説明

回折光学素子及び計測装置

【課題】均一で安定性の高い光スポットを発生させる回折光学素子を提供する。
【解決手段】複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第1の回折素子と、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第2の回折素子と、を有し、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる回折光学素子であって、前記第1の回折素子において前記基本ユニットの配列方向を第1の方向とし、前記第2の回折素子において前記基本ユニットの配列方向を第2の方向とし、前記光が前記第1の回折素子、前記第2の回折素子の順に入射するとき、前記第1の回折素子で発生する回折光がさらに、前記第2の回折素子に入射して発生する0次光の最近接距離をΔxとし、前記第2の回折素子により発生する回折光及び迷光における最近接距離をαとした場合、前記第1の方向と前記第2の方向のなす角φが、−|φ|<φ<|φ|、かつ、φ≠0、sinφ=−α/Δxであることを特徴とする回折光学素子を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折光学素子及び回折光学素子を用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光の少なくとも一部を回折する回折光学素子は、様々な光学機器及び光学装置等に用いられている。光学機器としては、例えば、光学的な3次元計測装置は、所定の光の投影パターンを測定対象物に照射し、所定の光の投影パターンの照射されている測定対象物の画像を取得することにより、3次元計測を行なう装置がある。このような3次元計測装置において、回折光学素子は、所定の光の投影パターンを生成するために用いられている。
【0003】
特許文献1には、3次元計測を行う際に、測定対象物に照射される光の投影パターンとして、回折光学素子により生成されたスペックルパターンを照射する方法が開示されている。また、特許文献2には、回折光における光量分布の制御性を向上させるため、複数の回折光学素子を用いる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6101269号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/093228号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において、スペックルパターンは、投影面内においてランダムな位置に強度の強い光スポットが発生するため、光スポットの投影面における面内分布に粗密が生じてしまう。このため、スペックルパターンにおける光スポットが照射されない領域では、3次元情報を取得することができず、正確な3次元計測を行なうことができない。よって、3次元計測装置における解像度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献2のように、回折光学素子を複数用いた場合、回折光学素子により発生する迷光を考慮する必要がある。即ち、回折光の光スポットと迷光の光スポットとが重なる場合、光の干渉により光強度が不安定となり、光強度が極端に低下する場合がある。このように光スポットにおける光強度が低下してしまうと、光スポットの投影面における面内分布に粗密が生じてしまい、3次元計測等を正確に行なうことができなくなる。
【0007】
本発明は、上記点に鑑みたものであり、回折光の光スポットの光強度が安定しており、所定の光強度を有する複数の光スポットを簡易に得ることのできる回折光学素子を提供すること、また、精密な計測を行なうことができる計測装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第1の回折素子と、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第2の回折素子と、を有し、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる回折光学素子であって、前記第1の回折素子において前記基本ユニットの配列方向を第1の方向とし、前記第2の回折素子において前記基本ユニットの配列方向を第2の方向とし、前記光が前記第1の回折素子、前記第2の回折素子の順に入射するとき、前記第1の回折素子で発生する回折光がさらに、前記第2の回折素子に入射して発生する0次光の最近接距離をΔxとし、前記第2の回折素子により発生する回折光及び迷光における最近接距離をαとした場合、前記第1の方向と前記第2の方向のなす角φが、
−|φ|<φ<|φ|、かつ、φ≠0、
sinφ=−α/Δxであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記第1の回折素子に形成される基本ユニットのピッチと、前記第2の回折素子に形成される基本ユニットのピッチとは、2次元方向において、ともに異なる値であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている回折素子を複数有し、前記複数の回折素子に光を入射させることにより、2次元的な回折光を発生させる回折光学素子であって、前記回折光における光スポットの中心と前記複数の回折素子により発生した迷光の光スポットの中心との距離をdとし、前記光スポットの半径をrとした場合、d>rであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第1の回折素子と、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第2