説明

合成樹脂製成形品

【課題】薄い板状に形成した合成樹脂製の成形品の強度を高め、破損を抑制することを目的とする。
【解決手段】環状の薄い板状の金属製又はセラミックス製の補強部材42,43が、環状の薄い板状の合成樹脂製の本体部21,31の全周に亘って、本体部21,31に完全に被覆され、埋設され、補強部材42,43の本体部21,31内での位置を決定するための位置決め部材5が、補強部材42,43と結合し、本体部21,31内に埋設されていることを特徴とする合成樹脂製の成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い板状の合成樹脂の成形品に関し、特に板状グリップフレームの構成部品のアウターフレームやインナーフレーム等の薄い板状の合成樹脂製の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からICチップの運搬、保管、製造工程に於いて、シリコンウエハやICチップを保持するために、粘着性フィルムとグリップリングを用いている(例えば、特許文献1参照。)。この粘着性フィルムは、エラストマーや合成樹脂製のフィルムで、片面に粘着層を有し、粘着層上にシリコンウエハやICチップを貼着し、保持することが出来るものである。
【0003】
又、グリップリングはアウターリング及びインナーリングで構成される二重リング構造であり、アウターリング及びインナーリングは夫々縦断面形状が方形のリング状の部材であり、アウターリングの内径とインナーリングの外径は略等しく、インナーリングの外側面をアウターリングの内側面に対向するように、インナーリングをアウターリングに嵌合させ、インナーリングとアウターリング間に伸縮性のあるフィルム等を挟み込むことにより、フィルム等を張った状態で保持することが出来るものである。
【0004】
このように、グリップリングで粘着性フィルムを張った状態で保持させ、粘着性フィルム上にシリコンウエハやICチップを貼着し、シリコンウエハやICチップを保持させることが出来る。
【0005】
このようなアウターリング及びインナーリングは、合成樹脂を用いて射出成形等により形成され、通常、強度を高めて破損を防止するために、ガラス繊維等の充填材を用いて成形されていると共に、上面と下面間及び内側面と外側面間は一定以上の厚み、通常5〜10mm程度の厚みを有していた。
【0006】
又、シリコンウエハやICチップを保持するために、ステンレス製の1.5mm〜3mm程度の薄板状の枠体に粘着性フィルムを接着剤を用いて張った状態で保持させることも行われていた。そして、このステンレス製の枠体は、粘着性フィルム上にシリコンウエハやICチップを貼着して、上下の枠体が互いに干渉しないで複数段積み重ねることが出来る棚に挿入され、シリコンウエハ等の運搬、保存、製造に用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−34435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述のステンレス製の薄板状の枠体は、薄くても、所定の強度及び耐熱性を有し、省スペース化にも資するので、シリコンウエハやICチップの運搬、保存に有用であるが、一方で、耐蝕性及び耐酸性が低いという問題点、重いという問題点、価格が高いという問題点、又、接着剤を用いて枠体に粘着性フィルムを張るので、シリコンウエハやICチップの製造工程、加工工程に於いて、例えば電極のハンダ付け工程に於いて、高温にさらされた場合には、枠体は溶けないが、接着剤が溶け、粘着性フィルムを枠体に固定しておくことが出来ず、シリコンウエハやICチップを保持することが出来なくなってしまうという問題点があった。又、ステンレスで薄板状のアウターフレーム及びインナーフレームを形成して、グリップフレームを構成することは、合成樹脂のようには弾力性、可撓性を有していないので、アウターフレーム及びインナーフレームの嵌合、分解が困難であり、実際の使用に堪えうるものではなかった。
【0009】
又、合成樹脂製のグリップリング、即ちアウターリング及びインナーリング等の成形品は、ガラス繊維等の充填材を用いて成形した場合であっても、薄板状に、アウターフレーム及びインナーフレームとして形成した場合には、強度が低下し、破損しやすいという問題点があった。その一方で、強度を高めるために厚さを厚くすると、従来のステンレス製の薄板状の枠体に用いられていた既存の棚に収めることが出来ず、設備を作り直す必要があり高コストとなってしまう。又、より広い収納スペースが必要になり、保管、運搬効率が低下するという問題点があった。
【0010】
そして、これらの問題点を解決するためには、合成樹脂により、薄板状に、アウターフレーム及びインナーフレームを形成すること、且つ、所定の強度を備えることが要求されることになる。
