説明

周期性パターンのムラ検査装置および方法

【課題】周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのようにセルピッチやパターンの方向性が多岐にわたるような被検査体に対し、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラを高精度に撮像、検出可能な周期性パターンのムラ検査装置、および方法を提供する。
【解決手段】照明部10と、被検査基板60の位置決め動作および検査撮像時におけるスキャンニング動作が可能なX−Y−θステージ部20と、被検査基板60の位置決めを実施するためのアライメント用撮像部30と、被検査基板60の検査画像を撮像するための検査撮像部40と、装置全体の動作制御および映像出力を画像情報として画像入力し、画像演算処理を行い、画像情報・検査情報の授受を行い、さらに画像を表示する機能を有する処理・制御部100から構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期性パターンを有する被検査体においてパターンのムラを検査するための装置および方法に関する。周期性パターンとは、一定の間隔を有するパターンの集合体を称し、例えば、パターンが所定のピッチで配列したストライプ状の周期性パターン、または開口部のパターンが所定の周期で2次元的に配列したマトリクス状のパターン等が該当する。周期性パターンを有する被検査体としては特に、半導体装置、撮像デバイスおよび表示デバイス等を製造する際にフォトリソグラフィー処理の露光工程で用いられるフォトマスクが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置、撮像デバイスおよび表示デバイス等の製造工程で用いられるフォトマスクとしては、ガラス等の透明基板上にクロム等の遮光膜が一定のパターンに部分的に除去されて構成されたものが知られている。
【0003】
フォトマスクのような周期性パターンにおけるムラ欠陥は、通常微細なピッチズレや位置ズレが規則的に配列していることが原因であることが多いため、個々のパターン検査では発見することが困難であるが、周期性パターンを広い領域において観察した時に初めて認識される欠陥である。
【0004】
従来の周期性パターンにおけるムラ検査では、同軸の透過照明や平面照明を用いて透過率画像を撮像し、各々の画像での光強度を比較することによって正常部とムラ部の視認を行っている。しかし、正常部とムラ部における光の強度差は決して大きいわけではなく、得られる画像のコントラストは低い。そのため、コントラストの低い画像に対しその強度差の処理方法を工夫することでコントラストアップを図り、ムラ部を抽出し検査を行っている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、上記従来技術においては、格子状周期性パターンのブラックマトリクスのムラ、特に開口部の大きいブラックマトリクスのムラの撮像において、正常部とムラ部でのコントラスト向上が期待されず、強度差の処理を工夫したとしても元画像のコントラストが低い画像の場合の検査では、目視での官能検査方法より低い検査能力しか達成できないという問題がある。
【0006】
一方、半導体の微細化や、微細な表示と明るい画面の電子部品の増加により、前記周期性パターンでは微細化、または開口部比率の増大傾向が進んでいる。将来的には、より開口部の大きい、より微細形状の周期性パターンのムラ検査装置およびその方法が必要となる。すなわち、従来の光の振幅による光の強度(明るさ)の強弱のみの出力では限界がある。
【0007】
そこで、周期性のあるパターン、例えばブラックマトリクスムラを安定的、高精度に撮像、検出可能な周期性パターンムラ検査装置を提供することを目的として、照明光が被検査体に照射され、周期性パターンによって生じる透過回折光を画像検査する、例えば特許文献2のような検査装置が提案された。周期性パターンの正常部では開口部の形状・ピッチが一定となるため互いに干渉し一定の方向に回折光を生じる。それに対し、ムラ部では開口部の形状、ピッチが不規則になるため、形状、ピッチに応じて種々の方向に、種々の強さで回折光が生じる。この検査装置では、正常部とムラ部における回折光強度コントラストの違いから、ムラ部を検出する方式をとっている。
【0008】
ところで、周期性パターン、例えばフォトマスクにおいては、パターンの微細化が急速に進んでおり、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクにおいては、ウエハ転写時におけるセルピッチが1μmに迫るほどである。さらに、パターン微細化が進んでいることへの技術対策として各種のパターン解像力向上技法が提案されてきており、その中の一つとしてハーフトーンマスクが利用されてきている。ハーフトーンマスクは従来のCrマスクと異なり、露光波長で高いコントラストが得られるような半透膜が用いられており、その透過率はCr遮光膜のそれと比べて高くなっている。
