説明

回転塗布装置

【課題】塗布液の選択性を向上させ、多種多様な物性値を有する塗布液を用いても高精度の塗布処理を行うことができる回転塗布装置を提供する。
【解決手段】円形又は多角平面を塗布対象面とした被塗布物2に塗布液を塗布し、この被塗布物2を高速回転させることにより塗布液を拡散させて塗布膜を形成する回転塗布装置1において、被塗布物2を平行支持する平円板状の支持台3と、支持台3と離間を有するようにして平行に対向配置され、支持台3との離間に開放空間Sを形成する平円板状の平行平板4とを具備してなり、支持台3及び平行平板4がそれぞれ回転軸60及び回転軸70周りに独立して回転駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転塗布装置の技術に関し、より詳細には、円形又は多角平面を塗布対象面とした被塗布物に塗布液を塗布し、該被塗布物を高速回転させることにより塗布液を拡散させて塗布膜を形成する回転塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネル用のガラス基板、半導体ウェハ、及び半導体製造装置用のマスク基板等に対して、遠心力を利用してフォトレジスト液などの塗布液を薄膜状に塗布する回転塗布装置の構成が公知となっている。一例として、回転塗布装置を用いた半導体ウェハへのフォトレジスト液の塗布工程では、円形の塗布対象面を有するウェハの中央に一定量のフォトレジスト液が滴下され、ウェハが毎分数千回転の速さで高速回転されることで、滴下されたフォトレジスト液がウェハの中央から周縁部に向けて振り切るように引き伸ばされて均一なフォトレジスト膜が形成される。
【0003】
従来の回転塗布装置としては、例えば、特許文献1又は特許文献2に開示されるように、内部に薬液(塗布液)が供給される基板(被塗布物)充填用の回転カップを備えた回転部材と、回転部材を高速回転させる駆動機構と、回転カップとの結合によって回転カップの内部に閉密空間又は亜閉密空間を形成するフード部材等とが設けられた構成が公知である。このような回転カップ式の回転塗布装置では、回転カップの上面に基板が吸着配置され、基板の上に所定の塗布液が滴下された後に、フード部材により回転カップの上部開口を覆った状態で回転カップとフード部材とを一体的(従動的)に高速回転させることで、遠心力によって塗布液が径方向に拡散されて基板上に所定の塗布膜が形成される。
【0004】
ところで、近年の半導体関連製品の高集積化・微細化・複雑化などに伴って、回転塗布装置においても、塗布膜表面に径方向に沿って現れる波紋状の紋様(風紋)や、多角基板を用いた場合に塗布膜の周縁部で生じる所謂フリンジ等の塗布ムラに起因する塗布膜の局所的な膜厚異常を防止して、高精度の塗布処理を行うことができる装置が希求されている。
【0005】
回転塗布装置における塗布ムラの発生には、塗布液が拡散される際に被塗布物上面近傍の気流の影響を受けることが要因の一つとされているところ、上述した特許文献1又は特許文献2に開示される回転カップ式の回転塗布装置では、被塗布物を回転カップ内に載置させた状態で回転カップの上部開口をフード部材により覆うことで、被塗布物を閉密空間又は亜閉密空間内に収容させ、かかる空間状態を保持したまま回転カップとフード部材とを一体的に高速回転させることで、被塗布物表面上での気流(渦流)の発生を抑止するような構成とされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に開示される回転塗布装置では、塗布液の粘度や溶剤の種類に応じて回転部材(被塗布物)の回転速度を調整することで塗布膜の均一性を制御するものであったため、粘度や揮発性等など多種多様な物性値を有する塗布液を使用した場合、特に、高粘度、高揮発性の塗布液を用いた場合などには、回転部材(被塗布物)の回転速度を調整するだけでは上述した塗布ムラの発生を回避することが困難であった。つまり、従来の回転塗布装置では、一の回転塗布装置で使用可能な塗布液の選択性に劣り、多種多様な物性値を有する塗布液を用いることができないという課題があったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−205166号公報
