説明

回転電機

【課題】回転電機内に冷却風を循環させて固定子鉄心及び回転子の冷却を行う際に、冷却効率を高めることのできる回転電機を提供する。
【解決手段】回転子センター7の外周面に永久磁石からなる磁極2を取り付ける際に、磁極装着体14を介して取り付けるようにする。これにより、磁極2、固定子鉄心1、固定子コイル3及び磁極装着体14により形成される空隙13の断面積を大きくすることができ、この空隙13を流れる冷却風の流量を増加させ、大きな発熱源である固定子鉄心の歯部、固定子コイルを直接冷却できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通風冷却構造を有する回転電機に関するものであり、特に簡単な構成にて冷却効率を高めることができる通風冷却構造を有する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機等の回転電機の運転時、固定子及び回転子を構成するコイル、鉄心、磁極等には熱が発生するので、従来、ファンと熱交換器とからなる冷却装置を設け、熱交換器により冷却された冷却風をファンによって回転電機内に循環させ、固定子及び回転子のコイル、鉄心、磁極等を冷却して温度上昇を規定の値以下に抑えるとともに、絶縁抵抗の低下を防止している(特許文献1参照)。
この種の冷却装置を備えた回転電機として図5、図6、図7示すものが知られている。
図5は、固定子枠の外部に冷却装置を取り付けた回転電機の断面図であり、図6は図5に示した回転電機のA-A方向の断面図である。図5、図6において、1は固定子鉄心、2は永久磁石からなる磁極、3は固定子コイル、4は固定子コイルエンド、5は固定子枠、6は回転子軸、7は回転子センター、8はカップリング、9は仕切り板、10はファン、11は熱交換器、12は冷却装置である。なお、図5において、矢印は冷却風の流れを示している。
カップリング8には回転電機の駆動源が取り付けられる。例えば、回転電機が風力発電機である場合には、カップリング8にはブレードが取り付けられる。ファン10と熱交換器11とにより冷却装置12が構成されており、この冷却装置12は、固定子枠5の外部に取り付けられている。この冷却装置12は、固定子枠5内に設けられる場合もある。
図7は、回転子センターの外周面に取り付けられる磁極2の配置を示しており、同一極性の複数の磁極2からなる磁極列が、回転子軸6の軸方向に配置されている。また、各磁極列は、極性が交互に異なるように所定の間隔をおいて配置され、各磁極列間を冷却風が流れる。
このように構成された回転電機では、冷却装置12のファン10、熱交換器11によって作り出される冷却風を、固定子枠5の入口5aから流入させ、回転子センター7の内径側に設けた開口部7a、7b、7cを介して回転子軸6の軸方向に流した後、入口5aとは反対側の回転電機端部の空間で回転子軸6の径方向に流す。径方向に流れた冷却風は、固定子鉄心1に取り付けられている固定子コイル3の固定子コイルエンド4を冷却した後、固定子鉄心1の外周面と固定子枠5の内径面との空間に流れ込み、固定子鉄心1の外周面を冷却した後、入口5a側の回転電機端部の空間に流入する。
また、径方向に流れた冷却風は、磁極2と固定子鉄心1、固定子コイル3とにより形成された空隙にも流れ込み、回転子軸6の軸方向に流れて磁極2、固定子鉄心1及び固定子コイル3を冷却した後、入口5a側の回転電機端部の空間に流入する。
入口5a側の回転電機端部の空間は、仕切り板9により仕切られており、入口5aが設けられている空間とは別の空間に出口5bが設けられている。この出口5bが設けられている空間に流入した冷却風は、固定子コイルエンド4を冷却した後、出口5bから冷却装置12に戻り、熱交換器11により再び冷却されて入口5aから固定子枠5内に流入される。このように、冷却風を回転電機内に循環させることにより、回転電機の冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−245914号公報(図13、段落0003〜0006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の通風冷却構造では、磁極と固定子鉄心、固定子コイルとにより形成された空隙の断面積が小さく、この空隙を流れる冷却風の流量が不充分であったため、固定子鉄心の歯部や固定子コイルを直接冷却することできず、回転電機の冷却は固定子鉄心の外周面からの冷却が主であった。
図8は、図6のA部の拡大図であり、図6と同じ構成要素は同じ符号で示されている。回転電機においては、磁極2と固定子鉄心1、固定子コイル3との距離は、電気的特性に影響を与えるため、磁極2と固定子鉄心1、固定子コイル3とにより形成された空隙13の断面積を大きくすることには制約がある。そのため、大きな発熱源である固定子コイルや固定子鉄心の歯部を充分に冷却することができず、冷却性能が高くないという問題があった。
