説明

吐出部、塗布装置及び塗布方法

【課題】塗布対象物の塗布領域に液体を均一に塗布する。
【解決手段】ヘッドシリンダ12の軸線に対して、ノズル10の吐出路140は斜めに形成されている。また、吐出方向変更部40は、モータ64とプーリ62とベルト60と制御部66aとから構成される。吐出方向変更部40によって、ノズル10の吐出路140は、ノズル10の送り方向の逆側に所定角度だけ鉛直線に対し傾斜した方向に向けられる。ノズル10の送り動作をしながら溶液を吐出した場合に、ノズル10の相対速度の送り方向成分は、送り方向と逆方向に鉛直線から傾斜した向きにノズル10から溶液が吐出されることによって相殺され、基板の塗布領域に対して鉛直方向から溶液が塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を吐出する吐出部、塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機EL表示装置を製造する際、発光層を含む有機EL層を形成する工程においては、液体を吐出するノズル孔を有するノズルを基板に相対的に移動させると同時に、ノズル孔から有機EL材料(溶液)を連続的に吐出させて、基板上に塗布することによって有機EL層を形成する方式がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機EL材料を塗布すべき所定のパターン形状に応じた溝を基板上に形成しておき、この溝にノズルを沿わせるように基板とノズルとを相対的に移動させて、前記ノズルからの有機EL材料を前記溝内に流し込んで塗布する過程を備えたことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されているノズルは、塗布対象物の表面に対して垂直方向に液体を吐出しながら移動する。このため、ノズルから吐出され、塗布対象物に付着する液体は、塗布対象物への付着点を中心にして略均一に広がるのではなく、液体の付着点から主にノズルの進行方向に向かって広がってしまう。特に、塗布対象物に凹凸がある場合には、液体を均一に塗布することが困難であった。
このため、特に大型の有機EL基板を製造するのが困難であり、製品仕様が限定されることとなっていた。
【0006】
なお、このような問題点は、所定の条件のもと、発光層の材料を含む液体以外の液体を塗布するときにも生じ得ると考えられる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、塗布対象物の塗布領域に液体を均一に塗布することができる吐出部、それを用いた塗布装置、及びその塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る吐出部は、
塗布対象物の塗布領域に対して相対的に移動しながら、前記塗布領域に液体を吐出する吐出部であって、
前記吐出部は、
前記液体が充填される本体と、
前記本体の一端側に設けられ、前記液体を吐出する吐出路を有するノズルプレートと、を備え、
前記吐出路の軸線は、鉛直線に対して、前記吐出部の前記塗布領域に対して相対的に進行する進行方向の逆側に向けて傾斜している、
ことを特徴とする。
【0009】
また、前記吐出路の軸線は、前記進行方向への前記吐出部の進行速度に合わせて、前記吐出路から吐出した前記液体が前記塗布領域に入射する方向を鉛直方向に近づけるように傾斜されていることが好ましい。
【0010】
例えば、前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して傾斜してもよい。
【0011】
更に、前記吐出路の前記液体を吐出する吐出面は、前記吐出路の軸線に垂直に形成されているようにしてもよい。
【0012】
また、前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して平行であり、
前記本体の軸線が鉛直線に対して傾斜しているようにしてもよい。
【0013】
本発明の第2の観点に係る塗布装置は、
塗布対象物の塗布領域に液体を塗布する塗布装置であって、
前記液体が充填される本体と、前記本体の一端側に設けられ、前記液体を吐出する吐出路を有するノズルプレートと、を有する吐出部と、
前記吐出部を前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に進行するように、前記吐出部あるいは前記塗布対象物の少なくとも一方を移動させる移動部と、
前記吐出路の軸線を、鉛直線に対して、前記吐出部が前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に進行する進行方向の逆側に向けて傾斜させる吐出方向変更部と、を備える、
ことを特徴とする。
【0014】
例えば、前記吐出路の軸線は、前記進行方向への前記吐出部の進行速度に合わせて、前記吐出路から吐出した前記液体が前記塗布領域に入射する方向を鉛直方向に近づけるように傾斜されていてもよい。
【0015】
また、前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して傾斜しており、
前記吐出方向変更部は、前記移動部により設定される前記吐出部あるいは前記塗布対象物の相対的な進行方向の変更に応じて、前記本体の軸線を中心として所定の角度に前記吐出部を回動させて、前記吐出路の軸線の鉛直線に対する傾斜方向を変更する第1の吐出方向変更部を備えることが好ましい。
【0016】
または、前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して平行であり、
前記吐出方向変更部は、前記移動部により設定される前記吐出部あるいは前記塗布領域の相対的な進行方向の変更に応じて、前記本体に前記移動方向に直交して水平方向に設定された支持軸を中心として前記吐出部を回動させて、前記本体の軸線の鉛直線に対する傾斜方向を変更する第2の吐出方向変更部を備えるようにしてもよい。
【0017】
本発明の第3の観点に係る塗布方法は、
塗布対象物の塗布領域に液体を塗布する塗布方法であって、
