説明

含フッ素化合物、含フッ素高分子化合物、ポジ型レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】本発明は、300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてパターンを形成する際に使用する、露光に対し透明性を損なわずかつ矩形性に優れるパターンを形成できるレジスト組成物を提供し、併せて、その構造を含フッ素高分子化合物に導入するために有用な含フッ素化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む重量平均分子量1,000〜1,000,000の含フッ素高分子化合物および、それを用いたレジスト組成物。


(式中、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。R4、R5およびR6は、相互に独立に、水素原子、フッ素原子もしくは一価の有機基であり、または相互に組み合わされて環を形成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素化合物およびそれから誘導される含フッ素高分子化合物並びにそれを用いたポジ型レジスト組成物並びにそれによるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターを始めとするデジタル機器の発展により、取り扱う演算データや二次元、三次元画像データの処理量が膨大になってきており、これらの情報を素早く処理するために大容量で高速なメモリと高性能なマイクロプロセッサが必要となっている。また、インターネットなどネットワークの発展に伴って、さらにブロードバンド化が加速し、デジタル機器に求められる処理能力は益々高まっていくものと予測されている。
【0003】
この要求を達成するために、半導体デバイスに代表される各種デバイス機器には、より一層の高密度、高集積化が求められている。なかでも、微細加工を可能とするフォトリソグラフィー技術に対する要求は年々厳しくなっており、1Gビット以上の集積度を持つDRAMの製造には、最小線幅0.13ミクロン以下の加工技術が必要となり、それに対応してArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが利用されている。さらに微細なパターンを加工する目的で、F2エキシマレーザー(157nm)を用いたフォトリソグラフィーの開発も進められている。
【0004】
これらの波長領域においては、従来レジスト組成物に用いられてきたノボラックやポリビニルフェノール系の樹脂は光の吸収が大きすぎて用いることができない。そこで、アクリル系樹脂(例えば、特許文献1)やシクロオレフィン系樹脂(例えば、特許文献2)が検討されてきている。
【0005】
フォトレジスト組成物を用いてパターンを加工する場合、環境面への配慮から、現像液には有機溶媒ではなくテトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH水溶液)が好んで用いられる。TMAH水溶液に溶解する、言い換えるとTMAH水溶液で現像できる官能基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、ヘキサフルオロイソプロパノール基が知られているが、ArF(193nm)およびF2(157nm)各レーザーの波長を用いる場合、芳香環は両波長域で強い吸収帯を有するため、カルボキシル基またはヘキサフルオロイソプロパノール基が主に検討されている。特に微細なパターンを加工する場合、ヘキサフルオロイソプロパノール基を有する樹脂では透明性、現像性および基板への密着性に優れたレジスト組成物となり、比較的良好なパターン形状を与えるが、その樹脂を合成する上で特殊な合成技術を要することで知られている。一方、カルボキシル基を前記官能基とする樹脂ではTMAH水溶液に膨潤することから意図したパターン形状を得ることが難しい(特許文献3)。
【0006】
α位にフッ素原子を持つカルボン酸化合物については、2−フルオロ−フェニル酢酸およびそのエステル(特許文献4)、エチル 2,2ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸など(非特許文献1)が知られている。
【特許文献1】特開平10−161313号公報
【特許文献2】特開2000−89463号公報
【特許文献3】特開2007−86514号公報
【特許文献4】特開平1−242551号公報
【非特許文献1】Tetrahedron Letters,Vol.25,No.22,pp 2301-2302,1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてパターンを形成する際に使用するレジスト組成物を構成する含フッ素高分子化合物に新規なカルボキシル基含有構造を付与することで、露光に対し透明性を損なわずかつ矩形性に優れるパターンを形成できるレジスト組成物を提供し、併せて、その構造を含フッ素高分子化合物に導入するために有用な含フッ素化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、レジスト組成物を構成する含フッ素高分子化合物の繰り返し単位に含まれる酸脱離部位としてカルボキシル基を有する含フッ素高分子化合物に関して、パターニングした場合のレジスト組成物塗布膜のTMAH水溶液に対する溶解性について鋭意検討したところ、カルボキシル基のα位にフッ素原子を導入することで塗布膜が膨潤することなく溶解し、意図したとおりのパターン形成が可能であることを見出した。その際、本発明のレジスト組成物を構成する含フッ素高分子化合物のカルボキシル基のα位にフッ素原子を導入するために有用な、重合性を有する新規な含フッ素化合物についても見出した。
【0009】
本発明のレジスト組成物の重要成分をなす含フッ素高分子化合物は、酸分解部位に硫黄、リンなどのヘテロ原子を含まないにもかかわらず、酸分解部位の酸性度を高め酸不安定性保護基の脱離を容易にすることができる。
【0010】
本発明は次の通りである。
[1]
一般式(1)で表される含フッ素化合物。
【0011】
【化10】

【0012】
(式中、R1は重合性二重結合含有基、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。)
[2]
3がフッ素原子である[1]に記載の含フッ素化合物。
[3]
一般式(1)に含まれる部分構造
1−W−
が、下記のいずれかの基を有する[1]または[2]に記載の含フッ素化合物。
【0013】
【化11】

【0014】
[4]
一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸において、Wが、単結合、−(CR78n−(nは1〜10の整数を表す。R7、R8 は一価の有機基を表し、組み合わされて環を形成してもよい。)、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−もしくは−O−C(=O)−、二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、スルフォンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独又はこれらの組み合わせからなる二価の連結基から選ばれたいずれかの基である[1]〜[3]に記載の含フッ素化合物。
[5]
一般式(1)で表される含フッ素化合物が、下記式で表されるいずれかの化合物である[1]に記載の含フッ素化合物。
【0015】
【化12】

【0016】
(式中、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R7は水素原子、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、R8は直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、R7およびR8は互いに環を形成していてもよい。)
[6]
7またはR8は、アルキル基またはフルオロアルキル基が、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の基、炭素数3〜10の環状の基であるか、または、R7とR8が互いに結合して環を形成した炭素数4〜8の脂環式炭化水素基である[5]に記載の含フッ素化合物。
[7]
7またはR8がそれぞれ独立に水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1-(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基から選ばれた一価の有機基、またはR7またはR8が互いに結合して形成したシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基であって、少なくともR7またはR8のうちいずれかは一価の有機基である[5]に記載の含フッ素化合物。
[8]
3がフッ素原子である[5]〜[7]に記載の含フッ素化合物。
[9]
一般式(1)で表される含フッ素化合物が、下記式のいずれかの化合物である[1]に記載の含フッ素化合物。
【0017】
【化13】

【0018】
(式中、R2は[1]における意味と同じ。)
[10]
2で表される酸不安定性保護基が下記の、(L−1)〜(L−5)で表される一価の有機基から選ばれた有機基である[1]〜[9]に記載の含フッ素化合物。
【0019】
11−O−C(=O)− (L−1)
11−O−CHR12− (L−2)
CR131415− (L−3)
SiR131415− (L−4)
11−C(=O)− (L−5)
(式中、R11はアルキル基、脂環式炭化水素基またはアリール基を表す。R12は、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。R13、R14およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基もしくはアリール基を表す。また、R13〜R15の内の2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。)
[11]
2がメトキシメチル基またはt−ブチル基である[1]〜[10]に記載の含フッ素化合物。
[12]
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む重量平均分子量1,000〜1,000,000の含フッ素高分子化合物。
【0020】
【化14】

【0021】
(式中、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。R4、R5およびR6は、相互に独立に、水素原子、フッ素原子もしくは一価の有機基であり、または相互に組み合わされて環を形成してもよい。)
[13]
一般式(2)に含まれる部分構造(9−1)
【0022】
【化15】

【0023】
が、下記のいずれかの基の重合性二重結合が開裂して形成された構造を有する[12]に記載の含フッ素高分子化合物。
【0024】
【化16】

【0025】
[14]
一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物において、Wが、単結合、−(CR78n−(nは1〜10の整数を表す。R7、R8 は一価の有機基を表し、組み合わされて環を形成してもよい。)、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−もしくは−O−C(=O)−、二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、スルフォンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独又はこれらの組み合わせからなる二価の連結基から選ばれたいずれかの基である[12]〜[13]に記載の含フッ素高分子化合物。
[15]
一般式(2)で表される含フッ素重合性化合物が、下記式で表されるいずれかの化合物の重合性二重結合が開裂して形成された構造を有する[12]に記載の含フッ素高分子化合物。
【0026】
【化17】

