回転角検出装置の回転角補正方法
【課題】自動車の車体制御システムなどに用いられる多回転のハンドル回転角検出装置において、機械誤差、電気誤差、磁気誤差をより少ない補正データで補正する高精度な回転角検出装置の回転角補正方法を提供する。
【解決手段】被検軸1を回転させるモータ9と、このモータ9の回転角を制御するモータコントローラ14と、このモータ9の回転角を検出するエンコーダ10とを用いて、モータ9により実際に回転させた被検軸1の回転角と第1および第2の回転角検出部3,7により求めた被検軸1の算出回転角との差を補正角として不揮発性メモリ11に記憶し、この補正角でもって被検軸1の算出回転角を補正するようにしたものである。
【解決手段】被検軸1を回転させるモータ9と、このモータ9の回転角を制御するモータコントローラ14と、このモータ9の回転角を検出するエンコーダ10とを用いて、モータ9により実際に回転させた被検軸1の回転角と第1および第2の回転角検出部3,7により求めた被検軸1の算出回転角との差を補正角として不揮発性メモリ11に記憶し、この補正角でもって被検軸1の算出回転角を補正するようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体制御システムなどに用いられる多回転のハンドル回転角検出装置の回転角補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アブソリュートエンコーダなどのように多回転する回転体の回転角を検出する装置としては、位相差を有する複数の回転体の回転角から被検軸の回転角を検出する回転角度の測定方法や装置が存在する。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開昭63−118614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の装置においては歯車の配列精度や芯振れ、また回転角検出部における検出誤差などにより、被検軸の回転角の検出精度が悪くなるという課題があった。
【0005】
本発明はこの課題を解決するためのものであり、歯車の機械的誤差や回転角検出部の電気的誤差を補正する高精度な回転角検出装置の回転角補正方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、被検軸と連結したターゲットに対向する位置に配置した第1の回転角検出部と、前記被検軸の回転を減速する機構と、この減速された回転角を検出する第2の回転角検出部を備え、この第1の回転角検出部と第2の回転角検出部の信号により前記被検軸の回転角を算出する回転角検出装置において、前記被検軸を回転させるモータと、このモータの回転角を制御するモータコントローラと、このモータの回転角を検出するエンコーダとを用いて、前記モータにより実際に回転させた前記被検軸の回転角と前記第1および第2の回転角検出部より求めた前記被検軸の算出回転角との差を補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角でもって被検軸の前記算出回転角を補正するようにしたものである。
【0008】
本発明の請求項2に記載の発明は、全検出範囲における所定回転角毎に前記補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正するとともに、前記所定回転角間においてはその前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにしたものである。
【0009】
本発明の請求項3に記載の発明は、ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で磁極が反転するように着磁してある多極リング磁石とし、各磁極幅に相当する回転範囲において各磁極の誤差の平均値を各磁極共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにしたものである。
【0010】
本発明の請求項4に記載の発明は、ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で配置された凸部を持つ歯車とし、各歯幅に相当する回転範囲において各歯の誤差の平均値を各歯共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにしたものである。
【0011】
本発明の請求項5に記載の発明は、ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で非凹部が生ずるように凹部を配置したものとし、各凹部幅に相当する回転範囲において各凹部の誤差の平均値を各凹部共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにしたものである。
【0012】
本発明の請求項6に記載の発明は、ターゲット間隔に相当する回転範囲において所定回転角毎に前記各ターゲット共通の補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正すると共に、前記所定回転角間においては、その前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにしたものである。
【0013】
これらの発明によれば、より少ない容量の補正データを不揮発性メモリに記憶し被検軸の前記算出回転角をこの補正データで補正することにより、構成部品の寸法ばらつきによる機械誤差や磁石の特性ばらつきによる磁気誤差や回転角検出部や検出回路部の電気誤差を含む被検軸の算出回転角の検出精度を大幅に向上できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多極リング磁石や回転角検出部の機械誤差、磁気誤差、電気誤差などにより発生する回転角検出精度の低下を、より少ない容量の不揮発性メモリに記憶した補正角にて補正することにより、被検軸の回転角検出精度を向上できる回転角検出装置を簡易な形態で提供することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施形態1について、図1〜図9を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態1における回転角検出装置の構成図、図2は回転角検出装置の補正システムの構成図である。図3は多極リング磁石に対向する位置に配置された第1の回転角検出部の信号を示す図である。図4は第1の回転角検出部の1周期分のSin信号とCos信号より求めた回転電気角と被検軸の回転機械角との関係を示す図である。図5は第1の回転角検出部の信号と第2の回転角検出部の信号より被検軸の多回転の回転機械角を算出する原理図である。図6は算出された被検軸の回転機械角に含まれる誤差を多極リング磁石の磁極ピッチに対応する回転機械角毎に求めたデータの一例を示す図である。図7は回転機械角誤差より補正近似直線を求める方法を示した図である。図8は各磁極の回転機械角誤差の平均値で補正した回転機械角誤差データの一例を示す図である。図9は各磁極の回転機械角誤差の平均値より補正近似直線を求める方法を示した図である。
