説明

回転センサ

【課題】 回転センサのロータセンシング部と励磁コイル間のずれに基づく異常を検知する。
【解決手段】 シャフトSに取り付けられ、周方向に幅が変化するセンシング部12を有するロータ10と、センシング部とで磁気回路をなす励磁コイルと、励磁コイルを保持する磁性材のコア本体31a,32aとを有し、固定部材に取り付けてセンシング部に対してシャフト軸線方向に対向配置される固定コアとを備え、固定コアがセンシング部周方向に所定間隔で対向配置され、かつその励磁コイルが位相シフト部110を形成し、当該シフト部は発振部100と位相シフト量検出部120に接続され、一方の励磁コイルに接続された位相シフト量検出部の位相シフト量の振幅に上下限の少なくとも一方を設けてこれを一定値で飽和させ、この値と比較した際の他方の励磁コイルの位相シフト量検出部の位相シフト量の値に基づいて異常検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体に取り付けてこの回転体の回転角度を検出するのに使用される回転センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のステアリングシャフトなどの回転シャフトに取り付けてこのシャフトと一体になったハンドルの回転角度を検出するのにいわゆる回転センサが使用される。
【0003】
かかる回転センサの一例として、ロータに対して固定コアを所定間隔隔てて対向配置したものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この回転センサは、特許文献1に示すように、回転するシャフトに取り付けられるロータと、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される少なくとも1つの励磁コイルを有する固定コアと、回転角度検出部を備えている。なお、励磁コイルは、例えば図2(a)に示すように2個の励磁コイルからなり、それぞれロータの周方向に例えば90度などの所定の中心角度をなして配置されている。また、固定コアは、シャフトの近傍に位置する固定部材に取り付けられ、それぞれ交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材、あるいは絶縁性の樹脂材等からなるケースにロータとともに収納されている。
【0005】
ロータは、絶縁磁性材あるいは絶縁性の樹脂材等からなるロータ取り付け部及びこれとステー部材を介して連結され周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部とからなる。なお、センシング部は、幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とを有した導電性を有する金属からなり、ロータの回転角度に対応してセンシング部の半径方向の幅が変化するように形成され、交流磁界によって回転に伴う幅に対応した大きさの渦電流がセンシング部表面に誘起されるようになっており、この渦電流量の変動に伴い各励磁コイルのインピーダンスも変動する。
【0006】
回転センサの回路ブロック図は、図13に示すように、発振回路501からなり特定周波数の発振信号を出力する発振部500と、センシング部に発生する渦電流の大きさに応じて発振部500から入力された発振信号の位相をシフトする位相シフト部510(511,512)と、位相シフト量を検出する位相シフト量検出部520(521,522)と、検出された位相シフト量を対応するパラメータに変換する位相シフト量コンバート部530(531,532)と、位相シフト量コンバート部530から出力される位相シフト量を増幅する増幅部540(541,542)と、増幅部540からの出力に基づいて回転角度を算出する回転角度検出部550を有し、位相シフト部510に入力される回転角度を検出するようになっている。
【0007】
また、位相シフト部510は、図2(b)に示すように、電子回路の抵抗とコンデンサ及びコイルからからなる。ロータのセンシング部は上述したように周方向に幅が連続的に変化する形状を有しているので、回転軸の回転と連動するロータのセンシング部が回転することにより、コイルのインピーダンスが変化する。
【0008】
回転軸が回転したとき、入力角度に対して位相シフト量検出部520の出力はセンシング部の形状によって決まり、図14に示すようにSin波形の如く変化させることができる。例えば、図2(b)に示すように、2つの固定コア(コイルA、コイルB)をロータ回転軸の中心に対して90°の中心角度で配置すると、図15に示すように入力角度に対して、一方の固定コアのコイルAのインピーダンス変化に基づいて信号処理した位相シフト量と、他方の固定コアのコイルBのインピーダンス変化に基づいて信号処理した位相シフト量は90°の位相差をもって変化することになる。
【0009】
そして、このような構成の回転センサを用いて、この渦電流の発生に伴う励磁コイルのインピーダンス変動を利用してロータの回転角度を検出するようになっている。