の回折素子と、を有し、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる回折光学素子であって、前記回折光における光スポットの中心と前記第1の回折素子及び前記第2の回折素子により発生した迷光の光スポットの中心との距離をdとし、前記光スポットの半径をrとした場合、d>rであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第1の回折素子に形成される基本ユニットのピッチと、前記第2の回折素子に形成される基本ユニットのピッチとは、2次元方向において、ともに異なる値であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、d>2rであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、光を発する光源と、前記光が入射し回折光が出射される前記記載の回折光学素子と、前記回折光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回折光の光スポットの光強度が安定しており、所定の光強度を有する複数の光スポットを簡易に得ることのできる回折光学素子を提供することができる。また、精密な計測を行なうことができる計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態における回折光学素子の説明図(1)
【図2】第1の回折素子及び第2の回折素子の構造図
【図3】第1の回折素子及び第2の回折素子の断面図
【図4】第1の回折素子及び第2の回折素子の説明図
【図5】本実施の形態における回折光学素子により生じる光スポットの説明図
【図6】本実施の形態における回折光学素子の説明図(2)
【図7】本実施の形態における計測装置の構造図
【図8】実施例1における第1の回折素子及び第2の回折素子の説明図(1)
【図9】実施例1における第1の回折素子及び第2の回折素子の説明図(2)
【図10】実施例1における回折光学素子により生じる光スポット図
【図11】実施例2における回折光学素子により生じる光スポット図
【図12】実施例3における回折光学素子により生じる光スポットの説明図
【図13】比較例1における回折光学素子により生じる光スポット図
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0018】
(回折光学素子)
本実施の形態における回折光学素子について、図1及び図2に基づき説明する。本実施の形態における回折光学素子10は、第1の回折素子20と第2の回折素子30とを有し、第1の回折素子20と第2の回折素子30とは所定の位置に位置合せさせた状態で設置または固定されている。尚、第1の回折素子20及び第2の回折素子30は、ともに単体で回折光学素子となるものである。また、回折光学素子10は、第1の回折素子20および第2の回折素子30が、それぞれ、単一の透明基板の一方の面に凹凸を有し、これらが重なって構成されるものを示したがこれに限らない。この他に、回折光学素子10が、単一の透明基板からなり、この透明基板の両面に凹凸を有する構成であってもよい。この場合、透明基板の一方の面の凹凸部分を第1の回折素子20、他方の面の凹凸部分を第2の回折素子30として考える。
【0019】
そして、第1の回折素子20と第2の回折素子30は、それぞれ、出射する回折光に分布を有するが、これらの回折光の分布はそれぞれ異なるものであることが好ましい。ここで言う、分布が異なる、とは、具体的に、第1の回折素子20と第2の回折素子30に対して同じ条件で光を入射させたとき、同一の投射面に投射される回折光の分布が異なる、という意味である。また、このような回折光の分布は、投射面に対して規則的に配列していてもよく、ランダムであってもよい。また、とくに説明がない場合、光は、第1の回折素子20、第2の回折素子30の順に入射するものとするが、本実施の形態では、第2の回折素子30、第1の回折素子20の順に入射しても、同じ効果を奏する。
【0020】
図1は、本実施の形態における回折光学素子10に光が入射する様子を示す模式図であって、光源40から出射した光が回折光学素子10で回折され、投射面50に投射される様子を示したものである。図1において、本実施の形態における回折光学素子10は、回折光学素子10に含まれる、第1の回折素子20の平面及び第2の回折素子30の平面が、XY面に略平行となるように設置されており、光源40から出射された光41を照射することにより、回折光を発生させるものである。光源40から出射された光41は、最初に第1の回折素子20に入射し回折光42a、42bを発生させる。発生した回折光42a、42bは、更に第2の回折素子30に入射し、回折光42aからは回折光43a、43bが発生し、回折光42bからは回折光43c、43dが発生する。従って、投影面50においては、第1の回折素子20により発生した回折光の光スポットの数と第2の回折素子30により発生した回折光の光スポットの数の積となる数の光スポットが照射される。尚、光源40から出射された光41の光軸をZ軸方向とする。
【0021】
図2(a)及び図2(b)は、それぞれ、第1の回折素子20、第2の回折素子30の平面、つまり光軸と直交する面を示す図である。第1の回折素子20は、少なくとも光が入射する領域については、光を透過する板状の材料により形成されており、入射する光(以下、「入射光」という。)を回折する回折領域21を有している。回折領域21は、複数の基本ユニット22をX軸方向及びY軸方向に2次元的に配列することにより形成されており、基本ユニット22はX軸方向におけるピッチP1、Y軸方向におけるピッチP1を有し、周期的に配列されている。尚、図2(a)では、回折領域21の外縁の形状を四角形としているが、入射光のうち回折光として利用する対象の光の領域に相当する有効領域を全て含むように、基本ユニット22の2次元的な配列が施されていれば、回折領域21の外縁の形状が多角形、円、楕円等であってもよい。