【0017】
図1において、ターゲットである多極リング磁石2は被検軸1に連結され、この多極リング磁石2に対向する位置には第1の回転角検出部3が配置されている。ウォーム歯車4は被検軸1に連結され、このウォーム歯車4にはホイール歯車5が係合されている。ホイール歯車5の中央部には磁石6が配置され、この磁石6に対向する位置に回転角を検出する第2の回転角検出部7が配置されている。モータ9は被検軸1の端面に取り付けられ、エンコーダ10はモータ9による被検軸1の回転機械角を検出する。
【0018】
図2において、不揮発性メモリ(EEPROM)11は補正角などを記憶するためのものである。CPU12は不揮発性メモリ(EEPROM)11や第1、第2の回転角検出部3,7と接続されており回転角を算出する。また、CPU12とモータコントローラ14とは角度信号や命令信号を送受信するシリアル通信ライン13で結ばれ、信号の送受信ができるようになっている。被検軸1にはモータ9が取り付けられており、モータコントローラ14によりその回転を高精度に駆動制御するようになっている。被検軸1の回転角はエンコーダ10で高精度に検出してモータコントローラ14にこの回転角を送信している。
【0019】
図3において、横軸は被検軸1の回転機械角を示しており、縦軸は第1の回転角検出部3の出力信号を示している。被検軸1の回転に応じてSin信号15、Cos信号16が出力される。
【0020】
図4において、横軸は被検軸1の回転機械角を示しており、縦軸は図3に示したSin信号15とCos信号16より求めた回転電気角を示している。
【0021】
図5において、横軸は被検軸1の回転機械角を検出範囲に渡って示しており、縦軸は上段に第1の回転角検出部3より求めた回転電気角を、中段に第2の回転角検出部7より求めた回転電気角を、下段に第1の回転角検出部3と第2の回転角検出部7の信号より算出した回転電気角を組み合わせて算出された被検軸1の回転機械角を示している。
【0022】
次に、以上の構成により被検軸1の回転角検出の方法について説明する。
【0023】
図1において被検軸1が回転すると、この被検軸1と連結している多極リング磁石2が回転する。第1の回転角検出部3からは多極リング磁石2の回転角に対応した信号を得ることができる。この実施の形態の場合、多極リング磁石2の磁極数が30であるため、1磁極あたりの回転機械角は12deg(=360deg/30極)となる。図3に示すように、被検軸1に取り付けられた多極リング磁石2の1磁極あたりの回転機械角(12deg)に対し、第1の回転角検出部3の信号であるSin信号15とCos信号16は1周期(回転電気角の360degに相当)変化する。図4において図3に示した第1の回転角検出部3の信号より算出した回転電気角17から求められる理想的な回転機械角は回転機械角18のように直線的に変化するが、多極リング磁石2の着磁バラツキや偏心あるいは第1の回転角検出部3の感度バラツキや位置バラツキ等の影響で回転電気角17から求められる回転機械角は、理想的な回転機械角18に対し回転機械角19のように誤差を含むようになる。そして図5の上段の図に示すように、第1の回転角検出部3より求めた回転電気角17から被検軸1の0degから12degの回転機械角19を高精度、高分解能に求めることができる。
【0024】
一方、被検軸1に連結されたウォーム歯車4が回転し、ある一定の減速比でホイール歯車5も回転する。この事例では減速比を1/4としている。このホイール歯車5の回転角は磁石6の磁界方向を検出する第2の回転角検出部7の信号より算出する。図5の中段に示すように、第2の回転角検出部7のSin信号とCos信号より求めた回転電気角20より被検軸1の検出範囲である0degから720degの回転機械角21を求めることができる。図5の下段に示すように、第1の回転角検出部3より求めた回転機械角19の値がどの周期(磁極)のものなのかを、第2の回転角検出部7より求めた回転機械角21より決定して被検軸1の回転機械角22を求める。図5の下段においても図4で述べた同様の影響で、算出された前記回転機械角22にも理想回転機械角23に対する誤差を含む。
【0025】
次に、以上の構成における被検軸1の回転角検出精度を向上(前記誤差を削減する)させる方法について説明する。
【0026】
図6は横軸に第1の回転角検出部3の信号であるSin信号とCos信号より算出されるTan信号(=Sin/Cos)を逆変換した回転電気角17より算出した回転機械角19をとり、縦軸には被検軸1が実際に回転した回転機械角18と前記回転機械角19との差である回転機械角誤差24を取っている。モータコントローラ14では、エンコーダ10で検出した被検軸1の回転機械角18と、シリアル通信ライン13を経由して得られる回転角検出装置8に内蔵されたCPU12で算出された被検軸1の前記回転機械角19とを同期して格納できるようになっている。すなわち、モータコントローラ14では回転角検出装置8で算出された被検軸1の回転機械角19に対し回転機械角誤差24を(式1)で確定することができる。
【0027】
(回転機械角誤差24)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)……(式1)
図7には実際に取得した回転機械角誤差24のデータ例を記載している。
【0028】
モータコントローラ14はこの回転機械角誤差24をシリアル通信ライン13にてCPU12へ送信し、CPU12は各回転機械角19に対しこの回転機械角誤差24を不揮発性メモリ(EEPROM)11に格納する。故にCPU12は常時算出された被検軸1の前記回転機械角19を、前記回転機械角誤差24を用いて(式2)で補正することができる。
【0029】
(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(回転機械角誤差24)……(式2)
しかし、全回転検出範囲にわたり前記回転機械角誤差24を記憶するには容量の大きい不揮発性メモリ(EEPROM)11が必要になる。回転検出範囲が720deg、分解能が1degとした場合、720の不揮発性メモリ容量が必要となる。
【0030】
