説明

回折微小構造体及びその製造方法

微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせを備える回折微小構造体及びその製造方法である。微小構造体は,210℃より低いガラス転移点を有する熱可塑性炭水化物高分子又は炭水化物材料から誘導された高分子の層に形成されている。熱可塑性高分子は,好適には天然スターチ、デキストリン、天然ヘミセルロース、天然セルロース、ポリ(乳酸)、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、スターチ誘導体、デキストリン誘導体、ヘミセルロース誘導体、セルロース誘導体及びそれらの混合物の群から選択される。本発明は,ホログラム及びバーコードなどの目視検査又は検出が可能な安全標識を製品に組み込む安価で信頼できる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,請求項1前段に係る回折微小構造体に関する。
【0002】
本発明の種類の微小構造体は、熱可塑性高分子の層に形成される微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせを備える。
【0003】
また、本発明は、請求項24前段に係る回折微小構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
繊維質材料を識別するための手段及びその出所を確認するための手段を提供することに増大する関心がある。目的は、かかる材料に包装された偽造品の生産及び流通を防止したり、又は少なくともより困難にすることである。重要な品物の具体例としては、厚紙包装に包装された医薬品及びタバコ製品が挙げられる。
【0005】
繊維質材料に組み込まれた安全特徴(以下「安全標識」とも言う)の例としては、材料の光学的又は電気的な識別ができる多種のタグ及びラベルが挙げられる。特に、当該技術分野において知られる多数のRFID及びバーコードタグによる解決策が存在する。今日のタグ及びラベルに関する一つの問題は、それらが別個の製造工程で、例えば厚紙の表面に付着されなければならないことである。それらを厚紙表面に固定する方法によるが、例えば、接着剤を使用することで、それらが取り扱い又は加工中に落下しうるリスクが常にある。また、製品の偽造のために分離した安全標識が複製され使用される相当なリスクがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、既知の技術に関する問題の少なくとも一部を取り除き,製品の出所を識別でき及び分離したタグ又はラベルの付着による製品のごまかしを防止できるように、製造中に繊維質製品内に完全に安全標識を組み込む技術的な解決策を提供することである。
【0007】
基材の表面層上に回折微小構造体化した領域を形成するためのエンボス加工方法は当該技術分野で知られている(例えば、WO 2006/07053号及びWO 2006/056660号参照)。WO 2006/051170号によれば、光学的回折要素は、紙又は厚紙の場合、塗工ペースト、サイズ、樹脂、押出塗料、表面ラッカー又は印刷用インクによって形成されるのに適した表層である表面材料を使用して基材の表面上に直接形成され、例えば、エンボス加工によって、光学的回折要素を形成する微小構造体を作るために加工できる。
【0008】
本発明は、製品の表面上に存在するか又は製品の一部を形成する特定種類の層、すなわち、熱可塑性炭水化物高分子又はその誘導体によって形成された層のホットプレス加工により繊維質製品の表面上に光学的に認識できる微小構造体を形成できるという発見に基づく。特に、本発明は、エンボス加工処理の基材として、熱可塑性炭水化物高分子又は炭水化物材料から誘導された高分子の層を使用することを備え、前記高分子は210℃より低いガラス転移点を有する。
【0009】
回折微小構造体は、210℃より低いガラス転移点を有する熱可塑性炭水化物高分子層を形成する工程と、上記層中に微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせを備える回折微小構造体をエンボス加工する工程とを備える方法によって製造できる。
【0010】
より具体的には、本発明は、請求項1の特徴部分で述べたことにより主として特徴づけられる。
【0011】
本発明に係る方法は、請求項24の特徴部分で述べたことにより特徴づけられる。
【0012】
