けられている。
【0012】
貫通孔34及びコア35は、製品となる合成樹脂製多孔板11に形成される通孔13の直径と同一の直径を有するもので、各通孔13の位置に対応する位置にそれぞれ設けられている。また、固定型31には、合成樹脂製多孔板11の基板12の前記板厚Aよりも深い寸法を有する凹部36が設けられ、この凹部36の中心にゲート37が設けられている。なお、凹部36は、基板12の全体と同じ大きさとすることもできるが、通孔13を形成するための通孔形成部だけで十分であり、特に、開口幅を仕切部14の厚さCより幅広に形成した凹溝を仕切部14を形成する位置に沿った状態で設けておくことが好ましい。また、コア35の先端部には適当な抜き勾配を設けておく。
【0013】
図2に示すように、型締めした状態では、前記コア35が基板12の板厚Aより大きくキャビティ38内に突出した状態となり、コア35の群に対向して凹部36が位置した状態となる。この状態で図示しない射出ユニットからランナー39に溶融状態の熱可塑性樹脂(溶融樹脂P)を射出すると、図3に示すように、ランナー39からゲート37を通って溶融樹脂Pが凹部36を含むキャビティ38内に流入する。この最初の溶融樹脂Pの流れは、コア35同士の間の隙間40の幅が狭く、基板12の外側を成形する部分に比べて流動抵抗が大きいため、図4に拡大して示すように、隙間40内にはほとんど流入せず、コア群に対向した凹部36を含むキャビティ38の全体に溶融樹脂Pが充満した状態となる(第1工程)。
【0014】
この状態で射出ユニットから溶融樹脂Pを更に射出すると、図5に示すように、この射出圧力によって凹部36内の溶融樹脂Pがコア35同士の間の隙間40内に流入し、すべての隙間40内が溶融樹脂Pに満たされた状態となる。このように、コア群に対向した凹部36内に溶融樹脂Pを満たした状態にしてから、コア35の軸線方向に向けて隙間40内に溶融樹脂Pを流入させることにより、各隙間40に平均的に満遍なく溶融樹脂Pを流入させることができる(第2工程)。
【0015】
溶融樹脂Pの射出が終了した後、溶融樹脂Pを冷却して硬化させてから金型を開いて射出成形体21を取り出す(第3工程)。すなわち、図6に示すように、固定型31を固定側取付板41及びランナーストリッパプレート42から離し、さらに、図7に示すように、固定型31からストリッパプレート33及び可動型32を離した後、図8に示すように、ストリッパプレート33と可動型32とを離すことにより、可動型32に一体的に設けたコア35の先端部をストリッパプレート33の貫通孔34内に引き込む。これにより、射出成形体21を金型から取り出すことができる。
【0016】
図9乃至図11に示す射出成形体21は、固定型31に設けた前記凹部36を前述のような凹溝として射出成形を行ったもので、図9は平面図、図10は図9のX−X断面図、図11は斜視図である。この射出成形体21は、外側の基板部分22の板厚が製品の合成樹脂製多孔板11における基板12の板厚Aより僅かに、例えば1〜2mm程度厚く形成され、内側部分には、前記コア35によって形成された有底孔23が合成樹脂製多孔板11における通孔13に対応して形成されている。
【0017】
また、隣接する有底孔23同士の間には、合成樹脂製多孔板11における前記仕切部14が形成され、図10において上方となる各仕切部14の固定型31側の面には、開口幅を仕切部14の厚さCより幅広に形成した凹溝からなる前記凹部36により成形された凸状部24が仕切部14の一端に沿った状態で形成され、各凸状部24間には有底孔23の底部外面に向かう凹状部25が形成されている。
【0018】
最後に、この射出成形体21は、図10に示す切断線26から凸状部24側の面を切削することにより、外側の基板部分22の板厚を製品である合成樹脂製多孔板11における基板12に設定された板厚Aとし、同時に、各有底孔23の底部を切除して開口させ、合成樹脂製多孔板11における通孔13とする。この切削には、エンドミルやスライサーなどの一般の機械加工機を用いることができ、必要に応じて面取り加工などを行うことにより、図1に示す合成樹脂製多孔板11を得ることができる。
【0019】
このように、隣接する通孔13同士間の仕切部14を形成するために、通孔13に対応した多数のコア35をストリッパプレート33から突出させるとともに、コア35の群に対向させて溶融樹脂をガイドするための凹部36を設け、この凹部36内にゲート37を設けたことにより、ゲート37から凹部36内に直接的に溶融樹脂を流入させて充満させ、その後に凹部36内から各コア35間の隙間40に、コア35の軸方向に樹脂を流入させることができ、これによって各隙間40に確実に溶融樹脂を流入させることができる。このとき、凹部36を凹溝状に形成することにより、溶融樹脂の流れを円滑にできるとともに、凹状部25に相当する樹脂量を削減することができる。
【0020】
なお、通孔13の形成範囲に比べて基板12の面積が大きい場合には、射出成形体21における基板部分22の板厚を基板12の板厚Aと同一に成形してこの部分の切削を省略するようにしてもよい。