そこで、ある所定の回転機械角毎(図7の例では3deg毎)に求めた前記回転機械角誤差24を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶するとすれば240(720/3)の容量に削減できる。ある所定の回転機械角間の前記回転機械角誤差24は、3deg毎の前記回転機械角誤差24より求める近似直線にて推定する。
【0031】
xをある3deg間における回転機械角、cをxよりも小さく最も近い3deg毎の回転機械角とする。すなわちc<x<c+3とする。mを(c+3)における回転機械角誤差24とし、nをcにおける回転機械角誤差24とする。これらの値に基づいた前記回転機械角誤差24の近似直線は(式3)で表される。
【0032】
y=(m−n)・(x−c)/3+n……(式3)
モータコントローラ14は前記モータ9を回転させ、シリアル通信ライン13より得られる前記回転機械角19の3deg毎に被検軸1の回転機械角18を前記エンコーダ10より同期させて取得する。図7において回転機械角19(c)が0degの時の回転機械角誤差24(n)が0.001degとなっており、回転機械角19(c+3)が3degの時の回転機械角誤差24(m)が0.012degとなっている。回転機械角19が0degから3degまでの0.5deg毎の回転機械角誤差24を求める式はこれらの値を(式3)に代入して
y=(0.012−0.001)・(x−0)/3+0.001
=0.0036・x+0.001……(式4)
となる。例えば回転機械角19が1degの時の回転機械角誤差24は(式4)により0.0046degとなる。回転機械角19が3degから6degまでの1deg毎の回転機械角誤差24も同様の方法で求める。このようにして求められた回転機械角誤差24にて算出された被検軸1の回転機械角19を(式1)で補正する。
【0033】
更に、この不揮発性メモリの容量を削減するため、図6に示すように各磁極の回転機械角誤差24の平均値25を算出された回転機械角19に対し1磁極ピッチの回転機械角(この実施の形態では12deg)毎に(式5)で求める。
【0034】
平均値25=(ある回転機械角19における1〜N磁極までの回転機械角誤差24の和)/N……(式5)
前記平均値25より回転機械角誤差26を(式6)で求める。
【0035】
(回転機械角誤差26)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)−(各磁極の回転機械角誤差の平均値25)……(式6)
図8は図6のデータを(式6)に代入し算出した回転機械角誤差26をプロットしたものである。図6に示す各磁極の回転機械角誤差24の発生傾向には相関性が見られるため、回転機械角誤差24のばらつき±0.2degに対し、図8に示す回転機械角誤差26のばらつきが±0.1deg以下に縮小されている。
【0036】
モータコントローラ14では、エンコーダ10で検出した被検軸1の回転機械角18とシリアル通信ライン13経由で得られる回転角検出装置8内蔵のCPU12で算出された被検軸1の回転機械角19とを同期して格納できるようになっているので、(式1)より求めた各磁極の回転機械角誤差24の平均値25を(式5)で算出できる。この平均値25はシリアル通信ライン13にてCPU12へ送信し、CPU12にて不揮発性メモリ(EEPROM)11に格納する。故にCPU12は常時前記算出された被検軸1の回転機械角19を、前記回転機械角誤差の平均値25を用いて回転機械角誤差26を含む形ではあるが、(式7)で補正することができる。
【0037】
(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)+(回転機械角誤差26)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(回転機械角誤差の平均値25)……(式7)
さらに、不揮発性メモリ(EEPROM)11の容量を削減する方法について図9にて説明する。図9は図7の一部を拡大表示したものである。仮に図9にプロットされているような各磁極の前記回転機械角誤差の平均値25を、0.5deg間隔で回転機械角19を0degから12degの範囲において不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶するとすれば24の容量が必要となるが、ある所定の回転機械角毎(図9の例では2deg毎)に求めた各磁極の前記回転機械角誤差の平均値25を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶すれば6(=12/2)の容量に削減できる。ある所定の回転機械角間の前記平均値25は2deg毎の平均値25より求める近似直線にて推定する。
【0038】
xをある2deg間の回転機械角、c1をxよりも小さく最も近い2deg毎の回転機械角とする。すなわちc1<x<c1+2とする。m1を(c1+2)における平均値25の値、n1をc1における平均値25の値とする。これらの値に基づいた前記平均値25の近似直線は(式8)で表される。
【0039】
y1=(m1−n1)・(x−c1)/2+n1……(式8)
モータコントローラ14は前記モータ9を回転させると共に、シリアル通信ライン13より2deg毎の前記回転機械角19を取得し前記エンコーダ10より被検軸1の回転機械角18を取得する。これらの回転機械角18、回転機械角19及び(式1)より回転機械角誤差24を求め、更に(式5)にて平均値25を求める。
【0040】
図9において回転機械角19の値(c1)が0degの時における平均値25の値(n1)が0.031degとなっており、回転機械角19の値(c1+2)が2degの時における平均値25の値(m1)が0.042degとなっている。
【0041】
回転機械角19が0degから2degまでの0.5deg毎の平均値25を求める式はこれらの値を(式8)に代入して
y1=(0.042−0.031)・(x−0)/2+0.031=0.0055・x+0.031……(式9)
となる。例えば、回転機械角19の値が1degの時の平均値25の値は(式9)より0.0365degとなる。回転機械角19の値が2degから4degまでの0.5deg毎の平均値25の値も同様の方法で求める。このようにして求められた平均値25にて算出された被検軸1の回転機械角19を(式7)で補正する。図6に示した平均値25の値を(式8)の近似直線で推定し(式6)で回転機械角誤差26を求めても、図8に示す回転機械角誤差26とほぼ同様の結果を得た。
【0042】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図10を用いて説明する。
【0043】
