吐出パターンの生成方法、及びこれを用いたカラーフィルタと有機機能性素子の製造方法、及びこれに用いる吐出パターンの生成装置
【課題】高品質なカラーフィルタ等を製造することができる吐出パターン生成装置を提供すること。
【解決手段】予め基板の上に形成した多数のパターン状の開口部に、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを吐出し、基板上に多数の画素部を形成する吐出パターン生成方法であって、開口部のパターン形状をもとに、ヘッドに属するノズルのうち、吐出に使用されるべき有効ノズルを選択する工程と、開口部に対して与えられるべきインクの理論液量をもとに、有効ノズルから開口部に対して付与されるべきインクのドロップ数を求める工程と、ノズルから開口部に対して実際に吐出されたインク液量を測定する工程と、この測定したインク液量とインクの理論液量の差と、乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程と、を備えたことを特徴とする吐出パターン生成方法。
【解決手段】予め基板の上に形成した多数のパターン状の開口部に、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを吐出し、基板上に多数の画素部を形成する吐出パターン生成方法であって、開口部のパターン形状をもとに、ヘッドに属するノズルのうち、吐出に使用されるべき有効ノズルを選択する工程と、開口部に対して与えられるべきインクの理論液量をもとに、有効ノズルから開口部に対して付与されるべきインクのドロップ数を求める工程と、ノズルから開口部に対して実際に吐出されたインク液量を測定する工程と、この測定したインク液量とインクの理論液量の差と、乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程と、を備えたことを特徴とする吐出パターン生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細なパターンを吐出するための吐出パターン生成方法及び吐出パターン生成装置に関するものであり、カラーフィルタの製造方法および有機機能性素子の製造方法に関する、特に隔壁パターンに対し一定量の液滴を吐出させるために適したインクジェット吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタの基板サイズは年々大型化が進んでいる。従来では、フォトリソグラフィー工程を繰り返す顔料分散法等が用いられてきたが、カラーフィルタのコストダウン化を図るために、近年は工程数が少なく、カラーフィルタの各着色層を同時に形成することが可能なインクジェット装置を用いた方法が検討されている。
【0003】
インクジェット装置を用いたカラーフィルタの製造方法としては、隔壁で区切られた開口部に、インクジェットノズルヘッドのノズルからカラーフィルタの各色に対応する着色インクを吐出し、各着色層を形成する方法が一般的である。このとき、各開口部に吐出、充填されるインクの充填量のバラツキが小さいほどカラーフィルタの色ムラが低減され、高品質なカラーフィルタを製造することができる。
【0004】
一方、カラーフィルタとしては、画像表示装置等の高解像度化、それに伴う高精細化によって、年々微細化する傾向にある。カラーフィルタの画素の微細化に従って、インクジェットで塗工するパターンピッチは狭くなっていくため、インクジェットノズルヘッドからのインクの吐出量を少量でかつ均一となるように高い精度で制御する必要がある。このため、インクジェット装置を用いたカラーフィルタの製造方法においては、複数のインクジェットノズルヘッドを積み重ねて解像度を向上させる方法が検討されている。
【0005】
しかしながら、インクジェットノズルヘッドから吐出されるインク量は、ノズルごとにバラツキを持っているために、吐出量が異なる場合がある。特に、複数のインクジェットノズルヘッドを積み重ねた、高解像度を目的とする吐出装置の場合には、一つのノズルから吐出されるインク量がごく微小量のために、バラツキは相対的に大きいものとなってしまう。
【0006】
この場合、各開口部に対し、同量のインクを充填するために、各ノズルから同じ回数のインクを吐出したとしても、ノズルごとのバラツキにより最終的なインクの充填量に差が生じてしまい、各画素間の色ムラとなってカラーフィルタの品質および歩留まりを低下させる原因となっていた。
【0007】
結果として、同一ノズルヘッドセットの組み合わせによって吐出した各々の隔壁開口部(以下、セル)への吐出量はほぼ等しくなるために、同一ノズルヘッドセットで形成した吐出パターンのライン(以下、セルライン)と、異なるノズルヘッドセットにより形成したセルラインでの吐出量の差がインクの平均総液量となり、そのバラツキのために視覚的に色ムラとして現われてしまうことになる。
【0008】
このような問題の解決のため、ノズルごとの吐出バラツキを抑える手段として、例えばノズルごとに駆動電圧値を変更できる回路装置を組み込み、理想吐出量と実際の吐出量を比較し、吐出量を調整することでムラを低減する方法が、特許文献1に掲載されている。
【0009】
しかしながら上記特許文献1に示すように、ノズル毎に駆動電圧値を変更し、補正するには、各ノズルのバラツキや、隣接ノズルが同時タイミングで吐出している場合、または吐出していない場合では吐出量が異なる隣接のクロストークによる影響等を、全て把握する必要がある。このため、何回も吐出し、その測定を繰り返し行い、各ノズルの吐出バラツキが無くなるまで作業をするため、膨大な時間や材料を使用する問題があった。
【0010】
同様の問題は、予め基板上に隔壁を形成した、その開口部に1層あるいは複数の有機機能層を積層した有機EL素子、または有機太陽電池等の有機機能性素子を、インクジェット法を用いて製造した際にも生じる。例えば、有機EL素子においては、吐出装置からの有機機能性インクを吐出し、形成した発光層にムラやバラツキが生じていると、全体として発光ムラやバラツキの目立った有機EL素子のとなってしまう。
【0011】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開2004−90621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これら上記の問題を鑑みてなされたもので、ノズル毎に吐出量を測定した後、そのバラツキを補正することにより、駆動電圧を変更することなく、ノズル毎の吐出バラツキによる濃度むらが発生し品質低下しない、高品質なカラーフィルタ及び有機機能性素子を製造することができる吐出パターン生成装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の構成を以下に示した。
(請求項1)
予め基板の上に形成した多数のパターン状の開口部に、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを吐出し、基板上に多数の画素部を形成する吐出パターン生成方法であって、基板上に多数の開口部パターンを形成する工程と、
前記開口部のパターン形状をもとに、インクジェットヘッドに属するノズルのうち、吐出に使用されるべき有効ノズルを選択する工程と、
前記開口部に対して与えられるべきインクの理論液量をもとに、前記有効ノズルから前記開口部に対して付与されるべきインクのドロップ数を求める工程と、
前記ノズルから開口部に対して実際に吐出されたインク液量を測定する工程と、
この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程と、を備えたことを特徴とする吐出パターン生成方法。
(請求項2)
前記この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程において、発生させた乱数のうち低周波部分を除いたことを特徴とする請求項1に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項3)
前記有効なノズルのうち、一部のノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定し、
前記有効なノズルのうち残りのノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差のみに基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定することを特徴とする請求項1、または2に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項4)
複数のノズルを有する複数のノズルヘッドからなる吐出パターン生成方法であって、ノズルヘッドごとに、ノズルから一回に吐出するインクの吐出量を設定する工程を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項5)
前記ドロップ数の増減数が、同一ノズルヘッドによって開口部に吐出したインクの平均総液量の理想値からのズレの大きさにより重み付けされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項6)
乱数によって増減させる前の前記ドロップ数を、前記平均総液量の理想値に最も近くなるように設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吐出パター
ン生成方法。
(請求項7)
前記ドロップ数の増減数の最大値が、同一ノズルヘッドによる各開口部の平均総液量のバラツキの程度によって決定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項8)
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に着色層を形成するカラーフィルタの製造方法であって、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(請求項9)
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に一層あるいは複数の有機機能層を形成する有機機能性素子の製造方法であって、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、有機機能層を形成することを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
(請求項10)
請求項1〜7のいずれかに記載のパターン生成方法に用いられる吐出パターンを形成する手段を備えた吐出パターン生成装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、各セルに吐出するインクの吐出量にランダムなバラツキを与える等の関数手段を有することにより、セルごとに実際に吐出するドロップ数に幅を持たせることで、セルライン内に一定幅のバラツキを持たせ、セルラインごとの平均吐出量のバラツキを目立たなくすることができ、これにより全体的な色ムラを低減することができた。