【0009】
さらに描画機におけるパターン描画精度の向上に伴い、数nmオーダーの微細な寸法ズレや位置ズレによって生じるようなムラが問題視されるようになってきている。このような微小な変動量によって生じる回折光コントラスト差の情報量は極めて乏しいため、それに応じた高感度・高分解能である検査撮像技術を確立する必要がある。
【0010】
一方で、CCD/CMOSイメージャーマスクでは数10μm程度のセルピッチを有するような既存製品に対するムラ検査ニーズも依然として高いのが現状であり、検査対象となる製品におけるセルピッチは多岐に渡ることとなる。そのため、撮像系としてフレキシブルに検査撮像倍率を可変できるような機能を具備していることが要求される。
【0011】
またパターンにおける変動量が同一であっても、寸法ズレや位置ズレといったパターン変動形態、パターン形状の方向性によって発生するムラの様相、コントラストの強弱は異なる。そのため、1枚の製品検査における撮像回数が複数回にわたる可能性も生じてくる。検査に要するタクトタイムをなるべく短縮し高スループット化を実現するためにも、1回の撮像においてなるべく広い撮像視野を確保することが望まれる。
【0012】
以下に公知文献を記す。
【特許文献1】特開2002−148210号公報
【特許文献2】特開2006−208084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのようにセルピッチやパターンの方向性が多岐にわたるような被検査体に対し、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラを高精度に撮像、検出可能な周期性パターンのムラ検査装置、および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために為された請求項1に記載の発明は、基板上に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査装置であって、
前記基板を載置し、X軸、Y軸およびθ軸方向に駆動する機構を具備する搬送手段と、
前記基板の所定領域に光を照射してその所定領域を撮像して得られた画像に所定の画像処理を行って、前記基板の被検査面内方向における位置決めを行う位置決め手段と、
照明光として可視光を発生可能な光源を具備する照明光源手段と、
前記照明光源手段からの照明光を導光し、所定領域に照明光を照射するための照明ヘッド部と、
前記照明ヘッド部を支持し、かつ、前記搬送手段に載置された前記基板上の一定領域に照明光を照射しつつ前記基板の被検査面に垂直な方向に対する照明光照射角度を制御可能な照明ヘッド駆動手段と、
前記照明ヘッド部によって照明光が前記周期性パターンに照射されることにより生じる回折光を撮像する検査撮像手段と、
前記位置決め手段からの映像出力と、前記検査撮像手段からの映像出力を画像情報とする画像入力手段と、
前記画像入力手段により得られた画像情報について、欠陥部抽出・判定および解析処理を行い、かつ前記搬送手段、前記位置決め手段、前記照明光源手段、前記照明ヘッド部、前記照明ヘッド駆動手段、前記検査撮像手段の動作制御を行う処理・制御手段と、
前記位置決め手段および前記検査撮像手段にて撮像した画像、および前記処理・制御手段による処理画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするムラ検査装置としたものである。
【0015】
また請求項2に記載の発明は、前記位置決め撮像手段が、高輝度スポット型のLED照明を具備し、また検査対象基板に対して垂直に平行光を照射し、かつ検査対象基板からの垂直な反射光のみを抽出する光学系を具備することを特徴とする、請求項1に記載のムラ検査装置としたものである。
【0016】
また請求項3に記載の発明は、前記検査撮像手段が、ラインセンサカメラおよび撮像倍率調整機構を有するレンズを具備していることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載のムラ検査装置としたものである。
【0017】
また請求項4に記載の発明は、前記照明ヘッド部が、検査対象基板に対してライン状の平行光を照射し、かつ前記検査撮像手段が、前期周期性パターンにより生じる回折光のうち、検査対象基板に対して垂直な回折光のみを抽出する光学系を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のムラ検査装置としたものである。
【0018】
また請求項5に記載の発明は、前記照明ヘッド部による照明が、透過照明または反射照明であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のムラ検査装置としたものである。
【0019】