図10は実施の形態2におけるターゲットの斜視図である。このターゲット27の外周面には、磁性体からなる凸部が円周方向に等間隔で配置されている。このターゲット27を備える回転角検出装置でも実施の形態1における第1の回転角検出部の信号と同様の形状をなしており、この信号により回転角を算出することができる。なお、本実施の形態2のターゲットを用いた回転角検出装置は上述した実施の形態1に係る回転角検出装置の構成及び動作と同様であるため、その説明は省略する。
【0044】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図11を用いて説明する。
【0045】
図11は実施の形態3におけるターゲットの斜視図である。このターゲット28は円筒部を有しており、円筒部の外周面には円周方向に等間隔で非凹部が生ずるように凹部が配置されている。このターゲット28を備える回転角検出装置でも、実施の形態1における第1の回転角検出部の信号と同様の形状をなしており、この信号により回転角を算出することができる。なお、本実施の形態3のターゲットを用いた回転角検出装置は上述した実施の形態1に係る回転角検出装置の構成及び動作と同様であるため、その説明は省略する。
【0046】
以上のように本実施の形態における回転角検出装置は、検出範囲において或いは多極リング磁石の各磁極幅に対応する回転範囲において前記被検軸1の算出回転角に対する補正角を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶する方法により、またはある一定回転角ごとに前記補正角を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶する方法により、多極リング磁石や回転角検出部の磁気誤差、機械誤差、電気誤差による回転角検出精度の低下をより少ない容量の不揮発性メモリで補正することにより被検軸の検出回転角の精度を向上することができるという作用効果も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明にかかる回転角検出装置の回転角補正方法は、より少ない容量の不揮発性メモリを用いた簡単な構成で、被検軸の多回転を高精度に検出することができるという作用効果を有しており、車両のパワーステアリング等で使用される回転角検出装置の回転角補正方法として用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1における回転角検出装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における回転角検出装置の補正システムの構成図
【図3】本発明の実施の形態1における第1の回転角検出部の信号を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における被検軸の回転電気角と回転機械角との関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における被検軸の多回転の回転機械角を算出する原理図
【図6】本発明の実施の形態1における算出された被検軸の回転機械角に含まれる誤差の一例を示す図
【図7】本発明の実施の形態1における回転機械角誤差より補正近似直線を求める方法を示す図
【図8】本発明の実施の形態1における各磁極の回転機械角誤差の平均値で補正した後の回転機械角誤差の一例を示す図
【図9】本発明の実施の形態1における各磁極の回転機械角誤差の平均値より補正近似直線を求める方法を示す図
【図10】本発明の実施の形態2におけるターゲットの斜視図
【図11】本発明の実施の形態3におけるターゲットの斜視図
【符号の説明】
【0049】
1 被検軸
2 多極リング磁石
3 第1の回転角検出部
4 ウォーム歯車
5 ホイール歯車
6 磁石
7 第2の回転角検出部
8 回転角検出装置
9 モータ
10 エンコーダ
11 不揮発性メモリ(EEPROM)
12 CPU
13 シリアル通信ライン
14 モータコントローラ
15 Sin信号
16 Cos信号
17,20 回転電気角
18,19,21,22 回転機械角
23 理想回転機械角
24,26 回転機械角誤差
25 平均値
27,28 ターゲット
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車体制御システムなどに用いられる多回転のハンドル回転角検出装置の回転角補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アブソリュートエンコーダなどのように多回転する回転体の回転角を検出する装置としては、位相差を有する複数の回転体の回転角から被検軸の回転角を検出する回転角度の測定方法や装置が存在する。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開昭63−118614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の装置においては歯車の配列精度や芯振れ、また回転角検出部における検出誤差などにより、被検軸の回転角の検出精度が悪くなるという課題があった。
【0005】
本発明はこの課題を解決するためのものであり、歯車の機械的誤差や回転角検出部の電気的誤差を補正する高精度な回転角検出装置の回転角補正方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
本発明の請求項1に記載の発明は、被検軸と連結したターゲットに対向する位置に配置した第1の回転角検出部と、前記被検軸の回転を減速する機構と、この減速された回転角を検出する第2の回転角検出部を備え、この第1の回転角検出部と第2の回転角検出部の信号により前記被検軸の回転角を算出する回転角検出装置において、前記被検軸を回転させるモータと、このモータの回転角を制御するモータコントローラと、このモータの回転角を検出するエンコーダとを用いて、前記モータにより実際に回転させた前記被検軸の回転角と前記第1および第2の回転角検出部より求めた前記被検軸の算出回転角との差を補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角でもって被検軸の前記算出回転角を補正するようにしたものである。
【0008】
本発明の請求項2に記載の発明は、全検出範囲における所定回転角毎に前記補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正するとともに、前記所定回転角間においてはその前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにしたものである。
【0009】