本発明により相当な利点が得られる。従って、本発明は、例えば、多色光に基づくか又はレーザービーム及び他の単色光の使用に基づき、目視検査又は検出ができる安全標識を製品に組み込む安価で信頼できる方法を提供する。典型的には、本発明の微小構造体は、可視領域で、紫外線領域で、赤外線領域で又は可視、紫外及び/または赤外線を含む広範な波長領域で光を回折できる。
【0013】
微小構造体は、製造工程中に材料の表面へ型押しされ得る。
【0014】
本発明で使用される高分子は、生体適合性であり、一部の場合、生分解性材料ですらある。生体適合性により、食料品の包装及び例えば、たばこの巻紙のような厳密な要求事項を満たさねばならない他の製品の包装に該高分子層を使用できる。標識を適応する費用は、製品及びその包装の費用と比べると小さい。更に、エンボス加工した表面に付加的加工して、視覚的に完全で機械的耐久性ある装飾を仕上げることまで要求されない。
【0015】
本発明の更なる特徴と利点は、特に好適な実施態様の下記詳細な記載から明らかになるであろう。
【0016】
上述のとおり、本発明は、熱可塑性炭水化物高分子及びかかる材料から誘導した高分子によって形成された層に新規回折微小構造体を提供する。微小構造体は、安全標識として、識別標識として又は装飾目的(「虹色」)に使用できる。また、これらはブランド推進にも有用である。
【0017】
一般には、パターンは,典型的には多数の機械的変形を備え、入射光波、特に可視光の領域内の波長を有する光の反射時に回折パターンを生じることになる。パターンは、存在する光源に対する観測角度に応じて変化する視覚効果を生じることができる。
【0018】
適するパターンは、彫刻物、すなわち、くぼみ又は微小溝から形成でき、ワニスの表面からワニス層内へ伸びる。また、隆起、周囲の表面レベルを超えてワニス層の表面から伸びる微笑突起によっても形成できる。
【0019】
また、溝又は突起は各々様々な深さ、幅及び高さでありうる。典型的には、それらは光の領域、すなわち、可視のみ又は紫外から可視又は可視から赤外の範囲又は紫外から赤外の広い範囲で最小寸法をとる。指摘した範囲外の寸法も可能である。従って、一般に、微小構造体の溝及びうねの最小寸法は、約10nm〜1500nm、特には約50nm〜1000nm及び好適には約75〜800nmの範囲にある。
【0020】
前述に基づき、本発明の回折微小構造体は、目視検査で検出可能なシネグラム、エクセルグラム又はホログラム及び他の構造(バーコード)を含むことができる。一つの好適な実施態様において、回折パターンは、三次元の印象を観者に与えるホログラフィー的に撮像されたパターン(ホログラム)を含む。
【0021】
視覚標識は、裸眼には不可視であるが別種の読取装置には可読なコードで補完できる。
【0022】
微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせを備える本発明の微小構造体は、熱可塑性生体適合性高分子を含む表面又は熱可塑性生体適合性高分子からなる表面へ形成される。
【0023】
本発明に係る回折微小構造体を有する層の一実施態様は、自己支持型の層又はフィルムを含み、そこではフィルム自体の上に回折微小構造体が型押しされている。もう一つの実施態様は繊維質ウェブもしくはシート又は同様の平面基材の表面に塗布された層を備え、該層は回折微小構造体を提供するためにエンボス加工されている。
【0024】
自己支持型層の実施態様において、高分子フィルムは、好適には約0.1〜100マイクロメーター、特には約0.5〜50マイクロメーター、の厚みを有する。フィルムは、例えば、ポリ(乳酸)、ポリラクチド及びポリカプロラクトンの群から選択した高分子を含む。
【0025】
当然ながら、自己支持型フィルムは連続的である必要がなく、もう一つの高分子フィルム又は繊維質ウェブ又はシートなどの支持基材上に堆積できることが理解される。
【0026】
上記層が基材上に堆積された実施態様において、層は上述したのと同様の、好適には約0.1〜50マイクロメーターの厚さを有してもよい。典型的には、本層は、スターチ及びスターチ誘導体又はフィルムを形成しない他の炭水化物及びその誘導体(下記参照)から形成される。
【0027】
本発明の生体適合性高分子は、典型的には、適度に高温から高温の、例えば約210℃まで、特には200℃以下、好適には少なくとも約30又は60〜170℃のガラス転移点を有する。
【0028】
本発明の目的には、熱可塑性高分子は、特に炭水化物材料から誘導された、生体適合性又は生分解性の熱可塑性高分子から選択される。かかる炭水化物材料の群としては、天然スターチ、デキストリン、天然ヘミセルロース、天然セルロース並びにこれらの誘導体、すなわち、スターチ誘導体、デキストリン誘導体、ヘミセルロース誘導体、セルロース誘導体及びそれらの混合物が挙げられる。他の適する材料としては、ポリ(乳酸)、ポリラクチド、ポリカプロラクトン及び同様の「バイオポリマー」、すなわち、炭水化物材料から誘導されたと考えられ又は考えられうる生物学的に利用可能なモノマーから作られた高分子が挙げられる。