【0011】
そこで、本発明は厚さを薄く、薄い板状に形成した合成樹脂製の成形品の強度を高め、折れ等に破損、曲がりを防止することを目的とする。特に、薄板状の合成樹脂製のアウターフレーム及びインナーフレーム、即ちグリップフレームの強度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段としての本発明は、環状の金属製又はセラミックス製の補強部材が、環状の板状の合成樹脂製の本体部の全周に亘って、前記本体部に完全に被覆され、埋設されていることを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0013】
又、上記成形品において、前記補強部材の前記本体部内での位置を決定するための位置決め部材が、前記補強部材と結合し、前記本体部に埋設されていることを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0014】
又、上記成形品において、前記位置決め部材は、前記本体部の厚さと同一の高さに形成され、前記補強部材の両面側に位置し、前記本体部の表面に前記位置決め部材の一部が露出していることを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0015】
又、上記成形品において、前記位置決め部材には、成形時に金型に形成された位置決めピンを挿入するためのピン孔が形成されていることを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0016】
又、上記成形品において、前記位置決め部材は、前記本体部を形成する合成樹脂と同一の合成樹脂で形成されていることを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0017】
又、上記成形品において、前記補強部材に形成した挿入部に、前記位置決め部材を挿入すると共に、前記位置決め部材に形成された係合溝に前記補強部材を挿入、係合させて、前記補強部材と前記位置決め部材を結合させたことを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0018】
又、上記成形品において、前記補強部材は、板状又は線状の部材で構成したことを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0019】
又、上記合成樹脂製の成形品は、グリップフレームを構成するインナーフレーム又はアウターフレームであることを特徴とする合成樹脂製の成形品である。
【0020】
又、インナーフレーム又は/及びアウターフレームが、上記合成樹脂製の成形品であること特徴とするグリップフレームである。
【発明の効果】
【0021】
以上のような本発明によれば、厚さを薄く、薄い板状に形成した合成樹脂製の成形品の強度を高め、折れ等に破損、曲がりを防止することが出来た。特に、薄い板状の合成樹脂製のアウターフレーム及びインナーフレーム、即ちグリップフレームの強度を高めることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明グリップフレームの一実施例の平面図
【図2】本発明グリップフレームの一実施例の側面図
【図3】図1のA−A断面図
【図4】本発明グリップフレームの一実施例の分解斜視図
【図5】本発明グリップフレームの一実施例の斜視図
【図6】本発明アウターフレームの製造工程の一実施例概略図
【図7】本発明アウターフレームの製造工程の第二実施例概略図
【図8】本発明グリップフレームの一実施例の使用状態の斜視図
【図9】図8のB−B断面図
【図10】本発明グリップフレームの一実施例の棚への収納状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図を参照して説明する。本発明は、環状の薄い板状の合成樹脂製の本体部の全周に亘って、環状の金属製又はセラミックス製の補強部材が埋設されている合成樹脂製の成形品である。
【0024】
本発明に用いる合成樹脂は、特に限定されないが、耐熱性が要求される成形品の場合には、その要求される耐熱温度を備える合成樹脂を使用すればよく、具体例としては、耐熱性を要求しない成形品の場合には、耐熱性が低いが、曲げ強度が高いPPS等を使用すればよく、耐熱性が要求される成形品の場合には、曲げ強度は低いが、耐熱性が高いLCP等を使用すればよい。
【0025】