【0015】
また、本発明に係る吐出パターン生成方法によって、ランダムなバラツキであっても、目視観察等を実施した際、ざらつき感を低減することができた。
【0016】
本発明に係る吐出パターン生成方法および装置によって、ドロップ数を増減させるノズルをランダムに選択することにより、各ノズルの吐出量のバラツキから生じる色ムラを低減することができ、全体として各セル間の吐出量のバラツキを低減することができた。また、増減ノズルを特定ノズルに選択した場合は、逆に各ノズルのバラツキを利用し色ムラの調整をすることにより、ランダムに選択した場合より、全体として各セル間の色ムラを低減することができた。
【0017】
本発明によって、より均質な着色層が形成できた。このことにより高精細で色むら、バラツキの少ない高品質なカラーフィルタがより短時間で製造可能となった。
【0018】
本発明によって、より均質な膜厚の有機機能層が形成することができ、発光ムラの少ない有機EL素子等、高品質な有機機能性素子を製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の吐出パターン生成装置の全体構成の一例である。本発明吐出パターン生成装置には、複数のインクジェットノズルを複数列組み合わせて配置したインクジェットノズルヘッド1を複数個配列したインクジェットノズルヘッドユニット2を持つ構成である。カラーフィルタを生成するためには、着色層を形成する各色(例えばR、G、B)のインクの吐出を行う必要があるため、前述した複数個並んでいるインクジェットノズルヘッドの組み合わせが各色配置されている。また、インクジェットノズルヘッドユニットは主走査方向に移動し、画像描画を行う。
【0020】
基板置き台3は、主走査方向と直行する副走査方向に移動可能であり、さらにθ方向に回転可能である。θ方向に回転可能なため、基板置き台の上に置かれた基板の隔壁とインクジェットノズルヘッドユニットを平行に合わせることができ、副走査方向に動作させることで画像描画を行うことができる。また、基板置き台には図示されていないが吸着機構を備えており、基板置き台におかれた基板を固定することが可能である。
【0021】
本発明の吐出パターン生成装置は、少なくともインクを隔壁の開口部に吐出するためのインクジェットノズルヘッドに存するノズルと、あらかじめ入力されたパラメータ情報に基づいて位置情報を認識あるいは計測し、これを出力する手段と、ノズルから吐出するインクのドロップ数の増減を関数を用いて決定する手段とを有する。さらには、ドロップ数を増減させる特定ノズルを選択する手段を有する吐出パターン生成装置である。なお、パラメータ情報とは、例えば基板のサイズ、形成パターン等の事前に入力される情報と、ノズル及び基板の位置等の逐次入力されるノズル及び基板に係る情報を合わせた、吐出パターンに係る情報である。乱数は、吐出パターン生成装置に組み込まれた擬似乱数生成器を用いて、擬似乱数列を生じさせこれを用いることができる。
【0022】
本発明に用いる関数は、乱数列におけるパワーベクトルのざらつき感を低減するための乱数であることが望ましい。通常乱数は、図2に示すような形態である。この乱数をFFT(高速フーリエ変換)しパワースペクトルを求めたものを、図3に示す。
【0023】
一方、画像評価手法に関する公知文献では、人間の目で対象物を観察する際、敏感に知覚するかどうかの一つの尺度として、MTFあるいはVTFを用いることが一般的である。
【0024】
この関数で、知覚に敏感なのは、空間周波数における低周波数部分(本発明では3.00E+00以下をいう。理由は、人間の目で一番敏感な部分が1.00 E+00であり、さらに余裕を見てこの範囲としたためである。)である。低周波部分はそこで、乱数の中で、該当する周波数成分を除去した乱数を画像に展開すると、ざらつき感が低減されることが、実験等で確認されている。乱数をハイパスフィルタ(高域フィルタ)に通すことにより、低周波部分の除去が可能となる。
【0025】
その乱数の一例を図4に示す。またそのパワースペクトルを図5に示す。
【0026】
本発明に用いるインクジェットノズルヘッド及びインクを吐出するためのノズルは、複数のノズルが配置された構成のものであれば適用可能であるが、図6のように、一列に配置されたノズルが、複数の組み合わされているものを用いる。この場合、各相のノズルは各々異なったタイミングでインクを吐出される。例えば図6はインクジェットノズルヘッド1の断面図の模式図であるが、ノズルA相、ノズルB相、ノズルC相(以下A相、B相、C相と記す)の同じ行からインクが吐出されるタイミングはA、B、Cの順でずれる。この方式(以下、シェアウェーブモードと記載)では各ノズルの間隔、例えばA層〜B層、B層〜C層を狭め、高密度なインクジェットノズルヘッドとすることができるために、高精細な吐出パターン形成が必要なカラーフィルタの製造に適している。
【0027】
このインクジェットノズルヘッド1は、A相、B相、C相に対応するバッファ(以下、ラインバッファと記載)を備えていて、各相のラインバッファは相互に情報を転送することができる。このインクジェットノズルヘッドから吐出されるまでの簡単な動作フローを図7に示す。
【0028】
まず、A相ラインバッファが、吐出パターン情報を受けとり、その転送された情報のうちA相に関する情報に基づいてA相インク吐出口から吐出を開始する。また、A相インク吐出口から吐出開始と同時に、吐出パターン情報をA相ラインバッファからB相ラインバッファに転送する。A相インク吐出口から吐出終了後、B相インク吐出口は、転送された吐出パターン情報のうちB相に関する情報に基づいて吐出を開始する。また、B相インク吐出口から吐出開始と同時に、吐出パターン情報をB相ラインバッファからC相ラインバッファに転送する。B相インク吐出口から吐出終了後、C相インク吐出口は、転送された吐出パターン情報のうちC相に関する情報に基づいて吐出を開始する。C相インク吐出口から吐出終了後、ラインカウンターにて設定回数ライン吐出を行ったかどうかの判定を行い、設定回数の吐出が行なわれていなければ、吐出パターン情報をA相ラインバッファに転送する。再び、A相インク吐出口は吐出パターン情報に基づいて吐出開始する。以下、前述した動作をライン数分繰り返し行い、所望の吐出パターンを作成する。
【0029】
以上がシェアウェーブモードでの吐出制御方法であるが、本発明の吐出装置はその他の方式でも問題ない。以下、本発明の吐出パターン形成方法によってカラーフィルタを形成する場合を例に説明するが、その他の光学素子、例えば有機EL素子の場合であれば発光層の各色画素を形成する場合にも同様に本発明を用いることができる。
【0030】
吐出パターン情報に基づいてインクジェットノズルヘッドのノズルからインクを吐出する制御手段として、例えばインクジェットノズルヘッドコントローラー4を吐出装置に接続する。インクジェットノズルヘッドコントローラー4は、インクジェットノズルヘッドを駆動し、インクジェットノズルヘッドパラメータ情報と吐出パターンが格納されている。インクジェットノズルヘッドパラメータ情報は、インクジェットノズルヘッドを駆動させるための情報である。吐出パターン情報は、インクジェットノズルヘッドの位置情報を引数として、特定のノズルの吐出についての情報が格納されている。吐出を行う際にインクジェットノズルヘッドコントローラーから各ノズルに吐出パターン情報が転送され、描画を行うことが可能である。
【0031】
また、上記インクジェットノズルヘッドコントローラー4のインクジェットノズルヘッドを駆動させるためのインクジェットノズルヘッドパラメータ情報には、インクジェットノズルヘッドごとに最適の電圧値のパラメータを設定できることが好ましい。全てのインクジェットノズルヘッドの駆動電圧を同じ値に設定すると、インクジェットノズルヘッドから吐出される液滴の量が個体差により変わるため、基板内にインクを均一に吐出することができなくなるおそれがある。インクジェットノズルヘッドごとに最適の電圧値のパラメータを設定できるようにすることによって、インクジェットノズルヘッドごとの吐出量を制御することが可能となり、各セルの吐出量を調整することができる。
【0032】
本発明の有する、位置情報を認識、または計測し、これを出力する手段は、予め入力されたカラーフィルタのサイズ、隔壁パターンのピッチ、画素部のパターン(ストライプ配列、セル配列、モザイク配列等の情報配列パターンを含む)等のカラーフィルタ基板のパラメータと、インクジェットノズルヘッド及びノズルの位置情報(ヘッドの位置ずれ情報を含む)と、吐出装置の基板の置き台の移動量等のパラメータ(以下、合わせて吐出パターン情報と記載)から、ノズルから基板上に吐出されるインクの着弾位置を算出する。あるいは、吐出装置に設置されたカメラによって、基板表面の画像を取得し、処理し、インクの着弾位置を算出することもできる。
【0033】
基板上の隔壁パターンに対してインクジェットノズルヘッド及びノズルの位置が算出した後、この情報を基に、インクの着弾位置が、画素部の形成位置(目的とする隔壁開口部:セル)であるか否かをプログラムにより処理判断する。着弾位置が目的とする隔壁開口部に該当する場合のみ有効なノズルとして認識され、そうではないノズルからは吐出されない。
【0034】
図8は、ノズルが有効か否かの判断の具体例である。インクジェットノズルヘッドのノズル5のうち、カラーフィルタ基板の開口部の直上部にあたるノズルについては有効と判断され、それ以外のノズルは無効と判断し、吐出パターン情報を生成する。そして、この吐出パターン情報に従って、各インクジェットノズルヘッドのノズルは目的とするセル内にインクを吐出する。
【0035】
ここで本発明の吐出装置及び吐出方法を用いない場合には、セルライン内においては、セルごとの吐出量のバラツキが小さい場合、つまり各セルの吐出量の標準偏差が小さい場合(セルライン内の吐出量の標準偏差)でも、各セルライン間の吐出量の標準偏差(セルライン間の吐出量の標準偏差)が、セルライン内の吐出量の標準偏差に比べて大きいために、全体として視覚的に色ムラの大きいカラーフィルタとなってしまう。
【0036】
そこで本発明の吐出パターン形成装置は、有効なノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数が乱数を用いて決定する手段を有することによって、この問題を解決する。つまり、ある一定規定量のドロップ数(以下、基本ドロップ数)から、各セルに実際に吐出するドロップ数に幅を持たせることで、セルライン内に任意のバラツキを持たせ、各セルラインの平均吐出量のバラツキを目立たなくすることができ、これにより全体的な色ムラを低減することができる。
【0037】
ここで、ノズルから吐出するインキのドロップ数の増減数を乱数を用いて決定する手段は、上述の有効なノズルから吐出するノズルを選択し、さらに、演算用計算機により、乱数を用いて、吐出するインキのドロップ数を規定の値から任意の増減を与える。あらかじめ設定した増減数の範囲内で、ランダムに増減数を振り分けることで、画素部の各セルに吐出するインキのドロップ数に幅を持たせ、ノズルごとの吐出量バラツキによる各画素間の色ムラを低減することが可能となる。各セルラインにおいて、ランダムにドロップ数の増減を与えることによって、意図的にセルライン間の吐出量の標準偏差と、セルライン内の吐出量の標準偏差を近づけることができるからである。
