説明

回路配列および信号処理装置

本発明は、回路配列(100)および信号処理装置に関するものである。この回路配列は、入力信号から出力信号を生成する共振器回路(101)を備えている。この共振器回路は、キャパシタ、インダクタ、入力信号を供給できる入力部、および、出力信号を供給できる出力部を備えている。さらに、この回路配列は、共振器回路のQを制御または調節する制御回路(111)を備えている。ここで、制御回路は、入力信号および/または出力信号の、振幅の信号曲線に応じて共振器回路のQを制御または調節するように、設置されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、回路配列および信号処理装置に関するものである。
【0002】
音響信号(音信号)は、広い強度範囲、つまり120dBまでの広いダイナミックレンジを有している。夜の農村地域の暗騒音(Geraeuschkulisse)が約20dBであるのに対して、銃撃を撃った直後の音響レベルは、約140dBである。
【0003】
いわゆる外側の毛細胞が重要な役割を果たす人の内耳の、適応突起のために、通常の聴覚の感度は、音響レベルが低い場合に高くなり、通常の聴覚の許容度は、音響レベルが高い場合に高くなる。この音響レベルは、物理的な変数(音響強度の大きさ)である。聴覚は、その増幅を実際の音響レベルに整合させることができるので、音響レベルのダイナミックレンジを小さい音響から大きな音響まで大きくカバーすることができる。具体的には、大きな音響レベル範囲が、小さく聞こえる範囲に圧縮される。ダイナミックレンジ圧縮は、この関連において用いられる用語である。
【0004】
言語を聴神経の活動電位に符号化する場合には、音響信号(120dBまで)の大きいダイナミックレンジは、感覚細胞または神経系(約40dB)の極限のダイナミックレンジに圧縮される。
【0005】
音声認識システム、補聴器、および、音声データ圧縮については、経済的な関心の集まる領域である。自動音声認識の基本原理については、例えば[1]に記載されている。
【0006】
公知の音声認識システムでは、高速フーリエ変換(「Fast Fourier Transformation」、FFT)を音響信号のスペクトル解析に使用し、次に、得られた振幅スペクトルを対数表記する。これは、具体的には、対数特性曲線によるダイナミックレンジ圧縮に相当する。
【0007】
このような高速フーリエ変換では、通常、所定の長さの時間窓を使用するため、周波数分解能および時間分解能が制限される。音声認識において通常行われているように、絶対値スペクトルのみを使用すると、時間分解能は、用いられた時間窓の長さによって制限される。所定の大きさに固定した時間窓を使用する際に問題となるのは、逆変換後にスペクトルを変更する場合に、時間窓の有限性に起因してエラーが生じてしまうということである。
【0008】
[3]は、周波数選択増幅低減網を有するラジオ放送システムにおける、出力信号の見かけ上の音量を低減するための装置について、開示している。
【0009】
[4]は、入力信号のダイナミックレンジを圧縮するための回路配列について開示している。
【0010】
本発明の目的は、ダイナミックレンジ圧縮を改善することができる、回路配列および信号処理装置を提供することにある。
【0011】
この目的は、独立請求項の特徴を有する回路配列および信号処理装置によって解決することができる。
【0012】
この回路配列は、入力信号から出力信号を生成する共振器回路を備えている。この共振器回路は、キャパシタ、インダクタ、入力信号を供給できる入力部、および、出力信号を供給できる出力部を備えている。さらに、この回路配列は、共振器回路のQ(共振の鋭さ)を制御または調節する制御回路を備えている。ここで、制御回路は、入力信号および/または出力信号の、振幅(好ましくは信号振幅)の信号曲線に応じて共振器回路のQを制御または調節するように、設置されている。
【0013】
つまり、Qを、信号振幅の信号曲線に応じて制御または調節することが好ましい。これにより、具体的に、入力信号および/または出力信号の時間的依存がQの時間的依存を導くことにより、Qをいわば瞬間的に遅延なく制御できるという、利点がある。しかし、信号振幅の信号曲線に応じたQの制御が任意であるということを、強調しなければならない。つまり、振幅に応じて、Qを制御または調節することができる。
【0014】
また、本発明では、上記特徴を有する回路配列を備えた信号処理装置も提供する。この信号処理装置は、さらに、出力信号をさらに処理するための追加処理ユニットを含んでいてもよい。
【0015】
本発明の基本理念(技術思想)は、共振器回路のQを入力信号または出力信号の振幅に基づいて設定するというものである。これらの信号のうちの1つが非常に高い振幅を有している場合、制御回路を介して共振器回路のQを著しく低減でき、これによって信号が強く減衰される。これに対して、振幅の低い信号の場合、上記Qを上げることができ、これによって、非常に弱く減衰された信号のみが回路配列の出力部に供給される。
【0016】
具体的には、本発明では、ダイナミックレンジ圧縮を実行するために、共振器回路は、ほぼその共振周波数で、非常に安定した増幅器として機能する(共振上昇する)。
【0017】
共振器回路のQを、特に、その共振周波数での、または、ほぼその共振周波数での出力信号の振幅と、上記共振周波数とは全く異なる周波数での出力信号の振幅との比であるとする。この場合、共振器回路のQは、そのノンリアクタンス抵抗に応じて決まるので、例えば共振器回路のノンリアクタンス抵抗を制御または調節することにより、Qを設定できる。
【0018】
共振器回路のQが、それに供給される入力信号の振幅に基づいて設定される場合、制御回路の機能を「制御(Steuern)」と呼ぶことができる。これに対して、制御回路のQを出力信号の振幅に基づいて設定する場合、制御回路がQのフィードバック適応を実行するので、上記制御回路は「調節(Regelung)」機能を実現する。
【0019】
本発明の回路配列を用いれば、フーリエ変換の不都合が生じることなく、時間領域に、確実で効果的な、入力信号のダイナミックレンジ圧縮を実現できる。特に、従来技術のフーリエ変換において生じる、時間窓が有限であるために生じる問題は、解消する。
【0020】
さらに、本発明にしたがって、ダイナミックレンジ圧縮が実行された出力信号が生成される。この信号は、例えば、対数化されたフーリエスペクトルの逆変換と比べて、干渉している非常にわずかな信号歪みを有している。
【0021】
本発明にしたがって、共振器回路のQを選択的に低減することにより、非常に強く、強度選択的に(例えば非線形に)、入力信号を減衰できる。
【0022】
この回路配列を、具体的にはフィルター回路と理解してもよい。ここで、共振回路のインダクタンス値Lと容量値Cに基づいて、共振器回路が透過性である周波数範囲が、確定されている。従って、値L、Cを設定することにより、共振器回路の透過的な間隔の周波数重心を簡単に設定できる。共振器回路の共振曲線の幅は、特に、上記回路のQを設定することにより調整できる。本発明の接続された共振器回路を、ダイナミックレンジ圧縮を原則的に任意の大きさにすることのできる、非線形に減衰したフィルターとしてもよい。非常に狭い帯域での処理により、非線形性が大きすぎることによって生じてしまう歪みも、非常にわずかな程度に抑えることができる。
