説明

吸気弁

【課題】排水管路から排水が逆流した場合であっても排水の漏出を防止できるとともに吸引した外気を排水管路へスムーズに通気できる吸気弁を提供する。
【解決手段】排水管路2に分岐して取り付けられる吸気弁1であって、吸気弁1は、外気吸入口11から外気を吸入し、吸入した外気を通気開口部14にて排水管路2側へ通気する吸気弁本体4を備える。吸気弁本体4と排水管路2との間に、略半球状のフロート体8を収容可能な収容体7を設ける。この収容体7内に、フロート体8を排水の逆流経路中に支持するフロート体支持部55を設ける。フロート体8のフロート本体34の排水管路2側に曲面部54を設け、収容体7内においてフロート体支持部55に支持された状態のフロート体8の周囲に通気部56を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管路から排水が逆流した場合に排水の漏出を防止できるとともに吸引した外気を通気しやすく、また、破損しにくい吸気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から排水器具の封水保護を目的に吸気弁が用いられているが、この吸気弁は、通常時には排水管路内の臭気が外部に漏れないように吸気弁外部に連通する外気吸入口が弁体にて閉止されており、排水管路内の圧力が低下した際にのみ、外気との圧力差によって前記弁体が前記外気吸入口から離間してこの外気吸入口が開放され外気を吸入する。
【0003】
ここで、かつての給排水設備技術基準によると、吸気弁は、排水器具のあふれ縁より15cm以上高い位置に設置するように定められており、万が一排水管が閉塞して排水があふれ出てしまっても、このあふれた排水が前記吸気弁に侵入して吸気弁から漏出することを防止できるようになっていた。
【0004】
一方、現在の給排水設備技術基準では、適切な排水逆流防止機能を備えた吸気弁であれば、あふれ縁より低い位置であっても設置が認められるように変わってきている。
【0005】
また、弁体が正常に機能していれば、排水管路からの逆流があったとしても、外気吸入口が閉塞されて吸気弁内と外気が隔てられているので、内部の空気が外部に漏れないとともに、排水も吸気弁内に侵入することがなく、弁体そのものが逆流防止機能を備えているともいえる。
【0006】
しかしながら、何らかの事情により、外気吸入口の弁体が正常に機能しなかった場合、この外気吸入口から排水管路内の空気が漏れるとともに、排水も外部へ漏れてしまう可能性がある。
【0007】
そして、吸気弁は、屋内に設置されるものであるので、万が一にも排水の漏出は防止する必要があり、外気吸入口の弁体とは別個に、排水の逆流を防止する機能を付与したものが提案されている。具体的には、例えば、逆流時の排水により浮弁体を浮上させて通気管路を閉止するもの(例えば特許文献1および特許文献2参照。)や、スプリングの付勢により通常時に閉止状態となる逆止弁を備えたもの(例えば特許文献3参照。)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−126333号公報(第2,3頁、図1)
【特許文献2】特開2004−124356号公報(第4−7頁、図2)
【特許文献3】特開2003−64745号公報(第3−5頁、図2,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、常時、収容部に浮弁体が収容され排水管路内への通気経路が十分に確保されているが、排水が逆流した場合、排水の逆流経路中に浮弁体が配置されていないので、排水が浮弁体の上にかかってしまう可能性があり、排水の汚れが浮弁体に付着して弁座に対する浮弁体の止水性が低下してしまう問題が考えられ、逆流した排水が漏出してしまうおそれがある。
【0010】
また、上述の特許文献2の構成では、吸入された外気の通気経路を遮るように浮弁体が位置しており、外気の通り道が十分に確保できず、吸引した外気を通気しにくい問題が考えられる。
【0011】