また請求項6に記載の発明は、前記照明光源手段がメタルハライドランプであり、かつ動作時間に対する光量変動幅が1%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のムラ検査装置としたものである。
【0020】
また請求項7に記載の発明は、前記照明光源手段は、内部にバンドパスフィルターが複数設置可能であり、かつ前記バンドパスフィルターを切り替え可能なフィルターチェンジャー部を内蔵していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のムラ検査装置としたものである。
【0021】
また請求項8に記載の発明は、前記処理・制御手段が、少なくとも1台以上の情報処理手段を備え、各々の情報処理手段はローカルエリアネットワークにて接続されており、情報分配手段を経由して撮像結果情報・処理結果情報の伝達を相互に行うことが可能であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のムラ検査装置としたものである。
【0022】
また請求項9に記載の発明は、基板上に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、前記基板に照明光を複数の照射角度で斜め入射し、周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査方法であって、
前記周期性パターンの、ピッチ、サイズ等の情報を入力する検査対象基板情報入力工程と、
前記基板の被検査内方向における位置決めを行う位置決め工程と、
前記周期性パターンに照明光を照射すると生じる回折光の測定を、前記複数の照射角度での照明について行い、各照射角度での回折光強度を取得し、回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得工程と、
前記回折光強度取得工程において得られた回折光強度プロファイルと、前記検査対象基板情報入力工程において入力された前期周期性パターンに関する情報とを元に、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を設定する検査条件設定工程と、
検査条件設定工程にて設定された条件で、前記周期性パターンに照明光を照射すると生じる回折光を撮像する検査撮像工程と、
前記検査撮像工程で得られた映像出力を画像情報とする画像入力工程と、
前記画像入力工程により得られた画像情報について、欠陥部抽出・判定および解析処理を行う情報処理工程と、
を有することを特徴とするムラ検査方法としたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の周期性パターンのムラ検査装置および方法によれば、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのようにセルピッチやパターンの方向性が多岐にわたるような被検査体に対し、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラを高精度に撮像、検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を適用する周期性パターンのムラ検査装置の実施形態について説明する。図1は本発明によるムラ検査装置1の概略構成図である。図1では透過回折光を得るための装置構成例を示している。なお、本装置は外乱光や迷光を極力低減させた暗環境かつ被検査基板への異物付着を防止するクリーン環境で稼動されることが望ましい。
【0025】
図1に示すように、本装置は透過照明部10と、被検査基板60の位置決め動作および検査撮像時におけるスキャンニング動作が可能なX−Y−θステージ部20と、被検査基板60の位置決めを実施するためのアライメント用撮像部30と、被検査基板60の検査画像を撮像するための検査撮像部40と、処理・制御部100から構成されている。
【0026】
処理・制御部100は、透過照明部10、X−Y−θステージ部20、アライメント用撮像部30、検査撮像部40を構成する機器類の動作制御を行い、アライメント用撮像部30および検査撮像部40からの映像出力を画像情報として画像入力を行い、画像強調処理等の演算処理を行う。処理・制御部100の主要部である第1の情報処理手段101と第2の情報処理手段104は、情報分配手段105を用いて相互に画像情報・検査情報の授受を行い、さらにそれぞれの処理結果や処理画像を、表示手段108、109に表示する。
【0027】
透過照明部10では、円弧レール11が設置されており、円弧レール11にはライン型照明ヘッド12が設けられており、光源13からはライトガイド14を用いて導光している。円弧レール11上でライン型照明ヘッド12を駆動することによって被検査基板60の被検査面に対して垂直方向の照射角度調整を可能としている(なお、この駆動軸をφ軸と定義する)。円弧レール11上のどの位置にあってもライン型照明ヘッド12は、X−Y−θステージ部20上の所定位置に照明光を照射することができるように調整されており、これによって、X−Y−θステージ部20上の被検査基板60の被検査面に対して、様々な照射角度からの透過照明が可能となっている。