【0023】
フィルターとしての回路配列は、二次共振器回路を含んでいてもよい。ここで、音響レベルが上昇すると、非線形の減衰が進行する。また、この回路配列を受動的に実現すると、つまり、受動素子(コイルL、キャパシタC、ノンリアクタンス抵抗R)を使用すると、(活性の帰還増幅器を必要とするシステムとは対照的に)安定した回路が得られる。
【0024】
また、高速フーリエ変換(FFT)の代わりに、本発明では、(例えばアナログの)フィルターバンクを使用し、対数化の代わりに、入力信号の非線形減衰を、信号の音響レベルに基づいて実行している。
【0025】
本発明の好ましい他の形態については、従属請求項に記載する。
【0026】
また、共振器回路は、制御回路を用いて制御可能(または調節可能)なノンリアクタンス抵抗を有していてもよい。このような制御可能または調節可能なノンリアクタンス抵抗とは、共振器回路のQの調節機能を低コストで正確に安定して実現できる簡単な回路素子である。
【0027】
また、ノンリアクタンス抵抗の第1端子とキャパシタの第1端子との間に、入力信号が供給されていてもよい。さらに、キャパシタの第1端子とキャパシタの第2端子との間に、出力信号が供給されていてもよい。ノンリアクタンス抵抗の第2端子がインダクタの第1端子に接続されており、インダクタの第2端子がキャパシタの第2端子に接続されていてもよい。
【0028】
また、出力信号の振幅をパラメータとするボルツマン関数に基づいて制御回路が共振器回路のQを制御するように、制御回路が設置されていてもよい。ここで、ボルツマン関数とは、その中に含まれるパラメータを適切に選択すると、感度曲線を人の内耳の中の外側の毛知覚細胞にうまく適合させることのできる関数である。この生物学上の依存に関する非常に優れた説明を、二次ボルツマン関数を用いて記載してもよい。これにより、人の耳の感度曲線を適合させることができる。このことは、医学の分野での回路配列の使用(例えば、補聴器)に有効である。
【0029】
また、制御回路が出力信号の振幅に応じて人の耳に適するように算出された感度特性に基づいて共振器回路のQを設定するように、制御回路が設置されていてもよい。人の内耳の感度特性を本発明の回路配列を用いて特に正確にシミュレートするために、例えば実験に基づく、または、例えば理論的に算出された、人の耳の感度特性を、制御回路にアクセスできるようにファイルまたは表の形式で格納してもよい。この場合、制御回路は、その中に格納された生物学上の感度特性に適合するように、共振器回路のQを制御または調節できる。
【0030】
また、出力信号の振幅が増大すれば増大する程、制御回路が共振器回路のQを低く設定するように、制御回路が設置されていてもよい。
【0031】
さらに、制御回路が出力信号の振幅に非線形に依存して共振器回路のQを設定するように、制御回路が設置されていてもよい。つまり、大きな振幅の信号領域を、小さな振幅の信号領域よりも著しく高い比率で減衰するように、制御回路を設置してもよい。従って、入力信号の音響レベルが極度に高い領域でも、出力信号を非常に狭い領域に圧縮できる。
【0032】
また、制御回路が、出力信号の振幅が所定の間隔内にあるように、共振器回路のQを設定してもよい。制御回路を適切に使用するために、出力信号の振幅を確実に所定の間隔内にとどめることが有効である。このことは、例えば、できる限り低い量子化レベルを有する激しい強度の揺らぎにより、信号を把握したい場合のデータ圧縮にとって、重要であろう。この場合、制御回路の設置を、出力信号が所定の間隔内にあるようにして、制御回路が共振器回路のQを制御または調節するように、実行してもよい。
【0033】
また、この回路配列は、直列接続された複数の共振器回路を備えていてもよい。ここで、上流に接続された各共振器回路の出力信号が、上記上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路に、入力信号として供給されている。
【0034】
この、特に有効な形態にしたがって、具体的には、複数の共振器回路からなる縦列接続を有するフィルターバンクを形成する。これにより、ダイナミックレンジ圧縮を、さらに大きいダイナミックレンジにまで拡大できる。基本的に、非常に強いダイナミックレンジ圧縮(例えば60dB)を、非常に高いQ(例えば、Q=1000、レベルが高い場合にはQがQ=1に低減される)を有するフィルター段階(つまり共振器回路)によって、実行できる。ただし、このような回路配列は、非常に狭い帯域にある(例えば、共振器回路の共振周波数の0.1%)。同様に、本発明にしたがって、比較的低いQ(例えばQ=10、したがってQ=1000)を有する縦列状の複数のフィルター(例えば、縦列接続された3つのフィルター)を用いて、非常に強いダイナミックレンジ圧縮(例えば60dB)を実現できる。各フィルターのQがそれほど高くない場合、有利な効果を引き起こす。また、Qが低いために(各フィルターの)帯域幅が大きくなるので、フィルターの周波数はカバーされ、同時に、フィルターのインパルス応答が改善される。つまり、システムの設定時間と立ち上げ時間が著しく低減する。
【0035】
具体的には、縦列接続された共振器回路を、上流に接続された共振器回路の出力電圧が、その下流に接続された共振器回路の入力電圧と同じであり、上流に接続された共振器回路の(駆動中は通常0ではない)出力電流が上記回路の下流に接続された共振器回路の入力電流と同じであるように、互いに直接接続できる。このために、この回路配列には、通常、上流に接続された共振器回路と下流に接続された共振器回路との間の中間素子は必要ではない。このことを、上流に接続された共振器回路のコイルの第2端子が上記上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路のノンリアクタンス抵抗の第1端子に接続されている回路配列を用いて、実現できる。
【0036】
あるいは、縦列接続された共振器回路は、特に上流に接続された共振器回路の出力部と下流に接続された共振器回路の入力部との間に中間素子が介在することにより、具体的には直接接続されていなくてもよい。つまり、互いに直接接続されていない場合であってもよい。このことを、上流に接続された共振器回路の出力電圧が上記上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路の入力電圧と同じであり、上流に接続された共振器回路の出力電流が0であることによって、実現することが好ましい。下流に接続された共振器回路の入力電流は、ほぼ、この共振器回路のインピーダンスからのみ生じる。このような回路配列には、上流に接続された共振器回路と上記回路の下流に接続された共振器回路との間に、中間素子として、好ましくは(インピーダンス変換器としての)演算増幅器が備えられている。この演算増幅器の第1入力部が、上流に接続された共振器回路のコイルの第2端子に接続されている。演算増幅器の第2入力部は、演算増幅器の出力部にフィードバック接続されており、上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路のノンリアクタンス抵抗の第1端子に、接続されている。
【0037】