前記液体を吐出する吐出路を有する吐出部が前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に進行する進行方向に応じて、前記吐出路の軸線を、鉛直線に対して、前記吐出部の前記塗布領域に対する相対的な進行方向の逆側に向けて傾斜させ、
前記吐出部が前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に前記進行方向に進行するように、前記吐出部或いは前記塗布対象物の少なくとも1つを移動しながら、前記吐出路から前記塗布領域に前記液体を吐出させる、
ことを特徴とする。
【0018】
前記吐出路の軸線を傾斜させる動作は、前記吐出部の前記塗布領域に対する移動速度に合わせて、前記吐出路から吐出した前記液体の前記塗布領域に入射する方向を鉛直方向に近づけるように傾斜させる動作を含むと好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吐出部、塗布装置及び塗布方法によれば、液体を均一に塗布する吐出部、塗布装置、及び、液体を均一に塗布する塗布方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】塗布装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】溶液を吐出するノズルが基板に対して相対移動する様子を示す模式的な斜視図である。
【図3】発光装置として機能する状態となった、基板、隔壁、画素電極、発光層及び対向電極を示す、図2中のY方向の断面図である。
【図4】液体の吐出状態時における本実施形態に係るノズルを模式的に示す断面図である。
【図5】(a)は、第1実施形態に係るノズルに備えられた吐出方向変更部を示す正面図(一部に断面図を含む)であり、(b)は下面図である。
【図6】図5の状態からノズルを軸線中心に180度回転させた状態における(a)は、ノズルの吐出方向変更部を示す正面図(一部に断面図を含む)であり、(b)は下面図である。
【図7】(a)は、従来のノズルにおける、基板に対する相対的な溶液の吐出速度を示すベクトル図であり、(b)は、本発明の実施形態に係るノズルにおける、基板に対する相対的な溶液の吐出速度を示すベクトル図である。
【図8】(a)は、従来のノズルから吐出した溶液が基板に付着する2つの瞬間を示す図であり、(b)は、本実施形態に係るノズルから吐出した溶液が基板に付着する2つの瞬間を示す図である。
【図9】(a)は、図8(a)に示されたA部を拡大して示す図であり、(b)は、図8(b)に示されたA部を拡大して示す図である。
【図10】(a)は、従来のノズルが溶液を吐出しながら隔壁を乗り越えている2つの瞬間の状態を示す図である。(b)は、本実施形態に係るノズルが溶液を吐出しながら隔壁を乗り越えている2つの瞬間の状態を示す図である。
【図11】第1の変形例に係る吐出方向変更部を示す正面図(一部に断面図を含む)である。
【図12】(a)は、ノズルプレートに形成された吐出路及び吐出面を示す図である。(b)は、第2の変形例に係る、ノズルプレートに形成された吐出路及び吐出面を示す図である。(c)は、第3の変形例に係る、ノズルプレートに形成された吐出路及び吐出面を示す図である。
【図13】(a)は、第2の実施形態に係るノズルに備えられた吐出方向変更部を示す側面図である。(b)は、(a)の状態に対して吐出方向を変更した状態における吐出方向変更部を示す正面図である。
【図14】(a)は、第2の実施形態の変形例に係るノズルに備えられた吐出方向変更部を示す正面図である。(b)は、他の例の吐出方向変更部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る吐出部、塗布装置、及びその塗布方法について、図面を参照して説明する。なお、本発明は下記で説明する実施形態(図面に記載された内容も含む。)によって限定されるものではない。下記で説明する実施形態に変更を加えることができる。特に、下記で説明する実施形態の構成要素を適宜削除してもよい。また、以下においては、本発明をノズルプリンティング方式の塗布装置に適用した場合について説明するが、これに限るものではなく、インクジェット方式の塗布装置に対しても好適に適用可能なものである。
【0022】
下記では、吐出部が吐出する液体を、有機EL材料(以下では溶液という。)とした場合を説明するが、吐出部が吐出する液体は、他の液体であってもよい。溶液は、例えば、高分子発光材料が溶媒に溶解又は分散した液体である。高分子発光材料は、発光することが可能な公知の材料である。このような材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン系又はポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマーを含む発光材料等がある。溶媒は、例えば、水系溶媒又は有機溶媒である。有機溶媒としては、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン又はキシレン等がある。このような溶液が塗布され、塗布された溶液が乾燥することによって、有機EL素子における発光層、正孔注入層、インターレイヤ等を有してなる有機EL層が形成される。
【0023】
<第1の実施形態>
塗布装置900は、ノズルプリンティング方式によって塗布するものであり、図1に示すように、溶液タンク903と、供給管909と、加圧部907と、第1駆動部905と、流量計911と、ノズル(吐出部)10と、吐出部支持部材915と、第2駆動部913(移動部)と、ステージ919と、第3駆動部917(移動部)と、第4駆動部(第1の吐出方向変更部、以下、吐出方向変更部と称呼する)40と、制御部66aと、を主に備える。なお、塗布装置900のノズル10以外の各構成要素は、適宜、公知のものによって構成できる。また、ノズル10から溶液が塗布される基板30は、ステージ919に設置される。ここで、基板30の構成の概要について説明する。基板30には、R(赤),G(緑),B(青)の発光色を有する有機EL素子を有する複数の画素がマトリクス状に配置されている。この基板30には、複数の走査線が行方向に配列され、複数の信号線が走査線と直交するよう列方向に配列され、走査線と信号線との各交点近傍に画素が配列されている。そして、同じ発光色の有機EL素子を有する画素が信号線の配列方向に沿って列方向に配列され、走査線の配列方向に沿った行方向にR,G,Bの発光色の有機EL素子を有する画素が一定の順序で繰り返し配列されている。基板30には、列方向に配列された画素における有機EL素子の形成領域を区画する隔壁36が形成されており、隔壁36で囲まれた領域が溶液を塗布する塗布領域となる。