【0027】
(式中、R2、R3、R7およびR8は[12]における意味と同じ。)
[16]
7またはR8は、アルキル基またはフルオロアルキル基が、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の基、炭素数3〜10の環状の基であるか、または、R7とR8が互いに結合して環を形成したた炭素数4〜8の脂環式炭化水素基である[14]または[15]に記載の含フッ素高分子化合物。
[17]
7またはR8がそれぞれ独立に水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1-(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基から選ばれた一価の有機基、またはR7またはR8が互いに結合して形成したシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基であって、少なくともR7またはR8のうちいずれかは一価の有機基である[14]または[15]に記載の含フッ素高分子化合物。
[18]
3がフッ素原子である[15]または[17]に記載の含フッ素高分子化合物。
[19]
一般式(2)で表される含フッ素重合性化合物が、下記式で表されるいずれかの化合物の重合性二重結合が開裂して形成された構造を有する[12]に記載の含フッ素高分子化合物。
【0028】
【化18】

【0029】
(式中、R2は[12における意味と同じ。)
[20]
2で表される酸不安定性保護基が下記の(L−1)〜(L−5)で表される一価の有機基から選ばれた有機基である[12]〜[19]に記載の含フッ素高分子化合物。
【0030】
11−O−C(=O)− (L−1)
11−O−CHR12− (L−2)
CR131415− (L−3)
SiR131415− (L−4)
11−C(=O)− (L−5)
(式中、R11はアルキル基、脂環式炭化水素基またはアリール基を表す。R12は、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。R13、R14およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基もしくはアリール基を表す。また、R13〜R15の内の2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。)
[21]
[12]〜[20]に記載の含フッ素高分子化合物が、さらに側鎖にラクトン環を有する繰り返し単位を含む含フッ素高分子化合物。
[22]
含フッ素高分子化合物が、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、アリルエステル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類からなる他の共重合可能な単量体に基づく繰り返し単位(b)をさらに含む[12]〜[21]に記載の含フッ素高分子化合物。
[23]
一般式(2)で表される繰り返し単位(a)と他の共重合可能な単量体に基づく繰り返し単位(b)が、含フッ素高分子化合物に含まれる繰り返し単位の全体に対しそれぞれ、0.1〜99.9モル%と99.9〜0.1モル%である[12]〜[22]に記載の含フッ素高分子化合物。
[24]
[12]〜[23]に記載の含フッ素高分子化合物、酸発生剤および溶剤を含有してなるレジスト組成物。
[25]
[24]に記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程と、次に基板を熱処理する工程と、300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてフォトマスクを通して露光する工程と、露光されたレジストの塗布膜に対して熱処理を施す工程と、現像処理を施す工程を少なくとも含むことを特徴とするパターン形成方法。
[26]
高エネルギー線がF2エキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー又は軟X線であることを特徴とする[25]記載のパターン形成方法。
[27]
[25]に記載のパターン形成方法により形成したパターンを有する電子デバイス。
【0031】
本願明細書および特許請求の範囲において、「アルキル基」は直鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含み、環状のアルキル基は、「脂環式基」または「脂環式炭化水素基」に含まれる。
【0032】
「低級アルキル基」などの「低級」は炭素数1〜4をいうものとする。ただし、環状のアルキル基については、「低級」は炭素数3〜10の環状構造を有するものをいい、置換基として低級アルキル基を有することがある。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1-(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基を挙げることができる。
【0033】
異性体を有する化合物を例示する際には、別途明示しない場合は代表的な名称、構造式でそれぞれすべての異性体を含むものとする。
【0034】
ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素をいう。
【発明の効果】
【0035】
本発明のレジスト組成物は、そのレジスト組成物から形成された塗布膜が300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を照射されることにより露光された部分がTMAH水溶液に溶解可能となることで優れたパターン形状の矩形性を示すという顕著な効果を奏する。また、一般式(1)で表される含フッ素化合物のうちアセタール基などの化学増幅機能を持つ酸不安定性保護基を有する構造を導入した場合には、200nm以下の波長の高エネルギー線または電子線による露光においても使用できる透明性と優れたパターン形状の矩形性を示す。さらに、本発明の含フッ素化合物は、本発明のレジスト組成物を構成する含フッ素高分子化合物に容易かつ効率的に酸不安定性保護基を導入することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を構成する各要素について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることはいうまでもない。
【0037】
本発明の一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物は、一般式(1)で表される含フッ素化合物の有する重合性二重結合が開裂して単独でまたは他の重合性二重結合を有する単量体と共重合して高分子の骨格を形成しているものである。
【0038】
本発明の一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物は、重合性二重結合に基づいて形成された鎖状骨格と、α位の炭素原子に一つのフッ素原子とフッ素原子または含フッ素アルキル基とが結合し、酸不安定性保護基R2がエステル結合したカルボキシル基が、連結基Wを介して結合することを特徴とする。
<含フッ素高分子化合物>
一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物は酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が増加する樹脂であり、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性となる基(酸分解性基)を有する。酸分解性基のうち、離脱する部分を酸不安定性保護基という。
【0039】
含フッ素高分子化合物のR3は、フッ素原子または含フッ素アルキル基である。このような含フッ素アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜12のものであり、炭素数1〜3のものが好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などを挙げることができる。R3は、フッ素原子またはトリフルオロメチル基
がさらに好ましい。
【0040】
レジスト組成物の成分を構成する含フッ素高分子化合物に酸不安定性保護基を導入する目的は、その酸不安定性基によるポジ型感光性及び波長300nm以下の遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のレジストのアルカリ水溶液への溶解性を発現させることである。酸不安定性保護基の種類や安定性基(後述するR2で表される末端が酸不安定性保護基でないものをいう。)に対する比率を変えることによって高分子末端の極性を変化、調整することが可能であり、これによって溶剤への溶解性、基板への塗布性、表面張力、酸発生剤の分散性、酸拡散速度などを適性化することができる。また、含フッ素高分子化合物にフッ素原子を多く持つものは塗布膜の透明性の向上に役立ち、環状構造を含むものはエッチング耐性や高ガラス転移点などの特徴をさらに付与させることができるためで、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0041】
2で表される酸不安定性保護基としては、
11−O−C(=O)− (L-1)
11−O−CHR12− (L-2)
CR131415− (L-3)
SiR131415− (L-4)
11−C(=O)− (L-5)
を挙げることができる。R11、R12、R13、R14、R15は以下に説明する一価の有機基を表す。これらのうち、(L-1)、(L-2)、(L-3)は化学増幅型として機能するので、高エネルギー線で露光するパターン形成方法に適用するレジスト組成物として使用するのに特に好ましい。
【0042】
11はアルキル基、脂環式炭化水素基またはアリール基(芳香族炭化水素基)を示す。R12は、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアリール基を示す。R13、R14およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基もしくはアリール基を示す。また、R13〜R15の内の2つの基が結合して環を形成してもよい。
【0043】
ここで、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基の様な炭素数1〜4個のものが好ましく、脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜30個のものが挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、トリシクロデカニル基、ジシクロペンテニル基、ノボルナンエポキシ基、メンチル基、イソメンチル基、ネオメンチル基、テトラシクロドデカニル基、ステロイド残基の様な炭素数3〜30個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが好ましく、アリール基としてはフェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基の様な炭素数6〜14個のものが好ましく、これらは置換基を有していてもよい。アラルキル基としては、炭素数7〜20個のものが挙げられ、置換基を有していてもよい。ベンジル基、フェネチル基、クミル基等が挙げられる。
【0044】
また、前記有機基がさらに有する置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、前記のアルキル基もしくは脂環式炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジル基、フエネチル基、クミル基等のアラルキル基、アラルキルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、前記のアルケニル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、前記のアリール基、フエノキシ基等のアリールオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基を挙げることができる。
【0045】
また、下記式(3−1)、式(3−2)で示されるラクトン基を挙げられる。
【0046】
【化19】

【0047】
【化20】

【0048】
前記式中、Ra は炭素数1〜4個のアルキル基またはパーフルオロアルキル基を表す。Rbは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基もしくはパーフルオロアルキル基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アルキロキシカルボニル基、アルコキシ基などを表す。nは、1〜4の整数を表す。
【0049】
次に、前記酸不安定性保護基を具体的に示す。
前記のR11−O−C(=O)−で表されるアルコキシカルボニル基としては、tert-ブトキシカルボニル基、tert-アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンタンオキシカルボニル基等を例示できる。
【0050】
前記のR11−O−CHR12−で表されるアセタール基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−ベンジルオキシエチル基、1−フェネチルオキシエチル基、1−エトキシプロピル基、1−ベンジルオキシプロピル基、1−フェネチルオキシプロピル基、1−エトキシブチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基、1−エトキシイソブチル基、1−メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などが挙げられる。また水酸基に対してビニルエーテル類を付加させて得られるアセタール基を挙げることができる。
【0051】
前記のCR131415−で表される3級炭化水素基としては、tert-ブチル基、tert-アミル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチル−1−フェニルメチル基、1−メチル−1−エチル−1−フェニルメチル基、1,1−ジエチル−1−フェニルメチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−イソボルニル基、1−メチルアダマンチル基、1−エチルアダマンチル基、1−イソプロピルアダマンチル基、1−イソプロピルノルボルニル基、1−イソプロピル−(4'−メチルシクロヘキシル)基などを例示できる。
【0052】
次に、脂環式炭化水素基または脂環式炭化水素基を含む酸不安定性保護基の具体例を示す。
【0053】
【化21】

