向上したゲート酸化物完全性を有する単結晶シリコンの製造方法
【課題】単結晶シリコンウエハの母集団のゲート酸化物完全性を評価する方法の提供。
【解決手段】単結晶シリコンウエハの母集団の第1のサブセットの絶縁破壊特性を、第1のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第1の割合で増大させる工程、前記母集団の第2のサブセットの絶縁破壊特性を、第2のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第2の割合で増大させ、及び第2の割合は第1の割合とは異なっている工程、並びに前期2つの工程において測定した絶縁破壊特性を用いて、その母集団について規定される条件下でのゲート酸化物故障率を予測する工程を含んでなる方法。
【解決手段】単結晶シリコンウエハの母集団の第1のサブセットの絶縁破壊特性を、第1のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第1の割合で増大させる工程、前記母集団の第2のサブセットの絶縁破壊特性を、第2のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第2の割合で増大させ、及び第2の割合は第1の割合とは異なっている工程、並びに前期2つの工程において測定した絶縁破壊特性を用いて、その母集団について規定される条件下でのゲート酸化物故障率を予測する工程を含んでなる方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般に、チョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを製造することに関する。特に、本発明は、向上したゲート酸化物完全性(integrity)を有する単結晶シリコンウエハを製造する為の高効率の方法であって、ウエハが得られる単結晶シリコンインゴットの成長の条件を制御する方法に関する。特に、単結晶シリコンインゴットの成長条件は、成長速度、平均軸方向温度勾配及び冷却速度を含めて、それから得られる単結晶シリコンウエハ中の空孔(vacancy)に関連する凝集欠陥の寸法、ある場合には密度、並びに場合によっては残存する空孔濃度を制限するために制御される。更に、本発明はそのようなゲートオキシドインテグリティ(GOI、ゲート酸化物完全性)を評価するための、より正確で、信頼性のある方法にも関する。
【0002】
大部分の半導体電子部品製造方法の出発物質である単結晶シリコンは、一般に、いわゆるチョクラルスキー(Cz)法によって製造される。この方法においては、多結晶シリコン(ポリシリコン)をルツボに装填し、溶融し、種結晶を溶融シリコンと接触させ、単結晶をゆっくりと引き上げることによって成長させる。ネックの形成後、所望される、又は目的とする直径に到達するまで、引き上げ速度および/又は溶融温度を低下させることによって、結晶の直径を大きくする。次に、融液面の高さ(メルトレベル)の低下を補いながら、引き上げ速度および溶融温度を調節することによって、ほぼ一定の直径を有する結晶の筒状メインボディを成長させる。成長プロセスの終了近くであって、ルツボから溶融シリコンがなくなる前に、結晶直径を徐々に減少させて、エンドコーンを形成する。エンドコーンは、通常、ルツボに供給する熱および結晶引き上げ速度を増加させることによって形成される。直径が充分に小さくなったときに、結晶を融液(melt)から分離する。
【0003】
単結晶シリコンにおける多くの欠陥が、凝固の温度から冷却される際に、結晶成長室において形成されることが最近認められた。特に、インゴットが冷却される際には、その温度以下では所定の濃度の真性点欠陥(intrinsic point defect)が臨界的過飽和に達するあるしきい温度(threshhold temperature)に達するまで、真性(内因性)点欠陥、例えば結晶格子空孔又はシリコン自己格子間原子(self-interstitials)がシリコン格子内に可溶な状態で残る。このしきい温度以下の温度まで冷却すると、反応又は凝集事象(agglomeration event)が起こり、それによって凝集真性点欠陥が生じる。
【0004】
シリコンにおけるこれらの真性点欠陥の型および初期濃度は、結晶化の温度(例えば、約1410℃)から約1300℃(例えば、約1325℃、1350℃又はそれ以上)よりも高い温度へインゴットを冷却する際に測定される。即ち、これらの欠陥の型および初期濃度は、比v/G0[式中、vは成長速度であり、G0はこの温度範囲にわたる平均軸方向温度勾配である。]によって制御される。一般に、自己格子間原子に支配される成長から空孔に支配される成長への遷移(transition)は、v/G0の臨界値の近くにて起こる。その値は、現在利用できる情報に基づけば、約2.1×10−5cm2/sK[式中、G0は、上記の規定の温度範囲内で軸方向温度勾配が一定である条件にて測定される。]と考えられる。従って、プロセス条件、例えば成長速度(vに影響する)、並びにホットゾーンコンフィグレーション(G0に影響する)を制御することによって、シリコン単結晶内における真性点欠陥が主として空孔(空孔が優勢)であるか(この場合、一般にv/G0は臨界値よりも大きい)、又は主として自己格子間原子(自己格子間原子が優勢)であるか(この場合、一般にv/G0は臨界値よりも小さい)を決めることができる。
【0005】
結晶格子空孔又は空孔真性点欠陥の凝集を伴う欠陥には、D欠陥、フローパターン(FPD)欠陥、ゲート酸化物完全性(GOI(Gate Oxide Integrity))欠陥、クリスタルオリジネーテッドパーティクル(COP)欠陥、クリスタルオリジネーテッドライトポイント(LPD)欠陥、および、赤外線散乱法、例えば、走査赤外線鏡検法およびレーザー走査断層撮影法によって観察されるある種のバルク欠陥のような、観察可能な結晶欠陥の原因であることが確認されている。過剰な空孔の領域には、酸化誘起積層欠陥(oxidation induced stacking faults)(OISF)の核を形成するための機能である欠陥も存在する。この特定の欠陥は、過剰空孔の存在によって引き起こされる高温核形成酸素析出(high temperature nucleated oxygen precipitate)であると考えられる。
【0006】
凝集した欠陥の生成は、一般に2段階で生じる。その第1の段階は、欠陥の「核」の生成であって、真性(内因性)点欠陥、例えば空孔が所定の温度にて過飽和となる結果としてのものである。この「核生成しきい値」温度に一旦達すると、真性点欠陥、例えば空孔は凝集を開始する(例えば、空隙(void)の生成が始まる)。シリコン格子の中で、欠陥が存在するインゴットのその部分の温度が、その温度以下では商業的に実用的な時間内で真性点欠陥が動けない、第2のしきい温度(即ち、「拡散率しきい値(diffusivity threshold)」)以上に保たれる限り、拡がり続ける。インゴットがこの温度以上に保たれる間、空隙真性点欠陥は、例えば、結晶格子の中を通って、凝集した空孔欠陥、又は空隙が既に存在して、所定の凝集欠陥の寸法の成長を有効に生じさせる部位へ拡がる。これは、これらの凝集した欠陥の部位が本質的に、より好ましいエネルギー状態のために、空隙の真性点欠陥を引き寄せおよび集める「シンク(sink)」として機能するためである。従って、そのような凝集欠陥の生成および寸法は、(そのような点欠陥の初期濃度に影響を及ぼす)v/G0及び、上端側は「核生成しきい値」によって規定され、下端側は(そのような欠陥の密度及び寸法に影響を及ぼす)「拡散率しきい値」によって規定される温度範囲でのインゴットの主たる部分の滞留時間又は冷却速度を含む成長条件に依存する。
【0007】
効率を最大にすることは、単結晶シリコンウエハのコスト有効性の高い第1の関心事である。その結果、最高に可能な成長速度にて成長する単結晶シリコンインゴットが、全てのシリコン製造業者の目標である。しかしながら、今日まで、そのような成長条件を用いて、許容できる品質の単結晶シリコンを製造する明確な方法は一般に明らかではなかった。例えば、高い引き上げ速度/冷却速度は一般に高い空孔濃度をもたらし、これは小さく凝集した欠陥が高い濃度で存在することに至っていた。例えば、集積回路の製造業者は一般に、軽い点欠陥(light point defects)200mm直径のウエハについて、寸法で約0.2ミクロンを超えるそのような欠陥の数は約20を超えないことを要求するので、そのような条件が好ましい。しかしながら、そのような条件は、ゲート酸化物の完全性が劣るウエハを製造すると伝統的に考えられているので、同様に好ましいものではない。対称的に、より遅い引き上げ速度/冷却速度を用いてGOIを向上させる(ゆっくりとした冷却は一般にいくつかの非常に大きな凝集した空孔欠陥を生じる)場合、得られるLPDsの寸法は予期することができない。
【0008】
高い引き上げ速度/冷却速度に関して、追加の領域の問題は残存する空孔の濃度である。更に特に、高い引き上げ速度は一般に、高い冷却速度の場合と同様に、生成するシリコンにおいて高い空孔濃度をもたらす。高い冷却速度は、一般に、高い残留空孔濃度(即ち、空孔が本質的に動くことができない温度へ一度冷却された場合の、シリコン中に存在するシリコン格子空孔の濃度)をもたらす。高い残留空孔濃度は、その後の加熱の際に、制御できない酸素析出をもたらし得るので、問題となる。
【0009】
従って、処理量のみでなく、得られるシリコンウエハのシリコンも最大とすることができる条件下、チョクラルスキー(Cz)法によって、単結晶シリコンインゴットを成長させることができる方法の必要性が存在し続けている。そのような方法は、残存する空孔濃度及び凝集した空孔欠陥の寸法、及び場合によって密度を制限する必要性の観点から、所定の結晶引き上げ装置の最も速い引き上げ速度を用いることができるように、成長条件を最適化しようとするものである。
【0010】
(発明の要旨)
本発明のいくつかの特徴には、向上したゲート酸化物の完全性を有する、単結晶シリコンウエハを得ることができる単結晶シリコンインゴット及び、そのような単結晶シリコンインゴットを製造する方法を提供すること;所定の結晶引き上げ装置について可能な最高の引き上げ速度を用いることができ、従って処理量及び収率を最高とすることができる単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供すること;成長条件を制御して、生成する凝集空孔欠陥の寸法を制限する単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供すること;凝集空孔欠陥の密度を制御する単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供すること;並びに得られる空孔濃度を制限して、制御できない酸素析出を防止する単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供することが含まれる。
【0011】
従って、簡単には、本発明は、単結晶シリコンインゴットを成長させる方法であって、インゴットは、中心軸、シードコーン、テイルエンド、及び側表面を有し、中心軸から側表面へ延びる半径を有するシードコーンとテイルエンドとの間の直径一定部分を有してなり、前記インゴットを、チョクラルスキー法に従って、シリコン融液からインゴットを成長させ、その後固化温度から冷却させることを含む方法を対象とする。この方法は、(i)結晶の直径一定部分を成長させる間、成長速度v及び平均軸方向温度勾配G0を制御して、中心軸まわりに、結晶格子空孔が優勢な真性点欠陥である軸対称な領域であって、前記半径の少なくとも約25%の半径の幅を有する領域を形成すること;並びに(ii)インゴットを冷却して、軸対称な領域に凝集空孔欠陥及び残存する濃度の結晶格子空孔真性点欠陥を生じさせ、凝集空孔欠陥は約70nm以下の平均半径を有するようにし、残存する結晶格子空孔真性点欠陥の濃度は、冷却する領域を酸素析出熱処理に付することによって生じる制御できない酸素析出のしきい値濃度以下であるようにすることを含んでなる。
【0012】
本発明は、更に、前部表面、背部表面、前部表面と背部表面とを連絡する側表面、前部表面及び背部表面に垂直な中心軸、並びに前部表面から背部表面へ実質的に延びる中心軸まわりで軸対称で、結晶格子空孔が優勢な真性点欠陥である領域を有してなる単結晶シリコンウエハであって、前記領域は半径の少なくとも約25%の半径幅を有し、凝集空孔欠陥及び残存する濃度の結晶格子空孔を有しており、(i)凝集空孔欠陥は約70nm以下の平均半径を有しており、並びに(ii)結晶格子空孔真性点欠陥の残存濃度はウエハを酸素析出熱処理に付することによって生じる制御できない酸素析出のしきい値濃度以下である単結晶シリコンウエハを対象とする。
【0013】
本発明は、更に、前部表面、背部表面、前部表面と背部表面とを連絡する側表面、前部表面及び背部表面に垂直な中心軸、並びに前部表面から背部表面へ実質的に延びる中心軸まわりで軸対称で、結晶格子空孔が優勢な真性点欠陥である領域を有してなる単結晶シリコンウエハであって、前記領域は半径の少なくとも約25%の半径幅を有し、凝集空孔欠陥及び残存する濃度の結晶格子空孔を有しており、(i)凝集空孔欠陥は約70nm以下の平均半径を有しており、並びに(ii)酸素を本質的に存在させずにウエハを約1200℃の温度へ急速に加熱した後、冷却する急速な熱アニーリングに付され、その後、ウエハを800℃にて約4時間アニーリングした後、約1000℃にて約16時間アニーリングすることから本質的になる酸素析出熱処理に付されて、得られる酸素析出の濃度が約1×108cm−3以下である単結晶シリコンウエハを対象とする。
【0014】
本発明は、更に、単結晶シリコンウエハの母集団(population)のゲート酸化物の完全性を評価する方法を対象とする。この方法は、(i)前記母集団の第1のサブセットの絶縁破壊特性を、第1のサブセットに適用されるストレス(応力)の程度の関数として調べ、その場合のストレスの程度は初期値から終価(final value)へ第1の割合(first rate)で増大させる工程、(ii)前記母集団の第2のサブセットの絶縁破壊特性を、第2のサブセットに適用されるストレス(応力)の程度の関数として調べ、その場合のストレスの程度は初期値から終価へ第2の割合で増大させ、第2の割合は第1の割合とは異なっている工程、並びに(iii)工程(i)及び(ii)において調べた絶縁破壊特性を用いてその母集団についての所定の電場でのゲート酸化物故障率(failure rate)を予測する工程を含んでなる。
【0015】
本発明の他の目的及び特徴については、以下の説明において指摘する部分もあるし、明らかとなる部分もある。
尚、図18、19及び20は、所定の条件下でシリコン材料の挙動を予測するための一連のモデルを示すグラフである。一般に、これらのグラフは、異なる条件(例えば、成長条件、冷却速度等)について、特定の空隙寸法及び特定の残存空孔濃度が得られることを示す。従って、これらのグラフは特定の材料を得ることができる成長条件についての一般的な領域を示しているが、更に実験を行うことによって、これらの領域の内部又は周辺領域の条件を詳細に求めることができるということに注意されたい。図示するように、X軸(対数目盛、約0〜100の範囲にわたる)は冷却速度(K/分)であり;Y軸(約0.01から0.25にわたる)はS0(シリコンが形成されるときの空孔濃度、比v/G0基準);全体的に斜めの鎖線/点線は残存空孔濃度(Cres)を示す;全体的に斜めの実線は空隙半径(Rv)を示す;並びに、Nvは空隙密度(全体的に「L」字形状である各Nvについての線は空隙密度の等高線であって、各等高線はそれ以下では「欠陥のない」材料が生成することになる同じ下側限界を本質的に有する)。同様に、特定の所定の部分に関連するこれらの曲線を生成させるのに必要な計算に関連するパラメーターの特定の値に関して特定の仮定をするので、これらの曲線は、その中で本発明の「有用で、機能的に完全な」シリコンを製造することができる空間、又は、一組の操作条件が存在することを示すことを意図していると理解されたい。この空間の境界は、あらゆる結晶引き上げ装置内で、本発明の「有用で、機能的に完全な」シリコンを製造することができる操作条件の境界を正確には規定できない可能性もある。
【0016】
(好ましい態様についての説明)
今日までの実験的証拠に基づくと、単結晶シリコンウエハ中のゲート酸化物の完全性を調べるために今日受け入れられている実務は、あまり正確ではなく、その結果、そうでなければ使用に受け入れられていたであろうウエハを処分し、従ってウエハを廃棄することにつながっている。特に、ゲート酸化物の完全性の要求は、一般に、所定の電場での故障百分率にて表され、集積回路が操作されることになる場よりも実質的に大きい場である(例えば、操作の場の2倍、3倍、4倍等)。以下にさらに説明するように、そのような試験は、使用するのに許容される材料を排除する結果をもたらすことができ、今日ではそう考えられている。この廃棄は主として、比較して相対的に小さい多くの欠陥よりも、所定のウエハにおけるいくつかの大きな凝集欠陥が好ましいという結論を誤って導き出す試験の結果である。
【0017】
従って、本発明は、場及び時間の両者における十分に規定された故障分布要件(例えば、GOI要件)を満足するように、空隙の寸法を、場合によっては密度とは無関係に設計することによって、並びに、成長プロセスの間における所定の温度範囲でのインゴットの冷却速度、及び(本明細書において規定するように、成長速度v、及び平均軸方向温度勾配G0)を含む成長条件を制御することによって、所定の単結晶シリコンインゴットからより多くのウエハを得ることを可能にする。従って、冷却速度を制御して、残存空孔濃度がその後に酸素クラスター化反応の大きな触媒が生じる程高くなることを防止することができる。そのような空孔によって触媒される酸素クラスターは、結晶成長プロセスにおいて、その後の熱処理によって排除することができない程大きく成長することができ、そして通常成長するので、そのような反応を防止することは好ましい(例えば、米国特許第5,994,761号及びPCT/US99/19301に記載されているプロセスである。これらの文献は引用することによって本願明細書に含めることとする)。その結果、そのようなウエハの酸素析出挙動は、制御を失って、通常の条件下でデニューデッド領域(denuded zone)の生成を防止し、従って、残存空孔濃度が高すぎる場合、米国特許第5,994,761号及びPCT/US99/19301に記載されている熱処理プロセスに付されたウエハは所望の結果をもたらさないであろう。
【0018】
(ゲート酸化物完全性の測定)
図1を参照すると、空隙、又は凝集した空孔の欠陥は、ゲート酸化物において、シリコン−二酸化ケイ素界面(「A」で示す)を横切って「ウィークスポット」(「B」で示す)を形成しており、空隙のない界面から予測されるよりも一般に低い電場にて生じる絶縁破壊事象(dielectric breakdown events)がもたらされる。ゲート酸化物にこの「ウィークスポット」が存在することは、過去の数十年にもわたって、シリコン材料性能についての主要な問題点であった。近年、空隙寸法分布及び酸化物厚さの関数として、電場及びストレス時間の両者において、空隙に関連する破壊分布の詳細な性質の理解が進んできている。この進歩は本願明細書にさらに記載する種々の重要な結論を導き、それらは本発明の基礎となっている。
【0019】
(絶縁破壊及び材料信頼性−空隙関連絶縁破壊)
図2を参照すると、空隙を有するシリコンと、空隙を有さないシリコン(例えば、エピタキシャル、実質的に欠陥のない又は侵入型シリコン)における破壊事象の典型的な分布を模式的に示すグラフが示されている。このグラフは、比較的大きなキャパシターサンプリング領域(約0.1cm2)を有する20nmのゲート酸化物を有するシステムが典型的に生じることを示している。絶縁破壊試験は、いずれかの所定のシステムにおいて故障の分布のための動き得る「ウインドウ(window)」を提供する。問題とする欠陥に対する「ウインドウ」の相対的な位置は、この欠陥とキャパシタ領域の密度との積によって求められる。積が大きすぎたり、小さすぎたりする場合には、本質的に何も観察されない。従って、図2に模式的に示す場合は、最適な場合が選ばれているとの仮定がなされていた。
【0020】
絶縁破壊試験における空隙の効果は、中間的場範囲における破壊事象のピークを形成することである。更に、第2のピークによって示されるもう1つの種類の欠陥は空隙関連故障ピークを超えて存在しており、これはより高い電場での破壊事象の分布の原因である。すべてのデバイスについて破壊プロセスを完結させるのは、この第2の種類、又はモードの破壊である。このモードは、欠陥のない材料(例えば、エピタキシャルシリコン)を含む本質的にすべての種類の材料について共通して見出されており、空隙には関連しない効果によるものである。従って、一般に、このことは本発明には実用的に重要な材料特性ではなく、従って、本発明のためにはこれ以上は説明しない。専ら第1のピークについて説明する。
【0021】
第1のピークが存在するということは、空隙に関連する破壊は限定された効果であるということを意味する。このことの簡単な理由は、所定の試料には数えることができる限られた数の空隙が存在するということである。電場が第2のピークの端部よりも高い値に達する時まで、システムの全ての空隙は「ターン・オン(turned on)」されており、即ち、すべての空隙は実際の物理的「欠陥(defect)」(即ち、空隙)から観察可能な電気的欠陥(即ち、破壊部位)へ変化されている。ピーク下で電気的に検知される欠陥の全体は、界面を横切る物理的空隙全体の数に等しい。
【0022】
空隙によってもたらされ、電気的故障の場にこのように分布する(即ち、ピークの幅の)理由は、実際の空隙の寸法の散乱と、より重要であるのは、空隙の寸法的及び空間的分布の両者から得られる空隙界面の交差の断面における散乱との組合せであると考えられている。本発明の材料のピークの形状は(単に平均値に加えて)、材料信頼性において重要なパラメーターである。
【0023】
(破壊要件及び材料スクリーニング)
半導体デバイス製造業者は、一般に、2つの問題:(i)デバイスの歩留り(収率)は如何なるものか、及び、(ii)経時的なデバイスの信頼性は如何なるものか;換言すれば、デバイス製造業者は、操作の短い試験においてどれだけ多くの欠陥を有する物品が見出されるか(即ち「歩留り(yield)」、及び、どれだけ多くの欠陥を有する物品がその後のデバイスの寿命の間に明らかになるか(即ち「信頼性(reliability)」)ということに関心を持っている。これらの問題は、更なる分類、例えば、デバイスの操作条件は如何なるものか、及び、時間の関数としての欠陥の許容されるレベルは如何なるものかを考慮する必要があるということを必要とする。最初に、これらの質問に対する幾つかの一般的で標準的な回答は、操作の場は約2.5MV/cm(20nm酸化物及び5VVddについて)であって、1ビットの故障でも欠陥あるチップを生じ得るであろうと想定されるということである。歩留りのスクリーニングの後で重要な事項は、信頼性の要件である。例えば、厳密な自動車用途では、一般に、故障率は10年間で1ppmの故障以下であるべきと要求されている。
【0024】
しかしながら、図2に示すデータは実際には、これらの質問のいずれについても結論を出すことに役立つものではなく、図2は操作場(2.5MV/cm)では破壊事象がないことを示している。このことは、この操作場で評価された場合に、空隙を有する材料及び空隙を有さない材料の両者から導かれる操作デバイスの歩留りは実際に約100%であることを意味する。より厳密に言えば、この数は統計学的な「信頼限界(confidence limit)」の規定の範囲内のものであると考える必要があるが、それを考慮しても、上記のようなデータを考慮すると、この数は約100%とは実質的に異なる筈である。
【0025】
しかしながら、実際には、空隙を有する材料及び空隙を有さない材料の100%が欠陥を有さないということにはならない。従って、歩留り及び信頼性に対処しようと試みる場合、半導体デバイス製造業者は、製造した半導体デバイス、例えばキャパシタを操作場よりもかなり大きい場にさらしている。この方法は、「バーン・イン」試験(burn-in test)と称されることもあるが、積層回路試験の標準的な一部である。空隙による故障が見出され、そして重要となるのは、そのような試験のみに基づくものである。再び図2を参照すると、5Vに代えて10Vを印加すると、空隙故障分布の中央部(middle)に直接的に移動することが観察される。この標準的な操作の裏にある基本的理由は、操作する電場よりも高い電場にて故障し得る部分を排除することによって、期待される動作寿命の間で操作される電場にて故障するであろうウィークスポットを排除することに成功するであろうという考えによるものである。
【0026】
バーン・イン試験の制約の1つには、これは完成した半導体デバイスについて実施されるということがある。従って、半導体デバイスの製造プロセスに用いた場合に、バーン・イン試験での故障の発生率が高い半導体デバイスを製造し得る半導体デバイスが得られる確率が高いシリコンウエハを識別するためには用いることができない。この目的でシリコンウエハをプレスクリーニングするために、半導体デバイス製造業者は、シリコンウエハを、種々のゲート酸化物完全性試験、例えばランプフィールド試験(例えば、「BVOX」、ここでは、所定の電場、例えば8mVまでの通過率は20%、70%等であり得る)又は「QBD」試験に付する。しかしながら、基本的に、これらの試験は、ウエハを任意に選択した電場に付するという意味において、「バーン・イン」試験と同等である。