【0024】
溶液タンク903は、溶液を溜めるためのものである。供給管909の一端が溶液タンク903に連通して接続されている。
【0025】
供給管909は、溶液をノズル10へと導くものである。供給管909は、フレキシブルな材料で形成される。
【0026】
加圧部907は、例えば、溶液タンク903内を摺動し、(所謂ピストン運動によって)溶液タンク903に溜められた溶液を押圧して溶液タンク903内の圧力を上げて、供給管909に向けて溶液を流すもので、第1駆動部905によって駆動される。
【0027】
第1駆動部905は、例えば、コンプレッサ(図示せず)とバルブ(図示せず)とから構成される。第1駆動部905は、制御部66aによる制御信号に応じてバルブを開き、コンプレッサによって蓄積した圧縮空気を加圧部907に導入して、加圧部907を移動させる。
【0028】
流量計911は、供給管909内を流れる溶液の流量を測定し、制御部66aに電気信号を出力するものである。流量計911は、例えば熱電対式や超音波式流量計が用いられる。流量計911は、これらの方式によって溶液の流量を計測し、その流量に応じた電気信号をデジタル信号で制御部66aに出力する。
【0029】
ノズル10は、基板30に向けて溶液を吐出する吐出口を有し、供給管909の他端に接続されている。なお、詳細な構成については後述する。
【0030】
吐出部支持部材915は、ノズル10を支持する。詳細な構成については後述する。
【0031】
第2駆動部913は、制御部66aの制御に応じて、吐出部支持部材915を、図1、図2中の左右方向(X方向:これを主走査方向とする)に移動させる。即ち、第2駆動部913は、吐出部支持部材915及びノズル10を、基板30に対して相対的に左右方向に移動させる。この主走査方向は基板30の列方向に対応する。
【0032】
ステージ919は、基板30を固定するものである。
【0033】
第3駆動部917は、制御部66aによって制御され、図2中のY方向に対応する方向(これを副走査方向とする)にステージ919を動かす。即ち、ステージ919の移動に伴って、図2中のY方向に基板30が移動する。この副走査方向は基板30の行方向に対応する。
【0034】
吐出方向変更部40は、ノズル10の溶液の吐出方向を変更するために、ノズル10を垂直軸周りに回動させるものである。詳細な構成については後述する。
【0035】
制御部66aは、基板30に溶液を塗布するために、塗布装置900全体を制御するものである。詳細には、制御部66aは、加圧部907によって一定の割合で供給管909に溶液を供給するように、流量計911から送信される電気信号に応じて、第1駆動部905を制御する。また、制御部66aは、吐出部支持部材915を基板30に対して主走査方向に移動させるように、第2駆動部913を制御する。また、制御部66aは、溶液を基板30の溶液塗布領域の1ラインを塗布した後、ステージ919を副走査方向にステップ移動させるように、第3駆動部917を制御する。更に、ノズル10の基板30に対する相対的な進行方向Dに応じて、溶液の吐出方向を変更するように、第4駆動部40を制御する。(詳細な構成については後述する。)制御部66aは、溶液を塗布する全てのラインに対して上記の制御を順次行う。
【0036】
上記構成によって、図2に示すように、ノズル10は、基板30に対してジグザグに移動しながら、基板30の塗布領域に連続的に溶液を吐出することとなる。
【0037】
なお、第3駆動部917が、ステージ919を介して基板30を副走査方向に移動させるのではなく、ステージ919を設けることなく、第3駆動部917上に直接、基板30を載置させて、基板30を副走査方向に直接移動させるようにしてもよい。
また、図2においてはノズル10を1個備える構成としたが、これに限るものではない。ノズル10を2個以上備えて、基板30の複数のラインを併行して塗布するものであってもよい。この場合、第3駆動部917による副走査方向の移動量がノズル10を1個備える場合と異なる他は、同等の動作となる。
【0038】
次に、ノズル10によって溶液が塗布されて、有機EL層が形成され、発光装置21として機能する状態となった、基板30、隔壁36、画素電極(アノード電極)43、発光層45及び対向電極(カソード電極)46の図2中のY方向の断面構造について、図3を参照して説明する。
【0039】
基板30上には、ゲート導電層をパターニングしてなるトランジスタT1、トランジスタT1のゲート電極T1gが形成されている。各発光画素に隣接した基板30上には、ゲート導電層をパターニングしてなり、列方向に沿って延びるデータラインLdが形成されている。
【0040】
トランジスタT1のゲート電極T1g、及びデータラインLd上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により絶縁膜32が形成されている。
【0041】
CVD法等により、絶縁膜32上に、アモルファスシリコン等からなる半導体層114が形成されている。更に、半導体層114上に、CVD法等により、例えばSiN等からなる絶縁膜が形成されている。
【0042】
更に、ストッパ膜115は、フォトリソグラフィ等により絶縁膜がパターニングされて半導体層114上に形成されている。更に、半導体層114及びストッパ膜115上に、半導体層114とオーミックコンタクト層116,117とは、n型不純物が含まれたアモルファスシリコン等からなる膜がCVD法等により形成され、この膜と半導体層114とをフォトリソグラフィ等によりパターニングされることで形成されている。
【0043】
ドレイン電極T1d及びソース電極T1sは、絶縁膜32に貫通孔であるコンタクトホールが形成され、例えば、Mo膜、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlNdTi合金膜、MoNb合金膜等からなるソース−ドレイン導電膜がスパッタ法、真空蒸着法等により被膜され、フォトリソグラフィによってパターニングされることで形成されている。