【特許文献1】特開2003−202240号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、回転センサはそのロータのセンシング部が回転軸に固定され、励磁コイルが固定コアを介してケースに固定されている。すなわち、回転センサを取り付けるにあたって、回転センサのロータ側を回転軸に取り付けるとともにステータ側をブラケット等で回転軸以外の部分に取り付けるようになっている。そのため、回転センサの取り付け性向上を図るためにロータのセンシング部と励磁コイルとの間にある程度のずれが生じる場合がある。このずれが許容範囲の場合は問題ないが、ずれが許容範囲を超えるとロータのセンシング部と励磁コイルとのガタやコイルの温度特性等に起因して、図4に示すように、入力角度に対する位相シフト量にも許容できない程度のずれが生じる。図4には、位相シフト量がずれた場合(グラフ上で縦にずれる)を示しているが、入力角度がずれる(グラフ上で横にずれる)こともあり、両方のずれを伴うこともある。実際には、ロータのセンシング部と励磁コイルとの間において、センシング部半径方向のずれが生じやすい。このとき、回転角度検出部550では、実際の入力角度とずれがある角度をそのまま検知することになるが、現状の構成のみではこのような許容できないずれ発生の検出は困難である。また、仮にこれを検出しようとすると追加部品が必要となりコストアップにつながる。このように、ロータのセンシング部と励磁コイル間のガタや温度に起因する検出出力の変化を本来の検出角度の変化と区別することは難しいため、想定外のずれが生じた場合には異常と診断することができず、回転角度を誤検知してしまう。かかる回転センサのセンシング部と励磁コイルとの許容できない位置ずれが判別できれば、センサ出力信号を適時キャンセルするなどの対策をとることができるが、このような位置ずれが判別できないと適切な対策をとることは困難である。
【0011】
本発明の目的は、回転センサのロータのセンシング部と励磁コイル間に許容できない位置ずれが生じた場合に検出誤差を含んだまま回転角度検出を行うことなく、回転センサの異常と判断する回転センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の課題を解決するために、本発明にかかる回転センサは、
回転するシャフトに取り付けられ、周方向に沿って幅が変化する導電性のセンシング部を有するロータと、
交流励磁電流が流されることで前記ロータのセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記ロータのセンシング部に対して前記シャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた回転センサにおいて、
前記固定コアが前記ロータのセンシング部の周方向に所定の間隔で複数配置され、かつ各固定コアの励磁コイルが位相シフト部を形成し、当該位相シフト部は発振部と位相シフト量検出部に接続され、
何れか一つの励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の値と、他の励磁コイルの位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の値とからセンサ異常を検知する手段を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の回転センサは、このような手段を有することで、回転センサのセンシング部と励磁コイル間の取り付け上のずれに伴う出力のシフト量が許容できない範囲となったときに、簡易な装置構成で回転センサの異常を判断することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の回転センサは、請求項1に記載の回転センサにおいて、
前記センサ異常を検知する手段は、前記何れか一つの励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の波形の位置を基準として他の励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の波形の位置を判定することによりセンサ異常を検知する手段であることを特徴とする。
【0015】
一方の励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の波形の位置を基準として他方の励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の波形の位置を判定することにより、回転センサのセンシング部と励磁コイル間の取り付け上のずれに伴う出力のシフト量が許容できない範囲となったときに、特別な異常診断回路を追加することなく簡易な構成で回転センサを異常と判断することができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の回転センサは、請求項1又は請求項2に記載の回転センサにおいて、
前記センサ異常を検知する手段は、前記一つの励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅に対して判定限界値を設定し、この判定限界値と前記一つの励磁コイルに接続された前記位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅との関係により決定される判定基準値を利用して、前記他の励磁コイルの位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の値に基づいてセンサ異常を検知する手段であることを特徴とする。
【0017】
一方の励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅に対して判定限界値を設定し、この判定限界値と一方の励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅との関係により決定される判定基準値を利用して、他方の励磁コイルの位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の値に基づいて、回転センサのセンシング部と励磁コイル間の取り付け上のずれに伴う出力のシフト量が許容できない範囲となったときに、特別な異常診断回路を追加することなく簡易な構成で回転センサを異常と判断することができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載の回転センサは、請求項3に記載の回転センサにおいて、
複数の励磁コイルのうち位相シフト量が判定限界値を示す平坦部を有する前記何れか一つの励磁コイルの位相シフト量を前記他の励磁コイルの位相シフト量と比較する部分が、前記何れか一つの位相シフト量の判定限界値を示す平坦部と通常変化部の境界であることを特徴とする。
