説明

吸着剤を利用した水分除去、冷熱の回収を行う、温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。

【課題】温度スイング式VOC吸着装置で、処理ガスを減容濃縮した後、水分の除去に続く低温VOC凝縮によるVOC回収方法を提供する。
【解決手段】温度スイング式VOC吸着装置で、低温でVOCを吸着して、高温で窒素をパージガスとして脱着して、処理ガスを減容濃縮した後、VOC、水分を含有する窒素を加圧して水分選択型吸着剤吸着塔15a,15bに導入して水分を除去した後、低温でVOCを液化回収し、回収後の乾燥窒素から冷熱を回収した後、乾燥窒素を向流パージガスとして使用して、水分吸着後の吸着塔を減圧して水分吸着除去、蓄熱式冷熱回収を行い、流過した窒素から水分を除去した後、パージガスとして還流リサイクルする。VOC選択型吸着剤5はシリカライト、USM,β、USY、MSPからなる群より一種以上、水分選択型吸着剤16としては、K−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より一種以上が選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤を利用した水分除去、冷熱の回収を行う、温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法である。
【背景技術】
【0002】
VOCを含有する排ガス処理に於いて最も頻繁に採用されている方法は、排ガスに含まれるVOCを高シリカゼオライトを充填した吸着塔に供給してVOCを吸着除去し,VOCを吸着した高シリカゼオライト吸着塔に高温熱風を供給してVOCを高温脱着させ,減容濃縮して脱着したVOCを触媒燃焼で酸化分解するTSA−VOC+触媒燃焼である。
【0003】
又今後普及が予想されるものとしては米国環境保護局(EPA)が提案している強誘電体(チタン酸バリウム等)の充填塔において強誘電体表面で延命放電を行い,ここにVOC含有ガスを供給することで酸化分解する充填塔プラズマ処理 (Packed Bed Plasma)がある。これらの方法はVOCの処理に対し一定の性能を示しているが,TSA−VOC+触媒燃焼では装置の複雑さと操作の煩雑さによるコスト低減の限界があり,充填塔プラズマ処理では対象VOC及びVOC除去率に限界があり今後のVOC排出規制に対応できない懸念がある。
【0004】
VOC含有ガスにオゾンを加えてVOCの均一気相反応による酸化分解をすることも考えられるが,低濃度VOCに対するオゾン酸化反応が遅いこと,未反応オゾンの処理が煩雑なこと,酸化剤として使用するオゾンの製造コストが高価なことから実用化には至っていない。又オゾン酸化反応の反応効率の向上のためVOCを高シリカゼオライトに吸着して除去した後,VOCを吸着した高シリカゼオライトにオゾンを添加してゼオライト中で共吸着したVOCとオゾンの酸化反応の高効率化を計ることが提案されている。この方法においてオゾン反応の高効率化は実現するが,オゾンの製造コストが高価な点については依然未解決である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Oxygen Selectivity on Partially K Exchanged Na−A Type Zeolite at Low Temperature, IZUMI J, SUZUKI M, ADSORPTION,VOL.7, PAGE.27−39,(2001)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術において、高効率且つVOCを劣化することなく回収する方法は実用化されていない。