【0044】
画素電極43は、透光性を備える導電材料で形成され、例えばITO(Indium Tin Oxide)、ZnO等から構成される。各画素電極43は、隣接する他の発光画素の画素電極43と層間絶縁膜47によって絶縁されている。
【0045】
層間絶縁膜47は、絶縁性材料、例えばシリコン窒化膜から形成され、画素電極43間に形成され、各トランジスタT1やセレクトライン(図示せず)、アノードライン(図示せず)を絶縁保護する。層間絶縁膜47には略方形の開口部47aが形成されており、この開口部47aによって発光画素の発光領域が画される。更に層間絶縁膜47上の隔壁36に沿って列方向に延びる溝状の開口部36aが複数の発光画素にわたって形成されている。
【0046】
隔壁36は、絶縁材料、例えばポリイミド等の感光性樹脂を硬化してなり、層間絶縁膜47上に形成される。隔壁36は、列方向に沿った複数の発光画素の画素電極43をまとめて開口するようにストライプ状に形成されている。なお、隔壁36の平面形状は、これに限られず、画素電極43毎に開口部をもった格子状であってもよい。
【0047】
発光層45は、画素電極43上に形成されている。発光層45は、アノード電極43と対向電極46との間に電圧が印加されることにより、光を発生する機能を有する。
【0048】
発光層45は、本実施形態の塗布装置900によって溶液が塗布され、溶液中の溶媒を揮発させることによって形成されるものである。
【0049】
また、対向電極46は、ボトムエミッション型の場合、発光層45側に設けられ、導電材料、例えばLi,Mg,Ca,Ba等の仕事関数の低い材料からなる電子注入性の下層と、Al等の光反射性導電金属からなる上層を有する積層構造である。
【0050】
尚、本実施形態では、便宜上、発光に寄与する有機EL層(有機層)として発光層45のみを備える構成を例に挙げているが、これに限られず、有機EL層は、正孔注入層と発光層とを備えてもよく、正孔注入層とインターレイヤと発光層とを備えてもよい。
【0051】
次に、図4を参照して、溶液(有機EL材料)を吐出するノズル10を説明する。ノズル10は、ヘッドシリンダ12と、シリンダフランジ13と、ノズルプレート14と、ノズルキャップ16と、から主に構成される。
【0052】
ヘッドシリンダ12は、ノズル10の本体であり、筒状に形成されている。供給管909によって、ヘッドシリンダ12の内部に溶液が供給される。また、ヘッドシリンダ12の上端部の外周面には、円板状のシリンダフランジ13が大径方向に突出して形成されている。また、ヘッドシリンダ12の下端部の外周面に、後述するノズルキャップ16の雌ねじに適合する雄ねじが形成されている。
【0053】
シリンダフランジ13は、図5に示して後述する吐出部支持部材915とヘッドシリンダ12との間に嵌装された軸受67の内輪に下面を支持され、ノズル10の姿勢を一定に保つ。
【0054】
ノズルプレート14は、円板状に形成され、中心部に吐出口をなす貫通孔(溶液を吐出する吐出路)140を有する。吐出路140は、ノズルプレート14の上下面に対して所定の角度で斜めに貫通して形成されている。換言すると、吐出路140は、ヘッドシリンダ12の軸線に対して所定の角度で斜め向きに形成されている。
【0055】
ノズルキャップ16は、キャップ状に形成され、その中央部に貫通孔160を有する。また、ノズルキャップ16の内面には、上記のヘッドシリンダ12の外周面に形成された雄ねじに適合する雌ねじが形成されている。ノズルキャップ16は、ヘッドシリンダ12の下面との間にノズルプレート14を挟みこむようにして、ヘッドシリンダ12にねじ込まれる。このようにして、ノズルプレート14がノズル10に組み込まれる。
【0056】
上記のように構成されたノズル10は、ノズルプレート14の吐出路140を介して所定の角度で溶液を吐出する。
【0057】
次に、ノズル10を支持する吐出部支持部材915の構成について、図5を参照して説明する。
【0058】
吐出部支持部材915は、板状に形成されており、吐出方向変更部40を収めるための凹状の窪み920が一部に形成されている。吐出部支持部材915は、窪み920の所定の位置に貫通孔918を有する。この貫通孔918に軸受68が嵌装されている。貫通孔918に挿入されたノズル10は、軸受68によって、回転可能に支持される。
【0059】
また、板状に形成された蓋部材916が、吐出部支持部材915の上面と略面一となるように窪み920を覆っている。蓋部材916は、吐出部支持部材915の貫通孔918の鉛直線を同心とする貫通孔925を有する。この貫通孔925に軸受67が嵌装されている。貫通孔925に挿入されたノズル10は、軸受67によって、回転可能に支持される。蓋部材916と吐出部支持部材915とによって、吐出方向変更部40を収納する収納空間922は区画される。
【0060】
次に、ノズル10の吐出方向22,23を変更する吐出方向変更部40について、図5及び図6を参照して説明する。吐出方向変更部40は、吐出部支持部材915の内部に配設され、ベルト60と、プーリ62と、モータ64と、制御部66aと、から主に構成される。
【0061】
ベルト60は、ヘッドシリンダ12と円柱状のプーリ62とに架け渡された無端ベルトである。
【0062】
モータ64は、プーリ62を所定の角度に回転駆動するステッピングモータであり、制御部66aによって、回転角度を制御される。モータ64は、吐出部支持部材915の窪み920に固定されている。
【0063】
ノズル10の基板30に対する相対的な進行方向Dが図5に示す右側から、図6に示す左側に変わったとき、又はその逆に変わったときに、制御部66aはモータ64を所定の角度だけ回転させる。モータ64の軸の回転に伴って、プーリ62が回転するとともに、ベルト60が回動する。ベルト60の回動によって、吐出路140から吐出される溶液の吐出方向23が、ノズル10の基板30に対する相対的な進行方向Dと逆側となる位置にヘッドシリンダ12は回動する。
このようにして、吐出方向変更部40は、ノズル10の回転角度を調整する。
【0064】