【0028】
なお、ライン型照明ヘッド12には平行光学系が設けられている。光源13にはフィルターチェンジャー機構が設けられており、複数の波長選択フィルタを用いることが可能となっている。また、本実施形態では光源13にはメタルハライドランプを用いており、動作時間に対する光量変動幅が1%以下で光量安定度が高いものを選定していることが特徴である。
【0029】
図2は、X−Y−θステージ部20を模式的に示したものである。被検査基板60は、X−Y−θステージ部20の所定の位置に載置される。被検査基板60載置部は、中空であることが特徴である。
【0030】
X−Y−θステージ部20は、被検査基板60を図2のX軸方向およびY軸方向に平行移動する機能と、被検査基板60をその被検査面内で360°回転させる機能を有する(この回転中心の軸をθ軸とする。)。これによって、予め設定した動作手順に従って被検査基板60をX軸およびY軸方向に駆動する。また、θ軸を中心として被検査基板60を面内回転させることにより、被検査基板60の被検査面内への照明照射方向の調整が可能である。
【0031】
Y軸方向への駆動は、被検査基板60の搬送用と、検査撮像のためのスキャン時の駆動用を兼ねている。スキャン時の駆動は等速度性が確保されていることが望ましく、さらにはリニアエンコーダなどを利用した高精度位置決め機構を備えていることが望ましい。また、アライメント用撮像部30および検査撮像部40の被写界深度の値がある程度小さくても問題がないよう、ステージ側には除振機能が設けられていることが望ましい。
【0032】
アライメント用撮像部30は、カメラ31、レンズ32、照明33、そして照明制御装置34から構成される。被検査基板60上のアライメントマークを含む領域に対して同軸落射形式で照明光が照射され、その観察画像がカメラ31により撮像される。なお、照明制御装置34により、照明は点灯/消灯制御および照明光強度の調節ができるようになっており、実際の制御動作は処理・制御部100により実施される。なお、本実施例ではカメラ31にはエリアCCDカメラを、レンズ32には同軸落射形式の固定倍率テレセントリックレンズを、そして照明33には高輝度スポット型の白色LEDを用いている。
【0033】
検査撮像部40は、画像を撮像する手段としてのカメラ41と、撮像側平行光学系42から構成される。カメラ41としては、各種画素数のラインセンサカメラを使用することができるが、撮像視野をある程度確保するためにも、なるべく高画素数であることが望ましく、場合によっては多画素エリアカメラの選択も可能である。
【0034】
撮像時におけるカメラ露光時間は、撮像倍率に応じて調整する必要がある。カメラ露光時間はカメララインレートを調整することにより可変であるが、撮像時のステージ速度がカメララインレートに依存するため、ステージ速度が上限値を超えないよう注意が必要である。なお本実施形態ではカメラ41は8192画素のラインセンサカメラを用いているが、カメラ露光時間調整機能を用いても撮像画像における明るさが確保できない場合には、TDIラインセンサカメラを使用してもよい。また、複数台の性能の異なるカメラとカメラ切替機構を具備することにより、使用カメラの切替で検査毎に最適なものを選択できるようにしてもよい。
【0035】
撮像側平行光学系42には、光学倍率可変の電動ズームレンズを用いるが、絞りの自動調整機能が備わっていてもよい。撮像倍率は、被検査基板60における周期性パターンのセルピッチにもよるが、0.2倍程度の低倍域から3倍程度の高倍域まで確保されていることが望ましい。
【0036】
処理・制御部100では、第1の情報処理手段101にて透過照明部10、X−Y−θステージ部20、アライメント用撮像部30、および検査撮像部40の動作管理および制御を行う。さらに第1の情報処理手段101では、アライメント用撮像部30および検査撮像部40からの映像出力を画像入力装置102、103によりディジタル化した画像情報として取り込み、該画像情報特徴量の数値化を行い、ムラ欠陥の検出を行う。第2の情報処理手段104では、第1の情報処理手段101にて処理された結果に対する合否判定、追加処理といったデータ処理を実施する。
【0037】
データ処理手順としては、シェーディング補正や膨張・収縮処理等のノイズ除去処理や、フィルタリング処理等による画像強調処理、プロジェクション法等による特徴量抽出処理、欠陥部画像の切り出し処理、およびそれらの複合処理等が挙げられる。また、装置内にローカルエリアネットワークを構築することにより、情報分配手段105を経由して、検査撮像により得られた画像情報や処理情報の101と104の間でのデータ授受が可能であり、また外部記憶装置106に対しては、第1の情報処理手段101、および第2の情報処理手段104からの処理情報読み出し・書き込みが都度可能である。さらに、上位側情報分配手段107への接続により、他製造装置との情報共有、さらには装置稼動状況の伝達を行うことも可能である。