特に、冷熱の回収法としてVOC回収後の低温空気を蓄熱式熱交換器を使用し、水分吸着剤の使用法としてVOC回収、冷熱回収後の乾燥空気を使用する連続的な、冷熱回収、水分除去方法の使用は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、少なくとも2塔式の吸着塔の1塔に於いて、揮発性有機化合物(以下VOC)及び水分を含有する空気を相対的低温でVOC選択型吸着剤吸着塔に導入して吸着剤と接触させてVOCを吸着剤に吸着させて空気を系外に放出し、吸着したVOCを相対的高温で窒素を使用して脱着して、VOC処理ガスを減容濃縮し、減容濃縮したVOCガスを、少なくとも2塔式の吸着塔の1塔に於いて、揮発性有機化合物(以下VOC)及び水分を含有する空気を加圧して水分選択型吸着剤吸着塔に導入して吸着剤と接触させて水分を吸着剤に吸着させてVOCと分離し、続いて低温に冷却された蓄熱材充填塔に導入して蓄熱材と接触させて冷却し、最寒冷温度になるように冷却器で冷却してVOCを液化回収し、流過する低温、低VOC、低水分濃度の空気を減圧して、他の蓄熱材充填塔に導入し蓄熱材と接触させて冷熱を回収して昇温し、空気を減圧して他の水分選択型吸着剤吸着塔に導入して吸着剤と接触させて水分を吸着剤から脱着させて水分吸着剤を再生し、水分が破過する前に塔を切り替えて水分除去、冷熱の回収を行ない、流過した窒素から水分を除去した後、VOC選択型吸着剤の高温再生に使用することにより連続的に低温液化条件でのVOC回収方法の成立することを見いだした。
【0008】
かくして、本発明によれば、下記の1〜6の発明を提供する:
1.少なくとも2塔式の吸着塔の1塔に於いて、揮発性有機化合物(以下VOC)及び水分を含有する空気を相対的低温でVOC吸着塔に導入してVOC選択型吸着剤と接触させてVOCを吸着剤に吸着させて空気を系外に放出し、吸着したVOCを相対的高温で窒素を使用して脱着して、VOC処理ガスを減容濃縮し、減容濃縮したVOCガスを少なくとも2塔式の吸着塔の1塔に於いて、揮発性有機化合物(以下VOC)及び水分を含有する空気を加圧して水分吸着塔に導入して水分選択型吸着剤と接触させて水分を吸着剤に吸着させてVOCと分離し、続いて最寒冷温度になるように冷却器で冷却してVOCを液化回収し、流過する低VOC、低水分濃度の空気を減圧して、他の水分吸着した水分選択型吸着剤吸着塔に導入して吸着剤と接触させて水分を吸着剤から脱着させて水分吸着剤を再生し、水分が破過する前に塔を切り替えて水分除去し、流過した窒素を水分除去した後、VOC選択型吸着剤の高温再生に使用する温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
上記方法で、請求項1において、少なくとも2塔式のVOC選択型吸着剤を充填したVOC吸着塔の替わりに、低温吸着ゾーンと高温再生ゾーンを有するローター式のVOC吸着塔を使用し、高温再生ゾーンのパージガスに窒素を使用し、低温液化凝縮器でVOCを液化回収した後、流過した窒素を水分除去後、VOC選択型吸着剤の高温再生に使用する、温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
同じく上記方法で、請求項1において、少なくとも2塔式のVOC選択型吸着剤を充填したVOC吸着塔の替わりに、低温吸着ゾーンと高温再生ゾーンを有するローター式のVOC吸着塔を使用し、高温再生ゾーンのパージガスに高温空気を使用し、低温液化凝縮器でVOCを液化回収した後、流過した不凝縮VOCおよび水分を含有する空気をVOC選択型吸着剤の低温吸着ゾーンに還流する、温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
(請求項1、2、3)
2.VOC選択型吸着剤が、シリカライト、USM、β、USY、MPSからなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。(請求項2)
3.水分選択型吸着剤が、K−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の低温液化VOC回収方法。(請求項3)
4.水分選択型吸着剤が、表面が液相で有機ケイ素化合物の加水分解生成物によりシリカコートされたK−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の低温液化VOC回収方法。
(請求項4)