次に、基板30に垂直に溶液を吐出する従来の場合と、所定の角度で溶液を吐出する本発明の場合との、基板30に対する相対的な溶液の吐出方向22,23の違いについて、図7を参照して説明する。
【0065】
まず、従来のノズルは、基板30に垂直に溶液を吐出する。この場合、図7(a)に示すように、ノズル送り速度ベクトル50と溶液吐出速度ベクトル52aとの合成からなる、溶液の合成速度ベクトル54aは、ノズル10の送り方向側に斜めに向くこととなる。
【0066】
対して、本発明の実施形態に係るノズル10は、ノズル送り速度ベクトル50の向きに対して逆側の向きの吐出方向22に所定の角度で溶液を吐出する。この場合、図7(b)に示すように、ノズル送り速度ベクトル50と溶液吐出速度ベクトル52bとの合成からなる、溶液の合成速度ベクトル54bは、ノズル10の送り方向の速度成分が打ち消され、基板30に略垂直(略鉛直方向)に向くこととなり、ノズル10から吐出された溶液は、基板30に対して略鉛直方向から入射することになる。ここで、吐出方向22の方向は、合成速度ベクトル54bが基板30に対して略垂直方向となる向きに設定される。
【0067】
本実施形態に係るノズル10と従来のノズルとの基板30への溶液の塗布状態の違いを図8乃至図10を参照して説明する。
【0068】
まず、溶液が塗布される基板30上には、トランジスタ等の回路素子や配線部材からなる回路構造物34、各画像表示領域に区分けする隔壁36が設けられている。
【0069】
従来のノズルを用いると、図8(a)に示すように、合成速度ベクトル54aの方向成分にあたる溶液入射方向74aに入射する吐出液28によって、塗布領域33上にある回路構造物34に溶液が塗布される。溶液入射方向74aが基板30に対して傾斜しているため、ノズルの基板30に対する相対的な進行方向Dに沿って吐出された吐出液28の背後に面する隔壁36近傍の領域Bには、隔壁36が障害となって吐出液28が着地しにくくなる。そのため、隔壁36近傍の領域Bに配置された回路構造物34には、溶液が十分には塗布されない。
【0070】
対して、本実施形態に係るノズル10では、ノズルプレート14の吐出路140における溶液の導出する向きが、進行方向Dに対して逆方向に向くよう、ヘッドシリンダ12の軸線に対して所定の角度で斜め向きに設定されている。したがって、吐出路140から吐出された吐出液28は、図8(b)に示すように、合成速度ベクトル54bの方向成分にあたる溶液入射方向74bに吐出される。溶液入射方向74bは、基板30に対して略垂直な方向であるため、略鉛直方向から入射する吐出液28によって、塗布領域33上にある回路構造物34に溶液が塗布される。したがって、進行方向Dに沿って吐出された吐出液28の背後に面する隔壁36近傍の領域Bに配置された回路構造物34にも、溶液を塗布することができる。
なお、隔壁36近傍の領域Bに、回路構造物34の代わりに、ダミー回路構造物を設けてもよい。ダミー回路構造物は、回路構造物34と同一製造プロセスで製造され、且つ回路構造物34と同等の構造であるが、回路構造物34と同様の回路としての機能は有していない。図8(a)に示す方法では、ダミー回路構造物のある領域B上に塗布される溶液は、上述の通り隔壁36で囲まれた中央領域A上に塗布される溶液よりも薄くなってしまう。ダミー回路構造物は画素として機能しないため、塗布される溶液が薄くてもよいが、ノズルの基板30に対する相対的な移動速度が速いほど、画素全体における領域Bの面積比率が高くなってしまう。したがって、ダミー回路構造物の配置面積を増やさなければならないといった問題が生じる。これに対して、図8(b)に示す方法では、ダミー回路構造物のある領域B上に塗布される溶液の量は、隔壁36で囲まれた中央領域A上に塗布される溶液の量と略同等とすることができる。そのため、ダミー回路構造物の配置面積を減らす、あるいは、ダミー回路構造物を設けないようにすることができる。
【0071】
また、図8に示された回路構造物34(例えばトランジスタ)の近傍を拡大して図9に示す。従来のノズルを用いると、図9(a)に示すように、合成速度ベクトル54aの方向成分にあたる溶液入射方向74aに入射する吐出液28によって、基板30に溶液が塗布される。このとき、吐出液28が溶液入射方向74aに傾いている。このため、溶液には、ノズルから吐出されて基板30に着地する際に、着地点において進行方向Dに沿って勢いがついている。その結果、着地した溶液は進行方向Dの反対方向側に移動する量よりも進行方向D側に移動する量が多く、隔壁36内の領域において場所によって塗布量に偏りが生じてしまっていた。また、領域Bにダミー回路構造物を設けた場合においても、領域Bの面積を大きくする必要があった。
【0072】
対して、本実施形態に係るノズル10では、吐出路140の向きが、進行方向Dと逆方向に向くよう、ヘッドシリンダ12の軸線に対して所定の角度で斜め向きに設定されている。したがって、図9(b)に示すように、合成速度ベクトル54bの方向成分にあたる溶液入射方向74bに入射する吐出液28によって、基板30に溶液が塗布される。このとき、溶液入射方向74bは基板30に略垂直な方向であるため、吐出液28が略鉛直方向から入射し、溶液28が着地点から放射状に均等に広がる。このため、基板30は、厚みが略均一な塗布面を得ることができる。更には、吐出液28が基板30に略垂直に入射するため、着地した溶液は進行方向Dの反対方向側に移動する量と、進行方向D側に移動する量とをほぼ均等にすることができる。このため、隔壁36内において、溶液を均一な厚さに塗布することができる。
【0073】
また、基板30がノズル10に相対的に副走査方向に移動する状況においても、溶液の塗布性は良好となる。図10に、隔壁36を乗り越える前後において、ノズル10が溶液を塗布する状態を示す。
【0074】
従来のノズルを用いると、図10(a)に示すように、隔壁36への溶液の入射角度が隔壁36の乗り越え前後において非対称となる。つまり、ノズルの副走査方向への一連の移動において、溶液の偏りが生じてしまう。
【0075】
対して、本実施形態に係るノズル10を用いると、図10(b)に示すように、隔壁36への溶液の入射角度が隔壁36の乗り越え前後において略対称となる。つまり、ノズル10の副走査方向への一連の移動において、溶液の偏りは生じない。
【0076】