【0022】
また、基本ユニット22は、出射する光(以下、「出射光」という。)について、所定の位相分布を発生させるものであり、第1の回折素子20は、この基本ユニット22を周期的に配列することにより、数1に示される回折作用を生じさせる。尚、図1において、光源40から出射した光41は、第1の回折素子20の平面であるXY面に対し直交するZ軸方向から入射するものとしたが、これに限らず、Z軸方向に対して斜め方向から入射させてもよい。この場合、入射光のうち、ZX面内の入射角θ1xiと、ZY面内の入射角θ1yiと、を数1に与えることで、各面内の出射角θ1xo、θ1yoを得ることができる。
【0023】
【数1】

また、第2の回折素子30も、同様に、少なくとも光が入射する領域については、光を透過する板状の材料により形成されており、入射光を回折する回折領域31を有している。回折領域31は、複数の基本ユニット32をX'軸方向、Y'軸方向に2次元的に配列することにより形成されており、基本ユニット32はX'軸方向におけるピッチP2、Y'軸方向におけるピッチP2を有し、周期的に配列されている。尚、X'軸方向及びY'軸方向は、それぞれ、X軸方向、Y軸方向をXY平面において、角度φ(φ≠0)だけ回転させた方向と一致する関係である。つまり、第1の回折素子20における基本ユニット22が配列されているピッチP1の方向(配列方向)と第2の回折素子30における基本ユニット32が配列されているピッチP2の方向(配列方向)とがなす角は角度φとなる。また、回折領域21と同様に、回折領域31も、入射光の有効領域を全て含むように、基本ユニット32の2次元的な配列が施されていれば、回折領域31の外縁の形状が多角形、円、楕円等であってもよい。
【0024】
また、基本ユニット32は、出射光について、所定の位相分布を発生させるものであり、第2の回折素子30は、この基本ユニット32を周期的に配列することにより、数2に示される回折作用を生じさせる。尚、図1において、第2の回折素子30の平面であるX'Y'面に対し直交するZ軸方向に対して斜め方向から入射する。この場合、入射光のうち、ZX'面内の入射角θ2x'iと、ZY'面内の入射角θ2y'iと、を数2に与えることで、各面内の出射角θ2x'o、θ2y'oを得ることができる。
【0025】
【数2】

図3は、第1の回折素子20及び第2の回折素子30の断面構造を模式的に示したものである。第1の回折素子20及び第2の回折素子30は、ともに光を透過する基板61を有し、基板61の表面における回折領域21及び回折領域31には、凹凸パターン62を有する。凹凸パターン62は、基板61と同一の材料を用いてもよく、また、異なる材料を用いてもよい。凹凸パターン62は、例えば、無機材料、有機材料、ゾルゲル膜、有機・無機ハイブリッド材料等を用いてもよい。尚、図3に示されるように、第1の回折素子20及び第2の回折素子30は、凹凸パターン62の表面が露出した構造のもの、つまり、凹凸パターン62側の媒質が空気であってもよい。また、それ以外にも、屈折率の異なる材料を組み合わせること、つまり、凹凸パターン62を埋めるように、屈折率が異なる他の透明な材料を与えることにより、これら2つの材料の界面によって凹凸パターンを得るものであってもよい。
【0026】
次に、第1の回折素子20における基本ユニット22及び、第2の回折素子30における基本ユニット32について説明する。一般に、回折光学素子における回折光分布は、回折光学素子の出射光の位相分布をフーリエ変換することによって得ることができる。とくに、回折光学素子の位相分布が周期性を有している場合、周期性の基本となる基本ユニット22及び基本ユニット32における位相分布をフーリエ変換することにより、入射光に対して発生する回折光の次数の情報を得ることができる。このような基本ユニット22及び基本ユニット32は、例えば、反復フーリエ変換法等を用いることにより位相分布が求められ、この位相分布に基づいて、具体的に作製することができる。
【0027】
ここで、ある次数(nXS、nYS)においてフーリエ変換の結果得られる光の強度が十分に大きい場合、この次数(nXS、nYS)の回折光が発生し、この回折光の回折方向(回折角度)は数1の式において与えられる。尚、次数(nXS、nYS)について、nXSは、X軸方向に回折する回折光の次数、nYSは、Y軸方向に回折する回折光の次数を表す。回折光学素子を設計する際に、このような次数、回折角度を有する光は、意図して発生させることのできる回折光であるため、このような回折光を単に、回折光または、設計回折光と称する場合がある。
【0028】
尚、ある次数(nXS、nYS)においてフーリエ変換の結果得られる強度が略0である場合、この次数(nXS、nYS)の回折光は発生しない。しかしながら、実際の回折光学素子では、製造誤差等の影響により、所定の理想形状よりも若干ずれた形状で回折光学素子が作製されることがあり、このとき、本来回折光が発生しないはずの次数(nXS、nYS)においても微弱な回折光が発生する場合がある。このように、設計上、本来回折光が発生しないはずの次数(nXS、nYS)における微弱な回折光を迷光と称する。尚、迷光が発生する方向も回折光と同様に数1の式において与えられる。
【0029】