【0038】
また、理想的な着色層の膜厚を形成するためのインキの理論総液量を吐出することが理想であるが、課題でも述べたように、ノズルごとの吐出量のバラツキ、クロストークの影響などによって、実際の平均インキ総液量は、理論インキ総液量からずれている場合がある。そこで、実際に吐出された(各セルラインにおける)平均インキ総液量が多い場合には、増減するドロップ数が減少する方向に乱数の割り振りに加重を掛ける事により、平均インキ総液量を理論値により近い値にすることが可能であり、より高品質なカラーフィルタが製造できる。例えば、平均総液量が理論層液量よりも多い場合には、ドロップ数が減少する割合よりも増加する割合が増えるように、ランダム関数を増減するドロップ数に割り振る。
【0039】
なお、インキの平均総液量が理論総液量に比べて大きな液量差がある場合には、ノズルから吐出する基本ドロップ数を増減すればよい。これにより平均総液量と理論総液量の差を1ドロップ以下にすることができる。従来の方法、例えばノズルからの1ドロップの吐出量を増減する方法も考えられるが、ノズルヘッドごとにノズルからの吐出量を設定する場合には、ノズルヘッド全体でノズルからの吐出量が変わってしまうために、液量の調整は困難である。
【0040】
そこで、本発明のように、ドロップ数の増減を決定する乱数の割り振りに加重を掛ける事により、さらに理論インキ総液量に近い値まで平均インキ総液量を近づけることが可能となる。
【0041】
また、吐出するノズルの選択に乱数を用いてランダムに指定することによって、各ノズルの吐出量のバラツキから生じるムラを軽減することができ、全体として各セル間の吐出量のバラツキを低減することが可能とともに、調整回数を減らすことが可能となる。
また、吐出するノズルを特定した場合は、各ノズルの吐出量のバラツキを逆に利用することにより、ランダムに指定した場合より全体として各セル間の吐出量のバラツキをより低減するとができる。
本発明は、インクジェット法を用いたパターンの形成において、画素部の膜厚のバラツキを軽減し、ムラをなくすものであるから、インクジェット法を用いた素子の作製に適用可能である。以下に本発明を用いた素子の製造方法の例として、カラーフィルタ及び有機機能性素子の製造方法を説明する。
【0042】
カラーフィルタあるいは有機機能性素子のいずれの素子の製造についても、基板上に隔壁が形成し、そこに画素部を形成することにより作成できる。
【0043】
基板について以下に説明する。基板は、印刷物の支持基板として用いるものである。目的とする光学素子により、基板の種類は異なるが、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等、ドライフィルム等、公知の透明基板材料を使用することができる。中でもガラス基板は、カラーフィルタ、有機EL素子用途において、透明性、強度、耐熱性、耐候性において優れている。
【0044】
隔壁について以下に説明する。本発明ではインキジェット印刷装置により基板にインキを付与し、カラーフィルタあるいは有機機能性素子を形成する。異なる種類のインキ同士の混色(又は混合)を防止するため、基板上に予め隔壁を形成することが好ましい。
【0045】
隔壁は、基板の表面を多数の領域に区分けすると共に、この多数の領域のそれぞれに吐出されたインクの混色を防止する機能を有するものである。混色を防止するため、隔壁には一定の撥インク作用を示すものを用いることが望ましい。例えば、撥インク剤を含む樹脂組成部により隔壁を形成する方法、樹脂組成物により形成した隔壁にプラズマ処理を行い撥インク性を付与する方法、隔壁を光触媒層とともに形成し光触媒作用により隔壁に撥インク性を付与する方法などを例示することができる。また、ディスプレイの表示画面を構成するカラーフィルタ、有機EL素子においては、この隔壁に遮光性を付与することで、表示画面のコントラストを向上させることができる。いずれの場合であっても、隔壁を樹脂組成物より形成する場合には、樹脂バインダーと撥インク剤とを必須成分として含有する必要がある。
【0046】
隔壁は印刷法、フォトリソグラフィー法等の公知の隔壁形成方法により形成することができる。
【0047】
カラーフィルタの製造方法について以下に説明する。カラーフィルタを形成する場合、まず前記の基板上に、上記の方法で隔壁を形成する。着色インクを使用して、本発明の吐出パターン形成装置により着色層を形成する。着色インクは、着色顔料、溶媒、樹脂バインダーを必要に応じて含むことができる。
【0048】
有機機能性素子の製造方法について以下に説明する。有機EL素子または有機太陽電池、あるいは有機半導体を形成する場合にもまず前記の基板上に、隔壁を形成する。インクに有機発光材料を含むものとし、本発明の吐出パターン生成装置及び吐出方法を用いて基板上に吐出、有機機能層を形成し製造することができる。このインクは、有機発光材料、溶媒、樹脂バインダーを、必要に応じて含むことができる。溶媒、樹脂バインダーは、前記隔壁の形成で掲げたものと同様の材料を使用することができる。
【0049】
有機発光材料について以下に説明する。有機発光材料としてクマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の有機溶剤に可溶な有機発光材料や該有機発光材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系などの高分子有機発光材料が挙げられる。
【0050】
本発明の吐出装置による吐出パターン生成方法を具体例により説明する。
【0051】
まず、前述したように吐出パターンに従って、ノズルの有効・無効が判断される。基上の隔壁開口部に存在し、かつ画素部に形成する画素に対応するインクを吐出するノズルを有効とする(図4参照)。
【0052】
次に、一つのセル内にある有効なノズルの数(以下、吐出ノズル数)Nは、各セルに充填するインクの総液量や、セルのサイズ等によって任意に決定することが出来る。
【0053】
一つのノズルから一回に吐出されるインクの量(1ドロップの吐出量)がaとし、全ての吐出ノズルからのインクのドロップ数(基準ドロップ数)をDとすると、インクの理想総液量MはD×aで表され、各ノズルに割り当てられるドロップ数dはD/Nとその余りとなる。
【0054】
次に、本発明においては、インクの理想総液量Mに対して、Mよりも小さいある設定量mを理想総液量Mからの増減量として想定する。この設定量mは、例えば、実際の各セルライン内のセルの総液量のバラツキ(標準偏差)から算出される。前述のように、このセルライン内の吐出量の標準偏差と、セルライン間の平均吐出量の標準偏差が近く、さらに平均吐出量が各セルライン間で一致するように調整することが好ましい。
【0055】
さらに、ここで実際の平均総液量M´と理想総液量Mとの差を考慮し、各セルラインのドロップ数を調整する。ここで調整により、理想総液量からできるだけ近しくなることが望ましい。例えば、増減するドロップ数は、平均総液量M´と理想総液量Mとの差と、1ドロップのインク吐出量によって決定することができ、調整後のドロップ数D’は以下のように書くことができる。
【0056】
D’=D−[(M−M’)/a](式1)
なお、Mは、理想総液量
M´は、平均総液量
Dは、基準ドロップ数(理想ドロップ数)
D’は、調整後のドロップ数
aは、1ドロップの吐出量である。
【0057】
上記のようなドロップ数の調整によって、平均総液量は理想総液量に近づけることができ、調整後の平均総液量M´´となる。理想総液量M、平均総液量M´、調整後の平均総液量M´´、設定量m、吐出ノズル数N、1ドロップの吐出量a、基準ドロップ数D、ドロップ数の増減数基準値b等の各設定パラメータは、吐出パターン情報としてあらかじめ設定、格納される。
【0058】
次に、設定パラメータと乱数を用いて、各セルにおけるドロップ数D(x)を決定する。ここでxは各セルを表すシンボルとする。調整後の平均総液量M´´が理論総液量Mと等しい場合、ドロップ数D(x)を決定する式は、ドロップ数の増減数をb−iとして、例えば以下のように書くことができる。
【0059】
D(x)=D’+b−i(式2)
ただし、iは
0≦i≦2b+1
i/(2b+1)≦RAND(x)≦(i+1)/(2b+1)
となる整数
なお、D(x)は、ドロップ数数式
bは、ドロップ数の増減数基準値
RAND(x)は、乱数を生成する関数である。
【0060】
ここでRAND(x)は0以上1以下の実数の乱数を生成する関数を表す。調整後の平均総液量M´´が理論総液量Mと異なる場合、ドロップ数D(x)を決定する式は、ドロップ数の増減数をb−jとして、例えば以下のように書くことができる。
【0061】
D(x)=D’+b−j(式3)
ただし、jは、
0≦j≦2b
0≦RAND(x)−(M−M”)/m≦1のとき、j/(2b+1)+(M−M”)/m≦RAND(x)≦(j+1)/(2b+1)+(M−M”)/m
RAND(x)−(M−M”)<0のとき、j=0
1<RAND(x)−(M−M”)/mのとき、j=2b
となる整数
なお、jは、整数である。
【0062】
上記の式によって、例えば実際の平均総液量M´´が理想総液量よりも多い場合には、各セルのドロップ数は、確率的に基準ドロップ数よりも少ないドロップ数に傾き、結果として、補正された平均総液量は理想総液量に近い値となる。
【0063】
また、決定されたドロップ数の増減値が、連続するセル間で一定以上偏った場合には、再度乱数によって計算しなおし、一定以上の偏りをなくすことも可能である。
【0064】
以上のように、本発明の方法によれば、ノズルごとの吐出量のバラツキを測定し、ノズルごとに吐出量を補正するといった煩雑な作業を伴わず、各画素間の色ムラを低減することが可能となる。さらに、同一ノズルにおける吐出回ごとの吐出量のバラツキに対しても、影響を低減することができる。
ただし、上記の方法一回で作成した基板で、完全に色ムラが消えない場合は、幅方向全セルの色相データを取りそのデータより色ムラの調整を行う必要がある。
ムラ調整を行う場合、幅方向全セルの色相データ等を取得し、幅方向隣接セルの色相データのバラツキを低減するように各セルの液量を調整する。その調整量を決定するには、色相データと液量の関係を導出しておく必要がある。色相データと液量関係を導出するには、各セルの液量を単位ドロップ増減させた基板を作成し、幅方向全セルの色相データを取得し、各セルの検量線を作成する。各セルの調整液量は幅方向全セルの色相データと目標色相データの差と前述の検量線の2つから決定する。
液量調整で増減するノズルを乱数を用いて決定する場合、増減ノズルになり得るノズルはセル内の有効ノズル数分あることになる。増減ノズルを特定する場合は、増減ノズルは有効ノズルのどこか1ノズルになる。
図9は、有効ノズルから、矢印で示されている増減ノズルを一つに特定した場合の説明図である。図10は増減ノズルを乱数により決定の場合の説明図である。