本発明の請求項3に記載の発明は、ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で磁極が反転するように着磁してある多極リング磁石とし、各磁極幅に相当する回転範囲において各磁極の誤差の平均値を各磁極共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにしたものである。
【0010】
本発明の請求項4に記載の発明は、ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で配置された凸部を持つ歯車とし、各歯幅に相当する回転範囲において各歯の誤差の平均値を各歯共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにしたものである。
【0011】
本発明の請求項5に記載の発明は、ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で非凹部が生ずるように凹部を配置したものとし、各凹部幅に相当する回転範囲において各凹部の誤差の平均値を各凹部共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにしたものである。
【0012】
本発明の請求項6に記載の発明は、ターゲット間隔に相当する回転範囲において所定回転角毎に前記各ターゲット共通の補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正すると共に、前記所定回転角間においては、その前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにしたものである。
【0013】
これらの発明によれば、より少ない容量の補正データを不揮発性メモリに記憶し被検軸の前記算出回転角をこの補正データで補正することにより、構成部品の寸法ばらつきによる機械誤差や磁石の特性ばらつきによる磁気誤差や回転角検出部や検出回路部の電気誤差を含む被検軸の算出回転角の検出精度を大幅に向上できるという作用効果が得られるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多極リング磁石や回転角検出部の機械誤差、磁気誤差、電気誤差などにより発生する回転角検出精度の低下を、より少ない容量の不揮発性メモリに記憶した補正角にて補正することにより、被検軸の回転角検出精度を向上できる回転角検出装置を簡易な形態で提供することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施形態1について、図1〜図9を用いて説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態1における回転角検出装置の構成図、図2は回転角検出装置の補正システムの構成図である。図3は多極リング磁石に対向する位置に配置された第1の回転角検出部の信号を示す図である。図4は第1の回転角検出部の1周期分のSin信号とCos信号より求めた回転電気角と被検軸の回転機械角との関係を示す図である。図5は第1の回転角検出部の信号と第2の回転角検出部の信号より被検軸の多回転の回転機械角を算出する原理図である。図6は算出された被検軸の回転機械角に含まれる誤差を多極リング磁石の磁極ピッチに対応する回転機械角毎に求めたデータの一例を示す図である。図7は回転機械角誤差より補正近似直線を求める方法を示した図である。図8は各磁極の回転機械角誤差の平均値で補正した回転機械角誤差データの一例を示す図である。図9は各磁極の回転機械角誤差の平均値より補正近似直線を求める方法を示した図である。
【0017】
図1において、ターゲットである多極リング磁石2は被検軸1に連結され、この多極リング磁石2に対向する位置には第1の回転角検出部3が配置されている。ウォーム歯車4は被検軸1に連結され、このウォーム歯車4にはホイール歯車5が係合されている。ホイール歯車5の中央部には磁石6が配置され、この磁石6に対向する位置に回転角を検出する第2の回転角検出部7が配置されている。モータ9は被検軸1の端面に取り付けられ、エンコーダ10はモータ9による被検軸1の回転機械角を検出する。
【0018】
図2において、不揮発性メモリ(EEPROM)11は補正角などを記憶するためのものである。CPU12は不揮発性メモリ(EEPROM)11や第1、第2の回転角検出部3,7と接続されており回転角を算出する。また、CPU12とモータコントローラ14とは角度信号や命令信号を送受信するシリアル通信ライン13で結ばれ、信号の送受信ができるようになっている。被検軸1にはモータ9が取り付けられており、モータコントローラ14によりその回転を高精度に駆動制御するようになっている。被検軸1の回転角はエンコーダ10で高精度に検出してモータコントローラ14にこの回転角を送信している。
【0019】
図3において、横軸は被検軸1の回転機械角を示しており、縦軸は第1の回転角検出部3の出力信号を示している。被検軸1の回転に応じてSin信号15、Cos信号16が出力される。
【0020】
図4において、横軸は被検軸1の回転機械角を示しており、縦軸は図3に示したSin信号15とCos信号16より求めた回転電気角を示している。
【0021】
図5において、横軸は被検軸1の回転機械角を検出範囲に渡って示しており、縦軸は上段に第1の回転角検出部3より求めた回転電気角を、中段に第2の回転角検出部7より求めた回転電気角を、下段に第1の回転角検出部3と第2の回転角検出部7の信号より算出した回転電気角を組み合わせて算出された被検軸1の回転機械角を示している。
【0022】
次に、以上の構成により被検軸1の回転角検出の方法について説明する。
【0023】
図1において被検軸1が回転すると、この被検軸1と連結している多極リング磁石2が回転する。第1の回転角検出部3からは多極リング磁石2の回転角に対応した信号を得ることができる。この実施の形態の場合、多極リング磁石2の磁極数が30であるため、1磁極あたりの回転機械角は12deg(=360deg/30極)となる。図3に示すように、被検軸1に取り付けられた多極リング磁石2の1磁極あたりの回転機械角(12deg)に対し、第1の回転角検出部3の信号であるSin信号15とCos信号16は1周期(回転電気角の360degに相当)変化する。図4において図3に示した第1の回転角検出部3の信号より算出した回転電気角17から求められる理想的な回転機械角は回転機械角18のように直線的に変化するが、多極リング磁石2の着磁バラツキや偏心あるいは第1の回転角検出部3の感度バラツキや位置バラツキ等の影響で回転電気角17から求められる回転機械角は、理想的な回転機械角18に対し回転機械角19のように誤差を含むようになる。そして図5の上段の図に示すように、第1の回転角検出部3より求めた回転電気角17から被検軸1の0degから12degの回転機械角19を高精度、高分解能に求めることができる。