本発明は、上記に鑑み、回転電機をより効果的に冷却することができる通風冷却構造を有する回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明によれば、回転子軸と、この回転子軸に取り付けられた回転子センターと、この回転子センターの外周面に、所定の間隔で回転子軸の軸方向に配置された複数の磁極列と、回転子センターを囲み、回転子軸が貫通する固定子枠と、この固定子枠に設けられる固定子鉄心及び固定子コイルと、回転子センターの内径部と固定子鉄心の外周面とに冷却風を循環させる冷却手段と、を備えた回転電機において、記回転子センターの外周面に、所定の間隔で回転子軸の軸方向に配置された複数の磁極装着体列を設け、この磁極装着体列を介して前記磁極列を前記回転子センターの外周面に取付け、回転子センターの内径部を流れる冷却風を、磁極列、固定子鉄心、固定子コイル及び磁極装着体列により形成される空隙と、固定子鉄心の外周部とに分流させて循環させる構成とする。
また、本発明によれば、上記の発明において、固定子鉄心の外周部に冷却面積を大きくする凹凸を設ける構成とする。
また、本発明によれば、上記の発明において、固定子鉄心は、更に回転子軸方向に貫通孔が設けられ、この貫通孔に冷却風が分流する構成とする。
さらに、本発明によれば、上記の発明において、貫通孔は、固定子鉄心の継鉄部または歯部に設けられる構成とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、磁極装着体列を介して磁極列を回転子センターの外周面に取付ける構成とし、且つ磁極装着体列は、所定の間隔で回転子センターの外周面に配置されることにより、磁極列、固定子鉄心、固定子コイル及び磁極装着体列により形成される空隙を冷却風が通流するのに充分な大きさにすることができる。これにより、大きな発熱源である固定子コイルや固定子鉄心の歯部を充分に冷却することができ、冷却性能を高めることができる。
また、固定子鉄心の冷却面積を大きくするために、固定子鉄心の外周部に凹凸を設けたり、あるいは貫通孔を設けることにより、冷却性能を高めることができる。
特に、貫通孔を固定子鉄心の歯部に設けることにより、大きな発熱源である固定子鉄心の歯部を直接冷却することができ、冷却性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による回転電機の実施例を示す部分断面図である。
【図2】本発明による回転電機の固定子側の他の実施例を示す部分断面図である。
【図3】本発明による回転電機の固定子側の他の実施例を示す部分断面図である。
【図4】本発明による回転電機の固定子側の他の実施例を示す部分断面図である。
【図5】従来の回転電機の構成を示す断面図である。
【図6】図5に示す従来の回転電機のA−A方向の断面図である。
【図7】磁極の配置を説明するための構成図である。
【図8】図6に示す従来の回転電機のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
図1は、本発明による回転電機の実施例を示す部分断面図であり、図8に示す従来の回転電機の構成に対応するものである。したがって、図8と同じ構成要素は同じ符号で示されており、図示されていない回転電機の他の構成は、図5、図6、図7に示す従来の回転電機の構成と同じである。
本発明による回転電機では、永久磁石により構成された磁極2は、図7に示すように従来の回転電機と同様に所定の間隔で配置された磁極列を構成しているが、磁極装着体14を介して回転子センター7の外周面に取り付けられている点が相違している。
この磁極装着体14も、磁極2と同様に所定の間隔で配置された磁極装着体列を構成している。磁極装着体列は、1つの磁極装着体で構成することもでき、複数の磁極装着体を並べて形成することもできる。複数の磁極装着体を並べる場合には、各磁極装着体を密接させて配置したり、間隔をおいて配置することもできる。
磁極装着体14を設けたことにより、磁極2、固定子鉄心1、固定子コイル3及び磁極装着体14により形成される空隙13の断面積は、磁極装着体14の高さ分だけ大きくすることができ、空隙13に流し込む冷却風の流量を多くすることができる。このように多くの冷却風を流すことにより、固定子コイルに距離的に近い部分から冷却することができ、さらに磁極を構成する磁石からの損失による熱を積極的に冷却でき、冷却性能の良い回転電機を構成することができる。
図2は、本発明による回転電機の固定子側の他の実施例を示す部分断面図であり、回転子側の構成は図1に示す回転電機の構成と同じである。したがって、図1と同じ構成要素は同じ符号で示されている。