【0019】
複数の励磁コイルのうち位相シフト量が判定限界値を示す平坦部を有する何れか一つの励磁コイルの位相シフト量を他の励磁コイルの位相シフト量と比較する部分が、何れか一つの位相シフト量の判定限界値を示す平坦部と通常変化部の境界とすることで、回転センサの検出値が正常範囲か否かを確実に判断することができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に記載の回転センサは、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回転センサにおいて、
前記回転センサは位相シフト量コンバート部を有し、
前記センサ異常を検出する処理信号が位相シフト量をコンバートした電圧であることを特徴とする。
【0021】
かかる電圧値を用いてもセンサ異常を確実に判断することができる。
【0022】
また、本発明の請求項6に記載の回転センサは、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回転センサにおいて、
前記センサ異常を検出する処理信号が位相シフト量をコンバートしたデジタル信号であることを特徴とする。
【0023】
かかるデジタル信号を用いてもセンサ異常を確実に判断することができる。
【0024】
また、本発明の請求項7に記載の回転センサは、
回転するシャフトに取り付けられ、周方向に沿って幅が変化する導電性のセンシング部を有するロータと、
交流励磁電流が流されることで前記ロータのセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記ロータのセンシング部に対して前記シャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた回転センサにおいて、
前記固定コアが前記ロータのセンシング部の周方向所定位置に配置され、かつ前記固定コアの励磁コイルが位相シフト部を形成し、当該位相シフト部は発振部と位相シフト量検出部に接続され、
前記励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅に上限と下限の少なくとも何れか一方を設けることで当該位相シフト量をある一定値で平坦化させ、当該平坦化させた位相シフト量の平坦領域の幅を、予め定めたしきい値と比較することによりセンサ異常を検知することを特徴とする。
【0025】
励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅に上限と下限の少なくとも何れか一方を設けることで当該位相シフト量をある一定値で平坦化させ、当該平坦化させた位相シフト量の平坦領域の幅を、予め定めたしきい値と比較することで、回転センサのセンシング部と励磁コイルとの取り付け上のずれに伴う出力のシフト量が許容できない範囲となったときに、特別な異常診断回路を追加することなく、簡易な構成のまま回転センサの異常を判断することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、回転センサに許容できない位相シフト量のずれが生じた場合に検出誤差を含んだまま回転角度検出を行うことなくセンサ異常と判断し、これに対応するため、正確な回転角度の検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態にかかる回転センサを図面に基いて説明する。なお、この説明においては自動車のステアリング装置においてこの回転センサをステアリングシャフトに取り付けてハンドルの回転角度を検出する場合について説明する。
【0028】
本発明の一実施形態にかかる回転センサ1は、図1及び図12に示すように、回転するシャフトSに取り付けられるロータ10と、絶縁磁性材からなるコア本体及びコア本体内に収容される少なくとも1つの励磁コイルを有する固定コア31,32(41,42)と、固定コア31,32(41,42)を保持する保持部材90と、保持部材90の一部に備わった回路基板95と、これらを収容するケース20とを備えている。また、保持部材90には、固定コア31,41を間隔G(図12参照)で対向配置させるコイルコアホルダ92と、固定コア32,42を間隔G(図12参照)で対向配置させるコイルコアホルダ93が備わっている。そして、保持部材90は、図2(a)に示すように、コイルコアホルダ92,93がシャフトSの軸に対して中心角90度をなすように回転センサ1に組付けられている。これによって、一方の組の各固定コア31,41が他方の組の固定コア32,42に対してシャフトSの軸に関して中心角90°をなして配置される。そして、固定コア31,32は、上述の通りシャフトSの軸に対して中心角90°をなすように保持部材90の下ケース側に配置される。一方、固定コア41,42は、シャフトSの軸に対して中心角90°をなすように保持部材90の上ケース21側に配置される。
【0029】
なお、一側の固定コア31,32は、絶縁磁性材(例えば、Ni−Zn系、Mn−Zn系、Mg−Zn系のフェライトに、ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の電気絶縁性を有する熱可塑性合成樹脂を混合したもの、あるいはセラミック等)からなり、円柱状に形成され、上面側に励磁コイルが収容されるリング状の空隙部を有するコア本体31a,32aとコア本体31a,32a内に収容される励磁コイル31b,32bを有している。また、他側の固定コア41,42も同様に、絶縁磁性材からなるコア本体41a,42aとコア本体41a,42a内に収容される励磁コイル41b,42bを有している。そして、励磁コイル31b,32bと励磁コイル41b,42bは、それぞれ直列に接続され、保持部材90の信号処理回路99と電気的に接続され、交流励磁電流が流されることでコイル周囲に交流磁界を形成し、それぞれ対となっている固定コア間で磁気回路を形成する。なお、本実施形態においては、その信号処理回路の説明において対となっている固定コアの励磁コイルをそれぞれコイルA、コイルBとして説明する。