演算能力を低減するために、直列接続された全ての共振器回路のQが、同じであるように設定されていてもよい。この場合、全ての共振器回路のQが同じであるように計算・設定される(つまり、全てのフィルターパラメータが同じである)ので、制御回路に必要とされる演算能力は、非常にわずかである。あるいは、Q要求が特に高い回路配列を必要とする場合、直列接続された複数の共振器回路のQを異なるように設定することにより、最適化できる。従って、このような回路配列では、直列接続された共振器回路の各Qを、個々に設定すればよい。
【0038】
この回路配列は、並列接続された複数の枝線(分岐配線;枝配線)を備えていることが好ましい。ここで、枝配線のそれぞれは、1つの共振器回路または直列接続された複数の共振器回路を備えている。この場合、各共振器回路のQを、制御回路によって制御または調節できる。
【0039】
本発明の、この特に有効な他の形態では、具体的には、並列接続された複数の、共振器回路の枝配線が、備えられている。ここで、各枝配線に、複数の共振器回路が縦列接続されていてもよい。
【0040】
ある連続した周波数間隔に対して全ての枝配線が透過性であるように、入力信号の各周波数範囲に対して各枝配線の少なくとも1つの共振器回路が透過性であることが好ましい。人の聴覚感度のよい周波数範囲は、約20Hz〜20kHzである。この可聴周波数帯域を保護するために、異なるチャネルの中の共振器回路の平行配列では、透過性のある信号の周波数範囲は、通常異なっている。共振器回路における上記透過性のある信号の周波数範囲は、ある半値幅を有する、共振周波数に近い分配曲線である。具体的には、共振器回路の値L、Cを設定することにより、この共振周波数にすることができ、各Qを設定することにより、上記半値幅を調整できる。共振器回路の異なる枝配線に異なる周波数通過帯域を構成する場合、人の聴覚の感度範囲またはそれ以外の所定の周波数範囲を把握できる、好ましくは上記帯域に関連した周波数間隔が、生じる。
【0041】
複数の枝配線が透過性であるこの周波数範囲は、少なくとも部分的に互いに重なっていることが好ましい。この場合、全ての周波数を確実に把握し、単一の枝配線の信号成分同士を混合できる。
【0042】
また、枝配線の少なくとも1つの共振器回路の、容量値および/またはインダクタンス値を調整することにより、各枝線が透過性ある周波数範囲が予め決定されていることが好ましい。これは、共振器回路の共振周波数がインダクタンス値および容量値に応じて決まるので、可能である。
【0043】
また、音信号は入力信号として処理されるように本発明の回路配列を設置することが好ましい。この場合、本発明の回路配列は、音声処理システムにおける使用に適している。このようなシステムは、例えば、ダイナミックレンジの低減に基づくパルスニューラルネットワークに依拠したものである。振幅の高い信号をできる限りわずかな量子化段階によって把握したい場合、他の適用領域が、音響処理および(可聴)データ圧縮のための、システムである。さらに、このシステムは、医学の分野では、特に騒音性難聴の患者に対する補聴器として、用いられる。
【0044】
本発明の回路配列は、デジタル回路技術またはアナログ回路技術を用いて実現することができる。
【0045】
回路配列の少なくとも一部(特に、制御回路の、フィルター、制御機能または調節機能)を、コンピュータプログラムとして実現してもよい。また、本発明を、コンピュータプログラム(つまり、ソフトウェア)と、1つまたは複数の特殊な電気回路とを用いて(つまり、ハードウェアまたは任意の混成形態において、つまり、ソフトウェアコンポーネントおよびハードウェアコンポーネントを用いて)、実現してもよい。
【0046】
また、(特に制御回路の)ソフトウェアを、例えば、「C++」によって実現してもよい。このことを、任意のプロセッサまたはDSP(デジタル信号プロセッサ)に対して実現してもよいし、FPGAモジュールに対して実現してもよい。FPGA(「書換え可能ゲートアレイ」)とは、通常複数のプログラマブルセルをチップに備えた、プログラマブル集積回路である。
【0047】
さらに、本発明の回路配列を備えた本発明の信号処理装置について詳述する。この信号処理装置の実施形態は、上記回路配列にも適用されるし、その逆も可能である。
【0048】
また、この信号処理装置では、追加処理ユニットは、音声認識デバイスまたは補聴器であってもよい。
【0049】
この追加処理ユニットを補聴器として実現する場合、難聴者の音量知覚障害を補うためのダイナミックレンジ圧縮を行うことが、特に問題となる。聴覚が妨害されると、外側の毛細胞にとって不都合な状態になり、これにより、感度の上昇が、低い音響レベルで止まる。聴覚は、具体的には、常に、高い音響レベルから与えられる感度によって機能している。このことは、聴覚の境界(非常に小さい)と不快の境界(非常に大きい)との間の音響レベルの利用可能な領域が小さくなることを意味する(補充)。この現象を補償するために、信号処理装置の本発明の回路配列を用いて、視聴環境の、大きな音響レベル領域を患者の認知領域に圧縮するダイナミックレンジ圧縮を、実行できる。
【0050】
また、この信号処理装置が、特にパルスニューラルネットワーク構造に、音声認識システムの入力部を構成してもよい。
【0051】
また、この信号処理装置は、アナログフィルターバンクまたはデジタルフィルターバンクとして設置されていてもよい。
【0052】
本発明の実施例を、図に示し、さらに詳述する。
【0053】
図1は、本発明の好ましい実施例に基づく回路配列を示す図である。図2は、本発明の一実施例に基づく共振器回路を示す図である。図3は、図2に示す共振器回路をデジタル波フィルターとした図である。図4および図5は、本発明の回路配列の相関性を明らかにするためのグラフである。図6Aは、本発明の他の好ましい実施例に基づく回路配列を示す図である。図6Bは、図6Aに示す共振器回路を、デジタル波フィルターとして実現した図である。図7Aは、本発明の他の好ましい実施例に基づく回路配列を示す図である。図7Bは、図7Aに示す共振器回路を、デジタル波フィルターとして実現した図である。
【0054】
異なる図の同一または類似する素子には同じ参照符号が付されている。
【0055】
さらに、図1を参照して本発明の好ましい実施例に基づく回路配列100について説明する。
【0056】
回路配列100は、複数の共振器回路101を備えている。各々の共振器回路101は、キャパシタおよびインダクタ(図1には図示せず)、入力信号を供給できる入力部、および出力信号を供給できる出力部を備えている。共振器回路101は、マトリックス型の配列の各行に沿って、3つずつ縦列接続されている。従って、上流に接続されている共振器回路101の各出力部は、その下流に接続されている共振器回路101の各入力部と連結されている。1つの行の共振器回路101のインダクタンス値および容量値は、以下のようにそれぞれ選択される。すなわち、各行が、相当する周波数間隔の信号を、行の共振器回路101の共振周波数の周辺レンジで伝送できるように選択されている。異なる行の共振器回路101は、異なるL,Cの値をそれぞれ有している。従って、共振器回路101の個々の行または枝配線は、まとまって、相互に関連性のある連続した周波数間隔をカバーしている。なお、上記周波数間隔は、人の聴覚の感度レンジ(約20Hzから20kHz)に相当している。
【0057】