図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、第1の回折素子20及び第2の回折素子30において発生する回折光、迷光及び0次光の光スポットを模式的に示したものであって、回折光学素子10への入射光の光軸に垂直な平面を示したものである。尚、0次光は、入射光の直進透過方向に相当し、回折光、迷光の投影パターンを示す図4(a)、図4(b)は、そのパターンが歪まない程度の回折角であるものとし、他の投影パターンについても、とくに記載がない限りは、この条件であるものとする。まず、図4(a)は、第1の光学素子20により発生する回折光、迷光及び0次光の光スポットの例を示したものであって、第1の回折素子20では、回折光による4つの光スポット23a、23b、23c、23dが発生するものとする。そして、回折光の光スポット23a、23b、23c、23dの間及び回折光の光スポット23a、23b、23c、23dのうち2点を結ぶ直線の延長線上等に迷光の光スポット24が発生する。また、このように回折光学素子10の平面に対して略垂直方向から入射する場合、光スポット23aと光スポット23dとを結ぶ直線と、光スポット23bと光スポット23cとを結ぶ直線との交点には、0次光の光スポット25が発生する。
【0030】
尚、第1の回折素子20では、回折光の光スポット23a、23b、23c、23dについて、1つの光スポットを基準として、他の光スポットのうち最も距離が近い光スポットと、を結ぶ直線は、X軸方向またはY軸方向と略平行方向となる関係を有する。また、1つの光スポットを基準として、ここで、他の光スポットのうち最も距離が近い光スポットが2つある場合、基準となる光スポットと、これら2つの光スポットのうち一方の光スポットと、を結ぶ直線がX軸方向と略平行方向であれば、基準となる光スポットと、これら2つの光スポットのうち他方の光スポットと、を結ぶ直線がY軸方向と略平行方向となる関係を有する。さらに、迷光24は、このX軸方向と略平行方向となる直線上と、Y軸方向と略平行方向となる直線上に複数有するように発生する。
【0031】
次に、図4(b)は、第2の光学素子30により発生する回折光、迷光及び0次光の光スポットを示したものであって、第2の回折素子30では、図4(b)において黒丸で示す16個の回折光による光スポット33が発生し、これらの回折光による光スポット33により回折光照射領域36が与えられる。ここで、回折光照射領域36は、光スポット33の全てを囲ってできる面積が最小となる領域に相当し、このように、光スポット33が2次元的に規則的に配列されている場合、回折光照射領域36は、四角形の領域となる。また、回折光による複数の光スポット33のうち、1つの光スポットを基準としたとき、それ以外の光スポットの中で最も距離が近い光スポットとを結ぶ直線と、その直線と直交する直線と、の2つの直線と略平行方向の直線上に、複数の光スポット33が発生する。そして、これら2つの直線と略平行方向の直線上に迷光の光スポット34が発生する。
【0032】
また、ここで、1つの光スポットを基準として、他の光スポットのうち最も距離が近い光スポットが2つある場合、基準となる光スポットと、これら2つの光スポットのうち一方の光スポットと、を結ぶ直線がX'軸方向と略平行方向であれば、基準となる光スポットと、これら2つの光スポットのうち他方の光スポットと、を結ぶ直線がY'軸方向と略平行方向となる関係を有する。尚、X' 軸方向とY' 軸方向とは直交関係にある。更に、回折光照射領域36における四隅の光スポット光のうち、対角線となる2本の線の交点には、0次光の光スポット35が発生する。尚、第2の回折素子30では、回折光による光スポット33は、X'軸方向またはY'軸方向と略平行方向に複数発生し、迷光34も同様に、X'軸方向またはY'軸方向と略平行方向に複数発生する。尚、図4(a)、図4(b)における光スポットの数は、一例として示しているものであり、この数に限定されるものではない。
【0033】
ここで、本実施の形態においては、回折光と迷光とを光スポットにおける光強度により判断する。尚、「光強度」とは、同じ意味として「光量」として表す場合もある。即ち、本来、理想的には迷光は生じない光であるため、迷光の光強度は回折光の光強度に対し低いものと考えられるので、光強度によりこれらを判別するものである。具体的には、0次光を除き、光強度が最も強い回折光の光強度を基準とし、それに対して1/4以下の光強度の光スポットは、すべて迷光として判断することができる。この方法は、発生する回折光による光スポットが100個以下の場合に有効である。尚、ここで、0次光を除くとしたのは、以下の理由に基づく。一般に、回折素子では、実際に、製造誤差や回折素子の設計波長に対する入射光の波長のずれ等により、意図しない光強度の大きい0次光が発生する場合がある。このような0次光は、場合によっては入射光の光量の数%に達し、設計回折光の光量に比べて無視できない大きさになることがある。したがって、このような意図しない光強度の大きい0次光は基準として適さないため、ここでは除くこととする。また、投影されたパターンを見て、明らかに光強度の違いが異なる2つの群に分けることができる場合は、その光強度に基づいて、設計回折光と迷光と、を分けてもよい。
【0034】
また、この他に、回折光と迷光とを判別する方法としては、光強度のヒストグラムを作成し、正規分布を仮定して、光強度の平均値から標準偏差2σを差し引いた値よりも光強度が高い光スポットを回折光の光スポットと判断し、光強度が低い光スポットを迷光の光スポットと判断することもできる。この場合、ヒストグラムを作成する際には、微弱ではあるが目に見える光スポットをすべて計測すると、光スポットの光量の平均値が低くなってしまう。光量のヒストグラムに明確なピークが出現するような場合、極端に光量の低い光については、平均値及び標準偏差を算出する際に、含めないものとしてヒストグラムを作成することが必要である。この方法は、発生する回折光による光スポットが100個以上であって、各々の光スポットにおける光量分布が大きい場合に有効である。また、この場合も同様に、投影されたパターンを見て、明らかに光強度の違いが異なる2つの群に分けることができる場合は、その光強度に基づいて、設計回折光と迷光と、を分けてもよい。