【特許文献2】特開平7−323250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、回転塗布装置に関し、前記従来の課題を解決するもので、塗布液の選択性を向上させて、多種多様な物性値を有する塗布液を用いても高精度の塗布処理を行うことができる回転塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
すなわち、請求項1においては、円形又は多角平面を塗布対象面とした被塗布物に塗布液を塗布し、該被塗布物を高速回転させることにより塗布液を拡散させて塗布膜を形成する回転塗布装置において、被塗布物を平行支持する平円板状の支持台と、前記支持台と離間を有するようにして平行に対向配置され、前記支持台との離間に開放空間を形成する平円板状の平行平板とを具備してなり、前記支持台及び平行平板が回転軸周りに独立して回転駆動されるものである。
【0011】
請求項2においては、前記平行平板は、前記支持台との離間が変更可能に配設されるものである。
【0012】
請求項3においては、前記平行平板は、前記支持台と同一方向又は反対方向に回転駆動されるものである。
【0013】
請求項4においては、前記平行平板は、前記支持台と同一の回転速度又は異なる回転速度にて回転駆動されるものである。
【0014】
請求項5においては、前記平行平板は、前記支持台と径方向長さが異なるように形成されるものである。
【0015】
請求項6においては、前記平行平板は、前記支持台との対向面に凹凸状に紋様形成された凹凸部が形成されるものである。
【0016】
請求項7においては、前記平行平板は、通気性を有する材料より成形されるものである。
【0017】
請求項8においては、前記平行平板は、前記回転軸が前記支持台の回転軸に対して径方向にオフセットされるものである。
【0018】
請求項9においては、前記支持台及び/又は平行平板は、回転駆動中に前記回転軸と一体的に遊星回転されるものである。
【0019】
請求項10においては、一対の前記支持台及び平行平板にて一組の塗布ユニットが形成され、該塗布ユニットが複数積層されるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、塗布液の選択性を向上させ、多種多様な物性値を有する塗布液を用いても高精度の塗布処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例に係る回転塗布装置の全体的な構成を示した模式図。
【図2】支持台及び平行平板の配置構成を示した側面図。
【図3】支持台と平行平板との離間を変更した様子を示した側面図。
【図4】平行平板の回転方向を変更した様子を示した側面図。
【図5】平行平板の径方向長さを変更した様子を示した側面図。
【図6】平行平板の素材を変更した様子を示した側面図。
【図7】平行平板を径方向にオフセットした様子を示した側面図。
【図8】平行平板が回転軸と一体的に遊星回転される様子を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の実施例において、図面上下方向を回転塗布装置1の上下方向とする。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施例の回転塗布装置1は、円形又は多角平面を塗布対象面とした被塗布物2に塗布液を塗布し、これを高速回転させることにより塗布液を拡散させて塗布膜を形成するものであって、具体的には、被塗布物2を平行支持する平円板状の支持台3と、支持台3と離間Dを有するようにして平行に対向配置され、支持台3との離間に開放空間Sを形成する平円板状の平行平板4と、回転される被塗布物2から飛散する塗布液を回収する廃液回収ケース5と、支持台3を回転駆動させる支持台回転機構6と、平行平板4を回転駆動させる平行平板回転機構7等とで構成されている。
【0024】
被塗布物2は、円形又は多角平面(四角形)を有するガラス基板や半導体ウェハ等が用いられ、本実施例の回転塗布装置1によってその円形又は多角平面の表面に所定の塗布膜が形成される。なお、以下の実施例においては、特に断りのない場合には、円形平面を有する被塗布物2を用いた場合について説明する。