【0029】
上記炭水化物高分子を熱可塑性高分子に転換するため、高分子材料は可塑化される。可塑化は、適した置換基(内部可塑化)を組み込むことによって又は天然高分子と従来の(「外部」)可塑剤、典型的にはモノマー可塑剤とをブレンド又は溶融ブレンドすることで得られる。また、これら二つの手法を組み合わせることも可能である。
【0030】
後者の代替の具体例としては、1〜5個のヒドロキシル基を有するC2〜C4のアルコールの群から選択したヒドロキシル化合物、特に、グリセロールもしくはソルビトール又はそれらの混合物で炭水化物高分子が可塑化される実施態様を挙げることができる。他の可塑剤は、水、酢酸グリセロールエステル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸アルキルエステル及びそれらの混合物である。
【0031】
内部可塑化高分子、例えば、スターチ又はセルロース誘導体は、化学反応によってスターチ又はセルロースから生成し、分子の無水グルコース単位の少なくとも一部は、該単位のヒドロキシル官能基を修飾する基を含む。
【0032】
バイオポリマーの化学的誘導体を使用することが、一部の用途に特に好適であることは注目される。従って、例えば、エステル化(例えば、アセチル化)は、天然スターチと比較した場合、製品の熱的安定性を向上させる。これは、製品が昇温において顔料として使用される場合に特に有利である。
【0033】
スターチのエステルもしくはエーテル又は混合エステル/エーテルは、典型的には、天然スターチ、加水分解スターチ、酸化スターチ、架橋スターチ又は糊化スターチから調製される。同様に、スターチは、アミロース含有量0〜100%及びアミロペクチン含有量100〜0%である天然スターチ系ことができる。従って、スターチは、大麦、ジャガイモ、小麦、オート麦、エンドウ豆、とうもろこし、タピオカ、サゴ及び米、又は同様の塊茎野菜及び穀物作物を原料にできる。
【0034】
好適な実施態様によれば、スターチ系成分は、スターチ及び一又は数個の脂肪族C2-24カルボン酸により形成されたエステルである。エステルのカルボン酸残基は、酢酸、プロピオン酸又は酪酸などの低級アルカン酸、又はそれらの混合物から誘導できる。好適な実施態様によれば、スターチ成分は、エステル化スターチ、最も適切にはスターチアセテートである。その置換度は0.5〜3、好適には1.5〜3及び最も適切には2〜3である。適するスターチアセテートは、例えば、FI 113875号、FI 107386号及びWO 05/037864号に開示されている。
【0035】
また、スターチエステルは、飽和又は不飽和脂の天然肪酸からも誘導できる。それらの例は、パルミチニン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノリン酸及びそれらの混合物である。また、エステルは、長鎖(C16-24)及び短鎖(C2-14)カルボン酸成分の両方を含んでもよい。これらの例は、酢酸エステルとステアリン酸エステルの混合エステルである。酸のほかに、対応する酸無水物、及び酸塩化物並びに他の対応する反応性酸誘導体も、それ自体は既知である方法でエステルを形成するために使用できる。
【0036】
スターチの脂肪酸エステルの製造は、例えば、以下の文献、Wolff, LA., Olds, D.W. and Hubert, G.E.「コーンスターチ、アミロース及びアミロペクチンのアシル化」 J. Amer. Chem. Soc. 73 (1952) 346-349又はGros, A.T. and Feuge, R.O.「アミロースの脂肪酸エステルの特性」 J. Amer. Oil Chemists' Soc 39 (1962) 19-24中に記載されたようにして実行できる。
【0037】
スターチアセテートなどの低級エステル誘導体は、スターチをエステル基に対応する酸無水物、例えば無水酢酸と触媒存在下で反応させて調整できる。スターチアセテートは、例えば、フィンランド特許第107386号もしくは米国特許第5.667.803号に係る方法で、又は、スターチのアセチル化に普通に使用される他の方法で製造できる。
【0038】
本発明のもう一つの重要なスターチ成分は、スターチ及びヒドロキシアルキル基、好適にはエチレンオキシド又はプロピレンオキシドから誘導されるヒドロキシアルキル成分から形成されたエーテルによって表わされる。かかるエーテル化スターチの分子置換度は、約0.05〜6、好適には0.1〜3、特には0.3〜2である。