【0035】
図5は、図1に示されるように光源40から出射された光41を、本実施の形態における回折光学素子10に入射させることにより回折光等が発生され、スクリーンとなる投影面50に投影された回折光等の光スポットの分布を模式的に示したものである。尚、光スポット23a1、23b1、23c1、23d1は、第2の回折素子30により回折されなかった光、つまり、第1の回折素子20で回折され、第2の回折素子30を直進透過した光による光スポットを示すものであり、図4(b)における0次光の光スポット35に相当するものである。
【0036】
まず、第1の回折素子20により回折された回折光は、次に、第2の回折素子30により、更に回折されて、回折光による光スポット53が発生する。第2の回折素子30で回折された、回折光による光スポット53は、光スポット23a1、23b1、23c1、23d1を中心に形成される回折光照射領域56a、56b、56c、56d内に発生する。つまり、これらの回折光照射領域は、第1の回折素子20で発生した1つの回折光について、さらに回折した回折光の光スポット53の全てを囲ってできる面積が最小となる領域である。そして、各回折光照射領域における四隅の光スポット53のうち、対角線となる2本の線の交点には、それぞれ、光スポット23a1、23b1、23c1、23d1が発生する。同様に、第1の回折素子20及び第2の回折素子30により迷光も発生するが、本実施の形態の説明の都合上、図5には、第2の回折素子30により発生した迷光であって、光スポット23a1を中心に発生する迷光のうちの一部を示している。
【0037】
ところで、回折光による光スポット53と迷光による光スポット54とが重なった場合、干渉の影響により回折光による光スポット53の光量は大きく変化する。例えば、回折光の光量をI、位相をψとし、迷光の光量をI、位相をψとした場合に、干渉の影響により光量は、2×(I×I0.5×cos(ψ−ψ)となる。よって、回折光の光量と迷光の光量の比、即ち、I:Iが100:1の場合においても、光の干渉による影響を無視することはできない。
【0038】
ここで、設計回折光と迷光が一様な位相分布を有し、この設計回折光と迷光とが重なる場合について、とくに、最もこれらの干渉の影響が大きくなる位相差πの場合を考える。尚、ここでいう干渉の影響とは、具体的に干渉によって起こる設計回折光の光量変動に相当する。このとき、例えば、設計回折光の光量と迷光の光量との比が、I:I=1:0.1であると、前記の干渉の影響の値は最大で約−0.6となり、設計回折光の光量は最も低くなる場合では1−0.6=0.4と、半分以下に変化してしまう。ここで、光量を指標として、設計回折光と迷光との判別をより明確にするために、例えば、設計回折光の光量を、干渉が無い場合と比べて、半分以上に保とうとすると、上記の式に基づき、I:I=1:0.063以上、となる迷光について干渉の影響を排除しなければならない。
【0039】
言い換えると、この場合、I:I=1:0.063未満となる弱い光量Iの光が設計回折光と重なっても、設計回折光は、非干渉時の光量の半分以上は得られる。そのため、このような弱い光量の光もすべて迷光としてしまうと、設計回折光の光スポットと迷光の光スポットとが重ならないように、第1の回折素子20と第2の回折素子30とを配置する設計の解が得られなくなることがあるので、迷光の光量に下限を与えてもよい。したがって、この場合、干渉が無い場合の設計回折光の光量の下限の1/16以上の光量を有するものを迷光として考慮し、それ未満の光量となる光については考慮しないことが好ましい。また、干渉の度合いにもよるが、I:I=1:0.25未満となる光量Iの光を迷光として考慮しないこともできる。この場合、上記の式に基づくと、干渉の影響の値は−1より大きいので、干渉しても設計回折光の光量は0よりも大きい値となるからである。
【0040】
したがって、迷光は、干渉が無い場合の設計回折光の光量の下限の1/4以上の光量を有すればよく、干渉が無い場合の設計回折光の光量の下限の1/16以上とすると、より好ましいが、実際の回折光の位相分布は一様とは限らないため、排除するべき迷光の強度の範囲は光学系に依存し、その都度範囲を決定してもよい。更には、迷光による光スポットの光量が、設計回折光の光量の1/100である場合にも、干渉により影響を与えるため、迷光は、設計回折光の光量の1/100以上と考えることもできる。尚、設計回折光とは、光強度が最も強い回折光の光強度を基準として、1/4を超える光量となるものであるものとする。このように、回折光と迷光とが重なって干渉が発生することで、光量が低減するため、回折光の光スポット53と迷光の光スポット54とはできるだけ重なっていない状態が好ましい。
【0041】
次に、迷光と回折光との重なりについて考える。ここで、具体的に、光スポット53、54の半径をrとし、回折光の光スポット53の中心から迷光の光スポット54の中心までの距離をdとした場合、回折光の光スポット53内に迷光の光スポット54の中心が存在することのないように、d>rであることが好ましく、更には、回折光の光スポット53と迷光の光スポット54とが重ならないように、d>2rであることがより好ましい。このような条件を満たすように、回折光の光スポット53の位置と迷光の光スポット54の位置を光線追跡により計算し、図2(b)に示すように、第1の回折素子20における基本ユニット22の配列方向と、第2の回折素子30における基本ユニット32の配列方向とのなす角となる角度φを算出することができる。
【0042】