【0021】
このような方法で合成樹脂製多孔板を製造することにより、前述の除塵機のフィルターパネルのように、15mm程度の板厚を有する厚肉の基板に直径10mm程度の通孔を千個以上隙間無く並べたような形状の合成樹脂製厚肉多孔板を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の製造方法で製造した合成樹脂製多孔板の一例を示す斜視図である。
【図2】射出成形機の金型を型締めした状態を示す断面図である。
【図3】第1工程での溶融樹脂の流入状態を示す断面図である。
【図4】第1工程における要部の拡大断面図である。
【図5】第2工程における要部の拡大断面図である。
【図6】固定側取付板及びランナーストリッパプレートから固定型を離した状態を示す断面図である。
【図7】固定型からストリッパプレート及び可動型を離した状態を示す断面図である。
【図8】ストリッパプレートと可動型とを離してコアを貫通孔内に引き込んだ状態を示す断面図である。
【図9】射出成形体の平面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】射出成形体の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
11…合成樹脂製多孔板、12…基板、13…通孔、14…仕切部、21…射出成形体、22…基板部分、23…有底孔、24…凸状部、25…凹状部、26…切断線、31…固定型、32…可動型、33…ストリッパプレート、34…貫通孔、35…コア、36…凹部、37…ゲート、38…キャビティ、39…ランナー、40…隙間、41…固定側取付板、42…ランナーストリッパプレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製多孔板の製造方法に関し、特に、水路に設置される除塵機のフィルターパネルのような厚肉の合成樹脂製多孔板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水路内の夾雑物を除去するために各種構造の除塵機が設置されており、その一つとして、水流に対して横断方向に方向付けられた複数のフィルターパネルを無端状に連結して循環させる構造の除塵機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この除塵機のフィルターパネルには、金属製の多孔板(パンチングメタル)や金網を用いることができるが、厚肉のメッシュパネルを使用することによって水路内の微細夾雑物を効率よく、確実に除去することが可能となり、髪の毛や繊維質が絡みにくくなるという利点がある。
【0003】
前記フィルターパネルは、除塵機を設置する水路の条件によって異なるが、一般的には、直径が600mm程度の略三日月型であって、略全面に多数の通水孔、例えば千個以上の通水孔が設けられている。通水孔は、フィルターパネルにおける通水部分の断面積を最大限確保するため、例えば直径10mmの通水孔の場合、一辺の長さが11mmの正三角形の各頂点を中心として隣接するように配置されており、この場合、隣接する通水孔同士間の仕切部の厚さは最小部で1mmとなっている。また、フィルターパネルの板厚は、夾雑物の除去効率向上や耐水圧性、耐久性を考慮して15mm程度となっている。
【特許文献1】特表2003−505241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のフィルターパネルのような厚肉の多孔板を製造する方法としては、例えば板厚が15mmの金属板や合成樹脂板に直径10mmの通孔を所定位置にドリルなどで穿孔する方法が考えられるが、穿孔時の発熱も考慮しなければならないため、千個以上もの通孔を穿孔するためには極めて長時間を要するという問題がある。また、金属の鋳造や合成樹脂の射出成形で製造することも考えられるが、直径が数十mm程度で板厚が5mm程度ならば可能であるものの、前述のように直径が600mm程度の大きさになると、通常の鋳造や射出成形では通孔同士間の仕切部に溶湯や溶融樹脂を十分に流入させることが極めて困難であり、不可能であるといえる。
【0005】
さらに、厚肉のフィルターパネルをステンレス鋼などの金属で製造した場合は、重量が嵩んで取り扱いが困難になり、除塵機各部の強度も高めなければならなくなり、全体的な価格上昇を招くという問題があることから、軽量で安価な合成樹脂製のフィルターパネルが求められている。
【0006】