5.水分選択型吸着剤が、表面が気相で有機ケイ素化合物の加水分解生成物によりシリカコートされたK−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の低温液化VOC回収方法。
(請求項5)
6.水分選択型吸着剤が、ハニカム形成された請求項1〜5のいずれか一に記載の水分除去、冷熱の回収を行う、低温液化VOC回収方法。
(請求項6)
【発明の効果】
【0009】
本方法においてはVOCと水分を含有する原料ガスを、室温近傍の相対的低温でVOC選択型吸着剤で吸着して、無害化した空気を系外に放出し、吸着したVOCを相対的高温で窒素を使用して、VOCを脱着して4〜12倍程度に減容濃縮するため、後段の低温液化VOC回収装置が小型でき、パージガスとして窒素を使用することから、高温再生時の回収VOCの劣化、VOC吸着剤の劣化を回避でき、またVOC回収時の引火、爆発等も回避できる。大気圧近傍の減容濃縮されたVOCの回収では、VOCを殆ど吸着しない水分吸着剤を充填された吸着塔で行われ、VOCを除去された窒素は前段のVOC吸着剤の再生に使用されるため、本方法においてはVOC含有空気中のVOCを室温以下の低温で液化、回収をすることが出来る。このため回収工程は窒素雰囲気で実施されるため安全であり、またVOCは劣化することなく回収され、VOC吸着剤も劣化されることがない。本方法を採用することにより、コンパクトで、窒素雰囲気で操作される安全な操作で、省エネルギーの、回収溶剤及び吸着剤の劣化のないVOCの回収装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施態様を示す。
【図2】本発明の第二の実施態様を示す。(実施例4)
【図3】本発明の第三の実施態様を示す。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において用いるVOC選択型吸着剤は、シリカライト、USM、β、USY、MPSからなる群より選ばれる一種以上であり、また、本発明において用いる水分選択型吸着剤は、K−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上である。ここでNa−K−Aは、Na−A型ゼオライトのNaの一部をKに交換して熱処理することにより窓径を縮小させたものであり、この調製法は非特許文献1に記載されている。
上記VOC選択型吸着剤は、VOC−水分2成分系において高いVOC/水分分離係数を有すると判断され、水分選択型吸着剤は、VOC−水分2成分系において高い水分/VOC分離係数を有すると判断される。
【0012】
水分選択型吸着剤としては、表面が液相又は気相で有機ケイ素化合物の加水分解生成物によりシリカコートされたK−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上であるのが好ましい。有機ケイ素化合物の加水分解生成物を気相又は液相で上記吸着剤結晶表面にシリカコートすることにより、水分選択性が強化される。
【0013】
本発明において用いる結晶表面にシリカコートを施した水分選択型吸着剤は、溶剤、例えばメチルアルコールにスラリー状にゼオライトパウダーを懸濁させ、これにテンプレート、例えばテトラエトキシオルソシリケート(TEOS)を結晶表面に必要な厚さに相当する量を加え、これにHO/TEOS比5〜20程度で水分を加えると、シリカが析出する。
【0014】
コーティング終了後、シリカゾルを加えてゼオライト:シリカゾル:脱イオン水=5〜30:1〜10:100程度でスラリーを調製し、これをハニカム基材に浸積して担持させ、温度約90〜150℃で約0.5〜3時間表面水分を除去し、約30〜80℃/hで昇温して約250〜450℃、約0.5〜3時間保持してケイ酸の脱水を完了してゼオライト結晶表面のSi−O−Siのネットワークを完成し且つ、脱水による活性化が終了する。このコーティング条件で結晶表面に0.05〜0.1μmのシリカ薄膜が生成する。
【0015】