【0030】
保持部材90は、例えば合成樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等であり、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたFRP(繊維強化プラスチック)等も含む)でできた矩形状の板部材であって下ケース22に取り付けられるベース部からなり、このベース部の一側端部にコイルコアホルダ92,93が備わっている。
【0031】
また、固定コア31,32(41,42)が備わった保持部材90、信号処理回路99が備わった回路基板95、及びロータ10は、交流磁界の遮蔽性を有する金属又は絶縁磁性材からなるケース20に収容されている。なお、ケース20は、シャフトSの近傍に位置する固定部材(図示せず)に図示しないブラケット等を介して取り付けられている。
【0032】
また、保持部材90の一部に備わった回路基板95には図3に示す信号処理回路99が実装されている。信号処理回路99は、ケース20から外部に延出させた複数の電線(図示せず)を介して電源や信号伝送用のワイヤハーネスと接続されると共に、ケース20の外部に設けられた外部装置と接続されるようになっている。
【0033】
ロータ10は、図1、図2、及び図12に示すように、絶縁磁性材のロータ取り付け部と、当該ロータ取り付け部とステー部材を介して連結され、周方向にわたって幅が連続的に変化するセンシング部12とからなる。なお、センシング部12は、アルミニウム,銅,銀,真鍮等の導電性を有する金属でできている。また、センシング部12は、図1及び図2に示すように、幅が最小の幅狭部と、この幅狭部と半径方向反対側に幅が最大の幅広部とを有している。そして、ロータ10の回転角度に対応して半径方向の幅が変化するように形成され、ロータ回転に伴い後述する交流磁界によってセンシング幅の、各コイルに対応した領域の面積に基づく大きさの渦電流が誘起されるようになっている。
【0034】
すなわち、各励磁コイル31b,32b,41b,42bに交流励磁電流が流されると、各励磁コイル31b,32b,41b,42bは周囲に交流磁界を形成し、対向するコア本体31aとコア本体41aは協働して磁気回路を形成し、同様に、対向するコア本体32aとコア本体42aも協働して磁気回路を形成する。このとき、磁束がセンシング部12を横切ると、該センシング部12の表面には渦電流が誘起され、各励磁コイル31b,32b,41b,42bのインピーダンスを変動させる。このインピーダンスの変動量は、センシング部12の表面に誘起される渦電流量に対応して変動する。センシング部12の表面に誘起される渦電流量は、固定コアに対応するセンシング部12の面積(センシング部12のセンシング面と直交する方向から見てセンシング部の固定コアに対する投影面積、すなわち「センシング部の固定コアへの投影面積」である。)により変動する。よって、ロータ10が回転すると、各固定コア31,32,41,42に対応するセンシング部12の幅はロータ10の回転角度に比例して変動し、これに伴い各励磁コイル31b,32b,41b,42bにおけるインピーダンスも変動する。このときの各励磁コイル31b,32b,41b,42bからの出力信号を後述する信号処理回路(図3参照)で検出し、ロータ10の角度信号に変換して、ロータ10の回転角度を検出するようになっている。
【0035】
回転センサの信号処理回路は、図3の回路ブロック図に示すように、特定周波数の発振信号を発生する発振回路101を含んで構成される発振部100と、センシング部12に発生する渦電流の大きさに応じて発振部100から入力された発振信号の位相をシフトする位相シフト部110(111,112)と、位相シフト量を検出する位相シフト量検出部120(121,122)と、検出された位相シフト量を対応するパラメータ(例えば電圧値やデジタル値)に変換する位相シフト量コンバート部130(131,132)と、位相シフト量コンバート部130から出力される位相シフト量を増幅する増幅部140(141,142)と、位相シフト量に対応するパラメータから回転角度を算出するとともにセンサ異常の判断を行う信号処理部150とを有し、位相シフト部110に入力される各回転角度を検出するようになっている。信号処理部150は回転角度検出部151と異常検出部152を備え、回転角度の検出に加えてロータのセンシング部と励磁コイルとの位置ずれが許容できない範囲のときにセンサ異常も判断するようになっている。なお、本実施形態では記載されていないが、発振回路101と位相シフト部110との間に必要に応じて分周回路や緩衝増幅器(バッファ)を設けても良い。
【0036】
続いて、本発明の実施形態にかかる回転センサ1の具体的な信号処理方法について説明する。まず、発振回路101は、特定周波数の発振信号を各励磁コイル31b及びコイル41b(コイルA)、コイル32b及びコイル42b(コイルB)に伝達する。これによって、各発振信号が図2(b)に示す抵抗R1,R2、コイルB1,B2及びコンデンサC1,C2からなる各位相シフト部110に出力される。このとき、コンデンサC1,C2両端における電圧信号の位相は、コイルB1,B2のインピーダンスの変動によって変化する。コンデンサC1,C2両端の電圧信号は、各位相シフト量検出部120へ出力される。各位相シフト量検出部120は、コンデンサC1,C2両端の電圧信号の位相シフト量をそれぞれ検出する。各位相シフト量コンバート部130は、検出された各位相シフト量を対応する電圧に変換する。
【0037】