【0024】
一方、被検軸1に連結されたウォーム歯車4が回転し、ある一定の減速比でホイール歯車5も回転する。この事例では減速比を1/4としている。このホイール歯車5の回転角は磁石6の磁界方向を検出する第2の回転角検出部7の信号より算出する。図5の中段に示すように、第2の回転角検出部7のSin信号とCos信号より求めた回転電気角20より被検軸1の検出範囲である0degから720degの回転機械角21を求めることができる。図5の下段に示すように、第1の回転角検出部3より求めた回転機械角19の値がどの周期(磁極)のものなのかを、第2の回転角検出部7より求めた回転機械角21より決定して被検軸1の回転機械角22を求める。図5の下段においても図4で述べた同様の影響で、算出された前記回転機械角22にも理想回転機械角23に対する誤差を含む。
【0025】
次に、以上の構成における被検軸1の回転角検出精度を向上(前記誤差を削減する)させる方法について説明する。
【0026】
図6は横軸に第1の回転角検出部3の信号であるSin信号とCos信号より算出されるTan信号(=Sin/Cos)を逆変換した回転電気角17より算出した回転機械角19をとり、縦軸には被検軸1が実際に回転した回転機械角18と前記回転機械角19との差である回転機械角誤差24を取っている。モータコントローラ14では、エンコーダ10で検出した被検軸1の回転機械角18と、シリアル通信ライン13を経由して得られる回転角検出装置8に内蔵されたCPU12で算出された被検軸1の前記回転機械角19とを同期して格納できるようになっている。すなわち、モータコントローラ14では回転角検出装置8で算出された被検軸1の回転機械角19に対し回転機械角誤差24を(式1)で確定することができる。
【0027】
(回転機械角誤差24)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)……(式1)
図7には実際に取得した回転機械角誤差24のデータ例を記載している。
【0028】
モータコントローラ14はこの回転機械角誤差24をシリアル通信ライン13にてCPU12へ送信し、CPU12は各回転機械角19に対しこの回転機械角誤差24を不揮発性メモリ(EEPROM)11に格納する。故にCPU12は常時算出された被検軸1の前記回転機械角19を、前記回転機械角誤差24を用いて(式2)で補正することができる。
【0029】
(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(回転機械角誤差24)……(式2)
しかし、全回転検出範囲にわたり前記回転機械角誤差24を記憶するには容量の大きい不揮発性メモリ(EEPROM)11が必要になる。回転検出範囲が720deg、分解能が1degとした場合、720の不揮発性メモリ容量が必要となる。
【0030】
そこで、ある所定の回転機械角毎(図7の例では3deg毎)に求めた前記回転機械角誤差24を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶するとすれば240(720/3)の容量に削減できる。ある所定の回転機械角間の前記回転機械角誤差24は、3deg毎の前記回転機械角誤差24より求める近似直線にて推定する。
【0031】
xをある3deg間における回転機械角、cをxよりも小さく最も近い3deg毎の回転機械角とする。すなわちc<x<c+3とする。mを(c+3)における回転機械角誤差24とし、nをcにおける回転機械角誤差24とする。これらの値に基づいた前記回転機械角誤差24の近似直線は(式3)で表される。
【0032】
y=(m−n)・(x−c)/3+n……(式3)
モータコントローラ14は前記モータ9を回転させ、シリアル通信ライン13より得られる前記回転機械角19の3deg毎に被検軸1の回転機械角18を前記エンコーダ10より同期させて取得する。図7において回転機械角19(c)が0degの時の回転機械角誤差24(n)が0.001degとなっており、回転機械角19(c+3)が3degの時の回転機械角誤差24(m)が0.012degとなっている。回転機械角19が0degから3degまでの0.5deg毎の回転機械角誤差24を求める式はこれらの値を(式3)に代入して
y=(0.012−0.001)・(x−0)/3+0.001
=0.0036・x+0.001……(式4)
となる。例えば回転機械角19が1degの時の回転機械角誤差24は(式4)により0.0046degとなる。回転機械角19が3degから6degまでの1deg毎の回転機械角誤差24も同様の方法で求める。このようにして求められた回転機械角誤差24にて算出された被検軸1の回転機械角19を(式1)で補正する。
【0033】
更に、この不揮発性メモリの容量を削減するため、図6に示すように各磁極の回転機械角誤差24の平均値25を算出された回転機械角19に対し1磁極ピッチの回転機械角(この実施の形態では12deg)毎に(式5)で求める。
【0034】
平均値25=(ある回転機械角19における1〜N磁極までの回転機械角誤差24の和)/N……(式5)
前記平均値25より回転機械角誤差26を(式6)で求める。
【0035】
(回転機械角誤差26)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)−(各磁極の回転機械角誤差の平均値25)……(式6)
図8は図6のデータを(式6)に代入し算出した回転機械角誤差26をプロットしたものである。図6に示す各磁極の回転機械角誤差24の発生傾向には相関性が見られるため、回転機械角誤差24のばらつき±0.2degに対し、図8に示す回転機械角誤差26のばらつきが±0.1deg以下に縮小されている。
【0036】
モータコントローラ14では、エンコーダ10で検出した被検軸1の回転機械角18とシリアル通信ライン13経由で得られる回転角検出装置8内蔵のCPU12で算出された被検軸1の回転機械角19とを同期して格納できるようになっているので、(式1)より求めた各磁極の回転機械角誤差24の平均値25を(式5)で算出できる。この平均値25はシリアル通信ライン13にてCPU12へ送信し、CPU12にて不揮発性メモリ(EEPROM)11に格納する。故にCPU12は常時前記算出された被検軸1の回転機械角19を、前記回転機械角誤差の平均値25を用いて回転機械角誤差26を含む形ではあるが、(式7)で補正することができる。
【0037】
(被検軸1が実際に回転した回転機械角18)+(回転機械角誤差26)=(算出された被検軸1の回転機械角19)−(回転機械角誤差の平均値25)……(式7)