【0027】
問題となるのは、「バーン・イン」試験又は同等の試験を、性能仕様に関連づけることである。別の表現をすると、要求されるデバイスの寿命において故障し得るデバイスを実際的に及び効果的に識別する電場、及びスクリーンによって、実際に残存したであろうデバイスを非必要に廃棄することなく、仕様(例えば、1ppm)のレベルまで低下させることである。これを調べるため、スクリーニングする欠陥の特定のクラスから得られる故障のメカニズムの時間依存性について信頼できる情報を、試験者は入手する必要がある。この情報は、試験者が扱う分布の特定の電場依存性と組み合わせる必要がある。今日まで、そのようなことは行われておらず、標準的な「経験則(rule of thumb)」的アプローチのみが用いられてきた。その結果、(i)バーンインフィールドは、集積回路製造業者によって販売されるデバイスの故障率を許容できるレベルへ低下させるように、デバイスをうまくスクリーニングすることができ、それが望まれているほとんど任意に選ばれたストレスレベルであること;並びに、(ii)BVOX要求は、同様に任意に選ばれたフィールド(バーンインフィールドよりは大きいフィールド)に基づいており、このスクリーニングによってバーンイン試験を通過した成功の許容できるレベル(即ち、歩留り)が得られる、と考えることができる。これらの既に任意的である条件を、任意な種々の環境、例えば種々の酸化物厚さに適用する場合であっても、問題が組み合わせられる。
【0028】
「ノーマル」な空隙を有する材料の結果を、「改良された」材料(即ち、より低い空隙密度、徐冷却された材料)と通常考えられている材料と比較すると、これらの標準的な試験を適用すると、徐冷却された材料が優れているように観察される。例えば、図3は、実験的に測定された、2つの種類の材料の空隙に関連する破壊分布の典型的な例を摸式的に示している。有効な酸化物欠陥は、BVOX試験(絶対的な数ではなく、定義に関して)によって測定されるように、大部分のBVOX型試験においてシリコン中の空隙密度を規模とほぼ同様に高めるが、それは必要ではない。
【0029】
図3を参照すると、徐冷却した材料は、標準的な材料よりも少ない、空隙関連の破壊事象の総数を有することが認められる。これは、一般的に理解され及び予測されているように、徐冷却によってより小さい密度の空隙が生成するためである。更に、2つの群の分布の間には平均フィールドのシフトが存在することに注目すべきである。
【0030】
考慮しているデバイスは問題(全ゲート領域と有効欠陥密度との関係の問題、即ち、本明細書における「ウインドウ(window)」の問題)に対して少しでも感受性を有すると仮定すると、徐冷却材料の「歩留り」は標準的な材料よりも一般的に良好である。更に、そのような凝集した欠陥を本質的に有さない材料(例えば、PCT/US98/07365及びPCT/US98/07304に記載されているような、エピタキシャルシリコン、又は「低欠陥密度シリコン」(両文献の開示事項は引用することによって本願明細書に含めることとする))は、一般にそれらよりも良好である。しかしながら、そのような考え方は、上述したように、今日まで多少任意的に選ばれた歩留りを規定する試験について選ばれたフィールドに完全に基づいている。例えば、この場合、フィールドを8MV/cmから4MV/cmへ変化させると、3つの型のシリコンはすべて合格と認められる。更に、多少大きいフィールドでは、徐冷却材料及び標準的材料の挙動は実際には逆転する。これらすべて、実際に材料品質を規定する最良の方法とは如何なるものであるかという疑問を抱かせることにつながる。
【0031】
(破壊の統計)
この問題を解決し、性能についてシリコン材料を評価する最良の方法を最終的に決定するために、統計学的方法をここで採用する。そのようなアプローチの目的は、所定のストレスレベルでの所定の欠陥の組を有するシステムにおけるデバイス故障の時間依存性を予測し、特定のバーンイン工程によるデバイス分布の「スクリーニング」の有効性を評価することである。対象となるストレスレベルは、操作フィールド(例えば2.5MV/cm)であり、故障要求は非常に長い時間で非常に低い故障率(例えば、1ppm/10年)である。便利であってコスト有効性のあるように採用することができるデータを推定することができる筋の通った方法が明らかに必要とされており、このことは統計学の適用に関連する。
【0032】
最初の基本的な仮定は、欠陥は無作為に分布するということである。そこで、ポアッソン統計学(Poisson statistics)が用いられる。「歩留り」は、単に、試料の一群に欠陥が見出されない確率である。これらの欠陥は、密度Dを有しており、試料(即ち、キャパシタ)は個々の面積Aを有している。歩留りは、式(1):
Y=1−F=exp(−AD) (1)
[式中、Yは歩留りであって、Fは故障の数である。]
で与えられる。
【0033】
問題の電気的欠陥の原因となっているのは、ウエハ表面を横断する空隙である。空隙は、それらの平均直径dにそれらの体積密度ρを乗じたのとほぼ等しい面密度を有している。問題の酸化物厚さは、酸化プロセスの間に消費されたシリコンの量に比べて、数ナノメートル(例えば、2、4、6ナノメートル等)〜数十ナノメートル(例えば、10、20、30ナノメートル等)の範囲と一般に小さいので、この小さな修正はここでは無視するのが妥当と考えられる。
【0034】
絶縁破壊試験は空隙を検出するのではなく、酸化物故障を検出するものであるということを念頭においておくことが重要である。唯一の物理的又は潜在的な欠陥密度はρdである。これは上の表現のDに等しいというよりも、むしろDは空隙密度とは多少異なる電気的欠陥密度である。物理的欠陥は、電気的ストレスによって「ターン・オン(turned-on)」されると、電気的欠陥のみになる。電気的ストレス試験からのデータを利用し、説明するため、物理的欠陥を電気的欠陥に変換するための数学的フォームが必要とされる。
【0035】
定常場または電流ストレス:
絶縁破壊の場合には2つの主要な変数がある。場(または電流)と時間である。この統計的問題に対するワイブルアプローチは、ちょうどの時間を通常意味する、どのような変数が試験に付されているかについて単純な電力法則関係を仮定している。しかしながら、2パラメーター分布であり、それぞれの変数について2つの異なった電力法則を組み合わせるという点において、本件は、通例件よりも複雑である。これに関して、ワイブル分布は、いずれかの物理的メカニズムを記述するまたはモデル化することを要求しないことに留意すべきである。そうではなくて、本件は、まさしく、統計学的方法であり、複雑なデータを扱う単純で有用で力量のある方法である。
【0036】
始めるにあたって、第1に、最も簡単な種類の適用ストレス、一定場ストレスEを考慮する。この場合には、時間と共に有効欠陥密度が増加するワイブル記述は、式(2)および(3):
AD=CtaEb (2)
および従って
1−F=exp(-CtaEb) (3)
で示される。
【0037】
密度およびプローブ面積は、「C」パラメーターに含まれ、場依存性は「b」パラメーターに含まれ、時間依存性は「a」パラメーターに含まれる(jここで、tは時間である。)。これらパラメーターは、歩留まりデーターの二重の対数をとり、これを時間の対数に対してプロットすることによって、容易に得られる。「ワイブル」プロットは、こうして、式(4):
ln(-ln(1−F))=aln(t)+bln(E)+lnC (4)
で示される。
【0038】
これは、単純な線形であり、したがって、ln(t)での有用な式であり、実験データーを記述するのに良好に働く。ln(−ln(1−F))という数は、ワイブル数と呼ばれる。
【0039】
一旦求めたならば、これらパラメーターは、任意の場および時間での系の破損速度の完全な記述を与える。しかし、1種類の分布欠陥についてのみ有効である。ほとんどのいつもの場合のように、1種類を超える欠陥が存在するならば、この分布についてのパラメーターのセットは、独立的に定まり、次いで、他の分布に加えられる。空隙に加えて、電気ストレスによって活性化される、第2の、より高い場クラスの欠陥がある。幸運なことには、このクラスは、分布の空隙部分から明確に分離され、分離して分析される。
【0040】
パラメーターのセット、C、aおよびbは、欠陥の特定の分布に対して、ある種の「指紋」を与える。典型的な場合の例は、概略的に図4に示されている。そのようなプロットは、非常に有用である。例えば、結果を任意キャパシター領域にスケーリングすることが可能になる。CはAに比例しており、したがって、スケーリング係数は、単にln(A1/A2)である。破壊のそれぞれのモードの「a」、すなわち時間パラメーターは、チャートから直接に読み取ることができる。「b」、すなわち場パラメーターを求めるために、異なったストレスレベルにおける複数測定を行うべきである。これによって、面積係数に類似する、他の単純なスケーリング係数、b(lnE1/E2)が得られる。これら面積係数と場パラメーターとの間の差は、全ての種類の欠陥に対して一定である(ランダムな分布と仮定して)が、場パラメーターは、それぞれの特定の欠陥分布または破壊モードに対して独特である。場スケーリングを2モードの場合について図5に概略的に示す。
【0041】
空隙優勢系における実際のかなり典型的な時間依存応答の例を図6に示す。空隙による電気的損失集積の時間依存性はかなり弱い。「a」パラメーターは、約0.15である。平均して、試験場においてすでに破壊していない空隙が、電気的欠陥に転化するには、かなりの長時間を要する。この弱い時間依存性の他の結果は、信頼性の用語において、破損速度は、デバイスがこのメカニズムによって破損する時間ともに減少する。この点に関して、バーンインスクリーニングを行うこれら条件下のみであることに留意すべきである。
【0042】
しかし、図6は、破壊図の一部分のみを示している。他の有意な、しかし、非空隙関連の、破壊メカニズムが、見られない。なぜなら、単に、試験が充分に長く持続しなかったからである。他の測定に基づいて、このモードは、空隙関連メカニズムに比較して、異なった時間依存性を示す。非空隙関連メカニズムの「a」パラメーターは、1よりも大きく(すなわち、約3)、したがって、このモードは、物理的および統計的の両方(すなわち、信頼性観点)において、全く異なっている。
【0043】
上記の従来の試験手順での問題点は、二重である。従来の試験方法は、第1に、極度に時間がかかり、第2に、非常に狭い範囲の場研究を与える。中くらいの場でさえ、そのような試験は複数週間を要する。低い場への外挿が標的であるので、これは、特に満足すべき手法ではない。より好都合でかつ高度に相補的な試験は、広範囲の場を急速に走査する試験から信頼性を予測するのに必要なパラメーターを取り出すことである。ランプ付け場試験を用いることによってのみ、全てのパラメーターを実際に取り出すことが可能になる。
【0044】
ランプ化(傾斜)場ストレス:
絶縁破壊挙動のランプ化場試験は、一般的な試験方法である。図1および図2からの仮想的データは、そのような仮想的試験から導きだされる。そのような試験に対する一般的な考えは、該試験が破壊分布の場依存性についてのみの情報を与えるということである。しかし、実際には、該試験は、時間依存性についても非常に強力な情報を与え得る。重要なことには、これら試験は、非常に広い場範囲にわたって、破壊の個々のモードの時間依存性を急速に明らかにできる。
【0045】
ランプ化場テストにおいて、一定場試験と異なって、場および時間の両方は同時に変化する。2つのパラメーターを解きほぐすために、場がある時間で形成するとともに、どのようなダメージが形成するかまたは集積するのモデルが必要になる。簡単な追加的ダメージ形成モデル(例えば、R. Falster, The Phenomenology of Dielectric Breakdown in Thin Silicon Dioxide Films, J. Appl. Phys., 66, 3355 (1989)を参照できる。)がポリシリコンカソードの空隙関連破壊からのデータを記述しないこと、ランプ化場および一定場ストレスの両方のデータを説明するため、式(7)で説明するように、ダメージ用の新しいモデル(W)を適用すべきである:
W=p[∫E(t)ddt]a (7)
[式中、dはb/aである。]
線形ランプ化場ための式(7)を積分すると、この式は、式(8)に示すように、一定場試験の同様の「a」および「b」パラメーターの項において、ランプ化場試験ための絶縁破壊の「ワイブル」記述を与える。
【0046】
1-F=exp{-C[a/(a+b)]a (dE/dt)-aEa+b} (8)
二重の対数をとると、ワイブルランプ化試験プロット歩留まり式(9)が得られる。
【0047】
ln(-ln(1-F))=(a+b)ln(E)−aln(dE/dt)+lnC+aln{a/(a+b)} (9)
これは、ln(E)において線形である。直線の傾きは、パラメーターaとbの合計に等しい。
【0048】
したがって、ランプ速度の変化が、aln[(dE1/dt)(dE2/dt)]の量でワイブルプロットにおける単純なシフトを与える。同様の欠陥個体集団について可変のランプ化速度測定を単に行うことによって、広範囲の場にわたってパラメーターのセットおよびこれらパラメーターの合致を得ることができる。この式について、データ、一定ストレスおよびランプ化ストレス試験の間を行ったり来たりでき、非常に有用である。
【0049】
図7および図8を参照すると、図7は、この手順の概略図であり、一方、図8は空隙含有系の実際のデータを示す。図8のデータ(および他の類似のプロット)から上記方法を使用して、ランプ試験結果から「a」パラメーターを取り出した場合に、単純な一定場試験(図5参照)と同様の結果が得られる。しかし、ランプ試験結果は、空隙が破壊分布よりも優勢になる全場範囲にわたってこの値が有効であることを確認している。言い換えれば、空隙関連破壊の時間依存性は、活性である電場範囲において同様の形態を有する。現在まで得られている実験的証拠は、空隙関連破壊のための「a」パラメーターが典型的に約0.15〜約0.18の範囲にあることを示している。この情報から、上記の統計的形式を使用して、単純なランプ化試験結果から信頼性能を誘導することが可能である。
【0050】
したがって、本発明の一要旨は、多数の単結晶シリコンウエハのゲート酸化膜完全性を評価する方法である。本発明の方法は、(i)ストレス量を初期値から最終値への第1速度で増加する第1のサブセットに適用された、ストレス量(例えば、電場)の関数として、第1サブセットの個体集団の絶縁破壊特性を求める工程、(ii)ストレス量を初期値から最終値への第2速度で増加し、第2速度が第1速度と異なる第2のサブセットに適用されたストレス量の関数として、第2サブセットの個体集団の絶縁破壊特性を求める工程、ならびに(iii)工程(i)および(ii)において求めた絶縁破壊特性を用いて、個体集団の規定条件下でのゲート酸化膜破損速度を予測する工程を有してなる。第1速度と第2速度は、好ましくは少なくとも5の係数、より好ましくは少なくとも10の係数、いくつかの用途において、少なくとも100の係数で異なっている。加えて、いくつかの態様において、3、4またはそれ以上のウエハのサブセットを、(相互に少なくとも10の係数で異なっていることが好ましい)異なったランプ速度で評価することが好ましい。例えば、1つの態様において、個体集団のウエハの4つのサブセットのそれぞれを、それぞれ0.05、0.5、5および50メガボルト/cm/秒の速度で線形に増加させる適用場に付される。
【0051】
本発明の1つの態様において、ゲート酸化膜完全性試験を行うウエハの個体集団は、1つの特定のインゴット(またはその一部分)、特定の結晶成長方法またはウエハの1つまたはそれ以上のカセットからのウエハであってよい。サブセットは、この個体集団から選択され、したがって、個体集団の1つまたはそれ以上のウエハの全体部分または一部分を有してなってよい。例えば、それぞれのサブセットは、同様の1つまたはそれ以上のウエハの一部分を有してなってよい。あるいは、それぞれのサブセットは、異なったウエハの一部分を有してなってよい。さらにあるいは、サブセットは、ウエハの部分的に重なるセットの一部分であってよく、すなわち、それぞれのセットは、同様の1つまたはそれ以上のウエハの一部分、あるいは異なったウエハの一部分を有してなってよい。
【0052】
空隙関連絶縁破壊の再検討:
空隙関連絶縁破壊の問題に戻ると、「通常」または「徐冷」型の結晶についての空隙関連破壊の場における典型的な分布である図2に概略図を示す。図9を参照すると、ワイブルフォーマットで提示された2種の材料を比較する実際のデータが示されている(無空隙エピタキシャル材料の結果が、8MV/cmの「標準」BVOX参照場であるとして、参照として含められている)。このように見ると、「徐冷」材料と通常材料との間の通常の差(BVOXパーセント)は、明らかである。さらに、全ての3つの材料は、材料における空隙の分布に独立した固有の挙動を示す(再び、非常に異なった高場破壊分布が空隙に関連しないことに留意する。)。
【0053】
図9を参照すると、これら分布の2つの特徴を特に留意すべきである。
1.(前記のように、分布における「ピーク」が存在するという事実に関連して)それぞれの分布について或るパーセントで破壊破損における「飽和」が存在する。この結果の単純な理由は、いくつかの特性的場に達する時間までに、系における空隙の全てが使用されるかあるいはターン・オンしているということである。飽和破損パーセントのこの差は、「徐冷」法による空隙の数密度を減少する結果である。そのような飽和効果は、高い場において、他の主要モードの絶縁破壊に存在しないことに留意すべきである(ここで、下にある物理的欠陥は勘定できない。)。当然、例えば、全てのBVOX試験が実際に測定するものは、この飽和値である。したがって、空隙の有効面積密度のみを直接に測定する。
【0054】
2.しかしながら、「徐冷」法の結果は、他の概要プロットによって示され得るような、空隙の数密度を単純に減少しない。図10および図11を参照すると、2つの場合のどのような破損分布が、2つの間の差が単純に密度減少の結果であるかのように見えるかを示している。これは観測されない。かわりに、図2に示すのと同様の形態を採る。これが意味することは、欠陥の全密度が「徐冷」処理によって平均して減少されるが、「徐冷」空隙がより低い場で破壊につながる、すなわち、分布がシフトすることを意味している。
【0055】
一般に、徐冷型手法によって生成される空隙はより大きい。これは、徐冷型手法においてより少数の空隙位置が、通常型手法においてより多数の空隙が消費するとの同様の数の空孔を消費するという単純な理由からである。このシフトの理由は、図12において示すように、徐冷分布における空隙の増加平均サイズに原因していると結論づけられている。
【0056】
絶縁破壊分布の空隙サイズ依存性の結果:
ことがらの表面において、「バーンイン」電圧規則の適用は、より低い飽和破損パーセントとともに、徐冷型材料が良好な材料であるという直行的な結論を導く。当然、本明細書において指摘するように、この試験のまさしくの適用によって所定のものになるので、この結果は驚くべきものではない。しかし、真の問題は、異なった基準を適用した場合に、どのような結果が得られるかということである。例えば、単純に真の信頼性基準を材料系に適用することである試験を適用することを考える。すなわち、作動場よりも顕著に高い任意の場ではなくて、作動場でストレスを適用し、どの系が例えば10年後に最も破損しているかを検討することを考える。
【0057】
外挿信頼性の計算:
外挿信頼性を計算するため、上記系を使用し、規定操作場で、ランプ化場データから一定場操作へと外挿する。上記式(4)および(9)を扱い、簡単な表現がワイブル形態で書くことができる(式(10))。デバイスの消耗の解を本質的にいずれかの操作場で求めることが可能になる。
【0058】
【数1】
[式中、
1.F'(t,Eop)は、求めるべきものであり、(操作)場、Eopで時間依存性破損分布のワイブル数{= ln(-ln(1-F)}である。
2.F''(Eop,dE/dt)は、ランプ速度dE/dtで行ったランプ試験結果から、(操作)場、Eopに外挿したワイブル数{= ln(-ln(1-F)}である。この数は、単に、データの直線的外挿であり、式(11)において以下のように表現することができる:
【0059】
【数2】
[ここで、Esampleは傾き(a+b)が有効である範囲における或る場値であり、F''(Eop,dE/dt)はこの点におけるワイブル数である。
3.a+bは、ランプ試験結果からの破壊分布の空隙関連部分のlnEにおける傾きである。
4.「a」は、同じ分布の可変ランプ速度試験から、あるいは試料一定場/電流試験から、導かれる時間パラメーターである。
【0060】
標準材料と「徐冷」材料の比較:
再び図9を参照し、上記を考慮すると、複数年の期間にわたる5Vの操作電圧についての2つの材料系の外挿信頼性の比較を行うことができる。これは。図9から得られたデータに式(10)を適用することによって行うことができる。図13は、驚くべき結果を示しており、標準の材料は空隙のより高い全密度および対応する悪いBVOX結果を有する標準の材料が実際には良好な材料であるという点において驚くべきである。
【0061】
この点に関して、図13に示されている結果は驚くべきであるが、いずれの材料も、10年(10年は約3.15x108秒に等しい。)で1ppm破損の信頼性要求に合致しないので、実際に議論の余地がある。明らかに、これら要求に合致するために、両方の材料からできているデバイスをスクリーニング(すなわち、バーンイン)すべきである。しかし、バーンイン試験の適用が悪い答えを与え、したがって、プロセスにおける許容可能なシリコンの浪費につながることに留意すべきである。
【0062】
上記のことを考慮すれば、従来のスクリーニング手法が、飽和形態における測定によって、徐冷材料が優れたものであると不正確に同定しているようである。破損の数は非常に小さいので、この形態における差は、真の信頼性の問題に入ることはなく、あるいはおそらく約10000年程度のデバイス操作まで入らない。したがって、実際の論点は、破壊分布の初期部分にあり、特に、(式(9)からの定数によって調節される)操作場での曲線の上昇部分のインターセプト(切り取り)にある。
【0063】
「機能的に」無欠陥のシリコン
本発明の方法によれば、ゲート酸化膜完全性の分析方法が適切に規定され適用されると、(従来のGOI分析法に基づいて)許容可能であると従来みなされていたものと対照的に、サイズが小さく濃度(または数密度)が大きい空隙を有するウエハを生成する条件下で単結晶シリコンを成長させることが明らかに好ましいことが見い出された。別の表現をすれば、ゲート酸化膜完全性がより正確に規定され測定されると、より小さい空隙をより高い濃度で有する単結晶シリコンウエハが、より大きい空隙をより低い濃度で有する材料に比較して、好ましいことが見い出された(以下に詳細に説明する。)。これまでの経験によれば、機能的な観点からのそのようなウエハは、実質的に無欠陥のシリコンに、ほとんどの場合に品質において相当する。
【0064】
具体的には、本発明は、以下の2つの基本的基準に合致するように設計された材料である「機能的に無欠陥の」シリコンの工業技術または製造を可能にする。
1.材料は、信頼性の上記要求が所定用途のためにどのようなものであろうと、信頼性の上記要求(例えば、デバイス操作10年で1ppmの破損)に合致している。ならびに(要すれば)
2.材料は、バーンイン電圧において本質的に検出可能な破損を有しない。
【0065】
第2の基準に関して、これは、技術的に要求ではないこと、すなわち、真の「機能的完全」は第1の基準によって完全に満たされることに留意すべきである。しかしながら、それにもかかわらず、バーンイン基準(2)は重要である。なぜなら、材料は、典型的に、集積回路の製造業者のバーンイン試験要求に合致すべきであるからである。したがって、これは、必ずしも、ゲート酸化膜完全性の合理的試験ではないが、これは、操作のものでないならば、ある種の機能である。さらに、シリコン製造業者の制御を超えて、使用者が特定値のバーンイン電圧でこの試験を行うのに他の理由が存在し得る。結果的に、この要求は、シリコン材料によっても満足されることが好ましい。
【0066】
空隙サイズ分布および「機能的完全」:
図10〜図12の説明において、ワイブル曲線の初期部分が、空隙のサイズ分布よりも空隙の密度によって少なく求められることを説明した。したがって、これは、「機能的完全」にとって重要である。これは、材料を改良する従来の全ての試みと比較して、全く異なったアプローチである。具体的には、他の全ての提案されている材料の改良方法(例えば、遅い冷却、無欠陥シリコン、エピタキシャルシリコン)において、アイデアは、空孔の密度を減少させることであったが、一方、本発明において、焦点は、空隙のサイズを減少させること(空隙密度の制御はしてもしなくてもどちらでもよく、少なくともいくつかの態様において、最小の空隙密度が必要になる。)にあてられる。
【0067】
一般的に言えば、空隙のサイズは速い冷却によって減少される(「速」冷却mについては、以下において、詳細に説明する。)。このアプローチには、2つの要素がある。