次に、塗布装置900の動作について説明する。制御部66aは、図1に記載の第2駆動部913を作動させる。第2駆動部913は、吐出部支持部材915を所定の速度で主走査方向に移動させる。制御部66aは、第2駆動部913を駆動するために発信している電気信号に応じて、吐出部支持部材915の送り方向に逆方向にノズル10が向くように電気信号をモータ64に発信する。モータ64は、制御部66aから受信した電気信号に応じて所定の角度だけ回転する。モータ64の回転によって、プーリ62が回転し、ヘッドシリンダ12が、ベルト60を介して回転することで、ノズル10が所定の角度だけ回転する。
【0077】
上記の動作によれば、ノズル10の溶液の吐出方向は、常にノズル10の進行方向D(例えば吐出部支持部材915の移動方向)と常に逆向きに制御される。したがって、基板30への溶液の入射方向は、基板30に対し略垂直に維持され、結果として、基板30への塗布ムラが抑制される。
【0078】
(第1の変形例)
上記実施形態においては、吐出方向を変更する吐出方向変更部40として、プーリ62とベルト60とを含む構成を例示したが、これに限定しない。例えば、図11に示すように、ギヤ80とピニオン82とを噛合させることで回転トルクを伝達するようにして、溶液の吐出方向を変更するようにしても良い。
【0079】
この構成について説明する。ギヤ80は、ヘッドシリンダ12の外周に固定されている。ピニオン82は、ギヤ80に噛合する配置及び形状であり、モータ64によって回転駆動される。このように構成であっても、プーリ62とベルト60とを含む構成と同様に吐出方向変更部40として機能させることができる。
【0080】
(第2の変形例)
次に、ノズルプレート14の中心部に形成された吐出路140の形状の第2の変形例について図12を参照して説明する。
【0081】
図12(a)に示された吐出路140は、吐出面142に対して斜め方向にレーザー等で開孔された貫通孔である。溶液は、吐出路140内を通るうちは、軸対称に流れる。しかし、吐出面142が吐出路140の軸線に垂直ではないために、吐出面142から軸対称に溶液を吐出することができず、結果的に塗布ムラが生じる要因にもなる。
【0082】
このような塗布ムラの発生を防ぐ構造として、図12(b)に示すように、吐出路140と同一軸線に形成された円柱状の溝143をノズルプレート15aは有する。溝143は、吐出路140における上部及び下部の2箇所に形成されている。
【0083】
(第3の変形例)
また、図12(c)に示すように、テーパ状であり、大径側がノズルプレート15bの表面側であり、吐出路140と同一軸線に形成された溝144をノズルプレート15bは有する。溝144は、吐出路140における上部及び下部の2箇所に形成されている。
【0084】
上記、第2の変形例及び第3の変形例のように、円柱状の溝143又はテーパ状の溝144を吐出路140の上部及び下部に同軸に形成することで、吐出路140の溶液の入口面、出口面(吐出面142)は、吐出路140の軸線に垂直になる。このため、吐出面142から軸対称に溶液を吐出することができ、溶液の塗布ムラの発生を抑制することができる。
【0085】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係るノズル11aは、第1の実施形態に係るノズル10と異なり、図13に示すように、吐出路141がヘッドシリンダ12の軸線に平行に形成されたノズルプレート15cを備えるものである。このようなノズルプレート15cを備えるものであっても、ノズル11aの進行方向Dに対し逆方向に溶液の吐出方向を変更させる機能を備えさせることができる。その構造について以下に説明する。なお、以下において、第1の実施形態において説明したものと同一構造のものについては同一符号を付し、理解を容易にするために説明の重複を避ける。
【0086】
ノズル11aの進行方向Dに対し逆方向に溶液の吐出方向を変更する機能を有するものとして、吐出方向変更部41(第2の吐出方向変更部)を有する。吐出方向変更部41は、サポート70,71と、2個の軸受69と、モータ(第2のモータ)464と、制御部66bとから構成される。
【0087】
図13(a)に示すように、2本のサポート(支持軸)70,71は、ヘッドシリンダ12の軸線に直交する延長線上にあり、ヘッドシリンダ12の外周面から突出し、丸棒状に形成されている。
【0088】
2個の軸受69は、吐出部支持部材915の貫通孔924に嵌装され、サポート70,71を回転可能に支持する。
【0089】
ノズル11aは、上記のサポート70,71及び2個の軸受69によって、吐出部支持部材915に回転可能に支持されている。
【0090】
また、モータ464は、吐出部支持部材915の外面に固定され、サポート70の端部に連結されたステッピングモータである。
【0091】
制御部66bは、モータ464のモータ軸の回転角度を制御することにより、ノズル11aの回転角度を、サポート70を介して制御する。即ち、溶液の吐出角度を制御する。
【0092】
次に、ノズル11a及び吐出方向変更部41を備える塗布装置901の動作について説明する。制御部66bは、図1に記載の第2駆動部913を作動する。第2駆動部913は、吐出部支持部材915を所定の速度で主走査方向に移動させる。制御部66bは、第2駆動部913を駆動するために発信している電気信号に応じて、吐出部支持部材915の送り速度と、溶液の吐出速度とからノズル11aに設定すべき傾き角度を割り出す。制御部66bは、割り出された傾きに応じた電気信号をモータ464に発信する。モータ464は、制御部66bから受信した電気信号に応じて、モータ軸、サポート70を介してノズル11aを所定の角度に回転させる。このようにして、溶液の吐出速度、及びノズル11aの送り速度に応じて、ノズル11aの傾きは調整される。
【0093】
このように動作することで、ノズル11aの送り方向、送り速度、溶液の吐出速度の変更に応じて、吐出角度を変更することができる。このため、基板30に対して常に略垂直に溶液を塗布することができ、結果として、塗布ムラを抑制することができる。
【0094】
また、所定の吐出角度で溶液を吐出する第1の実施形態に係るノズル10と異なり、本実施形態に係るノズル11aは、吐出角度を細かく調整することが可能である。