また、上述の特許文献3の構成では、常時、スプリングの付勢により弁体の閉止状態を保持しているが、スプリングのように長期間繰り返し変形させる部材は、変形や破損などのリスクが高く、スプリングの変形や破損により弁体が適切に作用せず、止水性が低下してしまう問題が考えられ、逆流した排水が漏出してしまうおそれがある。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、排水管路から排水が逆流した場合であっても排水の漏出を防止できるとともに、吸引した外気を排水管路へスムーズに通気できる吸気弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された吸気弁は、排水管路に分岐して取り付けられる吸気弁であって、外気を吸入するための外気吸入口、この外気吸入口の排水管路側の端部に位置する弁座部、前記外気吸入口にて吸入した外気を前記排水管路側へ通気する通気開口部、および前記通気開口部から前記排水管路側へのびるフロート軸部を有する吸気弁本体と、常時は前記弁座部に着座して前記外気吸入口を閉止し、前記排水管路内の圧力が外気の圧力より低くなった際にその圧力差によって前記弁座部から離間して前記外気吸入口を開放する弁体と、前記吸気弁本体に取り付けられ、前記外気吸入口の弁座部側、前記通気開口部の一端部および前記弁体を覆うカバー体と、前記吸気弁本体に取り付けられ、前記通気開口部および前記排水管路に連通する収容体と、この収容体に収容され前記通気開口部の他端部を開閉可能な略半球状のフロート体とを具備し、前記収容体は、前記通気開口部が開放された状態にて前記フロート体を排水の逆流経路中に支持するフロート体支持部を有し、前記フロート体は、略半球状のフロート本体と、このフロート本体に取り付けられた止水パッキンとを有し、前記フロート本体は、前記排水管路側に位置する球状面部、前記通気開口部側に位置し止水パッキンを保持するパッキン保持部、および前記通気開口部側面から前記球状面部へ凹状に形成され前記フロート軸部が摺動自在に嵌合される摺動凹部を有するものである。
【0014】
請求項2に記載された吸気弁は、請求項1記載の吸気弁において、止水パッキンは、フロート本体側へ突出した突起部を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、収容体に収容されたフロート体がフロート体支持部にて排水の逆流経路中に支持されているので、排水管路から排水が逆流した場合であってもフロート体により通気開口部を閉止して排水の漏出を防止できる。また、フロート体が球状面部を有するので、吸引した外気を排水管路へスムーズに通気できる。
【0016】
請求項2に記載された発明によれば、止水パッキンがフロート本体側へ突出した突起部を有することにより、止水パッキンと通気開口部の他端部との密着性を向上できるので、排水の漏出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る吸気弁の構成を示す断面図である。
【図2】同上吸気弁において通気開口部が閉止された状態を示す断面図である。
【図3】同上吸気弁における吸気弁本体の平面図である。
【図4】同上吸気弁において外気吸入口が閉止された状態を示す部分断面図である。
【図5】同上吸気弁において外気吸入口が開放された状態を示す部分断面図である。
【図6】吸気弁と排水管路との接続機構を示す側面図である。
【図7】排水管路の継手部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態の構成について図1ないし図7を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1および図2において、1は吸気弁を示し、この吸気弁1は、例えば、台所、便所および浴室などが接続された排水管路2から分岐した分岐管3に取り付けられるもので、常時は外気を排水管路2から隔て、排水管路2内の圧力が外気の圧力より低くなった際には、外気を吸引して排水管路2へ通気するものである。
【0020】
吸気弁1は、外気を吸引して通気する吸気弁本体4と、この吸気弁本体4に取り付けられたカバー体5と、これら吸気弁本体4とカバー体5との間に設けられた弁体6と、吸気弁本体4および排水管路2に連通する収容体7と、この収容体7に収容された略半球状のフロート体8とを備えている。
【0021】