さらに、不揮発性メモリ(EEPROM)11の容量を削減する方法について図9にて説明する。図9は図7の一部を拡大表示したものである。仮に図9にプロットされているような各磁極の前記回転機械角誤差の平均値25を、0.5deg間隔で回転機械角19を0degから12degの範囲において不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶するとすれば24の容量が必要となるが、ある所定の回転機械角毎(図9の例では2deg毎)に求めた各磁極の前記回転機械角誤差の平均値25を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶すれば6(=12/2)の容量に削減できる。ある所定の回転機械角間の前記平均値25は2deg毎の平均値25より求める近似直線にて推定する。
【0038】
xをある2deg間の回転機械角、c1をxよりも小さく最も近い2deg毎の回転機械角とする。すなわちc1<x<c1+2とする。m1を(c1+2)における平均値25の値、n1をc1における平均値25の値とする。これらの値に基づいた前記平均値25の近似直線は(式8)で表される。
【0039】
y1=(m1−n1)・(x−c1)/2+n1……(式8)
モータコントローラ14は前記モータ9を回転させると共に、シリアル通信ライン13より2deg毎の前記回転機械角19を取得し前記エンコーダ10より被検軸1の回転機械角18を取得する。これらの回転機械角18、回転機械角19及び(式1)より回転機械角誤差24を求め、更に(式5)にて平均値25を求める。
【0040】
図9において回転機械角19の値(c1)が0degの時における平均値25の値(n1)が0.031degとなっており、回転機械角19の値(c1+2)が2degの時における平均値25の値(m1)が0.042degとなっている。
【0041】
回転機械角19が0degから2degまでの0.5deg毎の平均値25を求める式はこれらの値を(式8)に代入して
y1=(0.042−0.031)・(x−0)/2+0.031=0.0055・x+0.031……(式9)
となる。例えば、回転機械角19の値が1degの時の平均値25の値は(式9)より0.0365degとなる。回転機械角19の値が2degから4degまでの0.5deg毎の平均値25の値も同様の方法で求める。このようにして求められた平均値25にて算出された被検軸1の回転機械角19を(式7)で補正する。図6に示した平均値25の値を(式8)の近似直線で推定し(式6)で回転機械角誤差26を求めても、図8に示す回転機械角誤差26とほぼ同様の結果を得た。
【0042】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図10を用いて説明する。
【0043】
図10は実施の形態2におけるターゲットの斜視図である。このターゲット27の外周面には、磁性体からなる凸部が円周方向に等間隔で配置されている。このターゲット27を備える回転角検出装置でも実施の形態1における第1の回転角検出部の信号と同様の形状をなしており、この信号により回転角を算出することができる。なお、本実施の形態2のターゲットを用いた回転角検出装置は上述した実施の形態1に係る回転角検出装置の構成及び動作と同様であるため、その説明は省略する。
【0044】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図11を用いて説明する。
【0045】
図11は実施の形態3におけるターゲットの斜視図である。このターゲット28は円筒部を有しており、円筒部の外周面には円周方向に等間隔で非凹部が生ずるように凹部が配置されている。このターゲット28を備える回転角検出装置でも、実施の形態1における第1の回転角検出部の信号と同様の形状をなしており、この信号により回転角を算出することができる。なお、本実施の形態3のターゲットを用いた回転角検出装置は上述した実施の形態1に係る回転角検出装置の構成及び動作と同様であるため、その説明は省略する。
【0046】
以上のように本実施の形態における回転角検出装置は、検出範囲において或いは多極リング磁石の各磁極幅に対応する回転範囲において前記被検軸1の算出回転角に対する補正角を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶する方法により、またはある一定回転角ごとに前記補正角を不揮発性メモリ(EEPROM)11に記憶する方法により、多極リング磁石や回転角検出部の磁気誤差、機械誤差、電気誤差による回転角検出精度の低下をより少ない容量の不揮発性メモリで補正することにより被検軸の検出回転角の精度を向上することができるという作用効果も得られる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明にかかる回転角検出装置の回転角補正方法は、より少ない容量の不揮発性メモリを用いた簡単な構成で、被検軸の多回転を高精度に検出することができるという作用効果を有しており、車両のパワーステアリング等で使用される回転角検出装置の回転角補正方法として用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態1における回転角検出装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1における回転角検出装置の補正システムの構成図
【図3】本発明の実施の形態1における第1の回転角検出部の信号を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における被検軸の回転電気角と回転機械角との関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における被検軸の多回転の回転機械角を算出する原理図
【図6】本発明の実施の形態1における算出された被検軸の回転機械角に含まれる誤差の一例を示す図
【図7】本発明の実施の形態1における回転機械角誤差より補正近似直線を求める方法を示す図
【図8】本発明の実施の形態1における各磁極の回転機械角誤差の平均値で補正した後の回転機械角誤差の一例を示す図
【図9】本発明の実施の形態1における各磁極の回転機械角誤差の平均値より補正近似直線を求める方法を示す図
【図10】本発明の実施の形態2におけるターゲットの斜視図
【図11】本発明の実施の形態3におけるターゲットの斜視図
【符号の説明】
【0049】
1 被検軸
2 多極リング磁石
3 第1の回転角検出部
4 ウォーム歯車
5 ホイール歯車
6 磁石
7 第2の回転角検出部
8 回転角検出装置
9 モータ