【0038】
図3は、本発明の実施形態による検査方法を示すフローチャート図である。本発明の実施形態による検査方法は、S1〜S20という一連のステップによって行われる。以下、各ステップの内容をステップ順に説明する。
【0039】
装置電源の投入、装置イニシャライズなど、装置全体の立ち上げを行う(S1)。
【0040】
被検査基板60におけるセルピッチ、チップレイアウト、管理No.等の製品情報を、上位側情報分配手段107経由で第1の情報処理手段101へ読み込むか、あるいは直接第1の情報処理手段101へ入力する(S2)。
【0041】
X−Y−θステージ20の所定の位置に、被検査基板60を載置・固定する(S3)。
【0042】
X−Y−θステージ20を駆動して、被検査基板60をアライメント用撮像部30の位置まで移動する(S4)
【0043】
X、Y、θ軸の調整とアライメント用撮像部30により、被検査基板60に対するアライメント動作を実施する(S5)。
【0044】
アライメント動作完了後、検査撮像部40の位置までX−Y−θステージ20を移動する(S6)。
【0045】
検査撮像部40、および透過照明部10を活用して、周期性パターン配列方向に準ずる所定のθ軸位置において、複数のφの値に対して被検査基板60における回折光強度を測定し、回折光強度プロファイルを得る(S7)。
【0046】
カメラ41としてラインカメラを用いた場合における、回折光強度プロファイル取得方法の一例について図4に模式的に示し、以下で少し説明する。
【0047】
φ=0°〜60°の範囲で円弧レール11を駆動させ、被検査基板60へ照明光を投光する。その際、被検査基板60上の周期性パターンにおいて発生する回折光強度は連続的に変化することとなる。この回折光強度変化を、円弧レール11の動作とラインカメラの露光タイミングを同期させた状態でスキャンニング撮像を実施することで取得する。この時、被検査基板60は固定したままである。
【0048】
取得された回折光強度変化は画像入力装置102を経由して画像情報として第1の情報処理手段101に取り込まれ、画像イメージが形成される。この時、画像上下方向のピクセル数は、円弧レールの駆動角度範囲内で露光撮像を行った回数分となる(図4中では角度刻み幅0.5°の場合を示してある)。
【0049】
このようにして得られた画像イメージに対し、画像上下方向に対して輝度値のラインプロファイルを作成する、この時、幅方向のピクセル数(図中では8192ピクセル)全てにおいて画像上下方向のラインプロファイルを作成し、幅方向のピクセル数で割った平均プロファイルを用いても良い。得られたプロファイルに対して、データ補間や平滑化といった所定のデータ処理を実施し、回折光強度プロファイルが作成される。
【0050】
S2にて入力された製品情報からφに対する回折光強度ピークを算出する(S8)。
【0051】
S7にて得られた回折光強度プロファイルピーク位置と、S8にて算出された回折光強度ピークとの比較から、φ軸における透過照明角度条件を決定する(S9)。
【0052】
S2にて入力された製品情報を基に、撮像倍率、カメララインレート等の撮像条件を決定する(S10)。
【0053】
上記S7〜S10による検査条件の設定が終了した後、X−Y−θステージ20を所定の動作に従って駆動させ、カメラ41による撮像により画像情報を取得する。また、同一範囲での撮像を複数回繰り返し、複数の検査画像を取得してもよい。このように複数回の撮像を行う場合には、撮像時ごとに透過照明部および撮像部の設定を異なる設定に変更し、複数の異なる検査条件下における検査画像を取得しても良い(S11)。
【0054】
以上のようにして得られた検査画像に対して、第1の情報処理手段101にてシェーディング補正や膨張・収縮処理等のノイズ除去処理、フィルタリング処理等による画像強調処理、プロジェクション法等による特徴量抽出処理、ムラ欠陥画像切り出し等の各種データ処理を行い、検査画像の特徴量を数値化し、被検査基板60に対する検査結果を外部記憶装置106に対して出力する。なお出力された検査結果に対しては、上位側情報分配手段107を経由して、指定された外部端末から結果を閲覧可能としても良い(S12〜S14)。
【0055】
さらに、必要に応じて第2の情報処理手段104を活用し、検査結果に対し、ムラ欠陥の分類や数値についてその結果の妥当性を判断するためのレビュー処理を実行する。第2の情報処理手段104から情報分配手段105を経由して外部記憶装置106に接続し、ムラ欠陥画像、検査結果情報を読み込む。読み込んだ情報を基にレビュー処理を実行し、最終的な判定処理を下した後、検査結果の出力を行う(S15、S16)。
【0056】