制御回路111は、全ての共振器回路101と通信接続している。すなわち、制御回路111は、全ての共振器回路と連結されている。共振器回路101の個々のQを、共振器回路101のQを制御または調節するための制御回路111を用いて設定できる。なお、制御回路111は、各行の最後の(最下流の)共振器回路101の出力信号の振幅に応じて、共振器回路101のQを設定するように設計されている。例えば、共振器回路R11,R12,R13のQは、制御回路111を用いて、共振器回路R13の出力部の信号の振幅に基づいて設定される。
【0058】
図1には、さらに音源103が示されている。音源103は、音信号を、広域入力信号102として発信する。この広域入力信号102は、共振器回路101の第1列の共振器回路101(R11,R21,...,Rk1,...,Rn1)の入力部に供給される。
【0059】
さらに、共振器回路の第1行・第1列に配置されている共振器回路101R11について考察する。この共振器回路101R11には、入力部を介して、音源103の広域入力信号102が供給される。共振器回路101R11は、共振器回路101R11に割り当てられている値L・Cに応じた広域入力信号102の周波数成分を伝送する。なお、上記周波数成分は、共振器回路R11の出力部に、第1局部出力信号104として供給される。さらに、共振器回路101R11の相関性のゆえに、ここでの(現在の)Qに応じて、広域入力信号102の振幅を変更する。共振器回路101R11のQは、共振器回路101R11のノンリアクタンス抵抗(図1には図示せず)を用いて調節される。制御回路111は、この調節可能なノンリアクタンス抵抗に、対応する制御信号を供給する。これにより、抵抗が、所定の値に設定される。従って、共振器回路101のQが設定される。その結果、後続の処理過程では、このQ値に基づいて、入力信号がより強くまたはより弱く減衰される。回路配列100は、広域入力信号102のダイナミック圧縮のために設定されているので、明らかに、高振幅の信号レンジは、低振幅の信号レンジよりも強く減衰される。
【0060】
第1局部出力信号104は、共振器回路101R11の下流に接続されている共振器回路101R12に、第1局部入力信号105として供給される。第1局部入力信号105は、共振器回路配列101R12を通過し、自身の出力部に、第2局部出力信号106が供給される。第2局部出力信号106は、共振器回路101R12の下流に接続されている共振器回路101R13の第2局部入力信号107としての機能を果たしている。共振器回路101R13の出力部108に、第3局部出力信号108が供給される。この第3局部出力信号108は、各行の最後にそれぞれ配置されている共振器回路101(R13,R23,...Rk3,...,Rn3)の別々の周波数間隔にそれぞれ関連する出力信号と共に、広域出力信号109になるように混合される(加算される)。
【0061】
共振器回路(Rk1,Rk2,Rk3)の各行の共振器回路101の各々では、行の全ての共振器回路101のQを、それぞれ最後の共振器回路(k番目の行では共振器回路Rk3)の出力部の出力信号の周波数に基づいて、制御回路111を用いて調節する。
【0062】
従って、まとめられた広域出力信号109には、広域入力信号102とは異なり、ダイナミック圧縮が行われている。
【0063】
さらに、図2を参照して、図1の共振器回路101について説明する。
【0064】
図2では、入力信号200は、電源Uとして表されている。さらに、出力信号204を、電圧Uとして表されている。入力信号200は、ノンリアクタンス抵抗203の第1端子と、キャパシタ201の第1端子との間に備えられている。出力信号204は、キャパシタ201の第1端子と、キャパシタ201の第2端子との間に供給されている。さらに、調節可能な(可変)ノンリアクタンス抵抗203の第2端子は、インダクタ202の第1端子と連結されており、インダクタ202の第2端子は、キャパシタ201の第2端子と連結されている。
【0065】
ノンリアクタンス抵抗R203の値は、制御回路111を用いて設定できる。従って、図2の共振器回路101は、減衰を調節できるフィルターとなっていることが分かる。
【0066】
本発明の回路配列100では、各行に3(または一般化してN)個の共振器回路101が、フィルター素子として、フィードバックされずに縦列接続されている。上流に接続されたフィルターの時間依存性のある出力信号U(t)(ただし、tは時間である)は、上流に接続されているフィルターの下流に接続されたフィルターの入力信号U200をそれぞれ定義する。
【0067】
抵抗R203は、出力電圧U(t)に非線形的に依存して変更でき(調節)、それぞれ上流に接続されているフィルターのU(t)に依存して変更でき(制御)、または、列の最後のフィルター段階のUc(t)に依存して全てのフィルターに対して同時に変更することもできる。
【0068】
さらに、説明する本発明の実施例に基づく各ノンリアクタンス抵抗R203の値Rを設定するための基礎となる演算規則について説明する。
【0069】
このため、まず、設定するQを計算する。
【0070】
説明する実施形態では、フィルターのQを、ボルツマン関数に基づいて低減する。
Q(t)=(Q−Qmin)(1−[2/(1+exp{−SAT|U(t)|})−1])+Qmin・・・(1)
式(1)では、Q(t)は、Qの時間tに対する依存度である。Qは、共振器回路101の予め決めておくことの出来る最大のQである(例えば、Q=10)。Qminは、共振器回路の予め決めておくことの出来る最小Qである(例えば、Qmin=1)。SATは、予め決めておくことの出来る飽和閾値、すなわち、明らかに、Qの時間への依存性を設定できるパラメータである(例えば、SAT=1)。
【0071】
ボルツマン関数(1)は、内耳の外側の毛感覚細胞の感度曲線を適合させる。この関数を、必要に応じて、ニ次のボルツマン関数で置換できる。ニ次のボルツマン関数は、他のパラメータを挿入することで、より正確な適合を可能にするものである。式(1)では、簡単な一次のボルツマン関数を使用している。なぜなら、一次のボルツマン関数は、たった1つの任意のパラメータ(つまり、SAT)を備え、従って、一次のボルツマン関数を、低い数字の複雑度で処理できる。
【0072】
フィルターのQから、非線形の抵抗Rの設定する値を
【0073】
【数1】

【0074】
上記式(2)のように計算する。
【0075】
その結果、ノンリアクタンス抵抗の時間依存性のある値R(t)は、インダクタ値Lおよびキャパシタ値Cと、時間依存性のあるQ(t)とに依存している。
【0076】
明らかに、式(1)および式(2)は、制御回路111を用いて、ノンリアクタンス抵抗203の値Rの設定のための調節規則を作成する。
【0077】
図2に示す共振器回路101から作成されたフィルターは、振幅U(t)が非常に少ない場合は、線形となる(ただし、U(t)→0に対してQ→Q)。同じく、上記フィルターは、振幅U(t)が非常に多い場合は、ほぼ線形となる(ただし、U(t)→∞に対してQ→Qmin)。ダイナミック圧縮Kが、飽和閾値(SAT)の範囲で生じ、K=Q/Qminとなる。N=4の縦列接続されたフィルター段階であり(しかし、図1では、たった3つのフィルター段階が、3つの共振器回路を用いて1つの行に備えられている)、値Q=10およびQmin=1である場合は、80dB(K=(Q/Qmin)分強く圧縮できる。
【0078】