【0054】
【化22】

【0055】
(4−1)および(4−2)の式中、メチル基(CH3)はそれぞれ独立にエチル基であ
ってもよい。また、環炭素の1個または2個以上が置換基を有することができるのは前記のとおりである。
【0056】
前記のSiR131415−で表されるシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、メチルジ−tert-ブチルシリル基、トリ−tert-ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0057】
前記のR11−C(=O)−で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。さらに、これらの酸不安定性保護基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0058】
また、ラクトン基を置換基含む酸不安定性保護基を次の式(5)、式(6)式(7)に例示する。
【0059】
【化23】

【0060】
【化24】

【0061】
【化25】

【0062】
式(5)、式(6)、式(7)の式中、メチル基(CH3)はそれぞれ独立にエチル基であってもよい。
【0063】
露光用の光源としてArFエキシマレーザーを使用する場合には、酸不安定性保護基としては、tert-ブチル基、tert-アミル基等の3級アルキル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基等のアルコキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基など、および、前記のアダマンチル基、イソボルニル基などの脂環式炭化水素基または脂環式炭化水素基を含む三級炭素を有する酸不安定性保護基、ラクトン等を好ましいものとして挙げることができる。
【0064】
一般式(1)または一般式(2)における連結基Wは、単結合、−(CR78)n−(nは1〜10の整数を表す。)、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−もしくは−O−C(=O)−、二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、スルフォンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいはこれらの組み合わせからなる二価の連結基である。
【0065】
二価の脂環式基としては、ノルボルナン、アダマンタンなどの脂環式化合物から水素原子が2個除かれて得られる基、二価の芳香族基としては、ベンゼンなどの芳香族化合物から水素原子が2個除かれて得られる基が例示できる。
【0066】
これらの中で、組み合わされて得られる連結基Wとしては、
−(CR78m−C(=O)−O−(CR78n
−(CR78m−O−(CR78n
などが挙げられる。ここで、m、nは0〜10の整数を表し、mは0が好ましく、nは1が好ましい。R7、R8がそれぞれ複数含まれる場合、それらは互いに同一でも異なってもよい。
【0067】
この中で、各置換メチレン基のR7、R8 で表される一価の有機基は、特に限定されな
いが、水素原子、水酸基、またはアルキル基、脂環式炭化水素基、置換アルキル基、アルコキシ基、アリール基および縮合多環式芳香族基から選ばれた炭素数1〜30の一価の有機基であって、これらの一価の有機基はフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合を有することができる。両者は同一でも異なっていてもよい。また、R7、R8 は、組み合わされて環を形成してもよく、この環は脂環式炭化水素基であることが好ましい。
【0068】
アルキル基としては、炭素数1〜30のものであり、炭素数1〜12のものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert-ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等を挙げることができ、低級アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが特に好ましいものとして挙げることができる。
【0069】
置換アルキル基としては、アルキル基が有する水素原子の1個または2個以上を炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等により置換されたものが挙げられ、フッ素原子で置換されたフルオロアルキル基が好ましく、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などの低級フルオロアルキル基を挙げることができる。
【0070】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。
【0071】
アリール基としては、炭素数1〜30のものである。単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜6のものがさらに好ましい。例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、メシチル基、o−クメニル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、2,3−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,6−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、p−クロロフェニルフェニル基、p−ブロモフェニルフェニル基、p−ヨードフェニルフェニル基等を挙げることができる。
【0072】
炭素数1〜30の縮合多環式芳香族基としては、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オヴァレン等から一個の水素原子が除いて得られる一価の有機基を挙げることができ、これらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基または含フッ素アルキル基で置換したものを好ましいものとして挙げることができる。
【0073】
環原子数3〜25の単環式または多環式のヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ピラニル基、ピロリル基、チアントレニル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド基等およびこれらの環を構成する原子の1個または2個以上の水素原子がアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基で置換したヘテロ環基を挙げることができる。これらのうち、単環式または多環式のエーテル環、ラクトン環を有するものが好ましく、次に例示する。
【0074】
【化26】

【0075】
前記式中、Ra 、Rbは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基を表す。n
は、2〜4の整数を表す。
【0076】
連結基Wを構成するR7、R8における脂環式炭化水素基あるいはそれらが結合する炭素原子を含めて形成する脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数3以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は3〜30個が好ましく、特に炭素数3〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0077】
単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜7のものがさらに好ましい。例えば、好ましいものとしてシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、4−tert-ブチルシクロヘキシル基を挙げ
ることができる。また、多環式基としては、環炭素数7〜15のアダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基等を挙げることができる。脂環式炭化水素基はスピロ環であってもよく、炭素数3〜6のスピロ環が好ましい。好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基などである。これらの有機基の環炭素または連結基の水素原子の1個または2個以上がそれぞれ独立に前記の炭素数1〜25のアルキル基もしくは置換アルキル基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基またはそれらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基で置換したものを挙げることができる。
【0078】
ここで、低級アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基よりなる群から選択されたアルキル基である。置換アルキル基の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0079】
連結基Wは、具体的には、
−(単結合)
−O−
−C(=O)−O−
−CH2−O−
−O−CH2
−CH2−C(=O)−O−
−C(=O)−O−CH2
−CH2−O−CH2
−CH2−C(=O)−O−CH2
など、および、−C(=O)−O−CR78−または−C64−O−CR78−である。ここで、R7およびR8がそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、置換アルキル基、脂環式炭化水素基であるものを好ましい。これらは、一個以上の水素原子がフッ素原子で置換したものであってもよい。これらのうち、−C(=O)−O−CR78−のうちR7およびR8がそれぞれ独立に水素原子または低級アルキル基をさらに好ましいものとして挙げることができる。
【0080】
含フッ素高分子化合物の重合性二重結合含有基R1に基づく構造は、一般式(9)
【0081】
【化27】

【0082】
で表される。R4、R6は、互いに独立に、水素原子、アルキル基又は脂環式炭化水素基を表す。R5は、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
【0083】
アルキル基としては、置換もしくは非置換のいずれであってもよく、1〜4個の炭素原子を有する。そのアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
また、これらのアルキル基のさらなる置換基としては、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等を挙げることができる。
【0084】
一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物を構成する二重結合含有基R1としては、次の有機基を挙げることができる。
【0085】
炭素数2〜10のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、1−メチル−1−ペンテニル基、2−メチル−1−ペンテニル基、3−メチル−1ペンテニル基、4−メチル−1−ペンテニル基など、
炭素数2〜10の含フッ素アルケニル基、例えば、パーフルオロアリル基、3−トリフルオロメチル−2−プロペニル基、1−パーフルオロブテニル基、1−パーフルオロペンテニル基、1−トリフルオロメチル−1−ブテニル基、2−トリフルオロメチル−1−ブテニル基、3−トリフルオロメチル−1−ブテニル基、4−トリフルオロメチル−1−ブテニル基など、
置換または非置換フェニル基を置換基として有する炭素数2〜10のアルケニル基、例えば、1−フェニル−1−プロペニル基、2−フェニル−1−プロペニル基、3−フェニル−1−プロペニル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基、4−フェニル−ブテニル基など、 炭素数2〜10のアルケニル基に置換基として脂環式炭化水素基、シクロエーテル基、ラクトン基、または、ノルボルネン骨格、ノルボルナン骨格、イソボルニル骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロドデカン骨格、アダマンタン骨格などの脂環式炭化水素基を有するアルケニル基など。
【0086】
4、R5、R6における脂環式炭化水素基あるいはそれらが結合する炭素原子を含めて形成する脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0087】
脂環式炭化水素基としては前記R7またはR8と同じものが挙げられる。
【0088】
含フッ素高分子化合物の重合性二重結合含有基R1に基づく構造は、また、R4、R5またはR6が相互に組み合わされて下記の環構造をとることができる。
【0089】
【化28】