1.運動的限定から、速冷却は、空孔移動の効率を減少させ、したがって、空孔が空隙にシンクする効果を減少させる。結果的に、空隙は大きくならない。
2.速冷却はより高い空孔密度を与える。結果的に、空孔濃度が固定されたならば、空隙当たり、より小さいの数の入手可能な空孔が存在する(これは、当然、「徐冷」材料が本明細書において劣っている場合である。)。
【0068】
これを留意して、鋭く尾末端を形成するために引き上げ速度を典型的に増加させる場所である尾末端領域において、従来のCZシリコンにおける最速の冷却が通常みられることを考慮する。これは、溶融界面よりも速く該領域における結晶の冷却速度を変化させる効果を有する。典型的には約1000℃〜約1200℃の範囲になる空隙核形成温度領域、および約1100℃〜約900℃の範囲になる空隙成長温度領域(これらの両方については以下に詳細に説明する。)における結晶の冷却速度が特に興味を引くものである。溶融物−固体界面を基準とした、これらの温度の軸方向位置を、ホットゾーン設計または配置によって求める。
【0069】
図14を参照すると、「徐冷」および「速冷」(「U97」で示す)手法から得られたシリコン材料に対して、所定または標準の材料の破壊分布の比較が行われている。これら結果は、本発明の説明の意図において、かなり注意を引く。さらに詳細には、次ぎのとおりである:
【0070】
1.速冷却材料のより大きな空隙密度は、より大きな飽和破損パーセントに明らかにみられる(あまり注意を引かない)。8MV/cmのBVOX試験は、速冷却材料に対して約85%の破損、標準材料に対して65%の破損、徐冷材料に対して45%の破損を与える。手短に言えば、標準的な試験方法によれば、本発明の材料は劣っているように見える。
2.速冷却材料のより小さな空隙サイズによって、より高い場に向かって、分布の初期部分のシフトが得られる。さらに、分布のこの部分の傾きはより急になっている。大きな傾きは、分布における単なる平行シフトよりもずっと強力である。急速な傾きは、操作場でのインターセプトを顕著に低い値に駆動させるからである。傾きのこの増加(したがって、場における破損の分布のタイト化)の理由は、シリコン界面で得られる空隙横断面積におけるより小さい範囲に原因していると考えられる。したがって、BVOX試験の顕著な不完全さにもかかわらず、速冷却材料は、信頼性性能に関しては、例外的に良好である。図15を参照すると、この材料の予想信頼性が、(良好なBVOX実施)標準材料の予想信頼性と比較されている。これらの結果から、10年の操作において、速冷却材料が0.001ppm破損よりも良好な破損を与え、最も厳格な要求さえも大きく凌駕していることに留意すべきである。例えば(操作電圧の2倍である)5MV/cmのバーンイン場で、測定可能な歩留まり損失が本質的にない(すなわち、約1%よりもずっと低い)ということにも留意すべきである。
【0071】
「機能的に完全な」材料の結晶成長の考慮:
成長条件の関数としてシリコンにおいて生成される空隙の密度およびサイズを説明しているモデルの骨組みは、最近のいくつかの文献に記載されている(例えば、V.V.Voronkov et al., J. Cryst. Growth, 194, 76(1998); V.V.Voronkov et al., J. Cryst. Growth, 204, 462(1999);およびR. Falster et al., On the Properties of the Intrinsic Point Defect in Silicon, Phys. Stat. Sol., (B)222, 219(2000))。しかし、一般的に言えば、空隙を構成する空孔の濃度は、溶融物/固体界面におけるパラメーターv/G0によって決まる[ここで、vは成長速度であり、G0は凝固温度および1300℃よりも高い温度(例えば、1325℃、1350℃または1375℃さえ)によって定まる温度範囲にわたる平均軸方向温度勾配である。]。この値が、v/G0の臨界値を超えて、大きいほど、成長結晶に組み込まれる空孔濃度は大きくなる。これらの空孔は、ある「核形成」温度(空孔濃度が大きくなると、この温度も高くなるという点で、この温度は空孔の濃度に依存する)で臨界的過飽和に達し、従って空隙が生成する。生成した空隙の密度は、因子:
【0072】
【数3】
[式中、qは 核形成温度での冷却速度であり;Cvは核形成温度における空孔濃度である。]
に本質的に比例する。
【0073】
凝集真性点欠陥の核形成のプロセスは、一般に、約1000℃以上の温度(例えば、約1050℃、100℃、1125℃、1150℃、1175℃、又は1200℃以上のこともある)にて起こる。しかしながら、優勢な真性点欠陥の核形成が生じ得る温度は、以下のような所定の結晶引き上げ装置及びプロセスについて実験的に求められる。インゴットの規定された領域におけるシリコン自己格子間原子は点欠陥として残り、シリコンが核形成温度に達するホットゾーンの部分をその領域が通過するまでは、核形成して凝集した欠陥を生じることはないと考えられている。即ち、典型的なチョクラルスキー法成長条件下では、その領域は最初に固体/液体界面にて生成し、シリコンの溶融温度とほぼ同じ温度を有している。インゴットの残りの部分の成長の間にメルトからその領域が引き上げられる際に、その領域の温度は結晶引き上げ装置のホットゾーンを通って引き上げられながら低下する。特定の結晶引き上げ装置のホットゾーンは、特徴的な温度プロファイルを有し、一般にメルト固体界面からの距離が増大するにつれて温度が低下し、その領域が占めるホットゾーンの領域の温度とほぼ等しい温度になる。従って、ホットゾーンを通って領域が引き上げられる速度は、領域が冷却される速度に影響を及ぼす。従って、引き上げ速度の突然の変化は、インゴット全体の冷却速度の突然の変化を生じ得る。重要なことは、インゴットの特定の領域が核形成の温度を通過する速度が、その領域において生じる凝集欠陥の寸法及び密度の両者に影響を及ぼすということである。従って、突然の変化が生じる時間における核形成温度を通過するインゴットの領域は、凝集真性点欠陥の寸法及び密度の突然の変動をもたらし得る(以下、核形成前端部(nucleation front)と称する)。核形成前端部は引き上げ速度が変化するときに生じるので、インゴットの軸に沿う核形成前端部の正確な部位を、インゴットの位置と、従って引き上げ速度が突然変化した時点でのホットゾーン内の核形成前端部と対比し、及び、ホットゾーンの温度プロファイルと対比して、核形成前端部の部位における真性点欠陥の型及び濃度について凝集真性点欠陥の核形成が生じる温度を求めることができる。
【0074】
従って、当業者は、引き上げ速度を突然変化させ、その後、(i)引き上げ速度が変化する時間の時点でホットゾーンにおける温度プロファイルに対してインゴットの位置を確認し、並びに(ii)核形成前端部の軸方向に部位を観察することによって、空孔優勢型であっても、シリコン自己格子間原子優勢型であっても、インゴットの製造を特定するプロセス条件下でチョクラルスキー法によってシリコンインゴットを成長させることができ、近似は核形成前端部に沿って存在する真性点欠陥の濃度についての核形成温度について行うことができる。更に、温度及び真性点欠陥濃度は核形成前端部に沿って半径方向に変化するので、温度及び真性点欠陥濃度は核形成前端部に沿ういくつかの点で測定することができ、核形成の温度を真性点欠陥濃度に対してプロットすると、真性点欠陥濃度の関数として核形成の温度を求めることができる。核形成前端部に沿うシリコンの温度は、チョクラルスキー法反応装置内のいずれの部位の温度も推定することができる、従来技術において知られているいずれかの熱シミュレーション法を用いて求めることができ、そのような方法には、例えばVirzi、「Computer Modeling of Heat Transfer in Czochralski Silicon Crystal Growth」、Journal of Crystal Growth, vol. 112, p. 699 (1991)に記載されている。シリコン自己格子間原子の濃度は、インゴットのいずれかの点での真性点欠陥の濃度を評価することができるこの技術分野において既知のいずれかの点欠陥シミュレーション法を用いて、核形成前端部に沿って評価することができ、点欠陥シミュレーションは例えば、Sinno et al.、「Point Defect Dynamics and the Oxidation-Induced Stacking-Fault Ring in Czochralski-Grown Silicon Crystals」、Journal of Electrochemical Society. vol. 145, p. 302 (1998)に記載されている。最後に、真性点欠陥濃度に対する核形成温度は、真性点欠陥の初期濃度を高くしたり低くしたり、上述のような分析及び冷却実験を繰り返したりして、インゴットを製造するための成長パラメーターを変化させて、更なるインゴットの成長を行うことによって、広い範囲の温度及び濃度について得ることができる。
【0075】
核形成プロセスは、温度が核形成温度の数ケルビン(数度)(例えば、約2度、4度、6度、8度又はそれ以上)内になると、即座に停止する。この温度に一旦達すると、新たな空隙は生じないが、空孔の拡散が遅くなって成長プロセスが停止するまで、既存の空隙は寸法の成長を続ける。即ち、空隙の核形成が一旦停止すると、空隙の成長は、空孔が空隙部位へ商業的に実用的な時間内で拡散することができる程度に続くのである。酸素含有チョクラルスキー法シリコンの場合、約1000℃という特徴的な温度(例えば、約1010℃、1015℃、1025℃又は1050℃のこともある)にて空孔は酸素に結合する。結合した状態において、空隙の成長する時間の尺度で空孔は有効に固定化される。温度が900℃(例えば、約910℃、925℃、950℃又は975℃のこともある)に達する時点まで、本質的にすべての空隙の成長が停止する。
【0076】
上述のことを考慮すると、本発明のプロセスは、(場合によって、図18〜20を参照すると、冷却速度が変化する場合、許容できる操作条件の「ウインドウ」は大きくなるので、)2つ、場合によっては3つの別個の温度範囲について結晶の冷却速度に焦点を当てることもできる:
1.第1の温度範囲は、溶融物−固体界面の近くであって、v/GOは約1300℃から約1400℃の温度範囲(即ち、固化温度から約1300℃、1325℃、1350℃又は約1375℃の場合もある範囲の温度)で設定される。この範囲での冷却速度は、対象の特定の領域について、空孔が、インゴットの中心軸のまわりからインゴットの側表面のまわりへの優勢な真性点欠陥であるかということに影響する。
2.第2の温度範囲は、空隙の核形成が起こる温度範囲である。空隙核形成は一般に、約1000℃〜約1200℃、約1025℃〜約1175℃、約1050℃〜約1150℃、約1075℃〜約1125℃の範囲の温度にて起こる。この温度範囲での冷却速度を制御することは空隙核形成に影響を及ぼす。
3.第3の温度範囲は、空隙成長が起こる温度範囲、即ち核形成が起こった後、商業的に実用的な時間で、シリコン格子空孔が動くことができる温度範囲である。空隙成長又は空孔拡散は一般に、約900℃〜約1100℃、約925℃〜約1075℃、約950℃〜約1050℃の範囲の温度で起こる。
そのような成長条件を如何に達成できるかについての例示的な詳細を、以下に更に説明する。
【0077】
シリコン領域における残存空孔濃度を制限するために、空隙核形成及び成長の制御に加えて、特定の環境において、単独で又はv/G0(初期空孔濃度を決める)の制御との組合せのいずれかで、空孔が動くことができる温度範囲にて冷却速度を制御することが重要なこともある。特に、約3×1012cm−3(例えば、以下に記載するプラチナ拡散法によって測定)を超える空孔濃度を有するシリコンが、集積回路製造プロセスにおいて一般に用いられる温度(例えば、約600℃〜800℃の範囲の温度)にさらされる場合、触媒作用による酸素析出が生じることになると現在考えられている。酸素析出は、起こる析出の程度に応じて、有利であったり、有害であったりし得る。例えば、そのような析出は、例えば米国特許第5,994,761号(引用することによってその開示内容を本願明細書に含めることとする)に記載されているような熱処理によって制御して、制御された空孔プロファイル(次いで、制御された酸素析出プロファイルにつながる)を有するウエハを形成する場合には有利である。対照的に、(例えば米国特許第5,994,761号及び国際特許出願PCT/US99/19301(引用することによってその開示内容を本願明細書に含めることとする)に記載されているようなその後の熱処理によって結晶冷却の際に生じた酸素クラスターを消したり、消滅させたりすることができないという点で)結晶中の酸素析出の制御を失うことなどによって、この析出を制御できない場合には、有害となる。析出が制御を失う場合の状況の一般的な例は、非常に速い冷却が起こる結晶の末端側のテールエンドにおいて見出すことができる。
【0078】
正常な結晶成長期間において、空隙は空孔の有効な消費者(consumer)であって、結晶が空孔結合期(vacancy binding regime)に入る際に、向上した析出効果についてのしきい値3×1012cm−3よりもかなり少なく、実際にはほとんど残らない。しかしながら、本明細書に記載するように結晶を急速に冷却すると、成長フェーズの間に、不充分な空孔が消費されるおそれが生じる。この状態を図16及び17に摸式的に示している。特に、図16は、最も典型的な場合の、成長する結晶での空隙の生成を示している。そのような条件では、空孔の空隙への消費は、空孔が酸素に結合するようになる時間までに、向上した析出しきい値以下の値へ空孔濃度を下げるのに十分である。対照的に、図17は、空隙成長期間(void growth regime)を通してより急速に冷却された成長する結晶中における空隙の生成を示している。より急速な冷却によって、「異常に(anomalously)」高い値の酸素析出が生じる。それは結晶が結合期間に入るときに残存空孔濃度のレベルが高いためである。
【0079】
「機能的に完全な(functionally perfect)」(即ち、「機能的に欠陥がない(functionally defect-free)」)シリコンを製造するため、空隙の寸法は十分に小さいことが必要である。このことは比較的高い冷却速度を必要とする。他方、有用な生成物のために、酸素析出は制御可能であることも必要とされる、即ち、シリコン中で、デニューデッド領域型(例えば米国特許第5,994,761号参照)又は非酸素析出型(例えば国際特許出願PCT/US99/19301参照)挙動をつくることができるべきである。これらの2つの要件は必ずしも同時に満足されない。従って、本発明の1つの要旨は、これら2つの要件を同時に満足すること、及びこれを達成できる条件について説明することである。
【0080】
更に、場合によって、空隙は、十分に多数である場合、許容できるデニューデッド領域の形成をそれ自体が妨害したり、阻害したりする可能性があるということに注意されたい。従って、状況によっては、空隙の密度が約1×108cm−3以下であることが好ましい場合もある。
上述したすべての制限が満足されるような状況では、本明細書において「有用で機能的に完全な」シリコンと称するシリコン材料が得られる。
【0081】
「有用で機能的に完全な」シリコンのための結晶成長条件の計算
そのような材料のための操作条件を規定するために用いる計算は、いくつかの結晶成長パラメーターの組合せを含んでおり、比較的複雑で、多次元的である。上記引用に用いたモデルエレメント(以下、「標準」モデルと称する)を用いると、これらは、例えば、経験的に又は(本明細書に記載する手段又はこの技術分野において標準的な手段を用いて)更にモデリングして、見積もることができ、更に精密化することができる。結果を図18の複雑なチャートにまとめている。特に、図18は、一定の冷却速度(例えば、約1400℃から、所定の空孔濃度について、商業的に実用的な時間で空孔が動けなくなる特定の温度までのコンスタントな冷却)と、組み込まれた空孔濃度(S0は空孔濃度であって、Cvを融点濃度Cvmへ標準化している)の関数として、空隙寸法/空隙密度/残存空孔スペースの計算を示している。これらの計算によって、「有用で機能的に完全な」シリコンを生じさせるために重要なパラメーターの数値が提供される。これらのパラメーターは:
1.空隙密度:Nv(cm−3)
2.空隙寸法:Rv(空隙のほぼ中央から外側縁部までの平均半径間隔(nm単位))
3.残存空孔濃度:Cres(cm−3)
【0082】
一般に、これらのパラメーターのスペースは、2つの結晶成長パラメーターの関数として与えられる。
1.組み込まれた空孔濃度(図18においてS0として識別される)。S0は空孔の融点溶解度へ標準化した結晶内に組み込まれた空孔の濃度である。この数は、結晶が成長したv/G0条件に関連する。2つを関連付ける簡単な分析的表現は、例えば、V.V.Voronkov et al., J. Appl. Phys., 86, 5675(1999)(引用することによってその開示内容を本願明細書に含めることとする)によって、既に述べた。一般的に、この関係は、
【0083】
【数4】
[式中、Cv0は「設定された」空孔濃度、即ち、v/G0によって求められた空孔濃度であり;Cvmは融点における空孔濃度、即ち、空孔の融点溶解性に基づく空孔濃度であり;vは成長速度であり;並びにvcは臨界成長速度、即ちvc=Gξcr、但しξcr=(v/G0)criticalである。]
2.結晶の冷却速度−これらの計算における冷却速度は(上述した)空隙成長期間及び空隙核形成の双方により一定であると推定される。
【0084】
グラフの中のこれらのパラメーター空間の交点は、所望の結果を達成することができる条件のマップを示している。「有用で機能的に完全な」シリコンを生じさせるための要件を満足するのに必要な結晶成長パラメーターについての正確な数値は場合によって変動し得るが、今日の実験的な事実によれば、およその値が示唆される。
1.Nv:約1×108cm−3以下(態様によっては、約5×107cm−3以下、約1×107cm−3以下、又は約5×106cm−3以下が好ましいこともある)
2.Rv:約70nm以下(態様によっては、約60nm以下、約50nm以下、約40nm以下、又は30nm以下が好ましいこともある)
3.Cres:約3×1012cm−3以下(態様によっては、約2×1012cm−3以下、約1×1012cm−3以下、約5×1011cm−3以下、約1×1011cm−3以下、約5×1010cm−3以下、又は約1×1011cm−3以下が好ましいこともある)。
【0085】
これらの数値を典型的ガイドとして用いると、図18は、(本明細書に記載したような)所定の結晶引き上げプロセス及び結晶引き上げ装置のために、これらの数値を満足できる結晶成長条件を地図のように表現することができる。
【0086】
これらの数値に関して、場合によっては、所望する残存空孔濃度及び空隙寸法を達成するため、ある最小空隙密度が必要になることがあるということに注意されたい。換言すれば、中でも初期空孔濃度及び冷却速度に応じて、所望のレベルよりも低い残存空孔濃度(空隙は、空孔が拡散し及び消費される「シンク(sink)」として機能する)及び所望のレベルよりも低い空隙寸法(少なすぎる空隙及び多すぎる空孔によって、大きすぎる空隙が生じる)のために必要な空隙の最小密度が存在する。そのような場合、空隙密度は一般に、少なくとも約5×106cm−3;約1×107cm−3;約5×107cm−3;約1×108cm−3又はそれ以上となり得る。
【0087】
「標準的モデル」
図19を参照すると、「標準的モデル」を用い、冷却速度が(固化から、商業的に実用的な時間で空孔が動けなくなる温度まで)一定であると仮定して、上述の数値を満足する典型的な操作ウインドウが示されている。クロスハッチを付した領域に含まれる数値は、比較的高い冷却速度及び大きい値のv/G0(即ちこれらの数値は大きな軸方向温度勾配を形成するように意図されたホットゾーンのいて速い引き上げ速度で達成されるものである)にて、達成される。これらの温度勾配が適切に調節される場合、これらの条件が適合し得る引き上げ速度に実質的に上限はないということに注意されたい。従って、この理由から、所定の結晶引き上げ装置について可能な最も速い引き上げ速度、及び今日判明している最も有効な費用対効果に優れた条件にて、「有用で機能的に完全な」シリコンを製造することができる。
【0088】
更に、「有用で機能的に完全な」シリコンの成長には、既に複雑な図19のグラフに示されていない自由度が更に存在するということに注意されたい。特に、空隙核形成温度範囲及び空隙成長温度範囲の両者による一定の冷却速度の基準が緩和された場合、ハッチングした領域の寸法は拡大し得ることになる。例えば、グラフのx軸の冷却速度が、空隙核形成範囲(例えば、約1080℃〜約1150℃)のみの冷却速度を意味する場合、成長期(例えば、約950℃〜1050℃)の冷却速度はその値以下であってよく、この領域の下側境界(即ち、一定のCres)はグラフ上で垂直方向へ降下することになる。今日の実験的事実に基づけば、第1の範囲のものよりも約10%だけ低い第2の期間の冷却速度の変化は、他の制限を認識できる程変化させることなく、このより低い制限を有効で完全に取り除くことになるであろうと見積もられている。特定の理論に支持されるものではないが、残存する空孔には、第1の冷却速度の期間で測定される密度の空隙によって完全に消費されるのに十分な長さの時間が許容されると一般に考えられる。必要とされる大きなv/G0の条件下、残存する空孔の濃度は、最初に組み込まれた空孔濃度と対比してより低い。従って、空隙の大きさが有意な程度で又は著しく変化することはない。
【0089】
「変更されたモデル」
図20を参照すると、空隙/空孔消費現象についての第2の例示モデルが考えられる。特に、図20は、変更されたモデル下で得られた結果を示しており、ここでは、第1の又は標準的なモデルに、わずかであるが、重要な変化がなされている。ここで、「有用で機能的に完全な」シリコンは、(標準的なモデルの一定の冷却速度とは異なって)2段階冷却速度の条件下でのみ製造することができる。操作条件を強調している。
この例では、変更されたモデルの「有用で機能的に完全な」シリコンを製造する操作条件のためのプロセススペースは、一般に、小さすぎて、多くの場合に実用的でないS0の値である。従って、そのようなモデルでシリコンを製造するため、下側Cres制限をなくする2段階冷却が必要となる。
【0090】
v/G0及び冷却速度の制御
単結晶シリコンインゴットについての一定の直径の部分で、かなりの長さにわたって空孔が優勢なシリコンを得るために、v/G0の制御に関する一般的な事項は、当業者に一般に知られており、例えば、国際特許出願PCT/US98/07304、同07305、及び同07306に記載されている。しかしながら、本発明によれば一般に、インゴットのほぼ中心軸から周縁部へ測定して、インゴットの少なくとも一定直径の領域(例えば、インゴットの中心軸に沿って測定して、10%、20%、40%、60%、80%、90%、95%又はそれ以上)について、又はインゴットの側表面について、インゴットの半径長に対して少なくとも約25%、50%、75%、85%、95%又はそれ以上の幅を有する軸対称な領域が、空孔が優勢な真性点欠陥となるように、生産速度v及び平均軸方向温度勾配G0を制御することになる。しかしながら、ある態様では、この領域はインゴットの中心軸から側表面へ延びることが好ましく、即ち、その領域の幅は、インゴットの一定直径の部分の幅に本質的に等しくなることが好ましい。しかしながら、この領域が中心軸から側表面へ延びない場合には、もう1つの軸対称な領域によって包囲する場合もあり、その場合には、例えば国際特許出願PCT/US98/07365に記載されているように、シリコン自己格子間原子が優勢な真性点欠陥であって、凝集した真性点欠陥を実質的に有さない。
【0091】
この点に関して、熱処理前に、本発明に従って成長させた単結晶シリコンインゴットから得られる単結晶シリコンウエハは、(ウエハの近表面領域を除いて)実質的に均一な酸素濃度、空隙濃度及び空孔濃度を有することになる。換言すれば、本発明の軸対称で空孔の優勢な領域は、実質的にウエハの前端部からウエハの後端部へ延び(即ち、空孔の優勢な領域は、ウエハ全体の厚みに対して、約90%、約92%、約94%、約96%、約98%、又は約100%の場合もある厚さを有する)、酸素、空隙及び残存空孔濃度は実質的にこの領域全体を通じて(即ち、頂部から底部まで)実質的に均一である。
【0092】
本発明の方法によって使用すべき所定の結晶引き上げ装置について可能な最も速い成長速度が可能になると仮定すると、v/GOの臨界値を超えるいずれの値でも用いることができる。例えば図18〜20を再び参照すると、S0は一般にv/GOの臨界値から上向きの変位を表すということに注意されたい。更に、図18〜20は、冷却速度について例示的なデータを提供している、即ち、所定のv/G(即ちSO)の値について、これらのグラフを用いて本発明の材料を達成するために必要なおよその冷却速度を求めることができる。
【0093】