人の全体的な聴覚レンジをカバーするために、約20Hz〜約20kHzのレンジの共振周波数を有するフィルターバンクを実現する。このことを、一般的に、共振器回路101の50〜100個の行(すなわちn=50〜n=100)によって実現する。説明する実施例では、インダクタンスの値をL=1Hに固定する。次に、各値Cを、共振器回路101の各行のために、これらの行によってカバーされているフィルター周波数fに基づいて、対応するLC部の共振周波数から計算する。
C=(4πL)−1・・・(3)
非線形Qは、各フィルター周波数fのため、すなわち、共振器回路101の各行のために、独立して計算される。図1を参照すると、このことは、発振器回路101の各行に、対応するフィルター周波数fが割り当てられており、フィルター周波数fのために、Qの値Q(t)を計算することを意味している。
【0079】
さらに、図3を参照して、図2に示す共振器段階101をデジタル波フィルター300として説明する
デジタル波フィルターは、特に効率的な特性を有するデジタルフィルターの1つのクラスである。これらは、通信技術の古典的な構成素子を含む伝統的なフィルターに似せて構成されており、近代的集積デジタル回路を用いて駆動される。デジタル波フィルターの技術では、明らかに、アナログモデルを(例えば、コンピュータを使用して)デジタル実現できる。
【0080】
さらに、明らかに、図3のデジタル波フィルター300の素子を、図2の共振器回路101の素子に明らかに割り当て、対応する変数を定義する。
【0081】
デジタル波フィルター300の第1ブロック301は、インピーダンスR11・R13を有するフィードバックされていない直列連結器を備えている。明らかに、R11は、基準抵抗に関して調節可能な(可変)ノンリアクタンス抵抗R203を表し、R12は、ベース周波数に関してコイルL202の修正された抵抗(インピーダンス)を表している。第2ブロック302は、キャパシタ201を並列接続する並列連結器を備えている。また、第2ブロックには、コンダクタンスG21・G22・G23が示されている。G21は、第2ブロック302の入力部コンダクタンス(G12=1/R13)であり、G23は、第2ブロック302の出力部コンダクタンスである。コンダクタンスG22を用いて、キャパシタC201の抵抗がモデル化される。第3ブロック303は、キャパシタ201のためのメモリーまたはフィルターレジスタを表し、第4ブロック304は、コイル202のためのメモリーまたはフィルターレジスタを表している。
【0082】
さらに、図3に示す変数を定義する。各フィルター周波数のための抵抗およびコンダクタンスは、R11=R/R_B・・・(4)
R12=2πF_B L/(R_B tan [πF_B/f_s])・・・(5)
R13=R11+R12・・・(6)
G21=R13−1・・・(7)
G22=2πF_B C R_B/ tan( π F_B/f_s)・・・(8)
G23=G21+G22・・・(9)
ここでは、Rは、ノンリアクタンス抵抗203であり、R_Bは、予め決めておくことの出来る基準抵抗である。また、F_Bは、予め決めておくことのできる基準周波数である。値R_Bおよび値F_Bは、スケーリングの機能を果たす。説明した実施例に基づく実現は、2倍精度浮動変数で実現されているので、規格化は、無関係なものであるが、整数値算数を使用するならば、おそらく関係するものである。Lは、コイル202のインダクタンスである。値f_sは、サンプルされた時間信号のサンプル周波数である。変数R11・R12・R13は、ノンリアクタンス抵抗であり、これに対して、変数G21・G22・G23は、コンダクタンス、すなわち、反転ノンリアクタンス抵抗である。
【0083】
フィルター係数g1・g2は、
g1=R11/R13・・・(10)
g2=G21/G23・・・(11)
となる。
【0084】
フィルターレジスタZ1(第4ブロック304)・Z2(第3ブロック303)の初期値を、ゼロに初期化する。
【0085】
個々のポートの信号を、漸次計算する。信号の「順方向波」、すなわち、明らかに、図3の右へ向かう矢印の係数は、
b13=−(U+Z1)・・・(12)
b20=−g2(Z2−b13)・・・(13)
b23=b20+Z2・・・(14)
となる。
【0086】
式(12)の変数Uは、入力信号200である。
【0087】
「逆方向波」、すなわち、明らかに、図3で左へ向かう矢印については、係数は、
b22=b20+b23・・・(15)
b21=b22+Z2−b13・・・(16)
a0=b21−b13・・・(17)
b11=U−g1 a0・・・(18)
b12=−(b11+b21)・・・(19)
となる。
【0088】
従って、出力信号U204は、
=(b22+Z2[sec])/2・・・(20)
と計算される。
【0089】
フィルターレジスタ(ブロック303・304)は、
Z1=−b12・・・(21)
Z2=b22・・・(22)
のように実現化される。
【0090】
出力信号U204を、入力信号U200として、該当するフィルター段階101の下流に接続されているフィルター段階101へ転送する。フィルター101段階の1つの行の最後のフィルター101段階の出力信号U204に基づいて、縦列接続されているフィルター101の設定するQを、式(1)に基づいて新たに査定する。Qのためにこのようにして査定された値から、減衰を決定する抵抗Rの値を、式(2)に基づいて計算する。ノンリアクタンス抵抗R203の変更された値を用いて、フィルター抵抗(R11・R12・R13・G21・G22・G23)およびフィルター係数(g1・g2)を、式(4)〜(11)に基づいて新たに計算する。この工程の後に、出力信号を、次の時間帯のために計算する。言い換えると、時間スペクトルを、数字によって漸次計算される複数の時間帯に分割できる。
【0091】
さらに、図4を参照して、グラフ400について説明する。このグラフ400に、本発明の好ましい実施形態に基づく本発明の回路配列の機能を示す。グラフ400は、N=4個の縦列接続された共振器回路を有する回路配列に関するものである。最大のQ値として、Q=10とし、最小のQ値として、Qmin=1とする。
【0092】
グラフ400の横座標(横軸)401に沿って、対数表示で、基準周波数fに規格化された信号の周波数が示されている。縦座標(縦軸)402に沿って、対数表示で、特定の強度の入力信号に対するシステムの反応を示す。第1曲線から第8曲線403〜410は、(基準振幅に関して)異なる信号振幅のための本発明の回路配列の周波数応答(すなわち、ここでは、フィルター出力部の最大振幅の各値)である。第1曲線403は、1×10−9の振幅に相当し、第2曲線404は、1×10−4の振幅に相当し、第3曲線405は、1×10−3の振幅に相当し、第4曲線406は、1×10−2の振幅に相当し、第5曲線407は、1×10−1の振幅に相当し、第6曲線408は、1×10の振幅に相当し、第7曲線409は、1×10の振幅に相当し、第8曲線410は、1×10の振幅に相当し、さらに、入力信号を、cos窓によって窓形の穴の開いた正弦波振動とする。曲線403〜410は、フィードバックされずに縦列接続されているN=4の共振器回路を含む全体的なフィルターバンクによって生じる。
【0093】