そして、この電圧値を位相シフト量コンバート部130の後段に接続した増幅部140(141,142)に伝達する。増幅器140はオペアンプ等からなる電子回路であり、オペアンプの増幅率を調整することにより、上限はオペアンプのプラス側電源電圧、下限はオペアンプのマイナス側電源電圧(又はGND電圧)に飽和させて位相シフト量を対応する電圧値にフラット領域を形成する。
【0038】
信号処理部150は、演算処理手段として例えばワンチップマイクロプロセッサが使用され、各増幅部140から入力される電圧値に基づき、回転角度検出部151がロータ2の回転角度を測定するとともに、異常検出部152が回転センサ1の異常を検出する。
【0039】
続いて、本実施形態における回転センサ1の異常診断の具体的構成について説明する。かかる回転センサの異常診断の構成は、図3に示すように、少なくとも何れか一方の励磁コイル(本実施形態ではコイルB)の位相シフト量検出部120で得られた位相シフト量の振幅に増幅部140で上限と下限を設けて当該位相シフト量をその上限と下限の一定値で飽和させ、フラット領域を積極的に形成する(図5及び図11参照)。そして、この飽和させた位相シフト量と何れか他方の励磁コイル(本実施形態ではコイルA)の位相シフト量検出部120で得られた位相シフト量とを比較してセンサ異常を検知するようになっている。なお、各コイルA、コイルBの位相シフト量検出部120は位相シフト量コンバート部130を介して増幅部140にそれぞれ接続されており、センサ異常を検出する信号は実際にはアナログ信号の電圧値となっている。
【0040】
本実施形態にかかる回転センサ1の異常診断方法は以下の通りである。上述した通り、増幅部140によって位相シフト量の入力角度に対する振幅に上限と下限で規定されるフラット領域をもたせる(図11参照)。そして、図5に示すようにコイルBの位相シフト量を示す電圧値においてフラット領域と通常変化部分の境界であるA点でコイルBのインピーダンスから得られた位相シフト量をコイルAから得られた位相シフト量と比較する。A点を含む入力角度におけるコイルAとコイルBのインピーダンスから得られた位相シフト量の差Xは、設計により予め正常範囲が決められている。なお、図11においては正常範囲の上限値が判定基準上限値で規定され、下限値が判定基準下限値で規定されるようになっている。
【0041】
このように、入力角度に対する位相シフト量はフラットな部分を有することになる。そして、図5に示すようにコイルBの位相シフト量における飽和部分と通常変化部分の境界であるA点における位相シフト量をこれと同じ入力角度におけるコイルAのインピーダンスから得られた位相シフト量と比較する。コイルAとコイルBのインピーダンスから得られた位相シフト量の差X(判定基準値)は、設計により予め正常範囲を特定する既定値が決められており、Xを既定値と比較することにより回転センサが正常か否かを判断することができる。
【0042】
具体的には、A点における位相シフト量の差Xが既定値x1<=X<=x2の場合は、回転センサの励磁コイルとセンシング部との間にずれがないか又は許容できるずれの範囲内として回転センサは正常と判断する。また、A点における位相シフト量の差XがX<既定値x1、又はX>既定値x2の場合は、回転センサの励磁コイルとセンシング部との間に許容できないずれがあるとして、回転センサが異常と判断する。同様に、位相シフト量を示す電圧値の下限における飽和領域と通常変化部分との境界において上述のように位相シフト量の差を求めて、これが所定の範囲に含まれているか否かで回転センサの正常・異常を判断しても良い。
【0043】
なお、上述のように位相シフト量を表す電圧値の上限と下限の双方を設ける代わりに、ダイオードなどのリミッターを用いて位相シフト量の上限又は下限の片方のみを設けてこの片方の位相シフト量の電圧値のみから回転センサの取り付け位置ずれに伴うセンサ異常を判断するようにしても良い。
【0044】
ここで、上述した実施形態について、図6乃至図8に示すように、少なくとも何れか一方の励磁コイル(本実施形態ではコイルB)の位相シフト量検出部120で得られた位相シフト量の波形と、何れか他方の励磁コイル(本実施形態ではコイルA)の位相シフト量検出部120で得られた位相シフト量の波形との交点のずれを判定してセンサ異常を検知するようにしてもよい。この場合、少なくとも一方の振幅に増幅部140で上限と下限を設けて当該位相シフト量をその上限と下限の一定値で飽和させるなどの方法で、フラット領域を積極的に形成することが望ましい。
【0045】
具体的には、上述したセンサ異常判断の方法に代えて、図6乃至図8に示すような信号処理方法を用いても良い。すなわち、図6に示す位相シフト量の判定基準上限値以下のリニア領域において、例えばコイルAの信号とコイルBの信号の交点を求め、これとともにコイルAの許容できる位相シフト量のズレを図中一点鎖線で示すように定め、この一点鎖線で示す許容されるコイルAの位相シフト量とコイルBの位相シフト量の交点をそれぞれ許容限界値とする。この後、図7に示すように、この交点が予め決められた入力角度に関する最小の許容限界値W1と最大の許容限界値W2との間に入っている場合はセンサ正常と判断し、この範囲を超えた場合にセンサ異常と判断するようにしても良い。また、この交点が、図8に示すように、位相シフト量の最小の許容限界値Z1と最大の許容限界値Z2との間に入っている場合はセンサ正常と判断し、この範囲を超えたときにセンサ異常と判断するようにしても良い。
【0046】