平均軸方向温度勾配G0の制御は、結晶引き上げ装置の「ホットゾーン」の設計を通じて、即ち、特にヒータ、絶縁体、並びに熱及び電磁線シールドを構成するグラファイト(又は他の材料)によって達成することができる。設計の詳細は結晶引き上げ装置の構成及び型に応じて変わり得るが、一般に、G0は、リフレクタ、電磁線シールド、パージチューブ、ライトパイプ、及びヒーター(サイドヒーター又はボトムヒーター)を含む、溶融物/固体界面における熱伝達の制御についてこの分野において現在知られているいずれかの手段を用いて制御することができる。一般に、多くの場合、溶融物―固体界面の上方の1つの結晶直径の中にそのような装置を位置させることによって、G0における電磁線の変位は最小となる。更に、溶融物及び結晶に対する装置の相対的位置を調節することによって、G0を制御することができる。このことは、ホットゾーン内で装置の位置を調整したり、又はホットゾーン内で溶融物の位置を調整したりすることによって達成される。更にヒーターを用いる場合は、ヒーターに供給される出力を調整することによってもG0を制御することができる。方法の間に溶融物の体積を消費するバッチ式のチョクラルスキー法の間に、これらの方法のいずれか又はすべてを採用することもできる。
【0094】
本発明によれば、凝集空孔欠陥の核形成が起こる温度範囲で冷却が制御される。このことが一旦達成されると、図18〜20(及びそれらに関する説明)に示すように、冷却速度を維持し(即ち一定に保つ)ことができ、又は高めることができる。
一般に、単結晶シリコンは、少なくとも2つの代替アプローチによって、凝集空孔欠陥のための核形成温度、場合によって商業的に実用的な時間で空孔が動けなくなる温度で冷却することができる。第1のアプローチでは、インゴット全体(又は本発明の向上したゲート酸化物完全性を有することが望まれるインゴットの少なくともその部分)が、インゴットのテイルが完成するまで、核形成温度を超える温度に保持される。それからインゴットは溶融物から取り外され、ホットゾーンへの熱の入力が停止される。単結晶シリコンは、チョクラルスキー法反応装置のホットゾーンから、そのホットゾーンから離れているチャンバーへ、例えば結晶受け入れチャンバー又は他のチャンバーへ移され、そこで結晶全体(又は少なくともその上述した部分)が本発明に従って冷却される。冷媒、例えば冷却水を用いるように設計された熱交換器デバイスによって冷却チャンバーをジャケットで覆って、単結晶シリコンを冷媒に直接的に接触させることなく、所望の速度で単結晶シリコンインゴットを冷却するのに充Bンな速度で冷却チャンバーから熱を除去することができる。別法として、又は冷却ジャケットに加えて、予め冷却したガス、例えばヘリウムガスを用いて、結晶受け入れチャンバー又は他の冷却チャンバーを連続的にパージして、より迅速に冷却を行うこともできる。プロセスの装置から熱を除去する方法は、この技術分野においてよく知られており、当業者は種々の手段を用いて、過度の実験を必要とすることなく、結晶受け入れチャンバー又は他の冷却チャンバーから熱を除去することができる。
【0095】
第2のアプローチでは、インゴットの一部、好ましくは大きな部分を結晶成長の間に冷却する。このアプローチでは、結晶引き上げ装置のホットゾーンは、(i)成長する結晶の半径全体にわたってv/G0について所望の値(又は値の範囲)を達成し、(ii)凝集した真性点欠陥についての核形成温度と固化温度との間の温度で空孔真性点欠陥を好適に拡散させ、並びに(iii)核形成温度、場合によって商業的に実用的な時間内で空孔が拡散することができない温度を含む温度範囲での適切な軸方向温度勾配を適用することによって成長している結晶の凝集した空孔欠陥についての核形成温度でインゴットを冷却することを意図している。
【0096】
本発明の方法に従って製造するインゴット(即ち、空孔が優勢な物質を含むインゴット)について、低い酸素含量(即ち、約13PPMA(原子百万分率(parts per million atomic)、ASTM規格F−121−83)以下、約12PPMA以下、約11PPMA以下の酸素、又は約10PPMA以下の酸素のこともある)材料が好ましいこともある。これは、中程度から高い酸素含量(即ち約14PPMA〜約18PPMA)のウエハでは、増大酸素クラスター化のバンド及び酸素に誘起されるスタッキング欠陥がより顕著になるからである。これらの各々は、所定の集積回路製造プロセスにおいて潜在的な問題点の源である。
【0097】
増大酸素クラスター化の影響は、単独で又は組合せで用いられる種々の方法によって更に減らすことができる。例えば、酸素析出核形成中心は、一般的に、約350℃〜約750℃の範囲の温度にてアニールされたシリコン中に生成する。従って、結晶が「短い」結晶、即ち、シードエンドがシリコンの融点(約1410℃)〜約750℃へ冷却され、その後インゴットが急速に冷却されるまで、チョクラルスキー法で成長させられた結晶であることが好ましい場合がある。このようにして、核形成中心形成のための臨界値的温度範囲に消費される時間は最小に保たれ、酸素析出核形成中心は結晶引き上げ装置において形成するための適切ではない時間を有する。
【0098】
しかしながら、単結晶の成長の間に形成された酸素析出核形成中心は、単結晶シリコンのアニーリングによって消滅することが好ましい。酸素析出核形成中心が安定化熱処理に付されていないことを条件として、シリコンを少なくとも約875℃の温度へ急速に加熱し、好ましくは少なくとも1000℃、少なくとも1100℃、又は1200℃若しくはそれ以上の温度へ昇温し続けることによって、酸素析出核形成中心をシリコンからアニールして消すことができる。ウエハをその温度へ急速に加熱すること、即ち、温度上昇の速さ(割合)を少なくとも約10℃/分、より好ましくは少なくとも約50℃/分とすることが重要である。そうでなければ、熱処理によって、酸素析出核形成中心が安定化し得る。平衡は、比較的短い時間、即ち、約60秒又はそれ以下のオーダーで達するようである。従って、単結晶シリコン中の酸素析出核形成中心は、シリコンを、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも約10秒間で、少なくとも約875℃、好ましくは少なくとも約950℃、より好ましくは少なくとも約1100℃の温度でアニールすることによって消すことができる。
【0099】
消失は、常套の炉又はラピッド速熱アニーリング(「RTA」)システムで行うことができる。シリコンのラピッド熱アニーリングは、1ないし複数の市販のラピッド熱アニーリング(「RTA」)炉を用いて行うことができ、その中でウエハは高出力ランプのバンクによって個々に加熱される。RTA炉は、シリコンウエハを室温から1200℃へ数秒で急速に加熱することができる。そのような市販のRTA炉には、AG Associates(カリフォルニア州、Mountain View)から入手できるモデル610炉がある。更に、消失はシリコンインゴット又はシリコンウエハについて行うことができ、シリコンウエハが好ましい。
【0100】
急速熱アニーリング及び冷却工程の間の雰囲気は一般に非酸化性雰囲気であって、シリコン表面の酸化は急速夏アニーリング工程の間の空孔濃度を抑制することが見出されている。従って、雰囲気は全体として酸素を含まないか、又は、空孔濃度の形成を抑制するのに十分な量のシリコン自己格子間原子を注入するには不十分な酸素分圧を有することが好ましい。空孔濃度が許容できない程度に抑制される酸素濃度の下限は正確に測定されてはいないが、急速熱アニーリング工程の間での雰囲気は2000ppm(0.002原子)以下、好ましくは1000ppm(0.001原子)以下の酸素を有することが一般に好ましい。雰囲気は、例えば、窒化性雰囲気、例えば窒素若しくはアンモニア、非窒化性雰囲気、例えばヘリウム、ネオン、二酸化炭素若しくはアルゴン、又はそれらの組合せであってよい。好ましいものはアルゴンである。
【0101】
単結晶シリコン中に不純物として存在する場合、置換炭素は酸素析出核形成中心の生成の触媒となり得る。従って、これ及びその他の理由から、単結晶シリコンインゴットは低い濃度のシリコンを有することが好ましい。即ち、単結晶シリコン中の炭素の濃度は、約5×1016原子/cm3、好ましくは約1×1016原子/cm3、より好ましくは約5×1015原子/cm3であることが好ましい。
【0102】
更に、少なくともいくつかの態様では、単結晶シリコンウエハは実質的に窒素を含まないことが好ましく、本発明のウエハは窒素無ドープ(non-nitrogen doped)のものであることが好ましい態様もある。本明細書において、「窒素無ドープ」及び「実質的に窒素を含まない」とは、シリコンの窒素含量が、約1×1013原子/cm3以下、約5×1013原子/cm3以下、約1×1012原子/cm3以下、約5×1011原子/cm3又はそれ以下であることを意味する。
従って、本発明の「窒素無ドープ」ウエハは「窒素ドープ」されたウエハから、両者を熱処理(例えば、実質的に酸素を存在させずに、約1200℃へ急速加熱)及び冷却に付し、その後、酸素析出熱処理(例えば、約800℃で約4時間、次いで約1000℃で約16時間)に付した場合に、本発明の「窒素無ドープ」ウエハにおける酸素析出の濃度は約1×108/cm3(例えば、約5×107以下、約1×107以下、約5×106以下、約1×106以下、又はそれ以下)であり、一方、「窒素ドープ」ウエハの濃度はそうはならない。
【0103】
更に説明するように、本発明によって成長させたインゴットからスライスしたウエハは、その上にエピタキシャル層を析出させ得る基材として用いるのに適する。エピタキシャル析出は、この技術分野で知られているいずれの手段によっても行うことができる。本発明によって成長させたインゴットからスライスしたウエハは、絶縁基材上の半導体(例えばSIMOX又はボンデッドアプリケーション)用の基材として用いるのにも公的である。絶縁コンポジット上の半導体は、例えば、米国特許第5,494,849号(Lyerら)に記載されているようにして形成することができる。本発明のウエハは、そのようなようとにおいて、基材ウエハ又はデバイス層として用いることができる。
更に、本発明によって製造されるウエハは、水素又はアルゴンアニーリング処理、例えば欧州特許出願第503816A1号に記載されている処理と組み合わせることにも適している。
【0104】
エピタキシャルウエハ
一般的に言えば、本発明に従って製造するシリコンウエハは、エピタキシャル層を析出させる基材として用いるのに適している。ホモエピタキシャル析出は、この技術分野において一般的ないずれかの方法によって行うことができる。これらの態様の中のいくつかにおいて、空隙寸法及び密度は狭いことが重要である。その理由は、エピタキシャル析出プロセスは、そうしなければゲート酸化物完全性を阻害する、ウエハ表面に存在する空隙を埋める(fill in)からである。これらの態様において、残存空隙濃度を制御すると、(「有用で機能的に完全な」シリコンについて上述したように)過度の酸素析出が防止される。
【0105】
凝集した欠陥の検出
凝集欠陥はいくつかの異なる技術によって検出することができる。例えば、フローパターン欠陥またはD欠陥は典型的には単結晶シリコンサンプルをSeccoエッチング溶液中で約30分間選択的にエッチングした後、サンプルの顕微鏡観察を行うことによって検出する(例えば、H. Yamagishi et al., Semicond. Sci. Technol. 7, A135 (1992)参照)。この方法は凝集空孔欠陥の検出に標準的なものであるが、A欠陥を検出するためにも使用できる。この技術を用いると、かかる欠陥は存在する場合にはサンプル表面上の大きなピットとして見られる。
【0106】
さらにまた、凝集真性点欠陥は、加熱時に単結晶シリコンマトリックス中に拡散しうる金属でこれらの欠陥を修飾することによっても視覚検出できる。特に、ウエハ、スラグまたはスラブなどの単結晶シリコンサンプルは、濃硝酸銅溶液など、これらの欠陥を修飾しうる金属を含有する組成物でサンプル表面をまず被覆することにより、かかる欠陥の存在を視覚検査することができる。次に、このような被覆サンプルを約5分〜約15分間、約900℃〜約1000℃の間の温度に加熱してサンプル中の金属を拡散させる。この加熱処理サンプルを次に室温まで冷却し、金属を臨界過飽和にし、欠陥が存在するサンプルマトリックス内の部位に析出させる。
【0107】
冷却後、サンプルをブライトエッチング溶液で約8〜約12分間処理することで、まずサンプルに非欠陥描出エッチングを行い、表面残渣や析出物を除去する。典型的なブライトエッチング溶液としては、約55%の硝酸(70重量%溶液)、約20%のフッ化水素酸(49重量%溶液)、および約25%の塩酸(濃溶液)を含む。
次にこのサンプルを脱イオン水ですすぎ、約35〜約55分間、サンプルをSeccoまたはWrightエッチング溶液に浸漬するか、それで処理することによる第二のエッチング工程を行う。典型的には約1:2比率の0.15M二クロム酸カリウムおよびフッ化水素酸(49重量%溶液)を含むSeccoエッチング溶液を用いてサンプルのエッチングを行う。このエッチング工程は存在しうる凝集欠陥を露出させ、描出する働きをする。
【0108】
この「欠陥修飾」プロセスのもう1つの実施形態では、単結晶シリコンサンプルに金属含有組成物の塗布前に熱アニーリングを行う。典型的には、サンプルを約3時間〜約5時間、約850℃〜約950℃の範囲の温度まで加熱する。この実施形態は特にB型シリコン自己格子間原子凝集欠陥を検出する目的に好ましい。特定の理論にとらわれるものではないが、一般に、この熱処理はB欠陥を安定化させ、成長させる働きをし、その結果、修飾および検出がより容易なものとなると考えられる。
【0109】
結晶格子空孔の測定
単結晶シリコン中の結晶格子空孔の測定は、白金拡散分析によって行うことができる。一般に、白金は、Frank Turnbull機構が白金拡散を支配するが、白金原子による空孔修飾の定常状態に達するのに十分なように、拡散時間及び温度を選択して、試料に析出し、水平表面で拡散する。本発明に典型的な空孔濃度を有するウエハについては、730℃の温度で20分間の拡散時間を用いることができるが、より低い温度、例えば約680℃でより正確なトラッキングが認められる。更に、ケイ化プロセスによって受け得る影響を低減するため、白金析出法によって1つのモノレイヤー以下の表面濃度が生じることが好ましい。
【0110】
白金拡散技術(platinum diffusion techniques)は、例えばJacobらの、J. Appi. Phys., vol. 82, p. 182 (1997); Zimmermann及びRysselの"The Modeling of Platinum Diffusion In Silicon Under Non-Equilibrium Conditions,"J. Electrochemical Societv, vol. 139, p. 256 (1992) ; Zimmermann, Goesele, Seilenthal及びEichinerの"Vacancy Concentration Wafer Mapping In Silicon,"Journal of Crystal Growth, vol. 129, p. 582 (1993); Zimmermann及びFalsterの"Investigation Of The Nucleation of Oxygen Precipitates in Czochralski Silicon At An Early Stage,"Appl. Phys. Lett., vol. 60, p. 3250 (1992);並びにZimmermann及びRysselのAppl. Phys. A, vol. 55, p. 121 (1992)のいずれかに記載されており、これらすべての記載事項を引用することによって本願明細書に含めることとする。
【0111】
定義
本明細書において以下のフレーズは所定の意味を有することに留意すべきである。「凝集真性点欠陥」とは、空孔が凝集する反応によってD−欠陥、フローパターン欠陥、ゲートオキシドインテグリティ欠陥、クリスタルオリジネーテッドパーティクル欠陥、およびそのような空孔に関連する欠陥が生じる反応、又は(ii)自己格子間原子が凝集して転位ループ及びネットワーク、及びその他の自己格子間原子に関連する欠陥を意味する。「凝集格子間原子欠陥」とは、シリコン自己格子間原子が凝集する反応によって生じる凝集真性点欠陥を意味する。「凝集空孔欠陥」とは、結晶格子空孔が凝集する反応によって生じる凝集空孔点欠陥を意味する。ウエハまたはインゴットについての「半径」とは、ウエハまたはインゴットの中心軸から側表面までを測定した距離を意味する。「凝集真性点欠陥を実質的に含まない」とは、これらの欠陥の検出限界(現在のところ約103欠陥/cm3)より低い、凝集欠陥濃度を意味する。「空孔優勢」および「自己格子間原子優勢」とは、その真性点欠陥が主としてそれぞれ空孔または自己格子間原子である材料を意味する。
【0112】
更に、本明細書において用いるように、以下の用語及び語句は所定の意味を有する。「残存空孔濃度」とは、本発明に従って成長させた単結晶シリコンインゴットであって、商業的に実用的な時間内で空孔が拡散することができない温度以下にインゴットを冷却した後(即ち、消費又はアニールされ得るサイトへの空隙成長及び/又は空孔拡散を停止した後)に得られるシリコン材料の本明細書において求めた空孔濃度を意味する。「制御されない酸素析出」及びそのバリエーションとは、前から存在する酸素クラスター又は析出核を典型的に用いられる熱処理、例えば本明細書に記載する方法によるものによって「消す(erase)」か又は防止することができない酸素析出、特に、例えば米国特許第5,994,761号に記載のような1300℃を超えない温度(例えば、1250℃、1225℃又は1200℃の場合もある温度)へ急速に(例えば少なくとも1℃/秒の割合で)シリコンを加熱する熱処理によって消すことができない酸素析出を意味する。
【0113】
上記の点から、本発明のいくつかの目的が達成されることが分かるであろう。
本発明の範囲から逸脱しない限り、上記の材料及びプロセスにおいては種々の変更が可能であるので、上記の説明に含まれる全ての事柄は例として説明されるものであり、限定を意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、表面に蒸着した酸化物層を有する単結晶シリコンウエハの領域の断面を摸式的に示す図であって、表面の空隙を強調して示しており(記号Aで示す)、それによって酸化物層中にウィークスポット(記号Bで示す)が生じることを説明している。
【図2】図2は、ランプフィールド試験において空隙を有するシリコンと、空隙を有さないシリコンとにおける典型的絶縁破壊の分布を示す摸式的グラフである。
【図3】図3は、「ノーマル」(又は高密度) の空隙を有するシリコンウエハの絶縁破壊分布と、「改善した」徐冷却(又は低密度) シリコンウエハの絶縁破壊分布とを対比する模式的グラフを示しており、任意に規定した試験場の8MV/cmまでの絶縁破壊事象の総積分数は、(より小さい数密度の空隙を有する)徐冷却された結晶についてよりも小さい。
【図4】図4は、定常場(又は電流)試験における絶縁破壊故障のワイブル分布を示す模式的グラフである。
【図5】図5は、ストレスレベルを変化(場又は電流を変化)させた場合の絶縁破壊故障のワイブル分布を示す模式的グラフである。
【図6】図6は、5MV/cmでの典型的な空隙に関連する故障のメカニズムについて、定常場破壊分布を説明するグラフである。(標準的空隙分布;0.1cm2;21nm酸化物;試験166dev.;10Vストレス;破壊に許容される最大時間:2000秒;時間パラメーター、a=0.15)
【図7】図7は、ランプフィールドデータのワイブル分布分析を摸式的に説明するグラフである。
【図8】図8は、空隙を有するシリコンについての可変ランプ試験の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、典型的な「ノーマル(標準)」材料(「SR−STD」で示す)及び「徐冷却した」材料(「SR−SAC」で示す)(欠陥なし、「SR−EPI」で示すエピ材料を対照として提供する)のランプ場破壊分布を対比するワイブル分布を示すグラフである。
【図10】図10は、「ノーマル」(又は高密度)材料と「徐冷却した」(又は低密度)材料との間の差が単に欠陥密度の低下である場合の、両者の破壊分布を示す模式的グラフである。
【図11】図11は、「ノーマル」(又は高密度)材料と「徐冷却した」(又は低密度)材料との間の差が単に欠陥密度の低下である場合の、両者の破壊分布を示す模式的グラフ(ワイブル分布形式にプロットしたもの)である。
【図12】図12は、空隙寸法の結果として生じるシフトを詳細に示すワイブル分布的分析を模式的に示すグラフであって、絶縁破壊分布に関する空隙の寸法的効果をワイブル的に示している(ノーマル又は高密度材料と、徐冷却した又は低密度材料)。
【図13】図13は、空隙を有する材料について計算した酸化物信頼性試験の結果、従って、標準的材料(下側曲線)及び徐冷却材料(上側曲線)についてのランプ試験データから予測される信頼性を示している(21nm;5V室温操作についての予測)。
【図14】図14は、所定の空隙を有する材料(「STD」で示す)、並びに「徐冷却」材料(「SAC」で示す)と、「速冷却」材料(「U97−DDef」で示す、インゴットの急速に冷却したテイルエンド領域から得られる)との対比を示すグラフである。
【図15】図15は、図14の「速冷却」材料(下側曲線)と標準的材料(上側曲線)についての信頼性ある外挿を行ったグラフ;例えば、標準的な型と速冷却された空隙の型とを対比するランプ試験データからの信頼性ある予測を示している(21nm;5V室温操作についての予測)。
【図16】図16は、最も典型的な冷却速度で成長する結晶における空隙の生成(そのような条件の下で、空孔の空隙への消費が、空孔が酸素に結合するようになる時間まで、析出向上しきい値以下の値へそれらの濃度を低下するのに十分効率的であることを示す)を示すグラフである。
【図17】図17は、図16の結晶と対比して、より急速に冷却されて成長した結晶における空隙の生成を示すグラフである(空隙成長期間を通じてより急速に冷却することによって、結合期に結晶が入る時間で残存する空孔の高いレベルのために、酸素析出の特異な高い値が生じることを示している)。
【図18】図18は、冷却速度及び融点濃度及に正規化された取り込まれた空孔濃度の関数S0としての残存する空孔空間、及び空隙寸法、空隙密度の関係を示すグラフである(空隙密度、Nvを1×105cm−3、1×106cm−3、1×107cm−3及び1×108cm−3で示す;残存空孔濃度Cresを1×1012cm−3、3×1012cm−3及び1×1013cm−3で示す;空隙半径Rvを30nm及び15nmで示す)。
【図19】図19は、一定の冷却速度を用いると仮定して、標準的成長モデル下で、「有用で、機能的に完全な」シリコンが生成する操作条件の典型的な「ウインドウ」を示すグラフである(空隙密度、Nvを1×105cm−3、1×106cm−3、1×107cm−3及び1×108cm−3で示す;残存空孔濃度Cresを1×1012cm−3、3×1012cm−3及び1×1013cm−3で示す;空隙半径Rvを30nm及び15nmで示す)。
【図20】図20は、2段階の冷却速度を用いて、調整された成長モデル下で、「有用で、機能的に完全な」シリコンが生成する操作条件の典型的な「ウインドウ」を示すグラフである(空隙密度、Nvを1×104cm−3、1×105cm−3、1×106cm−3、1×107cm−3及び1×108cm−3で示す;残存空孔濃度Cresを3×1012cm−3及び1×1013cm−3で示す;空隙半径Rvを30nm及び15nmで示す)。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般に、チョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットを製造することに関する。特に、本発明は、向上したゲート酸化物完全性(integrity)を有する単結晶シリコンウエハを製造する為の高効率の方法であって、ウエハが得られる単結晶シリコンインゴットの成長の条件を制御する方法に関する。特に、単結晶シリコンインゴットの成長条件は、成長速度、平均軸方向温度勾配及び冷却速度を含めて、それから得られる単結晶シリコンウエハ中の空孔(vacancy)に関連する凝集欠陥の寸法、ある場合には密度、並びに場合によっては残存する空孔濃度を制限するために制御される。更に、本発明はそのようなゲートオキシドインテグリティ(GOI、ゲート酸化物完全性)を評価するための、より正確で、信頼性のある方法にも関する。
【0002】
大部分の半導体電子部品製造方法の出発物質である単結晶シリコンは、一般に、いわゆるチョクラルスキー(Cz)法によって製造される。この方法においては、多結晶シリコン(ポリシリコン)をルツボに装填し、溶融し、種結晶を溶融シリコンと接触させ、単結晶をゆっくりと引き上げることによって成長させる。ネックの形成後、所望される、又は目的とする直径に到達するまで、引き上げ速度および/又は溶融温度を低下させることによって、結晶の直径を大きくする。次に、融液面の高さ(メルトレベル)の低下を補いながら、引き上げ速度および溶融温度を調節することによって、ほぼ一定の直径を有する結晶の筒状メインボディを成長させる。成長プロセスの終了近くであって、ルツボから溶融シリコンがなくなる前に、結晶直径を徐々に減少させて、エンドコーンを形成する。エンドコーンは、通常、ルツボに供給する熱および結晶引き上げ速度を増加させることによって形成される。直径が充分に小さくなったときに、結晶を融液(melt)から分離する。