そこで本発明は、合成樹脂製の厚肉の板材に多数の通孔を隣接配置した合成樹脂製厚肉多孔板を効率よく製造することができる合成樹脂製多孔板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の合成樹脂製多孔板の製造方法は、多数の通孔が隣接して配置され、板厚が前記通孔の直径よりも大きく、隣接する通孔同士間の仕切部の厚さが前記通孔の直径よりも小さく設定された合成樹脂製多孔板を製造する方法であって、多孔板成形用のキャビティを形成する固定型、可動型及びストリッパプレートを備え、前記可動型には前記ストリッパプレートを貫通してキャビティ内に出没可能な通孔成形用の多数のコアが設けられ、前記固定型には製品多孔板の板厚より深い寸法を有する凹部がゲートに連通して設けられた射出成形型を使用し、型締め時に前記コアを製品多孔板の板厚寸法より大きくキャビティ内に突出させた状態とし、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を前記凹部を含むキャビティ内に流入させて充満させる第1工程と、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を更に前記凹部内に流入させて凹部内から前記コア同士の間の隙間に溶融樹脂を流入させて充満させる第2工程と、溶融樹脂を冷却硬化させた後に型開きするとともに、前記コアを前記ストリッパプレート内に引き込む第3工程とによって通孔形成部の板厚が製品多孔板の板厚より厚く、製品多孔板の通孔部分に前記コアによって形成された有底孔を有する射出成形品を成形した後、該射出成形品の固定型側を切削することにより、板厚を製品多孔板に設定された厚さとし、同時に前記有底孔の底部を開口させて通孔を形成することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の合成樹脂製多孔板の製造方法は、前記凹部が、前記仕切部を形成する位置に沿って設けられた凹溝であって、該凹溝の開口幅が前記仕切部の厚さより幅広に形成されていること、さらに、前記合成樹脂製多孔板が水路を流れる夾雑物を除去するための除塵機に用いられるフィルターパネルであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成樹脂製多孔板の製造方法によれば、除塵機に用いられるフィルターパネルのような厚肉の合成樹脂製多孔板を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の製造方法で製造した合成樹脂製多孔板の一例を示す斜視図である。この合成樹脂製多孔板11は、基板12の内側部分に多数の通孔13を隣接配置したものであって、基板12の板厚Aは通孔13の直径Bよりも大きく、隣接する通孔13同士間の仕切部14の厚さCは前記直径Bよりも小さく設定されている。例えば、直径Bに対して、板厚Aは1.2〜2倍程度、厚さCは0.1〜0.3倍程度に設定されている。
【0011】
以下、図2乃至図11を参照して前記合成樹脂製多孔板11を製造する手順を説明する。まず、合成樹脂製多孔板11は、図2乃至図8の断面図に示す手順で熱可塑性合成樹脂を射出成形して図9乃至図11に示す射出成形体21を製造する。使用する射出成形機は、一般の射出成形機を用いることができ、射出ユニットに接続される固定型31と、該固定型31に対して離接可能に設けられた可動型32と、固定型31と可動型32との間に配置されるストリッパプレート33とを備えており、可動型32には、ストリッパプレート33に設けられた貫通孔34を貫通して固定型31の方向に突出可能な円柱状のコア35が設けられている。
【0012】
貫通孔34及びコア35は、製品となる合成樹脂製多孔板11に形成される通孔13の直径と同一の直径を有するもので、各通孔13の位置に対応する位置にそれぞれ設けられている。また、固定型31には、合成樹脂製多孔板11の基板12の前記板厚Aよりも深い寸法を有する凹部36が設けられ、この凹部36の中心にゲート37が設けられている。なお、凹部36は、基板12の全体と同じ大きさとすることもできるが、通孔13を形成するための通孔形成部だけで十分であり、特に、開口幅を仕切部14の厚さCより幅広に形成した凹溝を仕切部14を形成する位置に沿った状態で設けておくことが好ましい。また、コア35の先端部には適当な抜き勾配を設けておく。
【0013】
図2に示すように、型締めした状態では、前記コア35が基板12の板厚Aより大きくキャビティ38内に突出した状態となり、コア35の群に対向して凹部36が位置した状態となる。この状態で図示しない射出ユニットからランナー39に溶融状態の熱可塑性樹脂(溶融樹脂P)を射出すると、図3に示すように、ランナー39からゲート37を通って溶融樹脂Pが凹部36を含むキャビティ38内に流入する。この最初の溶融樹脂Pの流れは、コア35同士の間の隙間40の幅が狭く、基板12の外側を成形する部分に比べて流動抵抗が大きいため、図4に拡大して示すように、隙間40内にはほとんど流入せず、コア群に対向した凹部36を含むキャビティ38の全体に溶融樹脂Pが充満した状態となる(第1工程)。
【0014】
この状態で射出ユニットから溶融樹脂Pを更に射出すると、図5に示すように、この射出圧力によって凹部36内の溶融樹脂Pがコア35同士の間の隙間40内に流入し、すべての隙間40内が溶融樹脂Pに満たされた状態となる。このように、コア群に対向した凹部36内に溶融樹脂Pを満たした状態にしてから、コア35の軸線方向に向けて隙間40内に溶融樹脂Pを流入させることにより、各隙間40に平均的に満遍なく溶融樹脂Pを流入させることができる(第2工程)。