【0090】
式(10)中、R5は、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Aは、結合した2つの炭素原子C−Cを含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。脂環式構造としては、炭素数3〜10の単環式または多環式構造であり、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナンまたはこれらの構造の水素原子の少なくとも1個が低級アルキル基、低級フルオロアルキル基で置換された構造が挙げられる。
【0091】
さらに、含フッ素重合体の重合性二重結合含有基R1に基づく構造は、下記一般式(10−1)もしくは一般式(10−2)またはビニルフェニル基に由来する基であることができる。
【0092】
【化29】

【0093】
式(10−1)及び(10−2)中、Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基である。nは1〜4の整数を表す。
【0094】
1で表される重合性二重結合基としては、
(p1)CH2=CH−、
(p2)CH2=C(CH3)−、
(p3)CH2=C(CF3)−、
(p4)CH2=C(CH2OH)−、
(p5)下式(10−3)ないし式(10−6)(二重結合開裂後の繰り返し単位で表す。)
【0095】
【化30】

【0096】
で表される構造またはビニルフェニル基に由来する基が好ましく、(p1)、(p2)または(p3)がより好ましく、(p2)がさらに好ましい。
【0097】
一般式(2)で表される繰り返し単位に含まれる下記の部分構造(9−1)(式中の記号の意味は一般式(2)における意味と同じ。)が、
【0098】
【化31】

【0099】
次に示すビニルオキシ基、アリルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α,α,α−トリフルオロアクリロイルオキシ基、ノルボルノイルオキシ基またはビニルフェノキシ基のいずれかの基の重合性二重結合が開裂した構造を有することが好ましい。
【0100】
【化32】

【0101】
また、一般式(1)であらわされる含フッ素化合物として、最も好ましいものの例を次に示すが、これは本発明を制限するためのものではない。
【0102】
【化33】

【0103】
(式中、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R7は水素原子、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、R8は直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、R7およびR8は互いに環を形成していてもよい。)
ここで、R3は、フッ素原子であることが特に好ましい。また、R7及びR8のアルキル基又は含フッ素アルキル基は低級アルキル基または含フッ素低級アルキル基であることが好ましい。アルキル基が環状のアルキル基であることは好ましい。また、R7が水素原子あることは好ましい。特に好ましいものとしては、R3がフッ素原子、R7が水素原子もしくは低級アルキル基、R8が低級アルキル基、またはR7もしくはR8が互いに結合して形成した脂環式炭化水素基であるものを挙げることができる。
【0104】
一般式(2)で表される繰り返し単位(a)を含む含フッ素高分子化合物における、繰り返し単位(a)と<他の共重合単量体>で説明する他の共重合可能な単量体に基づく繰り返し単位(b)とのモル比(共重合比)はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0105】
本発明にかかる含フッ素高分子化合物は、(a)単独の重合体でもよく、一般式(2)で表される繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)との比は、(a):(b)で表して、それぞれ0.1〜99.9%:99.9〜0.1%とし、または1〜99%:99〜1%である。また、10〜90%:90〜10%とすることができ、30〜70%:70〜30%とすることが好ましい。繰り返し単位(a)が0.1%未満においては、現像時の溶解性に劣り、99.9%を超えると溶解性の調節が困難になりあまり好ましくない。
【0106】
他の共重合単量体に基づく繰り返し単位としては、<他の共重合単量体>に説明するとおりであるが、ラクトン基を有するアクリル酸またはメタアクリル酸エステルに基づく繰り返し単位と極性基を有するアクリル酸またはメタアクリル酸エステルに基づく繰り返し単位であるのは好ましい。その場合、ラクトン基含有単量体に基づく繰り返し単位を10〜60%含むものが好ましく、20〜50%含有するものがさらに好ましい。また、酸性基含有単量体に基づく繰り返し単位を1〜50%含むものも好ましく、その場合、5〜30%含有するものがより好ましい。さらに、酸不安定性保護基を有しない繰り返し単位として、極性基およびラクトン基の何れをも有しないアクリル酸エステルまたはメタアクリル酸エステルに基づく繰り返し単位を含むことができる。その場合、このような単量体に基づく繰り返し単位を1〜70%含むものがより好ましく、5〜60%含有するものがより好ましい。
【0107】
本発明の含フッ素高分子化合物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した重量平均分子量で1,000〜1,000,000であり、2,000〜500,000が好ましい。重量平均分子量1,000未満では、塗布膜の強度が不十分であり、1,000,000を超えると溶媒への溶解性が低下し、平滑な塗膜を得るのが困難になり好ましくない。分散度(Mw/Mn)は、1.01〜5.00が好ましく、1.01〜4.00がより好ましく、1.01〜3.00が特に好ましく、1.10〜2.50が最も好ましい。
【0108】
本発明にかかる含フッ素高分子化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合、ビニルアディションなどを使用することも可能である。
【0109】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式又は連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0110】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、tert-ブチルパーオキシピバレート、ジ−tert-ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0111】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系などの溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重合反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200℃が好ましく、特に30〜140℃が好ましい。
【0112】
得られる含フッ素高分子化合物の溶液又は分散液から有機溶媒又は水を除去する方法として、再沈殿、ろ過、減圧下での加熱留出などの方法が可能である。
<含フッ素単量体>
一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物を構成する繰り返し単位は、一般式(1)で表される含フッ素単量体の有する重合性二重結合が開裂して二価の基になることにより形成されるものである。したがって、含フッ素単量体について、含フッ素高分子化合物を構成する、鎖状の骨格部分が由来する重合性二重結合およびそれを含有する基、各有機基、連結基、酸不安定性保護基などは、いずれも<含フッ素高分子化合物>においてそれらについてした説明がそのまま該当する。
本発明の一般式(1)で表される含フッ素化合物の製造方法は、特に限定されず、例えば次の反応式[1]から反応式[4]に示す方法を用いて製造することができる。
【0113】
【化34】