図6(a)は、角度φ=0の場合における投影面50における光スポットの配置を示し、図6(b)は、角度φ=φの場合における投影面50における光スポットの配置を示した模式図である。尚、図6(a)、図6(b)では、説明のための便宜上、光スポット23a1、23b1を中心に形成される回折光照射領域56a、56bと光スポット23a1を中心に発生する迷光の一部を示す。図6(a)に示される光スポットの分布では、回折光の光スポット53と迷光の光スポット54とが重なっている部分があり、この場合、上記の説明の通り、この部分における回折光における光スポットの光量は安定しない。また、角度φ=φの場合、図6(b)に示される光スポットの分布では、回折光の光スポット53と迷光の光スポット54とが重なっている部分があり、この場合においても、この部分における回折光における光スポットの光量は安定しない。
【0043】
ここで、図6(a)に示される回折光照射領域56a内において、ある回折光における光スポット53と、この回折光の光スポット53に最も近い位置に存在する迷光の光スポット54とにおいて、この2つの光スポットの中心間の距離を最近接距離αとする。そして、図6(a)に示す(x、y)座標に基づいて、光スポット23a1の中心の位置座標を(a、b)とし、光スポット23b1の中心の位置座標を(c、b)とした場合、図6(a)において、23a1を含み、迷光の光スポットが並ぶ直線Lは、y=b、の関数で表すことができる。一方、直線Lと平行で、距離αを隔てる直線Lは、y=b−α、の関数で表すことができる。
【0044】
また、角度φ=φである場合、図6(b)において、23a1を含み、迷光の光スポットが並ぶ直線Lは、y=tanφ(x−a)+b、の関数で表すことができる。一方、距離αを隔てる直線Lはy=tanφ(x−c)+b−α/cosφで表すことができる。また、X軸方向における、光スポット23a1と光スポット23b1との間隔を最近接距離Δxとして、間隔Δx=(c−a)とした場合、図6(b)に示される場合において、直線Lと直線Lとが重なる条件は、数3に示され、角度φの取り得る好ましい範囲は、数4に示す式で表される。
【0045】
【数3】

【0046】
【数4】

また、上記では、2つの回折光の光スポット23a1、23b1においてY座標が同じであってX座標が異なる場合について説明したが、2つの回折光の光スポットにおいてX座標が同じであってY座標が異なる場合についても、同様にして角度φの好ましい範囲を算出することができる。更に、第1の回折素子20と第2の回折素子30等を相対的に角度φ傾けた場合について説明したが、各々の回折素子における基本ユニットを直交しない2軸方向において周期的に配列してもよく、また、基本ユニットにおけるピッチPx、Pyの長さを調節することによって、回折光による光スポットと迷光による光スポットとが重ならないようにすることも可能である。また、上記においては、第1の回折素子20と第2の回折素子30と、の2つの回折光学素子を用いた場合について説明したが、3つ以上の回折光学素子を用いた場合においても同様に考えることができる。
【0047】
(計測装置)
次に、本実施の形態における計測装置について説明する。図7は、本実施の形態における計測装置110を示す模式図である。本実施の形態における計測装置110は、光源40と、前述した本実施の形態における回折光学素子10と、撮像素子130と、撮像素子130により撮像した画像を処理する不図示の画像処理部を有している。
【0048】
回折光学素子10は、光源40から出射された光(入射光)41を入射させることにより、例えば、回折光43(43a、43b、43c、43d)を発生させるものである。また、撮像素子130は、回折光43により生じた光スポットの投影パターンが照射されている測定対象物141及び142を撮像するものである。
【0049】
上記のように、回折光学素子10により複数の回折光43が発生し、この回折光43により生じた光スポットにより所望の投影パターンが形成される。そして、この投影パターンは測定対象物141及び142に照射され、測定対象物141及び142の位置や形状が変化した場合、光スポット間における間隔等が変化するため、その画像を撮像素子130により撮像することにより、測定対象物141及び142の3次元形状等の情報を取得することができる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
第1の回折素子20として8×8点の回折光を発生させる回折光学素子を作製した。具体的には、数1に示す式により、ピッチP1=P1=64μm、次数(n1、n1)=(2n−1、2m−1)(n=−3、−2、−1、0、1、2、3、4、m=−3、−2、−1、0、1、2、3、4)となる回折次数分布となるように反復フーリエ変換法によって位相分布を算出した。算出された基本ユニット22における位相分布のイメージを図8(a)に示す。尚、図8(a)において、黒は位相が0であり、白は位相が−πに相当する。つまり、入射光を波長λの同相の光とするとき、白の部分の出射光は、黒の部分の出射光に対して−πの位相差が与えられる。
【0051】
このように、算出された位相分布となるように、石英基板にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行うことによりレジストパターンを形成し、形成されたレジストパターンをマスクとしてエッチングを行なうことにより、1段の高さが720nmとなるように2段の凹凸パターンを形成した。このように形成された第1の回折素子20に、第1の回折格素子20の面と直交する方向から波長660nmの光を入射させたところ、図9(a)に示されるように、径が約0.5mmとなる回折光の光スポットを得た。尚、図9においては、光スポットは黒色で示されている。
【0052】