又同じくTEOS(tetra−ethyl−ortho−silicate), TMOS(tetra−methyl−ortho−silicate)含有アンモニア蒸気をA型ゼオライトのパウダーに吸着させるとA型ゼオライト結晶の表面でTEOS,TMOSの加水分解によりにSi−O−Siのネットワークが構成されてシリカ薄膜が生成する。
【0016】
シリカコートを施したK−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aゼオライトは、これらの内の二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において用いる結晶表面にシリカコートを施した吸着剤は、ハニカム形成されたものを用いれば、吸着剤吸着塔を通過する際の圧損が小さくなることから望ましい。ハニカムの調製法としては、アルミノシリケートの基材に当該ゼオライトとシリカゾル等の無機バインダーの混合スラリーに浸積して、これを乾燥するとゼオライトが担持される。浸積と乾燥を数回繰り返すと所定の担持量に達する。(嵩密度0.3以上、ゼオライト担持量0.1g/ml以上)これを350℃以上、1時間焼成するとゼオライトの基材への固定と活性化が達成される。
他の方法としてはアルミノシリケートファイバー、当該ゼオライト、無機バインダー、セルロースでゼオライト含有ペーパを調製し(抄紙し)、この一部を段繰り機で波形に成型し、平板と波形板を交互に積層することでハニカムを成型する。これを350℃以上、1時間焼成するとゼオライトの基材への固定と活性化が達成される。
【0018】
[VOC吸着塔]
第1ステップ(A塔−吸着工程、B塔−再生工程)
図1に於いて、VOC、水分を含有する空気を流路1、ブロワー2からバルブ3aを通じてVOC/水分選択性の高いVOC吸着剤5の充填されたVOC吸着塔4aに、吸着温度約5〜50℃で供給されるとVOCのみが選択的に吸着されてVOCを除去された空気が塔後方から流過し、バルブ6a、流路7を通じて系外に放出される。この時、VOC吸着塔4bは前回の吸着工程で吸着されたVOCを保有しており、これを液化回収工程から還流しヒータ29で昇温された窒素はVOC吸着剤5と接触して、減容濃縮して脱着される。流路12から流過した減容濃縮したVOC含有窒素は低温液化回収ユニットのブロワー13に供給される。
【0019】
第2ステップ(A塔−再生工程、B塔−吸着工程)
ここで第1ステップと同じ操作をA塔とB塔を変更して、第2ステップで実施する。
【0020】
[PSA−VOC低温液化回収]
第1ステップ(A塔−吸着工程、B塔−向流パージ工程)
図1に於いて、VOC、水分を含有する窒素を流路12、ブロワー13からバルブ14aを通じて水分/VOC選択性の高い水分吸着剤16の充填された水分吸着塔15aに、吸着圧力約110〜150kPAで供給されると水分のみが選択的に吸着されてVOCを含有する室温、超乾燥状態の窒素が塔後方から流過し、減圧弁17a、バルブ18aを通じて蓄熱材20の充填された蓄熱材充填塔19aに供給される。この時、塔19aは前回の再生工程で回収された冷熱により冷却されており、VOC含有、室温の乾燥窒素と接触して、蓄熱材20は昇温し、乾燥窒素は冷却される。流路22から流過した低温、VOC含有乾燥窒素はチラーユニット23で最寒冷に冷却されて、流路25からVOCが液化回収される。未回収VOCを含有する低温、超乾燥窒素は流路24から蓄熱材20の充填された蓄熱材充填塔19bに供給され蓄熱材20は冷却されて、乾燥空気は昇温する。昇温した乾燥空気はバルブ18b、減圧弁17bを通じて水分吸着剤16の充填された水分吸着塔15bに向流に供給される。ここで吸着塔15bは、バルブ21bを通じて真空ポンプ26で排気されるため、再生圧力約50〜80kPaの低圧で吸着された水分は脱着して再生される。ここで蓄熱材としては0.5〜10mmφの鉄、アルミニュウム等の金属球で構成される。流過した水分含有窒素はチラーユニット27で冷却されて流路28から水分が除去され、ヒータ29にパージガスとして還流する。
【0021】
第2ステップ(A塔−吸着工程、B塔−昇圧工程)
水分吸着塔15bの水分吸着剤16の再生が終了し、水分吸着塔15aの水分吸着帯が塔後方に達する直前に、バルブ14bを閉じると蓄熱材充填塔19b、水分吸着塔15bの塔内圧力は吸着圧力とほぼ等しい圧力に昇圧して第2ステップは終了する。