まず、グラフ400から、信号強度または信号振幅が増大すれば増大する程、入力信号の減衰がよりいっそう強くなることが分かる。振幅が非常に小さい場合は、フィルターが、線形であり、共振膨張は、約80dBとなる。フィルターバンクの応答は、高すぎる低周波数を非常に急勾配で減少させる。なぜなら、フィルターは、ローパスとして実現されているからである(図2参照)。フィルターの高周波数応答は、fでのフィルターパラメータのスケーリングにより、オクターブ毎に約6dB下がる。図4の曲線は、人の聴覚の非常に非対称な周波数選択性を、良好に適合することによりシミュレートしている。
【0094】
さらに、図5を参照して、本発明の回路配列の出力信号と入力信号との振幅の間の関係について説明する。
【0095】
グラフ500では、横座標(横軸)に沿って、対数表示で、基準変数20μPaの音響圧に対するdB単位の音響圧レベルAinを示している。縦座標(縦軸)502に沿って、任意のユニットで、dB単位の出力信号Aoutの強度が示されている。曲線503〜507は、共振周波数fである場合の、4個の共振器回路(N=4個のフィルターの縦列接続)を含むフィルターカスケードの、様々な状況での成長関数を示す。最小Qとして、Qmin=1とする。
【0096】
第1曲線503は、線形成長関数を示す。第2曲線504は、内耳の成長関数、すなわち、鼓膜の前で測定した音響圧に対する基底膜の速度を示す。第2曲線504のデータは、[2]に記載されている。第3曲線505は、Q=2に対する曲線を示す。第4曲線506は、Q=4に対する曲線を示し、第5曲線507は、Q=10に対する曲線を示す。
【0097】
従って、明らかに、図5には、パラメータとしてフィルターQを有するf=fに対するフィルター出力部の成長関数を示す。振幅が非常に大きい場合、および、振幅が非常に小さい場合、成長関数はほぼ線形となっている。著しいのは、4つの10進数を上回って広がる大きな圧縮レンジ(特に、Qが大きい場合)である。入力信号(100dB)の大きなダイナミックレンジを、40dB(Q=10に対して)に圧縮する。共振膨張により、静的な信号を、周波数指定して「増幅」する。成長関数は、生物の聴覚システムで測定される振幅応答を非常に良好にシミュレートしている(曲線504参照)。従って、本発明の回路配列では、内耳での非線形処理が、適合するように技術的にシミュレートされている。
【0098】
さらに、図6Aを参照して、本発明の他の好ましい実施例の回路配列600について説明する。
【0099】
回路配列600は、第1共振器回路601と、第2共振器回路602とで構成されている。各共振器回路は、図2に示す共振器回路101のように構成されている。第2共振器回路602は、第1共振器回路601の下流に接続されている。
【0100】
明らかに、回路配列600を、2個の(N=2)縦列接続されている共振器回路601・602の直接接続を実現したものとすることが出来る。
【0101】
図6Aに示すように、上流に接続された共振器回路601のコイル202の第2端子は、下流に接続されている第2共振器回路602のノンリアクタンス抵抗203の第1端子と連結されている。
【0102】
共振器回路601・602が相互に直接連結されている図6Aに示す実施例では、上流に接続されている共振器回路601の出力電圧UC1が、続く共振器回路602の入力電圧に等しくなっている。さらに、第1共振器回路601の出力電流は、第2共振器回路602の入力電流に等しくなっている。
【0103】
共振器回路601・602の抵抗R1または抵抗R2、インダクタンスL1またはインダクタンスL2、および、キャパシタC1またはキャパシタC2の値は、相互に異なっていてもよく、または、異なるように設定/調節されるようになっていてもよい。
【0104】
さらに、図6Bを参照して、図6Aに示す共振器回路601・602をデジタル波フィルター650として実現したものについて説明する。
【0105】
このデジタル波フィルター650は、第1共振器回路601を表す第1素子651と、第2共振器回路602を表す第2素子652とで構成されていることが分かる。図6Aに示す共振器回路601・602の接続された構成に対応して、2つの素子651・652は、図6Bに示すように直接相互に連結されている。これらの素子651・652の各々の内部構造は、図3のデジタル波フィルター300の各々にほぼ対応している。
【0106】
さらに、図7Aを参照して、本発明のまた別の実施例の回路配列700について説明する。
【0107】
回路配列700は、直列接続されている第1共振器回路701と第2共振器回路702とで構成されている。共振器回路701・702は、相互に分断された構成で縦列接続されていることが分かる。すなわち、共振器回路701と共振器回路702との間に、中間素子が接続されている。
【0108】
共振器回路701・702の各々は、ほぼ図2に示す共振器回路101のように構成されている。さらに、第1共振器回路701と第2共振器回路702との間には、演算増幅器703が備えられており、演算増幅器703の非反転入力部703aは、上流に接続されている第1共振器回路701のコイル202の第2端子と連結されている。さらに、演算増幅器703の反転入力部703bは、自身の出力部703cにフィードバックされており、第1共振器回路701の下流に接続されている第2共振器回路702のノンリアクタンス抵抗203の第1端子と連結されている。
【0109】
この構成では、上流に接続されている共振器回路701の出力電圧UC1204は、第1共振器回路701の下流に接続されている第2共振器回路702の入力電圧に等しい。また、各共振器回路の出力電流はゼロである。上流に接続されている第1共振器回路701の下流に接続されている第2共振器回路702の入力電流は、下流に接続されている第2共振器回路702のインピーダンスだけに基づいている。図7Aに示すように、アナログ技術では、これらの状況の実現はインピーダンス変換器を用いて可能となる。なお、上記インピーダンス変換器は、上流に接続されている共振器回路701の出力電圧を、下流に接続されている共振器回路702の入力部に印加するものである。
【0110】
さらに、図7Bを参照して、図7Aの回路配列700をデジタル波フィルター750として実現したものについて説明する。
【0111】
デジタル波フィルター750は、第1素子751と第2素子752とに分割され、第1素子751は、第1共振器回路701を表している一方、第2素子752は、第2共振器回路702を表している。演算増幅器703の相関性により、2つの素子751・752は、相互に連結されていることが分かる。素子751・752の各々の内部構成は、図3に示す構成の各々にほぼ対応している。第1素子751の入力信号はUであり、第2素子752の入力信号はUC1である。
【0112】
本願は以下の刊行物を引用した。
[1] Schukat-Talamazzini, EG (1995)「自動音声認識(Automatische Spracherkennung)」, Friedrich Vieweg & Sohn Verlagsgesellschaft, Braunschweig/Wiesbaden, ISBN 3-528-05492-1,1〜3章