【0114】
式中、R1、R2およびR3は、一般式(1)におけるR1、R2およびR3と同義である。Rd、ReおよびRfはそれぞれ独立に一価の有機基を表す。ただし、Rdは水素原子であってもよい。Rd、Reは、R7またはR8に対応し、具体的な説明は前記の通りであるが、一価の有機基としては低級アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1-(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基、またはR7またはR8が互いに結合して形成したシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基がさらに好ましい。
【0115】
XおよびX´はそれぞれ独立にハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホネート基、炭素数1〜4のアルキルスルホネート基、アリールスルホネート基を表す。W´は二価の連結基を表し、W´−O−CRdeは一般式(1)におけるWの一態様に相当する。
【0116】
すなわち、まず、α位に活性ハロゲン原子を有する含ハロゲンカルボン酸エステル(i)とカルボニル化合物(ii)を亜鉛の存在下無水の状態で反応させる(Reformatsky反応)ことでヒドロキシカルボン酸エステル(iii)を得る(反応式[1])。次いで得られたヒドロキシカルボン酸エステル(iii)と重合性二重結合を有するハロゲン化合物(iv)を塩基の存在下溶媒中で反応させて不飽和カルボン酸エステル(v)とする(反応式[2])。次に得られたエステル(v)を加水分解させることでα位にフッ素原子を有する不飽和カルボン酸(vi)を得る(反応式[3])。最後に得られた不飽和カルボン酸(vi)とハロゲン化合物(vii)を塩基の存在下溶媒中で反応させることで一般式(viii)で表される含フッ素化合物を得ることができる(反応式[4])。一般式(viii)において、WをW´−O−CRdeと表すと、一般式(viii)は一般式(1)の1つの態様を示す。
[1]、[2]または[4]の反応の方法において使用する溶媒は、反応応条件で反応に関与しなければよく、脂肪族炭化水素系溶媒類、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等、芳香族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等、ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、酸アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、低級エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタン、1、4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、置換テトラヒドロフラン等などが使用され、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランが好ましい。これらの溶媒を組み合わせて使用することもできる。溶媒の量は、出発原料の1重量部に対して1〜100重量部程度、好ましくは1〜10重量部である。[1]の反応に使用する溶媒はでき得る限り水分を除去した方が好ましい。さらに好ましくは溶媒中の水分含量は50ppm以下である。
【0117】
[2]または[4]の反応に使用する溶媒もでき得る限り水分を除去した方が好ましいが、必ずしも完全に除く必要はない。工業的に入手可能な溶媒に通常混入している程度の水分は、本製造方法の実施において特に問題にならず、従って水分を除去することなくそのまま使用できる。
【0118】
[1]の反応の方法において使用される亜鉛は、公知の方法で活性化させて使用することが好ましい。例えば、塩化亜鉛等の亜鉛塩をカリウム、マグネシウム、リチウム等で還元して金属亜鉛を得る方法、金属亜鉛を塩酸により処理する活性化方法、金属亜鉛を酢酸中、銅塩または銀塩で処理し、銅または銀との合金とすることで、亜鉛を活性化する方法、超音波により亜鉛を活性化する方法、エーテル中、亜鉛をクロロトリメチルシランと攪拌することで亜鉛を活性化する方法、非プロトン性有機溶媒中、亜鉛をクロロトリメチルシランおよび銅化合物と接触させて該亜鉛を活性化させる方法などがある。
【0119】
亜鉛は、粉末、粒状、塊状、多孔質状、切削屑状、線状など何れの形状でもかまわない。反応[1]の反応温度は−78〜120℃程度であり、反応時間は反応試剤により異なるが、通常10分から20時間程度で行うのが好都合である。反応圧力は常圧付近でよく、その他の反応条件は、当業者に公知の金属亜鉛を用いる類似の反応の条件が適用できる。
【0120】
[2]および[4]の反応における塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリミジン、ピリダジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン等の有機塩基が挙げられる。その中でも、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ピリジンおよび2,6−ルチジンが好ましい。
【0121】
[2]または[4]の反応における塩基の使用量としては、基質1モルに対して1モル以上を使用すればよく、通常は1〜10モルが好ましく、特に1〜5モルがより好ましい。
【0122】
[2]または[4]の反応の方法において反応温度は−78〜120℃程度であり、反応時間は反応試剤により異なるが、通常10分から20時間程度で行うのが好都合である。反応圧力は常圧付近でよく、その他の反応条件は、当業者に公知の条件が適用できる。
【0123】
[3]の反応は、前記塩基性物質や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムなどの無機塩基性物質の存在下、水と加水分解することからなっている。
[1]ないし[4]の各反応段階の間では洗浄、溶媒等分離、乾燥などの精製操作を行うことができる。なお、酸不安定性保護基を有した含ハロゲンカルボン酸エステル(すなわち、一般式(i)において、Rf=R2である場合)が入手可能である場合には、反応式[1]および反応式[2]を実施することで、目的とする一般式(viii)で表される含フッ素化合物を得ることができる。
【0124】
<その他の共重合単量体>
本発明の含フッ素高分子化合物は、一般式(1)で表される含フッ素化合物を単独重合、あるいは以下に述べる他の重合性単量体と共重合せしめたものである。この含フッ素高分子化合物は一般式(1)で表される含フッ素化合物のR1で表される二重結合含有基が有する炭素−炭素間の二重結合に基づいて含フッ素高分子化合物の骨格を形成するが、その他の構造は重合反応において変化しない。
【0125】
含フッ素高分子化合物は、一般式(2)で表される繰り返し単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し単位を含有することができる。
【0126】
このような繰り返し単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これにより、樹脂に要求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移点)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
【0127】
その他の共重合単量体としては、次のものが挙げられる。
[1]一般式(1)で表される含フッ素化合物において、R2が酸不安定性保護基を含まない一価の有機基である重合性化合物。
[2]一般式(1)で表される含フッ素化合物において、カルボン酸のα位の炭素に少なくとも1個の水素を有する重合性化合物。
[3]R1−W―Y(R、Wは一般式(1)と同じ意味であり、Yは酸不安定性保護基を含まない一価の有機基を表す。)で表される重合性化合物。
【0128】
[1]ないし[3]における酸不安定性保護基は前記<含フッ素高分子化合物>における酸不安定性保護基と同じ意味である。また、における一価の有機基R1、R3、R4、R5、R6、および二価の連結基Wについても前記説明がそのまま該当する。
【0129】
以下に、[3]の化合物について説明する。
本発明の含フッ素化合物と共重合可能な単量体をとしては、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、アリルエステル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類を少なくとも挙げることができ、これらから選ばれた一種類以上の単量体と共重合することができる。
【0130】
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしてはエステル部位について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート又はメタクリレート、エチルアクリレート又はメタクリレート、n−プロピルアクリレート又はメタクリレート、イソプロピルアクリレート又はメタクリレート、n−ブチルアクリレート又はメタクリレート、イソブチルアクリレート又はメタクリレート、tert-ブチルアクリレート又はメタクリレート、アミルアクリレート又はメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート又はメタクリレート、n−オクチルアクリレート又はメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ベンジルメタクリレートアクリレート又はメタクリレート、クロルベンジルメタクリレートアクリレート又はメタクリレート、オクチルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート又はメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート又はメタクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート又はメタクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート又はメタクリレート、フルフリルアクリレート又はメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート又はメタクリレート、ラウリルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート又はメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、アダマンチルアクリレート又はメタクリレート、アルキルアダマンチルアクリレート又はメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート又はメタクリレート、ノルボルネン環などの環構造を有したアクリレートまたはメタクリレート、α−部位にトリフルオロメチル基またはシアノ基を有する前記アクリレート類などを挙げることができる。
【0131】
本発明で使用できる含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルは、エステル部位にフッ素を含有したアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルであって、α−位にシアノ基が導入されていてもよい。 そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、前述のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとして説明したエステル部位の一部がフッ素化されたものは特に制限なく使用できる。すなわち、上述のエステル部位に含フッ素アルキル基や、その環炭素がフッ素原子または含フッ素アルキル基、例えば、トリフルオロメチル基で置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環、含フッ素ノルボルネル基、含フッ素アダマンチル基等を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のtert-ブチルエステル、ヘキサフルオロイソプロパノール基が置換したシクロヘキシル基やノルボルニル基であるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなども使用可能である。
【0132】
さらに、ラクトン基を有するアクリル酸、メタアクリル酸、α、α、α−トリフルオロアクリル酸のエステルが好ましい。ラクトンとしては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。ラクトン基を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0133】
また、前記ラクトン基としては、下記式(12−1)、式(12−2)で示される構造のものが挙げられる。
【0134】
【化35】

【0135】
式中、Ra は炭素数1〜4個のアルキル基またはパーフルオロアルキル基を表す。Rbは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基もしくはパーフルオロアルキル基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アルキロキシカルボニル基、アルコキシ基などを表す。nは、1〜4の整数を表す。
【0136】
【化36】

【0137】
式中、Rbは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基もしくはパーフルオロアルキル基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アルキロキシカルボニル基、アルコキシ基などを表す。nは、1〜4の整数を表す。
【0138】
ラクトン基を次の式(13−1)ないし(13−6)に具体的に例示する。
【0139】
【化37】