【0025】
支持台3は、被塗布物2の外形形状より大きい外形円盤型の平円板状に形成されており、中央部上面に形成される面一の中央平面部30と、中央平面部30の外側に形成される面一の外側平面部31等とが設けられている。支持台3の上面は、中央平面部30の上面が外側平面部31の上面より僅かに高くなるように形成されており、中央平面部30の上面に被塗布物2が載置されて、水平状態を維持するようにして平行支持される。
【0026】
支持台3は、後述する支持台回転機構6を構成する回転軸60と接続されており、支持台3(中央平面部30)の中心部と回転軸60の軸線とが一致するようにして接続されている。そのため、支持台3は、支持台回転機構6によって回転軸60を回転中心として回転軸60周りに回転駆動される。このように支持台3が回転駆動されることで、支持台3と被塗布物2とが一体に水平回転される。
【0027】
平行平板4は、被塗布物2の外形形状より大きい外形円盤型の平円板状に形成されており、本実施例では、支持台3と同心円状であって径方向長さの等しい同じ大きさに形成されている。平行平板4は、支持台3の上方位置であって、支持台3に対して所定の離間Dを有し、平面部40の下面が平面部30・31と平行に対向配置されている。このように平行平板4が支持台3の上方位置に配設されることで、支持台3と平行平板4との間には、支持台3及び平行平板4の周縁部において外部と開放された開放空間Sが形成される。
【0028】
平行平板4は、支持台3とは独立して回転駆動可能とされており、具体的には、後述する平行平板回転機構7を構成する回転軸70と接続されており、平行平板4の中心部と回転軸70の軸線とが一致するようにして接続されている。そのため、平行平板4は、平行平板回転機構7によって回転軸70を回転中心として回転軸70周りに回転駆動される。
【0029】
平行平板4は、回転中心である回転軸70の軸線が支持台3の回転軸70の軸線と同一軸線C上に位置されるように配置される。すなわち、平行平板4は、上述したように支持台3と平面視で一致するように平行に対向配置されるとともに、その回転軸70が支持台3の回転軸60と同一軸線C上に位置するように配設されている。
【0030】
また、本実施例の平行平板4は、昇降機構8によって支持台3に対して上下方向に昇降可能に支持されており、回転軸70の軸線方向に沿って移動されて支持台3との離間Dが変更可能に構成されている。そのため、回転塗布装置1においては、平行平板4を支持台3に対して上下方向に相対移動させるだけで、支持台3との離間Dを容易に変更することができる(図3等参照)。支持台3と平行平板4との離間Dの長さは、塗布液の種類(粘度や揮発性等)に応じて、支持台3及び平行平板4の回転速度、回転方向などと共に適宜設定される。
【0031】
支持台3と平行平板4との離間Dに形成される開放空間Sとは、支持台3の上面に載置された被塗布物2を載置可能な空間であって、平行に対向配置された支持台3の上面(平面部30・31)と平行平板4の下面(平面部40)とで囲繞される空間である。本実施例では、支持台3の上方は平行平板4に覆われるが、平行平板4が支持台3と同形の平円板状に形成されるとともに、平面視で一致するように平行に対向配置されることから、支持台3と平行平板4との離間Dに形成される開放空間Sは、支持台3及び平行平板4の周縁部において外側方向(外部)に開放されている。支持台3に載置された被塗布物2は、塗布対象面である上面が開放空間Sに露出される。
【0032】
廃液回収ケース5は、支持台3の下方及び周縁部を外側から囲むような環状体として形成されており、被塗布物2から飛散される塗布液を支持台3及び平行平板4の外側位置で回収するように構成されている。廃液回収ケース5では、塗布液や蒸発した溶剤ガスや塗布液ミストなどが回収され、これらが図示せぬドレンホールを介して外部に排出される。
【0033】
支持台回転機構6は、支持台3を回転軸60の軸線周りに回転駆動させるための機構であって、支持台3に接続される回転軸60と、回転軸60に駆動ベルトや各種プーリ等の伝達機構62を介して動力が伝達される駆動モータ61等とで構成されている。支持台回転機構6は、回転塗布装置1の本体部分を構成するフレーム部材10に回転軸60を回転可能に固定されている。したがって、本実施例の回転塗布装置1においては、支持台回転機構6の回転軸60に取り付けられる支持台3は、回転塗布装置1の本体部分に対して相対位置変不能に配設されている。