【0003】
単結晶シリコンにおける多くの欠陥が、凝固の温度から冷却される際に、結晶成長室において形成されることが最近認められた。特に、インゴットが冷却される際には、その温度以下では所定の濃度の真性点欠陥(intrinsic point defect)が臨界的過飽和に達するあるしきい温度(threshhold temperature)に達するまで、真性(内因性)点欠陥、例えば結晶格子空孔又はシリコン自己格子間原子(self-interstitials)がシリコン格子内に可溶な状態で残る。このしきい温度以下の温度まで冷却すると、反応又は凝集事象(agglomeration event)が起こり、それによって凝集真性点欠陥が生じる。
【0004】
シリコンにおけるこれらの真性点欠陥の型および初期濃度は、結晶化の温度(例えば、約1410℃)から約1300℃(例えば、約1325℃、1350℃又はそれ以上)よりも高い温度へインゴットを冷却する際に測定される。即ち、これらの欠陥の型および初期濃度は、比v/G0[式中、vは成長速度であり、G0はこの温度範囲にわたる平均軸方向温度勾配である。]によって制御される。一般に、自己格子間原子に支配される成長から空孔に支配される成長への遷移(transition)は、v/G0の臨界値の近くにて起こる。その値は、現在利用できる情報に基づけば、約2.1×10−5cm2/sK[式中、G0は、上記の規定の温度範囲内で軸方向温度勾配が一定である条件にて測定される。]と考えられる。従って、プロセス条件、例えば成長速度(vに影響する)、並びにホットゾーンコンフィグレーション(G0に影響する)を制御することによって、シリコン単結晶内における真性点欠陥が主として空孔(空孔が優勢)であるか(この場合、一般にv/G0は臨界値よりも大きい)、又は主として自己格子間原子(自己格子間原子が優勢)であるか(この場合、一般にv/G0は臨界値よりも小さい)を決めることができる。
【0005】
結晶格子空孔又は空孔真性点欠陥の凝集を伴う欠陥には、D欠陥、フローパターン(FPD)欠陥、ゲート酸化物完全性(GOI(Gate Oxide Integrity))欠陥、クリスタルオリジネーテッドパーティクル(COP)欠陥、クリスタルオリジネーテッドライトポイント(LPD)欠陥、および、赤外線散乱法、例えば、走査赤外線鏡検法およびレーザー走査断層撮影法によって観察されるある種のバルク欠陥のような、観察可能な結晶欠陥の原因であることが確認されている。過剰な空孔の領域には、酸化誘起積層欠陥(oxidation induced stacking faults)(OISF)の核を形成するための機能である欠陥も存在する。この特定の欠陥は、過剰空孔の存在によって引き起こされる高温核形成酸素析出(high temperature nucleated oxygen precipitate)であると考えられる。
【0006】
凝集した欠陥の生成は、一般に2段階で生じる。その第1の段階は、欠陥の「核」の生成であって、真性(内因性)点欠陥、例えば空孔が所定の温度にて過飽和となる結果としてのものである。この「核生成しきい値」温度に一旦達すると、真性点欠陥、例えば空孔は凝集を開始する(例えば、空隙(void)の生成が始まる)。シリコン格子の中で、欠陥が存在するインゴットのその部分の温度が、その温度以下では商業的に実用的な時間内で真性点欠陥が動けない、第2のしきい温度(即ち、「拡散率しきい値(diffusivity threshold)」)以上に保たれる限り、拡がり続ける。インゴットがこの温度以上に保たれる間、空隙真性点欠陥は、例えば、結晶格子の中を通って、凝集した空孔欠陥、又は空隙が既に存在して、所定の凝集欠陥の寸法の成長を有効に生じさせる部位へ拡がる。これは、これらの凝集した欠陥の部位が本質的に、より好ましいエネルギー状態のために、空隙の真性点欠陥を引き寄せおよび集める「シンク(sink)」として機能するためである。従って、そのような凝集欠陥の生成および寸法は、(そのような点欠陥の初期濃度に影響を及ぼす)v/G0及び、上端側は「核生成しきい値」によって規定され、下端側は(そのような欠陥の密度及び寸法に影響を及ぼす)「拡散率しきい値」によって規定される温度範囲でのインゴットの主たる部分の滞留時間又は冷却速度を含む成長条件に依存する。
【0007】
効率を最大にすることは、単結晶シリコンウエハのコスト有効性の高い第1の関心事である。その結果、最高に可能な成長速度にて成長する単結晶シリコンインゴットが、全てのシリコン製造業者の目標である。しかしながら、今日まで、そのような成長条件を用いて、許容できる品質の単結晶シリコンを製造する明確な方法は一般に明らかではなかった。例えば、高い引き上げ速度/冷却速度は一般に高い空孔濃度をもたらし、これは小さく凝集した欠陥が高い濃度で存在することに至っていた。例えば、集積回路の製造業者は一般に、軽い点欠陥(light point defects)200mm直径のウエハについて、寸法で約0.2ミクロンを超えるそのような欠陥の数は約20を超えないことを要求するので、そのような条件が好ましい。しかしながら、そのような条件は、ゲート酸化物の完全性が劣るウエハを製造すると伝統的に考えられているので、同様に好ましいものではない。対称的に、より遅い引き上げ速度/冷却速度を用いてGOIを向上させる(ゆっくりとした冷却は一般にいくつかの非常に大きな凝集した空孔欠陥を生じる)場合、得られるLPDsの寸法は予期することができない。
【0008】
高い引き上げ速度/冷却速度に関して、追加の領域の問題は残存する空孔の濃度である。更に特に、高い引き上げ速度は一般に、高い冷却速度の場合と同様に、生成するシリコンにおいて高い空孔濃度をもたらす。高い冷却速度は、一般に、高い残留空孔濃度(即ち、空孔が本質的に動くことができない温度へ一度冷却された場合の、シリコン中に存在するシリコン格子空孔の濃度)をもたらす。高い残留空孔濃度は、その後の加熱の際に、制御できない酸素析出をもたらし得るので、問題となる。
【0009】
従って、処理量のみでなく、得られるシリコンウエハのシリコンも最大とすることができる条件下、チョクラルスキー(Cz)法によって、単結晶シリコンインゴットを成長させることができる方法の必要性が存在し続けている。そのような方法は、残存する空孔濃度及び凝集した空孔欠陥の寸法、及び場合によって密度を制限する必要性の観点から、所定の結晶引き上げ装置の最も速い引き上げ速度を用いることができるように、成長条件を最適化しようとするものである。
【0010】
(発明の要旨)
本発明のいくつかの特徴には、向上したゲート酸化物の完全性を有する、単結晶シリコンウエハを得ることができる単結晶シリコンインゴット及び、そのような単結晶シリコンインゴットを製造する方法を提供すること;所定の結晶引き上げ装置について可能な最高の引き上げ速度を用いることができ、従って処理量及び収率を最高とすることができる単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供すること;成長条件を制御して、生成する凝集空孔欠陥の寸法を制限する単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供すること;凝集空孔欠陥の密度を制御する単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供すること;並びに得られる空孔濃度を制限して、制御できない酸素析出を防止する単結晶シリコンインゴットの製造方法を提供することが含まれる。
【0011】
従って、簡単には、本発明は、単結晶シリコンインゴットを成長させる方法であって、インゴットは、中心軸、シードコーン、テイルエンド、及び側表面を有し、中心軸から側表面へ延びる半径を有するシードコーンとテイルエンドとの間の直径一定部分を有してなり、前記インゴットを、チョクラルスキー法に従って、シリコン融液からインゴットを成長させ、その後固化温度から冷却させることを含む方法を対象とする。この方法は、(i)結晶の直径一定部分を成長させる間、成長速度v及び平均軸方向温度勾配G0を制御して、中心軸まわりに、結晶格子空孔が優勢な真性点欠陥である軸対称な領域であって、前記半径の少なくとも約25%の半径の幅を有する領域を形成すること;並びに(ii)インゴットを冷却して、軸対称な領域に凝集空孔欠陥及び残存する濃度の結晶格子空孔真性点欠陥を生じさせ、凝集空孔欠陥は約70nm以下の平均半径を有するようにし、残存する結晶格子空孔真性点欠陥の濃度は、冷却する領域を酸素析出熱処理に付することによって生じる制御できない酸素析出のしきい値濃度以下であるようにすることを含んでなる。
【0012】
本発明は、更に、前部表面、背部表面、前部表面と背部表面とを連絡する側表面、前部表面及び背部表面に垂直な中心軸、並びに前部表面から背部表面へ実質的に延びる中心軸まわりで軸対称で、結晶格子空孔が優勢な真性点欠陥である領域を有してなる単結晶シリコンウエハであって、前記領域は半径の少なくとも約25%の半径幅を有し、凝集空孔欠陥及び残存する濃度の結晶格子空孔を有しており、(i)凝集空孔欠陥は約70nm以下の平均半径を有しており、並びに(ii)結晶格子空孔真性点欠陥の残存濃度はウエハを酸素析出熱処理に付することによって生じる制御できない酸素析出のしきい値濃度以下である単結晶シリコンウエハを対象とする。
【0013】
本発明は、更に、前部表面、背部表面、前部表面と背部表面とを連絡する側表面、前部表面及び背部表面に垂直な中心軸、並びに前部表面から背部表面へ実質的に延びる中心軸まわりで軸対称で、結晶格子空孔が優勢な真性点欠陥である領域を有してなる単結晶シリコンウエハであって、前記領域は半径の少なくとも約25%の半径幅を有し、凝集空孔欠陥及び残存する濃度の結晶格子空孔を有しており、(i)凝集空孔欠陥は約70nm以下の平均半径を有しており、並びに(ii)酸素を本質的に存在させずにウエハを約1200℃の温度へ急速に加熱した後、冷却する急速な熱アニーリングに付され、その後、ウエハを800℃にて約4時間アニーリングした後、約1000℃にて約16時間アニーリングすることから本質的になる酸素析出熱処理に付されて、得られる酸素析出の濃度が約1×108cm−3以下である単結晶シリコンウエハを対象とする。
【0014】
本発明は、更に、単結晶シリコンウエハの母集団(population)のゲート酸化物の完全性を評価する方法を対象とする。この方法は、(i)前記母集団の第1のサブセットの絶縁破壊特性を、第1のサブセットに適用されるストレス(応力)の程度の関数として調べ、その場合のストレスの程度は初期値から終価(final value)へ第1の割合(first rate)で増大させる工程、(ii)前記母集団の第2のサブセットの絶縁破壊特性を、第2のサブセットに適用されるストレス(応力)の程度の関数として調べ、その場合のストレスの程度は初期値から終価へ第2の割合で増大させ、第2の割合は第1の割合とは異なっている工程、並びに(iii)工程(i)及び(ii)において調べた絶縁破壊特性を用いてその母集団についての所定の電場でのゲート酸化物故障率(failure rate)を予測する工程を含んでなる。
【0015】
本発明の他の目的及び特徴については、以下の説明において指摘する部分もあるし、明らかとなる部分もある。
尚、図18、19及び20は、所定の条件下でシリコン材料の挙動を予測するための一連のモデルを示すグラフである。一般に、これらのグラフは、異なる条件(例えば、成長条件、冷却速度等)について、特定の空隙寸法及び特定の残存空孔濃度が得られることを示す。従って、これらのグラフは特定の材料を得ることができる成長条件についての一般的な領域を示しているが、更に実験を行うことによって、これらの領域の内部又は周辺領域の条件を詳細に求めることができるということに注意されたい。図示するように、X軸(対数目盛、約0〜100の範囲にわたる)は冷却速度(K/分)であり;Y軸(約0.01から0.25にわたる)はS0(シリコンが形成されるときの空孔濃度、比v/G0基準);全体的に斜めの鎖線/点線は残存空孔濃度(Cres)を示す;全体的に斜めの実線は空隙半径(Rv)を示す;並びに、Nvは空隙密度(全体的に「L」字形状である各Nvについての線は空隙密度の等高線であって、各等高線はそれ以下では「欠陥のない」材料が生成することになる同じ下側限界を本質的に有する)。同様に、特定の所定の部分に関連するこれらの曲線を生成させるのに必要な計算に関連するパラメーターの特定の値に関して特定の仮定をするので、これらの曲線は、その中で本発明の「有用で、機能的に完全な」シリコンを製造することができる空間、又は、一組の操作条件が存在することを示すことを意図していると理解されたい。この空間の境界は、あらゆる結晶引き上げ装置内で、本発明の「有用で、機能的に完全な」シリコンを製造することができる操作条件の境界を正確には規定できない可能性もある。
【0016】
(好ましい態様についての説明)
今日までの実験的証拠に基づくと、単結晶シリコンウエハ中のゲート酸化物の完全性を調べるために今日受け入れられている実務は、あまり正確ではなく、その結果、そうでなければ使用に受け入れられていたであろうウエハを処分し、従ってウエハを廃棄することにつながっている。特に、ゲート酸化物の完全性の要求は、一般に、所定の電場での故障百分率にて表され、集積回路が操作されることになる場よりも実質的に大きい場である(例えば、操作の場の2倍、3倍、4倍等)。以下にさらに説明するように、そのような試験は、使用するのに許容される材料を排除する結果をもたらすことができ、今日ではそう考えられている。この廃棄は主として、比較して相対的に小さい多くの欠陥よりも、所定のウエハにおけるいくつかの大きな凝集欠陥が好ましいという結論を誤って導き出す試験の結果である。
【0017】
従って、本発明は、場及び時間の両者における十分に規定された故障分布要件(例えば、GOI要件)を満足するように、空隙の寸法を、場合によっては密度とは無関係に設計することによって、並びに、成長プロセスの間における所定の温度範囲でのインゴットの冷却速度、及び(本明細書において規定するように、成長速度v、及び平均軸方向温度勾配G0)を含む成長条件を制御することによって、所定の単結晶シリコンインゴットからより多くのウエハを得ることを可能にする。従って、冷却速度を制御して、残存空孔濃度がその後に酸素クラスター化反応の大きな触媒が生じる程高くなることを防止することができる。そのような空孔によって触媒される酸素クラスターは、結晶成長プロセスにおいて、その後の熱処理によって排除することができない程大きく成長することができ、そして通常成長するので、そのような反応を防止することは好ましい(例えば、米国特許第5,994,761号及びPCT/US99/19301に記載されているプロセスである。これらの文献は引用することによって本願明細書に含めることとする)。その結果、そのようなウエハの酸素析出挙動は、制御を失って、通常の条件下でデニューデッド領域(denuded zone)の生成を防止し、従って、残存空孔濃度が高すぎる場合、米国特許第5,994,761号及びPCT/US99/19301に記載されている熱処理プロセスに付されたウエハは所望の結果をもたらさないであろう。
【0018】
(ゲート酸化物完全性の測定)
図1を参照すると、空隙、又は凝集した空孔の欠陥は、ゲート酸化物において、シリコン−二酸化ケイ素界面(「A」で示す)を横切って「ウィークスポット」(「B」で示す)を形成しており、空隙のない界面から予測されるよりも一般に低い電場にて生じる絶縁破壊事象(dielectric breakdown events)がもたらされる。ゲート酸化物にこの「ウィークスポット」が存在することは、過去の数十年にもわたって、シリコン材料性能についての主要な問題点であった。近年、空隙寸法分布及び酸化物厚さの関数として、電場及びストレス時間の両者において、空隙に関連する破壊分布の詳細な性質の理解が進んできている。この進歩は本願明細書にさらに記載する種々の重要な結論を導き、それらは本発明の基礎となっている。
【0019】
(絶縁破壊及び材料信頼性−空隙関連絶縁破壊)
図2を参照すると、空隙を有するシリコンと、空隙を有さないシリコン(例えば、エピタキシャル、実質的に欠陥のない又は侵入型シリコン)における破壊事象の典型的な分布を模式的に示すグラフが示されている。このグラフは、比較的大きなキャパシターサンプリング領域(約0.1cm2)を有する20nmのゲート酸化物を有するシステムが典型的に生じることを示している。絶縁破壊試験は、いずれかの所定のシステムにおいて故障の分布のための動き得る「ウインドウ(window)」を提供する。問題とする欠陥に対する「ウインドウ」の相対的な位置は、この欠陥とキャパシタ領域の密度との積によって求められる。積が大きすぎたり、小さすぎたりする場合には、本質的に何も観察されない。従って、図2に模式的に示す場合は、最適な場合が選ばれているとの仮定がなされていた。
【0020】
絶縁破壊試験における空隙の効果は、中間的場範囲における破壊事象のピークを形成することである。更に、第2のピークによって示されるもう1つの種類の欠陥は空隙関連故障ピークを超えて存在しており、これはより高い電場での破壊事象の分布の原因である。すべてのデバイスについて破壊プロセスを完結させるのは、この第2の種類、又はモードの破壊である。このモードは、欠陥のない材料(例えば、エピタキシャルシリコン)を含む本質的にすべての種類の材料について共通して見出されており、空隙には関連しない効果によるものである。従って、一般に、このことは本発明には実用的に重要な材料特性ではなく、従って、本発明のためにはこれ以上は説明しない。専ら第1のピークについて説明する。
【0021】
第1のピークが存在するということは、空隙に関連する破壊は限定された効果であるということを意味する。このことの簡単な理由は、所定の試料には数えることができる限られた数の空隙が存在するということである。電場が第2のピークの端部よりも高い値に達する時まで、システムの全ての空隙は「ターン・オン(turned on)」されており、即ち、すべての空隙は実際の物理的「欠陥(defect)」(即ち、空隙)から観察可能な電気的欠陥(即ち、破壊部位)へ変化されている。ピーク下で電気的に検知される欠陥の全体は、界面を横切る物理的空隙全体の数に等しい。
【0022】
空隙によってもたらされ、電気的故障の場にこのように分布する(即ち、ピークの幅の)理由は、実際の空隙の寸法の散乱と、より重要であるのは、空隙の寸法的及び空間的分布の両者から得られる空隙界面の交差の断面における散乱との組合せであると考えられている。本発明の材料のピークの形状は(単に平均値に加えて)、材料信頼性において重要なパラメーターである。
【0023】
(破壊要件及び材料スクリーニング)
半導体デバイス製造業者は、一般に、2つの問題:(i)デバイスの歩留り(収率)は如何なるものか、及び、(ii)経時的なデバイスの信頼性は如何なるものか;換言すれば、デバイス製造業者は、操作の短い試験においてどれだけ多くの欠陥を有する物品が見出されるか(即ち「歩留り(yield)」、及び、どれだけ多くの欠陥を有する物品がその後のデバイスの寿命の間に明らかになるか(即ち「信頼性(reliability)」)ということに関心を持っている。これらの問題は、更なる分類、例えば、デバイスの操作条件は如何なるものか、及び、時間の関数としての欠陥の許容されるレベルは如何なるものかを考慮する必要があるということを必要とする。最初に、これらの質問に対する幾つかの一般的で標準的な回答は、操作の場は約2.5MV/cm(20nm酸化物及び5VVddについて)であって、1ビットの故障でも欠陥あるチップを生じ得るであろうと想定されるということである。歩留りのスクリーニングの後で重要な事項は、信頼性の要件である。例えば、厳密な自動車用途では、一般に、故障率は10年間で1ppmの故障以下であるべきと要求されている。
【0024】
しかしながら、図2に示すデータは実際には、これらの質問のいずれについても結論を出すことに役立つものではなく、図2は操作場(2.5MV/cm)では破壊事象がないことを示している。このことは、この操作場で評価された場合に、空隙を有する材料及び空隙を有さない材料の両者から導かれる操作デバイスの歩留りは実際に約100%であることを意味する。より厳密に言えば、この数は統計学的な「信頼限界(confidence limit)」の規定の範囲内のものであると考える必要があるが、それを考慮しても、上記のようなデータを考慮すると、この数は約100%とは実質的に異なる筈である。
【0025】
しかしながら、実際には、空隙を有する材料及び空隙を有さない材料の100%が欠陥を有さないということにはならない。従って、歩留り及び信頼性に対処しようと試みる場合、半導体デバイス製造業者は、製造した半導体デバイス、例えばキャパシタを操作場よりもかなり大きい場にさらしている。この方法は、「バーン・イン」試験(burn-in test)と称されることもあるが、積層回路試験の標準的な一部である。空隙による故障が見出され、そして重要となるのは、そのような試験のみに基づくものである。再び図2を参照すると、5Vに代えて10Vを印加すると、空隙故障分布の中央部(middle)に直接的に移動することが観察される。この標準的な操作の裏にある基本的理由は、操作する電場よりも高い電場にて故障し得る部分を排除することによって、期待される動作寿命の間で操作される電場にて故障するであろうウィークスポットを排除することに成功するであろうという考えによるものである。
【0026】
バーン・イン試験の制約の1つには、これは完成した半導体デバイスについて実施されるということがある。従って、半導体デバイスの製造プロセスに用いた場合に、バーン・イン試験での故障の発生率が高い半導体デバイスを製造し得る半導体デバイスが得られる確率が高いシリコンウエハを識別するためには用いることができない。この目的でシリコンウエハをプレスクリーニングするために、半導体デバイス製造業者は、シリコンウエハを、種々のゲート酸化物完全性試験、例えばランプフィールド試験(例えば、「BVOX」、ここでは、所定の電場、例えば8mVまでの通過率は20%、70%等であり得る)又は「QBD」試験に付する。しかしながら、基本的に、これらの試験は、ウエハを任意に選択した電場に付するという意味において、「バーン・イン」試験と同等である。
【0027】
問題となるのは、「バーン・イン」試験又は同等の試験を、性能仕様に関連づけることである。別の表現をすると、要求されるデバイスの寿命において故障し得るデバイスを実際的に及び効果的に識別する電場、及びスクリーンによって、実際に残存したであろうデバイスを非必要に廃棄することなく、仕様(例えば、1ppm)のレベルまで低下させることである。これを調べるため、スクリーニングする欠陥の特定のクラスから得られる故障のメカニズムの時間依存性について信頼できる情報を、試験者は入手する必要がある。この情報は、試験者が扱う分布の特定の電場依存性と組み合わせる必要がある。今日まで、そのようなことは行われておらず、標準的な「経験則(rule of thumb)」的アプローチのみが用いられてきた。その結果、(i)バーンインフィールドは、集積回路製造業者によって販売されるデバイスの故障率を許容できるレベルへ低下させるように、デバイスをうまくスクリーニングすることができ、それが望まれているほとんど任意に選ばれたストレスレベルであること;並びに、(ii)BVOX要求は、同様に任意に選ばれたフィールド(バーンインフィールドよりは大きいフィールド)に基づいており、このスクリーニングによってバーンイン試験を通過した成功の許容できるレベル(即ち、歩留り)が得られる、と考えることができる。これらの既に任意的である条件を、任意な種々の環境、例えば種々の酸化物厚さに適用する場合であっても、問題が組み合わせられる。
【0028】
「ノーマル」な空隙を有する材料の結果を、「改良された」材料(即ち、より低い空隙密度、徐冷却された材料)と通常考えられている材料と比較すると、これらの標準的な試験を適用すると、徐冷却された材料が優れているように観察される。例えば、図3は、実験的に測定された、2つの種類の材料の空隙に関連する破壊分布の典型的な例を摸式的に示している。有効な酸化物欠陥は、BVOX試験(絶対的な数ではなく、定義に関して)によって測定されるように、大部分のBVOX型試験においてシリコン中の空隙密度を規模とほぼ同様に高めるが、それは必要ではない。
【0029】
図3を参照すると、徐冷却した材料は、標準的な材料よりも少ない、空隙関連の破壊事象の総数を有することが認められる。これは、一般的に理解され及び予測されているように、徐冷却によってより小さい密度の空隙が生成するためである。更に、2つの群の分布の間には平均フィールドのシフトが存在することに注目すべきである。
【0030】
考慮しているデバイスは問題(全ゲート領域と有効欠陥密度との関係の問題、即ち、本明細書における「ウインドウ(window)」の問題)に対して少しでも感受性を有すると仮定すると、徐冷却材料の「歩留り」は標準的な材料よりも一般的に良好である。更に、そのような凝集した欠陥を本質的に有さない材料(例えば、PCT/US98/07365及びPCT/US98/07304に記載されているような、エピタキシャルシリコン、又は「低欠陥密度シリコン」(両文献の開示事項は引用することによって本願明細書に含めることとする))は、一般にそれらよりも良好である。しかしながら、そのような考え方は、上述したように、今日まで多少任意的に選ばれた歩留りを規定する試験について選ばれたフィールドに完全に基づいている。例えば、この場合、フィールドを8MV/cmから4MV/cmへ変化させると、3つの型のシリコンはすべて合格と認められる。更に、多少大きいフィールドでは、徐冷却材料及び標準的材料の挙動は実際には逆転する。これらすべて、実際に材料品質を規定する最良の方法とは如何なるものであるかという疑問を抱かせることにつながる。