【0039】
他の適する高分子としては、セルロースエステル及びキシランエステルなどのセルロース誘導体及びヘミセルロース誘導体が挙げられる。
【0040】
上述のように、スターチ成分は、既知の軟化剤、すなわち可塑剤とブレンドすることで可塑化できる。従って、好適な用途によれば、本発明による組成物は、特には0.01〜50wt%、好適には約1〜30wt%の可塑剤を含む。上述の可塑剤のいずれをも採用できる。
【0041】
好適な実施態様によれば、熱可塑性炭水化物高分子は、少なくとも1.7、特には少なくとも2.0の置換度を有する疎水性スターチエステルである。もう一つの好適な実施態様によれば、熱可塑性スターチ高分子は、低い又は0.5未満のDSを有する天然スターチ、加水分解スターチ及びそれらのエーテル誘導体又はエステルである。
【0042】
上記高分子は、粒子又はスラリーの形状で表面上に塗布できる。
【0043】
スターチ系原材料(例えば、スターチエステル又はスターチエーテル)から多孔質粒子を作る方法が、我々の以前の特許及び特許出願中に記載されている(FI 20035172号、FI 20035173号、FI 20050833号及びFI 20040741号(FI 118179号))。その方法では、二段階法を用いて粒子が調製される。そこでは、スターチ系材料は、最初に有機溶剤又は有機溶剤と非溶剤、例えば水との混合物中に溶解され、その後その混合物から、スターチ成分は、沈殿する。該方法は、実質的に球形の多孔質粒子を生じる。これらは例えば紙の充填剤及び顔料として適する。その誘導体は熱可塑性であり、Tgは典型的にはおよそ150〜160℃である。カレンダー加工中、粒子は、モールディングを受けて、紙を光沢あるようにする。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、熱可塑性高分子は、先に示す種類の粒子形状で基材の表面へ塗布される。
【0045】
本発明のもう一つの実施態様において、熱可塑性高分子は、スラリーの形状で基材の表面へ塗布される。スターチ誘導体及び他の疎水性バイオポリマーのスラリーは、例えば、EP 950074号中で論じられたようにして製造できる。かかる方法において、一般に、混合物は疎水性バイオポリマー、可塑剤、分散助剤及び水から形成され、混合物はペースト様組成物を得るため加熱され、その後ペースト様組成物は水中で希釈される。
【0046】
特に関心ある基材上の層の材料を塗布する方法は、顔料が少なくとも部分的に上記種類のスターチ顔料から作られた塗工色材の形状におけるものである。その実施態様において、塗工色材はオフセット又はグラビア印刷のための基本的な処方に従って混合されるが、従来の塗工顔料の少なくとも一部は、本発明の顔料で置換される。従って、好適には塗工色材の乾燥物の少なくとも20(又は少なくとも25)wt%が、本発明の熱可塑性バイオポリマーによって形成される。塗工色材の顔料は、好適には塗工組成物の顔料の少なくとも30%、特には少なくとも50%から100%までを構成する。他の単数又は複数の顔料は、通常の顔料、普通は、炭酸カルシウム(GCC及び/又はPCC)、カオリン、タルク、ワラストナイト、硫酸カルシウム及び硫酸バリウムなどの無機鉱物顔料でありうる。
【0047】
熱可塑性高分子の塗布は、それ自体既知の方法で、例えば従来の(ブレード)塗工機、フィルムプレス塗工機、カーテン塗工機又はサイズプレスによって実行できる。スラリーの場合、ウェブの表面上への連続フィルムの移動は、典型的には、スラリーが少なくとも一部の外部可塑剤を含むことを要求する
【0048】
基材上へ熱可塑性高分子を塗布した後、水を塗工色材の層から蒸発させる。層は、熱処理(少なくとも50℃を超える)及び上昇した圧力によって可能な程度まで乾燥及び固化され、永久回折パターンを達成する。
【0049】
基材全体を覆う完全な層を有する基材を提供する必要がないことを指摘すべきであろう。本発明の目的から、層はエンボス加工が行われる点に存在することで十分である。従って、熱可塑性炭水化物高分子は、バーコードタグ又は安全標識又は識別ラベルが適応される基材の部分を覆えば十分である。
【0050】
基材の繊維質材料は、セルロース系、リグノセルロース系並びに熱可塑性繊維及びそれらの混合物から選択される。典型的には、基材は、紙もしくは厚紙のウェブもしくはシート又は綿などの天然繊維によって形成された層を含む。任意に単数又は複数の充填剤を含有する原紙又は厚紙を含んでもよい。坪量は自由に変えることができるが、普通は約30〜750g/m2、例えば約40〜500g/m2の範囲内であり、厚さは約1〜100マイクロメーターである。