【0022】
ここで第1〜2ステップと同じ操作をA塔とB塔を変更して、第3〜4ステップで実施する。本装置による温度スイング法VOC濃縮、水分吸着除去、蓄熱式冷熱回収を行う、低温液化VOC回収方法のシーケンスを表1に示す。
【表1】

以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【0023】
[TSA−VOC減容濃縮工程]
図1に於いて、アセトン1,800ppm、水分2.5vol%を含有する空気150mN/hを流路1、ブロワー2からバルブ3aを通じてアセトン/水分選択性の高いアセトン吸着剤5の充填されたアセトン吸着塔4aに、吸着温度約25℃で供給されるとアセトンのみが選択的に吸着されて、アセトン濃度180ppmの低アセトン濃度の空気が塔4a後方から流過し、バルブ6a、流路7を通じて系外に放出される。この時、アセトン吸着塔4bは前回の吸着工程で吸着されたアセトンを保有しており、これを液化回収工程から還流したヒータ29で昇温された窒素はアセトン吸着剤5と接触して、減容濃縮して脱着される。流路12から流過した、アセトン濃度13,500ppm、流量20mN/hのパージガスが、低温液化回収ユニットのブロワー13に供給される。
【0024】
[PSA−VOC低温液化回収]
引き続き、図1に於いて、アセトン、水分を含有する窒素を流路12、ブロワー13からバルブ14aを通じて水分/アセトン選択性の高い水分吸着剤16の充填された水分吸着塔15aに、吸着圧力約110〜150kPAで供給されると水分のみが選択的に吸着されてアセトンを含有する25℃、露点−68℃の超乾燥状態の窒素が塔後方から流過し、減圧弁17a、バルブ18aを通じて蓄熱材20の充填された蓄熱材充填塔19aに供給される。この時、塔19aは前回の再生工程で回収された冷熱により−55〜60℃に冷却されており、アセトン含有乾燥窒素と接触して、蓄熱材20は昇温し、乾燥窒素は−55℃に冷却される。流路22から流過した低温、アセトン含有乾燥窒素はチラーユニット23で−60℃に冷却されて、流路25からアセトンが液化回収される。アセトン濃度1,400ppmの未回収アセトンを含有する低温、超乾燥窒素は流路24から蓄熱材20の充填された蓄熱材充填塔19bに供給され蓄熱材20は冷却されて、乾燥窒素は20℃に昇温する。昇温した乾燥窒素はバルブ18b、減圧弁17bを通じて水分吸着剤16の充填された水分吸着塔15bに向流に供給される。ここで吸着塔15bは、バルブ21bを通じて真空ポンプ26で排気されるため、再生圧力約50〜80kPaの低圧で、吸着された水分は脱着して再生される。ここで蓄熱材としては0.5〜10mmφの鉄、アルミニュウム等の金属球で構成される。真空ポンプ26から流過した水分含有窒素はチラーユニット27で5℃に冷却されて、流路28から水分が液化除去されて、乾燥窒素は再生用パージガスとしてヒータ29に還流する。
【0025】
この工程が終了すると、第1〜2ステップと同じ操作をA塔とB塔を変更して、第3〜4ステップで実施する。
【実施例1】
【0026】
水分選択型吸着剤サンプル1−1〜1−12、比較例13、14及VOC選択型吸着剤サンプル2−1〜2−5による、a)水分選択型吸着剤としての各種ゼオライト系水分吸着剤の調製、b)同左性能評価および、c)VOC選択型吸着剤としての、各種ゼオライト系VOC吸着剤の性能評価を行った。
本発明の有効性を確認するため充填塔4a、4bのVOC選択型吸着剤ハニカム5として、シリカライト、USM、β、USY、MPSのハニカムを調製し、入口ガス量80m3N/h、入口ガス組成としてアセトン1,800ppm、水分2.5vol%、残ガス空気条件で、TSA−VOC減容濃縮ユニットとPSA−VOC低温液化回収ユニットから構成されるVOC回収装置の性能を評価した。
【0027】
ここで、充填塔15a、15bの水分選択型吸着剤ハニカム16として、K−A、Na−A、Na−K−A、K−A(10nm)、Na−A(10nm)、Na−K−A(10nm)、K−A(50nm)、Na−A(50nm)、Na−K−A(50nm)、K−A(100nm)、Na−A(100nm)、Na−K−A(100nm)の比較評価を行った。