【0031】
(破壊の統計)
この問題を解決し、性能についてシリコン材料を評価する最良の方法を最終的に決定するために、統計学的方法をここで採用する。そのようなアプローチの目的は、所定のストレスレベルでの所定の欠陥の組を有するシステムにおけるデバイス故障の時間依存性を予測し、特定のバーンイン工程によるデバイス分布の「スクリーニング」の有効性を評価することである。対象となるストレスレベルは、操作フィールド(例えば2.5MV/cm)であり、故障要求は非常に長い時間で非常に低い故障率(例えば、1ppm/10年)である。便利であってコスト有効性のあるように採用することができるデータを推定することができる筋の通った方法が明らかに必要とされており、このことは統計学の適用に関連する。
【0032】
最初の基本的な仮定は、欠陥は無作為に分布するということである。そこで、ポアッソン統計学(Poisson statistics)が用いられる。「歩留り」は、単に、試料の一群に欠陥が見出されない確率である。これらの欠陥は、密度Dを有しており、試料(即ち、キャパシタ)は個々の面積Aを有している。歩留りは、式(1):
Y=1−F=exp(−AD) (1)
[式中、Yは歩留りであって、Fは故障の数である。]
で与えられる。
【0033】
問題の電気的欠陥の原因となっているのは、ウエハ表面を横断する空隙である。空隙は、それらの平均直径dにそれらの体積密度ρを乗じたのとほぼ等しい面密度を有している。問題の酸化物厚さは、酸化プロセスの間に消費されたシリコンの量に比べて、数ナノメートル(例えば、2、4、6ナノメートル等)〜数十ナノメートル(例えば、10、20、30ナノメートル等)の範囲と一般に小さいので、この小さな修正はここでは無視するのが妥当と考えられる。
【0034】
絶縁破壊試験は空隙を検出するのではなく、酸化物故障を検出するものであるということを念頭においておくことが重要である。唯一の物理的又は潜在的な欠陥密度はρdである。これは上の表現のDに等しいというよりも、むしろDは空隙密度とは多少異なる電気的欠陥密度である。物理的欠陥は、電気的ストレスによって「ターン・オン(turned-on)」されると、電気的欠陥のみになる。電気的ストレス試験からのデータを利用し、説明するため、物理的欠陥を電気的欠陥に変換するための数学的フォームが必要とされる。
【0035】
定常場または電流ストレス:
絶縁破壊の場合には2つの主要な変数がある。場(または電流)と時間である。この統計的問題に対するワイブルアプローチは、ちょうどの時間を通常意味する、どのような変数が試験に付されているかについて単純な電力法則関係を仮定している。しかしながら、2パラメーター分布であり、それぞれの変数について2つの異なった電力法則を組み合わせるという点において、本件は、通例件よりも複雑である。これに関して、ワイブル分布は、いずれかの物理的メカニズムを記述するまたはモデル化することを要求しないことに留意すべきである。そうではなくて、本件は、まさしく、統計学的方法であり、複雑なデータを扱う単純で有用で力量のある方法である。
【0036】
始めるにあたって、第1に、最も簡単な種類の適用ストレス、一定場ストレスEを考慮する。この場合には、時間と共に有効欠陥密度が増加するワイブル記述は、式(2)および(3):
AD=CtaEb (2)
および従って
1−F=exp(-CtaEb) (3)
で示される。
【0037】
密度およびプローブ面積は、「C」パラメーターに含まれ、場依存性は「b」パラメーターに含まれ、時間依存性は「a」パラメーターに含まれる(jここで、tは時間である。)。これらパラメーターは、歩留まりデーターの二重の対数をとり、これを時間の対数に対してプロットすることによって、容易に得られる。「ワイブル」プロットは、こうして、式(4):
ln(-ln(1−F))=aln(t)+bln(E)+lnC (4)
で示される。
【0038】
これは、単純な線形であり、したがって、ln(t)での有用な式であり、実験データーを記述するのに良好に働く。ln(−ln(1−F))という数は、ワイブル数と呼ばれる。
【0039】
一旦求めたならば、これらパラメーターは、任意の場および時間での系の破損速度の完全な記述を与える。しかし、1種類の分布欠陥についてのみ有効である。ほとんどのいつもの場合のように、1種類を超える欠陥が存在するならば、この分布についてのパラメーターのセットは、独立的に定まり、次いで、他の分布に加えられる。空隙に加えて、電気ストレスによって活性化される、第2の、より高い場クラスの欠陥がある。幸運なことには、このクラスは、分布の空隙部分から明確に分離され、分離して分析される。
【0040】
パラメーターのセット、C、aおよびbは、欠陥の特定の分布に対して、ある種の「指紋」を与える。典型的な場合の例は、概略的に図4に示されている。そのようなプロットは、非常に有用である。例えば、結果を任意キャパシター領域にスケーリングすることが可能になる。CはAに比例しており、したがって、スケーリング係数は、単にln(A1/A2)である。破壊のそれぞれのモードの「a」、すなわち時間パラメーターは、チャートから直接に読み取ることができる。「b」、すなわち場パラメーターを求めるために、異なったストレスレベルにおける複数測定を行うべきである。これによって、面積係数に類似する、他の単純なスケーリング係数、b(lnE1/E2)が得られる。これら面積係数と場パラメーターとの間の差は、全ての種類の欠陥に対して一定である(ランダムな分布と仮定して)が、場パラメーターは、それぞれの特定の欠陥分布または破壊モードに対して独特である。場スケーリングを2モードの場合について図5に概略的に示す。
【0041】
空隙優勢系における実際のかなり典型的な時間依存応答の例を図6に示す。空隙による電気的損失集積の時間依存性はかなり弱い。「a」パラメーターは、約0.15である。平均して、試験場においてすでに破壊していない空隙が、電気的欠陥に転化するには、かなりの長時間を要する。この弱い時間依存性の他の結果は、信頼性の用語において、破損速度は、デバイスがこのメカニズムによって破損する時間ともに減少する。この点に関して、バーンインスクリーニングを行うこれら条件下のみであることに留意すべきである。
【0042】
しかし、図6は、破壊図の一部分のみを示している。他の有意な、しかし、非空隙関連の、破壊メカニズムが、見られない。なぜなら、単に、試験が充分に長く持続しなかったからである。他の測定に基づいて、このモードは、空隙関連メカニズムに比較して、異なった時間依存性を示す。非空隙関連メカニズムの「a」パラメーターは、1よりも大きく(すなわち、約3)、したがって、このモードは、物理的および統計的の両方(すなわち、信頼性観点)において、全く異なっている。
【0043】
上記の従来の試験手順での問題点は、二重である。従来の試験方法は、第1に、極度に時間がかかり、第2に、非常に狭い範囲の場研究を与える。中くらいの場でさえ、そのような試験は複数週間を要する。低い場への外挿が標的であるので、これは、特に満足すべき手法ではない。より好都合でかつ高度に相補的な試験は、広範囲の場を急速に走査する試験から信頼性を予測するのに必要なパラメーターを取り出すことである。ランプ付け場試験を用いることによってのみ、全てのパラメーターを実際に取り出すことが可能になる。
【0044】
ランプ化(傾斜)場ストレス:
絶縁破壊挙動のランプ化場試験は、一般的な試験方法である。図1および図2からの仮想的データは、そのような仮想的試験から導きだされる。そのような試験に対する一般的な考えは、該試験が破壊分布の場依存性についてのみの情報を与えるということである。しかし、実際には、該試験は、時間依存性についても非常に強力な情報を与え得る。重要なことには、これら試験は、非常に広い場範囲にわたって、破壊の個々のモードの時間依存性を急速に明らかにできる。
【0045】
ランプ化場テストにおいて、一定場試験と異なって、場および時間の両方は同時に変化する。2つのパラメーターを解きほぐすために、場がある時間で形成するとともに、どのようなダメージが形成するかまたは集積するのモデルが必要になる。簡単な追加的ダメージ形成モデル(例えば、R. Falster, The Phenomenology of Dielectric Breakdown in Thin Silicon Dioxide Films, J. Appl. Phys., 66, 3355 (1989)を参照できる。)がポリシリコンカソードの空隙関連破壊からのデータを記述しないこと、ランプ化場および一定場ストレスの両方のデータを説明するため、式(7)で説明するように、ダメージ用の新しいモデル(W)を適用すべきである:
W=p[∫E(t)ddt]a (7)
[式中、dはb/aである。]
線形ランプ化場ための式(7)を積分すると、この式は、式(8)に示すように、一定場試験の同様の「a」および「b」パラメーターの項において、ランプ化場試験ための絶縁破壊の「ワイブル」記述を与える。
【0046】
1-F=exp{-C[a/(a+b)]a (dE/dt)-aEa+b} (8)
二重の対数をとると、ワイブルランプ化試験プロット歩留まり式(9)が得られる。
【0047】
ln(-ln(1-F))=(a+b)ln(E)−aln(dE/dt)+lnC+aln{a/(a+b)} (9)
これは、ln(E)において線形である。直線の傾きは、パラメーターaとbの合計に等しい。
【0048】
したがって、ランプ速度の変化が、aln[(dE1/dt)(dE2/dt)]の量でワイブルプロットにおける単純なシフトを与える。同様の欠陥個体集団について可変のランプ化速度測定を単に行うことによって、広範囲の場にわたってパラメーターのセットおよびこれらパラメーターの合致を得ることができる。この式について、データ、一定ストレスおよびランプ化ストレス試験の間を行ったり来たりでき、非常に有用である。
【0049】
図7および図8を参照すると、図7は、この手順の概略図であり、一方、図8は空隙含有系の実際のデータを示す。図8のデータ(および他の類似のプロット)から上記方法を使用して、ランプ試験結果から「a」パラメーターを取り出した場合に、単純な一定場試験(図5参照)と同様の結果が得られる。しかし、ランプ試験結果は、空隙が破壊分布よりも優勢になる全場範囲にわたってこの値が有効であることを確認している。言い換えれば、空隙関連破壊の時間依存性は、活性である電場範囲において同様の形態を有する。現在まで得られている実験的証拠は、空隙関連破壊のための「a」パラメーターが典型的に約0.15〜約0.18の範囲にあることを示している。この情報から、上記の統計的形式を使用して、単純なランプ化試験結果から信頼性能を誘導することが可能である。
【0050】
したがって、本発明の一要旨は、多数の単結晶シリコンウエハのゲート酸化膜完全性を評価する方法である。本発明の方法は、(i)ストレス量を初期値から最終値への第1速度で増加する第1のサブセットに適用された、ストレス量(例えば、電場)の関数として、第1サブセットの個体集団の絶縁破壊特性を求める工程、(ii)ストレス量を初期値から最終値への第2速度で増加し、第2速度が第1速度と異なる第2のサブセットに適用されたストレス量の関数として、第2サブセットの個体集団の絶縁破壊特性を求める工程、ならびに(iii)工程(i)および(ii)において求めた絶縁破壊特性を用いて、個体集団の規定条件下でのゲート酸化膜破損速度を予測する工程を有してなる。第1速度と第2速度は、好ましくは少なくとも5の係数、より好ましくは少なくとも10の係数、いくつかの用途において、少なくとも100の係数で異なっている。加えて、いくつかの態様において、3、4またはそれ以上のウエハのサブセットを、(相互に少なくとも10の係数で異なっていることが好ましい)異なったランプ速度で評価することが好ましい。例えば、1つの態様において、個体集団のウエハの4つのサブセットのそれぞれを、それぞれ0.05、0.5、5および50メガボルト/cm/秒の速度で線形に増加させる適用場に付される。
【0051】
本発明の1つの態様において、ゲート酸化膜完全性試験を行うウエハの個体集団は、1つの特定のインゴット(またはその一部分)、特定の結晶成長方法またはウエハの1つまたはそれ以上のカセットからのウエハであってよい。サブセットは、この個体集団から選択され、したがって、個体集団の1つまたはそれ以上のウエハの全体部分または一部分を有してなってよい。例えば、それぞれのサブセットは、同様の1つまたはそれ以上のウエハの一部分を有してなってよい。あるいは、それぞれのサブセットは、異なったウエハの一部分を有してなってよい。さらにあるいは、サブセットは、ウエハの部分的に重なるセットの一部分であってよく、すなわち、それぞれのセットは、同様の1つまたはそれ以上のウエハの一部分、あるいは異なったウエハの一部分を有してなってよい。
【0052】
空隙関連絶縁破壊の再検討:
空隙関連絶縁破壊の問題に戻ると、「通常」または「徐冷」型の結晶についての空隙関連破壊の場における典型的な分布である図2に概略図を示す。図9を参照すると、ワイブルフォーマットで提示された2種の材料を比較する実際のデータが示されている(無空隙エピタキシャル材料の結果が、8MV/cmの「標準」BVOX参照場であるとして、参照として含められている)。このように見ると、「徐冷」材料と通常材料との間の通常の差(BVOXパーセント)は、明らかである。さらに、全ての3つの材料は、材料における空隙の分布に独立した固有の挙動を示す(再び、非常に異なった高場破壊分布が空隙に関連しないことに留意する。)。
【0053】
図9を参照すると、これら分布の2つの特徴を特に留意すべきである。
1.(前記のように、分布における「ピーク」が存在するという事実に関連して)それぞれの分布について或るパーセントで破壊破損における「飽和」が存在する。この結果の単純な理由は、いくつかの特性的場に達する時間までに、系における空隙の全てが使用されるかあるいはターン・オンしているということである。飽和破損パーセントのこの差は、「徐冷」法による空隙の数密度を減少する結果である。そのような飽和効果は、高い場において、他の主要モードの絶縁破壊に存在しないことに留意すべきである(ここで、下にある物理的欠陥は勘定できない。)。当然、例えば、全てのBVOX試験が実際に測定するものは、この飽和値である。したがって、空隙の有効面積密度のみを直接に測定する。
【0054】
2.しかしながら、「徐冷」法の結果は、他の概要プロットによって示され得るような、空隙の数密度を単純に減少しない。図10および図11を参照すると、2つの場合のどのような破損分布が、2つの間の差が単純に密度減少の結果であるかのように見えるかを示している。これは観測されない。かわりに、図2に示すのと同様の形態を採る。これが意味することは、欠陥の全密度が「徐冷」処理によって平均して減少されるが、「徐冷」空隙がより低い場で破壊につながる、すなわち、分布がシフトすることを意味している。
【0055】
一般に、徐冷型手法によって生成される空隙はより大きい。これは、徐冷型手法においてより少数の空隙位置が、通常型手法においてより多数の空隙が消費するとの同様の数の空孔を消費するという単純な理由からである。このシフトの理由は、図12において示すように、徐冷分布における空隙の増加平均サイズに原因していると結論づけられている。
【0056】
絶縁破壊分布の空隙サイズ依存性の結果:
ことがらの表面において、「バーンイン」電圧規則の適用は、より低い飽和破損パーセントとともに、徐冷型材料が良好な材料であるという直行的な結論を導く。当然、本明細書において指摘するように、この試験のまさしくの適用によって所定のものになるので、この結果は驚くべきものではない。しかし、真の問題は、異なった基準を適用した場合に、どのような結果が得られるかということである。例えば、単純に真の信頼性基準を材料系に適用することである試験を適用することを考える。すなわち、作動場よりも顕著に高い任意の場ではなくて、作動場でストレスを適用し、どの系が例えば10年後に最も破損しているかを検討することを考える。
【0057】
外挿信頼性の計算:
外挿信頼性を計算するため、上記系を使用し、規定操作場で、ランプ化場データから一定場操作へと外挿する。上記式(4)および(9)を扱い、簡単な表現がワイブル形態で書くことができる(式(10))。デバイスの消耗の解を本質的にいずれかの操作場で求めることが可能になる。
【0058】
【数1】
[式中、
1.F'(t,Eop)は、求めるべきものであり、(操作)場、Eopで時間依存性破損分布のワイブル数{= ln(-ln(1-F)}である。
2.F''(Eop,dE/dt)は、ランプ速度dE/dtで行ったランプ試験結果から、(操作)場、Eopに外挿したワイブル数{= ln(-ln(1-F)}である。この数は、単に、データの直線的外挿であり、式(11)において以下のように表現することができる:
【0059】
【数2】
[ここで、Esampleは傾き(a+b)が有効である範囲における或る場値であり、F''(Eop,dE/dt)はこの点におけるワイブル数である。
3.a+bは、ランプ試験結果からの破壊分布の空隙関連部分のlnEにおける傾きである。
4.「a」は、同じ分布の可変ランプ速度試験から、あるいは試料一定場/電流試験から、導かれる時間パラメーターである。
【0060】
標準材料と「徐冷」材料の比較:
再び図9を参照し、上記を考慮すると、複数年の期間にわたる5Vの操作電圧についての2つの材料系の外挿信頼性の比較を行うことができる。これは。図9から得られたデータに式(10)を適用することによって行うことができる。図13は、驚くべき結果を示しており、標準の材料は空隙のより高い全密度および対応する悪いBVOX結果を有する標準の材料が実際には良好な材料であるという点において驚くべきである。
【0061】
この点に関して、図13に示されている結果は驚くべきであるが、いずれの材料も、10年(10年は約3.15x108秒に等しい。)で1ppm破損の信頼性要求に合致しないので、実際に議論の余地がある。明らかに、これら要求に合致するために、両方の材料からできているデバイスをスクリーニング(すなわち、バーンイン)すべきである。しかし、バーンイン試験の適用が悪い答えを与え、したがって、プロセスにおける許容可能なシリコンの浪費につながることに留意すべきである。
【0062】
上記のことを考慮すれば、従来のスクリーニング手法が、飽和形態における測定によって、徐冷材料が優れたものであると不正確に同定しているようである。破損の数は非常に小さいので、この形態における差は、真の信頼性の問題に入ることはなく、あるいはおそらく約10000年程度のデバイス操作まで入らない。したがって、実際の論点は、破壊分布の初期部分にあり、特に、(式(9)からの定数によって調節される)操作場での曲線の上昇部分のインターセプト(切り取り)にある。
【0063】
「機能的に」無欠陥のシリコン
本発明の方法によれば、ゲート酸化膜完全性の分析方法が適切に規定され適用されると、(従来のGOI分析法に基づいて)許容可能であると従来みなされていたものと対照的に、サイズが小さく濃度(または数密度)が大きい空隙を有するウエハを生成する条件下で単結晶シリコンを成長させることが明らかに好ましいことが見い出された。別の表現をすれば、ゲート酸化膜完全性がより正確に規定され測定されると、より小さい空隙をより高い濃度で有する単結晶シリコンウエハが、より大きい空隙をより低い濃度で有する材料に比較して、好ましいことが見い出された(以下に詳細に説明する。)。これまでの経験によれば、機能的な観点からのそのようなウエハは、実質的に無欠陥のシリコンに、ほとんどの場合に品質において相当する。
【0064】
具体的には、本発明は、以下の2つの基本的基準に合致するように設計された材料である「機能的に無欠陥の」シリコンの工業技術または製造を可能にする。
1.材料は、信頼性の上記要求が所定用途のためにどのようなものであろうと、信頼性の上記要求(例えば、デバイス操作10年で1ppmの破損)に合致している。ならびに(要すれば)
2.材料は、バーンイン電圧において本質的に検出可能な破損を有しない。
【0065】
第2の基準に関して、これは、技術的に要求ではないこと、すなわち、真の「機能的完全」は第1の基準によって完全に満たされることに留意すべきである。しかしながら、それにもかかわらず、バーンイン基準(2)は重要である。なぜなら、材料は、典型的に、集積回路の製造業者のバーンイン試験要求に合致すべきであるからである。したがって、これは、必ずしも、ゲート酸化膜完全性の合理的試験ではないが、これは、操作のものでないならば、ある種の機能である。さらに、シリコン製造業者の制御を超えて、使用者が特定値のバーンイン電圧でこの試験を行うのに他の理由が存在し得る。結果的に、この要求は、シリコン材料によっても満足されることが好ましい。
【0066】
空隙サイズ分布および「機能的完全」:
図10〜図12の説明において、ワイブル曲線の初期部分が、空隙のサイズ分布よりも空隙の密度によって少なく求められることを説明した。したがって、これは、「機能的完全」にとって重要である。これは、材料を改良する従来の全ての試みと比較して、全く異なったアプローチである。具体的には、他の全ての提案されている材料の改良方法(例えば、遅い冷却、無欠陥シリコン、エピタキシャルシリコン)において、アイデアは、空孔の密度を減少させることであったが、一方、本発明において、焦点は、空隙のサイズを減少させること(空隙密度の制御はしてもしなくてもどちらでもよく、少なくともいくつかの態様において、最小の空隙密度が必要になる。)にあてられる。
【0067】
一般的に言えば、空隙のサイズは速い冷却によって減少される(「速」冷却mについては、以下において、詳細に説明する。)。このアプローチには、2つの要素がある。
1.運動的限定から、速冷却は、空孔移動の効率を減少させ、したがって、空孔が空隙にシンクする効果を減少させる。結果的に、空隙は大きくならない。
2.速冷却はより高い空孔密度を与える。結果的に、空孔濃度が固定されたならば、空隙当たり、より小さいの数の入手可能な空孔が存在する(これは、当然、「徐冷」材料が本明細書において劣っている場合である。)。
【0068】
これを留意して、鋭く尾末端を形成するために引き上げ速度を典型的に増加させる場所である尾末端領域において、従来のCZシリコンにおける最速の冷却が通常みられることを考慮する。これは、溶融界面よりも速く該領域における結晶の冷却速度を変化させる効果を有する。典型的には約1000℃〜約1200℃の範囲になる空隙核形成温度領域、および約1100℃〜約900℃の範囲になる空隙成長温度領域(これらの両方については以下に詳細に説明する。)における結晶の冷却速度が特に興味を引くものである。溶融物−固体界面を基準とした、これらの温度の軸方向位置を、ホットゾーン設計または配置によって求める。
【0069】
図14を参照すると、「徐冷」および「速冷」(「U97」で示す)手法から得られたシリコン材料に対して、所定または標準の材料の破壊分布の比較が行われている。これら結果は、本発明の説明の意図において、かなり注意を引く。さらに詳細には、次ぎのとおりである:
【0070】
1.速冷却材料のより大きな空隙密度は、より大きな飽和破損パーセントに明らかにみられる(あまり注意を引かない)。8MV/cmのBVOX試験は、速冷却材料に対して約85%の破損、標準材料に対して65%の破損、徐冷材料に対して45%の破損を与える。手短に言えば、標準的な試験方法によれば、本発明の材料は劣っているように見える。
2.速冷却材料のより小さな空隙サイズによって、より高い場に向かって、分布の初期部分のシフトが得られる。さらに、分布のこの部分の傾きはより急になっている。大きな傾きは、分布における単なる平行シフトよりもずっと強力である。急速な傾きは、操作場でのインターセプトを顕著に低い値に駆動させるからである。傾きのこの増加(したがって、場における破損の分布のタイト化)の理由は、シリコン界面で得られる空隙横断面積におけるより小さい範囲に原因していると考えられる。したがって、BVOX試験の顕著な不完全さにもかかわらず、速冷却材料は、信頼性性能に関しては、例外的に良好である。図15を参照すると、この材料の予想信頼性が、(良好なBVOX実施)標準材料の予想信頼性と比較されている。これらの結果から、10年の操作において、速冷却材料が0.001ppm破損よりも良好な破損を与え、最も厳格な要求さえも大きく凌駕していることに留意すべきである。例えば(操作電圧の2倍である)5MV/cmのバーンイン場で、測定可能な歩留まり損失が本質的にない(すなわち、約1%よりもずっと低い)ということにも留意すべきである。
【0071】
「機能的に完全な」材料の結晶成長の考慮:
成長条件の関数としてシリコンにおいて生成される空隙の密度およびサイズを説明しているモデルの骨組みは、最近のいくつかの文献に記載されている(例えば、V.V.Voronkov et al., J. Cryst. Growth, 194, 76(1998); V.V.Voronkov et al., J. Cryst. Growth, 204, 462(1999);およびR. Falster et al., On the Properties of the Intrinsic Point Defect in Silicon, Phys. Stat. Sol., (B)222, 219(2000))。しかし、一般的に言えば、空隙を構成する空孔の濃度は、溶融物/固体界面におけるパラメーターv/G0によって決まる[ここで、vは成長速度であり、G0は凝固温度および1300℃よりも高い温度(例えば、1325℃、1350℃または1375℃さえ)によって定まる温度範囲にわたる平均軸方向温度勾配である。]。この値が、v/G0の臨界値を超えて、大きいほど、成長結晶に組み込まれる空孔濃度は大きくなる。これらの空孔は、ある「核形成」温度(空孔濃度が大きくなると、この温度も高くなるという点で、この温度は空孔の濃度に依存する)で臨界的過飽和に達し、従って空隙が生成する。生成した空隙の密度は、因子:
【0072】
【数3】
[式中、qは 核形成温度での冷却速度であり;Cvは核形成温度における空孔濃度である。]
に本質的に比例する。
【0073】
凝集真性点欠陥の核形成のプロセスは、一般に、約1000℃以上の温度(例えば、約1050℃、100℃、1125℃、1150℃、1175℃、又は1200℃以上のこともある)にて起こる。しかしながら、優勢な真性点欠陥の核形成が生じ得る温度は、以下のような所定の結晶引き上げ装置及びプロセスについて実験的に求められる。インゴットの規定された領域におけるシリコン自己格子間原子は点欠陥として残り、シリコンが核形成温度に達するホットゾーンの部分をその領域が通過するまでは、核形成して凝集した欠陥を生じることはないと考えられている。即ち、典型的なチョクラルスキー法成長条件下では、その領域は最初に固体/液体界面にて生成し、シリコンの溶融温度とほぼ同じ温度を有している。インゴットの残りの部分の成長の間にメルトからその領域が引き上げられる際に、その領域の温度は結晶引き上げ装置のホットゾーンを通って引き上げられながら低下する。特定の結晶引き上げ装置のホットゾーンは、特徴的な温度プロファイルを有し、一般にメルト固体界面からの距離が増大するにつれて温度が低下し、その領域が占めるホットゾーンの領域の温度とほぼ等しい温度になる。従って、ホットゾーンを通って領域が引き上げられる速度は、領域が冷却される速度に影響を及ぼす。従って、引き上げ速度の突然の変化は、インゴット全体の冷却速度の突然の変化を生じ得る。重要なことは、インゴットの特定の領域が核形成の温度を通過する速度が、その領域において生じる凝集欠陥の寸法及び密度の両者に影響を及ぼすということである。従って、突然の変化が生じる時間における核形成温度を通過するインゴットの領域は、凝集真性点欠陥の寸法及び密度の突然の変動をもたらし得る(以下、核形成前端部(nucleation front)と称する)。核形成前端部は引き上げ速度が変化するときに生じるので、インゴットの軸に沿う核形成前端部の正確な部位を、インゴットの位置と、従って引き上げ速度が突然変化した時点でのホットゾーン内の核形成前端部と対比し、及び、ホットゾーンの温度プロファイルと対比して、核形成前端部の部位における真性点欠陥の型及び濃度について凝集真性点欠陥の核形成が生じる温度を求めることができる。
【0074】
従って、当業者は、引き上げ速度を突然変化させ、その後、(i)引き上げ速度が変化する時間の時点でホットゾーンにおける温度プロファイルに対してインゴットの位置を確認し、並びに(ii)核形成前端部の軸方向に部位を観察することによって、空孔優勢型であっても、シリコン自己格子間原子優勢型であっても、インゴットの製造を特定するプロセス条件下でチョクラルスキー法によってシリコンインゴットを成長させることができ、近似は核形成前端部に沿って存在する真性点欠陥の濃度についての核形成温度について行うことができる。更に、温度及び真性点欠陥濃度は核形成前端部に沿って半径方向に変化するので、温度及び真性点欠陥濃度は核形成前端部に沿ういくつかの点で測定することができ、核形成の温度を真性点欠陥濃度に対してプロットすると、真性点欠陥濃度の関数として核形成の温度を求めることができる。核形成前端部に沿うシリコンの温度は、チョクラルスキー法反応装置内のいずれの部位の温度も推定することができる、従来技術において知られているいずれかの熱シミュレーション法を用いて求めることができ、そのような方法には、例えばVirzi、「Computer Modeling of Heat Transfer in Czochralski Silicon Crystal Growth」、Journal of Crystal Growth, vol. 112, p. 699 (1991)に記載されている。シリコン自己格子間原子の濃度は、インゴットのいずれかの点での真性点欠陥の濃度を評価することができるこの技術分野において既知のいずれかの点欠陥シミュレーション法を用いて、核形成前端部に沿って評価することができ、点欠陥シミュレーションは例えば、Sinno et al.、「Point Defect Dynamics and the Oxidation-Induced Stacking-Fault Ring in Czochralski-Grown Silicon Crystals」、Journal of Electrochemical Society. vol. 145, p. 302 (1998)に記載されている。最後に、真性点欠陥濃度に対する核形成温度は、真性点欠陥の初期濃度を高くしたり低くしたり、上述のような分析及び冷却実験を繰り返したりして、インゴットを製造するための成長パラメーターを変化させて、更なるインゴットの成長を行うことによって、広い範囲の温度及び濃度について得ることができる。
【0075】
核形成プロセスは、温度が核形成温度の数ケルビン(数度)(例えば、約2度、4度、6度、8度又はそれ以上)内になると、即座に停止する。この温度に一旦達すると、新たな空隙は生じないが、空孔の拡散が遅くなって成長プロセスが停止するまで、既存の空隙は寸法の成長を続ける。即ち、空隙の核形成が一旦停止すると、空隙の成長は、空孔が空隙部位へ商業的に実用的な時間内で拡散することができる程度に続くのである。酸素含有チョクラルスキー法シリコンの場合、約1000℃という特徴的な温度(例えば、約1010℃、1015℃、1025℃又は1050℃のこともある)にて空孔は酸素に結合する。結合した状態において、空隙の成長する時間の尺度で空孔は有効に固定化される。温度が900℃(例えば、約910℃、925℃、950℃又は975℃のこともある)に達する時点まで、本質的にすべての空隙の成長が停止する。
【0076】
上述のことを考慮すると、本発明のプロセスは、(場合によって、図18〜20を参照すると、冷却速度が変化する場合、許容できる操作条件の「ウインドウ」は大きくなるので、)2つ、場合によっては3つの別個の温度範囲について結晶の冷却速度に焦点を当てることもできる:
1.第1の温度範囲は、溶融物−固体界面の近くであって、v/GOは約1300℃から約1400℃の温度範囲(即ち、固化温度から約1300℃、1325℃、1350℃又は約1375℃の場合もある範囲の温度)で設定される。この範囲での冷却速度は、対象の特定の領域について、空孔が、インゴットの中心軸のまわりからインゴットの側表面のまわりへの優勢な真性点欠陥であるかということに影響する。
2.第2の温度範囲は、空隙の核形成が起こる温度範囲である。空隙核形成は一般に、約1000℃〜約1200℃、約1025℃〜約1175℃、約1050℃〜約1150℃、約1075℃〜約1125℃の範囲の温度にて起こる。この温度範囲での冷却速度を制御することは空隙核形成に影響を及ぼす。
3.第3の温度範囲は、空隙成長が起こる温度範囲、即ち核形成が起こった後、商業的に実用的な時間で、シリコン格子空孔が動くことができる温度範囲である。空隙成長又は空孔拡散は一般に、約900℃〜約1100℃、約925℃〜約1075℃、約950℃〜約1050℃の範囲の温度で起こる。
そのような成長条件を如何に達成できるかについての例示的な詳細を、以下に更に説明する。
【0077】
シリコン領域における残存空孔濃度を制限するために、空隙核形成及び成長の制御に加えて、特定の環境において、単独で又はv/G0(初期空孔濃度を決める)の制御との組合せのいずれかで、空孔が動くことができる温度範囲にて冷却速度を制御することが重要なこともある。特に、約3×1012cm−3(例えば、以下に記載するプラチナ拡散法によって測定)を超える空孔濃度を有するシリコンが、集積回路製造プロセスにおいて一般に用いられる温度(例えば、約600℃〜800℃の範囲の温度)にさらされる場合、触媒作用による酸素析出が生じることになると現在考えられている。酸素析出は、起こる析出の程度に応じて、有利であったり、有害であったりし得る。例えば、そのような析出は、例えば米国特許第5,994,761号(引用することによってその開示内容を本願明細書に含めることとする)に記載されているような熱処理によって制御して、制御された空孔プロファイル(次いで、制御された酸素析出プロファイルにつながる)を有するウエハを形成する場合には有利である。対照的に、(例えば米国特許第5,994,761号及び国際特許出願PCT/US99/19301(引用することによってその開示内容を本願明細書に含めることとする)に記載されているようなその後の熱処理によって結晶冷却の際に生じた酸素クラスターを消したり、消滅させたりすることができないという点で)結晶中の酸素析出の制御を失うことなどによって、この析出を制御できない場合には、有害となる。析出が制御を失う場合の状況の一般的な例は、非常に速い冷却が起こる結晶の末端側のテールエンドにおいて見出すことができる。
【0078】
正常な結晶成長期間において、空隙は空孔の有効な消費者(consumer)であって、結晶が空孔結合期(vacancy binding regime)に入る際に、向上した析出効果についてのしきい値3×1012cm−3よりもかなり少なく、実際にはほとんど残らない。しかしながら、本明細書に記載するように結晶を急速に冷却すると、成長フェーズの間に、不充分な空孔が消費されるおそれが生じる。この状態を図16及び17に摸式的に示している。特に、図16は、最も典型的な場合の、成長する結晶での空隙の生成を示している。そのような条件では、空孔の空隙への消費は、空孔が酸素に結合するようになる時間までに、向上した析出しきい値以下の値へ空孔濃度を下げるのに十分である。対照的に、図17は、空隙成長期間(void growth regime)を通してより急速に冷却された成長する結晶中における空隙の生成を示している。より急速な冷却によって、「異常に(anomalously)」高い値の酸素析出が生じる。それは結晶が結合期間に入るときに残存空孔濃度のレベルが高いためである。
【0079】
「機能的に完全な(functionally perfect)」(即ち、「機能的に欠陥がない(functionally defect-free)」)シリコンを製造するため、空隙の寸法は十分に小さいことが必要である。このことは比較的高い冷却速度を必要とする。他方、有用な生成物のために、酸素析出は制御可能であることも必要とされる、即ち、シリコン中で、デニューデッド領域型(例えば米国特許第5,994,761号参照)又は非酸素析出型(例えば国際特許出願PCT/US99/19301参照)挙動をつくることができるべきである。これらの2つの要件は必ずしも同時に満足されない。従って、本発明の1つの要旨は、これら2つの要件を同時に満足すること、及びこれを達成できる条件について説明することである。
【0080】
更に、場合によって、空隙は、十分に多数である場合、許容できるデニューデッド領域の形成をそれ自体が妨害したり、阻害したりする可能性があるということに注意されたい。従って、状況によっては、空隙の密度が約1×108cm−3以下であることが好ましい場合もある。
上述したすべての制限が満足されるような状況では、本明細書において「有用で機能的に完全な」シリコンと称するシリコン材料が得られる。
【0081】
「有用で機能的に完全な」シリコンのための結晶成長条件の計算
そのような材料のための操作条件を規定するために用いる計算は、いくつかの結晶成長パラメーターの組合せを含んでおり、比較的複雑で、多次元的である。上記引用に用いたモデルエレメント(以下、「標準」モデルと称する)を用いると、これらは、例えば、経験的に又は(本明細書に記載する手段又はこの技術分野において標準的な手段を用いて)更にモデリングして、見積もることができ、更に精密化することができる。結果を図18の複雑なチャートにまとめている。特に、図18は、一定の冷却速度(例えば、約1400℃から、所定の空孔濃度について、商業的に実用的な時間で空孔が動けなくなる特定の温度までのコンスタントな冷却)と、組み込まれた空孔濃度(S0は空孔濃度であって、Cvを融点濃度Cvmへ標準化している)の関数として、空隙寸法/空隙密度/残存空孔スペースの計算を示している。これらの計算によって、「有用で機能的に完全な」シリコンを生じさせるために重要なパラメーターの数値が提供される。これらのパラメーターは:
1.空隙密度:Nv(cm−3)
2.空隙寸法:Rv(空隙のほぼ中央から外側縁部までの平均半径間隔(nm単位))
3.残存空孔濃度:Cres(cm−3)
【0082】
一般に、これらのパラメーターのスペースは、2つの結晶成長パラメーターの関数として与えられる。
1.組み込まれた空孔濃度(図18においてS0として識別される)。S0は空孔の融点溶解度へ標準化した結晶内に組み込まれた空孔の濃度である。この数は、結晶が成長したv/G0条件に関連する。2つを関連付ける簡単な分析的表現は、例えば、V.V.Voronkov et al., J. Appl. Phys., 86, 5675(1999)(引用することによってその開示内容を本願明細書に含めることとする)によって、既に述べた。一般的に、この関係は、
【0083】
【数4】
[式中、Cv0は「設定された」空孔濃度、即ち、v/G0によって求められた空孔濃度であり;Cvmは融点における空孔濃度、即ち、空孔の融点溶解性に基づく空孔濃度であり;vは成長速度であり;並びにvcは臨界成長速度、即ちvc=Gξcr、但しξcr=(v/G0)criticalである。]
2.結晶の冷却速度−これらの計算における冷却速度は(上述した)空隙成長期間及び空隙核形成の双方により一定であると推定される。
【0084】
グラフの中のこれらのパラメーター空間の交点は、所望の結果を達成することができる条件のマップを示している。「有用で機能的に完全な」シリコンを生じさせるための要件を満足するのに必要な結晶成長パラメーターについての正確な数値は場合によって変動し得るが、今日の実験的な事実によれば、およその値が示唆される。
1.Nv:約1×108cm−3以下(態様によっては、約5×107cm−3以下、約1×107cm−3以下、又は約5×106cm−3以下が好ましいこともある)
2.Rv:約70nm以下(態様によっては、約60nm以下、約50nm以下、約40nm以下、又は30nm以下が好ましいこともある)
3.Cres:約3×1012cm−3以下(態様によっては、約2×1012cm−3以下、約1×1012cm−3以下、約5×1011cm−3以下、約1×1011cm−3以下、約5×1010cm−3以下、又は約1×1011cm−3以下が好ましいこともある)。
【0085】
これらの数値を典型的ガイドとして用いると、図18は、(本明細書に記載したような)所定の結晶引き上げプロセス及び結晶引き上げ装置のために、これらの数値を満足できる結晶成長条件を地図のように表現することができる。
【0086】
これらの数値に関して、場合によっては、所望する残存空孔濃度及び空隙寸法を達成するため、ある最小空隙密度が必要になることがあるということに注意されたい。換言すれば、中でも初期空孔濃度及び冷却速度に応じて、所望のレベルよりも低い残存空孔濃度(空隙は、空孔が拡散し及び消費される「シンク(sink)」として機能する)及び所望のレベルよりも低い空隙寸法(少なすぎる空隙及び多すぎる空孔によって、大きすぎる空隙が生じる)のために必要な空隙の最小密度が存在する。そのような場合、空隙密度は一般に、少なくとも約5×106cm−3;約1×107cm−3;約5×107cm−3;約1×108cm−3又はそれ以上となり得る。
【0087】
「標準的モデル」
図19を参照すると、「標準的モデル」を用い、冷却速度が(固化から、商業的に実用的な時間で空孔が動けなくなる温度まで)一定であると仮定して、上述の数値を満足する典型的な操作ウインドウが示されている。クロスハッチを付した領域に含まれる数値は、比較的高い冷却速度及び大きい値のv/G0(即ちこれらの数値は大きな軸方向温度勾配を形成するように意図されたホットゾーンのいて速い引き上げ速度で達成されるものである)にて、達成される。これらの温度勾配が適切に調節される場合、これらの条件が適合し得る引き上げ速度に実質的に上限はないということに注意されたい。従って、この理由から、所定の結晶引き上げ装置について可能な最も速い引き上げ速度、及び今日判明している最も有効な費用対効果に優れた条件にて、「有用で機能的に完全な」シリコンを製造することができる。
【0088】
更に、「有用で機能的に完全な」シリコンの成長には、既に複雑な図19のグラフに示されていない自由度が更に存在するということに注意されたい。特に、空隙核形成温度範囲及び空隙成長温度範囲の両者による一定の冷却速度の基準が緩和された場合、ハッチングした領域の寸法は拡大し得ることになる。例えば、グラフのx軸の冷却速度が、空隙核形成範囲(例えば、約1080℃〜約1150℃)のみの冷却速度を意味する場合、成長期(例えば、約950℃〜1050℃)の冷却速度はその値以下であってよく、この領域の下側境界(即ち、一定のCres)はグラフ上で垂直方向へ降下することになる。今日の実験的事実に基づけば、第1の範囲のものよりも約10%だけ低い第2の期間の冷却速度の変化は、他の制限を認識できる程変化させることなく、このより低い制限を有効で完全に取り除くことになるであろうと見積もられている。特定の理論に支持されるものではないが、残存する空孔には、第1の冷却速度の期間で測定される密度の空隙によって完全に消費されるのに十分な長さの時間が許容されると一般に考えられる。必要とされる大きなv/G0の条件下、残存する空孔の濃度は、最初に組み込まれた空孔濃度と対比してより低い。従って、空隙の大きさが有意な程度で又は著しく変化することはない。
【0089】
「変更されたモデル」
図20を参照すると、空隙/空孔消費現象についての第2の例示モデルが考えられる。特に、図20は、変更されたモデル下で得られた結果を示しており、ここでは、第1の又は標準的なモデルに、わずかであるが、重要な変化がなされている。ここで、「有用で機能的に完全な」シリコンは、(標準的なモデルの一定の冷却速度とは異なって)2段階冷却速度の条件下でのみ製造することができる。操作条件を強調している。
この例では、変更されたモデルの「有用で機能的に完全な」シリコンを製造する操作条件のためのプロセススペースは、一般に、小さすぎて、多くの場合に実用的でないS0の値である。従って、そのようなモデルでシリコンを製造するため、下側Cres制限をなくする2段階冷却が必要となる。
【0090】
v/G0及び冷却速度の制御
単結晶シリコンインゴットについての一定の直径の部分で、かなりの長さにわたって空孔が優勢なシリコンを得るために、v/G0の制御に関する一般的な事項は、当業者に一般に知られており、例えば、国際特許出願PCT/US98/07304、同07305、及び同07306に記載されている。しかしながら、本発明によれば一般に、インゴットのほぼ中心軸から周縁部へ測定して、インゴットの少なくとも一定直径の領域(例えば、インゴットの中心軸に沿って測定して、10%、20%、40%、60%、80%、90%、95%又はそれ以上)について、又はインゴットの側表面について、インゴットの半径長に対して少なくとも約25%、50%、75%、85%、95%又はそれ以上の幅を有する軸対称な領域が、空孔が優勢な真性点欠陥となるように、生産速度v及び平均軸方向温度勾配G0を制御することになる。しかしながら、ある態様では、この領域はインゴットの中心軸から側表面へ延びることが好ましく、即ち、その領域の幅は、インゴットの一定直径の部分の幅に本質的に等しくなることが好ましい。しかしながら、この領域が中心軸から側表面へ延びない場合には、もう1つの軸対称な領域によって包囲する場合もあり、その場合には、例えば国際特許出願PCT/US98/07365に記載されているように、シリコン自己格子間原子が優勢な真性点欠陥であって、凝集した真性点欠陥を実質的に有さない。
【0091】
この点に関して、熱処理前に、本発明に従って成長させた単結晶シリコンインゴットから得られる単結晶シリコンウエハは、(ウエハの近表面領域を除いて)実質的に均一な酸素濃度、空隙濃度及び空孔濃度を有することになる。換言すれば、本発明の軸対称で空孔の優勢な領域は、実質的にウエハの前端部からウエハの後端部へ延び(即ち、空孔の優勢な領域は、ウエハ全体の厚みに対して、約90%、約92%、約94%、約96%、約98%、又は約100%の場合もある厚さを有する)、酸素、空隙及び残存空孔濃度は実質的にこの領域全体を通じて(即ち、頂部から底部まで)実質的に均一である。
【0092】
本発明の方法によって使用すべき所定の結晶引き上げ装置について可能な最も速い成長速度が可能になると仮定すると、v/GOの臨界値を超えるいずれの値でも用いることができる。例えば図18〜20を再び参照すると、S0は一般にv/GOの臨界値から上向きの変位を表すということに注意されたい。更に、図18〜20は、冷却速度について例示的なデータを提供している、即ち、所定のv/G(即ちSO)の値について、これらのグラフを用いて本発明の材料を達成するために必要なおよその冷却速度を求めることができる。
【0093】
平均軸方向温度勾配G0の制御は、結晶引き上げ装置の「ホットゾーン」の設計を通じて、即ち、特にヒータ、絶縁体、並びに熱及び電磁線シールドを構成するグラファイト(又は他の材料)によって達成することができる。設計の詳細は結晶引き上げ装置の構成及び型に応じて変わり得るが、一般に、G0は、リフレクタ、電磁線シールド、パージチューブ、ライトパイプ、及びヒーター(サイドヒーター又はボトムヒーター)を含む、溶融物/固体界面における熱伝達の制御についてこの分野において現在知られているいずれかの手段を用いて制御することができる。一般に、多くの場合、溶融物―固体界面の上方の1つの結晶直径の中にそのような装置を位置させることによって、G0における電磁線の変位は最小となる。更に、溶融物及び結晶に対する装置の相対的位置を調節することによって、G0を制御することができる。このことは、ホットゾーン内で装置の位置を調整したり、又はホットゾーン内で溶融物の位置を調整したりすることによって達成される。更にヒーターを用いる場合は、ヒーターに供給される出力を調整することによってもG0を制御することができる。方法の間に溶融物の体積を消費するバッチ式のチョクラルスキー法の間に、これらの方法のいずれか又はすべてを採用することもできる。
【0094】
本発明によれば、凝集空孔欠陥の核形成が起こる温度範囲で冷却が制御される。このことが一旦達成されると、図18〜20(及びそれらに関する説明)に示すように、冷却速度を維持し(即ち一定に保つ)ことができ、又は高めることができる。
一般に、単結晶シリコンは、少なくとも2つの代替アプローチによって、凝集空孔欠陥のための核形成温度、場合によって商業的に実用的な時間で空孔が動けなくなる温度で冷却することができる。第1のアプローチでは、インゴット全体(又は本発明の向上したゲート酸化物完全性を有することが望まれるインゴットの少なくともその部分)が、インゴットのテイルが完成するまで、核形成温度を超える温度に保持される。それからインゴットは溶融物から取り外され、ホットゾーンへの熱の入力が停止される。単結晶シリコンは、チョクラルスキー法反応装置のホットゾーンから、そのホットゾーンから離れているチャンバーへ、例えば結晶受け入れチャンバー又は他のチャンバーへ移され、そこで結晶全体(又は少なくともその上述した部分)が本発明に従って冷却される。冷媒、例えば冷却水を用いるように設計された熱交換器デバイスによって冷却チャンバーをジャケットで覆って、単結晶シリコンを冷媒に直接的に接触させることなく、所望の速度で単結晶シリコンインゴットを冷却するのに充Bンな速度で冷却チャンバーから熱を除去することができる。別法として、又は冷却ジャケットに加えて、予め冷却したガス、例えばヘリウムガスを用いて、結晶受け入れチャンバー又は他の冷却チャンバーを連続的にパージして、より迅速に冷却を行うこともできる。プロセスの装置から熱を除去する方法は、この技術分野においてよく知られており、当業者は種々の手段を用いて、過度の実験を必要とすることなく、結晶受け入れチャンバー又は他の冷却チャンバーから熱を除去することができる。
【0095】
第2のアプローチでは、インゴットの一部、好ましくは大きな部分を結晶成長の間に冷却する。このアプローチでは、結晶引き上げ装置のホットゾーンは、(i)成長する結晶の半径全体にわたってv/G0について所望の値(又は値の範囲)を達成し、(ii)凝集した真性点欠陥についての核形成温度と固化温度との間の温度で空孔真性点欠陥を好適に拡散させ、並びに(iii)核形成温度、場合によって商業的に実用的な時間内で空孔が拡散することができない温度を含む温度範囲での適切な軸方向温度勾配を適用することによって成長している結晶の凝集した空孔欠陥についての核形成温度でインゴットを冷却することを意図している。