検量線を求めるときに単位ドロップ増減するノズルは、有効ノズルの中の一つであるので、液量調整で増減するノズルを乱数を用いて決定する場合、セルラインの多くのセルで検量線作成時使用したノズルとは異なるノズルを使用することになる。そのため、正確な検量線ではないため調整量が正確ではなくなる。調整での増減ノズルを検量線導出に使用したノズルと同一ノズルに特定した場合は、乱数の場合より正確な調整量を導出できる。
【0065】
次に、実施例として、本発明のカラーフィルタの製造方法を説明する。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
隔壁の形成した、以下に説明する、撥インク性を付与する材料を含有した感光性樹脂組成物として、下記組成比で配合した黒色感光性樹脂組成物を用いた。基板としては無アルカリガラス(1737:コーニング(株)製)を用い、その上にこの黒色感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、温度90℃のホットプレートにて1分間プリベーク処理をして基板上に膜厚2.0μmの被膜を形成した。
【0067】
感光性樹脂組成物の組成は、
シクロヘキサノン(沸点155.7℃) 80重量部
クレゾール−ノボラック樹脂:EP4050G(旭有機材工業(株)製) 15重量部
メラミン樹脂:MW30(三和ケミカル(株)製) 5重量部
カーボン顔料:MA−8(三菱マテリアル(株)製) 23重量部
分散剤:ソルスパース5000(ゼネカ(株)製) 1.4重量部
ラジカル重合性を有する化合物:トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化
学工業社製)5重量部
光重合開始剤:イルガキュア369(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)2重量部
含フッ素化合物:モディパーF−600(日本油脂(株)製、質量平均分子量35000
)5重量部、
である。
【0068】
続いてストライプ状のパターンであるフォトマスクを用いて、超高圧水銀灯により100mJ/cm2の露光処理を施し、さらに現像処理を行うことで所望される隔壁パターンを得た。その後、熱風式焼成炉内にて加熱処理を施した。
【0069】
着色インクの調整について以下に説明する。下記組成物を、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75重量部を加え、70℃5時間の条件で反応させ、アクリル共重合体樹脂を得た。
【0070】
着色インク組成物の組成は、
メタクリル酸20重量部
メチルメタクリレート10重量部
ブチルメタクリレート55重量部
ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部
乳酸ブチル300重量部
であり、得られたアクリル共重合体樹脂が、全体に対して10重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて希釈し、アクリル共重合体樹脂の希釈液を得た。
【0071】
この希釈液80.1gに対し、着色顔料19.0g、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル0.9gを添加して、3本ロールにて混練し、赤色、緑色、青色の各着色ワニスを得た。なお、赤色顔料として、ピグメントレッド177を、緑色顔料としてピグメントグリーン36を、青色顔料としてピグメントブルー15を、各々使用した。
【0072】
得られた各着色ワニスに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、その顔料濃度が12〜15重量%、粘度が15cpsになるように、各々調整して添加し、赤色、緑色、及び青色着色インクを得た。
【0073】
カラーフィルタを作製した。以下に説明する。図1に示される本発明の吐出装置を用いて、着色層を形成した。ここで、各セルの理想総液量Mは660pl、設定量mは24pl、ドロップ数の増減数bは2、1ドロップの吐出量aは6plである。
【0074】
次に、吐出装置のインクジェットノズルヘッドコントローラー4(図1参照)に数2に示された数式で各セルのドロップ数を決定するプログラムを組み込み、画素部の形成を行った。
【0075】
実施例1の結果は、図11、図12の各表は基板上着色層の各セルを示し、図11は、ドロップ数は補正前の各セルのドロップ数であり、図12は、実施例1での補正後のドロップ数である。
【0076】
実施例1の各セルの総液量を実測した結果、補正後の平均総液量M´´は660.077plと理想総液量Mの660plに近い値となり、全体として色ムラの低減されたカラーフィルタとなった。
【0077】
以上のように、ノズルごとの吐出量のバラツキを測定して、ノズルごとに吐出量を制御することなく、短時間で各着色層のセルごとの吐出量のバラツキを低減し、高精度なカラーフィルタを製造することができた。
【0078】
本発明の吐出装置による吐出パターン生成方法の比較例として、従来の吐出パターン生成方法を用いた実施例2を実施した。以下に、詳細に説明する。
【0079】
(実施例2)
実施例2は、総ドロップ数は、実施例1の補正前の基準ドロップ数を各セルへの吐出し、理想総液量Mは660plの塗布条件で着色層を形成し、それ以外は実施例1の方法と同様の方法である。実施例2の結果は、平均総液量M´´は図13のようになる。このように、セルライン上では同一のノズルヘッドを用いている、セルライン内の吐出量はほぼ等しくなってしまい、異なるノズルヘッドを用いたセルライン間の吐出量がバラツキ、セルライン内の標準偏差とセルライン間の標準偏差とが離散した、その色ムラが視覚的に目立ってしまった。
【0080】
(実施例3)
実施例3は増減ノズルをランダムとした場合と、特定した場合で実施した。
表1に増減ノズルをランダムに選択した場合のあるラインセルの平均総液量等を示した。
表2に増減ノズルを特定ノズルにした場合のあるラインセルの平均総液量等を示した。
表2の増減ノズルで使用したノズルは、検量線導出で増減されたノズルと同一とする。
注目セルの色相データのズレが0.104であったとする。セルラインは1000ラインとする。検量線を求めたときの増減ノズルは3番ヘッドの20番ノズルで、その時の検量線は1plあたり0.065とする。
変更セル数は(0.104×1000)/(6×0.065)=267セルとなる。
増減ノズルをランダムにした場合は平均総液量423.125plで、増減ノズルを特定した場合は平均総液量423.000plとなり、増減ノズルを特定したほうが理論総液量に近づけられることがわかる。
【表1】
(表1)増減ノズルをランダムに選択した場合のあるラインセルの平均総液量等を示した表。
【表2】
(表2)増減ノズルを特定ノズルにした場合のあるラインセルの平均総液量等を示した表。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の吐出パターン生成装置の全体構成図例を示す概略図。
【図2】乱数の一例を示す図。
【図3】乱数のパワースペクトルを示す図。
【図4】低周波数の乱数を除去した乱数を示す図。
【図5】低周波数の乱数を除去した乱数のパワースペクトルを示す図。
【図6】シェアウェーブモードのインクジェットノズルヘッドのノズル概略図。
【図7】シェアウェーブモードのインク吐出動作フローチャート。
【図8】インクジェットノズルヘッドのノズルから有効なノズルを選択する概略図。
【図9】セル内の乱数により1つ選択されたノズルを示す概略図。
【図10】セル内の乱数により2つ選択されたノズルを示す概略図。
【図11】調整前のドロップ数の図表。
【図12】実施例1の結果のドロップ数の図表。
【図13】調整前のセル内総液量の図表。
【符号の説明】
【0082】
1…インクジェットノズルヘッド
2…インクジェットノズルヘッドユニット
3…基板置き台
4…インクジェットノズルヘッドコントローラー
5…ノズル
6…有効なノズル
7…隔壁開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細なパターンを吐出するための吐出パターン生成方法及び吐出パターン生成装置に関するものであり、カラーフィルタの製造方法および有機機能性素子の製造方法に関する、特に隔壁パターンに対し一定量の液滴を吐出させるために適したインクジェット吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタの基板サイズは年々大型化が進んでいる。従来では、フォトリソグラフィー工程を繰り返す顔料分散法等が用いられてきたが、カラーフィルタのコストダウン化を図るために、近年は工程数が少なく、カラーフィルタの各着色層を同時に形成することが可能なインクジェット装置を用いた方法が検討されている。
【0003】
インクジェット装置を用いたカラーフィルタの製造方法としては、隔壁で区切られた開口部に、インクジェットノズルヘッドのノズルからカラーフィルタの各色に対応する着色インクを吐出し、各着色層を形成する方法が一般的である。このとき、各開口部に吐出、充填されるインクの充填量のバラツキが小さいほどカラーフィルタの色ムラが低減され、高品質なカラーフィルタを製造することができる。
【0004】
一方、カラーフィルタとしては、画像表示装置等の高解像度化、それに伴う高精細化によって、年々微細化する傾向にある。カラーフィルタの画素の微細化に従って、インクジェットで塗工するパターンピッチは狭くなっていくため、インクジェットノズルヘッドからのインクの吐出量を少量でかつ均一となるように高い精度で制御する必要がある。このため、インクジェット装置を用いたカラーフィルタの製造方法においては、複数のインクジェットノズルヘッドを積み重ねて解像度を向上させる方法が検討されている。
【0005】
しかしながら、インクジェットノズルヘッドから吐出されるインク量は、ノズルごとにバラツキを持っているために、吐出量が異なる場合がある。特に、複数のインクジェットノズルヘッドを積み重ねた、高解像度を目的とする吐出装置の場合には、一つのノズルから吐出されるインク量がごく微小量のために、バラツキは相対的に大きいものとなってしまう。
【0006】
この場合、各開口部に対し、同量のインクを充填するために、各ノズルから同じ回数のインクを吐出したとしても、ノズルごとのバラツキにより最終的なインクの充填量に差が生じてしまい、各画素間の色ムラとなってカラーフィルタの品質および歩留まりを低下させる原因となっていた。
【0007】
結果として、同一ノズルヘッドセットの組み合わせによって吐出した各々の隔壁開口部(以下、セル)への吐出量はほぼ等しくなるために、同一ノズルヘッドセットで形成した吐出パターンのライン(以下、セルライン)と、異なるノズルヘッドセットにより形成したセルラインでの吐出量の差がインクの平均総液量となり、そのバラツキのために視覚的に色ムラとして現われてしまうことになる。
【0008】
このような問題の解決のため、ノズルごとの吐出バラツキを抑える手段として、例えばノズルごとに駆動電圧値を変更できる回路装置を組み込み、理想吐出量と実際の吐出量を比較し、吐出量を調整することでムラを低減する方法が、特許文献1に掲載されている。
【0009】