【0028】
ここでK−A、Na−A、Na−K−Aの( )内はシリカコートの薄膜厚さである。ここでK−A、Na−A、Na−K−Aのシリカコートによるゼオライト結晶上の薄膜成長には、メチルアルコールにスラリー状にゼオライトパウダーを懸濁させ、これにテトラエトキシオルソシリケート(TEOS)を結晶表面に必要厚さに相当する量加え、これにHO/TEOSモル比10程度で水分を加えると、シリカが析出する。(今回は1回のコーティングで10〜20nmのシリカが析出するように調整し、今回は3回で50nm、5回で100nmになるように調整した。)
【0029】
コーティング終了後、ハニカム基材に浸積して嵩比重0.4程度に担持した後、110℃で1時間表面水分を除去した後に、50℃/hで昇温して350℃にし、350℃で1時間保持してケイ酸の脱水を完了してゼオライト結晶表面のSi−O−Siのネットワークを完成し且つ、脱水による活性化が終了する。
【0030】
水分選択型吸着剤SAMPLE#1−1〜1−12、比較例13、14及VOC選択型吸着剤SAMPLE#2−1〜2−5を使用したTSA−VOC減容濃縮ユニットとPSA−VOC低温液化回収ユニットから構成されるVOC回収装置の性能を表2に示す。(SAMPLE#14,15は比較参照品)
【0031】
【表2】

【0032】
いずれもアセトン回収率90%以上、水分吸着塔出口露点−60℃を下回っており、本発明の有効性が示される。VOC選択型吸着剤としては、いずれの高SiO/Al比のゼオライトおよびメソポーラスシリカも高いアセトン吸着性能を示しており、特にシリカライト、β、USYが高いアセトン吸着性能を示した。また水分選択型吸着剤としては、K−A、Na−K−A、Na−A及びこれらのシリカコート品はアセトンに対し分子篩効果を示す高い水分吸着性能を示した。特にK−A(10nm)は高い水分除去性能を示した。これは比較的大きな水分吸着速度とアセトンに対する分子篩効果を有する程度の窓径(結晶のガスの通り道)であるためと思われる。
【実施例2】
【0033】
次に、TSA−VOC減容濃縮ユニットのアセトン選択型吸着剤として最も性能の高いシリカライト、PSA−VOC低温液化回収ユニットの水分吸着剤として最も性能の高いK−A(10nm)をハニカムとして使用した、アセトン回収の結果を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】
同じく、物質収支を表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
原料流量150mN/h、アセトン1,800ppmにおいて出口アセトン濃度を180ppmに設定したので、アセトン回収率は90%となっている。吸着したアセトンは窒素20mN/h、温度120℃で脱着したので脱着アセトンは7.5倍に濃縮されアセトン濃度は14,000ppmに達した。これを脱水後、−60℃で液化回収したため不凝結ガス濃度は1,200ppmとなり供給されたアセトンの90%が回収され、不凝結ガスは脱水後、パージ窒素として循環使用した。窒素の回収率は99%であり、パージガスに窒素を使用したことから、吸着剤表面でのアセトンの熱分解は抑制され、また吸着剤の劣化も同じく抑制された。
【実施例3】
【0038】
次に、TSA−VOC減容濃縮ユニットの酢酸エチル選択型吸着剤として最も性能の高いシリカライト、PSA−VOC低温液化回収ユニットの水分吸着剤として最も性能の高いK−A(10nm)をハニカムとして使用した、酢酸エチル回収の結果を表5に示す。
【0039】
【表5】

【0040】
同じく、物質収支を表6に示す。
【表6】

【0041】
原料流量150mN/h、酢酸エチル3,500ppmにおいて出口酢酸エチル濃度を200ppmに設定したので、酢酸エチル回収率は94%となっている。吸着した酢酸エチルは窒素20mN/h、温度120℃で脱着したので脱着酢酸エチルは7.5倍に濃縮され酢酸エチル濃度は26,000ppmに達した。これを脱水後、−60℃で液化回収したため不凝結ガス濃度は1,200ppmとなり供給された酢酸エチルの95%が回収され、不凝結ガスは脱水後、パージ窒素として循環使用した。窒素の回収率は99%であり、パージガスに窒素を使用したことから、吸着剤表面での酢酸エチルの熱分解は抑制され、また吸着剤の劣化も同じく抑制された。