【0140】
【化38】

【0141】
【化39】

【0142】
【化40】

【0143】
【化41】

【0144】
【化42】

【0145】
前記式(13−1)ないし式(13−6)の式中、メチル基(CH3)はそれぞれ独立にエチル基であってもよい。
【0146】
ビニルエーテル類またはアリルエーテル類としては、置換基として炭素数1〜30のアルキル基、フルオロアルキル基または脂環式炭化水素基を有するものが挙げられ、これらは、さらに置換基としてハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、アリール基、アルキル基、脂環式炭化水素基を有するものが好ましい。
【0147】
具体的に例示すると、アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどを挙げることができる。シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルおよびノルボルネル基、アダマンチルビニルエーテル、ブチルラクトンビニルエーテルなどを挙げることができる。また、パーフルオロアルキルビニルエーテルとしては、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロイソプロピルビニルエーテル、パーフルオロブチルビニルエーテル、パーフルオロイソブチルビニルエーテル、パーフルオロ−sec−ブチルビニルエーテル、パーフルオロ−tert-ブチルビニルエーテル、パーフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロヘキシルビニルエーテル、パーフルオロオクチルビニルエーテル、パーフルオロドデシルビニルエーテルなどを挙げることができる。また、ヒドロキシル基を有するビニルエーテル類として、ヒドロキシメチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロビルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールビニルエーテルなどを挙げることができる。さらに、、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0148】
アリルエーテル類としてはメチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ベンジルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテルなどが挙げられる。ヒドロキシル基を有するアリルエーテル類としては、例えばエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのアルキレングリコールモノアリルエーテル類、またはグリセリンモノアリルエーテルなどの多価アルコールのアリルエーテル類が挙げられる。
【0149】
また、エポキシ基を有するビニルエーテル、アリルエーテルが挙げられる。また、β−ケトエステル基を含有するビニルエーテルまたはアリルエーテルとしては、アセト酢酸アリルなどが挙げられる。さらに、トリメトキシシリルビニルエーテルなどの加水分解性基を有する珪素を含んだビニルエーテルも挙げることができる。
【0150】
アリルエステルとしては、例えば酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等を挙げることができる。
【0151】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等などを挙げることができる。
【0152】
また、イタコン酸ジアルキル類;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等、フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類;ジブチルフマレート、ビニル酢酸のアルキルエステル;ビニル酢酸エチル等を挙げることができる。
【0153】
オレフィンまたは含フッ素オレフィンとしては、エチレン、プロピレンシクロヘキセンなど、フルオロオレフィンとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、オクタフルオロシクロペンテンなどが例示できる。
【0154】
さらに、本発明に使用できるスチレン系化合物としては、芳香族環にビニル基が結合した化合物であり、具体的には例えば、スチレン、m-又はp-メトキシスチレン、m-又はp-エトキシスチレン、m-又はp-プロポキシスチレン、m-又はp-イソプロポキシスチレン、m-又はp-ブトキシスチレン、m-又はp-tert-ブトキシスチレン、m-又はp-(1-エトキシエトキシ)スチレン、m-又はp-(1-エトキシプロポキシ)スチレン、m-又はp-(1-イソブトキシエトキシ)スチレン、m-又はp-(2-テトラヒドロピラニルオキシ)スチレン、m-又はp-tert-ブトキシカルボニルオキシスチレン、m-又はp-アセトキシスチレン、m-又はp-プロピオニルオキシスチレン、m-又はp-ピバロイルオキシスチレン、m-又はp-ベンゾイルオキシスチレン、m-又はp-メシルオキシスチレン、m-又はp-フェニルスルホニルオキシスチレン、m-又はp-トシルオキシスチレンなど、およびこれらのスチレン系化合物のα位にハロゲン原子、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合したものが挙げられる。
【0155】
スチレン系化合物の構造を本発明の含フッ素高分子化合物に導入する場合、例えば、p-ブトキシカルボニルオキシスチレンを共重合させた後、ブトキシカルボニル部位をヒドロキシ基に変換することによって行うことができる。
【0156】
ノルボルネン化合物または含フッ素ノルボルネン化合物としては、単環または多環の構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、アクリル酸、α−フルオロアクリル酸、メタクリル酸、ビニルエステル、含フッ素ビニルエステル、本明細書で記載したアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエンまたはシクロヘキサジエンとをDiels Alder付加反応させて得られるノルボルネン化合物が好ましく採用される。
【0157】
また、アクリルアミド類またはメタクリロアミド類としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミドもしくはメタクリロアミド(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシエチル基等がある。)、N,N−ジアルキルアクリルアミドもしくはアクリロアミド(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等がある)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミドもしくはメタクリロアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミドなどが挙げられる。
【0158】
さらに、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、アルコキシシリル基含有のビニルシラン、アリルオキシエタノールなども他の共重合単量体として挙げられる。
【0159】
本発明の一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物においては、これらのうち、少なくとも一種類をアクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物とすることが好ましい。
前記共重合可能な単量体であれば、特に限定されないが、300nm以下の高エネルギー線で使用するためには、多重結合や芳香族環を有しない単量体が好ましい。
【0160】
<溶媒>
本発明による含フッ素高分子化合物を薄膜に成膜する方法としては、例えば有機溶媒に溶解させて塗布、乾燥によって成膜する方法を用いることが可能である。使用する有機溶媒としては、含フッ素高分子化合物が可溶であれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2‐ヘプタノンなどのケトン類やエチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールなどのフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペン系の石油ナフサ溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0161】
<酸発生剤>
本発明のレジスト組成物に用いられる酸発生剤については特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ビススルホニルジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、含フッ素高分子化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部の範囲で選ばれる。この量が0.5重量部未満では像形成性が不十分であるし、20重量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられる。
【0162】
<界面活性剤>
本発明のレジスト組成物は、界面活性剤、好ましくはフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
本発明のレジスト組成物が前記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、また、パターンの線幅が一層細い時に特に有効であり、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
【0163】
<パターン形成方法>
本発明のレジスト組成物の使用方法は、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法を用いることができる。すなわち、まずシリコンウエーハのような基板に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどを用いて塗布し、乾燥することによって感光層を形成させ、これに露光装置などにより高エネルギー線を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。さらに、所望によってレジスト組成物に混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【0164】
本発明で用いる高エネルギー線は特に限定されないが、特に微細加工を行なおうとする場合にはF2エキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー又は軟X線など短波長の高エネルギー線の発生源を備えた露光装置を用いることが有効である。また、光路の一部に水やフッ素系の溶媒など、使用する高エネルギー線の吸収が少ない媒質を用い、開口数や有効波長においてより効率的な微細加工を可能とする液浸露光装置を使用することが有効であり、本レジスト組成物は、この装置に用いる場合にも好適である。
【0165】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0166】
[実施例1]
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステルの合成
【0167】
【化43】

【0168】
500mLの反応器に、活性化した金属亜鉛 24.2g(370ミリモル/1.5等量)とTHF(脱水) 300mLを加え、そこにブロモ−ジフルオロ酢酸エチル/THF溶液[ブロモ−ジフルオロ酢酸エチル 51.47g(253.6ミリモル/1.0等量)及びTHF(脱水) 80mL]を滴下した。滴下後、室温で20分間攪拌した後、プロピオンアルデヒド/THF溶液 [プロピオンアルデヒド 14.80g(254.8ミリモル/1.0等量)及びTHF(脱水) 80mL]を加え、室温で30分間攪拌した。
その後、水、ジイソプロピルエーテルを加え、二層分離を行った。得られた有機層を希塩酸、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とする2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステル 41.2gを得た。このとき、収率89%であった。
[2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステルの物性]
1H NMR (CDCl3) d 4.31 (q, J=7.1 Hz, 2H; CH2-O), 3.89 (m, 1H; CH-OH), 2.50 (br,1H; OH), 1.71 (m, 1H), 1.52 (m, 1H), 1.32 (t, J=7.1 Hz, 3H; CH3), 1.02 (t, J=7.3 Hz, 3H; CH3)
19F NMR (CDCl3) d -115.26 (d, J=252 Hz, 1F), -122.95 (d, J=252 Hz, 1F)。
【0169】
[実施例2]
メタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0170】
【化44】

【0171】
25mLの反応器に、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸エチルエステル 1.50g(8.2ミリモル)とクロロホルム 6.5g、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製品) 10mg、メタクリル酸クロリド 1.03g(9.9ミリモル/1.2等量)、トリエチルアミン 1.25g(12.4ミリモル/1.5等量)を加え、55℃で4時間攪拌した。その後、水10gを加え、クロロホルムで1回抽出を行った。得られた有機層を希塩酸、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、クロロホルムを留去して、目的とするメタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 2.06gを得た。このとき純度は66%
、収率66%であった。
[メタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR (CDCl3) d 6.14 (s, 1H; methylene), 5.62 (s, 1H; methylene), 5.35 (m, 1H; CH-O), 4.27 (m, 2H; CH2-O), 1.93 (s, 3H; CH3), 1.81 (m, 2H; CH2), 1.28 (t, J=7.2 Hz, 3H; CH3), 0.95 (t, J=7.6 Hz, 3H; CH3)
19F NMR (CDCl3) d -113.63 (d, J=264 Hz, 1F), -119.57 (d, J=264 Hz, 1F)。
【0172】
[実施例3]
メタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル:メタクリル酸(1)の製造方法
【0173】
【化45】

【0174】
25mLの反応器に、メタクリル酸 1−エトキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 1.00g(純度66%)、2.6ミリモル)、水1.00gを加
え、0℃に冷却し、15重量%水酸化ナトリウム水溶液 1.06g(4.0ミリモル/1.5等量)を滴下した後、室温で1時間攪拌した。反応液をジイソプロピルエーテル10gで洗浄し、得られた水層を希塩酸で洗浄、さらにジイソプロピルエーテルで2回抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とするメタクリル酸(1) 0.19gを得た。このとき純度は78%、収率27%であった。
[メタクリル酸(1):メタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR (CDCl3) d 7.24 (br, 1H; COOH), 6.16 (s, 1H; methylene), 5.63 (s, 1H; methylene), 5.39 (m, 1H; CH-O), 1.93 (s, 3H; CH3), 1.85 (m, 2H; CH2), 0.97 (t, J=7.6 Hz, 3H; CH3)
19F NMR (CDCl3) d -114.24 (d, J=264 Hz, 1F), -119.48 (d, J=264 Hz, 1F)。
【0175】
[実施例4]
メタクリル酸 1−(メトキシメチル)オキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル:メタクリレート(1)の製造方法
【0176】
【化46】