【0034】
平行平板回転機構7は、平行平板4を回転軸70の軸線周りに回転駆動させるための機構であって、平行平板4の上面に接続される回転軸70と、回転軸70に駆動ベルトや各種プーリ等の伝達機構72を介して動力が伝達される駆動モータ71等とで構成されている。この平行平板回転機構7は、上述した昇降機構8の水平アーム部材80に回転軸70を回転可能に固定されている。したがって、本実施例の回転塗布装置1においては、平行平板回転機構7の回転軸70に取り付けられる平行平板4は、昇降機構8の水平アーム部材80が回転塗布装置1のフレーム部材10に対して上下方向に移動されることで、平行平板回転機構7と一体的に連動して相対移動されるように配設されている。
【0035】
本実施例の回転塗布装置1では、上述したように、支持台回転機構6及び平行平板回転機構7によって支持台3及び平行平板4がそれぞれ回転軸60・70周りに独立して回転駆動されるように構成されている。支持台3及び平行平板4の回転速度及び回転方向は、それぞれ塗布液の種類(粘度や揮発性等)に応じて適宜設定される。本実施例では、平行平板4が、支持台3と同一方向であって同じ回転速度にて回転駆動されるように構成されている。
【0036】
なお、本実施例の回転塗布装置1には、上述した構成の他にも、被塗布物2の表面に塗布液を滴下する塗布液供給ノズル(図略)や、廃液回収ケース5内を吸引減圧して支持台3及び平行平板4の全周方向で排気をコントロールする減圧排気機構(図略)などが設けられる。
【0037】
次に、本実施例の回転塗布装置1を用いた塗布処理工程の一例を以下に詳述する。
図1及び図2に示したように、本実施例の回転塗布装置1では、まず、昇降機構8によって平行平板4が待避位置P1まで移動され、支持台3の上方空間が開放された状態で、支持台3の中央平面部30に被塗布物2が所定の平行姿勢で載置される。次いで、図示せぬ塗布液供給ノズルが被塗布物2の上面(塗布対象面)の上方に移動されて、所定量の塗布液が滴下供給される。
【0038】
その後、図示せぬ塗布液供給ノズルが被塗布物2の上面の上方から退避されるとともに、昇降機構8によって平行平板4が支持台3と離間Dを有するように回転位置P2まで移動されて、支持台3に対して平行に対向配置される。かかる状態においては、支持台3と平行平板4との離間Dに開放空間Sが形成される。
【0039】
このようにして平行平板4が位置決めされた状態で、支持台回転機構6及び平行平板回転機構7の駆動モータ61・71がそれぞれ駆動されて、支持台3及び平行平板4が回転軸60・70周りに独立して回転駆動される。支持台3及び平行平板4は、それぞれ平行状態を保ったまま水平回転されるとともに、同一方向であって同じ回転速度にて回転駆動される。ただし、上述した支持台3と平行平板4との離間Dや、支持台3及び平行平板4の回転速度、回転方向、加速度等は、予め使用される塗布液の種類(粘度や揮発性等)や目的とする塗布膜の膜厚(厚さ)などに応じて適宜設定されており、かかる設定値に基づいて、上述した昇降機構8や駆動モータ61・71が制御される。
【0040】
支持台3及び平行平板4が回転駆動されることで、被塗布物2も支持台3と一体的に高速回転される。そうすると、被塗布物2の塗布対象面に滴下された塗布液が遠心力によって径方向外側に向けて拡散流動されて、被塗布物2の塗布対象面に薄膜状の所定の塗布膜が形成される。また、被塗布物2の塗布対象面上を流動して外周に到達した余剰の塗布液は、被塗布物2の塗布対象面の周縁から流出して開放空間Sの外周全域から飛散し、飛散した塗布液が支持台3及び平行平板4の外側位置で廃液回収ケース5にて回収される。
【0041】
所定回数の回転塗布処理が終了すると、昇降機構8によって平行平板4が再び待避位置P1まで移動され、支持台3の中央平面部30に載置された被塗布物2が取り外される。
【0042】