吸気弁本体4は、例えば合成樹脂などにて略円筒状に一体成形されている。この吸気弁本体4の平面図を図3に示す。なお、図1および図2は図3におけるA−A方向の断面を示すものである。図3に示すように、吸気弁本体4は、周方向の外側に位置し、外部と連通して外気を吸入するための外気吸入口11が設けられている。この外気吸入口11は、図1および図2において下方が外気側で上方が排水管路2側であり、排水管路2側の端部に位置する弁座部12を有している。また、外気吸入口11の外周面には、外側へ突出してカバー体5と係合可能なカバー体係合部13が設けられている。
【0022】
また、吸気弁本体4は、外気吸入口11の内側に位置し、外気吸入口11から吸入した外気を排水管路2側へ通気する通気開口部14を有している。この通気開口部14は、一端部がカバー体5側である弁座部12の内側に位置し、他端部が収容体7側に位置している。通気開口部14の他端部には、一端部と同径の小径部15と、この小径部15より大径の大径部16と、これら小径部15および大径部16により形成された段差部17とが設けられ、この段差部17にフロート体8が接触することによって通気開口部14が閉止される。また、通気開口部14の他端部の外周面には、外側へ向かって突出し、収容体7を取り付けるための収容体係合部18が設けられている。この収容体係合部18の下方には、内側へ向かって凹状のパッキン取付部19が形成され、このパッキン取付部19には、輪状のパッキン20が取り付けられている。
【0023】
さらに、吸気弁本体4は、通気開口部14の一端部付近の内周面から内側へのびる棒状の3つの取付軸部23が設けられており、これら各取付軸部23の先端には、通気開口部14の略中心を通って通気開口部14から排水管路2側へのびるように垂下した棒状のフロート軸部21が設けられている。また、各取付軸部23の先端のフロート軸部21とは反対側には、弁座部12に着座した状態の弁体6を支持する弁体支持部22が突設されている。
【0024】
図4および図5は、図3に示す吸気弁本体4のカバー体5および弁体6が取り付けられた状態におけるB−B方向の断面を示し、弁体6は、常時すなわち排水管路2内の圧力が外気の圧力と同一の際には、図4に示すように、弁座部12上に載置されるように着座して外気吸入口11を閉止し、排水管路2内の圧力が外気の圧力より低くなった際には、図5に示すように、その圧力差により弁座部12から浮き上がるように離間して外気吸入口11を開放するものである。
【0025】
この弁体6は、例えば合成樹脂などにて中央が開口された略円盤状に成形された弁本体24と、この弁本体24に取り付けられ、弁体6が着座した状態にて弁座部12に密着して外気吸入口11を気密状に閉止する密閉部材25とを有する。
【0026】
弁本体24は、開口部分の周縁から開口部分の中央へ向かってのびる3つの取付軸部26が設けられ、これら取付軸部26の先端である開口部分の中央には、弁体6が着座した状態にて弁体支持部22が挿入可能な円筒状の筒部27が設けられている。また、弁本体24には、開口部分の周縁に沿って突設され、密閉部材25を係止可能な密閉部材係止部28が設けられている。
【0027】
密閉部材25は、例えば弾性材料などにて、弁本体24の形状に倣って中央が開口した略円盤状に成形されており、中央の開口部分を密閉部材係止部28に係合することにより弁本体24に取り付けられた状態が係止される。
【0028】
カバー体5は、例えば合成樹脂などにて、底面が開口され上面が閉塞されたキャップ状に成形されている。このカバー体5を吸気弁本体4に取り付けることにより、カバー体5が外気吸入口11の弁座部12側と通気開口部14の一端部と弁体6とを覆い、カバー体5を介して外気吸入口11と通気開口部14とが連通する。
【0029】
このカバー体5は、開口された底面の内周部に外気吸入口11のカバー体係合部13と係合可能な被係合部31が設けられ、カバー体係合部13と被係合部31とを係合することにより、カバー体5が吸気弁本体4に取り付けられた状態が保持される。
【0030】
また、カバー体5は、上面の略中央から弁体6および通気開口部14側へのびるように垂下した棒状の案内軸部32が設けられている。この案内軸部32は弁体6の筒部27の内周よりやや小径であり、筒部27に摺動可能に挿入され、弁体6は、カバー体5内にて案内軸部32に沿って移動して外気吸入口11を開閉する。
【0031】