【0096】
本発明の方法に従って製造するインゴット(即ち、空孔が優勢な物質を含むインゴット)について、低い酸素含量(即ち、約13PPMA(原子百万分率(parts per million atomic)、ASTM規格F−121−83)以下、約12PPMA以下、約11PPMA以下の酸素、又は約10PPMA以下の酸素のこともある)材料が好ましいこともある。これは、中程度から高い酸素含量(即ち約14PPMA〜約18PPMA)のウエハでは、増大酸素クラスター化のバンド及び酸素に誘起されるスタッキング欠陥がより顕著になるからである。これらの各々は、所定の集積回路製造プロセスにおいて潜在的な問題点の源である。
【0097】
増大酸素クラスター化の影響は、単独で又は組合せで用いられる種々の方法によって更に減らすことができる。例えば、酸素析出核形成中心は、一般的に、約350℃〜約750℃の範囲の温度にてアニールされたシリコン中に生成する。従って、結晶が「短い」結晶、即ち、シードエンドがシリコンの融点(約1410℃)〜約750℃へ冷却され、その後インゴットが急速に冷却されるまで、チョクラルスキー法で成長させられた結晶であることが好ましい場合がある。このようにして、核形成中心形成のための臨界値的温度範囲に消費される時間は最小に保たれ、酸素析出核形成中心は結晶引き上げ装置において形成するための適切ではない時間を有する。
【0098】
しかしながら、単結晶の成長の間に形成された酸素析出核形成中心は、単結晶シリコンのアニーリングによって消滅することが好ましい。酸素析出核形成中心が安定化熱処理に付されていないことを条件として、シリコンを少なくとも約875℃の温度へ急速に加熱し、好ましくは少なくとも1000℃、少なくとも1100℃、又は1200℃若しくはそれ以上の温度へ昇温し続けることによって、酸素析出核形成中心をシリコンからアニールして消すことができる。ウエハをその温度へ急速に加熱すること、即ち、温度上昇の速さ(割合)を少なくとも約10℃/分、より好ましくは少なくとも約50℃/分とすることが重要である。そうでなければ、熱処理によって、酸素析出核形成中心が安定化し得る。平衡は、比較的短い時間、即ち、約60秒又はそれ以下のオーダーで達するようである。従って、単結晶シリコン中の酸素析出核形成中心は、シリコンを、少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも約10秒間で、少なくとも約875℃、好ましくは少なくとも約950℃、より好ましくは少なくとも約1100℃の温度でアニールすることによって消すことができる。
【0099】
消失は、常套の炉又はラピッド速熱アニーリング(「RTA」)システムで行うことができる。シリコンのラピッド熱アニーリングは、1ないし複数の市販のラピッド熱アニーリング(「RTA」)炉を用いて行うことができ、その中でウエハは高出力ランプのバンクによって個々に加熱される。RTA炉は、シリコンウエハを室温から1200℃へ数秒で急速に加熱することができる。そのような市販のRTA炉には、AG Associates(カリフォルニア州、Mountain View)から入手できるモデル610炉がある。更に、消失はシリコンインゴット又はシリコンウエハについて行うことができ、シリコンウエハが好ましい。
【0100】
急速熱アニーリング及び冷却工程の間の雰囲気は一般に非酸化性雰囲気であって、シリコン表面の酸化は急速夏アニーリング工程の間の空孔濃度を抑制することが見出されている。従って、雰囲気は全体として酸素を含まないか、又は、空孔濃度の形成を抑制するのに十分な量のシリコン自己格子間原子を注入するには不十分な酸素分圧を有することが好ましい。空孔濃度が許容できない程度に抑制される酸素濃度の下限は正確に測定されてはいないが、急速熱アニーリング工程の間での雰囲気は2000ppm(0.002原子)以下、好ましくは1000ppm(0.001原子)以下の酸素を有することが一般に好ましい。雰囲気は、例えば、窒化性雰囲気、例えば窒素若しくはアンモニア、非窒化性雰囲気、例えばヘリウム、ネオン、二酸化炭素若しくはアルゴン、又はそれらの組合せであってよい。好ましいものはアルゴンである。
【0101】
単結晶シリコン中に不純物として存在する場合、置換炭素は酸素析出核形成中心の生成の触媒となり得る。従って、これ及びその他の理由から、単結晶シリコンインゴットは低い濃度のシリコンを有することが好ましい。即ち、単結晶シリコン中の炭素の濃度は、約5×1016原子/cm3、好ましくは約1×1016原子/cm3、より好ましくは約5×1015原子/cm3であることが好ましい。
【0102】
更に、少なくともいくつかの態様では、単結晶シリコンウエハは実質的に窒素を含まないことが好ましく、本発明のウエハは窒素無ドープ(non-nitrogen doped)のものであることが好ましい態様もある。本明細書において、「窒素無ドープ」及び「実質的に窒素を含まない」とは、シリコンの窒素含量が、約1×1013原子/cm3以下、約5×1013原子/cm3以下、約1×1012原子/cm3以下、約5×1011原子/cm3又はそれ以下であることを意味する。
従って、本発明の「窒素無ドープ」ウエハは「窒素ドープ」されたウエハから、両者を熱処理(例えば、実質的に酸素を存在させずに、約1200℃へ急速加熱)及び冷却に付し、その後、酸素析出熱処理(例えば、約800℃で約4時間、次いで約1000℃で約16時間)に付した場合に、本発明の「窒素無ドープ」ウエハにおける酸素析出の濃度は約1×108/cm3(例えば、約5×107以下、約1×107以下、約5×106以下、約1×106以下、又はそれ以下)であり、一方、「窒素ドープ」ウエハの濃度はそうはならない。
【0103】
更に説明するように、本発明によって成長させたインゴットからスライスしたウエハは、その上にエピタキシャル層を析出させ得る基材として用いるのに適する。エピタキシャル析出は、この技術分野で知られているいずれの手段によっても行うことができる。本発明によって成長させたインゴットからスライスしたウエハは、絶縁基材上の半導体(例えばSIMOX又はボンデッドアプリケーション)用の基材として用いるのにも公的である。絶縁コンポジット上の半導体は、例えば、米国特許第5,494,849号(Lyerら)に記載されているようにして形成することができる。本発明のウエハは、そのようなようとにおいて、基材ウエハ又はデバイス層として用いることができる。
更に、本発明によって製造されるウエハは、水素又はアルゴンアニーリング処理、例えば欧州特許出願第503816A1号に記載されている処理と組み合わせることにも適している。
【0104】
エピタキシャルウエハ
一般的に言えば、本発明に従って製造するシリコンウエハは、エピタキシャル層を析出させる基材として用いるのに適している。ホモエピタキシャル析出は、この技術分野において一般的ないずれかの方法によって行うことができる。これらの態様の中のいくつかにおいて、空隙寸法及び密度は狭いことが重要である。その理由は、エピタキシャル析出プロセスは、そうしなければゲート酸化物完全性を阻害する、ウエハ表面に存在する空隙を埋める(fill in)からである。これらの態様において、残存空隙濃度を制御すると、(「有用で機能的に完全な」シリコンについて上述したように)過度の酸素析出が防止される。
【0105】
凝集した欠陥の検出
凝集欠陥はいくつかの異なる技術によって検出することができる。例えば、フローパターン欠陥またはD欠陥は典型的には単結晶シリコンサンプルをSeccoエッチング溶液中で約30分間選択的にエッチングした後、サンプルの顕微鏡観察を行うことによって検出する(例えば、H. Yamagishi et al., Semicond. Sci. Technol. 7, A135 (1992)参照)。この方法は凝集空孔欠陥の検出に標準的なものであるが、A欠陥を検出するためにも使用できる。この技術を用いると、かかる欠陥は存在する場合にはサンプル表面上の大きなピットとして見られる。
【0106】
さらにまた、凝集真性点欠陥は、加熱時に単結晶シリコンマトリックス中に拡散しうる金属でこれらの欠陥を修飾することによっても視覚検出できる。特に、ウエハ、スラグまたはスラブなどの単結晶シリコンサンプルは、濃硝酸銅溶液など、これらの欠陥を修飾しうる金属を含有する組成物でサンプル表面をまず被覆することにより、かかる欠陥の存在を視覚検査することができる。次に、このような被覆サンプルを約5分〜約15分間、約900℃〜約1000℃の間の温度に加熱してサンプル中の金属を拡散させる。この加熱処理サンプルを次に室温まで冷却し、金属を臨界過飽和にし、欠陥が存在するサンプルマトリックス内の部位に析出させる。
【0107】
冷却後、サンプルをブライトエッチング溶液で約8〜約12分間処理することで、まずサンプルに非欠陥描出エッチングを行い、表面残渣や析出物を除去する。典型的なブライトエッチング溶液としては、約55%の硝酸(70重量%溶液)、約20%のフッ化水素酸(49重量%溶液)、および約25%の塩酸(濃溶液)を含む。
次にこのサンプルを脱イオン水ですすぎ、約35〜約55分間、サンプルをSeccoまたはWrightエッチング溶液に浸漬するか、それで処理することによる第二のエッチング工程を行う。典型的には約1:2比率の0.15M二クロム酸カリウムおよびフッ化水素酸(49重量%溶液)を含むSeccoエッチング溶液を用いてサンプルのエッチングを行う。このエッチング工程は存在しうる凝集欠陥を露出させ、描出する働きをする。
【0108】
この「欠陥修飾」プロセスのもう1つの実施形態では、単結晶シリコンサンプルに金属含有組成物の塗布前に熱アニーリングを行う。典型的には、サンプルを約3時間〜約5時間、約850℃〜約950℃の範囲の温度まで加熱する。この実施形態は特にB型シリコン自己格子間原子凝集欠陥を検出する目的に好ましい。特定の理論にとらわれるものではないが、一般に、この熱処理はB欠陥を安定化させ、成長させる働きをし、その結果、修飾および検出がより容易なものとなると考えられる。
【0109】
結晶格子空孔の測定
単結晶シリコン中の結晶格子空孔の測定は、白金拡散分析によって行うことができる。一般に、白金は、Frank Turnbull機構が白金拡散を支配するが、白金原子による空孔修飾の定常状態に達するのに十分なように、拡散時間及び温度を選択して、試料に析出し、水平表面で拡散する。本発明に典型的な空孔濃度を有するウエハについては、730℃の温度で20分間の拡散時間を用いることができるが、より低い温度、例えば約680℃でより正確なトラッキングが認められる。更に、ケイ化プロセスによって受け得る影響を低減するため、白金析出法によって1つのモノレイヤー以下の表面濃度が生じることが好ましい。
【0110】
白金拡散技術(platinum diffusion techniques)は、例えばJacobらの、J. Appi. Phys., vol. 82, p. 182 (1997); Zimmermann及びRysselの"The Modeling of Platinum Diffusion In Silicon Under Non-Equilibrium Conditions,"J. Electrochemical Societv, vol. 139, p. 256 (1992) ; Zimmermann, Goesele, Seilenthal及びEichinerの"Vacancy Concentration Wafer Mapping In Silicon,"Journal of Crystal Growth, vol. 129, p. 582 (1993); Zimmermann及びFalsterの"Investigation Of The Nucleation of Oxygen Precipitates in Czochralski Silicon At An Early Stage,"Appl. Phys. Lett., vol. 60, p. 3250 (1992);並びにZimmermann及びRysselのAppl. Phys. A, vol. 55, p. 121 (1992)のいずれかに記載されており、これらすべての記載事項を引用することによって本願明細書に含めることとする。
【0111】
定義
本明細書において以下のフレーズは所定の意味を有することに留意すべきである。「凝集真性点欠陥」とは、空孔が凝集する反応によってD−欠陥、フローパターン欠陥、ゲートオキシドインテグリティ欠陥、クリスタルオリジネーテッドパーティクル欠陥、およびそのような空孔に関連する欠陥が生じる反応、又は(ii)自己格子間原子が凝集して転位ループ及びネットワーク、及びその他の自己格子間原子に関連する欠陥を意味する。「凝集格子間原子欠陥」とは、シリコン自己格子間原子が凝集する反応によって生じる凝集真性点欠陥を意味する。「凝集空孔欠陥」とは、結晶格子空孔が凝集する反応によって生じる凝集空孔点欠陥を意味する。ウエハまたはインゴットについての「半径」とは、ウエハまたはインゴットの中心軸から側表面までを測定した距離を意味する。「凝集真性点欠陥を実質的に含まない」とは、これらの欠陥の検出限界(現在のところ約103欠陥/cm3)より低い、凝集欠陥濃度を意味する。「空孔優勢」および「自己格子間原子優勢」とは、その真性点欠陥が主としてそれぞれ空孔または自己格子間原子である材料を意味する。
【0112】
更に、本明細書において用いるように、以下の用語及び語句は所定の意味を有する。「残存空孔濃度」とは、本発明に従って成長させた単結晶シリコンインゴットであって、商業的に実用的な時間内で空孔が拡散することができない温度以下にインゴットを冷却した後(即ち、消費又はアニールされ得るサイトへの空隙成長及び/又は空孔拡散を停止した後)に得られるシリコン材料の本明細書において求めた空孔濃度を意味する。「制御されない酸素析出」及びそのバリエーションとは、前から存在する酸素クラスター又は析出核を典型的に用いられる熱処理、例えば本明細書に記載する方法によるものによって「消す(erase)」か又は防止することができない酸素析出、特に、例えば米国特許第5,994,761号に記載のような1300℃を超えない温度(例えば、1250℃、1225℃又は1200℃の場合もある温度)へ急速に(例えば少なくとも1℃/秒の割合で)シリコンを加熱する熱処理によって消すことができない酸素析出を意味する。
【0113】
上記の点から、本発明のいくつかの目的が達成されることが分かるであろう。
本発明の範囲から逸脱しない限り、上記の材料及びプロセスにおいては種々の変更が可能であるので、上記の説明に含まれる全ての事柄は例として説明されるものであり、限定を意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、表面に蒸着した酸化物層を有する単結晶シリコンウエハの領域の断面を摸式的に示す図であって、表面の空隙を強調して示しており(記号Aで示す)、それによって酸化物層中にウィークスポット(記号Bで示す)が生じることを説明している。
【図2】図2は、ランプフィールド試験において空隙を有するシリコンと、空隙を有さないシリコンとにおける典型的絶縁破壊の分布を示す摸式的グラフである。
【図3】図3は、「ノーマル」(又は高密度) の空隙を有するシリコンウエハの絶縁破壊分布と、「改善した」徐冷却(又は低密度) シリコンウエハの絶縁破壊分布とを対比する模式的グラフを示しており、任意に規定した試験場の8MV/cmまでの絶縁破壊事象の総積分数は、(より小さい数密度の空隙を有する)徐冷却された結晶についてよりも小さい。
【図4】図4は、定常場(又は電流)試験における絶縁破壊故障のワイブル分布を示す模式的グラフである。
【図5】図5は、ストレスレベルを変化(場又は電流を変化)させた場合の絶縁破壊故障のワイブル分布を示す模式的グラフである。
【図6】図6は、5MV/cmでの典型的な空隙に関連する故障のメカニズムについて、定常場破壊分布を説明するグラフである。(標準的空隙分布;0.1cm2;21nm酸化物;試験166dev.;10Vストレス;破壊に許容される最大時間:2000秒;時間パラメーター、a=0.15)
【図7】図7は、ランプフィールドデータのワイブル分布分析を摸式的に説明するグラフである。
【図8】図8は、空隙を有するシリコンについての可変ランプ試験の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、典型的な「ノーマル(標準)」材料(「SR−STD」で示す)及び「徐冷却した」材料(「SR−SAC」で示す)(欠陥なし、「SR−EPI」で示すエピ材料を対照として提供する)のランプ場破壊分布を対比するワイブル分布を示すグラフである。
【図10】図10は、「ノーマル」(又は高密度)材料と「徐冷却した」(又は低密度)材料との間の差が単に欠陥密度の低下である場合の、両者の破壊分布を示す模式的グラフである。
【図11】図11は、「ノーマル」(又は高密度)材料と「徐冷却した」(又は低密度)材料との間の差が単に欠陥密度の低下である場合の、両者の破壊分布を示す模式的グラフ(ワイブル分布形式にプロットしたもの)である。
【図12】図12は、空隙寸法の結果として生じるシフトを詳細に示すワイブル分布的分析を模式的に示すグラフであって、絶縁破壊分布に関する空隙の寸法的効果をワイブル的に示している(ノーマル又は高密度材料と、徐冷却した又は低密度材料)。
【図13】図13は、空隙を有する材料について計算した酸化物信頼性試験の結果、従って、標準的材料(下側曲線)及び徐冷却材料(上側曲線)についてのランプ試験データから予測される信頼性を示している(21nm;5V室温操作についての予測)。
【図14】図14は、所定の空隙を有する材料(「STD」で示す)、並びに「徐冷却」材料(「SAC」で示す)と、「速冷却」材料(「U97−DDef」で示す、インゴットの急速に冷却したテイルエンド領域から得られる)との対比を示すグラフである。
【図15】図15は、図14の「速冷却」材料(下側曲線)と標準的材料(上側曲線)についての信頼性ある外挿を行ったグラフ;例えば、標準的な型と速冷却された空隙の型とを対比するランプ試験データからの信頼性ある予測を示している(21nm;5V室温操作についての予測)。
【図16】図16は、最も典型的な冷却速度で成長する結晶における空隙の生成(そのような条件の下で、空孔の空隙への消費が、空孔が酸素に結合するようになる時間まで、析出向上しきい値以下の値へそれらの濃度を低下するのに十分効率的であることを示す)を示すグラフである。
【図17】図17は、図16の結晶と対比して、より急速に冷却されて成長した結晶における空隙の生成を示すグラフである(空隙成長期間を通じてより急速に冷却することによって、結合期に結晶が入る時間で残存する空孔の高いレベルのために、酸素析出の特異な高い値が生じることを示している)。
【図18】図18は、冷却速度及び融点濃度及に正規化された取り込まれた空孔濃度の関数S0としての残存する空孔空間、及び空隙寸法、空隙密度の関係を示すグラフである(空隙密度、Nvを1×105cm−3、1×106cm−3、1×107cm−3及び1×108cm−3で示す;残存空孔濃度Cresを1×1012cm−3、3×1012cm−3及び1×1013cm−3で示す;空隙半径Rvを30nm及び15nmで示す)。
【図19】図19は、一定の冷却速度を用いると仮定して、標準的成長モデル下で、「有用で、機能的に完全な」シリコンが生成する操作条件の典型的な「ウインドウ」を示すグラフである(空隙密度、Nvを1×105cm−3、1×106cm−3、1×107cm−3及び1×108cm−3で示す;残存空孔濃度Cresを1×1012cm−3、3×1012cm−3及び1×1013cm−3で示す;空隙半径Rvを30nm及び15nmで示す)。
【図20】図20は、2段階の冷却速度を用いて、調整された成長モデル下で、「有用で、機能的に完全な」シリコンが生成する操作条件の典型的な「ウインドウ」を示すグラフである(空隙密度、Nvを1×104cm−3、1×105cm−3、1×106cm−3、1×107cm−3及び1×108cm−3で示す;残存空孔濃度Cresを3×1012cm−3及び1×1013cm−3で示す;空隙半径Rvを30nm及び15nmで示す)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンウエハの母集団のゲート酸化物完全性を評価する方法であって、(i)前記母集団の第1のサブセットの絶縁破壊特性を、第1のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第1の割合で増大させる工程、(ii)前記母集団の第2のサブセットの絶縁破壊特性を、第2のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第2の割合で増大させ、及び第2の割合は第1の割合とは異なっている工程、並びに(iii)前期工程(i)及び(ii)において測定した絶縁破壊特性を用いて、その母集団について規定される条件下でのゲート酸化物故障率を予測する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
各サブセットは、1又はそれ以上のウエハの母集団の全体又は部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各サブセットは、同じウエハの部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各サブセットは、異なるウエハの部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各サブセットの一部は、同じウエハの部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
絶縁破壊特性をウエハの母集団の4つのサブセットについて求める請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
各サブセットの増大の割合は、他のサブセットの増大の割合から少なくとも10のファクターで異なる請求項1又は6に記載の方法。
【請求項1】
単結晶シリコンウエハの母集団のゲート酸化物完全性を評価する方法であって、(i)前記母集団の第1のサブセットの絶縁破壊特性を、第1のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第1の割合で増大させる工程、(ii)前記母集団の第2のサブセットの絶縁破壊特性を、第2のサブセットに適用されるストレスの程度の関数として測定し、その場合のストレスの程度は初期値から最終値へ第2の割合で増大させ、及び第2の割合は第1の割合とは異なっている工程、並びに(iii)前期工程(i)及び(ii)において測定した絶縁破壊特性を用いて、その母集団について規定される条件下でのゲート酸化物故障率を予測する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
各サブセットは、1又はそれ以上のウエハの母集団の全体又は部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各サブセットは、同じウエハの部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各サブセットは、異なるウエハの部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
各サブセットの一部は、同じウエハの部分を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
絶縁破壊特性をウエハの母集団の4つのサブセットについて求める請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
各サブセットの増大の割合は、他のサブセットの増大の割合から少なくとも10のファクターで異なる請求項1又は6に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−270823(P2008−270823A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121349(P2008−121349)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【分割の表示】特願2002−566012(P2002−566012)の分割
【原出願日】平成14年1月2日(2002.1.2)
【出願人】(392026316)エムイーエムシー・エレクトロニック・マテリアルズ・インコーポレイテッド (74)
【氏名又は名称原語表記】MEMC ELECTRONIC MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【分割の表示】特願2002−566012(P2002−566012)の分割
【原出願日】平成14年1月2日(2002.1.2)
【出願人】(392026316)エムイーエムシー・エレクトロニック・マテリアルズ・インコーポレイテッド (74)
【氏名又は名称原語表記】MEMC ELECTRONIC MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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