しかしながら上記特許文献1に示すように、ノズル毎に駆動電圧値を変更し、補正するには、各ノズルのバラツキや、隣接ノズルが同時タイミングで吐出している場合、または吐出していない場合では吐出量が異なる隣接のクロストークによる影響等を、全て把握する必要がある。このため、何回も吐出し、その測定を繰り返し行い、各ノズルの吐出バラツキが無くなるまで作業をするため、膨大な時間や材料を使用する問題があった。
【0010】
同様の問題は、予め基板上に隔壁を形成した、その開口部に1層あるいは複数の有機機能層を積層した有機EL素子、または有機太陽電池等の有機機能性素子を、インクジェット法を用いて製造した際にも生じる。例えば、有機EL素子においては、吐出装置からの有機機能性インクを吐出し、形成した発光層にムラやバラツキが生じていると、全体として発光ムラやバラツキの目立った有機EL素子のとなってしまう。
【0011】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開2004−90621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これら上記の問題を鑑みてなされたもので、ノズル毎に吐出量を測定した後、そのバラツキを補正することにより、駆動電圧を変更することなく、ノズル毎の吐出バラツキによる濃度むらが発生し品質低下しない、高品質なカラーフィルタ及び有機機能性素子を製造することができる吐出パターン生成装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の構成を以下に示した。
(請求項1)
予め基板の上に形成した多数のパターン状の開口部に、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを吐出し、基板上に多数の画素部を形成する吐出パターン生成方法であって、基板上に多数の開口部パターンを形成する工程と、
前記開口部のパターン形状をもとに、インクジェットヘッドに属するノズルのうち、吐出に使用されるべき有効ノズルを選択する工程と、
前記開口部に対して与えられるべきインクの理論液量をもとに、前記有効ノズルから前記開口部に対して付与されるべきインクのドロップ数を求める工程と、
前記ノズルから開口部に対して実際に吐出されたインク液量を測定する工程と、
この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程と、を備えたことを特徴とする吐出パターン生成方法。
(請求項2)
前記この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程において、発生させた乱数のうち低周波部分を除いたことを特徴とする請求項1に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項3)
前記有効なノズルのうち、一部のノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定し、
前記有効なノズルのうち残りのノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差のみに基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定することを特徴とする請求項1、または2に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項4)
複数のノズルを有する複数のノズルヘッドからなる吐出パターン生成方法であって、ノズルヘッドごとに、ノズルから一回に吐出するインクの吐出量を設定する工程を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項5)
前記ドロップ数の増減数が、同一ノズルヘッドによって開口部に吐出したインクの平均総液量の理想値からのズレの大きさにより重み付けされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項6)
乱数によって増減させる前の前記ドロップ数を、前記平均総液量の理想値に最も近くなるように設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吐出パター
ン生成方法。
(請求項7)
前記ドロップ数の増減数の最大値が、同一ノズルヘッドによる各開口部の平均総液量のバラツキの程度によって決定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
(請求項8)
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に着色層を形成するカラーフィルタの製造方法であって、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(請求項9)
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に一層あるいは複数の有機機能層を形成する有機機能性素子の製造方法であって、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、有機機能層を形成することを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
(請求項10)
請求項1〜7のいずれかに記載のパターン生成方法に用いられる吐出パターンを形成する手段を備えた吐出パターン生成装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、各セルに吐出するインクの吐出量にランダムなバラツキを与える等の関数手段を有することにより、セルごとに実際に吐出するドロップ数に幅を持たせることで、セルライン内に一定幅のバラツキを持たせ、セルラインごとの平均吐出量のバラツキを目立たなくすることができ、これにより全体的な色ムラを低減することができた。
【0015】
また、本発明に係る吐出パターン生成方法によって、ランダムなバラツキであっても、目視観察等を実施した際、ざらつき感を低減することができた。
【0016】
本発明に係る吐出パターン生成方法および装置によって、ドロップ数を増減させるノズルをランダムに選択することにより、各ノズルの吐出量のバラツキから生じる色ムラを低減することができ、全体として各セル間の吐出量のバラツキを低減することができた。また、増減ノズルを特定ノズルに選択した場合は、逆に各ノズルのバラツキを利用し色ムラの調整をすることにより、ランダムに選択した場合より、全体として各セル間の色ムラを低減することができた。
【0017】
本発明によって、より均質な着色層が形成できた。このことにより高精細で色むら、バラツキの少ない高品質なカラーフィルタがより短時間で製造可能となった。
【0018】
本発明によって、より均質な膜厚の有機機能層が形成することができ、発光ムラの少ない有機EL素子等、高品質な有機機能性素子を製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の吐出パターン生成装置の全体構成の一例である。本発明吐出パターン生成装置には、複数のインクジェットノズルを複数列組み合わせて配置したインクジェットノズルヘッド1を複数個配列したインクジェットノズルヘッドユニット2を持つ構成である。カラーフィルタを生成するためには、着色層を形成する各色(例えばR、G、B)のインクの吐出を行う必要があるため、前述した複数個並んでいるインクジェットノズルヘッドの組み合わせが各色配置されている。また、インクジェットノズルヘッドユニットは主走査方向に移動し、画像描画を行う。
【0020】
基板置き台3は、主走査方向と直行する副走査方向に移動可能であり、さらにθ方向に回転可能である。θ方向に回転可能なため、基板置き台の上に置かれた基板の隔壁とインクジェットノズルヘッドユニットを平行に合わせることができ、副走査方向に動作させることで画像描画を行うことができる。また、基板置き台には図示されていないが吸着機構を備えており、基板置き台におかれた基板を固定することが可能である。
【0021】
本発明の吐出パターン生成装置は、少なくともインクを隔壁の開口部に吐出するためのインクジェットノズルヘッドに存するノズルと、あらかじめ入力されたパラメータ情報に基づいて位置情報を認識あるいは計測し、これを出力する手段と、ノズルから吐出するインクのドロップ数の増減を関数を用いて決定する手段とを有する。さらには、ドロップ数を増減させる特定ノズルを選択する手段を有する吐出パターン生成装置である。なお、パラメータ情報とは、例えば基板のサイズ、形成パターン等の事前に入力される情報と、ノズル及び基板の位置等の逐次入力されるノズル及び基板に係る情報を合わせた、吐出パターンに係る情報である。乱数は、吐出パターン生成装置に組み込まれた擬似乱数生成器を用いて、擬似乱数列を生じさせこれを用いることができる。
【0022】
本発明に用いる関数は、乱数列におけるパワーベクトルのざらつき感を低減するための乱数であることが望ましい。通常乱数は、図2に示すような形態である。この乱数をFFT(高速フーリエ変換)しパワースペクトルを求めたものを、図3に示す。
【0023】
一方、画像評価手法に関する公知文献では、人間の目で対象物を観察する際、敏感に知覚するかどうかの一つの尺度として、MTFあるいはVTFを用いることが一般的である。
【0024】
この関数で、知覚に敏感なのは、空間周波数における低周波数部分(本発明では3.00E+00以下をいう。理由は、人間の目で一番敏感な部分が1.00 E+00であり、さらに余裕を見てこの範囲としたためである。)である。低周波部分はそこで、乱数の中で、該当する周波数成分を除去した乱数を画像に展開すると、ざらつき感が低減されることが、実験等で確認されている。乱数をハイパスフィルタ(高域フィルタ)に通すことにより、低周波部分の除去が可能となる。
【0025】
その乱数の一例を図4に示す。またそのパワースペクトルを図5に示す。
【0026】
本発明に用いるインクジェットノズルヘッド及びインクを吐出するためのノズルは、複数のノズルが配置された構成のものであれば適用可能であるが、図6のように、一列に配置されたノズルが、複数の組み合わされているものを用いる。この場合、各相のノズルは各々異なったタイミングでインクを吐出される。例えば図6はインクジェットノズルヘッド1の断面図の模式図であるが、ノズルA相、ノズルB相、ノズルC相(以下A相、B相、C相と記す)の同じ行からインクが吐出されるタイミングはA、B、Cの順でずれる。この方式(以下、シェアウェーブモードと記載)では各ノズルの間隔、例えばA層〜B層、B層〜C層を狭め、高密度なインクジェットノズルヘッドとすることができるために、高精細な吐出パターン形成が必要なカラーフィルタの製造に適している。
【0027】
このインクジェットノズルヘッド1は、A相、B相、C相に対応するバッファ(以下、ラインバッファと記載)を備えていて、各相のラインバッファは相互に情報を転送することができる。このインクジェットノズルヘッドから吐出されるまでの簡単な動作フローを図7に示す。
【0028】