次に、第2の回折素子30として8×8点の回折光を発生させる回折光学素子を作製した。具体的には、数2に示す式により、ピッチP2=P2=512μm、次数(n2、n2)=(2n−1、2m−1)(n=−3、−2、−1、0、1、2、3、4、m=−3、−2、−1、0、1、2、3、4)となる回折次数分布となるように反復フーリエ変換法によって位相分布を算出した。算出された基本ユニット32における位相分布のイメージを図8(b)に示す。尚、図8(b)において、黒は位相が0であり、白は位相が−7π/4に相当するものであり、π/4ごとに灰色の濃度が変化するように8階調の位相分布が示されている。算出された位相分布となるように、石英基板にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行うことによりレジストパターンを形成し、形成されたレジストパターンをマスクとしてエッチングを行うことを繰り返すことにより、1段の高さが183nmとなるように8段の凹凸パターンを形成した。このように形成された第2の回折素子30に、第2の回折格素子30の面と直交する方向から波長660nmの光を入射させたところ、図9(b)に示されるような回折光の光スポットを得た。
【0053】
次に、第1の回折素子20と第2の回折素子30とを角度φ=1°となるような状態で、凹凸パターンの形成されている面が空気と接するように貼り合わせ、本実施例における回折光学素子10を作製した。本実施例における回折光学素子10に、波長660nmの光を入射させ、1.5m先に設置した投影面50に光スポットを投影した。図10(a)に、このように投影面50に投影された光スポットを示す。尚、図10においては、光スポットは黒色で示されている。尚、図10(b)は、図10(a)における破線10Aで囲まれた領域を拡大したものである。図10(a)、図10(b)に示されるように、本実施例における回折光学素子10では、干渉の影響のない略均一で安定的な光量分布の光スポットを得ることができる。尚、このとき、ビットマップ画像を構成する各画素のRGB要素のうちのR要素に相当する赤ビット成分の値を、各光スポットについて積算したところ、図10(b)に示す画像の場合、光量の平均値を1としたときの標準偏差が0.13であった。
【0054】
ここで、第1の回折素子20において、次数(n1、n1)Z=(1、1)となる回折光の回折角は、数1に示される式により、0.59°となる。従って、投影面における(n1、n1)=(1、1)、(−1、1)の設計回折光のX軸方向における間隔Δxは、30.9mmとなる。また、第2の回折素子30において、回折光のY軸方向における角度間隔は、数2に示される式より、n2が0と1の場合を比較すると、0.07°となる。よって、投影面における回折光または迷光の最小間隔は、1.9mmとなる。以上の値より、数4に示される式によりφを算出すると、3.6°である。
【0055】
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。実施例1における第1の回折素子20と第2の回折素子30とを角度φ=−2.5°となるような状態で、凹凸パターンの形成されている面が空気と接するように貼り合わせ本実施例における回折光学素子10を作製した。本実施例における回折光学素子10に、回折光学素子10の面と直交する方向から波長660nmの光を入射させ、1.5m先に設置した投影面50に光スポットを投影した。図11(a)に、このように投影面50に投影された光スポットを示す。尚、図11においては、光スポットは黒色で示されている。また、図11(b)は、図11(a)における破線11Aで囲まれた領域を拡大したものである。図11に示されるように、本実施例における回折光学素子では、干渉の影響のない略均一で安定的な光量分布の光スポットを得ることができる。尚、このときの前述したR要素に相当する赤ビット成分の値を、各光スポットについて積算したところ、図11(b)に示す画像の場合、光量の平均値を1としたときの標準偏差が0.18であった。
【0056】
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。本実施例は、実施例1、実施例2のように、第1の回折素子20と第2の回折素子30とを各々の周期性の方向に対し傾けた状態で設置するものとは異なるものとする。つまり、第1の回折素子20における基本ユニット22の周期性のピッチと第2の回折素子30における基本ユニット32の周期性のピッチを調整することにより、回折光による光スポットと迷光による光スポットが重複することを防ぐものである。
【0057】
第1の回折素子20のピッチP1=P1=64μmとし、次数(n1、n1)=(2n−1、2m−1)(n=−1、0、1、2、m=−1、0、1、2)となる回折次数分布となるように第1の回折素子20を作製する。第2の回折素子30のピッチP2=P2=495μmとし、次数(n2、n2)=(2n−1、2m−1)(n=−3、−2、−1、0、1、2、3、4、m=−3、−2、−1、0、1、2、3、4)となる回折次数分布となるように第2の回折素子30を作製する。第1の回折素子20と第2の回折素子30とを角度φ=0°となるような状態で、凹凸パターンの形成されている面が空気と接するように貼り合わせ本実施例における回折光学素子10を作製する。
【0058】
本実施例における回折光学素子10に、回折光学素子10の面と直交する方向から波長660nmの光を入射させ、1.5m先に設置した投影面に投影される光スポットを計算により算出した。尚、図12において、回折光となる「●」は、第1の回折素子20によって発生した回折光が、第2の回折素子30に入射し回折されることにより発生した回折光の光スポットの位置を示したものである。迷光となる「×」は、第1の回折素子20によって発生した回折次数(−1、−1)の回折光が、第2の回折素子30に入射し回折により発生した迷光の光スポットの位置を示したものである。図12に示されるように、角度φが0°であっても、第1の回折素子20及び第2の回折素子30における基本ユニット22及び基本ユニット32のピッチを調節することにより、回折光と迷光との重なりを低減させることができ、回折光と迷光との干渉の影響を低減させることができる。