【0015】
溶融樹脂Pの射出が終了した後、溶融樹脂Pを冷却して硬化させてから金型を開いて射出成形体21を取り出す(第3工程)。すなわち、図6に示すように、固定型31を固定側取付板41及びランナーストリッパプレート42から離し、さらに、図7に示すように、固定型31からストリッパプレート33及び可動型32を離した後、図8に示すように、ストリッパプレート33と可動型32とを離すことにより、可動型32に一体的に設けたコア35の先端部をストリッパプレート33の貫通孔34内に引き込む。これにより、射出成形体21を金型から取り出すことができる。
【0016】
図9乃至図11に示す射出成形体21は、固定型31に設けた前記凹部36を前述のような凹溝として射出成形を行ったもので、図9は平面図、図10は図9のX−X断面図、図11は斜視図である。この射出成形体21は、外側の基板部分22の板厚が製品の合成樹脂製多孔板11における基板12の板厚Aより僅かに、例えば1〜2mm程度厚く形成され、内側部分には、前記コア35によって形成された有底孔23が合成樹脂製多孔板11における通孔13に対応して形成されている。
【0017】
また、隣接する有底孔23同士の間には、合成樹脂製多孔板11における前記仕切部14が形成され、図10において上方となる各仕切部14の固定型31側の面には、開口幅を仕切部14の厚さCより幅広に形成した凹溝からなる前記凹部36により成形された凸状部24が仕切部14の一端に沿った状態で形成され、各凸状部24間には有底孔23の底部外面に向かう凹状部25が形成されている。
【0018】
最後に、この射出成形体21は、図10に示す切断線26から凸状部24側の面を切削することにより、外側の基板部分22の板厚を製品である合成樹脂製多孔板11における基板12に設定された板厚Aとし、同時に、各有底孔23の底部を切除して開口させ、合成樹脂製多孔板11における通孔13とする。この切削には、エンドミルやスライサーなどの一般の機械加工機を用いることができ、必要に応じて面取り加工などを行うことにより、図1に示す合成樹脂製多孔板11を得ることができる。
【0019】
このように、隣接する通孔13同士間の仕切部14を形成するために、通孔13に対応した多数のコア35をストリッパプレート33から突出させるとともに、コア35の群に対向させて溶融樹脂をガイドするための凹部36を設け、この凹部36内にゲート37を設けたことにより、ゲート37から凹部36内に直接的に溶融樹脂を流入させて充満させ、その後に凹部36内から各コア35間の隙間40に、コア35の軸方向に樹脂を流入させることができ、これによって各隙間40に確実に溶融樹脂を流入させることができる。このとき、凹部36を凹溝状に形成することにより、溶融樹脂の流れを円滑にできるとともに、凹状部25に相当する樹脂量を削減することができる。
【0020】
なお、通孔13の形成範囲に比べて基板12の面積が大きい場合には、射出成形体21における基板部分22の板厚を基板12の板厚Aと同一に成形してこの部分の切削を省略するようにしてもよい。
【0021】
このような方法で合成樹脂製多孔板を製造することにより、前述の除塵機のフィルターパネルのように、15mm程度の板厚を有する厚肉の基板に直径10mm程度の通孔を千個以上隙間無く並べたような形状の合成樹脂製厚肉多孔板を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の製造方法で製造した合成樹脂製多孔板の一例を示す斜視図である。
【図2】射出成形機の金型を型締めした状態を示す断面図である。
【図3】第1工程での溶融樹脂の流入状態を示す断面図である。
【図4】第1工程における要部の拡大断面図である。
【図5】第2工程における要部の拡大断面図である。
【図6】固定側取付板及びランナーストリッパプレートから固定型を離した状態を示す断面図である。
【図7】固定型からストリッパプレート及び可動型を離した状態を示す断面図である。
【図8】ストリッパプレートと可動型とを離してコアを貫通孔内に引き込んだ状態を示す断面図である。
【図9】射出成形体の平面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】射出成形体の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