まず、A相ラインバッファが、吐出パターン情報を受けとり、その転送された情報のうちA相に関する情報に基づいてA相インク吐出口から吐出を開始する。また、A相インク吐出口から吐出開始と同時に、吐出パターン情報をA相ラインバッファからB相ラインバッファに転送する。A相インク吐出口から吐出終了後、B相インク吐出口は、転送された吐出パターン情報のうちB相に関する情報に基づいて吐出を開始する。また、B相インク吐出口から吐出開始と同時に、吐出パターン情報をB相ラインバッファからC相ラインバッファに転送する。B相インク吐出口から吐出終了後、C相インク吐出口は、転送された吐出パターン情報のうちC相に関する情報に基づいて吐出を開始する。C相インク吐出口から吐出終了後、ラインカウンターにて設定回数ライン吐出を行ったかどうかの判定を行い、設定回数の吐出が行なわれていなければ、吐出パターン情報をA相ラインバッファに転送する。再び、A相インク吐出口は吐出パターン情報に基づいて吐出開始する。以下、前述した動作をライン数分繰り返し行い、所望の吐出パターンを作成する。
【0029】
以上がシェアウェーブモードでの吐出制御方法であるが、本発明の吐出装置はその他の方式でも問題ない。以下、本発明の吐出パターン形成方法によってカラーフィルタを形成する場合を例に説明するが、その他の光学素子、例えば有機EL素子の場合であれば発光層の各色画素を形成する場合にも同様に本発明を用いることができる。
【0030】
吐出パターン情報に基づいてインクジェットノズルヘッドのノズルからインクを吐出する制御手段として、例えばインクジェットノズルヘッドコントローラー4を吐出装置に接続する。インクジェットノズルヘッドコントローラー4は、インクジェットノズルヘッドを駆動し、インクジェットノズルヘッドパラメータ情報と吐出パターンが格納されている。インクジェットノズルヘッドパラメータ情報は、インクジェットノズルヘッドを駆動させるための情報である。吐出パターン情報は、インクジェットノズルヘッドの位置情報を引数として、特定のノズルの吐出についての情報が格納されている。吐出を行う際にインクジェットノズルヘッドコントローラーから各ノズルに吐出パターン情報が転送され、描画を行うことが可能である。
【0031】
また、上記インクジェットノズルヘッドコントローラー4のインクジェットノズルヘッドを駆動させるためのインクジェットノズルヘッドパラメータ情報には、インクジェットノズルヘッドごとに最適の電圧値のパラメータを設定できることが好ましい。全てのインクジェットノズルヘッドの駆動電圧を同じ値に設定すると、インクジェットノズルヘッドから吐出される液滴の量が個体差により変わるため、基板内にインクを均一に吐出することができなくなるおそれがある。インクジェットノズルヘッドごとに最適の電圧値のパラメータを設定できるようにすることによって、インクジェットノズルヘッドごとの吐出量を制御することが可能となり、各セルの吐出量を調整することができる。
【0032】
本発明の有する、位置情報を認識、または計測し、これを出力する手段は、予め入力されたカラーフィルタのサイズ、隔壁パターンのピッチ、画素部のパターン(ストライプ配列、セル配列、モザイク配列等の情報配列パターンを含む)等のカラーフィルタ基板のパラメータと、インクジェットノズルヘッド及びノズルの位置情報(ヘッドの位置ずれ情報を含む)と、吐出装置の基板の置き台の移動量等のパラメータ(以下、合わせて吐出パターン情報と記載)から、ノズルから基板上に吐出されるインクの着弾位置を算出する。あるいは、吐出装置に設置されたカメラによって、基板表面の画像を取得し、処理し、インクの着弾位置を算出することもできる。
【0033】
基板上の隔壁パターンに対してインクジェットノズルヘッド及びノズルの位置が算出した後、この情報を基に、インクの着弾位置が、画素部の形成位置(目的とする隔壁開口部:セル)であるか否かをプログラムにより処理判断する。着弾位置が目的とする隔壁開口部に該当する場合のみ有効なノズルとして認識され、そうではないノズルからは吐出されない。
【0034】
図8は、ノズルが有効か否かの判断の具体例である。インクジェットノズルヘッドのノズル5のうち、カラーフィルタ基板の開口部の直上部にあたるノズルについては有効と判断され、それ以外のノズルは無効と判断し、吐出パターン情報を生成する。そして、この吐出パターン情報に従って、各インクジェットノズルヘッドのノズルは目的とするセル内にインクを吐出する。
【0035】
ここで本発明の吐出装置及び吐出方法を用いない場合には、セルライン内においては、セルごとの吐出量のバラツキが小さい場合、つまり各セルの吐出量の標準偏差が小さい場合(セルライン内の吐出量の標準偏差)でも、各セルライン間の吐出量の標準偏差(セルライン間の吐出量の標準偏差)が、セルライン内の吐出量の標準偏差に比べて大きいために、全体として視覚的に色ムラの大きいカラーフィルタとなってしまう。
【0036】
そこで本発明の吐出パターン形成装置は、有効なノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数が乱数を用いて決定する手段を有することによって、この問題を解決する。つまり、ある一定規定量のドロップ数(以下、基本ドロップ数)から、各セルに実際に吐出するドロップ数に幅を持たせることで、セルライン内に任意のバラツキを持たせ、各セルラインの平均吐出量のバラツキを目立たなくすることができ、これにより全体的な色ムラを低減することができる。
【0037】
ここで、ノズルから吐出するインキのドロップ数の増減数を乱数を用いて決定する手段は、上述の有効なノズルから吐出するノズルを選択し、さらに、演算用計算機により、乱数を用いて、吐出するインキのドロップ数を規定の値から任意の増減を与える。あらかじめ設定した増減数の範囲内で、ランダムに増減数を振り分けることで、画素部の各セルに吐出するインキのドロップ数に幅を持たせ、ノズルごとの吐出量バラツキによる各画素間の色ムラを低減することが可能となる。各セルラインにおいて、ランダムにドロップ数の増減を与えることによって、意図的にセルライン間の吐出量の標準偏差と、セルライン内の吐出量の標準偏差を近づけることができるからである。
【0038】
また、理想的な着色層の膜厚を形成するためのインキの理論総液量を吐出することが理想であるが、課題でも述べたように、ノズルごとの吐出量のバラツキ、クロストークの影響などによって、実際の平均インキ総液量は、理論インキ総液量からずれている場合がある。そこで、実際に吐出された(各セルラインにおける)平均インキ総液量が多い場合には、増減するドロップ数が減少する方向に乱数の割り振りに加重を掛ける事により、平均インキ総液量を理論値により近い値にすることが可能であり、より高品質なカラーフィルタが製造できる。例えば、平均総液量が理論層液量よりも多い場合には、ドロップ数が減少する割合よりも増加する割合が増えるように、ランダム関数を増減するドロップ数に割り振る。
【0039】
なお、インキの平均総液量が理論総液量に比べて大きな液量差がある場合には、ノズルから吐出する基本ドロップ数を増減すればよい。これにより平均総液量と理論総液量の差を1ドロップ以下にすることができる。従来の方法、例えばノズルからの1ドロップの吐出量を増減する方法も考えられるが、ノズルヘッドごとにノズルからの吐出量を設定する場合には、ノズルヘッド全体でノズルからの吐出量が変わってしまうために、液量の調整は困難である。
【0040】
そこで、本発明のように、ドロップ数の増減を決定する乱数の割り振りに加重を掛ける事により、さらに理論インキ総液量に近い値まで平均インキ総液量を近づけることが可能となる。
【0041】
また、吐出するノズルの選択に乱数を用いてランダムに指定することによって、各ノズルの吐出量のバラツキから生じるムラを軽減することができ、全体として各セル間の吐出量のバラツキを低減することが可能とともに、調整回数を減らすことが可能となる。
また、吐出するノズルを特定した場合は、各ノズルの吐出量のバラツキを逆に利用することにより、ランダムに指定した場合より全体として各セル間の吐出量のバラツキをより低減するとができる。
本発明は、インクジェット法を用いたパターンの形成において、画素部の膜厚のバラツキを軽減し、ムラをなくすものであるから、インクジェット法を用いた素子の作製に適用可能である。以下に本発明を用いた素子の製造方法の例として、カラーフィルタ及び有機機能性素子の製造方法を説明する。
【0042】
カラーフィルタあるいは有機機能性素子のいずれの素子の製造についても、基板上に隔壁が形成し、そこに画素部を形成することにより作成できる。
【0043】
基板について以下に説明する。基板は、印刷物の支持基板として用いるものである。目的とする光学素子により、基板の種類は異なるが、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等、ドライフィルム等、公知の透明基板材料を使用することができる。中でもガラス基板は、カラーフィルタ、有機EL素子用途において、透明性、強度、耐熱性、耐候性において優れている。
【0044】
隔壁について以下に説明する。本発明ではインキジェット印刷装置により基板にインキを付与し、カラーフィルタあるいは有機機能性素子を形成する。異なる種類のインキ同士の混色(又は混合)を防止するため、基板上に予め隔壁を形成することが好ましい。
【0045】
隔壁は、基板の表面を多数の領域に区分けすると共に、この多数の領域のそれぞれに吐出されたインクの混色を防止する機能を有するものである。混色を防止するため、隔壁には一定の撥インク作用を示すものを用いることが望ましい。例えば、撥インク剤を含む樹脂組成部により隔壁を形成する方法、樹脂組成物により形成した隔壁にプラズマ処理を行い撥インク性を付与する方法、隔壁を光触媒層とともに形成し光触媒作用により隔壁に撥インク性を付与する方法などを例示することができる。また、ディスプレイの表示画面を構成するカラーフィルタ、有機EL素子においては、この隔壁に遮光性を付与することで、表示画面のコントラストを向上させることができる。いずれの場合であっても、隔壁を樹脂組成物より形成する場合には、樹脂バインダーと撥インク剤とを必須成分として含有する必要がある。
【0046】
隔壁は印刷法、フォトリソグラフィー法等の公知の隔壁形成方法により形成することができる。
【0047】
カラーフィルタの製造方法について以下に説明する。カラーフィルタを形成する場合、まず前記の基板上に、上記の方法で隔壁を形成する。着色インクを使用して、本発明の吐出パターン形成装置により着色層を形成する。着色インクは、着色顔料、溶媒、樹脂バインダーを必要に応じて含むことができる。
【0048】
有機機能性素子の製造方法について以下に説明する。有機EL素子または有機太陽電池、あるいは有機半導体を形成する場合にもまず前記の基板上に、隔壁を形成する。インクに有機発光材料を含むものとし、本発明の吐出パターン生成装置及び吐出方法を用いて基板上に吐出、有機機能層を形成し製造することができる。このインクは、有機発光材料、溶媒、樹脂バインダーを、必要に応じて含むことができる。溶媒、樹脂バインダーは、前記隔壁の形成で掲げたものと同様の材料を使用することができる。
【0049】