続いて、本発明にかかる回転センサの第1変形例について説明する。具体的には、本変形例の場合、図9の回路ブロック図に示すように、発振回路201からなり特定周波数の発振信号を出力する発振部200と、センシング部12に発生する渦電流の大きさに応じて発振部200から入力された発振信号の位相をシフトする位相シフト部210(211,212)と、位相シフト量を検出する位相シフト量検出部220(221,222)と、検出された位相シフト量を対応するパラメータ(例えば電圧値やデジタル値)に変換する位相シフト量コンバート部230(231,232)と、位相シフト量コンバート部230から出力される位相シフト量に上下限を設ける設定演算部240(241,242)と、位相シフト量に対応するパラメータから回転角度を算出するとともにセンサ異常の判断を行う信号処理部250とを有し、位相シフト部210に入力される各回転角度を検出するようになっている。信号処理部250は回転角度検出部251と異常検出部252を備え、回転角度の検出に加えてロータのセンシング部と励磁コイルとの位置ずれが許容できない範囲のときにセンサ異常も判断するようになっている。本変形例においては、各コイルA、コイルBの位相シフト量検出部220は位相シフト量コンバート部230を介して設定演算部240にそれぞれ接続されており、センサ異常を検出する信号は実際にはアナログ信号の位相シフト量ではなく、位相シフト量をコンバートしたデジタル信号となっている。なお、本変形例では記載されていないが、発振回路201と位相シフト部210との間に必要に応じて分周回路や緩衝増幅器(バッファ)を設けても良い。
【0047】
続いて、本変形例の具体的な信号処理方法について説明する。まず、発振回路201は、特定周波数の発振信号を各励磁コイル31b及びコイル41b(コイルA)、コイル32b及びコイル42b(コイルB)に伝達する。これによって、各発振信号が図2(b)に示す抵抗R1,R2、コイルB1,B2及びコンデンサC1,C2からなる各位相シフト部210に出力される。このとき、コンデンサC1,C2両端における電圧信号の位相は、コイルB1,B2のインピーダンスの変動によって変化する。コンデンサC1,C2両端の電圧信号は、各位相シフト量検出部220へ出力される。各位相シフト量検出部220は、コンデンサC1,C2両端の電圧信号の位相シフト量をそれぞれ検出する。各位相シフト量コンバート部230は、検出された各位相シフト量を対応するデジタル信号に変換する。各設定演算部240は、各位相シフト量コンバート部230から出力された信号の上限値と下限値を定め、この上限値と下限値によって位相シフト量に対応するデジタル値をコイルAの位相シフト量とコイルBの位相シフト量ごとに形成する。信号処理部250は、演算処理手段として、例えばワンチップマイクロプロセッサが使用され、各設定演算部240から入力されるデジタル信号に基づき、回転角度検出部251がロータ10の回転角度を測定するとともに、異常検出部252が回転センサの異常を検出する。
【0048】
続いて、本変形例における回転センサの異常診断の具体的構成について説明する。かかる回転センサの異常診断の構成は、図9に示すように、少なくとも何れか一方の励磁コイル(本実施形態では図5におけるコイルB)の位相シフト量検出部220で得られた位相シフト量の振幅に設定演算部240で上限と下限を設けて、当該位相シフト量のフラット領域を積極的に形成する(図5及び図11参照)。そして、この位相シフト量と何れか他方の励磁コイル(本実施形態では図5におけるコイルA)の位相シフト量検出部220で得られた位相シフト量とを比較してセンサ異常を検知するようになっている。
【0049】
本変形例にかかる回転センサの異常診断方法は以下の通りである。具体的には、図9に示すように、位相シフト量検出部220で得られた位相シフト量をそれぞれ位相シフト量コンバート部230でデジタル信号に変換する。そして、このデジタル値を位相シフト量コンバート部230の後段に接続した設定演算部240(241,242)に伝達する。そして、位相シフト量コンバート部230の後段に接続した設定演算部240においてそれぞれ位相シフト量の上限と下限を設けて、この上限と下限で位相シフト量を飽和させる。具体的には、設定演算部240が予め設定してある判定限界値の上限側の値である判定上限値(図5参照)と下限側の値である判定下限値(図11参照)を有し、位相シフト量が判定基準上限値以上のデジタル値であれば判定基準上限値に置き換え、位相シフト量が判定基準下限値以下のデジタル値であれば判定基準下限値に置き換える演算処理を行う。この演算処理により、位相シフト量を表すデジタル値をその上限が判定基準上限値、下限が判定基準下限値となるようにする。
【0050】
これによって、図11に示すように、位相シフト量の入力角度に対する振幅に上限と下限のそれぞれにフラットな領域をもたせることができる。なお、図11は位相シフト量がアナログ値で描かれているが、本変形例ではこれを量子化し、デジタル値として回転角度ごとに位相シフト量が出力され、そのうちの上限値が判定基準上限値で規定され、下限値が判定基準下限値で規定されるようになっている。
【0051】
このように、入力角度に対する位相シフト量はフラットな部分を有することになる。そして、図5に示すようにコイルBの位相シフト量におけるフラットな部分と通常変化部分の境界であるA点における位相シフト量をこれと同じ入力角度におけるコイルAのインピーダンスから得られた位相シフト量と比較する。コイルAとコイルBのインピーダンスから得られた位相シフト量の差Xは、設計により予め正常範囲を特定する既定値が決められており、Xを既定値と比較することにより回転センサが正常か否かを判断することができる。
【0052】
具体的には、A点における位相シフト量の差Xが既定値x1<=X<=x2の場合は、回転センサの励磁コイルとセンシング部との間にずれがないか又は許容できるずれの範囲内として回転センサは正常と判断する。また、A点における位相シフト量の差XがX<既定値x1、又はX>既定値x2の場合は、回転センサの励磁コイルとセンシング部との間に許容できないずれがあるとして、回転センサが異常と判断する。同様に、位相シフト量のデジタル値の下限におけるフラットな領域と通常変化部分との境界において上述のように位相シフト量の差を求めて、これが所定の範囲に含まれているか否かで回転センサの正常・異常を判断しても良い。
【0053】