以上のように、本実施例では、円形又は多角平面を塗布対象面とした被塗布物2に塗布液を塗布し、この被塗布物2を高速回転させることにより塗布液を拡散させて塗布膜を形成する回転塗布装置1において、被塗布物2を平行支持する平円板状の支持台3と、支持台3と離間Dを有するようにして平行に対向配置され、支持台3との離間Dに開放空間Sを形成する平円板状の平行平板4とを具備してなり、支持台3及び平行平板4がそれぞれ回転軸60及び回転軸70周りに独立して回転駆動されるように構成されるため、塗布液の選択性を向上させて、多種多様な物性値を有する塗布液を用いても高精度の塗布処理を行うことができるのである。
【0043】
すなわち、本実施例の回転塗布装置1では、支持台3及び平行平板4の離間Dに開放空間Sが形成されることから、支持台3及び平行平板4が回転駆動されることで、開放空間Sの空気層が一体に回転されて被塗布物2の塗布対象面上に気流が発生しない状態で塗布液の拡散を行うことができる。そして、開放空間Sの外周全域から余剰の塗布液が飛散していくことで、開放空間Sの空気層が径方向外側に向けてわずかに減圧された亜閉密状態(僅かな減圧状態のこと)になり、塗布液の半径方向への拡散が誘発される。そのため、塗布液が拡散される際の気流の影響を低減して、塗布膜表面に径方向に沿って現れる波紋状の紋様(風紋)や、塗布膜の周縁部で生じるフリンジの発生を防止して、塗布ムラの発生を回避し、高精度の塗布処理を行うことができる。
【0044】
そして、支持台3及び平行平板4がそれぞれ回転軸60及び回転軸70周りに独立して回転駆動されるように構成されることから、支持台3及び平行平板4の回転速度、回転方向、加速度等を変更することで、粘度や揮発性等の多種多様な物性値を有する塗布液、中でも、高粘度、高揮発性の塗布液に対して有効であり、使用可能な塗布液の選択性を向上することができる。
【0045】
さらに、平円板状の支持台3と、これに対して平行に対向配置させる平円板状の平行平板4とが設けられればよいため、従来の回転カップ式の塗布装置と比べて、複雑な装置構成が不要となり、また廃液処理が容易であるためメンテナンス性も向上することができる。
【0046】
また、本実施例の回転塗布装置1では、平行平板4を回転軸70の軸線方向に沿って移動させる昇降機構8を具備してなり、平行平板4が支持台3との離間Dを変更可能に配設され、平行平板4(又は支持台3)が静止状態又は回転状態のいずれかの状態において支持台3との相対位置(位相)を任意に変更できるように構成される。例えば、図3に示すように、平行平板4が支持台3と離間D1を有するように回転位置P2で停止されている状態(図3(a)参照)に対して、例えば、平行平板4が離間D1より離れた離間D2(D1<D2、図3(b)参照)で停止させた状態に変更したり、離間D1より近接させた離間D3(D1>D3、図3(c)参照)で停止させた状態に変更させたりすることができる。
【0047】
このような構成とすることで、塗布液の種類(粘度や揮発性等)に応じて支持台3と平行平板4との離間Dの長さを変更することができ、使用可能な塗布液の選択性を向上することができる。特に、塗布処理中に、平行平板4を回転駆動中に回転軸70の軸線方向に沿って移動させて離間Dを可変させることで、塗布膜厚み(塗布膜の均一性)を容易に制御することができる。
【0048】
なお、回転塗布装置1の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0049】
すなわち、上述した実施例の回転塗布装置1においては、平行平板4が支持台3と同一方向であって同じ回転速度にて回転駆動されるように構成されているが、平行平板4の回転方向、回転速度、加速度などは支持台3と異なるように回転駆動されるように構成されてもよい。支持台3と平行平板4との回転方向等の組み合わせは、塗布液の種類(粘度や揮発性等)や目的とする塗布膜の膜厚(厚さ)などの塗布条件に応じて適宜設定することができる。
【0050】
例えば、図4に示すように、平行平板4が支持台3と同一方向(回転軸70の軸線に対して反時計周り)で回転駆動されるだけでなく、支持台3と反対方向(回転軸70の軸線に対して時計周り)に回転駆動されるように構成されてもよい。
【0051】