10 エンコーダ
11 不揮発性メモリ(EEPROM)
12 CPU
13 シリアル通信ライン
14 モータコントローラ
15 Sin信号
16 Cos信号
17,20 回転電気角
18,19,21,22 回転機械角
23 理想回転機械角
24,26 回転機械角誤差
25 平均値
27,28 ターゲット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検軸と連結したターゲットに対向する位置に配置した第1の回転角検出部と、前記被検軸の回転を減速する機構と、この減速された回転角を検出する第2の回転角検出部を備え、この第1の回転角検出部と第2の回転角検出部の信号により前記被検軸の回転角を算出する回転角検出装置において、前記被検軸を回転させるモータと、このモータの回転角を制御するモータコントローラと、このモータの回転角を検出するエンコーダとを用いて、前記モータにより実際に回転させた前記被検軸の回転角と前記第1および第2の回転角検出部より求めた前記被検軸の算出回転角との差を補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角でもって被検軸の前記算出回転角を補正するようにした回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項2】
全検出範囲における所定回転角毎に前記補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正するとともに、前記所定回転角間においてはその前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項3】
ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で磁極が反転するように着磁してある多極リング磁石とし、各磁極幅に相当する回転範囲において各磁極の誤差の平均値を各磁極共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項4】
ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で配置された凸部を持つ歯車とし、各歯幅に相当する回転範囲において各歯の誤差の平均値を各歯共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項5】
ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で非凹部が生ずるように凹部を配置したものとし、各凹部幅に相当する回転範囲において各凹部の誤差の平均値を各凹部共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項6】
ターゲット間隔に相当する回転範囲において所定回転角毎に前記各ターゲット共通の補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正すると共に、前記所定回転角間においてはその前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにした請求項3から請求項5のいずれかに記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項1】
被検軸と連結したターゲットに対向する位置に配置した第1の回転角検出部と、前記被検軸の回転を減速する機構と、この減速された回転角を検出する第2の回転角検出部を備え、この第1の回転角検出部と第2の回転角検出部の信号により前記被検軸の回転角を算出する回転角検出装置において、前記被検軸を回転させるモータと、このモータの回転角を制御するモータコントローラと、このモータの回転角を検出するエンコーダとを用いて、前記モータにより実際に回転させた前記被検軸の回転角と前記第1および第2の回転角検出部より求めた前記被検軸の算出回転角との差を補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角でもって被検軸の前記算出回転角を補正するようにした回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項2】
全検出範囲における所定回転角毎に前記補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正するとともに、前記所定回転角間においてはその前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項3】
ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で磁極が反転するように着磁してある多極リング磁石とし、各磁極幅に相当する回転範囲において各磁極の誤差の平均値を各磁極共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項4】
ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で配置された凸部を持つ歯車とし、各歯幅に相当する回転範囲において各歯の誤差の平均値を各歯共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項5】
ターゲットを被検軸の円周方向に等間隔で非凹部が生ずるように凹部を配置したものとし、各凹部幅に相当する回転範囲において各凹部の誤差の平均値を各凹部共通の補正角として不揮発性メモリに記憶し、この補正角によって被検軸の算出回転角を補正するようにした請求項1に記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【請求項6】
ターゲット間隔に相当する回転範囲において所定回転角毎に前記各ターゲット共通の補正角を不揮発性メモリに記憶し被検軸の算出回転角を補正すると共に、前記所定回転角間においてはその前後に記憶した補正角で求めた近似直線から推定される補正角で補正するようにした請求項3から請求項5のいずれかに記載の回転角検出装置の回転角補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−234723(P2006−234723A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52809(P2005−52809)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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