【0051】
まとめると、上記種類の微小構造体の製造方法は,
・210℃より低い、特には約170℃より低いガラス転移点を有する熱可塑性炭水化物高分子層を形成する工程と、
・上記層中に微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせを備える回折微小構造体をエンボス加工する工程と、を備える。
【0052】
上記層は、少なくとも100℃の温度及び1.5バール(絶対圧)以上の圧力でエンボス加工されるのが好ましい。
【0053】
上記層は、水性スラリーからの堆積によって基材上に形成され、該基材上に堆積した層が、エンボス加工前に乾燥できる。
【0054】
一実施態様によれば、上記層が、エンボス加工前に、多くとも5ppm、好適には3ppm以下の粗度へ平滑化される。平滑化は、オンマシン又はオフマシンのいずれか又はその組み合わせにより実行できる通常のカレンダー加工で達成できる。適するカレンダーの例として、いくつか述べると、ソフトカレンダー、伸長ニップでのカレンダー、サーモカレンダー及びスーパーカレンダーが挙げられる。
【0055】
もう一つの実施態様によれば、エンボス加工前に表面を平滑化する必要がない。スターチ顔料に富む(顔料について50wt%を超える)特定の塗工組成物に関して、表面の平滑さが熱エンボス加工において大きな影響を与えるように見えないことを見出した。
【0056】
実際に、エンボス加工は、当該技術分野に知られるようにして実施できる。本明細書の一般事項で上述した技術を参照する。従って、層を、エンボス加工装置及び支持部材備え、更にエンボス加工装置の温度を調整する手段を備えるエンボス加工装置を使用してエンボス加工できる。
【0057】
エンボス加工装置は、例に関連して下記で論じるように、静的又は動的でありうる。動的エンボス加工の場合、エンボス加工部品をロール上に設置する。典型的には、ロールオンロールエンボス加工は、ロール間でプレスされる基材の表層上のエンボス加工圧力を発揮させるため、エンボス加工ロール及び受けロールを組み合わせて備えるエンボス加工装置があることを要求する。
【0058】
平床式エンボス加工は、少なくとも一つのエンボス加工板を備えるエンボス加工手段を使用して行われる。板の作業面は、例えば、所望のエンボス加工の微小加工されたネガティブを有する金属であってもよい。
【0059】
一般に、静的及び動的エンボス加工の両方において、所望のパターンに達成するため使用されるエンボス加工部品は、製作すべき回折微小構造体に対応する構造を有する。薄い金属シート、特に薄いニッケルシート上に、例えば、電気化学的堆積と組み合わせた光学的露光又は電子線リソグラフィーによって作製できる。シムとして知られるエンボス加工部品はそのようにして得られ、このシムを用いて、所望の回折微小構造体は、熱可塑性層の表面にシムをプレス加工することで作製される。
【0060】
成形作用を果たすため、表面は柔軟である必要があり、層の温度を高分子のガラス転移点程度又はそれ以上に上昇させることで得ることができる。
【0061】
本発明によって製造されたエンボス加工された製品、シート及びウェブは、例えば、包装業界において、製品の真正を保証するため又は包装の外観装飾表示を写実的に豊かにするため、製品に安全標識を付けるように使用できる。典型的な用途の例は、回転の速い消費材(FMCG)及び食品を含む日用消費材、たばこ、デジタルメディア、医薬品、化粧品及び電化製品である。
【0062】
微小構造体が、更なる別の標識付け工程が必要ないため、例えば、コンバーティング過程の最後又は最後から二番目の工程中で、切断工程前又は最中でさえも加工中に表面へ付与できることは、包装コンバート業者、製品包装業者又はブランド所有者にとって高度に有利である。
【0063】
以下の限定しない実施例が本発明を説明する。
【0064】
例1
変性スターチ顔料を含む塗工色材での原紙塗工
LWC原紙は、表1中に示された下記塗工色材配合で、一面実験室塗工機(CLC−600)によって塗工された。配合中に使用した塗工顔料は、クレー、重質炭酸カルシウム及びVTTで開発された実験的に変性したスターチ系顔料である。
【0065】
【表1】

【0066】
試料は、実験室カレンダー加工機を用いて500kN/m2で三パスのカレンダー加工され、紙の技術的及び表面特性を試験し、四色オフセットプレスで印刷した。塗工色材16のカレンダー加工しなかった試料は印刷せず、ctg#16と符号をつけた。
【0067】
選択された、カレンダー加工及び印刷した試料とカレンダー加工しなかった試料ctg#16を熱エンボス加工した。