【0095】
(変形例)
次に、吐出方向を変更する機能を有する吐出方向変更部41の変形例に係る吐出方向変更部42(42a,42b)(吐出方向変更部)について、図14を参照して説明する。
【0096】
吐出方向変更部42aは、固定部422aと、固定支持部420aと、ソレノイド426aと、可動支持部424aと、から主に構成される。
【0097】
固定部422aは、板状に形成された蓋部材916の下面に固定され、ノズル11bに対向する側面に後述する固定支持部420aが固定されている。
【0098】
固定支持部420aは、上面から見て、図14(a)中の右側が、コの字状に枝別れして形成され、ノズル11bの図中,上側を挟むようにして配置されている。固定支持部420aは、ノズル11bの中心軸を通る平面上にあたる位置で、対向する2つのピン428a(表示する角度の関係上、1つのみ図示)によって、ノズル11bを回動可能に支持している。
【0099】
ソレノイド426aは、吐出部支持部材915に形成された凹状の窪み920の上面に固定されている。ソレノイド426aは、制御部66cから供給制御される電流に応じて、後述する可動支持部424aを図中、右方、左方へ移動させる。
【0100】
可動支持部424aは、上面から見て、図14(a)中の右側が、コの字状に枝別れして形成され、ノズル11bの図中,下側を挟むようにして配置されている。可動支持部424aは、ノズル11bの中心軸を通る平面上にあたる位置で、対向する2つのピン429a(表示する角度の関係上、1つのみ図示)によって、ノズル11bを回動可能に支持している。また、ノズル11bのピン429aに係合する部位には、長手方向をノズル11bの軸線と平行に形成された長円状の溝430aが形成されている。溝430aがノズル11bに形成されていることによって、可動支持部424aの左右方向への移動時に、ピン428aとピン429aとの距離が変わることによって、ノズル11bからピン428a及びピン429aを介して、固定支持部420a及び可動支持部424aに負荷が生じることを防ぐ。
【0101】
次に、ノズル11b及び吐出方向変更部42aを備える塗布装置901の動作について説明する。制御部66cは、図1に記載の第2駆動部913を作動する。第2駆動部913は、吐出部支持部材915を所定の速度で主走査方向に移動させる。制御部66cは、第2駆動部913を駆動するために発信している電気信号に応じて、吐出部支持部材915の送り速度と、溶液の吐出速度とからノズル11bに設定すべき傾き角度を割り出す。制御部66cは、割り出された傾きに応じた電流をソレノイド426aに供給する。ソレノイド426aは、制御部66cから供給された電流に応じて、可動支持部424aを移動させ、ピン429aを介して、ピン428aを中心に所定の角度で、ノズル11bを回動させる。このようにして、溶液の吐出速度、及びノズル11bの送り速度に応じて、ノズル11bの傾きは調整される。
【0102】
また、上記第2の実施形態の変形例に係る吐出方向変更部42aは、ノズル11bの上側を固定し、ノズル11bの下側を移動させることで、ノズル11bを回動させるものとして説明したが、例えば図14(b)に示すように、ノズル11bの固定・移動部位を逆に配置して、回動させる構成にしてもよい。
【0103】
このように吐出方向変更部42bを構成すると、吐出路141の近傍であるノズル11bの下側が固定され、その固定部位(ピン428b)を中心に、ソレノイド426bによって、ノズル11bが回動することとなる。このため、ノズル11bの進行方向Dの変更に合わせて、ノズル11bの角度を変更する際に、吐出路141からの吐出液28の吐出領域が広がることを抑えることができるため、ノズル11bの制御が容易となる。
このことについては、ノズル11bの回動中心を吐出路141の近傍に配置するようにすることで、第2の実施形態に係る吐出方向変更部41についても同様の効果を得ることができる。
【0104】
また、上記のように、ノズル11bの上側を固定し、下側を移動させる構成を有する吐出方向変更部42a、及び、ノズル11bの下側を固定し、上側を移動させる構成を有する吐出方向変更部42bに限らず、例えば、上側及び下側の双方を相対的に移動させてノズル11bを傾斜させる構成にしてもよい。
【0105】
以上、上記実施形態に係るノズルは、ノズルの進行方向Dと逆方向に溶液を吐出するため、基板に対して略垂直方向に溶液が塗布され、均等な塗布面を得ることができる。
【0106】
更には、上記実施形態に係るノズルを用いることで、ダミー回路構造物を短く形成できるようになる。
【0107】
また、吐出路の上部及び下部に同軸に円柱状又はテーパ状の溝を形成し、吐出面を吐出路に対し垂直にすることで、吐出路から軸対称に溶液を吐出することができ、溶液の塗布ムラを抑制することができる。
【0108】
また、ヘッドシリンダの軸線に対して斜めに吐出路が形成されていないノズルプレートを備えるノズルであっても、基板の塗布面に対してノズル自体を傾斜させることで、ノズルの進行方向Dに対し吐出路を逆向きにすることができる。特にこのような構成によれば、ノズルの送り速度、吐出速度に応じて、ノズルの角度を微調整可能である。
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記各実施形態においては、ノズルが基板に対して相対的に移動する方法として、溶液の吐出時に、ノズルを主走査方向に移動し、ステージを固定していたが、これに限らず、ノズルを固定し、ステージを主走査方向に移動してもよい。この場合、ステージの移動する主走査方向の向きは、上述で説明したノズルの移動する主走査方向の向きと反対になればよい。また、ノズルを主走査方向の一方の向きに移動し、ステージを主走査方向の当該一方の向きと反対になる他方の向きに移動してもよい。また、ステージを常時固定し、ノズルを主走査方向及び副走査方向に移動してもよく、或いはノズルを常時固定し、ステージを主走査方向及び副走査方向に移動してもよい。また上記各実施形態では、吐出液28は、ノズルの吐出路から着地点まで一繋がりの液体であることが好ましいが、ノズルをインクジェットとして、吐出液28を個々に分離した液滴としてもよい。
【符号の説明】