なお、上述のように位相シフト量を表すデジタル値の上限と下限の双方を設ける代わりに、上限又は下限の片方のみを設けてこの片方の位相シフト量のデジタル値のみから回転センサの取り付け位置ずれに伴うセンサ異常を判断するようにしても良い。
【0054】
続いて、上述の実施形態の第2変形例について説明する。本変形例では励磁コイルがロータセンシング部の周方向所定位置に配置され、かつ励磁コイルが発振部と位相シフト部と位相シフト量検出部に接続されている。
【0055】
また、本変形例の信号処理回路(図示せず)は、以下の構成となっている。すなわち、位相シフト量検出部は、位相シフト量コンバート部に接続され、位相シフト量が電圧値に変換されるようになっている。また、位相シフト量コンバート部は増幅部に接続され、上述の実施形態のように増幅部のゲインを変えることで電圧値に変換された位相シフト量を予め設定された上限と下限で飽和させるようになっている。そして、この飽和させた位相シフト量の飽和領域と予め定めたしきい値とを比較してセンサ異常を検知する。具体的には、図10に示すようにこの位相シフト量の電圧値の飽和領域におけるフラット部の幅Yが図11に示す一定範囲の幅(許容最小幅y1と許容最大幅y2)で規定されるしきい値を超えた場合は、位相シフト量が許容できない範囲まで上下方向にずれていることになる。これは、励磁コイルがセンシング部の半径方向に許容できない範囲までずれていることを示しているので、この場合には回転センサの異常と判断する。
【0056】
このようにすると、励磁コイルがセンシング部の周方向において一ヶ所にしか配置されていなくても、飽和させた位相シフト量の電圧値の飽和領域の幅と予め定めたしきい値とを比較することで、回転センサの取り付け上のずれに伴う出力のシフト量が許容できない範囲となったときに、特別な異常診断回路を追加することなく回転センサを異常と判断することができる。
【0057】
なお、この変形例のように増幅部のゲインを変えることで位相シフト量を予め設定された上限と下限で飽和させる代わりにダイオードによるリミッター回路を介して位相シフト量の電圧値の上限又は下限の双方若しくは何れか一方を飽和させ、この飽和したフラット部の領域の幅に基づいて回転センサの異常を判断しても良い。
【0058】
なお、この第2変形例においては、上述の第1変形例のように、位相シフト量コンバート部が位相シフト量をデジタル値に変換し、このデジタル値に基づいて上述と同様のやり方で異常診断を行っても良い。
【0059】
また、本第2変形例においては、一つの励磁コイルのみから回転センサの異常判断を可能としているが、回転センサが複数の励磁コイルを備える場合においても、何れか一つの励磁コイルのみを用いて回転センサの異常の判断を行うことも可能であるとともに、各励磁コイルの位相シフト量に基づいて各励磁コイルごとに回転センサの異常判断を行うことも可能である。これによって、特に励磁コイルがセンシング部の半径方向に許容できない程度にまでずれて回転センサが取り付けられた場合は全て回転センサを異常と判断できる。
【0060】
なお、上記各実施形態において、コイルコアホルダ92は、図12に示すような保持部材90に載置されているような構成でも良い。この場合、保持部材90は回路基板(図示せず)を兼ね備えることができる。具体的には、図12に示すように、上面側に励磁コイルが収容されるリング状の空隙部を有するコア本体31a,32aとコア本体31a,32a内に収容される励磁コイル31b,32bを有している。また、他側の固定コア41,42も同様に、絶縁磁性材からなるコア本体41a,42aとコア本体41a,42a内に収容される励磁コイル41b,42bを有している。そして、励磁コイル31b,32bと励磁コイル41b,42bは、それぞれ直列に接続され、保持部材90の信号処理回路(図示せず)と電気的に接続され、交流励磁電流が流されることでコイル周囲に交流磁界を形成し、それぞれ対となっている固定コア間で磁気回路を形成する。
【0061】
このように、本発明にかかる回転センサは、取り付け性向上を図るためにロータのセンシング部と励磁コイル間で多少のガタを許容せざるを得ない車両用ステアリング装置の回転角度検出に特に適している。しかしながら、本発明にかかる回転センサは、取り付け状態でロータのセンシング部と励磁コイルとがずれる可能性のあるものであれば、例えばロボットアームのような回転する回転軸間の相対回転角度や回転トルクを求めるようなものにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態にかかる回転センサの内部構造を示した断面図である。
【図2】図1に示した回転センサのロータセンシング部とコイルコアとの配置を示した平面図(図2(a))及びこの励磁コイルに関連した回路図(図2(b))である。
【図3】本実施形態に関する回転センサの回路ブロック図である。
【図4】中心角度90°でコイルコアを配置した場合に一方の励磁コイルの位相シフト量がずれた状態を示した検出特性図である。
【図5】本実施形態及びその第1変形例に関する回転センサの異常判断の原理を示した位相シフト量の検出特性図の部分的拡大図である。
【図6】本実施形態にかかる回転センサの異常判断の原理の類似例を示した検出特性図である。
【図7】図6に示した検出特性図における異常判断の第1の方法を示した部分拡大図である。
【図8】図6に示した検出特性図における異常判断の第2の方法を示した部分拡大図である。
【図9】本実施形態の第1変形例に関する回転センサの回路ブロック図である。
【図10】本実施形態の第2変形例に関する回転センサの異常判断の原理を示した位相シフト量の検出特性図である。
【図11】本実施形態及びその変形例に関する回転センサの異常判断の原理を示した位相シフト量の検出特性図である。
【図12】図1における本発明の一実施形態にかかる回転センサの内部構造を示したXII-XII断面図である。
【図13】従来の回転センサの回路ブロック図である。
【図14】従来の回転センサの特定のコイルコアの位相シフト量の検出特性図である。