【0068】
例2
この作業の目的は、スターチ系顔料の異なった量を含む塗料で塗工した紙試料のエンボス加工性を試験することであった。塗工量は、各試料約7g/m2であった。試料ctg#16はカレンダー加工しなかった。
【0069】
手順
塗工中に100、50又は0部の変性スターチ顔料を含む塗工紙試料(例1)を、静的エンボス加工機を使用してエンボス加工した。かかるエンボス加工試験中、熱エンボス加工温度のみを70〜145℃に変えた。熱エンボス加工の圧力及び加圧時間は、一定に保たれ、加圧時間は5秒で、圧力は6バールであった。良好なエンボス加工品質に適する温度を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
全試料の熱エンボス加工温度の規模は比較的大きい。上記データに基づき、当業者は静的プロセスを、例えばロールツーロールエンボス加工機械を用いた連続的エンボス加工に容易に適用できる。
【0072】
試験によれば、目視評価に基づく最良の試料は、カレンダー加工された試料16であった。130℃の温度及び5バールの圧力でのエンボス加工が使用された場合に、最良の結果が得られた。
【0073】
また、カレンダー加工しなかった試料(ctg#16)の結果は、驚くほど良好で、カレンダー加工された試料とほぼ同じレベルであった。より高いエンボス加工温度を用いる場合、カレンダー加工しなかった試料の輝度がより良くなることは注目された。
【0074】
試料13b及び15に対して適する熱エンボス加工温度範囲は、他の試料に対するよりも狭い。これはおそらく塗工中のスターチ顔料含有量がより低いこと及びスターチ系の鉱物顔料の効果の組み合わせに起因する。
最も弱いエンボス加工効果が、鉱物顔料のみを含む色材で塗工された試料17及び18で見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
210℃より低いガラス転移点を有する熱可塑性炭水化物高分子又は炭水化物材料から誘導された高分子の層に形成される微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせを備える回折微小構造体。
【請求項2】
前記熱可塑性高分子が、天然スターチ、デキストリン、天然ヘミセルロース、天然セルロース、ポリ(乳酸)、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、スターチ誘導体、デキストリン誘導体、ヘミセルロース誘導体、セルロース誘導体及びそれらの混合物の群から選択される請求項1に記載の微小構造体。
【請求項3】
前記熱可塑性炭水化物高分子が、1〜5個のヒドロキシル基を有するC2〜C4のアルコールの群から選択したヒドロキシル化合物、特に、グリセロールもしくはソルビトール又はそれらの混合物で可塑化される請求項1又は2に記載の微小構造体。
【請求項4】
前記熱可塑性炭水化物高分子が、天然スターチ、加水分解スターチ又はそれらのエーテル誘導体もしくはエステル誘導体である請求項1〜3のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項5】
前記熱可塑性炭水化物高分子が,少なくとも1.7、特には少なくとも2.0の置換度を有する疎水性スターチエステルである請求項1〜4のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項6】
前記熱可塑性炭水化物高分子が、グリセロールもしくはソルビトール又はそれらの混合物のような外部可塑剤で可塑化される請求項1〜5のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項7】
前記層が、自己支持型である請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項8】
前記層が、約0.1〜100マイクロメーターの厚みを有するフィルムを備える請求項7に記載の微小構造体。
【請求項9】
前記フィルムが、ポリ(乳酸)、ポリラクチド又はポリカプロラクトンを含む請求項8に記載の微小構造体。
【請求項10】
前記層が、基材、特には平面基材上に堆積される請求項1〜6のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項11】
前記層が、約0.1〜50マイクロメーターの厚みを有する請求項10に記載の微小構造体。
【請求項12】
前記層が、乾燥及び固化される請求項10又は11に記載の微小構造体。
【請求項13】