【0109】
10,11a,11b・・・ノズル(吐出部)、12・・・ヘッドシリンダ(本体)、14,15a,15b,15c・・・ノズルプレート、140,141・・・吐出路、142・・・吐出面、22,23・・・吐出方向、30・・・基板(塗布対象物)、33・・・塗布領域、40・・・第4駆動部(吐出方向変更部、第1の吐出方向変更部)、41・・・第4駆動部(吐出方向変更部、第2の吐出方向変更部)、42,42a,42b・・・第4駆動部(吐出方向変更部)、420a,420b・・・固定支持部、424a,424b・・・可動支持部、426a,426b・・・ソレノイド、464・・・モータ、50・・・ノズル送り速度ベクトル、52a,52b・・・溶液吐出速度ベクトル、54a,54b・・・合成速度ベクトル、60・・・ベルト、62・・・プーリ、64・・・モータ、66,66a,66b,66c・・・制御部、70,71・・・サポート(支持軸)、74a,74b・・・溶液入射方向、80・・・ギヤ、82・・・ピニオン、900,901・・・塗布装置、913・・・第2駆動部(移動部)、915・・・吐出部支持部材、917・・・第3駆動部(移動部)、919・・・ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物の塗布領域に対して相対的に移動しながら、前記塗布領域に液体を吐出する吐出部であって、
前記吐出部は、
前記液体が充填される本体と、
前記本体の一端側に設けられ、前記液体を吐出する吐出路を有するノズルプレートと、
を備え、
前記吐出路の軸線は、鉛直線に対して、前記吐出部の前記塗布領域に対して相対的に進行する進行方向の逆側に向けて傾斜している、
ことを特徴とする吐出部。
【請求項2】
前記吐出路の軸線は、前記進行方向への前記吐出部の進行速度に合わせて、前記吐出路から吐出した前記液体が前記塗布領域に入射する方向を鉛直方向に近づけるように傾斜されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の吐出部。
【請求項3】
前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吐出部。
【請求項4】
前記吐出路の前記液体を吐出する吐出面は、前記吐出路の軸線に垂直に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の吐出部。
【請求項5】
前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して平行であり、
前記本体の軸線が鉛直線に対して傾斜している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吐出部。
【請求項6】
塗布対象物の塗布領域に液体を塗布する塗布装置であって、
前記液体が充填される本体と、前記本体の一端側に設けられ、前記液体を吐出する吐出路を有するノズルプレートと、を有する吐出部と、
前記吐出部を前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に進行するように、前記吐出部あるいは前記塗布対象物の少なくとも一方を移動させる移動部と、
前記吐出路の軸線を、鉛直線に対して、前記吐出部が前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に進行する進行方向の逆側に向けて傾斜させる吐出方向変更部と、を備える、
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項7】
前記吐出路の軸線は、前記進行方向への前記吐出部の進行速度に合わせて、前記吐出路から吐出した前記液体が前記塗布領域に入射する方向を鉛直方向に近づけるように傾斜されている、
ことを特徴とする請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して傾斜しており、
前記吐出方向変更部は、前記移動部により設定される前記吐出部あるいは前記塗布対象物の相対的な進行方向の変更に応じて、前記本体の軸線を中心として所定の角度に前記吐出部を回動させて、前記吐出路の軸線の鉛直線に対する傾斜方向を変更する第1の吐出方向変更部を備える、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記吐出路の軸線は前記本体の軸線に対して平行であり、
前記吐出方向変更部は、前記移動部により設定される前記吐出部あるいは前記塗布領域の相対的な進行方向の変更に応じて、前記本体に前記移動方向に直交して水平方向に設定された支持軸を中心として前記吐出部を回動させて、前記本体の軸線の鉛直線に対する傾斜方向を変更する第2の吐出方向変更部を備える、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の塗布装置。
【請求項10】
塗布対象物の塗布領域に液体を塗布する塗布方法であって、
前記液体を吐出する吐出路を有する吐出部が前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に進行する進行方向に応じて、前記吐出路の軸線を、鉛直線に対して、前記吐出部の前記塗布領域に対する相対的な進行方向の逆側に向けて傾斜させ、
前記吐出部が前記塗布対象物の前記塗布領域に対して相対的に前記進行方向に進行するように、前記吐出部或いは前記塗布対象物の少なくとも1つを移動しながら、前記吐出路から前記塗布領域に前記液体を吐出させる、
ことを特徴とする塗布方法。
【請求項11】
前記吐出路の軸線を傾斜させる動作は、前記吐出部の前記塗布領域に対する移動速度に合わせて、前記吐出路から吐出した前記液体の前記塗布領域に入射する方向を鉛直方向に近づけるように傾斜させる動作を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−72986(P2011−72986A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164361(P2010−164361)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】