フロート体8は、通気開口部14の他端部を開閉するもので、常時すなわち排水管路2から排水が逆流していない際には、図1に示すように、収容体7内において通気開口部14の他端部から離間して通気開口部14を開放し、排水管路2から排水が逆流した際には、排水管路2から収容体7内に流入した排水の水面に浮遊して排水とともに通気開口部14側へ上昇し、図2に示すように通気開口部14の段差部17に密着して通気開口部14を閉止する。
【0032】
このフロート体8は、排水に浮遊する略半球状のフロート本体34と、このフロート本体34に取り付けられ、通気開口部14の段差部17に密着して止水可能な止水パッキン35とを有している。
【0033】
フロート本体34は、例えば合成樹脂などにて略半球状に成形され、特に比重が0.2の発泡形成された合成樹脂が用いられると、逆流した排水の水面に浮遊しやすいので好ましい。
【0034】
フロート本体34は、排水管路2側に位置する球状面部36と、この球状面部36の反対側である通気開口部14側に位置し止水パッキン35を保持するパッキン保持部37とを有している。このパッキン保持部37は、通気開口部14の大径部16より小径で、かつ、小径部15より大径であり、段差部17と平行な平面状に形成されている。
【0035】
また、フロート本体34は、パッキン保持部37の周方向の内側に位置し、パッキン保持部37より通気開口部14側へ突出し、通気開口部14の小径部15より小径の略円柱状の突出部38が設けられている。この突出部38の側面には、周方向に凹状の固定溝部39が形成され、この固定溝部39には、止水パッキン35が係合可能である。
【0036】
さらに、フロート本体34は、突出部38の通気開口部14側の先端面から球状面部36側へ凹状に形成された摺動凹部40を有している。この摺動凹部40は、フロート軸部21よりやや大径に形成され、フロート軸部21が摺動自在に嵌合される。フロート軸部21と摺動凹部40とが摺動自在に嵌合されることにより、フロート体8は、収容体7内においてフロート軸部21に沿って移動する。
【0037】
止水パッキン35は、例えば弾性材料などにて形成され、フロート体8が通気開口部14の他端部における段差部17に接触した状態にて通気開口部14の小径部15を気密状に閉止するものである。
【0038】
この止水パッキン35は、パッキン保持部37の表面と略同形状の円盤状のパッキン本体41を有している。
【0039】
また、止水パッキン35は、パッキン本体41の中央部に取付開口部42が設けられている。この取付開口部42は、フロート本体34の突出部38の外周と略同径の円形状に開口されており、突出部38に嵌合可能である。
【0040】
さらに、止水パッキン35は、取付開口部42の周縁に沿ってパッキン本体41の通気開口部14側である止水面から略垂直に起立した起立部43が設けられている。
【0041】
止水パッキン35は、取付開口部42が突出部38に嵌合されるとともに、起立部43が固定溝部39に係合されることにより、フロート本体34に取り付けられた状態が固定される。
【0042】
また、止水パッキン35は、パッキン本体41の止水面とは反対面であるパッキン保持部37側の面から突出する突起部44が設けられている。この突起部44は、止水パッキン35が通気開口部14の段差部17に接触した状態にてパッキン本体41の止水面とは反対面における通気開口部14の小径部15の内周面より外側に位置している。また、突起部44は、止水パッキン35がフロート本体34に取り付けられた状態において、先端部がパッキン保持部37に接触している。
【0043】
収容体7は、例えば合成樹脂などにて内部にフロート体8を収容可能な空間を有する筒状に一体成形されている。
【0044】
収容体7は、一端部の内周面に、収容体係合部18に係合可能な被係合部51が設けられ、収容体係合部18と被係合部51とを係合することにより、収容体7が吸気弁本体4に取り付けられた状態が保持される。また、収容体7の他端部には、排水管路2の分岐管3に接続可能な接続部52が設けられている。
【0045】
そして、収容体7は、吸気弁本体4に取り付けられ排水管路2に接続された状態にて、吸気弁本体4側の一端部が通気開口部14に連通し、排水管路2側の他端部が分岐管3に連通する。
【0046】
収容体7は、一端部から同径であり直管状の鉛直部53と、この鉛直部53側から排水管路2側へ向かって断面視で曲線状に漸次小径になり接続部52に連通する曲面部54とを有する。この曲面部54は、フロート本体34の球状面部36の形状に沿った形状である。