[2] Ruggero, MA他. (2000) 「周波数同調の機械的拠点および蝸牛基底部での神経系励起:基底膜振動と内耳神経線維応答との毛皮における合成(Mechanical bases of frequency tuning and neural excitation at the base of the cochlea : comparison of basilar-membrane vibrations and auditory nerve-fiber responses in chinchilla)」, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 (22) : 11744-11750
[3] US3,808,540
[4] DE24 01 816 C2
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の好ましい実施例に基づく回路配列を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例に基づく共振器回路を示す図である。
【図3】図3は、図2に示す共振器回路をデジタル波フィルターとした図である。
【図4】図4は、本発明の回路配列の相関性を明らかにするためのグラフである。
【図5】図5は、本発明の回路配列の相関性を明らかにするためのグラフである。
【図6A】図6Aは、本発明の他の好ましい実施例に基づく回路配列を示す図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示す共振器回路を、デジタル波フィルターとして実現した図である。
【図7A】図7Aは、本発明の他の好ましい実施例に基づく回路配列を示す図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示す共振器回路を、デジタル波フィルターとして実現した図である。
【符号の説明】
【0114】
100 回路配列
101 共振器回路
102 広域入力信号
103 (音響)信号源
104 第1局部出力信号
105 第1局部入力信号
106 第2局部出力信号
107 第2局部入力信号
108 第3局部出力信号
109 広域出力信号
111 制御回路
200 入力信号
201 キャパシタ
202 インダクタンス
203 調節可能なノンリアクタンス抵抗
204 出力信号
300 デジタル波フィルター
301 第1ブロック(直列接続器)
302 第2ブロック(並列接続器)
303 第3ブロック(キャパシタ用のメモリー素子)
304 第4ブロック(インダクタンス用のメモリー素子)
400 グラフ
401 横座標(横軸)
402 縦座標(縦軸)
403 第1曲線
404 第2曲線
405 第3曲線
406 第4曲線
407 第5曲線
408 第6曲線
409 第7曲線
410 第8曲線
500 グラフ
501 横座標(縦軸)
502 縦座標(横軸)
503 第1曲線
504 第2曲線
505 第3曲線
506 第4曲線
507 第5曲線
600 回路配列
601 第1共振器回路
602 第2共振器回路
650 デジタル波フィルター
651 第1素子
652 第2素子
700 回路配列
701 第1共振器回路
702 第2共振器回路
703 演算増幅器
703a 非反転入力部
703b 反転入力部
703c 出力部
750 デジタル波フィルター
751 第1素子
752 第2素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号から出力信号を生成する共振器回路と、
上記共振器回路のQを制御または調節する制御回路とを備えた、回路配列であって、
上記共振器回路は、
キャパシタ、インダクタ、上記入力信号を供給できる入力部、および、上記出力信号を供給できる出力部を備え、
上記制御回路は、入力信号および/または出力信号の、信号振幅の信号曲線に応じて共振器回路のQを制御または調節するように、設置されている、回路配列。
【請求項2】
上記共振器回路が、上記制御回路によって制御可能なノンリアクタンス抵抗を備えている、請求項1に記載の回路配列。
【請求項3】
上記ノンリアクタンス抵抗の第1端子とキャパシタの第1端子との間に、入力信号が供給され、
上記キャパシタの第1端子と上記キャパシタの第2端子との間に、出力信号が供給されるようになっており、
上記ノンリアクタンス抵抗の第2端子がインダクタの第1端子に接続されており、インダクタの第2端子がキャパシタの第2端子に接続されている、請求項2に記載の回路配列。
【請求項4】
上記出力信号の振幅をパラメータとするボルツマン関数、および/または、その導関数に基づいて制御回路が共振器回路のQを制御するように、制御回路が設置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項5】
上記制御回路が人の耳に適するように算出された感度特性に基づく出力信号の振幅に応じて共振器回路のQを設定するように、制御回路が設置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項6】
上記出力信号の振幅が増大すれば増大する程、制御回路が共振器回路のQを低く設定するように、制御回路が設置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項7】
上記制御回路が出力信号の振幅に非線形に依存して共振器回路のQを設定するように、上記制御回路が設置されている、請求項6に記載の回路配列。
【請求項8】
上記制御回路が、出力信号の振幅が所定の間隔内にあるように共振器回路のQを設定するように上記制御回路が設置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項9】
直列接続された複数の共振器回路を備え、
上流に接続された各共振器回路の出力信号が、下流に接続された共振器回路に、入力信号として供給されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項10】
上流に接続された共振器回路のコイルの第2端子が該上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路のノンリアクタンス抵抗の第1端子に接続されている、請求項9に記載の回路配列。
【請求項11】
上流に接続された共振器回路と該共振器回路の下流に接続された共振器回路との間に、演算増幅器を備え、
上記演算増幅器の第1入力部が、上流に接続された共振器回路のコイルの第2端子に接続されており、
上記演算増幅器の第2入力部が、上記演算増幅器の出力部にフィードバック接続されていると共に、上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路のノンリアクタンス抵抗の第1端子に、接続されている、請求項9に記載の回路配列。
【請求項12】
直列接続された全ての共振器回路のQが、同じであるように設定されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項13】
上記直列接続された各共振器回路のQが、個々に設定されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項14】
並列接続された複数の枝配線を備え、
上記枝線のそれぞれが、各共振器回路または直列接続された複数の共振器回路を備え、各共振器回路のQが、制御回路によって制御される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項15】