有機発光材料について以下に説明する。有機発光材料としてクマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の有機溶剤に可溶な有機発光材料や該有機発光材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系などの高分子有機発光材料が挙げられる。
【0050】
本発明の吐出装置による吐出パターン生成方法を具体例により説明する。
【0051】
まず、前述したように吐出パターンに従って、ノズルの有効・無効が判断される。基上の隔壁開口部に存在し、かつ画素部に形成する画素に対応するインクを吐出するノズルを有効とする(図4参照)。
【0052】
次に、一つのセル内にある有効なノズルの数(以下、吐出ノズル数)Nは、各セルに充填するインクの総液量や、セルのサイズ等によって任意に決定することが出来る。
【0053】
一つのノズルから一回に吐出されるインクの量(1ドロップの吐出量)がaとし、全ての吐出ノズルからのインクのドロップ数(基準ドロップ数)をDとすると、インクの理想総液量MはD×aで表され、各ノズルに割り当てられるドロップ数dはD/Nとその余りとなる。
【0054】
次に、本発明においては、インクの理想総液量Mに対して、Mよりも小さいある設定量mを理想総液量Mからの増減量として想定する。この設定量mは、例えば、実際の各セルライン内のセルの総液量のバラツキ(標準偏差)から算出される。前述のように、このセルライン内の吐出量の標準偏差と、セルライン間の平均吐出量の標準偏差が近く、さらに平均吐出量が各セルライン間で一致するように調整することが好ましい。
【0055】
さらに、ここで実際の平均総液量M´と理想総液量Mとの差を考慮し、各セルラインのドロップ数を調整する。ここで調整により、理想総液量からできるだけ近しくなることが望ましい。例えば、増減するドロップ数は、平均総液量M´と理想総液量Mとの差と、1ドロップのインク吐出量によって決定することができ、調整後のドロップ数D’は以下のように書くことができる。
【0056】
D’=D−[(M−M’)/a](式1)
なお、Mは、理想総液量
M´は、平均総液量
Dは、基準ドロップ数(理想ドロップ数)
D’は、調整後のドロップ数
aは、1ドロップの吐出量である。
【0057】
上記のようなドロップ数の調整によって、平均総液量は理想総液量に近づけることができ、調整後の平均総液量M´´となる。理想総液量M、平均総液量M´、調整後の平均総液量M´´、設定量m、吐出ノズル数N、1ドロップの吐出量a、基準ドロップ数D、ドロップ数の増減数基準値b等の各設定パラメータは、吐出パターン情報としてあらかじめ設定、格納される。
【0058】
次に、設定パラメータと乱数を用いて、各セルにおけるドロップ数D(x)を決定する。ここでxは各セルを表すシンボルとする。調整後の平均総液量M´´が理論総液量Mと等しい場合、ドロップ数D(x)を決定する式は、ドロップ数の増減数をb−iとして、例えば以下のように書くことができる。
【0059】
D(x)=D’+b−i(式2)
ただし、iは
0≦i≦2b+1
i/(2b+1)≦RAND(x)≦(i+1)/(2b+1)
となる整数
なお、D(x)は、ドロップ数数式
bは、ドロップ数の増減数基準値
RAND(x)は、乱数を生成する関数である。
【0060】
ここでRAND(x)は0以上1以下の実数の乱数を生成する関数を表す。調整後の平均総液量M´´が理論総液量Mと異なる場合、ドロップ数D(x)を決定する式は、ドロップ数の増減数をb−jとして、例えば以下のように書くことができる。
【0061】
D(x)=D’+b−j(式3)
ただし、jは、
0≦j≦2b
0≦RAND(x)−(M−M”)/m≦1のとき、j/(2b+1)+(M−M”)/m≦RAND(x)≦(j+1)/(2b+1)+(M−M”)/m
RAND(x)−(M−M”)<0のとき、j=0
1<RAND(x)−(M−M”)/mのとき、j=2b
となる整数
なお、jは、整数である。
【0062】
上記の式によって、例えば実際の平均総液量M´´が理想総液量よりも多い場合には、各セルのドロップ数は、確率的に基準ドロップ数よりも少ないドロップ数に傾き、結果として、補正された平均総液量は理想総液量に近い値となる。
【0063】
また、決定されたドロップ数の増減値が、連続するセル間で一定以上偏った場合には、再度乱数によって計算しなおし、一定以上の偏りをなくすことも可能である。
【0064】
以上のように、本発明の方法によれば、ノズルごとの吐出量のバラツキを測定し、ノズルごとに吐出量を補正するといった煩雑な作業を伴わず、各画素間の色ムラを低減することが可能となる。さらに、同一ノズルにおける吐出回ごとの吐出量のバラツキに対しても、影響を低減することができる。
ただし、上記の方法一回で作成した基板で、完全に色ムラが消えない場合は、幅方向全セルの色相データを取りそのデータより色ムラの調整を行う必要がある。
ムラ調整を行う場合、幅方向全セルの色相データ等を取得し、幅方向隣接セルの色相データのバラツキを低減するように各セルの液量を調整する。その調整量を決定するには、色相データと液量の関係を導出しておく必要がある。色相データと液量関係を導出するには、各セルの液量を単位ドロップ増減させた基板を作成し、幅方向全セルの色相データを取得し、各セルの検量線を作成する。各セルの調整液量は幅方向全セルの色相データと目標色相データの差と前述の検量線の2つから決定する。
液量調整で増減するノズルを乱数を用いて決定する場合、増減ノズルになり得るノズルはセル内の有効ノズル数分あることになる。増減ノズルを特定する場合は、増減ノズルは有効ノズルのどこか1ノズルになる。
図9は、有効ノズルから、矢印で示されている増減ノズルを一つに特定した場合の説明図である。図10は増減ノズルを乱数により決定の場合の説明図である。
検量線を求めるときに単位ドロップ増減するノズルは、有効ノズルの中の一つであるので、液量調整で増減するノズルを乱数を用いて決定する場合、セルラインの多くのセルで検量線作成時使用したノズルとは異なるノズルを使用することになる。そのため、正確な検量線ではないため調整量が正確ではなくなる。調整での増減ノズルを検量線導出に使用したノズルと同一ノズルに特定した場合は、乱数の場合より正確な調整量を導出できる。
【0065】
次に、実施例として、本発明のカラーフィルタの製造方法を説明する。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
隔壁の形成した、以下に説明する、撥インク性を付与する材料を含有した感光性樹脂組成物として、下記組成比で配合した黒色感光性樹脂組成物を用いた。基板としては無アルカリガラス(1737:コーニング(株)製)を用い、その上にこの黒色感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布し、温度90℃のホットプレートにて1分間プリベーク処理をして基板上に膜厚2.0μmの被膜を形成した。
【0067】
感光性樹脂組成物の組成は、
シクロヘキサノン(沸点155.7℃) 80重量部
クレゾール−ノボラック樹脂:EP4050G(旭有機材工業(株)製) 15重量部
メラミン樹脂:MW30(三和ケミカル(株)製) 5重量部
カーボン顔料:MA−8(三菱マテリアル(株)製) 23重量部
分散剤:ソルスパース5000(ゼネカ(株)製) 1.4重量部
ラジカル重合性を有する化合物:トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化
学工業社製)5重量部
光重合開始剤:イルガキュア369(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)2重量部
含フッ素化合物:モディパーF−600(日本油脂(株)製、質量平均分子量35000
)5重量部、
である。
【0068】
続いてストライプ状のパターンであるフォトマスクを用いて、超高圧水銀灯により100mJ/cm2の露光処理を施し、さらに現像処理を行うことで所望される隔壁パターンを得た。その後、熱風式焼成炉内にて加熱処理を施した。
【0069】
着色インクの調整について以下に説明する。下記組成物を、窒素雰囲気下でアゾビスイソブチルニトリル0.75重量部を加え、70℃5時間の条件で反応させ、アクリル共重合体樹脂を得た。
【0070】
着色インク組成物の組成は、
メタクリル酸20重量部
メチルメタクリレート10重量部
ブチルメタクリレート55重量部
ヒドロキシエチルメタクリレート15重量部
乳酸ブチル300重量部
であり、得られたアクリル共重合体樹脂が、全体に対して10重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて希釈し、アクリル共重合体樹脂の希釈液を得た。
【0071】
この希釈液80.1gに対し、着色顔料19.0g、分散剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル0.9gを添加して、3本ロールにて混練し、赤色、緑色、青色の各着色ワニスを得た。なお、赤色顔料として、ピグメントレッド177を、緑色顔料としてピグメントグリーン36を、青色顔料としてピグメントブルー15を、各々使用した。
【0072】
得られた各着色ワニスに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを、その顔料濃度が12〜15重量%、粘度が15cpsになるように、各々調整して添加し、赤色、緑色、及び青色着色インクを得た。
【0073】
カラーフィルタを作製した。以下に説明する。図1に示される本発明の吐出装置を用いて、着色層を形成した。ここで、各セルの理想総液量Mは660pl、設定量mは24pl、ドロップ数の増減数bは2、1ドロップの吐出量aは6plである。
【0074】
次に、吐出装置のインクジェットノズルヘッドコントローラー4(図1参照)に数2に示された数式で各セルのドロップ数を決定するプログラムを組み込み、画素部の形成を行った。
【0075】
実施例1の結果は、図11、図12の各表は基板上着色層の各セルを示し、図11は、ドロップ数は補正前の各セルのドロップ数であり、図12は、実施例1での補正後のドロップ数である。
【0076】
実施例1の各セルの総液量を実測した結果、補正後の平均総液量M´´は660.077plと理想総液量Mの660plに近い値となり、全体として色ムラの低減されたカラーフィルタとなった。
【0077】
以上のように、ノズルごとの吐出量のバラツキを測定して、ノズルごとに吐出量を制御することなく、短時間で各着色層のセルごとの吐出量のバラツキを低減し、高精度なカラーフィルタを製造することができた。
【0078】
本発明の吐出装置による吐出パターン生成方法の比較例として、従来の吐出パターン生成方法を用いた実施例2を実施した。以下に、詳細に説明する。
【0079】
(実施例2)
実施例2は、総ドロップ数は、実施例1の補正前の基準ドロップ数を各セルへの吐出し、理想総液量Mは660plの塗布条件で着色層を形成し、それ以外は実施例1の方法と同様の方法である。実施例2の結果は、平均総液量M´´は図13のようになる。このように、セルライン上では同一のノズルヘッドを用いている、セルライン内の吐出量はほぼ等しくなってしまい、異なるノズルヘッドを用いたセルライン間の吐出量がバラツキ、セルライン内の標準偏差とセルライン間の標準偏差とが離散した、その色ムラが視覚的に目立ってしまった。