これらの手順により被検査基板60の検査が終了した後、X−Y−θステージを初期位置へ移動し、被検査基板60を搬出し、装置全体の立ち下げを行い、本装置における周期性パターンのムラ検査の全工程が終了する(S17〜S20)。
【0057】
以上に記述した各工程における一連の動作は、対人操作装置110、111による操作あるいは予め組み込まれたプログラムによって実行され、これらの検査経過情報や出力結果等が表示装置108、109に表示される。
【0058】
以上で説明した周期性パターンのムラ検査装置は、斜め方向からの投光を行うことによって生じる、周期性パターンでの透過回折光を撮像することを特徴とするものである。
【0059】
このように構成された周期性パターンのムラ検査装置においては、透過照明部10から照射された光が、被検査基板60の周期性パターンにて回折され、その回折光が画像として検査撮像部40により捉えられる。回折光においては、スリット部または開口部の形状やピッチの差異が強調される効果があり、さらに照明の入射角度を少しずつ変化させることによっても回折光の差異は強調される。
【0060】
被検査基板60にて回折された回折光は、フォトマスクやブラックマトリクスの線幅やスリット幅、パターンの寸法や位置ズレ等に微妙な変動があると、その変動部において光の回折角が変化するため、検査撮像部40によって捉えられた画像は変動部に起因したムラを強調した画像となる(図5に模式的に示す)。さらに、透過照明部10、検査撮像部40に平行光学系を用いることによって、回折光の変動をより精度良く強調した画像を捉えることが可能となる。
【0061】
また図6に、ラインセンサカメラにより被検査基板60としてフォトマスクを検査した場合におけるムラ可視化例を模式的に示す。ここで用いたラインセンサカメラのCCDセルサイズは7μmであり、この時の撮像倍率は0.35倍である。したがって撮像分解能は20μmである。この時のカメラ視野幅は163mm程度であり、1度のスキャン撮像にてフォトマスク全面におけるムラ欠陥画像の取得が短時間で可能である。なおこの場合、6インチサイズのフォトマスクに対して撮像を実行した場合、1回のスキャンに要する時間は1秒以内である。
【0062】
上記のようにして、周期性のあるパターン、特にCCD/CMOSイメージャー用フォトマスクのようにセルピッチやパターンの方向性が多岐にわたるような被検査体に対し、数nmオーダーの寸法ズレや位置ズレによって生じるムラを高精度に撮像、検出することができる。
【0063】
また、動作時間に対する光量変動幅が1%以下で光量安定度が高い光源を採用したことにより、検査により取得される画像の安定性・検査結果再現性を確保することが可能となる。
【0064】
そして、判定されたムラの種類、ムラ部の位置やレベル等をムラ画像と同時に表示装置108および109に表示することで、ムラのモニター用途としての利用も有効となっている。
【0065】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、周期性パターンのムラを安定に、高精度に検出することができる。

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の周期性パターンのムラ検査装置概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明における、X−Y−θステージ部20の模式図である。
【図3】本発明の検査方法の実施形態を示すフローチャート図である。
【図4】本発明における、回折光強度プロファイル取得手段例の模式図である。
【図5】本発明における、回折光による周期性パターンムラ可視化例の模式図である。
【図6】本発明における、フォトマスクを被検査基板とした場合におけるムラ可視化例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0067】
10 透過照明部
11 円弧レール
12 ライン型照明ヘッド
13 光源
14 ライトガイド
20 X−Y−θステージ部
30 アライメント用撮像部
31 カメラ
32 レンズ
33 照明
34 照明制御装置
40 検査撮像部
41 カメラ
42 撮像側平行光学系
60 被検査基板
100 処理・制御部
101 第1の情報処理手段
102 画像入力装置
103 画像入力装置
104 第2の情報処理手段
105 情報分配手段
106 外部記憶装置
107 上位側情報分配手段
108 表示手段
109 表示手段
110 対人操作手段
111 対人操作手段
112 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査装置であって、
前記基板を載置し、X軸、Y軸およびθ軸方向に駆動する機構を具備する搬送手段と、
前記基板の所定領域に光を照射してその所定領域を撮像して得られた画像に所定の画像処理を行って、前記基板の被検査面内方向における位置決めを行う位置決め手段と、