合成樹脂製の成形品として、薄板状のグリップフレーム1を構成する合成樹脂製の薄い板状のインナーフレーム2及び薄い板状のアウターフレーム3を具体例として説明する。図1はグリップフレーム1の平面図である。インナーフレーム2は、合成樹脂製の本体部21の全周に亘って、環状の薄い板状の金属製の補強部材42が埋設されている。言い換えれば、インナーフレーム2は、金属性の補強部材42を合成樹脂で完全に被覆して構成されている。又、インナーフレーム2は、その成形時に、本体部21内における補強部材42の位置決めを行なう位置決め部材5を備えている。このように、インナーフレーム2は、補強部材42以外の合成樹脂部分の本体部21と、補強部材42と、位置決め部材5とを備えて構成されている。
【0026】
アウターフレーム3は、インナーフレーム2と同様に、合成樹脂製の本体部31の全周に亘って、環状の薄い板状の金属製の補強部材43が埋設されている。言い換えれば、アウターフレーム3は、金属性の補強部材43を合成樹脂で完全に被覆して構成されている。又、アウターフレーム3は、その成形時に、本体部31内における補強部材43の位置決めを行なう位置決め部材5を備えている。このように、アウターフレーム3は、補強部材43以外の合成樹脂部分の本体部31と、補強部材43と、位置決め部材5とを備えて構成されている。
【0027】
このように、インナーフレーム2及びアウターフレーム3は、合成樹脂製の本体部21,31を備えた薄板状の円環状の成形品であり、夫々、内側が円形状にくりぬかれた、所定幅を備えた環状体である。そして、図1や図5によく示すように、アウターフレーム3の内径とインナーフレーム2の外径が略等しく、アウターフレーム3の内側にインナーフレーム4を嵌合させて一体的に固定され、グリップフレーム1が構成される。尚、インナーフレーム2及びアウターフレーム3は、環状であり、互いに嵌合可能であれば、アウターフレーム3の内側形状及びインナーフレーム2の外側形状は平面視で円形に限定されない。
【0028】
薄い板状のインナーフレーム2の厚さH2及び薄い板状のアウターフレーム3の厚さH3、即ち本体部21,31の厚さは、5mm未満であり、保管、運搬効率の向上のため、好ましくは1.5〜3mm、より好ましくは1.5〜2.6mm、更に好ましくは2.0mmである。インナーフレーム2の厚さH2とアウターフレーム3の厚さH3は同一とするが、異ならせてもよい。
【0029】
グリップフレーム1は、シリコンウエハやICチップの製造工程、加工工程に於いて、例えば電極のハンダ付け工程に於いて、高温にさらされるので、インナーフレーム2及びアウターフレーム3の本体部21,31は、150℃以上、好ましくは200℃以上の耐熱性を有する合成樹脂で形成し、具体的にはLCP等を使用することが出来る。
【0030】
グリップフレーム1の使用態様の一具体例としては、図8及び図9によく示すように、インナーフレーム2をアウターフレーム3に嵌合させ、インナーフレーム2とアウターフレーム3間に伸縮性を有する粘着フィルム91を挟み込むことにより、粘着フィルム91を張った状態で保持し、粘着フィルム91上に貼着したシリコンウエハ92等を保持するものである。
【0031】
アウターフレーム3は、外側の形状を平面視で円形状としてもよいが、円形の外側一部を切欠いて直線状の端部39を形成し、角部が略円弧状の正方形状に形成することが好ましい。通常グリップフレーム1は、図10に示すように、グリップフレーム1を上下方向に互いに干渉することなく積層するための平面視で略正方形の棚8であって、外側の3辺又は対向する2辺から内方へ支持片81が突出する棚8に水平方向から挿入し、支持片81上に載置されて、保存、運搬等されるので、このような構成とすることで、アウターフレーム3の棚8の支持片上81に載置される部分が大きくなり、より安定的に載置出来るようになるからである。
【0032】
又、図1のA−A断面図である図3に示すように、アウターフレーム3の内側面33に凹部37を設け、インナーフレーム2の外側面24には、アウターフレーム3の凹部37と係合する凸部27を形成して、アウターフレーム3とインナーフレーム2の結合強度を高めることが好ましい。凸部27及び凹部37は、夫々アウターフレーム3の内側面33及びインナーフレーム2の外側面24の全周に亘って形成してもよいが、一部にのみ形成してもよい。もちろん、アウターフレーム3の内側面33に凸部を形成し、インナーフレーム2の外側面24に凹部を設けることとしてもよい。
【0033】
補強部材42,43は、薄い板状の金属製で、夫々成形品、即ちインナーフレーム2又はアウターフレーム3の形状に対応させて、本体部21,31に完全に被覆され、埋設されるように、補強部材42の横幅W42は、インナーフレーム2の横幅W2以下に、補強部材42の厚さH42は、インナーフレーム2の厚さH2以下に、補強部材43の横幅W43は、アウターフレーム3の横幅W3以下に、補強部材43の厚さH43は、アウターフレーム3の厚さH3以下に形成している。又、補強部材42,43は、インナーフレーム2及びアウターフレーム3の確実な補強のため、夫々の横幅W42、横幅W43を、インナーフレーム2及びアウターフレーム3の夫々の横幅W2、W3に出来るだけ近似した大きさとすることが好ましく、又、インナーフレーム2又はアウターフレーム3の形状と平面視で相似形に形成することが好ましい。