【実施例4】
【0042】
次に、最近普及しているハニカムロータを使用し、VOCを減容濃縮した後、PSA−VOCで液化回収する方法のフローシートを図2に示す。VOCとしてトルエン濃度5,000ppmを含有する空気150mN/hを流路1からUSYハニカム34の充填したハニカムロータ33に供給して、吸着ゾーン33aにおいて出口トルエン濃度100ppmになるように除去し、流路32、ブロワー35から系外に放出される。吸着したトルエンは脱着ゾーン33bにおいて、脱着工程のパージガスとして温度120℃、流量20mN/hの 高温窒素を使用し、ヒータ29から供給して脱着し、ブロワー11、流路12からPSA−VOCに、流量20mN/h、トルエン濃度30,000ppmで供給される。水分選択型吸着剤16としては最も性能の高いK−A(10nm)をハニカムとして使用した。PSA−VOC液化回収ユニットにおいて不凝結ガス濃度50ppmまで除去され、水分含有窒素はチラーユニット27で露点5℃まで冷却され、水分は流路28から系外に除去される。窒素をパージガスに使用することから回収トルエンおよびUSYの劣化は回避された。ハニカムロータでは流量の約5%がリークすることから、窒素を1mN/h程度を補充した。
【実施例5】
【0043】
同じく、最近普及しているハニカムロータの従来の使用法での、VOCを減容濃縮した後、PSA−VOCで液化回収する方法のフローシートを図3に示す。VOCとしてトルエン濃度500ppmを含有する空気150mN/hを流路31からUSYハニカム34の充填したハニカムロータ33に供給して、吸着ゾーン33aにおいて出口トルエン濃度50ppmになるように除去し、流路32、ブロワー35から系外に放出される。吸着したトルエンは脱着ゾーン33bにおいて、脱着工程のパージガスとして温度120℃、流量20mN/hの高温空気を使用し、ヒータ36から供給して脱着し、ブロワー11、流路12からPSA−VOCに、流量20mN/h、トルエン濃度3,000ppmで供給される。水分選択型吸着剤16としては最も性能の高いK−A(10nm)をハニカムとして使用した。PSA−VOC液化回収ユニットにおいて不凝結ガス濃度50ppmまで除去され、流路37から流路31に還流され最大のトルエン回収率での回収が行われる。空気をパージガスに使用することから回収トルエンおよびUSYは、5%/年程度の劣化が進行するが、パージガスとして窒素を使用する必要がなく、またPSA−VOCから放出される不凝結ガスは脱湿することなく還流できるので装置構成は簡略化される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
VOCガスを含む各種排気ガスよりVOCを回収することができ、外部に排出しない。また、回収されたVOCは殆ど劣化しておらず、VOCを低コスト、高効率に回収し、完全再利用することができる。前処理系で4〜12倍の減容濃縮ができるので、安価でコンパクトなVOC回収ユニットが提供できる。
【符号の説明】
【0045】
[TSA−VOC減容濃縮ユニット(2塔式)]
・ 7,12 流路
2,11 ブロワー
3a,3b.6a,6b,8a,8b,9a,9b 自動弁
4a、4b VOC吸着塔
5 VOC選択型吸着剤
18 減圧弁
[TSA−VOC減容濃縮ユニット(ハニカムロータ)]
31、32,37 流路
35 ブロワー
33 ハニカムロータ
33a 吸着ゾーン
33b 加熱再生ゾーン
36 ヒータ
[PSA−VOC液化回収ユニット]
12,22,24,28 流路
13 ブロワー
14a,14b.18a,18b,21a,21b 自動弁
15a、15b 水分吸着塔
16 水分選択型吸着剤
17a,17b 減圧弁
19a,19b 蓄熱材充填塔
20 蓄熱材
23,27 チラーユニット