【0080】
(実施例3)
実施例3は増減ノズルをランダムとした場合と、特定した場合で実施した。
表1に増減ノズルをランダムに選択した場合のあるラインセルの平均総液量等を示した。
表2に増減ノズルを特定ノズルにした場合のあるラインセルの平均総液量等を示した。
表2の増減ノズルで使用したノズルは、検量線導出で増減されたノズルと同一とする。
注目セルの色相データのズレが0.104であったとする。セルラインは1000ラインとする。検量線を求めたときの増減ノズルは3番ヘッドの20番ノズルで、その時の検量線は1plあたり0.065とする。
変更セル数は(0.104×1000)/(6×0.065)=267セルとなる。
増減ノズルをランダムにした場合は平均総液量423.125plで、増減ノズルを特定した場合は平均総液量423.000plとなり、増減ノズルを特定したほうが理論総液量に近づけられることがわかる。
【表1】
(表1)増減ノズルをランダムに選択した場合のあるラインセルの平均総液量等を示した表。
【表2】
(表2)増減ノズルを特定ノズルにした場合のあるラインセルの平均総液量等を示した表。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の吐出パターン生成装置の全体構成図例を示す概略図。
【図2】乱数の一例を示す図。
【図3】乱数のパワースペクトルを示す図。
【図4】低周波数の乱数を除去した乱数を示す図。
【図5】低周波数の乱数を除去した乱数のパワースペクトルを示す図。
【図6】シェアウェーブモードのインクジェットノズルヘッドのノズル概略図。
【図7】シェアウェーブモードのインク吐出動作フローチャート。
【図8】インクジェットノズルヘッドのノズルから有効なノズルを選択する概略図。
【図9】セル内の乱数により1つ選択されたノズルを示す概略図。
【図10】セル内の乱数により2つ選択されたノズルを示す概略図。
【図11】調整前のドロップ数の図表。
【図12】実施例1の結果のドロップ数の図表。
【図13】調整前のセル内総液量の図表。
【符号の説明】
【0082】
1…インクジェットノズルヘッド
2…インクジェットノズルヘッドユニット
3…基板置き台
4…インクジェットノズルヘッドコントローラー
5…ノズル
6…有効なノズル
7…隔壁開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成した多数のパターン状の開口部に、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを吐出し、前記基板上に多数の画素部を形成する吐出パターン生成方法であって、
基板上に多数の開口部パターンを形成する工程と、
前記開口部のパターン形状をもとに、インクジェットヘッドに属するノズルのうち、吐出に使用されるべき有効ノズルを選択する工程と、
前記開口部に対して与えられるべきインクの理論液量をもとに、前記有効ノズルから前記開口部に対して付与されるべきインクのドロップ数を求める工程と、
前記ノズルから開口部に対して実際に吐出されたインク液量を測定する工程と、
この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、
次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程と、を備えたことを特徴とする吐出パターン生成方法。
【請求項2】
前記この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程において、発生させた乱数のうち低周波部分を除いたことを特徴とする請求項1に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項3】
前記有効なノズルのうち、一部のノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定し、
前記有効なノズルのうち残りのノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差のみに基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定することを特徴とする請求項1、または2に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項4】
複数のノズルを有する複数のノズルヘッドからなる吐出パターン生成方法であって、ノズルヘッドごとに、ノズルから一回に吐出するインクの吐出量を設定する工程を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項5】
前記ドロップ数の増減数が、同一ノズルヘッドによって開口部に吐出したインクの平均総液量の理想値からのズレの大きさにより重み付けされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項6】
乱数によって増減させる前の前記ドロップ数を、前記平均総液量の理想値に最も近くなるように設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吐出パター
ン生成方法。
【請求項7】
前記ドロップ数の増減数の最大値が、同一ノズルヘッドによる各開口部の平均総液量のバラツキの程度によって決定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項8】
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に着色層を形成するカラーフィルタの製造方法であって、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に一層あるいは複数の有機機能層を形成する有機機能性素子の製造方法であって、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、有機機能層を形成することを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のパターン生成方法に用いられる吐出パターンを形成する手段を備えた吐出パターン生成装置。
【請求項1】
基板の上に形成した多数のパターン状の開口部に、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを吐出し、前記基板上に多数の画素部を形成する吐出パターン生成方法であって、
基板上に多数の開口部パターンを形成する工程と、
前記開口部のパターン形状をもとに、インクジェットヘッドに属するノズルのうち、吐出に使用されるべき有効ノズルを選択する工程と、
前記開口部に対して与えられるべきインクの理論液量をもとに、前記有効ノズルから前記開口部に対して付与されるべきインクのドロップ数を求める工程と、
前記ノズルから開口部に対して実際に吐出されたインク液量を測定する工程と、
この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、
次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程と、を備えたことを特徴とする吐出パターン生成方法。
【請求項2】
前記この測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定する工程において、発生させた乱数のうち低周波部分を除いたことを特徴とする請求項1に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項3】
前記有効なノズルのうち、一部のノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差と、任意に発生させた乱数に基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定し、
前記有効なノズルのうち残りのノズルについては、前記測定したインク液量と前記インクの理論液量の差のみに基づいて、次にノズルから吐出するインクのドロップ数の増減数を決定することを特徴とする請求項1、または2に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項4】
複数のノズルを有する複数のノズルヘッドからなる吐出パターン生成方法であって、ノズルヘッドごとに、ノズルから一回に吐出するインクの吐出量を設定する工程を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項5】
前記ドロップ数の増減数が、同一ノズルヘッドによって開口部に吐出したインクの平均総液量の理想値からのズレの大きさにより重み付けされることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項6】
乱数によって増減させる前の前記ドロップ数を、前記平均総液量の理想値に最も近くなるように設定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の吐出パター
ン生成方法。
【請求項7】
前記ドロップ数の増減数の最大値が、同一ノズルヘッドによる各開口部の平均総液量のバラツキの程度によって決定されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法。
【請求項8】
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に着色層を形成するカラーフィルタの製造方法であって、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、着色層を形成することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項9】
基板上に隔壁パターンと、該隔壁パターンの開口部に一層あるいは複数の有機機能層を形成する有機機能性素子の製造方法であって、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吐出パターン生成方法により、有機機能層を形成することを特徴とする有機機能性素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載のパターン生成方法に用いられる吐出パターンを形成する手段を備えた吐出パターン生成装置。
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−82807(P2009−82807A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254694(P2007−254694)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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