【0034】
又、補強部材42,43は、夫々インナーフレーム2又はアウターフレーム3の本体部21,31の全周に亘って環状に埋設するが、薄板状に限定されず、線状の部材で構成してもよく、線状の部材としては、長手方向に直交する断面形状は特に限定されず、円形、三角形、四角形、その他の多角形等に形成することが出来る。但し、その太さは、本体部21,31未満としている。このような線状部材で補強部材を形成する場合、環状も無端の円状に形成したものを1本又は直径の同じ或いは異なるものを適宜本数を用いることとしてもよく、長い1本の線状部材を所定回数巻いて、環状に形成することとしてもよい。
【0035】
尚、インナーフレーム2及びアウターフレーム3の折れや曲がりに対する強度を高めるために、インナーフレーム2又はアウターフレーム3の長手方向に直交する断面において、補強部材42,43の断面積は、夫々インナーフレーム2又はアウターフレーム3の断面積の1/3以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。
【0036】
補強部材42,43に用いる金属は特に限定されないが、ステンレスが好適に用いられる。又、補強部材42,43は金属に限定されず、セラミックスにより形成してもよい。
【0037】
補強部材42,43には、後述する位置決め部材5を挿入し、補強部材42,43と位置決め部材5を互いに結合させるための挿入部としての設置孔49を形成している。設置孔49の設置個数及び設置位置は、位置決め部材5の設置個数及び設置位置に対応して構成する。尚、挿入部としては、孔で構成するのではなく、補強部材42,43の端部に凹部を設けて構成してもよい。
【0038】
又、補強部材42,43には、合成樹脂製の成形品の合成樹脂部分、即ち本体部21,31との剥離を防止し固定強度を増すために、係合孔47を設けることが好ましい。このような構成とすることで、成形時に係合孔47に本体部21,31を形成する溶融した合成樹脂が充填され、該溶融樹脂が硬化して本体部21,31と補強部材42,43が係合し、本体部21,31と補強部材42,43との固定強度を高めることができ、破損し難い構成とすることができる。尚、係合孔47と設置孔49を同形状とし、所定の係合孔47を設置孔49として使用することとしてもよい。
【0039】
位置決め部材5は、インナーフレーム2又はアウターフレーム3内、言い換えれば、本体部21,31内での補強部材42,43の位置を決定するための部材、即ち、インナーフレーム2又はアウターフレーム3の成形時に、金型6のキャビティ部62内での補強部材42,43を位置決めするための部材であり、補強部材42,43と金型6との間隔を保つためのスペーサーとなり、溶融樹脂を補強部材42,43と金型6との間に流入させ、補強部材42,43を本体部21,31の表面、即ちインナーフレーム2又はアウターフレーム3の表面に露出させることなく、確実に埋設させる作用を有するものである。
【0040】
位置決め部材5は、底部を平面状にした略球体状で、側面周囲に渡って、補強部材42,34の厚みと同一の高さを有し、補強部材42,43を挿入、係合させるための係合溝51が形成されると共に、底部から中心方向に向かって、成形時に金型6に形成された位置決めピン65を挿入するためのピン孔52が形成されている。位置決め部材5は、その一部、少なくとも底部が本体部21,31の表面に露出している。
【0041】
位置決め部材5の高さL1は、インナーフレーム2の厚さH2及びアウターフレーム3の厚さH3、言い換えれば、本体部21,31の厚さと同一としている。即ち、金型6のキャビティ部62の高さN1と同一としている。そして、位置決め部材5は、補強部材42,43に形成した設置孔49に挿入し、設置孔49を貫通させると共に、係合溝51に補強部材42,43の設置孔49の周囲部分40を挿入、係合させ、補強部材42,43の表裏両面(図3において上下面)から突出させて固定、設置されている。
【0042】
位置決め部材5は、補強部材42,43の表裏両面からの突出量を同一とし、補強部材42,43を本体部21,31の高さ方向の中心に位置させることが好ましい。このため、係合溝51は位置決め部材5の高さL1の中間部に形成することが好ましい。
【0043】
位置決め部材5の設置位置及び個数は、図1に示す実施例では、略等間隔に4個設置しているが、略等間隔に3個設置する構成の他、補強部材42,43を安定的に支持できる個数、設置位置であれば特に限定されない。