26 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2塔式の吸着塔の1塔に於いて、揮発性有機化合物(以下VOC)及び水分を含有する空気を相対的低温でVOC吸着塔に導入してVOC選択型吸着剤と接触させてVOCを吸着剤に吸着させて空気を系外に放出し、吸着したVOCを相対的高温で窒素を使用して脱着して、VOC処理ガスを減容濃縮し、減容濃縮したVOCガスを少なくとも2塔式の水分吸着塔の1塔に於いて、揮発性有機化合物(以下VOC)及び水分を含有する空気を加圧して水分選択型吸着剤と接触させて水分を吸着剤に吸着させてVOCと分離し、続いて最寒冷温度になるように冷却器で冷却してVOCを液化回収し、流過する低VOC、低水分濃度の空気を減圧して、他の水分吸着した水分吸着塔に導入して水分選択型吸着剤と接触させて水分を吸着剤から脱着させて水分吸着剤を再生し、水分が破過する前に塔を切り替えて水分除去し、流過した窒素を水分除去後、VOC選択型吸着剤の高温再生に使用する温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
【請求項2】
請求項1において、少なくとも2塔式のVOC選択型吸着剤を充填したVOC吸着塔の替わりに、低温吸着ゾーンと高温再生ゾーンを有するローター式のVOC吸着塔を使用し、高温再生ゾーンのパージガスに窒素を使用し、低温液化凝縮器でVOCを液化回収した後、流過した窒素を水分除去後、VOC選択型吸着剤の高温再生に使用する、温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
【請求項3】
請求項1において、少なくとも2塔式のVOC選択型吸着剤を充填したVOC吸着塔の替わりに、低温吸着ゾーンと高温再生ゾーンを有するローター式のVOC吸着塔を使用し、高温再生ゾーンのパージガスに高温空気を使用し、低温液化凝縮器でVOCを液化回収した後、流過した不凝縮VOCおよび水分を含有する空気をVOC選択型吸着剤の低温吸着ゾーンに還流する、温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
【請求項4】
VOC選択型吸着剤が、シリカライト、脱アルミニュームモルデナイト(以下USM)、ベータ(以下β)、脱アルミニュームY型ゼオライト(以下USY)、高SiO2/Al2O3比メソポーラスシリカ(以下MPS)からなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
【請求項5】
水分選択型吸着剤が、K−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
【請求項6】
水分選択型吸着剤が、表面が液相で有機ケイ素化合物の加水分解生成物によりシリカコートされたK−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
【請求項7】
水分選択型吸着剤が、表面が気相で有機ケイ素化合物の加水分解生成物によりシリカコートされたK−A、Na−A、Na−K−A及びCa−Aからなる群より選ばれる一種以上である請求項1記載のVOC、水分含有空気からの水分除去後の温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。
【請求項8】
VOC選択型吸着剤および水分選択型吸着剤が、ハニカム形成された請求項1〜7のいずれかに記載の水分除去、冷熱の回収を行う、温度スイング法VOC濃縮、低温液化VOC回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−172804(P2010−172804A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16750(P2009−16750)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(506233117)吸着技術工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】