さらに、例えば、支持台3が回転速度V1で回転駆動されている場合に、平行平板4が支持台3と同じ回転速度v1で回転駆動されるだけでなく(V1=v1)、支持台3の回転速度V1より速い回転速度v2で回転駆動されたり(V1<v2)、支持台3の回転速度V1より遅い回転速度v3で回転駆動されたりしてもよい(V1>v3)。
【0052】
また、上述した実施例の回転塗布装置1においては、平行平板4が支持台3と同心円状であって径方向長さの等しい同じ大きさに形成されているが、平行平板4の大きさは、支持台3と径方向長さが異なるように形成されてもよい。具体的には、図5に示すように、支持台3の径方向長さをR1とした場合に、平行平板4が支持台3と同じ径方向長さr1(R1=r1、図5(a)参照)に形成されるだけでなく、支持台3の径方向長さR1より長い径方向長さr2に形成されたり(R1<r2、図5(b)参照)、支持台3の径方向長さR1より短い径方向長さr3に形成されたりしてもよい(R1>r3、図5(c)参照)。特に、平行平板4を支持台3より長く形成することで、支持台3及び平行平板4の周縁部にて発生する乱流によって開放空間Sの空気層の減圧を促進することができ、亜閉密状態を容易に発現させることができる。
【0053】
また、上述した実施例の平行平板4においては、その形状や素材に関しては特に限定されないが、例えば、平行平板4の形状として、支持台3との対向面である平面部40に凹凸状に紋様形成された凹凸部が形成されてもよい。この凹凸部の形状は、平面部40に多数の微小な溝を重ねられて被塗布物2上面近傍に発生される気流を制御するような形状に形成される。凹凸部の形状として、例えば、波紋状、シワ状、波状、格子状などが挙げられ、塗布液の種類(粘度や揮発性等)や支持台3及び平行平板4の回転速度や回転方向など応じて、塗布液の径方向への拡散が促進されるような形状となるように適宜決定される。
【0054】
さらに、例えば、平行平板4の素材として、図6に示すように、少なくとも一部が通気性を有する材料より成形されてもよい。通気性を有する材料としては、例えば、ミクロ単位の微孔を有する多孔質のセラミックスや各種鋼材などを用いることができる。平行平板4が通気性を有する材料より成形されることで、回転塗布装置1において平行平板4の上方から下方(図6において矢印方向)に向けてダウンフローを付与することで、平行平板4の多孔質を介して、開放空間Sの空気層に対して径方向外側に向けた気流を強制的に発現させることができ、塗布液の径方向への拡散を誘発させることができる。
【0055】
また、上述した実施例の回転塗布装置1では、平行平板4が、回転軸70の軸線が支持台3の回転軸70の軸線と同一軸線C上に位置されるように配置されるが、かかる回転軸70が支持台3の回転軸に対して径方向にオフセットされるように配設されてもよい。具体的には、図7に示すように、平行平板4が、回転軸70の軸線C2が支持台3の回転軸60の軸線C1に対して径方向にオフセットされるように配設されてもよい。
【0056】
また、上述した実施例では、実施例の回転塗布装置1では、支持台3及び平行平板4が、それぞれ回転軸60・70の周りを回転駆動されるように構成されているが、さらに支持台3及び/又は平行平板4が回転駆動中に回転軸60・70と一体的に遊星回転されるように構成されてもよい。例えば、図8に示すように、支持台3が回転軸60の軸線C1の周りを回転駆動される状態で、平行平板4が回転軸70の軸線C2の周りを回転駆動されるとともに、さらに回転駆動中に回転軸70と一体的に回転軸60の軸線C1の周りを遊星回転させるように構成してもよい。なお、かかる構成においては、平行平板4が回転軸70と一体的に遊星回転されるが、その他に、支持台3側が遊星回転されたり、支持台3及び平行平板4の両方が仮想の回転軸周りに遊星回転されたりするように構成されてもよい。
【0057】
また、上述した実施例の回転塗布装置1では、一対の支持台3及び平行平板4にて形成される一組の塗布ユニットのみにより構成されるが、一の回転塗布装置1においてかかる塗布ユニットが上下方向に複数積層されて構成されてもよい。
【0058】
また、上述した実施例の回転塗布装置1において、支持台3の形状、支持台回転機構6及び平行平板回転機構7の構成、昇降機構8の構成などは特に限定されず、例えば、回転軸60・70や伝達機構62・72の構成は、支持台3及び平行平板4をそれぞれ独立して回転駆動可能な機構に構成されればよい。