【0177】
20mLの反応器に、窒素下でメタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 70mg(純度78%、0.25ミリモル)、THF(脱水)3mLを加え、0℃まで冷却した後、トリエチルアミン65μL(0.47ミリモル/1.9等量)を加え、0℃で10分間攪拌した。その後、さらにクロロメチルメチルエーテル 30μL(0.40ミリモル/1.6等量)を加え、0℃で20分間攪拌した。反応液に水5mLを加え、ジイソプロピルエーテルで2回抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とするメタクリル酸 1−(メトキシメチル)オキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 58mgを得た。このとき純度は96%、収率83%であった。
[メタクリル酸 1−(メトキシメチル)オキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR (CDCl3) d6.15 (m, 1H; methylene), 5.63 (m, 1H; methylene), 5.30-5.45 (m, 3H, CH-O, CH2), 3.47(s, 3H; CH3), 1.93 (s, 3H; CH3), 1.85 (m, 2H; CH2), 0.97 (t, J=7.6 Hz, 3H; CH3)
19F NMR (CDCl3) d -113.62 (d, J=264 Hz, 1F), -119.51 (d, J=264 Hz, 1F)。
【0178】
13C NMR (CDCl3) d 9.7, 18.5, 21.2, 58.6, 73.0, 93.2, 113.6, 127.4, 135.5, 162.7, 166.3。
【0179】
[実施例5]
2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸‐t‐ブチルエステルの製造方法
【0180】
【化47】

【0181】
100mLの反応器に、活性化した金属亜鉛 2.10g(32.1ミリモル/1.5等量)とTHF(脱水) 30mLを加え、そこにブロモ−ジフルオロ酢酸t‐ブチル/THF溶液[ブロモ−ジフルオロ酢酸t‐ブチル 5.0g(21.6ミリモル/1.0等量)及びTHF(脱水) 10mL]を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌した後、プロピオンアルデヒド/THF溶液 [プロピオンアルデヒド 1.25g(21.5ミリモル/1.0等量)及びTHF(脱水) 10mL]を加え、室温で30分間攪拌した。その後、水、ジイソプロピルエーテルを加え、二層分離を行った。得られた有機層を希塩酸、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、ジイソプロピルエーテルを留去して、目的とする2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸‐t‐ブチルエステル 3.59gを得た。このとき、純度80%、収率70%であった。
[2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸‐t‐ブチルエステルの物性]
1H NMR (CDCl3) d 3.85 (m, 1H; CH-OH), 2.80 (br, 1H; OH), 1.60 (m, 2H; CH2),1.50 (m, 9H; CH3), 1.02 (t, J=7.6 Hz, 3H; CH3)
19F NMR (CDCl3) d -115.87 (dd, J=7.3 Hz, 261 Hz, 1F), -122.47 (dd, J=14.6 Hz, 263 Hz, 1F)。
【0182】
[実施例6]
メタクリル酸 1−(t−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0183】
【化48】

【0184】
25mLの反応器に、2,2−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ペンタン酸‐t‐ブチルエステル 1.50g(5.6ミリモル)とクロロホルム 15mL、ノンフレックスMBP 10mg、メタクリル酸クロリド 1.17g(11.2ミリモル/2等量)、トリエチルアミン 0.87g(8.6ミリモル/1.5等量)を加え、55℃で24時間攪拌した。その後、水15mLを加え、クロロホルムで1回抽出を行った。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで水分を除去、ろ過を行った後、クロロホルムを留去して、目的とするメタクリル酸 1−(t−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 1.57gを得た。このとき、純度5
8%、収率58%であった。
[メタクリル酸 1−(t−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR (CDCl3) d 6.15 (s, 1H; methylene), 5.62 (m, 1H; methylene), 5.36 (m, 1H; CH-O), 1.93 (s, 3H; CH3), 1.78 (m, 2H; CH2), 1.46 (s, 3H; CH3), 0.95 (t, J=7.6Hz, 3H; CH3)
19F NMR (CDCl3) d -113.15 (dd, J=7.3 Hz, 261 Hz, 1F), -120.17 (dd, J=14.6 Hz, 261 Hz, 1F)。
【0185】
[実施例7]
含フッ素高分子化合物(1)の合成
【0186】
【化49】

【0187】
還流冷却器、撹拌子を備えた100mlのナス型フラスコに、メタクリレート(1)(6.00g)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.11g)、メチルエチルケトン(15.0ml)を入れ、フラスコ内を窒素で置換した。これを60℃のオイルバスで加熱して18時間攪拌した。反応終了後、n−ヘキサン(60ml)に投入して撹拌し、生成した沈殿を取り出した。これを55℃で18時間乾燥し、白色固体の含フッ素高分子化合物(1)(4.40g、73%収率)を得た。分子量はゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)により求めた。結果を表1に示した。
【0188】
[実施例8]
含フッ素高分子化合物(2)の合成
【0189】
【化50】

【0190】
実施例7と同様の手法で、メタクリレート(1)とMA−ラクトン(MA-lactone:大阪有機工業株式会社製)から共重合体を合成し、白色固体を得た。分子量はGPC(標準物質:ポリスチレン)から、含フッ素高分子化合物(2)の組成モル比(a/b)はNMRから求めた。結果を表1に示した。
【0191】
[実施例9]
含フッ素高分子化合物(3)の合成
【0192】
【化51】

【0193】
実施例7と同様の手法で、メタクリレート(2)とヒドロキシアダマンチルメタクリレート(MA−HMA:ダイセル化学工業株式会社製)から共重合体を合成し、白色固体を得た。分子量はGPC(標準物質:ポリスチレン)から、含フッ素高分子化合物(3)の組成モル比(a/b)はNMRから求めた。結果を表1に示した。
【0194】
[実施例10]
含フッ素高分子化合物(4)の合成
【0195】
【化52】

【0196】
実施例7と同様の手法で、メタクリレート(1)と特開2004−175740に記載された方法により合成したMA-BTHB-NBを用いて共重合体を合成し、白色固体を得た。分子量はGPC(標準物質:ポリスチレン)から、含フッ素高分子化合物(4)の組成モル比(a/b)はNMRから求めた。結果を表1に示した。
【0197】
[実施例11]
含フッ素高分子化合物(5)の合成
〔MA−3,5−HFA−CHOHの合成〕
還流冷却器を上部に取り付けた2Lの三口フラスコへ、特開2004−083900に記載の方法に従って合成した3,5−HFA−CHOH 100g、メタクリル酸 23.8g、メタンスルホン酸 22.0g、トルエン500mLを加え、130℃のオイルバス中で3.5時間加熱還流した。反応後、反応液を飽和重曹水に注いで中和した後、トルエン1Lを追加して、トルエン層を回収した。得られたトルエン溶液を濃縮後、再結晶して78.0gのMA−3,5−HFA−CHOHを得た。
【0198】
【化53】

【0199】
【化54】

【0200】
〔高分子化合物(5)の合成〕
実施例7と同様の手法で、メタクリレート(1)とMA−3,5−HFA−CHOHから共重合体を合成し、白色固体を得た。分子量はGPC(標準物質:ポリスチレン)から、含フッ素高分子化合物(5)の組成モル比(a/b/c)はNMRから求めた。結果を表1に示した。
【0201】
【表1】

【0202】
[実施例12]
含フッ素高分子化合物(1)、(2)、(3)、(4)、(5)を、それぞれプロピレングリコールメチルアセテートに溶解し、固形分14%になるように調製した。さらに高分子化合物100重量部に対し、酸発生剤としてみどり化学製トリフェニルスルフォニウムトリフレート(TPS105)を5重量部になるように溶解してレジスト組成物(R−1
、R−2、R−3、R−4、R−5)を調製した。
レジスト組成物を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、各レジスト組成物をシリコンウェハー上にスピンコートして膜厚250nmの塗布膜(レジスト膜)を得た。120℃でプリベークを行った後、寸法130nmの1対1ラインアンドスペース(130nm1L/1Sパターン)のフォトマスクを介して193nmの紫外線で露光を行った後、120℃でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、22℃で1分間現像した。この結果、いずれのレジスト組成物からも高解像のパターン形状が得られ、基板への密着不良欠陥、成膜不良欠陥、現像欠陥、エッチング耐性不良による欠陥は見られなかった。
【0203】
最適露光量にて解像した130nm1L/1Sパターンについて、日立社製の「測長SEM:S9220」にてパターン形状を観察した。その際のパターン形状の評価を、レジスト組成物R−1の形状を基準として表2に示した。
【0204】
【表2】

【0205】
[比較例1]
実施例7と同様の手法で、tert-ブチルメタクリレートとMA-ラクトン(大阪有機工業株式会社製)を用いて高分子化合物(6)を調製し、実施例12と同一の操作によりレジスト組成物を調製し、それを用いて作成したパターン形状について評価して、結果を表2に示した。
【0206】
【化55】