【0044】
更に、位置決め部材5の材質は、位置決め部材5がインナーフレーム2及びアウターフレーム3の表面に露出するので、インナーフレーム2及びアウターフレーム3に要求される程度の耐熱性を備えれば、特に限定されないが、合成樹脂であることが好ましく、更には、成形品の合成樹脂、即ち本体部21,31に用いられる合成樹脂と同一の合成樹脂とすることが好ましい。このような構成とすることで、合成樹脂の弾力性により、補強部材42,43の挿入部への挿入や補強部材42,43と係合溝51との係合を容易とすることが出来る。又、成形時に位置決め部材5の合成樹脂の表面が溶けて、本体部21,31を形成する合成樹脂と位置決め部材5の合成樹脂の界面同士が溶着し、位置決め部材5と成形品の本体部21,31との固定強度を増すことが出来、特に同一の合成樹脂を用いることで、より強固に一体化させることが出来、より位置決め部材5と成形品の本体部21,31との固定強度を増すことが出来る。又、インナーフレーム2及びアウターフレーム3の表面を合成樹脂に統一でき、外観に統一感を持たせ、美しくすることが出来る。
【0045】
尚、位置決め部材5の形状は、上記の略球体状の形状に限定されず、円柱等の柱状、円錐等の錘状、楕円球体状等の形状としてもよく、又、係合溝51を形成しない形状としてもよく、又、位置決め部材5の高さL1は、インナーフレーム2の厚さH2及びアウターフレーム3の厚さH3より低く形成してもよい。又、位置決め部材5は、例えば上述及び図2に示すような外形をし、係合溝51の部分で上下の部材に分割可能且つ嵌合可能なように、2個以上の部材で構成される分解組立式の部材としてもよい。位置決め部材5は、補強部材42,43の表裏両面(図3において上下面)から突出させる等して、補強部材42,43の両面側に位置させることが好ましいが、下面側にのみ突出させ、位置させてもよい。
【0046】
又、補強部材42,43に設置孔49又は凹部等の挿入部を設けずに、補強部材42,43の側端部を位置決め部材5の係合溝51に挿入して、補強部材42,43と位置決め部材5を結合させてもよい。
【0047】
インナーフレーム2及びアウターフレーム3の製造方法としては、射出成形やトランスファ成形等の溶融させた樹脂を流動させて成形品を成形する方法を用いればよい。そして、用いる金型6は、上型66と下型67の他に、アウターフレーム3の内側面33に凹部37を設ける場合には、入れ子68を備えた金型6を使用する。尚、アウターフレーム3の製造工程を図6に示し、インナーフレーム2の製造工程は図示しないが、アウターフレーム3と同様に製造される。先ず、図6(a)に示すように、補強部材42,43の設置孔49に位置決め部材5を予め挿入、設置して、補強部材42,43と位置決め部材5を一体化し、開状態の金型6に対し、位置決め部材5のピン孔52に、金型6に形成した位置決めピン65を挿入させて、補強部材42,43を金型6のキャビティ部62内に設置する。このように設置することで、補強部材42,43を金型6に接触させることなく、正確に位置決めして設置させることができ、成形品の完成時に、インナーフレーム2及びアウターフレーム3の外側面に補強部材4が露出しないようにすることが出来る。
【0048】
次に、図6(b)に示すように、金型6を閉じる。この際には、位置決め部材5の上下端が金型6のキャビティ部62の対向する上下面に夫々接触している。そして、溶融した合成樹脂をキャビティ部62内に充填する。溶融した合成樹脂の充填中、位置決め部材5及び補強部材42,43は、位置決めピン65により水平方向(図6において左右前後方向)の移動が規制され、位置決め部材5により縦方向(図6において上下方向)の移動が規制される。図6(c)に示すように、キャビティ部62内に注入された溶融した合成樹脂は、キャビティ部62を満たしつつ位置決め部材5を被覆する。その後、本体部21,31を形成する充填した合成樹脂77が硬化した時点で、金型6を開き、成形品を取り出す。
【0049】
尚、図7に示すように、位置決め部材5を備えずにインナーフレーム2及びアウターフレーム3を構成してもよく、この場合の製造方法として、下型67に、バネ69により支持され、補強部材42,43を載置、支持するための支持段部72を備えた、上下動可能な位置決めピン64と位置決めピン64が収納されるピン収納部70を設けた金型60を用い、補強部材42,43の設置孔49に付位置決めピン64を挿入しすると共に、支持段部72に補強部材42,43を載置して、キャビティ部62内で補強部材42,43を位置決めし、溶融した合成樹脂を注入する方法としてもよい。この場合、溶融した合成樹脂の充填中に、位置決めピン64は溶融した合成樹脂77に押されてピン収納部70内に収納され、設置孔49内にも溶融した合成樹脂77が充填されることとなる。又、溶融した合成樹脂の充填方法、例えば金型におけるライナーの位置、設置数等を調整することにより、予め補強部材をキャビティ部内で位置決めすることなく補強部材をキャビティ部の底面に設置し、合成樹脂の流れに任せることで、溶融した合成樹脂に押されて、本体部21,31の中間部分に固定されるようにしてもよい。