【0047】
また、収容体7は、鉛直部53から曲面部54にわたって形成された例えば3つのフロート体支持部55を有する。これらフロート体支持部55は、常時、すなわち、フロート体8が通気開口部14の他端部から離間して通気開口部14が開放された状態にて、図1に示すように、フロート体8が排水の逆流経路中に位置するように支持するものである。
【0048】
フロート体8がフロート体支持部55に支持された状態では、フロート本体34の球状面部36と収容体7の曲面部54との距離がほとんど一定で略平行に離間しており、収容体7内におけるフロート体8の周囲には外気の通気領域である通気部56が十分に確保されている。特に、この収容体7内の通気部56の周方向の断面積は、接続部52の開口面積の1.5倍以上であると好ましい。
【0049】
ここで、図6に示すように、排水管路2の分岐管3と吸気弁1とは、接続機構61により接続されている。すなわち、分岐管3は収容体7の接続部52に接続可能な継手部62を備え、継手部62および接続部52にて接続機構61が構成されている。
【0050】
図6および図7に示すように、継手部62は、接続部52より大径の略円筒状に形成された継手管部63を有している。この継手管部63の先端部には、係合爪部64および回動規制部65が設けられている。また、継手管部63の先端部の内周面には、略矩形凹状に形成された係合溝部66が設けられている。
【0051】
図6に示すように、接続部52は、略円筒状の接続管部71を有している。この接続管部71には、外周面から外側へ突出し係合爪部64に係合可能な係合片部72が設けられており、接続部52は、係合爪部64と係合片部72とを係合した状態にて継手部62に対して回動可能である。また、係合爪部64と係合片部72とを係合することにより、継手部62と接続部52との接続状態が保持される。
【0052】
係合片部72には、係合爪部64と係合片部72とを係合した状態にて回動規制部65と係合可能な係合切欠部73が設けられており、回動規制部65と係合切欠部73とを係合することにより、継手部62に対する接続部52の回動が規制される。
【0053】
接続管部71の係合片部72より先端側には、接続管部71の外周面から略矩形状に突出した係合突起部74が設けられている。この係合突起部74は、係合爪部64と係合片部72とを係合した状態にて係合溝部66と係合可能であり、係合溝部66と係合突起部74とを係合することにより、接続部52と継手部62との接続が強固に保持される。
【0054】
さらに、接続管部71における係合突起部74より先端側には、外周面から凹状の取付溝部75が形成されており、この取付溝部75に輪状のパッキン76が取り付けられている。
【0055】
次に、上記一実施の形態の作用を説明する。
【0056】
吸気弁1は、常時すなわち排水管路2内の圧力が外気の圧力である大気圧と同一の際は、図4に示すように、弁体6の自重により外気吸入口11の弁座部12上に載置されるように着座するとともに、弁体支持部22と筒部27とが係合して着座状態が保持され、密閉部材25にて外気吸入口11が気密状に閉止されている。また、このように外気吸入口11が閉止されることにより、吸気弁1からの排水管路2内の臭気の外部への漏出を防止している。
【0057】
一方、排水管路2にて排水が流動することで排水管路2内が減圧され、排水管路2内の圧力が外気の圧力より低くなった際は、吸気弁1内が負圧になり、外気吸入口11からの外気の圧力が弁体6に作用し、その圧力差によって、図5に示すように、弁体6がカバー体5内で案内軸部32に沿ってカバー体5の上面方向へ移動して弁座部12から浮き上がるように離間するとともに、外気吸入口11が開放されて外気吸入口11から外気を吸入する。
【0058】
また、外気吸入口11から吸入された外気は、カバー体5内を通って通気開口部14の一端部から吸気弁本体4内へ流入する。
【0059】
ここで、通常すなわち排水管路2から排水が逆流していない状態では、フロート体8はフロート体支持部55に支持されて通気開口部14の他端部から離間しており、通気開口部14が開放されている。
【0060】
したがって、通気開口部14へ流入した外気は、収容体7内へ流入し、フロート体8の周囲を回りこむように通気部56を通過し、排水管路2内へ流入して、排水管路2内の圧力が上昇する。