11…合成樹脂製多孔板、12…基板、13…通孔、14…仕切部、21…射出成形体、22…基板部分、23…有底孔、24…凸状部、25…凹状部、26…切断線、31…固定型、32…可動型、33…ストリッパプレート、34…貫通孔、35…コア、36…凹部、37…ゲート、38…キャビティ、39…ランナー、40…隙間、41…固定側取付板、42…ランナーストリッパプレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の通孔が隣接して配置され、板厚が前記通孔の直径よりも大きく、隣接する通孔同士間の仕切部の厚さが前記通孔の直径よりも小さく設定された合成樹脂製多孔板を製造する方法であって、多孔板成形用のキャビティを形成する固定型、可動型及びストリッパプレートを備え、該可動型には前記ストリッパプレートを貫通してキャビティ内に出没可能な通孔成形用の多数のコアが設けられ、前記固定型には製品多孔板の板厚より深い寸法を有する凹部がゲートに連通して設けられた射出成形型を使用し、型締め時に前記コアを製品多孔板の板厚寸法より大きくキャビティ内に突出させた状態とし、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を前記凹部を含むキャビティ内に流入させて充満させる第1工程と、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を更に前記凹部内に流入させて凹部内から前記コア同士の間の隙間に溶融樹脂を流入させて充満させる第2工程と、溶融樹脂を冷却硬化させた後に型開きするとともに、前記コアを前記ストリッパプレート内に引き込む第3工程とによって通孔形成部の板厚が製品多孔板の板厚より厚く、製品多孔板の通孔部分に前記コアによって形成された有底孔を有する射出成形品を成形した後、該射出成形品の固定型側を切削することにより、板厚を製品多孔板に設定された厚さとし、同時に前記有底孔の底部を開口させて通孔を形成することを特徴とする合成樹脂製多孔板の製造方法。
【請求項2】
前記凹部は、前記仕切部を形成する位置に沿って設けられた凹溝であって、該凹溝の開口幅が前記仕切部の厚さより幅広に形成されていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製多孔板の製造方法。
【請求項3】
前記合成樹脂製多孔板が水路を流れる夾雑物を除去するための除塵機に用いられるフィルターパネルであることを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂製多孔板の製造方法。
【請求項1】
多数の通孔が隣接して配置され、板厚が前記通孔の直径よりも大きく、隣接する通孔同士間の仕切部の厚さが前記通孔の直径よりも小さく設定された合成樹脂製多孔板を製造する方法であって、多孔板成形用のキャビティを形成する固定型、可動型及びストリッパプレートを備え、該可動型には前記ストリッパプレートを貫通してキャビティ内に出没可能な通孔成形用の多数のコアが設けられ、前記固定型には製品多孔板の板厚より深い寸法を有する凹部がゲートに連通して設けられた射出成形型を使用し、型締め時に前記コアを製品多孔板の板厚寸法より大きくキャビティ内に突出させた状態とし、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を前記凹部を含むキャビティ内に流入させて充満させる第1工程と、前記ゲートから溶融状態の熱可塑性樹脂を更に前記凹部内に流入させて凹部内から前記コア同士の間の隙間に溶融樹脂を流入させて充満させる第2工程と、溶融樹脂を冷却硬化させた後に型開きするとともに、前記コアを前記ストリッパプレート内に引き込む第3工程とによって通孔形成部の板厚が製品多孔板の板厚より厚く、製品多孔板の通孔部分に前記コアによって形成された有底孔を有する射出成形品を成形した後、該射出成形品の固定型側を切削することにより、板厚を製品多孔板に設定された厚さとし、同時に前記有底孔の底部を開口させて通孔を形成することを特徴とする合成樹脂製多孔板の製造方法。
【請求項2】
前記凹部は、前記仕切部を形成する位置に沿って設けられた凹溝であって、該凹溝の開口幅が前記仕切部の厚さより幅広に形成されていることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製多孔板の製造方法。
【請求項3】
前記合成樹脂製多孔板が水路を流れる夾雑物を除去するための除塵機に用いられるフィルターパネルであることを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂製多孔板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−72935(P2009−72935A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241733(P2007−241733)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【出願人】(595142060)株式会社日ビ (2)
【出願人】(507313135)都工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【出願人】(595142060)株式会社日ビ (2)
【出願人】(507313135)都工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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