【0050】
上記実施の形態において、合成樹脂製の成形品としてグリップフレーム1を構成するインナーフレーム2及びアウターフレーム3を例に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、上記の実施の形態を適宜組み合わせて構成したものも含み、又、合成樹脂製の成形品はインナーフレーム2及びアウターフレーム3に限定されず、薄板状の他の合成樹脂製の成形品を含むものである。
【0051】
又、グリップフレーム1を構成するインナーフレーム2及びアウターフレーム3の双方に夫々補強部材42,43を埋設するのではなく、インナーフレーム2又はアウターフレーム3の一方にのみ補強部材を埋設する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 グリップフレーム
2 インナーフレーム
21 本体部
27 凸部
3 アウターフレーム
31 本体部
37 凹部
42 補強部材
43 補強部材
47 係合孔
49 設置孔
5 位置決め部材
51 係合溝
52 ピン孔
6 金型
61 ライナー
62 キャビティ部
64 位置決めピン
65 位置決めピン
66 上型
67 下型
68 入れ子
69 バネ
70 ピン収納部
8 棚
81 支持片
91 粘着フィルム
92 シリコンウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の金属製又はセラミックス製の補強部材が、環状の板状の合成樹脂製の本体部の全周に亘って、前記本体部に完全に被覆され、埋設されていることを特徴とする合成樹脂製の成形品。
【請求項2】
前記補強部材の前記本体部内での位置を決定するための位置決め部材が、前記補強部材と結合し、前記本体部に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製の成形品。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記本体部の厚さと同一の高さに形成され、前記補強部材の両面側に位置し、前記本体部の表面に前記位置決め部材の一部が露出していることを特徴とする請求項2に記載の合成樹脂製の成形品。
【請求項4】
前記位置決め部材には、成形時に金型に形成された位置決めピンを挿入するためのピン孔が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の合成樹脂製の成形品。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記本体部を形成する合成樹脂と同一の合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項に記載の合成樹脂製の成形品。
【請求項6】
前記補強部材に形成した挿入部に、前記位置決め部材を挿入すると共に、前記位置決め部材に形成された係合溝に前記補強部材を挿入、係合させて、前記補強部材と前記位置決め部材を結合させたことを特徴とする請求項2から5のうちいずれか1項に記載の合成樹脂製の成形品。
【請求項7】
前記補強部材は、板状又は線状の部材で構成したことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載の合成樹脂製の成形品。
【請求項8】
前記合成樹脂製の成形品は、グリップフレームを構成するインナーフレーム又はアウターフレームであることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項に記載の合成樹脂製の成形品。
【請求項9】
インナーフレーム又は/及びアウターフレームが、請求項1から7のうちいずれか1項に記載の合成樹脂製の成形品であること特徴とするグリップフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−116025(P2012−116025A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266061(P2010−266061)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000222749)東洋樹脂株式会社 (6)
【Fターム(参考)】