【0207】
[比較例2]
実施例7と同様の手法で、メチルアダマンチルメタクリレート(MA-MAD:ダイセル化学工業株式会社製)とヒドロキシアダマンチルメタクリレート(MA-HMA:ダイセル化学工業株式会社製) を用いて高分子化合物(7)を調製し、実施例12と同一の操作によりレジスト組成物を調製し、それを用いて作成したパターン形状について評価して、結果を表2に示した。
【0208】
【化56】

【0209】
[比較例3]
実施例7と同様の手法で、tert-ブチルメタクリレートとMA-BTHB-NB を用いて高分子化合物(8)を調製し、実施例12と同一の操作によりレジスト組成物を調製し、それを用いて作成したパターン形状について評価して、結果を表2に示した。
【0210】
【化57】

【0211】
[比較例4]
実施例7と同様の手法で、MA-MAD(ダイセル化学工業株式会社製)とMA-3,5-HFA-CHOHを用いて高分子化合物(9)を調製し、実施例12と同一の操作によりレジスト組成物を調製し、それを用いて作成したパターン形状について評価して、結果を表2に示した。
【0212】
【化58】

【0213】
表2から明らかなように、本発明の含フッ素高分子化合物(実施例5、6、7および8)を含有するR−1、2、3、4および5のレジスト組成物は、高分子化合物(6)、(7)、(8)または(9)を含有する比較例1、2、3、4のレジスト組成物と比べて、膨潤せずまたは膨潤の程度が著しく軽度であるため矩形のパターンが形成されるという良好な評価結果が得られた。
【0214】
すなわち、本発明の含フッ素高分子化合物を含有するレジスト組成物により、高エネルギー線、例えばKrFエキシマレーザー(波長248nm)またはArFエキシマレーザー(波長193nm)に代表される遠紫外線に感応するレジスト組成物を調製することができる。そして、酸不安定性保護基として、アセタール基などを使用して調製された前記レジスト組成物は、化学増幅型レジスト組成物としてパターン形状の矩形性に優れるため、今後ますます微細化が進行すると予想される集積回路素子の製造に極めて好適に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物として、特に酸不安定性保護基を選択することで化学増幅型として極めて好適に使用することができる。また本発明の含フッ素高分子化合物はそのレジスト組成物に好適に使用できる。さらに、本発明の含フッ素化合物は、そのような含フッ素高分子化合物に酸不安定性保護基を導入するのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される含フッ素化合物。
【化1】

(式中、R1は重合性二重結合含有基、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。)
【請求項2】
3がフッ素原子である請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項3】
一般式(1)に含まれる部分構造
1−W−
が、下記のいずれかの基を有する請求項1または2のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
【化2】

【請求項4】
一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸において、Wが、単結合、−(CR78n−(nは1〜10の整数を表す。R7、R8 は一価の有機基を表し、組み合わされて環を形成してもよい。)、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−もしくは−O−C(=O)−、二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、スルフォンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独又はこれらの組み合わせからなる二価の連結基から選ばれたいずれかの基である請求項1〜3のいずれか1項に含フッ素化合物。
【請求項5】
一般式(1)で表される含フッ素化合物が、下記式で表されるいずれかの化合物である請求項1に記載の含フッ素化合物。
【化3】

(式中、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、R7は水素原子、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、R8は直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基またはフルオロアルキル基を表し、R7およびR8は互いに環を形成していてもよい。)
【請求項6】
7またはR8は、アルキル基またはフルオロアルキル基が、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の基、炭素数3〜10の環状の基であるか、または、R7とR8が互いに結合して環を形成した炭素数4〜8の脂環式炭化水素基である請求項5に記載の含フッ素化合物。
【請求項7】
7またはR8がそれぞれ独立に水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1-(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基から選ばれた一価の有機基、またはR7またはR8が互いに結合して形成したシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基であって、少なくともR7またはR8のうちいずれかは一価の有機基である請求項5に記載の含フッ素化合物。
【請求項8】
3がフッ素原子である請求項5〜7のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
【請求項9】
一般式(1)で表される含フッ素化合物が、下記式のいずれかの化合物である請求項1に記載の含フッ素化合物。
【化4】

(式中、R2は請求項1における意味と同じ。)
【請求項10】
2で表される酸不安定性保護基が下記の、(L−1)〜(L−5)で表される一価の有機基から選ばれた有機基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
11−O−C(=O)− (L−1)
11−O−CHR12− (L−2)
CR131415− (L−3)
SiR131415− (L−4)
11−C(=O)− (L−5)
(式中、R11はアルキル基、脂環式炭化水素基またはアリール基を表す。R12は、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。R13、R14およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基もしくはアリール基を表す。また、R13〜R15の内の2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。)
【請求項11】
2がメトキシメチル基またはt−ブチル基である請求項1〜10のいずれか1項に記載の含フッ素化合物。
【請求項12】
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む重量平均分子量1,000〜1,000,000の含フッ素高分子化合物。
【化5】

(式中、R2は酸不安定性保護基、R3はフッ素原子または含フッ素アルキル基、Wは二価の連結基を表す。R4、R5およびR6は、相互に独立に、水素原子、フッ素原子もしくは一価の有機基であり、または相互に組み合わされて環を形成してもよい。)
【請求項13】
一般式(2)に含まれる部分構造(9−1)
【化6】

が、下記のいずれかの基の重合性二重結合が開裂して形成された構造を有する請求項12に記載の含フッ素高分子化合物。
【化7】

【請求項14】
一般式(2)で表される含フッ素高分子化合物において、Wが、単結合、−(CR78n−(nは1〜10の整数を表す。R7、R8 は一価の有機基を表し、組み合わされて環を形成してもよい。)、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−もしくは−O−C(=O)−、二価の脂環式炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、スルフォンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独又はこれらの組み合わせからなる二価の連結基から選ばれたいずれかの基である請求項12または13のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項15】
一般式(2)で表される含フッ素重合性化合物が、下記式で表されるいずれかの化合物の重合性二重結合が開裂して形成された構造を有する請求項12に記載の含フッ素高分子化合物。
【化8】

(式中、R2、R3、R7およびR8は請求項12における意味と同じ。)
【請求項16】
7またはR8は、アルキル基またはフルオロアルキル基が、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状の基、炭素数3〜10の環状の基であるか、または、R7とR8が互いに結合して環を形成したた炭素数4〜8の脂環式炭化水素基である請求項14または15のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項17】
7またはR8がそれぞれ独立に水素原子、またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1-(トリフルオロメチル)エチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基から選ばれた一価の有機基、またはR7またはR8が互いに結合して形成したシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基であって、少なくともR7またはR8のうちいずれかは一価の有機基である請求項14または15のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項18】
3がフッ素原子である請求項15〜17のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項19】
一般式(2)で表される含フッ素重合性化合物が、下記式で表されるいずれかの化合物の重合性二重結合が開裂して形成された構造を有する請求項12に記載の含フッ素高分子化合物。
【化9】

(式中、R2は請求項12における意味と同じ。)
【請求項20】
2で表される酸不安定性保護基が下記の(L−1)〜(L−5)で表される一価の有機基から選ばれた有機基である請求項12〜19のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物。
11−O−C(=O)− (L−1)
11−O−CHR12− (L−2)
CR131415− (L−3)
SiR131415− (L−4)
11−C(=O)− (L−5)
(式中、R11はアルキル基、脂環式炭化水素基またはアリール基を表す。R12は、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。R13、R14およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基もしくはアリール基を表す。また、R13〜R15の内の2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。)
【請求項21】
請求項12〜20のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物が、さらに側鎖にラクトン環を有する繰り返し単位を含む含フッ素高分子化合物。
【請求項22】
含フッ素高分子化合物が、アクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、アリルエステル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類からなる他の共重合可能な単量体に基づく繰り返し単位(b)をさらに含む請求項12〜21のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項23】
一般式(2)で表される繰り返し単位(a)と他の共重合可能な単量体に基づく繰り返し単位(b)が、含フッ素高分子化合物に含まれる繰り返し単位の全体に対しそれぞれ、0.1〜99.9モル%と99.9〜0.1モル%である請求項12〜22のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項24】
請求項12〜23のいずれか1項に記載の含フッ素高分子化合物、酸発生剤および溶剤を含有してなるレジスト組成物。
【請求項25】
請求項24に記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程と、次に基板を熱処理する工程と、300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてフォトマスクを通して露光する工程と、露光されたレジストの塗布膜に対して熱処理を施す工程と、現像処理を施す工程を少なくとも含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項26】
高エネルギー線がF2エキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー又は軟X線であることを特徴とする請求項25記載のパターン形成方法。
【請求項27】
請求項25に記載のパターン形成方法により形成したパターンを有する電子デバイス。

【公開番号】特開2009−19199(P2009−19199A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153096(P2008−153096)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】