ある連続した周波数間隔に対して全ての枝配線が透過性であるように、入力信号の各周波数範囲に対して各枝配線の少なくとも1つの共振器回路が透過性である、請求項14に記載の回路配列。
【請求項16】
複数の枝配線が透過性である上記周波数範囲が、少なくとも部分的に互いに重なっている、請求項15に記載の回路配列。
【請求項17】
上記枝配線の少なくとも1つの共振器回路の、容量値および/またはインダクタンス値が調整されていることにより、各枝配線が透過性である周波数範囲が予め決定されている、請求項15または16に記載の回路配列。
【請求項18】
音信号を入力信号として処理する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項19】
上記出力信号をさらに処理するための追加処理ユニットを備えた、請求項1〜18のいずれか1項に記載の回路配列を備えた信号処理装置。
【請求項20】
上記追加処理ユニットが、音声認識デバイスまたは補聴器である、請求項19に記載の信号処理装置。
【請求項21】
アナログフィルターバンクまたはデジタルフィルターバンクとして設置されている、請求項16または17に記載の信号処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の共振器回路と、
上記共振器回路のQを制御または調節する制御回路とを備えた、回路配列であって、
上流に接続された各共振器回路の出力信号が、下流に接続された共振器回路に、入力信号として供給されており、
入力信号から出力信号を生成する各共振器回路が配置されており、
上記共振器回路は、
キャパシタ、インダクタ、上記入力信号を供給できる入力部、および、上記出力信号を供給できる出力部を備え、
上記制御回路は、入力信号および/または出力信号の、信号振幅の信号曲線に応じて共振器回路のQを制御または調節するように、設置されている、回路配列。
【請求項2】
上記共振器回路が、上記制御回路によって制御可能なノンリアクタンス抵抗を備えている、請求項1に記載の回路配列。
【請求項3】
上記ノンリアクタンス抵抗の第1端子とキャパシタの第1端子との間に、入力信号が供給されており、
上記キャパシタの第1端子と上記キャパシタの第2端子との間に、出力信号が供給されるようになっており、
上記ノンリアクタンス抵抗の第2端子がインダクタの第1端子に接続されており、インダクタの第2端子がキャパシタの第2端子に接続されている、請求項2に記載の回路配列。
【請求項4】
上記出力信号の振幅をパラメータとするボルツマン関数、および/または、その導関数に基づいて制御回路が共振器回路のQを制御するように、制御回路が設置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項5】
上記制御回路が人の耳に適するように算出された感度特性に基づく出力信号の振幅に応じて共振器回路のQを設定するように、制御回路が設置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項6】
上記出力信号の振幅が増大すれば増大する程、制御回路が共振器回路のQを低く設定するように、上記制御回路が設置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項7】
上記制御回路が出力信号の振幅に非線形に依存して共振器回路のQを設定するように、上記制御回路が設置されている、請求項6に記載の回路配列。
【請求項8】
上記制御回路が、出力信号の振幅が所定の間隔内にあるように共振器回路のQを設定するように上記制御回路が設置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項9】
上流に接続された共振器回路のコイルの第2端子が該上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路のノンリアクタンス抵抗の第1端子に接続されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項10】
上流に接続された共振器回路と該共振器回路の下流に接続された共振器回路との間に、演算増幅器を備え、
上記演算増幅器の第1入力部が、上流に接続された共振器回路のコイルの第2端子に接続されており、
上記演算増幅器の第2入力部が、上記演算増幅器の出力部にフィードバック接続されていると共に、上流に接続された共振器回路の下流に接続された共振器回路の抵抗の第1端子に、接続されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項11】
直列接続された全ての共振器回路のQが、同じであるように設定されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項12】
上記直列接続された各共振器回路のQが、個々に設定されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項13】
並列接続された複数の枝配線を備え、
上記枝線のそれぞれが、互いに直列に接続された複数の共振器回路を備え、各共振器回路のQが、制御回路によって制御される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項14】
ある連続した周波数間隔に対して全ての枝配線が透過性であるように、入力信号の各周波数範囲に対して各枝配線の少なくとも1つの共振器回路が透過性である、請求項13に記載の回路配列。
【請求項15】
複数の枝配線が透過性である上記周波数範囲が、少なくとも部分的に互いに重なっている、請求項14に記載の回路配列。
【請求項16】
上記枝配線の共振器回路の、容量値および/またはインダクタンス値が調整されていることにより、各枝配線が透過性である周波数範囲が予め決定されている、請求項15に記載の回路配列。
【請求項17】
音信号を入力信号として処理する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の回路配列。
【請求項18】
上記出力信号をさらに処理するための追加処理ユニットを備えた、請求項1〜17のいずれか1項に記載の回路配列を備えた信号処理装置。
【請求項19】
上記追加処理ユニットが、音声認識デバイスまたは補聴器である、請求項18に記載の信号処理装置。
【請求項20】
請求項15または16に記載の回路配列がアナログフィルターバンクまたはデジタルフィルターバンクとして設置されている、信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−501708(P2006−501708A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538702(P2004−538702)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【国際出願番号】PCT/DE2003/002956
【国際公開番号】WO2004/030209
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (331)
【Fターム(参考)】