【図15】中心角度を90°でコイルコアを配置した場合の位相シフト量の検出特性図である。
【符号の説明】
【0063】
1 回転センサ
10 ロータ
12 センシング部
20 ケース
21 上ケース
22 下ケース
31,32,41,42 固定コア
31a,32a コア本体
31b,32b 励磁コイル
41a,42a コア本体
41b,42b 励磁コイル
90 保持部材
92,93 コイルコアホルダ
100,200 発振部
101,201 発振回路
110(111,112),210(211,212) 位相シフト部
120(121,122),220(221,222) 位相シフト量検出部
130(131,132),230(231,232) 位相シフト量コンバート部
140 増幅部
150 信号処理部
151 回転角度検出部
152 異常検出部
240 設定演算部
500 発振部
501 発振回路
510(511,512) 位相シフト部
520(521,522) 位相シフト量検出部
530(531,532) 位相シフト量コンバート部
540(541,542) 増幅部
550 回転角度検出部
S シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するシャフトに取り付けられ、周方向に沿って幅が変化する導電性のセンシング部を有するロータと、
交流励磁電流が流されることで前記ロータのセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記ロータのセンシング部に対して前記シャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた回転センサにおいて、
前記固定コアが前記ロータのセンシング部の周方向に所定の間隔で複数配置され、かつ各固定コアの励磁コイルが位相シフト部を形成し、当該位相シフト部は発振部と位相シフト量検出部に接続され、
何れか一つの励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の値と、他の励磁コイルの位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の値とからセンサ異常を検知する手段を有することを特徴とする回転センサ。
【請求項2】
前記センサ異常を検知する手段は、前記何れか一つの励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の波形の位置を基準として他の励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の波形の位置を判定することによりセンサ異常を検知する手段であることを特徴とする、請求項1に記載の回転センサ。
【請求項3】
前記センサ異常を検知する手段は、前記一つの励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅に対して判定限界値を設定し、この判定限界値と前記一つの励磁コイルに接続された前記位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅との関係により決定される判定基準値を利用して、前記他の励磁コイルの位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の値に基づいてセンサ異常を検知する手段であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の回転センサ。
【請求項4】
複数の励磁コイルのうち位相シフト量が判定限界値を示す平坦部を有する前記何れか一つの励磁コイルの位相シフト量を前記他の励磁コイルの位相シフト量と比較する際の角度位置が、前記何れか一つの位相シフト量の判定限界値を示す平坦部と通常変化部の境界であることを特徴とする、請求項3に記載の回転センサ。
【請求項5】
前記回転センサは位相シフト量コンバート部を有し、
前記センサ異常を検出する処理信号が位相シフト量をコンバートした電圧であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回転センサ。
【請求項6】
前記回転センサは位相シフト量コンバート部を有し、
前記センサ異常を検出する処理信号が位相シフト量をコンバートしたデジタル信号であることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回転センサ。
【請求項7】
回転するシャフトに取り付けられ、周方向に沿って幅が変化する導電性のセンシング部を有するロータと、
交流励磁電流が流されることで前記ロータのセンシング部との間に磁気回路を形成する励磁コイルと、磁性材から成形されかつ前記励磁コイルを保持するコア本体とを有し、固定部材に取り付けて前記ロータのセンシング部に対して前記シャフトの軸線方向に間隔をおいて対向配置される固定コアとを備えた回転センサにおいて、
前記固定コアが前記ロータのセンシング部の周方向所定位置に配置され、かつ前記固定コアの励磁コイルが位相シフト部を形成し、当該位相シフト部は発振部と位相シフト量検出部に接続され、
前記励磁コイルに接続された位相シフト量検出部で得られた位相シフト量の振幅に上限と下限の少なくとも何れか一方を設けることで当該位相シフト量をある一定値で平坦化させ、当該平坦化させた位相シフト量の平坦領域の幅を、予め定めたしきい値と比較することによりセンサ異常を検知することを特徴とする回転センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−153843(P2006−153843A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168920(P2005−168920)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】