【0059】
また、上述した実施例の塗布処理工程では、被塗布物2を静止させた状態で被塗布物2に塗布液を塗布し、次いで被塗布物2を高速回転させて塗布液を拡散させる方式(スタティックディスペンス方式)について説明したが、被塗布物2を高速回転させた状態で被塗布物2に塗布液を塗布して塗布液を拡散させる方式(ダイナミックディスペンス方式)も可能である。特に、上述した実施例の回転塗布装置1の構成とすることで、従来の回転カップ式の回転塗布装置では実現することができなかったダイナミックディスペンス方式による塗布処理が可能となるため、より膜厚を薄く均一に塗工することができ、膜厚の薄い塗布膜の均一性を容易に制御することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 回転塗布装置
2 被塗布物
3 支持台
4 平行平板
5 廃液回収ケース
6 支持台回転機構
7 平行平板回転機構
8 昇降機構
60 回転軸
70 回転軸
D 離間
S 開放空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形又は多角平面を塗布対象面とした被塗布物に塗布液を塗布し、該被塗布物を高速回転させることにより塗布液を拡散させて塗布膜を形成する回転塗布装置において、
被塗布物を平行支持する平円板状の支持台と、
前記支持台と離間を有するようにして平行に対向配置され、前記支持台との離間に開放空間を形成する平円板状の平行平板とを具備してなり、
前記支持台及び平行平板が回転軸周りに独立して回転駆動されることを特徴とする回転塗布装置。
【請求項2】
前記平行平板は、前記支持台との離間が変更可能に配設されることを特徴とする請求項1に記載の回転塗布装置。
【請求項3】
前記平行平板は、前記支持台と同一方向又は反対方向に回転駆動されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転塗布装置。
【請求項4】
前記平行平板は、前記支持台と同一の回転速度又は異なる回転速度にて回転駆動されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の回転塗布装置。
【請求項5】
前記平行平板は、前記支持台と径方向長さが異なるように形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の回転塗布装置。
【請求項6】
前記平行平板は、前記支持台との対向面に凹凸状に紋様形成された凹凸部が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の回転塗布装置。
【請求項7】
前記平行平板は、通気性を有する材料より成形されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の回転塗布装置。
【請求項8】
前記平行平板は、前記回転軸が前記支持台の回転軸に対して径方向にオフセットされることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の回転塗布装置。
【請求項9】
前記支持台及び/又は平行平板は、回転駆動中に前記回転軸と一体的に遊星回転されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の回転塗布装置。
【請求項10】
一対の前記支持台及び平行平板にて一組の塗布ユニットが形成され、該塗布ユニットが複数積層されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の回転塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−35168(P2011−35168A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180011(P2009−180011)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(594020248)株式会社幸和電熱計器 (11)
【Fターム(参考)】