照明光として可視光を発生可能な光源を具備する照明光源手段と、
前記照明光源手段からの照明光を導光し、所定領域に照明光を照射するための照明ヘッド部と、
前記照明ヘッド部を支持し、かつ、前記搬送手段に載置された前記基板上の一定領域に照明光を照射しつつ前記基板の被検査面に垂直な方向に対する照明光照射角度を制御可能な照明ヘッド駆動手段と、
前記照明ヘッド部によって照明光が前記周期性パターンに照射されることにより生じる回折光を撮像する検査撮像手段と、
前記位置決め手段からの映像出力と、前記検査撮像手段からの映像出力を画像情報とする画像入力手段と、
前記画像入力手段により得られた画像情報について、欠陥部抽出・判定および解析処理を行い、かつ前記搬送手段、前記位置決め手段、前記照明光源手段、前記照明ヘッド部、前記照明ヘッド駆動手段、前記検査撮像手段の動作制御を行う処理・制御手段と、
前記位置決め手段および前記検査撮像手段にて撮像した画像、および前記処理・制御手段による処理画像を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするムラ検査装置。
【請求項2】
前記位置決め手段が、高輝度スポット型のLED照明を具備し、また検査対象基板に対して垂直に平行光を照射し、かつ検査対象基板からの垂直な反射光のみを抽出する光学系を具備することを特徴とする、請求項1に記載のムラ検査装置。
【請求項3】
前記検査撮像手段が、ラインセンサカメラおよび撮像倍率調整機構を有するレンズを具備していることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載のムラ検査装置。
【請求項4】
前記照明ヘッド部が検査対象基板に対してライン状の平行光を照射し、かつ前記検査撮像手段が、前記基板の周期性パターンにより生じる回折光のうち、前記基板の被検査面に対して垂直な回折光のみを抽出する光学系を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のムラ検査装置。
【請求項5】
前記照明ヘッド部による照明が、透過照明または反射照明であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のムラ検査装置。
【請求項6】
前記照明光源手段がメタルハライドランプであり、かつ動作時間に対する光量変動幅が1%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のムラ検査装置。
【請求項7】
前記照明光源手段は、内部にバンドパスフィルターが複数設置可能であり、かつ前記バンドパスフィルターを切り替え可能なフィルターチェンジャー部を内蔵していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のムラ検査装置。
【請求項8】
前記処理・制御手段が、少なくとも1台以上の情報処理手段を備え、各々の情報処理手段はローカルエリアネットワークにて接続されており、情報分配手段を経由して撮像結果情報・処理結果情報の伝達を相互に行うことが可能であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のムラ検査装置。
【請求項9】
基板上に周期性パターンが形成された基板を検査対象とし、前記基板に照明光を複数の照射角度で斜め入射し、周期性パターンにより生じる回折光を用いて検査するムラ検査方法であって、
前記周期性パターンの、ピッチ、サイズ等の情報を入力する検査対象基板情報入力工程と、
前記基板の被検査内方向における位置決めを行う位置決め工程と、
前記周期性パターンに照明光を照射すると生じる回折光の測定を、前記複数の照射角度での照明について行い、各照射角度での回折光強度を取得し、回折光強度プロファイルを得る回折光強度取得工程と、
前記回折光強度取得工程において得られた回折光強度プロファイルと、前記検査対象基板情報入力工程において入力された前期周期性パターンに関する情報とを元に、照明光の照射角度、撮像倍率および照明光波長を設定する検査条件設定工程と、
検査条件設定工程にて設定された条件で、前記周期性パターンに照明光を照射すると生じる回折光を撮像する検査撮像工程と、
前記検査撮像工程で得られた映像出力を画像情報とする画像入力工程と、
前記画像入力工程により得られた画像情報について、欠陥部抽出・判定および解析処理を行う情報処理工程と、
を有することを特徴とするムラ検査方法。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−222631(P2009−222631A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69008(P2008−69008)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】