前記基材が、繊維質材料のウェブ又はシートを備える請求項10〜12のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項14】
前記繊維質材料が、セルロース系、リグノセルロース系及び熱可塑性繊維並びにそれらの混合物から選択される請求項13に記載の微小構造体。
【請求項15】
前記基材が、紙もしくは厚紙のウェブ又はシート又は綿のような天然繊維によって形成された層を備える請求項14に記載の微小構造体。
【請求項16】
前記基材が、約1〜100マイクロメーターの厚みを有する請求項15に記載の微小構造体。
【請求項17】
前記基材が、任意に充填剤を含有する原紙又は厚紙を備える請求項10〜16のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項18】
前記層が、塗工顔料を含有する塗工色材の形で基材上に堆積され、前記塗工顔料の少なくとも25重量%、好適には少なくとも50重量%及び潜在的には100重量%までが、熱可塑性炭水化物高分子によって形成された粒子からなる請求項10〜17のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項19】
前記層が、5ppsより小さい、特には3ppsより小さい粗度を有する請求項1〜18のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項20】
前記微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせが、検出可能なパターンを形成する請求項1〜19のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項21】
単色光又は多色光を回折できる請求項1〜20のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項22】
可視領域で、紫外線領域で、赤外線領域で又は可視光線、紫外線及び/または赤外線を含む広範な波長領域で光を回折できる請求項21に記載の微小構造体。
【請求項23】
バーコードタグ又は安全標識又は識別ラベル又はその組み合わせを備える請求項1〜22のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項24】
シネグラム、エクセルグラム又はホログラムを備える請求項1〜23のいずれか一項に記載の微小構造体。
【請求項25】
170℃より低いガラス転移点を有する熱可塑性炭水化物高分子層を形成する工程と、
前記層中に微小突起もしくは微小溝又はその組み合わせを備える回折微小構造体をエンボス加工する工程と
を備える請求項1〜24のいずれか一項に記載の微小構造体の製造方法。
【請求項26】
前記層が、少なくとも100℃の温度及び1.5バール(絶対圧)以上の圧力でエンボス加工される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記層が、自己支持型フィルムを備える請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記層が、水性スラリーからの堆積によって基材上に形成され、該基材上に堆積した層が、エンボス加工前に乾燥できる請求項25又は26に記載の方法。
【請求項29】
前記層が、エンボス加工前に、多くとも5ppm、好適には3ppm以下の粗度へ平滑化される請求項25〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記層が、カレンダー加工によって平滑化される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記層が、エンボス加工装置及び支持部材備え、更にエンボス加工装置の温度を調整する手段を備えるエンボス加工装置を使用してエンボス加工される請求項25〜30のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−510833(P2011−510833A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538810(P2010−538810)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050755
【国際公開番号】WO2009/080879
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(501374390)バルティオン テクニリーネン トゥトキムスケスクス (16)
【Fターム(参考)】