【0059】
(比較例1)
次に、比較例1について説明する。実施例1における第1の回折素子20と第2の回折素子30とを角度φ=0°となるような状態で、凹凸パターンの形成されている面が空気と接するように貼り合わせ比較例1における回折光学素子10を作製した。比較例1における回折光学素子10に、回折光学素子10の面と直交する方向から波長660nmの光を入射させ、1.5m先に設置した投影面に光スポットを投影した。図13(a)に、このように投影面に投影された光スポットを示す。尚、図13において、光スポットは黒色で示されている。また、図13(b)は、図13(a)における破線13Aで囲まれた領域を拡大したものである。図13に示されるように、比較例1における回折光学素子では、干渉の影響により、光スポットの光強度の強弱が大きく、光強度は均一とはならず、干渉の影響により極めて不安定な光量分布の光スポットが発生する。尚、このときの前述したR要素に相当する赤ビット成分の値を、各光スポットについて積算したところ、図13(b)に示す画像の場合、光量の平均値を1としたときの標準偏差が0.29であり、実施例に比べて大きな値となった。
【0060】
尚、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0061】
10 回折光学素子
20 第1の回折素子
21 回折領域
22 基本ユニット
23a、23b、23c、23d 回折光の光スポット
24 迷光の光スポット
25 0次光の光スポット
30 第2の回折素子
31 回折領域
32 基本ユニット
33 回折光の光スポット
34 迷光の光スポット
35 0次光の光スポット
36 回折光照射領域
40 光源
41 光
42a、42b 回折光
43、43a、43b、43c、43d 回折光
50 投影面
53 回折光の光スポット
54 迷光の光スポット
56a、56b、56c、56d 回折光照射領域
61 基板
62 凹凸パターン
110 計測装置
130 撮像素子
141 測定対象物
142 測定対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第1の回折素子と、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第2の回折素子と、を有し、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる回折光学素子であって、
前記第1の回折素子において前記基本ユニットの配列方向を第1の方向とし、前記第2の回折素子において前記基本ユニットの配列方向を第2の方向とし、前記光が前記第1の回折素子、前記第2の回折素子の順に入射するとき、前記第1の回折素子で発生する回折光がさらに、前記第2の回折素子に入射して発生する0次光の最近接距離をΔxとし、前記第2の回折素子により発生する回折光及び迷光における最近接距離をαとした場合、前記第1の方向と前記第2の方向のなす角φが、
−|φ|<φ<|φ|、かつ、φ≠0、
sinφ=−α/Δx
であることを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
前記第1の回折素子に形成される基本ユニットのピッチと、前記第2の回折素子に形成される基本ユニットのピッチとは、2次元方向において、ともに異なる値であることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子。
【請求項3】
複数の基本ユニットが2次元的に配列されている回折素子を複数有し、
前記複数の回折素子に光を入射させることにより、2次元的な回折光を発生させる回折光学素子であって、
前記回折光における光スポットの中心と前記複数の回折素子により発生した迷光の光スポットの中心との距離をdとし、前記光スポットの半径をrとした場合、
d>rであることを特徴とする回折光学素子。
【請求項4】
複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第1の回折素子と、複数の基本ユニットが2次元的に配列されている第2の回折素子と、を有し、入射する光に対して2次元的な回折光を発生させる回折光学素子であって、
前記回折光における光スポットの中心と前記第1の回折素子及び前記第2の回折素子により発生した迷光の光スポットの中心との距離をdとし、前記光スポットの半径をrとした場合、
d>rであることを特徴とする回折光学素子。
【請求項5】
前記第1の回折素子に形成される基本ユニットのピッチと、前記第2の回折素子に形成される基本ユニットのピッチとは、2次元方向において、ともに異なる値であることを特徴とする請求項4に記載の回折光学素子。
【請求項6】
d>2rであることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の回折光学素子。
【請求項7】
光を発する光源と、
前記光が入射し回折光が出射される請求項1から6のいずれかに記載の回折光学素子と、
前記回折光が照射された測定対象物の画像を撮像する撮像部と、
を有することを特徴とする計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−98548(P2012−98548A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246518(P2010−246518)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】