【0061】
排水の流動がなくなり、排水管路2内の圧力が大気圧と同一になると、吸気弁1内の負圧がなくなり、弁体6は自重により案内軸部32に沿って移動して弁座部12に着座し、外気吸入口11が閉止される。
【0062】
排水管路2から排水が逆流した場合には、まず、分岐管3から収容体7へ排水が流入する。
【0063】
収容体7内では、フロート体8がフロート体支持部55に支持され排水の逆流経路中に位置しているため、流入した排水の水面上にフロート体8が浮遊しながらフロート軸部21に沿って排水の水位とともに上昇する。
【0064】
上昇したフロート体8は、突出部38が通気開口部14の小径部15に挿入されるとともに、止水パッキン35が段差部17に圧接されて通気開口部14の他端部を気密状に閉止し、逆流した排水が収容体7から吸気弁本体4へ流入することを防止する。
【0065】
そして、このような吸気弁1によれば、収容体7に収容されたフロート体8がフロート体支持部55にて排水の逆流経路中に支持されているので、排水管路2から排水が逆流した場合であっても、逆流した排水とともにフロート体8が上昇して通気開口部14を閉止するため、通気開口部14への排水の流入を防止でき、吸気弁1からの排水の漏出を防止できる。
【0066】
また、吸気弁1は、逆流した排水の漏出を防止できるだけでなく、フロート体8がフロート本体34の排水管路2側に球状面部36を有するので、収容体7内において、フロート体8の周囲に通気部56を確保でき、吸引した外気を排水管路2へスムーズに通気できる。
【0067】
特に、収容体7は、フロート本体34の球状面部36の形状に沿った曲面部54が設けられることにより、収容体7内における外気の通気経路がフロート体8に遮られにくいので、排水管路2へ外気をよりスムーズに通気できる。
【0068】
また、収容体7は、収容体7内の通気部56の周方向の断面積を接続部52の開口面積の1.5倍以上にすることにより、収容体7内における外気の通気経路がフロート体8に遮られにくく、分岐管3へ外気が流入しやすいので、排水管路2へ外気をよりスムーズに通気できる。
【0069】
止水パッキン35は、止水面とは反対側の面に突起部44を有することにより、逆流した排水の水位とともに上昇するフロート本体34によって、止水パッキン35の止水面における突起部44の反対側の箇所が他の箇所より段差部17に優先的に押し付けられ、止水パッキン35と通気開口部14の他端部との密着性を向上できるので、通気開口部14をより気密状に閉止でき、排水の漏出を防止できる。
【0070】
なお、従来の止水パッキンでは、本実施の形態とは反対側の止水面に突起部が設けられているが、本実施の形態のように、止水パッキン35の止水面を平滑にし、止水面とは反対側に突起部44が設けられることにより、水頭圧で1m程度の低圧での止水性を向上できる。
【0071】
フロート体8は、フロート本体34が比重0.2の発泡形成された合成樹脂にて形成されることにより、逆流した排水の水面に浮遊しやすく、より確実に通気開口部14を閉止できる。
【0072】
吸気弁本体4にフロート軸部21が設けられたことにより、収容体7内でフロート体8がフロート軸部21に沿って安定して昇降できるので、排水が逆流した場合にはフロート体8によって確実に通気開口部14を閉止できるとともに、逆流の排水がなくなった際にはフロート体8がフロート体支持部55による支持位置に確実に移動して通気部56を確保できる。
【0073】
吸気弁1と排水管路2とを接続する際には、まず、係合切欠部73と係合爪部64とが対応した状態で収容体7の接続部52を継手管部63内に挿入する。
【0074】
そして、接続部52を継手部62に対して回動させることにより、係合片部72と係合爪部64とが係合し、パッキン76が継手管部63の内周面に密着する。
【0075】
回動規制部65と係合切欠部73とが係合するまで接続部52を継手部62に対して回動させると、係合突起部74が係合溝部66に係合する。
【0076】
このように、係合片部72と係合爪部64とを係合させ、係合切欠部73と回動規制部65とを係合させ、係合突起部74と係合溝部66とを係合させることにより、接続部52と継手部62との接続状態を保持できるので、吸気弁1と排水管路2の分岐管3とを強固に接続できる。
【0077】