図1に示した本発明による回転電機では、空隙13に流れる冷却風の流量を大きくすることにより、大きな発熱源である固定子コイルや固定子鉄心の歯部を冷却するように構成したが、図2に示した他の実施例は、固定子鉄心の歯部の反対側の外周面の冷却性能も合わせて高めるものである。
図2に示す回転電機では、固定子鉄心1の外周面に凹凸15が設けられている。固定鉄心1の外周面と固定子枠5の内周面とによって冷却風通路が形成され、この冷却風通路に面するように凹凸15が設けられていることにより、固定子鉄心1の外周面の冷却面積が大きくなっており、その分だけ冷却性能が高められている。
図3は、本発明による回転電機の固定子側の他の実施例を示す部分断面図であり、回転子側の構成は図1に示す回転電機の構成と同じである。したがって、図1と同じ構成要素は同じ符号で示されている。
図3に示す回転電機では、固定子鉄心1の歯部に冷却媒体を流す貫通孔15が回転子軸の軸方向に形成されている。この貫通孔15は、固定子鉄心1を形成する積層鋼板を打ち抜き加工する際に、多数の貫通孔15を同時に打ち抜くことにより形成することができる。
このように、固定子鉄心1の歯部の内部に冷却風を流し込むことにより、固定子鉄心1を直接冷却することができるとともに、特に固定子コイル3に近い部分を冷却することができ、固定子鉄心1の歯部の表面を流れる冷却風の増加と合わせて、回転電機の冷却性能を高めることができる。
図4は、本発明による回転電機の固定子側の他の実施例を示す部分断面図であり、回転子側の構成は図1に示す回転電機の構成と同じである。したがって、図1と同じ構成要素は同じ符号で示されている。
図4に示す回転電機では、固定子鉄心1の継鉄部に冷却媒体を流す貫通孔16が回転子の軸方向に形成されている。この貫通孔16は、固定子鉄心1を形成する積層鋼板を打ち抜き加工する際に、多数の貫通孔16を同時に打ち抜くことにより形成することができる。
このように、貫通孔16を設けることにより、固定子鉄心1を直接冷却することができるとともに、固定子コイル3に近い部分を冷却することができ、冷却性能を高めることができる。
なお、図5に示す回転電機の構成において、冷却風の循環方向を逆方向にした場合でも、本発明の各実施例は適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0009】
1 固定子鉄心
2 磁極
3 固定子コイル
4 固定子コイルエンド
5 固定子枠
6 回転子軸
7 回転子センター
8 カップリング
9 仕切り板
10 ファン
11 熱交換器
12 冷却装置
13 空隙
14 磁極装着体
15 凹凸
16、17 貫通孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子軸と、該回転子軸に取り付けられた回転子センターと、該回転子センターの外周面に、所定の間隔で前記回転子軸の軸方向に配置された複数の磁極列と、前記回転子センターを囲み、前記回転子軸が貫通する固定子枠と、該固定子枠に設けられる固定子鉄心及び固定子コイルと、前記回転子センターの内径部と前記固定子鉄心の外周面とに冷却風を循環させる冷却手段と、を備えた回転電機において、
前記回転子センターの外周面に、所定の間隔で前記回転子軸の軸方向に配置された複数の磁極装着体列を設け、
該磁極装着体列を介して前記磁極列を前記回転子センターの外周面に取付け、
前記回転子センターの内径部に流れる冷却風を、前記磁極列、前記固定子鉄心、前記固定子コイル及び前記磁極装着体列により形成される空隙と、前記固定子鉄心の外周部とに分流させて循環させることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記固定子鉄心は、外周部に冷却面積を大きくする凹凸が設けられることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記固定子鉄心は、更に回転子軸方向に貫通孔が設けられ、該貫通孔に前記冷却風が分流することを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、
前記貫通孔は、前記固定子鉄心の継鉄部に設けられることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項3に記載の回転電機において、
前記貫通孔は、前記固定子鉄心の歯部に設けられることを特徴とする回転電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−4518(P2011−4518A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145557(P2009−145557)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】