ここで、従来、吸気弁1と排水管路2の分岐管3とを接続する際には、接続部52と継手部62とを接続した状態で接着させるが、例えば水頭圧で1m以下の低圧な条件下であれば、接続機構61によって接続を保持できる。
【0078】
このように接続機構61により、吸気弁1と排水管路2とを接続することにより、接続部52と継手部62とが接着されていないので、吸気弁1の設置後も接続部52と継手部62との接続状態を解除でき、メンテナンスしやすい。
【0079】
なお、上記一実施の形態では、止水パッキン35の止水面とは反対側の面に突起部44が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、従来の止水パッキンのように、突起部が止水面側に設けられた構成や、突起部が設けられていない構成にしてもよい。
【0080】
また、吸気弁1は、収容体7に曲面部54が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、フロート体8が球状面部36を有する構成であれば、収容体7の形状は適宜設計できる。
【0081】
さらに、収容体7内における通気部56の周方向の断面積が接続部52の開口面積の1.5倍以上である構成には限定されず、フロート体8が球状面部36を有し、収容体7内のフロート体8の周囲に通気部56が確保された構成であればよい。
【0082】
また、吸気弁1と排水管路2とが接続機構61にて接続された構成としたが、このような構成には限定されず、従来のように接着により吸気弁1と排水管路2とを接合してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 吸気弁
2 排水管路
4 吸気弁本体
5 カバー体
6 弁体
7 収容体
8 フロート体
11 外気吸入口
12 弁座部
14 通気開口部
21 フロート軸部
34 フロート本体
35 止水パッキン
36 球状面部
37 パッキン保持部
40 摺動凹部
44 突起部
55 フロート体支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管路に分岐して取り付けられる吸気弁であって、
外気を吸入するための外気吸入口、この外気吸入口の排水管路側の端部に位置する弁座部、前記外気吸入口にて吸入した外気を前記排水管路側へ通気する通気開口部、および前記通気開口部から前記排水管路側へのびるフロート軸部を有する吸気弁本体と、
常時は前記弁座部に着座して前記外気吸入口を閉止し、前記排水管路内の圧力が外気の圧力より低くなった際にその圧力差によって前記弁座部から離間して前記外気吸入口を開放する弁体と、
前記吸気弁本体に取り付けられ、前記外気吸入口の弁座部側、前記通気開口部の一端部および前記弁体を覆うカバー体と、
前記吸気弁本体に取り付けられ、前記通気開口部および前記排水管路に連通する収容体と、
この収容体に収容され前記通気開口部の他端部を開閉可能な略半球状のフロート体とを具備し、
前記収容体は、前記通気開口部が開放された状態にて前記フロート体を排水の逆流経路中に支持するフロート体支持部を有し、
前記フロート体は、略半球状のフロート本体と、このフロート本体に取り付けられた止水パッキンとを有し、
前記フロート本体は、前記排水管路側に位置する球状面部、前記通気開口部側に位置し止水パッキンを保持するパッキン保持部、および前記通気開口部側面から前記球状面部へ凹状に形成され前記フロート軸部が摺動自在に嵌合される摺動凹部を有する
ことを特徴とする吸気弁。
【請求項2】
止水パッキンは、フロート本体側へ突出した突起部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の吸気弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−13097(P2012−13097A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147226(P2010−147226)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000201582)前澤化成工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】